(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103199
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】フィルタ装置および高周波フロントエンド回路
(51)【国際特許分類】
H03H 7/075 20060101AFI20240725BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20240725BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240725BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H03H7/075 Z
H01G4/40 321A
H01G4/30 201C
H01G4/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007400
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村本 和幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小川 圭介
【テーマコード(参考)】
5E082
5J024
【Fターム(参考)】
5E082AA01
5E082AB03
5E082BB01
5E082BC30
5E082CC02
5E082DD08
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5J024AA01
5J024BA11
5J024BA18
5J024CA04
5J024CA06
5J024CA09
5J024DA04
5J024DA25
5J024DA29
5J024EA03
5J024KA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】共振器間の容量結合に起因する減衰特性を低下を抑制する、複数段の共振器を含むフィルタ装置及びそれを備える高周波フロントエンド回路を提供する。
【解決手段】フィルタ装置100は、積層体と、入力端子、出力端子T2及び接地端子GNDと、接地電極PG1と、上面と接地電極との間の層において、入力端子から出力端子までの信号伝達経路に配置されている2つの共振器と、容量結合を介して2つの共振器を結合する結合電極PC45と、を備える。共振器は、接地電極との間でキャパシタを構成するキャパシタ電極PC40、50を含む。結合電極は、キャパシタ電極PC40に接続され、キャパシタ電極PC50との間でキャパシタを構成する。結合電極は、各々第1端部及び第2端部を有する電極P1、2を含み、電極P1の第1端部と電極P2の第1端部とが接続され、電極P1の第2端部及び電極P2の第2端部は、キャパシタ電極PC40に接続される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ装置であって、
第1面および第2面を有し、複数の誘電体層が積層された積層体と、
前記積層体の前記第2面に配置された入力端子、出力端子および接地端子と、
前記積層体の内部に配置され、前記接地端子に接続された接地電極と、
前記第1面と前記接地電極との間の層において、前記入力端子から前記出力端子までの信号伝達経路に配置された第1共振器および第2共振器と、
容量結合を介して前記第1共振器と前記第2共振器とを結合するための結合電極とを備え、
前記第1共振器および前記第2共振器は、前記接地電極との間でキャパシタを構成する第1キャパシタ電極および第2キャパシタ電極をそれぞれ含み、
前記結合電極は、前記第2キャパシタ電極に接続されており、かつ、前記第1キャパシタ電極との間でキャパシタを構成し、
前記結合電極は、各々が第1端部および第2端部を有する第1電極および第2電極を含み、
前記第1電極の第1端部と前記第2電極の第1端部とが接続され、
前記第1電極の第2端部および前記第2電極の第2端部は、前記第2キャパシタ電極に接続されている、フィルタ装置。
【請求項2】
前記第1電極および前記第2電極によって環状構造が構成される、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記第1電極、前記第2電極および前記第2キャパシタ電極によって環状構造が構成される、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記環状構造は、同一の誘電体層に配置されている、請求項2または3に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記環状構造は、複数の誘電体層にわたって配置されている、請求項2または3に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記結合電極は、前記第2キャパシタ電極と前記接地電極との間の誘電体層に配置されている、請求項5に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記第2キャパシタ電極は、前記結合電極と前記接地電極との間の誘電体層に配置されている、請求項5に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記結合電極は、前記第1電極および前記第2電極の第1端部から突出した第3電極をさらに含む、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
前記第1電極および前記第2電極は、前記第3電極と前記接地電極との間の誘電体層に配置されている、請求項8に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
前記第1電極の線路幅と前記第2電極の線路幅との和は、前記第3電極の線路幅の0.8~1.2倍である、請求項8または9に記載のフィルタ装置。
【請求項11】
前記第1共振器は、前記信号伝達経路において前記入力端子あるいは前記出力端子に最も近く配置された共振器である、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項12】
前記入力端子に接続され、前記第1キャパシタ電極との間でキャパシタを構成する第3キャパシタ電極をさらに備える、請求項11に記載のフィルタ装置。
【請求項13】
前記出力端子に接続され、前記第1キャパシタ電極との間でキャパシタを構成する第4キャパシタ電極をさらに備える、請求項11に記載のフィルタ装置。
【請求項14】
前記信号伝達経路において、前記入力端子と前記第1共振器との間に配置された第3共振器をさらに備える、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項15】
前記信号伝達経路において、前記出力端子と前記第2共振器との間に設けられた第4共振器をさらに備える、請求項14に記載のフィルタ装置。
【請求項16】
前記信号伝達経路において、前記出力端子と前記第2共振器との間に設けられた第4共振器をさらに備える、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項17】
請求項1に記載のフィルタ装置を備えた、高周波フロントエンド回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ装置および高周波フロントエンド回路に関し、より特定的には、フィルタ装置における減衰特性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2021/079737号明細書(特許文献1)には、複数段のLC並列共振器を含むフィルタ装置が開示されている。特許文献1に開示されたフィルタ装置においては、隣接する共振器は、互いに電磁界結合するとともに、キャパシタを用いた容量結合により結合することによって、所望の周波数帯域の信号を入力端子から出力端子へと伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/079737号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるようなフィルタ装置においては、隣接する共振器間の容量結合は、一方の共振器から延伸する平板電極と、他方の共振器に含まれる平板電極とによって形成されるキャパシタにより実現される。
【0005】
このとき、一方の共振器から延伸する平板電極は、実際にはある長さを有しているため、所定のインダクタンス値を有するインダクタとしても機能する。そのため、当該キャパシタを構成する平板電極自体が分布定数系のLC並列共振器となってしまい、当該平板電極の共振周波数付近において、意図しない減衰特性の低下が生じる場合がある。
【0006】
近年では、互いに異なる周波数帯域を用いた複数の通信規格に基づいて通信が行なわれている。フィルタ装置が対象とする通過帯域以外の周波数帯域(すなわち、非通過帯域)における減衰特性が低下すると、当該非通過帯域の周波数帯域を用いる他の通信機器に対して悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、当該フィルタ装置においては、減衰特性が低下した周波数帯域の信号がノイズとして現れるおそれがある。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数段の共振器を含むフィルタ装置において、共振器間の容量結合に起因する減衰特性を低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るフィルタ装置は、複数の誘電体層が積層された積層体と、入力端子、出力端子および接地端子と、接地端子に接続された接地電極と、第1共振器および第2共振器と、結合電極とを備える。積層体は、第1面および第2面を有する。入力端子、出力端子および接地端子は、積層体の第2面に配置されている。接地電極は、積層体の内部に配置されている。第1共振器および第2共振器は、第1面と接地電極との間の層において、入力端子から出力端子までの信号伝達経路に配置されている。結合電極は、容量結合を介して第1共振器と第2共振器とを結合する。第1共振器および第2共振器は、接地電極との間でキャパシタを構成する第1キャパシタ電極および第2キャパシタ電極をそれぞれ含む。結合電極は、第2キャパシタ電極に接続されており、かつ、第1キャパシタ電極との間でキャパシタを構成する。結合電極は、各々が第1端部および第2端部を有する第1電極および第2電極を含む。第1電極の第1端部と第2電極の第1端部とが接続される。第1電極の第2端部および第2電極の第2端部は、第2キャパシタ電極に接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るフィルタ装置によれば、隣接する共振器間の容量結合を形成するための結合電極が2つの電極を含んでおり、各電極の一方の端部同士が電気的に接続されるとともに、他方の電極同士が電気的に接続されている。すなわち、結合電極が、互いに並列接続された2つの経路によって構成される。これにより、結合電極が1つの経路で構成される場合に比べて、当該結合電極のインダクタンス値を低減することができ、それにより結合電極の共振周波数をより高くすることができる。したがって、結合電極の構成を適宜調整し、仕様によって定められた非通過帯域よりも高周波数側に結合電極の共振周波数を設定することによって、当該非通過帯域における減衰特性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態のフィルタ装置が適用される高周波フロントエンド回路を有する通信装置のブロック図である。
【
図2】実施の形態のフィルタ装置の等価回路図である。
【
図3】実施の形態のフィルタ装置の外形斜視図である。
【
図4】
図3のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
【
図5】
図4のフィルタ装置の部分的な拡大斜視図である。
【
図6】
図5のフィルタ装置の部分的な拡大平面図である。
【
図7】実施の形態のフィルタ装置と比較例のフィルタ装置における結合電極を示す図である。
【
図8】実施の形態および比較例のフィルタ装置におけるフィルタ特性を説明するための図である。
【
図9】変形例1のフィルタ装置の部分的な拡大斜視図である。
【
図10】変形例2のフィルタ装置の部分的な拡大斜視図である。
【
図11】変形例3のフィルタ装置の部分的な拡大斜視図である。
【
図12】変形例4のフィルタ装置の部分的な拡大斜視図である。
【
図13】変形例5のフィルタ装置の部分的な拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態]
(通信装置の基本構成)
図1は、実施の形態のフィルタ装置が適用される高周波フロントエンド回路20を有する通信装置10のブロック図である。通信装置10は、たとえば、スマートフォンに代表される携帯端末、あるいは、携帯電話基地局である。
【0013】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナ12と、高周波フロントエンド回路20と、ミキサ30と、局部発振器32と、D/Aコンバータ(DAC)40と、RF回路50とを備える。また、高周波フロントエンド回路20は、バンドパスフィルタ22,28と、増幅器24と、減衰器26とを含む。なお、
図1においては、高周波フロントエンド回路20が、アンテナ12から高周波信号を送信する送信回路を含む場合について説明するが、高周波フロントエンド回路20はアンテナ12を介して高周波信号を受信する受信回路を含んでいてもよい。
【0014】
通信装置10は、RF回路50から伝達された送信信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナ12から放射する。RF回路50から出力された送信信号である変調済みのデジタル信号は、D/Aコンバータ40によってアナログ信号に変換される。ミキサ30は、D/Aコンバータ40によってデジタル信号からアナログ信号に変換された送信信号を、局部発振器32からの発振信号と混合して高周波信号へとアップコンバートする。バンドパスフィルタ28は、アップコンバートによって生じた不要波を除去して、所望の周波数帯域の送信信号のみを抽出する。減衰器26は、送信信号の強度を調整する。増幅器24は、減衰器26を通過した送信信号を、所定のレベルまで電力増幅する。バンドパスフィルタ22は、増幅過程で生じた不要波を除去するとともに、通信規格で定められた周波数帯域の信号成分のみを通過させる。バンドパスフィルタ22を通過した送信信号は、アンテナ12から放射される。
【0015】
上記のような通信装置10におけるバンドパスフィルタ22,28として、本開示に対応したフィルタ装置を採用することができる。
【0016】
(フィルタ装置の構成)
次に、
図2~
図4を用いて、実施の形態のフィルタ装置100の詳細な構成について説明する。
【0017】
(1)等価回路
図2は、フィルタ装置100の等価回路図である。
図2を参照して、フィルタ装置100は、入力端子T1と、出力端子T2と、共振器RC1~RC5とを備える。共振器RC1~RC5の各々は、インダクタとキャパシタとが並列接続されたLC並列共振器である。
【0018】
共振器RC1は、キャパシタC0を介して入力端子T1に接続されている。共振器RC1は、インダクタL1,L12,L6とキャパシタC1とを含む。インダクタL1,L12,L6は、キャパシタC0との接続ノードN1Aと接地端子GNDとの間に直列接続されている。キャパシタC1もまた、接続ノードN1Aと接地端子GNDとの間に接続されている。すなわち、共振器RC1は、直接接続されたインダクタL1,L12,L6による合成インダクタと、キャパシタC1とが並列接続されたLC並列共振器である。
【0019】
共振器RC2は、インダクタL2,L12,L6およびキャパシタC2を含む。インダクタL2の一方端は、インダクタL1とインダクタL12との間の接続ノードN2Bに接続されている。インダクタL2の他方端は、キャパシタC2を介して接地端子GNDに接続されている。すなわち、共振器RC2は、直接接続されたインダクタL2,L12,L6による合成インダクタと、キャパシタC2とが並列接続されたLC並列共振器である。
【0020】
インダクタL2とキャパシタC2との間の接続ノードN2Aは、キャパシタC12を介して共振器RC1における接続ノードN1Aに接続されている。すなわち、共振器RC2は、キャパシタC12によって共振器RC1と容量結合している。
【0021】
共振器RC3は、インダクタL3,L6およびキャパシタC3を含む。インダクタL3の一方端は、インダクタL12とインダクタL6との間の接続ノードN3Bに接続されている。インダクタL3の他方端は、キャパシタC3を介して接地端子GNDに接続されている。すなわち、共振器RC3は、直接接続されたインダクタL3,L6による合成インダクタと、キャパシタC3とが並列接続されたLC並列共振器である。
【0022】
インダクタL3とキャパシタC3との間の接続ノードN3Aは、キャパシタC23を介して共振器RC2における接続ノードN2Aに接続されている。すなわち、共振器RC3は、キャパシタC23によって共振器RC2と容量結合している。
【0023】
共振器RC4は、インダクタL4,L45,L6およびキャパシタC4を含む。インダクタL4の一方端は、インダクタL45の一方端に接続される。インダクタL4の他方端は、キャパシタC4を介して接地端子GNDに接続されている。インダクタL45の他方端は、共振器RC3におけるインダクタL3とインダクタL6との間の接続ノードN3Bに接続されている。すなわち、共振器RC4は、直接接続されたインダクタL4,L45,L6による合成インダクタと、キャパシタC4とが並列接続されたLC並列共振器である。
【0024】
インダクタL4とキャパシタC4との間の接続ノードN4Aは、キャパシタC34を介して共振器RC3における接続ノードN3Aに接続されている。すなわち、共振器RC4は、キャパシタC34によって共振器RC3と容量結合している。
【0025】
共振器RC5は、インダクタL5,L45,L6およびキャパシタC5を含む。インダクタL5の一方端は、共振器RC4におけるインダクタL4とインダクタL45との間の接続ノードN4Bに接続される。インダクタL5の他方端は、キャパシタC5を介して接地端子GNDに接続されている。すなわち、共振器RC5は、直接接続されたインダクタL5,L45,L6による合成インダクタと、キャパシタC5とが並列接続されたLC並列共振器である。
【0026】
インダクタL5とキャパシタC5との間の接続ノードN5Aは、キャパシタC45を介して共振器RC4における接続ノードN4Aに接続されている。すなわち、共振器RC5は、キャパシタC45によって共振器RC4と容量結合している。また、共振器RC5における接続ノードN5Aは、キャパシタC6を介して出力端子T2に接続される。さらに、共振器RC5における接続ノードN5Aと、共振器RC1における接続ノードN1Aとの間に、キャパシタC15が接続されている。
【0027】
上記のように、インダクタL12は、共振器RC1および共振器RC2で共用されている。同様に、インダクタL45は、共振器RC4および共振器RC5で共用されている。さらに、インダクタL6は、共振器RC1~RC5で共用されている。
【0028】
また、各共振器同士は互いに磁気結合により結合している。このように、フィルタ装置100は、入力端子T1と出力端子T2との間の信号伝達経路に、互いに磁気結合および容量結合する5段の共振器が配置された構成を有している。各共振器の共振周波数を調整することによって、フィルタ装置100は、所望の周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタとして機能する。なお、フィルタ装置に含まれる共振器の数は一例であり、本開示における特徴は、2以上の共振器が含まれるフィルタ装置に適用可能である。
【0029】
(2)詳細構造
次に、
図3および
図4を用いて、フィルタ装置100の構造について説明する。
図3はフィルタ装置100の外観斜視図であり、
図4はフィルタ装置100の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
【0030】
図3および
図4を参照して、フィルタ装置100は、複数の誘電体層LY1~LY10が積層方向に積層された、直方体または略直方体の積層体110を備えている。誘電体層LY1~LY10は、たとえば低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)などのセラミック、あるいは樹脂により形成されている。積層体110の内部において、各誘電体層に設けられた複数の電極、および、誘電体層間に設けられた複数のビアによって、LC並列共振器のインダクタおよびキャパシタが構成される。なお、本明細書において「ビア」とは、異なる誘電体層に設けられた電極を接続するために、誘電体層中に設けられる導体を示す。ビアは、たとえば、導電ペースト、めっき、および/または金属ピンなどによって形成される。
【0031】
なお、以降の説明においては、積層体110における誘電体層LY1~LY10の積層方向を「Z軸方向」とし、Z軸方向に垂直であって積層体110の長辺に沿った方向を「X軸方向」とし、積層体110の短辺に沿った方向を「Y軸方向」とする。また、以下では、各図におけるZ軸の正方向を上側、負方向を下側と称する場合がある。
【0032】
積層体110の上面111(誘電体層LY1)には、フィルタ装置100の方向を特定するための方向性マークDMが配置されている。積層体110の下面112(誘電体層LY10)には、当該フィルタ装置100と外部機器とを接続するための外部端子(入力端子T1、出力端子T2および複数の接地端子GND)が配置されている。入力端子T1、出力端子T2および接地端子GNDの各々は平板形状の電極であり、積層体110の下面112に規則的に配置されたLGA(Land Grid Array)端子である。
【0033】
フィルタ装置100は、
図2で説明したように、LC並列共振器である5つの共振器RC1~RC5を有している。より具体的には、共振器RC1は、ビアV10と、キャパシタ電極PC10と、平板電極PL12とを含む。共振器RC2は、ビアV20,V21と、キャパシタ電極PC20と、平板電極PL12とを含む。共振器RC3は、ビアV30と、キャパシタ電極PC30とを含む。共振器RC4は、ビアV40,V41と、キャパシタ電極PC40と、平板電極PL45とを含む。共振器RC5は、ビアV50と、キャパシタ電極PC50と、平板電極PL45とを含む。
【0034】
入力端子T1は、ビアV01およびビアV02によって、誘電体層LY7に配置されたキャパシタ電極PC01に接続される。ビアV01およびビアV02は、誘電体層LY9においてオフセットしている。
【0035】
共振器RC1のキャパシタ電極PC10は、誘電体層LY6に配置されている。キャパシタ電極PC10の一部は、積層体110の積層方向(Z軸方向)から平面視した場合に、誘電体層LY7のキャパシタ電極PC01と重なっている。キャパシタ電極PC10およびキャパシタ電極PC01によって、
図2におけるキャパシタC0が構成される。
【0036】
また、キャパシタ電極PC10の他の一部は、積層体110の積層方向から平面視した場合に、誘電体層LY8に配置された接地電極PG1と重なっている。接地電極PG1は、複数のビアVG4および複数のビアVG5によって、下面112における接地端子GNDに接続されている。すなわち、キャパシタ電極PC10および接地電極PG1によって、
図2におけるキャパシタC1が構成される。
【0037】
キャパシタ電極PC10は、ビアV10によって、誘電体層LY2に配置された平板電極PL12に接続される。平板電極PL12は、略U字形状をした帯状の電極であり、一方の端部にビアV10が接続されている。平板電極PL12の中間付近には、ビアVG11が接続されている。ビアVG11は、誘電体層LY3に配置された接地電極PG2に接続されている。接地電極PG2は、ビアVG12,VG22によって、誘電体層LY8の接地電極PG1に接続されている。
【0038】
平板電極PL12における、ビアV10の接続点からビアVG11の接続点までの部分と、ビアV10とによって、
図2におけるインダクタL1が構成される。また、ビアVG11によって、
図2におけるインダクタL12が構成される。さらに、ビアVG12,VG22およびVG4,VG5によって、
図2におけるインダクタL6が構成される。
【0039】
平板電極PL12の他方端には、ビアV20が接続される。ビアV20は、誘電体層LY6に配置されたキャパシタ電極PC20に接続される。キャパシタ電極PC20は、誘電体層LY6において、キャパシタ電極PC10に隣接して配置される。キャパシタ電極PC20は、積層体110の積層方向から平面視した場合に、誘電体層LY8の接地電極PG1と重なっている。すなわち、キャパシタ電極PC20および接地電極PG1によって、
図2におけるキャパシタC2が構成される。
【0040】
ビアV20は、誘電体層LY5に配置されたキャパシタ電極PC12にも接続される。また、キャパシタ電極PC12は、ビアV21によってキャパシタ電極PC20に接続される。キャパシタ電極PC12は略Y字形状を有しており、第1端部にビアV20が接続され、第2端部にビアV21が接続されている。キャパシタ電極PC12の第3端部は、積層体110の積層方向から平面視した場合に、共振器RC1におけるキャパシタ電極PC10と重なっている。すなわち、キャパシタ電極PC12およびキャパシタ電極PC10によって、
図2におけるキャパシタC12が構成される。
【0041】
平板電極PL12における、ビアV20の接続点からビアVG11の接続点までの部分と、ビアV20とによって、
図2におけるインダクタL2が構成される。
【0042】
出力端子T2は、ビアV03およびビアV04によって、誘電体層LY7に配置されたキャパシタ電極PC02に接続される。ビアV03およびビアV04は、誘電体層LY9においてオフセットしている。
【0043】
共振器RC5のキャパシタ電極PC50は、誘電体層LY6に配置されている。キャパシタ電極PC50の一部は、積層体110の積層方向から平面視した場合に、誘電体層LY7のキャパシタ電極PC02と重なっている。キャパシタ電極PC50およびキャパシタ電極PC02によって、
図2におけるキャパシタC6が構成される。
【0044】
また、キャパシタ電極PC50の他の一部は、積層体110の積層方向から平面視した場合に、誘電体層LY8に配置された接地電極PG1と重なっている。すなわち、キャパシタ電極PC50および接地電極PG1によって、
図2におけるキャパシタC5が構成される。
【0045】
キャパシタ電極PC50は、ビアV50によって、誘電体層LY2に配置された平板電極PL45に接続される。平板電極PL45は、略U字形状をした帯状の電極であり、一方の端部にビアV50が接続されている。平板電極PL45の中間付近には、ビアVG21が接続されている。ビアVG21は、誘電体層LY3に配置された接地電極PG2に接続されている。
【0046】
平板電極PL45における、ビアV50の接続点からビアVG21の接続点までの部分と、ビアV50とによって、
図2におけるインダクタL5が構成される。また、ビアVG21によって、
図2におけるインダクタL45が構成される。
【0047】
平板電極PL45の他方端には、ビアV40が接続される。ビアV40は、誘電体層LY6に配置されたキャパシタ電極PC40に接続される。キャパシタ電極PC40は、誘電体層LY6において、キャパシタ電極PC50に隣接して配置される。キャパシタ電極PC40は、積層体110の積層方向から平面視した場合に、誘電体層LY8の接地電極PG1と重なっている。すなわち、キャパシタ電極PC40および接地電極PG1によって、
図2におけるキャパシタC4が構成される。
【0048】
ビアV40は、誘電体層LY5に配置されたキャパシタ電極PC45にも接続される。また、キャパシタ電極PC45は、ビアV41によってキャパシタ電極PC40に接続される。キャパシタ電極PC45は略Y字形状を有しており、第1端部にビアV40が接続され、第2端部にビアV41が接続されている。キャパシタ電極PC45の第3端部は、積層体110の積層方向から平面視した場合に、共振器RC5におけるキャパシタ電極PC50と重なっている。すなわち、キャパシタ電極PC45およびキャパシタ電極PC50によって、
図2におけるキャパシタC45が構成される。
【0049】
平板電極PL45における、ビアV40の接続点からビアVG21の接続点までの部分と、ビアV40とによって、
図2におけるインダクタL4が構成される。
【0050】
誘電体層LY6において、共振器RC2のキャパシタ電極PC20と共振器RC4のキャパシタ電極PC40との間に、キャパシタ電極PC30が配置される。キャパシタ電極PC30は、積層体110の積層方向から平面視した場合に、誘電体層LY8の接地電極PG1と重なっている。すなわち、キャパシタ電極PC30および接地電極PG1によって、
図2におけるキャパシタPC3が構成される。
【0051】
キャパシタ電極PC30は、ビアV30によって、誘電体層LY2に配置された平板電極PL30に接続される。平板電極PL30は、Y軸方向に延在する帯状の電極である。平板電極PL30の一方端にはビアV30が接続され、他方端にはビアVG3が接続される。ビアVG3は、誘電体層LY3の接地電極PG2に接続される。ビアV30,VG3および平板電極PL30によって、
図2におけるインダクタL3が構成される。
【0052】
ビアV30は、誘電体層LY4に配置されたキャパシタ電極PC31にも接続される。キャパシタ電極PC31は、略T字形状の平板電極である。積層体110の積層方向から平面視した場合に、キャパシタ電極PC31の一部は、誘電体層LY5のキャパシタ電極PC12と重なっている。すなわち、キャパシタ電極PC31およびキャパシタ電極PC12によって、
図2におけるキャパシタC23が構成される。また、積層体110の積層方向から平面視した場合に、キャパシタ電極PC31の他の一部は、誘電体層LY5のキャパシタ電極PC45と重なっている。すなわち、キャパシタ電極PC31およびキャパシタ電極PC45によって、
図2におけるキャパシタC45が構成される。
【0053】
誘電体層LY9には、X軸方向に延在する帯状のキャパシタ電極PC15が配置されている。積層体110の積層方向から平面視した場合に、キャパシタ電極PC15の一方端は共振器RC1のキャパシタ電極PC10と重なっており、キャパシタ電極PC15の他方端は共振器RC5のキャパシタ電極PC50と重なっている。すなわち、キャパシタ電極PC10,PC15,PC50によって、
図2におけるキャパシタC15が構成される。
【0054】
(結合電極の形状による減衰特性への影響)
図4で説明したように、フィルタ装置100においては、互いに隣接する共振器はキャパシタを介して容量結合している。共振器間を結合するキャパシタは、一方の共振器から延伸する平板電極と、他方の共振器においてLC並列共振器を構成するキャパシタ用の電極とを対向配置することによって実現される。
【0055】
このとき、一方の共振器から延伸する平板電極(以下、「結合電極」とも称する。)は、実際にはある長さを有しているため、所定のインダクタンス値を有するインダクタとしても機能する。そのため、キャパシタを構成する結合電極自体が分布定数のLC並列共振器となってしまい、当該結合電極の共振周波数付近において、意図しない減衰特性の低下が生じ得る。
【0056】
最近の通信装置においては、Wi-Fi、4Gおよび5Gなどの、互いに周波数帯域が異なる複数の通信規格に基づいた電波を用いて通信が行なわれる場合がある。このような場合に、フィルタ装置が対象とする通過帯域以外の周波数帯域(非通過帯域)における減衰特性が低下すると、当該非通過帯域の周波数帯域を通過帯域として用いる他の通信機器に対して悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、当該フィルタ装置が受信回路に用いられる場合においては、受信信号において、減衰特性が低下した周波数帯域に対応する信号がノイズとして現れるおそれがある。
【0057】
そこで、本実施の形態におけるフィルタ装置100においては、入力端子T1に最も近接して配置される共振器RC1と共振器RC2との間、および、出力端子T2に最も近接して配置される共振器RC5と共振器RC4との間に設けられるキャパシタについては、2つの並列経路を有する電極を結合電極として用いて当該キャパシタを構成する。このように、結合電極を並列構成とすることによって、結合電極の実質的なインダクタンス値を低減することができるので、単一経路の結合電極の場合に比べて、より高周波数側に結合電極の共振周波数を設定することができる。これによって、所定の周波数帯域における減衰特性の低下を抑制することができる。
【0058】
図5および
図6は、実施の形態のフィルタ装置100における結合電極の詳細構造を説明するための図である。
図5および
図6においては、共振器RC4と共振器RC5との間の結合電極に対応するキャパシタ電極PC45を例として説明する。
図5は、キャパシタ電極PC45の部分の拡大斜視図である。
図6は、キャパシタ電極PC45の部分の拡大平面図である。なお、共振器RC1と共振器RC2との間の結合電極に対応するキャパシタ電極PC12についても同様である。
【0059】
図5および
図6を参照して、キャパシタ電極PC45は、各々が帯状の電極P1,P2,P3を含む。電極P1,P2は略L字形状を有している。電極P1の第1端部は、
図5中のノードNAにおいて電極P2の第1端部に接続されている。電極P1の第2端部は、ビアV40を介してキャパシタ電極PC40に接続されている。電極P2の第2端部は、ビアV41を介してキャパシタ電極PC40に接続されている。電極P3の第1端部は、同じくノードNAに接続されている。なお、電極P3の第2端部は、開放端となっている。
【0060】
すなわち、ノードNAとキャパシタ電極PC40との間においては、
図6中の破線LN10に示されるような、電極P1の第1経路および電極P2の第2経路による環状構造が形成される。この環状構造によって、キャパシタ電極PC45のインダクタンス値が低減される。
【0061】
なお、キャパシタ電極PC45を構成する電極P1,P2,P3の形状は、必ずしも
図5および
図6の例のような細長い帯状には限られない。電極P1,P2については、キャパシタ電極PC40とともに環状構造が構成することができれば、より広い線路幅を有する矩形形状であってもよいし、信号伝達経路に沿って線路幅が変化するような形状であってもよい。また、電極P3についても、
図5および
図6のような矩形形状には限られず、途中で線路幅が変化するような形状であってもよいし、途中で屈曲した形状であってもよい。
【0062】
(フィルタ特性)
次に、
図7および
図8を用いて、本実施の形態のフィルタ装置100と、比較例のフィルタ装置100Xとの通過特性のシミュレーション結果について説明する。
【0063】
図7は、フィルタ装置100のキャパシタ電極PC45、および、比較例のフィルタ装置100Xにおけるキャパシタ電極PC45Xの形状を示す図である。
図7を参照して、キャパシタ電極PC45においては、上述のように、電極P1,P2によって環状構造が構成されている。それに対して、比較例のキャパシタ電極PC45Xは、単一の帯状電極で構成されている。
【0064】
ここで、キャパシタ電極PC45においては、電極P1の線路幅W1と電極P2の線路幅W2との和が、電極P3の線路幅W3と略同一となるようにすることが望ましい。このように設定することによって、製造時において、共振器RC5のキャパシタ電極PC50に対するキャパシタ電極PC45のX軸方向の位置ずれが生じた場合であっても、キャパシタ電極PC50とキャパシタ電極PC45とが重なる面積の変動を低減できる。そのため、位置ずれに伴う、共振器RC4と共振器RC5との間の容量結合の変動を抑制することができる。
【0065】
なお、上記の「略同一」とは±20%程度の誤差を許容するものである。言い換えれば、電極P1の線路幅W1と電極P2の線路幅W2との和は、電極P3の線路幅W3の0.8~1.2倍であることが望ましい。
【0066】
図8は、実施の形態および比較例のフィルタ装置におけるフィルタ特性を説明するための図である。
図8においては、横軸に周波数が示されており、縦軸には挿入損失が示されている。なお、
図8の例においては、フィルタ装置100の通過帯域は6GHz~7GHzであり、要求される非通過帯域(阻止帯域)の減衰特性は、0~4.5GHzおよび9.0GHz~35GHzにおいてa1[dB]である。
図8において、実線LN20が実施の形態のフィルタ装置100の場合を示しており、破線LN21が比較例のフィルタ装置100Xの場合を示している。
【0067】
図8を参照して、比較例の場合においては、結合電極の共振周波数が非通過帯域における24GHz付近に現れており、当該周波数およびその近傍において挿入損失が減少している。そのため、要求される減衰特性が達成されていない。
【0068】
それに対して、実施の形態のフィルタ装置100においては、結合電極の共振周波数が37GHz付近となっており、減衰特性が要求される非通過帯域の範囲外となっている。これにより、非通過帯域における減衰特性が要求されるレベルを満たしている。
【0069】
以上のように、複数の共振器を含むフィルタ装置において、隣接する共振器間を容量結合するための結合電極を用いて環状構造を形成し、結合電極の共振周波数をより高く設定することによって、非通過帯域における減衰特性の低下を抑制することができる。
【0070】
なお、上記のフィルタ装置100においては、結合電極であるキャパシタ電極と、当該結合電極に接続される共振器のキャパシタ電極によって環状構造が形成される構成について説明したが、結合電極単体で環状構造を形成し、ビアまたは配線パターンによって当該環状構造と共振器のキャパシタ電極とを接続するようにしてもよい。
【0071】
実施の形態のフィルタ装置100の配置においては、入力端子および出力端子に近い共振器における結合電極が比較的長くなる傾向にあることから、共振器RC1と共振器RC2との間の容量結合、および、共振器RC4と共振器RC5との間の容量結合に着目している。しかしながら、他の構造のフィルタ装置においては、これに代えてあるいは加えて、共振器RC2と共振器RC3との間の結合電極、および/または、共振器RC3と共振器RC4との間の結合電極に、実施の形態のような環状構造を有する構成を適用してもよい。
【0072】
なお、結合電極の環状構造の開口部内にビアが貫通していてもよい。
【0073】
実施の形態における「共振器RC1」および「共振器RC5」の各々は本開示における「第1共振器」に対応し、実施の形態における「共振器RC2」および「共振器RC4」の各々は本開示における「第2共振器」に対応する。実施の形態における「キャパシタ電極PC12」および「キャパシタ電極PC45」の各々は、本開示における「結合電極」に対応する。実施の形態における「キャパシタ電極PC10」および「キャパシタ電極PC50」の各々は本開示における「第1キャパシタ電極」に対応し、実施の形態における「キャパシタ電極PC20」および「キャパシタ電極PC40」の各々は本開示における「第2キャパシタ電極」に対応する。実施の形態における「キャパシタ電極PC01」および「キャパシタ電極PC02」は、本開示における「第3キャパシタ電極」および「第4キャパシタ電極」にそれぞれ対応する。実施の形態における「接地電極PG1」は、本開示における「接地電極」に対応する。実施の形態における「電極P1」、「電極P2」および「電極P3」は、本開示における「第1電極」、「第2電極」および「第3電極」にそれぞれ対応する。
【0074】
[変形例]
以下の
図9~
図13においては、共振器間の容量結合を形成するための結合電極の変形例について説明する。なお、
図9~
図13の各変形例においては、共振器RC4と共振器RC5との間の結合電極について説明するが、共振器RC1と共振器RC2との間の結合電極についても各変形例の構成を適用することができる。
【0075】
(変形例1)
変形例1においては、結合電極、および、当該結合電極に接続される共振器のキャパシタ電極が、同じ誘電体層に配置された構成について説明する。
【0076】
図9は、変形例1のフィルタ装置100Aの部分的な拡大斜視図である。
図9においては、上記の実施の形態で説明した
図5における、共振器RC4のキャパシタ電極PC40および結合電極であるキャパシタ電極PC45が、キャパシタ電極PC45Aに置き換わった構成となっている。
図9および後述する
図10~
図13において、
図5と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0077】
図9を参照して、キャパシタ電極PC45Aは、
図5におけるキャパシタ電極PC45の電極P1,P2,P3に加えて、キャパシタ電極PC40の部分に対応する電極P4をさらに含む。電極P4は、
図5の電極P1,P2においてビアV40,V41が接続されていた端部に接続されている。すなわち、電極P1,P2,P4によって環状構造が構成されている。キャパシタ電極PC45Aには、共振器RC4のビアV40が接続される。
【0078】
なお、説明を容易にするために、キャパシタ電極PC45Aの電極P1~P4を個別の要素として説明したが、実際には、電極P1~P4は同一の誘電体層に配置された一体構造の電極として形成される。
【0079】
このように、共振器間を容量結合するための結合電極と、当該結合電極が接続される共振器のキャパシタ電極とを、同一の誘電体層に配置した構成においても、当該結合電極およびキャパシタ電極で形成される電極を環状構造とすることによって、結合電極の共振周波数をより高く設定して、非通過帯域における減衰特性の低下を抑制することができる。
【0080】
(変形例2)
変形例2においては、結合電極における突出部(電極P3)が除かれた構成について説明する。
【0081】
図10は、変形例2のフィルタ装置100Bの部分的な拡大斜視図である。
図10においては、上記の実施の形態で説明した
図5におけるキャパシタ電極PC45が、キャパシタ電極PC45Bに置き換わった構成となっている。
【0082】
図10を参照して、キャパシタ電極PC45Bは、
図5のキャパシタ電極PC45におけるノードNAからX軸方向に突出した電極P3(
図6の破線部LN30)が除かれた構成となっている。言い換えれば、キャパシタ電極PC45Bは、電極P1,P2のみを含んでいる。
【0083】
このような構成においても、キャパシタ電極PC45Bの電極P1,P2と、共振器RC4のキャパシタ電極PC40とによって環状構造が形成されるため、結合電極の共振周波数をより高く設定して、非通過帯域における減衰特性の低下を抑制することができる。
【0084】
なお、キャパシタ電極PC45Bは、キャパシタ電極PC45と比べると、共振器RC5のキャパシタ電極PC50と重なる面積が少ないため、容量結合の結合度が
図5の場合よりもやや弱くなる可能性がある。そのため、変形例2の構成は、要求される容量結合の結合度が比較的低い場合に採用することができる。あるいは、電極P1,P2の線路幅を広くすることによって、キャパシタ電極PC45と同等の結合度を確保するようにしてもよい。
【0085】
(変形例3)
変形例3においては、結合電極と、当該結合電極が接続される共振器のキャパシタ電極の積層方向における配置順が異なる構成について説明する。
【0086】
図11は、変形例3のフィルタ装置100Cの部分的な拡大斜視図である。
図11においては、共振器RC4のキャパシタ電極PC40が、結合電極であるキャパシタ電極PC45よりも上面111側に配置された構成となっている。言い換えれば、キャパシタ電極PC45は、キャパシタ電極PC40と接地電極PG1との間の誘電体層に配置されている。
【0087】
このような配置とすることによって、
図5の場合に比べて、キャパシタ電極PC45と接地電極PG1との積層方向の距離を短くできるため、共振器RC4と共振器RC5との間の容量結合の結合度合いを強くすることができる。そして、キャパシタ電極PC45とキャパシタ電極PC40とによって環状構造が形成されるため、非通過帯域における減衰特性の低下を抑制することができる。
【0088】
(変形例4)
変形例4においては、結合電極が複数の誘電体層に配置された電極によって形成される構成について説明する。
【0089】
図12は、変形例4のフィルタ装置100Dの部分的な拡大斜視図である。
図12においては、
図11におけるキャパシタ電極PC45が、キャパシタ電極PC45Dに置き換わった構成となっている。
【0090】
キャパシタ電極PC45Dは、同一の誘電体層に配置された電極P1D,P2Dと、電極P1D,P2Dよりも上面111側の誘電体層に配置された電極P3Dと、電極P1D,P2Dおよび電極P3Dを接続するためのビアV45とを含む。言い換えれば、キャパシタ電極PC45Dは、キャパシタ電極PC45における突出部(電極P3)が電極P1,P2とは異なる誘電体層に配置され、ノードNAにおいてビアV45によって電極P1,P2と接続された構成に対応する。
【0091】
このような構成においても、電極P1D,P2Dと共振器RC4のキャパシタ電極PC40とによって環状構造が形成されるため、非通過帯域における減衰特性の低下を抑制することができる。
【0092】
なお、
図12の例においては、突出部の電極P3Dが電極P1D,P2Dよりも上面111側の誘電体層に配置されているが、突出部の電極P3Dが電極P1D,P2Dよりも接地電極PG1側の誘電体層に配置された構成であってもよい。
【0093】
(変形例5)
変形例5においては、結合電極と、当該結合電極とキャパシタを形成するキャパシタ電極との積層方向の配置が異なった構成について説明する。
【0094】
図13は、変形例5のフィルタ装置100Eの部分的な拡大斜視図である。
図13においては、
図11における共振器RC5のキャパシタ電極PC50が、結合電極であるキャパシタ電極PC45よりも上面111側に配置された構成となっている。言い換えれば、キャパシタ電極PC45は、共振器RC5のキャパシタ電極PC50と接地電極PG1との間の誘電体層に配置されている。
【0095】
このような配置においても、キャパシタ電極PC45の電極P1,P2と、共振器RC4のキャパシタ電極PC40とによって環状構造が形成されるため、非通過帯域における減衰特性の低下を抑制することができる。
【0096】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0097】
(第1項)一態様に係るフィルタ装置は、複数の誘電体層が積層された積層体と、入力端子、出力端子および接地端子と、接地端子に接続された接地電極と、第1共振器および第2共振器と、結合電極とを備える。積層体は、第1面および第2面を有する。入力端子、出力端子および接地端子は、積層体の第2面に配置されている。接地電極は、積層体の内部に配置されている。第1共振器および第2共振器は、第1面と接地電極との間の層において、入力端子から出力端子までの信号伝達経路に配置されている。結合電極は、容量結合を介して第1共振器と第2共振器とを結合する。第1共振器および第2共振器は、接地電極との間でキャパシタを構成する第1キャパシタ電極および第2キャパシタ電極をそれぞれ含む。結合電極は、第2キャパシタ電極に接続されており、かつ、第1キャパシタ電極との間でキャパシタを構成する。結合電極は、各々が第1端部および第2端部を有する第1電極および第2電極を含む。第1電極の第1端部と第2電極の第1端部とが接続される。第1電極の第2端部および第2電極の第2端部は、第2キャパシタ電極に接続されている。
【0098】
(第2項)第1項に記載のフィルタ装置において、第1電極および第2電極によって環状構造が構成される。
【0099】
(第3項)第1項に記載のフィルタ装置において、第1電極、第2電極および第2キャパシタ電極によって環状構造が構成される。
【0100】
(第4項)第2または3項に記載のフィルタ装置において、上記環状構造は、同一の誘電体層に配置されている。
【0101】
(第5項)第2または3項に記載のフィルタ装置において、上記環状構造は、複数の誘電体層にわたって配置されている。
【0102】
(第6項)第5項に記載のフィルタ装置において、結合電極は、第2キャパシタ電極と接地電極との間の誘電体層に配置されている。
【0103】
(第7項)第5項に記載のフィルタ装置において、第2キャパシタ電極は、結合電極と接地電極との間の誘電体層に配置されている。
【0104】
(第8項)第1項~第7項のいずれか1項に記載のフィルタ装置において、結合電極は、第1電極および第2電極の第1端部から突出した第3電極をさらに含む。
【0105】
(第9項)第8項に記載のフィルタ装置において、第1電極および第2電極は、第3電極と接地電極との間の誘電体層に配置されている。
【0106】
(第10項)第8または9項に記載のフィルタ装置において、第1電極の線路幅と第2電極の線路幅との和は、第3電極の線路幅の0.8項~第1.2倍である。
【0107】
(第11項)第1項~第10項のいずれか1項に記載のフィルタ装置において、第1共振器は、信号伝達経路において入力端子あるいは出力端子に最も近く配置された共振器である。
【0108】
(第12項)第11項に記載のフィルタ装置は、入力端子に接続され、第1キャパシタ電極との間でキャパシタを構成する第3キャパシタ電極をさらに備える。
【0109】
(第13項)第11項に記載のフィルタ装置は、出力端子に接続され、第1キャパシタ電極との間でキャパシタを構成する第4キャパシタ電極をさらに備える。
【0110】
(第14項)第1項~第10項のいずれか1項に記載のフィルタ装置は、信号伝達経路において、入力端子と第1共振器との間に配置された第3共振器をさらに備える。
【0111】
(第15項)第14項に記載のフィルタ装置は、信号伝達経路において、出力端子と第2共振器との間に設けられた第4共振器をさらに備える。
【0112】
(第16項)第1項~第10項のいずれか1項に記載のフィルタ装置は、信号伝達経路において、出力端子と第2共振器との間に設けられた第4共振器をさらに備える。
【0113】
(第17項)一態様に係る高周波フロントエンド回路は、第1項~第16項のいずれか1項に記載のフィルタ装置を備えている。
【0114】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0115】
10 通信装置、12 アンテナ、20 高周波フロントエンド回路、22,28 バンドパスフィルタ、C0~C6,C12,C15,C23,C34,C45 キャパシタ、24 増幅器、26 減衰器、30 ミキサ、32 局部発振器、40 D/Aコンバータ、50 RF回路、100,100A~100E,100X フィルタ装置、110 積層体、111 上面、112 下面、PC01,PC02,PC10,PC12,PC15,PC20,PC30,PC31,PC40,PC45,PC45A,PC45B,PC45D,PC45X,PC50 キャパシタ電極、DM 方向性マーク、GND 接地端子、L1~L6,L12,L45 インダクタ、Y1~LY10 誘電体層、N1A~N5A,N2B~N4B 接続ノード、NA ノード、P1~P4,P1D~P3D 電極、PG1,PG2 接地電極、PL12,PL30,PL45 平板電極、RC1~RC5 共振器、T1 入力端子、T2 出力端子、V01~V04,V10~V50,V21,V41,V45,VG3~VG5,VG11,VG12,VG21,VG22 ビア。