(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001032
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】マスト細胞媒介性炎症性疾患の治療法及び診断法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20231226BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20231226BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20231226BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231226BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231226BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20231226BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20231226BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20231226BHJP
C12Q 1/6883 20180101ALN20231226BHJP
C07K 16/42 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P11/06
A61P17/04
A61P37/02
A61P43/00 105
A61P11/00
A61P1/04
A61K39/395 U
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6883 Z
C07K16/42
【審査請求】有
【請求項の数】88
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023149136
(22)【出願日】2023-09-14
(62)【分割の表示】P 2020540485の分割
【原出願日】2019-02-08
(31)【優先権主張番号】62/628,564
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チョイ, デーヴィッド エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ステイトン, トレイシー リン
(72)【発明者】
【氏名】ヤスパン, ブライアン ルイス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者が治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者のための治療を選択する方法、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の応答を評価する方法、及びマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の応答をモニタリングする方法を提供する。
【解決手段】(i)基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含む遺伝子型、または(ii)患者の試料においてトリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベル、を有すると同定された、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法であって、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者に、IgEアンタゴニストを含む治療を施すことを含む、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である活性トリプターゼ対立遺伝子数を含む遺伝子型、または(ii)前記患者の試料において基準レベルのトリプターゼ以上であるトリプターゼの発現レベル、を有すると同定された、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法であって、前記方法が、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者にトリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療を施すことを含む、前記方法。
【請求項2】
マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者が、トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法であって、前記方法は、
(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、前記患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定することと、
(b)前記患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数に基づいて、トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療に応答する可能性が高いとして前記患者を同定することと、を含み、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上の活性トリプターゼ対立遺伝子数は、前記患者が前記治療に応答する可能性が高いことを示す、前記方法。
【請求項3】
マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者が、トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法であって、前記方法は、
(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、トリプターゼの発現レベルを決定することと、
(b)前記患者の前記試料におけるトリプターゼの発現レベルに基づいて、トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療に応答する可能性が高いとして前記患者を同定することと、を含み、前記試料において基準レベルのトリプターゼ以上であるトリプターゼの発現レベルは、前記患者が前記治療に応答する可能性が高いことを示す、前記方法。
【請求項4】
前記患者に前記治療を施すことをさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、前記患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の前記2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤が、単剤療法として前記患者に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、前記患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である前記2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、追加のTH2経路阻害剤を前記患者に投与することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(i)基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含む遺伝子型、または(ii)前記患者の試料においてトリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベル、を有すると同定された、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法であって、前記方法が、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者に、IgEアンタゴニストまたはFcイプシロン受容体(FcεR)アンタゴニストを含む治療を施すことを含む、前記方法。
【請求項10】
マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者がIgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法であって、前記方法は、
(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、前記患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定することと、
(b)前記患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数に基づいて、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いとして前記患者を同定することと、を含み、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数は、前記患者が前記治療に応答する可能性が高いことを示す、前記方法。
【請求項11】
マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者がIgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法であって、前記方法は、
(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、トリプターゼの発現レベルを決定することと、
(b)前記患者の前記試料のトリプターゼの発現レベルに基づいて、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いとして前記患者を同定することと、を含み、前記患者の前記試料においてトリプターゼの基準レベル未満であるトリプターゼの発現レベルは、前記患者が前記治療に応答する可能性が高いことを示す、前記方法。
【請求項12】
前記患者に前記治療を施すことをさらに含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、前記患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である前記2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、追加のTH2経路阻害剤を前記患者に投与することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の治療を選択する方法であって、前記方法は、
(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、前記患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定することと、
(b)前記患者のために、
(i)前記患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数が基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である場合、トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療、または、
(ii)前記患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数が基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の場合、IgEアンタゴニストもしくはFcεRアンタゴニストを含む治療、
を選択することと、を含む、前記方法。
【請求項16】
マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の治療を選択する方法であって、前記方法は、
(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、トリプターゼの発現レベルを決定することと、
(b)前記患者のために、
(i)前記患者の前記試料におけるトリプターゼの発現レベルがトリプターゼの基準レベル以上である場合、トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療、または、
(ii)前記患者の前記試料におけるトリプターゼの発現レベルがトリプターゼの基準レベル未満である場合、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療、
を選択することと、を含む、前記方法。
【請求項17】
前記患者に(b)に従って選択した前記治療を施すことをさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記患者が、前記患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の前記2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記薬剤が、単剤療法として前記患者に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が、前記患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である前記2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されており、前記方法が、TH2経路阻害剤を含む併用療法を選択することをさらに含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、TH2経路阻害剤を前記患者に投与することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の、トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療による処置に対する応答を評価する方法であって、前記方法は、
(a)前記患者への、トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療の適用中または適用後の時点でのマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料におけるトリプターゼの発現レベルを決定することと、
(b)前記試料中のトリプターゼの発現レベルとトリプターゼの基準レベルとの比較に基づいて、前記処置を維持、調整、または停止することとを含み、
前記基準レベルと比較した前記患者の前記試料中のトリプターゼの発現レベルの変化は、前記治療による処置への応答を示す、前記方法。
【請求項23】
前記変化がトリプターゼの発現レベルの増加であり、前記処置が維持される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記変化がトリプターゼの発現レベルの低下であり、前記処置が調整または停止される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療により処置されたマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の応答をモニタリングする方法であって、前記方法は、
(a)前記患者への、トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療の適用中または適用後の時点での前記患者の試料におけるトリプターゼの発現レベルを決定することと、
(b)前記患者の前記試料におけるトリプターゼの発現レベルをトリプターゼの基準レベルと比較することにより、前記治療による処置を受けている前記患者の応答をモニタリングすることとを含む、前記方法。
【請求項26】
前記変化がトリプターゼのレベルの増加であり、前記処置が維持される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記変化がトリプターゼの発現レベルの低下であり、前記処置が調整または停止される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記活性トリプターゼ対立遺伝子数が、前記患者のゲノムのTPSAB1及びTPSB2遺伝子座のシークエンシングによって決定される、請求項1、2、4~10、12~15、または17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記シークエンシングが、サンガーシークエンシングまたは超並列シークエンシングである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記TPSAB1遺伝子座が、(i)5’-CTG GTG TGC AAG GTG AAT GG-3’(配列番号31)のヌクレオチド配列を含む第1のフォワードプライマー及び5’-AGG TCC AGC ACT CAG GAG GA-3’(配列番号32)のヌクレオチド配列を含む第1のリバースプライマーの存在下で前記対象の核酸を増幅してTPSAB1アンプリコンを形成することと、(ii)前記TPSAB1アンプリコンをシークエンシングすることと、を含む方法によってシークエンシングされる、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記TPSAB1アンプリコンのシークエンシングには、前記第1のフォワードプライマー及び前記第1のリバースプライマーの使用が含まれる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記TPSB2遺伝子座が、(i)5’-GCA GGT GAG CCT GAG AGT CC-3’(配列番号33)のヌクレオチド配列を含む第2のフォワードプライマー及び5’-GGG ACC TTC ACC TGC TTC AG-3’(配列番号34)のヌクレオチド配列を含む第2のリバースプライマーの存在下で前記対象の核酸を増幅してTPSB2アンプリコンを形成することと、(ii)前記TPSB2アンプリコンをシークエンシングすることとを含む方法によってシークエンシングされる、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記TPSB2アンプリコンのシークエンシングが、前記第2のフォワードプライマーを使用することと、5’-CAG CCA GTG ACC CAG CAC-3’(配列番号35)のヌクレオチド配列を含むリバースプライマーをシークエンシングすることと、を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記活性トリプターゼ対立遺伝子数が、以下の式:4-前記患者の遺伝子型におけるトリプターゼα及びトリプターゼβIIIフレームシフト(βIIIFS)対立遺伝子の数の合計で決定される、請求項1、2、4~10、12~15、17~21、または28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
トリプターゼアルファが、前記ヌクレオチド配列CTGCAGGCGGGCGTGGTCAGCTGGG[G/A]CGAGGGCTGTGCCCAGCCCAACCGG(配列番号36)を含むTPSAB1において、c733 G>A SNPを検出することにより検出され、前記c733 G>A SNPにおけるAの存在が、トリプターゼアルファを示す、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
トリプターゼベータIIIFSが、ヌクレオチド配列CACACGGTCACCCTGCCCCCTGCCTCAGAGACCTTCCCCCCC(配列番号37)を含むTPSB2でのc980_981insC変異を検出することにより検出される、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記基準活性トリプターゼ対立遺伝子数が、前記マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の群において決定される、請求項1、2、4~10、12~15、17~21、または28~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記基準活性トリプターゼ対立遺伝子数が3である、請求項1、2、4~10、12~15、17~21、または28~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記患者が、3または4の活性トリプターゼ対立遺伝子数を有する、請求項1、2、4~8、15、18~21、または28~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記患者が、0、1、または2の活性トリプターゼ対立遺伝子数を有する、請求項9、10、12、15、18~21、または28~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記トリプターゼが、トリプターゼベータI、トリプターゼベータII、トリプターゼベータIII、トリプターゼアルファI、またはこれらの組み合わせである、請求項1、3~9、11~14、または16~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記トリプターゼの発現レベルが、タンパク質の発現レベルである、請求項1、3~9、11~14、16~27、または41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記トリプターゼのタンパク質発現レベルが、活性トリプターゼの発現レベルである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記トリプターゼのタンパク質発現レベルが、総トリプターゼの発現レベルである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記タンパク質発現レベルが、免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウェスタンブロット、または質量分析法を使用して測定される、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記トリプターゼの発現レベルが、mRNAの発現レベルである、請求項1、3~9、11~14、16~27、または41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記mRNA発現レベルが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法またはマイクロアレイチップを使用して測定される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記PCR法がqPCRである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記トリプターゼの基準レベルが、前記マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する個体の群において決定されたレベルである、請求項1、3~9、11~14、16~27、または41~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記トリプターゼの基準レベルが、中央値である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記患者の前記試料が、血液試料、組織試料、痰試料、細気管支洗浄液試料、粘膜被覆液(MLF)試料、気管支吸着試料、及び経鼻吸収試料からなる群から選択される、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記血液試料が、全血試料、血清試料、血漿試料、またはこれらの組み合わせである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記血液試料が、血清試料または血漿試料である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記薬剤がトリプターゼアンタゴニストである、請求項1~8または15~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記トリプターゼアンタゴニストが、トリプターゼアルファアンタゴニストまたはトリプターゼベータアンタゴニストである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記トリプターゼアンタゴニストが、トリプターゼベータアンタゴニストである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記トリプターゼベータアンタゴニストが、抗トリプターゼベータ抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
前記抗体が、次の6つの超可変領域(HVR):
(a)DYGMVのアミノ酸配列(配列番号1)を含むHVR-H1、
(b)FISSGSSTVYYADTMKGのアミノ酸配列(配列番号2)を含むHVR-H2、
(c)RNYDDWYFDVのアミノ酸配列(配列番号3)を含むHVR-H3、
(d)SASSSVTYMYのアミノ酸配列(配列番号4)を含むHVR-L1、
(e)RTSDLASのアミノ酸配列(配列番号5)を含むHVR-L2、及び
(f)QHYHSYPLTのアミノ酸配列(配列番号6)を含むHVR-L3、で構成されている、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記抗体が、(a)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメイン、を含む請求項57または58に記載の方法。
【請求項60】
前記VHドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記VLドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記VHドメインが配列番号7のアミノ酸配列を含み、前記VLドメインが配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記抗体が、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖、及び(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項57~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記抗体が、(a)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖、及び(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項57~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記抗体が、次の6つのHVR:
(a)GYAITのアミノ酸配列(配列番号12)を含むHVR-H1、
(b)GISSAATTFYSSWAKSのアミノ酸配列(配列番号13)を含むHVR-H2、
(c)DPRGYGAALDRLDLのアミノ酸配列(配列番号14)を含むHVR-H3、
(d)QSIKSVYNNRLGのアミノ酸配列(配列番号15)を含むHVR-L1、
(e)ETSILTSのアミノ酸配列(配列番号16)を含むHVR-L2、及び、
(f)AGGFDRSGDTTのアミノ酸配列(配列番号17)を含むHVR-L3で構成されている、請求項57に記載の方法。
【請求項66】
前記抗体が、(a)配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメイン、を含む請求項57または65に記載の方法。
【請求項67】
前記VHドメインが、配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記VLドメインが、配列番号19のアミノ酸配列を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記VHドメインが、配列番号18のアミノ酸配列を含み、前記VLドメインが、配列番号19のアミノ酸配列を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記抗体が、(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖及び(b)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項57または65~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記抗体が、(a)配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖及び(b)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項57または65~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記治療がIgEアンタゴニストをさらに含む、請求項54~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記薬剤がFcεRアンタゴニストである、請求項9~21または28~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記FcεRアンタゴニストが、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記BTK阻害剤が、GDC-0853、アカラブルチニブ、GS-4059、スペブルチニブ、BGB-3111、またはHM71224である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記薬剤がIgE+B細胞枯渇抗体である、請求項1~8または15~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記IgE+B細胞枯渇抗体が抗M1’ドメイン抗体である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記薬剤がマスト細胞または好塩基球枯渇抗体である、請求項1~8または15~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記薬剤がPAR2アンタゴニストである、請求項1~8または15~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記薬剤がIgEアンタゴニストである、請求項9~21または28~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記IgEアンタゴニストが抗IgE抗体である、請求項72または80に記載の方法。
【請求項82】
前記抗IgE抗体が、IgE遮断抗体及び/またはIgE枯渇抗体である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記抗IgE抗体が、次の6つのHVR:
(a)GYSWNのアミノ酸配列(配列番号40)を含むHVR-H1、
(b)SITYDGSTNYNPSVKGのアミノ酸配列(配列番号41)を含むHVR-H2、
(c)GSHYFGHWHFAVのアミノ酸配列(配列番号42)を含むHVR-H3、
(d)RASQSVDYDGDSYMNのアミノ酸配列(配列番号43)を含むHVR-L1、
(e)AASYLESのアミノ酸配列(配列番号44)を含むHVR-L2、及び、
(f)QQSHEDPYTのアミノ酸配列(配列番号45)を含むHVR-L3、で構成されている、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記抗IgE抗体が、(a)配列番号38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号39のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメイン、を含む請求項82または83に記載の方法。
【請求項85】
前記VHドメインが、配列番号38のアミノ酸配列を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記VLドメインが、配列番号39のアミノ酸配列を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記VHドメインが、配列番号38のアミノ酸配列を含み、前記VLドメインが、配列番号39のアミノ酸配列を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記抗IgE抗体が、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))またはXmAb7195である、請求項81~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記抗IgE抗体が、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記2型バイオマーカーが、TH2細胞関連サイトカイン、ペリオスチン、好酸球数、好酸球のシグネチャー、FeNO、またはIgEである、請求項5~8、13、14、18~21、または28~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記TH2細胞関連サイトカインが、IL-13、IL-4、IL-9、またはIL-5である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記TH2経路阻害剤が、インターロイキン2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、ヤーヌスキナーゼ1(JAK1)、GATA結合タンパク質3(GATA3)、IL-9、IL-5、IL-13、IL-4、IL-33、OX40L、TSLP、IL-25、IL-9受容体、IL-5受容体、IL-4受容体アルファ、IL-13受容体アルファ1、IL-13受容体アルファ2、OX40、TSLP-R、IL-7Rアルファ、IL-17RB、ST2、CCR3、CCR4、CRTH2、Flap、Sykキナーゼ、CCR4、TLR9、またはGM-CSFを阻害する、請求項5~8、13、14、18~21、または28~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
追加の治療薬を前記患者に投与することをさらに含む、請求項1、4~9、12~14、または17~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記追加の治療薬が、コルチコステロイド、IL-33軸結合アンタゴニスト、TRPA1アンタゴニスト、気管支拡張剤または喘息症状抑制剤、免疫調節剤、チロシンキナーゼ阻害剤、及びホスホジエステラーゼ阻害剤からなる群から選択される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記追加の治療薬が、コルチコステロイドである、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記コルチコステロイドが、吸入コルチコステロイドである、請求項94または95に記載の方法。
【請求項97】
前記マスト細胞媒介性炎症性疾患が、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹(CSU)、全身性アナフィラキシー、マスト細胞症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、及び好酸球性食道炎からなる群から選択される、請求項1~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記マスト細胞媒介性炎症性疾患が喘息である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記喘息が、中等度から重度の喘息である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記喘息が、コルチコステロイドで制御されていない、請求項97~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記喘息が、TH2-high喘息またはTH2-low喘息である、請求項97~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療に応答する可能性が高いマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を同定するためのキットであって、前記キットが、
(a)前記患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定するため、または前記患者の試料中のトリプターゼの発現レベルを決定するための試薬と、任意で、
(b)トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療に応答する可能性が高いマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を同定するために前記試薬を使用するための指示書と、を含む、前記キット。
【請求項103】
前記薬剤がトリプターゼアンタゴニストであり、前記治療がIgEアンタゴニストをさらに含む、請求項102に記載のキット。
【請求項104】
IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を同定するためのキットであって、前記キットが、
(a)前記患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定するため、または前記患者の試料中のトリプターゼの発現レベルを決定するための試薬と、任意で、
(b)IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を同定するために前記試薬を使用するための指示書と、を含む、前記キット。
【請求項105】
前記患者の試料において2型バイオマーカーのレベルを決定するための試薬をさらに含む、請求項102~104のいずれか一項に記載のキット。
【請求項106】
マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法において使用するための、トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤であって、
(i)前記患者の前記遺伝子型が、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または
(ii)前記患者の試料が、基準レベルのトリプターゼ以上のトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている、前記薬剤。
【請求項107】
前記患者が、前記患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の前記2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、前記薬剤が単剤療法として使用するためのものである、請求項106に記載の使用される薬剤。
【請求項108】
前記患者が、前記患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上の前記2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されており、前記薬剤がTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項106に記載の使用される薬剤。
【請求項109】
マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法において使用するための、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストから選択される薬剤であって、
(i)前記患者の前記遺伝子型が、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または
(ii)前記患者の試料が、トリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている、前記薬剤。
【請求項110】
前記患者が前記患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上の前記2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、前記IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストが追加のTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項109に記載の使用される薬剤。
【請求項111】
前記活性トリプターゼ対立遺伝子数が、前記患者のゲノムの前記TPSAB1及びTPSB2遺伝子座のシークエンシングによって決定される、請求項106~110のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項112】
前記シークエンシングが、サンガーシークエンシングまたは超並列シークエンシングである、請求項111に記載の使用される薬剤。
【請求項113】
前記TPSAB1遺伝子座が、(i)5’-CTG GTG TGC AAG GTG AAT GG-3’(配列番号31)のヌクレオチド配列を含む第1のフォワードプライマー及び5’-AGG TCC AGC ACT CAG GAG GA-3’(配列番号32)のヌクレオチド配列を含む第1のリバースプライマーの存在下で前記対象の核酸を増幅してTPSB1アンプリコンを形成することと、(ii)前記TPSAB1アンプリコンをシークエンシングすることと、を含む方法によってシークエンシングされる、請求項111または112に記載の使用される薬剤。
【請求項114】
前記TPSAB1アンプリコンのシークエンシングには、前記第1のフォワードプライマー及び前記第1のリバースプライマーの使用が含まれる、請求項113に記載の使用される薬剤。
【請求項115】
前記TPSAB2遺伝子座が、(i)5’-GCA GGT GAG CCT GAG AGT CC-3’(配列番号33)のヌクレオチド配列を含む第2のフォワードプライマー及び5’-GGG ACC TTC ACC TGC TTC AG-3’(配列番号34)のヌクレオチド配列を含む第2のリバースプライマーの存在下で前記対象の核酸を増幅してTPSB2アンプリコンを形成することと、(ii)前記TPSAB2アンプリコンをシークエンシングすることと、を含む方法によってシークエンシングされる、請求項111~114のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項116】
前記TPSB2アンプリコンのシークエンシングが、前記第2のフォワードプライマーを使用することと、5’-CAG CCA GTG ACC CAG CAC-3’(配列番号35)のヌクレオチド配列を含むリバースプライマーをシークエンシングすることと、を含む、請求項115に記載の使用される薬剤。
【請求項117】
前記活性トリプターゼ対立遺伝子数が、以下の式:4-前記患者の遺伝子型におけるトリプターゼα及びトリプターゼβIIIフレームシフト(βIIIFS)対立遺伝子の数の合計で決定される、請求項106~116のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項118】
トリプターゼアルファが、前記ヌクレオチド配列CTGCAGGCGGGCGTGGTCAGCTGGG[G/A]CGAGGGCTGTGCCCAGCCCAACCGG(配列番号36)を含むTPSAB1において、c733 G>A SNPを検出することにより検出され、前記c733 G>A SNPにおけるAの存在が、トリプターゼアルファを示す、請求項117に記載の使用される薬剤。
【請求項119】
トリプターゼベータIIIFSが、ヌクレオチド配列CACACGGTCACCCTGCCCCCTGCCTCAGAGACCTTCCCCCCC(配列番号37)を含むTPSB2でのc980_981insC変異を検出することにより検出される、請求項117または118に記載の使用される薬剤。
【請求項120】
前記基準活性トリプターゼ対立遺伝子数が、前記マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の群において決定される、請求項106~119のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項121】
前記基準活性トリプターゼ対立遺伝子数が3である、請求項106~120のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項122】
前記患者が、3または4の活性トリプターゼ対立遺伝子数を有する、請求項106~121のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項123】
前記患者が、0、1、または2の活性トリプターゼ対立遺伝子数を有する、請求項106~121のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項124】
前記トリプターゼが、トリプターゼベータI、トリプターゼベータII、トリプターゼベータIII、トリプターゼアルファI、またはこれらの組み合わせである、請求項106~123のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項125】
前記トリプターゼの発現レベルが、タンパク質の発現レベルである、請求項106~124のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項126】
前記トリプターゼのタンパク質発現レベルが、活性トリプターゼの発現レベルである、請求項125に記載の使用される薬剤。
【請求項127】
前記トリプターゼのタンパク質発現レベルが、総トリプターゼの発現レベルである、請求項125に記載の使用される薬剤。
【請求項128】
前記タンパク質発現レベルが、免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウェスタンブロット、または質量分析法を使用して測定される、請求項125~127のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項129】
前記トリプターゼの発現レベルが、mRNAの発現レベルである、請求項106~124のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項130】
前記mRNA発現レベルが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法またはマイクロアレイチップを使用して測定される、請求項129に記載の使用される薬剤。
【請求項131】
前記PCR法がqPCRである、請求項130に記載の使用される薬剤。
【請求項132】
前記トリプターゼの基準レベルが、前記マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する個体の群において決定されたレベルである、請求項106~131のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項133】
前記トリプターゼの基準レベルが中央値である、請求項132に記載の使用される薬剤。
【請求項134】
前記患者の前記試料が、血液試料、組織試料、痰試料、細気管支洗浄液試料、粘膜被覆液(MLF)試料、気管支吸着試料、及び経鼻吸収試料からなる群から選択される、請求項106~133のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項135】
前記血液試料が、全血試料、血清試料、血漿試料、またはこれらの組み合わせである、請求項134に記載の使用される薬剤。
【請求項136】
前記血液試料が、血清試料または血漿試料である、請求項135に記載の使用される薬剤。
【請求項137】
前記薬剤がトリプターゼアンタゴニストである、請求項106~108または111~136のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項138】
前記トリプターゼアンタゴニストが、トリプターゼアルファアンタゴニストまたはトリプターゼベータアンタゴニストである、請求項137に記載の使用される薬剤。
【請求項139】
前記トリプターゼアンタゴニストが、トリプターゼベータアンタゴニストである、請求項138に記載の使用される薬剤。
【請求項140】
前記トリプターゼベータアンタゴニストが、抗トリプターゼベータ抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項138または139に記載の使用される薬剤。
【請求項141】
前記抗体が、次の6つの超可変領域(HVR):
(a)DYGMVのアミノ酸配列(配列番号1)を含むHVR-H1、
(b)FISSGSSTVYYADTMKGのアミノ酸配列(配列番号2)を含むHVR-H2、
(c)RNYDDWYFDVのアミノ酸配列(配列番号3)を含むHVR-H3、
(d)SASSSVTYMYのアミノ酸配列(配列番号4)を含むHVR-L1、
(e)RTSDLASのアミノ酸配列(配列番号5)を含むHVR-L2、及び
(f)QHYHSYPLTのアミノ酸配列(配列番号6)を含むHVR-L3で構成されている、請求項140に記載の使用される薬剤。
【請求項142】
前記抗体が、(a)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメイン、を含む請求項140または141に記載の使用される薬剤。
【請求項143】
前記VHドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項142に記載の使用される薬剤。
【請求項144】
前記VLドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項142に記載の使用される薬剤。
【請求項145】
前記VHドメインが配列番号7のアミノ酸配列を含み、前記VLドメインが配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項142に記載の使用される薬剤。
【請求項146】
前記抗体が、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖、及び(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項140~145のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項147】
前記抗体が、(a)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖、及び(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項140~145のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項148】
前記抗体が、次の6つのHVR:
(a)GYAITのアミノ酸配列(配列番号12)を含むHVR-H1、
(b)GISSAATTFYSSWAKSのアミノ酸配列(配列番号13)を含むHVR-H2、
(c)DPRGYGAALDRLDLのアミノ酸配列(配列番号14)を含むHVR-H3、
(d)QSIKSVYNNRLGのアミノ酸配列(配列番号15)を含むHVR-L1、
(e)ETSILTSのアミノ酸配列(配列番号16)を含むHVR-L2、及び、
(f)AGGFDRSGDTTのアミノ酸配列(配列番号17)を含むHVR-L3で構成されている、請求項140に記載の使用される薬剤。
【請求項149】
前記抗体が、(a)配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメイン、を含む請求項140または148に記載の使用される薬剤。
【請求項150】
前記VHドメインが、配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項149に記載の使用される薬剤。
【請求項151】
前記VLドメインが、配列番号19のアミノ酸配列を含む、請求項149に記載の使用される薬剤。
【請求項152】
前記VHドメインが、配列番号18のアミノ酸配列を含み、前記VLドメインが、配列番号19のアミノ酸配列を含む、請求項149に記載の使用される薬剤。
【請求項153】
前記抗体が、(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖及び(b)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項140または148~152のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項154】
前記抗体が、(a)配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖及び(b)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項140または148~152のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項155】
前記トリプターゼアンタゴニストが、IgEアンタゴニストと組み合わせて投与される、請求項137~154のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項156】
前記薬剤がFcεRアンタゴニストである、請求項109~136のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項157】
前記FcεRアンタゴニストが、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤である、請求項156に記載の使用される薬剤。
【請求項158】
前記BTK阻害剤が、GDC-0853、アカラブルチニブ、GS-4059、スペブルチニブ、BGB-3111、またはHM71224である、請求項157に記載の使用される薬剤。
【請求項159】
前記薬剤がIgE+B細胞枯渇抗体である、請求項106~108または111~136のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項160】
前記IgE+B細胞枯渇抗体が抗M1’ドメイン抗体である、請求項159に記載の使用される薬剤。
【請求項161】
前記薬剤がマスト細胞または好塩基球枯渇抗体である、請求項106~108または111~136のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項162】
前記薬剤がPAR2アンタゴニストである、請求項106~108または111~136のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項163】
前記薬剤がIgEアンタゴニストである、請求項109~136のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項164】
前記IgEアンタゴニストが抗IgE抗体である、請求項155または163に記載の使用される薬剤。
【請求項165】
前記抗IgE抗体が、IgE遮断抗体及び/またはIgE枯渇抗体である、請求項164に記載の使用される薬剤。
【請求項166】
前記抗IgE抗体が、次の6つのHVR:
(a)GYSWNのアミノ酸配列(配列番号40)を含むHVR-H1、
(b)SITYDGSTNYNPSVKGのアミノ酸配列(配列番号41)を含むHVR-H2、
(c)GSHYFGHWHFAVのアミノ酸配列(配列番号42)を含むHVR-H3、
(d)RASQSVDYDGDSYMNのアミノ酸配列(配列番号43)を含むHVR-L1、
(e)AASYLESのアミノ酸配列(配列番号44)を含むHVR-L2、及び、
(f)QQSHEDPYTのアミノ酸配列(配列番号45)を含むHVR-L3、で構成されている、請求項165に記載の使用される薬剤。
【請求項167】
前記抗IgE抗体が、(a)配列番号38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号39のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含む、請求項165または166に記載の使用される薬剤。
【請求項168】
前記VHドメインが、配列番号38のアミノ酸配列を含む、請求項167に記載の使用される薬剤。
【請求項169】
前記VLドメインが、配列番号39のアミノ酸配列を含む、請求項167に記載の使用される薬剤。
【請求項170】
前記VHドメインが、配列番号38のアミノ酸配列を含み、前記VLドメインが、配列番号39のアミノ酸配列を含む、請求項167に記載の使用される薬剤。
【請求項171】
前記抗IgE抗体が、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))またはXmAb7195である、請求項164~170のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項172】
前記抗IgE抗体が、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))である、請求項171に記載の使用される薬剤。
【請求項173】
前記2型バイオマーカーが、TH2細胞関連サイトカイン、ペリオスチン、好酸球数、好酸球のシグネチャー、FeNO、またはIgEである、請求項107、108、または110~172のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項174】
前記TH2細胞関連サイトカインが、IL-13、IL-4、IL-9、またはIL-5である、請求項173に記載の使用される薬剤。
【請求項175】
前記TH2経路阻害剤が、インターロイキン2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、ヤーヌスキナーゼ1(JAK1)、GATA結合タンパク質3(GATA3)、IL-9、IL-5、IL-13、IL-4、IL-33、OX40L、TSLP、IL-25、IL-9受容体、IL-5受容体、IL-4受容体アルファ、IL-13受容体アルファ1、IL-13受容体アルファ2、OX40、TSLP-R、IL-7Rアルファ、IL-17RB、ST2、CCR3、CCR4、CRTH2、Flap、Sykキナーゼ、CCR4、TLR9、またはGM-CSFを阻害する、請求項107、108、または110~174のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項176】
前記薬剤または組み合わせが、追加の治療剤との投与のために処方される、請求項106~175のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項177】
前記追加の治療薬が、コルチコステロイド、IL-33軸結合アンタゴニスト、TRPA1アンタゴニスト、気管支拡張剤または喘息症状抑制剤、免疫調節剤、チロシンキナーゼ阻害剤、及びホスホジエステラーゼ阻害剤からなる群から選択される、請求項176に記載の使用される薬剤。
【請求項178】
前記追加の治療薬が、コルチコステロイドである、請求項177に記載の使用される薬剤。
【請求項179】
前記コルチコステロイドが、吸入コルチコステロイドである、請求項177または178に記載の使用される薬剤。
【請求項180】
前記マスト細胞媒介性炎症性疾患が、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹(CSU)、全身性アナフィラキシー、マスト細胞症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、及び好酸球性食道炎からなる群から選択される、請求項106~179のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項181】
前記マスト細胞媒介性炎症性疾患が喘息である、請求項180に記載の使用される薬剤。
【請求項182】
前記喘息が、中等度から重度の喘息である、請求項181に記載の使用される薬剤。
【請求項183】
前記喘息が、コルチコステロイドで制御されていない、請求項180~182のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項184】
前記喘息が、TH2-high喘息またはTH2-low喘息である、請求項180~183のいずれか一項に記載の使用される薬剤。
【請求項185】
マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置するための医薬の製造における、トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤の使用であって、
(i)前記患者の前記遺伝子型が、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または
(ii)前記患者の試料が、基準レベルのトリプターゼ以上のトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている、前記薬剤の使用。
【請求項186】
前記薬剤がトリプターゼアンタゴニストであり、前記医薬がIgEアンタゴニストとの投与のために処方される、請求項185に記載の使用。
【請求項187】
前記患者が、前記患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の前記2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、前記薬剤が単剤療法として使用するためのものである、請求項185または186に記載の使用。
【請求項188】
前記患者が、前記患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上の前記2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されており、前記薬剤がTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項185または186に記載の使用。
【請求項189】
マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置するための医薬の製造における、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストの使用であって、
(i)前記患者の前記遺伝子型が、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または
(ii)前記患者の試料が、トリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている、前記IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストの使用。
【請求項190】
前記患者が前記患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上の前記2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、前記IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストが追加のTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項189に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月9日に出願された米国仮出願第62/628,564号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2019年2月4日に作成された該ASCIIコピーは、50474-161WO2_Sequence_Listing_2.4.19_ST25という名称であり、47,396バイトのサイズである。
【0003】
本発明は、喘息を含むマスト細胞媒介性炎症性疾患の治療法及び診断法に関する。
【背景技術】
【0004】
喘息は、気道のアレルギー性炎症性疾患として基本的に説明されており、一時的で可逆的な気道閉塞を臨床的な特徴としている。喘息におけるアレルギー性炎症のメディエーターを標的とするための治療的根拠は、抗IL-5などの抗2型サイトカイン療法によって得られた臨床効果によって裏付けられてきた。これらの研究は、特に2型バイオマーカーに基づいて選択された対象において、2型経路を標的として有意義な臨床効果をもたらす治療戦略をサポートしている。これらの進歩にもかかわらず、2型HIGH喘息、及び現在開発されている治療法の臨床効果が少ないと予想される2型バイオマーカーのレベルが低い喘息患者に対して、より大きな有効性を示す新たな喘息治療法の発見及び開発には依然として大きな関心が寄せられている。
【0005】
気道平滑筋のマスト細胞浸潤は、喘息の明確な病態生理学的特徴である。IgE/FcεRI依存性及びIgE/FcεRI非依存性メカニズムは、可溶性マスト細胞喘息メディエーターの放出を引き起こす。マスト細胞生物学を標的とする治療的重要性を示すため、抗IgEモノクローナル抗体療法であるXOLAIR(登録商標)(オマリズマブ)は、喘息増悪の軽減に効果的である。
【0006】
当該技術分野において、喘息及び他のマスト細胞媒介性炎症性疾患の改善された治療及び診断手法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、とりわけ、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者が治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、Fcイプシロン受容体(FcεR)アンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療)に応答する可能性が高いかどうかを判定する方法、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者のための治療を選択する方法、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の応答を評価する方法、及びマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の応答をモニタリングする方法を特徴とする。
【0008】
一態様では、本発明は、(i)基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である活性トリプターゼ対立遺伝子数を含む遺伝子型、または(ii)基準レベルのトリプターゼ以上である患者の試料中のトリプターゼの発現レベル、を有すると同定された、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法を特徴とし、該方法が、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者にトリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療を施すことを含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者がトリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法を特徴とし、該方法は、(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定することと、(b)患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数に基づいて、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療に応答する可能性が高いとして患者を同定することとを含み、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上の活性トリプターゼ対立遺伝子数は、該患者が該治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0010】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者がトリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法を特徴とし、該方法は、(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、トリプターゼの発現レベルを決定することと、(b)患者の試料におけるトリプターゼの発現レベルに基づいて、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療に応答する可能性が高いとして患者を同定することとを含み、該試料のトリプターゼの発現レベルが基準レベルのトリプターゼ以上であることは、該患者が治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0011】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本方法は、患者に治療を施すことをさらに含む。
【0012】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、薬剤は単剤療法として患者に投与される。
【0013】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、本方法は、TH2経路阻害剤を患者に投与することをさらに含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、(i)基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含む遺伝子型、または(ii)患者の試料においてトリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベル、を有すると同定された、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法を特徴とし、該方法は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者に、IgEアンタゴニストまたはFcイプシロン受容体(FcεR)アンタゴニストを含む治療を施すことを含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者がIgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法を特徴とし、該方法は、(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定することと、(b)患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数に基づいて、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いとして患者を同定することとを含み、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数は、患者が治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0016】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者がIgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法を特徴とし、該方法は、(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、トリプターゼの発現レベルを決定することと、(b)患者の試料のトリプターゼの発現レベルに基づいて、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いとして患者を同定することとを含み、患者の試料においてトリプターゼの基準レベル未満であるトリプターゼの発現レベルは、患者が治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0017】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本方法は、患者に治療を施すことをさらに含む。
【0018】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、本方法は、追加のTH2経路阻害剤を患者に投与することをさらに含む。
【0019】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の治療を選択する方法を特徴とし、該方法は、(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定することと、(b)患者のために、(i)患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数が基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である場合、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療、または(ii)患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数が基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の場合、IgEアンタゴニストもしくはFcεRアンタゴニストを含む治療、を選択することと、を含む。
【0020】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の治療を選択する方法を特徴とし、該方法は、(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、トリプターゼの発現レベルを決定することと、(b)患者のために、(i)患者の試料におけるトリプターゼの発現レベルがトリプターゼの基準レベル以上である場合、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療、または(ii)患者の試料におけるトリプターゼの発現レベルがトリプターゼの基準レベル未満である場合、IgEアンタゴニストもしくはFcεRアンタゴニストを含む治療、を選択することと、を含む。
【0021】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本方法は、患者に(b)に従って選択した治療を施すことをさらに含む。
【0022】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、薬剤は単剤療法として患者に投与される。
【0023】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されており、該方法が、TH2経路阻害剤を含む併用療法を選択することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、TH2経路阻害剤(または追加のTH2経路阻害剤)を患者に投与することをさらに含む。
【0024】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療による処置に対する応答を評価する方法を特徴とし、該方法は、(a)患者への、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療の適用中または適用後の時点でのマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料におけるトリプターゼの発現レベルを決定することと、(b)試料中のトリプターゼの発現レベルと基準レベルのトリプターゼとの比較に基づいて、処置を維持、調整、または停止することとを含み、基準レベルと比較した患者の試料中のトリプターゼの発現レベルの変化は、治療による処置への応答を示す。いくつかの実施形態では、変化がトリプターゼの発現レベルの増加であり、処置が維持される。いくつかの実施形態では、変化がトリプターゼの発現レベルの低下であり、処置が調整または停止される。
【0025】
別の態様では、本発明は、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療により処置されたマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の応答をモニタリングする方法を特徴とし、該方法は、(a)患者への、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療の適用中または適用後の時点での該患者の試料におけるトリプターゼの発現レベルを決定することと、(b)患者の試料におけるトリプターゼの発現レベルをトリプターゼの基準レベルと比較することにより、治療による処置を受けている患者の応答をモニタリングすることとを含む。いくつかの実施形態では、変化がトリプターゼのレベルの増加であり、処置が維持される。いくつかの実施形態では、変化がトリプターゼの発現レベルの低下であり、処置が調整または停止される。
【0026】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法において使用するための、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を特徴とし、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、基準レベルのトリプターゼ以上であるトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、該薬剤は単剤療法として使用するためのものである。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されており、該薬剤はTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである。いくつかの実施形態では、トリプターゼアンタゴニストは、抗トリプターゼ抗体、例えば、本明細書に開示される抗トリプターゼ抗体のいずれかである。いくつかの実施形態では、IgEアンタゴニストは、抗IgE抗体、例えば、本明細書に開示される任意の抗IgE抗体である。
【0027】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法において使用するための、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストから選択される薬剤を特徴とし、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、トリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上の2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストは、追加のTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである。
【0028】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置するための医薬の製造における、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤の使用を提供し、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、基準レベルのトリプターゼ以上であるトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、該薬剤は単剤療法として使用するためのものである。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されており、該薬剤はTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである。いくつかの実施形態では、トリプターゼアンタゴニストは、抗トリプターゼ抗体、例えば、本明細書に開示される抗トリプターゼ抗体のいずれかである。いくつかの実施形態では、IgEアンタゴニストは、抗IgE抗体、例えば、本明細書に開示される抗IgE抗体のいずれかである。いくつかの実施形態では、トリプターゼアンタゴニストは、IgEアンタゴニストと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、薬剤はトリプターゼアンタゴニストであり、該医薬はIgEアンタゴニストとの投与のために処方される。
【0029】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置するための医薬の製造における、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストの使用を提供し、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、トリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上の2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストは、追加のTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである。
【0030】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は、患者のゲノムのTPSAB1及びTPSB2遺伝子座のシークエンシングによって決定される。いくつかの実施形態では、シークエンシングは、サンガーシークエンシングまたは超並列シークエンシングである。いくつかの実施形態では、TPSAB1遺伝子座は、(i)5’-CTG GTG TGC AAG GTG AAT GG-3’(配列番号31)のヌクレオチド配列を含む第1のフォワードプライマー及び5’-AGG TCC AGC ACT CAG GAG GA-3’(配列番号32)のヌクレオチド配列を含む第1のリバースプライマーの存在下で対象の核酸を増幅してTPSAB1アンプリコンを形成することと、(ii)TPSAB1アンプリコンをシークエンシングすることとを含む方法によってシークエンシングされる。いくつかの実施形態では、TPSAB1アンプリコンのシークエンシングには、第1のフォワードプライマー及び第1のリバースプライマーの使用が含まれる。いくつかの実施形態では、TPSB2遺伝子座は、(i)5’-GCA GGT GAG CCT GAG AGT CC-3’(配列番号33)のヌクレオチド配列を含む第2のフォワードプライマー及び5’-GGG ACC TTC ACC TGC TTC AG-3’(配列番号34)のヌクレオチド配列を含む第2のリバースプライマーの存在下で該対象の核酸を増幅してTPSB2アンプリコンを形成することと、(ii)TPSB2アンプリコンをシークエンシングすることとを含む方法によってシークエンシングされる。いくつかの実施形態では、TPSB2アンプリコンのシークエンシングは、第2のフォワードプライマーを使用することと、5’-CAG CCA GTG ACC CAG CAC-3’(配列番号35)のヌクレオチド配列を含むリバースプライマーをシークエンシングすることと、を含む。
【0031】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は、以下の式:4-患者の遺伝子型におけるトリプターゼα及びトリプターゼβIIIフレームシフト(βIIIFS)対立遺伝子の数の合計で決定される。いくつかの実施形態では、トリプターゼアルファは、ヌクレオチド配列CTGCAGGCGGGCGTGGTCAGCTGGG[G/A]CGAGGGCTGTGCCCAGCCCAACCGG(配列番号36)を含むTPSAB1において、c733 G>A SNPを検出することにより検出され、c733 G>A SNPにおけるAの存在は、トリプターゼアルファを示す。いくつかの実施形態では、トリプターゼベータIIIFSは、ヌクレオチド配列CACACGGTCACCCTGCCCCCTGCCTCAGAGACCTTCCCCCCC(配列番号37)を含むTPSB2でのc980_981insC変異を検出することにより検出される。
【0032】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の群において決定される。いくつかの実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は3である。
【0033】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、3または4の活性トリプターゼ対立遺伝子数を有する。
【0034】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、0、1、または2の活性トリプターゼ対立遺伝子数を有する。
【0035】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、トリプターゼは、トリプターゼベータI、トリプターゼベータII、トリプターゼベータIII、トリプターゼアルファI、またはこれらの組み合わせである。
【0036】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、トリプターゼの発現レベルは、タンパク質の発現レベルである。いくつかの実施形態では、トリプターゼのタンパク質発現レベルは、活性トリプターゼの発現レベルである。いくつかの実施形態では、トリプターゼのタンパク質発現レベルは、総トリプターゼの発現レベルである。いくつかの実施形態では、タンパク質発現レベルは、免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウェスタンブロット、または質量分析法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、トリプターゼの発現レベルは、mRNAの発現レベルである。いくつかの実施形態では、mRNA発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法またはマイクロアレイチップを使用して測定される。いくつかの実施形態では、PCR法はqPCRである。
【0037】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、トリプターゼの基準レベルは、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する個体の群において決定されたレベルである。いくつかの実施形態では、トリプターゼの基準レベルは、中央値である。
【0038】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、患者の試料は、血液試料、組織試料、痰試料、細気管支洗浄液試料、粘膜被覆液(MLF)試料、気管支吸着試料、及び経鼻吸収試料からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、血液試料は、全血試料、血清試料、血漿試料、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、血液試料は、血清試料または血漿試料である。
【0039】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、薬剤はトリプターゼアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、トリプターゼアンタゴニストは、トリプターゼアルファアンタゴニストまたはトリプターゼベータアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、トリプターゼアンタゴニストは、トリプターゼベータアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、トリプターゼベータアンタゴニストは、抗トリプターゼベータ抗体またはその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、抗体は次の6つの超可変領域(HVR):(a)DYGMVのアミノ酸配列(配列番号1)を含むHVR-H1、(b)FISSGSSTVYYADTMKGのアミノ酸配列(配列番号2)を含むHVR-H2、(c)RNYDDWYFDVのアミノ酸配列(配列番号3)を含むHVR-H3、(d)SASSSVTYMYのアミノ酸配列(配列番号4)を含むHVR-L1、(e)RTSDLASのアミノ酸配列(配列番号5)を含むHVR-L2、及び(f)QHYHSYPLTのアミノ酸配列(配列番号6)を含むHVR-L3、で構成されている。いくつかの実施形態では、抗体は、(a)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメイン、を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号7のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLドメインは配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号7のアミノ酸配列を含み、VLドメインは配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖及び(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(a)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖及び(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は次の6つのHVR:(a)GYAITのアミノ酸配列(配列番号12)を含むHVR-H1、(b)GISSAATTFYSSWAKSのアミノ酸配列(配列番号13)を含むHVR-H2、(c)DPRGYGAALDRLDLのアミノ酸配列(配列番号14)を含むHVR-H3、(d)QSIKSVYNNRLGのアミノ酸配列(配列番号15)を含むHVR-L1、(e)ETSILTSのアミノ酸配列(配列番号16)を含むHVR-L2、及び(f)AGGFDRSGDTTのアミノ酸配列(配列番号17)を含むHVR-L3、で構成されている。いくつかの実施形態では、抗体は、(a)配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメイン、を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号18のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLドメインは配列番号19のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号18のアミノ酸配列を含み、VLドメインは配列番号19のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖及び(b)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(a)配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖及び(b)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、治療はIgEアンタゴニストをさらに含む。
【0040】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、薬剤はFcεRアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、FcεRアンタゴニストは、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤である。いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、GDC-0853、アカラブルチニブ、GS-4059、スペブルチニブ、BGB-3111、またはHM71224である。いくつかの実施形態では、薬剤は、IgE+B細胞枯渇抗体である。いくつかの実施形態では、IgE+B細胞枯渇抗体は抗M1’ドメイン抗体である。
【0041】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、薬剤はマスト細胞または好塩基球枯渇抗体である。
【0042】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、薬剤はPAR2アンタゴニストである。
【0043】
本明細書に開示される態様のいずれかのいくつかの実施形態では、治療または組み合わせは、トリプターゼアンタゴニスト(例えば、本明細書に記載される抗トリプターゼ抗体のいずれかを含む抗トリプターゼ抗体)及びIgEアンタゴニスト(例えば、本明細書に記載される抗IgE抗体のいずれか、例えば、オマリズマブ(例えば、XOLAIR(登録商標))を含む抗IgE抗体)を含む。
【0044】
本明細書に開示される態様のいずれかのいくつかの実施形態では、薬剤はIgEアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、IgEアンタゴニストは抗IgE抗体である。いくつかの実施形態では、抗IgE抗体は、IgE遮断抗体及び/またはIgE枯渇抗体である。いくつかの実施形態では、抗IgE抗体は次の6つのHVR:(a)GYSWNのアミノ酸配列(配列番号40)を含むHVR-H1、(b)SITYDGSTNYNPSVKGのアミノ酸配列(配列番号41)を含むHVR-H2、(c)GSHYFGHWHFAVのアミノ酸配列(配列番号42)を含むHVR-H3、(d)RASQSVDYDGDSYMNのアミノ酸配列(配列番号43)を含むHVR-L1、(e)AASYLESのアミノ酸配列(配列番号44)を含むHVR-L2、及び(f)QQSHEDPYTのアミノ酸配列(配列番号45)を含むHVR-L3、で構成されている。いくつかの実施形態では、抗IgE抗体は、(a)配列番号38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号39のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメイン、を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号38のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLドメインは配列番号39のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号38のアミノ酸配列を含み、VLドメインは配列番号39のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗IgE抗体は、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))またはXmAb7195である。いくつかの実施形態では、抗IgE抗体は、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))である。
【0045】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、2型バイオマーカーは、TH2細胞関連サイトカイン、ペリオスチン、好酸球数、好酸球シグネチャー、FeNO、またはIgEである。いくつかの実施形態では、TH2細胞関連サイトカインは、IL-13、IL-4、IL-9、またはIL-5である。いくつかの実施形態では、TH2経路阻害剤は、インターロイキン2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、ヤーヌスキナーゼ1(JAK1)(例えば、ルキソリチニブ、トファシチニブ、オクラシチニブ、バリシチニブ、フィルゴチニブ、ガンドチニブ、レスタウルチニブ、モメロチニブ、パクリチニブ、ウパダシチニブ、ペフィシチニブ、及びフェドラチニブ)、GATA結合タンパク質3(GATA3)、IL-9(例えば、MEDI-528)、IL-5(例えば、メポリズマブ、CAS番号196078-29-2;レシリズマブ)、IL-13(例えば、IMA-026、IMA-638(別名アンルキンズマブ、INN番号910649-32-0;QAX-576;IL-4/IL-13トラップ)、トラロキヌマブ(別名CAT-354、CAS番号1044515-88-9);AER-001、ABT-308(別名ヒト化13C5.5抗体)、IL-4(例えば、AER-001、IL-4/IL-13トラップ)、OX40L、TSLP、IL-25、IL-33、及びIgE(例えば、XOLAIR(登録商標)、QGE-031;及びMEDI-4212);ならびに受容体、例えば、IL-9受容体、IL-5受容体(例えば、MEDI-563(ベンラリズマブ、CAS番号1044511-01-4))、IL-4受容体アルファ(例えば、AMG-317、AIR-645)、IL-13受容体アルファ1(例えば、R-1671)及びIL-13受容体アルファ2、OX40、TSLP-R、IL-7Rアルファ(TSLPの補助受容体)、IL-17RB(IL-25の受容体)、ST2(IL-33の受容体)、CCR3、CCR4、CRTH2(例えば、AMG-853、AP768、AP-761、MLN6095、ACT129968)、FcεRI、FcεRII/CD23(IgEの受容体)、Flap(例えば、GSK2190915)、Sykキナーゼ(R-343、PF3526299);CCR4(AMG-761)、TLR9(QAX-935)、ならびにCCR3、IL-5、IL-3、及びGM-CSFのマルチサイトカイン阻害剤(例えば、TPI ASM8)から選択される標的のいずれかを阻害する。
【0046】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本方法は、追加の治療薬を患者に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、コルチコステロイド、IL-33軸結合アンタゴニスト、TRPA1アンタゴニスト、気管支拡張剤または喘息症状抑制剤、免疫調節剤、チロシンキナーゼ阻害剤、及びホスホジエステラーゼ阻害剤からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、コルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドは、吸入コルチコステロイドである。
【0047】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、マスト細胞媒介性炎症性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹(CSU)、全身性アナフィラキシー、マスト細胞症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、及び好酸球性食道炎からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、マスト細胞媒介性炎症性疾患は喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は中等度から重度の喘息である。いくつかの実施形態では、喘息はコルチコステロイドで制御されていない。いくつかの実施形態では、喘息は、TH2 high喘息またはTH2 low喘息である。
【0048】
別の態様では、本発明は、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療に応答する可能性が高いマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を同定するためのキットを特徴とし、本キットは、(a)患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定するため、または患者の試料中のトリプターゼの発現レベルを決定するための試薬と、任意で、(b)トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療に応答する可能性が高いマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を同定するために当該試薬を使用するための指示書と、を含む。いくつかの実施形態では、薬剤はトリプターゼアンタゴニストであり、治療はIgEアンタゴニストをさらに含む。いくつかの実施形態では、治療はトリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニストを含む。
【0049】
別の態様では、本発明は、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を同定するためのキットを特徴とし、本キットは、(a)患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定するため、または患者の試料中のトリプターゼの発現レベルを決定するための試薬と、任意で、(b)IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を同定するために当該試薬を使用するための指示書と、を含む。
【0050】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本キットは、患者の試料において2型バイオマーカーのレベルを決定するための試薬をさらに含む。
【0051】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法において使用するための、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を特徴とし、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、基準レベルのトリプターゼ以上であるトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、該薬剤は単剤療法として使用するためのものである。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されており、該薬剤はTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである。
【0052】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法において使用するための、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストから選択される薬剤を特徴とし、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、トリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上の2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストは、追加のTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである。
【0053】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置するための医薬の製造における、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤の使用を提供し、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、基準レベルのトリプターゼ以上であるトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、該薬剤は単剤療法として使用するためのものである。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されており、該薬剤はTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである。
【0054】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置するための医薬の製造における、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストの使用を提供し、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、トリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストは、追加のTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】中程度から重度の喘息患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を示すグラフである。活性トリプターゼ対立遺伝子数は、BOBCAT、EXTRA、及びMILLYの中等度から重度の喘息の対象のバープロットによってプロットされる。
【
図2】
図2A及び2Bは、全末梢トリプターゼタンパク質レベルが中程度から重度の喘息におけるトリプターゼコピー数と関連していることを示す一連のグラフである。タンパク質量的形質連鎖(pQTL)解析は、BOBCATから血漿総トリプターゼ(
図2A)及びMILLY研究から血清総トリプターゼ(
図2B)に対して行った。線形回帰線(95%CI)は灰色の網掛けで示される。線形回帰からのr
2のP値は、プロットに注釈が付与される。r
2は線形回帰の決定係数であり、0から1までの値をとる;値の増加は、独立変数によって説明される分散の割合を示す。
【
図3】活性トリプターゼコピー数に基づく抗IgE療法(オマリズマブ(Xolair(登録商標)))から喘息FEV
1の処置効果を示す一連のグラフである。ベースラインからのFEV
1パーセントの変化は、活性トリプターゼ対立遺伝子数に基づいたEXTRA試験の対象において評価した(左パネル、1または2;右パネル、3または4)。
【
図4】4A~4Cは、2型喘息のバイオマーカーが、中等度から重度の喘息の活性トリプターゼ対立遺伝子数と相関しないことを示す一連のグラフである。2型バイオマーカーの血清ペリオスチン(
図4A)、呼気一酸化窒素(FeNO)(
図4B)、及び血中好酸球数(
図4C)のレベルを、BOBCAT、EXTRA、及びMILLYの中等度から重度の喘息コホートの活性トリプターゼ数に関して評価した。
【発明を実施するための形態】
【0056】
I.定義
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」の値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつそれについて記載する)。
【0057】
「バイオマーカー」及び「マーカー」は、本明細書で互換的に使用され、DNA、RNA、タンパク質、炭水化物、または糖脂質系分子マーカーを指し、その発現または存在は、対象または患者の試料において、標準的な方法(または本明細書に開示の方法)によって検出することができ、例えば、哺乳動物対象の処置に対する応答もしくは感度の可能性を特定するため、または処置に対する対象の応答をモニタリングするために、例えば有用である。そのようなバイオマーカーの発現は、基準レベル(例えば、患者(例えば、喘息患者)の群/母集団の試料におけるバイオマーカーの発現レベルの中央値、対照個体(例えば、健康な個体)の群/母集団の試料におけるバイオマーカーのレベル、または、以前に個体から事前に取得した試料のレベルを含む)よりも治療に応答する可能性が高いまたは低い患者から得られた試料においてより高いまたはより低いと決定され得る。特定の実施形態では、本明細書に記載されるバイオマーカーは、活性トリプターゼ対立遺伝子数またはトリプターゼの発現レベルである。
【0058】
本明細書で使用される場合、「トリプターゼ」は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然トリプターゼを指す。トリプターゼはまた、マスト細胞トリプターゼ、マスト細胞プロテアーゼII、皮膚トリプターゼ、肺トリプターゼ、下垂体トリプターゼ、マスト細胞中性プロテイナーゼ、及びマスト細胞セリンプロテイナーゼIIとして当技術分野で知られている。「トリプターゼ」という用語は、トリプターゼアルファ(TPSAB1によってヒトにおいてコードされている)、トリプターゼベータ(TPSAB1及びTPSB2によってヒトにおいてコードされている、以下を参照)、トリプターゼデルタ(TPSD1によってヒトにおいてコードされている)、トリプターゼガンマ(TPSG1によってヒトにおいてコードされている)、及びトリプターゼイプシロン(PRSS22によってヒトにおいてコードされている)を包含する。トリプターゼアルファ(α)、ベータ(β)、及びガンマ(γ)タンパク質は可溶性であるが、トリプターゼイプシロン(ε)タンパク質は膜固定型である。トリプターゼのベータ及びガンマは、特異性は異なるが、活性セリンプロテアーゼである。トリプターゼアルファ及びデルタ(δ)タンパク質は、典型的な活性セリンプロテアーゼとは異なる重要な位置に残基があるため、主に不活性プロテアーゼである。例示的なトリプターゼアルファ完全長タンパク質配列は、NCBI GenBank受託番号ACZ98910.1で入手できる。例示的なトリプターゼガンマ完全長タンパク質配列は、Uniprot受託番号Q9NRR2またはGenBank受託番号Q9NRR2.3、AAF03695.1、NP_036599.3、またはAAF76457.1で入手できる。例示的なトリプターゼデルタ完全長タンパク質配列は、Uniprot受託番号Q9BZJ3またはGenBank受託番号NP_036349.1で入手できる。いくつかのトリプターゼ遺伝子は、ヒト染色体16p13.3に集まっている。この用語は、「完全長」のプロセシングされていないトリプターゼ、及び細胞内でのプロセシングから生じる任意の形態のトリプターゼを包含する。トリプターゼベータはマスト細胞で発現する主要なトリプターゼであるが、一方、トリプターゼアルファは好塩基球で発現する主要なトリプターゼである。トリプターゼアルファ及びトリプターゼベータは、典型的には、約30のアミノ酸のリーダー配列及び約245のアミノ酸の触媒配列を含む(例えば、Schwartz,Immunol.Allergy Clin.N.Am.26:451-463,2006を参照のこと)。
【0059】
本明細書で使用される場合、「トリプターゼベータ」は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然トリプターゼベータを指す。トリプターゼベータは、マスト細胞分泌顆粒の主成分であるセリンプロテアーゼである。本明細書で使用される場合、本用語は、トリプターゼベータ1(トリプターゼアルファ1もコードされている、TPSAB1遺伝子によってコードされる)、トリプターゼベータ2(TPSB2遺伝子によってコードされている)、及びトリプターゼベータ3(TPSB2遺伝子によってもコードされている)を包含する。例示的なヒトトリプターゼベータ1配列は、配列番号23に示される(GenBank受託番号NP_003285.2も参照)。例示的なヒトトリプターゼベータ2配列は、配列番号24に示される(GenBank受託番号AAD13876.1も参照)。例示的なヒトトリプターゼベータ3配列は、配列番号25に示される(GenBank受託番号NP_077078.5も参照)。トリプターゼベータという用語は、「完全長」のプロセシングされていないトリプターゼベータ、及びタンパク質分解プロセシングを含む翻訳後修飾から生じるトリプターゼベータを包含する。完全長のプロトリプターゼベータは、2つのタンパク質分解ステップでプロセシングされると考えられている。第1に、R
-3での自己触媒的分子間切断が、特に酸性pHで、ポリアニオン(例えば、ヘパリンまたは硫酸デキストラン)の存在下で発生する。次に、残りのプロジペプチドが除去される(おそらくジペプチジルペプチダーゼIによる)。完全長ヒトトリプターゼベータ1については、以下の配列番号23を参照すると、下線が引かれたアミノ酸残基は天然のリーダー配列に対応し、太字及び灰色の影付きのアミノ酸残基はプロドメインに対応し、それは切断されて成熟タンパク質を形成する(例えば、Sakai et al.J.Clin.Invest.97:988-995,1996を参照のこと)
【0060】
成熟した、酵素活性トリプターゼベータは、典型的には、ホモ四量体またはヘテロ四量体であるが、活性単量体が報告されている(例えば、Fukuoka et al.J.Immunol.176:3165,2006を参照のこと)。トリプターゼベータ四量体のサブユニットは、サブユニット間の疎水性及び極性相互作用によって一緒になり、ポリアニオン(特にヘパリン及び硫酸デキストラン)によって安定化される。トリプターゼという用語は、トリプターゼ四量体またはトリプターゼ単量体を指すことができる。成熟ヒトトリプターゼベータ1、ベータ2、及びベータ3の例示的な配列は、それぞれ配列番号26、配列番号27、及び配列番号28に示される。各サブユニットの活性部位は、四量体の中心孔に面し、それは約50×30オングストロームである(例えば、Pereira et al.Nature 392:306-311,1998を参照のこと)。中心孔のサイズは、典型的には、阻害剤によって活性部位のアクセスを制限する。トリプターゼベータの例示的な基質としては、これらに限定されないが、PAR2、C3、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、及びキニノーゲンが挙げられる。
【0061】
「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、2つ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、好ましくは3つ超で構成される分子を指す。その正確なサイズは多くの因子に依存することになり、これらの因子は今度はオリゴヌクレオチドの根本的な機能または使用に依存する。オリゴヌクレオチドは、合成またはクローニングによってもたらされ得る。デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドのキメラも、本発明の範囲内であり得る。
【0062】
「遺伝子型」という用語は、個体または試料中に含有される遺伝子の対立遺伝子の説明を指す。本発明の文脈において、個体の遺伝子型と個体から得られる試料の遺伝子型とは区別しない。典型的には、遺伝子型は2倍体細胞の試料から決定されるが、遺伝子型は1倍体細胞、例えば精子細胞の試料から決定することもできる。
【0063】
集団内で複数の配列が可能であるゲノム内のヌクレオチド位置を、本明細書では「多型」または「多型部位」と呼ぶ。多型部位は、例えば、2つ以上のヌクレオチドのヌクレオチド配列、挿入されたヌクレオチドまたはヌクレオチド配列、欠失したヌクレオチドまたはヌクレオチド配列、またはマイクロサテライトであり得る。長さがヌクレオチド2個以上である多型部位は、ヌクレオチド配列の全てまたは一部が領域内で異なる場合、長さがヌクレオチド3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個以上、20個以上、30個以上、50個以上、75個以上、100個以上、500個以上、または約1000個であり得る。
【0064】
「一塩基多型」または「SNP」は、遺伝的変異性につながるDNA配列内の一塩基置換を指す。一塩基多型は、遺伝子のいずれの領域でも生じ得る。場合によっては、この多型は、タンパク質配列の変化をもたらし得る。タンパク質配列の変化は、タンパク質機能に影響する場合もしない場合もある。
【0065】
多型部位に2個、3個、または4個の代替ヌクレオチド配列がある場合、各ヌクレオチド配列は「多型バリアント」または「核酸バリアント」と呼ばれる。DNA配列で可能な各バリアントは、「対立遺伝子」と呼ばれる。典型的には、最初に同定された対立遺伝子型は任意に参照型として指定され、他の対立遺伝子型は代替またはバリアント対立遺伝子として指定される。
【0066】
「活性トリプターゼ対立遺伝子数」という用語は、対象の遺伝子型における活性トリプターゼ対立遺伝子の数を指す。いくつかの実施形態では、TPSAB1及びTPSB2の不活化変異を説明することにより、活性トリプターゼ対立遺伝子数を推定することができる。各2倍体対象は、TPSAB1及びTPSB2のそれぞれに2つのコピーを持っているため、活性トリプターゼ対立遺伝子数は、式4-対象の遺伝子型におけるトリプターゼアルファ及びトリプターゼベータIIIフレームシフト(ベータIIIFS)対立遺伝子の数の合計に従って決定することができる。いくつかの実施形態では、対象の活性トリプターゼ対立遺伝子数は、0~4の範囲の整数(例えば、0、1、2、3、または4)である。
【0067】
「基準活性トリプターゼ対立遺伝子数」という用語は、例えば、診断、予測、予後、及び/または治療決定を行うために、別の活性トリプターゼ対立遺伝子数と比較される活性トリプターゼ対立遺伝子数を指す。基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は、基準試料、基準母集団、及び/または事前に割り当てられた値(例えば、個体の第1のサブセットを個体の第2のサブセットから有意に(例えば、統計学的に有意に)分離するために事前に決定されたカットオフ値(例えば、治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療)への応答に関して)において決定することができる。いくつかの実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は所定の値である。一実施形態における基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は、患者が属する疾患単位(例えば、喘息などのマスト細胞媒介性炎症性疾患)において予め決定されている。ある特定の実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は、調査された疾患単位または所与の母集団における値の全体的な分布から決定される。いくつかの実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は、0~4の範囲の整数(例えば、0、1、2、3、または4)である。特定の実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は3である。
【0068】
「レベル」、「発現のレベル」、または「発現レベル」という用語は、互換的に使用され、概して、生体試料中のポリヌクレオチドまたはアミノ酸産物またはタンパク質の量を指す。「発現」は、概して、遺伝子コード情報が、細胞内に存在し作動する構造体内に転換されるプロセスを指す。したがって、本発明によると、遺伝子の「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写、タンパク質への翻訳、またはさらにタンパク質の翻訳後修飾を指してもよい。転写されたポリヌクレオチドのフラグメント、翻訳されたタンパク質、または翻訳後修飾されたタンパク質も、それらが、選択的スプライシングにより生成された転写産物、または劣化した転写産物、または例えば、タンパク質分解によるタンパク質の翻訳後プロセシングに由来するかどうかにかかわらず、発現されたと見なされよう。「発現遺伝子」には、mRNAとしてポリヌクレオチドへと転写され、次いでタンパク質へと翻訳されるものと、さらにRNAへと転写されるがタンパク質へと翻訳されないもの(例えば、トランスファーRNA及びリボソームRNA)とが含まれる。
【0069】
ある特定の実施形態では、本明細書の「基準レベル」という用語は、所定の値を指す。当業者であれば理解するように、基準レベルは、例えば、特異性及び/または感度の観点における要件を満たすように事前に決定され、設定される。これらの要件は、例えば、規制機関ごとに異なり得る。例えば、アッセイの感度または特異性は、それぞれ、特定の限界、例えば、80%、90%、または95%に設定する必要があり得る。これらの要件は、正または負の予測値の観点から定義されてもよい。とはいえ、本発明において与えられる教示に基づき、それらの要件に合う基準レベルに達することは常に可能である。一実施形態では、基準レベルは健康な個体において決定される。一実施形態における基準値は、患者が属する疾患単位(例えば、喘息などのマスト細胞媒介性炎症性疾患)において予め決定されている。ある特定の実施形態では、基準レベルは、調査された疾患単位の値の全体的な分布の25%~75%など、任意のパーセンテージに設定することができる。他の実施形態では、基準レベルは、例えば、調査された疾患単位または所与の母集団における値の全体的な分布から決定される中央値、三分位数、四分位数、または五分位数に設定することができる。一実施形態では、基準レベルは、調査された疾患単位における値の全体的な分布から決定して、中央値に設定される。一実施形態では、基準レベルは患者の性別によって異なってもよく、例えば、男性と女性は異なる基準レベルを有してもよい。
【0070】
ある特定の実施形態では、「基準レベルにある」という用語は、本明細書に記載の方法によって基準試料から検出されたレベルと同じであるマーカー(例えば、トリプターゼ)のレベルを指す。
【0071】
ある特定の実施形態では、「増加する」または「超える」という用語は、基準レベルにあるレベル、または基準試料からのレベルと比較して、本明細書に記載の方法によって検出されたマーカー(例えば、トリプターゼ)のレベルにおける、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、100%またはそれ以上の全体的な増加を指す。
【0072】
ある特定の実施形態では、本明細書の「減少する」または「下回る」という用語は、基準レベルを下回るレベル、または基準試料からのレベルと比較して、本明細書に記載の方法によって検出されたマーカー(例えば、トリプターゼ)のレベルにおける、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の全体的な低下を指す。
【0073】
「障害」または「疾患」は、本発明の方法を用いる処置または診断の恩恵を受け得る任意の状態である。これには、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくする病理学的状態を含む慢性及び急性障害または疾患が含まれる。本明細書で処置される障害の例には、喘息などのマスト細胞媒介性炎症性疾患が含まれる。
【0074】
「マスト細胞媒介性炎症性疾患」は、マスト細胞によって少なくとも部分的に媒介される疾患または障害、例えば、喘息(例えば、アレルギー性喘息)、蕁麻疹(例えば、慢性蕁麻疹(CSU)または慢性特発性蕁麻疹(CIU))、湿疹、かゆみ、アレルギー、アトピー性アレルギー、アナフィラキシー、アナフィラキシーショック、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、ならびに自己免疫障害、例えば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、膵炎、乾癬、プラーク乾癬、滴状乾癬、逆乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、腫瘍随伴性自己免疫疾患、自己免疫性肝炎、水疱性類天疱瘡、重症筋無力症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、甲状腺炎(例えば、グレーブス病)、シェーグレン症候群、ギラン・バレー病、レイノー現象、アジソン病、肝疾患(例えば、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、及び非アルコール性脂肪肝炎)、及び糖尿病(例えば、I型糖尿病)を指す。
【0075】
いくつかの実施形態では、喘息は、生命を脅かす可能性のある症状の悪化(増悪または再燃)の急性事象を伴う持続性慢性重症喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は、アトピー性(アレルギー性とも呼ばれる)喘息、非アレルギー性喘息(例えば、多くの場合呼吸器ウイルス(例えば、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ライノウイルス、ヒトメタニューモウイルス、及び呼吸器合胞体ウイルス)による感染または吸入刺激物(例えば、大気汚染物質、スモッグ、ディーゼル粒子、揮発性化学物質、及び屋内または屋外のガス、または冷たい乾燥空気によるもの)によって引き起こされる)である。
【0076】
いくつかの実施形態では、喘息は、断続的または運動誘発性であり、急性もしくは慢性的な主流「煙」もしくは副流「煙」(通常はタバコ、葉巻、またはパイプ)への曝露、吸入もしくは「ベイピング」(タバコ、マリファナ、または他の同様の物質)による喘息、またはアスピリンもしくは関連する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の直近の摂取によって引き起こされる喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は、軽度、またはコルチコステロイドナイーブ喘息、新たに診断された未処置の喘息、または症状(咳、喘鳴、息切れ(shortness of breath)/息切れ(breathlessness)、または胸痛)を制御するために局所もしくは全身吸入ステロイドの慢性的な使用を前もって必要としないものである。いくつかの実施形態では、喘息は、慢性の、コルチコステロイド耐性喘息、コルチコステロイド難治性喘息、コルチコステロイドまたは他の慢性喘息制御薬では制御できない喘息である。
【0077】
いくつかの実施形態では、喘息は中等度から重度の喘息である。ある特定の実施形態では、喘息はTH2-high喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は重度の喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は、アトピー性喘息、アレルギー性喘息、非アレルギー性喘息(例えば、感染症及び/または呼吸器多核体ウイルス(RSV)による)、運動誘発性喘息、アスピリン感受性/憎悪型喘息、軽度喘息、中等度から重度の喘息、コルチコステロイドナイーブ喘息、慢性喘息、コルチコステロイド耐性喘息、コルチコステロイド抵抗性喘息、新たに診断された未処置の喘息、喫煙による喘息、コルチコステロイドで制御されない喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は好酸球性喘息である。いくつかの実施形態では、喘息はアレルギー性喘息である。いくつかの実施形態では、個体は好酸球性炎症陽性(EIP)であると決定されている。WO2015/061441を参照のこと。いくつかの実施形態では、喘息は、ペリオスチン-high喘息である(例えば、血清1mlあたり少なくとも約20ng、25ng、または50ngのいずれかのペリオスチンレベルを有する)。いくつかの実施形態では、喘息は好酸球-high喘息である(例えば、少なくとも血液1mlあたり約150、200、250、300、350、400好酸球数のいずれか)。いくつかの実施形態では、個体は好酸球性炎症陰性(EIN)であると決定されている。WO2015/061441を参照のこと。いくつかの実施形態では、喘息は、ペリオスチン-low喘息である(例えば、血清1mlあたり少なくとも約20ng未満のペリオスチンレベルを有する)。いくつかの実施形態では、喘息は好酸球-low喘息である(例えば、血液1μlあたり約150未満の好酸球数または血液1μlあたり約100未満の好酸球数)。
【0078】
本明細書で使用される「TH2-high喘息」という用語は、高レベルの1つもしくは複数のTH2細胞関連サイトカイン、例えばIL-13、IL-4、IL-9、もしくはIL-5を示す喘息、またはTH2サイトカイン関連炎症を示す喘息を指す。ある特定の実施形態では、用語TH2-high喘息は、好酸球-high喘息、2型ヘルパーTリンパ球-high、2型-high、またはTH2駆動喘息と互換的に使用され得る。いくつかの実施形態では、喘息患者は好酸球性炎症陽性(EIP)であると決定されている。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開番号WO2015/061441を参照のこと。ある特定の実施形態では、個体は、対照または基準レベルと比較して、好酸球シグネチャー遺伝子の少なくとも1つのレベルが上昇していると決定されている。WO2015/061441を参照のこと。ある特定の実施形態では、TH2-high喘息はペリオスチン-high喘息である。いくつかの実施形態では、個体は血清ペリオスチンが高い。ある特定の実施形態では、個体は18歳以上である。ある特定の実施形態では、個体は、対照または基準レベルと比較して、血清ペリオスチンのレベルが上昇していると決定されている。ある特定の実施形態では、対照または基準レベルは、母集団におけるペリオスチンの中央値レベルである。ある特定の実施形態では、個体は、20ng/ml以上の血清ペリオスチンを有すると決定されている。ある特定の実施形態では、個体は、25ng/ml以上の血清ペリオスチンを有すると決定されている。ある特定の実施形態では、個体は、50ng/ml以上の血清ペリオスチンを有すると決定されている。ある特定の実施形態では、血清ペリオスチンの対照または基準レベルは、20ng/ml、25ng/ml、または50ng/mlである。ある特定の実施形態では、喘息は好酸球-high喘息である。ある特定の実施形態では、個体は、対照または基準レベルと比較して、好酸球数が上昇していると決定されている。ある特定の実施形態では、対照または基準レベルは、母集団の中央値レベルである。ある特定の実施形態では、個体は、血液1μlあたり150以上の好酸球数を有すると決定されている。ある特定の実施形態では、個体は、血液1μlあたり200以上の好酸球数を有すると決定されている。ある特定の実施形態では、個体は、血液1μlあたり250以上の好酸球数を有すると決定されている。ある特定の実施形態では、個体は、血液1μlあたり300以上の好酸球数を有すると決定されている。ある特定の実施形態では、個体は、血液1μlあたり350以上の好酸球数を有すると決定されている。ある特定の実施形態では、個体は、血液1μlあたり400以上の好酸球数を有すると決定されている。ある特定の実施形態では、個体は、血液1μlあたり450以上の好酸球数を有すると決定されている。ある特定の実施形態では、個体は、血液1μlあたり500以上の好酸球数を有すると決定されている。ある好ましい実施形態では、個体は、血液1μlあたり300以上の好酸球数を有すると決定されている。ある特定の実施形態では、好酸球は末梢血好酸球である。ある特定の実施形態では、好酸球は痰好酸球である。ある特定の実施形態では、個体は、高レベルのFeNO(呼気硝酸)及び/または高レベルのIgEを示す。例えば、場合によっては、個体は、約250パーツ・パー・ビリオン(ppb)を超える、約275ppbを超える、約300ppbを超える、約325ppbを超える、約325ppbを超える、または約350ppbを超えるFeNOレベルを示す。場合によっては、個体は50IU/mlを超えるIgEレベルを有する。TH2-high喘息の概説については、Fajt et al.J.Allergy Clin.Immunol.135(2):299-310,2015を参照のこと。
【0079】
本明細書で使用される「TH2-low喘息」または「非TH2-high喘息」という用語は、低レベルの1つもしくは複数のTH2細胞関連サイトカイン、例えばIL-13、IL-4、IL-9、もしくはIL-5を示す喘息、または非TH2サイトカイン関連炎症を示す喘息を指す。ある特定の実施形態では、用語TH2-low喘息は、好酸球-low喘息と互換的に使用され得る。いくつかの実施形態では、喘息患者は好酸球性炎症陰性(EIN)であると決定されている。例えば、WO2015/061441を参照のこと。ある特定の実施形態では、TH2-low喘息はペリオスチン-low喘息である。ある特定の実施形態では、個体は18歳以上である。ある特定の実施形態では、個体は、対照または基準レベルと比較して、血清ペリオスチンのレベルが低下していると決定されている。ある特定の実施形態では、対照または基準レベルは、母集団におけるペリオスチンの中央値レベルである。ある特定の実施形態では、個体は、20ng/ml未満の血清ペリオスチンを有すると決定されている。ある特定の実施形態では、喘息は好酸球-low喘息である。ある特定の実施形態では、個体は、対照または基準レベルと比較して、好酸球数が減少していると決定されている。ある特定の実施形態では、対照または基準レベルは、母集団の中央値レベルである。ある特定の実施形態では、個体は、血液1μlあたり150未満の好酸球数を有すると決定されている。ある特定の実施形態では、個体は、血液1μlあたり100未満の好酸球数を有すると決定されている。ある特定の実施形態では、個体は、血液1μlあたり300未満の好酸球数を有すると決定されている。
【0080】
本明細書で使用される場合、「2型バイオマーカー」は、TH2炎症と関連しているバイオマーカーを指す。2型バイオマーカーの非限定的な例には、TH2細胞関連サイトカイン(例えば、IL-13、IL-4、IL-9、またはIL-5)、ペリオスチン、好酸球数、好酸球シグネチャー、FeNO、またはIgEが挙げられる。
【0081】
「投与する」という用語は、患者(例えば、喘息などのマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者)への組成物の投与を意味する。本明細書に記載の方法において利用される組成物は、例えば、非経口的、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮内、経皮的、動脈内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、くも膜下腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、局所的、腫瘍内、腹腔内、皮下的、結膜下、膀胱内、粘膜、心膜内、臍帯内、眼内、眼窩内、経口、局所、経皮、硝子体内、眼窩周囲、結膜、テノン嚢下、前房内、網膜下、球後、小管内、吸入により、注射により、埋め込みにより、注入により、持続的注入により、標的細胞を直接的に浸す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリームで、または脂質組成物で、投与することができる。非経口投与には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。本明細書に記載の方法において利用される組成物は、全身的または局所的に投与されてもよい。投与方法は、様々な要因(例えば、投与される化合物または組成物、及び処置される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて多様であり得る。
【0082】
「治療薬」または「薬剤」という用語は、疾患、例えばマスト細胞媒介性炎症性疾患、例えば喘息を処置するために使用される任意の薬剤を指す。治療薬は、例えば、ポリペプチド(複数可)(例えば、抗体、イムノアドヘシン、またはペプチボディ)、アプタマー、タンパク質に結合することができる小分子、または標的をコードする核酸分子に結合することができる核酸分子(例えば、siRNA)などであり得る。
【0083】
「阻害剤」及び「アンタゴニスト」という用語は、本明細書で互換的に使用され、結合する分子の生物学的活性を阻害または低減する化合物または薬剤を指す。阻害剤には、抗体、合成または天然配列ペプチド、イムノアドヘシン、及び例えばトリプターゼまたはIgEに結合する小分子阻害剤が含まれる。ある特定の実施形態では、阻害剤(例えば、抗体)は、阻害剤の非存在下での活性と比較して、阻害剤の存在下で抗原の活性を少なくとも10%阻害する。いくつかの実施形態では、阻害剤は、活性を少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%阻害する。
【0084】
本明細書で使用される場合、「トリプターゼアンタゴニスト」という用語は、トリプターゼ(例えば、トリプターゼアルファ(例えば、トリプターゼアルファI)またはトリプターゼベータ(例えば、トリプターゼベータI、トリプターゼベータII、またはトリプターゼベータIII)の生物学的活性を阻害または低下させる化合物または薬剤を指す。いくつかの実施形態では、トリプターゼアンタゴニストは、抗トリプターゼ抗体または小分子阻害剤である。
【0085】
「抗トリプターゼ抗体」、「トリプターゼに結合する抗体」、及び「トリプターゼを特異的に結合する抗体」という用語は、トリプターゼを標的とする際の診断薬及び/または治療薬として有用であるように十分な親和性でトリプターゼを結合することができる抗体を指す。一実施形態では、無関係の非トリプターゼタンパク質への抗トリプターゼ抗体の結合の程度は、例えば、ラジオ免疫アッセイ(RIA)によって測定した場合に、この抗体のトリプターゼへの結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、トリプターゼに結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)を有する。ある特定の実施形態では、抗トリプターゼ抗体は、異なる種由来のトリプターゼ間で保存されるトリプターゼのエピトープに結合する。例示的な抗トリプターゼ抗体は、本明細書、ならびに米国仮特許出願第62/457,722号及び国際特許出願公開第WO2018/148585号に記載されており、それら全体を参照により本明細書に組み込む。
【0086】
「FcεRI」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然FcεRI(当該技術分野ではまた、高親和性IgE受容体またはFCΕR1としても公知である)を指す。FcεRIは、IgEのε重鎖のFcタンパク質に結合する四量体受容体複合体である。FcεRIは、1本のα鎖、1本のβ鎖、及び2本のγ鎖で構成されている。例示的なヒトFcεRIαポリペプチドのアミノ酸配列は、UniProt受託番号P12319に列挙されている。例示的なヒトFcεIβポリペプチドのアミノ酸配列は、UniProt受託番号Q01362に列挙されている。例示的なヒトFcεRIγポリペプチドのアミノ酸配列は、UniProt受託番号P30273に列挙されている。
【0087】
「FcεRII」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然FcεRII(当該技術分野ではまた、CD23、FCER2または低親和性IgE受容体としても公知である)を指す。この用語は、「完全長」のプロセシングされていないFcεRII、及び細胞内でのプロセシングから生じる任意の形態のFcεRIIを包含する。この用語は、FcεRIIの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトFcεRIIポリペプチドのアミノ酸配列は、UniProt受託番号P06734に列挙されている。
【0088】
本明細書で使用される場合、「Fcイプシロン受容体(FcεR)アンタゴニスト」という用語は、FcεR(例えば、FcεRIまたはFcεRII)の生物学的活性を阻害または低減する化合物または薬剤を指す。FcεRアンタゴニストは、FcεR、またはFcεRシグナル伝達に関与する核酸(例えば、遺伝子、または遺伝子から転写されたmRNA)もしくはポリペプチドの活性を阻害し得る。例えば、いくつかの実施形態では、FcεRアンタゴニストは、チロシンプロテインキナーゼLyn(Lyn)、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、チロシンプロテインキナーゼFyn(Fyn)、脾臓関連チロシンキナーゼ(Syk)、T細胞活性化用リンカー(LAT)、増殖因子受容体結合タンパク質2(Grb2)、セブンレスの息子(Sos)、Ras、Raf-1、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ1(MEK)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ1(ERK)、細胞質型ホスホリパーゼA2(cPLA2)、アラキドン酸5-リポキシゲナーゼ(5-LO)、アラキドン酸5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)、グアニンヌクレオチド交換因子VAV(Vav)、Rac、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ3、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ7、p38 MAPキナーゼ(p38)、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)、増殖因子受容体結合タンパク質2-関連タンパク質2(Gab2)、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼ(PI3K)、ホスホリパーゼCガンマ(PLCγ)、プロテインキナーゼC(PKC)、3-ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1(PDK1)、RACセリン/スレオニンプロテインキナーゼ(AKT)、ヒスタミン、ヘパリン、インターロイキン(IL)-3、IL-4、IL-13、IL-5、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、ロイコトリエン(例えば、LTC4、LTD4、及びLTE4)、及びプロスタグランジン(例えば、PDG2)を阻害する。いくつかの実施形態では、FcεRアンタゴニストは、BTK阻害剤、例えば、GDC-0853、アカラブルチニブ、GS-4059、スペブルチニブ、BGB-3111、またはHM71224である。
【0089】
「B細胞」は、骨髄内で成熟するリンパ球であり、ナイーブB細胞、メモリーB細胞、またはエフェクターB細胞(プラズマ細胞)が含まれる。本明細書中のB細胞は、正常または非悪性であり得る。
【0090】
「IgE+B細胞枯渇抗体」という用語は、対象におけるIgE+B細胞の数を減少させ、及び/または1つ以上のIgE+B細胞機能を妨害することができる抗体を指す。「IgE+B細胞」は、IgEの膜B細胞受容体形態を発現するB細胞を指す。いくつかの実施形態では、IgE+B細胞は、IgEスイッチB細胞またはメモリーB細胞である。ヒト膜IgEには、分泌型IgE抗体では発現されないM1プライム(M1’、me.1、またはCemXとしても公知である)と呼ばれる細胞外52アミノ酸セグメントが含まれる。いくつかの実施形態では、IgE+B細胞枯渇抗体は、抗M1’抗体(例えば、キリズマブ)である。いくつかの実施形態では、抗M1’抗体は、国際特許出願公開第WO2008/116149に記載されている任意の抗M1’抗体である。
【0091】
「マスト細胞」は、顆粒球免疫細胞の一種である。マスト細胞は、通常、全身の粘膜組織及び上皮組織に存在する。マスト細胞には、トリプターゼ(特にトリプターゼベータ)、ヒスタミン、ヘパリン、及びサイトカインを含む炎症性メディエーターを保存する細胞質顆粒が含まれる。マスト細胞は、抗原/IgE/FcεRI架橋によって活性化され得、脱顆粒及び炎症性メディエーターの放出を引き起こす可能性がある。マスト細胞は、粘膜マスト細胞または結合組織マスト細胞であり得る。例えば、Krystel-Whittemore et al.Front.Immunol.6:620,2015を参照のこと。
【0092】
「好塩基球」は、顆粒球免疫細胞の一種である。好塩基球は通常、末梢血に存在する。好塩基球は、抗原/IgE/FcεRI架橋を介して活性化され得、ヒスタミン、トリプターゼ(特にトリプターゼアルファ)、ロイコトリエン、及びサイトカインなどの分子を放出する。例えば、Siracusa et al.J.Allergy Clin.Immunol.132(4):789-801,2013を参照のこと。
【0093】
「マスト細胞または好塩基球枯渇抗体」という用語は、対象におけるマスト細胞もしくは好塩基球の数もしくは生物学的活性を低下させることができる、及び/またはマスト細胞もしくは好塩基球の1つもしくは複数の機能を妨害することができる抗体を指す。いくつかの実施形態では、抗体はマスト細胞枯渇抗体である。他の実施形態では、抗体は好塩基球枯渇抗体である。さらに他の実施形態では、抗体はマスト細胞及び好塩基球を枯渇させる。いくつかの実施形態では、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体は、抗Siglec8抗体である。
【0094】
「プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)」という用語は、別途示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する任意の天然PAR2(当技術分野ではF2R様トリプシン受容体1(F2RL1)またはGタンパク質共役受容体11(GPR11)としても知られている)を指す。本用語は、「完全長」のプロセシングされていないPAR2、及び細胞内でのプロセシングから生じる任意の形態のPAR2を含む。本用語はまた、PAR2の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントを包含する。例示的なヒトPAR2の核酸配列は、RefSeq受託番号NM_005252に列挙されている。ヒトPAR2によってコードされる例示的なタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P55085に列挙されている。
【0095】
「PAR2アンタゴニスト」という用語は、PAR2の生物学的活性またはシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子を指す。PAR2は通常、N末端のタンパク質分解性切断によって活性化され、膜貫通受容体ドメインに結合して活性化するテザードペプチドリガンドをアンマスクする。例示的なPAR2アンタゴニストには、小分子阻害剤(例えば、K-12940、K-14585、GB83、GB88、AZ3451、及びAZ8838)、可溶性受容体、siRNA、及び抗PAR2抗体(例えば、MAB3949及びFab3949)が含まれる。例えば、Cheng et al.Nature 545:112-115,2017;Kanke et al.Br.J.Pharmacol.158(1):361-371,2009、及びLohman et al.FASEB J.26(7):2877-2887,2012を参照のこと。
【0096】
「IgEアンタゴニスト」という用語は、IgEの生物学的活性を減少、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子を指す。そのようなアンタゴニストには、抗IgE抗体、IgE受容体、抗IgE受容体抗体、IgE抗体のバリアント、IgE受容体のリガンド、及びそれらのフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、IgEアンタゴニストは、例えばマスト細胞または好塩基球上のIgE(例えば、ヒトIgE)と高親和性受容体FcεRIとの間の相互作用を妨害または遮断することができる。
【0097】
「抗IgE抗体」は、IgEがマスト細胞及び好塩基球上の高親和性受容体に結合される場合に架橋を誘導しないようにIgEに特異的に結合する任意の抗体を含む。例示的な抗IgE抗体には、rhuMabE25(E25、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標)))、E26、E27、及びCGP-5101(Hu-901)、HA抗体、リゲリズマブ、及びタリズマブが含まれる。ヒト化抗IgE抗体E25、E26及びE27の重鎖及び軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、例えば、米国特許第6,172,213号及びWO99/01556に開示されている。CGP-5101(Hu-901)抗体は、Corne et al.J.Clin.Invest.99(5):879-887,1997、WO92/17207、ならびにATCC Dep.Nos.BRL-10706、BRL-11130、BRL-11131、BRL-11132及びBRL-11133に記載されている。HA抗体は、米国出願第60/444,229、WO2004/070011、及びWO2004/070010に記載されている。
【0098】
「インターロイキン-33(IL-33)」という用語は、本明細書で使用される場合、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源からの任意の天然IL-33を指す。IL-33はまた、当該技術分野において、高内皮細静脈の核内因子(NF-HEV、例えば、Baekkevold et al.Am.J.Pathol.163(1):69-79,2003を参照のこと)、DVS27、C9orf26、及びインターロイキン1ファミリーメンバー11(IL-1F11)と称される。本用語は、「完全長」のプロセシングされていないIL-33及び、細胞内でのプロセシングから生じる任意の形態のIL-33を包含する。ヒトの完全長のプロセシングされていないIL-33は、270個のアミノ酸(a.a.)を含み、IL-331-270と称されることもある。ヒトIL-33のプロセシングされた形態は、例えば、IL-3395-270、IL-3399-270、IL-33109-270、IL-33112-270、IL-331-178、及びIL-33179-270(Lefrancais et al.Proc.Natl.Acad.Sci.109(5):1673-1678,2012及びMartin,Semin.Immunol.25:449-457,2013)を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIL-33、例えば、IL-3395-270、IL-3399-270、IL-33109-270のプロセシングされた形態、またはカルパイン、プロテイナーゼ3、好中球エラスターゼ、及びカテプシンGなどのプロテアーゼによってプロセシングされた他の形態は、完全長IL-33と比較して向上した生物学的活性を有し得る。本用語はまた、IL-33の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント(例えば、エクソン3を欠く構成的に活性なスプライスバリアントspIL-33、Hong et al.J.Biol.Chem.286(22):20078-20086,2011)または対立遺伝子バリアントを包含する。IL-33は、細胞内(例えば、核内)に存在し得るか、または分泌サイトカイン形態として存在し得る。完全長IL-33タンパク質は、核局在化配列(ヒトIL-33のアミノ酸1~75)を含むヘリックスターンヘリックスDNA結合モチーフを含み、これにはクロマチン結合モチーフ(ヒトIL-33のアミノ酸40~58)が含まれる。プロセシング及び分泌されたIL-33の形態は、これらのN-末端モチーフを欠く。例示的なヒトIL-33のアミノ酸配列は、例えば、UniProt受託番号O95760で入手できる。
【0099】
「IL-33軸」とは、IL-33シグナル伝達に関与する核酸(例えば、遺伝子または遺伝子から転写されたmRNA)またはポリペプチドを意味する。例えば、IL-33軸としては、リガンドIL-33、受容体(例えば、ST2及び/またはIL-1RAcP)、アダプター分子(例えば、MyD88)、または受容体分子及び/またはアダプター分子と関連するタンパク質(例えば、インターロイキン-1受容体関連キナーゼ1(IRAK1)及びインターロイキン-1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)などのキナーゼ、またはTNF受容体関連因子6(TRAF6)などのE3ユビキチンリガーゼ)を挙げることができる。
【0100】
「IL-33軸結合アンタゴニスト」は、IL-33軸結合パートナーと、その結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用を阻害する分子を指す。本明細書で使用される場合、IL-33軸結合アンタゴニストは、IL-33結合アンタゴニスト、ST2結合アンタゴニスト、及びIL1RAcP結合アンタゴニストを含む。例示的なIL-33軸結合アンタゴニストには、抗IL-33抗体及びその抗原結合フラグメント(例えば、ANB-020(AnaptysBio Inc.)などの抗IL-33抗体、またはEP1725261、US8187596、WO2011/031600、WO2014/164959、WO2015/099175、WO2015/106080、もしくはWO2016/077381(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の抗体のいずれか、IL-33及び/またはその受容体(ST2及び/またはIL-1RAcP)に結合し、リガンド-受容体相互作用を遮断するポリペプチド(例えば、ST2-Fcタンパク質、イムノアドヘシン、ペプチボディ、及び可溶性ST2またはその誘導体)、抗IL-33受容体抗体(例えば、抗ST2抗体、例えば、AMG-282(Amgen)もしくはSTLM15(Janssen)、またはWO2013/173761もしくはWO2013/165894(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の抗ST2抗体のいずれか、またはWO2013/173761、WO2013/165894、もしくはWO2014/152195(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のもののようなST2-Fcタンパク質、及びIL-33受容体アンタゴニスト、例えば小分子阻害剤、IL-33に結合するアプタマー、及びストリンジェントな条件下でIL-33軸核酸配列にハイブリダイズする核酸(例えば、短い干渉RNA(siRNA)またはクラスター化され、規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返しRNA(CRISPR-RNAまたはcrRNA))が含まれる。
【0101】
「ST2結合アンタゴニスト」という用語は、ST2のIL-33、IL1RAcP、及び/または第2のST2分子との相互作用を阻害する分子を指す。ST2結合アンタゴニストは、リンカー(例えば、セリン-グリセリン(SG)リンカー、グリシン-グリシン(GG)リンカー、またはこれらのバリアント(例えば、SGG、GGS、SGS、またはGSGリンカー))を通して直接的にまたは間接的に互いに付着する、IL-33結合ドメイン(例えば、ST2またはIL1RAcPタンパク質の全てまたは一部)及び多量化ドメイン(例えば、免疫グロブリンのFc部分、例えば、アイソタイプlgG1、lgG2、lgG3、及びlgG4、ならびに各アイソタイプ群内の任意のアロタイプから選択されるIgGのFcドメイン)を含む「ST2-Fcタンパク質」などのタンパク質であってもよく、これには、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2013/173761、WO2013/165894、及びWO2014/152195に記載のST2-Fcタンパク質及びそのバリアントが含まれるが、これらに限定されない。
【0102】
「TH2経路阻害剤」または「TH2阻害剤」は、TH2経路を阻害する薬剤である。TH2経路阻害剤の例には、インターロイキン2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、ヤーヌスキナーゼ1(JAK1)(例えば、ルキソリチニブ、トファシチニブ、オクラシチニブ、バリシチニブ、フィルゴチニブ、ガンドチニブ、レスタウルチニブ、モメロチニブ、パクリチニブ、ウパダシチニブ、ペフィシチニブ、及びフェドラチニブ)、GATA結合タンパク質3(GATA3)、IL-9(例えば、MEDI-528)、IL-5(例えば、メポリズマブ、CAS番号196078-29-2;レシリズマブ)、IL-13(例えば、IMA-026、IMA-638(別名アンルキンズマブ、INN番号910649-32-0;QAX-576;IL-4/IL-13トラップ)、トラロキヌマブ(別名CAT-354、CAS番号1044515-88-9);AER-001、ABT-308(別名ヒト化13C5.5抗体)、IL-4(例えば、AER-001、IL-4/IL-13トラップ)、OX40L、TSLP、IL-25、IL-33、及びIgE(例えば、XOLAIR(登録商標)、QGE-031;及びMEDI-4212);ならびに受容体、例えば、IL-9受容体、IL-5受容体(例えば、MEDI-563(ベンラリズマブ、CAS番号1044511-01-4))、IL-4受容体アルファ(例えば、AMG-317、AIR-645)、IL-13受容体アルファ1(例えば、R-1671)及びIL-13受容体アルファ2、OX40、TSLP-R、IL-7Rアルファ(TSLPの補助受容体)、IL-17RB(IL-25の受容体)、ST2(IL-33の受容体)、CCR3、CCR4、CRTH2(例えば、AMG-853、AP768、AP-761、MLN6095、ACT129968)、FcεRI、FcεRII/CD23(IgEの受容体)、Flap(例えば、GSK2190915)、Sykキナーゼ(R-343、PF3526299);CCR4(AMG-761)、TLR9(QAX-935)、ならびにCCR3、IL-5、IL-3、及びGM-CSFのマルチサイトカイン阻害剤(例えば、TPI ASM8)から選択される標的のいずれか1つの活性の阻害剤が含まれる。上述の標的の阻害剤の例は、例えば、WO2008/086395;WO2006/085938;US7,615,213;US7,501,121;WO2006/085938;WO2007/080174;US7,807,788;WO2005/007699;WO2007/036745;WO2009/009775;WO2007/082068;WO2010/073119;WO2007/045477;WO2008/134724;US2009/0047277;及びWO2008/127271に開示されている。
【0103】
「患者」または「対象」という用語は、診断または処置が望まれる任意の単一の動物、より具体的には哺乳動物(例えば、非ヒト動物、例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ヒツジ、動物園動物、及び非ヒト霊長類を含む)を指す。さらにより具体的には、本明細書の患者はヒトである。
【0104】
「小分子」という用語は、50ダルトン~2500ダルトンの間の分子量を有する有機分子を指す。
【0105】
「有効量」という用語は、対象または患者、例えば哺乳動物、例えばヒトにおける疾患または障害(例えば、マスト細胞媒介性炎症性疾患、例えば喘息)を処置するのに有効な薬物または治療薬(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、またはこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト))の量を指す。
【0106】
本明細書で使用される場合、「治療」または「処置」は、処置される個体または細胞の自然な経過を変化させる試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、または臨床病理の過程において実施することができる。処置の望ましい効果としては、疾患の発生または再発の防止、症状の緩和、疾患の何らかの直接的または間接的な病理学的結果の減少、疾患進行速度の低下、病態の回復または軽減、及び寛解または予後改善が挙げられる。処置が必要なものとしては、障害を既に有するもの、ならびに障害を有する危険にさらされているもの、または障害を予防する必要があるものを挙げることができる。患者は、例えば、喘息処置を受けた後に、その患者が、1つもしくは複数の、以下、反復性喘鳴、咳、呼吸困難、胸部圧迫感、夜間に発生または悪化する症状、冷気、運動、もしくはアレルゲンへの曝露によって誘発される症状のうちの観測できる及び/または測定できるほどの低減または不在を示した場合に、喘息の「処置」が成功したことになり得る。
【0107】
処置もしくは治療、例えばトリプターゼアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、またはこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)を含む治療に対する患者の「応答」または患者の「応答性」は、処置からまたは処置の結果として喘息のリスクがあるか、または喘息を有する患者に与えられる臨床的または治療的効果を指す。当業者であれば、容易に、患者が応答性であるかどうかを決定することになる立場にある。例えば、トリプターゼアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、またはこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)を含む治療に応答する喘息を有する患者は、1つもしくは複数の喘息の症状(例えば、反復性喘鳴、咳、呼吸困難、胸部圧迫感、夜間に発生もしくは悪化する症状、冷気、運動、もしくはアレルゲンへの曝露によって誘発される症状)の観測できる及び/または測定できるほどの低減または不在を示し得る。いくつかの実施形態では、応答は、肺機能の改善、例えば、FEV1%の改善であってもよい。
【0108】
「試料」及び「生体試料」という用語は、互換的に使用され、体液、体内組織(例えば、肺試料)、鼻試料(鼻スワブまたは鼻ポリープを含む)、痰、経鼻吸収試料、気管支吸収試料、細胞、または他のソースを含む個体から得た任意の生体試料を指す。体液には、例えば、細気管支洗浄液(BAL)、粘膜被覆液(MLF;例えば、鼻MLFまたは気管支MLFを含む)、リンパ液、血清、全新鮮血、凍結全血、血漿(新鮮または凍結を含む)、血清(新鮮または凍結を含む)、末梢血単核細胞、尿、唾液、精液、滑液、及び脊髄液が挙げられる。哺乳動物に由来する組織生検及び体液を得るための方法は当該技術分野で既知である。
【0109】
「抗体」という用語は、本明細書で最も広義に使用され、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを含むが、これらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
【0110】
「親和性成熟」抗体は、1つもしくは複数のHVR及び/またはフレームワーク領域に1つもしくは複数の変化を有するものであり、これらの変化が、そのような変化(複数可)を有さない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の向上をもたらす。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル、またはさらにはピコモルの親和性を有するであろう。親和性成熟抗体は、当該技術分野で既知の手順によって産生される。例えば、Marks et al.Bio/Technology 10:779-783,1992で、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和性成熟について説明される。HVR及び/またはフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、Barbas et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3809-3813,1994;Schier et al.Gene 169:147-155,1995;Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004,1995;Jackson et al.J.Immunol.154(7):3310-3319,1995;及びHawkins et al.J.Mol.Biol.226:889-896,1992で説明される。
【0111】
本明細書の目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に記載される、ヒト免役グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同一のアミノ酸配列を含んでもよく、またはそれは、アミノ酸配列変化を含有してもよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0112】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。別段の指示のない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合ペアのメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的及び例示的な実施形態が、以下に記載される。
【0113】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」とは、参照抗体と比較して抗原の重複するアミノ酸残基のセットと接触するか、または競合アッセイにおいて参照抗体のその抗原への結合を50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上遮断する抗体を指す。いくつかの実施形態では、抗体によって接触されたアミノ酸残基のセットは、参照抗体によって接触されたアミノ酸残基のセットと完全に重複するか、または部分的に重複してもよい。いくつかの実施形態では、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体は、競合アッセイにおいて参照抗体のその抗原への結合を50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上遮断する。逆に、参照抗体は、競合アッセイにおいて抗体のその抗原への結合を50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上遮断する。例示的な競合アッセイが本明細書に提供される。
【0114】
「抗体フラグメント」には、インタクトな抗体の一部分、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域が含まれる。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント、ダイアボディ、直鎖状抗体(米国特許第5,641,870,実施例2;Zapata et al.Protein Eng.8(10):1057-1062,1995を参照のこと)、一本鎖抗体分子、ならびに抗体フラグメントから形成される多特異性抗体が挙げられる。
【0115】
抗体のパパイン消化により、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントと、その残りの容易に結晶化する能力を反映した名称である「Fc」フラグメントとが産生される。Fabフラグメントは、L鎖全体に加えてH鎖の可変領域ドメイン(VH)、及び1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。抗体のペプシン処理により、単一の大きいF(ab’)2フラグメントが産出され、これは、概して、2価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合Fabフラグメントに対応し、依然として抗原に架橋することができる。Fab’フラグメントは、抗体のヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端に追加の数個の残基を有することが、Fabフラグメントとは異なっている。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が、遊離チオール基を担持するFab’の本明細書における呼称である。F(ab’)2抗体フラグメントは、元々は、間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントのペアとして産生された。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも既知である。
【0116】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端に及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば、しない場合もある。本明細書で特に指示がない限り、Fc領域または定常領域のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されているように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従っている。
【0117】
「Fv」は、密接な非共有結合にある1つの重鎖可変領域ドメイン及び1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これらの2つのドメインのフォールディングにより、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗原結合特異性を抗体に与える、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHのみを含むFvの半分)ですら、全結合部位より親和性が低い場合があるとはいえ、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0118】
「sFv」または「scFv」とも短縮される「一本鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に結合されるVH及びVL抗体ドメインを含む抗体フラグメントである。好ましくは、sFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これによりsFvは、抗原結合のための所望の構造を形成することができる。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315,1994を参照のこと。
【0119】
「ダイアボディ」という用語は、鎖内ではなく鎖間のVドメイン対合が達成され、二価フラグメント、すなわち、2つの抗原結合部位を有するフラグメントが得られるように、VHドメインとVLドメインとの間に短いリンカー(約5~10個の残基)を用いてsFvフラグメント(前の段落を参照のこと)を構築することによって調製された小さな抗体フラグメントを指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVH及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖に存在している、2つの「交差」sFvフラグメントのヘテロ二量体である。ダイアボディについては、例えば、EP 404,097;WO 93/11161;及びHollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448,1993に詳しく記載される。
【0120】
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体とは、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害または低減する抗体である。ある特定の遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にまたは完全に阻害する。例えば、抗トリプターゼ抗体に関して、いくつかの実施形態では、活性は、トリプターゼ酵素活性、例えばプロテアーゼ活性であり得る。その他の場合、活性は、気管支平滑筋細胞の増殖及び/またはコラーゲンベース収縮のトリプターゼ媒介性刺激であり得る。その他の場合、活性は、マスト細胞ヒスタミン放出(例えば、IgE誘発性ヒスタミン放出及び/またはトリプターゼ誘発性ヒスタミン放出)であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を少なくとも約1%、約5%、約10%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%阻害することができる。
【0121】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。抗体には5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分類できる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0122】
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に起因する生物学的活性を指し、抗体アイソタイプによって異なる。抗体のエフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、ファゴサイトーシス、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、ならびにB細胞活性化が挙げられる。
【0123】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」は、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)に分泌型Igが結合することにより、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原保有標的細胞に特異的に結合し、次いで細胞毒素により標的細胞を殺滅させることを可能にする、細胞傷害の形態を指す。抗体は細胞傷害性細胞を「武装」させ、そのような殺傷には必須である。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch et al.Annu.Rev.Immunol.9:457-492,1991の464頁の表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されるものなどのin vitro ADCCアッセイを行ってもよい。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、または加えて、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:652-656,1998に開示されるような動物モデルにおいて評価することができる。
【0124】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表す。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合し、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含むものであり、これらには、これらの受容体の対立遺伝子バリアント及び選択的スプライスされた形態が含まれる。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)を含み、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベース依存性阻害モチーフ(ITIM)を含有する(M.in Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234,1997の概説を参照のこと)。FcRについては、例えば、Ravetch et al.Annu.Rev.Immunol.9:457-492,1991;Capel et al.Immunomethods 4:25-34,1994;及びde Haas et al.J.Lab.Clin.Med.126:330-41,1995に概説される。将来的に同定されるものも含む他のFcRは、本明細書における「FcR」という用語に包含される。この用語はまた、母体IgGの胎児への移入を担う胎児性受容体であるFcRnを含む(例えば、Guyer et al.J.Immunol.117:587,1976;及びKim et al.J.Immunol.24:249,1994を参照のこと)。
【0125】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つまたは複数のFcRを発現し、エフェクター機能を果たす白血球である。好ましくは、本細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を果たす。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、及び好中球が挙げられ、PBMC及びNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、天然源、例えば血液から単離することができる。
【0126】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」とは、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、補体系の第1成分(C1q)が、同種抗原に結合した(適当なサブクラスの)抗体と結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイ、例えばGazzano-Santoro et al.J.Immunol.Methods 202:163,1996に記載のものが実施可能である。
【0127】
「エピトープ」は、抗体が選択的に結合する抗原の部分である。ポリペプチド抗原の場合、線状エピトープは、約4~15個(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12個)のアミノ酸残基のペプチド部分であり得る。非線状の立体構造エピトープは、タンパク質の三次元(3D)構造のすぐ近くにもたらされるポリペプチド配列の残基を含み得る。いくつかの実施形態では、エピトープは、抗体の任意の原子の4オングストローム(Å)以内にあるアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、エピトープは、抗体の任意の原子の3.5Å、3Å、2.5Å、または2Å以内にあるアミノ酸を含む。抗原(すなわち、パラトープ)と接触する抗体のアミノ酸残基は、例えば、抗原と複合体を形成した抗体の結晶構造を決定することによって、または水素/重水素交換を行うことによって決定することができる。
【0128】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書において互換的に使用され、天然の抗体構造に実質的に類似な構造を有するか、または本明細書に定義されるFc領域を含む重鎖を有する、抗体を指す。
【0129】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するもの、及び/またはヒト抗体を作成するための技法のうちの任意のものを用いて作製されているものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に除外する。
【0130】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般的に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般的に、配列のサブグループは、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD,vols.1-3,1991にあるようなサブグループである。一実施形態では、VLの場合、サブグループは、Kabat et al.(上記)にあるようなサブグループカッパIIIまたはカッパIVである。一実施形態では、VHの場合、サブグループは、Kabat et al.(上記)にあるようなサブグループIIIである。
【0131】
非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」形態とは、非ヒト抗体に由来する配列を最小限含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の抗体特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基により置き換えられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むことになる。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含む。さらなる詳細については、Jones et al.Nature 321:522-525,1986;Riechmann et al.Nature 332:323-329,1988及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596,1992を参照のこと。
【0132】
「免疫複合体」は、細胞傷害性薬剤を含むが、これらに限定されない1個以上の異種分子(複数可)にコンジュゲートされる抗体である。
【0133】
本明細書に開示される様々な抗体について記載するために用いられる場合、「単離」という用語は、抗体が発現された細胞または細胞培養物から特定され、分離及び/または回収されている、抗体を意味する。その天然環境の混入成分は、典型的にはポリペプチドの診断的または治療的使用を妨害する材料であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)法によって決定される、95%または99%を超える純度に精製される。抗体の純度を評価するための方法の概説については、例えば、Flatman et al.J.Chromatogr.B 848:79-87,2007を参照のこと。好ましい実施形態では、抗体は、(1)スピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)を使用してN末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(2)クマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を使用して非還元条件または還元条件下でSDS-PAGEによって均質になるまで精製される。単離抗体としては、組換え細胞内のin situの抗体が挙げられるが、これは、ポリペプチド天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないためである。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
【0134】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は同一であり、及び/または抗原上の同じエピトープに結合するが、例えば、自然発生の突然変異を含有する、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に発生する、可能性のあるバリアント抗体は例外である(かかるバリアントは一般に少量で存在する)。異なる決定基(エピトープ)に対して異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体の特徴を示しており、いかなる特定の方法による抗体の産生も必要とするものとして解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない、様々な技法によって作製されてもよく、モノクローナル抗体を作製するためのこのような方法及び他の例示的な方法が、本明細書に記載されている。ある特定の実施形態では、「モノクローナル抗体」という用語は、二重特異性抗体を包含する。
【0135】
「二価抗体」という用語は、抗原に対する2つの結合部位を有する抗体を指す。二価抗体は、限定されないが、IgG形式またはF(ab’)2形式であり得る。
【0136】
「多重特異性抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、1つの抗原上の2つ以上の決定基もしくはエピトープ、または複数の抗原上の2つ以上の決定基もしくはエピトープに結合する抗体を網羅する。そのような多重特異性抗体としては、完全長抗体、2つ以上のVL及びVHドメインを有する抗体、抗体フラグメント、例えば、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、及びトリアボディ、共有結合的または非共有結合的に結合された抗体フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。「ポリエピトープ特異性」とは、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。ある特定の実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。「二特異性(dual specificity)」または「二重特異性(bispecificity)」とは、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つの異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。しかしながら、二重特異性抗体とは対照的に、二特異性抗体は、アミノ酸配列が同一である2つの抗原結合アームを有し、各Fabアームは、2つの抗原を認識することができる。二特異性により、抗体は単一のFabまたはIgG分子として2つの異なる抗原と高い親和性で相互作用することができる。一実施形態によれば、多重特異性抗体は、5μM~0.001pM、3μM~0.001pM、1μM~0.001pM、0.5μM~0.001pM、または0.1μM~0.001pMの親和性で各エピトープと結合する。「単一特異性」とは、1つのエピトープにのみ結合する能力を指す。
【0137】
「ネイキッド抗体」は、異種性部分(例えば、細胞傷害性部分)または放射標識にコンジュゲートされていない抗体を指す。ネイキッド抗体は薬学的組成物中に存在してもよい。
【0138】
標的分子に対する抗体の結合に関して、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープに「結合する」または「結合すること」または「特異的結合」または「特異的に結合する」または「に特異的である」と言う用語は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子の結合と比較して分子の結合を決定することによって測定され得る。例えば、特異的結合は、標的と類似した対照分子、例えば過剰な非標識標的との競合によって決定することができる。この場合、プローブへの標識標的の結合が、過剰な非標識標的によって競合阻害されたら、特異的結合である。特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープに対して「特異的結合」または「に特異的に結合する」または「に特異的である」と言う用語は、本明細書において使用される場合、例えば、標的に対して10-4M以下、あるいは10-5M以下、あるいは10-6M以下、あるいは10-7M以下、あるいは10-8M以下、あるいは10-9M以下、あるいは10-10M以下、あるいは10-11M以下、あるいは10-12M以下のKD、または10-4M~10-6Mもしくは10-6M~10-10Mもしくは10-7M~10-9Mの範囲のKDを有する分子によって表してもよい。当業者であれば理解されるように、親和性及びKDの値は、逆相関している。抗原に対する高親和性は、低KD値によって測定される。一実施形態では、「特異的結合」という用語は、ある分子がいずれかの他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する結合を指す。
【0139】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定のセグメントが、抗体によって配列が大幅に異なるという事実を指す。可変または「V」ドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を規定する。しかしながら、可変性は可変ドメインの110アミノ酸スパンに均一に分布はしていない。その代わりに、V領域は、それぞれ9~12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる可変性の高い短領域によって分離された15~30のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる相対的に不変のストレッチからなる。「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書において使用される場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般的に、例えば、VLのおよそ24~34(L1)、50~56(L2)及び89~97(L3)残基、ならびにVHのおよそ26~35(H1)、49~65(H2)及び95~102(H3)残基(一実施形態では、H1はおよそ31~35残基である);Kabat et al.(上記))からのアミノ酸残基、及び/または「超可変ループ」(例えば、VLの26~32(L1)、50~52(L2)、及び91~96(L3)残基、及びVHの26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3);Chothia et al.J.Mol.Biol.196:901-917,1987からのそれらの残基を含む。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、ベータシート構造に接続し、ある場合には、その一部を形成するループを形成する、3つの超可変領域によって接続された、ベータシート立体配置を主に採用する4つのFRを含む。各鎖における超可変領域は、FRによって、他方の鎖の超可変領域と近接して保持されており、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat et al.(上記)を参照のこと)。したがって、HVR及びFR配列は、一般に、VH(またはVL)内でFR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4の順序で出現する。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
【0140】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基の番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置の番号付け」と言う用語及びそれらの変化形は、Kabat et al.(上記)における抗体の編集物(compilation)の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに用いられる番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用すると、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)、及び重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabat番号付けは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによって番号付けされた配列との相同領域でのアラインメントによって決定され得る。
【0141】
Kabat番号付けシステムは、一般に、可変ドメイン内の残基(軽鎖の残基約1~107及び重鎖の残基1~113)を指すときに用いられる(例えば、Kabat et.al(上記))。「EU番号付けシステム」または「EUインデックス」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基を指すときに用いられる(例えば、Kabat et.al(上記)に報告されているEUインデックス)。「KabatにあるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書に別途述べられない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号への言及は、Kabat番号付けシステムによる残基番号付けを意味する。本明細書に別途述べられない限り、抗体の定常ドメイン内の残基番号の参照は、EU番号付けシステムによる残基番号付けを意味する(例えば、米国仮出願第60/640,323号、EU番号付けに関する図を参照のこと)。
【0142】
本明細書に識別されるポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントが得られるように、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入した後に、いずれの保存的置換も配列同一性の一部とは見なさずに、候補配列内のアミノ酸残基が、比較されるポリペプチド内のアミノ酸残基と同一である割合として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを判定する目的のためのアラインメントは、当該技術分野における技術の範囲内である様々な手段で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者であれば、比較されている配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含め、アラインメントを測定するための適切なパラメータを判定することができる。しかしながら、本明細書における目的のためには、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって記述され、ソースコードは、ユーザ文書と共に米国著作権庁(U.S.Copyright Office),Washington D.C.,20559に提出されており、米国著作権登録番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に利用可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dで使用するために編集されるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変更はない。
【0143】
アミノ酸配列比較のためにALIGN-2が用いられる場合、所与のアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと対比した、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと対比したある特定のアミノ酸配列同一性%を有する、またはそれを含む、所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように算出される:
100×分数X/Y
(式中、Xは、そのプログラムのA及びBのアラインメント内における配列アラインメントプログラムALIGN-2により同一マッチとしてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%と等しくならないことが理解されるであろう。別途具体的に記述されない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるように、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して取得される。
【0144】
当技術分野で「次世代シーケンシング」または「第2世代シーケンシング」としても知られている「超並列シーケンシング(massively parallel sequencing)」または「超並列シーケンシング(massive parallel sequencing)」とは、任意のハイスループット核酸シーケンシング手法を意味する。これらの手法は通常、空間的に分離され、クローン増幅されたDNA鋳型または単一のDNA分子の多数(例えば、数千、数百万、または数十億)の並列シークエンシングを含む。例えば、Metzker,Nature Reviews Genetics 11:31-36,2010を参照のこと。
【0145】
「添付文書」という用語は、適応症、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌、及び/または治療薬製品の使用に関する警告に関する情報を含む、かかる治療薬製品の商的パッケージに習慣的に含まれる指示を指すために使用される。
【0146】
「医薬製剤」及び「医薬組成物」という用語は、本明細書では互換的に使用され、そこに含まれる活性成分の生物学的活性が効果的であることを可能にするような形態である調製物を指し、製剤が投与される対象に対して許容できないほど毒性である追加の成分を含まない。かかる製剤は、滅菌である。
【0147】
「滅菌」製剤は、無菌であるか、または全ての生存微生物及びそれらの胞子を含まないか、またはそれらを本質的に含まない。
【0148】
「薬学的に許容可能な担体」は、対象に対して非毒性である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容可能な担体としては、限定されないが、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または保存剤が挙げられる。
【0149】
「キット」は、少なくとも1つの試薬、例えば、本明細書に記載される患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定するための、またはバイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の発現レベルを決定するためのプローブ、及び/またはマスト細胞媒介性炎症性疾患、例えば喘息の処置のための薬剤を含む任意の製品(例えば、パッケージまたは容器)である。本製品は、好ましくは、本発明の方法を実行するためのユニットとして、奨励、流通、または販売される。
【0150】
II.本発明の治療方法及び使用
本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患(例えば、喘息)を有する患者を処置する方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、本発明のバイオマーカー、例えばトリプターゼ(例えば、患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数及び/またはトリプターゼの発現レベル)の存在及び/または発現レベルに基づいて治療を患者に施すことを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、治療、例えば、トリプターゼアンタゴニスト、Fcイプシロン受容体(FcεR)アンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、またはこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)を含む治療を施すことを含む。いくつかの実施形態では、治療は、マスト細胞指向性療法(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、及び/またはPAR2アンタゴニスト)を含む。いくつかの実施形態では、治療は、トリプターゼアンタゴニスト(例えば、本明細書またはWO2018/148585に記載の任意の抗トリプターゼ抗体などの抗トリプターゼ抗体)及びIgEアンタゴニスト(例えば、抗IgE抗体、例えば、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標)))を含む。
【0151】
例えば、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者にマスト細胞指向性治療を施すことを含む、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)を特徴とし、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、基準レベルのトリプターゼ以上であるトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。例えば、いくつかの実施形態では、患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されている。他の実施形態では、患者の試料は、基準レベルのトリプターゼ以上のトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。
【0152】
別の態様では、本発明は、(i)基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である活性トリプターゼ対立遺伝子数を含む遺伝子型、または(ii)基準レベルのトリプターゼ以上である患者の試料中のトリプターゼの発現レベル、を有すると同定された、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法を特徴とし、該方法は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者にマスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)を施すことを含む。例えば、いくつかの実施形態では、患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと同定されている。他の実施形態では、患者は、基準レベルのトリプターゼ以上である、患者の試料中におけるトリプターゼの発現レベルを有すると同定されている。
【0153】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法を特徴とし、該方法は、(a)患者から核酸を含む試料を入手することと、(b)試料のジェノタイピングを行い、トリプターゼの基準レベル以上の活性トリプターゼ対立遺伝子数の存在を検出することと、(c)トリプターゼの基準レベル以上の活性トリプターゼ対立遺伝子数を有する患者を、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)を含む治療)による処置から効果を受ける可能性が高いと同定することと、(d)マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)を含む治療)を患者に施すことと、を含む。
【0154】
なおさらなる態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法を特徴とし、該方法は、(a)患者から核酸またはタンパク質を含む試料を入手することと、(b)発現アッセイを実施し、トリプターゼの基準レベル以上のトリプターゼの発現レベルを検出することと、(c)トリプターゼの基準レベル以上のトリプターゼの発現レベルを有する患者を、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)を含む治療)による処置から効果を受ける可能性が高いと同定することと、(d)マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)を含む治療)を患者に施すことと、を含む。いくつかの実施形態では、試料はタンパク質を含み、発現アッセイはELISAまたは免疫アッセイである。
【0155】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、薬剤は単剤療法として患者に投与される。
【0156】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、本方法は、TH2経路阻害剤を患者に投与することをさらに含む。
【0157】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者にIgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療を施すことを含む、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法を特徴とし、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、トリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。例えば、いくつかの実施形態では、患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されている。他の実施形態では、患者の試料は、トリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。
【0158】
別の態様では、本発明は、(i)基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満である活性トリプターゼ対立遺伝子数を含む遺伝子型、または(ii)トリプターゼの基準レベル未満である患者の試料中のトリプターゼの発現レベル、を有すると同定された、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法を特徴とし、該方法は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者にIgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療を施すことを含む。例えば、いくつかの実施形態では、患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと同定されている。他の実施形態では、患者は、トリプターゼの基準レベル未満である、患者の試料中におけるトリプターゼの発現レベルを有すると同定されている。
【0159】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法を特徴とし、該方法は、(a)患者から核酸を含む試料を入手することと、(b)試料のジェノタイピングを行い、トリプターゼの基準レベル未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数の存在を検出することと、(c)トリプターゼの基準レベル未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を有する患者を、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストによる処置から効果を受ける可能性が高いと同定することと、(d)IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを患者に投与することと、を含む。
【0160】
なおさらなる態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法を特徴とし、該方法は、(a)患者から核酸またはタンパク質を含む試料を入手することと、(b)発現アッセイを実施し、トリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベルを検出することと、(c)トリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベルを有する患者を、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストによる処置から効果を受ける可能性が高いと同定することと、(d)IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを患者に投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、試料はタンパク質を含み、発現アッセイはELISAまたは免疫アッセイである。
【0161】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、本方法は、追加のTH2経路阻害剤を患者に投与することをさらに含む。
【0162】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は、患者のゲノムのTPSAB1及びTPSB2遺伝子座のシークエンシングによって決定される。サンガーシークエンシングまたは超並列(例えば、ILLUMINA(登録商標))シークエンシングなど、任意の好適なシークエンシング手法を使用可能である。いくつかの実施形態では、TPSAB1遺伝子座は、(i)5’-CTG GTG TGC AAG GTG AAT GG-3’(配列番号31)のヌクレオチド配列を含む第1のフォワードプライマー及び5’-AGG TCC AGC ACT CAG GAG GA-3’(配列番号32)のヌクレオチド配列を含む第1のリバースプライマーの存在下で対象の核酸を増幅してTPSAB1アンプリコンを形成することと、(ii)TPSAB1アンプリコンをシークエンシングすることとを含む方法によってシークエンシングされる。いくつかの実施形態では、TPSAB1アンプリコンのシークエンシングには、第1のフォワードプライマー及び第1のリバースプライマーの使用が含まれる。いくつかの実施形態では、TPSB2遺伝子座は、(i)5’-GCA GGT GAG CCT GAG AGT CC-3’(配列番号33)のヌクレオチド配列を含む第2のフォワードプライマー及び5’-GGG ACC TTC ACC TGC TTC AG-3’(配列番号34)のヌクレオチド配列を含む第2のリバースプライマーの存在下で該対象の核酸を増幅してTPSB2アンプリコンを形成することと、(ii)TPSB2アンプリコンをシークエンシングすることとを含む方法によってシークエンシングされる。いくつかの実施形態では、TPSB2アンプリコンのシークエンシングは、第2のフォワードプライマーを使用することと、5’-CAG CCA GTG ACC CAG CAC-3’(配列番号35)のヌクレオチド配列を含むリバースプライマーをシークエンシングすることと、を含む。いくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は、患者のゲノムのTPSAB1及びTPSB2遺伝子座の変異の存在を決定することによって決定され得る。いくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は、以下の式:4-患者の遺伝子型におけるトリプターゼα及びトリプターゼβIIIフレームシフト(βIIIFS)対立遺伝子の数の合計で決定される。いくつかの実施形態では、トリプターゼアルファはTPSAB1でc733 G>A SNPを検出することによって検出される。いくつかの実施形態では、TPSAB1でc733 G>A SNPを検出することは、多型CTGCAGGCGGGCGTGGTCAGCTGGG[G/A]CGAGGGCTGTGCCCAGCCCAACCGG(配列番号36)で患者の遺伝子型を検出することを含み、c733 G>A SNPにおけるAの存在は、トリプターゼアルファを示す。いくつかの実施形態では、トリプターゼベータIIIFSは、TPSB2でc980_981insC変異を検出することによって検出される。いくつかの実施形態では、TPSB2でc980_981insC変異を検出することは、ヌクレオチド配列CACACGGTCACCCTGCCCCCTGCCTCAGAGACCTTCCCCCCC(配列番号37)を検出することを含む。
【0163】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、3または4の活性トリプターゼ対立遺伝子数を有する。いくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は3である。他の実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は4である。
【0164】
前述の方法のいずれかの他の実施形態では、患者は、0、1、または2の活性トリプターゼ対立遺伝子数を有する。いくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は0である。いくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は1である。他の実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は2である。
【0165】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は、基準試料、基準母集団において決定することができ、及び/または事前に割り当てられた値(例えば、個体の第1のサブセットを個体の第2のサブセットから有意に(例えば、統計学的に有意に)分離するために事前に決定されたカットオフ値(例えば、治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)への応答に関して)であってもよい。いくつかの実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は所定の値である。いくつかの実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は、患者が属するマスト細胞媒介性炎症性疾患(例えば、喘息)において予め決定されている。ある特定の実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は、調査されたマスト細胞媒介性炎症性疾患(例えば、喘息)における、または所与の母集団における値の全体的な分布から決定される。いくつかの実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は、0~4の範囲の整数(例えば、0、1、2、3、または4)である。特定の実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は3である。
【0166】
上記方法のうちのいずれにおいても、患者の遺伝子型は、本明細書(例えば、発明を実施するための形態のIV節または実施例1)に記載されているか、または当該技術分野で既知である任意の方法またはアッセイを使用して決定することができる。
【0167】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、2型バイオマーカーは、TH2細胞関連サイトカイン、ペリオスチン、好酸球数、好酸球のシグネチャー、FeNO、またはIgEである。いくつかの実施形態では、TH2細胞関連サイトカインは、IL-13、IL-4、IL-9、またはIL-5である。
【0168】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、バイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の発現レベルは、タンパク質の発現レベルである。例えば、いくつかの実施形態では、タンパク質発現レベルは、免疫アッセイ(例えば、マルチプレックス免疫アッセイ)、ELISA、ウェスタンブロット、または質量分析法を使用して測定される。例えば、発明を実施するための形態のセクションVを参照のこと。いくつかの実施形態では、トリプターゼのタンパク質発現レベルは、活性トリプターゼの発現レベルである。他の実施形態では、トリプターゼのタンパク質発現レベルは、総トリプターゼの発現レベルである。
【0169】
前述の方法のいずれかの他の実施形態では、バイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の発現レベルは、mRNAの発現レベルである。例えば、いくつかの実施形態では、mRNA発現レベルは、PCR法(例えば、qPCR)またはマイクロアレイチップを使用して測定されている。例えば、発明を実施するための形態のセクションVを参照のこと。
【0170】
上記方法または使用のうちのいずれにおいても、患者から得られる試料中の本発明のバイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の発現レベルは、バイオマーカーの基準レベルに対して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、またはそれ以上変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、患者に由来する試料中の本発明のバイオマーカーの発現レベルは、バイオマーカーの基準レベルに対して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、またはそれ以上増加し得る。他の実施形態では、患者に由来する試料中の本発明のバイオマーカーの発現レベルは、バイオマーカーの基準レベルに対して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、またはそれ以上減少し得る。
【0171】
いくつかの実施形態では、基準レベルは、例えば、健康な対象において、または障害(例えば、マスト細胞媒介性炎症性疾患(例えば、喘息))を有する患者の群において、バイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の発現レベルの全体分布の、例えば、20~99パーセンタイルの間の任意のパーセンタイル(例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または99パーセンタイル)に設定され得る。特定の実施形態では、基準レベルは、喘息患者の集団における値の全体分布の25パーセンタイルに設定され得る。他の特定の実施形態では、基準レベルは、喘息を有する患者の集団における値の全体分布の50パーセンタイルに設定され得る。他の実施形態では、基準レベルは、喘息を有する患者の集団における値の全体分布の中央値であり得る。
【0172】
患者に由来する任意の好適な試料は、前述の方法のいずれにおいても使用可能であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、患者に由来する試料は、血液試料(例えば、全血試料、血清試料、血漿試料、またはそれらの組み合わせ)、組織試料、痰試料、細気管支洗浄液試料、粘膜被覆液(MLF)試料、気管支吸収試料、または経鼻吸収試料である。
【0173】
本発明はまた、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法において使用するための、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤)を特徴とし、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、基準レベルのトリプターゼ以上であるトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満である2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、該薬剤は単剤療法として使用するためのものである。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されており、該薬剤はTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである。
【0174】
別の態様では、本発明はまた、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置するための医薬の製造において、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤)の使用を提供し、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、基準レベルのトリプターゼ以上であるトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、該薬剤は単剤療法として使用するためのものである。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されており、該薬剤はTH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである。
【0175】
さらに別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置する方法において使用するための、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを特徴とし、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、トリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上の2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストは、TH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである。
【0176】
さらなる態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を処置するための医薬の製造における、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストの使用を提供し、(i)患者の遺伝子型は、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数を含むと決定されているか、または(ii)患者の試料は、トリプターゼの基準レベル未満のトリプターゼの発現レベルを有すると決定されている。いくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上の2型バイオマーカーのレベルを有すると決定されており、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストは、TH2経路阻害剤と組み合わせて使用するためのものである。
【0177】
前述の方法または使用のいずれかは、患者にトリプターゼアンタゴニストを投与することを含み得る。トリプターゼアンタゴニストは、トリプターゼアルファアンタゴニスト(例えば、トリプターゼアルファ1アンタゴニスト)またはトリプターゼベータアンタゴニスト(例えば、トリプターゼベータ1、トリプターゼベータ2、及び/またはトリプターゼベータ3アンタゴニスト)であり得る。いくつかの実施形態では、トリプターゼアンタゴニストは、トリプターゼアルファアンタゴニスト及びトリプターゼベータアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、トリプターゼアンタゴニスト(例えば、トリプターゼアルファアンタゴニスト及び/またはトリプターゼベータアンタゴニスト)は、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼアルファ抗体及び/または抗トリプターゼベータ抗体)である。以下のセクションVIIに記載されている抗トリプターゼ抗体を使用可能である。
【0178】
前述の方法または使用のいずれかは、患者にFcεRアンタゴニストを投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、FCεRアンタゴニストは、FcεRIα、FcεRIβ、及び/またはFcεRIγを阻害する。他の実施形態では、FcεRアンタゴニストは、FcεRIIを阻害する。さらに他の実施形態では、FcεRアンタゴニストは、FcεRシグナル伝達経路のメンバーを阻害する。例えば、いくつかの実施形態では、FcεRアンタゴニストは、チロシンプロテインキナーゼLyn(Lyn)、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、チロシンプロテインキナーゼFyn(Fyn)、脾臓関連チロシンキナーゼ(Syk)、T細胞活性化用リンカー(LAT)、増殖因子受容体結合タンパク質2(Grb2)、セブンレスの息子(Sos)、Ras、Raf-1、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ1(MEK)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ1(ERK)、細胞質型ホスホリパーゼA2(cPLA2)、アラキドン酸5-リポキシゲナーゼ(5-LO)、アラキドン酸5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)、グアニンヌクレオチド交換因子VAV(Vav)、Rac、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ3、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ7、p38 MAPキナーゼ(p38)、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)、増殖因子受容体結合タンパク質2-関連タンパク質2(Gab2)、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼ(PI3K)、ホスホリパーゼCガンマ(PLCγ)、プロテインキナーゼC(PKC)、3-ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1(PDK1)、RACセリン/スレオニンプロテインキナーゼ(AKT)、ヒスタミン、ヘパリン、インターロイキン(IL)-3、IL-4、IL-13、IL-5、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、ロイコトリエン(例えば、LTC4、LTD4、及びLTE4)、及びプロスタグランジン(例えば、PDG2)を阻害する。いくつかの実施形態では、FcεRアンタゴニストは、BTK阻害剤(例えば、GDC-0853、アカラブルチニブ、GS-4059、スペブルチニブ、BGB-3111、またはHM71224)である。
【0179】
上記の方法または使用のいずれかは、IgE+B細胞枯渇剤(例えば、IgE+B細胞枯渇抗体)を患者に投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、IgE+B細胞枯渇抗体は抗M1’ドメイン抗体である。任意の好適な抗M1’ドメイン抗体、例えば、本明細書または参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2008/116149号に記載の任意の抗M1’ドメイン抗体を使用し得る。いくつかの実施形態では、抗M1’ドメイン抗体はアフコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗M1’ドメイン抗体は、キリズマブまたは47H4である(例えば、Brightbill et al.J.Clin.Invest.120(6):2218-2229,2010を参照のこと)。
【0180】
上記の方法または使用のいずれかは、マスト細胞または好塩基球枯渇剤(例えば、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体)を患者に投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、抗体はマスト細胞を枯渇させる。他の実施形態では、抗体は好塩基球を枯渇させる。さらに他の実施形態では、抗体はマスト細胞及び好塩基球を枯渇させる。
【0181】
前述の方法または使用のいずれかは、患者にPAR2アンタゴニストを投与することを含み得る。例示的なPAR2アンタゴニストには、小分子阻害剤(例えば、K-12940、K-14585、ペプチドFSLLRY-NH2(配列番号30)、GB88、AZ3451、及びAZ8838)、可溶性受容体、siRNA、及び抗PAR2抗体(例えば、MAB3949及びFab3949)が含まれる。
【0182】
前述の方法または使用のいずれかは、患者にIgEアンタゴニストを投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、IgEアンタゴニストは抗IgE抗体である。任意の好適な抗IgE抗体を使用することができる。例えば、抗IgE抗体は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,961,964号に記載の任意の抗IgE抗体であり得る。例示的な抗IgE抗体には、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))、E26、E27、CGP-5101(Hu-901)、HA、リゲリズマブ、及びタリズマブが含まれる。特定の実施形態では、抗IgE抗体は、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))である。
【0183】
オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))の重鎖可変(VH)ドメインのアミノ酸配列は次のとおりである(HVR-H1、-H2、及び-H3のアミノ酸配列には下線が引かれている):
オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))の軽鎖可変(VL)ドメインのアミノ酸配列は次のとおりである(HVR-L1、-L2、及び-L3のアミノ酸配列には下線が引かれている):
【0184】
したがって、いくつかの実施形態では、抗IgE抗体は、次の6つのHVR:(a)GYSWNのアミノ酸配列(配列番号40)を含むHVR-H1、(b)SITYDGSTNYNPSVKGのアミノ酸配列(配列番号41)を含むHVR-H2、(c)GSHYFGHWHFAVのアミノ酸配列(配列番号42)を含むHVR-H3、(d)RASQSVDYDGDSYMNのアミノ酸配列(配列番号43)を含むHVR-L1、(e)AASYLESのアミノ酸配列(配列番号44)を含むHVR-L2、及び(f)QQSHEDPYTのアミノ酸配列(配列番号45)を含むHVR-L3、のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ全てを含む。いくつかの実施形態では、抗IgE抗体は、(a)配列番号38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号39のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメイン、を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号38のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLドメインは配列番号39のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号38のアミノ酸配列を含み、VLドメインは配列番号39のアミノ酸配列を含む。本明細書に記載される抗IgE抗体のいずれかは、例えば、以下のセクションVIIにおいて、本明細書に記載される任意の抗トリプターゼ抗体と組み合わせて使用され得る。
【0185】
前述の方法または使用のいずれかは、患者にTH2経路阻害剤を投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、TH2経路阻害剤は、インターロイキン2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、ヤーヌスキナーゼ1(JAK1)(例えば、ルキソリチニブ、トファシチニブ、オクラシチニブ、バリシチニブ、フィルゴチニブ、ガンドチニブ、レスタウルチニブ、モメロチニブ、パクリチニブ、ウパダシチニブ、ペフィシチニブ、及びフェドラチニブ)、GATA結合タンパク質3(GATA3)、IL-9(例えば、MEDI-528)、IL-5(例えば、メポリズマブ、CAS番号196078-29-2;レシリズマブ)、IL-13(例えば、IMA-026、IMA-638(別名アンルキンズマブ、INN番号910649-32-0;QAX-576;IL-4/IL-13トラップ)、トラロキヌマブ(別名CAT-354、CAS番号1044515-88-9);AER-001、ABT-308(別名ヒト化13C5.5抗体)、IL-4(例えば、AER-001、IL-4/IL-13トラップ)、OX40L、TSLP、IL-25、IL-33、及びIgE(例えば、XOLAIR(登録商標)、QGE-031;及びMEDI-4212);ならびに受容体、例えば、IL-9受容体、IL-5受容体(例えば、MEDI-563(ベンラリズマブ、CAS番号1044511-01-4))、IL-4受容体アルファ(例えば、AMG-317、AIR-645)、IL-13受容体アルファ1(例えば、R-1671)及びIL-13受容体アルファ2、OX40、TSLP-R、IL-7Rアルファ(TSLPの補助受容体)、IL-17RB(IL-25の受容体)、ST2(IL-33の受容体)、CCR3、CCR4、CRTH2(例えば、AMG-853、AP768、AP-761、MLN6095、ACT129968)、FcεRI、FcεRII/CD23(IgEの受容体)、Flap(例えば、GSK2190915)、Sykキナーゼ(R-343、PF3526299);CCR4(AMG-761)、TLR9(QAX-935)、ならびにCCR3、IL-5、IL-3、及びGM-CSFのマルチサイトカイン阻害剤(例えば、TPI ASM8)から選択される標的のいずれかを阻害する。
【0186】
前述の方法または使用のいずれかは、患者に追加の治療薬を投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、TH2経路阻害剤、コルチコステロイド、IL-33軸結合アンタゴニスト、TRPA1アンタゴニスト、気管支拡張剤または喘息症状抑制剤、免疫調節剤、チロシンキナーゼ阻害剤、及びホスホジエステラーゼ阻害剤からなる群から選択される。このような併用療法については、以下でさらに説明する。
【0187】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、以下に記載されるような、喘息治療薬である。中等度の喘息は、現在、日常的に吸入される抗炎症性コルチコステロイドまたはマスト細胞阻害剤、例えば、必要に応じて(1日あたり3~4回)吸入されるベータ2アゴニストを加えたクロモグリク酸ナトリウムまたはネドクロミルによって処置して、突発的な症状(breakthrough symptoms)またはアレルゲンもしくは運動誘発性喘息を緩和する。例示的な吸入コルチコステロイドとしては、QVAR(登録商標)、PULMICORT(登録商標)、SYMBICORT(登録商標)、AEROBID(登録商標)、FLOVENT(登録商標)、FLONASE(登録商標)、ADVAIR(登録商標)、及びAZMACORT(登録商標)が挙げられる。追加の喘息治療薬には、長時間作用性呼吸器作用薬(LABD)が含まれる。ある特定の実施形態では、LABDは、長時間作用性ベータ-2アゴニスト(LABA)、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト(LTRA)、長時間作用性ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)、テオフィリン、または経口コルチコステロイド(OCS)である。例示的なLABDとしては、SYMBICORT(登録商標)、ADVAIR(登録商標)、BROVANA(登録商標)、FORADIL(登録商標)、PERFOROMIST(商標)、及びSEREVENT(登録商標)が挙げられる。
【0188】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、気管支拡張薬または喘息症状制御薬を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、気管支拡張薬または喘息制御薬は、β2アドレナリン作動性アゴニスト、例えば、短時間作用性β2アゴニスト(SABA)(アルブテロールなど)、または長時間作用性β2アドレナリン作動性アゴニスト(LABA)である。いくつかの実施形態では、LABAは、サルメテロール、アベジテロール、インダカテロール、ビランテロール、及び/またはホルモテロール(ホルモテロールフマル酸脱水物)である。いくつかの実施形態では、喘息制御薬は、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト(LTRA)である。いくつかの実施形態では、LTRAは、モンテルカスト、ザフィルルカスト、及び/またはジロートンである。いくつかの実施形態では、気管支拡張薬または喘息制御薬は、長時間作用性ムスカリン性アセチルコリン受容体(コリン作動性)アンタゴニスト(LAMA)などのムスカリンアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、LAMAは、グリコピロニウムである。いくつかの実施形態では、気管支拡張薬または喘息制御薬は、苦味受容体(TAS2Rなど)などのイオンチャネルのアゴニストである。
【0189】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、気管支拡張薬を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、気管支拡張薬は吸入気管支拡張薬である。いくつかの実施形態では、吸入気管支拡張薬は、β2アドレナリン作動性アゴニストである。いくつかの実施形態では、β2-アドレナリン作動性アゴニストは、短時間作用性β2-アドレナリン作動性アゴニスト(SABA)である。一部の実施形態では、SABAは、ビトールテロール、フェノテロール、イソプロテレノール、レバルブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、アルブテロール、及び/またはテルブタリンである。いくつかの実施形態では、β2-アドレナリン作動性アゴニストは、長時間作用性β2-アドレナリン作動性アゴニスト(LABA)である。いくつかの実施形態では、LABAは、アルホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、アベジテロール、カルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、及び/またはビランテロールである。いくつかの実施形態では、吸入気管支拡張薬は、ムスカリン受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、ムスカリン受容体アンタゴニストは、短時間作用性ムスカリン受容体アンタゴニスト(SAMA)である。いくつかの実施形態では、SAMAは、イプラトロピウム臭化物である。いくつかの実施形態では、ムスカリン受容体アンタゴニストは、長時間作用性ムスカリン受容体アンタゴニスト(LAMA)である。いくつかの実施形態では、LAMAは、チオトロピウム臭化物、グリコピロニウム臭化物、ウメクリジニウム臭化物、アクリジニウム臭化物、及び/またはレベフェナシンである。いくつかの実施形態では、吸入気管支拡張薬は、SABA/SAMAの組み合わせである。いくつかの実施形態では、SABA/SAMAの組み合わせは、アルブテロール/イプラトロピウムである。いくつかの実施形態では、吸入気管支拡張薬は、LABA/LAMAの組み合わせである。いくつかの実施形態では、LABA/LAMAの組み合わせは、ホルモテロール/アクリジニウム、ホルモテロール/グリコピロニウム、ホルモテロール/チオトロピウム、インダカテロール/グリコピロニウム、インダカテロール/チオトロピウム、オロダテロール/チオトロピウム、サルメテロール/チオトロピウム、及び/またはビランテロール/ウメクリジニウムである。いくつかの実施形態では、吸入気管支拡張薬は、二機能性気管支拡張薬である。いくつかの実施形態では、二機能性気管支拡張薬は、ムスカリンアンタゴニスト/β2アゴニスト(MABA)である。いくつかの実施形態では、MABAは、バテフェンテロール、THRX 200495、AZD 2115、LAS 190792、TEI3252、PF-3429281、及び/またはPF-4348235である。いくつかの実施形態では、吸入気管支拡張薬は、TAS2Rのアゴニストである。いくつかの実施形態では、気管支拡張薬は、噴霧型のSABAである。いくつかの実施形態では、噴霧型のSABAは、アルブテロール及び/またはレバルブテロールである。いくつかの実施形態では、気管支拡張薬は、噴霧型のLABAである。いくつかの実施形態では、噴霧型のLABAは、アルホルモテロール及び/またはホルモテロールである。いくつかの実施形態では、気管支拡張薬は、噴霧型のSAMAである。いくつかの実施形態では、噴霧型のSAMAは、イプラトロピウムである。いくつかの実施形態では、気管支拡張薬は、噴霧型のLAMAである。いくつかの実施形態では、噴霧型のLAMAは、グリコピロニウム及び/またはレベフェナシンである。いくつかの実施形態では、気管支拡張薬は、噴霧型のSABA/SAMAの組み合わせである。いくつかの実施形態では、噴霧型のSABA/SAMAの組み合わせは、アルブテロール/イプラトロピウムである。いくつかの実施形態では、気管支拡張薬は、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト(LTRA)である。いくつかの実施形態では、LTRAは、モンテルカスト、ザフィルルカスト、及び/またはジロートンである。いくつかの実施形態では、気管支拡張薬は、メチルキサンチンである。いくつかの実施形態では、メチルキサンチンは、テオフィリンである。
【0190】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、免疫調節剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、クロモリンを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、メチルキサンチンを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、メチルキサンチンは、テオフィリンまたはカフェインである。
【0191】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、吸入コルチコステロイド(ICS)または経口コルチコステロイドなどの1つまたは複数のコルチコステロイドを投与することをさらに含む。非限定的な例示的コルチコステロイドには、吸入コルチコステロイド、例えば、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、モメタゾン、及び/またはトリアムシノロンアセトニド、及び経口コルチコステロイド、例えば、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、及びプレドニゾンが挙げられる。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドはICSである。いくつかの実施形態では、ICSは、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、モメタゾン、シクレソニド、及び/またはトリアムシノロンである。いくつかの実施形態では、本方法は、ICS/LABA及び/またはLAMAの組み合わせを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、ICS/LABA及び/またはLAMAの組み合わせは、プロピオン酸フルチカゾン/サルメテロール、ブデソニド/ホルモテロール、モメタゾン/ホルモテロール、フロ酸フルチカゾン/ビランテロール、プロピオン酸フルチカゾン/ホルモテロール、ベクロメタゾン/ホルモテロール、フロ酸フルチカゾン/ウメクリジニウム、フロ酸フルチカゾン/ビランテロール/ウメクリジニウム、フルチカゾン/サルメテロール/チオトロピウム、ベクロメタゾン/ホルモテロール/グリコピロニウム、ブデソニド/ホルモテロール/グリコピロニウム、及び/またはブデソニド/ホルモテロール/チオトロピウムである。いくつかの実施形態では、本方法は、噴霧型のコルチコステロイドを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、噴霧型のコルチコステロイドは、ブデソニドである。いくつかの実施形態では、本方法は、経口または静脈内コルチコステロイドを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、経口または静脈内コルチコステロイドは、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、及び/またはヒドロコルチゾンである。
【0192】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、アミノサリチル酸、ステロイド、生物学的製剤、チオプリン、メトトレキサート、カルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンまたはタクロリムス、及び抗生物質から選択される1つまたは複数の活性成分を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、さらなる活性成分を経口または局所製剤で投与することを含む。アミノサリチル酸の例には、Eudragit-Sコーティング、pH依存型メサラミン、エチルセルロースコーティングメサラミン、及びマルチマトリックス放出メサラミンなどの形態の、4-アミノサリチル酸、スルファサラジン、バルサラジド、オルサラジン、及びメサラジンが挙げられる。ステロイドの例には、コルチコステロイドまたはグルココルチコステロイドが挙げられる。コルチコステロイドの例としては、プレドニゾン及びヒドロコルチゾンまたはメチルプレドニゾロン、または第2世代のコルチコステロイド、例えばブデソニドまたはアザチオプリン、例えばヒドロコルチゾン浣腸またはヒドロコルチゾンフォームのような形態のものが挙げられる。生物学的製剤の例には、エタネルセプト、腫瘍壊死因子アルファに対する抗体、例えばインフリキシマブ、アダリムマブまたはセルトリズマブ、IL-12及びIL-23に対する抗体、例えば、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、エトロリズマブ、ならびにナタリズマブが挙げられる。チオプリンの例には、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、及びチオグアニンが挙げられる。抗生物質の例には、バンコマイシン、リファキシミン、メトロニダゾール、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、ジアミノジフェニルスルホン、及びシプロフロキサシン、及びガンシクロビルのような抗ウイルス剤が挙げられる。
【0193】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、抗線維化剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗線維化剤は、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)刺激コラーゲン合成を阻害し、細胞外マトリックスを減少させる、及び/または線維芽細胞増殖を阻止する。いくつかの実施形態では、抗線維化剤は、ピルフェニドンである。いくつかの実施形態では、抗線維化剤は、PBI-4050である。いくつかの実施形態では、抗線維化剤は、チペルカスト(tipelukast)である。
【0194】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、チロシンキナーゼ阻害剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤は、1つまたは複数の線維形成増殖因子の生成を媒介するチロシンキナーゼを阻害する。いくつかの実施形態では、線維形成増殖因子は、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、及び/または線維芽細胞増殖因子である。いくつかの実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤は、イマチニブ及び/またはニンテダニブである。いくつかの実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤は、ニンテダニブである。いくつかの実施形態では、本方法は、下痢止め剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、下痢止め剤は、ロペラミドである。
【0195】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、抗体を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗体は、抗インターロイキン(IL)-13抗体である。いくつかの実施形態では、抗IL-13抗体は、トラロキヌマブである。いくつかの実施形態では、抗体は、抗IL-4/抗IL-13抗体である。いくつかの実施形態では、抗IL-4/抗IL-13抗体は、SAR 156597である。いくつかの実施形態では、抗体は、抗結合組織増殖因子(CTGF)抗体である。いくつかの実施形態では、抗CTGF抗体は、FG-3019である。いくつかの実施形態では、抗体は、抗リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)抗体である。いくつかの実施形態では、抗LOXL2抗体は、シムツズマブである。いくつかの実施形態では、抗体は、抗αvβ6インテグリン受容体抗体である。いくつかの実施形態では、抗αvβ6インテグリン受容体抗体はSTX-100である。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0196】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、リゾホスファチジン酸-1(LPA1)受容体アンタゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、LPA1受容体アンタゴニストは、BMS-986020である。いくつかの実施形態では、本方法は、ガレクチン3阻害剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、ガレクチン3阻害剤はTD-139である。
【0197】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、緩和療法を施すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、緩和療法は、抗生物質、抗不安薬、コルチコステロイド、及びオピオイドの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、抗生物質は広域抗生物質である。いくつかの実施形態では、抗生物質は、ペニシリン、β-ラクタマーゼ阻害剤、及び/またはセファロスポリンである。いくつかの実施形態では、抗生物質は、ピペラシリン/タゾバクタム、セフィキシム、セフトリアキソン、及び/またはセフジニルである。いくつかの実施形態では、抗不安薬は、アルプラゾラム、ブスピロン、クロルプロマジン、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、及び/またはプロメタジンである。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドはグルココルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、グルココルチコステロイドは、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、及び/またはヒドロコルチゾンである。いくつかの実施形態では、オピオイドは、モルヒネ、コデイン、ジヒドロコデイン、及び/またはジアモルヒネである。
【0198】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、抗生物質を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗生物質は、マクロライドである。いくつかの実施形態では、マクロライドは、アジスロマイシン及び/またはクラリスロマイシンである。いくつかの実施形態では、抗生物質は、ドキシサイクリンである。いくつかの実施形態では、抗生物質は、トリメトプリム/スルファメトキサゾールである。いくつかの実施形態では、抗生物質は、セファロスポリンである。いくつかの実施形態では、セファロスポリンは、セフェピム、セフィキシム、セフポドキシム、セフプロジル、セフタジジム、及び/またはセフロキシムである。いくつかの実施形態では、抗生物質は、ペニシリンである。いくつかの実施形態では、抗生物質は、アモキシシリン、アンピシリン、及び/またはピバンピシリンである。いくつかの実施形態では、抗生物質は、ペニシリン/β-ラクタマーゼ阻害剤の組み合わせである。いくつかの実施形態では、ペニシリン/β-ラクタマーゼ阻害剤の組み合わせは、アモキシシリン/クラブラン酸塩及び/またはピペラシリン/タゾバクタムである。いくつかの実施形態では、抗生物質は、フルオロキノロンである。いくつかの実施形態では、フルオロキノロンは、シプロフロキサシン、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、及び/またはオフロキサシンである。
【0199】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、ホスホジエステラーゼ阻害剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、ホスホジエステラーゼ阻害剤は、ホスホジエステラーゼ5型阻害剤である。いくつかの実施形態では、ホスホジエステラーゼ阻害剤は、アバナフィル、ベンズアミドナフィル、ダサンタフィル、イカリイン、ロデナフィル、ミロデナフィル、シルデナフィル、タダラフィル、ウデナフィル、及び/またはバルデナフィルである。いくつかの実施形態では、PDE阻害剤はPDE-4阻害剤である。いくつかの実施形態では、PDE-4阻害剤は、ロフルミラスト、シロミラスト、テトミラスト、及び/またはCHF6001である。いくつかの実施形態では、PDE阻害剤は、PDE-3/PDE-4阻害剤である。いくつかの実施形態では、PDE-3/PDE-4阻害剤は、RPL-554である。
【0200】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、細胞傷害性及び/または免疫抑制剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞傷害性及び/または免疫抑制剤は、アザチオプリン、コルヒチン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ペニシラミン、及び/またはサリドマイドである。いくつかの実施形態では、本方法は、肺の枯渇したグルタチオンレベルを回復させる薬剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、肺の枯渇したグルタチオンレベルを回復する薬剤は、N-アセチルシステインである。いくつかの実施形態では、本方法は、抗凝固薬を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗凝固薬は、ワルファリン、ヘパリン、活性化プロテインC、及び/または組織因子経路阻害剤である。
【0201】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、エンドセリン受容体アンタゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、エンドセリン受容体アンタゴニストは、ボセンタン、マシテンタン、及び/またはアンブリセンタンである。いくつかの実施形態では、本方法は、TNF-αアンタゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、TNF-αアンタゴニストは、エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブ、及びゴリムマブの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、インターフェロンガンマ-1bを投与することをさらに含む。
【0202】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、インターロイキン(IL)阻害剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、IL阻害剤はIL-5阻害剤である。いくつかの実施形態では、IL-5阻害剤は、メポリズマブ及び/またはベンラリズマブである。いくつかの実施形態では、IL阻害剤は、IL-17A阻害剤である。いくつかの実施形態では、IL-17A阻害剤は、CNTO-6785である。
【0203】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)阻害剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、p38 MAPK阻害剤は、ロスマピモド及び/またはAZD-7624である。いくつかの実施形態では、本方法は、CXCR2アンタゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、CXCR2アンタゴニストはダニリキシンである。
【0204】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、ワクチン接種をさらに含む。いくつかの実施形態では、ワクチン接種は、肺炎球菌及び/またはインフルエンザに対するワクチン接種である。いくつかの実施形態では、ワクチン接種は、肺炎レンサ球菌及び/またはインフルエンザに対するワクチン接種である。いくつかの実施形態では、本方法は、抗ウイルス療法を施すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗ウイルス療法は、オセルタミビル、ペラミビル、及び/またはザナミビルである。
【0205】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、胃食道逆流及び/または再発性微小吸引の防止をさらに含む。
【0206】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、換気サポートをさらに含む。いくつかの実施形態では、換気サポートは、機械的換気である。いくつかの実施形態では、換気サポートは、非侵襲的換気である。いくつかの実施形態では、換気サポートは、酸素補充療法である。いくつかの実施形態では、本方法は、呼吸リハビリテーションをさらに含む。
【0207】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、肺移植をさらに含む。いくつかの実施形態では、肺移植は片肺移植である。いくつかの実施形態では、肺移植は両肺移植である。
【0208】
いくつかの実施形態では、前述の方法または使用のいずれかは、非薬理学的介入をさらに含む。いくつかの実施形態では、非薬理学的介入は、禁煙、健康的な食事、及び/または定期的な運動である。いくつかの実施形態では、本方法は、禁煙のための薬理学的補助剤の投与をさらに含む。いくつかの実施形態では、禁煙のための薬理学的補助剤は、ニコチン補充療法、ブプロピオン、及び/またはバレニクリンである。いくつかの実施形態では、非薬理学的介入は肺治療である。いくつかの実施形態では、肺治療は、呼吸リハビリテーション及び/または酸素補充療法である。いくつかの実施形態では、非薬理学的介入は肺手術である。いくつかの実施形態では、肺手術は、肺容量減少手術、片肺移植、両肺移植、または肺嚢胞切除である。いくつかの実施形態では、非薬理学的介入は、装置の使用である。いくつかの実施形態では、装置は、肺容量減少コイル、呼気気道ステント、及び/または鼻換気支援システムである。
【0209】
併用療法は、「相乗効果」をもたらし、「相乗的」であることを証明し得るが、これは、すなわち、共に使用された活性成分が化合物を別々に使用することから生じる効果の総和を上回る場合に達成される効果である。活性成分が、以下:(1)共製剤化され、投与されるか、もしくは組み合わされた単位用量剤形中で同時に送達されるか、(2)交互もしくは並行して別個の製剤として送達されるか、または(3)他のレジメンによる場合、相乗効果が得られ得る。併用投与には、別個の製剤または単一の医薬製剤を使用する同時投与、及びいずれかの順序での連続投与が含まれ、好ましくは、両方(またはすべて)の活性剤が同時にそれらの生物学的活性を発揮する期間がある。交互療法で送達される場合、相乗効果は、例えば、別個のシリンジ中の異なる注射によって化合物が逐次的に投与または送達されるときに得られ得る。一般に、交互療法の間、各活性成分の有効投薬量は、逐次的に、すなわち、連続的に投与され、一方、併用療法においては、2つまたは複数の活性成分の有効な投薬量は、一緒に投与される。逐次的に投与される場合、組み合わせは、2つまたは複数の投与において投与され得る。
【0210】
上記のそのような併用療法は、併用投与(2つまたは複数の治療剤が同じまたは別個の製剤に含まれる場合)及び別個の投与を包含し、その場合、薬剤(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、またはこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト))、またはその薬学的組成物の投与は、追加の治療剤(複数可)の投与の、前に、同時に、及び/またはその後に行うことができる。一実施形態では、薬剤(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、またはこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト))、またはその薬学的組成物の投与、及び追加の治療剤の投与は、約1ヶ月以内、または約1、2、もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内、または約1、2、3、4、5、6、7、8、もしくは9時間以内、または互いに約1、5、10、20、30、40、もしくは50分以内に行われる。逐次投与を含む実施形態では、薬剤(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、Fcイプシロン受容体(FcεR)アンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、またはこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト))は、追加の治療剤(複数可)の投与の前または後に投与され得る。
【0211】
上記方法または使用のうちのいずれにおいても、治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、またはこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)を含む治療)、及び任意の追加の治療剤は、任意の好適な手段、例えば、非経口的、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮内、経皮的、動脈内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、くも膜下腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、局所的、腫瘍内、腹腔内、皮下的、結膜下、膀胱内、粘膜、心膜内、臍帯内、眼内、眼窩内、経口、局所、経皮、硝子体内、眼窩周囲、結膜、テノン嚢下、前房内、網膜下、球後、小管内、吸入により、注射により、埋め込みにより、注入により、持続的注入により、標的細胞を直接的に浸す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリームで、または脂質組成物で投与することができる。投与は、全身性または局所的であり得る。加えて、アンタゴニストは、例えば漸減用量のアンタゴニストを用いて、脈注入によって好適に投与され得る。
【0212】
任意の治療剤、例えば、トリプターゼアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、これらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)、任意の追加の治療剤、またはその薬学的組成物は、良好な医療行為と一致する方法で処方、投薬、及び投与され得る。かかる用量は、当技術分野において既知である。本文脈における考慮の要因には、処置されている特定の障害、処置されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的病態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジュール管理、及び医療従事者に既知の他の要因が含まれる。トリプターゼアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、またはそれらの薬学的組成物は、必ずしも必要ではないが、問題の障害の予防または処置に現在使用されている1つまたは複数の薬剤と所望により処方される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または処置の種類、及び上述した他の要因に左右される。これらは、一般に、本明細書に記載されるのと同じ投薬量で、本明細書に記載される投与経路により、または本明細書に記載される投薬量の約1~99%、または適切であると経験的/臨床的に決定される任意の投薬量で、任意の経路によって、使用される。
【0213】
一例として、疾患の予防または処置のために、抗体(例えば、抗トリプターゼ抗体、抗IgE抗体(例えば、XOLAIR(登録商標))、IgE+B細胞枯渇抗体(例えば、抗M1’ドメイン抗体(例えば、キリズマブ))、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、または抗PAR2抗体)の適切な投与量(単独で、または1つもしくは複数の他の追加の治療剤と組み合わせて使用した場合)は、治療する疾患の種類、抗体の種類、重症度及び疾患の経過、抗体が予防目的で投与されるのか、治療目的で投与されるのか、以前の療法、患者の病歴、及び抗体への応答、ならびに主治医の裁量にも左右される。抗体は、一度にまたは一連の処置にわたって適切に患者に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体が、例えば、1もしくは複数の別々の投与によるか、または持続注入によって、患者に投与される最初の候補用量であり得る。1つの典型的な1日用量は、上述の要因に応じて、約1μg/kg~200mg/kg以上の範囲であり得る。数日以上の繰り返し投与の場合、状態によっては、処置は、一般に、疾患症状の望ましい抑制が起こるまで持続され得る。抗体の1つの例示的用量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲であり得る。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、または10mg/kg(またはそれらの任意の組み合わせ)のうちの1つまたは複数の用量が患者に投与され得る。そのような用量は、断続的に、例えば、毎週、2週間毎、3週間毎、または4週間毎(例えば、患者が約2~約20回、すなわち例えば約6回の用量の抗体を投与されるように)投与されてもよい。例えば、用量は、1ヶ月に1回投与されてもよい。初回は高い負荷量が、続いて1回以上のより低い用量が投与されてもよい。しかしながら、他の投与レジメンも有用であり得る。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイで容易に観察される。場合によっては、約50mg/mL~約200mg/mLの用量(例えば、約50mg/mL、約60mg/mL、約70mg/mL、約80mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、約170mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL、または約200mg/mLの抗体を投与することができる。いくつかの実施形態では、喘息患者に対するXOLAIR(登録商標)(オマリズマブ)の用量は、当技術分野で公知の手法を使用して、体重及び処置前のIgEレベルに基づいて決定することができる。XOLAIR(登録商標)(オマリズマブ)は、CIUの処置のために、4週間毎に1回の投与あたり300mgまたは150mgで皮下注射により投与することができる。
【0214】
前述の方法または使用のいずれかにおいて、いくつかの実施形態では、マスト細胞媒介性炎症性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(例えば、CSUまたはCIU)、全身性アナフィラキシー、マスト細胞症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、及び好酸球性食道炎からなる群から選択される。
【0215】
前述の方法または使用のいずれかのいくつかの実施形態では、マスト細胞媒介性炎症性疾患は、喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は、生命を脅かす可能性のある症状の悪化(増悪または再燃)の急性事象を伴う持続性慢性重症喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は、アトピー性(アレルギー性とも呼ばれる)喘息、非アレルギー性喘息(例えば、多くの場合呼吸器ウイルス(例えば、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ライノウイルス、ヒトメタニューモウイルス、及び呼吸器合胞体ウイルス)による感染または吸入刺激物(例えば、大気汚染物質、スモッグ、ディーゼル粒子、揮発性化学物質、及び屋内または屋外のガス、または冷たい乾燥空気によるもの)によって引き起こされる)である。
【0216】
前述の方法または使用のいずれかのいくつかの実施形態では、喘息は、断続的または運動誘発性の喘息であり、急性もしくは慢性的な主流「煙」もしくは副流「煙」(通常、タバコ、葉巻、またはパイプ)への曝露、吸入もしくは「ベイピング」(タバコ、マリファナ、または他の同様の物質)による喘息、またはアスピリンもしくは関連するNSAIDの直近の摂取によって引き起こされる喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は、軽度、またはコルチコステロイドナイーブ喘息、新たに診断された未処置の喘息、または症状(咳、喘鳴、息切れ(shortness of breath)/息切れ(breathlessness)、または胸痛)を制御するために局所もしくは全身吸入ステロイドの慢性的な使用を前もって必要としないものである。いくつかの実施形態では、喘息は、慢性の、コルチコステロイド耐性喘息、コルチコステロイド難治性喘息、またはコルチコステロイドまたは他の慢性喘息制御薬では制御できない喘息である。
【0217】
前述の方法または使用のいずれかのいくつかの実施形態では、喘息は、中等度から重度の喘息である。ある特定の実施形態では、喘息はTH2-high喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は重度の喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は、アトピー性喘息、アレルギー性喘息、非アレルギー性喘息(例えば、感染症及び/または呼吸器合胞体ウイルス(RSV)による)、運動誘発性喘息、アスピリン感受性/憎悪型喘息、軽度喘息、中等度から重度の喘息、コルチコステロイドナイーブ喘息、慢性喘息、コルチコステロイド耐性喘息、コルチコステロイド抵抗性喘息、新たに診断された未処置の喘息、喫煙による喘息、またはコルチコステロイドで制御されない喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は好酸球性喘息である。いくつかの実施形態では、喘息はアレルギー性喘息である。いくつかの実施形態では、個体は好酸球性炎症陽性(EIP)であると決定されている。WO2015/061441を参照のこと。いくつかの実施形態では、喘息は、ペリオスチン-high喘息である(例えば、血清1mlあたり少なくとも約20ng、25ng、または50ngのいずれかのペリオスチンレベルを有する)。いくつかの実施形態では、喘息は好酸球-high喘息である(例えば、少なくとも血液1mlあたり約150、200、250、300、350、400好酸球数のいずれか)。ある特定の実施形態では、喘息はTH2-low喘息である。いくつかの実施形態では、個体は好酸球性炎症陰性(EIN)であると決定されている。WO2015/061441を参照のこと。いくつかの実施形態では、喘息は、ペリオスチン-low喘息である(例えば、血清1mlあたり少なくとも約20ng未満のペリオスチンレベルを有する)。いくつかの実施形態では、喘息は好酸球-low喘息である(例えば、血液1μlあたり約150未満の好酸球数または血液1μlあたり約100未満の好酸球数)。
【0218】
例えば、前述の方法または使用のいずれかの特定の実施形態では、喘息は中等度から重度の喘息である。いくつかの実施形態では、喘息はコルチコステロイドで制御されていない。いくつかの実施形態では、喘息は、TH2 high喘息またはTH2 low喘息である。特定の実施形態では、喘息はTH2 high喘息である。
【0219】
III.本発明の診断方法
本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患(例えば、喘息)を有する患者が、治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、Fcイプシロン受容体(FcεR)アンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)に応答する可能性が高いかどうかを判定する方法、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者のための治療を選択する方法、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の応答を評価する方法、及びマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の応答をモニタリングする方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、治療は、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、及び/またはPAR2アンタゴニストを含む治療)である。いくつかの実施形態では、治療は、トリプターゼアンタゴニスト(例えば、本明細書またはWO2018/148585に記載の任意の抗トリプターゼ抗体などの抗トリプターゼ抗体)及びIgEアンタゴニスト(例えば、抗IgE抗体、例えば、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標)))を含む。
【0220】
本発明のバイオマーカー(例えば、活性トリプターゼ対立遺伝子数及び/またはトリプターゼ)の存在及び/または発現レベルは、本明細書に記載のアッセイのいずれかを使用して、または当技術分野で公知の任意の方法もしくはアッセイにより決定できる。いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、上記の発明を実施するための形態のセクションIIに記載されているように、患者に治療を施すことをさらに含む。本方法は、以下に記載されるように、遺伝情報を検出するアッセイ(例えば、DNAまたはRNAシークエンシング)、遺伝子またはタンパク質発現(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び酵素免疫アッセイなど)を検出するアッセイ、及び適切な活性を検出する生化学アッセイを含む、様々なアッセイ形式で実行することができる。
【0221】
例えば、一態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者が、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法を特徴とし、該方法は、(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定することと、(b)患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数に基づいて、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)に応答する可能性が高いとして患者を同定することと、を含み、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上の活性トリプターゼ対立遺伝子数は、当該患者が治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの実施形態では、本方法は、患者に治療を施すことをさらに含む。
【0222】
別の例では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者が、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法を特徴とし、該方法は、(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、トリプターゼの発現レベルを決定することと、(b)患者の試料のトリプターゼの発現レベルに基づいて、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)に応答する可能性が高いとして患者を同定することと、を含み、該試料のトリプターゼの発現レベルが基準レベルのトリプターゼ以上であることは、該患者が治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの実施形態では、本方法は、患者に治療を施すことをさらに含む。
【0223】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、薬剤は単剤療法として患者に投与される。
【0224】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、本方法は、TH2経路阻害剤を患者に投与することをさらに含む。
【0225】
別の態様では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者がIgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法を特徴とし、(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定することと、(b)患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数に基づいて、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いとして患者を同定することとを含み、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の活性トリプターゼ対立遺伝子数は、患者が治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの実施形態では、本方法は、患者に治療を施すことをさらに含む。
【0226】
別の例では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者がIgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを決定する方法を特徴とし、(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、トリプターゼの発現レベルを決定することと、(b)患者の試料のトリプターゼの発現レベルに基づいて、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いとして患者を同定することと、を含み、患者の試料においてトリプターゼの基準レベル未満であるトリプターゼの発現レベルは、患者が治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの実施形態では、本方法は、患者に治療を施すことをさらに含む。
【0227】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、本方法は、追加のTH2経路阻害剤を患者に投与することをさらに含む。
【0228】
さらなる例では、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の治療を選択する方法を特徴とし、(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定することと、(b)患者のために、(i)患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数が基準活性トリプターゼ対立遺伝子数以上である場合、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)、または(ii)患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数が基準活性トリプターゼ対立遺伝子数未満の場合、IgEアンタゴニストもしくはFcεRアンタゴニストを含む治療、を選択することと、を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、患者に(b)に従って選択した治療を施すことをさらに含む。
【0229】
さらに別の例においては、本発明は、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者のための治療を選択する方法を特徴とし、(a)マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料において、トリプターゼの発現レベルを決定することと、(b)患者のために、
(i)患者の試料におけるトリプターゼの発現レベルがトリプターゼの基準レベル以上である場合、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)、または(ii)患者の試料におけるトリプターゼの発現レベルがトリプターゼの基準レベル未満である場合、IgEアンタゴニストもしくはFcεRアンタゴニストを含む治療、を選択することと、を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、患者に(b)に従って選択した治療を施すことをさらに含む。
【0230】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル未満の2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されている。いくつかの実施形態では、薬剤は単剤療法として患者に投与される。
【0231】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、該患者の試料において2型バイオマーカーの基準レベル以上である2型バイオマーカーのレベルを有すると同定されており、該方法が、TH2経路阻害剤を含む併用療法を選択することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、TH2経路阻害剤(または追加のTH2経路阻害剤)を患者に投与することをさらに含む。
【0232】
本発明はまた、マスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)による処置に対する応答を評価する方法を特徴とし、該方法は、(a)患者にマスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)を適用中または適用後の時点でのマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の試料におけるトリプターゼの発現レベルを決定することと、(b)試料中のトリプターゼの発現レベルと基準レベルのトリプターゼとの比較に基づいて、処置を維持、調整、または停止することと、を含み、基準レベルと比較した患者の試料中のトリプターゼの発現レベルの変化は、治療による処置への応答を示す。いくつかの実施形態では、変化がトリプターゼの発現レベルの増加であり、処置が維持される。他の実施形態では、変化がトリプターゼの発現レベルの低下であり、処置が調整または停止される。
【0233】
別の例では、本発明は、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)により処置したマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者の応答をモニタリングする方法を特徴とし、該方法は、(a)マスト細胞指向性治療(患者への、例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)を適用中または適用後の時点での患者の試料におけるトリプターゼの発現レベルを決定することと、(b)患者の試料におけるトリプターゼの発現レベルをトリプターゼの基準レベルと比較することにより、治療による処置を受けている患者の応答をモニタリングすることと、を含む。いくつかの実施形態では、変化がトリプターゼの発現レベルの増加であり、処置が維持される。他の実施形態では、変化がトリプターゼの発現レベルの低下であり、処置が調整または停止される。
【0234】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は、患者のゲノムのTPSAB1及びTPSB2遺伝子座のシークエンシングによって決定される。サンガーシークエンシングまたは超並列(例えば、ILLUMINA(登録商標))シークエンシングなど、任意の好適なシークエンシング手法を使用可能である。いくつかの実施形態では、TPSAB1遺伝子座は、(i)5’-CTG GTG TGC AAG GTG AAT GG-3’(配列番号31)のヌクレオチド配列を含む第1のフォワードプライマー及び5’-AGG TCC AGC ACT CAG GAG GA-3’(配列番号32)のヌクレオチド配列を含む第1のリバースプライマーの存在下で対象の核酸を増幅してTPSAB1アンプリコンを形成することと、(ii)TPSAB1アンプリコンをシークエンシングすることとを含む方法によってシークエンシングされる。いくつかの実施形態では、TPSAB1アンプリコンのシークエンシングには、第1のフォワードプライマー及び第1のリバースプライマーの使用が含まれる。いくつかの実施形態では、TPSB2遺伝子座は、(i)5’-GCA GGT GAG CCT GAG AGT CC-3’(配列番号33)のヌクレオチド配列を含む第2のフォワードプライマー及び5’-GGG ACC TTC ACC TGC TTC AG-3’(配列番号34)のヌクレオチド配列を含む第2のリバースプライマーの存在下で該対象の核酸を増幅してTPSB2アンプリコンを形成することと、(ii)TPSB2アンプリコンをシークエンシングすることと、を含む方法によってシークエンシングされる。いくつかの実施形態では、TPSB2アンプリコンのシークエンシングは、第2のフォワードプライマーを使用することと、5’-CAG CCA GTG ACC CAG CAC-3’(配列番号35)のヌクレオチド配列を含むリバースプライマーをシークエンシングすることと、を含む。いくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は、患者のゲノムのTPSAB1及びTPSB2遺伝子座の変異の存在を決定することによって決定され得る。いくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は、以下の式:4-患者の遺伝子型におけるトリプターゼアルファ及びトリプターゼベータIIIフレームシフト(βIIIFS)対立遺伝子の数の合計で決定される。いくつかの実施形態では、トリプターゼアルファは、TPSAB1でc733 G>C SNPを検出することによって検出される。いくつかの実施形態では、TPSAB1でc733 G>A SNPを検出することは、多型CTGCAGGCGGGCGTGGTCAGCTGGG[G/A]CGAGGGCTGTGCCCAGCCCAACCGG(配列番号36)で患者の遺伝子型を検出することを含み、c733 G>A SNPにおけるAの存在は、トリプターゼアルファを示す。いくつかの実施形態では、トリプターゼベータIIIFSは、TPSB2でc980_981insC変異を検出することによって検出される。いくつかの実施形態では、TPSB2でc980_981insC変異を検出することは、ヌクレオチド配列CACACGGTCACCCTGCCCCCTGCCTCAGAGACCTTCCCCCCC(配列番号37)を検出することを含む。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、3または4の活性トリプターゼ対立遺伝子数を有する。いくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は3である。他の実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は4である。
【0235】
前述の方法のいずれかの他の実施形態では、患者は、0、1、または2の活性トリプターゼ対立遺伝子数を有する。いくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は0である。いくつかの実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は1である。他の実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は2である。
【0236】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は、基準試料、基準母集団において決定することができ、及び/または事前に割り当てられた値(例えば、個体の第1のサブセットを個体の第2のサブセットから有意に(例えば、統計学的に有意に)分離するために事前に決定されたカットオフ値(例えば、治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)への応答に関して)であってもよい。いくつかの実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は所定の値である。いくつかの実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は、患者が属するマスト細胞媒介性炎症性疾患(例えば、喘息)において予め決定されている。ある特定の実施形態では、活性トリプターゼ対立遺伝子数は、調査されたマスト細胞媒介性炎症性疾患(例えば、喘息)における、または所与の母集団における値の全体的な分布から決定される。いくつかの実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は、0~4の範囲の整数(例えば、0、1、2、3、または4)である。特定の実施形態では、基準活性トリプターゼ対立遺伝子数は3である。
【0237】
前述の方法のいずれかには、1つまたは複数の2型バイオマーカーの発現レベルを決定することが含まれる。いくつかの実施形態では、2型バイオマーカーは、TH2細胞関連サイトカイン、ペリオスチン、好酸球数、好酸球のシグネチャー、FeNO、またはIgEである。いくつかの実施形態では、TH2細胞関連サイトカインは、IL-13、IL-4、IL-9、またはIL-5である。
【0238】
上記方法のうちのいずれにおいても、患者の遺伝子型は、本明細書(例えば、発明を実施するための形態のIV節または実施例1)に記載されているか、または当該技術分野で既知である任意の方法またはアッセイを使用して決定することができる。
【0239】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、バイオマーカーの発現レベルは、タンパク質の発現レベルである。例えば、いくつかの実施形態では、タンパク質発現レベルは、免疫アッセイ(例えば、マルチプレックス免疫アッセイ)、ELISA、ウェスタンブロット、または質量分析法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、トリプターゼのタンパク質発現レベルは、活性トリプターゼの発現レベルである。他の実施形態では、トリプターゼのタンパク質発現レベルは、総トリプターゼの発現レベルである。
【0240】
前述の方法のいずれかの他の実施形態では、バイオマーカーの発現レベルは、mRNAの発現レベルである。例えば、いくつかの実施形態では、mRNA発現レベルは、PCR法(例えば、qPCR)またはマイクロアレイチップを使用して測定されている。
【0241】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、バイオマーカーの基準レベルは、喘息を有する個体の群において決定されるバイオマーカーのレベルである。例えば、いくつかの実施形態では、基準レベルは、中央値レベルである。
【0242】
患者に由来する任意の好適な試料は、前述の方法のいずれにおいても使用可能であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、患者に由来する試料は、血液試料(例えば、全血試料、血清試料、血漿試料、またはそれらの組み合わせ)、組織試料、痰試料、細気管支洗浄液試料、粘膜被覆液(MLF)試料、気管支吸収試料、または経鼻吸収試料である。
【0243】
上記方法のうちのいずれにおいても、患者から得られる試料中の本発明のバイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の発現レベルは、バイオマーカーの基準レベルに対して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、またはそれ以上変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、患者に由来する試料中の本発明のバイオマーカーの発現レベルは、バイオマーカーの基準レベルに対して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、またはそれ以上増加し得る。他の実施形態では、患者に由来する試料中の本発明のバイオマーカーの発現レベルは、バイオマーカーの基準レベルに対して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、またはそれ以上減少し得る。
【0244】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、基準レベルは、例えば、健康な対象において、または障害(例えば、マスト細胞媒介性炎症性疾患(例えば、喘息))を有する患者において、バイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の発現レベルの全体分布の、例えば、20~99パーセンタイルの間の任意のパーセンタイル(例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または99パーセンタイル)に設定され得る。いくつかの実施形態では、基準レベルは、喘息を有する患者の集団における値の全体分布の25パーセンタイルに設定され得る。他の実施形態では、基準レベルは、マスト細胞媒介性炎症性疾患(例えば、喘息)を有する患者の集団における値の全体分布の50パーセンタイルに設定され得る。さらに他の実施形態では、基準レベルは、マスト細胞媒介性炎症性疾患(例えば、喘息)を有する患者の集団における値の全体分布の中央値であり得る。
【0245】
上記方法のうちのいずれにおいても、患者は基準レベルと比較してTH2バイオマーカーのレベルが上昇している可能性がある。いくつかの実施形態では、TH2バイオマーカーは、血清ペリオスチン、呼気一酸化窒素(FeNO)、痰好酸球数、及び末梢血好酸球数からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、TH2バイオマーカーは、血清ペリオスチンである。例えば、患者は、約20ng/ml以上(例えば、約20ng/ml、約25ng/ml、約30ng/ml、約35ng/ml、約40ng/ml、約45ng/ml、約50ng/ml以上)の血清ペリオスチンレベルを有し得る。他の実施形態では、患者は、約50ng/ml以上(例えば、約50ng/ml、約55ng/ml、約60ng/ml、約65ng/ml、約70ng/ml、約75ng/ml、約80ng/ml以上)の血清ペリオスチンレベルを有し得る。血清ペリオスチンレベルは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などの任意の好適な方法を使用して決定し得る。本明細書では、適切な手法について説明する。
【0246】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、治療はトリプターゼアンタゴニストを含む。トリプターゼアンタゴニストは、トリプターゼアルファアンタゴニスト(例えば、トリプターゼアルファ1アンタゴニスト)またはトリプターゼベータアンタゴニスト(例えば、トリプターゼベータ1、トリプターゼベータ2、及び/またはトリプターゼベータ3アンタゴニスト)であり得る。いくつかの実施形態では、トリプターゼアンタゴニストは、トリプターゼアルファアンタゴニスト及びトリプターゼベータアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、トリプターゼアンタゴニスト(例えば、トリプターゼアルファアンタゴニスト及び/またはトリプターゼベータアンタゴニスト)は、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼアルファ抗体及び/または抗トリプターゼベータ抗体)である。以下のセクションVIIに記載されている抗トリプターゼ抗体を使用可能である。
【0247】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、治療はFcεRアンタゴニストを含む。いくつかの実施形態では、FCεRアンタゴニストは、FcεRIα、FcεRIβ、及び/またはFcεRIγを阻害する。他の実施形態では、FcεRアンタゴニストは、FcεRIIを阻害する。さらに他の実施形態では、FcεRアンタゴニストは、FcεRシグナル伝達経路のメンバーを阻害する。例えば、いくつかの実施形態では、FcεRアンタゴニストは、チロシンプロテインキナーゼLyn(Lyn)、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、チロシンプロテインキナーゼFyn(Fyn)、脾臓関連チロシンキナーゼ(Syk)、T細胞活性化用リンカー(LAT)、増殖因子受容体結合タンパク質2(Grb2)、セブンレスの息子(Sos)、Ras、Raf-1、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ1(MEK)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ1(ERK)、細胞質型ホスホリパーゼA2(cPLA2)、アラキドン酸5-リポキシゲナーゼ(5-LO)、アラキドン酸5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)、グアニンヌクレオチド交換因子VAV(Vav)、Rac、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ3、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ7、p38 MAPキナーゼ(p38)、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)、増殖因子受容体結合タンパク質2-関連タンパク質2(Gab2)、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼ(PI3K)、ホスホリパーゼCガンマ(PLCγ)、プロテインキナーゼC(PKC)、3-ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1(PDK1)、RACセリン/スレオニンプロテインキナーゼ(AKT)、ヒスタミン、ヘパリン、インターロイキン(IL)-3、IL-4、IL-13、IL-5、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、ロイコトリエン(例えば、LTC4、LTD4、及びLTE4)、及びプロスタグランジン(例えば、PDG2)を阻害する。いくつかの実施形態では、FcεRアンタゴニストは、BTK阻害剤(例えば、GDC-0853、アカラブルチニブ、GS-4059、スペブルチニブ、BGB-3111、またはHM71224)である。
【0248】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、治療は、IgE+B細胞枯渇剤(例えば、IgE+B細胞枯渇抗体)を含む。いくつかの実施形態では、IgE+B細胞枯渇抗体は抗M1’ドメイン抗体である。任意の好適な抗M1’ドメイン抗体、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願公開番号WO2008/116149に記載の任意の抗M1’ドメイン抗体を使用することができる。いくつかの実施形態では、抗M1’ドメイン抗体はアフコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗M1’ドメイン抗体は、キリズマブまたは47H4である(例えば、Brightbill et al.J.Clin.Invest.120(6):2218-2229,2010を参照のこと)。
【0249】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、治療は、マスト細胞または好塩基球枯渇剤(例えば、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体)を含む。いくつかの実施形態では、抗体はマスト細胞を枯渇させる。他の実施形態では、抗体は好塩基球を枯渇させる。さらに他の実施形態では、抗体はマスト細胞及び好塩基球を枯渇させる。
【0250】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、治療はPAR2アンタゴニストを含む。例示的なPAR2アンタゴニストには、小分子阻害剤(例えば、K-12940、K-14585、ペプチドFSLLRY-NH2(配列番号30)、GB88、AZ3451、及びAZ8838)、可溶性受容体、siRNA、及び抗PAR2抗体(例えば、MAB3949及びFab3949)が含まれる。
【0251】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、治療はIgEアンタゴニストを含む。いくつかの実施形態では、IgEアンタゴニストは抗IgE抗体である。任意の好適な抗IgE抗体を使用することができる。例示的な抗IgE抗体には、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))、E26、E27、CGP-5101(Hu-901)、HA、リゲリズマブ、及びタリズマブが含まれる。いくつかの実施形態では、抗IgE抗体は、次の6つのHVR:(a)GYSWNのアミノ酸配列(配列番号40)を含むHVR-H1、(b)SITYDGSTNYNPSVKGのアミノ酸配列(配列番号41)を含むHVR-H2、(c)GSHYFGHWHFAVのアミノ酸配列(配列番号42)を含むHVR-H3、(d)RASQSVDYDGDSYMNのアミノ酸配列(配列番号43)を含むHVR-L1、(e)AASYLESのアミノ酸配列(配列番号44)を含むHVR-L2、及び(f)QQSHEDPYTのアミノ酸配列(配列番号45)を含むHVR-L3、のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ全てを含む。いくつかの実施形態では、抗IgE抗体は、(a)配列番号38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号39のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメイン、を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号38のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLドメインは配列番号39のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号38のアミノ酸配列を含み、VLドメインは配列番号39のアミノ酸配列を含む。本明細書に記載される抗IgE抗体のいずれかは、例えば、以下のセクションVIIにおいて、本明細書に記載される任意の抗トリプターゼ抗体と組み合わせて使用され得る。特定の実施形態では、抗IgE抗体は、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))である。
【0252】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、治療はTH2経路阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、TH2経路阻害剤は、インターロイキン2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、ヤーヌスキナーゼ1(JAK1)(例えば、ルキソリチニブ、トファシチニブ、オクラシチニブ、バリシチニブ、フィルゴチニブ、ガンドチニブ、レスタウルチニブ、モメロチニブ、パクリチニブ、ウパダシチニブ、ペフィシチニブ、及びフェドラチニブ)、GATA結合タンパク質3(GATA3)、IL-9(例えば、MEDI-528)、IL-5(例えば、メポリズマブ、CAS番号196078-29-2;レシリズマブ)、IL-13(例えば、IMA-026、IMA-638(別名アンルキンズマブ、INN番号910649-32-0;QAX-576;IL-4/IL-13トラップ)、トラロキヌマブ(別名CAT-354、CAS番号1044515-88-9);AER-001、ABT-308(別名ヒト化13C5.5抗体)、IL-4(例えば、AER-001、IL-4/IL-13トラップ)、OX40L、TSLP、IL-25、IL-33、及びIgE(例えば、XOLAIR(登録商標)、QGE-031;及びMEDI-4212);ならびに受容体、例えば、IL-9受容体、IL-5受容体(例えば、MEDI-563(ベンラリズマブ、CAS番号1044511-01-4))、IL-4受容体アルファ(例えば、AMG-317、AIR-645)、IL-13受容体アルファ1(例えば、R-1671)及びIL-13受容体アルファ2、OX40、TSLP-R、IL-7Rアルファ(TSLPの補助受容体)、IL-17RB(IL-25の受容体)、ST2(IL-33の受容体)、CCR3、CCR4、CRTH2(例えば、AMG-853、AP768、AP-761、MLN6095、ACT129968)、FcεRI、FcεRII/CD23(IgEの受容体)、Flap(例えば、GSK2190915)、Sykキナーゼ(R-343、PF3526299);CCR4(AMG-761)、TLR9(QAX-935)、ならびにCCR3、IL-5、IL-3、及びGM-CSFのマルチサイトカイン阻害剤(例えば、TPI ASM8)から選択される標的のいずれかを阻害する。
【0253】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、喘息は、生命を脅かす可能性のある症状の悪化(増悪または再燃)の急性事象を伴う持続性慢性重症喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は、アトピー性(アレルギー性とも呼ばれる)喘息、非アレルギー性喘息(例えば、多くの場合呼吸器ウイルス(例えば、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ライノウイルス、ヒトメタニューモウイルス、及び呼吸器合胞体ウイルス)による感染または吸入刺激物(例えば、大気汚染物質、スモッグ、ディーゼル粒子、揮発性化学物質、及び屋内または屋外のガス、または冷たい乾燥空気によるもの)によって引き起こされる)である。
【0254】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、喘息は、断続的または運動誘発性の喘息であり、急性もしくは慢性的な主流「煙」もしくは副流「煙」(通常、タバコ、葉巻、またはパイプ)への曝露、吸入もしくは「ベイピング」(タバコ、マリファナ、または他の同様の物質)による喘息、またはアスピリンもしくは関連するNSAIDの直近の摂取によって引き起こされる喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は、軽度、またはコルチコステロイドナイーブ喘息、新たに診断された未処置の喘息、または症状(咳、喘鳴、息切れ(shortness of breath)/息切れ(breathlessness)、または胸痛)を制御するために局所もしくは全身吸入ステロイドの慢性的な使用を前もって必要としないものである。いくつかの実施形態では、喘息は、慢性の、コルチコステロイド耐性喘息、コルチコステロイド難治性喘息、またはコルチコステロイドまたは他の慢性喘息制御薬では制御できない喘息である。
【0255】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、喘息は中等度から重度の喘息である。ある特定の実施形態では、喘息はTH2-high喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は重度の喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は、アトピー性喘息、アレルギー性喘息、非アレルギー性喘息(例えば、感染症及び/または呼吸器合胞体ウイルス(RSV)による)、運動誘発性喘息、アスピリン感受性/憎悪型喘息、軽度喘息、中等度から重度の喘息、コルチコステロイドナイーブ喘息、慢性喘息、コルチコステロイド耐性喘息、コルチコステロイド抵抗性喘息、新たに診断された未処置の喘息、喫煙による喘息、またはコルチコステロイドで制御されない喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は、Tヘルパーリンパ球2型(TH2)または2型(TH2)highまたは2型(T2)駆動喘息である。いくつかの実施形態では、喘息は好酸球性喘息である。いくつかの実施形態では、喘息はアレルギー性喘息である。いくつかの実施形態では、個体は好酸球性炎症陽性(EIP)であると決定されている。WO2015/061441を参照のこと。いくつかの実施形態では、喘息は、ペリオスチン-high喘息である(例えば、血清1mlあたり少なくとも約20ng、25ng、または50ngのいずれかのペリオスチンレベルを有する)。いくつかの実施形態では、喘息は好酸球-high喘息である(例えば、少なくとも血液1mlあたり約150、200、250、300、350、400好酸球数のいずれか)。ある特定の実施形態では、喘息は、TH2-low喘息または非TH2駆動喘息である。いくつかの実施形態では、個体は好酸球性炎症陰性(EIN)であると決定されている。WO2015/061441を参照のこと。いくつかの実施形態では、喘息は、ペリオスチン-low喘息である(例えば、血清1mlあたり少なくとも約20ng未満のペリオスチンレベルを有する)。いくつかの実施形態では、喘息は好酸球-low喘息である(例えば、血液1μlあたり約150未満の好酸球数または血液1μlあたり約100未満の好酸球数)。
【0256】
例えば、前述の方法のいずれかの特定の実施形態では、喘息は中等度から重度の喘息である。いくつかの実施形態では、喘息はコルチコステロイドで制御されていない。いくつかの実施形態では、喘息は、TH2 high喘息またはTH2 low喘息である。特定の実施形態では、喘息はTH2 high喘息である。
【0257】
本明細書、例えば上記の発明を実施するための形態のセクションIIに記載されている患者を処置する方法のいずれも、該方法が患者に治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、Fcイプシロン受容体(FcεR)アンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療)を施すことを含む実施形態において使用され得ることが理解されよう。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、トリプターゼアンタゴニスト、Fcイプシロン受容体(FcεR)アンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤を含む治療を施すことを含む。他の実施形態では、本方法は、IgEアンタゴニストを含む治療を施すことを含む。
【0258】
IV.核酸多型の検出
いくつかの実施形態では、本発明によって提供される処置及び診断の方法は、例えば、患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定するために、1つまたは複数の多型での患者の遺伝子型の決定を含む。核酸の多型の存在(例えば、SNP(例えば、TPSAB1のc733 G>A SNP、CTGCAGGCGGGCGTGGTCAGCTGGG[G/A]CGAGGGCTGTGCCCAGCCCAACCGG(配列番号36)(rs145402040また参照)、または挿入の存在(例えば、TPSB2のc980_981insC変異、CACACGGTCACCCTGCCCCCTGCCTCAGAGACCTTCCCCCCC(配列番号37)(太字で下線の付いたCヌクレオチドで示される))を評価するための検出技術は、分子遺伝学の分野でよく知られている手順に関係している。これらの方法の全てではないものの多くは、核酸の増幅を伴う。増幅を行うための十分なガイダンスが当該技術分野で提供されている。例示的な参考文献として、Erlich,ed.,PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,Freeman Press,1992;Innis et al.eds.,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press,1990;Ausubel,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,1994-1999(2004年4月までの補足の改訂版を含む);及びSambrook et al.eds.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2001などのマニュアルが挙げられる。一塩基多型を検出するための一般的な方法は、Kwok,ed.,Single Nucleotide Polymorphisms:Methods and Protocols,Humana Press,2003に開示されている。
【0259】
この方法は、典型的には、PCRステップを使用するが、他の増幅プロトコルも使用され得る。好適な増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(例えば、Wu et al.Genomics 4:560-569,1988を参照のこと)、鎖置換アッセイ(例えば、Walker et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:392-396,1992;米国特許第5,455,166号)、ならびに米国特許第5,437,990号、同第5,409,818号、及び同第5,399,491号に記載の方法を含む、いくつかの転写ベース増幅システム、転写増幅システム(TAS)(Kwoh et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173-1177,1989)、ならびに自立配列複製(self-sustained sequence replication(3SR)(Guatelli et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874-1878,1990;WO1992/08800)が挙げられる。あるいは、プローブを検出可能なレベルに増幅する方法を使用することができ、例えば、Qβ-レプリカーゼ増幅である(Kramer et al.Nature 339:401-402,1989;Lomeli et al.Clin.Chem.35:1826-1831,1989)。既知の増幅方法の総説は、例えば、Abramson et al.Curr.Opin.Biotech.4:41-47,1993に提供される。
【0260】
個体の遺伝子型、ハプロタイプ、SNP、マイクロサテライト、または他の多型の検出は、オリゴヌクレオチドプライマー及び/またはプローブを使用して行うことができる。オリゴヌクレオチドは、任意の好適な方法、通常は化学合成によって調製することができる。オリゴヌクレオチドは、市販の試薬及び機器を使用して合成することができる。あるいは、これらは商業的供給源を通じて購入可能である。オリゴヌクレオチドを合成する方法は、当技術分野でよく知られている(例えば、Narang et al.Meth.Enzymol.68:90-99,1979;Brown et al.Meth.Enzymol.68:109-151,1979;Beaucage et al.Tetra.Lett.22:1859-1862,1981、及び米国特許第4,458,066号の固体支持法を参照のこと)。加えて、上述の合成方法への変更を使用して、合成オリゴヌクレオチドに関する酵素挙動に望ましい影響を与えてもよい。例えば、修飾ホスホジエステル結合(例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホアミデート、またはボラノホスフェート)または亜リン酸誘導体以外の結合のオリゴヌクレオチドへの組み込みを使用して、選択された部位での切断を防止してもよい。加えて、2’-アミノ修飾糖の使用は、新たな核酸鎖の合成のための鋳型でもある核酸にハイブリダイズする場合にオリゴヌクレオチドの消化よりも置換を好む傾向にある。
【0261】
個体(例えば、マスト細胞媒介性炎症性疾患(例えば、喘息)を有する患者)の遺伝子型は、当技術分野で周知の多くの検出方法を使用して決定することができる。ほとんどのアッセイは、いくつかの一般的なプロトコル:シークエンシング、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを使用したハイブリダイゼーション、プライマー伸長、対立遺伝子特異的ライゲーション、または電気泳動分離技術、例えば、一本鎖高次構造多型(SSCP)、及びヘテロ二本鎖分析、のうちの1つを必要とする。例示的なアッセイとしては、5’-ヌクレアーゼアッセイ、鋳型指向性ダイターミネーター取り込み(template-directed dye-terminator incorporation)、分子指標対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドアッセイ、一塩基伸長アッセイ、及びリアルタイムピロリン酸配列によるSNPスコアリングが挙げられる。増幅された配列の分析は、マイクロチップ、蛍光偏光アッセイ、及びMALDI-TOF(マトリクス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型)質量分析などの様々な技術を使用して行うことができる。同様に使用できる2つの方法は、Flapヌクレアーゼによる侵入的切断及びパドロックプローブを用いる方法に基づくアッセイである。
【0262】
特定の対立遺伝子の存否の決定は、概して、分析を受ける個体から得られる核酸試料を分析することによって行われる。多くの場合、核酸試料はゲノムDNAを含む。ゲノムDNAは、典型的には、血液試料から得られるが、他の細胞または組織から得てもよい。
【0263】
RNA試料を多型対立遺伝子の存在について分析することも可能である。例えば、mRNAを使用して1つまたは複数の多型部位での個体の遺伝子型を決定することができる。この場合、核酸試料は、標的核酸が発現される細胞、例えば、Tヘルパー-2(Th2)細胞及びマスト細胞から得られる。そのような分析は、米国特許第5,310,652号、同第5,322,770号、同第5,561,058号、同第5,641,864号、及び同第5,693,517号に記載のように、例えば、ウイルス性逆転写酵素を使用して最初に標的RNAを逆転写し、次いで得られたcDNAを増幅するか、または高温逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)の組み合わせを使用して、実行することができる。
【0264】
試料は、マスト細胞媒介性炎症性疾患(例えば、喘息)を有する疑いがあるか、もしくはそれを有すると診断されるため治療を必要とする可能性が高い患者、または一切の障害を有する疑いがない正常な個体から採取され得る。遺伝子型の決定のために、細胞を含むものなどの患者の試料、またはこれらの細胞によって産生される核酸は、本発明の方法において使用され得る。本発明において試料として有用な体液または分泌物としては、例えば、血液、尿、唾液、便、胸膜液、リンパ液、痰、BAL、粘膜内層液(MLF)(例えば、経鼻吸収または気管支吸収により得られるMLF)、腹水、前立腺液、脳脊髄液(CSF)、または任意の他の体分泌物もしくはその派生物が挙げられる。血液という語は、全血、血漿、血清、または任意の血液派生物を含むように意味される。本明細書に記載の方法おける使用のための試料核酸は、対象の任意の細胞型または組織から得ることができる。例えば、対象の体液(例えば、血液)は、既知の技法によって得ることができる。あるいは、核酸試験を乾燥試料(例えば、頭髪または皮膚)に対して行うことができる。
【0265】
試料は、凍結、新鮮、固定(例えば、ホルマリン固定)、遠心分離、及び/または包埋(例えば、パラフィン包埋)などすることができる。細胞試料は、言うまでもなく、試料における遺伝子型の評価の前に、様々な周知の収集後調製及び保管技法(例えば、核酸及び/またはタンパク質抽出、濾過、保管、凍結、限外濾過、濃縮、蒸発、遠心分離など)に供することができる。同様に、生検も収集後調製及び保管技法、例えば、固定化に供し得る。
【0266】
本発明において有用であるSNPまたは挿入などの多型の存在を検出するために核酸試料を分析するために頻繁に使用される方法論を以下に簡単に説明する。しかしながら、当該技術分野で既知の任意の方法を本発明において使用することで、単一ヌクレオチド置換の存在を検出することができる。
【0267】
a.DNAシークエンシング及び一塩基伸長
SNPまたは挿入などの多型は、直接シークエンシングによって検出することができる。方法としては、例えば、ジデオキシシークエンシングに基づく方法(例えば、サンガーシークエンシング)、及びマクサム・ギルバートシークエンシング(例えば、Sambrook and Russell(上記))などの他の方法が挙げられる。いくつかの実施形態では、シークエンシング手法は、サンガーシークエンシングである。
【0268】
シークエンシング手法は、超並列シークエンシング手法(例えば、ILLUMINA(登録商標)シークエンシング)の場合がある。他の検出方法としては、オリゴヌクレオチド長産物のPYROSEQUENCING(商標)が挙げられる。かかる方法は、PCRなどの増幅技法を用いることが多い。例えば、パイロシークエンシングでは、シークエンシングプライマーを、一本鎖のPCRで増幅したDNA鋳型にハイブリダイズし、酵素であるDNAポリメラーゼ、ATPスルフリラーゼ、ルシフェラーゼ、及びアピラーゼ、ならびに基質であるアデノシン5’ホスホ硫酸(APS)及びルシフェリンと共にインキュベートする。4つのデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)のうちの最初のものを反応物に添加する。DNAポリメラーゼは、それが鋳型鎖中の塩基に相補的である場合、デオキシヌクレオチド三リン酸のDNA鎖への組み込みを触媒する。各組み込み事象は、組み込まれるヌクレオチドの量と等モルである量でのピロリン酸塩(PPi)の放出を伴う。ATPスルフリラーゼは、APSの存在下でPPiをATPに定量的に変換する。このATPは、ATPの量に比例する量で可視光を生成するルシフェリンのオキシルシフェリンへのルシフェラーゼ媒介性変換を駆動する。ルシフェラーゼ触媒反応において生成される光は、電荷結合素子(CCD)カメラによって検出され、PYROGRAM(商標)においてピークとして見られる。各光シグナルは、組み込まれるヌクレオチドの数に比例する。ヌクレオチド分解酵素であるアピラーゼは、組み込まれなかったdNTP及び過剰なATPを継続的に分解する。分解が完了すると、別のdNTPが追加される。
【0269】
いくつかの実施形態では、全トランスクリプトームショットガンシークエンシング(WTSS)とも呼ばれるRNAシークエンシング(RNA-Seq)を使用して、多型(例えば、SNPまたは挿入)を検出することができる。例えば、Wang et al.Nature Reviews Genetics 10:57-63,2009を参照のこと。
【0270】
SNPの特性評価のための別の同様の方法は、完全なPCRの使用を必要としないが、典型的には、検査されるヌクレオチドに相補的である単一の蛍光標識されたジデオキシリボ核酸分子(ddNTP)によるプライマーの伸長のみを使用する。多型部位でのヌクレオチドは、単一の塩基によって伸長されており、蛍光標識されるプライマーの検出によって特定することができる(例えば、Kobayashi et al,Mol.Cell.Probes,9:175-182,1995)。
【0271】
b.対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション
この手法は、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション(ASO)とも一般に呼ばれ(例えば、Stoneking et al.Am.J.Hum.Genet.48:70-382,1991;Saiki et al.Nature 324,163-166,1986;EP235,726;及びWO1989/11548)、核酸試料の増幅から得られる増幅産物に対するバリアントのうちの1つに特異的であるオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションによって塩基1つ異なる2つのDNA分子同士を区別することに依存する。この方法は、典型的には、短いオリゴヌクレオチド、例えば15~20塩基長を用いる。プローブは、他方に対して一方のバリアントに差別的にハイブリダイズするように設計される。そのようなプローブを設計するための原理及びガイダンスは、当技術分野で利用可能である。ハイブリダイゼーション条件は、対立遺伝子間でハイブリダイゼーション強度の顕著な差異があり、本質的な二値応答を生成することによって、プローブが対立遺伝子の一方のみにハイブリダイズするように、十分にストリンジェントであるべきである。一部のプローブは、多型部位がプローブの中心部分(例えば、7位の15塩基オリゴヌクレオチド、8位または9位の16塩基オリゴヌクレオチドにおける)とアラインメントするように、標的DNAのセグメントにハイブリダイズするように設計されるが、この設計は必須ではない。
【0272】
対立遺伝子の量及び/または存在は、試料にハイブリダイズされる対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドの量を測定することによって決定することができる。典型的には、オリゴヌクレオチドは、蛍光標識などの標識によって標識される。例えば、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、SNP配列を表す固定化オリゴヌクレオチドに適用される。ストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件の後、蛍光強度を各SNPオリゴヌクレオチドについて測定する。
【0273】
一実施形態では、多型部位に存在するヌクレオチドは、多型部位を含む領域における多型対立遺伝子のうちの1つに正確に相補的なオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを用いた配列特異的ハイブリダイゼーション条件下でのハイブリダイゼーションによって同定される。プローブまたはプライマーハイブリダイズ配列及び配列特異的ハイブリダイゼーション条件は、多型部位での単一のミスマッチがハイブリダイゼーション二本鎖を十分に不安定化し、その結果、それが効果的に形成されないようにするために選択される。したがって、配列特異的ハイブリダイゼーション条件下では、安定した二本鎖は、プローブまたはプライマーと、正確に相補的な対立遺伝子配列との間にのみ形成されることになる。したがって、多型部位を含む領域における対立遺伝子配列に正確に相補的である約10~約35ヌクレオチド長、通常は約15~約35ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドが本発明の範囲内である。
【0274】
代替的実施形態では、多型部位に存在するヌクレオチドは、多型部位を含む領域におけるSNP対立遺伝子のうちの1つに実質的に相補的であり、かつ多型部位での対立遺伝子に正確に相補的なオリゴヌクレオチドを用いた十分にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でのハイブリダイゼーションによって同定される。非多型部位で生じるミスマッチは両方の対立遺伝子配列とのミスマッチであるため、標的対立遺伝子をもって形成される二本鎖及び対応する非標的対立遺伝子配列をもって形成される二本鎖におけるミスマッチの数の差は、標的対立遺伝子配列に正確に相補的なオリゴヌクレオチドを使用する場合と同じである。本実施形態では、ハイブリダイゼーション条件は、標的配列をもつ安定した二本鎖を形成し、同時に非標的配列をもつ安定した二本鎖の形成を妨げるために十分なストリンジェンシーを維持することを可能にするように十分に緩和されている。かかる十分にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下では、安定した二本鎖は、プローブまたはプライマーと標的対立遺伝子との間にのみ形成されることになる。したがって、多型部位を含む領域における対立遺伝子配列に実質的に相補的であり、かつ多型部位での対立遺伝子配列に正確に相補的である約10~約35ヌクレオチド長、通常は約15~約35ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドが本発明の範囲内である。
【0275】
正確にというよりは実質的に相補的なオリゴヌクレオチドの使用が、ハイブリダイゼーション条件の最適化が制限されるアッセイ形式において望ましい場合がある。例えば、典型的な複数標的固定化オリゴヌクレオチドアッセイ形式においては、各標的に対するプローブまたはプライマーは単一の固体支持体に固定化される。ハイブリダイゼーションは、固体支持体を、標的DNAを含有する溶液と接触させることによって同時に実行される。全てのハイブリダイゼーションは同一の条件下で行われるため、ハイブリダイゼーション条件を各プローブまたはプライマー毎に個別に最適化することはできない。アッセイ形式がハイブリダイゼーション条件の調整を妨げる場合、ミスマッチのプローブまたはプライマーへの組み込みを使用して、二本鎖安定性を調整することができる。特定の導入されたミスマッチが二本鎖安定性に与える影響は周知であり、二本鎖安定性は、上記のように、慣習的に見積もることも経験に基づいて決定することもできる。プローブまたはプライマーの正確なサイズ及び配列に依存する適切なハイブリダイゼーション条件は、本明細書に提供され、当該分野で周知のガイダンスを使用して経験的に選択され得る。オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを使用して、配列の単一塩基対の違いを検出することは、例えば、Conner et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA80:278-282,1983、及び米国特許第5,468,613号及び同第5,604,099号に記載される。
【0276】
完全にマッチしたハイブリダイゼーション二本鎖と一塩基ミスマッチのハイブリダイゼーション二本鎖との間の安定性における比例した変化は、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの長さに依存する。より短いプローブ配列で形成される二本鎖は、ミスマッチの存在によってより比例して不安定化される。約15~約35ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドは、配列特異的検出に使用されることが多い。さらに、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの両端は、熱エネルギーによる連続的なランダム解離及び再アニーリングを受けるため、どちらかの端のミスマッチは、内部で発生するミスマッチよりもハイブリダイゼーション二重鎖を不安定化させない。標的配列における一塩基対の変化の識別のため、多型部位がプローブの内部領域において生じるように標的配列にハイブリダイズするプローブ配列を選択する。
【0277】
特異的対立遺伝子にハイブリダイズするプローブ配列を選択するための上記の基準を、プローブのハイブリダイズ領域、すなわち標的配列によるハイブリダイゼーションに関与するプローブの部分に適用する。プローブは、プローブのハイブリダイゼーション特性を著しく改変することなく、プローブを固定化するために使用するポリ-T尾部などのさらなる核酸配列に結合させてもよい。当業者であれば、本方法における使用については、標的配列に相補的ではなく、そのためハイブリダイゼーションに関与しない、追加の核酸配列に結合するプローブは、非結合プローブと本質的に同等であることを認識することになる。
【0278】
試料中でプローブと標的核酸配列との間に形成されるハイブリッドを検出するための好適なアッセイ形式は当該技術分野で既知であり、固定化標的(ドットブロット)形式、及び固定化プローブ(逆ドットブロットまたはラインブロット)アッセイ形式を含む。ドットブロット及び逆ドットブロットアッセイ形式は、米国特許第5,310,893号、同第5,451,512号、同第5,468,613号、及び同第5,604,099号に記載される。
【0279】
ドットブロット形式では、増幅した標的DNAをナイロン膜などの固体支持体上に固定化する。膜-標的複合体を標識したプローブと共に好適なハイブリダイゼーション条件下でインキュベートし、ハイブリダイズしていないプローブを好適にストリンジェントな条件下で洗浄することによって除去し、膜を結合したプローブの存在についてモニタリングする。
【0280】
逆ドットブロット(またはラインブロット)形式では、プローブをナイロン膜またはマイクロタイタープレートなどの固体支持体上に固定する。標的DNAを、典型的には、標識したプライマーの組み込みによる増幅中に標識する。プライマーの一方または両方を標識することができる。膜-プローブ複合体を標識した増幅標的DNAと共に好適なハイブリダイゼーション条件下でインキュベートし、ハイブリダイズしていない標的DNAを好適にストリンジェントな条件下で洗浄することによって除去し、膜を結合した標的DNAの存在についてモニタリングする。逆ラインブロット検出アッセイは、実施例において説明する。
【0281】
多型バリアントのうちの1つに特異的な対立遺伝子特異的プローブは、他の多型バリアントに対する対立遺伝子特異的プローブと併用することが多い。いくつかの実施形態では、プローブを固体支持体上に固定化し、個々における標的配列を、両方のプローブを同時に使用して分析する。核酸アレイの例は、WO95/11995によって説明されている。同じアレイまたは異なるアレイを、特性評価した多型の分析に使用することができる。WO95/11995は、事前に特性評価した多型のバリアント形態の検出のために最適化されるサブアレイも説明している。かかるサブアレイは、本明細書に記載する多型の存在の検出において使用することができる。
【0282】
c.対立遺伝子特異的プライマー
SNPまたは挿入などの多型も、対立遺伝子特異的増幅またはプライマー伸長法を使用して一般的に検出される。これらの反応は、典型的には、プライマーの3’末端でのミスマッチを介して多型を特異的に標的化するように設計されるプライマーの使用を伴う。ミスマッチの存在は、ポリメラーゼがエラー訂正活性を欠く場合に、ポリメラーゼがプライマーを伸長させる能力に影響する。例えば、対立遺伝子特異的増幅または伸長に基づく方法を使用して対立遺伝子配列を検出するために、多型の1つの対立遺伝子に相補的なプライマーを、3’-末端ヌクレオチドが多型位置にてハイブリダイズするように設計する。特定の対立遺伝子の存在は、プライマーが伸長を開始する能力によって決定することができる。3’-末端がミスマッチである場合、伸長は妨げられる。
【0283】
いくつかの実施形態では、プライマーが増幅反応において第2のプライマーと併用される。第2のプライマーは、多型位置とは無関係の部位にてハイブリダイズする。増幅は、2つのプライマーから発生して検出可能な産物をもたらし、これは、特定の対立遺伝子形態が存在することを示す。対立遺伝子特異的増幅または伸長に基づく方法は、例えば、WO93/22456、及び米国特許第5,137,806号、同第5,595,890号、同第5,639,611号、及び同第4,851,331号に記載される。
【0284】
対立遺伝子特異的増幅に基づくジェノタイピングを使用すると、対立遺伝子の同定には増幅された標的配列の存否の検出しか必要とされない。増幅された標的配列の検出方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、ゲル電気泳動及び記載のプローブハイブリダイゼーションアッセイを使用して、核酸の存在を検出する場合が多い。
【0285】
代替的なプローブを用いない方法では、増幅された核酸は、反応混合物中の2本の鎖からなるDNAの総量の増加をモニタリングすることによって検出され、これは、例えば、米国特許第5,994,056号、及び欧州特許公開第487,218号、同第512,334号に記載される。2本の鎖からなる標的DNAの検出は、2本の鎖からなるDNAに結合すると、様々なDNA結合色素、例えばSYBR Greenなどが示す蛍光の増加に依存する。
【0286】
当業者であれば理解するように、対立遺伝子特異的増幅方法は、複数の対立遺伝子特異的プライマーを用いて特定の対立遺伝子を標的化する反応において行うことができる。かかるマルチプレックス用途のためのプライマーは、区別可能な標識によって概して標識されるか、または対立遺伝子から産出される増幅産物がサイズによって区別できるように選択される。したがって、例えば、単一の試料中の両方の対立遺伝子を、増幅産物のゲル分析によって単一の増幅を使用して同定することができる。
【0287】
対立遺伝子特異的プローブの場合と同様に、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、ハイブリダイズ領域の多型対立遺伝子のうちの1つと正確に相補的であり得るか、またはオリゴヌクレオチドの3’末端以外の位置にいくつかのミスマッチがあり得、両方の対立遺伝子配列の非多型部位でミスマッチが発生する。
【0288】
d.検出可能なプローブ
i)5’-ヌクレアーゼアッセイプローブ
ジェノタイピングはまた、米国特許第5,210,015号、同第5,487,972号、及び同第5,804,375号、ならびにHolland et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276-7280,1988に記載されているように、「TAQMAN(登録商標)」または「5’-ヌクレアーゼアッセイ」を使用して実施することもできる。TAQMAN(登録商標)アッセイでは、増幅領域内でハイブリダイズする標識された検出プローブが増幅反応中に添加される。プローブは、プローブがDNA合成のためのプライマーとして作用することを防止するように修飾される。増幅は、5’-から3’-エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを使用して行われる。増幅の各合成ステップ中、伸長されるプライマーから下流にある標的核酸にハイブリダイズするいずれのプローブも、DNAポリメラーゼの5’-から3’-エキソヌクレアーゼ活性によって分解される。したがって、新たな標的ストランドの合成もプローブの分解をもたらし、分解産物の蓄積が標的配列の合成の測定を提供する。
【0289】
ハイブリダイゼーションプローブは、SNP対立遺伝子同士を区別する対立遺伝子特異的プローブであり得る。あるいは、本方法は、対立遺伝子特異的プライマー、及び増幅産物に結合する標識されたプローブを使用して行うことができる。
【0290】
分解産物の検出に好適ないずれの方法も、5’-ヌクレアーゼアッセイに使用することができる。多くの場合、検出プローブは、2つの蛍光色素で標識され、その一方は、他方の色素の蛍光を消光することができる。色素はプローブに付着し、通常は一方が5’-末端に付着し、他方が末端部位に付着することで、プローブが非ハイブリダイズ状態にあるときに消光が生じ、DNAポリメラーゼの5’-から3’-エキソヌクレアーゼ活性によるプローブの切断が2つの色素の間で生じるようにする。増幅は、色素間のプローブの切断をもたらし、これは、消光の同時の排除と最初に消光された色素から観察可能な蛍光の増加とを伴う。分解産物の蓄積は、反応蛍光の増加を測定することによってモニタリングされる。米国特許第5,491,063号及び同第5,571,673号は、増幅と同時に生じるプローブの分解の代替的検出方法を説明している。
【0291】
ii)二次構造プローブ
二次構造の変化について検出可能なプローブは、SNPを含む多型の検出にも好適である。例示する二次構造またはステム-ループ構造プローブは、分子指標またはSCORPION(登録商標)プライマー/プローブを含む。分子指標プローブは、フルオロフォア及びクエンチャーが通常はオリゴヌクレオチドの両端部に配置されるヘアピン構造を形成することができる一本鎖オリゴ核酸プローブである。プローブのどちらかの端部において、短い相補的な配列により、フルオロフォア及びクエンチャーが近接近することを可能にする分子内ステムの形成が可能となる。分子指標のループ部分は、目的の標的核酸に相補的である。このプローブの目的とするその標的核酸への結合は、ステムを離すハイブリッドを形成する。これにより高次構造が変化し、フルオロフォア及びクエンチャーが互いに離れ、より強い蛍光シグナルをもたらす。しかしながら、分子指標プローブは、プローブ標識内の小さな配列変動に非常に敏感である(例えば、Tyagi et al.Nature Biotech.14:303-308,1996;Tyagi et al.Nature Biotech.16:49-53,1998;Piatek et al.Nature Biotech.16:359-363,1998;Marras et al.Genetic Analysis:Biomolecular Engineering 14:151-156,1999;Tapp et al,BioTechniques 28:732-738,2000を参照のこと)。SCORPION(登録商標)プライマー/プローブは、プライマーに共有結合したステム-ループ構造プローブを含む。
【0292】
e.電気泳動
ポリメラーゼ連鎖反応を使用して生成された増幅産物は、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法の使用によって分析することができる。異なる対立遺伝子は、溶液中のDNAの異なる配列依存融解特性及び電気泳動に基づいて同定することができる(例えば、Erlich,ed.,PCR Technology,Principles and Applications for DNA Amplification,W.H.Freeman and Co.,1992を参照のこと)。
【0293】
マイクロサテライト多型の区別は、キャピラリー電気泳動を使用して行うことができる。キャピラリー電気泳動により、特定のマイクロサテライト対立遺伝子における反復の数の特定が簡便に可能となる。DNA多型の分析へのキャピラリー電気泳動の適用は、当業者によく知られている(例えば、Szantai et al.J Chromatogr A.1079(1-2):41-9,2005;Bjorheim et al.Electrophoresis 26(13):2520-30,2005、及びMitchelson,Mol.Biotechnol.24(1):41-68,2003を参照のこと)。
【0294】
対立遺伝子バリアントの同一性も、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)を使用してアッセイされる、変性剤の勾配を含むポリアクリルアミドゲルにおける多型領域を含む核酸の運動を分析することによって獲得し得る(例えば、Myers et al.Nature 313:495-498,1985を参照のこと)。DGGEを分析方法として使用する場合、DNAは、例えばPCRによって約40bpの高融点GCリッチDNAのGCクランプを追加することにより、完全に変性しないように修飾される。さらなる実施形態では、温度勾配を変性剤勾配の代わりに使用して、対照及び試料DNAの移動性の差異を特定する(例えば、Rosenbaum et al.Biophys.Chem.265:1275,1987を参照のこと)。
【0295】
f.一本鎖高次構造多型分析
標的配列の対立遺伝子は、一本鎖高次構造多型分析を使用して区別することができ、これは、一本鎖PCR産物の電気泳動における変化によって塩基差を特定するものであり、例えば、Orita et al.Proc.Nat.Acad.Sci.86,2766-2770,1989;Cotton Mutat. Res.285:125-144,1993、及びHayashi Genet.Anal.Tech.Appl.9:73-79,1992に記載されているとおりである。増幅PCR産物は、上記のように生成することができ、加熱または変性させて一本鎖増幅産物を形成する。一本鎖核酸は、折り畳み直すか、または塩基配列に部分的に依存する二次構造を形成してもよい。一本鎖増幅産物の異なる電気泳動移動度は、標的の対立遺伝子間の塩基配列の違いに関連している可能性があり、電気泳動移動度の結果として生じる変化は、単一の塩基変化の検出さえも可能にする。DNAフラグメントは、標識されたプローブによって標識または検出され得る。アッセイの感度を、二次構造が配列の変化により感受性である(DNAではなく)RNAを使用することによって強化してもよい。別の好ましい実施形態において、主題の方法は、ヘテロ二本鎖分析を利用して、電気泳動性の変化に基づいて2本鎖のヘテロ二本鎖分子を分離する(例えば、Keen et al.Trends Genet.7:5-10,1991を参照のこと)。
【0296】
SNP検出方法は、標識されたオリゴヌクレオチドを用いる場合が多い。オリゴヌクレオチドは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段によって検出可能な標識を組み込むことによって標識することができる。有用な標識には、蛍光染料、放射性標識、例えば、32P、高電子密度試薬、酵素、例えば、ペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ、ビオチン、または抗血清もしくはモノクローナル抗体が利用可能なハプテン及びタンパク質が挙げられる。標識技術は当技術分野でよく知られている(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(上記)、Sambrook et al.(上記)を参照のこと)。
【0297】
g.多型での個体の遺伝子型を決定するためのさらなる方法
DNAマイクロアレイ技術、例えばDNAチップデバイス、ハイスループットスクリーニング用途のための高密度マイクロアレイ、及び低密度マイクロアレイを使用し得る。マイクロアレイ製造方法は当該技術分野で既知であり、様々なインクジェット及びマイクロジェット堆積またはスポッティング技術及びプロセス、in situまたはオン-チップ(on-chip)のフォトリソグラフィーオリゴヌクレオチド合成プロセス、ならびに電子的DNAプローブアドレッシングプロセスを含む。DNAマイクロアレイハイブリダイゼーション用途は、点突然変異、一塩基多型(SNP)、及び短縦列反復(STR)についての遺伝子発現分析及び遺伝子型決定の分野における適用が成功している。さらなる方法としては、干渉RNAマイクロアレイ、ならびにマイクロアレイと、他の方法、例えばレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、アレイCGH、及びクロマチン免疫沈降(ChIP)などとの組み合わせが挙げられる。例えば、He et al.Adv.Exp.Med.Biol.593:117-133,2007及びHeller Annu.Rev.Biomed.Eng.4:129-153,2002を参照のこと。
【0298】
いくつかの実施形態では、切断剤(例えば、ヌクレアーゼ、ヒドロキシルアミン、または四酸化オスミウム、及びピペリジンによる)からの保護を使用して、RNA/RNA、DNA/DNA、またはRNA/DNAヘテロ二本鎖におけるミスマッチ塩基を検出することができる(例えば、Myers et al.Science 230:1242,1985)。一般に、「ミスマッチ切断」の手法は、遺伝子の対立遺伝子バリアントのヌクレオチド配列を含む、例えばRNAまたはDNAなどの任意に標識された対照核酸を試料核酸、例えば、組織試料から得られるRNAまたはDNAとハイブリダイズさせることにより形成されるヘテロ二本鎖を提供することから始まる。2本の鎖からなる二本鎖を、対照鎖と試料鎖との間の塩基対ミスマッチに基づいて形成される二本鎖などの二本鎖の一本鎖領域を切断する薬剤で処理する。例えば、RNA/DNA二本鎖をRNaseで処理することができ、DNA/DNAハイブリッドをS1ヌクレアーゼで処理してミスマッチ領域を酵素的に消化することができる。あるいは、ミスマッチ領域を消化するために、DNA/DNA二本鎖またはRNA/DNA二本鎖のいずれかをヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウム、及びピペリジンで処理し得る。ミスマッチ領域の消化後、次いで結果として得られた物質を変性ポリアクリルアミドゲル上でサイズによって分け、対照核酸及び試料核酸が同一のヌクレオチド配列を有するかどうか、またはそれらがどのヌクレオチドにおいて異なるかを決定する。例えば、米国特許第6,455,249号、Cotton et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4397-4401,1988;Saleeba et al.Meth.Enzymol.217:286-295,1992を参照のこと。
【0299】
場合によっては、対象由来のDNAにおける特異的対立遺伝子の存在が制限酵素分析によって示され得る。例えば、特異的ヌクレオチド多型は、別の対立遺伝子バリアントのヌクレオチド配列に不在である制限部位を含むヌクレオチド配列をもたらし得る。
【0300】
別の実施形態では、対立遺伝子バリアントの同定は、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)を使用して実行され、これは例えば米国特許第4,998,617号、及びLaridegren et al.Science 241:1077-1080,1988に記載される。OLAプロトコルは、標的の一本鎖の隣接している配列にハイブリダイズすることができるように設計される2つのオリゴヌクレオチドを使用する。これらのオリゴヌクレオチドのうちの一方は、例えばビオチン化によって分離マーカーに結合され、もう一方は検出可能に標識される。正確な相補配列が標的分子で見つかると、オリゴヌクレオチドは、その末端が隣接するようにハイブリダイズされ、ライゲーション基質を作成する。その後、ライゲーションにより、アビジンまたは別のビオチンリガンドを使用して、標識されたオリゴヌクレオチドを回復することが可能となる。PCRの属性とOLAの属性とを組み合わせる核酸検出アッセイも当該技術分野で既知である(例えば、Nickerson et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:8923-8927,1990を参照のこと)。この方法では、PCRを使用して、標的DNAの指数関数的増幅を達成し、その後OLAを使用してこれを検出する。
【0301】
一塩基多型は、特殊なエキソヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチドを使用することによって検出でき、これは、例えば、米国特許第4,656,127号に記載されている。この方法によると、多型部位に対してすぐ3’にある対立遺伝子配列に相補的なプライマーは、特定の動物またはヒトから得た標的分子にハイブリダイズすることが許容される。標的分子上の多型部位が、存在する特定のエキソヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチド誘導体に相補的であるヌクレオチドを含む場合には、その誘導体は、ハイブリダイズしたプライマーの端部に組み込まれることになる。かかる組み込みにより、プライマーはエキソヌクレアーゼに抵抗性となり、その結果、その検出が可能となる。試料のエキソヌクレアーゼ抵抗性誘導体の同一性が分かったため、プライマーがエキソヌクレアーゼに抵抗性となったという発見により、標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドが、反応において使用されるヌクレオチド誘導体のものに相補的であったことが明らかとなる。この方法は、それが大量の無関係の配列データの決定を必要としないという利点を有する。
【0302】
溶液ベースの方法も、多型部位のヌクレオチドの同一性を決定するために使用され得る(例えば、WO1991/02087を参照のこと)。上述のように、多型部位に対してすぐ3’にある対立遺伝子配列に相補的であるプライマーが用いられる。この方法は、多型部位のヌクレオチドに相補的である場合にプライマーの末端に組み込まれることになる標識されたジデオキシヌクレオチド誘導体を使用して、その部位のヌクレオチドの同一性を決定する。
【0303】
使用され得る代替的な方法は、WO92/15712に記載されている。この方法は、標識されたターミネーターと、多型部位に対して配列3’に相補的であるプライマーとの混合物を使用する。組み込まれる標識されたターミネーターは、したがって評価される標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドによって決定され、それに相補的である。本方法は、通常、プライマーまたは標的分子が固相に固定される不均一相アッセイである。
【0304】
DNAにおける多型部位をアッセイするための多くの他のプライマー誘導型ヌクレオチド組み込み手順が説明されている(Komher et al.Nucl.Acids.Res.17:7779-7784,1989;Sokolov Nucl.Acids Res.18:3671,1990;Syvanen et al.Genomics 8:684-692,1990;Kuppuswamy et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1143-1147,1991;Prezant et al.Hum.Mutat.1:159-164,1992;Ugozzoli et al.GATA 9:107-112,1992;Nyren et al.Anal.Biochem.208:171-175,1993)。これらの方法は全て、多型部位にて塩基同士を区別するために標識されたデオキシヌクレオチドの組み込みに依存する。
【0305】
V.バイオマーカーの発現レベルの決定
本発明の治療及び診断方法は、1つまたは複数のバイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の発現レベルの決定を含み得る。バイオマーカーのレベルの決定は、当該技術分野で既知であるかまたは以下に記載する方法のいずれによっても行うことができる。
【0306】
本明細書に記載のバイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の発現は、当該技術分野で既知である任意の方法を使用して検出することができる。例えば、哺乳動物の組織または細胞試料を、ノーザン、ドットブロット、またはPCR分析、アレイハイブリダイゼーション、RNase保護アッセイを使用して、またはDNAマイクロアレイスナップショットを含む市販されているDNA SNPチップマイクロアレイを使用して、例えば目的のバイオマーカーのmRNAまたはDNAについて簡便にアッセイすることができる。例えば、定量的PCRアッセイなどのリアルタイムPCR(RT-PCR)アッセイは、当該技術分野でよく知られている。本発明の例示的実施形態では、生体試料中の目的の遺伝子バイオマーカー(例えば、トリプターゼ)のmRNAの検出方法は、少なくとも1つのプライマーを使用する逆転写によって試料からcDNAを産出すること、そうして産出したcDNAを増幅すること、及び増幅したcDNAの存在を検出することを含む。加えて、かかる方法は、生体試料中のmRNAのレベルを決定することを可能にする1つまたは複数のステップを含むことができる(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に調べることによって)。任意で、増幅されたcDNAの配列を決定することができる。
【0307】
本発明で使用するために核酸を検出するために使用できる他の方法は、例えば、RNASeqなどのRNAベースのゲノム分析を含む、ハイスループットRNA配列発現分析を含む。
【0308】
ある特定の実施形態では、バイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の発現は、RT-PCR技術によって行うことができる。PCRに使用されるプローブは、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤、または酵素などの検出可能なマーカーで標識されてもよい。かかるプローブ及びプライマーを使用して、試料中の発現されたバイオマーカーの存在を検出することができる。当業者によって理解されるように、非常に多くの異なるプライマー及びプローブが、本明細書に提供する配列に基づいて調製され、バイオマーカーの存在及び/またはレベルを増幅、クローニング、及び/または決定するために効果的に使用され得る。
【0309】
他の方法には、マイクロアレイ技術によって組織または細胞試料中でバイオマーカー(例えば、トリプターゼ)のmRNAを検査または検出するプロトコルが含まれる。核酸マイクロアレイを使用して、試験及び対照組織試料からの試験及び対照mRNA試料を逆転写し、標識して、cDNAプローブを生成する。その後、プローブを、固体支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズする。アレイは、アレイの各メンバーの配列及び位置が分かるように構成する。例えば、ある特定の疾患状態において発現される可能性がある遺伝子の選択物を固体支持体上に配列してもよい。特定のアレイメンバーとの標識プローブのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。疾患組織の差次的遺伝子発現分析は、有益な情報を提供し得る。マイクロアレイ技術は、核酸ハイブリダイゼーション技法及びコンピューティング技術を利用して、単一の実験内で何千もの遺伝子のmRNA発現プロファイルを評価する(例えば、WO2001/75166を参照のこと)。例えば、アレイ製造の考察については、米国特許第5,700,637号、同第5,445,934号、及び同第5,807,522号、Lockart,Nat.Biotech.14:1675-1680,1996、ならびにCheung et al.Nat.Genet.21(Suppl):15-19,1999を参照のこと。
【0310】
加えて、欧州特許第EP1753878号に記載されているマイクロアレイを利用するDNAプロファイリング及び検出方法を用いてもよい。この方法は、短縦列反復(STR)分析及びDNAマイクロアレイを利用して異なるDNA配列同士を迅速に特定し区別する。一実施形態では、標識されたSTR標的配列は、相補的プローブを担持するDNAマイクロアレイにハイブリダイズされる。これらのプローブは、可能性のあるSTRの範囲を網羅するように長さが様々である。DNAハイブリッドの標識化された一本鎖領域は、ハイブリダイゼーション後酵素消化を利用するマイクロアレイ表面から選択的に除去される。未知の標的における反復の数は、マイクロアレイにハイブリダイズしたままの標的DNAのパターンに基づいて差し引かれる。
【0311】
マイクロアレイプロセッサの一例は、Affymetrix GENECHIP(登録商標)システムであり、これは、市販されており、ガラス表面でのオリゴヌクレオチドの直接合成によって製造されるアレイを備える。当業者に既知である他のシステムを使用してもよい。
【0312】
上記の手法を適用する際のガイダンスを提供する、多くの参考文献が利用可能である(Kohler et al.Hybridoma Techniques,Cold Spring Harbor Laboratory,1980;Tijssen,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,Elsevier,1985;Campbell,Monoclonal Antibody Technology,Elsevier,1984;Hurrell,Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications,CRC Press,1982;及びZola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147-158,CRC Press,Inc.,1987)。ノーザンブロット分析は、当該技術分野で周知の従来技法であり、例えば、Sambrook et al(上記)において説明されている。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubel et al(上記)において見出される。
【0313】
タンパク質バイオマーカーの検出に関して、例えば、抗体ベースの方法、ならびに質量分析及び当該分野で公知の他の類似の手段を含む、様々なタンパク質アッセイが利用可能である。抗体ベースの方法の場合、例えば、試料は、抗体-バイオマーカー複合体が形成されるのに十分な条件下で、バイオマーカー(例えば、トリプターゼ)に特異的な抗体と接触させ、次いで複合体を検出することができる。タンパク質バイオマーカーの存在の検出は、血漿または血清を含む多岐にわたる組織及び試料をアッセイするための、ウェスタンブロット(免疫沈降の有無に関わらず)、2次元ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、免疫沈降、蛍光活性化細胞選別(FACS(商標))、フローサイトメトリー、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)手順などの多数の方法において達成され得る。かかるアッセイ形式を使用する幅広い免疫アッセイ技法が利用可能であり、例えば、米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号、及び同第4,018,653号を参照のこと。これらには、非競合型の1部位及び2部位の両方のアッセイまたは「サンドイッチ」アッセイ、ならびに伝統的な競合的結合アッセイが含まれる。これらのアッセイはまた、標識された抗体の標的バイオマーカーへの直接結合を含む。
【0314】
サンドイッチアッセイは、中でも最も有用であり、一般的に使用されているアッセイである。多数のサンドイッチアッセイ技法の変形が存在し、本発明はその全てを包含するように意図される。簡潔に述べると、典型的な順方向アッセイでは、非標識抗体を固体基質上に固定し、試験する試料を結合分子と接触させる。好適な期間のインキュベーション後、抗体-抗原複合体の形成を可能にするのに十分な期間、抗原に特異的であり、検出可能なシグナルを生成することができるレポーター分子で標識した第2の抗体を添加し、抗体-抗原標識化抗体の別の複合体の形成に十分な時間を取ってインキュベートした。一切の未反応物質を洗い流し、抗原の存在を、レポーター分子によって生成されたシグナルの観察によって決定する。結果は、可視シグナルの単純な観察による定性的なものであってもよく、または既知量のバイオマーカーを含有する対照試料との比較による定量的なものであってもよい。
【0315】
順方向アッセイの変形には、試料と標識された抗体との両方を同時に結合抗体に添加する同時アッセイが含まれる。これらの技法は、容易に明らかとなるいずれの変形も含めて、当業者には周知である。典型的な順方向サンドイッチアッセイでは、バイオマーカーに対する特異性を有する第1の抗体を、共有結合的にまたは受動的に固体表面に結合させる。固体表面は、典型的にはガラスまたはポリマーであり、最も一般的に使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンである。固体支持体は、管、ビーズ、マイクロプレートの円盤、または免疫アッセイの実施に好適な任意の他の表面の形態であってよい。結合プロセスは、当該技術分野で周知であり、概して、架橋、共有結合、または物理吸着からなり、ポリマー-抗体複合体は、試験試料に備えて洗浄される。次に、試験する試料のアリコートを固相複合体に加え、抗体に存在する任意のサブユニットの結合を可能にするために、十分な時間(例えば、2~40分またはより都合のよい場合は一晩)、適切な条件(例えば室温~40℃、例えば25℃~32℃の間など)でインキュベートする。インキュベーション期間の後、抗体サブユニット固相を洗浄し、乾燥させ、バイオマーカーの一部に特異的な第2の抗体と共にインキュベートする。第2の抗体を、第2の抗体の分子マーカーへの結合を示すために使用するレポーター分子に結合させる。
【0316】
代替的な方法は、試料中で標的バイオマーカーを固定化した後、固定化した標的を、レポーター分子で標識されている場合もそうでない場合もある特定の抗体に曝露することを伴う。標的の量及びレポーター分子シグナルの強度に応じて、結合した標的は、抗体で直接標識することにより検出可能であり得る。あるいは、第1の抗体に特異的な第2の標識された抗体を標的-第1の抗体複合体に曝露して、標的-第1の抗体-第2の抗体の三次複合体を形成する。この複合体は、レポーター分子が発するシグナルによって検出される。「レポーター分子」とは、本明細書で使用される場合、その化学的性質により、抗原結合抗体の検出を可能にする分析によって特定可能なシグナルを提供する分子を意味する。この種のアッセイにおいて最も一般的に使用されるレポーター分子は、酵素、フルオロフォア、または放射性核種を含有する分子(すなわち、放射性同位体)、及び化学発光分子のいずれかである。
【0317】
酵素免疫アッセイ(EIA)の場合、酵素を、一般的にはグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩によって第2の抗体にコンジュゲートさせる。しかしながら、容易に認識されるであろうとおり、多岐にわたる異なるコンジュゲーション技法が存在し、これらは当業者であれば容易に利用できる。本発明の方法に好適な一般的に使用される酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、及びアルカリホスファターゼが挙げられる。特定の酵素と共に使用する基質は、概して、対応する酵素による加水分解の際、検出可能な色の変化の生成に対して選択される。上述の発色基質ではなく、蛍光産物を生む蛍光基質を用いることも可能である。全ての場合において、酵素標識した抗体を第1の抗体-分子マーカー複合体に添加し、結合させた後、過剰な試薬を洗い流す。その後、適切な基質を含有する溶液を抗体-抗原-抗体の複合体に添加する。基質は、第2の抗体に結合された酵素と反応して、定性的視覚シグナルを付与し、これを通常は分光光度的にさらに定量化して、試料中に存在していたバイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の量の指標を付与することができる。あるいは、蛍光化合物、例えばフルオレセイン及びローダミンなどを、その結合性能を改変することなく抗体に化学的に結合させてもよい。特定の波長の光を用いた照射によって活性化されると、蛍光色素で標識した抗体は、分子中の励起性状態を誘導する光エネルギーを吸収し、続いて、光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色の光を放射する。EIAのように、蛍光標識した抗体を、第1の抗体-分子マーカー複合体に結合させる。非結合試薬を洗い落とした後、次いで残っている三次複合体を適切な波長の光に曝露すると、観察された蛍光は目的の分子マーカーの存在を示す。免疫蛍光法及びEIA技術は両方とも、当技術分野で非常によく確立されている。しかしながら、放射性同位体、化学発光または生物発光分子などの他のレポーター分子を用いてもよい。
【0318】
いくつかの実施形態では、試料(例えば、血液(例えば、血清または血漿)、BAL、またはMLF)中の活性トリプターゼのレベルは、例えば、米国仮特許出願第62/457,722号の実施例6に記載されるように、活性トリプターゼELISAアッセイを使用して決定され得る。ヒト活性トリプターゼ(四量体)の濃度は、ELISAアッセイによって決定することができる。簡潔に述べると、ヒトトリプターゼを認識するモノクローナル抗体クローンが捕捉抗体として利用される(例えば、Fukuoka et al.(上記)に記載されたモノクローナル抗体B12、またはE88AS抗体クローン)。ヒトトリプターゼに結合する任意の好適な抗体を使用することができる。組換えヒト活性トリプターゼベータ1は精製され、アッセイ標準の準備のソース材料として使用される。アッセイ標準、対照、及び希釈試料を500μg/mlの大豆トリプシン阻害剤(SBTI;Sigmaカタログ番号10109886001)と10分間インキュベートし、次に活性ベースのプローブ(ABP)(G0353816)で1時間標識した。小分子トリプターゼ阻害剤(G02849855)を20分間加え、ABP標識を停止した。アッセイで使用する捕捉抗体によっては、この混合物を、トリプターゼ四量体(例えば、hu31A.v11またはB12)を解離させることができる抗ヒトトリプターゼ抗体とインキュベートしてから、捕捉抗体を含むELISAプレートに1時間添加し、1xリン酸緩衝生理食塩水-TWEEN(登録商標)(PBST)で洗浄し、SA-HRP試薬(ストレプトアビジン-コンジュゲート西洋ワサビペルオキシダーゼ、General Electric(GE)カタログ番号RPN4401V)と2時間インキュベートした。HRP基質であるテトラメチルベンジジン(TMB)を適用することで比色シグナルが生成され、リン酸を加えることで反応が停止する。検出吸光度には450nm、参照吸光度には650nmを使用してプレートリーダー(例えば、SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー)上でプレートが読み取られる。同様のアッセイを実施して、例えば、抗体クローン13G6を捕捉抗体として使用して、試料(例えば、血液(例えば、血清または血漿)、BAL、またはMLF)中のカニクイザル(cynomolgus monkey)(カニクイザル(cyno))の活性トリプターゼレベルを決定することができる。
【0319】
いくつかの実施形態では、試料(例えば、血液(例えば、血清または血漿)、BAL、またはMLF)中の総トリプターゼのレベルは、例えば、米国仮特許出願第62/457,722号の実施例6に記載されるように、総トリプターゼELISAアッセイを使用して決定され得る。簡潔に述べると、ヒト総トリプターゼの濃度は、ELISAアッセイによって決定することができる。ヒトトリプターゼを認識する抗体は、捕捉抗体(例えば、抗体クローンB12)として利用される。ヒトトリプターゼを認識するモノクローナル抗体は、検出抗体(例えば、抗体クローンE82AS)として利用される。組換えヒト活性トリプターゼベータ1は精製され、アッセイ標準の準備のソース材料として使用される。アッセイで使用する捕捉抗体によっては、この混合物を、トリプターゼ四量体(例えば、hu31A.v11またはB12)を解離させることができる抗ヒトトリプターゼ抗体とインキュベートしてから、捕捉抗体を含むELISAプレートに2時間添加し、1xPBSTで洗浄した。ビオチン化検出抗体を1時間添加した。次に、SA-HRP試薬を1時間添加した。TMBを適用することで比色シグナルが生成され、リン酸を加えると反応が停止する。検出吸光度には450nm、参照吸光度には650nmを使用してプレートリーダー(例えば、SpectraMax(登録商標)M5プレートリーダー)上でプレートが読み取られる。同様のアッセイを実施して、例えば、抗体クローン13G6を捕捉抗体として、抗体クローンE88ASを検出アッセイとして使用して、試料(例えば、血液(例えば、血清または血漿)、BAL、またはMLF)中のカニクイザル(カニクイザル)の総トリプターゼレベルを決定することができる。
【0320】
いくつかの実施形態では、血液(例えば、血清または血漿)中の総トリプターゼの例示的な基準レベルは、約1ng/ml、約2ng/ml、約3ng/ml、約4ng/ml、約5ng/ml、約6ng/ml、約7ng/ml、約8ng/ml、約9ng/ml、または約10ng/mlであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、血漿中の総トリプターゼの例示的な基準レベルは、約3ng/mlである。別の例では、いくつかの実施形態では、血清中の総トリプターゼの例示的な基準レベルは、約4ng/mlである。例えば、いくつかの実施形態では、対象の総トリプターゼレベル(例えば、血液(例えば、血清または血漿)中)が約1ng/ml以上、約2ng/ml以上、約3ng/ml以上、約4ng/ml以上、約5ng/ml以上、約6ng/ml以上、約7ng/ml以上、約8ng/ml以上、約9ng/ml以上、または約10ng/ml以上である場合、対象は基準レベル以上の総トリプターゼレベルを有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、対象の総血漿トリプターゼレベルが3ng/ml以上である場合、対象は基準レベル以上の総トリプターゼレベルを有し得る。別の例では、いくつかの実施形態では、対象の総血清トリプターゼレベルが4ng/ml以上である場合、対象は、基準レベル以上の総トリプターゼレベルを有し得る。
【0321】
本発明のいくつかの実施形態では、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開第WO2012/083132号に記載されている総ペリオスチンアッセイを使用して、患者に由来する試料中のペリオスチンのレベルを決定する。例えば、WO2012/083132にてE4アッセイと称される非常に感受性の高い(約1.88ng/mlの感受性)ペリオスチン捕捉ELISAアッセイを使用することができる。抗体は、ペリオスチンアイソフォーム1~4(WO2012/083132の配列番号5~8)をナノモルの親和性で認識する。他の実施形態では、WO2012/083132に記載されているELECSYS(登録商標)ペリオスチンアッセイを使用して、患者に由来する試料中のペリオスチンのレベルを決定することができる。
【0322】
いくつかの実施形態では、例えば上記のE4アッセイを使用する場合、ペリオスチンレベルの例示的な基準レベルは20ng/mlである。例えば、E4アッセイを使用する場合、患者は、患者のペリオスチンレベル(例えば、血清または血漿中)が、20ng/ml以上、21ng/ml以上、22ng/ml以上、23ng/ml以上、24ng/ml以上、25ng/ml以上、26ng/ml以上、27ng/ml以上、28ng/ml以上、29ng/ml以上、30ng/ml以上、31ng/ml以上、32ng/ml以上、33ng/ml以上、34ng/ml以上、35ng/ml以上、36ng/ml以上、37ng/ml以上、38ng/ml以上、39ng/ml以上、40ng/ml以上、41ng/ml以上、42ng/ml以上、43ng/ml以上、44ng/ml以上、45ng/ml以上、46ng/ml以上、47ng/ml以上、48ng/ml以上、49ng/ml以上、50ng/ml以上、51ng/ml以上、52ng/ml以上、53ng/ml以上、54ng/ml以上、55ng/ml以上、56ng/ml以上、57ng/ml以上、58ng/ml以上、59ng/ml以上、60ng/ml以上、61ng/ml以上、62ng/ml以上、63ng/ml以上、64ng/ml以上、65ng/ml以上、66ng/ml以上、67ng/ml以上、68ng/ml以上、69ng/ml以上、または70ng/ml以上である場合に、基準レベル以上であるペリオスチンレベルを有し得る。
【0323】
E4アッセイを使用する場合、患者は、患者のペリオスチンレベル(例えば、血清または血漿中)が、20ng/ml以下、19ng/ml以下、18ng/ml以下、17ng/ml以下、16ng/ml以下、15ng/ml以下、14ng/ml以下、13ng/ml以下、12ng/ml以下、11ng/ml以下、10ng/ml以下、9ng/ml以下、8ng/ml以下、7ng/ml以下、6ng/ml以下、5ng/ml以下、4ng/ml以下、3ng/ml以下、2ng/ml以下、または1ng/ml以下である場合に、基準レベル以下であるペリオスチンレベルを有し得る。
【0324】
他の実施形態では、例えば上記のELECSYS(登録商標)ペリオスチンアッセイを使用する場合、ペリオスチンレベル(例えば、血清または血漿中)の例示的な基準レベルは50ng/mlである。例えば、ELECSYS(登録商標)ペリオスチンアッセイを使用する場合、患者は、患者のペリオスチンレベルが、50ng/ml以上、51ng/ml以上、52ng/ml以上、53ng/ml以上、54ng/ml以上、55ng/ml以上、56ng/ml以上、57ng/ml以上、58ng/ml以上、59ng/ml以上、60ng/ml以上、61ng/ml以上、62ng/ml以上、63ng/ml以上、64ng/ml以上、65ng/ml以上、66ng/ml以上、67ng/ml以上、68ng/ml以上、69ng/ml以上、70ng/ml以上、71ng/ml以上、72ng/ml以上、73ng/ml以上、74ng/ml以上、75ng/ml以上、76ng/ml以上、77ng/ml以上、78ng/ml以上、79ng/ml以上、80ng/ml以上、81ng/ml以上、82ng/ml以上、83ng/ml以上、84ng/ml以上、85ng/ml以上、86ng/ml以上、87ng/ml以上、88ng/ml以上、89ng/ml以上、90ng/ml以上、91ng/ml以上、92ng/ml以上、93ng/ml以上、94ng/ml以上、95ng/ml以上、96ng/ml以上、97ng/ml以上、98ng/ml以上、または99ng/ml以上である場合に、基準レベル以上であるペリオスチンレベルを有し得る。
【0325】
ELECSYS(登録商標)ペリオスチンアッセイを使用する場合、患者は、患者のペリオスチンレベル(例えば、血清または血漿中)が、50ng/ml以下、49ng/ml以下、48ng/ml以下、47ng/ml以下、46ng/ml以下、45ng/ml以下、44ng/ml以下、43ng/ml以下、42ng/ml以下、41ng/ml以下、40ng/ml以下、39ng/ml以下、38ng/ml以下、37ng/ml以下、36ng/ml以下、35ng/ml以下、34ng/ml以下、33ng/ml以下、32ng/ml以下、31ng/ml以下、30ng/ml以下、29ng/ml以下、28ng/ml以下、27ng/ml以下、26ng/ml以下、25ng/ml以下、24ng/ml以下、23ng/ml以下、22ng/ml以下、21ng/ml以下、20ng/ml以下、19ng/ml以下、18ng/ml以下、17ng/ml以下、16ng/ml以下、15ng/ml以下、14ng/ml以下、13ng/ml以下、12ng/ml以下、11ng/ml以下、10ng/ml以下、9ng/ml以下、8ng/ml以下、7ng/ml以下、6ng/ml以下、5ng/ml以下、4ng/ml以下、3ng/ml以下、2ng/ml以下、または1ng/ml以下である場合に、基準レベル以下であるペリオスチンレベルを有し得る。
【0326】
VI.キット
バイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の存在及び/または発現レベルの検出における使用のため、キットまたは製品もまた本発明により提供される。そのようなキットは、マスト細胞媒介性炎症性障害(例えば、喘息)を有する患者が、治療、例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療、またはIgEアンタゴニストもしくはFcイプシロン受容体(FcεR)アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを決定するため、及び/または治療による処置に対する喘息を有する患者の応答を評価またはモニタリングするために使用することができる。いくつかの実施形態では、本キットを使用して、患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定することができる。他の実施形態では、キットは、患者の試料中のトリプターゼ(例えば、活性または総トリプターゼ)の発現レベルを決定するために使用され得る。そのようなキットは、本発明の方法のいずれかを実施するために使用することができる。
【0327】
例えば、本発明は、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)に応答する可能性が高いマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を同定するためのキットを特徴とし、本キットは、(a)患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定するため、または患者の試料中のトリプターゼの発現レベルを決定するための試薬と、任意で、(b)マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)に応答する可能性が高いマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を同定するために当該試薬を使用するための指示書と、を含む。いくつかの実施形態では、本キットは、患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定するための試薬を含む。他の実施形態では、本キットは、患者の試料中のトリプターゼの発現レベルを決定するための試薬を含む。
【0328】
別の例では、本発明は、IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を同定するためのキットを特徴とし、(a)患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定するため、または患者の試料中のトリプターゼの発現レベルを決定するための試薬と、任意で、(b)IgEアンタゴニストまたはFcεRアンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を同定するために当該試薬を使用するための指示書と、を含む。
【0329】
患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定するため、またはトリプターゼの発現レベルを決定するための任意の好適な試薬は、例えばオリゴヌクレオチド、ポリペプチド(例えば、抗体)などを含む、前述のキットのいずれにおいても使用することができる。
【0330】
いくつかの実施形態では、本キットは、患者の試料において2型バイオマーカーのレベルを決定するための試薬をさらに含む。
【0331】
例えば、いくつかの実施形態では、試薬はオリゴヌクレオチドを含む。遺伝子座「に特異的な」オリゴヌクレオチドは、その遺伝子座の多型領域に結合するか、またはその遺伝子座の多型領域に隣接して結合する。増幅用のプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドについては、プライマーは、それらが多型領域を含むポリヌクレオチドを産出するために使用するのに十分に近い場合に、隣接する。一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、それらが、約1~2kb以内、例えば、多型から1kb未満で結合する場合に隣接する。特異的なオリゴヌクレオチドは配列にハイブリダイズすることができ、好適な条件下では、単個のヌクレオチドだけ異なる配列には結合しない。
【0332】
キットに含まれるオリゴヌクレオチドは、プローブとして使用されるかプライマーとして使用されるかに関わらず、検出可能に標識され得る。標識は、直接的に、例えば、蛍光標識に対して、または間接的に検出され得る。間接的検出には、ビオチン-アビジン相互作用、抗体結合などを含む、当業者には既知である任意の検出方法が含まれ得る。蛍光標識したオリゴヌクレオチドはクエンチング分子も含み得る。オリゴヌクレオチドは表面に結合することができる。いくつかの実施形態では、表面はシリカまたはガラスである。いくつかの実施形態では、表面は金属電極である。
【0333】
他の実施形態では、トリプターゼの発現レベルを決定するための試薬は、ポリペプチド、例えば抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、検出可能に標識され得る。
【0334】
本発明のさらなる他のキットは、アッセイを行うために必要な少なくとも1つの試薬を含む。例えば、本キットは、酵素を含み得る。あるいは、本キットは、緩衝液または任意の他の必要な試薬を含み得る。本キットには、患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定するか、または患者の試料中のトリプターゼの発現レベルを決定するための、本明細書に記載の陽性対照、陰性対照、試薬、プライマー、シークエンシングマーカー、プローブ、及び抗体の全てまたは一部を含み得る。
【0335】
任意の前述のキットは、バイアル、管などの1つまたは複数の容器を厳重に受容するように区分化されたキャリアを備えてよく、容器のそれぞれは、本方法において用いられる別個の要素のうちの1つを含み得る。例えば、容器のうちの1つは、検出可能に標識されるか、または標識され得るプローブを含み得る。かかるプローブは、それぞれ、タンパク質またはメッセージに特異的な抗体またはオリゴヌクレオチドであってもよい。本キットが核酸ハイブリダイゼーションを用いて標的核酸を検出する場合、本キットは、標的核酸配列の増幅のためのヌクレオチド(複数可)を含む容器、及び/または酵素、蛍光、もしくは放射性同位体標識などのレポーター分子に結合されるビオチン結合タンパク質(例えば、アビジンもしくはストレプトアビジン)などのレポーターを含む容器も有し得る。
【0336】
かかるキットは、典型的には、上記の容器と、緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明を伴う添付文書を含む、商業的及びユーザの視点から望ましい材料を含む1つまたは複数の他の容器と、を備えることになる。ラベルは、組成物が特定の用途に使用されることを示すために容器上に提示される場合があり、上記のものなどのin vivo使用またはin vitro使用のいずれかに関する指示も示す場合がある。
【0337】
本発明のキットは、多数の実施形態を有する。典型的な実施形態は、容器、該容器上のラベル、及び該容器内に含まれる組成物を含むキットであり、この組成物は、タンパク質バイオマーカー(例えば、トリプターゼ)に結合する一次抗体を含み、該容器上のラベルは、この組成物が試料中のかかるタンパク質の存在を評価するために使用され得ることを示し、本キットは、特定の試料型中のバイオマーカータンパク質の存在を評価するための抗体の使用に関する指示を含む。本キットは、試料の調製及び試料への抗体の適用のための指示及び材料のセットをさらに備えることができる。本キットは、一次抗体と二次抗体の両方を含んでもよく、二次抗体は、標識、例えば酵素標識にコンジュゲートされる。
【0338】
別の実施形態は、容器、該容器上のラベル、及び該容器内に含まれる組成物を含むキットであり、この組成物は、ストリンジェントな条件下でバイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の相補体にハイブリダイズする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含み、該容器上のラベルは、この組成物が試料中のバイオマーカー(例えば、トリプターゼ)の存在を評価するために使用され得ることを示し、本キットは、特定の試料型中のバイオマーカーRNAまたはDNAの存在を評価するためのポリヌクレオチド(複数可)の使用に関する指示書を含む。
【0339】
本キットの他の任意の構成要素としては、1つまたは複数の緩衝液(例えば、ブロック緩衝液、洗浄緩衝液、基質緩衝液など)、酵素標識により化学的に変化した基質(例えば、クロモゲン)などの他の試薬、エピトープ賦活化液、対照試料(陽性及び/または陰性対照)、対照スライド(複数可)などが挙げられる。キットには、キットを使用して得られた結果を解釈するための説明書を含むこともできる。
【0340】
さらなる特定の実施形態では、抗体ベースキットの場合、キットは、例えば、(1)バイオマーカータンパク質(例えば、トリプターゼ)に結合する第1の抗体(例えば、固体支持体に付着された)と、任意選択で(2)タンパク質または第1の抗体のいずれかに結合し、検出可能な標識にコンジュゲートされた第2の異なる抗体と、を含み得る。
【0341】
オリゴヌクレオチドベースキットの場合、本キットは、例えば、(1)トリプターゼ遺伝子(例えば、TPSAB1またはTPSB2)にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、例えば、検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド、及び/またはバイオマーカータンパク質(例えば、トリプターゼ)をコードする核酸配列、または(2)バイオマーカー核酸分子を増幅させるために有用な一対のプライマーを含み得る。本キットはまた、例えば、緩衝剤、保存剤、またはタンパク質安定化剤を含むことができる。本キットは、検出可能な標識(例えば、酵素または基質)を検出するのに必要な構成要素をさらに含むことができる。本キットは、アッセイされ、試験試料と比較され得る、対照試料または一連の対照試料を含むこともできる。本キットの各構成要素は個別の容器内に封入され得、様々な容器の全ては、キットを使用して行われたアッセイの結果の解釈のための説明書と共に単一のパッケージ中にあり得る。
【0342】
上記のキットはいずれも、トリプターゼアンタゴニスト、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)のいずれかを含む1つまたは複数の治療薬、及び/または本明細書に記載される追加の治療薬をさらに含み得る。
【0343】
VII.組成物及び薬学的製剤
一態様では、本発明は、一部には、本発明のバイオマーカー(例えば、患者の活性トリプターゼ対立遺伝子数及び/またはトリプターゼの発現レベル)を使用して、治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、Fcイプシロン受容体(FcεR)アンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト及びIgEアンタゴニスト)からなる群から選択される薬剤を含む治療)に応答する可能性が高いマスト細胞媒介性炎症性疾患を有する患者を同定できるという発見に基づく。これらの薬剤、及びこれらの組み合わせは、例えば、本明細書、例えば、上記のセクションII及びIIIに記載の任意の方法の一部として、マスト細胞媒介性炎症性疾患の処置に有用である。いくつかの実施形態では、治療はマスト細胞指向性療法である。任意の好適なトリプターゼアンタゴニスト(例えば、抗トリプターゼ抗体)、Fcイプシロン受容体(FcεR)アンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニスト、及び/またはIgEアンタゴニストは、本明細書に記載される方法及びアッセイにおいて使用することができる。本発明の方法及びアッセイにおける使用に適切な非限定的な実施例が以下にさらに記載される。
【0344】
A.抗体
本明細書に開示される方法において、任意の好適な抗体、例えば、抗トリプターゼ抗体、抗FcεR抗体、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、抗PAR2抗体、及び/または抗IgE抗体を使用することができる。上記列挙された実施形態のいずれかで使用するためのそのような抗トリプターゼ抗体、抗FcεR抗体、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、抗PAR2抗体、及び/または抗IgE抗体が、以下のセクションa~c及び1~7で説明されている機能のいずれかを単独または組み合わせて持ち得ることが明確に企図される。
【0345】
a.抗トリプターゼ抗体
本発明の方法では、任意の好適な抗トリプターゼ抗体を使用することができる。例えば、抗トリプターゼ抗体は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/457,722号に記載の任意の抗トリプターゼ抗体であり得る。
【0346】
いくつかの実施形態では、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼベータ抗体)は、(a)DYGMVのアミノ酸配列(配列番号1)を含むHVR-H1、(b)FISSGSSTVYYADTMKGのアミノ酸配列(配列番号2)を含むHVR-H2、(c)RNYDDWYFDVのアミノ酸配列(配列番号3)を含むHVR-H3、(d)SASSSVTYMYのアミノ酸配列(配列番号4)を含むHVR-L1、(e)RTSDLASのアミノ酸配列(配列番号5)を含むHVR-L2、及び(f)QHYHSYPLTのアミノ酸配列(配列番号6)を含むHVR-L3、から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、もしくは6つ全ての超可変領域(HVR)、または上記HVRの1つもしくは複数と、配列番号1~6のいずれか1つに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有する1つもしくは複数のそれらのバリアントとの組み合わせを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、抗トリプターゼ抗体は、(a)DYGMVのアミノ酸配列(配列番号1)を含むHVR-H1、(b)FISSGSSTVYYADTMKGのアミノ酸配列(配列番号2)を含むHVR-H2、(c)RNYDDWYFDVのアミノ酸配列(配列番号3)を含むHVR-H3、(d)SASSSVTYMYのアミノ酸配列(配列番号4)を含むHVR-L1、(e)RTSDLASのアミノ酸配列(配列番号5)を含むHVR-L2、及び(f)QHYHSYPLTのアミノ酸配列(配列番号6)を含むHVR-L3、を含む。
【0347】
いくつかの実施形態では、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼベータ抗体)は、(a)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列もしくは配列番号7のアミノ酸配列の配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列もしくは配列番号8のアミノ酸配列の配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメイン、を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号7のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLドメインは配列番号8のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、VHドメインは配列番号7のアミノ酸配列を含み、VLドメインは配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0348】
いくつかの実施形態では、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼベータ抗体)は、(a)配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列または配列番号9のアミノ酸配列の配列を含む重鎖、及び(b)配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸配列の配列を含む軽鎖を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼベータ抗体)は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖、及び(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0349】
他の実施形態では、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼベータ抗体)は、(a)配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列または配列番号11のアミノ酸配列の配列を含む重鎖、及び(b)配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸配列の配列を含む軽鎖を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼベータ抗体)は、(a)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖、及び(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0350】
さらに他の実施形態において、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼベータ抗体)は、(a)GYAITのアミノ酸配列(配列番号12)を含むHVR-H1、(b)GISSAATTFYSSWAKSのアミノ酸配列(配列番号13)を含むHVR-H2、(c)DPRGYGAALDRLDLのアミノ酸配列(配列番号14)を含むHVR-H3、(d)QSIKSVYNNRLGのアミノ酸配列(配列番号15)を含むHVR-L1、(e)ETSILTSのアミノ酸配列(配列番号16)を含むHVR-L2、及び(f)AGGFDRSGDTTのアミノ酸配列(配列番号17)を含むHVR-L3、から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つ全ての超可変領域(HVR)、または、上記HVRの1つもしくは複数と、配列番号12~17のいずれか1つに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有する1つもしくは複数のそれらのバリアントとの組み合わせを含む。例えば、いくつかの実施形態では、抗トリプターゼ抗体は、(a)GYAITのアミノ酸配列(配列番号12)を含むHVR-H1、(b)GISSAATTFYSSWAKSのアミノ酸配列(配列番号13)を含むHVR-H2、(c)DPRGYGAALDRLDLのアミノ酸配列(配列番号14)を含むHVR-H3、(d)QSIKSVYNNRLGのアミノ酸配列(配列番号15)を含むHVR-L1、(e)ETSILTSのアミノ酸配列(配列番号16)を含むHVR-L2、及び(f)AGGFDRSGDTTのアミノ酸配列(配列番号17)を含むHVR-L3、を含む。
【0351】
いくつかの実施形態では、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼベータ抗体)は、(a)配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列もしくは配列番号18のアミノ酸配列の配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列もしくは配列番号19のアミノ酸配列の配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメインを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号18のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLドメインは配列番号19のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、VHドメインは配列番号18のアミノ酸配列を含み、VLドメインは配列番号19のアミノ酸配列を含む。
【0352】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼベータ抗体)は、(a)配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列または配列番号20のアミノ酸配列の配列を含む重鎖、及び(b)配列番号21のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列または配列番号21のアミノ酸配列の配列を含む軽鎖を含む。例えば、いくつかの実施形態では、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼベータ抗体)は、(a)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖、及び(b)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0353】
前述の方法のいずれかの他の実施形態では、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼベータ抗体)は、(a)配列番号22のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列または配列番号22のアミノ酸配列の配列を含む重鎖、及び(b)配列番号21のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列または配列番号21のアミノ酸配列の配列を含む軽鎖を含む。例えば、いくつかの実施形態では、抗トリプターゼ抗体(例えば、抗トリプターゼベータ抗体)は、(a)配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖、及び(b)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0354】
いくつかの実施形態では、抗トリプターゼ抗体は、前述の抗体のうちのいずれか1つと同じエピトープに結合する抗体である。
【0355】
本明細書に開示されている任意の抗トリプターゼ抗体は、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))を含む、以下のサブセクションCに記載されている任意の抗IgE抗体と組み合わせて投与することができる。
【0356】
b.IgE+B細胞枯渇抗体
任意の好適なIgE+B細胞枯渇抗体を、本発明の方法において使用することができる。いくつかの実施形態では、IgE+B細胞枯渇抗体は、抗M1’抗体(例えば、キリズマブ)である。いくつかの実施形態では、抗M1’抗体は、国際特許出願公開第WO2008/116149に記載されている任意の抗M1’抗体である。
【0357】
c.抗IgE抗体
任意の好適な抗IgE抗体を、本発明の方法において使用することができる。例示的な抗IgE抗体には、rhuMabE25(E25、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標)))、E26、E27、及びCGP-5101(Hu-901)、HA抗体、リゲリズマブ、及びタリズマブが含まれる。ヒト化抗IgE抗体E25、E26及びE27の重鎖及び軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、例えば、米国特許第6,172,213号及びWO99/01556に開示されている。CGP-5101(Hu-901)抗体は、Corne et al.J.Clin.Invest.99(5):879-887,1997;WO92/17207、ならびにATCC Dep.Nos.BRL-10706、BRL-11130、BRL-11131、BRL-11132、及びBRL-11133に記載されている。HA抗体は、米国出願第60/444,229号、WO2004/070011、及びWO2004/070010に記載されている。
【0358】
例えば、いくつかの実施形態では、抗IgE抗体は、次の6つのHVR:(a)GYSWNのアミノ酸配列(配列番号40)を含むHVR-H1、(b)SITYDGSTNYNPSVKGのアミノ酸配列(配列番号41)を含むHVR-H2、(c)GSHYFGHWHFAVのアミノ酸配列(配列番号42)を含むHVR-H3、(d)RASQSVDYDGDSYMNのアミノ酸配列(配列番号43)を含むHVR-L1、(e)AASYLESのアミノ酸配列(配列番号44)を含むHVR-L2、及び(f)QQSHEDPYTのアミノ酸配列(配列番号45)を含むHVR-L3、のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ全てを含む。いくつかの実施形態では、抗IgE抗体は、(a)配列番号38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号39のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメイン、を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号38のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLドメインは配列番号39のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは配列番号38のアミノ酸配列を含み、VLドメインは配列番号39のアミノ酸配列を含む。本明細書に記載される任意の抗IgE抗体は、上記のサブセクションAに記載されている任意の抗トリプターゼ抗体と組み合わせて使用され得る。
【0359】
1.抗体親和性
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体(例えば、抗トリプターゼ抗体、抗FcεR抗体、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、抗PAR2抗体、または抗IgE抗体)は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、1pM以下、または0.1pM以下(例えば、10-6M以下、10-6M~10-9M以下、例えば10-9M~10-13M以下)の解離定数(KD)を有する。例えば、いくつかの実施形態では、抗トリプターゼ抗体は、約100nM以下(例えば、100nM以下、10nM以下、1nM以下、100pM以下、10pM以下、1pM以下、または0.1pM以下)のKDでトリプターゼ(例えば、ヒトトリプターゼ、例えば、ヒトトリプターゼベータ)に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、約10nM以下(例えば、10nM以下、1nM以下、100pM以下、10pM以下、1pM以下、または0.1pM以下)のKDでトリプターゼ(例えば、ヒトトリプターゼ、例えば、ヒトトリプターゼベータ)に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、1nM以下(例えば、1nM以下、100pM以下、10pM以下、1pM以下、または0.1pM以下)のKDでトリプターゼ(例えば、ヒトトリプターゼ、例えば、ヒトトリプターゼベータ)に結合する。いくつかの実施形態では、上記または本明細書に記載の任意の抗トリプターゼ抗体は、約0.5nM以下(例えば、0.5nM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、100pM以下、50pM以下、25pM以下、10pM以下、1pM以下、または0.1pM以下)のKDでトリプターゼ(例えば、ヒトトリプターゼ、例えば、ヒトトリプターゼベータ)に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、約0.1nM~約0.5nM(例えば、約0.1nM、約0.2nM、約0.3nM、約0.4nM、または約0.5nM)のKDでトリプターゼ(例えば、ヒトトリプターゼ、例えば、ヒトトリプターゼベータ)に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、トリプターゼ(例えば、ヒトトリプターゼ、例えば、ヒトトリプターゼベータ)に約0.4nMのKDで結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、トリプターゼ(例えば、ヒトトリプターゼ、例えば、ヒトトリプターゼベータ)に約0.18nMのKDで結合する。本明細書に記載されている他の抗体のいずれも、抗トリプターゼ抗体に関して上述したような親和性でその抗原に結合することができる。
【0360】
一実施形態では、KDは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)により測定される。一実施形態では、RIAは、目的とする抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて行われる。例えば、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の一連の滴定の存在下で、Fabを最低濃度の(125I)標識抗原と平衡させ、次いで、抗Fab抗体をコーティングしたプレートで結合した抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.J.Mol.Biol.293:865-881,1999を参照のこと)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mLの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中2%(w/v)ウシ血清アルブミンにより、室温(約23℃)で2~5時間ブロッキングする。非吸着プレート(Nunc番号269620)中で、100pMまたは26pMの[125I]抗原を、目的とするFab(例えば、Presta et al.Cancer Res.57:4593-4599,1997において抗VEGF抗体Fab-12の評価と一致している)の連続希釈液と混合する。その後、目的とするFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)続けて、平衡への到達を確実にすることができる。その後、混合物を、室温での(例えば、1時間にわたる)インキュベーションのために、捕捉プレートに移す。次いで、この溶液を除去し、プレートを、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)でプレートを10分間計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選定する。
【0361】
別の実施形態によれば、KDは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイを、約10の反応単位(RU)で、固定化された抗原CM5チップによって25℃で実行する。一実施形態では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)は、供給者の指示書に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化される。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/mL(約0.2μM)になるまで希釈した後に、5μL/分の流速で注入して、およそ10応答単位(RU)のカップリングしたタンパク質を得る。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応の基をブロッキングする。動態測定の場合、Fabの2倍の連続希釈液(0.78nM~500nM)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に0.05%ポリソルベート20(TWEEN(登録商標)-20)界面活性剤(PBST)と25℃で約25μl/分の流速で注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は、単純な1対1のLangmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合及び解離のセンサーグラムを同時に当てはめることで計算される。平衡解離定数(KD)を、比率koff/konとして計算する。例えば、Cheng et al.(J.Mol.Biol.293:865-881,1999)を参照のこと。上記表面プラズモン共鳴アッセイによるオンレートが106M-1s-1を超える場合、オンレートは、分光計、例えばストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗-抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光クエンチング技術を使用して決定することができる。
【0362】
いくつかの実施形態では、KDは、BIACORE(登録商標)SPRアッセイを使用して測定される。いくつかの実施形態では、SPRアッセイは、BIAcore(登録商標)T200または同等のデバイスを使用することができる。いくつかの実施形態では、BIAcore(登録商標)シリーズS CM5センサーチップ(または同等のセンサーチップ)は、モノクローナルマウス抗ヒトIgG(Fc)抗体で固定化され、その後、抗トリプターゼ抗体がフローセル上に捕捉される。Hisタグ付きヒトトリプターゼベータ1モノマー(配列番号128)の連続3倍希釈液を30μl/分の流速で注入する。各試料は、3分間の会合と10分間の解離で分析される。アッセイは25℃で行われる。各注入後、チップは3MのMgCl2を使用して再生される。結合応答は、反応単位(RU)を、同様の密度の無関連のIgGを捕捉するフローセルから除去することによって補正した。kon及びkoffの同時フィッティングの1:1Languirモデルを、動態分析に使用した。
【0363】
2.抗体フラグメント
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体(例えば、抗トリプターゼ抗体、抗FcεR抗体、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、抗PAR2抗体、または抗IgE抗体)は、抗体フラグメントである。抗体フラグメントには、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、及びscFvフラグメント、ならびに以下に記載される他のフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。ある特定の抗体フラグメントの概説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照のこと。scFvフラグメントの概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照のこと、また、WO93/16185、及び米国特許第5,571,894号、及び第5,587,458号も参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivo半減期が増加したFab及びF(ab’)2フラグメントの考察については、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
【0364】
ダイアボディは、二価性または二重特異性であり得る、2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントである。例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudson et al.Nat.Med.9:129-134,2003;及びHollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448,1993を参照のこと。トリアボディ及びテトラボディもまたHudson et al.,Nat.Med.9:129-134,2003に記載されている。
【0365】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部分または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部分を含む、抗体フラグメントである。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照のこと)。
【0366】
抗体フラグメントは、本明細書に記載される、インタクトな抗体のタンパク分解、及び組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による産生を含むが、これらに限定されない、様々な技法によって作製され得る。
【0367】
3.キメラ及びヒト化抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体(例えば、抗トリプターゼ抗体、抗FcεR抗体、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、抗PAR2抗体、または抗IgE抗体)は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855,1984に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えば、サルに由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のものから変化した「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、それらの抗原結合フラグメントが含まれる。
【0368】
ある特定の実施形態では、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的に、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減するためにヒト化される。一般的に、ヒト化抗体は、HVR(またはそれらの部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはそれらの部分)がヒト抗体配列に由来する、1つまたは複数の可変ドメインを含む。任意にヒト化抗体はまた、ヒト定常領域の少なくとも一部分も含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を回復または向上させるために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)に由来する対応する残基で置換される。
【0369】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro et al.Front.Biosci.13:1619-1633,2008において概説されており、Riechmann et al.Nature 332:323-329,1988;Queen et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029-10033、1989、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321、及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.Methods 36:25-34,2005(特異性決定領域(SDR)グラフティングを説明)、Padlan,Mol.Immunol.28:489-498,1991(「表面再構成(resurfacing)」について記載)、Dall’Acqua et al.Methods 36:43-60,2005(「FRシャフリング」について記載);及びOsbourn et al.Methods 36:61-68,2005及びKlimka et al.Br.J.Cancer,83:252-260,2000(FRシャフリングへの「ガイドセレクション(guided selection)」アプローチについて記載)においてさらに説明される。
【0370】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、「最適な」方法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296,1993を参照のこと)、軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285,1992、及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623,1993を参照のこと)、ヒト成熟(体細胞突然変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro et al.Front.Biosci.13:1619-1633,2008を参照のこと)、ならびにFRライブラリのスクリーニング由来のフレームワーク領域(例えば、Baca et al.J.Biol.Chem.272:10678-10684,1997及びRosok et al.J.Biol.Chem.271:22611-22618,1996を参照のこと)を含むがこれに限定されない。
【0371】
4.ヒト抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体(例えば、抗トリプターゼ抗体、抗FcεR抗体、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、抗PAR2抗体、または抗IgE抗体)は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で知られている様々な技術を使用して生成することができる。ヒト抗体は、一般的にvan Dijk et al.Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74,2001及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459,2008に記載されている。
【0372】
ヒト抗体は、免疫原を、抗原投与に応答してインタクトなヒト抗体、またはヒト可変領域を含むインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に投与することによって、調製され得る。かかる動物は、典型的に、内因性免役グロブリン遺伝子座を置き換える、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体中に無作為に組み込まれる、ヒト免役グロブリン遺伝子座の全てまたは一部分を含有する。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125,2005を参照のこと。例えば、XENOMOUSE(商標)技術について記載した米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号、HUMAB(登録商標)技術について記載した米国特許第5,770,429号、K-M MOUSE(登録商標)技術について記載した米国特許第7,041,870号、ならびにVELOCIMOUSE(登録商標)技術について記載した米国特許出願公開第US2007/0061900号もまた参照のこと。かかる動物によって生成されるインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、さらに修飾されてもよい。
【0373】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマベースの方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫細胞株及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.133:3001,1984;Brodeur et al.Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.J.Immunol.147:86,1991を参照のこと)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体についても、Li et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562,2006に記載されている。さらなる方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載している)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268,2006(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載している)に記載されるものが含まれる。ヒトハイブリドーマ(トリオーマ技術)についても、Vollmers et al.Histology and Histopathology 20(3):927-937,2005及びVollmers et al.Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27(3):185-91,2005に記載される。
【0374】
ヒト抗体はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成され得る。かかる可変ドメイン配列は、次いで、所望のヒト定常ドメインと組み合わされてもよい。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法は、以下に記載される。
【0375】
5.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を保有する抗体についてかかるライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で既知である。かかる方法は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説され、さらに、例えば、McCafferty et al.Nature 348:552-554,1990;Clackson et al.Nature 352:624-628,1991;Marks et al.J.Mol.Biol.222:581-597,1992;Marks et al.in Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003);Sidhu et al.J.Mol.Biol.338(2):299:-310,2004;Lee et al.J.Mol.Biol.340(5):1073-1093,2004;Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(34):12467-12472,2004;及びLee et al.J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132,2004に記載される。
【0376】
ある特定のファージディスプレイ法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングされ、ファージライブラリ中で無作為に組み換えられ、それを次いで、Winter et al.,Ann.Ann.Rev.Immunol.,12:433-455,1994に記載のように抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的に、一本鎖Fv(scFv)フラグメントとしてまたはFabフラグメントとしてのいずれかで、抗体フラグメントを提示する。免疫されたソース由来のライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al.EMBO J.12:725-734,1993によって記載されるように、ナイーブレパートリーをクローニングして(例えば、ヒトから)、いかなる免疫化も伴わずに、広範な非自己抗原及びさらには自己抗原に対する抗体の単一のソースを提供することができる。最後に、Hoogenboom et al.J.Mol.Biol.,227:381-388,1992に記載されるように、幹細胞からの再編成されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して、高度に可変的なHVR3領域をコードし、in vitroでの再編成を達成することによって、ナイーブライブラリを合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載する特許公開としては、例えば、米国特許第5,750,373、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が挙げられる。
【0377】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体フラグメントは、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体フラグメントと見なされる。
【0378】
6.多重特異性抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体(例えば、抗トリプターゼ抗体、抗FcεR抗体、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、抗PAR2抗体、または抗IgE抗体)は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有する、モノクローナル抗体である。例えば、抗トリプターゼ抗体に関して、ある特定の実施形態では、二重特異性抗体は、2つの異なるトリプターゼのエピトープに結合することができる。ある特定の実施形態では、結合特異性のうちの一方は、トリプターゼに対するものであり、他方は、任意の他の抗原(例えば、第2の生体分子)に対するものである。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、2つの異なるトリプターゼのエピトープに結合することができる。他の実施形態では、結合特異性のうちの一方は、トリプターゼ(例えば、ヒトトリプターゼ、例えば、ヒトトリプターゼベータ)に対するものであり、他方は、任意の他の抗原(例えば、第2の生体分子、例えばIL-13、IL-4、IL-5、IL-17、IL-33、IgE、M1プライム、CRTH2、またはTRPA)に対するものである。したがって、二重特異性抗体は、トリプターゼ及びIL-13、トリプターゼ及びIgE、トリプターゼ及びIL-4、トリプターゼ及びIL-5、トリプターゼ及びIL-17、またはトリプターゼ及びIL-33に対して結合特異性を有し得る。特に、二重特異性抗体は、トリプターゼ及びIL-13またはトリプターゼ及びIL-33に対して結合特異性を有し得る。他の特定の実施形態では、二重特異性抗体は、トリプターゼ及びIgEに対して結合特異性を有し得る。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体フラグメントとして調製することができる。
【0379】
多重特異性抗体を作製する技法としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組換え共発現(Milstein et al.Nature 305:537,1983、WO 93/08829、及びTraunecker et al.EMBO J.10:3655,1991を参照のこと)、ならびに「ノブ・イン・ホール(knob-in-hole)」操作(例えば米国特許第5,731,168号を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための静電的ステアリング(electrostatic steering)効果を操作することによって(WO2009/089004A1)、2つまたは複数の抗体またはフラグメントを架橋することによって(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.Science,229:81,1985を参照のこと)、二重特異性抗体を産生するためにロイシンジッパーを使用して(例えば、Kostelny et al.J.Immunol.,148(5):1547-1553,1992)、二重特異性抗体フラグメントを作製するために「ダイアボディ」技術を使用して(例えば、Hollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448,1993を参照のこと)、ならびに一本鎖Fv(scFv)ダイマーを使用して(例えば、Gruber et al.J.Immunol.152:5368,1994)、ならびに、例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60,1991に記載のように三重特異性抗体を調製することによって、作製され得る。
【0380】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体も本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照のこと)。
【0381】
本明細書の抗体またはフラグメントには、トリプターゼ及び別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用(Dual Acting)Fab」または「DAF」も含まれる(例えば、US2008/0069820を参照のこと)。
【0382】
ノブ・イントゥ・ホール
多重特異性抗体を産生する方法としてのノブ・イントゥ・ホールの使用が、例えば、米国特許第5,731,168号、WO2009/089004、US2009/0182127、US2011/0287009、Marvin and Zhu,Acta Pharmacol.Sin.(2005)26(6):649-658、及びKontermann(2005)Acta Pharmacol.Sin.26:1-9に記載される。簡潔な非限定的考察が、以下に提供される。
【0383】
「突出部」は、ヘテロ多量体を安定化させ、それにより、例えば、ホモ多量体形成よりもヘテロ多量体形成を優先するように、第1のポリペプチドの界面から突出し、したがって隣接する界面(すなわち、第2のポリペプチドの界面)にある相補的空洞内で位置付け可能である、少なくとも1つのアミノ酸側鎖を指す。突出部は、元の界面内に存在してもよく、または、合成により(例えば、界面をコードする核酸を変化させることによって)導入してもよい。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドの界面をコードする核酸を、突出部をコードするように変化させる。これを達成するために、第1のポリペプチドの界面の少なくとも1つの「元の」アミノ酸残基をコードする核酸が、元のアミノ酸残基よりも大きい側鎖体積を有する少なくとも1つの「移入」アミノ酸残基をコードする核酸で置き換えられる。2つ以上の元の残基及び対応する移入残基が存在し得ることが理解されるだろう。様々なアミノ残基の側鎖体積は、例えば、US2011/0287009の表1または米国特許第7,642,228号の表1に示されている。
【0384】
いくつかの実施形態では、突出部の形成のための移入残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びトリプトファン(W)から選択される天然のアミノ酸残基である。いくつかの実施形態では、移入残基は、トリプトファンまたはチロシンである。いくつかの実施形態では、突出部の形成のための元の残基は、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、スレオニン、またはバリンのように、小さな側鎖体積を有する。例えば、米国特許第7,642,228号を参照のこと。
【0385】
「空洞」は、第2のポリペプチドの界面から凹んでおり、したがって、隣接する第1のポリペプチドの界面上の対応する突出部を収容する少なくとも1つのアミノ酸側鎖を指す。空洞は、元の界面内に存在してもよく、または、合成により(例えば、界面をコードする核酸を変化させることによって)導入してもよい。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドの界面をコードする核酸を、空洞をコードするように変化させる。これを達成するために、第2のポリペプチドの界面内の少なくとも1つの「元の」アミノ酸残基をコードする核酸は、元のアミノ酸残基よりも小さい側鎖体積を有する少なくとも1つの「移入」アミノ酸残基をコードするDNAで置換される。2つ以上の元の残基及び対応する移入残基が存在し得ることが理解されるだろう。いくつかの実施形態では、空洞の形成のための移入残基は、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、及びバリン(V)から選択される天然のアミノ酸残基である。いくつかの実施形態では、移入残基は、セリン、アラニン、またはスレオニンである。いくつかの実施形態では、空洞の形成のための元の残基は、チロシン、アルギニン、フェニルアラニン、またはトリプトファンのように、大きな側鎖体積を有する。
【0386】
突出部は、空洞内で「位置付け可能」であり、これは、それぞれ、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドの界面の突出部及び空洞の空間的位置、ならびに突出部及び空洞の大きさが、界面での第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの正常な会合を著しく乱すことなく突出部が空洞内に位置し得るようなものであることを意味する。Tyr、Phe、及びTrpなどの突出部は、通常、界面の軸から垂直に延びておらず、好ましい構造を有するため、突出部と対応する空洞の位置合わせは、場合によっては、X線結晶学または核磁気共鳴(NMR)によって得られるもののような三次元構造に基づく突出部/空洞のペアのモデリングに依存し得る。これは、当該技術分野で広く許容されている技法を使用して達成することができる。
【0387】
いくつかの実施形態では、IgG1定常領域内のノブ変異は、T366Wである。いくつかの実施形態では、IgG1定常領域内のホール変異は、T366S、L368A、及びY407Vから選択される1つまたは複数の変異を含む。いくつかの実施形態では、IgG1定常領域内のホール変異は、T366S、L368A、及びY407Vを含む。
【0388】
いくつかの実施形態では、IgG4定常領域内のノブ変異は、T366Wである。いくつかの実施形態では、IgG4定常領域内のホール変異は、T366S、L368A、及びY407Vから選択される1つまたは複数の変異を含む。いくつかの実施形態では、IgG4定常領域内のホール変異は、T366S、L368A、及びY407Vを含む。
【0389】
7.抗体バリアント
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性、例えば阻害活性を改善することが望ましいことがある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、適切な修飾を、抗体をコードするヌクレオチド配列中に導入することによって、またはペプチド合成によって、調製されてもよい。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が挙げられる。最終構築物に到達するように、欠失、挿入、及び置換を任意に組み合わせてもよいが、ただし、その最終構築物が、所望の特徴、例えば、抗原結合性を有することを条件とする。
【0390】
a)置換、挿入、及び欠失バリアント
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換型突然変異の目的の部位には、HVR及びFRが挙げられる。保存的置換は、表1において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化が、表1において「例示的な置換」という見出しの下に提供され、アミノ酸側鎖クラスに関して以下にさらに記載される。アミノ酸置換が目的の抗体中に導入され、産物が、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについて、スクリーニングされてもよい。
【0391】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って分類され得る:
(1)疎水性:ノルロイシン,Met,Ala,Val,Leu,Ile;
(2)中性親水性:Cys,Ser,Thr,Asn,Gln;
(3)酸性:Asp,Glu;
(4)塩基性:His,Lys,Arg;
(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly,Pro;
(6)芳香性:Trp,Tyr,Phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うであろう。
【0392】
ある種類の置換型バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基を置換することを伴う。一般的に、さらなる試験のために選択される得られたバリアント(複数可)は、親抗体と比較してある特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)の修正(例えば、改善)を有し、及び/または実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有する。例示的な置換型バリアントは親和性成熟抗体であり、これは、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイベースの親和性成熟技術を使用して、簡便に生成され得る。簡潔に述べると、1つまたは複数のHVR残基を変異させ、バリアント抗体をファージ上にディスプレイさせ、特定の生体活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0393】
変化(例えば、置換)をHVRにおいて行い、例えば、抗体親和性を改善してもよい。このような変化は、HVRの「ホットスポット」、すなわち体細胞成熟プロセス中に高頻度で突然変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196,2008を参照のこと)、及び/または抗原と接触する残基において行われ得、得られたバリアントVHまたはVLの結合親和性が試験される。二次ライブラリを構築し、そこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異導入法)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、ライブラリは所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを同定するために、スクリーニングされる。多様性を導入するための別の方法は、数個のHVR残基(例えば、1回に4~6個の残基)がランダム化されたHVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異導入法またはモデリングを使用して、具体的に同定されてもよい。HVR-H3及びHVR-L3が特に標的とされることが多い。
【0394】
ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、そのような変化が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減しない限り、1つまたは複数のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVR内で行われてもよい。そのような変化は、例えば、HVRの抗原接触残基の外側にあってもよい。上に提供されるバリアントVH及びVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、変化させられないか、またはわずか1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含有するにすぎないかのいずれかである。
【0395】
変異導入のために標的化され得る抗体の残基または領域の同定に有用な方法は、Cunningham et al.Science 244:1081-1085,1989によって説明される「アラニンスキャニング変異導入法」と呼ばれる。この方法では、標的残基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)のうちの1つの残基または残基群を同定し、それを中性または負荷電アミノ酸(例えば、Alaまたはポリアラニン)によって置き換えて、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを判定する。さらなる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の場所に導入されてもよい。あるいは、または加えて、抗原抗体複合体の結晶構造は、抗体と抗原との間の接触点を特定する。かかる接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、または排除され得る。バリアントをスクリーニングして、それらが所望の特性を含有するかどうかを決定してもよい。
【0396】
アミノ酸配列挿入には、1個の残基から100個以上の残基を含有するポリペプチドの長さにわたる、アミノ末端及び/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一のまたは多数のアミノ酸残基の配列内(intrasequence)挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの抗体のN末端もしくはC末端の融合が挙げられ、これは抗体の血清半減期を増大させる。
【0397】
b)グリコシル化バリアント
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように変化する。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つまたは複数のグリコシル化部位が作製されるか、または除去されるように、アミノ酸配列を変化させることによって、簡便に遂行され得る。
【0398】
抗体がFc領域を含む場合、それに付着した炭水化物は変更され得る。哺乳類細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、一般にN-結合によって、Fc領域のCH2ドメインのAsn297に結合される、分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32,1997を参照のこと。オリゴ糖類には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」においてGlcNAcに結合したフコースが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、特定の特性が改善された抗体バリアントを作製するために、本発明の抗体内のオリゴ糖の修飾が行われ得る。
【0399】
一実施形態では、Fc領域に(直接または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546号に記載されるように、MALDI-TOF質量分析法によって測定する場合、Asn 297に結合した全ての糖鎖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計と比べた、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することによって決定される。Asn297は、Fc領域の297位辺り(Fc領域残基のEu番号付け)にあるアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体のわずかな配列の違いによって、297位の約±3アミノ酸上流または下流、すなわち294位と300位の間にある場合もある。かかるフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第2003/0157108号及び同第2004/0093621号を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関連する文書の例には、US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249,2004;Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614,2004が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することが可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et Arch.Biochem.Biophys.249:533-545,1986;US 2003/0157108、及びWO2004/056312 A1,特に実施例11)、ならびにα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614,2004;Kanda et al.Biotechnol.Bioeng.94(4):680-688,2006、及びWO 2003/085107を参照のこと)が挙げられる。
【0400】
二分オリゴ糖類を有する、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖類がGlcNAcによって二分される、抗体バリアントがさらに提供される。かかる抗体バリアントは、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体バリアントの例は、例えばWO2003/011878、米国特許第6,602,684号、及びUS2005/0123546に記載される。Fc領域に結合したオリゴ糖類において少なくとも1個のガラクトース残基を有する、抗体バリアントもまた提供される。かかる抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087、WO1998/58964、及びWO1999/22764に記載されている。
【0401】
c)Fc領域バリアント
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸修飾が本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され得、それによりFc領域バリアントが生成され得る。Fc領域バリアントは、1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0402】
ある特定の実施形態では、本発明は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を有し、それにより、in vivoでの抗体の半減期が重要であるが、さらに特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不要であるか、または有害である用途に対して望ましい候補となる、抗体バリアントを企図する。in vitro及び/またはin vivo細胞傷害アッセイを実施して、CDC及び/またはADCC活性の減少/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠いている(したがって、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力の保持を確実にすることができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方で単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch et al.Annu.Rev.Immunol.9:457-492,1991の464頁の表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号に記載されている(例えば、Hellstrom et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:7059-7063,1986及びHellstrom et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:1499-1502,1985;米国特許第5,821,337号(Bruggemann et al.J.Exp.Med.166:1351-1361,1987を参照のこと)を参照のこと)。あるいは、非放射性アッセイ法を使用してもよい(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照のこと)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、またはこれに加えて、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:652-656,1998に開示されるもの等の動物モデルにおいて評価することができる。C1q結合アッセイも実施し、抗体がC1qに結合不可能であり、それによりCDC活性を欠いていることを確認してもよい。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402のC1q及びC3c結合ELISAを参照のこと。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.J.Immunol.Methods 202:163,1996;Cragg et al.Blood 101:1045-1052,2003;及びCragg et al.Blood 103:2738-2743,2004を参照のこと)。FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期決定もまた、当該技術分野において公知である方法を使用して実行し得る(例えば、Petkova et al.Intl.Immunol.18(12):1759-1769,2006を参照のこと)。
【0403】
低減されたエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つまたは複数の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。かかるFc突然変異体には、アラニンへの残基265及び297の置換を有するいわゆる「DANA」Fc突然変異体を含む、アミノ酸265、269、270、297、及び327位のうちの2つ以上において置換を有するFc突然変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
【0404】
FcRへの改善された、または減少した結合を有する、ある特定の抗体バリアントが記載される。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.J.Biol.Chem.9(2):6591-6604,2001を参照のこと)。
【0405】
ある特定の実施形態では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。
【0406】
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184,2000に記載されているように、変化した(すなわち、改善または減少した)C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらすFc領域での変化が作られる。
【0407】
半減期が延長され、かつ母体IgGの胎児への移送に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyer et al.J.Immunol.117:587,1976及びKim et al.J.Immunol.24:249,1994)が、US2005/0014934に記載される。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1つまたは複数の置換をその中に有するFc領域を含む。かかるFcバリアントには、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つまたは複数における置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが挙げられる(米国特許第7,371,826号)。
【0408】
Fc領域バリアントの他の例に関する、Duncan et al.Nature 322:738-40,1988;米国特許第5,648,260号、及び同第5,624,821号、及びWO94/29351もまた参照のこと。
【0409】
d)システイン操作された抗体バリアント
ある特定の実施形態では、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えば「thioMAb」を作成することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、置換された残基は、抗体の接触可能部位に生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基はそれによって、抗体の接触可能部位に位置付けられ、それを使用して、抗体を、薬物部分またはリンカー-薬物部分などの他の部分にコンジュゲートして、本明細書にさらに記載される、免疫コンジュゲートを作り出してもよい。ある特定の実施形態では、次の残基:軽鎖のV205(Kabat番号)、重鎖のA118(EU番号)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号)のいずれか1つまたは複数をシステインで置換してもよい。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されているように生成され得る。
【0410】
e)抗体誘導体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、かつ容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中で安定であるため、製造において利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであってもよく、分岐していても非分岐であってもよい。抗体に結合したポリマーの数は異なり得、1つより多くのポリマーが結合している場合、それらは同じ分子または異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の特定の性質または機能、抗体誘導体が規定条件下で治療に使用されるかどうかなどを含むがこれらに限定されない考慮事項に基づいて決定することができる。
【0411】
別の実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る、抗体と非タンパク質性部分とのコンジュゲートが提供される。一実施形態では、非タンパク質性部分はカーボンナノチューブである(Kam et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605,2005)。放射線は、任意の波長のものであってよく、一般の細胞を害さないが、非タンパク質性部分を、抗体-非タンパク質性部分に近位の細胞が死滅させられる温度まで加熱する波長が含まれるが、これらに限定されない。
【0412】
B.薬学的製剤
本発明に従って使用される治療剤(例えば、任意のトリプターゼアンタゴニスト(例えば、本明細書に記載される任意の抗トリプターゼ抗体を含む抗トリプターゼ抗体)、FcεRアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞または好塩基球枯渇抗体、PAR2アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト(例えば、抗IgE抗体、例えば、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))、及びこれらの組み合わせ(例えば、トリプターゼアンタゴニスト(例えば、抗トリプターゼ抗体(本明細書に記載される任意の抗トリプターゼ抗体を含む))及びIgEアンタゴニスト(例えば、抗IgE抗体、例えば、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標)))、及び/または本明細書に記載される追加の治療剤)を含む薬学的製剤は、所望の純度を有する治療薬(複数可)を、凍結乾燥製剤または水溶液の形態の任意の薬学的に許容可能な担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより、保存用に調製される。製剤に関する一般的な情報については、例えば、Gilman et al.(eds.)The Pharmacological Bases of Therapeutics,8th Ed.,Pergamon Press,1990;A.Gennaro(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.,Pennsylvania,1990;Avis et al.(eds.)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications Dekker,New York,1993;Lieberman et al.(eds.)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Dekker,New York,1990;Lieberman et al.(eds.),Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems Dekker,New York,1990;及びWalters(ed.)Dermatological and Transdermal Formulations(Drugs and the Pharmaceutical Sciences),Vol.119,Marcel Dekker,2002を参照のこと。
【0413】
許容可能な担体、賦形剤、または安定剤は、服用者に対し、利用される用量及び濃度で非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0414】
本明細書の製剤は、1つ超の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有してもよい。かかる薬品の種類及び有効量は、例えば、製剤中に存在する治療剤(複数可)の量及び種類、ならびに対象の臨床的パラメータに応じて決定される。
【0415】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術により、または界面重合により、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルにより、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)、またはマクロエマルションにおいて調製されたマイクロカプセルに封入されてもよい。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0416】
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例としては、アンタゴニストを含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられ、このマトリクスは、成型品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態にある。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商標)など(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0417】
in vivo投与に使用される製剤は、滅菌されていなければならない。このことは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
【実施例0418】
以下の実施例は、本出願で特許請求される発明を例示するために提供されるのであって、限定するものではない。
【0419】
実施例1:材料及び方法
A)活性トリプターゼ対立遺伝子数
PCRは、ゲノムDNAのサンガーシークエンシングに続いて、前述のように活性トリプターゼ対立遺伝子数を決定するために使用した(Trivedi et al.J.Allergy Clin.Immunol.124:1099-1105 e1-4,2009)。簡単に言うと、活性トリプターゼ対立遺伝子数は、トリプターゼ欠乏対立遺伝子(すなわち、α及びβIIIFSを決定するもの)を考慮した後、残りの活性トリプターゼ遺伝子の数として評価した。遺伝子型は、2つの(A/B)対立遺伝子の強度比を使用して自動的に呼び出された。患者はこの比率に基づいて遺伝子型ビンに割り当てられた。遺伝子型は、エラーなく母集団の5%のシークエンシングトレースの目視検査によって確認した。適切に分類されなかった患者データを視覚的に検査した。活性トリプターゼ対立遺伝子数のためのジェノタイピングは、前述したように、ゲノムワイドSNPデータの主成分分析によって決定されたヨーロッパ系の喘息対象で実施した(Ramirez-Carrozzi et al.J.Allergy Clin.Immunol.135:1080-1083 e3,2015)。
【0420】
トリプターゼαの遺伝子型を決定するには、フォワードプライマー5’-CTG GTG TGC AAG GTG AAT GG-3’(配列番号31)及びリバースプライマー5’-AGG TCC AGC ACT CAG GAG GA-3’(配列番号32)がTPSAB1遺伝子座の一部を増幅するために使用された。PCRの条件は次のとおりである:QiagenHOTSTARTAQ(登録商標)Plusポリメラーゼを、95℃で5分間、続いて94℃で60秒間、58℃で60秒間、72℃で2分間の35サイクルのサーモサイクラー条件で使用した。PCRの後、EXOSAP-IT(商標)PCR産物クリーンアップ試薬を使用してクリーンアップを行った。シークエンシングには同じフォワードプライマーとリバースプライマーを使用した。Applied Biosystemsが製造したABI 3730XL DNAアナライザーでBIG-DYE(登録商標)ターミネーターケミストリーを使用してシークエンシングを行った。
【0421】
トリプターゼβIIIFSをジェノタイピングするために、フォワードプライマー5’-GCA GGT GAG CCT GAG AGT CC-3’(配列番号33)及びリバースプライマー5’-GGG ACC TTC ACC TGC TTC AG-3’(配列番号34)が、TPSB2遺伝子座の一部を増幅するために使用された。PCRの条件は次のとおりである:QiagenHOTSTARTAQ(登録商標)Plusポリメラーゼを、95℃で5分間、続いて94℃で60秒間、60℃で60秒間、72℃で2分間の35サイクルのサーモサイクラー条件で使用した。PCRの後、EXOSAP-IT(商標)PCR産物クリーンアップ試薬を使用してクリーンアップを行った。シークエンシングのために、フォワードプライマー5’-GCA GGT GAG CCT GAG AGT CC-3’(配列番号33)及びリバースシークエシングプライマー5’-CAG CCA GTG ACC CAG CAC-3’(配列番号35)を使用した。Applied Biosystemsが製造したABI 3730XL DNAアナライザーでBIG-DYE(登録商標)ターミネーターケミストリーを使用してシークエンシングを行った。
【0422】
B)臨床コホート
EXTRA(ClinicalTrials.gov識別子:NCT00314574)は、中等度から重度の持続性喘息の12~75歳を対象としたXolair(抗IgE)の無作為化二重盲検プラセボ対照試験であった。研究デザインの完全な詳細はすでに公開されている(Hanania et al.Ann.Intern.Med.154:573-582,2011;Hanania et al.Am.J.Respir.Crit.Care Med.187:804-811,2013;Choy et al.J.Allergy Clin.Immunol.138:1230-1233 e8,2016)。簡単に言うと、2~4週間の導入期間(run-in period)の後、適格な患者を1:1の比率で無作為化し、XOLAIR(登録商標)(オマリズマブ)またはプラセボ(追加の管理薬の有無にかかわらず、高用量の吸入コルチコステロイド(ICS)及び長時間作用性ベータアドレナリン受容体アゴニスト(LABA)に加えて)を48週間にわたって投与した。
【0423】
BOBCAT(Arron et al.Eur.Respir.J.43:627-629,2014;Choy et al.supra;Huang et al.J.Allergy Clin.Immunol.136:874-884,2015;Jia et al.J.Allergy Clin.Immunol.130:647-654,2012)は、米国、カナダ、及び英国で実施された、中等度から重度の喘息の67名の成人患者における多施設共同観察研究であった。選択基準は、中等度から重度の喘息の診断(予測値の40%~80%の間の1秒間の努力呼気量(FEV1)、及び短時間作用性気管支拡張薬による気道閉塞の可逆性が12%超であり、またはメタコリン感受性(FEV1を20%低下させるための誘発濃度(PC20)が8mg/mL未満)がLABAの有無を問わず制御不能であった(前年に少なくとも2回の症状増悪があった、または高用量のICS(1日あたり1000mg超のフルチカゾンまたは同等品)の安定した投与レジメン(6週間超)を受けている間、喘息管理質問票(ACQ)5項目バージョン(ACQ-5)において1.50超のスコアがあったと言うことにより定義される)という過去5年以内の証拠を必要とした。
【0424】
MILLY(ClinicalTrials.gov識別子:NCT00930163)は、吸入グルココルチコイド療法(Corren et al.N.Engl.J.Med.365:1088-1098,2011)にも関わらず喘息の制御が不十分であった成人における、レブリキズマブ(抗IL-13抗体)の無作為化二重盲検プラセボ対照試験であった。
【0425】
C)総トリプターゼELISA
血清または血漿トリプターゼのレベルは、ヒトトリプターゼβ1、β2、β3、及びα1のモノマー及び四量体を検出できる2つのモノクローナル抗体を用いたサンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して測定した。簡潔に述べると、384ウェルプレートを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中1.0μg/mlのモノクローナル抗トリプターゼ抗体で4℃で一晩コーティングし、次いで、室温で少なくとも1時間、90μlのブロッキング緩衝液(1xPBS+1%ウシ血清アルブミン(BSA))でブロッキングした。血清または血漿試料を、アッセイ緩衝液(1XPBS pH7.4、0.35M NaCl、0.5% BSA、0.05%TWEEN(登録商標)20(ポリソルベート20)、0.25% 3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS)、5mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、及び15パーツ・パー・ミリオン(PPM)PROCLIN(商標)(広域スペクトル抗菌剤)で1:100に希釈し、洗浄後、プレートに3回添加し、室温で2時間撹拌しながら室温でインキュベートした。組換えトリプターゼβ1を使用して、アッセイの標準範囲(7.8~500pg/ml)を確立した。洗浄後、アッセイ希釈液(1xPBS pH7.4、0.5%BSA、0.05%TWEEN(登録商標)20)に、ビオチン化抗ヒトトリプターゼ(0.5μg/ml)を加え、室温で1時間インキュベートした。ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ及び基質テトラメチルベンジジン(TMB)で洗浄した後、色が生じた。データは、4パラメータ(4P)適合標準曲線に基づいて解釈した。このアッセイの検出限界は約7.8pg/mlであった。
【0426】
D)統計
Rソフトウェア(RCoreTeam,R:A Language an Environment for Statistical Computing,2014)は、プロット及び分析に使用した。
【0427】
実施例2:中等度から重度の喘息では、活性トリプターゼ遺伝子数は不均一である
トリプターゼは、マスト細胞で有意に発現する顆粒タンパク質であり、重要な喘息メディエーターとして関与しており、肺機能に顕著な影響を及ぼす。酵素的に活性なトリプターゼ、TSPAB1及びTPSB2をコードする遺伝子は多型であり、本発明者らは、一般的な不活性化機能喪失型変異の遺伝の頻度及びパターンについてすでに説明している(Trivedi et al.J.Allergy Clin.Immunol.124:1099-1105 e1-4,2009)。高密度SNPアレイ及び次世代シークエンシングを含む、現代の全ゲノム解析の出現にもかかわらず、トリプターゼ遺伝子座は十分に研究されておらず、これは、この領域の高い相同性及び反復性がこれらの方法論に適しておらず、ダイレクト再シークエンシングが必要になるためである。TSPAB1及びTPSB2の不活性化変異の説明から推定される活性トリプターゼ対立遺伝子数は、マスト細胞由来のトリプターゼの発現に影響を与え、マスト細胞関連療法、例えばXOLAIR(登録商標)(オマリズマブ)、抗IgE抗体に対する臨床反応を予測すると仮説を立てた。
【0428】
BOBCAT、EXTRA、及びMILLY研究から、ヨーロッパ系の中等度から重度の喘息対象における活性トリプターゼ対立遺伝子数を評価した(実施例1を参照)。世界人口における以前の報告と一致して(Trivedi et al.J.Allergy Clin.Immunol.124:1099-1105 e1-4,2009)、本発明者らの研究では、機能喪失型変異が対象においてよく見られた(
図1)、対照の88.3%(462人中408人)に少なくとも1つの機能喪失型変異があり、1つ、2つ、または3つの残存トリプターゼコピーが残っている。これらの研究では、活性コピーがゼロの対象は観察されず、活性コピーが1つある対象は比較的まれであった(1%未満、462人中3人)。本発明者らのコホートにおいて2つまたは3つの活性トリプターゼのコピーを有する対象が優勢であり(88%、462人中405人)、2つまたは3つの活性コピーの有病率は同等であった(それぞれ43%、462人中199人、そして45%、462人中206人)。
【0429】
活性トリプターゼ対立遺伝子数の観測分布は、TPSAB1及びTPSB2の特定の対立遺伝子が連鎖不均衡にあり、これにより機能不全のトリプターゼ対立遺伝子が機能的対立遺伝子と共遺伝しているという所見と一致する(Trivedi et al(上記))。したがって、ゼロまたは4つの活性トリプターゼ対立遺伝子数を持つ対象は、まれであると予想される。要約すると、中等度から重度の喘息患者では、活性トリプターゼ遺伝子数は不均一である。
【0430】
実施例3:活性トリプターゼ対立遺伝子数は、喘息の末梢トリプターゼレベルのタンパク質量的形質連鎖(pQTL)である。
次に、BOBCAT(
図2A)及びMILLY(
図2B)の研究から、中等度から重度の喘息における活性トリプターゼのコピー数と末梢のトリプターゼの総レベルとの関係を評価した。各研究において有意なpQTL(P<0.0001)が観察され、活性トリプターゼ対立遺伝子数がトリプターゼ発現の根本的な決定要因であり、活性トリプターゼ対立遺伝子数が増加した喘息対象はトリプターゼ発現レベルの上昇に関係があることがさらに関連付けられた。要約すると、これらのデータは、末梢トリプターゼ(例えば、血液試料中)の発現レベルが対象の活性トリプターゼ対立遺伝子数と相関していることを示す。この相関性をふまえると、例えば、血液(例えば、血清または血漿)におけるトリプターゼの発現レベルは、例えば、抗IgE療法または他の治療的介入に対する治療反応を予測するために使用され得ることが期待される。
【0431】
実施例4:活性トリプターゼ対立遺伝子数は、抗IgE療法に対する喘息FEV1反応を予測する
活性トリプターゼ対立遺伝子数は、ex vivoでの初代マスト細胞の活性トリプターゼの発現と、喘息患者の総トリプターゼの末梢レベルと相関しているという所見に基づいて(実施例3を参照)、活性トリプターゼ対立遺伝子数が喘息のマスト細胞関連療法に対する臨床反応を予測すると仮定した。XOLAIR(登録商標)(オマリズマブ)は、アトピー性喘息の喘息増悪を軽減するために承認された抗IgEモノクローナル抗体療法である。IgEを遮断すると、マスト細胞からのIgE/FcεRI依存性脱顆粒が減少することにより臨床喘息の改善につながるため、活性トリプターゼ対立遺伝子数に基づいて、ベースラインからのFEV1の改善の事後分析を行った。喘息では2つ及び3つの活性トリプターゼ対立遺伝子が主に(88%)観察されたため、1つまたは4つの活性トリプターゼ対立遺伝子を有する対象は比較的まれであるため、検定力を改善するために1つまたは2つの活性トリプターゼ対立遺伝子を有するものと、3つまたは4つの活性トリプターゼ対立遺伝子を有するものに研究集団を二分した。
【0432】
1つまたは2つの活性トリプターゼ対立遺伝子を有する対象は、抗IgE療法により12週までにFEV
1%の有意な改善をもたらした(
図3、平均±標準誤差=11.3(3、19.6)%、P=0.009)。対照的に、3つまたは4つの活性トリプターゼ対立遺伝子を有する対象は、抗IgE療法からFEV
1の恩恵を受けなかった(
図3)。これらの観察は、48週間の研究を通じて維持された。したがって、1つまたは2つのトリプターゼ活性対立遺伝子を有する喘息対象は、3つまたは4つのコピー数を持つ対象と比較して、抗IgE(XOLAIR(登録商標))療法に対して有意な肺機能の改善をもたらした。
【0433】
マスト細胞トリプターゼは、in vitroで収縮性と細胞分化を増加させることにより気道平滑筋に直接影響を与えることが示されているため、気道閉塞の重要な喘息メディエーターとして関与している。これらのデータは、抗IgE療法が、IgE/FcεRI依存性脱顆粒及びIgE/FcεRI非依存性メカニズムの両方によって放出され得る低レベルのマスト細胞トリプターゼを発現する対象に最も効果的であり得ることを示唆している。これらのデータはまた、活性トリプターゼ対立遺伝子数が喘息の治療的介入に対する応答を予測するための予測バイオマーカーとして使用できることを示している。例えば、活性トリプターゼ対立遺伝子数が少ない患者は、XOLAIR(登録商標)(オマリズマブ)による治療から恩恵を受ける可能性がある。他の実施例では、活性トリプターゼ対立遺伝子数が多い患者は、トリプターゼアンタゴニスト(例えば、抗トリプターゼ抗体)による治療から恩恵を受ける可能性がある。
【0434】
実施例5:中等度から重度の喘息では、活性トリプターゼ対立遺伝子数が2型バイオマーカーと関連しない
以前の研究では、喘息におけるXOLAIR(登録商標)(オマリズマブ)療法の治療効果、すなわち増悪率の低減のために強化された2型バイオマーカーの発現レベルが示された(Hanania et al.Am.J.Respir.Crit.Care Med.187:804-811,2013)。活性トリプターゼ対立遺伝子数が2型炎症のバイオマーカーにどのように関連するかを調査するために、BOBCAT、EXTRA、及びMILLY研究のベースラインでの対象の活性トリプターゼ対立遺伝子数に関して、血清ペリオスチン、呼気一酸化窒素(FeNO)、及び血中好酸球数のレベルを評価したが、いかなる関連性も観察されなかった(
図4A~4C)。これらのデータは、活性トリプターゼ対立遺伝子数及び2型バイオマーカーが、喘息の異なるサブセットを独立して選択することを示している。2型炎症のバイオマーカーのレベルに関する活性リプターゼコピー数の独立性は、活性トリプターゼコピー数評価がトリプターゼ及びマスト細胞生物学に固有の情報を提供することを示唆している。例えば、活性トリプターゼ対立遺伝子数が増加し、2型バイオマーカーレベルが低い(T
H2-low喘息など)対象は、マスト細胞指向性治療(例えば、トリプターゼアンタゴニスト、IgE+B細胞枯渇抗体、マスト細胞もしくは好塩基球枯渇抗体、またはプロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)アンタゴニストを含む治療)による治療から恩恵を受ける可能性がある。逆に、活性トリプターゼ対立遺伝子数が増加し、2型バイオマーカーレベルが高い(T
H2-high喘息など)対象は、T
H2経路阻害剤及び/またはマスト細胞指向性治療による治療の恩恵を受ける可能性がある。
【0435】
他の実施形態
上述の発明は、明確な理解のための例示説明及び例によりある程度詳細に記載したが、これらの説明及び例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。
配列表
SEQUENCE LISTING
<110> Genentech, Inc.
<120> THERAPEUTIC AND DIAGNOSTIC METHODS FOR MAST CELL-MEDIATED
INFLAMMATORY DISEASES
<130> 50474-161WO2
<150> US 62/628,564
<151> 2018-02-09
<160> 45
<170> PatentIn version 3.5
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340 345 350
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370 375 380
Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val Leu
385 390 395 400
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20 25 30
Arg Leu Gly Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu Leu
35 40 45
Ile Tyr Glu Thr Ser Ile Leu Thr Ser Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser
50 55 60
Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser Leu Gln
65 70 75 80
Pro Glu Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys Ala Gly Gly Phe Asp Arg Ser
85 90 95
Gly Asp Thr Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys
100 105 110
<210> 20
<211> 451
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 20
Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Pro Gly Leu Val Lys Pro Ser Glu
1 5 10 15
Thr Leu Ser Leu Thr Cys Thr Val Ser Arg Phe Ser Leu Ile Gly Tyr
20 25 30
Ala Ile Thr Trp Ile Arg Gln Pro Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Ile
35 40 45
Gly Gly Ile Ser Ser Ala Ala Thr Thr Phe Tyr Ser Ser Trp Ala Lys
50 55 60
Ser Arg Val Thr Ile Ser Arg Asp Thr Ser Lys Asn Gln Val Ser Leu
65 70 75 80
Lys Leu Ser Ser Val Thr Ala Ala Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys Ala
85 90 95
Arg Asp Pro Arg Gly Tyr Gly Ala Ala Leu Asp Arg Leu Asp Leu Trp
100 105 110
Gly Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser Ala Ser Thr Lys Gly Pro
115 120 125
Ser Val Phe Pro Leu Ala Pro Ser Ser Lys Ser Thr Ser Gly Gly Thr
130 135 140
Ala Ala Leu Gly Cys Leu Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr
145 150 155 160
Val Ser Trp Asn Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro
165 170 175
Ala Val Leu Gln Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr
180 185 190
Val Pro Ser Ser Ser Leu Gly Thr Gln Thr Tyr Ile Cys Asn Val Asn
195 200 205
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Gly Gly Pro Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu
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Met Ile Ser Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser
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His Glu Asp Pro Glu Val Lys Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val Glu
275 280 285
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290 295 300
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Gly Lys Glu Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro
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Pro Val Leu Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Lys Leu Thr
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<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 21
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1 5 10 15
Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys Gln Ser Ile Lys Ser Val Tyr Asn Asn
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35 40 45
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65 70 75 80
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100 105 110
Val Ala Ala Pro Ser Val Phe Ile Phe Pro Pro Ser Asp Glu Gln Leu
115 120 125
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165 170 175
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195 200 205
Thr Lys Ser Phe Asn Arg Gly Glu Cys
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<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 22
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1 5 10 15
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Ala Ile Thr Trp Ile Arg Gln Pro Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Ile
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Gly Gly Ile Ser Ser Ala Ala Thr Thr Phe Tyr Ser Ser Trp Ala Lys
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Ser Arg Val Thr Ile Ser Arg Asp Thr Ser Lys Asn Gln Val Ser Leu
65 70 75 80
Lys Leu Ser Ser Val Thr Ala Ala Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys Ala
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Arg Asp Pro Arg Gly Tyr Gly Ala Ala Leu Asp Arg Leu Asp Leu Trp
100 105 110
Gly Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser Ala Ser Thr Lys Gly Pro
115 120 125
Ser Val Phe Pro Leu Ala Pro Cys Ser Arg Ser Thr Ser Glu Ser Thr
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Ala Ala Leu Gly Cys Leu Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr
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Val Ser Trp Asn Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro
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Val Pro Ser Ser Ser Leu Gly Thr Lys Thr Tyr Thr Cys Asn Val Asp
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Gly Pro Pro Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Phe Leu Gly Gly Pro
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Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met Ile Ser
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Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser Gln Glu Asp
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Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Gly Leu Pro Ser Ser Ile Glu Lys
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Leu Pro Pro Ser Gln Glu Glu Met Thr Lys Asn Gln Val Ser Leu Thr
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Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu Trp Glu
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Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val Leu
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Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Arg Leu Thr Val Asp Lys
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Ser Arg Trp Gln Glu Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met His Glu
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<210> 23
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<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 23
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Tyr Ala Ala Pro Ala Pro Gly Gln Ala Leu Gln Arg Val Gly Ile Val
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His Leu Gly Ala Tyr Thr Gly Asp Asp Val Arg Ile Val Arg Asp Asp
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Gly Gly Pro Leu Val Cys Lys Val Asn Gly Thr Trp Leu Gln Ala Gly
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Val Val Ser Trp Gly Glu Gly Cys Ala Gln Pro Asn Arg Pro Gly Ile
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Tyr Thr Arg Val Thr Tyr Tyr Leu Asp Trp Ile His His Tyr Val Pro
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Lys Lys Pro
275
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<211> 275
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<213> Homo sapiens
<400> 24
Met Leu Asn Leu Leu Leu Leu Ala Leu Pro Val Leu Ala Ser Arg Ala
1 5 10 15
Tyr Ala Ala Pro Ala Pro Gly Gln Ala Leu Gln Arg Val Gly Ile Val
20 25 30
Gly Gly Gln Glu Ala Pro Arg Ser Lys Trp Pro Trp Gln Val Ser Leu
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50 55 60
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65 70 75 80
Lys Asp Leu Ala Ala Leu Arg Val Gln Leu Arg Glu Gln His Leu Tyr
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Gly Asp Val Asp Asn Asp Glu Arg Leu Pro Pro Pro Phe Pro Leu Lys
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His Leu Gly Ala Tyr Thr Gly Asp Asp Val Arg Ile Val Arg Asp Asp
195 200 205
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210 215 220
Gly Gly Pro Leu Val Cys Lys Val Asn Gly Thr Trp Leu Gln Ala Gly
225 230 235 240
Val Val Ser Trp Gly Glu Gly Cys Ala Gln Pro Asn Arg Pro Gly Ile
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Tyr Thr Arg Val Thr Tyr Tyr Leu Asp Trp Ile His His Tyr Val Pro
260 265 270
Lys Lys Pro
275
<210> 25
<211> 233
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 25
Met Leu Asn Leu Leu Leu Leu Ala Leu Pro Val Leu Ala Ser Arg Ala
1 5 10 15
Tyr Ala Ala Pro Ala Pro Gly Gln Ala Leu Gln Arg Val Gly Ile Val
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Gly Gly Gln Glu Ala Pro Arg Ser Lys Trp Pro Trp Gln Val Ser Leu
35 40 45
Arg Val Arg Asp Arg Tyr Trp Met His Phe Cys Gly Gly Ser Leu Ile
50 55 60
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65 70 75 80
Lys Asp Leu Ala Ala Leu Arg Val Gln Leu Arg Glu Gln His Leu Tyr
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Tyr Gln Asp Gln Leu Leu Pro Val Ser Arg Ile Ile Val His Pro Gln
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Gly Asp Val Asp Asn Asp Glu Arg Leu Pro Pro Pro Phe Pro Leu Lys
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210 215 220
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<213> Homo sapiens
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Ser Leu Arg Val His Gly Pro Tyr Trp Met His Phe Cys Gly Gly Ser
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Leu Ile His Pro Gln Trp Val Leu Thr Ala Ala His Cys Val Gly Pro
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Leu Tyr Tyr Gln Asp Gln Leu Leu Pro Val Ser Arg Ile Ile Val His
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Pro Gln Phe Tyr Thr Ala Gln Ile Gly Ala Asp Ile Ala Leu Leu Glu
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Gly Trp Gly Asp Val Asp Asn Asp Glu Arg Leu Pro Pro Pro Phe Pro
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Leu Lys Gln Val Lys Val Pro Ile Met Glu Asn His Ile Cys Asp Ala
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Lys Tyr His Leu Gly Ala Tyr Thr Gly Asp Asp Val Arg Ile Val Arg
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Asp Asp Met Leu Cys Ala Gly Asn Thr Arg Arg Asp Ser Cys Gln Gly
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195 200 205
Ala Gly Val Val Ser Trp Gly Glu Gly Cys Ala Gln Pro Asn Arg Pro
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Gly Ile Tyr Thr Arg Val Thr Tyr Tyr Leu Asp Trp Ile His His Tyr
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Val Pro Lys Lys Pro
245
<210> 27
<211> 256
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 27
Ile Val Gly Gly Gln Glu Ala Pro Arg Ser Lys Trp Pro Trp Gln Val
1 5 10 15
Ser Leu Arg Val His Gly Pro Tyr Trp Met His Phe Cys Gly Gly Ser
20 25 30
Leu Ile His Pro Gln Trp Val Leu Thr Ala Ala His Cys Val Gly Pro
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Pro Gln Phe Tyr Thr Ala Gln Ile Gly Ala Asp Ile Ala Leu Leu Glu
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Pro Pro Ala Ser Glu Thr Phe Pro Pro Gly Met Pro Cys Trp Val Thr
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Gly Trp Gly Asp Val Asp Asn Asp Glu Arg Leu Pro Pro Pro Phe Pro
130 135 140
Leu Lys Gln Val Lys Val Pro Ile Met Glu Asn His Ile Cys Asp Ala
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195 200 205
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210 215 220
Gly Ile Tyr Thr Arg Val Thr Tyr Tyr Leu Asp Trp Ile His His Tyr
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Val Pro Lys Lys Pro Gly Asn Ser Asp Tyr Lys Asp Asp Asp Asp Lys
245 250 255
<210> 28
<211> 256
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 28
Ile Val Gly Gly Gln Glu Ala Pro Arg Ser Lys Trp Pro Trp Gln Val
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Ser Leu Arg Val Arg Asp Arg Tyr Trp Met His Phe Cys Gly Gly Ser
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Asp Val Lys Asp Leu Ala Ala Leu Arg Val Gln Leu Arg Glu Gln His
50 55 60
Leu Tyr Tyr Gln Asp Gln Leu Leu Pro Val Ser Arg Ile Ile Val His
65 70 75 80
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100 105 110
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Gly Trp Gly Asp Val Asp Asn Asp Glu Arg Leu Pro Pro Pro Phe Pro
130 135 140
Leu Lys Gln Val Lys Val Pro Ile Met Glu Asn His Ile Cys Asp Ala
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Gly Ile Tyr Thr Arg Val Thr Tyr Tyr Leu Asp Trp Ile His His Tyr
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<213> Homo sapiens
<400> 29
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Ser Leu Arg Val Arg Asp Arg Tyr Trp Met His Phe Cys Gly Gly Ser
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Leu Ile His Pro Gln Trp Val Leu Thr Ala Ala His Cys Leu Gly Pro
35 40 45
Asp Val Lys Asp Leu Ala Ala Leu Arg Val Gln Leu Arg Glu Gln His
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Pro Gln Phe Tyr Ile Ile Gln Thr Gly Ala Asp Ile Ala Leu Leu Glu
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100 105 110
Pro Pro Ala Ser Glu Thr Phe Pro Pro Gly Met Pro Cys Trp Val Thr
115 120 125
Gly Trp Gly Asp Val Asp Asn Asp Glu Pro Leu Ser Pro Pro Phe Pro
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Leu Lys Gln Val Lys Val Pro Ile Met Glu Asn His Ile Cys Asp Ala
145 150 155 160
Lys Tyr His Leu Gly Ala Tyr Thr Gly Asp Asp Val Arg Ile Ile Arg
165 170 175
Asp Asp Met Leu Cys Ala Gly Asn Ser Gln Arg Asp Ser Cys Lys Gly
180 185 190
Asp Ser Gly Gly Pro Leu Val Cys Lys Val Asn Gly Thr Trp Leu Gln
195 200 205
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Gly Ile Tyr Thr Arg Val Thr Tyr Tyr Leu Asp Trp Ile His His Tyr
225 230 235 240
Val Pro Lys Lys Pro Gly Asn Ser Asp Tyr Lys Asp Asp Asp Asp Lys
245 250 255
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<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
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1 5
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<220>
<223> Synthetic Construct
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<210> 32
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<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 32
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<210> 33
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<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 33
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<210> 34
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 34
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<210> 35
<211> 18
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 35
cagccagtga cccagcac 18
<210> 36
<211> 51
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<220>
<221> misc_feature
<222> (26)..(26)
<223> n is g or a
<400> 36
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<210> 37
<211> 42
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 37
cacacggtca ccctgccccc tgcctcagag accttccccc cc 42
<210> 38
<211> 121
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 38
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<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 39
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<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 40
Gly Tyr Ser Trp Asn
1 5
<210> 41
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<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 41
Ser Ile Thr Tyr Asp Gly Ser Thr Asn Tyr Asn Pro Ser Val Lys Gly
1 5 10 15
<210> 42
<211> 12
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 42
Gly Ser His Tyr Phe Gly His Trp His Phe Ala Val
1 5 10
<210> 43
<211> 15
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 43
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<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 44
Ala Ala Ser Tyr Leu Glu Ser
1 5
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<211> 9
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Construct
<400> 45
Gln Gln Ser His Glu Asp Pro Tyr Thr
1 5
前記TPSAB1遺伝子座が、(i)5’-CTG GTG TGC AAG GTG AAT GG-3’(配列番号31)のヌクレオチド配列を含む第1のフォワードプライマー及び5’-AGG TCC AGC ACT CAG GAG GA-3’(配列番号32)のヌクレオチド配列を含む第1のリバースプライマーの存在下で対象の核酸を増幅してTPSAB1アンプリコンを形成することと、(ii)前記TPSAB1アンプリコンをシークエンシングすることと、を含む方法によってシークエンシングされる、請求項7または8に記載の方法。
前記TPSB2遺伝子座が、(i)5’-GCA GGT GAG CCT GAG AGT CC-3’(配列番号33)のヌクレオチド配列を含む第2のフォワードプライマー及び5’-GGG ACC TTC ACC TGC TTC AG-3’(配列番号34)のヌクレオチド配列を含む第2のリバースプライマーの存在下で前記対象の核酸を増幅してTPSB2アンプリコンを形成することと、(ii)前記TPSB2アンプリコンをシークエンシングすることとを含む方法によってシークエンシングされる、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
前記TPSB2アンプリコンのシークエンシングが、前記第2のフォワードプライマーを使用することと、5’-CAG CCA GTG ACC CAG CAC-3’(配列番号35)のヌクレオチド配列を含むリバースプライマーをシークエンシングすることと、を含む、請求項10に記載の方法。
前記抗IgE抗体が、(a)配列番号38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号39のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)のようなVHドメイン及び(b)のようなVLドメイン、を含む請求項32または33に記載の方法。
前記マスト細胞媒介性炎症性疾患が、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹(CSU)、全身性アナフィラキシー、マスト細胞症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、及び好酸球性食道炎からなる群から選択される、請求項1、3、4、5、または7~39のいずれか一項に記載の方法。
前記TPSAB1遺伝子座が、(i)5’-CTG GTG TGC AAG GTG AAT GG-3’(配列番号31)のヌクレオチド配列を含む第1のフォワードプライマー及び5’-AGG TCC AGC ACT CAG GAG GA-3’(配列番号32)のヌクレオチド配列を含む第1のリバースプライマーの存在下で対象の核酸を増幅してTPSB1アンプリコンを形成することと、(ii)前記TPSAB1アンプリコンをシークエンシングすることと、を含む方法によってシークエンシングされる、請求項48または49に記載の、使用のためのIgEアンタゴニスト。
前記TPSAB2遺伝子座が、(i)5’-GCA GGT GAG CCT GAG AGT CC-3’(配列番号33)のヌクレオチド配列を含む第2のフォワードプライマー及び5’-GGG ACC TTC ACC TGC TTC AG-3’(配列番号34)のヌクレオチド配列を含む第2のリバースプライマーの存在下で対象の核酸を増幅してTPSB2アンプリコンを形成することと、(ii)前記TPSAB2アンプリコンをシークエンシングすることと、を含む方法によってシークエンシングされる、請求項48~51のいずれか一項に記載の、使用のためのIgEアンタゴニスト。
前記TPSB2アンプリコンのシークエンシングが、前記第2のフォワードプライマーを使用することと、5’-CAG CCA GTG ACC CAG CAC-3’(配列番号35)のヌクレオチド配列を含むリバースプライマーをシークエンシングすることと、を含む、請求項52に記載の、使用のためのIgEアンタゴニスト。
前記患者の前記試料が、血液試料、組織試料、痰試料、細気管支洗浄液試料、粘膜被覆液(MLF)試料、気管支吸着試料、及び経鼻吸収試料からなる群から選択される、請求項47~68のいずれか一項に記載の、使用のためのIgEアンタゴニスト。
前記追加の治療薬が、コルチコステロイド、IL-33軸結合アンタゴニスト、TRPA1アンタゴニスト、気管支拡張剤または喘息症状抑制剤、免疫調節剤、チロシンキナーゼ阻害剤、及びホスホジエステラーゼ阻害剤からなる群から選択される、請求項79に記載の、使用のためのIgEアンタゴニスト。
前記マスト細胞媒介性炎症性疾患が、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹(CSU)、全身性アナフィラキシー、マスト細胞症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、及び好酸球性食道炎からなる群から選択される、請求項47~82のいずれか一項に記載の、使用のためのIgEアンタゴニスト。