(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103201
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】スプライン付きボールねじ
(51)【国際特許分類】
F16H 25/22 20060101AFI20240725BHJP
F16C 31/06 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
F16H25/22 C
F16C31/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007404
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 晋平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】狩野 慎吾
【テーマコード(参考)】
3J062
3J104
【Fターム(参考)】
3J062AA38
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA12
3J062CD04
3J062CD25
3J062CD54
3J104AA04
3J104AA23
3J104AA34
3J104AA36
3J104AA57
3J104AA63
3J104AA69
3J104AA75
3J104AA76
3J104AA77
3J104AA79
3J104BA05
3J104DA12
3J104DA16
3J104EA06
(57)【要約】
【課題】小型化を促進できるスプライン付きボールねじを提供する。
【解決手段】ボールねじは、外周面に螺旋状に形成された内ボールねじ溝、並びに外周面に軸線方向に形成された内ボールスプライン溝1b及び内ボールスプライン戻し溝1bを備えたボールねじ軸1と、ボールねじ軸1の外周面と対向する内周面に、内ボールねじ溝に対向して、外ボールねじ溝を備えたボールねじナットと、ボールねじ軸の外周面と対向する内周面に、内ボールスプライン溝1b及び内ボールスプライン戻し溝1cに対向して、外ボールスプライン溝3b及び外ボールスプライン戻し溝3cを備えたボールスプラインナット3と、転動路7Aに沿って転動する複数のボールねじ用ボールと、スプライン用転動路及びスプライン用戻し路に沿って転動する複数のボールスプライン用ボールと、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋状に形成された内ボールねじ溝、並びに前記外周面に軸線方向に形成された内ボールスプライン溝及び内ボールスプライン戻し溝を備えたボールねじ軸と、
前記ボールねじ軸の外周面と対向する内周面に、前記内ボールねじ溝に対向して、外ボールねじ溝を備えたボールねじナットと、
前記ボールねじ軸の外周面と対向する内周面に、前記内ボールスプライン溝及び前記内ボールスプライン戻し溝に対向して、外ボールスプライン溝及び外ボールスプライン戻し溝を備えたボールスプラインナットと、
前記内ボールねじ溝と前記外ボールねじ溝とにより形成される転動路に沿って転動する複数のボールねじ用ボールと、
前記内ボールスプライン溝と前記外ボールスプライン溝とにより形成されるスプライン用転動路、及び前記内ボールスプライン戻し溝と前記外ボールスプライン戻し溝とにより形成されるスプライン用戻し路に沿って転動する複数のボールスプライン用ボールと、を有する、
ことを特徴とするスプライン付きボールねじ。
【請求項2】
前記内ボールスプライン溝の溝底から前記ボールねじ軸の中心までの距離と、前記内ボールスプライン戻し溝の溝底から前記ボールねじ軸の中心までの距離が等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載のスプライン付きボールねじ。
【請求項3】
前記内ボールスプライン溝と、前記内ボールスプライン戻し溝とが、前記ボールねじ軸の軸中心を中心とする円弧に沿った共通の溝底で接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のスプライン付きボールねじ。
【請求項4】
前記内ボールねじ溝の溝底から、前記ボールねじ軸の軸中心までの距離は、前記内ボールスプライン溝及び前記内ボールスプライン戻し溝の溝底から、前記ボールねじ軸の軸中心までの距離に等しい、
ことを特徴とする請求項2に記載のスプライン付きボールねじ。
【請求項5】
前記ボールねじ軸に、4つの前記内ボールスプライン溝と4つの前記内ボールスプライン戻し溝とが、前記2つの内ボールスプライン溝同士が周方向に隣接するようにして形成され、
前記ボールスプラインナットに、前記4つの内ボールスプライン溝に対向する4つの前記外ボールスプライン溝と、前記4つの内ボールスプライン戻し溝に対向する4つの前記外ボールスプライン戻し溝とが形成され、
周方向に隣接する2つの前記スプライン用転動路間には、オフセット予圧がそれぞれ付与されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のスプライン付きボールねじ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のスプライン付きボールねじを、軸受一体型としたことを特徴とするスプライン付きボールねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプライン付きボールねじに関する。
【背景技術】
【0002】
スカラー型ロボットのZ-θ軸アクチュエータを構成する主要構成部品として、たとえば、スプライン付きボールねじが知られている。この種のボールねじにおいては、ボールねじ軸の外周面に形成されたボールねじ溝とボールねじナットの内周面に形成されたボールねじ溝との間に多数のボール(以下「ボールねじ用ボール」とも称す)を配設するとともに、ボールねじ軸の外周面に形成されたボールスプライン溝とボールスプラインナットの内周面に形成されたボールスプライン溝との間に多数のボール(以下「ボールスプライン用ボール」とも称す)を配設している。
【0003】
また、スプライン付きボールねじの一タイプとして、軸受一体型スプライン付きボールねじが知られている(例えば、特許文献1参照)。軸受一体型スプライン付きボールねじを、
図6を参照して簡単に説明する。軸受一体型スプライン付きボールねじ10は、ボールねじ軸1と、ボールねじナット2と、ボールスプラインナット3と、玉軸受4、5と、を備える。
【0004】
ボールねじ軸1の外面には、所定のリードを持つ螺旋状のボールねじ溝1aと、軸方向に延びる直線状のボールスプライン溝1bとが形成されている。
【0005】
ボールねじナット2は、玉軸受4により回転自在に支持されている。玉軸受4の外輪4aは略円筒状であり、その軸方向の一端部にはフランジ4bを有する。外輪4aの内面には外輪溝4cが2列形成されている。一方、玉軸受4の内輪を兼ねるボールねじナット2の外面には、外輪溝4cに対向して内輪溝2aが形成されている。外輪溝4cと内輪溝2aとの間には、玉4dが転動自在に配設されている。
【0006】
ボールねじナット2の内周には、ボールねじ溝1aに対向して螺旋状にボールねじ溝2bが形成されており、ボールねじ溝1aとボールねじ溝2bとで、転動路6Aを形成する。ボールねじナット2の内部には、軸方向に貫通する戻し路6Bが形成され、戻し路6Bの両端にはエンドキャップ6C,6Dが接続されている。ボールねじナット2とボールねじ軸1とが相対回動すると、転動路6Aに沿って一端まで転動したボールねじ用ボール3Aが、エンドキャップ6C,6Dの一方に掬い上げられ、戻し路6Bを通過し、エンドキャップ6C,6Dの他方を介して転動路6Aの他端に戻されるようになっている。
【0007】
ボールスプラインナット3は、玉軸受5により回転自在に支持されている。玉軸受5の外輪5aは略円筒状であり、その軸方向の一端部には、例えばZ-θ軸アクチュエータのハウジングに取り付けられるフランジ5bを有する。外輪5aの内面には外輪溝5cが2列形成されている。一方、玉軸受5の内輪を兼ねるボールスプラインナット3の外面には、外輪溝5cに対向して内輪溝3aが形成されている。外輪溝5cと内輪溝3aとの間には、玉5dが転動自在に配設されている。
【0008】
ボールスプラインナット3の内周には、ボールスプライン溝1bに対向して軸方向にボールスプライン溝3b(
図7参照)が形成されており、ボールスプライン溝1bと、ボールスプラインナット3のボールスプライン溝3bとで、転動路7Aを形成する。ボールスプラインナット3の両端部には、エンドキャップ8A,8Bが取り付けられる。転動路7Aの両端は、エンドキャップ8A,8Bに形成された方向転換路7C,7Dを介して、ボールスプラインナット3の内部に形成された戻し路7Bの両端に接続されている。ボールスプラインナット3とボールねじ軸1とが軸線方向に相対移動すると、転動路7Aに沿って一端まで転動したボールスプライン用ボール3Bが、エンドキャップ8A,8Bの一方を介して戻し路7Bに進入し、戻し路7Bを通過した後、エンドキャップ8A,8Bの他方を介して転動路7Aの他端に戻されるようになっている。
なお、
図6では、転動路7A、戻し路7B、方向転換路7C,7Dは、それぞれの通路内を移動するボールスプライン用ボール3Bによって示されている。
【0009】
このようなスプライン付きボールねじ10によれば、例えば所定位置にあるボールねじナット2がボールねじ軸1に対して相対回転すると、ボールねじ軸1が軸線方向に移動するが、ボールスプラインナット3は、ボールねじ軸1の軸線方向相対移動を許容する。一方、ボールスプラインナット3が回転すると、それに連れてボールねじ軸1が同方向に回転する。このため、スプライン付きボールねじ10は、スカラー型ロボットのZ-θ軸アクチュエータとして好適に用いられる。
【0010】
さらに、特許文献2には、スプラインナットが、ナット本体と、前記ナット本体に装着される共にボールの無限循環路となる複数の循環溝が外周面に設けられた保持器と、を備え、前記循環溝は、前記ボールが荷重を負荷しながら転動する負荷通路と、前記負荷通路と保持壁を隔てて平行に設けられた戻し通路と、これら負荷通路と戻し通路の両端を接続する一対の方向転換路とを備え、前記負荷通路の底部には当該負荷通路を転動するボールが前記スプライン軸の転走溝に接触する負荷開口部が設けられる一方、前記戻し通路の底部には前記保持壁の弾性変形を可能とするスリット状開口が設けられたスプライン付きボールねじが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2019/107122号公報
【特許文献2】特開2020-143743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、スプライン付きボールねじの低質量化、低慣性化、コンパクト化を実現するためには、ボールスプラインナット外径の小径化が望まれる。特に、ボールスプラインナットに軸受を一体化させた軸受一体型スプライン付きボールねじにおいては、軸受の外輪外径をより小径化したいという要請があり、そのためにボールスプラインナット外径の小径化を図ることが切望される。
【0013】
ここで、
図7は、特許文献1のスプライン付きボールねじ10において、ボールスプラインナット3の転動路7Aと戻し路7Bとの位置関係を想定して示す、ボールねじ軸の軸線方向から見た断面図である。この場合、戻し路7Bの中心Xと、ボールねじ軸1の軸中心Oとの距離Aは、以下の式で定まる。
A=[ボールスプラインナット3の内径B+戻し路7Bの半径C+ボールスプラインナット3の内周と戻し路7B間の肉厚D]
【0014】
この場合、ボールスプラインナット3の内周と戻し路7B間に肉厚Dが生じるため、それによりボールスプラインナット3の小径化が不十分となる。
【0015】
また、特許文献2のスプライン付きボールねじを、
図6の軸受一体型スプライン付きボールねじに適用した場合、転動路7Aと戻し路7Bの径方向位置がオーバーラップすることで、ボールスプラインナット3の小径化が図られるが、保持器を設ける必要があり、また、ボールねじ軸1の外周とボールスプラインナット3の内周に複雑な加工が必要になるという問題がある。
【0016】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、小型化を促進できるスプライン付きボールねじを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のスプライン付きボールねじは、
外周面に螺旋状に形成された内ボールねじ溝、並びに前記外周面に軸線方向に形成された内ボールスプライン溝及び内ボールスプライン戻し溝を備えたボールねじ軸と、
前記ボールねじ軸の外周面と対向する内周面に、前記内ボールねじ溝に対向して、外ボールねじ溝を備えたボールねじナットと、
前記ボールねじ軸の外周面と対向する内周面に、前記内ボールスプライン溝及び前記内ボールスプライン戻し溝に対向して、外ボールスプライン溝及び外ボールスプライン戻し溝を備えたボールスプラインナットと、
前記内ボールねじ溝と前記外ボールねじ溝とにより形成されるねじ用転動路に沿って転動する複数のボールねじ用ボールと、
前記内ボールスプライン溝と前記外ボールスプライン溝とにより形成されるスプライン用転動路、及び前記内ボールスプライン戻し溝と前記外ボールスプライン戻し溝とにより形成されるスプライン用戻し路に沿って転動する複数のボールスプライン用ボールと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、小型化を促進できるスプライン付きボールねじを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るスプライン付きボールねじのボールスプラインナットの斜視図である。
【
図2】
図2は、ボールねじ軸及びボールスプラインナットをボールねじ軸の軸線方向から見た模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、第2の実施形態に係るスプライン付きボールねじの
図2と同様な断面図である。
【
図4】
図4は、第3の実施形態に係るスプライン付きボールねじの
図2と同様な断面図である。
【
図5】
図5は、変形例に係るスプライン付きボールねじの
図2と同様な断面図である。
【
図6】
図6は、軸受一体型スプライン付きボールねじの一例を示す部分断面斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6のスプライン付きボールねじのボールスプラインナットの転動路と戻し路との位置関係を想定して示す、
図2と同様な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るスプライン付きボールねじの実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態のスプライン付きボールねじ10は、
図6に示す従来のスプライン付きボールねじ10に対して、ボールスプライン用ボール3Bが転動する、転動路(ボールスプライン用転動路)7A、戻し路(スプライン用戻し路)7B、方向転換路7C,7Dからなる環通路を改良したものである。そのため、スプライン付きボールねじ10の基本構成は、すでに
図6において説明した従来のスプライン付きボールねじ10と同様であるので、必要に応じて同図を参照しながら、本実施形態のスプライン付きボールねじ10について説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るスプライン付きボールねじ10のボールスプラインナットの斜視図であり、
図2は、ボールねじ軸及びボールスプラインナットをボールねじ軸の軸線方向から見た模式的な断面図である。
【0022】
図1及び
図2に示すように、スプライン付きボールねじ10のボールスプラインナット3の循環路では、転動路(ボールスプライン用ボール3Bを介してボールねじ軸1とボールスプラインナット3との間で負荷を受ける負荷溝)7Aは、
図6と同様に、ボールねじ軸1のボールスプライン溝(内ボールスプライン溝ともいう)1bと、ボールスプラインナット3のボールスプライン溝(外ボールスプライン溝ともいう)3bとで形成されている。一方、戻し路7Bは、ボールねじ軸1の外周面に形成されたボール戻し溝(内ボールスプライン戻し溝ともいう)1cと、ボールスプラインナット3の内周面に形成されたボール戻し溝(外ボールスプライン戻し溝ともいう)3cとで形成されている。
【0023】
軸線直交断面において、ボールスプライン溝1bの曲率半径は、ボールスプライン溝3bの曲率半径に略等しく、ボール戻し溝1cの曲率半径は、ボール戻し溝3cの曲率半径に略等しいが、ボール戻し溝1c,3cの曲率半径は、ボールスプライン溝1b,3bの曲率半径より大きい。
また、
図1に示すように、エンドキャップ8A,8Bの方向転換路7C,7Dは、ボールねじ軸1のボールスプライン溝1b及びボール戻し溝1cのボールスプライン用ボール3Bを掬うように形成されると共に、ボールスプラインナット3の内径と略等しいエンドキャップ8A,8Bの内径よりも径方向外側でボールスプライン用ボール3Bを通過させている。
【0024】
したがって、本実施形態においては、ボールねじ軸1の軸中心Oから転動路7Aの中心X1までの距離と、軸中心Oから戻し路7Bの中心X2までの距離が等しい。すなわち、軸線直交断面において、中心X1,X2は、軸中心Oを中心とする所定円上に位置する。
【0025】
かかる場合、戻し路7Bの中心X2(及び転動路7Aの中心X1)とボールねじ軸1の軸中心Oとの間の距離Aを小さくすることができ、軸受内輪の溝底径をより小さくすることが可能となる。したがって、軸受内輪の溝底径を小さくすることにより、軸受のBCD(ボール中心径)が小さくなるので、軸受の外輪外径の小径化も可能となり、スプライン付きボールねじ10の低質量化、低慣性化、コンパクト化を実現できる。
【0026】
本実施形態によれば、ボールスプラインナット3に戻し路用の貫通孔を形成することなく、転動路7Aに隣接して、ボールねじ軸1の外周面にボール戻し溝1cを形成し、またボールスプラインナット3の内周面にボール戻し溝3cを形成し、これらにより戻し路7Bを構成している。このため、戻し路7Bの中心X2とボールねじ軸1の軸中心Oの距離Aを小さくすることができ、それによりボールスプラインナット3の外径を小さくできる。特に、ボールスプラインナット3を軸受の内輪に兼用することにより、軸受外径を抑えた、低質量、低慣性、コンパクトな軸受一体型スプライン付きボールねじを提供できる。また、ボールねじ軸1にはボールスプライン溝1bに加えて、ボール戻し溝1cを設けることとなるので、その分、ボールねじ軸1の質量・慣性モーメントを小さくすることが可能となる。
【0027】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係るスプライン付きボールねじの
図2と同様な断面図である。本実施形態においては、
図3の軸線直交断面において、ボールねじ軸1の軸中心Oを中心とする半径Eの単一円に、ボールスプライン溝1bとボール戻し溝1cの溝底が接している。
特に、
図3にて図示しないボールねじ溝1a(
図6)の溝底から、ボールねじ軸1の軸中心Oまでの距離を、ボールスプライン溝1b及びボールスプライン戻し溝1cの溝底から、ボールねじ軸1の軸中心Oまでの距離と等しくしている。
【0028】
本実施形態によれば、ボールねじ軸1及びボールスプラインナット3の双方において、ボールスプライン用ボール3Bを保持する機能が不要になる。
ボールスプラインナット3を含むそれ以外の構成は、上述した実施の形態と同様である。
【0029】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態に係るスプライン付きボールねじの
図2と同様な断面図である。本実施形態においては、ボールスプライン用ボール3Bが転動する転動路7A及び戻し路7Bを4つずつ形成し、周方向に隣接する2つの転動路7A間でオフセット予圧を付与している。
【0030】
具体的に、本実施形態では、ボールねじ軸1に、4つのボールスプライン溝1bと4つのボールスプライン戻し溝1cとが、2つのボールスプライン溝1b同士が周方向に隣接するようにして形成され、ボールスプラインナット3に、4つのボールスプライン溝1bに対向する4つのボールスプライン溝3bと、4つのボールスプライン戻し溝1cに対向する4つのボールスプライン戻し溝3cとが形成される。
【0031】
また、4つの転動路7Aのうち、2つの転動路7A同士が周方向に隣接し、4つの戻し路7Bのうち、2つの戻し路7B同士が周方向に隣接している。また、周方向に隣接する2つの転動路7A間の距離は、周方向に隣接する2つの戻し路7B間の距離よりも短い。
さらに、ボールねじ軸1の外周には、循環路を形成するボールスプライン溝1b及びボール戻し溝1cが、ボールねじ軸1の軸中心Oを中心とする円弧に沿った共通の溝底1dで接続されている。これにより、ボールスプライン溝1b及びボール戻し溝1cは、片側のフランクのみを有している。
【0032】
そして、ボールねじ軸1の隣接する2つのボールスプライン溝1bの間のピッチを、ボールスプラインナット3の隣接する2つのボールスプライン溝3bの間のピッチよりも大きくすることで、周方向に隣り合う2つの転動路7Aにおいて、ボールスプライン溝1bとボールスプライン溝3bとの間の接触角の向きが反対となり、2つの転動路7A間でオフセット予圧を付与することができるので、支持剛性を高めることができる。また負荷溝は片側のフランクのみとする構成であり、ボールねじ軸1の負荷溝と循環溝を単一溝で形成することができる。このため、循環時にボールスプライン用ボール3Bが、エンドキャップ8A,8Bを通過する際にボールねじ軸1の最大外径を乗り超える必要がないため、循環部品の軸中心Oから距離を小さく抑えることができるので、ボールスプラインナット外径をより小さくできる。なお、オフセット予圧に関しては、その他の実施形態及び変形例でも同様に適用できる。
【0033】
(変形例)
図5は、変形例に係るスプライン付きボールねじの
図2と同様な断面図である。本変形例は、第3の実施形態に対して、第2の実施形態と同様に、隣接するボールスプライン溝1bとボール戻し溝1cの溝底を繋ぐ共通の溝底1dは、ボールねじ溝1a(
図6)の溝底と同じ径方向位置にある。即ち、
図5にて図示しないボールねじ溝1aの溝底から、ボールねじ軸1の軸中心Oまでの距離を、ボールスプライン溝1b及びボールスプライン戻し溝1cの溝底を繋ぐ共通の溝底1dから、ボールねじ軸1の軸中心Oまでの距離と等しくしている。
この場合も、ボールねじ軸1及びボールスプラインナット3の双方において、ボールスプライン用ボール3Bを保持する機能が不要になる。
【0034】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明の範囲内において、上述の実施形態の任意の構成要素の変形が可能である。また、上述の実施形態において任意の構成要素の追加または省略が可能である。スプライン付きボールねじは、軸受と組み合わせて軸受一体型とすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ボールねじ軸
2 ボールねじナット
3 ボールスプラインナット
1a ボールねじ溝
1b ボールスプライン溝
1d 溝底
3A ボールねじ用ボール
3B ボールスプライン用ボール
7A 転動路
7B 戻し路
8A,8B エンドキャップ
10 スプライン付きボールねじ