(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103206
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/36 20180101AFI20240725BHJP
F21S 41/147 20180101ALI20240725BHJP
F21S 41/26 20180101ALI20240725BHJP
F21S 41/265 20180101ALI20240725BHJP
F21W 102/17 20180101ALN20240725BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20240725BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240725BHJP
【FI】
F21S41/36
F21S41/147
F21S41/26
F21S41/265
F21W102:17
F21W102:155
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007412
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 和則
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英治
(72)【発明者】
【氏名】大橋 悠二
(72)【発明者】
【氏名】三菅 大
(57)【要約】
【課題】大型化を抑制しつつすれ違い用配光パターンとその側方の追加配光パターンとを形成することのできる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具10は、複数の光源(41から45)と、そこから出射された光を反射するリフレクタ部材23と、そこで反射された光を投影して、車両の前方を照射する前方配光パターン(すれ違い用配光パターンLP)を形成する投影レンズ24と、を備える。複数の光源(41から45)のうち、車両の幅方向で最も外側に位置する最外側光源(第5光源45)から直接進行する直接光を投影レンズ24へ向けて反射する側方反射面66を有し、側方反射面66は、反射した直接光を投影レンズ24から投影させることで、前方配光パターン(すれ違い用配光パターンLP)の側方を照射する側方配光パターンPsを形成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源と、
複数の前記光源から出射された光を反射するリフレクタ部と、
前記リフレクタ部で反射された光を投影して、車両の前方を照射する前方配光パターンを形成する投影レンズと、を備え、
複数の前記光源のうち、前記車両の幅方向で最も外側に位置する最外側光源から直接進行する直接光を前記投影レンズへ向けて反射する側方反射面を有し、
前記側方反射面は、反射した前記直接光を前記投影レンズから投影させることで、前記前方配光パターンの側方を照射する側方配光パターンを形成することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記側方反射面は、側方反射板により形成され、
前記側方反射板は、前記リフレクタ部と一体的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記側方反射板は、前記リフレクタ部から前記投影レンズにおける前記車両の幅方向の内側の端部へ向けて伸びていることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記側方反射面は、前記最外側光源を焦点とする放物面とされていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記側方反射面は、前記最外側光源を第1焦点とする双曲面とされていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記側方反射面は、軸線が前後方向に対して外側に大きく傾けられていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記投影レンズは、前記車両の幅方向で外側に向かうに連れて前後方向で後側へ向かうように傾斜されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記投影レンズは、入射面が凸面とされていることを特徴とする請求項7に記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記入射面は、幅方向で内側の曲率が外側の曲率よりも小さくされていることを特徴とする請求項8に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具では、前方配光パターンを形成するとともに、その前方配光パターンの側方に側方配光パターンを形成するものが考えられている(例えば、特許文献1参照)。この車両用灯具では、前方配光パターンを形成するための光源からの光のうち、前方配光パターンの形成には用いられない残りの光(以下では補助光とする)を利用して側方配光パターンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の車両用灯具は、光源からの光を投影レンズから出射させることにより前方配光パターンを形成しており、同じ光源からの補助光を投影レンズとは異なる位置から出射させることにより側方配光パターンを形成している。このため、上記の車両用灯具は、光源から投影レンズを通る光路の他に光源から補助光が出射される箇所へと向かう光路を設ける必要があるので大型化を招いてしまうとともに、投影レンズとは別に補助光が出射される箇所が光って見えるので違和感を与える虞がある。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、簡易な構成としつつ見た目で違和感を与えることなく前方配光パターンの側方に側方配光パターンを形成することのできる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両用灯具は、複数の光源と、複数の前記光源から出射された光を反射するリフレクタ部と、前記リフレクタ部で反射された光を投影して、車両の前方を照射する前方配光パターンを形成する投影レンズと、を備え、複数の前記光源のうち、前記車両の幅方向で最も外側に位置する最外側光源から直接進行する直接光を前記投影レンズへ向けて反射する側方反射面を有し、前記側方反射面は、反射した前記直接光を前記投影レンズから投影させることで、前記前方配光パターンの側方を照射する側方配光パターンを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の車両用灯具によれば、簡易な構成としつつ見た目で違和感を与えることなく前方配光パターンの側方に側方配光パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示に係る一実施形態としての車両用灯具を示す説明図である。
【
図2】車両用灯具の構成を、上側枠部を外して示す説明図である。
【
図3】
図2の車両用灯具の上方から見た様子を示す説明図である。
【
図4】
図3の車両用灯具において、リフレクタ部を外しつつ側方反射面の構成を示す説明図である。
【
図5】
図4の車両用灯具において、直接光が出射される様子を示す説明図である。
【
図6】投影光軸上の中心位置で水平線と鉛直線とが交差するスクリーン上において、すれ違い用配光パターンと側方配光パターンとを形成した様子を示す説明図である。
【
図7】他の例の車両用灯具において、リフレクタ部を外しつつ側方反射面の構成を示す
図5と同様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る車両用灯具の一例としての車両用灯具10の実施例1について図面を参照しつつ説明する。
【実施例0010】
本開示に係る車両用灯具の一実施形態に係る実施例1の車両用灯具10を、
図1から
図6を用いて説明する。実施例1の車両用灯具10は、自動車等の車両の前照灯装置として用いられる。この車両用灯具10は、車両の前部の左右両側において、開放された前端がアウターレンズで覆われたランプハウジングにより形成される灯室に設けられる。車両用灯具10は、上下方向用光軸調整機構や左右方向用光軸調整機構を介して灯室に設けられ、車両の前方を適宜照射する。以下の説明では、車両用灯具10において、車両が進行する方向を前後方向(図面ではZとする)とし、前後方向を水平面に沿う状態とした際の鉛直方向を上下方向(図面ではYとする)とし、前後方向および上下方向に直交する方向(水平方向)を幅方向(図面ではXとする)とする。ここで、車両用灯具10は、車両の左側に設けられるものと右側に設けられるものとで基本的に等しい構成とされつつ幅方向(左右)で反転されたものであるので、以下では、左側に設けられる車両用灯具10を用いて説明する。
【0011】
実施例1の車両用灯具10は、
図1から
図4に示すように、ハイビームユニット11とロービームユニット20とが組み合わされて構成されている。ロービームユニット20は、後述するすれ違い用配光パターンLP(
図6参照)を形成する。ハイビームユニット11は、幅方向でロービームユニット20の内側に位置されており、それが形成するすれ違い用配光パターンLPの上端部に部分的に重複させつつすれ違い用配光パターンLPの上部を照射する走行用配光パターンを形成する。
【0012】
このハイビームユニット11では、取付部材12に、光源部13とレンズ部材14とが取り付けられ、後述する投影レンズ24におけるハイレンズ部61と協働して、ダイレクトプロジェクションタイプの灯具ユニットを構成する。取付部材12は、熱伝導性を有するアルミプレートやアルミダイカストや樹脂で形成され、全体として光源部13で発生する熱を外部に逃がすヒートシンクとして機能する。その光源部13は、複数の光源が基板に実装されて構成され、その各光源がLED(Light Emitting Diode)の発光素子を用いて構成されている。レンズ部材14は、各光源を覆うように光源部13に取り付けられており、各光源から出射された光を適宜偏向した後にハイレンズ部61から出射させる。ハイレンズ部61は、後述する投影レンズ24において、幅方向の内側(光源部13の前後方向の前側)に位置されており、レンズ部材14を通して光を前方へと出射させることで、走行用配光パターンを形成する。
【0013】
ロービームユニット20は、取付部材21に、光源部22とリフレクタ部材23と投影レンズ24とが取り付けられて、プロジェクタタイプの灯具ユニットを構成する。取付部材21は、光源部22が設けられる箇所であり、熱伝導性を有するアルミプレートやアルミダイカストや樹脂で形成され、全体として光源部22で発生する熱を外部に逃がすヒートシンクとして機能する。この取付部材21では、複数の放熱フィンを設けることができ、取り付けられた光源部22で発生した熱を主に各放熱フィンから外部に放熱することとしてもよい。この取付部材21は、図示しないブラケットを介して、ランプハウジングに固定される。取付部材21では、冷却効率を高めるために適宜冷却ファンユニットを設けるものとしてもよい。取付部材21は、光源取付部31とレンズ取付部32とを有する。
【0014】
光源取付部31は、上下方向に直交する平板状とされ、所定の位置に光源部22が取り付けられる。その光源部22については後述する。光源取付部31には、
図4等に示すように、2つの位置決め突起31aと、2つのネジ孔31bと、が設けられている。各位置決め突起31aと各ネジ孔31bとは、対を為して設けられている。各位置決め突起31aは、上下方向の下側に突出された棒状とされている。各ネジ孔31bは、ネジを捻じ込んで固定することが可能とされている。
【0015】
レンズ取付部32は、
図1から
図4に示すように、上下方向に略直交する平板状とされ、光源取付部31の前後方向の前側に設けられ、段差をつけて光源取付部31よりも上下方向の下側に位置されている。レンズ取付部32は、投影レンズ24を取り付ける箇所を構成するもので、光源取付部31に取り付けられた光源部22の前後方向の前側に投影レンズ24を位置させる。
【0016】
光源部22は、
図4に示すように、第1光源41と、第2光源42と、第3光源43と、第4光源44と、第5光源45と、コネクタ端子46と、それらが実装される基板47と、を有する。この5つの光源(41から45)は、それぞれLED(Light Emitting Diode)等の発光素子で構成されている。実施例1の光源部22では、幅方向の内側から略等間隔で第1光源41から第2光源42、第3光源43、第4光源44、第5光源45の順に設けられている。そして、光源部22では、第2光源42と第3光源43と第4光源44との並ぶ位置が前後方向の後側とされているとともに、第1光源41と第5光源45との並ぶ位置が前側とされている。このため、実施例1の光源部22では、第5光源45が幅方向で最も外側に位置する最外側光源となる。
【0017】
コネクタ端子46は、基板47の配線パターンと電気的に接続されており、点灯制御回路に接続された接続コネクタが着脱自在とされている。コネクタ端子46は、基板47の前後方向の後側の端部に設けられており、接続コネクタの着脱が容易とされている。コネクタ端子46は、接続コネクタが取り付けられることで、配線パターンを介する点灯制御回路から各光源(41から45)への電力の供給を可能とする。
【0018】
基板47は、アルミ基板で形成された板状とされ、各光源(41から45)が実装される。なお、基板47は、ガラスエポキシ基板等の樹脂材料で形成されていてもよく、他のもので形成されていてもよい。基板47には、各光源(41から45)とコネクタ端子46とを電気的に接続する配線パターンが設けられている。この基板47は、光源取付部31の位置決め突起31aが位置決め孔47aに通されつつ、ネジ通し孔47bに通されたネジが光源取付部31のネジ孔31bに捻じ込まれることにより、取付部材21(光源取付部31)に取り付けられる。基板47は、コネクタ端子46を介して点灯制御回路から電力を適宜供給して各光源(41から45)を適宜点灯させる。
【0019】
リフレクタ部材23は、
図3に示すように、樹脂材料からなる成形品とされ、第1リフレクタ部51と、第2リフレクタ部52と、第3リフレクタ部53と、第4リフレクタ部54と、第5リフレクタ部55と、が一体的に設けられている。第1リフレクタ部51は、第1光源41に対応し、第2リフレクタ部52は、第2光源42に対応し、第3リフレクタ部53は、第3光源43に対応し、第4リフレクタ部54は、第4光源44に対応し、第5リフレクタ部55は、第5光源45に対応している。各リフレクタ部(51から55)は、対応する光源(41から45)を個別に覆うように湾曲された形状とされた反射面を有し、その各反射面が対応する光源(41から45)から出射された光を投影レンズ24側へと反射する。各反射面は、対応する光源(41から45)(その中心位置またはその近傍)を第1焦点とし、後述するシェード部材56の段差箇所56a(
図4、
図5参照)の近傍を第2焦点とする楕円を基本とした椀状の自由曲面とされている。これにより、各リフレクタ部(51から55)は、第1焦点の近傍の各光源(41から45)から出射された光を、効率よく投影レンズ24の後述するローレンズ部62へと進行させることができる。
【0020】
リフレクタ部材23には、
図3等に示すように、2つの位置決め孔23aと、2つのネジ通し孔23bと、が設けられている。各位置決め孔23aは、それぞれが対応する光源取付部31の位置決め突起31aを通すことができる貫通孔とされている。各ネジ通し孔23bは、位置決め孔23aの近傍に設けられ、ネジを通すことが可能とされている。
【0021】
このリフレクタ部材23は、光源取付部31との間に光源部22を介在させた状態で、基板47の各位置決め孔47aに通された光源取付部31の各位置決め突起31aが各位置決め孔23aに通されることにより、光源取付部31および光源部22に対して位置決めされる。リフレクタ部材23は、各ネジ通し孔23bに通されたネジが、基板47のネジ通し孔47bに通されてから光源取付部31のネジ孔31bに捻じ込まれることにより、位置決めされた状態で光源部22を介して光源取付部31に取り付けられる。これにより、光源部22は、基板47に実装された各光源(41から45)が、それぞれが対応するリフレクタ部(51から55)に対向される。
【0022】
取付部材21では、
図4に示すように、光源取付部31とレンズ取付部32との段差面にシェード部材56が設けられている。シェード部材56は、カットオフラインCLを形成するものであり、各光源(41から45)から出射された光がカットオフラインCLの上方を照らすことを防止する。このシェード部材56は、高さの異なる水平エッジが傾斜エッジで繋ぎ合わされた段差箇所56aが設けられた板状とされている。なお、シェード部材56は、車両用灯具10が車両の右側に設けられるものの場合でも、段差箇所56aにおける傾斜の方向および高さの関係は幅方向で反転されない。すなわち、車両用灯具10は、車両の右側と左側とで幅方向で反転されたものとされるが、シェード部材56の段差箇所56aの傾斜に関しては互いに等しい向きとされる。
【0023】
投影レンズ24は、
図1から
図2等に示すように、取付部材21のレンズ取付部32に取り付けられる。この投影レンズ24は、リフレクタ部材23(その各反射面)で反射された光を車両の前方へ投影し、所定の配光パターンを形成する。投影レンズ24は、樹脂材料からなる成形品とされており、取付枠25に支持されている。この取付枠25は、下側枠部26と上側枠部27とを有し、投影レンズ24を上下で挟み込んで支持しつつ、レンズ取付部32への取り付けが可能とされている。
【0024】
その投影レンズ24は、ハイレンズ部61とローレンズ部62とを有する。ハイレンズ部61は、ハイビームユニット11の前方、すなわち投影レンズ24における幅方向の内側に位置しており、光源部13から出射されてレンズ部材14を通した光を前方に投影することで、走行用配光パターンを形成する。このハイレンズ部61は、
図3、
図4等に示すように、略幅方向に伸びる肉厚な凸レンズとされており、入射面61aが前後方向の後側に大きく突出する凸面とされている。また、ハイレンズ部61の出射面61bは、幅方向の外側がローレンズ部62の後述する出射面62bから連続しつつ前方へと傾斜する平坦な面とされるとともに、ハイビームユニット11の幅方向の中央近傍の頂点箇所61cで折り返した後に内側へ向けて後方へと傾斜する平坦な面とされた凸面とされている。
【0025】
ローレンズ部62は、ロービームユニット20の前方すなわち投影レンズ24における幅方向の外側に位置しており、外側へ向かうに連れて後方へと向かうように傾斜された凸レンズとされている。ローレンズ部62の入射面62aは、前後方向の後側に突出する凸面とされている。また、ローレンズ部62の出射面62bは、幅方向の外側が最も後側に位置しており、内側へ向かうに連れて前方へと向かうように平坦な面とされている。この出射面62bは、ハイレンズ部61の出射面61bに滑らかに連続する(屈曲箇所がなく曲率の変化が連続する)単一の平坦な面とされている。
【0026】
ローレンズ部62は、シェード部材56の段差箇所56aの近傍に焦点(後側焦点)が位置されている。ローレンズ部62は、各リフレクタ部(51から55)からの光を照射することで、中心位置Oを原点として水平線Hと鉛直線Vとが交差するスクリーン上において、光学特性に応じた位置に複数の配光像を適宜重ねて形成する。この光学特性は、各リフレクタ部(51から55)の曲率(面形状)を場所毎に調整することで設定できる。これにより、ロービームユニット20は、上記したスクリーン上において、投影光軸Lp上にカットオフラインCLを有し、投影光軸Lpの近傍を最も明るくしつつカットオフラインCLの下方で幅方向に大きな領域を明るくするすれ違い用配光パターンLP(
図6参照)を形成できる。このすれ違い用配光パターンLPは、車両の前方を照射する前方配光パターンとなる。
【0027】
このように、投影レンズ24は、幅方向で外側から内側へと向かうに従って前後方向の前側へと向かう(傾斜する)ものとされるとともに、頂点箇所61cを超えると後側へ向かう(傾斜する)ものとされている。この投影レンズ24は、ローレンズ部62が車両用灯具10のスラントに沿ってスラントしている。このため、投影レンズ24では、ハイレンズ部61とローレンズ部62とで異なる光学特性とされているにも拘らず、それらの境目が殆ど目立たせることなく、凹凸のない滑らかな2つの平面で構成された全体として纏まりのある一体のデザインとすることができ、見栄えを向上させている。
【0028】
このため、車両用灯具10では、投影レンズ24におけるローレンズ部62が、すれ違い用配光パターンLPを形成するロービームユニット20における実質的な投影レンズとして機能している。これにより、車両用灯具10では、ハイレンズ部61(入射面61a)とローレンズ部62(入射面62a)との境界位置24aが、ロービームユニット20の投影レンズにおける幅方向の内側の端部となる。
【0029】
この車両用灯具10では、側方反射板65が設けられている。この側方反射板65は、すれ違い用配光パターンLPの側方を照射する側方配光パターンPs(
図6参照)を形成するために設けられている。側方反射板65は、各光源(41から45)からの光が各リフレクタ部(51から55)で反射されてローレンズ部62に至る光路を阻害しない位置に設けられる。実施例1の側方反射板65は、薄い板状とされており、リフレクタ部材23における幅方向の内側の端部23cに取り付けられている。側方反射板65は、端部23cから前後方向の前側に伸びるものとされ、幅方向の外側の面が側方反射面66とされている。
【0030】
この側方反射面66は、
図4に示すように、第5光源45を焦点とする放物面(その一部(一点鎖線参照))とされており、端部23cから、投影レンズ24におけるハイレンズ部61とローレンズ部62との境界位置24aに向けて伸びて設けられている。なお、側方反射面66は、実施例1では境界位置24aに至るものとされているが、境界位置24aよりも手前まで伸びるものとされていてもよい。この側方反射面66は、焦点(第5光源45)を通る放物面の軸線66aが、前後方向に対して、前側に向かうほど幅方向の外側に向かうように傾斜されている。実施例1の軸線66aは、前後方向に対する傾斜角度が80度から85度の間とされている。なお、この傾斜角度は、側方配光パターンPsを形成する位置に合わせて適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。このような構成であることから、側方反射板65(側方反射面66)は、ハイビームユニット11とロービームユニット20とを区画しており、互いのユニットを通る光が反対側のユニットへと進行することを防止する機能も有する。この側方反射面66には、各光源(41から45)から出射されて直接進行する光(以下では直接光ともいう)が進行してくることとなり、それぞれローレンズ部62へ向けて反射する。
【0031】
この側方反射面66は、
図5に示すように、第5光源45から出射された直接光が進行してくると、その直接光を入射位置から軸線66aと平行な方向へと反射する。この直接光は、ローレンズ部62で適宜屈折されつつそこから出射されることにより、幅方向の外側を照射することができる。この直接光は、
図6に示すように、投影光軸Lpよりも大きく幅方向の外側(左側)を照射することにより、すれ違い用配光パターンLPの側方に側方配光パターンPsを形成する。なお、各配光パターンを示す
図6では、車両用灯具10による照射の中心位置O(投影光軸Lp)を原点として水平線Hと鉛直線Vとが交差するスクリーン上における明るさの分布を示している。この側方配光パターンPsは、すれ違い用配光パターンLPと一部を重複させつつ、その幅方向の外側(左側)の広範な領域を明るくすることができ、すれ違い用配光パターンLPだけでは十分な光を照射できない位置を照らすことができる。
【0032】
なお、この側方配光パターンPsの位置は、側方反射面66(放物面)の軸線66aの向きを調整したり、第5光源45に対する焦点の位置を調整したりすることにより、設定することができる。また、側方反射面66は、他の光源(41から44)からの直接光や、各リフレクタ部(51から55)で反射された光を、幅方向の外側へ向けて反射するので、ハイビームユニット11へと進行してハイレンズ部61から出射されることを防止する。
【0033】
車両用灯具10は、ロービームユニット20において、各光源(41から45)を点灯させることにより、それぞれからの光を各リフレクタ部(51から55)で反射した後に、投影レンズ24のローレンズ部62から出射させる。これにより、車両用灯具10は、
図6に示すように、すれ違い用配光パターンLPを形成できる。
【0034】
そして、車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPを形成した状態において、第5光源45から出射されて直接側方反射面66へと向かう直接光が、側方反射面66で反射されて軸線66aと平行な平行光(コリメートされた光)とされる。その直接光は、軸線66aの方向へと進行する平行光の状態で、入射面62aからローレンズ部62へと入射し、その出射面62bから出射されることにより、軸線66aの方向よりも外側に向かうこととなる。この直接光は、側方配光パターンPsを形成し、すれ違い用配光パターンLPに一部を重複させつつその外側(
図6では左側)を明るくできる。このため、直接光は、側方配光パターンPsを形成する補助光となる。これにより、車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPに加えて、その左側の広い範囲の視界を確保させることができる。なお、車両用灯具10は、車両の右側に設けられている場合には、構成が左右で反転されているので、すれ違い用配光パターンLPの右側に側方配光パターンPsを形成することとなる。
【0035】
また、車両用灯具10は、ハイビームユニット11において、光源部13の各光源を点灯させて、投影レンズ24のハイレンズ部61から出射させることにより、すれ違い用配光パターンLPの上端部に部分的に重複させつつすれ違い用配光パターンLPの上部を照射する走行用配光パターンを形成できる。
【0036】
この車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPを形成するロービームユニット20において、第5光源45からの直接光を側方反射板65の側方反射面66で反射して側方配光パターンPsを形成している。このため、車両用灯具10は、車両への搭載時にすれ違い用配光パターンLPを形成する構成と側方配光パターンPsを形成する構成との間での位置決めの調整作業をなくすことができるとともに、位置関係の精度を高めることができる。また、車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPのための構成と側方配光パターンPsのための構成とを個別に車両に搭載する場合と比較して、取り付けるための部品を低減できるとともに、その取付作業を簡易なものにできる。
【0037】
また、車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPを形成するロービームユニット20において、すれ違い用配光パターンLPの形成に用いていない第5光源45からの直接光を利用して側方配光パターンPsを形成している。このため、車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPの形成に何らの影響を及ぼすことなく側方配光パターンPsを形成することができ、より適切に乗員の視界を確保できる。また、車両用灯具10は、側方配光パターンPsの形成のために新たな光源を設ける必要がないので、光源部22で発生し得る熱量の上昇を抑制でき、簡易で効率の良い構成とすることができる。
【0038】
さらに、車両用灯具10は、ロービームユニット20における内側の端に側方反射板65を設けているとともに、投影レンズ24のローレンズ部62を外側へ向かうに連れて後方へと向かうように傾斜させている。このため、車両用灯具10は、全体としてローレンズ部62を側方反射板65側に向けることができ、側方反射板65で反射されて軸線66aと平行な方向に進行する光を、ローレンズ部62から適切に投影できる。特に、車両用灯具10は、投影レンズ24のローレンズ部62の入射面62aを前後方向の後側に突出する凸面としているので、入射面62aにおける内側をより側方反射板65側に向けることができるので、側方反射板65からの光を入射面62aからローレンズ部62により確実に入射させることができる。加えて、車両用灯具10は、入射面62aにおいて、内側の曲率が外側の曲率よりも小さくされているので、入射面62aにおいて側方反射板65に向けられている領域を大きくすることができ、側方反射板65からの光をより効率よく入射面62aから入射させることができる。
【0039】
ここで、従来の車両用灯具の技術の課題について説明する。従来の車両用灯具は、すれ違い配光ユニットの光源からの光のうち、前方配光パターンの形成には用いられない残りの光(以下では補助光とする)を利用して側方配光パターンを形成するものがある。この従来の車両用灯具は、光源からの光を投影レンズから出射させることにより前方配光パターンを形成しており、同じ光源からの補助光を投影レンズとは異なる位置から出射させることにより側方配光パターンを形成している。このため、従来の車両用灯具は、光源から投影レンズを通る光路の他に光源からの補助光を出射させる箇所へと向かう光路となる空間や、その補助光を出射させるための開口を設ける必要があるので大型化を招いてしまうとともに、投影レンズの他に開口も光って見えるので違和感を与える虞がある。
【0040】
これに対し、本開示の車両用灯具10は、側方配光パターンPsを形成する光を、すれ違い用配光パターンLPを形成する光と同じ投影レンズ24のローレンズ部62から出射させるので、ローレンズ部62だけが光って見えることとなる。ここで、投影レンズ24は、一般に車両用灯具10において光って見える箇所であるので、点灯時に光って見えても違和感を与えることはない。このため、車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPと側方配光パターンPsとを形成しても、周囲の者等に違和感を与えることはない。
【0041】
また、車両用灯具10は、側方配光パターンPsを形成する光(直接光)を、各光源(41から45)からの光が各リフレクタ部(51から55)で反射されてローレンズ部62に至るまでのすれ違い用配光パターンLPの形成のための光路を通している。このため、車両用灯具10は、側方配光パターンPsを形成する光の光路のために新たな空間を設けるものではないので、大型化することを防止できる。
【0042】
さらに、車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPの形成のための光路を阻害しない位置に側方反射板65を設けているとともに、すれ違い用配光パターンLPの形成には用いない第5光源45からの直接光を利用して、側方配光パターンPsを形成する。このため、車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPに何らの影響を与えることなく側方配光パターンPsを形成できる。特に、車両用灯具10は、リフレクタ部材23の端部23cから投影レンズ24の境界位置24aへ向けて伸びて設けられているので、ハイビームユニット11とロービームユニット20とを区画することができ、それぞれがすれ違い用配光パターンLPや走行用配光パターンを適切に形成できる。加えて、車両用灯具10は、リフレクタ部材23の端部23cに側方反射板65を取り付けているので、リフレクタ部材23を取付部材21に取り付けると側方反射板65も同時に設けることができる。このため、車両用灯具10は、取り付け作業における部品点数を減らすことができ、その取付作業を簡易なものにでき、取付部材21に取り付けられる光源部22(その各光源(41から45))や各リフレクタ部(51から55)に対する位置関係を適切なものにできる。
【0043】
本開示に係る車両用灯具の一例としての車両用灯具10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0044】
車両用灯具10では、複数の光源(41から45)と、そこから出射された光を反射するリフレクタ部材23と、そこで反射された光を投影して前方配光パターンとしてのすれ違い用配光パターンLPを形成する投影レンズ24と、を備える。また、車両用灯具10は、複数の光源(41から45)のうちの最外側光源(第5光源45)からの直接光を投影レンズ24へ向けて反射する側方反射面66を有し、その直接光を投影レンズ24から投影させてすれ違い用配光パターンLPの側方を照射する側方配光パターンPsを形成する。これにより、車両用灯具10は、最外側光源からの光を側方反射面66で反射して投影レンズ24から出射させるのですれ違い用配光パターンLPの形成のための光路を通すことができ、側方配光パターンPsを形成する光の光路のために新たな空間を設けるものではなく、大型化することを防止できる。また、車両用灯具10は、投影レンズ24だけが光って見えるので、すれ違い用配光パターンLPと側方配光パターンPsとを形成しても、周囲の者等に違和感を与えることはない。
【0045】
また、車両用灯具10では、側方反射面66が側方反射板65により形成され、その側方反射板65がリフレクタ部材23と一体的に設けられている。このため、車両用灯具10は、リフレクタ部材23を設けると側方反射板65も同時に設けることができ、部品点数を減らしつつ取り付け作業を簡易なものにできるとともに、リフレクタ部材23に対する側方反射板65の位置関係の精度を高めることができる。
【0046】
さらに、車両用灯具10では、側方反射板65がリフレクタ部材23から投影レンズ24における車両の幅方向の内側の端部(実施例1では境界位置24a)へ向けて伸びている。このため、車両用灯具10は、リフレクタ部材23から投影レンズ24に至る光路から外れた位置に側方反射板65(側方反射面66)を設けることができ、前方配光パターンとしてのすれ違い用配光パターンLPを適切に形成できる。
【0047】
車両用灯具10では、側方反射面66が、最外側光源としての第5光源45を焦点とする放物面とされている。このため、車両用灯具10は、第5光源45から直接側方反射面66へと進行した光を、平行な光(コリメートされた光)として投影レンズ24へと進行させることができる。これにより、車両用灯具10は、側方配光パターンPsを形成する光の進行方向の設定を容易なものにでき、すれ違い用配光パターンLPに対する側方配光パターンPsの位置を適切なものにできる。
【0048】
車両用灯具10では、側方反射面66の軸線66aが前後方向に対して外側に大きく傾けられている。このため、車両用灯具10は、側方反射面66で反射した光の進行方向を外側に大きく傾けることができ、すれ違い用配光パターンLPの外側の適切な位置に側方配光パターンPsを形成できる。
【0049】
車両用灯具10では、投影レンズ24(そのローレンズ部62)が幅方向で外側に向かうに連れて前後方向で後側へ向かうように傾斜されている。このため、車両用灯具10は、全体としてローレンズ部62を側方反射板65側に向けることができ、側方反射板65で反射されて軸線66aと平行な方向に進行する光をローレンズ部62から投影させることができる。
【0050】
車両用灯具10では、投影レンズ24(そのローレンズ部62)の入射面62aが凸面とされている。このため、車両用灯具10は、入射面62aにおける内側をより側方反射板65側に向けることができるので、側方反射板65からの光を入射面62aからローレンズ部62により確実に入射させることができる。
【0051】
車両用灯具10では、入射面62aにおいて、内側の曲率が外側の曲率よりも小さくされている。このため、車両用灯具10は、入射面62aにおいて側方反射板65に向けられている領域を大きくすることができ、側方反射板65からの光をより効率よく入射面62aから入射させることができる。
【0052】
したがって、本開示に係る車両用灯具としての実施例1の車両用灯具10は、簡易な構成としつつ見た目で違和感を与えることなく前方配光パターン(すれ違い用配光パターンLP)の側方に側方配光パターンPsを形成することができる。
【0053】
以上、本開示の車両用灯具を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0054】
なお、上記した実施例1では、側方反射面66(側方反射板65)を上記のように設けていたが、最外側光源(第5光源45)から直接進行する直接光を投影レンズ24へ向けて反射するものであればよく、実施例1の構成に限定されない。その他の一例の側方反射面66A(側方反射板65A)を
図7に示す。この側方反射面66Aは、第5光源45を第1焦点とする双曲面(その一部(一点鎖線参照))とされており、第2焦点Fsが車両用灯具10よりも幅方向の内側に設定されている。この側方反射面66Aは、双曲面の軸線66aAが、実施例1と同様とされている。この側方反射面66Aは、第5光源45からの直接光を入射位置から軸線66aAと平行な方向へと反射するので、実施例1の側方反射面66と同様の効果を得ることができる。そして、この側方反射面66Aでは、第2焦点Fsと車両用灯具10すなわち第1焦点(第5光源45)との間隔を調整することで、すれ違い用配光パターンLPに対する側方配光パターンPsの位置を調整することができる。
【0055】
また、上記した実施例1では、ハイビームユニット11とロービームユニット20とを並列させた構成としている。しかしながら、ロービームユニット20のみの構成としてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0056】
さらに、上記した実施例1では、ロービームユニット20の光源部22において、5つの光源(41から45)を設けていたが、この光源の数は適宜設定すればよく、上記した実施例1の構成に限定されない。そして、光源の数に拘らず、幅方向で最も外側に位置する最外側光源からの直接光を側方反射面66(側方反射板65)で投影レンズ24へ向けて反射するものとすればよい。
【0057】
上記した実施例1では、側方反射板65がリフレクタ部材23の端部23cに取り付けられていたが、側方反射板65がリフレクタ部材23と一体的に設けられているものであればよく、実施例1の構成に限定されない。
10 車両用灯具 23 リフレクタ部材 24 投影レンズ 24a (投影レンズ24の内側の端部の一例としての)境界位置 41 第1光源 42 第2光源 43 第3光源 44 第4光源 45 (最外側光源の一例としての)第5光源 62a 入射面 65、65 側方反射板 66、66A 側方反射面 66a、66aA 軸線 LP (前方配光パターンの一例としての)すれ違い用配光パターン Ps 側方配光パターン