(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010321
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】光センサプローブ
(51)【国際特許分類】
G01R 29/08 20060101AFI20240117BHJP
G01R 15/24 20060101ALI20240117BHJP
G01R 1/06 20060101ALI20240117BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
G01R29/08 F
G01R29/08 D
G01R15/24 A
G01R1/06 F
G01R19/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111598
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】大沢 隆二
【テーマコード(参考)】
2G011
2G025
2G035
【Fターム(参考)】
2G011AD02
2G011AF04
2G025AB12
2G025AC06
2G035AA17
2G035AB04
2G035AD36
2G035AD37
2G035AD43
(57)【要約】
【課題】非接触で高電圧の信号の測定や電磁ノイズ発生個所及びそのノイズ波形の測定を可能とする光センサプローブを提供する。
【解決手段】その場の電界の強度に依存して入射光を変調して出力する光センサ部1を備え、光センサ部1は、アンテナ3と一体に構成された変調電極4を備えた光変調器2を有し、光変調器2は、分岐干渉型光変調器であり、反射型光変調器であって、入力光ファイバと出力光ファイバは1本の入出力光ファイバ5で構成されている。パッケージ6は、電界に対して遮蔽層となる金属板7で構成され、被測定個所に対向して近接することが可能な先端面8に開口9を有し、開口9の周囲の最外部の表面に絶縁体層11を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その場の電界又は磁界の強度に依存して入射光を変調して出力する光センサ部と、
前記光センサ部に接続された入力光ファイバ及び出力光ファイバと、
前記光センサ部と前記入力光ファイバ及び前記出力光ファイバの一部を収納したパッケージと、を有し、
被測定個所より発生する電界又は磁界の強度変化を前記光センサ部により光信号に変換して前記出力光ファイバより出力する光センサプローブであって、
前記パッケージは、少なくとも一部に前記電界又は前記磁界に対して遮蔽効果を有する材料により構成された遮蔽層を備え、
前記遮蔽層は、前記被測定個所に対向して近接することが可能な位置に開口を有する
ことを特徴とする光センサプローブ。
【請求項2】
前記パッケージは、少なくとも前記開口及び前記開口の周囲の最外部の表面に絶縁体層を有することを特徴とする請求項1に記載の光センサプローブ。
【請求項3】
前記光センサ部は、その場の電界の強度に依存して電圧を発生するアンテナと、前記アンテナに接続されるか又は前記アンテナと一体に構成された変調電極を備えた光変調器とを有し、前記変調電極に印加された電圧に依存して前記入射光を強度変調して出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の光センサプローブ。
【請求項4】
前記光変調器は、ニオブ酸リチウム結晶基板上に形成された光導波路を用いた分岐干渉型光変調器であることを特徴とする請求項3に記載の光センサプローブ。
【請求項5】
前記光変調器は、前記入射光を内部で反射して折り返す反射型光変調器であって、前記入力光ファイバと前記出力光ファイバは1本の入出力光ファイバで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の光センサプローブ。
【請求項6】
前記光センサ部は、その場の磁界の強度に依存して前記入射光の偏光面を回転させる光変調媒体を有し、
前記磁界の強度変化に依存して前記入射光の強度、位相、偏光面の少なくとも1つを変調して前記出力光ファイバより出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の光センサプローブ。
【請求項7】
前記光センサ部は、特定の偏光成分のみを通過する偏光素子を有し、前記磁界の強度変化に依存して前記入射光の強度を変調して前記出力光ファイバより出力することを特徴とする請求項6に記載の光センサプローブ。
【請求項8】
前記パッケージは、前記遮蔽層の内側に電磁波の反射を抑制する電波吸収体を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光センサプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定個所より発生する電界又は磁界の強度変化を光センサ部により光信号に変換して出力光ファイバより出力する光センサプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速のCPU等を用いた様々な制御装置が開発されており、誤動作の防止対策のため、電子回路単体から製品全体を試験体として、それらに対して意図的に電磁界の放射またはノイズ電圧の注入を行う耐性試験、例えばIEC-61000-4と呼ばれる規格のイミュニティ試験が実施されている。これらの試験においては、試験を行う電磁界または電圧等の試験環境レベルが規格により規定されており、合否判定は誤動作の有無で行う。しかしながら誤動作を解決するためには、上記試験において回路中に生ずる誤動作の原因となるノイズの発生個所の特定やノイズ波形の検出、電気回路基板上に設置された電気部品の入出力信号や配線上を伝わる電気信号を正確に測定すること等が要求されている。
【0003】
電気部品や配線の電気信号を測定する一般的な方法は、接触端子を有する電気プローブにより被測定点の電気信号をオシロスコープ等の測定器に導いてその伝達された電圧波形等を測定する方法である。しかし、被測定点のグランドレベルが測定器と異なる場合や、グランドされていない2点間の電圧信号を測定する場合等には、アースからの信号の混入や電気プローブの有する容量の影響などのため、正確な電圧波形の測定が困難となる。特に高周波領域においては上記のグランドや容量の影響は大きい。さらに、IC、LSI等の集積回路において、入力インピーダンスおよび出力インピーダンスは50Ωではないものが多いため、入力インピーダンスが小さい電気プローブを使ってノイズ入力電圧を測定すると、電気プローブ側に電流が流れてしまい、本来測定すべきノイズ電圧を低下させるプロービングの負荷効果が生じてしまう。
【0004】
この問題を解決する手段として、電圧信号を光信号に変換し、その光信号を光ファイバにより測定器に導く光電圧プローブを使用した測定器が開発されている。この方式では、プローブの有する容量成分が非常に小さいため、入力インピーダンスが非常に高く、被測定点と測定器が電気的に完全に分離される。光電圧プローブでは高周波成分まで測定でき、グランドの影響や途中での電気信号ノイズの混入等を防ぐことができる。このような従来の光電圧プローブの例が特許文献1及び2に記載されている。導波路型の光変調器を用いた光電圧プローブであって、ニオブ酸リチウム結晶基板上に形成した分岐干渉型光変調器の2つの変調電極間に接触端子の電圧信号を印加して光強度変調信号を得るものである。
【0005】
一方、電磁波ノイズは一般的なアンテナで検出可能であるが、測定装置までの途中の電気ケーブルの影響を除くため、上記の光電圧プローブに使用される光変調器等の電極にアンテナパッドを接続して光信号で電磁波ノイズ信号を出力する光電界センサプローブが開発されている。その一例が特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6813763号公報
【特許文献2】特開2020-8537号公報
【特許文献3】特開2021-110647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動車の電動化の進展等に伴って高電圧回路が多く使用されており、高電圧回路に対する信号測定や電磁ノイズの検出の要求が高まっている。このような高電圧信号の測定においては、上記の従来の電気プローブだけでなく光電圧プローブを用いてもプローブ端子の接触による回路の正常な動作への影響が生じ、正常な動作における信号の測定が困難な場合が生じている。
また、電磁波ノイズの発生個所の特定やノイズ波形の測定のため、通常の小型アンテナや光電界センサプローブによる計測が試みられているが、電磁波の伝搬方向に対する受信範囲が広いため、同時に試験環境電磁界も受信してしまい、発生したノイズ信号が環境電磁界に埋もれてしまうため電磁波ノイズ信号の発生位置やそのノイズ信号を十分に正確に検出することが困難であった。
以上のように、光電圧プローブや光電界センサプローブ等の従来の光センサプローブでは、高電圧の信号の測定や電磁ノイズ発生個所及びそのノイズ波形の測定等の目的に対しては十分ではなかった。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、非接触で高電圧の信号の測定や電磁ノイズ発生個所及びそのノイズ波形の測定を可能とする光センサプローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の観点では、本発明による光センサプローブは、その場の電界又は磁界の強度に依存して入射光を変調して出力する光センサ部と、前記光センサ部に接続された入力光ファイバ及び出力光ファイバと、前記光センサ部と前記入力光ファイバ及び前記出力光ファイバの一部を収納したパッケージと、を有し、被測定個所より発生する電界又は磁界の強度変化を前記光センサ部により光信号に変換して前記出力光ファイバより出力する光センサプローブであって、前記パッケージは、少なくとも一部に前記電界又は前記磁界に対して遮蔽効果を有する材料により構成された遮蔽層を備え、前記遮蔽層は、前記被測定個所に対向して近接することが可能な位置に開口を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の光センサローブにおいては、上記のように、その場の電界又は磁界の強度に依存して入射光を変調して出力する光センサ部を備えている。ここで、電界の強度に依存して入射光を変調して出力する光センサ部としては、例えば、従来の光電界センサのように、電気光学効果を利用した光変調器の電極にアンテナパッドを接続して構成することができる。また、電極を持たずポッケルス効果等を有する電気光学媒体により電界の強度に依存して入射光の偏光面を回転させ、偏光性能を持つ検光子を通過させることにより強度変調信号を得る等の構成を用いることが出来る。さらに、磁界についても、ファラデー効果等を有する磁気光学媒体を使用することによりにより磁界の強度に依存して入射光の偏光面を回転させ、偏光子等を通過させて光強度変調信号を得る等の構成を用いることができる。入射光を光センサ部に導く入力光ファイバとしては、光センサ部の必要性に応じて、単一モード光ファイバ、偏光保存光ファイバ等を用いることができ、出力光ファイバとしては入射光の強度や位相が変調される場合は単一モード光ファイバを、偏波面の方向が変調される場合は偏光保存光ファイバを用いることができる。
【0011】
また、本発明の光センサプローブは、光センサ部を保護し、取り扱いを容易にするためのパッケージを有し、そのパッケージ内に光センサ部と光センサ部に取り付けられた入力光ファイバ及び出力光ファイバの一部を収納している。そのパッケージは、少なくとも一部に遮蔽層を備え、その遮蔽層は、電界を測定する場合は電界に対して遮蔽効果を有する材料により構成され、磁界を測定する場合は磁界に対して遮蔽効果を有する材料により構成されている。さらに、その遮蔽層は、被測定個所に対向して近接することが可能な位置に開口を有し、その開口を通してのみ、測定する電界又は磁界が光センサ部に到達するように構成されている。開口部の面積は光センサプローブの感度に影響するため、開口の形状や大きさは被測定対象の部分の形状および感度に合わせて選択すればよく、異なる開口部形状を持つ筐体を後付けで取り付ける方法でも良い。また、パッケージに備える遮蔽層の領域は、少なくとも目的とする被測定個所以外からの電界や磁界の光センサ部への到達を遮蔽できる領域に設置すればよい。
【0012】
電気回路の特定の部分の配線や端子を伝搬する電圧信号を検出する場合は、その部分に遮蔽層の開口を近接させ、その配線等の電圧信号により周囲に発生する電界や電流信号により発生する磁界が遮蔽層の開口を通過して光センサ部に到達する成分を検出すればよい。同様に特定部分から発生する電磁波ノイズを検出する場合は、その部分に開口を近接させればよい。このように遮蔽層の開口を有することにより、開口以外から光センサ部に到達する電界や磁界を遮断することができ、被測定個所以外の配線等の電気信号により発生する電界や磁界、及び電磁波ノイズの検出を排除して、目的とする被測定個所の情報を得ることができる。
【0013】
なお、本発明において、電界の遮蔽効果を得るための遮蔽層の材料としては、金属が代表的な材料であるが、金属以外にもカーボンのような導電体材料や電波吸収体で構成してもよい。磁界の遮蔽効果を得るための遮蔽層はフェライト等の電波吸収体を用いることができる。さらに、遮蔽層は金属と電波吸収体の積層構造であっても良く、その間に絶縁層を加えた積層構造であっても良い。パッケージの形状は光センサ部やそれに取り付けた入力及び出力光ファイバの取り付け部を内部に収納して覆うものであれば任意の形状が可能である。また、遮蔽層はパッケージの最外面に備えてもよいが、パッケージの内面やパッケージを構成する材料の中間層として備えてもよい。
【0014】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点の光センサプローブにおいて、前記パッケージは、少なくとも前記開口及び前記開口の周囲の最外部の表面に絶縁体層を有することを特徴とする。本発明の光センサプローブでは、上記のように高電圧回路に対する信号測定や電磁ノイズの検出を目的としているので、誤って接触する可能性のある開口及び開口の周囲の最外部の表面に絶縁体層を有することにより、パッケージを構成する金属などの導電体が被測定対象の配線等に接触し回路の正常な動作への影響が生じることを防ぐことができる。なお、絶縁体層による電磁波の吸収が小さい場合には、絶縁体層は開口を覆っていてもよい。
【0015】
第3の観点では、本発明は、前記第1又は第2の観点の光センサプローブにおいて、前記光センサ部は、その場の電界の強度に依存して電圧を発生するアンテナと、前記アンテナに接続されるか又は前記アンテナと一体に構成された変調電極を備えた光変調器とを有し、前記変調電極に印加された電圧に依存して前記入射光を強度変調して出力することを特徴とする。本発明に使用する光変調器としては、位相変調器等も可能であるが、強度変調器の方が光信号から電気信号への変換が容易であり、受信側の構成が簡単となる。また、アンテナと変調電極の構成としては、光変調器とは別に小型のアンテナをパッケージ内に収納して変調電極に接続するか、又は、変調電極と同じ構造のアンテナパッドを変調電極と一体として作成してもよい。又は変調電極にアンテナとしての機能を持たせること、すなわち、電界により所定の個所に電圧を発生するように変調電極を構成してもよい。
【0016】
第4の観点では、本発明は、前記第3の観点の光センサプローブにおいて、前記光変調器は、ニオブ酸リチウム結晶基板上に形成された光導波路を用いた分岐干渉型光変調器であることを特徴とする。本観点の発明は、光変調器として、従来から用いられているニオブ酸リチウム結晶上に形成された光導波路による分岐干渉型光変調器を用いるものである。分岐干渉型光変調器の基本構成は、光の入射側から延びる入力光導波路と、入力光導波路から二股に分岐して延びる2本の位相シフト導波路と、その2本の位相シフト光導波路が合流して光の出射側につながる出力光導波路と、位相シフト導波路に並行に配置された変調電極により構成される。電圧信号を変調電極を介して位相シフト導波路に印加し、位相シフト光導波路の屈折率を変化させ、その2つの位相シフト光導波路を通過した光が合流して干渉し、光強度が変調される。小型、高効率、広帯域の光変調器が得られるので、本発明の光センサプローブに適している。
【0017】
第5の観点では、本発明は、前記第4の観点の光センサプローブにおいて、前記光変調器は、前記入射光を内部で反射して折り返す反射型光変調器であって、前記入力光ファイバと前記出力光ファイバは1本の入出力光ファイバで構成されていることを特徴とする。本観点の発明の反射型光変調器は、入射光を位相シフト導波路において反射させて入射側の光導波路に戻す構成を用いる。このような反射型の光変調器の構成を用いることにより、透過型の光変調器に比べて同じ電極長に対して2倍の長さ光が透過するので、光変調器の高効率化、広帯域化が可能となり、かつ小型化が可能となる。さらに、光変調器に接続される光ファイバが1本であるので取り扱いが容易となる。
【0018】
第6の観点では、本発明は、前記第1又は第2の観点の光センサプローブにおいて、前記光センサ部は、その場の磁界の強度に依存して前記入射光の偏光面を回転させる光変調媒体を有し、前記磁界の強度変化に依存して前記入射光の強度、位相、偏光面の少なくとも1つを変調して前記出力光ファイバより出力することを特徴とする。本観点の発明の光センサ部においては、ファラデー効果等の磁気光学効果を有する媒体中を入射光を通過させて磁界の強度に依存して偏光面を回転させる。入力及び出力光ファイバを偏光保存光ファイバで構成して偏波面の回転角を変調して出力する方法や、偏光子等を使用して特定の偏光成分のみを出力し、強度変調光を得て単一モード光ファイバで出力する方法等が可能である。入射光をレンズで平行光に変換してバルク状の光変調媒体中を通過させる構成や、光の通路を光導波路で構成して光導波路中で変調を行う構成等が可能である。電気回路を流れる電流により周囲の磁界が変化するので、本観点の発明を用いてその磁界の変化を検出すれば、電流波形の測定が可能となる。
【0019】
第7の観点では、本発明は、前記第6の観点の光センサプローブにおいて、記光センサ部は、特定の偏光成分のみを通過する偏光素子を有し、前記磁界の強度変化に依存して前記入射光の強度を変調して前記出力光ファイバより出力することを特徴とする。
【0020】
第8の観点では、本発明は、前記第1又は第2の観点の光センサプローブにおいて、前記パッケージは、前記遮蔽層の内側に電磁波の反射を抑制する電波吸収体を有することを特徴とする。本発明において、パッケージの遮蔽層が金属等の電磁波の反射率が大きい物質である場合、測定対象の周波数によってはパッケージの内部での電磁波の反射や共振の発生等により正確な測定が妨げられる可能性がある。本観点の発明はパッケージの内面に電波吸収体層等を設けて測定対象の電磁波の反射を抑制することにより、さらに正確な測定が可能となる。電波の吸収体としては、電波の反射を減少させる機能を有するものであればよい。例えば、材料内部の抵抗によって電波によって発生する電流を吸収する導電性繊維の織物等により構成される導電性電波吸収材料、誘電損失を利用し、カーボン粉等をゴム、発泡ウレタン、発泡ポリスチロール等の誘電体に混合して見かけ上の誘電損失を大きくした誘電性電波吸収材料、磁気損失によって電波を吸収する鉄、ニッケル、フェライト等を使用した磁性電波吸収材料等を用いることができる。また、材料形状としては、シート状の材料、塗布型の材料等も可能である。
【発明の効果】
【0021】
上記のように、本発明により、非接触で高電圧の信号の測定や電磁ノイズ発生個所及びそのノイズ波形の測定を可能とする光センサプローブが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1に係る光センサプローブの構成を模式的に示す図であり、
図1(a)は透過型の平面図、
図1(b)は開口の周囲の部分拡大断面図。
【
図2】実施例1に係る光センサプローブを用いた測定システムのブロック構成図。
【
図3】光センサプローブに内蔵される光センサ部が備える反射型の光変調器の構成の一例を模式的に示す図であり、
図3(a)は平面図、
図3(b)はA-A断面図。
【
図4】光センサプローブの測定結果の一例を示す図であり、周波数特性を示す図。
【
図5】光センサプローブの測定結果の一例を示す図であり、電圧振幅特性を示す図。
【
図6】実施例2に係る光センサプローブの構成を模式的に示す図であり、
図6(a)は光センサプローブの透過型の平面図、
図6(b)は光変調器のA-A断面図。
【
図7】実施例2に係る光センサプローブを用いた測定システムのブロック構成図。
【
図8】実施例3に係る光センサプローブの構成を模式的に示す透過型の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の光センサプローブを実施例により詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複した説明を省略する。
【実施例0024】
図1は実施例1に係る光センサプローブの構成を模式的に示す図であり、
図1(a)は透過型の平面図、
図1(b)は開口の周囲の部分拡大断面図である。
【0025】
図1において、本実施例の光センサプローブ10は、その場の電界の強度に依存して入射光を変調して出力する光センサ部1と、光センサ部1に接続された入力光ファイバ及び出力光ファイバとを備えている。ここで、光センサ部1は、その場の電界の強度に依存して電圧を発生するアンテナ3と一体に構成された変調電極4を備えた光変調器2を有し、変調電極4に印加された電圧に依存して入射光を強度変調して出力する。光変調器2は、ニオブ酸リチウム結晶基板上に形成された光導波路を用いた分岐干渉型光変調器であり、さらに、入射光を内部で反射して折り返す反射型光変調器であって、入力光ファイバと出力光ファイバは1本の入出力光ファイバ5で構成されている。
【0026】
光センサプローブ10は、光センサ部1と入出力光ファイバ5の一部を収納したほぼ直方体形状のパッケージ6を備え、パッケージ6は、電界に対して遮蔽効果を有する金属材料により構成された遮蔽層となる金属板7で構成され、金属板7は、被測定個所に対向して近接することが可能な位置、すなわち、直方体の先端面8に開口9を有している。さらに、先端面8の開口9の周囲の最外部の表面に絶縁体層11を備えている。また、パッケージ6は、内部での電磁波の反射を抑制するため、金属板7の内側に誘電性電波吸収材料等からなる電波吸収体層12を備えている。
【0027】
入出力光ファイバ5の先端は、光変調器2の入出射端面と端面同士を接着固定するため、フェルール13内に挿入され固定されている。光変調器2はパッケージ6に固定された台座等に固定され、入出力光ファイバ5はゴム状の固定部品14によりパッケージ6に固定されている。
【0028】
次に、本実施例の光センサプローブ10を用いた測定システムについて説明する。
図2は実施例1に係る光センサプローブを用いた測定システムのブロック構成図である。
図2に示すように、光センサプローブ10には、光送受信ユニット21より入出力光ファイバ5を通して入射光15が送られ、光変調器2より出力される光強度変調信号16が同じ入出力光ファイバ5より光送受信ユニット21に入力される。
光送受信ユニット21は、半導体レーザ等の光源22、O/E変換器23、入射光15と光強度変調信号16を分離するための送受分離器24、アンプ25を備えている。光源22からの出射光は送受分離器24を通して入出力光ファイバ5に結合し、入出力光ファイバ5から戻る光強度変調信号16は送受分離器24を通してO/E変換器23に入力する。O/E変換器23において光強度変調信号16は電気信号に変換され、アンプ25により増幅されて出力端子26に出力される。その電気信号はオシロスコープ等の測定器27の入力端子28に入力される。送受分離器24は、光サーキュレータ、光ファイバ分岐、半透過ミラーのいずれかを用いて構成することができる。
【0029】
図2は、被測定個所として、電気回路基板29上に組み込まれた2つの電気部品間の配線17に印加されている電圧信号を測定する場合を示している。配線17を伝搬する電圧信号によりその周囲に電界の変化による電磁波信号が発生し、その電磁波信号は光センサプローブ10の先端の開口9からパッケージ6内に侵入する。その電磁波信号は、
図1に示すように、光センサ部1のアンテナ3により検出されて電圧信号として変調電極4に印加され、入射光15を光強度変調信号16に変換する。
【0030】
以上のように、配線17を伝搬する電圧信号は光強度変調信号16に変換される。その光強度変調信号16は光送受信ユニット21内で電気信号に変換される。測定器27によりその電圧波形等を観測することにより配線17を伝搬する電圧信号波形を把握することができる。
【0031】
図3は、本実施例の光センサプローブ10に内蔵される光センサ部1が備える反射型の光変調器2の構成の一例を模式的に示す図であり、
図3(a)は平面図、
図3(b)はA-A断面図である。
【0032】
図3において、光変調器2は、電気光学効果を有する結晶であるニオブ酸リチウム(LiNbO
3)結晶からXカットで切り出して作られた基板31と、基板31の上面側にTi拡散によって作られた分岐干渉型光導波路32と、基板31の上面側に成膜されたバッファ層33と、バッファ層33の上に形成された変調電極4及び変調電極4と一体に形成されたアンテナ3と、基板31の一方の端部に設置された光反射部35とから構成されている。変調電極4及びアンテナ3は、スパッタリング等によって成膜されたクロム(Cr)と金(Au)の2層膜である。
【0033】
分岐干渉型光導波路32は、入力光の入射側に延びる1本の入出力光導波路32aと、入出力光導波路32aから二股に分岐して延びる2本の位相シフト光導波路32b,32cとから構成されている。入出力光導波路32aや位相シフト光導波路32b,32cでは、延伸方向に垂直な方向の幅Wはすべて等しい。また、位相シフト光導波路32b,32cは、それらの延伸方向の長さはほぼ等しい。
【0034】
これらの光導波路の幅Wは、5~12μmの範囲にある。位相シフト光導波路32b,32cの延伸方向の長さは、10~30mmの範囲にある。位相シフト光導波路32bと32cは、その中央部分が幅方向へ所定の間隔で離間し、互いに平行に延びている。中央部分における位相シフト光導波路32bと32cの間の間隔は、15~50μmの範囲にある。なお、入出力光導波路32a、位相シフト光導波路32b、32cの幅W、位相シフト光導波路32b,32cの長さ、位相シフト光導波路32b、32c間の間隔について特に限定はなく、それら寸法を任意に設定することができる。
【0035】
バッファ層33は、分岐干渉型光導波路32を伝播する光の一部が変調電極部4やアンテナ3に吸収されることを防止する目的で設けられる。バッファ層33は、主として二酸化ケイ素(SiO2)膜等から作られ、その厚さは0.1~1.0μm程度である。
【0036】
光変調器2においては、変調電極4は、位相シフト光導波路32bと32cの間に配置され左側のアンテナ3に接続された電極部4aと、位相シフト光導波路32b,32cを挟んで電極部4aの両側に配置され右側のアンテナ3に接続された電極部4b及び4cとを有している。基板31の入出力光導波路32aの光入出射端には入出力光ファイバ5の入出射端面が結合している。光反射部35は、入出力光導波路32aから入射して位相シフト光導波路32b,32cを伝播した光を反射し、位相シフト光導波路32b,32cから入出力光導波路32aへ戻して伝播させる。アンテナ3に誘起された電圧により、電極部4aと4bとの間、及び電極部4aと4cとの間の2つの位相シフト光導波路32b,32c中に互いに逆向きに電界が印加される。これにより、位相シフト光導波路32bと32cには互いに逆向きの屈折率変化が生じ、それらを通過する光に互いに逆極性の位相シフトが生じ、それらの光が合流するときに互いに干渉して強度変化が生ずる。これによりアンテナ3を介して変調電極4への印加電圧に対応した光強度変化を有する光強度変調信号が得られる。
【0037】
図4及び
図5は、本実施例の光センサプローブの測定結果の一例を示す図であり、それぞれ、
図4は周波数特性、
図5は電圧振幅特性の測定結果を示す。電圧信号が通過する電気配線上に、光センサプローブ10の開口9を2~3mm程度の間隔を開けて近接させて設置し、開口9を円形とし、その大きさφを5mm、8mmとした場合について、それぞれ測定を行った。
図4において、いずれの開口の場合も、本実施例のパッケージを用いない従来の光電界センサプローブにおいての周波数特性とほぼ同じ周波数特性が得られた。
図5において、いずれの開口の場合も、電圧振幅に対してリニアな特性が得られている。
光センサプローブ40は、光センサ部41と入力光ファイバ45及び出力光ファイバ46の一部を収納したほぼ直方体形状のパッケージ47を備え、パッケージ47は、電界に対して遮蔽効果を有する金属板48で構成され、金属板48は、被測定個所に対向して近接することが可能な位置、すなわち、直方体のアンテナ43に近い側面に開口49を有している。さらに、開口49の周囲の最外部の表面に絶縁体層51を備えている。
入力光ファイバ45及び出力光ファイバ46の先端は、光変調器42の入出射端面と端面同士を接着固定するため、フェルール内に挿入され固定されている。光変調器42はパッケージ47に固定された台座等に固定され、入力光ファイバ45及び出力光ファイバ46はゴム状の固定部品52によりパッケージ47に固定されている。
光変調器42においては、変調電極44は、位相シフト光導波路54bと54cの間に配置され上側のアンテナ43aに接続された電極部44aと、位相シフト光導波路54cを挟んで電極部44aに対向して配置され下側のアンテナ43bに接続された電極部44bとを有している。アンテナ43に誘起された電圧により、電極部44aと44bとの間に電界が印加され、位相シフト光導波路54cには屈折率変化が生じるので、位相シフト光導波路54bと54cを伝搬する光波には位相シフトが生じ、それらが合流するときに互いに干渉して強度変化が生ずる。これによりアンテナ43を介して変調電極44への印加電圧に対応した光強度変化を有する光強度変調信号が得られる。
電気回路基板29上に組み込まれた2つの電気部品間の配線17を伝搬する電圧信号によりその周囲に電界の変化による電磁波信号が発生し、その電磁波信号は光センサプローブ40の開口49からパッケージ47内に侵入し、光センサ部41のアンテナ43により検出されて電圧信号として変調電極44に印加され、入射光56を光強度変調信号57に変換する。