(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103214
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】戸当り装置
(51)【国際特許分類】
E05C 17/50 20060101AFI20240725BHJP
E05C 17/56 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
E05C17/50
E05C17/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007426
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】今野 僚太
(57)【要約】
【課題】扉を開く際に所定位置で確実に止めることができる簡易な構成の戸当り装置を提供するようにする。
【解決手段】開閉可能な扉(1)に設けられる戸当り装置(3)は、扉(1)に取り付けられるケース(310)と、ケース(310)に設けられ、床面(4)の受金具(5)に対して回動自在に取り付けられたフラップ(52)を引き寄せるマグネット(350)と、マグネット(350)によって引き寄せられたフラップ(52)の係止孔(52h)と係止される複数の係止爪(321b)が外周面に形成された回転体(320)と、ケース(310)に対して上下方向へ移動自在に保持され、回転体(320)を一方向にのみ回転可能に許容するホルダ(330)と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な扉に設けられる戸当り装置であって、
前記扉に取り付けられるケースと、
前記ケースに設けられ、床面の受金具に対して回動自在に取り付けられたフラップを引き寄せるマグネットと、
前記マグネットによって引き寄せられた前記フラップの係止孔と係止される複数の係止爪が外周面に形成された回転体と、
前記ケースに対して上下方向へ移動自在に保持され、前記回転体を一方向にのみ回転可能に許容するホルダと
を備える戸当り装置。
【請求項2】
前記回転体は、前記係止爪とは別に前記ホルダの腕部分と係合することにより一方向にのみ回転を許容する係合体部を有する
請求項1に記載の戸当り装置。
【請求項3】
前記回転体および前記ホルダは、前記回転体を一方向にのみ回転可能に許容するラチェット機構を形成する
請求項1に記載の戸当り装置。
【請求項4】
前記回転体の前記係止爪は、その爪先端部が曲面を為している
請求項1に記載の戸当り装置。
【請求項5】
前記ホルダは、前記ケースに対して当該ホルダの自重によって最下方位置に配置され、前記フラップと前記回転体の前記係止爪とが当接し、前記フラップにより前記回転体が回転不能な方向へ前記係止爪が押された際に前記ケースの内部で前記回転体と共に上方向へ移動する
請求項1に記載の戸当り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉等の戸体に取り付けられる戸当り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石を用いたドアストッパ(例えば、特許文献1を参照。)があり、扉の下部に取り付けられた扉側機構部と、床面に取り付けられた床面側機構部とを有している。扉側機構部は、磁石を有し、床面側機構部は回動可能な磁性体からなるフラップを有している。
【0003】
実際上、扉が開き、床面側機構部の上方に扉側機構部が来ると、扉側機構部の磁石が床面側機構部のフラップを引き寄せて当接することにより当該扉の開閉を阻止する。また、扉側機構部には、床面側機構部のフラップと係合することにより扉の開閉を規制する係止部材を有している。
【0004】
このドアストッパにおいては、磁石によって引き寄せられた床面側機構部のフラップの貫通穴に対して上下する第2爪部が係合することにより扉が開いた状態で保持される。その後、ドアを閉鎖しようとすると、扉に対して閉方向に加えられる力が大きくなり、やがてその力が板バネの屈曲部により回転体の被付勢部を押す力よりも大きくなると回転体が回動し、扉の開状態が解除されるという構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたドアストッパにおいては、その構造が複雑であり、更なる構造の簡素化が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、扉を開く際に所定位置で確実に止めることができる簡易な構成の戸当り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、開閉可能な扉に設けられる戸当り装置であって、前記扉に取り付けられるケースと、前記ケースに設けられ、床面の受金具に対して回動自在に取り付けられたフラップを引き寄せるマグネットと、前記マグネットによって引き寄せられた前記フラップの係止孔と係止される複数の係止爪が外周面に形成された回転体と、前記ケースに対して上下方向へ移動自在に保持され、前記回転体を一方向にのみ回転可能に許容するホルダとを備える。
【0009】
本発明において、前記回転体は、前記係止爪とは別に前記ホルダの腕部分と係合することにより一方向にのみ回転を許容する係合体部を有することが好ましい。
【0010】
本発明において、前記回転体および前記ホルダは、前記回転体を一方向にのみ回転可能に許容するラチェット機構を形成することが好ましい。
【0011】
本発明において、前記回転体の前記係止爪は、その爪先端部が曲面を為していることが好ましい。
【0012】
本発明において、前記ホルダは、前記ケースに対して当該ホルダの自重によって最下方位置に配置され、前記フラップと前記回転体の前記係止爪とが当接し、前記フラップにより前記回転体が回転不能な方向へ前記係止爪が押された際に前記ケースの内部で前記回転体と共に上方向へ移動することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る態様によれば、扉を開く際に所定位置で確実に止めることができる簡易な構成の戸当り装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態に係る戸当り装置が受金具のフラップと当接した状態を示す斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る戸当り装置が受金具のフラップと当接する直前の状態を示す斜視図である。
【
図3】本実施の形態に係る受金具の構成を示す斜視図である。
【
図4】本実施の形態に係る戸当り装置を一方の側および他方の側から見たときの構成を示す分解斜視図である。
【
図5】本実施の形態に係る戸当り装置のケースに対して取り付けられたマグネットの配置を示す断面図である。
【
図6】本実施の形態に係る戸当り装置のケースの構成を示す断面図である。
【
図7】本実施の形態に係る戸当り装置の回転体の構成を示す斜視図である。
【
図8】本実施の形態に係る戸当り装置のホルダの構成を示す斜視図である。
【
図9】本実施の形態に係る戸当り装置の待機状態(A)、および、フラップを引き寄せた状態(B)を示す断面図である。
【
図10】本実施の形態に係る戸当り装置の係止爪がフラップの上に乗る状態(A)、および、係止爪とフラップとが係止された係止位置を示す断面図である。
【
図11】本実施の形態に係る戸当り装置の回転体が時計回りに回転する回転位置、および、係止爪の解除位置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号が括弧を付して記載されている。
【0016】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態にかかる、開閉可能な扉(1)に設けられる戸当り装置(3)は、扉(1)に取り付けられるケース(310)と、ケース(310)に設けられ、床面(4)の受金具(5)に対して回動自在に取り付けられたフラップ(52)を引き寄せるマグネット(350)と、マグネット(350)によって引き寄せられたフラップ(52)の係止孔(52h)と係止される複数の係止爪(321b)が外周面に形成された回転体(320)と、ケース(310)に対して上下方向へ移動自在に保持され、回転体(320)を一方向にのみ回転可能に許容するホルダ(330)と、を備える。
【0017】
〔2〕上記戸当り装置(3)において、回転体(320)は、係止爪(321b)とは別にホルダ(330)の腕部分(333b)と係合することにより一方向にのみ回転を許容する係合体部(322)を有する。
【0018】
〔3〕上記戸当り装置(3)において、回転体(320)およびホルダ(330)は、回転体(320)を一方向にのみ回転可能に許容するラチェット機構(340)を形成する。
【0019】
〔4〕上記戸当り装置(3)において、回転体(320)の係止爪(321b)は、その爪先端部が曲面を為している。
【0020】
〔5〕上記戸当り装置(3)において、ホルダ(330)は、ケース(310)に対して当該ホルダ(330)の自重によって最下方位置に配置され、フラップ(52)と回転体(320)の係止爪(321b)とが当接し、フラップ(52)により回転体(320)が回転不能な方向へ係止爪(321b)が押された際にケース(310)の内部で回転体(320)と共に上方向へ移動する。
【0021】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の代表的な実施の形態にかかる戸当り装置の構成について
図1乃至
図11を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
【0022】
なお、説明の都合上、
図1において戸体(扉)1の開閉方向を開方向(Open)、閉方向(Close)とする。また、
図2および
図4において、戸当り装置3の構成部材の位置関係について、上述した扉1の閉方向(Close)と一致する矢印a方向を奥側、扉1の開方向(Open)と一致する矢印b方向を手前側とし、矢印ab方向を奥行方向とする。また、戸当り装置3を正面に見たときの矢印c方向を左側または左方、矢印d方向を右側または右方とし、矢印cd方向を水平方向と言う場合がある。さらに、矢印e方向を上側または上方、矢印f方向を下側または下方とし、矢印ef方向を上下方向と言う場合がある。なお、これらの方向は、説明の便宜上用いられるのであって、実際の使用状況に対応した方向ではない。
【0023】
(2-1)本実施の形態
図1および
図2に示すように、本実施の形態に係る戸当り装置が設けられた扉装置10の構成について説明する。この場合、
図1において扉装置10の紙面手前側を部屋の外側空間とし、扉装置10の紙面奥側を部屋の内側空間とする。
【0024】
扉装置10は、枠体2と、当該枠体2に一端側が軸支された戸体(以下これを「扉」とも言う。)1と、枠体2に対して開閉可能な扉1の先端側の下端外側に取り付けられた戸当り装置3と、床面4に設置され戸当り装置3に設けられた後述するマグネット350(
図4等)の吸引力により戸当り装置3と当接する受金具5とを有している。
【0025】
<受金具の構成>
図3に示すように、受金具5は、円盤形状のカバー部51と、取付部54と、を有している。取付部54は、一端が軸支された略矩形状の薄板状部材からなるフラップ52と、当該フラップ52を回動自在に支持する回動軸53とを有している。
【0026】
取付部54は、2つの貫通孔54a、54aおよび1つの貫通孔54bを介して床面4に対してネジにより固定される。取付部54のほぼ中央には回動軸53を介してフラップ52が回動自在に支持されている。具体的には、フラップ52は、取付部54に面接触して倒れた横倒状態と、回動軸53を中心に起き上がった起立状態との間で自在に回動する。
【0027】
カバー部51は、取付部54を覆うように取り付けられる。すなわちカバー部51は、取付部54の貫通孔54a、54aおよび1つの貫通孔54bを介してネジにより床面4に固定する部分を隠蔽し、フラップ52および回動軸53だけを露出する化粧板である。また、このカバー部51には、フラップ52および回動軸53を露出するため、フラップ52および回動軸53の大きさに対応したサイズの貫通穴51hが形成されている。
【0028】
さらに、フラップ52には、略矩形状に貫通した係止孔52hが形成されている。
図2に示すように、扉1の開動作により戸当り装置3が移動して受金具5に近接していくが、扉1の戸当り装置3と受金具5とが対向していない状態では、フラップ52は、受金具5の取付部54に面接触して倒れた横倒状態であり、カバー部51とフラップ52とが面一になっている。
【0029】
一方、扉1の開動作により戸当り装置3が受金具5に更に近接し、扉1の戸当り装置3と受金具5とが対向するように配置されたとき、フラップ52の先端が戸当り装置3の内部に設けられたマグネット350(
図4)の吸引力によって上方に引き寄せられ、戸当り装置3のケース310の手前側(矢印b方向)の先端部分318a(
図4)に当接する。
【0030】
<戸当り装置の構成>
図4乃至
図8を用いて、戸当り装置3の構成について以下説明する。戸当り装置3は、主に、カバー300、ケース310、回転体320とホルダ330とが組み合わされたラチェット機構340、および、マグネット350等を有している。
【0031】
(カバー)
カバー300は、ケース310、ラチェット機構340およびマグネット350等の主要部品を全体的に覆う部材であり、角部に面取りが施された略三角筒形状を有している。カバー300は、金属または樹脂からなり、その底部が床面4および受金具5と接触することのないように離れている。
【0032】
(ケース)
図4乃至
図6に示すように、ケース310は、扉1の下方外側端部に取り付けられる部材であり、内部に後述するマグネット350を収容するマグネット収容空間311、ラチェット機構340(回転体320およびホルダ330)を収容するラチェット機構収容空間312を有している。マグネット収容空間311およびラチェット機構収容空間312は、ケース310の水平方向(矢印cd方向)において並列に設けられている。
【0033】
また、ケース310は、左方(矢印c方向)および右方(矢印d方向)にそれぞれ突出したフランジ部313およびフランジ部314を有し、そのフランジ部313、314には上下方向(矢印ef方向)に縦長状かつ長円形状の貫通孔313h、314hが形成されている。ケース310のフランジ部313、314は、扉1に押し当てられた状態で当該フランジ部313、314の貫通孔313h、314hを介してネジ等により当該扉1に取り付けられる。
【0034】
図5に示すように、ケース310の底壁部318の底面は、奥行方向(矢印ab方向)に沿って切った断面において、手前側(矢印b方向)から奥側(矢印a方向)に向かって僅かに上側(矢印e方向)へ傾斜している。
【0035】
すなわちケース310は、手前側(矢印b方向)から奥側(矢印a方向)に向かって僅かに上側(矢印e方向)へ傾斜した底壁部318を有し、その底壁部318に対してマグネット350およびマグネットホルダ360が載置されている。マグネットホルダ360は、ヨークとして機能し、マグネット350の磁束の漏れをコントロールする。
【0036】
また、ケース310は、マグネット収容空間311を形成する略L字状からなるマグネットホルダ係止部319を有し、マグネットホルダ係止部319によりマグネットホルダ360の奥行側(矢印ab方向)への移動を規制している。
【0037】
ケース310における底壁部318の手前側(矢印b方向)の先端部分318aは、マグネット350によって引き寄せられた受金具5のフラップ52が最初に当接される部分である。扉1が開方向(Open)へ移動すると、フラップ52の先端が底壁部318と接触したままの状態で先端部分318aから奥側(矢印a)方向へ移動していく。
【0038】
ここでケース310の底壁部318には、マグネットホルダ360と対応する部分に貫通孔318hが形成されている。これによりケース310では、マグネットホルダ360を下方の貫通孔318hから挿入して組み立てることができる。
【0039】
なお、ケース310の底壁部318には、奥側(矢印a方向)の端部に下側(矢印f方向)に突出した凸部318zが設けられている。凸部318zは、扉1が開いた場合に、戸当り装置3および受金具5によって所定の位置で扉1の動きが規制されることなく移動し続けた場合、マグネット350の作用により底壁部318に当接されたままのフラップ52の先端部と当接し、扉1の移動を停止させるためのストッパとして機能する。これにより扉1の開動作を停止することができる。
【0040】
さらにケース310は、
図6(A)および(B)に示すように、上方(矢印e方向)の開口310pから下方(矢印f方向)の開口310qに向かって連通しており、手前内壁部316q、および、奥内壁部316rを有している。
【0041】
手前内壁部316qは、ケース310の手前側(矢印b方向)の端部に設けられ、上下方向(矢印ef方向)に沿って直線状に延び、かつ途中から下方(矢印f方向)に向かって奥内壁部316rに近づくように傾斜した部分である。
【0042】
手前内壁部316qは、その内側において、下方(矢印f方向)に向かって垂直に延びる平坦な平坦面316qa、および、その平坦面316qaから下方(矢印f方向)に向かって奥内壁部316rに近づくように傾斜して延びる平坦な傾斜面316qbを有している。
【0043】
奥内壁部316rは、手前内壁部316qと対向するように奥側(矢印a方向)の端部に設けられ、上下方向(矢印ef方向)に沿って直線状に延びる部分であり、内側に平坦な平坦面316raを有している。
【0044】
ケース310において、奥内壁部316rは上下方向(矢印ef方向)に沿って直線状に延びているが、手前内壁部316qが途中から下方(矢印f方向)に向かって奥内壁部316rに近づくように傾斜した傾斜面316qbを有しているため、下方に向かって空間が狭くなっている。
【0045】
したがって、ケース310は、手前内壁部316qおよび奥内壁部316rによって形成される空間に対して、ラチェット機構340の回転体320およびホルダ330を上方の開口310pから収容した場合、ホルダ330と手前内壁部316qおよび奥内壁部316rとが接触し、ラチェット機構340を保持することができる。
【0046】
このようにケース310は、手前内壁部316qおよび奥内壁部316rによってホルダ330を接触しただけの状態で保持することになるため、ラチェット機構340が開口310qから下方(矢印f方向)へ抜け落ちることがなく、かつ、ラチェット機構340を上下方向(矢印ef方向)へ自在に移動し得る状態で保持することができる。
【0047】
(マグネット)
図4および
図5に示すように、マグネット350は、永久磁石からなり受金具5のフラップ52を吸引力(磁力)によって引き寄せることができる。マグネット350は、略直方体形状を有し、ケース310のマグネット収容空間311に対して後方(矢印a方向)から挿入される。
【0048】
このときマグネット350は、断面略U字状からなるマグネットホルダ360に覆われた状態でマグネット350およびマグネットホルダ360と共にケース310のマグネット収容空間311に収容されて保持される。
【0049】
図5に示すように、ケース310のマグネット収容空間311に収容されたマグネット350およびマグネットホルダ360は、当該ケース310の底壁部318に沿って手前側(矢印b方向)から奥側(矢印a方向)に向かって僅かに上側(矢印e方向)へ傾斜した状態で保持される。
【0050】
ここで、マグネットホルダ360は、鉄製の磁性体であり、マグネット350と組み合わせることにより当該マグネット350から出る磁束を通り易くして磁気回路を形成し、フラップ52を引き寄せる吸着力を高めるものである。因みに、マグネット350だけで十分な吸着力があれば、必ずしもマグネットホルダ360を用いる必要はない。
【0051】
(ラチェット機構)
図4(A)および(B)に示すように、ラチェット機構340は、回転体320とホルダ330とが組み合わされたアッセンブリ構造である。
【0052】
ラチェット機構340は、ホルダ330によって回転体320を一方向にのみ回転可能に支持している。すなわち、ラチェット機構340の回転体320は、ホルダ330を介してケース310に対し一方向にのみ回動することが可能である。
【0053】
(回転体)
図7に示すように、ラチェット機構340の回転体320は、薄板状の金属、または樹脂等からなり、平面視略星形形状の本体部321と、本体部321と重なるように一体に形成された平面視略星形状の係合体部322とを有している。
【0054】
回転体320の本体部321においては、中央の平面視略五角形状の基部321aと、その基部321aの外周面の角部から外側へ向かって放射状に突出した5本の係止爪321bとが一体に形成されている。なお、5本の係止爪321bは、互いに等間隔に形成されており、かつ、係止爪321bの爪先端部は丸みを帯びた曲面を為すようにR面取り加工されている。
【0055】
回転体320では、係合体部322を目視可能な方向から見た場合(
図7(A))、5本の係止爪321bが反時計回り方向へ僅かに傾斜するように延びている。つまり、5本の係止爪321bは、放射状に直線状に延びるのではなく、反時計回り方向へ傾斜している。
【0056】
本体部321の基部321aには、基部321aの外径よりも小さい係合体部322が重ねられた状態で一体に設けられている。本体部321において、基部321aおよび係合体部322の中心は一致しており、基部321aおよび係合体部322の双方の中心を貫通する貫通孔323が設けられている。回転体320の貫通孔323には、後述するホルダ330の回動軸332(
図8(A)および(B))が挿入される。
【0057】
係合体部322は、回転体320における5本の係止爪321bと同様に貫通孔323を中心として外側へ向かって放射状に突出した5本の係合爪324を有している。5本の係合爪324は、互いに等間隔に形成されている。
【0058】
係合爪324は、ホルダ330(
図8(A)および(B))の腕部分333bにおける鉤体333bbの端面333bcと当接することにより係合する平坦な係合面324aと、その係合面324aの外側の先端部分からなだらかな曲線を描き、隣接する係合爪324の係合面324aの付け根部分と繋がる弧状の外周面324bとを有している。
【0059】
係合爪324の外周面324bは、係合面324aの先端部分から係合面324aの付け根部分に向かって次第に貫通孔323へ近づくようになだらかに傾斜している。係合爪324の外周面324bは、
図9において回転体320が図中時計回り方向に回転する際、ホルダ330の鉤体333bbが摺接する部分である。
【0060】
(ホルダ)
図8に示すように、ラチェット機構340のホルダ330は、薄板状の金属または樹脂等の弾性体からなり、第1壁部333、第2壁部334、および、第1壁部333と第2壁部334とを繋ぐ連結部335を有している。
【0061】
ホルダ330の第1壁部333は、上下方向(矢印ef方向)に沿って延びる角柱状の角柱部分333a、および、その角柱部分333aの上方(矢印e方向)の端部から第2壁部334へ向かうと共に僅かに下方(矢印f方向)に傾斜して延びるV字状の腕部分333bを有している。
【0062】
第1壁部333の角柱部分333aは、上下方向(矢印ef方向)に沿って延びる平坦な外側面333agを有している。外側面333agは、ケース310の奥内壁部316rの平坦面316raと面接触する部分である。
【0063】
第1壁部333の腕部分333bは、角柱部分333aの上方(矢印e方向)の端部と一体に結合されており、第2壁部334に向かって延びている。腕部分333bは、第2壁部334には到達することのない長さであり、腕基体333baおよび鉤体333bbによって形成されている。
【0064】
腕部分333bは、腕基体333baの先端に対して鉤体333bbの他端が結合されたことにより略V字状に形成された部分である。鉤体333bbは、
図9(A)および(B)に示すように、回転体320の係合体部322の外周面324bの上を摺動する際に腕基体333baに近づくように撓むことが可能である。鉤体333bbは、その先端に回転体320の係合体部322の係合面324aと当接される端面333bcを有している。
【0065】
ホルダ330の第2壁部334は、外側に形成された平坦な平坦面334a、および、平坦面334aの下方端部から下方(矢印f方向)へ向かって内側の回動軸332へ近づくように傾斜した平坦な傾斜面334bを有している。
【0066】
第2壁部334の平坦面334aは、ケース310の手前内壁部316qの平坦面316qaと面接触する部分である。第2壁部334の傾斜面334bは、ケース310の手前内壁部316qの傾斜面316qbと対応した傾斜角度を有し、その傾斜面316qbと面接触する部分である。
【0067】
連結部335は、第1壁部333と第2壁部334との間に配置され、両者を結合する板状部材であり、第1壁部333および第2壁部334と一体に形成されている。連結部335の中央には、回動軸332が形成されており、その回動軸332が回転体320の貫通孔323に挿通される。したがって、ホルダ330は、回動軸323を介して回転体320を回転可能に支持することが可能である。
【0068】
この場合、
図9(A)および(B)に示すように、回転体320は連結部335の回動軸332に支持された状態において、ホルダ330の第1壁部333および第2壁部334の間に配置され、腕部分333bの鉤体333bbの端面333bcが回転体320の係合体部322における係合爪324の係合面324aと当接して係合される。
【0069】
したがって回転体320は、ホルダ330の腕部分333bによって
図9中反時計回り方向への回転が規制され、
図9中時計回り方向に対してのみ回転可能な状態で回動軸332に支持されている。すなわち、ホルダ330の腕部分333bの鉤体333bbは、回転体320を反時計回り方向への回転を停止するストッパとして機能する。
【0070】
また、
図6に示すように、回転体320を支持しているホルダ330は、ケース310の上方(矢印e方向)の開口310pから挿入されると、ケース310における奥側内壁部316rの平坦面316raに対してホルダ330の第1壁部333における外側面333agが接触する。
【0071】
このとき同時に、ケース310における手前内壁部316qの平坦面316qaおよび傾斜面316qbに対してホルダ330の第2壁部334における平坦面334aおよび傾斜面334bが接触する。
【0072】
したがって、ホルダ330は、ケース310の奥側内壁部316rおよび手前側内壁部316qによって形成された空間において、下方(矢印f方向)の開口310qから抜け落ちることなく、上方(矢印e方向)へ移動可能な状態で保持される。
【0073】
<戸当り装置の動作>
次に、このような構成の戸当り装置3により開動作の扉1を受金具5の位置で停止させるための係止動作、その係止動作により受金具5の位置で停止した扉1を閉動作に伴って係止解除する係止解除動作について説明する。
【0074】
(戸当り装置による係止動作)
次に、
図9(A)に示すように、扉1の戸当り装置3と受金具5とが係止されていない待機状態(または「待機位置」とも言う。)から、
図11(B)に示すように係止状態(または「係止位置」とも言う。)へ遷移する係止動作について説明する。
【0075】
図9(A)に示すように、扉1の矢印bで示す開方向(Open)への移動により、戸当り装置3と受金具5とが次第に近づいていく。
図9(A)の段階では、戸当り装置3と受金具5とが互いに対向配置されておらず、受金具5のフラップ52が立ち上がっていない待機状態(待機位置)にある。
【0076】
その後、
図9(B)に示すように、扉1の矢印bで示す開方向(Open)への更なる移動によって、戸当り装置3と受金具5とが互いに対向配置された状態になると、戸当り装置3のマグネット350の作用により受金具5のフラップ52が引き寄せられて立ち上がる。これにより、ケース310における底壁部318の先端部分318aとフラップ52の先端とが最初に当接される。
【0077】
そのままの状態で扉1が矢印bで示す開方向(Open)へ更に移動すると、
図9(B)に示すように、フラップ52の先端がラチェット機構340における回転体320の係止爪321bと接触し、その係止爪321bを矢印aで示す閉方向(Close)へ押下する。
【0078】
回転体320は、係止爪321bがフラップ52の先端によって矢印aで示す閉方向(Close)へ押下されると、全体的に反時計回り方向に回転しようとするが、回転体320の係合爪324の係合面324aにホルダ330の腕部分333bの鉤体333bbが係合されているため、回転体320は反時計回り方向へ回転することはできない。
【0079】
図10(A)に示すように、扉1の矢印aで示す開方向(Open)への移動が更に続くと、フラップ52の先端によって押下された回転体320が回転できないため、回転体320の係止爪321bがフラップ52の上に乗り、回転体320と共にホルダ330が上方(矢印e方向)へ押し上げられる。
【0080】
回転体320の係止爪321bがフラップ52の上に乗る際、係止爪321bの爪先端部が丸みを帯びた曲面を為しているので、係止爪321bの爪先端部がフラップ52の先端と引っ掛かることがなく、回転体320と共にホルダ330が上方(矢印e方向)へ押し上げられる。
【0081】
図10(B)に示すように、扉1は矢印bで示す開方向(Open)へ移動し続けているため、受金具5のフラップ52の上に回転体320の係止爪321bが乗って摺動した後、その係止爪321bがフラップ52の係止孔52hに入り込むことにより係止される。このとき上方に押し上げられていたホルダ330は、ケース310の中で下方(矢印f方向)に向かって自重により下がって元の最下方位置に停止する。これを係止状態(係止位置)と呼ぶ。
【0082】
すなわち、ホルダ330は、待機位置(
図9(A))において、ケース310に対して当該ホルダ330の自重によって最下方位置に配置されているが、フラップ52の先端により回転体320の係止爪321bが矢印aで示す閉方向(Close)へ押下されるとケース310の内部で回転体320と共に上方(矢印e方向)へ押し上げられる。
【0083】
つまり、ラチェット機構340がケース310の内部で上方(矢印e方向)へ押し上げられる。そして、フラップ52の先端により回転体320の係止爪321bが押下されなくなると、ホルダ330の自重によって最下方位置に再度戻ることになる。
【0084】
戸当り装置3では、係止状態(係止位置)において(
図10(B))、回転体320の係止爪321bとフラップ52の係止孔52hとが係止しているので、当該戸当り装置3と受金具5とが対向した状態を維持することができる。
【0085】
このとき、回転体320は、時計回り方向に回転可能であるが、係止爪321bがフラップ52の係止孔52hと係止しているため、扉1が閉方向(Close)へ移動することがない限り、時計回り方向へ回転した場合であっても、係止爪321bがフラップ52の係止孔52hから外れることはない。
【0086】
(戸当り装置による係止解除動作)
扉1の戸当り装置3が受金具5によって係止された係止状態(
図10(B))から、係止状態が解除された係止解除状態(
図11(B))へ遷移する係止解除動作について次に説明する。
【0087】
図11(A)に示すように、扉1の戸当り装置3と受金具5とが係止された係止状態(係止位置)において、扉1の矢印a方向に示す閉方向(Close)への移動が開始される。
【0088】
このとき、回転体320の係止爪321bとフラップ52の係止孔52hとが係止した係止状態にあるため、扉1の矢印a方向に示す閉方向(Close)への移動と共に回転体320は時計回り方向へ回転し始める。これにより、回転体320の回転と共に係止爪321bはフラップ52の係止孔52hから次第に外れることになる。
【0089】
回転体320が時計回り方向へ回転するとき、係合爪324の外周面324bにホルダ330の腕部分333bの鉤体333bbが接触しているため、回転体320の回転と共に鉤体333bbが腕基体333baに向かって次第に近づくように撓むことになる。そして、鉤体333bbが最終的に外周面324bを乗り越えると、鉤体333bの端面333bcが隣の係合爪324の係合面324aに当接して係合される。
【0090】
このとき、
図11(B)に示すように、回転体320の係止爪321bはフラップ52の係止孔52hから外れる。これを係止解除状態(係止解除位置)と呼び、
図9(B)と同様となる。その後も引き続き扉1が矢印a方向に示す閉方向(Close)へ移動し、戸当り装置3と受金具5とがやがて対向しなくなると、待機状態(待機位置)に戻る(
図9(A))。
【0091】
<効果>
本実施の形態における戸当り装置3では、扉1の矢印b方向に示す開方向(Open)への移動に基づいて受金具5とマグネット350とが対向配置されると、マグネット350がフラップ52を引き寄せ、フラップ52の先端で反時計回り方向には回転不能な回転体320の係止爪321bを閉方向(Close)へ押下する(
図9(B))。
【0092】
このとき戸当り装置3は、ラチェット機構340(回転体320およびホルダ330)をケース310の内部で上方(矢印e方向)へ移動させる(
図11(A))。
【0093】
そして戸当り装置3では、扉1の矢印b方向に示す開方向(Open)への更なる移動により、回転体320の係止爪321bの下方にフラップ52の係止孔52hが位置すると同時に、係止爪321bがフラップ52の係止孔52hに入り込んで係止される。これにより戸当り装置3は、係止状態(係止位置)に遷移し、戸当り装置3と受金具5とが対向配置された状態に扉1を停止することができる。
【0094】
このように戸当り装置3は、扉1の矢印b方向に示す開方向(Open)への移動だけで、戸当り装置3と受金具5との係止状態(係止位置)を容易に形成することができる。また、戸当り装置3では、扉1が矢印b方向に示す開方向(Open)へ非常に速く移動された場合に、勢い良くホルダ330および回転体320が上方に持ち上げられた場合であっても、フラップ52の先端が必ずケース310の底壁部318の凸部318zに当接して停止するので、回転体320の係止爪321bとフラップ52の係止孔52hとが必ず係止し、係止状態を形成することができる。
【0095】
また、戸当り装置3は、係止状態(係止位置)において、扉1を矢印b方向に示す開方向(Open)へ移動させる際、フラップ52の係止孔52hと回転体320の係止爪321bとが係止されているために、当該回転体320が反時計回り方向ではなく時計回り方向へ回転する。
【0096】
このように回転体320が時計回り方向に回転するとき、ホルダ330の腕部分333bの鉤体333bbが撓んで係合体部322の係合爪324の外周面324bを乗り越える程度の力が扉1に与えられた場合に限り、回転体320の係止爪321bがフラップ52の係止孔52hから外れる。
【0097】
つまり、ある一定以上の力で扉1が矢印b方向に示す開方向(Open)へ移動した場合に限り、フラップ52と係止爪321bとの係止状態が解除されることになるので、意図せず不用意に扉1が閉まってしまう事態を回避することができる。
【0098】
さらに戸当り装置3は、ケース310に対してラチェット機構340(回転体320およびホルダ330)を取り付ける際、ネジや接着する必要がなく、嵌め込み等の簡単な作業だけで形成することができるので、少ない部品点数で全体構成を簡素化し得、かくして小型かつ軽量に製造することができる。
【0099】
3.他の実施の形態
なお、上述した本実施の形態においては、ホルダ330の腕部分333bが角柱部分333aの上方(矢印e方向)の端部から第2壁部334へ向かって僅かに下方(矢印f方向)に傾斜して延びるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、上方から下方に延びる腕部分333bを設けるようにして係合体部322の係合爪324と腕部分333bとを係合するようにしてもよい。
【0100】
本発明に係る戸当り装置3は、本実施の形態に限定されるものではない。なお、その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の戸当り装置3を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0101】
1……戸体(扉)、2……枠体、3……戸当り装置、4……床面、5……受金具、10,500……扉装置、51……カバー部、51h……貫通穴、52……フラップ、52h……係合孔、53……回動軸、54……取付部、54a、54b……貫通孔、300……カバー、310……ケース、311……マグネット収容空間、312……ラチェット機構収容空間、313,314……フランジ部、313h,314h……貫通孔、316q……手前内壁部、316r……奥内壁部、318……底壁部、318a……先端部分、318h……貫通孔、318z……凸部、319……マグネットホルダ係止部、320……回転体、321…本体部、321a…基部、321b…係止爪、322…係合体部、324…係合爪、323…貫通孔、324a…係合面、324b…外周面、330……ホルダ、332…回動軸、333……第1壁部、333a……角柱部分、333b……腕部分、333ba……腕基体、333bb…鉤体、334…第2壁部、335…連結部、340……ラチェット機構、350……マグネット、360……マグネットカバー。