(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103217
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ベルトコンベア設備の異常検知システム及び異常検知方法
(51)【国際特許分類】
B65G 43/02 20060101AFI20240725BHJP
B65G 45/10 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B65G43/02 Z
B65G45/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007430
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕紀
【テーマコード(参考)】
3F027
【Fターム(参考)】
3F027AA02
3F027CA07
3F027DA32
3F027EA04
3F027FA01
(57)【要約】
【課題】ベルトコンベア設備に荷こぼれに起因する異常が発生することを未然に防止可能なベルトコンベア設備の異常検知システム及び異常検知方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るベルトコンベア設備の異常検知システムは、定常状態及び運転状態のベルトコンベア設備の画像を撮影する撮像装置と、撮像装置によって撮影された定常状態及び運転状態のベルトコンベア設備の画像を比較することによって、ベルトコンベア設備から搬送物が落下する荷こぼれが発生しているか否かを判定する制御装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定常状態及び運転状態のベルトコンベア設備の画像を撮影する撮像装置と、
前記撮像装置によって撮影された定常状態及び運転状態のベルトコンベア設備の画像を比較することによって、ベルトコンベア設備から搬送物が落下する荷こぼれが発生しているか否かを判定する制御装置と、
を備える、ベルトコンベア設備の異常検知システム。
【請求項2】
前記荷こぼれが発生していると前記制御装置が判定した場合、前記制御装置からの制御信号に従って前記荷こぼれの発生個所を清掃する清掃装置を備える、請求項1に記載のベルトコンベア設備の異常検知システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記撮像装置によって撮影された画像を用いてベルトコンベア設備から落下した搬送物の色を検出し、検出された色に基づいて前記搬送物の種別を特定し、特定された前記搬送物の種別に従って前記清掃装置の起動タイミングを制御する、請求項2に記載のベルトコンベア設備の異常検知システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記搬送物の種別に従ってベルトコンベア設備から落下した搬送物の堆積高さの閾値を設定し、前記堆積高さが前記閾値以上になるのに応じて前記清掃装置を起動する、請求項3に記載のベルトコンベア設備の異常検知システム。
【請求項5】
前記制御装置は、基準とする搬送物の嵩密度に対する処理対象の搬送物の嵩密度の比率に基づいて前記閾値を設定する、請求項4に記載のベルトコンベア設備の異常検知システム。
【請求項6】
定常状態及び運転状態のベルトコンベア設備の画像を撮影する撮像ステップと、
前記撮像ステップにおいて撮影された定常状態及び運転状態のベルトコンベア設備の画像を比較することによって、ベルトコンベア設備から搬送物が落下する荷こぼれが発生しているか否かを判定する判定ステップと、
を含む、ベルトコンベア設備の異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベア設備の異常検知システム及び異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、少なくとも1周分のコンベアベルトの加速度を測定し、測定した加速度のデータからコンベアベルトを支持する支持ローラの異常とその位置を求めることにより、ベルトコンベアの異常を検知する技術が記載されている。特許文献2には、製銑原料等の小塊物の下ベルト上への落下に基づくトラブルを検知し、ベルトコンベアを停止して設備のトラブル発生を防止する技術が記載されている。特許文献3には、ベルトの形状不良と、電動機、減速機、プーリー、ローラ、シュートのうちの少なくとも1つの異常との相関を把握し、ベルトコンベアの異常状態を判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-060556号公報
【特許文献2】実開昭57-165612号公報
【特許文献3】特開2020-169097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3に記載の技術はいずれも、ベルトコンベア設備に物理的な異常が発生したことを検出するものであり、ベルトコンベア設備に異常が発生することを未然に防止するためのものではない。このため、ベルトコンベア設備に異常が発生することを未然に防止可能な技術の提供が期待されていた。特にベルトコンベア設備から搬送物が落下する荷こぼれが発生した場合、ベルトコンベア運転において設備が正常であっても、将来的に落下した搬送物が堆積し、嵩を増し、設備に接触することによって設備が破損する可能性がある。このため、荷こぼれの発生を検知し、ベルトコンベア設備に異常が発生する前に自動で設備保全運転を実行する技術の提供が求められていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、ベルトコンベア設備に荷こぼれに起因する異常が発生することを未然に防止可能なベルトコンベア設備の異常検知システム及び異常検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るベルトコンベア設備の異常検知システムは、定常状態及び運転状態のベルトコンベア設備の画像を撮影する撮像装置と、前記撮像装置によって撮影された定常状態及び運転状態のベルトコンベア設備の画像を比較することによって、ベルトコンベア設備から搬送物が落下する荷こぼれが発生しているか否かを判定する制御装置と、を備える。
【0007】
前記荷こぼれが発生していると前記制御装置が判定した場合、前記制御装置からの制御信号に従って前記荷こぼれの発生個所を清掃する清掃装置を備えるとよい。
【0008】
前記制御装置は、前記撮像装置によって撮影された画像を用いてベルトコンベア設備から落下した搬送物の色を検出し、検出された色に基づいて前記搬送物の種別を特定し、特定された前記搬送物の種別に従って前記清掃装置の起動タイミングを制御するとよい。
【0009】
前記制御装置は、前記搬送物の種別に従ってベルトコンベア設備から落下した搬送物の堆積高さの閾値を設定し、前記堆積高さが前記閾値以上になるのに応じて前記清掃装置を起動するとよい。
【0010】
前記制御装置は、基準とする搬送物の嵩密度に対する処理対象の搬送物の嵩密度の比率に基づいて前記閾値を設定するとよい。
【0011】
本発明に係るベルトコンベア設備の異常検知方法は、定常状態及び運転状態のベルトコンベア設備の画像を撮影する撮像ステップと、前記撮像ステップにおいて撮影された定常状態及び運転状態のベルトコンベア設備の画像を比較することによって、ベルトコンベア設備から搬送物が落下する荷こぼれが発生しているか否かを判定する判定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るベルトコンベア設備の異常検知システム及び異常検知方法によれば、ベルトコンベア設備から搬送物が落下する荷こぼれが発生しているか否かを判定することができるので、ベルトコンベア設備に荷こぼれに起因する異常が発生することを未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態であるベルトコンベア設備の異常検知システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態であるベルトコンベア設備の異常検知システムの構成及びその動作について説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態であるベルトコンベア設備の異常検知システムの構成を示す模式図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態であるベルトコンベア設備の異常検知システムは、搬送物Mを搬送するベルトコンベア設備1に荷こぼれに起因する異常が発生することを未然に防止するシステムであり、撮像装置10a,10b、清掃装置11、及び制御装置12を主な構成要素として備えている。本ベルトコンベア設備において搬送する搬送物Mとしては、石炭、鉄鉱石、石灰石等の鉄鋼業において用いられる粉砕された材料を例示できる。
【0016】
撮像装置10a,10bは、CCDカメラ等の公知の撮像装置によって構成され、ベルトコンベア設備1の近傍位置に設置されている。本実施形態では、撮像装置10aは、搬送物Mを搬送していない定常状態のベルトコンベア設備1aの画像を撮影し、撮影した画像のデータを制御装置12に入力する。また、撮像装置10bは、搬送物Mを搬送している運転状態のベルトコンベア設備1bの画像を撮影し、撮影した画像のデータを制御装置12に入力する。なお、撮像装置10aと撮像装置10bとを1台の撮像装置により構成してもよく、複数台の撮像装置により構成してもよい。また、1台の撮像装置により広範囲の荷こぼれを検知する場合、荷こぼれまでの距離や荷こぼれの高さがわかるように補正のためのマーカーを予め設置しておいてもよい。1台の撮像装置により荷こぼれの高さも検知するためには、地面に対して角度を持たせて撮像装置を設置するとよく、設置角度は対地角度で0~60°の範囲が好ましい。
【0017】
清掃装置11は、制御装置12から送信された制御信号に従ってベルトコンベア設備1から落下した搬送物Mを清掃除去する。具体的には、清掃装置11は、制御装置12から送信された起動信号を受信するのに応じて起動し、制御装置12から送信された荷こぼれの発生位置の座標情報に対応する位置に移動する。そして、清掃装置11は、移動した位置に落下している搬送物Mを清掃除去する。
【0018】
制御装置12は、コンピュータ等の情報処理装置によって構成されている。制御装置12は、撮像装置10a,10bから入力された定常状態及び運転状態のベルトコンベア設備1の画像を比較することにより、ベルトコンベア設備1から搬送物Mが落下する荷こぼれの発生及びその発生位置を検出する。また、制御装置12は、荷こぼれの発生を検出した場合、ベルトコンベア設備1から落下した搬送物Mの高さが所定の閾高さ以上になるのに応じて、清掃装置11に対して起動信号及び荷こぼれの発生位置の座標情報を送信することにより、落下した搬送物Mを清掃除去するように清掃装置11を制御する。
【0019】
また、本実施形態では、制御装置12は、ベルトコンベア設備1の画像を用いて落下した搬送物Mの色を検出し、検出された色に基づいて落下した搬送物Mの種別を特定する。例えば搬送物Mの色が白色である場合、制御装置12は、予め記憶されている搬送物Mの色と種別の対応関係を示すテーブルデータを参照して、搬送物Mは石灰石であると判定する。そして、制御装置12は、特定された搬送物Mの種別に従って清掃装置11に起動信号を送信するタイミングを制御する。具体的には、制御装置12は、搬送物Mの種別に従ってベルトコンベア設備1から落下した搬送物Mの閾高さHを設定し、堆積高さが閾高さH以上になるのに応じて清掃装置11に起動信号を送信する。
【0020】
この際、制御装置12は、以下の表1に示すように、基準とする搬送物Mの嵩密度に対する処理対象の搬送物Mの嵩密度の比率に基づいて処理対象の搬送物Mの閾高さHを設定する。表1に示す例では、基準とする搬送物Mを石炭とした場合、制御装置12は、粉鉱石搬送時は閾高さHを0.300(=(0.60/2.00)×1.00)mに設定し、石灰石搬送時は閾高さHを0.375(=(0.60/1.60)/1.00)mに設定する。このような処理によれば、荷こぼれの堆積増加速度を考慮して適切なタイミングで落下した搬送物Mを清掃除去することができる。
【0021】
【0022】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態であるベルトコンベア設備の異常検知システムでは、撮像装置10a,10bが、定常状態及び運転状態のベルトコンベア設備1の画像を撮影し、制御装置12が、撮像装置10a,10bによって撮影された定常状態及び運転状態のベルトコンベア設備1の画像を比較することによって、ベルトコンベア設備1から搬送物Mが落下する荷こぼれが発生しているか否かを判定するので、ベルトコンベア設備1に荷こぼれに起因する異常が発生することを未然に防止できる。
【0023】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明が限定されることはない。例えば、荷こぼれを検知した際、搬送物Mの清掃除去作業に加えて、ベルトコンベア上の搬送物Mの偏りに関する情報を上流工程にフィードフォワードし、上流工程でベルトコンベアに搬送物Mを載せる部分を調整して荷こぼれの量を減少させるようにしてもよい。このように、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
1,1a,1b ベルトコンベア設備
10a,10b 撮像装置
11 清掃装置
12 制御装置
M 搬送物
H 閾高さ