(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103219
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】質量分析画像の処理方法、画像の処理方法および質量分析装置
(51)【国際特許分類】
G06T 5/70 20240101AFI20240725BHJP
【FI】
G06T5/00 705
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007433
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100172362
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057AA20
5B057CA02
5B057CA20
5B057CD05
(57)【要約】
【課題】解像度が低い質量分析画像と、解像度が高い光学画像とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成する際に、解像度を向上させつつ、ノイズ量を適切に調整することが可能な質量分析画像の処理方法を提供する。
【解決手段】この質量分析画像10の処理方法は、被写体90の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像10を取得するステップと、被写体90を撮影することにより生成された、質量分析画像10よりも解像度が高い光学画像11を取得するステップと、解像度が高い光学画像11の画素値と、解像度が低い質量分析画像10の画素値とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像12を生成するステップとを備え、高解像度質量分析画像12を生成するステップにおいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像を取得するステップと、
被写体を撮影することにより生成された、前記質量分析画像よりも解像度が高い光学画像を取得するステップと、
解像度が高い前記光学画像の画素値と、解像度が低い前記質量分析画像の画素値とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成するステップとを備え、
前記高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理を行う、質量分析画像の処理方法。
【請求項2】
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理において、ユーザによって予め設定され、前記質量分析画像の画素値の変動量の調整に用いる係数に基づいて、前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する、請求項1に記載の質量分析画像の処理方法。
【請求項3】
ユーザの入力に基づいて、前記係数の入力を受け付けるステップをさらに備え、
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理において、ユーザによって入力された前記係数に基づいて、前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する、請求項2に記載の質量分析画像の処理方法。
【請求項4】
ユーザの入力に基づいて、既に入力された前記係数を変更するステップをさらに備え、
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理において、変更された前記係数に基づいて、前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する、請求項3に記載の質量分析画像の処理方法。
【請求項5】
前記高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、前記高解像度質量分析画像の画素値である第1画素値と、前記質量分析画像の画素値である第2画素値との差を小さくする処理を繰り返し行い、
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理は、前記第1画素値と前記第2画素値との差を小さくする際の、前記第2画素値の変動量を調整することにより行われる、請求項4に記載の質量分析画像の処理方法。
【請求項6】
前記係数は、値が小さくなると、前記第2画素値の変動量が大きくなる第1係数、または、値が大きくなるほど、前記第2画素値の変動量が大きくなる第2係数を含み、
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理は、前記第1係数の値を調整するか、または、前記第2係数の値を調整するかによって行われる、請求項5に記載の質量分析画像の処理方法。
【請求項7】
前記高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、前記光学画像と前記質量分析画像と前記高解像度質量分析画像とに基づいて中間画像を生成し、生成した前記中間画像と、前記第1係数とに基づいて、前記高解像度質量分析画像を生成し、
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理は、前記第1係数を用いて行われる、請求項6に記載の質量分析画像の処理方法。
【請求項8】
前記高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、前記光学画像に基づいて、中間画像を生成し、生成した前記中間画像と、前記第2係数とに基づいて、前記高解像度質量分析画像を生成し、
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理は、前記第2係数を用いて行われる、請求項6に記載の質量分析画像の処理方法。
【請求項9】
前記高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、生成した前記中間画像に対して、複数の前記係数のマトリクスである係数マトリクスを乗算することにより前記高解像度質量分析画像を生成するステップと、前記高解像度質量分析画像の画素値と、前記質量分析画像の画素値との差が小さくなるように、前記係数マトリクスを更新するステップと、を繰り返す、請求項8に記載の質量分析画像の処理方法。
【請求項10】
第1画像を取得するステップと、
前記第1画像よりも解像度が高い第2画像を取得するステップと、
解像度が高い前記第2画像の画素値と、解像度が低い前記第1画像の画素値とに基づいて、解像度が高い第3画像を生成するステップとを備え、
前記第3画像を生成するステップにおいて、前記第2画像の画素値の変動量を調整する処理を行う、画像の処理方法。
【請求項11】
被写体の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像を取得する質量分析画像取得部と、
被写体を撮影することにより生成された、前記質量分析画像よりも解像度が高い光学画像を取得する光学画像取得と、
解像度が高い前記光学画像の画素値と、解像度が低い前記質量分析画像の画素値とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成する画像処理部と、を備え、
前記画像処理部は、前記高解像度質量分析画像を生成する際に、前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理を行うように構成されている、質量分析装置。
【請求項12】
被写体の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像を取得するステップと、
被写体を撮影することにより生成された、前記質量分析画像よりも解像度が高い光学画像を取得するステップと、
前記光学画像に基づいて、中間画像を生成するステップと、
解像度が高い前記光学画像と、前記中間画像と、解像度が低い前記質量分析画像とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成するステップとを備え、
前記高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、前記中間画像と、複数の係数のマトリクスである係数マトリクスとに基づいて、前記高解像度質量分析画像を生成するステップと、前記高解像度質量分析画像の画素値と、前記質量分析画像の画素値との差が小さくなるように、前記係数マトリクスを更新するステップと、を繰り返すことによって前記係数マトリクスを最適化し、最適化した前記係数マトリクスと前記中間画像とに基づいて、前記高解像度質量分析画像を生成する、質量分析画像の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析画像の処理方法、画像の処理方法および質量分析装置に関し、特に、解像度を向上させた質量分析画像を生成する質量分析画像の処理方法、画像の処理方法および質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、解像度を向上させた質量分析画像を生成する質量分析画像の処理方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示されている分子イメージングシステムは、顕微鏡装置と、イメージング質量分析システムと、顕微鏡特徴抽出器と、イメージング質量分析計特徴抽出器と、モデリングコンポーネントと、を備える。上記特許文献1に開示されているモデリングコンポーネントは、顕微鏡特徴抽出器によって抽出された色度のパラメータと、イメージング質量分析計抽出器によって抽出されたスペクトルピークのパラメータとに基づいて、イメージング質量分析システムによって取得された画像の解像度を向上させるように構成されている。すなわち、上記特許文献1に開示されている構成は、解像度の高い顕微鏡画像と、解像度の低い質量分析画像とに基づいて、解像度の高い質量分析画像を生成する。また、上記特許文献1に開示されている構成では、解像度を向上させた質量分析画像の画素値と、解像度を向上させる前の質量分析画像の画素値とを比較し、解像度を向上させた質量分析画像の画素値を、解像度を向上させる前の質量分析画像の画素値に近付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0131888号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、質量分析画像は、被写体に投与された測定対象の化合物の濃度が低い場合には、ノイズが多く重畳し、測定対象の化合物とノイズとの判別が困難になる場合がある。しかしながら、上記特許文献1に開示されている構成では、解像度の高い顕微鏡画像(光学画像)と、解像度の低い質量分析画像とに基づいて、解像度を向上させた質量分析画像(高解像度質量分析画像)を生成する際に、高解像度質量分析画像の画素値を、解像度を向上させる前の質量分析画像の画素値に近づける。そのため、たとえば、解像度を向上させる前の質量分析画像にノイズが多く重畳している場合、高解像度質量分析画像に対してもノイズが多く重畳する。したがって、高解像度質量分析画像において、ノイズに起因して視認性が低下するという不都合がある。この場合、たとえば、近傍画素値の重み付き平均に基づいて質量分析画像のノイズを低減することにより、高解像度質量分析画像に重畳するノイズを低減することが考えられる。しかしながら、質量分析画像に対して近傍画素値の重み付き平均に基づいてノイズを低減する処理を行うと、質量分析画像に画像ぼけが生じる。質量分析画像に画像ぼけが生じると、高解像度質量分析画像における測定対象の化合物の視認性が低下するという不都合がある。すなわち、質量分析画像に重畳するノイズを低減した場合、却って、高解像度質量分析画像における測定対象の化合物の分布をユーザが把握することが困難になる場合がある。そこで、高解像度質量分析画像を生成する際に、解像度を向上させつつ、ノイズ量を適切に調整することが可能な技術が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、解像度が低い質量分析画像と、解像度が高い光学画像とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成する際に、解像度を向上させつつ、ノイズ量を適切に調整することが可能な質量分析画像の処理方法、画像の処理方法および質量分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における質量分析画像の処理方法は、被写体の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像を取得するステップと、被写体を撮影することにより生成された、質量分析画像よりも解像度が高い光学画像を取得するステップと、解像度が高い光学画像の画素値と、解像度が低い質量分析画像の画素値とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成するステップとを備え、高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理を行う。なお、本明細書において、「画素値の変動量を調整する」とは、「画素値の変化を許容する度合いを調整する」ことを意味する。また、本明細書において、「解像度が高い」とは、画像に含まれる画素数が多いことを意味する。また、本明細書において、「解像度が低い」とは、画像に含まれる画素数が少ないことを意味する。
【0008】
また、この発明の第2の局面における画像の処理方法は、第1画像を取得するステップと、第1画像よりも解像度が高い第2画像を取得するステップと、解像度が高い第2画像の画素値と、解像度が低い第1画像の画素値とに基づいて、解像度が高い第3画像を生成するステップとを備え、第3画像を生成するステップにおいて、第2画像の画素値の変動量を調整する処理を行う。
【0009】
また、この発明の第3の局面における質量分析装置は、被写体の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像を取得する質量分析画像取得部と、被写体を撮影することにより生成された、質量分析画像よりも解像度が高い光学画像を取得する光学画像取得と、解像度が高い光学画像の画素値と、解像度が低い質量分析画像の画素値とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成する画像処理部と、を備え、画像処理部は、高解像度質量分析画像を生成する際に、質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理を行うように構成されている。
【0010】
また、この発明の第4の局面における質量分析画像の処理方法は、被写体の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像を取得するステップと、被写体を撮影することにより生成された、質量分析画像よりも解像度が高い光学画像を取得するステップと、光学画像に基づいて、中間画像を生成するステップと、解像度が高い光学画像と、中間画像と、解像度が低い質量分析画像とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成するステップとを備え、高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、中間画像と、複数の係数のマトリクスである係数マトリクスとに基づいて、高解像度質量分析画像を生成するステップと、高解像度質量分析画像の画素値と、質量分析画像の画素値との差が小さくなるように、係数マトリクスを更新するステップと、を繰り返すことによって係数マトリクスを最適化し、最適化した係数マトリクスと中間画像とに基づいて、高解像度質量分析画像を生成する。
【発明の効果】
【0011】
上記第1局面における質量分析画像の処理方法、および、第3の局面における質量分析装置では、上記のように、解像度が高い光学画像と、解像度が低い質量分析画像とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成する際に、質量分析画像の画素値の変動量を調整する。これにより、ノイズが重畳した質量分析画像に基づいて高解像度質量分析画像を生成する場合に、質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理を行うことにより、高解像度質量分析画像に重畳するノイズ量を適切に調整することができる。その結果、解像度が低い質量分析画像と、解像度が高い光学画像とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成する際に、解像度を向上させつつ、ノイズ量を適切に調整することができる。
【0012】
また、上記第2の局面における画像の処理方法では、解像度が高い第2画像の画素値と、解像度が低い第1画像の画素値とに基づいて、解像度が高い第3画像を生成する際に、第2画像の画素値の変動量を調整する。これにより、上記第1の局面における質量分析画像の処理方法と同様に、解像度が低い第1画像と、解像度が高い第2画像とに基づいて、解像度が高い第3画像を生成する際に、解像度を向上させつつ、ノイズ量を適切に調整することが可能な画像の処理方法を提供することができる。
【0013】
また、上記第4の局面における質量分析画像の処理方法では、光学画像に基づいて、中間画像を生成するステップと、解像度が高い光学画像と、中間画像と、解像度が低い質量分析画像とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成するステップとを備え、高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、中間画像と、複数の係数のマトリクスである係数マトリクスとに基づいて、高解像度質量分析画像を生成するステップと、高解像度質量分析画像の画素値と、質量分析画像の画素値との差が小さくなるように、係数マトリクスを更新するステップと、を繰り返すことによって係数マトリクスを最適化し、最適化した係数マトリクスと中間画像とに基づいて、高解像度質量分析画像を生成する。
【0014】
ここで、中間画像と、1つの係数(スカラー値の係数)とに基づいて高解像度質量分析画像を生成する構成の場合、質量分析画像に対する係数の数が小さくなる。この場合、係数を決定するための系が、未知数よりも方程式の方が多くなる過剰決定系となる。過剰決定系では、一般的に、解が存在せず、質量分析画像に基づいて生成される高解像度質量分析画像において、局所的に画素値が取得されない画素が生じる。この場合、高解像度質量分析画像のコントラストが低下する。そこで、上記のように、中間画像と、複数の係数のマトリクスである係数マトリクスとに基づいて、高解像度質量分析画像を生成することによって、係数マトリクスに含まれる係数の数と、質量分析画像の画素数とを等しくすることができる。したがって、係数マトリクスに含まれる係数を調整することにより、高解像度質量分析画像の各画素の画素値を、質量分析画像に基づいて取得することができる。その結果、高解像度質量分析画像のコントラストが低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態による質量分析装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態による質量分析装置が生成する光学画像を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態による質量分析装置が生成する質量分析画像を示す模式図である。
【
図4】第1実施形態による質量分析装置が生成する高解像度質量分析画像を示す模式図である。
【
図5】質量分析画像を拡大した第1拡大画像を示す模式図である。
【
図6】高解像度質量分析画像を拡大した第2拡大画像を示す模式図である。
【
図7】第1実施形態による質量分析装置が、高解像度質量分析画像を生成する構成を説明するための模式図である。
【
図8】第1係数を異ならせた高解像度質量分析画像を示す模式図(A)~模式図(C)である。
【
図9】第1実施形態における質量分析装置による高解像度質量分析画像のノイズ調整処理を説明するためのフローチャートである。
【
図10】第1実施形態における質量分析装置による高解像度質量分析画像の生成処理を説明するためのフローチャートである。
【
図11】第2実施形態による質量分析装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図12】第2実施形態による質量分析装置が高解像度質量分析画像を生成する構成を説明するための模式図である。
【
図13】第2実施形態による質量分析装置が生成する光学画像、質量分析画像、および、高解像度質量分析画像を示す模式図である。
【
図14】第2実施形態における質量分析装置による高解像度質量分析画像の生成処理を説明するためのフローチャートである。
【
図15】第2実施形態の変形例による質量分析装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図16】第2実施形態の変形例における質量分析装置による高解像度質量分析画像のノイズ調整処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1~
図8を参照して、第1実施形態による質量分析装置100(
図1参照)の構成、および、質量分析装置100による質量分析画像10(
図1参照)の処理方法について説明する。なお、質量分析画像10は、特許請求の範囲における「第1画像」の一例である。
【0018】
(質量分析装置の構成)
まず、
図1を参照して、第1実施形態による質量分析装置100の構成について説明する。質量分析装置100は、たとえば、被写体90に投与された試料(被写体90に投与された測定対象の化合物)の分布などを測定するために、質量分析画像10を生成する装置である。被写体90は、たとえば、マウスなどの臓器である。第1実施形態では、被写体90は、マウスの脳の切片である。
【0019】
図1に示すように、質量分析装置100は、質量分析画像生成部1と、光学画像生成部2と、質量分析画像取得部3と、光学画像取得部4と、画像処理部5と、を備える。また、第1実施形態では、質量分析装置100は、制御部6と、記憶部7と、入力受付部8と、表示部9とを備える。
【0020】
質量分析画像生成部1は、被写体90の測定対象である測定対象領域90aの各測定点90bに対する質量分析を行うように構成されている。また、質量分析画像生成部1は、被写体90の質量分析データに基づいて、質量分析画像10を生成するように構成されている。質量分析画像生成部1は、たとえば、MALDI(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)イオン源、イオン輸送光学系、イオントラップ、飛行時間型質量分析器、イオン検出器などを含み、測定点90bに対応する所定サイズの微小領域に対し所定質量電荷比範囲に亘る質量分析を実行する。
【0021】
また、質量分析画像生成部1は、被写体90が載置されたステージ(図示せず)を平面内の2軸方向に高精度で移動させる駆動部(図示せず)を含み、被写体90を所定ステップ幅で移動させる毎に質量分析を実行することにより、任意のサイズの領域に対する質量分析データ(マススペクトルデータ)の収集が可能となっている。また、質量分析画像生成部1は、収集したマススペクトルデータに基づいて、質量分析画像10を生成するように構成されている。
【0022】
光学画像生成部2は、被写体90を撮影することにより、被写体90の光学画像11を生成するように構成されている。光学画像生成部2は、光学顕微鏡を含む。光学画像生成部2は、被写体90の測定対象領域90aを撮影することにより、質量分析画像10に写る被写体90と同様の被写体90が写る光学画像11を生成する。なお、光学画像11は、特許請求の範囲における「第2画像」の一例である。
【0023】
質量分析画像取得部3は、被写体90の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像10を取得するように構成されている。具体的には、質量分析画像取得部3は、質量分析画像生成部1が生成した質量分析画像10を取得するように構成されている。質量分析画像取得部3は、たとえば、入出力インタフェースである。
【0024】
光学画像取得部4は、被写体90を撮影することにより生成された、質量分析画像10よりも解像度が高い光学画像11を取得するように構成されている。具体的には、光学画像取得部4は、光学画像生成部2が生成した光学画像11を取得するように構成されている。光学画像取得部4は、たとえば、入出力インタフェースである。
【0025】
画像処理部5は、解像度が高い光学画像11の画素値と、解像度が低い質量分析画像10の画素値とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像12を生成するように構成されている。画像処理部5は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、または、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ、画像処理用に構成されたFPGA(Field-Programmable Gate Array)、または、回路(Circuitry)を含む。画像処理部5が高解像度質量分析画像12を生成する構成の詳細については、後述する。なお、高解像度質量分析画像12は、特許請求の範囲における「第3画像」の一例である。
【0026】
制御部6は、質量分析装置100の各部を制御するように構成されている。制御部6は、たとえば、CPUなどのプロセッサ、または、回路(Circuitry)を含む。
【0027】
記憶部7は、質量分析画像10、光学画像11、および、高解像度質量分析画像12を記憶するように構成されている。また、記憶部7は、後述する第1係数20を記憶するように構成されている。記憶部7は、HDD(Hard Disk Drive)、または、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶装置を含む。
【0028】
入力受付部8は、操作者の操作入力を受け付けるように構成されている。入力受付部8は、たとえば、マウス、および、キーボードなどの入力装置を含む。
【0029】
表示部9は、質量分析画像10、光学画像11、および、高解像度質量分析画像12のうちの少なくともいずれかの画像を表示するように構成されている。表示部9は、たとえば、液晶モニタ、または、有機EL(Electro Luminescence)モニタなどの表示装置である。
【0030】
(光学画像、質量分析画像、および、高解像度質量分析画像)
次に、
図2~
図4を参照して、光学画像11(
図2参照)、質量分析画像10(
図3参照)、および、高解像度質量分析画像12(
図4参照)について説明する。
【0031】
図2に示す光学画像11は、光学画像生成部2(
図1参照)によって撮影された被写体90の光学画像である。第1実施形態では、光学画像11は、被写体90として、マウスの脳のスライス切片が写る。より具体的には、光学画像11は、被写体90として、マウスに対して測定対象となる化合物を投与した後の、脳のスライス切片が写る。
【0032】
図3に示す質量分析画像10は、被写体90の測定対象領域90a(
図1参照)における所定の質量電荷比(m/z)の化合物を画像化した画像である。質量分析画像10は、所定のm/zの信号強度を画素値とした画像であり、白色に近づくほど、化合物の濃度が高いことを示している。なお、
図3に示す質量分析画像10は、便宜的に、
図2に示す光学画像11と同じ大きさで図示しているが、実際には光学画像11よりも小さい画像である。すなわち、質量分析画像10は、光学画像11よりも、解像度が低い画像である。
【0033】
図4に示す高解像度質量分析画像12は、光学画像11(
図2参照)および質量分析画像10(
図3参照)に基づいて生成された、解像度が高い質量分析画像である。第1実施形態では、高解像度質量分析画像12は、光学画像11と同じ解像度を有する。
【0034】
図5に示す第1拡大画像13は、
図3に示す質量分析画像10のうちの、領域30を拡大した画像である。質量分析画像10の解像度が低いため、第1拡大画像13に写る被写体90の輪郭90cが階段状にギザギザしている。
【0035】
図6に示す第2拡大画像14は、
図4に示す高解像度質量分析画像12のうちの、領域31を拡大した画像である。高解像度質量分析画像12の解像度は、質量分析画像10(
図3参照)よりも高いため、第2拡大画像14に写る被写体90の輪郭90cは、第1拡大画像13(
図5参照)に写る被写体90の輪郭90cよりも、滑らかになっている。
【0036】
ここで、
図3に示す質量分析画像10の領域32は、白い点が多く分布している。この白い点が、測定対象の化合物に起因するものか、または、ノイズであるのかが、判別しづらくなっている。
【0037】
また、
図4に示す高解像度質量分析画像12の領域33においても、
図3に示す質量分析画像10の領域32と同様に、白い点が多く分布しており、白い点が測定対象の化合物に起因するものか、または、ノイズであるのかが、判別しづらくなっている。
【0038】
そこで、第1実施形態では、画像処理部5(
図1参照)は、光学画像11(
図2参照)と、質量分析画像10(
図3参照)とに基づいて高解像度質量分析画像12(
図4参照)を生成する際に、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理を行うように構成されている。なお、質量分析画像10の画素値の変動量を調整するとは、言い換えると、質量分析画像10の画素値の変化を許容する度合いを調整することである。
【0039】
(高解像度質量分析画像の生成および質量分析画像の画素値の変動量の調整)
次に、
図7を参照して、画像処理部5(
図1参照)が、高解像度質量分析画像12(
図4参照)を生成する構成、および、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する構成について説明する。
【0040】
第1実施形態では、画像処理部5は、光学画像11の構造の情報を取得し、反映する処理40と、高解像度質量分析画像12の画素値を質量分析画像10の画素値に近づける処理41とを繰り返すことにより、高解像度質量分析画像12を生成する。
【0041】
第1実施形態では、画像処理部5は、処理41において、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理を行う。具体的には、画像処理部5は、ユーザによって予め設定され、質量分析画像10の画素値の変動量の調整に用いる係数に基づいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する。より具体的には、画像処理部5は、ユーザによって入力された係数に基づいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する。係数は、値が小さくなると、第2画素値の変動量が大きくなる第1係数20、または、値が大きくなるほど、第2画素値の変動量が大きくなる第2係数23(
図15参照)を含む。第1実施形態では、係数は、第1係数20である。第1係数20は、0(ゼロ)より大きく、1よりも小さい数値である。
【0042】
第1実施形態では、画像処理部5は、光学画像11の構造の情報を取得し、反映する処理40を行う前に、バイリニア、バイキュービックなどの既知の補間処理によって質量分析画像10を拡大することにより、高解像度質量分析画像12aを生成する。高解像度質量分析画像12aは、既知の補間処理によって質量分析画像10を拡大した画像であるため、被写体90(
図5参照)の輪郭90c(
図5参照)が不鮮明である。そこで、画像処理部5は、処理40において、光学画像11に写る被写体90(
図2参照)の輪郭90c(
図2参照)の情報に基づいて、高解像度質量分析画像12aに写る被写体90の輪郭90cを鮮明する。また、画像処理部5は、高解像度質量分析画像12に写る被写体90の内部構造についても、光学画像11に写る被写体90の内部構造に基づいて、鮮明にする。
【0043】
具体的には、画像処理部5は、光学画像11の近傍類似度から重み付けしたフィルタ21を生成する。そして、画像処理部5は、生成したフィルタ21を高解像度質量分析画像12aに重畳することにより、光学画像11の構造の情報が反映された高解像度質量分析画像12bを生成する。すなわち、画像処理部5は、高解像度質量分析画像12aに対してフィルタ21を重畳することにより、高解像度質量分析画像12bに写る被写体90の輪郭90cおよび内部構造を、光学画像11に写る被写体90の輪郭90cおよび内部構造に近づける。
【0044】
処理40によって、光学画像11に写る被写体90の輪郭90cに近づくため、高解像度質量分析画像12bに写る被写体90の輪郭90cは鮮明になる。しかしながら、処理40によって、光学画像11の画素値が反映されるため、高解像度質量分析画像12bの各画素の画素値は、質量分析画像10の対応する画素値とは異なる値になる。
【0045】
そこで、第1実施形態では、画像処理部5は、高解像度質量分析画像12bの画素値を質量分析画像10の画素値に近づける処理41を行う。
【0046】
処理41において、画像処理部5は、光学画像11と質量分析画像10と高解像度質量分析画像12とに基づいて中間画像17を生成する。また、画像処理部5は、生成した中間画像17と、係数とに基づいて、高解像度質量分析画像12cを生成する。
【0047】
中間画像17は、高解像度質量分析画像12bに基づいて生成される。具体的には、処理41において、画像処理部5は、高解像度質量分析画像12bを縮小することにより、縮小画像15を生成する。なお、画像処理部5が縮小画像15を生成する処理は、縮小画像15の解像度が質量分析画像10の解像度と等しくなるように、既知の補間処理によって高解像度質量分析画像12bを縮小することにより行われる。
【0048】
次に、画像処理部5は、縮小画像15から質量分析画像10を減算することにより、差分画像16を生成する。そして、画像処理部5は、差分画像16を拡大することにより、中間画像17を生成する。なお、画像処理部5が中間画像17を生成する処理は、既知の補間処理によって差分画像16を拡大することにより行われる。具体的には、画像処理部5は、中間画像17の解像度が、高解像度質量分析画像12bの解像度と等しくなるように、差分画像16を拡大する。
【0049】
次に、画像処理部5は、中間画像17に対して第1係数20を乗算し、中間画像17aを生成する。そして、画像処理部5は、高解像度質量分析画像12bから第1係数20が乗算された中間画像17aを減算することにより、高解像度質量分析画像12cを生成する。
【0050】
画像処理部5は、処理40と処理41とを繰り返すことにより、高解像度質量分析画像12を生成する。すなわち、画像処理部5は、処理40と処理41とを繰り返すことにより、光学画像11に写る被写体90の輪郭90cの情報を高解像度質量分析画像12に反映する処理を繰り返し行うとともに、高解像度質量分析画像12の画素値である第1画素値と、質量分析画像10の画素値である第2画素値との差を小さくする処理を繰り返し行い、高解像度質量分析画像12を生成する。第1実施形態では、画像処理部5は、高解像度質量分析画像12の画素値の変化量が、閾値未満になるまで、処理40と処理41とを繰り返す。なお、2度目以降の処理40においてフィルタ21が重畳される高解像度質量分析画像12aは、処理41によって生成される高解像度質量分析画像12cである。
【0051】
第1実施形態では、画像処理部5は、高解像度質量分析画像12の生成が完了するまでは、第1係数20として同一の値を用いる。生成された高解像度質量分析画像12がユーザの所望する画像でない場合、ユーザの入力によって、係数が変更される。すなわち、画像処理部5は、変更された第1係数20に基づいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する。
【0052】
図8(A)~
図8(C)に示す第1高解像度質量分析画像12d~第3高解像度質量分析画像12fは、第1係数20を変更して生成された画像である。
図8(A)に示す第1高解像度質量分析画像12dは、第1係数20(
図7参照)の値が最も大きく、
図8(B)に示す第2高解像度質量分析画像12e、
図8(C)に示す第3高解像度質量分析画像12fの順に、第1係数20の値が小さい。
【0053】
第1係数20の値が大きいほど、元の画像である質量分析画像10(
図3参照)の画素値の変動量が小さくなるので、質量分析画像10と同様の画素値を有する画像となる。一方、第1係数20の値が小さいほど、質量分析画像10の画素値の変動量が大きくなるので、質量分析画像10に重畳したノイズが低減される。なお、ノイズが低減されるとともに、質量分析画像10の画素値が反映される割合も低下するため、第1係数20の値が小さい高解像度質量分析画像12の画素値は、質量分析画像10の画素値との差異が大きくなる。
【0054】
第1高解像度質量分析画像12dの領域34、第2高解像度質量分析画像12eの領域35、および、第3高解像度質量分析画像12fの領域36を比較すると、領域34では、白い点が多く分布しているのに対して、領域35では、白い点の分布が局所的になっている。また、領域36では、白い点ではなく、白い領域として写っている。また、第3高解像度質量分析画像12fの領域37では、黒い点が明瞭に写っている。一方、第1高解像度質量分析画像12dの領域38では、黒い点が明瞭でない。すなわち、第1高解像度質量分析画像12dの領域38では、画素値を有さない画素が黒い点として写っているのか、ノイズが黒い点として写っているのかが、判然としない。一方、第3高解像度質量分析画像12fの領域37では、黒い点が明瞭に写っている。したがって、領域38における黒い点は、ノイズではなく、画素値を有さない画素であることがわかる。
【0055】
すなわち、第1係数20の値を調整することにより、ノイズの調整、および、高解像度質量分析画像12に対する質量分析画像10の画素値の反映の割合を調整することが可能となる。そのため、ユーザは、第1係数20の値を調整することにより、所望する高解像度質量分析画像12が得られる。
【0056】
(高解像度質量分析画像のノイズ調整処理)
次に、
図9を参照して、第1実施形態による画像処理部5(
図1参照)が、高解像度質量分析画像12(
図4参照)のノイズの調整を行う処理について説明する。
【0057】
ステップ101において、制御部6(
図1参照)は、ユーザの入力に基づいて、係数の入力を受け付ける。第1実施形態では、制御部6は、第1係数20(
図1参照)の入力を受け付ける。
【0058】
ステップ102において、制御部6は、第1係数20を、記憶部7(
図1参照)に記憶する。
【0059】
ステップ103において、画像処理部5は、解像度が高い第2画像の画素値と、解像度が低い第1画像の画素値とに基づいて、解像度が高い第3画像を生成する。具体的には、画像処理部5は、解像度が高い光学画像11(
図2参照)の画素値と、解像度が低い質量分析画像10(
図3参照)の画素値とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像12を生成する。なお、第1実施形態では、ステップ103において、画像処理部5は、第2画像の画素値の変動量を調整する処理を行う。具体的には、画像処理部5は、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理を行う。第1実施形態では、画像処理部5は、ユーザによって入力された係数に基づいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する。画像処理部5が高解像度質量分析画像12を生成する処理、および、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理の詳細については、後述する。
【0060】
ステップ104において、制御部6は、係数を更新する入力があったか否かを判定する。具体的には、制御部6は、第1係数20を更新する入力があったか否かを判定する。第1係数20を更新する入力がなかった場合、処理は、終了する。第1係数20を更新する入力があった場合、処理は、ステップ105へ進む。
【0061】
ステップ105において、制御部6は、ユーザの入力に基づいて、既に入力された係数を変更する。具体的には、制御部6は、ユーザによって入力された値によって、記憶部7(
図1参照)に記憶された第1係数20を更新する。その後、処理は、ステップ103へ進む。なお、係数(第1係数20)が変更(更新)された後のステップ103の処理(質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理)では、画像処理部5は、変更された係数に基づいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する。
【0062】
上記のように、画像処理部5は、ステップ101~ステップ105の処理を行うことにより、ユーザが所望する第1係数20によって、高解像度質量分析画像12を生成する。
【0063】
(高解像度質量分析画像の生成処理)
次に、
図10を参照して、第1実施形態による画像処理部5(
図1参照)が、高解像度質量分析画像12(
図4参照)を生成する処理について説明する。
【0064】
ステップ103aにおいて、光学画像取得部4(
図1参照)は、第1画像よりも解像度が高い第2画像を取得する。具体的には、光学画像取得部4は、被写体90を撮影することにより生成された、質量分析画像10(
図3参照)よりも解像度が高い光学画像11(
図2参照)を取得する。
【0065】
ステップ103bにおいて、画像処理部5は、光学画像11に基づいて、フィルタ21(
図7参照)を生成する。
【0066】
ステップ103cにおいて、質量分析画像取得部3は、第1画像を取得する。具体的には、質量分析画像取得部3は、被写体90の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像10を取得する。
【0067】
ステップ103dにおいて、画像処理部5は、質量分析画像10を拡大し、高解像度質量分析画像12a(
図7参照)を生成する。
【0068】
ステップ103eにおいて、画像処理部5は、高解像度質量分析画像12aに対して、フィルタ21を重畳し、高解像度質量分析画像12bを生成する。
【0069】
ステップ103fにおいて、画像処理部5は、高解像度質量分析画像12bを縮小することにより縮小画像15(
図7参照)を生成する。
【0070】
ステップ103gにおいて、画像処理部5は、縮小画像15から質量分析画像10を差分することにより、差分画像16(
図7参照)を生成する。
【0071】
ステップ103hにおいて、画像処理部5は、差分画像16を拡大することにより、中間画像17(
図7参照)を生成する。すなわち、画像処理部5は、光学画像11と質量分析画像10と高解像度質量分析画像12とに基づいて中間画像17を生成する。
【0072】
ステップ103iにおいて、画像処理部5は、第1係数20を取得する。具体的には、画像処理部5は、記憶部7に記憶された第1係数20を取得する。
【0073】
ステップ103jにおいて、画像処理部5は、中間画像17に対して第1係数20を乗算する。これにより、画像処理部5は、第1係数20が乗算された中間画像17a(
図7参照)を生成する。
【0074】
ステップ103kにおいて、画像処理部5は、高解像度質量分析画像12bから第1係数20を乗算した中間画像17aを減算する。これにより、画像処理部5は、高解像度質量分析画像12c(
図7参照)を生成する。すなわち、画像処理部5は、生成した中間画像17と、第1係数20とに基づいて、高解像度質量分析画像12cを生成する。
【0075】
ステップ103lにおいて、制御部6は、高解像度質量分析画像12の画素値である第1画素値の変化量が、閾値以下であるか否かを判定する。第1画素値の変化量が閾値よりも大きい場合、処理は、ステップ103eへ進む。第1画素値の変化量が閾値以下の場合、処理は、ステップ104へ進む。なお、最初にステップ103lの処理を行う際には、第1画素値は変化していないため、第1画素値の変化量が閾値以下であるか否かの判定は行わず、処理は、ステップ103eへ進む。
【0076】
なお、ステップ103aおよびステップ103bの処理と、ステップ103cおよびステップ103dの処理とは、どちらが先に行われてもよい。また、ステップ103iの処理は、ステップ103jの処理が行われる前であれば、いつ行われてもよい。
【0077】
第1実施形態では、画像処理部5は、上記のように、ステップ103e~ステップ103lの処理を繰り返し行うことにより、高解像度質量分析画像12の画素値である第1画素値と、質量分析画像10の画素値である第2画素値との差を小さくする処理を繰り返し行う。また、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理は、第1画素値と第2画素値との差を小さくする際の、第2画素値の変動量を調整することにより行われる。質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理は、第1係数20の値を調整するか、または、第2係数23の値を調整するかによって行われる。第1実施形態では、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理は、第1係数20を用いて行われる。
【0078】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0079】
第1実施形態では、上記のように、質量分析画像10の処理方法は、被写体90の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像10を取得するステップと、被写体90を撮影することにより生成された、質量分析画像10よりも解像度が高い光学画像11を取得するステップと、解像度が高い光学画像11の画素値と、解像度が低い質量分析画像10の画素値とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像12を生成するステップとを備え、高解像度質量分析画像12を生成するステップにおいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理を行う。
【0080】
これにより、たとえば、ノイズが重畳した質量分析画像10に基づいて、高解像度質量分析画像12を生成する際に、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理を行うことにより、高解像度質量分析画像12に重畳するノイズ量を適切に調整することができる。その結果、解像度が低い質量分析画像10と、解像度が高い光学画像11とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像12を生成する際に、解像度を向上させつつ、ノイズ量を適切に調整することができる。
【0081】
また、第1実施形態では、上記のように、画像の処理方法は、第1画像を取得するステップと、第1画像よりも解像度が高い第2画像を取得するステップと、解像度が高い第2画像の画素値と、解像度が低い第1画像の画素値とに基づいて、解像度が高い第3画像を生成するステップとを備え、第3画像を生成するステップにおいて、第2画像の画素値の変動量を調整する処理を行う。
【0082】
これにより、上記第1実施形態による質量分析画像10の処理方法と同様に、解像度が低い第1画像と、解像度が高い第2画像とに基づいて、解像度が高い第3画像を生成する際に、解像度を向上させつつ、ノイズ量を適切に調整することが可能な画像の処理方法を提供することができる。
【0083】
また、第1実施形態では、上記のように、質量分析装置100は、被写体90の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像10を取得する質量分析画像取得部3と、被写体90を撮影することにより生成された、質量分析画像10よりも解像度が高い光学画像11を取得する光学画像取得部4と、解像度が高い光学画像11の画素値と、解像度が低い質量分析画像10の画素値とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像12を生成する画像処理部5と、を備え、画像処理部5は、高解像度質量分析画像12を生成する際に、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理を行うように構成されている。
【0084】
これにより、上記第1実施形態による質量分析画像10の処理方法と同様に、解像度が低い質量分析画像10と、解像度が高い光学画像11とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像12を生成する際に、解像度を向上させつつ、ノイズ量を適切に調整することが可能な質量分析装置100を提供することができる。
【0085】
また、上記第1実施形態では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0086】
すなわち、第1実施形態では、上記のように、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理において、ユーザによって予め設定され、質量分析画像10の画素値の変動量の調整に用いる係数に基づいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する。これにより、ユーザは、予め係数を設定することによって、質量分析画像10の画素値の変動量を容易に調整することができる。
【0087】
また、第1実施形態では、上記のように、ユーザの入力に基づいて、係数の入力を受け付けるステップをさらに備え、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理において、ユーザによって入力された係数に基づいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する。これにより、ユーザは、所望の係数を入力することにより、質量分析画像10に応じて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整することができる。したがって、たとえば、質量分析画像10に重畳するノイズ量が多い場合には、質量分析画像10の画素値の変動量を大きくすることにより、高解像度質量分析画像12に重畳するノイズ量を低減することができる。また、たとえば、質量分析画像10に重畳するノイズ量が少ない場合には、質量分析画像10の画素値の変動量を小さくすることにより、高解像度質量分析画像12の画素値を、質量分析画像10の画素値に近づけることができる。したがって、高解像度質量分析画像12の各画素の画素値の精度を向上させることができる。これらの結果、質量分析画像10に応じてユーザが所望する係数を入力することにより、高解像度質量分析画像12を生成する際の質量分析画像10の画素値の変動量を容易に調整することが可能となるので、ユーザの利便性(ユーザビリティ)を向上させることができる。
【0088】
また、第1実施形態では、上記のように、ユーザの入力に基づいて、既に入力された係数を変更するステップをさらに備え、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理において、変更された係数に基づいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する。ここで、ユーザは、被写体90の測定対象領域90aの質量分析データのうち、質量電荷比(m/z)を変更することにより、質量分析画像10として画像化する化合物を容易に変更することができる。しかしながら、m/zを変更した場合、質量分析画像10に重畳するノイズも変化し得る。したがって、m/zを変更する前の化合物においてノイズの調整に適した係数であったとしても、m/zを変更した後の化合物においては、ノイズの調整に適さない場合がある。そこで、上記のように構成することにより、m/zを変更することによって質量分析画像10として画像化する化合物を変更した場合でも、ユーザは、m/zを変更した後の質量分析画像10に応じて係数を変更することにより、m/zを変更した後の質量分析画像10の画素値の変動量を容易に調整できる。その結果、被写体90の測定対象領域90aのうち、画像化するm/zを変更した場合でも、m/zを変更した後の質量分析画像10の画素値の変動量を容易に調整することが可能となるので、ユーザの利便性(ユーザビリティ)をより向上させることができる。
【0089】
また、第1実施形態では、上記のように、高解像度質量分析画像12を生成するステップにおいて、高解像度質量分析画像12の画素値である第1画素値と、質量分析画像10の画素値である第2画素値との差を小さくする処理を繰り返し行い、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理は、第1画素値と第2画素値との差を小さくする際の、第2画素値の変動量を調整することにより行われる。これにより、高解像度質量分析画像12の第1画素値を質量分析画像10の第2画素値に近づける際に、第2画素値の変動量が調整されるので、たとえば、質量分析画像10にノイズが重畳している場合には、第2画素値の変動量を大きくすることにより、高解像度質量分析画像12に対してノイズが重畳することを抑制することができる。また、たとえば、質量分析画像10に重畳するノイズが少ない場合には、第2画素値の変動量を小さくすることにより、高解像度質量分析画像12における第1画素値の値を、質量分析画像10の画像値である第2画素値に近づけることができる。これらの結果、質量分析画像10に重畳するノイズ量に応じて第2画素値の変動量を調整することにより、高解像度質量分析画像12におけるノイズ量、および、第2画素値に対する第1画素値の精度をユーザが容易に調整することができる。
【0090】
また、第1実施形態では、上記のように、係数は、値が小さくなると、第2画素値の変動量が大きくなる第1係数20、または、値が大きくなるほど、第2画素値の変動量が大きくなる第2係数23を含み、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理は、第1係数20の値を調整するか、または、第2係数23の値を調整するかによって行われる。これにより、ユーザは、第1係数20の値、または、第2係数23の値を調整することにより、質量分析画像10の変動量を容易に調整することができる。
【0091】
また、第1実施形態では、上記のように、高解像度質量分析画像12を生成するステップにおいて、光学画像11と質量分析画像10と高解像度質量分析画像12とに基づいて中間画像17を生成し、生成した中間画像17と、第1係数20とに基づいて、高解像度質量分析画像12を生成し、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理は、第1係数20を用いて行われる。これにより、ユーザは、中間画像17と第1係数20とに基づいて高解像度質量分析画像12を生成する際に、第1係数20を調整することによって、質量分析画像10の画素値の変動量を容易に調整することができる。
【0092】
[第2実施形態]
次に、
図11~
図13を参照して、第2実施形態による質量分析装置200(
図11参照)について説明する。第2実施形態では、第1係数20(
図1参照)を用いて質量分析画像10(
図1参照)の画素値の変動量を調整する質量分析装置100を示した上記第1実施形態とは異なり、質量分析画像10の画素値の変動量を調整することなく、高解像度質量分析画像210を生成する質量分析装置200の構成について説明する。なお、第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0093】
第2実施形態による質量分析装置200は、画像処理部5の代わりに画像処理部201を備える点で、上記第1実施形態による質量分析装置100とは異なる。また、第2実施形態による質量分析装置200が備える記憶部7は、第1係数20の代わりに係数マトリクス22を記憶する点で、上記第1実施形態による記憶部7とは異なる。
【0094】
画像処理部201は、光学画像11に基づいて、中間画像211(
図12参照)を生成する点、および、解像度が高い光学画像11と、中間画像211と、解像度が低い質量分析画像10とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像210を生成する点で、上記第1実施形態による画像処理部5とは異なる。
【0095】
(高解像度質量分析画像の生成)
次に、
図12を参照して、第2実施形態による画像処理部201(
図11参照)が、高解像度質量分析画像210を生成する構成について説明する。
【0096】
図12に示すように、画像処理部201は、光学画像11に基づいて、複数の中間画像211を生成する。中間画像211は、たとえば、光学画像11から色度毎に抽出された基底画像である。なお、中間画像211は、基底画像を累乗した画像、基底画像にフィルタ処理を行った画像を含み得る。
【0097】
図12では、画像処理部201は、中間画像211として、第1中間画像211a~第n中間画像211cを生成する例を示している。なお、中間画像211の解像度は、光学画像11の解像度と互いに等しい。すなわち、第1中間画像211a~第n中間画像211cの各々の解像度は、光学画像11の解像度と互いに等しい。なお、解像度が等しいとは、互いの画像の画素数が等しいことを意味する。
【0098】
第2実施形態では、画像処理部201は、中間画像211と、複数の係数のマトリクスである係数マトリクス22とに基づいて、高解像度質量分析画像210を生成する。なお、係数マトリクス22は、質量分析画像10の画素数と同数以上の係数(パラメータ)を含む。第2実施形態では、係数マトリクス22は、質量分析画像10の画素数と同数の係数を含む。また、第2実施形態では、画像処理部201は、係数マトリクス22を、中間画像211の解像度と同じ解像度となるように、画像補間により拡大している。なお、係数マトリクス22は、複数の係数マトリクスを含む。具体的には、係数マトリクス22は、中間画像211と同数の係数マトリクスを含む。したがって、第2実施形態では、係数マトリクス22は、第1係数マトリクス22a~第n係数マトリクス22cを含む。
【0099】
画像処理部201は、各中間画像211と、各係数マトリクス22とに基づいて、高解像度質量分析画像210を生成する。
【0100】
以下に示す式(1)に示すように、中間画像211を定義するとともに、式(2)に示すように、係数マトリクス22を定義する。
【数1】
ここで、iは、1~中間画像211の横方向の画素数までの自然数である。また、jは、1~中間画像211の縦方向の画素数までの自然数である。また、sは、1~係数マトリクス22の横方向の画素数(質量分析画像10の横方向の画素数)までの自然数である。また、tは、1~係数マトリクス22の縦方向の画素数(質量分析画像10の縦方向の画素数)までの自然数である。
【0101】
画像処理部201は、各中間画像211の画素と、対応する係数マトリクス22の係数との積(アダマール積)を計算し、足し合わせることにより、高解像度質量分析画像210を生成する。なお、係数マトリクス22は、解像度が質量分析画像10と等しいため、そのままでは中間画像211とのアダマール積を計算することができない。そこで、本実施形態では、以下に示す式(3)で定義した画像を拡大するための補間関数によって係数マトリクス22を拡大する。
【数2】
【0102】
拡大した後の係数マトリクス22は、以下に示す式(4)によって表すことができる。
【数3】
【0103】
なお、中間画像211は、光学画像11に基づいて生成される画像であるため、高解像度質量分析画像210の各画素の画素値は、質量分析画像10の各画素の画素値とは異なる値となっている。そこで、画像処理部201は、質量分析画像10に基づいて、複数の係数マトリクス22の各々の係数を最適化することにより、高解像度質量分析画像210の各画素の画素値を、質量分析画像10の各画素の画素値に近づけるように構成されている。
【0104】
質量分析画像10を以下に示す式(5)で定義した場合、高解像度質量分析画像210は、以下に示す式(6)で表すことができる。
【数4】
【0105】
上記式(1)、式(2)、および、式(6)に基づいて式(6)を変形することにより、高解像度質量分析画像210は、以下に示す式(7)で表すことができる。
【数5】
【0106】
なお、高解像度質量分析画像210は、質量分析画像10よりも解像度が高いため、そのままでは画素値を比較することができない。そこで、本実施形態では、画像処理部201は、以下に示す式(8)によって定義する画像の縮小関数によって、高解像度質量分析画像210を縮小した後、縮小後の高解像度質量分析画像210(縮小画像212)と、質量分析画像10の画素値とを比較する。
【数6】
【0107】
具体的には、画像処理部201は、以下に示す式(9)が最小となるような係数マトリクス22を求めることにより、高解像度質量分析画像210の画素値を、質量分析画像10の画素値に近づける。
【数7】
ここで、λg(a)は、式(9)の解が発散することを防ぐための正則化項である。また、λは、係数であり、ユーザによって予め設定されており、記憶部7に記憶されている。λは、たとえば、0よりも大きい数値である。
【0108】
第2実施形態では、画像処理部201は、高解像度質量分析画像210の画素値と、質量分析画像10の画素値との差が小さくなるように、係数マトリクス22を更新する。画像処理部201は、たとえば、係数を変更した際に、どれだけ誤差が減少するかを求める処理を繰り返し行い、最適な係数を取得する最急降下法によって、最適な係数マトリクス22を取得する。
【0109】
最適な係数マトリクス22を以下に示す式(10)で定義した場合、高解像度質量分析画像210は、以下に示す式(11)で表すことができる。
【数8】
【0110】
図13に示すように、画像処理部201(
図11参照)は、解像度が高い光学画像11と、解像度が低い質量分析画像10とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像210を生成する。なお、
図13に示す例では、便宜的に、質量分析画像10を、光学画像11および高解像度質量分析画像210と同じ大きさで図示しているが、実際には、質量分析画像10のサイズは、光学画像11および高解像度質量分析画像210よりも小さい。
【0111】
図13に示すように、質量分析画像10は、解像度が低いため、被写体90の輪郭90cが階段状にギザギザしている。一方、光学画像11は、解像度が高いため、被写体90の輪郭90cが滑らかである。また、高解像度質量分析画像210に写る被写体90の輪郭90cについても、光学画像11に写る被写体90の輪郭90cと同様に、滑らかである。
【0112】
また、高解像度質量分析画像210では、各画素の画素値が、質量分析画像10の各画素の画素値と略等しくなっている。すなわち、高解像度質量分析画像210の各画素の画素値は、質量分析画像10の各画素の画素値が反映されている。したがって、高解像度質量分析画像210は、各画素の画素値の精度が高い画像であるといえる。
【0113】
(高解像度質量分析画像の生成処理)
次に、
図14を参照して、第2実施形態による質量分析装置200(
図11参照)が、高解像度質量分析画像210(
図13参照)を生成する処理について説明する。
【0114】
ステップ300において、光学画像取得部4は、被写体90を撮影することにより生成された、質量分析画像10よりも解像度が高い光学画像11(
図13参照)を取得する。
【0115】
ステップ301において、画像処理部201(
図11参照)は、光学画像11に基づいて、中間画像211(
図12参照)を生成する。
【0116】
ステップ302において、画像処理部201は、係数マトリクス22(
図11参照)を取得する。具体的には、画像処理部201は、記憶部7に記憶された係数マトリクス22を取得する。
【0117】
ステップ303において、質量分析画像取得部3は、被写体90(
図13参照)の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像10(
図13参照)を取得する。
【0118】
ステップ304において、画像処理部201は、生成した中間画像211と、係数マトリクス22とに基づいて、高解像度質量分析画像210を生成する。すなわち、画像処理部201は、解像度が高い光学画像11と、中間画像211と、解像度が低い質量分析画像10とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像210を生成する。
【0119】
ステップ305において、画像処理部201は、高解像度質量分析画像210を縮小した縮小画像212(
図12参照)を取得する。
【0120】
ステップ306において、画像処理部201は、縮小画像212から質量分析画像10を減算することにより、上記式(9)によって表す目的関数を取得する。
【0121】
ステップ307において、制御部6は、目的関数が最小化されたか否かを判定する。目的関数が最小化されている場合、処理は、終了する。目的関数が最小化されていない場合、処理は、ステップ308へ進む。
【0122】
ステップ308において、画像処理部201は、係数マトリクス22の各係数を更新する。その後、処理は、ステップ304へ進む。なお、画像処理部201は、ステップ308において、高解像度質量分析画像210の画素値と、質量分析画像10の画素値との差が小さくなるように、係数マトリクス22を更新する。
【0123】
第2実施形態では、上記のように、画像処理部201は、中間画像211と、複数の係数のマトリクスである係数マトリクス22とに基づいて、高解像度質量分析画像210を生成するステップ(ステップ304)と、ステップ305~ステップ307の処理と、高解像度質量分析画像210の画素値と、質量分析画像10の画素値との差が小さくなるように、係数マトリクス22を更新するステップ(ステップ308)と、を繰り返すことによって係数マトリクス22を最適化する。具体的には、生成した中間画像211に対して、複数の係数のマトリクスである係数マトリクス22を乗算することにより高解像度質量分析画像210を生成するステップ(ステップ304)と、高解像度質量分析画像210の画素値と、質量分析画像10の画素値との差が小さくなるように、係数マトリクス22を更新するステップ(ステップ308)と、を繰り返す。そして、画像処理部201は、係数マトリクス22を最適化し、最適化した係数マトリクス22と中間画像211とに基づいて、高解像度質量分析画像210を生成する。
【0124】
なお、ステップ300およびステップ301の処理と、ステップ302の処理と、ステップ303の処理とは、いずれの処理が先に行われてもよい。
【0125】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態による構成と同様である。
【0126】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0127】
第2実施形態では、上記のように、質量分析画像10の処理方法は、被写体90の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像10を取得するステップと、被写体90を撮影することにより生成された、質量分析画像10よりも解像度が高い光学画像11を取得するステップと、光学画像11に基づいて、中間画像211を生成するステップと、解像度が高い光学画像11と、中間画像211と、解像度が低い質量分析画像10とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像210を生成するステップとを備え、高解像度質量分析画像210を生成するステップにおいて、中間画像211と、複数の係数のマトリクスである係数マトリクス22とに基づいて、高解像度質量分析画像210を生成するステップと、高解像度質量分析画像210の画素値と、質量分析画像10の画素値との差が小さくなるように、係数マトリクス22を更新するステップと、を繰り返すことによって係数マトリクス22を最適化し、最適化した係数マトリクス22と中間画像211とに基づいて、高解像度質量分析画像210を生成する。
【0128】
ここで、中間画像211と、1つの係数(スカラー値の係数)とに基づいて高解像度質量分析画像210を生成する構成の場合、質量分析画像10に対する係数の数が小さくなる。この場合、係数を決定するための系が、未知数よりも方程式の方が多くなる過剰決定系となる。過剰決定系では、一般的に、解が存在せず、質量分析画像10に基づいて生成される高解像度質量分析画像210において、局所的に画素値が取得されない画素が生じる。この場合、高解像度質量分析画像210のコントラストが低下する。そこで、上記のように、中間画像211と、複数の係数のマトリクスである係数マトリクス22とに基づいて、高解像度質量分析画像210を生成することによって、係数マトリクス22に含まれる係数の数と、質量分析画像10の画素数とを等しくすることができる。したがって、係数マトリクス22に含まれる係数を調整することにより、高解像度質量分析画像210の各画素の画素値を、質量分析画像10に基づいて取得することができる。その結果、高解像度質量分析画像210のコントラストが低下することを抑制することができる。
【0129】
また、上記第2実施形態では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0130】
すなわち、第2実施形態では、上記のように、高解像度質量分析画像210を生成するステップにおいて、生成した中間画像211に対して、複数の係数のマトリクスである係数マトリクス22を乗算することにより高解像度質量分析画像210を生成するステップと、高解像度質量分析画像210の画素値と、質量分析画像10の画素値との差が小さくなるように、係数マトリクス22を更新するステップと、を繰り返す。これにより、係数マトリクス22に含まれる係数を容易に最適化することができる。その結果、高解像度質量分析画像210のコントラストが低下することを抑制することが可能な係数マトリクス22を容易に取得することができる。
【0131】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態の効果と同様である。
【0132】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0133】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態では、画像処理部201が、質量分析画像10の画素値の変動量を調整しない構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図15に示す第2実施形態の変形例による画像処理部401のように、係数マトリクス22を用いて高解像度質量分析画像210を生成する構成において、質量分析画像10の画素値の変動量を調整するように構成されていてもよい。
【0134】
図15に示すように、第2実施形態の変形例による質量分析装置400は、画像処理部201の代わりに、画像処理部401を備える点で、上記第2実施形態による質量分析装置200とは異なる。
【0135】
また、画像処理部401は、高解像度質量分析画像210を生成する際に、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する点で、上記第2実施形態による画像処理部201とは異なる。また、第2実施形態の変形例による記憶部7は、後述する第2係数23を記憶する点で、上記第2実施形態による記憶部7とは異なる。
【0136】
第2実施形態の変形例による画像処理部401は、上記式(9)におけるλの値を調整することにより、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する。すなわち、上記式(9)におけるλは、第2係数23である。言い換えると、第2実施形態の変形例では、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理は、第2係数23を用いて行われる。
【0137】
また、第2係数23は、0よりも大きい値であり、値が大きくなるにつれ、上記式(9)の解が発散することを抑止することができる。言い換えると、第2係数23の値が大きくなるにつれて、質量分析画像10の画素値の変動量が大きくなる。
【0138】
なお、第2実施形態の変形例による質量分析装置400のその他の構成は、上記第2実施形態による質量分析装置200の構成と同様の構成である。
【0139】
(高解像度質量分析画像のノイズ調整処理)
次に、
図16を参照して、第2実施形態の変形例による画像処理部401(
図15参照)が、高解像度質量分析画像210(
図15参照)のノイズの調整を行う処理について説明する。
【0140】
ステップ410において、制御部6(
図15参照)は、ユーザの入力に基づいて、係数の入力を受け付ける。第2実施形態の変形例では、制御部6は、第2係数23(
図15参照)の入力を受け付ける。
【0141】
ステップ411において、制御部6は、第2係数23を、記憶部7(
図15参照)に記憶する。
【0142】
ステップ412において、画像処理部401は、高解像度質量分析画像210を生成する。具体的には、画像処理部401は、生成した中間画像211と、第2係数23と、係数マトリクス22(
図15参照)とに基づいて、高解像度質量分析画像210を生成する。なお、第2実施形態の変形例による画像処理部401が高解像度質量分析画像210を生成する構成は、上記式(9)のλの値として第2係数23を用いる点を除いて、第2実施形態による画像処理部201(
図11参照)が、
図14に示すステップ300~ステップ308の処理によって高解像度質量分析画像210を生成する構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0143】
ステップ413において、制御部6は、係数を更新する入力があったか否かを判定する。具体的には、制御部6は、第2係数23を更新する入力があったか否かを判定する。第2係数23を更新する入力がなかった場合、処理は、終了する。第2係数23を更新する入力があった場合、処理は、ステップ414へ進む。
【0144】
ステップ414において、制御部6は、ユーザの入力に基づいて、既に入力された係数を変更する。具体的には、制御部6は、ユーザによって入力された値によって、記憶部7に記憶された第2係数23を更新する。その後、処理は、ステップ412へ進む。
【0145】
上記のように、ステップ410~ステップ414の処理を行うことにより、第2実施形態の変形例による画像処理部401は、ユーザが所望する第2係数23によって、高解像度質量分析画像210を生成する。また、画像処理部401は、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理を行う。具体的には、画像処理部401が質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理は、第2係数23を用いて行う。なお、第2係数23が変更(更新)された後の上記ステップ412の処理では、変更された第2係数23によって高解像度質量分析画像210が生成されるため、画像処理部401は、変更された第2係数23に基づいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する。
【0146】
第2実施形態の変形例によるその他の構成は、上記第2実施形態よる構成と同様の構成である。
【0147】
第2実施形態の変形例では、上記のように、高解像度質量分析画像210を生成するステップにおいて、光学画像11に基づいて、中間画像211を生成し、生成した中間画像211と、第2係数23とに基づいて、高解像度質量分析画像210を生成し、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する処理は、第2係数23を用いて行われる。これにより、ユーザは、中間画像211と第2係数23とに基づいて高解像度質量分析画像210を生成する際に、第2係数23を調整することによって、質量分析画像10の画素値の変動量を容易に調整することができる。
【0148】
なお、上記第2実施形態の変形例のその他の効果は、上記第2実施形態の効果と同様である。
【0149】
なお、上記第2実施形態の変形例では、画像処理部401が、第2係数23として、式(9)におけるλの値を調整することにより、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部は、以下に示す式(12)のαの値を調整することにより、質量分析画像10の画素値の変動量を調整するように構成されていてもよい。
【数9】
【0150】
(その他の変形例)
また、上記第1および第2実施形態の変形例では、画像処理部5(画像処理部401)が、ユーザによって予め設定された係数(第1係数20または第2係数23)に基づいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部は、ユーザによって設定されていない固有の係数に基づいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整するように構成されていてもよい。しかしながら、ユーザによって設定されていない固有の係数に基づいて質量分析画像10の画素値の変動量を調整する構成の場合、ユーザが所望する調整を行うことができない。したがって、画像処理部は、ユーザによって予め設定された係数に基づいて質量分析画像10の画素値の変動量を調整するように構成されることが好ましい。
【0151】
また、上記第1および第2実施形態の変形例では、画像処理部5(画像処理部401)が、ユーザによって入力された係数(第1係数20または第2係数23)によって、質量分析画像10の画素値の変動量を調整する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部は、ユーザの入力によらず、ユーザによって予め設定された係数に基づいて、質量分析画像10の画素値の変動量を調整するように構成されていてもよい。しかしながら、ユーザによって予め設定された係数に基づいて質量分析画像10の画素値の変動量を調整する構成の場合、質量分析画像10に応じた係数によって質量分析画像10の画素値の変動量を調整することができない。この場合、質量分析画像10に応じてユーザが所望するノイズの調整を行うことができなくなる。したがって、画像処理部は、ユーザによって入力された係数によって、質量分析画像10の画素値の変動量を調整するように構成されることが好ましい。
【0152】
また、上記第1および第2実施形態では、質量分析装置100(質量分析装置200)が、光学画像生成部2を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、質量分析装置は、光学画像生成部2を備えていなくてもよい。この場合、質量分析装置は、質量分析装置とは別個に設けられた顕微鏡などによって生成された光学画像11を、光学画像取得部4によって取得するように構成されればよい。
【0153】
また、上記第1および第2実施形態では、質量分析装置100(質量分析装置200)が、高解像度質量分析画像12(高解像度質量分析画像210)を生成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部を備えるコンピュータによって、高解像度質量分析画像を生成するように構成されていてもよい。すなわち、上記第1および第2実施形態による質量分析画像の処理方法は、画像処理部を備えるコンピュータにおいて実行されてもよい。
【0154】
また、上記第1実施形態では、画像処理部5が、高解像度質量分析画像12の画素値の変化量が、閾値未満になるまで、処理40と処理41とを繰り返す構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部は、予めユーザによって設定された回数分、処理40と処理41とを繰り返すように構成されていてもよい。
【0155】
また、上記第2実施形態では、係数マトリクス22に含まれる係数の数が、質量分析画像10の画素数と等しい構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。係数マトリクス22に含まれる係数の数は、質量分析画像10の画素数以上であれば、どのような数であってもよい。
【0156】
また、本明細書において、第1実施形態と第2実施形態とを、互いに異なる実施形態として記載したが、本発明はこれに限られない。たとえば、質量分析装置は、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせた構成としてもよい。
【0157】
また、上記第1および第2実施形態では、第1画像が質量分析画像10であり、第2画像が光学画像11であり、第3画像が高解像度質量分析画像12(高解像度質量分析画像210)である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1画像がCT(Computed Tomography)画像であり、第2画像がCT画像よりも解像度が高いMRI(Magnetic Resonance Imaging)画像であり、第3画像が、CT画像の解像度を向上させた高解像度CT画像であってもよい。解像度が低い第1画像と、解像度が高い第2画像とから、第1画像の画素値に近づけた画素値を有するとともに、第2画像の構造(たとえば、被写体90の輪郭90cの情報)を適用し、解像度が高い第3画像を生成する構成であれば、第1画像、第2画像、および、第3画像は、どのような画像であってもよい。
【0158】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0159】
(項目1)
被写体の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像を取得するステップと、
被写体を撮影することにより生成された、前記質量分析画像よりも解像度が高い光学画像を取得するステップと、
解像度が高い前記光学画像の画素値と、解像度が低い前記質量分析画像の画素値とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成するステップとを備え、
前記高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理を行う、質量分析画像の処理方法。
【0160】
(項目2)
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理において、ユーザによって予め設定され、前記質量分析画像の画素値の変動量の調整に用いる係数に基づいて、前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する、項目1に記載の質量分析画像の処理方法。
【0161】
(項目3)
ユーザの入力に基づいて、前記係数の入力を受け付けるステップをさらに備え、
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理において、ユーザによって入力された前記係数に基づいて、前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する、項目2に記載の質量分析画像の処理方法。
【0162】
(項目4)
ユーザの入力に基づいて、既に入力された前記係数を変更するステップをさらに備え、
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理において、変更された前記係数に基づいて、前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する、項目3に記載の質量分析画像の処理方法。
【0163】
(項目5)
前記高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、前記高解像度質量分析画像の画素値である第1画素値と、前記質量分析画像の画素値である第2画素値との差を小さくする処理を繰り返し行い、
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理は、前記第1画素値と前記第2画素値との差を小さくする際の、前記第2画素値の変動量を調整することにより行われる、項目4に記載の質量分析画像の処理方法。
【0164】
(項目6)
前記係数は、値が小さくなると、前記第2画素値の変動量が大きくなる第1係数、または、値が大きくなるほど、前記第2画素値の変動量が大きくなる第2係数を含み、
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理は、前記第1係数の値を調整するか、または、前記第2係数の値を調整するかによって行われる、項目5に記載の質量分析画像の処理方法。
【0165】
(項目7)
前記高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、前記光学画像と前記質量分析画像と前記高解像度質量分析画像とに基づいて中間画像を生成し、生成した前記中間画像と、前記第1係数とに基づいて、前記高解像度質量分析画像を生成し、
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理は、前記第1係数を用いて行われる、項目6に記載の質量分析画像の処理方法。
【0166】
(項目8)
前記高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、前記光学画像に基づいて、中間画像を生成し、生成した前記中間画像と、前記第2係数とに基づいて、前記高解像度質量分析画像を生成し、
前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理は、前記第2係数を用いて行われる、項目6に記載の質量分析画像の処理方法。
【0167】
(項目9)
前記高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、生成した前記中間画像に対して、複数の前記係数のマトリクスである係数マトリクスを乗算することにより前記高解像度質量分析画像を生成するステップと、前記高解像度質量分析画像の画素値と、前記質量分析画像の画素値との差が小さくなるように、前記係数マトリクスを更新するステップと、を繰り返す、項目8に記載の質量分析画像の処理方法。
【0168】
(項目10)
第1画像を取得するステップと、
前記第1画像よりも解像度が高い第2画像を取得するステップと、
解像度が高い前記第2画像の画素値と、解像度が低い前記第1画像の画素値とに基づいて、解像度が高い第3画像を生成するステップとを備え、
前記第3画像を生成するステップにおいて、前記第2画像の画素値の変動量を調整する処理を行う、画像の処理方法。
【0169】
(項目11)
被写体の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像を取得する質量分析画像取得部と、
被写体を撮影することにより生成された、前記質量分析画像よりも解像度が高い光学画像を取得する光学画像取得部と、
解像度が高い前記光学画像の画素値と、解像度が低い前記質量分析画像の画素値とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成する画像処理部と、を備え、
前記画像処理部は、前記高解像度質量分析画像を生成する際に、前記質量分析画像の画素値の変動量を調整する処理を行うように構成されている、質量分析装置。
【0170】
(項目12)
被写体の質量分析データに基づいて生成された質量分析画像を取得するステップと、
被写体を撮影することにより生成された、前記質量分析画像よりも解像度が高い光学画像を取得するステップと、
前記光学画像に基づいて、中間画像を生成するステップと、
解像度が高い前記光学画像と、前記中間画像と、解像度が低い前記質量分析画像とに基づいて、解像度が高い高解像度質量分析画像を生成するステップとを備え、
前記高解像度質量分析画像を生成するステップにおいて、前記中間画像と、複数の係数のマトリクスである係数マトリクスとに基づいて、前記高解像度質量分析画像を生成するステップと、前記高解像度質量分析画像の画素値と、前記質量分析画像の画素値との差が小さくなるように、前記係数マトリクスを更新するステップと、を繰り返すことによって前記係数マトリクスを最適化し、最適化した前記係数マトリクスと前記中間画像とに基づいて、前記高解像度質量分析画像を生成する、質量分析画像の処理方法。
【符号の説明】
【0171】
3 質量分析画像取得部
4 光学画像取得部
5、201、401 画像処理部
10 質量分析画像(第1画像)
11 光学画像(第2画像)
12、12a、12b、12c、210 高解像度質量分析画像(第3画像)
17、211 中間画像
20 第1係数
22 係数マトリクス
23 第2係数
90 被写体
100、200、400 質量分析装置