(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103220
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】プリント配線板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/18 20060101AFI20240725BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H05K1/18 R
H05K3/46 B
H05K3/46 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007434
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐介
(72)【発明者】
【氏名】西野 達也
【テーマコード(参考)】
5E316
5E336
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA32
5E316AA38
5E316CC08
5E316CC32
5E316DD23
5E316DD24
5E316DD33
5E316EE31
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH11
5E316HH33
5E316JJ12
5E316JJ13
5E336AA04
5E336AA08
5E336BB03
5E336BB15
5E336BC02
5E336CC42
5E336CC53
5E336CC58
5E336EE01
5E336EE07
5E336GG16
5E336GG30
(57)【要約】
【課題】ビルドアップ層の強度不足を生じることなく、下部ビルドアップ層のキャビティに収容される部品とキャビティを形成する下部ビルドアップ層の側壁との隙間に十分な量の樹脂が充填されるプリント配線板を提供すること。
【解決手段】ビルドアップ層中に部品を内蔵するプリント配線板であって、ビルドアップ層が下部ビルドアップ層と上部ビルドアップ層とを備え、下部ビルドアップ層に形成されたキャビティ内に部品が収容され、下部ビルドアップ層および部品の上に上部ビルドアップ層が形成され、上部ビルドアップ層から浸み出して、キャビティを形成する下部ビルドアップ層の側壁と部品との隙間に充填された樹脂が硬化して部品をキャビティ内に埋め込み固定しており、部品はその上部の側面に、樹脂が充填される凹部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルドアップ層中に部品を内蔵するプリント配線板であって、
前記ビルドアップ層が下部ビルドアップ層と上部ビルドアップ層とを備え、
前記下部ビルドアップ層に形成されたキャビティ内に前記部品が収容され、
前記下部ビルドアップ層および前記部品の上に前記上部ビルドアップ層が形成され、
前記上部ビルドアップ層から浸み出して、前記キャビティを形成する前記下部ビルドアップ層の側壁と前記部品との隙間に充填された樹脂が硬化して、前記部品を前記キャビティ内に埋め込み固定しており、
前記部品はその上部の側面に、前記樹脂が充填される凹部を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記凹部は傾斜面、窪みもしくは段差からなるものである、請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記キャビティを形成する前記下部ビルドアップ層の側壁は、前記キャビティの上端開口部側で底部側よりも、互いに対向する側壁同士の間隔が広がるように傾斜している、請求項1または2記載のプリント配線板。
【請求項4】
ビルドアップ層中に部品を内蔵するプリント配線板を製造する方法であって、
下部ビルドアップ層を形成することと、
前記下部ビルドアップ層にキャビティを形成することと、
前記キャビティ内に前記部品を収容することと、
前記下部ビルドアップ層および前記部品の上に上部ビルドアップ層を形成することと、
前記上部ビルドアップ層から浸み出した樹脂を、前記下部ビルドアップ層の側壁と前記部品との隙間に充填することと、
前記充填した樹脂を硬化させて、前記部品を前記キャビティ内に埋め込み固定することと、
前記部品を、その部品の上部の側面に前記樹脂が充填される凹部を有するものとすることと、
を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルドアップ層中に部品を内蔵するプリント配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コア基板上に形成されるビルドアップ層中に部品を内蔵するプリント配線板が特許文献1で知られている。
図4は、この従来のプリント配線板を示す断面図である。
【0003】
この従来のプリント配線板では、図示しないコア基板上にビルドアップ層1が形成され、そのビルドアップ層1を構成する、二層の絶縁層を有する下部ビルドアップ層1aにキャビティ2が形成され、そのキャビティ2内に部品3が収容され、それら下部ビルドアップ層1aおよび部品3の上に、これもビルドアップ層1を構成する上部ビルドアップ層1bが形成されている。
【0004】
キャビティ2の底部には上記コア基板上の導体層の一部をなす部品支持層4が露出し、部品3は、その部品支持層4上に接着層5を介して固着されている。下部ビルドアップ層1aのキャビティ2を形成する側壁1cは、キャビティ2の上端開口部側がキャビティ2の底部側よりも、対向する側壁1c同士の間隔が広がるように垂直面から傾斜している。
【0005】
この傾斜した側壁1cは、下部ビルドアップ層1aおよび部品3の上に上部ビルドアップ層1bを形成する際に、上部ビルドアップ層1bの半硬化状態の絶縁層から浸み出す樹脂6を部品3と側壁1cとの隙間に導き、その隙間に充填された樹脂6はその後に硬化して、部品3をキャビティ2内に埋め込み固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらこの従来のプリント配線板では、下部ビルドアップ層1aの側壁1cの傾斜だけで樹脂6を部品3と側壁1cとの隙間に充填しているので、部品3と側壁1cとの隙間に十分な量の樹脂が充填されにくいという問題があった。
【0008】
そして、十分な量の樹脂が充填されるように側壁1cの垂直面からの傾斜を大きくし過ぎるとキャビティ2の周辺でビルドアップ層1の強度不足が新たに生じる可能性が考えられた。
【0009】
本発明の目的は、ビルドアップ層の強度不足を生じることなく、下部ビルドアップ層のキャビティに収容される部品とキャビティを形成する下部ビルドアップ層の側壁との隙間に十分な量の樹脂が充填されるプリント配線板および、そのプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のプリント配線板は、
ビルドアップ層中に部品を内蔵するプリント配線板であって、
前記ビルドアップ層が下部ビルドアップ層と上部ビルドアップ層とを備え、
前記下部ビルドアップ層に形成されたキャビティ内に前記部品が収容され、
前記下部ビルドアップ層および前記部品の上に前記上部ビルドアップ層が形成され、
前記上部ビルドアップ層から浸み出して、前記キャビティを形成する前記下部ビルドアップ層の側壁と前記部品との隙間に充填された樹脂が硬化して、前記部品を前記キャビティ内に埋め込み固定しており、
前記部品はその上部の側面に、前記樹脂が充填される凹部を有すること、
を特徴としている。
【0011】
なお、本発明のプリント配線板においては、前記凹部は、前記部品の上面に向けて内向きに傾斜した傾斜面で形成されているか、前記部品の上部側面が持つ窪みもしくは段差からなるものでもよい。このようにすれば、傾斜面、窪みもしくは段差を上部側面に持つ部品を選択して使用することで特に部品を加工しなくても凹部を有することができるので好ましい。
【0012】
また、本発明のプリント配線板においては、前記キャビティを形成する前記下部ビルドアップ層の側壁が、前記キャビティの上端開口部側で底部側よりも側壁同士の間隔が広がるように傾斜していると、樹脂の充填量がさらに増えるので好ましい。
【0013】
一方、本発明のプリント配線板の製造方法は、
ビルドアップ層中に部品を内蔵するプリント配線板を製造するに際し、
下部ビルドアップ層を形成することと、
前記下部ビルドアップ層にキャビティを形成することと、
前記キャビティ内に前記部品を収容することと、
前記下部ビルドアップ層および前記部品の上に上部ビルドアップ層を形成することと、
前記上部ビルドアップ層から浸み出した樹脂を、前記下部ビルドアップ層の側壁と前記部品との隙間に充填することと、
前記充填した樹脂を硬化させて、前記部品を前記キャビティ内に埋め込み固定することと、
前記部品を、部品上部の側面に前記樹脂が充填される凹部を有するものとすることと、
を含むことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は本発明のプリント配線板の一実施形態を模式的に示す断面図、(b)、(c)および(d)はその実施形態における部品の上部側面の凹部としての傾斜面、窪みおよび段差をそれぞれ示す斜視図である。
【
図2】(a)~(d)は、上記実施形態のプリント配線板を製造する、本発明のプリント配線板の製造方法の一実施形態における製造プロセスを示す説明図である。
【
図3】本発明のプリント配線板の他の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図4】従来のプリント配線板を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のプリント配線板の一実施形態が図面に基づいて説明される。
図1(a)は本発明のプリント配線板の一実施形態を模式的に示す側面図、
図1(b)、
図1(c)および
図1(d)はその実施形態における部品の上部側面の凹部としての傾斜面、窪みおよび段差をそれぞれ示す斜視図である。この実施形態のプリント配線板は、図示しないコア基板と、そのコア基板上に形成されたビルドアップ層1とを備えている。
【0016】
ビルドアップ層1を構成する下部ビルドアップ層1aは二層の絶縁層を有し、下部ビルドアップ層1aのそれら二層の絶縁層には、それらの絶縁層を貫通するキャビティ2が例えばレーザで形成されている。キャビティ2内には、例えばICやコンデンサ等の電子部品や、ビルドアップ層1上に実装される複数の電子部品を接続するインターポーザ基板等からなる部品3が収容されている。そしてそれら下部ビルドアップ層1aおよび部品3の上には、これもビルドアップ層1を構成する上部ビルドアップ層1bが形成されている。
【0017】
キャビティ2の底部には、上記コア基板の導体層の一部をなす部品支持層4が露出し、キャビティ2内の部品3は、その部品支持層4上に接着層5を介して固着されている。下部ビルドアップ層1aのキャビティ2を形成する側壁1cは、図示例では下部ビルドアップ層1aの上面に対し実質的に垂直に延在している。
【0018】
なお、下部ビルドアップ層1aも上部ビルドアップ層1bも、それぞれの絶縁層の上に導体層が形成され、絶縁層の上下に位置する導体層は絶縁層を貫通する図示しないビア導体で接続されている。
【0019】
この一方、キャビティ2内に収容される部品3は、部品上部の側面に凹部3aを有している。この凹部3aは、
図1(b)に示す例では部品3の側面から上面に向けて内向きに傾斜した傾斜面からなり、
図1(c)に示す例では窪み、
図1(d)に示す例では段差からなっている。なお、
図1(a)における凹部3aは、
図1(d)に示す段差からなるものを代表として示している。このようにすれば、特に部品3を加工しなくても凹部3aを有することができる。
【0020】
キャビティ2の垂直な側壁1cは、下部ビルドアップ層1aおよび部品3の上に上部ビルドアップ層1bを形成する際に、上部ビルドアップ層1bの半硬化状態の絶縁層(樹脂フィルム)から浸み出す樹脂6を部品3と側壁1cとの隙間に導く。この隙間に充填された樹脂6はその後に硬化して、部品3をキャビティ2内に埋め込み固定する。
【0021】
この実施形態のプリント配線板では、上記の隙間に存在する凹部3aに樹脂が溜まるので、ビルドアップ層1の強度不足を生じることなく、下部ビルドアップ層1aのキャビティ2に収容される部品3とキャビティ2を形成する下部ビルドアップ層1aの側壁1cとの隙間に、十分な量の樹脂6が充填される。
【0022】
図2(a)~
図2(d)は、上記実施形態のプリント配線板を製造する、本発明のプリント配線板の製造方法の一実施形態における製造プロセスを示す説明図である。この実施形態のプリント配線板の製造方法では先ず、
図2(a)に示されるように、図示しないコア基板上に下部ビルドアップ層1aが積層形成される。下部ビルドアップ層1aは二層の絶縁層を有し、下部ビルドアップ層1aのそれら二層の絶縁層には、それらの絶縁層を貫通するキャビティ2が例えばレーザ加工で形成される。
【0023】
レーザ加工により、キャビティ2を形成する下部ビルドアップ層1aの側壁1cは、図示例では下部ビルドアップ層1aの上面に対し実質的に垂直に延在する。また、キャビティ2の底部には、上記コア基板の上面の導体層の一部をなす部品支持層4が露出し、その部品支持層4上に接着剤を塗布して接着層5を形成する。
【0024】
次いで
図2(b)に示されるように、部品3が、例えば図示しないマウンタ等によってキャビティ2内に挿入され、部品支持層4上に接着層5を介して固着される。次いで
図2(c)に示されるように、下部ビルドアップ層1aおよび部品3の上に、例えば下記のようにして上部ビルドアップ層1bが積層形成される。
【0025】
すなわち、先ず下部ビルドアップ層1aおよび部品3の上に半硬化状態の絶縁層(樹脂フィルム)が配置され、その絶縁層が熱板等で加熱押圧されてその絶縁層を構成する樹脂が硬化することで、上面が平坦な絶縁層が形成される。次いでその絶縁層上に例えば銅の無電解めっきでシード層が形成され、そのシード層上にドライフィルムによりめっきレジスト層が形成され、そのめっきレジスト層に回路パターンに対応する開口が例えばレーザで形成される。次いでその開口内に露出したシード層上に例えば銅の電解めっきで導体回路が形成され、その後にめっきレジスト層とその下のシード層とが除去されて導体層が形成される。なお、下部ビルドアップ層1aの二層の絶縁層とそれらの上の導体層も、同様にして形成されている。
【0026】
次いで
図2(d)に示されるように、この上部ビルドアップ層1bの形成の際に、半硬化状態の絶縁層が加熱押圧されることでその絶縁層からキャビティ2内に樹脂6が浸み出し、その樹脂6が下部ビルドアップ層1aの側壁1cで部品3と側壁1cとの隙間に導かれてその隙間に充填される。
【0027】
上記隙間には凹部3aが存在し、その凹部3aに樹脂6が溜まるので、この実施形態のプリント配線板の製造方法によれば、ビルドアップ層1の強度不足を生じることなく、下部ビルドアップ層1aのキャビティ2に収容される部品3とキャビティ2を形成する下部ビルドアップ層1aの側壁1cとの隙間に、十分な量の樹脂6が充填される。この充填された樹脂6はその後に硬化して、部品3をキャビティ2内に埋め込み固定する。これにより上記実施形態のプリント配線板が製造される。
【0028】
図3は、本発明のプリント配線板の他の一実施形態を示す側面図であり、先の実施形態におけると同様の部分はそれと同一の符号にて示す。この実施形態のプリント配線板は先の実施形態のものと同様、図示しないコア基板と、そのコア基板上に形成されたビルドアップ層1とを備え、ビルドアップ層1を構成する下部ビルドアップ層1aは二層の絶縁層を有している。下部ビルドアップ層1aのそれら二層の絶縁層には、それらの絶縁層を貫通するキャビティ2が例えばレーザで形成され、キャビティ2内には部品3が収容されている。そしてそれら下部ビルドアップ層1aおよび部品3の上には、これもビルドアップ層1を構成する上部ビルドアップ層1bが形成されている。
【0029】
キャビティ2の底部には、上記コア基板の導体層の一部をなす部品支持層4が露出し、キャビティ2内の部品3は、その部品支持層4上に接着層5を介して固着されている。下部ビルドアップ層1aのキャビティ2を形成する側壁1cは、キャビティ2の上端開口部側でキャビティ2の底部側よりも、対向する側壁1c同士の間隔が広がるように垂直面に対し傾斜している。
【0030】
キャビティ2の傾斜した側壁1cは、下部ビルドアップ層1aおよび部品3の上に上部ビルドアップ層1bを形成する際に、上部ビルドアップ層1bの半硬化状態の絶縁層(樹脂フィルム)から浸み出す樹脂6を部品3と側壁1cとの隙間に導く。この隙間に充填された樹脂6はその後に硬化して、部品3をキャビティ2内に埋め込み固定する。
【0031】
この実施形態のプリント配線板では、部品3と傾斜した側壁1cとの隙間に存在する凹部3aに樹脂が溜まるので、ビルドアップ層1の強度不足を生じることなしに、キャビティ2に収容される部品3とキャビティ2の側壁1cとの隙間に、先の実施形態よりも多く樹脂が充填される。
【0032】
上述の実施形態ではプリント配線板はコア基板を備えているが、この発明のプリント配線板およびその製造方法は、コア基板を備えていないコアレスビルドアッププリント配線板にも同様にして適用されることができる。
【0033】
また、この発明のプリント配線板およびその製造方法は、ビルドアップ層1の上および/または下にさらに1または複数層のビルドアップ層を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ビルドアップ層
1a 下部ビルドアップ層
1b 上部ビルドアップ層
1c 側壁
2 キャビティ
3 部品
3a 凹部
4 部品支持層
5 接着層
6 樹脂