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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103225
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】水処理方法および水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20240725BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C02F1/44 D
B01D61/02 500
C02F1/44 A
C02F1/44 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007441
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 光矢
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA67Z
4D006KA33
4D006KD01
4D006KD30
4D006KE02P
4D006KE12P
4D006KE12Q
4D006KE14R
4D006KE28Q
4D006KE30P
4D006MC54
4D006PB02
4D006PB03
4D006PB05
(57)【要約】
【課題】ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を使用する逆浸透膜処理において簡易な方法で効果的なスライム抑制効果を得ることができる水処理方法および水処理装置を提供する。
【解決手段】ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を添加した被処理水について逆浸透膜によって処理して透過水および濃縮水を得る逆浸透膜処理工程を含み、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および浸透膜の合計膜面積に基づいて、前逆浸透膜による処理を行う、水処理方法、およびその方法を行うための水処理装置である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を添加した被処理水について逆浸透膜によって処理して透過水および濃縮水を得る逆浸透膜処理工程を含み、
被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記逆浸透膜による処理を行うことを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理方法であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて算出される、前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度の値が0.05mg/L as Cl以上で前記逆浸透膜による処理を行うことを特徴とする水処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の水処理方法であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整することを特徴とする水処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の水処理方法であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、前記逆浸透膜の合計膜面積、および前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度に基づいて、スライム発生リスクを算出する、または、算出した前記スライム発生リスクの値に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整することを特徴とする水処理方法。
【請求項5】
請求項1に記載の水処理方法であって、
(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+bの式(ここで、a,bは所定の定数)で求められる値に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整することを特徴とする水処理方法。
【請求項6】
ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を添加した被処理水について逆浸透膜によって処理して透過水および濃縮水を得る逆浸透膜処理手段を備え、
被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記逆浸透膜による処理を行うことを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の水処理装置であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて算出される、前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度の値が0.05mg/L as Cl以上で前記逆浸透膜による処理を行うことを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
請求項6に記載の水処理装置であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整することを特徴とする水処理装置。
【請求項9】
請求項6に記載の水処理装置であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、前記逆浸透膜の合計膜面積、および前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度に基づいて、スライム発生リスクを算出する、または、算出した前記スライム発生リスクの値に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整することを特徴とする水処理装置。
【請求項10】
請求項6に記載の水処理装置であって、
(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+bの式(ここで、a,bは所定の定数)で求められる値に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整することを特徴とする水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜用スライム抑制剤を使用して逆浸透膜処理を行う水処理方法および水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜を用いる水処理において、スライムの発生は度々問題となっている。
【0003】
逆浸透膜用スライム抑制剤として、塩素系酸化剤、臭素系酸化剤、ヨウ素系酸化剤等が知られている(例えば、特許文献1-3参照)。
【0004】
逆浸透膜処理において効果的なスライム抑制効果を得るためには、スライム抑制剤の添加量の管理を適切に行うことが望ましい。スライム抑制剤の添加量が過剰である場合はコストが増大し、スライム抑制剤の添加量が不足している場合はスライム発生リスクが増大する。
【0005】
スライム抑制剤の添加量の管理は、逆浸透膜処理の被処理水や濃縮水におけるスライム抑制剤の濃度で行うことが多い。逆浸透膜用スライム抑制剤として塩素系酸化剤や臭素系酸化剤を使用する場合には、逆浸透膜の被処理水に含まれる塩素系酸化剤や臭素系酸化剤の濃度と濃縮倍率(濃縮倍率=1/(1-回収率)、または濃縮倍率=供給水流量/濃縮水流量)とに基づいて、逆浸透膜の濃縮水に含まれる塩素系酸化剤や臭素系酸化剤の濃度を管理することができる(例えば、特許文献4,5参照)。
【0006】
また、逆浸透膜処理の被処理水中の菌体数から、スライム抑制剤の添加量を算出する方法(特許文献6,7参照)や、逆浸透膜処理の濃縮水の全有機炭素(TOC)から、スライム抑制剤の添加の要否を判断する方法が提案されている(特許文献8参照)。
【0007】
しかし、被処理水中の菌体数の測定はオフラインでの分析になるため、逆浸透膜処理の被処理水の水質に応じて迅速にスライム抑制剤の添加量を調整することは困難である。また、全有機炭素(TOC)の測定では易分解性有機物と難分解性有機物を区別できないため、スライムの発生リスクを正確に予測することは困難である。
【0008】
一方、逆浸透膜用スライム抑制剤としてヨウ素系酸化剤を使用する場合、有効成分であるヨウ素(有効ヨウ素)が高分子膜である逆浸透膜に吸着することが知られている(特許文献3参照)。このため、塩素系酸化剤や臭素系酸化剤を使用する場合のように被処理水に含まれるヨウ素系酸化剤の濃度と濃縮倍率とに基づいて濃縮水に含まれるヨウ素系酸化剤の濃度を管理することが困難である。また、これまで、逆浸透膜の濃縮水に流出する有効ヨウ素濃度に関する知見はなく、逆浸透膜の濃縮水に含まれる有効ヨウ素濃度を管理することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-263510号公報
【特許文献2】特開2015-062889号公報
【特許文献3】国際特許出願公開第2021/192582号パンフレット
【特許文献4】特開2020-081939号公報
【特許文献5】特開2021-181074号公報
【特許文献6】特開2002-143849号公報
【特許文献7】特開2014-171988号公報
【特許文献8】特開2016-120466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を使用する逆浸透膜処理において簡易な方法で効果的なスライム抑制効果を得ることができる水処理方法および水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を添加した被処理水について逆浸透膜によって処理して透過水および濃縮水を得る逆浸透膜処理工程を含み、被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記逆浸透膜による処理を行う、水処理方法である。
【0012】
前記水処理方法において、前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて算出される、前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度(ヨウ素系酸化剤濃度)の値が0.05mg/L as Cl以上で前記逆浸透膜による処理を行うことが好ましい。
【0013】
前記水処理方法において、前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整することが好ましい。
【0014】
前記水処理方法において、前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、前記逆浸透膜の合計膜面積、および前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度に基づいて、スライム発生リスクを算出する、または、算出した前記スライム発生リスクの値に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整することが好ましい。
【0015】
前記水処理方法において、(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+bの式(ここで、a,bは所定の定数)で求められる値に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整することが好ましい。
【0016】
本発明は、ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を添加した被処理水について逆浸透膜によって処理して透過水および濃縮水を得る逆浸透膜処理手段を備え、被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記逆浸透膜による処理を行う、水処理装置である。
【0017】
前記水処理装置において、前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて算出される、前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度(ヨウ素系酸化剤濃度)の値が0.05mg/L as Cl以上で前記逆浸透膜による処理を行うことが好ましい。
【0018】
前記水処理装置において、前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整することが好ましい。
【0019】
前記水処理装置において、前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、前記逆浸透膜の合計膜面積、および前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度に基づいて、スライム発生リスクを算出する、または、算出した前記スライム発生リスクの値に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整することが好ましい。
【0020】
前記水処理装置において、(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+bの式(ここで、a,bは所定の定数)で求められる値に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって、ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を使用する逆浸透膜処理において簡易な方法で効果的なスライム抑制効果を得ることができる水処理方法および水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
図3】実施例1における、濃縮水中の有効ヨウ素濃度と(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水流量/合計膜面積)の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明の実施形態に係る水処理装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
【0025】
図1に示す水処理装置1は、ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を添加した被処理水について逆浸透膜によって処理して透過水および濃縮水を得る逆浸透膜処理手段として、逆浸透膜処理装置10を備える。水処理装置1は、被処理水の流量を測定する被処理水流量測定手段として、流量計12を備えてもよい。水処理装置1は、被処理水を貯留するための被処理水槽を備えてもよい。
【0026】
図1の水処理装置1において、逆浸透膜処理装置10の被処理水入口には、被処理水配管14が接続されている。逆浸透膜処理装置10の透過水出口には、透過水配管16が接続され、濃縮水出口には、濃縮水配管18が接続されている。被処理水配管14には、逆浸透膜処理の被処理水にスライム抑制剤を添加するスライム抑制剤添加手段として、スライム抑制剤添加配管20が接続されている。被処理水配管14には、流量計12が設置されている。
【0027】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1の動作について説明する。
【0028】
水処理装置1において、被処理水は、被処理水配管14を通して、逆浸透膜処理装置10に送液される。被処理水は、必要に応じて被処理水槽に送液、貯留された後、逆浸透膜処理装置10に送液されてもよい。ここで、被処理水配管14において逆浸透膜処理の被処理水に、ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤がスライム抑制剤添加配管20を通して添加される(スライム抑制剤添加工程)。スライム抑制剤は、逆浸透膜処理装置10の前段において添加されればよく、被処理水配管14において添加されてもよいし、被処理水槽において添加されてもよい。
【0029】
逆浸透膜処理装置10において、スライム抑制剤が添加された被処理水について逆浸透膜によって処理されて透過水および濃縮水が得られる(逆浸透膜処理工程)。逆浸透膜処理で得られた透過水は、透過水配管16を通して排出され、濃縮水は、濃縮水配管18を通して排出される。
【0030】
本発明者らが鋭意検討した結果、ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を使用する逆浸透膜処理を行う水処理において、濃縮水中の有効ヨウ素濃度は、回収率にかかわらず、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積と相関関係があることを見出した。そして、この相関関係を利用して、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積から、逆浸透膜処理の濃縮水中のヨウ素系酸化剤の濃度を算出することが可能であり、また、スライムの発生リスクを予測することも可能である。
【0031】
そこで、水処理装置1では、逆浸透膜処理装置10において、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、逆浸透膜による処理を行う。これによって、ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を使用する逆浸透膜処理において簡易な方法で効果的なスライム抑制効果を得ることができる。
【0032】
例えば、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積に基づいて算出される、濃縮水中の有効ヨウ素濃度(ヨウ素系酸化剤濃度)の値が0.05mg/L as Cl以上で、好ましくは0.05mg/L as Cl以上130mg/L as Cl以下で、より好ましくは0.1mg/L as Cl以上10mg/L as Cl以下で、逆浸透膜による処理を行う。濃縮水中の有効ヨウ素濃度(ヨウ素系酸化剤濃度)の値が0.05mg/L as Cl以上で逆浸透膜による処理を行うことによって、効果的なスライム抑制効果を得ることができる。
【0033】
例えば、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積に基づいて算出される、濃縮水中の有効ヨウ素濃度(ヨウ素系酸化剤濃度)の値が0.05mg/L as Cl以上となるように制御して、好ましくは0.05mg/L as Cl以上130mg/L as Cl以下となるように制御して、より好ましくは0.1mg/L as Cl以上10mg/L as Cl以下となるように制御して、逆浸透膜による処理を行ってもよい。濃縮水中の有効ヨウ素濃度(ヨウ素系酸化剤濃度)の値が0.05mg/L as Cl以上となるように制御して逆浸透膜による処理を行うことによって、効果的なスライム抑制効果を得ることができる。
【0034】
例えば、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積に基づいて算出した、濃縮水中の有効ヨウ素濃度(ヨウ素系酸化剤濃度)の値が0.05mg/L as Cl以上となるように制御して、好ましくは0.05mg/L as Cl以上130mg/L as Cl以下となるように制御して、より好ましくは0.1mg/L as Cl以上10mg/L as Cl以下となるように制御して、逆浸透膜による処理を行ってもよい。算出した濃縮水中の有効ヨウ素濃度(ヨウ素系酸化剤濃度)の値が0.05mg/L as Cl以上となるように制御して逆浸透膜による処理を行うことによって、効果的なスライム抑制効果を得ることができる。
【0035】
また、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整してもよい。これによって、簡易な方法で効果的なスライム抑制効果を得ることができる。
【0036】
例えば、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積に基づく所定の式である、(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+bの式(ここで、a,bは所定の定数)で求められる値に基づいて、スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整すればよい。例えば、実施例において求めた、(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×8.55+0.205の式で求められる値に基づいて、スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整すればよい。なお、上記式において(被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)は、有効ヨウ素が逆浸透膜に吸着することを考慮するファクターである。
【0037】
被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、濃縮水中のヨウ素系酸化剤の濃度を算出してもよい。これによって、簡易な方法で逆浸透膜処理の濃縮水中のヨウ素系酸化剤の濃度を算出することができる。そして、算出した濃縮水中のヨウ素系酸化剤の濃度に基づいて、スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整してもよい。これによって、簡易な方法で効果的なスライム抑制効果を得ることができる。
【0038】
例えば、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積に基づく所定の式である、(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+bの式(ここで、a,bは所定の定数)によって、濃縮水中のヨウ素系酸化剤の濃度を算出することができる。例えば、実施例において求めた、(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×8.55+0.205の式によって、濃縮水中のヨウ素系酸化剤の濃度を算出することができる。
【0039】
被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、逆浸透膜の合計膜面積、および前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度に基づいて、スライム発生リスクを算出することもできる。そして、算出したスライム発生リスクの値に基づいて、スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整してもよい。これによって、簡易な方法で効果的なスライム抑制効果を得ることができる。
【0040】
例えば、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積に基づく所定の式である、濃縮水中の有効ヨウ素濃度/[(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+b]の式(ここで、a,bは所定の定数)によって、スライム発生リスクを算出することができる。例えば、実施例において求めた、濃縮水中の有効ヨウ素濃度/[(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×8.55+0.205]の式によって、スライム発生リスクを算出することができる。
【0041】
被処理水中の有効ヨウ素濃度は、例えば全塩素濃度または遊離塩素濃度として塩素濃度測定装置等によって測定してもよいし、所定の濃度のヨウ素系酸化剤を添加するポンプの添加量等から算出してもよい。濃縮水中の有効ヨウ素濃度は、例えば全塩素濃度または遊離塩素濃度として塩素濃度測定装置等によって測定すればよい。
【0042】
有効ヨウ素濃度は、DPD(N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により求めることができる。DPDは酸化剤によって酸化され、酸化剤としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、過酸化水素、オゾン等が挙げられ、測定対象とすることができる。全塩素として定量される塩素の形態は、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、塩素やクロラミン、ジクロラミン等の結合塩素等の酸化力を有する全ての形態である。臭素やヨウ素についても同様に酸化力を有する全ての形態を測定することができる。遊離塩素として定量されるのは「全塩素」測定方法(「JIS K 0120:2013の33.残留塩素」)のうちヨウ化カリウムを加えずに測定できる形態であり、例えば次亜塩素酸、次亜臭素酸、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0043】
「全塩素」は「全ヨウ素」に換算することが可能である。具体的には「塩素の分子量」と「ヨウ素の分子量」を元に換算する。すなわち、「全塩素」×(126.9/35.45)≒「全塩素」×3.58=「全ヨウ素」となる。「遊離塩素」も同様にして「遊離ヨウ素」に換算することが可能である。有効ヨウ素濃度を全塩素濃度換算値で表した場合には、そのことを明示するために「as Cl」が付記されている。
【0044】
被処理水の流量について、例えば流量計12によって流量(m/h)を測定することができる。
【0045】
逆浸透膜の合計膜面積は、水処理装置1で用いる逆浸透膜の合計の膜面積(m)である。
【0046】
水処理装置1は、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積に基づいて算出される、濃縮水中の有効ヨウ素濃度(ヨウ素系酸化剤濃度)の値が上記所定の範囲となるように制御するための制御手段、または、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積に基づいてスライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整して制御するための制御手段、または、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、逆浸透膜の合計膜面積、および前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度に基づいてスライム発生リスクを算出して算出したスライム発生リスクの値に基づいてスライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整するための制御手段として、制御装置を備えてもよい。
【0047】
図2の水処理装置3は、図1の水処理装置1の構成に加えて、制御装置22を備える。水処理装置3において、制御装置22は、流量計12と、スライム抑制剤添加配管20に設置されたスライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間等を調整するためのポンプやバルブ等の調整手段と、有線または無線で通信可能なように接続されている。これによって、濃縮水中の有効ヨウ素濃度(ヨウ素系酸化剤濃度)の値が上記所定の範囲となるように制御し、または、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、および逆浸透膜の合計膜面積に基づいてスライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整して制御し、または、被処理水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量、逆浸透膜の合計膜面積、および前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度に基づいてスライム発生リスクを算出して算出したスライム発生リスクの値に基づいてスライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整して制御することができる。
【0048】
制御装置22は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等から構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、ポンプの流量、バルブの開閉度等を制御する機能を有するものである。
【0049】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置において用いられるスライム抑制剤は、ヨウ素系酸化剤を含む。
【0050】
ヨウ素系酸化剤とは、元素としてヨウ素を含む酸化剤のことであり、それ自体が酸化剤として機能するヨウ素化合物であってもよいし、ヨウ素化合物と酸化剤との反応物であってもよい。ヨウ素の単体(すなわちI)も酸化力を有するので、ヨウ素単体を含む溶液もヨウ素系酸化剤の範疇に含まれる。ヨウ素系酸化剤に元素として含まれるヨウ素はどのような形態であってもよく、例えば、分子状のヨウ素、ヨウ化物、多ヨウ化物、ヨウ素酸、次亜ヨウ素酸、ヨウ化水素、ポリビニルピロリドンやシクロデキストリン等の有機溶媒に配位されたヨウ素のうちのいずれか1つであってよく、また、これらの形態が組み合わされていてもよい。これらのいずれかの形態のヨウ素を得るための方法としては、ベンゼンや四塩化炭素等の無極性溶媒やアルコール類にヨウ素単体を溶解する方法、アルカリ剤と水とを用いてヨウ素単体を溶解する方法、またはヨウ化物と水とを用いてヨウ素単体を溶解する方法等を用いることができ、ヨウ化物およびヨウ化物イオンのうち少なくとも1つを含有する溶液に酸または酸化剤を加えることによって全ヨウ素を得てもよい。また、ポリビニルピロリドンにヨウ素を配位させたポピドンヨード、シクロデキストリンにヨウ素を包接させたヨウ素包接シクロデキストリン、有機ポリマーおよび界面活性剤等にヨウ素を担持させたヨードホール等を用いて、ポリビニルピロリドンやシクロデキストリン等の有機溶媒に配位されたヨウ素を得てもよい。
【0051】
ヨウ素系酸化剤としては、取り扱いの容易性や、被処理水および処理水(透過水)の水質への影響が小さいこと等の観点から、有機物を用いずにヨウ素単体をヨウ化物と水とを用いて溶解したもの、すなわち水とヨウ素とヨウ化物とを含む溶液が好ましい。ヨウ素単体は単独では水への溶解度が低いが、ヨウ化物またはヨウ化物イオンが共存することによって水に溶解するようになる。そしてヨウ素単体をヨウ化物と水とを用いて溶解したものでは、ヨウ素濃度が比較的高濃度でかつ安定な一液型の酸化剤が得られ、取り扱いが容易である。なお、ヨウ化物とは、酸化数が-1であるヨウ素化合物のことを指す。ヨウ化物として、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化水素、ヨウ化銀、ヨウ化銅、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。これらのヨウ化物は水に溶解して解離することでヨウ化物イオンを与える。
【0052】
ヨウ素化合物と酸化剤との反応物であるヨウ素系酸化剤を得る場合には、ヨウ素化合物として、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化水素、ヨウ化銀、ヨウ化銅、ヨウ化亜鉛等を用いることができ、これらの2種類以上をともに使用してもよい。この場合のヨウ素化合物としては、コスト等の観点から、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムを用いることが好ましい。ヨウ素化合物と反応させる酸化剤としては、ヨウ素よりも酸化還元電位(ORP)の高い酸化剤を使用することができる。使用できる酸化剤の例としては、結合塩素や、安定化次亜臭素酸組成物等も挙げられるが、反応の速さ等の観点から遊離塩素として検出される形態の酸化剤であることが好ましい。遊離塩素として検出される形態の酸化剤としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸、またはそれらの塩等が代表的なものとして挙げられる。なお、安定化次亜臭素酸組成物とは、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含むものであり、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物、または、臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物にさらにスルファミン酸化合物を反応させて得た生成物であってもよい。ここでいう臭素系酸化剤としては、例えば、臭素単体、塩化臭素、臭素酸、臭素酸塩等が挙げられる。ヨウ素化合物と酸化剤との反応物であるヨウ素系酸化剤を得る場合、ヨウ素化合物と酸化剤とを含むスライム抑制剤を被処理水に添加してもよいし、ヨウ素化合物と酸化剤とを別々にスライム抑制剤として被処理水に添加して被処理水中でヨウ素系酸化剤を生成させてもよい。また、例えば、次亜塩素酸含有被処理水等の酸化剤を含む被処理水にヨウ素化合物を添加してもよく、この場合も、「ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を添加した被処理水」となる。
【0053】
ヨウ素系酸化剤がヨウ化カリウム等のヨウ化物塩を用いてヨウ素を溶解させた酸化剤、すなわちヨウ素とヨウ化物とを含有する酸化剤である場合、ヨウ素に対するヨウ化物(ヨウ化物塩およびヨウ化物イオンのうちの少なくとも1つ)のモル比(ヨウ化物(ヨウ化物塩およびヨウ化物イオンのうちの少なくとも1つ)/ヨウ素)は、添加薬品コスト等の観点から、1~1.9であることが好ましく、1.5~1.9であることがより好ましく、1.8~1.9であることがさらに好ましい。
【0054】
ヨウ素はヨウ化物塩を用いることによって水等に溶解させることが可能であるが、ヨウ化物塩はヨウ素よりも高価であり、ヨウ素に対するヨウ化物のモル比が高いほど薬品コストは増大するため、ヨウ素に対するヨウ化物のモル比は低いことが好ましい。一方、ヨウ素に対するヨウ化物のモル比が低すぎる場合、全ヨウ素収率(混合したヨウ素に対する全ヨウ素量)が低くなってしまうため、所定の値以上のモル比を保つことが好ましい。
【0055】
スライム抑制剤は、安定性等の観点からpHは3以上9以下であることが好ましく、3以上7以下であることがより好ましく、pH4以上6.5であることがさらに好ましい。pHが3未満になるとヨウ素の結晶が析出する可能性があり、pH9を超えると有効成分が著しく低下する可能性がある。また、スライム抑制剤の輸送コスト等を考慮した場合、高濃度で安定性が高いことが好ましく、全ヨウ素濃度は3質量%以上であることが好ましく、3質量%以上40質量%以下の範囲であることがより好ましく、10質量%以上25質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0056】
被処理水のpHは、2~12の範囲であることが好ましく、4~9の範囲であることがより好ましい。被処理水のpHが9を超えると有効成分の低下によってスライム抑制効果が低下し、さらに12を超えると十分なスライム抑制効果が得られない場合があり、2未満であると、ヨウ素の結晶が析出し、十分なスライム抑制効果が得られない場合がある。
【0057】
スライム抑制剤の被処理水への添加方法としては、スライム抑制剤を連続的に添加する連続添加でもよいし、被処理水中にスライム抑制剤を添加する添加期間と被処理水中にスライム抑制剤を添加しない無添加期間とを設ける間欠添加でもよい。すなわち、間欠添加では、被処理水にスライム抑制剤を添加して被処理水を逆浸透膜処理装置10に供給する工程と、被処理水にスライム抑制剤を添加せずに被処理水を逆浸透膜処理装置10に供給する工程とを含む。ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤による殺菌力は極めて高く、極めて短時間で殺菌効果が得られるため、ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を間欠的に被処理水中に含有させることによって十分な逆浸透膜のスライム抑制効果が得られる。
【0058】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置で用いられる逆浸透膜の膜種および操作圧力に特に制限はなく、逆浸透膜から透過水を得られる圧力で運転されていればよい。たとえば、かん水用逆浸透膜(低圧逆浸透膜)を0.2~1.2MPaで運転してもよく、海水淡水化用逆浸透膜(高圧逆浸透膜)を3~5.5MPaで運転してもよく、海水淡水化用逆浸透膜(高圧逆浸透膜)をかん水用途に1.5~3.5MPaで運転してもよい。
【0059】
逆浸透膜には、中性膜、アニオン荷電膜、およびカチオン荷電膜があり、いずれの膜であってもよい。
【0060】
逆浸透膜として昨今主流であるポリアミド系高分子膜を用いる場合に、本実施形態に係る水処理方法および水処理装置を好適に適用することができる。ポリアミド系高分子膜は、酸化剤に対する耐性が比較的低く、遊離塩素等をポリアミド系高分子膜に連続的に接触させると、膜性能の著しい低下が起こる場合がある。しかしながら、被処理水にヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を添加する水処理方法ではポリアミド系高分子膜においても、このような著しい膜性能の低下が起こりにくい。
【0061】
逆浸透膜がポリアミド系の逆浸透膜である場合、逆浸透膜の膜面の塩素含有量が0.1atom%以上であることが好ましく、0.5atom%以上であることがより好ましい。逆浸透膜の膜面の塩素含有量が0.1atom%未満であると、透過水量が低下する場合がある。逆浸透膜面の塩素含有量は、X線電子分光法によって測定することができる。
【0062】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置における逆浸透膜処理の被処理水は、有機物を含む被処理水であってもよく、有機物および窒素化合物を含む被処理水であってもよい。有機物を含む被処理水は、例えば、排水処理手段から得られた処理水である。排水処理手段は、生物処理、凝集沈殿、加圧浮上、砂ろ過、生物活性炭等のいずれを用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。被処理水は、生物処理手段(生物処理工程)から得られた生物処理水であってもよい。
【0063】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置は、特に、排水回収への適用、例えば、電子産業排水、食品製造排水、飲料水製造排水、化学工場排水、メッキ工場排水等の回収への適用が考えられる。特に電子産業排水の回収水にはアンモニアが含まれることが多く、排水回収するフローとして、例えば、生物処理装置を備える生物処理システムの後段に、本実施形態に係る水処理装置および水処理方法を適用する、逆浸透膜処理装置10を備える水処理装置を有するフローが考えられる。
【0064】
逆浸透膜処理の前処理工程として、生物処理、凝集処理、凝集沈殿処理、加圧浮上処理、ろ過処理、膜分離処理、活性炭処理、オゾン処理、紫外線照射処理等の生物学的、物理的または化学的な前処理、およびこれらの前処理のうちの2つ以上の組み合わせが必要に応じて行われてもよい。
【0065】
水処理装置1において、逆浸透膜処理装置の他に、ポンプ、安全フィルタ、流量測定装置、圧力測定装置、温度測定装置、酸化還元電位(ORP)測定装置、残留塩素測定装置、導電率測定装置、pH測定装置、エネルギー回収装置等を必要に応じて備えてもよい。
【0066】
水処理装置1において、必要に応じて、ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤以外のスライム抑制剤や、pH調整剤が、被処理水に添加されてもよい。
【0067】
本明細書は、以下の実施形態を含む。
(1)ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を添加した被処理水について逆浸透膜によって処理して透過水および濃縮水を得る逆浸透膜処理工程を含み、
被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記逆浸透膜による処理を行う、水処理方法。
【0068】
(2)(1)に記載の水処理方法であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて算出される、前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度(ヨウ素系酸化剤濃度)の値が0.05mg/L as Cl以上で前記逆浸透膜による処理を行う、水処理方法。
【0069】
(3)(1)または(2)に記載の水処理方法であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整する、水処理方法。
【0070】
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載の水処理方法であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記濃縮水中のヨウ素系酸化剤の濃度を算出する、水処理方法。
【0071】
(5)(4)に記載の水処理方法であって、
算出した前記濃縮水中のヨウ素系酸化剤の濃度に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整する、水処理方法。
【0072】
(6)(1)から(5)のいずれか1つに記載の水処理方法であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、前記逆浸透膜の合計膜面積、および前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度に基づいて、スライム発生リスクを算出する、水処理方法。
【0073】
(7)(6)に記載の水処理方法であって、
算出した前記スライム発生リスクの値に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整する、水処理方法。
【0074】
(8)(1)に記載の水処理方法であって、
(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+bの式(ここで、a,bは所定の定数)で求められる値に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整する、水処理方法。
【0075】
(9)(1)または(8)に記載の水処理方法であって、
(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+bの式(ここで、a,bは所定の定数)によって、前記濃縮水中のヨウ素系酸化剤の濃度を算出する、水処理方法。
【0076】
(10)(1),(8)または(9)に記載の水処理方法であって、
濃縮水中の有効ヨウ素濃度/[(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+b]の式(ここで、a,bは所定の定数)によって、スライム発生リスクを算出する、水処理方法。
【0077】
(11)ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を添加した被処理水について逆浸透膜によって処理して透過水および濃縮水を得る逆浸透膜処理手段を備え、
被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記逆浸透膜による処理を行う、水処理装置。
【0078】
(12)(11)に記載の水処理装置であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて算出される、前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度(ヨウ素系酸化剤濃度)の値が0.05mg/L as Cl以上で前記逆浸透膜による処理を行う、水処理装置。
【0079】
(13)(11)または(12)に記載の水処理装置であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整する、水処理装置。
【0080】
(14)(11)から(13)のいずれか1つに記載の水処理装置であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、および前記逆浸透膜の合計膜面積に基づいて、前記濃縮水中のヨウ素系酸化剤の濃度を算出する、水処理装置。
【0081】
(15)(14)に記載の水処理装置であって、
算出した前記濃縮水中のヨウ素系酸化剤の濃度に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整する、水処理装置。
【0082】
(16)(11)から(15)のいずれか1つに記載の水処理装置であって、
前記被処理水中の有効ヨウ素濃度、前記被処理水の流量、前記逆浸透膜の合計膜面積、および前記濃縮水中の有効ヨウ素濃度に基づいて、スライム発生リスクを算出する、水処理装置。
【0083】
(17)(16)に記載の水処理装置であって、
算出した前記スライム発生リスクの値に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整する、水処理装置。
【0084】
(18)(11)に記載の水処理装置であって、
(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+bの式(ここで、a,bは所定の定数)で求められる値に基づいて、前記スライム抑制剤の濃度、添加量、および添加時間のうちの少なくとも1つを調整する、水処理装置。
【0085】
(19)(11)または(18)に記載の水処理装置であって、
(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+bの式(ここで、a,bは所定の定数)によって、前記濃縮水中のヨウ素系酸化剤の濃度を算出する、水処理装置。
【0086】
(20)(11),(18)または(19)に記載の水処理装置であって、
濃縮水中の有効ヨウ素濃度/[(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+b]の式(ここで、a,bは所定の定数)によって、スライム発生リスクを算出する、水処理装置。
【実施例0087】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0088】
<実施例1>
以下に示す実験条件で、濃縮水中の有効ヨウ素濃度と(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水流量/合計膜面積)との関係を調べた。
【0089】
[実験条件]
・装置の構成:図1に示す水処理装置
・試験水:相模原井水
・逆浸透膜:ポリアミド系高分子膜(中性膜、LFC3-LD-4040、日東電工社製)
ポリアミド系高分子膜(中性膜、LFC3-LD、日東電工社製)
・スライム抑制剤:表1に示す組成でヨウ素単体をヨウ化物(ヨウ化カリウム)と水とを用いて溶解したヨウ素系酸化剤
・流量計(東京計装製、ACシリーズ、O-180/780シリーズ)、(TOFCO製、FC-Aシリーズ)
・有効ヨウ素濃度の測定:全塩素濃度を、HACH社の多項目水質分析計DR/3900を用いて測定し、有効ヨウ素濃度に換算
【0090】
【表1】
【0091】
[実験結果]
実験で得られた濃縮水中の有効ヨウ素濃度と(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水流量/合計膜面積)の関係を図3に示す。濃縮水中の有効ヨウ素濃度と、(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水流量/合計膜面積)とに、近似式(y=8.5541x-0.205、R2=0.9932、y:濃縮水中の有効ヨウ素濃度(mg/L),x:(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水流量/合計膜面積)((mg/L)×(m/h)))で相関関係(比例関係)があることが確認できた。
【0092】
<実施例2>
(殺菌効果の確認)
ヨウ素系酸化剤を模擬水に添加して殺菌効果を確認した。模擬水は、脱塩素処理した相模原井水にブイヨンを添加して生菌数が10となるように調製した。菌数は、サンアイバイオチェッカーTTC(三愛石油製)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
被処理水中の有効ヨウ素濃度が0.05(mg/L as Cl)以上で良好な殺菌効果が得られた。
【0095】
<実施例3>
(スライム発生リスクの検討)
スライムで汚染されていない逆浸透膜、またはスライムで汚染された逆浸透膜を用いて、実施例1と同様の実験装置で運転し、被処理水中の有効ヨウ素濃度、濃縮水中の有効ヨウ素濃度、被処理水の流量を測定し、濃縮水中の有効ヨウ素濃度/[(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×8.55+0.205]の値を算出した。スライム汚染された逆浸透膜として、通水差圧が初期の通水差圧よりも10kPa以上増加した逆浸透膜を用いた。結果を表3に示す。
【0096】
【表3】
【0097】
表3の結果より、濃縮水中の有効ヨウ素濃度/[(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×a+b]の値によって、スライム発生リスクを予測できることがわかった。例えば、表4に示すように、濃縮水中の有効ヨウ素濃度/[(被処理水中の有効ヨウ素濃度×被処理水の流量/逆浸透膜の合計膜面積)×8.55+0.205]の値が、0.85以上の場合、スライム発生リスクが「低」、0.65以上0.85未満の場合、スライム発生リスクが「中」、0.65未満の場合、スライム発生リスクが「高」とすればよい。スライム発生リスクが「低」となるように、スライム抑制剤の濃度等を調整すればよい。
【0098】
【表4】
【0099】
以上の通り、ヨウ素系酸化剤を含むスライム抑制剤を使用する逆浸透膜処理において簡易な方法で効果的なスライム抑制効果を得ることができることがわかった。また、簡易な方法で逆浸透膜処理の濃縮水中のヨウ素系酸化剤の濃度を算出することができることがわかった。簡易な方法でスライム発生リスクを予測できることもわかった。
【符号の説明】
【0100】
1,3 水処理装置、10 逆浸透膜処理装置、12 流量計、14 被処理水配管、16 透過水配管、18 濃縮水配管、20 スライム抑制剤添加配管、22 制御装置。
図1
図2
図3