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特開2024-103231光デバイス、光送信装置及び光受信装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103231
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】光デバイス、光送信装置及び光受信装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/025 20060101AFI20240725BHJP
   H04B 10/50 20130101ALI20240725BHJP
   H04B 10/67 20130101ALI20240725BHJP
【FI】
G02F1/025
H04B10/50
H04B10/67
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007448
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA17
2K102BA02
2K102BA11
2K102BA14
2K102BB01
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA23
2K102DA05
2K102DA07
2K102DD03
2K102EA02
2K102EA08
2K102EA12
5K102AA13
5K102PB01
5K102PH42
(57)【要約】
【課題】光入力部付近での光吸収の発熱が抑制されることで長期信頼性の向上を図る光デバイス等を提供する。
【解決手段】光デバイスは、基板上に形成されたリブ型光導波路と、前記リブ型光導波路の一方のスラブ領域に形成されたPドープ領域と、前記リブ型光導波路の他方のスラブ領域に形成されたNドープ領域と、を有する。光デバイスは、前記Pドープ領域に接続する第1の電極と、前記Nドープ領域に接続する第2の電極と、光吸収構造と、を有する。光吸収構造は、第1の電極と第2の電極との間を流れる電流に応じてリブ型光導波路を通過する信号光を光吸収する際に、リブ型光導波路の光入力部を通過する信号光の光減衰率を、リブ型光導波路の光入力部を除く少なくとも一部を通過する信号光の光減衰率に比較して小さくする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたリブ型光導波路と、
前記リブ型光導波路の一方のスラブ領域に形成されたPドープ領域と、
前記リブ型光導波路の他方のスラブ領域に形成されたNドープ領域と、
前記Pドープ領域に接続する第1の電極と、
前記Nドープ領域に接続する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間を流れる電流に応じて前記リブ型光導波路を通過する信号光を光吸収する際に、前記リブ型光導波路の光入力部を通過する信号光の光減衰率を、前記リブ型光導波路の光入力部を除く少なくとも一部を通過する前記信号光の光減衰率に比較して小さくする光吸収構造と、
を有することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記第1の電極及び前記第2の電極は、
電気抵抗を有する材料で構成し、
前記光吸収構造は、
前記光入力部での前記第1の電極と前記第2の電極との間に流れる電流を前記リブ型光導波路の光出力部での前記電流に比較して小さくすることで、前記光入力部を通過する前記信号光の光減衰率を、前記リブ型光導波路の光入力部を除く少なくとも一部を通過する前記信号光の光減衰率に比較して小さくする構造にしたことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記光吸収構造は、
前記第1の電極に接続すると共に、前記リブ型光導波路の前記光出力部付近に配置された第1の電極パッドと、
前記第2の電極に接続すると共に、前記リブ型光導波路の前記光出力部付近に配置された第2の電極パッドと、
を有することを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記光吸収構造は、
前記第1の電極パッドの幅に比較して電極幅を狭くする前記第1の電極と、
前記第2の電極パッドの幅に比較して電極幅を狭くする前記第2の電極と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記光吸収構造は、
前記光出力部から前記光入力部に向けて徐々に電極幅を狭くする前記第1の電極と、
前記光出力部から前記光入力部に向けて徐々に電極幅を狭くする前記第2の電極と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記Pドープ領域は、
前記リブ型光導波路のコア側に形成されたP+ドープ領域と、前記第1の電極と接続するP++ドープ領域とを有し、
前記Nドープ領域は、
前記リブ型光導波路のコア側に形成されたN+ドープ領域と、前記第2の電極と接続するN++ドープ領域とを有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記光吸収構造は、
前記リブ型光導波路の光出力部から前記光入力部に向けて徐々に幅を広くする前記P+ドープ領域と、
前記光出力部から前記光入力部に向けて徐々に幅を広くする前記N+ドープ領域と、を有し、
前記光入力部での前記第1の電極と前記第2の電極との間に流れる電流を前記光出力部での前記電流に比較して小さくすることで、前記光入力部を通過する前記信号光の光減衰率を、前記リブ型光導波路の光入力部を除く少なくとも一部を通過する前記信号光の光減衰率に比較して小さくする構造にしたことを特徴とする請求項6に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記光吸収構造は、
前記リブ型光導波路の光出力部から前記光入力部に向けて徐々に導波路幅を狭くする前記リブ型光導波路内の光導波路を有し、
前記光入力部を通過する前記信号光の閉じ込めを前記光出力部に比較して大きくすることで、前記光入力部を通過する前記信号光の光減衰率を、前記リブ型光導波路の光入力部を除く少なくとも一部を通過する前記信号光の光減衰率に比較して小さくする構造にしたことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記光吸収構造は、
前記Pドープ領域と前記Nドープ領域との間の前記リブ型光導波路内の光導波路であって、前記リブ型光導波路の光出力部から前記光入力部に向けて徐々に導波路幅を広くする、アンドープ部分の光導波路を有し、
前記光入力部での前記第1の電極と前記第2の電極との間に流れる電流を前記光出力部での前記電流に比較して小さくすることで、前記光入力部を通過する前記信号光の光減衰率を、前記リブ型光導波路の光入力部を除く少なくとも一部を通過する前記信号光の光減衰率に比較して小さくする構造にしたことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項10】
光源と、
送信信号を用いて前記光源からの光を光変調して送信光を送信する光変調部と、
前記光変調部内で前記光を減衰する光デバイスと、を有する光送信装置であって、
前記光デバイスは、
基板上に形成されたリブ型光導波路と、
前記リブ型光導波路の一方のスラブ領域に形成されたPドープ領域と、
前記リブ型光導波路の他方のスラブ領域に形成されたNドープ領域と、
前記Pドープ領域に接続する第1の電極と、
前記Nドープ領域に接続する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間を流れる電流に応じて前記リブ型光導波路を通過する信号光を光吸収する際に、前記リブ型光導波路の光入力部を通過する信号光の光減衰率を、前記リブ型光導波路の光入力部を除く少なくとも一部を通過する前記信号光の光減衰率に比較して小さくする光吸収構造と、
を有することを特徴とする光送信装置。
【請求項11】
光源と、
前記光源からの光を用いて受信光から受信信号を受信する光受信部と、
前記光受信部内で前記光を減衰する光デバイスと、を有する光受信装置であって、
前記光デバイスは、
基板上に形成されたリブ型光導波路と、
前記リブ型光導波路の一方のスラブ領域に形成されたPドープ領域と、
前記リブ型光導波路の他方のスラブ領域に形成されたNドープ領域と、
前記Pドープ領域に接続する第1の電極と、
前記Nドープ領域に接続する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間を流れる電流に応じて前記リブ型光導波路を通過する信号光を光吸収する際に、前記リブ型光導波路の光入力部を通過する信号光の光減衰率を、前記リブ型光導波路の光入力部を除く少なくとも一部を通過する前記信号光の光減衰率に比較して小さくする光吸収構造と、
を有することを特徴とする光受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光送信装置及び光受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信容量の増加に伴って、光ファイバ通信の需要が増大している。そこで、シリコンフォトニクスに代表される光デバイスの開発が盛んに行われている。このような光デバイスとしては、例えば、電気信号に応じて光導波路を流通する信号光の強度を減衰するVOA(Variable Optical Attenuator)等の光減衰器が知られている。
【0003】
図18は、VOAの一例を示す略平面図である。図19は、図18に示すA-A線の略断面図である。VOA100は、Si基板121と、Si基板121上に形成されたリブ型光導波路102と、リブ型光導波路102の両脇の各スラブ102D、102Eに接続された電極103と、を有する。更に、VOA100は、Si基板121上に形成され、リブ型光導波路102及び2個の電極103の周囲を囲むクラッド層122を有する。
【0004】
リブ型光導波路102は、SiのコアCと、コアC両脇のスラブ102D,102Eとを有し、コアC及びスラブ102D,102Eの一部で光導波路102Aを構成する。リブ型光導波路102は、光入力部102Bと、光出力部102Cとを有する。光入力部102Bは、光導波路102Aに信号光を入力するリブ型光導波路102の入力段である。光出力部102Cは、光導波路102Aから信号光を出力するリブ型光導波路102の出力段である。リブ型光導波路102の一方のスラブ102Dには、PドープされたPドープ領域111が形成され、他方のスラブ102Eには、NドープされたNドープ領域112が形成されている。光導波路102Aは、アンドープの領域である。そして、リブ型光導波路102は、Pドープ領域111と、アンドープの光導波路102Aと、Nドープ領域112とでPINダイオード構造としている。
【0005】
電極103は、Pドープ領域111と電気的に接続する第1の電極103Aと、Nドープ領域112と電気的に接続する第2の電極103Bとを有する。第1の電極103Aは、電圧を印加する給電パッド104と接続する信号電極とし、第2の電極103Bは、接地パッド105と接続する接地電極とする。
【0006】
VOA100では、給電パッド104がVOA100の中央付近に位置し、第1の電極103Aの幅が給電パッド104の幅と同じである。VOA100では、接地パッド105がVOA100の中央付近に位置し、第2の電極103Bの幅が接地パッド105の幅と同じである。
【0007】
第1の電極103Aは、給電パッド104から+の電圧を印加した場合、第1の電極103Aから第2の電極103Bへと電流が流れるため、第1の電極103Aと第2の電極103Bとの間に配置されたリブ型光導波路102に電流が流れることになる。その結果、リブ型光導波路102を流れる電流の自由キャリア吸収によって、リブ型光導波路102を流通する信号光が吸収されることで信号光の強度が減衰することになる。つまり、VOA100の単位長当たりの光減衰量は、単位長当たりの電流に依存することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-275589号公報
【特許文献2】特開2003-233048号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0147575号明細書
【特許文献4】特開2006-039569号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2018/0059327号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
VOA100では、電圧印加時にリブ型光導波路102の長手方向に一様に電圧が印加されるため、単位長当たりの電流及び光減衰量も一様となる。つまり、光入力部102B及び光出力部102C付近のリブ型光導波路102の単位長当たりの電流及び光減衰量もほぼ一律である。
【0010】
しかしながら、光入力部102Bでは信号光の強度が大きくなるが、光入力部102B及び光出力部102C付近のリブ型光導波路102の単位長当たりの電流及び光減衰量もほぼ一律であるため、光入力部102B付近では光吸収が集中する。その結果、光入力部102B付近では集中する光吸収による発熱が大きくなる。光吸収による発熱が大きくなると、光入力部102Bの温度が上昇して光入力部102Bの経時変化が加速する。その結果、光入力部102Bの経時変化が加速することで長期信頼性が低下する場合も考えられる。
【0011】
一つの側面では、光入力部付近での光吸収の発熱が抑制されることで長期信頼性の向上を図る光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一つの態様の光デバイスは、基板上に形成されたリブ型光導波路と、前記リブ型光導波路の一方のスラブ領域に形成されたPドープ領域と、前記リブ型光導波路の他方のスラブ領域に形成されたNドープ領域と、を有する。光デバイスは、前記Pドープ領域に接続する第1の電極と、前記Nドープ領域に接続する第2の電極と、光吸収構造と、を有する。光吸収構造は、第1の電極と第2の電極との間を流れる電流に応じてリブ型光導波路を通過する信号光を光吸収する際に、リブ型光導波路の光入力部を通過する信号光の光減衰率を、リブ型光導波路の光入力部を除く少なくとも一部を通過する信号光の光減衰率に比較して小さくする。
【発明の効果】
【0013】
一つの側面によれば、光入力部付近での光吸収の発熱が抑制されることで長期信頼性の向上を図る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例1のVOAの一例を示す略平面図である。
図2図2は、図1に示すA-A線の略断面図である。
図3図3は、実施例2のVOAの一例を示す略平面図である。
図4図4は、図3に示すA-A線の略断面図である。
図5A図5Aは、比較対象のVOAの評価条件の一例を示す略平面図である。
図5B図5Bは、実施例2のVOAの評価条件の一例を示す略平面図である。
図6図6は、比較対象のVOAと実施例2のVOAとの光吸収の分布の一例を示す説明図である。
図7図7は、実施例3のVOAの一例を示す略平面図である。
図8A図8Aは、図7に示すA-A線の略断面図である。
図8B図8Bは、図7に示すB-B線の略断面図である。
図9図9は、実施例4のVOAの一例を示す略平面図である。
図10A図10Aは、図9に示すA-A線の略断面図である。
図10B図10Bは、図9に示すB-B線の略断面図である。
図11図11は、実施例5のVOAの一例を示す略平面図である。
図12A図12Aは、図11に示すA-A線の略断面図である。
図12B図12Bは、図11に示すB-B線の略断面図である。
図13図13は、実施例6のVOAの一例を示す略平面図である。
図14A図14Aは、図13に示すA-A線の略断面図である。
図14B図14Bは、図13に示すB-B線の略断面図である。
図15図15は、実施例7のVOAの一例を示す略平面図である。
図16A図16Aは、図15に示すA-A線の略断面図である。
図16B図16Bは、図15に示すB-B線の略断面図である。
図17図17は、本実施例のVOAを採用した光通信装置の一例を示す説明図である。
図18図18は、VOAの一例を示す略平面図である。
図19図19は、図18に示すA-A線の略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本願の開示する光デバイス等の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0016】
図1は、実施例1のVOA1の一例を示す略平面図である。図2は、図1に示すA-A線の略断面図である。図1に示すVOA1は、Si基板21と、Si基板21上に形成されたリブ型光導波路2と、リブ型光導波路2両脇のスラブ2D及び2E上に接続された電極3と、Si基板21上に形成され、リブ型光導波路2及び2個の電極3の周囲を囲むクラッド層22とを有する。
【0017】
リブ型光導波路2は、例えば、Siで形成する。リブ型光導波路2は、コアCと、コアC両脇のスラブ2D,2Eととを有し、コアC及びスラブ2D及び2Eの一部で光導波路2Aを構成する。更に、リブ型光導波路2は、光入力部2Bと、光出力部2Cとを有する。光入力部2Bは、光導波路2Aに信号光を入力するリブ型光導波路2の入力段である。光出力部2Cは、光導波路2Aから信号光を出力するリブ型光導波路2の出力段である。一方のスラブ2Dには、PドープされたPドープ領域11が形成され、他方のスラブ2Eには、NドープされたNドープ領域12が形成されている。光導波路2Aは、アンドープの領域である。そして、リブ型光導波路2は、例えば、Pドープ領域11と、光導波路2Aと、Nドープ領域12とでPINダイオード構造としている。
【0018】
電極3は、Pドープ領域11と電気的に接続する第1の電極3Aと、Nドープ領域12と電気的に接続する第2の電極3Bとを有する。第1の電極3Aは、電圧を印加する給電パッド4と接続する信号電極である。第1の電極3Aは、電気抵抗を有する材料、例えば、アルミニウム等の金属やSi等の半導体材料で構成する。第2の電極3Bは、接地パッド5と接続する接地電極である。第2の電極3Bも、電気抵抗を有する材料、例えば、アルミニウム等の金属やSiやGe等の半導体材料で構成する。
【0019】
クラッド層22は、例えば、SiOで形成する。給電パッド4は、第1の電極3Aに接続すると共に、リブ型光導波路2の光出力部2C付近に配置された第1の電極パッドである。接地パッド5は、第2の電極3Bに接続すると共に、リブ型光導波路2の光出力部2C付近に配置された第2の電極パッドである。
【0020】
光出力部2C付近にある第1の電極3Aの幅は、給電パッド4の幅(図中の縦方向の幅)に比較して狭くすると共に、光出力部2C付近にある第2の電極3Bの幅(図中の縦方向の幅)は、接地パッド5の幅に比較して狭くする。
【0021】
VOA1は、第1の電極3Aと第2の電極3Bとの間を流れる電流に応じてリブ型光導波路2を通過する信号光を光吸収する光吸収構造を有する。光吸収構造は、光入力部2Bでの第1の電極3Aと第2の電極3Bとの間に流れる電流を光出力部2Cでの電流に比較して小さく。そして、光吸収構造は、リブ型光導波路2の光入力部2Bを通過する信号光の光減衰率を、リブ型光導波路2の光出力部2Cを通過する信号光の光減衰率に比較して小さくする。尚、説明の便宜上、光吸収構造は、光入力部2Bを通過する信号光の光減衰率を、光出力部2Cを通過する信号光の光減衰率に比較して小さくする構造にしたが、光出力部2Cに限定されるものではなく、例えば、光入力部2Bを除く少なくも光導波路の一部であれば良く、適宜変更可能である。
【0022】
更に、光吸収構造は、第1の電極3Aに接続すると共に、リブ型光導波路2の光出力部2C付近に配置された給電パッド4と、第2の電極3Bに接続すると共に、リブ型光導波路2の光出力部2C付近に配置された接地パッド5と、を有する。更に、光吸収構造は、給電パッド4の幅に比較して電極幅を狭くする第1の電極3Aと、接地パッド5の幅に比較して電極幅を狭くする第2の電極3Bと、を有する。
【0023】
次に実施例1のVOA1の動作について説明する。VOA1は、給電パッド4に+の電圧を印加した場合、第1の電極3Aから、リブ型光導波路2のPIN構造(Pドープ領域11、光導波路2A、Nドープ領域12)を経て第2の電極3Bに電流が流れることになる。その結果、第1の電極3A及び第2の電極3Bに流れる電流と、第1の電極3A及び第2の電極3Bの電気抵抗とで、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて電圧降下が起きる。
【0024】
そして、給電パッド4から離れるに連れて光入力部2B付近の電圧が降下するために、光入力部2B付近の単位長当たりの電流も小さくなる。つまり、給電パッド4から遠く離れる光入力部2B付近では、単位長当たりの電流が小さくなるため、単位長当たりの光減衰量も小さくなる。その結果、光入力部2Bでは、単位長当たりの光減衰量、すなわち光吸収が小さくなるため、従来のような光吸収による発熱が光入力部2Bで集中するような事態を回避できる。
【0025】
実施例1のVOA1では、給電パッド4及び接地パッド5を光出力部2Cの付近に配置することで、給電パッド4に電圧を印加した場合に光出力部2Cから光入力部2Bに向けて電圧降下を発生させる。つまり、光入力部2Bに流れる単位長当たりの電流を小さくすることで、光入力部2Bでの光吸収は、光出力部2Cでの光吸収に比較して小さくする。その結果、光入力部2Bに流れる単位長当たりの電流を小さくして光入力部2Bでの光吸収を抑制することで、従来のような光吸収による発熱が光入力部2Bに集中するような事態を回避できる。そして、長期信頼性の向上を図る。
【0026】
更に、VOA1では、第1の電極3Aの幅を給電パッド4の幅に比較して狭くすると共に、第2の電極3Bの幅を接地パッドの幅に比較して狭くする。給電パッド4に電圧を印加した場合に光出力部2Cから光入力部2Bに向けて電圧降下を発生させる。つまり、光入力部2Bに流れる単位長当たりの電流を小さくすることで、光入力部2Bでの光吸収は、光出力部2Cでの光吸収に比較して小さくする。その結果、光入力部2Bに流れる単位長当たりの電流を小さくして光入力部2Bでの光吸収を抑制することで、従来のような光吸収による発熱が光入力部2Bに集中するような事態を回避できる。
【0027】
VOA1では、給電パッド4及び接地パッド5を光出力部2Cの付近に配置する第1の構造と、第1の電極3Aの幅を給電パッド4の幅に比較して狭くし、かつ、第2の電極3Bの幅を接地パッドの幅に比較して狭くする第2の構造とを併用する場合を例示した。しかしながら、第1の構造又は第2の構造の何れか一つを採用した場合でも、光入力部2Bに流れる単位長当たりの電流を小さくして光入力部2Bでの光吸収を抑制できる。また、図1では、給電パッド4及び接地パッド5の端部を光出力部2Cに揃えた構造を示しているが、特にこれに限定されるものではなく、給電パッド4及び接地パッド5は光出力部2Cの付近に配置されていれば、光入力部2Bに流れる単位長当たりの電流を小さくして光入力部2Bでの光吸収を抑制できる。例えば、給電パッド4及び接地パッド5がVOA1の中央付近よりも光出力部2C側に位置し、望ましくはVOA1の中央と光入力部2Bの中間よりも光出力部2C側に位置していれば、上記の効果を得ることができる。
【0028】
尚、実施例1のVOA1では、Pドープ領域11及びNドープ領域12のドープ濃度を高くするに連れて電気抵抗が低くなることで消費電力を小さくできる。つまり、ドープ濃度を高くするに連れて流れる電流が大きくなるために光の吸収が大きくなる。しかしながら、電流が流れていない状態でも、光の損失が大きくなる。そこで、このような事態に対処する実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。
【実施例0029】
図3は、実施例2のVOA1Aの一例を示す略平面図である。図4は、図3に示すA-A線の略断面図である。尚、実施例1のVOA1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。実施例1のVOA1と実施例2のVOA1Aとが異なるところは、各スラブ2D,2Eにドープ濃度が異なる領域を設けた点にある。一方のスラブ2Dにおいて、コアC側にP+ドープ領域11Aが形成され、第1の電極3A側にP++ドープ領域11Bが形成されている。更に、他方のスラブ2Eにおいて、コアC側にN+ドープ領域12Aが形成され、第2の電極3B側にN++ドープ領域12Bが形成されている。
【0030】
P++ドープ領域11Bは、P+ドープ領域11Aに比較してドープ濃度が高い領域である。第1の電極3A側のスラブ2DにP++ドープ領域11Bを配置したので、電気抵抗を下げて消費電力を小さくできる。また、コアC側のスラブ2DにP+ドープ領域11Aを配置したので、電流が流れていない状態での光の損失が大きくなるような事態を回避できる。
【0031】
また、N++ドープ領域12Bは、N+ドープ領域12Aに比較してドープ濃度が高い領域である。第2の電極3B側のスラブ2EにN++ドープ領域12Bを配置したので、電気抵抗を下げて消費電力を小さくできる。また、コアC側のスラブ2EにN+ドープ領域12Aを配置したので、電流が流れていない状態での光の損失が大きくなるような事態を回避できる。
【0032】
実施例2のVOA1Aは、第1の電極3A側のスラブ2D、2EにP++ドープ領域11B及び第2の電極3B側のスラブ2EにN++ドープ領域12Bを配置したので、電気抵抗を下げて消費電力を小さくできる。更に、コアC側のスラブ2D、2EにP+ドープ領域11A及びN+ドープ領域12Aを配置したので、電流が流れていない状態での光の損失が大きくなるような事態を回避できる。
【0033】
図5Aは、比較対象のVOA100Aの評価条件の一例を示す略平面図である。尚、図18に示すVOA100と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図5Aに示すVOA100Aと図18に示すVOA100とが異なるところは、Pドープ領域111を異なる濃度の領域に分けた点と、Nドープ領域112を異なる濃度の領域に分けた点とにある。
【0034】
図5Aに示す一方のスラブ102Dにおいて、コアC側にP+ドープ領域111Aが形成され、第1の電極103A側にP++ドープ領域111Bが形成されている。更に、他方のスラブ102Eにおいて、コアC側にN+ドープ領域112Aが形成され、第2の電極103B側にN++ドープ領域112Bが形成されている。VOA100Aのリブ型光導波路102の長手方向の位置をXmmとする。VOA100Aの光入力部102Bの位置はX=0mm、光出力部102Cの位置はX=2mmとする。
【0035】
図5Bは、実施例2のVOA1Aの評価条件の一例を示す略平面図である。VOA1Aのリブ型光導波路2の長手方向の位置をXmmとする。VOA1Aの光入力部2Bの位置はX=0mm、光出力部2Cの位置はX=2mmとする。
【0036】
図6は、比較対象のVOA100Aと実施例2のVOA1Aとの光吸収の分布の一例を示す説明図である。図5Aに示す比較対象のVOA100Aでは、給電パッド104がVOA100Aの中央付近に位置し、第1の電極103Aの幅が給電パッド104の幅と同じである。また、比較対象のVOA100Aでは、接地パッド105がVOA100Aの中央付近に位置し、第2の電極103Bの幅が接地パッド105の幅と同じである。図6に示すように、比較対象のVOA100Aの光出力部102Cの位置(X=2mm)における単位長さ当たりの光吸収は小さいものの、光入力部102Bの位置(X=0mm)における単位長さ当たりの光吸収は42mW/mmと大きい。
【0037】
これに対して、図5Bに示す実施例2のVOA1Aでは、給電パッド4が光出力部2C付近に位置し、第1の電極3Aの幅が給電パッド4の幅よりも狭い。VOA1Aでは、接地パッド5が光出力部2C付近に位置し、第2の電極3Bの幅が接地パッド5の幅よりも狭い。図6に示すように、実施例2のVOA1Aの光出力部2Cの位置(X=2mm)における単位長さ当たりの光吸収は小さいものの、光入力部2Bの位置(X=0mm)における単位長さ当たりの光吸収が25mW/mmと小さくなる。つまり、実施例2のVOA1Aでは、比較対象のVOA100Aに比較して、光入力部2Bでの光吸収の集中を大きく抑制できるため、光入力部2Bにおける発熱を抑制できる。
【0038】
尚、実施例1のVOA1では、第1の電極3Aの幅を光入力部2Bと光出力部2Cとで同一幅の直線構造にすると共に、第2の電極3Bの幅を光入力部2B及び光出力部2Cとで同一幅の直線構造にする構成にした。しかしながら、これに限定されるものではなく、その実施の形態につき、実施例3として以下に説明する。尚、実施例1のVOA1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
【実施例0039】
図7は、実施例3のVOA1Bの一例を示す略平面図である。図8Aは、図7に示すA-A線の略断面図である。図8Bは、図7に示すB-B線の略断面図である。実施例3のVOA1Bと実施例1のVOA1とが異なるところは、電極3の幅が光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に狭くなる構造にした点にある。第1の電極3A1は、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に狭くなるテーパ構造である。光入力部2B付近にある第1の電極3A1の幅は、光出力部2C付近にある第1の電極3A1の幅に比較して狭くしている。第2の電極3B1は、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に広くなるテーパ構造である。光入力部2B付近にある第2の電極3B1の幅は、光出力部2C付近にある第2の電極3B1の幅に比較して狭くしている。
【0040】
更に、光出力部2C付近にある第1の電極3A1の幅は、給電パッド4の幅に比較して狭くすると共に、光出力部2C付近にある第2の電極3B1の幅は、接地パッド5の幅に比較して狭くしている。
【0041】
VOA1B内の光吸収構造は、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に電極幅を狭くする第1の電極3A1と、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に電極幅を狭くする第2の電極3B1と、を有する。光吸収構造は、光入力部2Bでの第1の電極3A1と第2の電極3B1との間に流れる電流を光出力部2Cでの電流に比較して小さくする。そして、光吸収構造は、光入力部2Bを通過する信号光の光減衰率を、光出力部2Cを通過する信号光の光減衰率に比較して小さくする。尚、説明の便宜上、光吸収構造は、光入力部2Bを通過する信号光の光減衰率を、光出力部2Cを通過する信号光の光減衰率に比較して小さくする構造にしたが、光出力部2Cに限定されるものではなく、例えば、光入力部2Bを除く少なくも光導波路の一部であれば良く、適宜変更可能である。
【0042】
次に実施例3のVOA1Bの動作について説明する。VOA1Bは、給電パッド4に+の電圧を印加した場合、第1の電極3A1から、リブ型光導波路2のPIN構造(Pドープ領域11、光導波路2A、Nドープ領域12)を経て第2の電極3B1に電流が流れる。その結果、第1の電極3A1及び第2の電極3B1に流れる電流と、第1の電極3A1及び第2の電極3B1の抵抗とで、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて電圧降下が起きる。
【0043】
そして、給電パッド4から離れるに連れて光入力部2B付近の電圧が降下するために、光入力部2B付近の単位長当たりの電流も小さくなる。従って、光入力部2Bでは、単位長当たりの光減衰量が小さくなる。その結果、光入力部2Bでは、単位長当たりの光減衰量、すなわち光吸収が小さくなるため、従来のような光吸収による発熱が光入力部2Bで集中するような事態を回避できる。
【0044】
実施例3のVOA1Bでは、第1の電極3A1及び第2の電極3B1を光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に狭くする構造にしたので、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて電極による電圧降下を実現する。つまり、光入力部2Bに流れる単位長当たりの電流を小さくすることで、光入力部2Bでの光吸収は、光出力部2Cでの光吸収に比較して小さくする。その結果、光入力部2Bに流れる単位長当たりの電流を小さくして光入力部2Bでの光吸収を抑制することで、従来のような光吸収による発熱が光入力部2Bに集中するような事態を回避できる。そして、長期信頼性の向上を図る。
【0045】
VOA1Bでは、給電パッド4及び接地パッド5を光出力部2Cの付近に配置する第1の構造と、第1の電極3A1及び第2の電極3B1を光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に狭くする第3の構造とを併用する場合を例示した。しかしながら、第1の構造を採用することなく、第3の構造を採用した場合でも、光入力部2Bに流れる単位長当たりの電流を小さくして光入力部2Bでの光吸収を抑制できる。
【0046】
実施例3のVOA1Bでは、Pドープ領域11及びNドープ領域12のドープ濃度を高くするに連れて電気抵抗が低くなるため、消費電力を小さくできる。つまり、ドープ濃度を高くするに連れて流れる電流が大きくなるために光の吸収が大きくなる。しかしながら、電流が流れていない状態でも、光の損失が大きくなる。そこで、このような事態に対処する実施の形態につき、実施例4として以下に説明する。
【実施例0047】
図9は、実施例4のVOA1Cの一例を示す略平面図である。図10Aは、図9に示すA-A線の略断面図である。図10Bは、図9に示すB-B線の略断面図である。尚、実施例3のVOA1Bと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。実施例3のVOA1Bと実施例4のVOA1Cとが異なるところは、各スラブ2D,2Eにドープ濃度が異なる領域を設けた点にある。一方のスラブ2Dにおいて、コアC側にP+ドープ領域11Aが形成され、第1の電極3A1側にP++ドープ領域11Bが形成されている。更に、他方のスラブ2Eにおいて、コアC側にN+ドープ領域12Aが形成され、第2の電極3B1側にN++ドープ領域12Bが形成されている。
【0048】
P++ドープ領域11Bは、P+ドープ領域11Aに比較してドープ濃度が高い領域である。第1の電極3A1側のスラブ2DにP++ドープ領域11Bを配置したので、電気抵抗を下げて消費電力を小さくできる。コアC側のスラブ2DにP+ドープ領域11Aを配置したので、電流が流れていない状態での光の損失が大きくなるような事態を回避できる。
【0049】
また、N++ドープ領域12Bは、N+ドープ領域12Aに比較してドープ濃度が高い領域である。第2の電極3B1側のスラブ2EにN++ドープ領域12Bを配置したので、電気抵抗を下げて消費電力を小さくできる。コアC側のスラブ2EにN+ドープ領域12Aを配置したので、電流が流れていない状態での光の損失が大きくなるような事態を回避できる。
【0050】
実施例4のVOA1Cは、第1の電極3A1側のスラブ2DにP++ドープ領域11B及び第2の電極3B1側のスラブ2EにN++ドープ領域12Bを配置したので、電気抵抗を下げて消費電力を小さくできる。また、コアC側のスラブ2EにP+ドープ領域11A及びN+ドープ領域12Aを配置したので、電流が流れていない状態での光の損失が大きくなるような事態を回避できる。
【0051】
尚、実施例1及び2のVOA2(2A)では、第1の電極3A及び第2の電極3Bの幅を光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に広くする構造にしたので、電極3による電圧降下を実現する場合を例示した。しかしながら、第1の電極3A及び第2の電極3Bの幅を変更する構造にしなくても、電圧降下を実現する実施の形態につき、実施例5として以下に説明する。
【実施例0052】
図11は、実施例5のVOA1Dの一例を示す略平面図である。図12Aは、図11に示すA-A線の略断面図である。図12Bは、図11に示すB-B線の略断面図である。尚、実施例2のVOA1Aと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。実施例2のVOA1Aと実施例5のVOA1Dとが異なるところは、第1の電極3A及び第2の電極3Bの構造の代わりに、リブ型光導波路2のスラブ2D,2Eの内、P+ドープ領域11A及びN+ドープ領域12Aの幅を光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に広くする構造にした点にある。
【0053】
P+ドープ領域11Aは、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に広くするテーパ構造である。光入力部2B付近にあるP+ドープ領域11Aの幅は、光出力部2C付近にあるP+ドープ領域11Aの幅に比較して広くしている。N+ドープ領域12Aは、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に広くするテーパ構造である。光入力部2B付近にあるN+ドープ領域12Aの幅は、光出力部2C付近にあるN+ドープ領域12Aの幅に比較して広くする構造である。つまり、P+ドープ領域11A及びN+ドープ領域12Aの幅を光入力部2B付近で広くしたので、P+ドープ領域11A及びN+ドープ領域12Aの電気抵抗を高めることで光出力部2Cから光入力部2Bへの電圧降下を実現できる。尚、給電パッド4は、第1の電極3Aの何れの位置に配置しても良く、接地パッド5も、第2の電極3Bの何れの位置に配置しても良く、適宜変更可能である。
【0054】
つまり、VOA1D内の光吸収構造は、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に幅を広くするP+ドープ領域11A1と、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に幅を広くするN+ドープ領域12A1と、を有する。光吸収構造は、光入力部2Bでの第1の電極3Aと第2の電極3Bとの間に流れる電流を光出力部2Cでの電流に比較して小さくする。そして、光吸収構造は、光入力部2Bを通過する信号光の光減衰率を、光出力部2Cを通過する信号光の光減衰率に比較して小さくする。尚、説明の便宜上、光吸収構造は、光入力部2Bを通過する信号光の光減衰率を、光出力部2Cを通過する信号光の光減衰率に比較して小さくする構造にしたが、光出力部2Cに限定されるものではなく、例えば、光入力部2Bを除く少なくも光導波路の一部であれば良く、適宜変更可能である。
【0055】
次に実施例5のVOA1Dの動作について説明する。VOA1Dは、第1の電極3Aから、リブ型光導波路2のPIN構造(P++ドープ領域11B、P+ドープ領域11A1、光導波路2A、N+ドープ領域12A1、N++ドープ領域12B)を経て第2の電極に電流が流れることになる。その結果、第1の電極3A及び第2の電極3Bに流れる電流と、P+ドープ領域11A1及びN+ドープ領域12A1の電気抵抗とで、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて電圧降下が起きる。
【0056】
そして、P+ドープ領域11A1及びN+ドープ領域12A1における光入力部2B付近の電圧が降下するために、光入力部2B付近の単位長当たりの電流も小さくなる。つまり、光入力部2B付近では、単位長当たりの電流が小さくなるため、単位長当たりの光減衰量も小さくなる。その結果、光入力部2Bでは、単位長当たりの光減衰量、すなわち光吸収が小さくなるため、従来のような光吸収による発熱が光入力部2Bで集中するような事態を回避できる。
【0057】
実施例5のVOA1Dでは、P+ドープ領域11A1及びN+ドープ領域12A1を光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に広くする構造にしたので、光出力部2Cから光入力部2Bに向けてドープ層による電圧降下を実現する。つまり、光入力部2Bに流れる単位長当たりの電流を小さくすることで、光入力部2Bでの光吸収は、光出力部2Cでの光吸収に比較して小さくする。その結果、光入力部2Bに流れる単位長当たりの電流を小さくして光入力部2Bでの光吸収を抑制することで、従来のような光吸収による発熱が光入力部2Bに集中するような事態を回避できる。そして、長期信頼性の向上を図る。
【0058】
尚、実施例5のVOA1Dでは、一方のスラブ2DにP+ドープ領域11A1及びP++ドープ領域11Bを形成すると共に、他方のスラブ2EにN+ドープ領域12A1及びN++ドープ領域12Bを形成する場合を例示した。しかし、一方のスラブ2DにPドープ領域11を形成し、他方のスラブ2EにNドープ領域12を形成し、Pドープ領域11及びNドープ領域12を光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に広くする構造にして、ドープ層による電圧降下を実現しても良い。
【0059】
尚、実施例1及び2のVOA1(1A)では、第1の電極3A及び第2の電極3Bの幅を光入力部2Bから光出力部2Cにかけて徐々に広くする構造にしたので、電極3による電圧降下を実現する場合を例示した。しかしながら、電極3による電圧降下を使用する代わりに、光導波路2Aの光の分布を変えることで光入力部2Bでの光吸収を抑制する実施の形態につき、実施例6として以下に説明する。
【実施例0060】
図13は、実施例6のVOA1Eの一例を示す略平面図である。図14Aは、図13に示すA-A線の略断面図である。図14Bは、図13に示すB-B線の略断面図である。尚、実施例2と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。実施例2のVOA1Aと実施例6のVOA1Eとが異なるところは、第1の電極3A及び第2の電極3Bの幅を変えるのではなく、リブ型光導波路2の光導波路2Aの幅を光入力部2Bから光出力部2Cに向けて徐々に広くする構造にした点にある。
【0061】
光導波路2Aは、光入力部2Bから光出力部2Cに向けて徐々に広くする構造である。光入力部2B付近にある光導波路2Aの幅は、光出力部2C付近にある光導波路2Aの幅に比較して狭くしている。光導波路2Aの幅が狭い光入力部2Bでは、光の閉じ込めが弱くなるため、電流による信号光の光吸収が小さくなる。これに対して、光導波路2Aの幅が広い光出力部2Cでは、光の閉じ込めが強くなるため、電流による信号光の光吸収が大きくなる。尚、給電パッド4は、第1の電極3Aの何れの位置に配置しても良く、接地パッド5も、第2の電極3Bの何れの位置に配置しても良く、適宜変更可能である。
【0062】
つまり、VOA1E内の光吸収構造は、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に導波路幅を狭くする光導波路2A1を有する。光吸収構造は、光入力部2Bを通過する信号光の閉じ込めを光出力部2Cに比較して大きくすることで、光入力部2Bを通過する信号光の光減衰率を、光出力部2Cを通過する信号光の光減衰率に比較して小さくする。尚、説明の便宜上、光吸収構造は、光入力部2Bを通過する信号光の光減衰率を、光出力部2Cを通過する信号光の光減衰率に比較して小さくする構造にしたが、光出力部2Cに限定されるものではなく、例えば、光入力部2Bを除く少なくも光導波路の一部であれば良く、適宜変更可能である。
【0063】
次に実施例6のVOA1Eの動作について説明する。VOA1Eは、第1の電極3Aから、リブ型光導波路2のPIN構造(P++ドープ領域11B、P+ドープ領域11A、光導波路2A1、N+ドープ領域12A、N++ドープ領域12B)を経て第2の電極3Bに電流が流れることになる。
【0064】
そして、光入力部2B付近の光導波路2Aでは、光導波路2Aの幅が狭く、光の閉じ込めが弱くなるため、電流による信号光の光吸収が小さくなる。その結果、従来のような光吸収による発熱が光入力部2Bで集中するような事態を回避できる。
【0065】
実施例6のVOA1Eでは、光入力部2Bから光出力部2Cに向けて光導波路の幅を徐々に広くする構造にしたので、光入力部2Bの光導波路2Aでは光の閉じ込めは弱くなるため、電流による信号光の光吸収が小さくなる。その結果、光入力部2Bの光導波路2Aの光の閉じ込めを弱くして光入力部2Bでの光吸収を抑制することで、従来のような光吸収による発熱が光入力部2Bに集中するような事態を回避できる。そして、長期信頼性の向上を図る。
【0066】
尚、実施例6のVOA1Eでは、一方のスラブ2DにP+ドープ領域11A及びP++ドープ領域11Bを形成すると共に、他方のスラブ2EにN+ドープ領域12A及びN++ドープ領域12Bを形成する場合を例示した。しかしながら、一方のスラブ2DにPドープ領域11を形成すると共に、他方のスラブ2EにNドープ領域12を形成した場合でも良く、適宜変更可能である。
【0067】
また、第1の電極3A及び第2の電極3Bの幅を変更しなくても、電圧降下を実現する実施の形態につき、実施例7として以下に説明する。
【実施例0068】
図15は、実施例7のVOA1Fの一例を示す略平面図である。図16Aは、図15に示すA-A線の略断面図である。図16Bは、図15に示すB-B線の略断面図である。尚、実施例2と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。実施例2のVOA1Aと実施例7のVOA1Fとが異なるところは、リブ型光導波路2の光導波路2A2はアンドープのSiで構成し、光導波路2A2の導波路幅を光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に広くする構造にした点にある。光導波路2A2は、P+ドープ領域11AとN+ドープ領域12Aとの間の光導波路2A2のドープなしの光導波路である。
【0069】
光導波路2A2は、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に狭くなる構造である。光入力部2B付近にある光導波路2A2の幅は、光出力部2C付近にある光導波路2A2の幅に比較して狭くしている。アンドープの光導波路2A2の幅が広くなるに連れて、電気抵抗が高く、流れる電流が小さくなるため、通過する信号光の光吸収が小さくなるアンドープ幅の依存性を利用する。尚、給電パッド4は、第1の電極3Aの何れの位置に配置しても良く、接地パッド5も、第2の電極3Bの何れの位置に配置しても良く、適宜変更可能である。
【0070】
つまり、VOA1F内の光吸収構造は、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて徐々に導波路幅を広くする、アンドープ部分の光導波路2A2を有する。光吸収構造は、光入力部2Bでの第1の電極3Aと第2の電極3Bとの間に流れる電流を光出力部2Cでの電流に比較して小さくする。そして、光吸収構造は、光入力部2Bを通過する信号光の光減衰率を、光出力部2Cを通過する信号光の光減衰率に比較して小さくする。尚、説明の便宜上、光吸収構造は、光入力部2Bを通過する信号光の光減衰率を、光出力部2Cを通過する信号光の光減衰率に比較して小さくする構造にしたが、光出力部2Cに限定されるものではなく、例えば、光入力部2Bを除く少なくも光導波路の一部であれば良く、適宜変更可能である。
【0071】
次に実施例7のVOA1Fの動作について説明する。VOA1Fは、第1の電極3Aから、リブ型光導波路2のPIN構造(P++ドープ領域11B、P+ドープ領域11A、光導波路2A2、N+ドープ領域12A、N++ドープ領域12B)を経て第2の電極3Bに電流が流れることになる。その結果、第1の電極3A及び第2の電極3Bに流れる電流と、アンドープの光導波路2A2の電気抵抗とで光出力部2Cから光入力部2Bに向けて電圧降下が起きる。
【0072】
そして、光入力部2Bの光導波路2A2では、光導波路2A2の幅が広く、電気抵抗が高くなるため、電圧降下が発生することで、単位長当たりの電流も小さくなる。従って、光入力部2Bでは、単位長当たりの光減衰量が小さくなる。その結果、光入力部2Bでは、単位長当たりの光減衰量が小さくなるため、従来のような光吸収による発熱が光入力部2Bで集中するような事態を回避できる。
【0073】
実施例7のVOA1Fでは、光出力部2Cから光入力部2Bに向けてアンドープの光導波路2A2の導波路幅を徐々に広くする構造にしたので、光出力部2Cから光入力部2Bに向けて電極3間に流れる電流が徐々に低下する電圧降下を実現する。その結果、光入力部2Bに流れる単位長当たりの電流を小さくして光入力部2Bでの光吸収を抑制することで、従来のような光吸収による発熱が光入力部2Bに集中するような事態を回避できる。そして、長期信頼性の向上を図る。
【0074】
次に実施例1乃至7のVOA1(1A~1F)を採用した光通信装置50について説明する。図17は、本実施例のVOA1を採用した光通信装置50の一例を示す説明図である。図17に示す光通信装置50は、出力側の光ファイバFC及び入力側の光ファイバFCと接続する。光通信装置50は、DSP(Digital Signal Processor)51と、光源52と、光送信器53と、光受信器54とを有する。DSP51は、デジタル信号処理を実行する電気部品である。DSP51は、例えば、送信データの符号化等の処理を実行し、送信データを含む電気信号を生成し、生成した電気信号を光送信器53に出力する。また、DSP51は、受信データを含む電気信号を光受信器54から取得し、取得した電気信号の復号等の処理を実行して受信データを得る。
【0075】
光源52は、例えば、レーザダイオード等を備え、所定の波長の光を発生させて光送信器53及び光受信器54へ供給する。光送信器53は、DSP51から出力される電気信号によって、光源52から供給される光を変調し、得られた送信光を光ファイバFCに出力する。光送信器53は、光源52から供給される光が導波路を伝搬する際に、この光を光変調器へ入力される電気信号によって変調することで、送信光を生成する光変調部53Aを有する。
【0076】
光受信器54は、光ファイバFCから光信号を受信し、光源52から供給される光を用いて受信光を復調する光受信部54Aを有する。そして、光受信器54は、復調した受信光を電気信号に変換し、変換後の電気信号をDSP51に出力する。光送信器53及び光受信器54内では、光を導波路する基板型光導波路素子のVOA1を内蔵する。
【0077】
尚、説明の便宜上、光通信装置50は、光送信器53及び光受信器54を内蔵する場合を例示したが、光通信装置50は、光送信器53及び光受信器54の何れか一つを内蔵しても良い。例えば、光送信器53を内蔵した光通信装置50や、光受信器54を内蔵した光通信装置50にVOA1(1A~1F)を適用しても良く、適宜変更可能である。
【0078】
尚、実施例では、リブ型光導波路2としては、コア、クラッドがともにSiOであるPLC(Planar Lightwave Circuit)や、InP導波路、GaAs導波路でもよい。コアがSiやSi、下部クラッドがSiO、上部クラッドがSiOもしくは空気等であってもよい。
【0079】
また、図示した各部の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0080】
更に、各装置で行われる各種処理機能は、CPU(Central Processing Unit)(又はMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良い。また、各種処理機能は、CPU(又はMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行するプログラム上、又はワイヤードロジックによるハードウェア上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0081】
1 VOA
2 リブ型光導波路
2A 光導波路
2B 光入力部
2C 光出力部
2D、2E スラブ
3 電極
3A 第1の電極
3B 第2の電極
4 給電パッド
5 接地パッド
11 Pドープ領域
12 Nドープ領域
21 Si基板
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19