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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103251
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】スポイト容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/18 20060101AFI20240725BHJP
   B65D 51/32 20060101ALI20240725BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B65D47/18 100
B65D51/32
B65D83/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007487
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【テーマコード(参考)】
3E014
3E084
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB03
3E014PB09
3E014PD30
3E014PE12
3E014PE25
3E014PE30
3E014PF10
3E084AB01
3E084AB09
3E084AB10
3E084BA02
3E084CB04
3E084GA01
3E084GB01
3E084GB17
3E084JA20
3E084LD29
3E084LE20
3E084LG10
(57)【要約】
【課題】内容物の残量を低減できるスポイト容器を提供する。
【解決手段】スポイト容器1は、内容物を収容する有底筒状の容器本体2と、容器本体2の口部2aに着脱可能に装着されたスポイト3と、を備え、スポイト3は、容器本体2の底面に向かって延びるスポイト管80と、スポイト管80の上端開口80aと連通する拡縮空間Sを画成する操作部材50と、を備え、スポイト管80における容器軸方向の中間部80Cは、屈曲変形可能に形成された屈曲部83とされ、屈曲部83が屈曲変形し、かつスポイト管80の下端開口80bが、容器本体2内に開放された状態で、スポイト管80の下端部80Bが、容器本体2の底面に当接している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する有底筒状の容器本体と、
前記容器本体の口部に着脱可能に装着されたスポイトと、を備え、
前記スポイトは、
前記容器本体の底面に向かって延びるスポイト管と、
前記スポイト管の上端開口と連通する拡縮空間を画成する操作部材と、を備え、
前記スポイト管における容器軸方向の中間部は、屈曲変形可能に形成された屈曲部とされ、
前記屈曲部が屈曲変形し、かつ前記スポイト管の下端開口が、前記容器本体内に開放された状態で、前記スポイト管の下端部が、前記容器本体の底面に当接している、スポイト容器。
【請求項2】
前記屈曲部は、弾性材料から形成されている、
請求項1に記載のスポイト容器。
【請求項3】
前記屈曲部は、
容器軸方向に延びる筒部材と、
前記筒部材の径方向内側において、周方向に間隔をあけて配置された複数の柱状部材と、を備え、
前記筒部材は、前記柱状部材を形成する材質より軟らかい軟材質で形成されている、
請求項1または2に記載のスポイト容器。
【請求項4】
前記柱状部材は、容器軸と直交する横断面視で、円形に形成されている、
請求項3に記載のスポイト容器。
【請求項5】
前記スポイト管の下端部は、球状に形成されている、
請求項1または2に記載のスポイト容器。
【請求項6】
前記容器本体の底面の中央部には、上方に向かって突出した凸曲面が形成されている、
請求項1または2に記載のスポイト容器。
【請求項7】
前記凸曲面の周囲には、環状の貯留溝が形成され、
前記スポイト管の下端開口は、前記貯留溝内で開放されている、
請求項6に記載のスポイト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポイト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示されるように、スポイト管を有するスポイト容器が用いられている。特許文献1の構成では、外キャップ(蓋カバー)を容器本体に対して回転させると、外キャップが容器本体に対して上昇するとともに、スポイト管に内容物が吸い上げられる。その後、操作部(押釦)を外キャップに対して押下することで、内容物を吐出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-33056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のスポイト容器では、容器本体の成形時の寸法バラツキ等の対策として、スポイト管の下端部と容器本体の底面との間に、隙間が設けられている。このため、スポイト管の下端部が、容器本体の底面に届いておらず、内容物を最後まで吸い上げることができなかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、内容物の残量を低減できるスポイト容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るスポイト容器は、内容物を収容する有底筒状の容器本体と、前記容器本体の口部に着脱可能に装着されたスポイトと、を備え、前記スポイトは、前記容器本体の底面に向かって延びるスポイト管と、前記スポイト管の上端開口と連通する拡縮空間を画成する操作部材と、を備え、前記スポイト管における容器軸方向の中間部は、屈曲変形可能に形成された屈曲部とされ、前記屈曲部が屈曲変形し、かつ前記スポイト管の下端開口が、前記容器本体内に開放された状態で、前記スポイト管の下端部が、前記容器本体の底面に当接している。
【0007】
本発明に係るスポイト容器によれば、スポイト管の下端部が容器の底面に当接すると、スポイト管の容器軸方向の中間部が屈曲変形する。この屈曲変形により、スポイト管の下端部が容器本体の底面に当接した状態で、スポイト管の下端開口が開放され、容器本体の底面付近から内容物を吸い上げることができる。このように、スポイト管の屈曲変形により、容器本体の寸法バラツキを吸収することで、容器本体の内容物の残量を低減することができる。また、スポイト管の交換のみで、既存のスポイト容器にも適用できる。
【0008】
(2)前記屈曲部は、弾性材料から形成されていても良い。
【0009】
この場合には、屈曲部の屈曲変形の挙動が安定する。また、スポイトの容器本体に対する抜き差し時に、スポイト管が屈曲した状態から真っ直ぐに復元変形するため、容器本体に対する抜き差しが容易になる。
【0010】
(3)前記屈曲部は、容器軸方向に延びる筒部材と、前記筒部材の径方向内側において、周方向に間隔をあけて配置された複数の柱状部材と、を備え、前記筒部材は、前記柱状部材を形成する材質より軟らかい軟材質で形成されていても良い。
【0011】
この場合には、軟材質の筒部材の径方向内側を、筒部材より硬材質の複数の柱状部材(骨部分)で支えるため、屈曲部が屈曲変形した際に、筒部材の内部空間が潰れて閉塞してしまうことを抑制できる。
【0012】
(4)前記柱状部材は、容器軸と直交する横断面視で、円形に形成されていても良い。
【0013】
この場合には、屈曲部の屈曲変形の方向性に自由度を持たせることができる。
【0014】
(5)前記スポイト管の下端部は、球状に形成されていても良い。
【0015】
この場合には、スポイト容器の下端部が容器本体の底面に当接した際に、その球面によってスポイト管の屈曲変形を案内し易くなる。
【0016】
(6)前記容器本体の底面の中央部には、上方に向かって突出した凸曲面が形成されていても良い。
【0017】
この場合には、スポイト容器の下端部が容器本体の底面に当接した際に、その凸曲面によってスポイト管の屈曲変形を案内し易くなる。
【0018】
(7)前記凸曲面の周囲には、環状の貯留溝が形成され、前記スポイト管の下端開口は、前記貯留溝内で開放されていても良い。
【0019】
この場合には、屈曲変形したスポイト管の下端開口が、凸曲面の周囲の環状の貯留溝内に位置するため、容器本体の内容物を最後まで吸い上げ易くなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るスポイト容器によれば、内容物の残量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係るスポイト容器を示す縦断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るスポイトの上側の構成を示す縦断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るスポイト管を示す斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るスポイト管を示す半縦断面図である。
図5図4に示すV-V断面図である。
図6図4に示すVI-VI断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るスポイト管を示す正面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るスポイト管の屈曲変形を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、各実施形態のスポイト容器について図面に基づいて説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1に示すように、スポイト容器1は、内容物を収容する有底筒状の容器本体2と、容器本体2の口部2aに着脱可能に装着されたスポイト3と、を備えている。スポイト3は、内キャップ20と、外キャップ30と、連動部材40と、操作部材50と、ピストン60と、ボタン部材70と、スポイト管80と、を備えている。また、容器本体2の口部2aには、しごき片10が嵌合されている。
【0024】
容器本体2の内容物としては、例えば人体(皮膚)に塗布(吐出)する薬剤、液体化粧料などを用いることができる。本実施形態におけるスポイト容器1の構成部品は、樹脂材料により形成されている。本実施形態のスポイト容器1は、金属製の部材(コイルスプリング等)を有していない。
【0025】
本実施形態では、容器本体2およびスポイト3の中心軸線は共通の軸線上に位置している。以下、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸方向に沿う容器本体2の底部側(図1における下側)を下側、容器軸方向に沿う容器本体2の口部2a側(図1における上側)を上側という。容器軸方向から見て、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0026】
また、周方向における一方側に向けた回転方向を、「緩み方向」という場合がある。緩み方向とは、外キャップ30を内キャップ20に対して回転させたときに、連動部材40が内キャップ20に対して上昇する方向である。
詳細は後述するが、本実施形態のスポイト容器1は、外キャップ30を容器本体2に対して緩み方向に回転させると、連動部材40が内キャップ20に対して上昇し、その後で内キャップ20が容器本体2に対して緩み方向に回転するように構成されている。
【0027】
図2の拡大図に示すように、しごき片10は、容器本体2の口部2aの上端開口縁に固定されるとともに、スポイト管80の外周面に当接する当接部11を備えている。しごき片10は、スポイト管80が容器本体2から上方に離脱する際に、スポイト管80の外周面に付着した内容物をかき落とす役割を有する。
【0028】
内キャップ20は、装着筒部21と、規制筒部22と、環状部23と、螺合筒部24と、接続筒部25と、保持筒部26と、シール筒部27と、を備えている。装着筒部21は、容器本体2の口部2aに装着されている。本実施形態では、装着筒部21の内周面に形成された雌ネジ部が、口部2aの外周面に形成された雄ネジ部に螺着されている。
【0029】
容器本体2に対して内キャップ20が、容器軸O回りに回転すると、スポイト3を容器本体2の口部2aから取り外したり、再び口部2aに取り付けたりすることができる。装着筒部21は、外キャップ30のキャップ周壁31によって径方向外側から覆われている。
【0030】
規制筒部22は、装着筒部21の上端部に連設されている。規制筒部22は、連動部材40の下方移動を規制する。本実施形態では、規制筒部22が装着筒部21よりも外径が小さい。なお、装着筒部21の上端部を規制筒部22として用いてもよい。
【0031】
環状部23は、規制筒部22から径方向内側に向けて延びており、平面視において環状に形成されている。螺合筒部24は、環状部23の外縁側から上方に向けて延びている。螺合筒部24の外周面には、雄ネジが形成されている。内キャップ20と連動部材40とが容器軸O回りに相対回転すると、連動部材40が内キャップ20に対して上下動する。
【0032】
接続筒部25は、環状部23の内縁側から上方に向けて延びている。保持筒部26は、接続筒部25の上端部における内縁側から上方に突出されている。接続筒部25の上面と保持筒部26の外周面との間には、段差が形成され、環状のピストン60が保持されている。
【0033】
シール筒部27は、接続筒部25から下方に向けて延びている。シール筒部27は、スポイト管80の上端開口80aから、スポイト管80の径方向内側に挿入されている。シール筒部27の外周面は、スポイト管80の内周面に密着している。
【0034】
外キャップ30は、容器軸Oに沿って延びる円筒状のキャップ周壁31と、キャップ周壁31の上端から径方向内側に延びるキャップ頂壁32と、を有する。キャップ頂壁32は、平面視において環状である。言い換えると、キャップ頂壁32には、貫通孔32aが設けられている。貫通孔32aの内側には、ボタン部材70の一部(ボタン頂壁71)が位置している。
【0035】
キャップ周壁31の内周面には、上下方向に沿って延びる縦リブ33が形成されている。縦リブ33は、キャップ周壁31の内周面から径方向内側に突出している。縦リブ33は、径方向において容器軸Oを挟むように一対で形成されている。また、キャップ周壁31の内周面には、縦リブ33よりも下側から径方向内側に突出するアンダーカット突起34が形成されている。アンダーカット突起34は、内キャップ20の装着筒部21の下端部にアンダーカット嵌合している。
【0036】
内キャップ20の装着筒部21には、周方向で縦リブ33に係止する係止凸部21aが形成されている。係止凸部21aは、装着筒部21の外周面から径方向外側に突出している。係止凸部21aは、径方向において容器軸Oを挟むように一対で形成されている。縦リブ33は、例えば、一対の係止凸部21aの間の約90°の角度の範囲で周方向に移動可能とされている。
【0037】
外キャップ30を内キャップ20(容器本体2)に対して容器軸O回りに回転させようとすると、上記角度の範囲(約90°)内で、外キャップ30が内キャップ20に対して空転する。外キャップ30を容器本体2に対して上記角度の範囲を超えて回転させようとすると、縦リブ33が係止凸部21aの側面(周方向を向く面)に当接することで、外キャップ30と内キャップ20との相対回転が規制される。このように、縦リブ33および係止凸部21aは、外キャップ30と内キャップ20とを所定の角度の範囲内において空転させ、かつ、所定の角度を超えた両者の相対回転を規制するように構成されている。
【0038】
連動部材40は、外キャップ30の径方向内側且つ内キャップ20の上側に配置されている。連動部材40は、螺着筒部41と、頂壁42と、摺動筒部43と、連結部44と、内側リング45と、外側リング46と、を有する。螺着筒部41の内周面には、螺合筒部24の雄ネジに螺合する雌ネジが形成されている。連結部44は、螺着筒部41の上端部から径方向内側に延びる環状に形成され、頂壁42の外周縁と連結されている。
【0039】
頂壁42には、複数の通気孔42aが形成されている。通気孔42aは、頂壁42を上下方向において貫通している。通気孔42aにより、操作部材50の内側の空間と、連動部材40およびピストン60によって囲まれた空間と、が連通している。摺動筒部43は、頂壁42の外周縁から下方に延びており、螺着筒部41よりも径方向内側に位置している。
【0040】
内側リング45および外側リング46は、連結部44から上方に延び、頂壁42よりも上方に突出している。内側リング45は、外側リング46よりも径方向内側に位置している。内側リング45と外側リング46との間には、操作部材50の固定部52が固定されている。
【0041】
さらに、連動部材40は、回転規制部48を備えている。回転規制部48は、螺着筒部41の外周面から径方向外側に突出するとともに、容器軸方向に延びている。回転規制部48には、凹部が形成されている。凹部は、回転規制部48の外周面における周方向中央部から、径方向内側に向けて窪んでいる。凹部は、回転規制部48の上下方向における全長にわたって形成されている。凹部の内側に、縦リブ33が位置することで、外キャップ30と連動部材40との容器軸O回りの相対回転が規制されている。
【0042】
操作部材50は、弾性膜51と、固定部52と、を有している。操作部材50は、全体として、ゴムあるいはエラストマーなどの弾性材料によって形成されている。固定部52は筒状であり、弾性膜51よりも肉厚に形成されている。弾性膜51は、固定部52から上方に延びている。弾性膜51は、上方に向けて凸の曲面状(ドーム状)に形成されている。
【0043】
ピストン60は、連動部材40の摺動筒部43の内周面に摺接する摺接部を有している。ピストン60の上方には、拡縮空間Sが設けられている。拡縮空間Sは、ピストン60、摺動筒部43、および頂壁42によって囲まれた空間と、通気孔42aを介して連通する弾性膜51の内側の空間とを含む。弾性膜51が下方に弾性変形すると、拡縮空間Sの容積が減少する。
【0044】
ボタン部材70は、ボタン頂壁71と、ボタン周壁72と、係止筒部73と、押圧部74と、を有している。ボタン頂壁71は、平面視において円板状である。ボタン頂壁71の上面は、初期位置では、キャップ頂壁32の上面と面一となっている。ボタン周壁72は、ボタン頂壁71の外周縁から下方に延びている。
【0045】
係止筒部73は、ボタン周壁72から下方に延びている。係止筒部73の外径はボタン周壁72の外径よりも大きく、キャップ頂壁32の下面に対向可能とされている。押圧部74は、ボタン頂壁71の下面から下方に向けて延びる筒状部であり、ボタン周壁72の径方向内側に位置している。押圧部74の下端は、操作部材50の弾性膜51に当接している。ボタン部材70が、操作部材50に向けて下降すると、押圧部74によって押圧された弾性膜51が下方に弾性変形する。
【0046】
スポイト管80は、容器軸Oに沿って上下方向に延びている。スポイト管80の上端部80Aは、内キャップ20の装着筒部21の径方向内側に位置し、シール筒部27に外嵌している。スポイト管80の上端部80Aには、径方向外側に延びる環状のフランジ部81aが形成されている。フランジ部81aの上面は、環状部23の下面に当接している。フランジ部81aの下面は、スポイト3が容器本体2に装着された状態で、容器本体2の口部2aの上端開口縁上に位置するしごき片10に当接している。
【0047】
図1に戻り、スポイト管80における容器軸方向の中間部80Cは、屈曲変形可能に形成された屈曲部83とされている。スポイト管80は、屈曲部83が屈曲変形し、かつスポイト管80の下端開口80bが、容器本体2内に開放された状態で、スポイト管80の下端部80Bが、容器本体2の底面に当接している。
【0048】
図3の斜視図に示すように、スポイト管80は、上筒部81と、下筒部82と、屈曲部83と、を備えている。屈曲部83は、弾性材料から形成されている。屈曲部83は、上筒部81と下筒部82との間に配置され、上筒部81と下筒部82とを屈曲変形可能に接続している。
【0049】
屈曲部83は、容器軸方向に延びる筒部材84と、筒部材84の径方向内側において、周方向に間隔をあけて配置された複数の柱状部材85と、を備えている。柱状部材85は、上筒部81及び下筒部82と一体で形成されている。筒部材84は、柱状部材85、上筒部81及び下筒部82を形成する材質より軟らかい軟材質で形成されている。筒部材84は、例えば、ゴムあるいはエラストマーなどの弾性材料によって形成されている。
【0050】
図4の半断面図に示すように、上筒部81は、スポイト管80の上端部80Aを形成している。上筒部81には、上述した上端開口80a、フランジ部81aが形成されている。また、上筒部81の下端部には、筒部材84の上端部を融着により固定する第1固定部86が形成されている。第1固定部86の外周面は、第1固定部86の上側に位置する上筒部81の外周面より縮径している。筒部材84の外径は、第1固定部86に固定された状態で、上筒部81の上記外周面の外径とほぼ等しい。
【0051】
下筒部82は、スポイト管80の下端部80Bを形成している。下筒部82には、上述した下端開口80bが形成されている。また、下筒部82の上端部には、筒部材84の下端部を融着により固定する第2固定部87が形成されている。第2固定部87の外周面は、第2固定部87の下側に位置する下筒部82の外周面よりも縮径している。筒部材84の外径は、第2固定部87に固定された状態で、下筒部82の上記外周面の外径とほぼ等しい。
なお、筒部材84は、第1固定部86及び第2固定部87に対し、融着以外(例えば、接着や、嵌合(圧入、アンダーカット嵌合等))で固定されてもよい。
【0052】
図5に示すように、筒部材84は、容器軸Oと直交する横断面視で、円形に形成されている。柱状部材85は、筒部材84の内側に、周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では3つ)設けられている。柱状部材85は、横断面視で円形に形成されている。なお、柱状部材85の数、間隔及び形状は、屈曲部83の屈曲変形を可能とする限りにおいて、2つでも4つ以上であってもよく、周方向で等間隔でなくてもよく、横断面視で円形でなくてもよい。
【0053】
柱状部材85の径方向外側の半分は、筒部材84の内周面に埋設されている。つまり、筒部材84の内周面には、柱状部材85の一部を埋設する埋設溝84aが複数形成されている。また、図6に示すように、柱状部材85の径方向内側の半分は、第1固定部86(第2固定部87も同様)の内周面より径方向内側に突出している。このような屈曲部83は、例えば、上筒部81、下筒部82及び複数の柱状部材85を第1材料、筒部材84を第2材料とする、インサート成型または2色成形により形成することができる。なお、第1材料に、別に準備された筒部材84を組み付けてもよい。つまり、柱状部材85を筒部材84に埋設しなくともよい。
【0054】
図4に示すように、下筒部82の下側には、逆さ円錐状のテーパー部分が形成されている。スポイト管80の下端部80Bは、下筒部82のテーパー部分の先端に、球状に形成されている。スポイト管80の下端開口80bは、球状の下端部80Bを容器軸方向で貫くように形成されている。
【0055】
図1に示すように、容器本体2の底面の中央部には、上方に向かって突出した凸曲面2bが形成されている。凸曲面2bは、容器本体2の底面の中央位置で最も高く、当該中央位置から容器本体2の底面の外周縁に近づくに従って低くなっている。凸曲面2bの周囲には、環状の貯留溝2cが形成されている。貯留溝2cは、容器本体2の底面の中央位置(凸曲面2bの頂部)より低い貯留空間を、容器本体2の底面と内周面との角部(コーナー部)に形成している。
【0056】
容器軸Oに沿う縦断面視で、貯留溝2cの曲率は、スポイト管80の下端部80B(球状部)の曲率より大きいとよい。これにより、スポイト管80の下端開口80bが、貯留溝2cの底面によって塞がれなくなる。つまり、スポイト管80の下端開口80bと貯留溝2cの底面との間に微小な隙間を形成し、貯留溝2cに残留する内容物を吸い上げ易くなる。
【0057】
次に、以上のように構成されたスポイト容器1の作用について説明する。
【0058】
スポイト容器1が未使用の状態(出荷時の状態)では、図1に示すように、屈曲部83が屈曲変形し、かつスポイト管80の下端開口80bが、容器本体2内に開放された状態で、スポイト管80の下端部80Bが、容器本体2の底面に当接している。また、連動部材40が内キャップ20に対して下降端位置に位置している。この状態から、外キャップ30を内キャップ20に対して容器軸O回りの緩み方向に回転させると、所定の角度範囲内(本実施形態では約90°)において、内キャップ20に対して外キャップ30が空転する。
【0059】
上記の角度範囲内では、外キャップ30と共に、連動部材40、ボタン部材70、およびスポイト管80が、内キャップ20に対して相対回転する。具体的には、外キャップ30が内キャップ20に対して相対回転すると、回転規制部48によって縦リブ33に対して回転規制された連動部材40が、内キャップ20に対して相対回転する。
【0060】
連動部材40が内キャップ20に対して相対回転すると、螺合筒部24の外側に螺合する連動部材40が上方にネジ送りされ、連動部材40が内キャップ20に対して上昇する。このとき、連動部材40に固定されている操作部材50が、ボタン部材70の押圧部74を押し上げることで、ボタン部材70も上昇する。その結果、ボタン部材70のボタン頂壁71が外キャップ30から上方に突出する。
【0061】
連動部材40が上昇すると、ピストン60に対して摺動筒部43が上方に摺動し、拡縮空間Sの容積が増大するため、スポイト管80内が負圧となる。そうすると、スポイト管80の下端開口80bから容器本体2の底面付近の内容物が吸い上げられる。スポイト管80内に吸い上げられる内容物の量は、ピストン60に対する摺動筒部43の上昇量によって定まる。したがって、スポイト容器1は、略定量の内容物をスポイト管80内に保持することができる。
【0062】
この状態から、外キャップ30を容器本体2に対して緩み方向にさらに回転させると、外キャップ30とともに内キャップ20が回転する。これは、縦リブ33が係止凸部21aにおける周方向を向く側面に当接するためである。内キャップ20が容器本体2に対して緩み方向に回転することで、スポイト3が容器本体2から上方に離脱する。このとき、スポイト管80は、容器本体2の底面から離れ、屈曲した状態から真っ直ぐに復元変形する。そして、スポイト管80の外周面に付着した内容物が、しごき片10によってかき落とされる。
【0063】
スポイト3を容器本体2から取り外した後、例えば外キャップ30を把持しながらボタン頂壁71を押し込むと、押圧部74が弾性膜51を下方に押圧する。そうすると、押圧部74と連動部材40との間で操作部材50が挟まれ、弾性膜51が下方に弾性変形し、拡縮空間Sの容積が小さくなる。その結果、スポイト管80内に保持されていた内容物が、スポイト管80の下端開口80bから吐出される。また、先述の通り、スポイト管80内には略定量の内容物が保持される。したがって使用者は、上記の操作によって、略定量の内容物を所望の箇所に塗布することができる。また、柱状部材85があることで、スポイト管80の屈曲が抑制され、スポイト3の塗布操作時に、狙った場所に安定して内容物を塗布することができる。
【0064】
内容物の塗布後、スポイト3を容器本体2に取り付ける場合、容器本体2の口部2aにスポイト管80を差し込む。差し込みによって、スポイト管80の下端部80Bが容器本体2の底面に当接すると、下端部80Bの球面及び凸曲面2bの滑りによって、スポイト管80の下端部80Bが径方向外側に案内され、スポイト管80の中間部80C(屈曲部)が屈曲変形する。これにより、屈曲部83が屈曲変形し、かつスポイト管80の下端開口80bが、容器本体2内に開放された状態で、スポイト管80の下端部80Bが、容器本体2の底面に当接している、図1に示す初期状態に戻る。
【0065】
以上説明したように、本実施形態のスポイト容器1によれば、スポイト管80の下端部80Bが容器の底面に当接すると、スポイト管80の容器軸方向の中間部80Cが屈曲変形する。この屈曲変形により、スポイト管80の下端部80Bが容器本体2の底面に当接した状態で、スポイト管80の下端開口80bが開放され、容器本体2の底面付近から内容物を吸い上げることができる。このように、スポイト管80の屈曲変形により、容器本体2の寸法バラツキを吸収することで、容器本体2の内容物の残量を低減することができる。また、スポイト管80の交換のみで、既存のスポイト容器にも適用できる。
【0066】
このように、スポイト容器1は、内容物を収容する有底筒状の容器本体2と、容器本体2の口部2aに着脱可能に装着されたスポイト3と、を備え、スポイト3は、容器本体2の底面に向かって延びるスポイト管80と、スポイト管80の上端開口80aと連通する拡縮空間Sを画成する操作部材50と、を備え、スポイト管80における容器軸方向の中間部80Cは、屈曲変形可能に形成された屈曲部83とされ、屈曲部83が屈曲変形し、かつスポイト管80の下端開口80bが、容器本体2内に開放された状態で、スポイト管80の下端部80Bが、容器本体2の底面に当接している。この構成によれば、スポイト容器1の内容物の残量を低減できる。
【0067】
また、本実施形態では、屈曲部83は、弾性材料から形成されている。この構成によれば、例えば、屈曲部83が屈曲変形可能な蛇腹等である場合に比べて、屈曲部83の屈曲変形の挙動が安定する。また、スポイト3の容器本体2に対する抜き差し時に、スポイト管80が屈曲した状態から真っ直ぐに復元変形するため、容器本体2に対する抜き差しが容易になる。
【0068】
また、本実施形態では、屈曲部83は、容器軸方向に延びる筒部材84と、筒部材84の径方向内側において、周方向に間隔をあけて配置された複数の柱状部材85と、を備え、筒部材84は、柱状部材85を形成する材質より軟らかい軟材質で形成されている。この構成によれば、軟材質の筒部材84の径方向内側を、筒部材84より硬材質の複数の柱状部材85(骨部分)で支えるため、屈曲部83が屈曲変形した際に、筒部材84の内部空間が潰れて閉塞してしまうことを抑制できる。
【0069】
また、本実施形態では、柱状部材85は、容器軸Oと直交する横断面視で、円形に形成されている。この構成によれば、屈曲部83の屈曲変形の方向性に自由度を持たせることができる。
【0070】
また、本実施形態では、スポイト管80の下端部80Bは、球状に形成されている。この構成によれば、スポイト容器1の下端部80Bが容器本体2の底面に当接した際に、その球面によってスポイト管80の屈曲変形を案内し易くなる。
【0071】
また、本実施形態では、容器本体2の底面の中央部には、上方に向かって突出した凸曲面2bが形成されている。この構成によれば、スポイト容器1の下端部80Bが容器本体2の底面に当接した際に、その凸曲面2bによってスポイト管80の屈曲変形を案内し易くなる。
【0072】
また、本実施形態では、凸曲面2bの周囲には、環状の貯留溝2cが形成され、スポイト管80の下端開口80bは、貯留溝2c内で開放されている。この構成によれば、屈曲変形したスポイト管80の下端開口80bが、凸曲面2bの周囲の環状の貯留溝2c内に位置するため、容器本体2の内容物を最後まで吸い上げ易くなる。
【0073】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0074】
図7の正面図に示すように、第2実施形態のスポイト管80は、屈曲部83の複数の柱状部材85が、容器軸O回りに沿う周方向の一方から他方に向けて延びる螺旋状に形成されている点で、上記実施形態と異なる。
【0075】
複数の柱状部材85は、例えば、平面視で容器軸Oを中心とする時計回りの螺旋状に形成されている。つまり、柱状部材85の第1固定部86に対する接続位置に対し、柱状部材85の第2固定部87に対する接続位置は、周方向で異なる位置に設定されている。
【0076】
上記構成によれば、図8に示すように、スポイト管80の中間部80C(屈曲部83)において、複数の柱状部材85が捩じれるように屈曲変形する。これにより、スポイト管80を径方向に屈曲変形させるだけでなく、スポイト管80の全長も螺旋変形により微小に変化させることができ、容器本体2の寸法バラツキをより吸収し易くなる。なお、図8では、柱状部材85の視認性の向上のため、筒部材84は図示していない。
【0077】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、定量の内容物を吸い上げるスポイト容器1を例示したが、当該定量機構を有しなくてもよい。例えば、スポイト管80の上端部80Aに、操作部材50を直接取り付けてもよい。
また、使用者が指などで操作部材50を直接押し込む構成であってもよく、その場合は、ボタン部材70は設けなくともよい。
【0079】
また、例えば、上記実施形態では、屈曲部83が弾性材料から形成されていたが、弾性材料から形成されていなくてもよい。例えば、屈曲部83が屈曲変形可能な蛇腹状に形成されていてもよい。
【0080】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0081】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
内容物を収容する有底筒状の容器本体と、
前記容器本体の口部に着脱可能に装着されたスポイトと、を備え、
前記スポイトは、
前記容器本体の底面に向かって延びるスポイト管と、
前記スポイト管の上端開口と連通する拡縮空間を画成する操作部材と、を備え、
前記スポイト管における容器軸方向の中間部は、屈曲変形可能に形成された屈曲部とされ、
前記屈曲部が屈曲変形し、かつ前記スポイト管の下端開口が、前記容器本体内に開放された状態で、前記スポイト管の下端部が、前記容器本体の底面に当接している、スポイト容器。
<2>
前記屈曲部は、弾性材料から形成されている、
前記<1>に記載のスポイト容器。
<3>
前記屈曲部は、
容器軸方向に延びる筒部材と、
前記筒部材の径方向内側において、周方向に間隔をあけて配置された複数の柱状部材と、を備え、
前記筒部材は、前記柱状部材を形成する材質より軟らかい軟材質で形成されている、
前記<1>または<2>に記載のスポイト容器。
<4>
前記柱状部材は、容器軸と直交する横断面視で、円形に形成されている、
前記<3>に記載のスポイト容器。
<5>
前記スポイト管の下端部は、球状に形成されている、
前記<1>から<4>のいずれか1つに記載のスポイト容器。
<6>
前記容器本体の底面の中央部には、上方に向かって突出した凸曲面が形成されている、
前記<1>から<5>のいずれか1つに記載のスポイト容器。
<7>
前記凸曲面の周囲には、環状の貯留溝が形成され、
前記スポイト管の下端開口は、前記貯留溝内で開放されている、
前記<6>に記載のスポイト容器。
【符号の説明】
【0082】
1…スポイト容器、2…容器本体、2a…口部、2b…凸曲面、2c…貯留溝、3…スポイト、10…しごき片、11…当接部、20…内キャップ、21…装着筒部、21a…係止凸部、22…規制筒部、23…環状部、24…螺合筒部、25…接続筒部、26…保持筒部、27…シール筒部、30…外キャップ、31…キャップ周壁、32…キャップ頂壁、32a…貫通孔、33…縦リブ、34…アンダーカット突起、40…連動部材、41…螺着筒部、42…頂壁、42a…通気孔、43…摺動筒部、44…連結部、45…内側リング、46…外側リング、48…回転規制部、50…操作部材、51…弾性膜、52…固定部、60…ピストン、70…ボタン部材、71…ボタン頂壁、72…ボタン周壁、73…係止筒部、74…押圧部、80…スポイト管、80a…上端開口、80A…上端部、80b…下端開口、80B…下端部、80C…中間部、81…上筒部、81a…フランジ部、82…下筒部、83…屈曲部、84…筒部材、84a…埋設溝、85…柱状部材、86…第1固定部、87…第2固定部、O…容器軸、S…拡縮空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8