(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103252
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】接合装置及び接合方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007488
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】曹 健
(72)【発明者】
【氏名】薮原 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】池上 友佳子
(72)【発明者】
【氏名】依田 文徳
(57)【要約】
【課題】 被接合部材同士の密着性を向上させることが可能な接合装置及び接合方法を提供すること。
【解決手段】 実施形態によれば、被接合部材同士の接合装置は、第1の被接合部材が載せられるテーブルと、圧子と、可動部とを有する。圧子は、第1の被接合部材の前記テーブルに対する接触面とは反対側の平面に対して第2の被接合部材の平面を接触させた状態で、前記第2の被接合部材の前記平面とは反対側の面を前記第1の被接合部材の前記平面に向けて押圧する。可動部は、圧子の周囲に設けられ、第2の被接合部材の反対側の面において、圧子の先端に向かう位置から第2の被接合部材のエッジ部に向かう加圧エアーの流路を規定する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被接合部材が載せられるテーブルと、
前記第1の被接合部材の前記テーブルに対する接触面とは反対側の平面に対して第2の被接合部材の平面を接触させた状態で、前記第2の被接合部材の前記平面とは反対側の面を前記第1の被接合部材の前記平面に向けて押圧する圧子と、
前記圧子の周囲に設けられ、前記第2の被接合部材の前記反対側の面において、前記圧子の先端に向かう位置から前記第2の被接合部材のエッジ部に向かう加圧エアーの流路を規定する可動部と
を有する、被接合部材同士の接合装置。
【請求項2】
前記可動部は、前記加圧エアーが前記圧子による押圧位置から前記第2の被接合部材のエッジ部の外側に向かって環状に噴射するように前記流路を規定する、請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記可動部は、前記圧子による押圧位置から前記第2の被接合部材のエッジ部の外側に、前記加圧エアーの噴き出し方向を変更する回動部を有する、請求項1又は請求項2に記載の接合装置。
【請求項4】
前記可動部は、前記圧子による押圧位置から前記第2の被接合部材のエッジ部の外側に、前記加圧エアーの噴き出し方向を変更するアクチュエータを有する、請求項1又は請求項2に記載の接合装置。
【請求項5】
前記アクチュエータを制御する制御部を有する、請求項4に記載の接合装置。
【請求項6】
前記可動部により可動され、前記加圧エアーを噴射する複数の噴射口を有する、請求項1又は請求項2に記載の接合装置。
【請求項7】
前記可動部は、前記圧子とともに前記流路を規定し、前記加圧エアーを前記圧子の周囲から噴き出す噴き出し口を有する、請求項1又は請求項2に記載の接合装置。
【請求項8】
前記加圧エアーを供給するエアー供給源を有する、請求項1又は請求項2に記載の接合装置。
【請求項9】
前記圧子が支持され、前記第2の被接合部材の前記平面とは反対側の面を前記圧子を介して支持させ、前記圧子を前記第2の被接合部材の前記平面で、前記第1の被接合部材の前記平面を押圧するように移動させるロボットアームを有する、請求項1又は請求項2に記載の接合装置。
【請求項10】
前記テーブル、及び、前記ロボットアームが内側に配置され、温湿度を制御可能な槽を有する、請求項9に記載の接合装置。
【請求項11】
第1の被接合部材の平面に対して第2の被接合部材の平面を接触させること、
前記第1の被接合部材の前記平面に対して前記第2の被接合部材の前記平面を接触させた状態で、前記第2の被接合部材の前記平面とは反対側の面を前記第1の被接合部材の前記平面に向けて押圧すること、
前記第1の被接合部材の前記平面に対して前記第2の被接合部材の前記平面を押圧させた位置の周囲から、前記第2の被接合部材の前記反対側の面のうち、前記押圧させた位置に向かう位置から前記第2の被接合部材のエッジ部に向かって移動するように加圧エアーを供給すること、
を含む、被接合部材同士の接合方法。
【請求項12】
前記加圧エアーを供給することは、前記加圧エアーを、前記押圧させた位置から前記第2の被接合部材のエッジ部に向かって、環状に噴射することを含む、請求項11に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板等の被接合部材同士の接合装置及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば被接合部材同士の接合面同士を当接させて押圧し、被接合部材同士を接合する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、被接合部材同士の密着性を向上させることが可能な接合装置及び接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、被接合部材同士の接合装置は、第1の被接合部材が載せられるテーブルと、圧子と、可動部とを有する。圧子は、第1の被接合部材のテーブルに対する接触面とは反対側の平面に対して第2の被接合部材の平面を接触させた状態で、第2の被接合部材の平面とは反対側の面を第1の被接合部材の平面に向けて押圧する。可動部は、圧子の周囲に設けられ、第2の被接合部材の反対側の面において、圧子の先端に向かう位置から第2の被接合部材のエッジ部に向かう加圧エアーの流路を規定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1及び第2実施形態に係る接合システムを示す概略図。
【
図2】第1及び第2実施形態に係る接合システムの前処理装置及び接合装置を示す概略的なブロック図。
【
図3】第1及び第2実施形態に係る接合システムの接合装置を示す概略図。
【
図4】第1実施形態に係る接合装置の圧子、エアー供給部、及びアクチュエータ部を示す概略的な斜視図。
【
図6】第1実施形態に係る接合装置の圧子、エアー供給部、及びアクチュエータ部を示す概略的な斜視図。
【
図7】
図6中のVII-VII線に沿う概略的な断面図。
【
図8】第1実施形態に係る接合装置を用いる第1の基板及び第2の基板の接合処理に関するフローチャート。
【
図9】第1実施形態に係る接合装置の圧子、エアー供給部、第1の基板、第2の基板の位置関係を示す概略的な斜視図。
【
図10】
図9に示すエアー供給部から加圧エアーを第2の基板に当てたときの、第2の基板に対する圧子、ボイドの位置関係の一例を示す概略図。
【
図11】
図9に示す第1の基板、第2の基板の図示を省略し、
図9に示す位置関係からエアー供給部を動かしたときの接合装置の圧子、エアー供給部の位置関係を示す概略的な斜視図。
【
図12】
図11に示すエアー供給部から加圧エアーを第2の基板に当てたときの、第2の基板に対する圧子、ボイドの位置関係の一例を示す概略図。
【
図13】
図9に示す第1の基板、第2の基板の図示を省略し、
図11に示す位置関係からエアー供給部をさらに動かしたときの接合装置の圧子、エアー供給部の位置関係を示す概略的な斜視図。
【
図14】
図13に示すエアー供給部から加圧エアーを第2の基板に当てたときの、第2の基板に対する圧子、ボイドの位置関係の一例を示す概略図。
【
図15】第1実施形態の変形例に係る接合装置の圧子、エアー供給部、第1の基板、第2の基板の位置関係を示す概略的な斜視図。
【
図16】第2実施形態に係る接合装置の圧子を第2の基板の図心に当接させたときの、エアー供給部、第2の基板の位置関係を示す概略的な斜視図。
【
図17】加圧エアーを流路に供給し、
図16に示す位置から接合装置の調整板を回動軸の軸回りに回動させた状態を示す概略図。
【
図18】加圧エアーを流路に供給し、
図17に示す位置から接合装置の調整板を回動軸の軸回りにさらに回動させた状態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1から
図18を用いて実施形態に係る被接合部材同士の接合システム100について説明する。
【0008】
ここで、接合対象となる被接合部材である、第1の基板(第1の被接合部材)10及び第2の基板(第2の被接合部材)20は、例えば、シリコンウエハなどの半導体基板である。第1の基板10及び第2の基板20は、例えばSi基板上にSiO2膜が形成されていてもよい。第1の基板10及び第2の基板20は、互いに反対側を向く1対の略平行な平面を有する平板状である。すなわち、第1の基板10及び第2の基板20の表裏は、例えば、それぞれ平面として形成される。なお、第1の基板10及び第2の基板20は、例えばプリント基板であってもよい。また、第1の基板10及び第2の基板20は、リジッド基板であってもよく、フレキシブル基板(フィルム状部材)であってもよい。本実施形態では、第1の基板10及び第2の基板20が適宜の剛性を有する半導体基板(リジッド基板)であるとして説明する。
【0009】
本実施形態では、第1の基板10の1対の平面(接合面11、及び、接合面11とは反対側の面12)の面積が第2の基板20の1対の平面(接合面21、及び、接合面21とは反対側の面22)の面積に比べて大きい例について説明する。第1の基板10の1対の平面の面積と第2の基板20の平面の面積とが、同じであってもよい。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る接合システム100を示す概略図である。
図2は、第1実施形態に係る接合システム100の前処理装置116及び接合装置118を示す概略的なブロック図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る接合システム100は、ロードポート112と、イントロチャンバ114と、前処理装置(表面活性化装置)116と、接合装置118と、制御部120とを有する。
【0012】
第1の基板10及び第2の基板20は、後述するように貼り合わせられるまでの間、例えばFOUP(Front Opening Unified Pod)と呼ばれる密閉容器に収納されて保管される。
【0013】
ロードポート112は、第1の基板10及び/又は第2の基板20を格納したFOUPを搬送機から受け取り、また、FOUPからイントロチャンバ114内に第1の基板10及び/又は第2の基板20を搬入する。
【0014】
イントロチャンバ114は、ロードポート112から導入される基板10,20のバッファとして使われる。イントロチャンバ114は、前処理装置116の前処理槽122内に第1の基板10及び/又は第2の基板20を図示しない搬送装置によって搬入される。例えば、後述のような真空プラズマ処理を行うなど、真空状態で基板10,20を前処理する場合、前処理装置116の前処理槽122内は真空状態とするため、一旦真空引きしてイントロチャンバ114内の真空度を上げてから、前処理装置116の前処理槽122とイントロチャンバ114の間のゲートバルブを開けて、イントロチャンバ114から前処理装置116に基板10,20を導入する。
【0015】
このとき、例えば、複数の第2の基板20がリング付きダイシングテープに接合面が上向きに固定される形で、FOUPからイントロチャンバ114に搬入される。基板20とダイシングテープとの剥離は、後述する前処理装置116の前処理槽122に入れる前に実施してもよく、前処理装置116での前処理後に実施してもよい。
【0016】
前処理装置116は、接合装置118の上流側に設けられ、複数の基板10,20の接合面11,21にそれぞれ水酸基を付与するといった前処理を行う。前処理装置116は、前処理槽(基板10,20同士の接合前に基板10,20に前処理として表面処理を行う処理槽)122と、電源124と、コンデンサ126と、第1の電極128と、第2の電極130と、真空ポンプ132と、ガス供給部(弁体)134と、ガス排出部(弁体)136と、水蒸気供給部138とを有する。前処理装置116は、本実施形態では、基板10,20の接合面11,21に対して真空下でプラズマ処理可能である。
【0017】
前処理槽122は、基板10,20同士の接合前に、基板10,20に対する前処理として表面処理を行う。前処理槽122は、例えば複数の基板10,20を重ねずに水平方向に並べることが可能な大きさに形成される。本実施形態では、前処理槽122は、真空プラズマ処理を行う場合を例にして説明する。この場合の前処理槽122の前処理では、高真空、あるいは極高真空が要求される。前処理槽122は、メンテナンス時以外、大気開放をせず、真空状態をキープする。
【0018】
電源124及びコンデンサ126は、前処理槽122の例えば外側に配置される。電源124は、接地されている。第1の電極128は、コンデンサ126を介して電源124に接続されている。第1の電極128及び第2の電極130は前処理槽122内に配置される。第1の電極128と第2の電極130とは、対向する。第1の電極128と第2の電極130とは平行に離間する。本実施形態では、第1の電極128は、前処理槽122内において、上下方向の下方に配置されている。第2の電極130は、前処理槽122内において、上下方向の上方に配置されている。第2の電極130は、第1の電極128の例えば直上に設けられる。第1の電極128は、その上に、第1の基板10、及び/又は、第2の基板20が載置されるように配置される。
【0019】
真空ポンプ132は、前処理槽122に接続される。真空ポンプ132を動作させると、前処理槽122内を適宜の時間で大気圧よりも低い所定の圧力以下(真空と称する)にすることができる。真空プラズマ処理を行う場合、前処理槽122に接続される真空ポンプ132は常時稼働し、前処理槽122内が常時真空となる。また、イントロチャンバ114には別の真空ポンプ133と、別のガス供給部(弁体)135が接続される。この別の真空ポンプ133を動作させるとイントロチャンバ114内を適宜の時間で真空にすることができる。なお、別の真空ポンプ133を用いる代わりに、真空ポンプ132を分岐してイントロチャンバ114内を真空にしてもよい。この場合、真空ポンプ132とイントロチャンバ114との間は、開閉弁(図示しない)を介して接続される。別のガス供給部135は、イントロチャンバ114内を大気に開放可能である。
【0020】
すなわち、本実施形態では、ロードポート112を常時大気圧とし、前処理槽122を常時高真空とし、イントロチャンバ114を大気開放(大気圧)~高真空(前処理槽圧力)に調整可能とする。このとき、ロードポート112とイントロチャンバ114との間、及び、イントロチャンバ114と前処理槽122との間は、それぞれゲートバルブで接続される。つまり、イントロチャンバ114をロードロックチャンバとして用いる。
【0021】
ガス供給部(弁体)134は、例えばアルゴン(Ar)ガス、酸素(O2)ガス等の処理ガスの前処理槽122内への供給/供給停止を切替可能である。ガス排出部(弁体)136は、前処理槽122内の処理ガスの排出/排出停止を切替可能である。水蒸気供給部138は、前処理槽122内の基板10,20上に水蒸気(純水)を導入可能である。水蒸気供給部138での水蒸気の供給方式としては、加熱式、超音波式などがあり得る。水蒸気供給部138は、通常は前処理槽122内を閉塞し、水蒸気を供給するときに開く。
【0022】
図3には、接合装置118の概略図を示す。なお、
図1に示す後述する第1のロボットアーム156と
図3に示す第1のロボットアーム156とは、異なる図として示した。第1のロボットアーム156の構成は、第1の基板10及び第2の基板20を適切に所定の位置又は所望の位置に運ぶことができれば、どのようなものもよい。同様に、
図1に示す後述する第2のロボットアーム158と
図3に示す第2のロボットアーム158とは、異なる図として示した。第2のロボットアーム158の構成は、第2の基板20を適切に所定の位置又は所望の位置に運び、第2の基板20の所定の位置に圧子160の先端(押圧部)161(
図4及び
図6参照)を適宜の圧力範囲内で所定の方向に押圧することができれば、どのようなものもよい。
【0023】
図4には、圧子160に対する初期位置のノズル(可動ノズル)168aの概略図を示す。
図5は、
図4中のV-V線に沿う概略的な断面図である。
図6には、圧子160に対して回動した位置のノズル168aの概略図を示す。
図7は、
図6中のVII-VII線に沿う概略的な断面図である。
【0024】
図1から
図7に示すように、接合装置118は、接合槽(ボンディング槽)152と、テーブル154と、移送用の第1のロボットアーム156と、接合用の第2のロボットアーム158と、圧子160と、エアー導入口(接合槽152用のエアー供給部)165と、温湿度制御ユニット164と、エアー流出口(弁体)166と、エアー供給部168と、可動部170とを有する。
【0025】
本実施形態では、
図1及び
図3に示す接合槽152は、前処理槽122に隣接し、前処理槽122の下流側に設けられる。すなわち、前処理槽122は接合槽152の上流側に設けられる。接合槽152の内側は、大気圧下で使用される。接合槽152には、テーブル154、第1のロボットアーム156、第2のロボットアーム158、圧子160、エアー供給部168、可動部170の全部又は一部が配設されている。
【0026】
テーブル154上には、第1の基板10及び第2の基板20のうち、例えば第1の基板10を載置可能である。テーブル154は、接合槽152に対して固定されていても、相対的に移動可能であってもよい。テーブル154が接合槽152に対して移動する場合、テーブル154は、第1のロボットアーム156、第2のロボットアーム158に対してテーブル154上に適切に第1の基板10が載置されるように、例えばXYZステージのように動き得る。
【0027】
図1及び
図3に示す第1のロボットアーム156は、前処理槽122で前処理された第1の基板10を前処理槽122より取り出して、第1の基板10を接合槽152内のテーブル154の所望の位置である実装位置に直接載置する。また、第1のロボットアーム156は、前処理槽122で前処理された第2の基板20を前処理槽122より取り出して、第2の基板20を接合槽152内のテーブル154上に直接載置する。第2のロボットアーム158は、第2の基板20を吸着して、第2の基板20を第1の基板10の所望の位置に載置する。
【0028】
図2に示すように、第1のロボットアーム156は、1又は複数のアクチュエータ156aと、第1のロボットアーム156の先端のチャック156b(
図1参照)とを有する。アクチュエータ156a及びチャック156bは、制御部120により制御される。第1のロボットアーム156のアクチュエータ156aは、
図1に簡易的に示す第1のロボットアーム156の先端のチャック156bを適宜の範囲で適宜の位置に動かす。第1のロボットアーム156の先端のチャック156bは、第1の基板10及び/又は第2の基板20を狭持(把持)可能である。
【0029】
図1及び
図3に示す第2のロボットアーム158は、例えば第2の基板20を保持し、テーブル154の上面の第1の基板10上の所望の位置に載置する。
図2に示すように、第2のロボットアーム158は、1又は複数のアクチュエータ158aと、エジェクタ又は真空ポンプなどの真空発生装置158bとを有する。アクチュエータ158a及び真空発生装置158bは、制御部120により制御される。第2のロボットアーム158のアクチュエータ158aは、第2のロボットアーム158の先端のチャック(図示しない)を適宜の範囲で適宜の位置に動かす。第2のロボットアーム158の真空発生装置158bは、例えば第2のロボットアーム158の先端のチャックに取り付けられる後述する圧子160で、第2の基板20を吸着可能である。
【0030】
図1及び
図3に示すように、第2のロボットアーム158の先端のチャックには、圧子160が取り付けられる。第2のロボットアーム158は、圧子160を第2の基板20の載置位置に向けて押圧する。つまり、第2のロボットアーム158は、圧子160の先端161で、所定の圧力範囲内で、圧子160に吸着保持した第2の基板20を第1の基板10に向けて押圧する。すなわち、圧子160は、テーブル154に対向し、テーブル154との間に複数の被接合部材である基板10,20を挟むように押圧する。圧子160は、例えば地面又は床面に直交する方向に負荷をかけるように第2のロボットアーム158により動かされることが好適である。
【0031】
接合槽152には、エアー導入口165が形成されている。エアー導入口165は、接合槽152の内側と外側とを連通させる。エアー導入口165は、例えば接合槽152の外側の空気をエアー導入口165を通して接合槽152内に流入させる。
なお、エアー導入口165は、
図1中では、接合槽152の上側に形成される例を示すが、種々の位置に形成されることが許容される。
【0032】
温湿度制御ユニット164は、例えばエアー導入口165の周囲に設けられる。温湿度制御ユニット164は、エアー導入口165を通過し接合槽152内に入れられる空気の温度及び湿度(相対湿度RH)を適宜の範囲に調整する。すなわち、温湿度制御ユニット164は、接合槽152内の温度及び湿度が所望の状態となるように調整する。このため、温湿度制御ユニット164は、接合槽152内の単位体積あたりの水分量を所定の水分量の範囲に調整することができる。
【0033】
温湿度制御ユニット164は、例えば、エアー導入口165を通る空気を例えばペルチェ素子等を用いて加温及び冷却可能であり、又は、エアー導入口165を通る空気に水蒸気(純水)を供給することで湿度を調整可能である。また、湿度の調整には、前処理槽122の水蒸気供給部138を利用することも可能である。このため、図示しないが、水蒸気供給部138は、前処理槽122だけでなく、接合槽152に接続されることも好適である。
【0034】
一般に、飽和水蒸気量は、温度が上がると上昇し、温度が下がると低下する。このため、温度が低い方が、水蒸気は凝結しやすく、湿度が上昇しやすい。なお、接合槽152内の温度は、接合槽152内の水蒸気が凍らないように、0℃よりも高い常温とすることが好適である。
【0035】
エアー流出口166は、接合槽152と外部との連通/遮断の切り替えを行う。エアー流出口166は、必要に応じて排気ポンプのように作動し、エアー導入口165及び温湿度制御ユニット164と協働して、接合槽152内の温度及び湿度、すなわち、温湿度を調整する。したがって、本実施形態に係る接合槽152は、内側の温湿度を制御可能である。なお、このとき、必要に応じて、水蒸気供給部138も用いて、接合槽152内の温湿度を調整することも可能である。
【0036】
図5及び
図7に示すように、本実施形態では、圧子160は、例えば中心軸上が真空発生装置158b(
図2参照)と連通する吸引路160aを有し、円柱状(円筒状)に形成されているものとする。吸引路160aは、吸引により圧子160の先端(押圧部)161に第2の基板20を吸着させる。また、
図4及び
図6に示す圧子160の先端161は、第2の基板20に対して過剰な負荷をかけない素材で形成されている。圧子160の先端161の素材は、第2の基板20の面22の素材に応じて設定可能である。圧子160の先端161としては、例えばゴム材やスポンジ材等の適宜の緩衝性を有する素材が用いられる。
【0037】
圧子160の大きさは、概略、高さ(H):30mm、幅(W):5mm~10mm、奥行き(D):5mm~10mmである。圧子160の先端161の押圧面は、例えば円形、楕円形、正方形、長方形等に形成される。圧子160の先端161が円形である場合、幅及び奥行きは直径となる。
【0038】
図4から
図7に示すように、圧子160の周囲には、エアー供給部168及び可動部170が設けられる。エアー供給部168は第2の基板20に向けて加圧エアーを噴射する。
【0039】
エアー供給部168は、本実施形態では、複数のノズル168aと、エアー供給源169(
図2参照)とを有する。
【0040】
エアー供給源169は、制御部120により制御される。制御部120は、エアー供給源169を制御し、ノズル168aに対する加圧エアーの供給/供給停止を実行する。エアー供給源169は、ノズル168aに対する加圧エアーの単位時間あたりの供給量を調整可能であってもよい複数のノズル168aは、加圧エアーを噴射する複数の噴射口として形成される。複数のノズル168aは、可動部170により可動され、それぞれ所定方向に加圧エアーを噴射する。このため、複数のノズル168aから噴射される加圧エアーは、複数のノズル168aの向きに応じて流路168b(
図4、
図6、
図9、
図11、
図13参照)が規定される。
【0041】
複数のノズル168aは、圧子160の周囲を囲むように並べられている。複数のノズル168aの数は、限定されるものではないが、2つ以上であることが好適である。各ノズル168aの先端の噴射口、すなわち、加圧エアーを噴射する複数の噴射口は、下側のテーブル154に向けられている。複数のノズル168aの噴射口は、可動部170により、圧子160の下端を向く位置(
図4及び
図5参照)と、圧子160の先端161から圧子160を中心軸として径方向外方に離れる位置(
図6及び
図7参照)との間を移動可能である。このため、可動部170は、加圧エアーの流路(噴射の方向)を規定する。
【0042】
本実施形態では、可動部170は、1つのアクチュエータ部170aと、複数のノズル168aを回動させる回動軸(回動部)170bとを有する。本実施形態では、1つのアクチュエータ部170aはバルーンアクチュエータであるものとして説明する。
【0043】
隣接するノズル168a同士は、ノズル168aに設けられる回動軸170bにより回動可能に連結されている。回動軸170b及びノズル168aのうちの回動軸170bの受部は、回動部を形成する。回動軸170bは、圧子160の外周側に圧子160の中心軸と同心の略円環状に形成される。回動軸170bは、隣接するノズル168a同士を連結するが全体として環状でない不連続であってもよく、隣接するノズル168aを貫通する円環状のように連続的に形成されていてもよい。回動軸170bが不連続である場合、回動軸170bはストレート状に形成されていてもよく、円弧状に形成されていてもよい。回動軸170bは、剛性を有する素材であっても、可撓性を有する素材であってもよい。ノズル168aが回動軸170bの軸回りに回動する際に隣接するノズル168a間の距離が変わる場合、回動軸170bは可撓性を有する素材で形成されることが好適である。ノズル168aが回動軸170bの軸回りに回動する際に隣接するノズル168a間の距離が変わらない場合、回動軸170bは剛性を有する素材で形成されてもよく、可撓性を有する素材で形成されてもよい。
【0044】
複数のノズル168aは、それぞれにアクチュエータが設けられていてもよいが、例えば1つのバルーンアクチュエータ170aの動作によって、複数のノズル168aが連動して動くように形成されていることが好適である。
【0045】
図4から
図7に示す例では、圧子160の外周面と、ノズル168aのうち圧子160の外周面側の位置との間には、圧子160と同心状の円環状(ドーナツ状)のバルーンアクチュエータ170aが配設されている。各ノズル168aは、例えばバルーンアクチュエータ170aの外周面に固定されている。
【0046】
バルーンアクチュエータ170aには、バルーンアクチュエータ170aの膨張/収縮を切り替えるエアー供給部171(
図2参照)が接続されている。このため、バルーンアクチュエータ170aは、制御部120により制御される。エアー供給部171は、例えば接合槽152の外側に配置される。
【0047】
バルーンアクチュエータ170aは、例えばエアーの供給により膨張し、エアーの引抜により収縮する。バルーンアクチュエータ170aに対するエアーの供給速度を調整することで、回動軸170bの軸回りのノズル168aの回動速度が調整される。また、バルーンアクチュエータ170aの膨張量を調整することにより、ノズル168aの最大回動量が調整される。したがって、回動軸(回動部)170bは、圧子160による押圧位置(先端161)から第2の基板20のエッジ部の外側に向かって加圧エアーの噴き出し方向を変更する。本実施形態では、バルーンアクチュエータ170aは、圧子160による押圧位置(先端161)から第2の基板20のエッジ部の外側に向かって加圧エアーの噴き出し方向を変更する。
【0048】
なお、本実施形態では、バルーンアクチュエータ170aは、回動軸170bよりも下側に配置される。
【0049】
エアー供給部168は、可動部170と協働して、複数のノズル168aを通して、圧子160の周囲から、第2の基板20の面22のうち、圧子160の先端161に向かう位置から第2の基板20のエッジ部に向かって移動するように加圧エアーを供給する。この時、エアー供給部168は、圧子160の周囲から、第2の基板20に向かって、環状に噴射するように設けられることが好適である。したがって、可動部170は、第2の基板20の接合面21とは反対側の面22において、圧子160の先端161に向かう位置から第2の基板20のエッジ部(外縁)に向かう加圧エアーの流路を規定する。
【0050】
接合システム100の
図2に示す制御部120は、例えばコンピュータである。制御部120は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含むプロセッサ(集積回路であってもよい)と、メモリ、ストレージ等の記憶媒体とを備える。制御部120に設けられるプロセッサは、1つであってもよく、複数であってもよい。制御部120は、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、各種の機能を発揮させる処理を実行する。
なお、制御部120の制御プログラムは、コンピュータのメモリ及び/又はストレージに記憶されておらず、適宜のサーバー上やクラウド上に置かれていることも好適である。この場合、制御プログラムは、通信インタフェースを介して例えば前処理装置116及び接合装置118がそれぞれ有するプロセッサと通信しながら実行される。すなわち、本実施形態に係る制御部120は、前処理装置116及び接合装置118がそれぞれ有していてもよく、前処理装置116及び接合装置118から離れた、接合システム100のサーバーやクラウド上にあってもよい。
【0051】
接合システム100の一連の動作(被接合部材同士の接合方法)について、
図1、
図8から
図14を用いて説明する。なお、
図8は、本実施形態に係る接合装置118を用いる第1の基板10及び第2の基板20の接合処理に関するフローチャートである。
【0052】
図1に示すロードポート112は、第1の基板10及び/又は第2の基板20を格納したFOUPを図示しない搬送機から受け取って、FOUPからイントロチャンバ114内に第1の基板10及び/又は第2の基板20を搬入する。
【0053】
イントロチャンバ114は、ロードポート112から導入される基板10,20のバッファとして使われる。制御部120は、真空ポンプ132,133を作動させて、イントロチャンバ114及び前処理槽122内を減圧し、イントロチャンバ114と前処理装置116の前処理槽122との間のゲートバルブを開ける。そして、イントロチャンバ114から前処理装置116の前処理槽122内に第1の基板10及び/又は第2の基板20を搬入した後、イントロチャンバ114と前処理装置116の前処理槽122との間のゲートバルブを閉める。
【0054】
前処理装置116において、1又は複数の第1の基板10、及び/又は、1又は複数の第2の基板20が前処理槽122内に搬入され、所定の向きに向けられて第1の電極128上で保持される。本実施形態では、第1の基板10の接合面11及び第2の基板20の接合面21となる側が、上側である。
【0055】
そして、制御部120は、ガス供給部134から例えばアルゴンなどの希ガス、酸素ガス等の処理ガスを前処理槽122内に供給しながら、電源124により電極128,130間に交番電圧を印加する。2つの電極128,130間の電界により前処理槽122内に供給された処理ガスがプラズマ化される。すなわち、第1の電極128と第2の電極130との間において、1又は複数の第1の基板10の接合面(表面)11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面(表面)21の周囲に、粒子を含むプラズマを発生させる。プラズマ中の粒子を電圧により粒子に所定の運動エネルギーを付与し、1又は複数の第1の基板10の接合面11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面21に向けて加速させる。
【0056】
処理ガスのプラズマにより、1又は複数の第1の基板10の接合面(表面)11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面(表面)21が改質される。例えば、アルゴンガスのプラズマは、1又は複数の第1の基板10の接合面(表面)11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面(表面)21を活性化させ、親水化を促進させる。酸素ガスのプラズマは、1又は複数の第1の基板10の接合面(表面)11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面(表面)21を活性化させ、親水化を促進させる。
【0057】
制御部120は、前処理槽122内への処理ガスの供給を停止するとともに、交番電圧の印加を停止する。
【0058】
制御部120は、1又は複数の第1の基板10の接合面11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面21上に水蒸気供給部138から水蒸気(純水)を供給する。水蒸気が供給されると、供給された水蒸気は1又は複数の第1の基板10の接合面11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面21上を拡散する。1又は複数の第1の基板10の接合面11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面21には、水酸基(例えばシラノール基(Si-OH基))が形成して基板10,20の接合面11,21が親水化される。このように、1又は複数の第1の基板10の接合面11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面21には、前処理が行われる。なお、水蒸気は大気中の水蒸気を含む。
【0059】
なお、1又は複数の第1の基板10の接合面11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面21上への水蒸気(純水)の供給は、前処理装置116の前処理槽122の水蒸気供給部138ではなく、接合装置118の接合槽152内であってもよい。すなわち、接合装置118の接合槽152に水蒸気供給部138が設けられることも好適である。
【0060】
前処理装置116で常時真空プラズマ処理を行う場合、前処理槽122の大気開放ができない。このため、制御部120は、イントロチャンバ114と前処理装置116の前処理槽122との間のゲートバルブ(図示しない)を開け、処理した基板10,20を前処理槽122からイントロチャンバ114に排出した後、ゲートバルブを閉める。制御部120は、真空ポンプ132を作動させたまま真空ポンプ133の作動を停止し、ガス供給部135を開放する。このため、イントロチャンバ114が大気に開放され、イントロチャンバ114内に大気が導入される。制御部120は、イントロチャンバ114内で前処理した基板10,20を、例えば第1のロボットアーム156により、接合装置118にそれぞれ搬送する。
なお、前処理装置116と接合装置118との間に減圧チャンバを設けて、この減圧チャンバを経由して基板10,20を接合装置118に搬入することも好適である。
【0061】
次に、制御部120は、エアー導入口165、温湿度制御ユニット164、及び、エアー流出口166を制御して、接合槽152内の温度及び湿度を調整することが好ましい(ステップS1)。すなわち、制御部120は、例えばエアー導入口165を通して接合槽152内に流入させる空気の流量、及び、エアー流出口166を通して接合槽152外に流出させる空気の流量を調整するとともに、温湿度制御ユニット164を制御して、接合槽152内の温度及び湿度を調整することが好ましい。このため、前処理した第1の基板10及び第2の基板20が接合装置118に搬入された時点で、接合槽152内の温湿度が既に設定値に到達していることが好ましい。
【0062】
制御部120は、
図1及び
図3に示す接合装置118の第1のロボットアーム156のアクチュエータ156a及びチャック156bを動かし、例えばイントロチャンバ114内の第1の基板10の接合面(接触面、親水化面)11を触らないように把持し、
図1に示すように、テーブル154上の所望の位置に、第1の基板10の接合面11を上側にして載置する。すなわち、第1のロボットアーム156の先端のチャック156bは、前処理装置116で処理した第1の基板10を例えばイントロチャンバ114を介して受け取り、所定の範囲内で所望の位置に移動可能である。このとき、テーブル154には、第1の基板10の接合面11とは反対側の面(テーブル154に対する接触面)12が接触する。
【0063】
このように、第1のロボットアーム156は、例えば、基板10の親水化した面(接合面11)に触れないように、基板10の縁部を把持する。
【0064】
また、制御部120は、第1のロボットアーム156のアクチュエータ156a及びチャック156bを動かし、例えばイントロチャンバ114内の第2の基板20の接触面(接合面、親水化面)21を触らないように把持する。そして、第1のロボットアーム156の動作により第2の基板20の接合面21とは反対側の面22を第2のロボットアーム158に向けさせ、第2のロボットアーム158の先端の圧子160の先端161を第2の基板20の接合面21とは反対側の面22に接触させる。このとき、第2のロボットアーム158の先端の圧子160の先端161で、吸引路160aを通して第2の基板20の面22を吸着する。この状態で、第1のロボットアーム156のチャック156bのクランプを解除することにより、第2のロボットアーム158は、第1のロボットアーム156から第2の基板20を受け取る。
制御部120は、第1のロボットアーム156のチャック156bを例えば180°程度回動させて、チャック156bで把持した第2の基板20の表裏を反転させる。このため、第1のロボットアーム156は、例えば、接合面21を下側に、接合面21とは反対側の面22を上側に向ける。そして、上側に向けられた接合面21とは反対側の面22が、第2のロボットアーム158のチャックとしての圧子160で吸着される。
なお、第2の基板20の表裏を反転させる場合、チャック156bを180°回動させる代わりに、第1のロボットアーム156のチャック156bを例えば90°回動させ、かつ、第2のロボットアーム158の先端を90°回動させてもよい。
【0065】
したがって、制御部120は、吸引路160aを通して第2の基板20の接合面21とは反対側の面22を吸引するとき、第2の基板20の接合面21とは反対側の面22の図心に圧子160の先端161を接触させる(ステップS2)。そして、制御部120は、テーブル154上の第1の基板10の接合面11に、第2の基板20の接合面21が接するように、第1の基板10に第2の基板20を載置する。すなわち、制御部120は、第2のロボットアーム158の先端の圧子160の先端161を移動させて第1の基板10の接合位置に第2の基板20を移動させる(ステップS3)。
【0066】
制御部120は、第2のロボットアーム158のアクチュエータ158a及び真空発生装置158bを動かし、必要に応じて、圧子160の先端161で、第1の基板10に対して第2の基板20を所望の位置に所望の向き(姿勢)で載置する。
【0067】
そして、制御部120は、第2のロボットアーム158のアクチュエータ158aで圧子160の先端161をテーブル154に向けて押圧する(ステップS4)。このとき、圧子160は、第1の基板10のテーブル154に対する接触面12とは反対側の接合面11に対して第2の基板20の接合面21を接触させた状態で、適宜の範囲内の圧力で、第2の基板20の接合面21とは反対側の面22を第1の基板10の接合面11に向けて押圧する。テーブル154と圧子160との間の第1の基板10の接合面11及び第2の基板20の接合面21が密着する。
図9には、この状態での、第1の基板10、第2の基板20、圧子160、エアー供給部168のノズル168a、可動部170を示す。
【0068】
制御部120は、エアー供給源169を駆動し、ノズル168aから、第2の基板20の面22のうち圧子160の先端161の外周面に向けて加圧エアーを噴射させる(ステップS5)。加圧エアーが第2の基板20のうち接合面21とは反対側の面22に当てられると、第2の基板20が弾性変形する。
【0069】
ここで、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面において、
図10に示すように、1又は複数のボイドVが発生し得る。圧子160の直下の領域では、圧子160の押圧力によりボイドVの存在が抑制される。ボイドVは、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面のうち、圧子160の直下の領域から外れた領域に存在し得る。そして、第2の基板20の面22に加圧エアーが当てられると、第2の基板20が弾性変形して、加圧エアーが当てられた領域の直下の領域からボイドVが、圧子160の中心軸に対して径方向外方に向かって押し出される。
【0070】
なお、
図10中の円環状の破線Bは、最初にノズル168aから噴射された加圧エアーが当てられた第2の基板20の面22の領域のうち、第2の基板20を弾性変形させることが可能な強さのエアーが当てられた領域の外縁の位置を示す。この外縁Bは、実際には第2の基板20の面22上において、連続的な環状(円環状)となる。
【0071】
本実施形態では、制御部120は、エアー供給源169を作動させて加圧エアーをノズル168aから噴射させながら、エアー供給部171を作動させてバルーンアクチュエータ170aを膨張させていく。すると、バルーンアクチュエータ170aの膨張に応じて、
図9に示す状態から
図11に示す状態に向かって、各ノズル168aが回動軸170bの軸回りに回動する(ステップS6)。すなわち、可動部170により、各ノズル168aを回動させる。このため、各ノズル168aの先端(噴射口)は圧子160の中心軸に対して例えば同心状に径方向外方に向かって向きが変化していく。したがって、
図12に示すように、ノズル168aから、圧子160の先端の外周面に向けて噴射させた加圧エアーが第2の基板20に当たる位置の外縁Bが、圧子160の中心軸に対して例えば同心状に径方向外方に向かって移動する。
【0072】
このとき、制御部120は、ノズル168aから噴射される加圧エアーを途切れることなく連続して第2の基板20の面22に当て続けることが好適であるが、ボイドVは瞬間的に適宜の距離移動し得るため、所定の時間間隔ごとに不連続に第2の基板20の面22に当てることも好適である。なお、所定の時間間隔に応じて、ノズル168aは径方向外方に向かって例えば所定角度回動する。そして、第2の基板20の面22に加圧エアーが当てられると、第2の基板20が弾性変形して、加圧エアーが当てられた領域の直下の領域からボイドVが、圧子160の中心軸に対して径方向外方に向かって押し出される。
【0073】
そして、バルーンアクチュエータ170aの更なる膨張に応じて、
図11に示す状態から
図13に示す状態に向かって、各ノズル168aが回動軸170bの軸回りに回動する。このため、各ノズル168aの先端(噴射口)は圧子160の中心軸に対して例えば同心状に径方向外方に向かって向きが変化していく。したがって、
図14に示すように、ノズル168aから、圧子160の先端の外周面に向けて噴射させた加圧エアーが第2の基板20に当たる位置の外縁Bが、圧子160の中心軸に対して例えば同心状に径方向外方に向かって移動する。
【0074】
このときも、ノズル168aから噴射される加圧エアーは上述したように時間的に連続して、又は、不連続に、第2の基板20の面22に当てられる。そして、ノズル168aから噴射される加圧エアーは、例えば第2の基板20の面22のエッジ部を超えて、又は、エッジ部の周辺まで噴射される。このため、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面に存在し得るボイドVが、第2の基板20の図心から離れた第2の基板20のエッジ部に向かって移動する。このとき、各ノズル168aから噴射される加圧エアーは第2の基板20の図心を中心とする連続する円環状に第2の基板20の面22に当てられる。そして、加圧エアーが当てられた領域である連続する円環の径(外縁B)は、連続した状態を維持しながら徐々に大きくなる。したがって、ボイドVは、加圧エアーが当てられた領域の間から圧子160の中心軸に向かって移動することが防止される。このため、可動部170は、加圧エアーが圧子160による押圧位置(先端161)から第2の基板20のエッジ部の外側に向かって環状に噴射するように加圧エアーの流路を規定する。
【0075】
一般に、接合装置118は圧子160で、ピックアップされた第2の基板20の接合面21を第1の基板10の接合面11に押し込むことで接合を実施する。しかし、第2の基板20に例えば僅かに反りがある場合、第2の基板20が第1の基板10に押圧されたとき、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面内に空気が囲まれてボイドが発生し、接合の品質が落ちることがある。本実施形態に係る接合装置118を用いることにより、例えば吸着で第2の基板20を第1の基板10の所望の位置に位置合わせした後、圧子160の先端161で第2の基板20の図心を含む中心部をプレスする。このとき、接合装置118は、加圧エアーを第2の基板20の中心部から第2の基板20のエッジ部まで順に略同心状に径方向内方から径方向外方に向かって噴き出す。このため、加圧エアーによる影響により第2の基板20が弾性変形しながら、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面に囲まれたボイドVを第2の基板20のエッジ部の外方に追い出すことができる。このとき、制御部120は、例えばエアー供給部168のエアー供給源169からのエアーの供給量、すなわち、バルーンアクチュエータ170aの膨張の程度に基づいて、ノズル168aの回動量が所望の角度まで回動していないと判断する(S7-No)と、ステップS5におけるエアー供給源169の駆動、ステップS6におけるエアー供給部171の駆動を維持する。制御部120は、ノズル168aの回動量が所望の角度に回動したと判断する(S7-Yes)と、エアー供給源169、エアー供給部171の駆動を停止させる(ステップS8)。
【0076】
そして、第1のロボットアーム156は、例えば第1の基板10と第2の基板20とを接合したアセンブリ基板をチャックで保持し、所望の位置に移動可能である。すなわち、制御部120は、アセンブリ基板を所望の位置に搬送するか否かを出力する(ステップS9)。
【0077】
制御部120がアセンブリ基板の搬送が必要であると出力した場合(S9-Yes)、制御部120は、圧子160の吸引路160aを用いた第2の基板20に対する吸引を開放して、第2の基板20が第1の基板10に接合されたアセンブリ基板から、第2のロボットアーム158を退避させる。その後、第1のロボットアーム156によりアセンブリ基板を所望の位置に搬送する。すなわち、制御部120は、第1のロボットアーム156により、所望の位置に、アセンブリ基板を搬送する(ステップS10)。
【0078】
制御部120がアセンブリ基板の搬送がまだ必要でないと出力した場合(S9-No)、制御部120は、吸引路160aを用いた吸引を開放して第2の基板20を開放する(ステップS11)。そして、制御部120は、上述したように、第1のロボットアーム156及び第2のロボットアーム158を制御して、新たな第2の基板20を第1の基板10の残りの所望の位置に接合する処理を繰り返し行う。
【0079】
なお、本実施形態では、制御部120は、常温で第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面を密着させただけである。このため、第1の基板10及び第2の基板20は、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間のファンデルワールス力による接合、及び/又は、シラノール基間の水素結合による接合を行った状態にある。例えば、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面を、300℃程度など適宜の温度でアニール処理と称されるような熱処理を行うことで、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面に強固な接合を形成することができる。これは、シラノール基同士の脱水縮合反応により、シロキサン結合(Si-O-Si結合)を生じさせることによる。このような熱処理は、接合槽152内で行ってもよく、接合槽152外で行ってもよい。すなわち、本実施形態に係る接合装置118を用いることにより、第1の基板10の接合面11と、第2の基板20の接合面21とに接触した界面に結合を生じさせることができる。このような熱処理は、接合槽152内で行ってもよく、接合槽152外で行ってもよい。これにより、本実施形態に係る接合装置118は、第1の基板10の接合面11と、第2の基板20の接合面21とを強固に固定することができる。
【0080】
本実施形態では、例えば、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との界面に適宜の接着剤を配置してもよい。接着剤として、例えば、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂が挙げられる。この場合も、本実施形態に係る接合装置118を用いると、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面(接着面)に囲まれたボイドを第2の基板20のエッジ部の外方に追い出すことができる。この場合、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21に何らかの前処理をしてもよいし、しなくてもよい。
【0081】
したがって、圧子160は、第1の基板(第1の被接合部材)10のテーブル154に対する接触面12とは反対側の接合面(平面)11に対して第2の基板(第2の被接合部材)20の接合面(平面)21を直接的又は間接的に接触させた状態で、第2の基板20の接合面21とは反対側の面22を第1の基板10の接合面11に向けて押圧し、第1の基板10の接合面11に対して第2の基板20の接合面21を押圧することが可能である。そして、エアー供給部168は、第1の基板10の接合面11に対して第2の基板20の接合面21を押圧させた位置の周囲の第2の基板20の接合面21とは反対側の面22に向けて加圧エアーを供給し、第1の基板10の接合面11と第2の基板の接合面21との間の1又は複数のボイドを圧子160による押圧位置(押圧させた位置)から第2の基板20のエッジ部の外側に向かって押し出すことが可能である。
【0082】
図1、
図3及び
図9中、第1の基板10の接合面11に対して、第2の基板(実装部材)20の接合面21の面積が小さい場合を例にして説明した。しかし、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21の面積が同じであってもよい。また、例えば、第1の基板10と第2の基板20とが例えば円盤状など、同じ形状であってもよいし、第1の基板10が円盤状で、第2の基板20が矩形であってもよい。その逆であってもよい。
【0083】
第1の基板10、第2の基板20は、プリント基板などであってもよい。この場合、例えば接着剤を用いて第1の基板10と第2の基板20とを接合してもよい。接着剤を用いる場合、ロードポート112、イントロチャンバ114、前処理装置116は不要となり得る。また、接合装置118の温湿度制御ユニット164も不要となり得る。第1の基板10、第2の基板20の少なくとも一方として、適宜の可撓性を有するフィルム状部材を含み得る。
【0084】
上述した例では、1つの第1の基板10に対して1つの第2の基板20を1つの圧子160を用いて貼り合わせる例について説明した。例えば、1つの第1の基板10に対して複数の第2の基板20を1つの圧子160を用いて順に、又は、同時に複数の圧子160を用いて貼り合わせてもよい。同時に複数の圧子160を用いる場合、各圧子160の周囲には、エアー供給部168が設けられることが好適である。
【0085】
本実施形態では、複数のノズル168aを圧子160の外周側に配置する例について説明した。第2の基板20の面22に加圧エアーが当たる際に、全体として連続する円環状(
図10、
図12及び
図14参照)に加圧エアーが当たるのであれば、ノズル168aの数及びノズル168aから噴射される加圧エアーのスプレーパターン、スプレー角度等は、適宜に設定可能である。また、第2の基板20とノズル168aとの間の距離は、適宜に設定可能である。
【0086】
なお、本実施形態では、バルーンアクチュエータ170aは、回動軸170bよりも下側に配置される例について説明した。バルーンアクチュエータ170aは、回動軸170bよりも上側に配置されることも好適である。この場合、ノズル168aから圧子160の先端161に向けて加圧エアーを供給するとき、バルーンアクチュエータ170aは膨張し、圧子160の先端から離れた位置に加圧エアーを供給するとき、バルーンアクチュエータ170aは収縮する。
【0087】
本実施形態では、複数のノズル168aを1つのバルーンアクチュエータ170aで回動軸170bの軸回りに回動させる例について説明した。複数のノズル168aと例えば同じ数のアクチュエータを用いて、複数のノズル168aをそれぞれ制御して回動軸170bの軸回りに回動させることも好適である。
【0088】
本実施形態では、前処理装置116として、プラズマ処理を用いて基板10,20の面11,21を活性化させる例について説明した。基板10,20の面11,21を活性化させるプラズマ処理方法としては、例えば、大気圧プラズマ処理、低気圧プラズマ処理、高気圧プラズマ処理、又は液中プラズマ処理などが挙げられる。また、前処理装置116として、例えば、上述した真空プラズマ装置を用いることも好適である。
【0089】
したがって、本実施形態によれば、第1の基板10と第2の基板20との密着性を向上させることが可能な接合装置118、及び、接合装置118を有する接合システム100を提供することができる。
【0090】
前処理槽122による前処理は、真空プラズマ処理のほか、大気圧プラズマ処理、低気圧プラズマ処理など高真空が要求されない前処理方法を行うことも可能である。この場合、前処理槽122は、大気に対して開放される状態と、密封される状態とに切り替え可能である。
【0091】
(変形例)
図15を用いて、接合装置118の圧子160の変形例について説明する。
【0092】
上述した実施形態では、バルーンアクチュエータ170aを用いて、ノズル168aを回動軸170bの軸回りに回動させる例について説明した。複数のノズル168aのアセンブリの形成状態によっては、バルーンアクチュエータ170aを用いず、第2の基板20の面22に対して円環状に第2の基板20を弾性変形させるような圧力の加圧エアーを供給可能である。複数のノズル168aは、例えば圧子160の外周面に対して周方向に例えば等間隔に配置されている。
【0093】
各ノズル168aは、ノズル168aの例えば直下であって、圧子160の外周面に沿って圧子160の中心軸に平行な方向に最も大きな圧力のエアーを供給し、圧子160の中心軸から径方向外方に向かって、ノズル168aから吐出するエアーの圧力が弱くなるように調整されていることが好適である。なお、エアーの圧力は、第2の基板20のエッジ部又はエッジ部の近傍まで負荷されるように調整されていることが好適である。
【0094】
したがって、各ノズル168aは、圧子160の先端161に近い側の第2の基板20の面22に対してより強い加圧エアーを供給する。各ノズル168aは、第2の基板20の面22において、圧子160の先端161から離れ、第2の基板20のエッジ部に向かうにつれて第2の基板20の面22に加えられる圧力が弱くなる。この場合、第2の基板20の面22で受ける加圧エアーの圧力は、圧子160の先端161に近い側で大きく、圧子160の中心軸から径方向外方に離れるにつれて小さくなる。このため、ボイドVは、例えば圧子160の先端161の近傍から、径方向外方に向かって移動する。このように、加圧エアーの圧力差により、ノズル168aを
図4に示す回動軸170bの軸回りに回動させずに、ボイドVを圧子160の中心軸から径方向外方に向かって押し出すことができる。すなわち、バルーンアクチュエータ170a及び回動部170bは、必ずしも必要でない場合があり得る。
【0095】
前述したように、ノズル168aを動かすための、バルーンアクチュエータ170aなどのアクチュエータは必ずしも必要ではない。例えば、ノズル168aに対して加圧エアーを供給し、加圧エアーをノズル168aの噴射口から外部に噴射させる際、加圧エアーによる反力により、ノズル168aには、ノズル168aを回動軸170bに対して回動させようとする力が働く。この力を使って、加圧エアーをノズル168aから外部に噴射させる際に、ノズル168aを
図9に示す位置から
図13に示す位置まで回動させてもよい。
【0096】
なお、このとき、ノズル168aとノズル168aの回動軸170bとの間に例えば第2実施形態で説明するトーションバネ192c(
図16から
図18参照)を配置することにより、加圧エアーの噴射量に応じてノズル168aの回動速度、回動量を調整することができる。この場合、トーションバネ192cの一端は、ノズル168aに支持され、他端は圧子160の外周面に支持される。また、トーションバネ192cのリングが支持される回動軸170bは、圧子160の外周面と各ノズル168aとの間に設けられる。
【0097】
そして、ノズル168aに加圧エアーが供給されていないとき、ノズル168aは
図4及び
図9に示す位置に維持され、ノズル168aに加圧エアーが供給されると、ノズル168aは
図4及び
図9に示す位置から、
図6及び
図13に示す位置に回動する。
【0098】
すなわち、複数のノズル168aは、圧子160の周囲で例えば圧子160に支持され、アクチュエータ部170aを用いず、例えば、空気が吹き出す反動、又は、第2の基板20の面22から反射されるエアー等により、所定範囲を回動可能であることも好適である。
【0099】
本変形例によれば、第1の基板10と第2の基板20との密着性を向上させることが可能な接合装置118、及び、接合装置118を有する接合システム100を提供することができる。
【0100】
(第2実施形態)
図16から
図18を用いて、第2実施形態に係る接合システム100の接合装置118について説明する。本実施形態は第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0101】
本実施形態に係る接合システム100は、第1実施形態で説明したロードポート112、イントロチャンバ114、前処理装置(表面活性化装置)116、接合装置118、制御部120を適宜に用いることができる。
【0102】
接合装置118の圧子160は、吸引路160aを有する柱状であれば、適宜の形状が許容される。本実施形態では、説明の簡単のため、圧子160が正四角柱であるとして説明する。
【0103】
本実施形態では、エアー供給部168は、圧子160の外周面との間に圧子160の外周の周方向に連続する外装板(流路壁)188aと、加圧エアーの流路を規定する可動部188bとを有する。
【0104】
外装板188aは、圧子160の外周面に例えば平行に離間して配置される。
【0105】
可動部188bは、外装板188aに支持される調整板(回動板)192aと、外装板188aと調整板(回動板)192aとの間の回動軸192bと、調整板192aを回動軸192bの軸回りに付勢するトーションバネ192cと、エアー供給源169とを備える。なお、調整板(回動板)192aは、圧子160とともに、加圧エアーの環状の流路189を規定する。本実施形態では、可動部188bは、第2の基板20の接合面21とは反対側の面22において、圧子160の先端に向かう位置から第2の基板20のエッジに向かう加圧エアーの流路を規定する。流路189は、加圧エアーが圧子160の先端に向かう位置から第2の基板20のエッジに向かって環状に噴射するように規定される。流路189は、例えば、4つの調整板192a、4つの回動軸192b、4つのトーションバネ192cにより形成される。流路189は、加圧エアーを圧子160の周囲から噴き出す隙間(噴き出し口)Gを有する。
【0106】
調整板192aは、外装板188aの例えば先端(下端)に、回動軸192bにより、所定範囲内を回動可能に支持されている。調整板192a及び回動軸192bは、回動部を形成する。調整板192aは回動軸192bの軸回りに回動し、圧子160の外周面と外装板188aとの間の流路189を圧子160の先端161に向かって流れる加圧エアーを圧子160の周囲との隙間Gから圧子160の先端161及び第2の基板20の面22に向かって噴射させる。調整板192aは、流路189を圧子160の先端161に向かって流れる加圧エアーが第2の基板20の面22に当たる領域の面積を調整する。このため、本実施形態での流路189は、第1実施形態で説明したノズル168aの流路168bとは異なり、噴出口の大きさが一定ではなく、隙間Gの大きさに応じて変化する。
【0107】
圧子160が正四角柱である場合、回動軸192bは、圧子160の外周面に平行で、圧子160の中心軸に直交する方向に延びる。なお、調整板192aは、例えば長方形又は正方形状に形成され、1つの辺(縁部)が回動軸192bにより支持される。
【0108】
トーションバネ192cのリングは、回動軸192bの周囲に配置される。トーションバネ192cの一端は、外装板188aに例えば連結され、他端は調整板192aに例えば連結されている。このため、トーションバネ192cは、調整板192aを付勢し、調整板192aの下端(先端)が圧子160の外周面に当接又は近接するように位置させる。
【0109】
なお、調整板192aは、トーションバネ192cにより、加圧エアーが流路189に流されていない回動位置を初期位置とし、
図18に示す第2の回動位置を最大回動位置とする。
図16に示す圧子160に対する調整板192aの回動位置は、加圧エアーが調整板192aに到達した直後における位置である。このため、調整板192aの初期位置は、例えば
図16に示す位置である。調整板192aの先端(下端)の位置に応じて、圧子160の外周面との隙間Gの量(流路189)が調整される。
【0110】
すなわち、トーションバネ192cの他端は、流路189に加圧エアーが供給されていない状態で、例えば
図16に示す位置に調整板192aが配置されるように、調整板192aを支持する。
図16中、調整板192aの下端と圧子160の外周面との間に隙間Gが存在しているが、調整板192aの下端と圧子160の外周面とが当接していてもよい。この場合、隙間Gはゼロであり、流路189は閉じている。
【0111】
なお、本実施形態では、ノズル168a及びバルーンアクチュエータ170aは設けられていない。
【0112】
本実施形態に係る接合装置118の動作について説明する。ここでは、第1実施形態で説明したように、制御部120は、第2のロボットアーム158のアクチュエータ158aで圧子160の先端161を第2の基板20の面22に当接させ、第2の基板20の面22をテーブル154に向けて押圧した状態にあるとする。このとき、テーブル154と圧子160との間の第1の基板10の接合面11及び第2の基板20の接合面21が密着する。
【0113】
このとき、第1実施形態で説明したように、ボイドV(
図10参照)は、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面のうち、圧子160の直下の領域から外れた領域に存在し得る。
【0114】
制御部120は、エアー供給源169を駆動し、外装板188aと圧子160の外周面との間の流路189を通して、調整板192aに向けて加圧エアーを送る。このとき、
図16に示すように、圧子160の外周面と調整板192aの先端との間の隙間Gを流路189として、圧子160の先端161の外周面に向けて加圧エアーを噴射させる。加圧エアーは、第2の基板20のうち接合面21とは反対側の面22に当てられて、第2の基板20が弾性変形する。
【0115】
そして、加圧エアーが当てられた領域は、第2の基板20が弾性変形して、加圧エアーが当てられた領域からボイドVが押し出される。
【0116】
流路189を通して加圧エアーが調整板192aに当てられると、トーションバネ192cの付勢力に抗して、回動軸192bの軸回りに調整板192aが
図16に示す位置から、
図17に示す位置を通して、
図18に示す位置まで回動する。
【0117】
このとき、隙間Gを流路189として噴射された加圧エアーが当てられた第2の基板20の面22の領域のうち、第2の基板20を弾性変形させることが可能な強さのエアーが当てられた領域の外縁Bの位置は、第2の基板20の面22上において、連続的な環状となる。回動軸192bの軸回りに調整板192aが
図16に示す位置から
図18に示す位置まで回動すると、外縁Bは、
図10に示す位置から
図12に示す位置を通して
図14に示す位置まで到達する。このため、ボイドVが、第2の基板20の外縁の外側に押し出される。なお、
図10、
図12及び
図14では、外縁Bを円環状に示すが、本実施形態では、外縁Bの形状は、略四角環状となる。
【0118】
このように、本実施形態では、エアー供給源169を作動させて加圧エアーを圧子160と調整板192aとの間の隙間Gを流路189として噴射させる。調整板192aに加圧エアーが当たると、トーションバネ192cの付勢力に抗して調整板192aが回動し、圧子160と調整板192aとの間の隙間Gが大きくなる。このため、圧子160と調整板192aとの間の隙間Gを通して圧子160の先端の外周面に向けて噴射させた加圧エアーを第2の基板20に当たる位置が、圧子160の中心軸に対して例えば同心状に径方向外方に向かって広がる。このとき、圧子160と調整板192aとの間の隙間Gから噴射される加圧エアーは、時間的に連続して、又は、不連続に第2の基板20に当てられる。そして、圧子160と調整板192aとの間の隙間Gから噴射される加圧エアーは、時間的に連続して、又は、不連続に第2の基板20の面22のエッジ部又はその周辺まで噴射される。このため、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面に存在し得るボイドVが、第2の基板20の図心から離れた第2の基板20のエッジ部に向かって移動する。このとき、圧子160と調整板192aとの間の隙間Gから噴射される加圧エアーは第2の基板20の図心を中心とする連続する環状(四角環状)に第2の基板20の面22に当てられる。そして、加圧エアーが当てられた領域である連続する環(四角環)の外縁(
図10、
図12、
図14中の符号B参照)は、連続した状態を維持しながら徐々に大きくなる。したがって、ボイドVは、加圧エアーが当てられた領域の間から圧子160の中心軸に向かって移動することが防止される。
【0119】
制御部120が流路189を通した調整板192aへの加圧エアーの供給を停止すると、トーションバネ192cの付勢力により、調整板192aが
図18に示す位置から
図17に示す位置を通して、
図16に示す位置まで戻される。
【0120】
本実施形態で説明した圧子160は、四角柱状である場合を例にして説明した。円柱状又は楕円柱状など、圧子160の形状は適宜に設定可能である。この場合、調整板192aの形状は適宜に設定可能である。例えば、複数の調整板192aで全体として円筒を形成するように形成されることが好適である。この場合、各調整板192aが加圧エアーの作用により、トーションバネ192cの付勢力に抗して回動軸192bの軸回りに回動し得る。
【0121】
本実施形態では、トーションバネ192cを用いる例について説明したが、板バネ等の他の付勢部材を用いてもよい。また、付勢部材を用いる代わりに、例えばモータ等を用いて、調整板192aの回動量を制御(位置制御)してもよい。
【0122】
したがって、本実施形態によれば、第1の基板10と第2の基板20との密着性を向上させることが可能な接合装置118、及び、接合装置118を有する接合システム100を提供することができる。
【0123】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の接合装置118、及び、接合装置118を有する接合システム100によれば、第1の基板10と第2の基板20との間のボイドVを減少又はなくすことができるので、第1の基板10と第2の基板20との間の密着性を向上させることができる。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0125】
10…第1の基板、11…接合面、20…第2の基板、21…接合面、22…面、100…接合システム、116…前処理装置、118…接合装置、120…制御部、152…接合槽、154…テーブル、156…第1のロボットアーム、156a…アクチュエータ、156b…チャック、158…第2のロボットアーム、158a…アクチュエータ、158b…真空発生装置、160…圧子、160a…吸引路、161…先端(下端)、165…エアー導入口、164…温湿度制御ユニット、166…エアー流出口、168…エアー供給部、168a…ノズル、169…エアー供給源、170…アクチュエータ部(バルーンアクチュエータ)、170b…回動軸、171…エアー供給部。