(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103253
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ポテンショメータ
(51)【国際特許分類】
H01C 10/24 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
H01C10/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007489
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】503221861
【氏名又は名称】株式会社マイテック
(71)【出願人】
【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 丈晃
(72)【発明者】
【氏名】山野井 豊
(72)【発明者】
【氏名】倉崎 るり
(72)【発明者】
【氏名】山田 功
(72)【発明者】
【氏名】山田 純平
【テーマコード(参考)】
5E030
【Fターム(参考)】
5E030CC02
5E030CC04
(57)【要約】
【課題】高寿命を実現可能な巻線型ポテンショメータを提供する。
【解決手段】ある態様のポテンショメータは、シャフト14に一体変位可能に支持されるスライダ16と、スライダ16から延出し、抵抗体18に当接する第1接触子56aと、コレクタに当接する第2接触子とを有する導電性の摺動部材50と、を備える。抵抗体18は、シャフト14と平行に延びる絶縁性の芯棒70と、芯棒70に巻き付けられた巻線72と、を含む。巻線72は抵抗線84を含み、その抵抗線84を被覆材86で被覆することで芯棒70に巻回される抵抗線72間の絶縁性が保たれる一方、第1接触子56aが摺動する当接面においては抵抗線84が部分的に露出して第1接触子56aと導通する。被覆材86がポリイミド、PEEK、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドのいずれかを主成分とする耐放射線性樹脂材料からなる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に取り付けられるフレームと、
抵抗体とコレクタとが互いに平行に設けられ、前記フレームに固定されるベースと、
前記フレームにより軸線方向に変位可能に支持されるシャフトと、
前記シャフトに一体変位可能に支持されるスライダと、
前記スライダから延出し、前記抵抗体に当接する第1接触子と、前記コレクタに当接する第2接触子とを有する導電性の摺動部材と、
を備え、
前記抵抗体は、
前記シャフトと平行に延びる絶縁性の芯棒と、
前記芯棒に巻き付けられた巻線と、
を含み、
前記巻線は抵抗線を含み、前記抵抗線を被覆材で被覆することで前記芯棒に巻回される抵抗線間の絶縁性が保たれる一方、前記第1接触子が摺動する当接面においては前記抵抗線が部分的に露出して前記第1接触子と導通し、
前記被覆材がポリイミド、PEEK、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドのいずれかを主成分とする耐放射線性樹脂材料からなることを特徴とするポテンショメータ。
【請求項2】
前記第1接触子が、前記抵抗体上の摺動する際に、前記巻線の単一の抵抗線又は隣接する二つの抵抗線に当接することを特徴とする請求項1に記載のポテンショメータ。
【請求項3】
前記芯棒が、アルミニウム合金からなる棒材の表面に硬質アルマイト処理を施されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポテンショメータ。
【請求項4】
前記ベースがセラミックスからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のポテンショメータ。
【請求項5】
対象物に取り付けられるフレームと、
抵抗体とコレクタとが互いに平行に設けられ、前記フレームに固定されるベースと、
前記フレームにより軸線方向に変位可能に支持されるシャフトと、
前記シャフトに一体変位可能に支持されるスライダと、
前記スライダから延出し、前記抵抗体に当接する第1接触子と、前記コレクタに当接する第2接触子とを有する導電性の摺動部材と、
を備え、
前記抵抗体は、
前記シャフトと平行に延びる絶縁性の芯棒と、
前記芯棒に巻き付けられた巻線と、
を含み、
前記巻線は抵抗線を含み、前記抵抗線を被覆材で被覆することで前記芯棒に巻回される抵抗線間の絶縁性が保たれる一方、前記第1接触子が摺動する当接面においては前記抵抗線が部分的に露出して前記第1接触子と導通し、
前記被覆材が無機物の耐放射線性絶縁材料を前記抵抗線の表面に付着させたものであることを特徴とするポテンショメータ。
【請求項6】
前記無機物がセラミックスであることを特徴とする請求項5に記載のポテンショメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線型ポテンショメータに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の可動部の変位を計測する機器として、ポテンショメータが広く用いられている。ポテンショメータは、互いに平行に延びる抵抗体およびコレクタと、これらを架橋するように配置される導電性の摺動部材を備える。摺動部材は、可動部に接続されるシャフトに設けられ、抵抗体およびコレクタの双方に接触しつつそれらの長手方向に摺動する。抵抗体の両端に基準電圧を印加し、摺動部材の位置に応じて変化するコレクタの出力電圧を検出することにより、可動部の変位を計測できる。
【0003】
このようなポテンショメータとして、絶縁性の芯棒に抵抗線を巻き付けた抵抗体を用いる巻線型ポテンショメータが知られている(例えば特許文献1参照)。巻線型ポテンショメータは、摺動部材の摺動抵抗を小さくできるため、安定した計測を実現できるなどのメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなポテンショメータは、放射線環境下で作動する装置にも適用されることがある。このような特殊な環境下では可動物の制御も精密に行う必要があり、変位計測にも高い精度が要求される。しかし、このようなポテンショメータは、放射線を浴びることで抵抗体などの構成部品の劣化が早く、通常環境下と比べて寿命が短くなる点で改善の余地があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、計測精度を維持しつつ、高寿命を実現可能な巻線型ポテンショメータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポテンショメータは、対象物に取り付けられるフレームと、抵抗体とコレクタとが互いに平行に設けられ、フレームに固定されるベースと、フレームにより軸線方向に変位可能に支持されるシャフトと、シャフトに一体変位可能に支持されるスライダと、スライダから延出し、抵抗体に当接する第1接触子と、コレクタに当接する第2接触子とを有する導電性の摺動部材と、を備える。抵抗体は、シャフトと平行に延びる絶縁性の芯棒と、芯棒に巻き付けられた巻線と、を含む。巻線は抵抗線を含み、その抵抗線を被覆材で被覆することで芯棒に巻回される抵抗線間の絶縁性が保たれる一方、第1接触子が摺動する当接面においては抵抗線が部分的に露出して第1接触子と導通する。
【0008】
ある態様のポテンショメータは、被覆材がポリイミド、PEEK、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドのいずれかを主成分とする耐放射線性樹脂材料からなる。別の態様のポテンショメータは、被覆材が無機物の耐放射線性絶縁材料を抵抗線の表面に付着させたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高寿命を実現可能な巻線型ポテンショメータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るポテンショメータの縦断面図である。
【
図3】スライダおよびその周辺の構造を表す図である。
【
図4】抵抗体およびその周辺の構造を表す部分拡大断面図である。
【
図5】抵抗体およびその周辺の構造を表す部分拡大断面図である。
【
図6】変形例に係る抵抗体およびその周辺の構造を表す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係るポテンショメータの縦断面図である。
図2は、
図1のA-A矢視断面図である。
図1に示すように、ポテンショメータ1は、直方体状のフレーム10にベース12、シャフト14、スライダ16、抵抗体18等を収容して構成される。
図2にも示すように、フレーム10はアルミニウム合金からなり、下板20、上板22、側板24、側板26、前板28および後板30を含む。フレーム10は、図示略の対象物の固定部(非可動部)に取り付けられる。「対象物」は、放射線環境下で作動する装置であってもよい。
【0013】
ベース12は、板状の絶縁体であり、本実施形態では耐放射線性に優れるセラミックスからなる。なお、セラミックスとしては、アルミナやジルコニアその他の無機物(セラミック材料)を採用できる。ベース12は、平面視長方形状をなし、下板20の幅方向中央に設けられ、下板20の長手方向に延在している。ベース12には、その中心線Lに対して一方の側に抵抗体18が配設され、他方の側にコレクタ32が配設されている。抵抗体18およびコレクタ32はともにベース12の長手方向に延在し、互いに平行に配置されている。
【0014】
図1に戻り、シャフト14はステンレスからなる円柱状の部材であり、フレーム10の中央を長手方向に延在する。前板28には端板34が組み付けられている。前板28の中央には円孔状の開口部35が設けられている。端板34は有底円筒状をなし、その底部にガイド孔36が設けられている。端板34の開口端に半径方向外向きに延出するフランジ部38が設けられている。フランジ部38が複数のねじ40により前板28に締結されることにより、端板34がフレーム10に固定されている。
【0015】
シャフト14は、開口部35およびガイド孔36を貫通し、ガイド孔36により同軸状に支持されている。端板34は、シャフト14をガイド孔36にて軸線方向に摺動可能に支持する軸受として機能する。シャフト14は、フレーム10により軸線方向に変位可能に支持される。シャフト14の一端は、連結部材42を介して対象物の可動部に接続される。
【0016】
図3は、スライダ16およびその周辺の構造を表す図である。
図3(A)は
図1のB部拡大図であり、
図3(B)は
図3(A)のC-C矢視断面図である。
図3(A)に示すように、シャフト14の他端部にスライダ16が組み付けられている。シャフト14は、他端部が縮径されて段部43を有する。スライダ16は略直方体状をなす絶縁体であり、本実施形態では耐放射線性に優れるポリイミドからなる。
【0017】
スライダ16の中央を長手方向に貫通する挿通孔44が設けられている。スライダ16は、シャフト14の他端部14aを挿通孔44に同軸状に挿通する。スライダ16は、段部43と止め輪46とにより軸線方向に挟まれる態様でシャフト14に固定され、シャフト14に一体変位可能に支持される。止め輪46は、シャフト14に設けられた溝部に嵌合する態様で固定される。
【0018】
図3(B)に示すように、側板24,26は、複数のねじ45を介して下板20に固定されている。上板22は、複数のねじ47を介して側板24,26のそれぞれに固定されている。それにより、フレーム10の内方に収容空間Sが形成されている。
【0019】
側板24の内面の高さ方向中央にはガイドレール24aが突設されている。側板26の内面の高さ方向中央にもガイドレール26aが突設されている。一方、スライダ16の両側面には一対の凹状嵌合部16aが設けられている。これらの凹状嵌合部16aがガイドレール24a,26aにそれぞれに嵌合することで、スライダ16が側板24,26により長手方向に摺動可能に支持される。シャフト14は、スライダ16を介して側板24,26により支持される。すなわち、シャフト14は、端板34の軸受の位置とスライダ16の位置にて二点支持されつつ、軸線方向に安定にガイドされることとなる。
【0020】
スライダ16には、抵抗体18とコレクタ32とを導通させる摺動部材50が設けられている。摺動部材50は、導電性金属からなる板材をプレス成形して得られ、スライダ16の底面に固定される本体52と、本体52から斜め下方に延びる一対のばね部54と、各ばね部54の先端に設けられた接触子56を含む。摺動部材50は、複数のねじ58とナット60によりスライダ16に組み付けられている。
【0021】
一対の接触子56の一方が抵抗体18に当接する第1接触子56aであり、他方がコレクタ32に当接する第2接触子56bである。各ばね部54は板ばねとして機能し、それぞれ第1接触子56aを抵抗体18に押し付け、第2接触子56bをコレクタ32に押し付ける。摺動部材50は、抵抗体18とコレクタ32とを架橋し、両者の導通状態を維持する。
【0022】
下板20の上面中央部には所定幅で長手方向に延びる凹部62が設けられている。凹部62は、ベース12の直下に位置し、その幅はベース12の幅よりも小さい。凹部62は、ベース12の全長にわたって対向するように延在する。下板20の上面における凹部62の両側には一対のリブ64が突設され、互いに平行に長手方向に延びている。これら一対のリブ64の内側に嵌合するようにベース12が配置されている。
【0023】
ベース12は、その上面に段差による低部65を有し、その低部65の幅方向一方の側にコレクタ32が配置されている。低部65の幅方向他方の側にはさらに凹状収容部66が設けられ、抵抗体18が嵌合するように配置されている。凹状収容部66は、抵抗体18の全長にわたってベース12の長手方向に延びている。
【0024】
抵抗体18は、シャフト14と平行に延びる絶縁性の芯棒70と、芯棒70に巻き付けられた巻線72を含む。芯棒70は、本実施形態ではアルミニウム合金からなる円柱状の棒材の表面に硬質アルマイト処理を施して得られる。巻線72は、抵抗線を絶縁性の被覆材で被覆して得られる(詳細後述)。
【0025】
抵抗体18が凹状収容部66から脱落しないよう、低部65の中央に板状のホルダ74が配設される。抵抗体18の上面は、ベース12の上面からやや突出する。ホルダ74は、耐放射線性に優れるセラミックスからなり、平面視長方形状をなす。ホルダ74の抵抗体18との対向面はテーパ面76とされ、テーパ面76にて抵抗体18を上方から押さえることで、巻線72に変形や損傷が生じないようにされている。抵抗体18の詳細については後述する。ホルダ74は、複数の小ねじ78によりベース12に固定されている(
図2参照)。
【0026】
一方、コレクタ32は、シャフト14と平行に延びる角柱状の導電体であり、本実施形態では真鍮や青銅などの銅合金からなる。コレクタ32は、低部65の側壁とホルダ74の側面(テーパ面76とは反対側面)との間に挟まれるように配置され、ベース12の下面側から挿入された複数の小ねじ80によりベース12に固定されている(
図2参照)。コレクタ32の上面は、ベース12の上面からやや突出する。小ねじ80のねじ頭は凹部62に露出する。
【0027】
また、ベース12の底面中央を長手方向に延びるように導通バー82が設けられている。導通バー82は角柱状の導体であり、本実施形態では真鍮や青銅などの銅合金からなる。導通バー82は、複数の小ねじ78によりベース12に対してホルダ74と共締めされている(
図2参照)。導通バー82は凹部62に露出する。
【0028】
図2に戻り、抵抗体18の一端に設けられた端子T1に電源ラインL1が接続される。抵抗体18の他端に設けられた端子T2が導通バー82の一端と導通する。導通バー82の他端にグランドラインL2が接続される。また、コレクタ32の一端に出力ラインL3が接続される。このような構成により、各ライン(ケーブル)は、ポテンショメータ1の後端側に集約される。抵抗体18の両端に基準電圧V0が印加され、摺動部材50の位置に応じて変化するコレクタ32の出力電圧Vが出力ラインL3から出力される。
【0029】
次に、抵抗体18の構造について詳細に説明する。
図4および
図5は、抵抗体18およびその周辺の構造を表す部分拡大断面図である。
図4(A)は
図3(A)のD部拡大図である。
図4(B)は
図4(A)のE部拡大図である。
図5(A)は抵抗体18周辺の横断面図であり、
図4(A)のF方向矢視に対応する。
図5(B)は抵抗体18の横断面の拡大図である。
【0030】
図4(A)に示すように、抵抗体18は、芯棒70に巻線72を巻き付けて構成される。抵抗体18は、一端部が端部材90を介してベース12に固定されている。端部材90は、本実施形態ではアルミニウム合金からなる角柱状の絶縁体であり、硬質アルマイト処理(表面処理)がなされている。端部材90には横方向に貫通する支持孔92が貫通形成されている。芯棒70の一端部が縮径され、その縮径部70aが支持孔92に同軸状に挿通されて支持されている。端部材90は、ねじ94によりベース12とともに下板20に共締めされている。なお、抵抗体18の他端部も同様に、端部材90を介してベース12および下板20に固定されている(
図1参照)。
【0031】
図4(B)にも示すように、巻線72は、抵抗線84を絶縁性の被覆材86で被覆して構成されている。本実施形態では抵抗線84としてニクロム線を採用し、被覆材86として耐放射線性に優れるポリイミド樹脂を採用する。巻線72は芯棒70に密に巻き付けられるが、巻回される抵抗線84間に両者の被覆材86が介在することで、隣接する抵抗線84間の絶縁性が基本的に保たれる。
【0032】
一方、
図5(A)にも示すように、巻線72が抵抗体18の上面(頂部)、つまり第1接触子56aが当接する対向面において部分的に切り欠かれており、抵抗線84が部分的に露出して第1接触子56aと導通する。
図5(B)にも示すように、巻線72における切欠部96が、抵抗線84の中心線Loよりも外側(抵抗体18の半径方向外側)に位置するように設定されている。それにより、抵抗線84ひいては巻線72の強度が確保されている。
【0033】
図4(B)に戻り、このような構成により、抵抗体18の上面中央には長手方向に切欠部96が微視的には間欠的、巨視的には連続的に延び、抵抗線84を露出させている。切欠部96が抵抗体18の頂部において、巻線72の中心線Loの高さ位置Pcよりも上方にあるため、巻回される抵抗線84間で導通することはない。抵抗体18は、巻線72において隣接する巻線部分72aの被覆材86同士は当接するが抵抗線84同士は当接しないため、可変抵抗として機能できる。言い換えれば、その程度に巻線72が芯棒70の長手方向に密に巻き付けられている。
【0034】
第1接触子56aは、抵抗体18上を長手方向に摺動する過程で、巻線72における各巻線部分72aの抵抗線84と順次接触する。本実施形態では被覆材86の厚みが小さいため、第1接触子56aは、隣接する巻線部分72aの境界に差し掛かったときにそれら二つの巻線部分72aの抵抗線84と接触する。すなわち、第1接触子56aは、抵抗体18上を長手方向に摺動する過程で、単一の抵抗線84への接触と、隣接する二つの抵抗線84への接触とを繰り返すこととなる。このような構成であっても、巻線72が芯棒70に密に巻き付けられることで、抵抗体18の長手方向に対して巻回数を十分に確保できるため、可変抵抗としての分解能を高く維持できる。
【0035】
以上に説明したように、本実施形態では、ポテンショメータ1において抵抗体18を巻線抵抗とし、その巻線72の被覆材86をポリイミド樹脂からなるものとした。また、抵抗体18を保持する部材として、ベース12およびホルダ74をセラミックスからなるものとした。さらに、摺動部材50を支持するスライダ16をポリイミド樹脂からなるものとした。ポリイミドおよびセラミックスは絶縁性および耐放射線性に優れるため、ポテンショメータ1を放射線環境下で作動する装置に適用しても劣化し難い。上述のように、抵抗体18において巻線72を密に巻き付けたことからポテンショメータ1による計測精度も高くできる。すなわち、本実施形態のポテンショメータ1によれば、放射線環境下で使用されても計測精度を維持しつつ、高寿命を実現できる。また、副次的な効果として140℃以上の高温環境でも適応可能となる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0037】
[変形例]
図6は、変形例に係る抵抗体およびその周辺の構造を表す部分拡大断面図である。
図6(A)は抵抗体周辺の縦断面を示し、
図4(B)に対応する。
図6(B)は抵抗体の横断面の拡大図である。
【0038】
上記実施形態では、抵抗線84を被覆材86で覆うようにして巻線72を構成する例を示した。本変形例では
図6(A)に示すように、巻線172が抵抗線84のみの裸線であり、芯棒70に巻回される抵抗線84間(巻線部分間)に被覆材186が介在することにより絶縁されている。
【0039】
図6(A)および(B)に示すように、被覆材186は、セラミック粉末を主体とした絶縁材料であり、絶縁性および耐放射線性に優れている。本変形例では、芯棒70の表面をセラミック粉を主体とした絶縁材料でコーティングした後、抵抗線84を微少隙間をあけつつ芯棒70の長手方向に巻き付ける。そして、その巻線172の上からさらにセラミック粉を主体とした絶縁材料でコーティング(ボンディング)することで巻線部分間の絶縁性を確保する。
【0040】
こうして得られる抵抗体118の上面中央を長手方向に切り欠いて抵抗線84の頂部を露出させる。すなわち、巻線172は、切欠部96において第1接触子56aと導通可能となる。本変形例においても、切欠部96が抵抗体118の頂部において、巻線172の中心線Loの高さ位置Pcよりも上方にあるため、巻回される抵抗線84間で導通することはない。
【0041】
なお、他の変形例においては、抵抗線84をセラミック粉でコーティングして巻線172とし、その巻線172を芯棒70に巻き付けてもよい。その場合、セラミック粉で形成された被覆材が脆性破壊し難いことが前提となるが、巻線172を芯棒70に巻き付けるに先立って芯棒70をセラミック粉でコーティングする必要がなくなる。また、被覆材186をセラミックスに代えてガラスその他の無機物の耐放射線性絶縁材料としてもよい。
【0042】
[他の変形例]
上記実施形態では、被覆材86をポリイミドを主成分とする樹脂材料で構成したが、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドその他を主成分とする耐放射線性樹脂材料にて構成してもよい。
【0043】
上記実施形態では、ベース12、ホルダ74をセラミックスからなるものとしたが、ポリイミド等の耐放射線性樹脂材料にて構成してもよい。
【0044】
上記実施形態では、接触子56が抵抗体18上を摺動する過程で、単一の抵抗線84への接触と、隣接する二つの抵抗線84への接触とを繰り返す構成を例示した。変形例においては被覆材86の厚みを調整することで、接触子56が抵抗体18上を摺動する過程で単一の抵抗線84にのみ接触するようにし、各巻線部分72aの抵抗線84と順次導通してもよい。
【0045】
上記実施形態では、隣接する巻線部分72aの被覆材86を互いに接触させる構成を例示したが、変形例においては微小間隔の隙間をあけてもよい。その隙間の大きさを、例えば巻線72の半径よりも小さくすることで、計測精度を維持してもよい。
【0046】
なお、本発明は上記実施例や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施例や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施例や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ポテンショメータ、10 フレーム、12 ベース、14 シャフト、16 スライダ、18 抵抗体、20 下板、22 上板、24 側板、24a ガイドレール、26 側板、26a ガイドレール、28 前板、30 後板、32 コレクタ、34 端板、36 ガイド孔、42 連結部材、43 段部、50 摺動部材、52 本体、54 ばね部、56 接触子、56a 第1接触子、56b 第2接触子、65 低部、66 凹状収容部、70 芯棒、72 巻線、72a 巻線部分、74 ホルダ、82 導通バー、84 抵抗線、86 被覆材、90 端部材、96 切欠部、118 抵抗体、172 巻線、186 被覆材、S 収容空間。