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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103256
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】接合装置及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007494
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】曹 健
(72)【発明者】
【氏名】薮原 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】池上 友佳子
(72)【発明者】
【氏名】依田 文徳
(57)【要約】
【課題】 被接合部材同士の密着性を向上させることが可能な接合装置及び接合方法を提供すること。
【解決手段】 実施形態によれば、接合装置は、テーブルと、押圧部を有する圧子とを有する。テーブルには、第1の被接合部材が載せられる。圧子の押圧部は、第1の被接合部材のテーブルに対する接触面とは反対側の平面に対して第2の被接合部材の平面を接触させ、第1の被接合部材の所定箇所に第2の被接合部材を載置した状態で第2の被接合部材を第1の被接合部材に向けて加圧する。このとき、圧子の押圧部は、第2の被接合部材との接触領域を、第2の被接合部材の図心又はその近傍から環状に広げるように形成される。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被接合部材が載せられるテーブルと、
前記第1の被接合部材の前記テーブルに対する接触面とは反対側の平面に対して第2の被接合部材の平面を接触させ、前記第1の被接合部材の所定箇所に第2の被接合部材を載置した状態で前記第2の被接合部材を前記第1の被接合部材に向けて加圧するとき、前記第2の被接合部材との接触領域を、前記第2の被接合部材の図心又はその近傍から環状に広げるように形成される押圧部を有する圧子と
を有する、接合装置。
【請求項2】
前記第1の被接合部材の前記平面及び前記第2の被接合部材の前記平面が親水化された状態のとき、前記押圧部は、前記加圧により、前記第1の被接合部材の前記平面と前記第2の被接合部材の前記平面との間を接合する、請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記押圧部は、前記押圧部と前記第2の被接合部材とが離間しているとき、前記第2の被接合部材に向かうにつれてすぼまる、錐状又は錐台状に形成されている、請求項1又は請求項2に記載の接合装置。
【請求項4】
前記圧子に設けられ、前記圧子を通して前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材との界面を加熱する加熱部を有する、請求項1又は請求項2に記載の接合装置。
【請求項5】
前記加熱部の温度を制御する制御部を有する、請求項4に記載の接合装置。
【請求項6】
前記圧子に設けられ、前記圧子のうち、前記加熱部により加熱した部位を冷却する冷却部を有する、請求項4に記載の接合装置。
【請求項7】
前記圧子に設けられ、吸引により前記押圧部に前記第1の被接合部材及び前記第2の被接合部材の少なくとも一方を吸着させる吸引路を有する、請求項1又は請求項2に記載の接合装置。
【請求項8】
前記押圧部の全面が前記第2の被接合部材に押圧した状態で、前記押圧部から前記テーブルの方向を見たとき、前記押圧部の外周は、前記第2の被接合部材のエッジ部に面一又は前記エッジ部の外側に配置される、請求項1又は請求項2に記載の接合装置。
【請求項9】
第1の被接合部材に対して同じ大きさかそれよりも小さい第2の被接合部材の図心又はその近傍から先に圧子の先端の押圧部を接触させること、
前記第2の被接合部材の図心又はその近傍から環状に接触領域が広がるように前記圧子の先端の前記押圧部を変形させて、前記第2の被接合部材のエッジ部まで前記第2の被接合部材を前記第1の被接合部材に圧着すること
を有する、第1の被接合部材と第2の被接合部材との接合方法。
【請求項10】
前記第2の被接合部材を前記第1の被接合部材に圧着した状態で、前記第2の被接合部材と前記第1の被接合部材とに接触した界面が結合されるように前記第2の被接合部材と前記第1の被接合部材との界面を前記押圧部を通して加熱すること、
前記押圧部を冷却させること、
前記押圧部による前記第2の被接合部材の加圧を解除すること
を有する、請求項9に記載の接合方法。
【請求項11】
第1の被接合部材が載せられるテーブルと、
前記第1の被接合部材の前記テーブルに対する接触面とは反対側の平面に対して第2の被接合部材の平面を接触させた状態で、前記第2の被接合部材の前記平面とは反対側の面を前記第1の被接合部材の前記平面に向けて押圧する圧子と、
前記圧子に設けられ、前記圧子を加熱して前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材との界面を加熱する加熱部と
を有する、接合装置。
【請求項12】
前記圧子には、前記加熱部により加熱した部位を冷却する冷却部が設けられる、請求項11に記載の接合装置。
【請求項13】
第1の被接合部材に対して同じ大きさかそれよりも小さい第2の被接合部材の図心又はその近傍を圧子の先端の押圧部で押圧し、前記第2の被接合部材を前記第1の被接合部材に圧着させること、
前記第2の被接合部材が前記第1の被接合部材に圧着した状態で、前記第2の被接合部材と前記第1の被接合部材との間に接触した界面が結合されるように前記第2の被接合部材と前記第1の被接合部材との界面を前記押圧部を通して加熱すること、
を有する、第1の被接合部材と第2の被接合部材との接合方法。
【請求項14】
前記押圧部を冷却させること、
前記押圧部による前記第2の被接合部材の加圧を解除すること
を有する、請求項13に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板等の被接合部材同士の接合装置及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば被接合部材同士の接合面同士を当接させて押圧し、被接合部材同士を接合する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-289959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、被接合部材同士の密着性を向上させることが可能な接合装置及び接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、接合装置は、テーブルと、押圧部を有する圧子とを有する。テーブルには、第1の被接合部材が載せられる。圧子の押圧部は、第1の被接合部材のテーブルに対する接触面とは反対側の平面に対して第2の被接合部材の平面を接触させ、第1の被接合部材の所定箇所に第2の被接合部材を載置した状態で第2の被接合部材を第1の被接合部材に向けて加圧する。このとき、圧子の押圧部は、第2の被接合部材との接触領域を、第2の被接合部材の図心又はその近傍から環状に広げるように形成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係る接合システムを示す概略図。
図2】一実施形態に係る接合システムの前処理装置及び接合装置を示す概略的なブロック図。
図3】一実施形態に係る接合システムの接合装置を示す概略図。
図4】一実施形態に係る接合装置の圧子、加熱部、及び、冷却部を示す概略的な縦断面図。
図5図4中のV-V線に沿う概略的な断面図。
図6】一実施形態に係る接合装置を用いる第1の基板及び第2の基板の接合処理に関するフローチャート。
図7】一実施形態に係る接合装置の圧子、加熱部、及び、冷却部(図示を省略する)の一連の動作を示す概略図。
図8図7中のVIII-VIII線に沿う概略的な断面図。
図9図7中のIX-IX線に沿う概略的な断面図。
図10図7中のX-X線に沿う概略的な断面図。
図11図4中のV-V線に沿う概略的な断面図の変形例。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1から図10を用いて実施形態に係る被接合部材同士の接合システム100について説明する。
【0008】
ここで、接合対象となる被接合部材である、第1の基板(第1の被接合部材)10及び第2の基板(第2の被接合部材)20は、例えば、シリコンウエハなどの半導体基板である。第1の基板10及び第2の基板20は、例えばSi基板上にSiO膜が形成されていてもよい。第1の基板10及び第2の基板20は、互いに反対側を向く1対の略平行な平面を有する平板状である。すなわち、第1の基板10及び第2の基板20の表裏は、例えば、それぞれ平面として形成される。なお、第1の基板10及び第2の基板20は、例えばプリント基板であってもよい。また、第1の基板10及び第2の基板20は、リジッド基板であってもよく、フレキシブル基板(フィルム状部材)であってもよい。本実施形態では、第1の基板10及び第2の基板20が適宜の剛性を有する半導体基板(リジッド基板)であるとして説明する。
【0009】
本実施形態では、第1の基板10の1対の平面(接合面11、及び、接合面11とは反対側の面12)の面積が第2の基板20の1対の平面(接合面21、及び、接合面21とは反対側の面22)の面積に比べて大きい例について説明する。第1の基板10の1対の平面の面積と第2の基板20の平面の面積とが、同じであってもよい。
【0010】
図1は、実施形態に係る接合システム100を示す概略図である。図2は、実施形態に係る接合システム100の前処理装置116及び接合装置118を示す概略的なブロック図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る接合システム100は、ロードポート112と、イントロチャンバ114と、前処理装置(表面活性化装置)116と、接合装置118と、制御部120とを有する。
【0012】
第1の基板10及び第2の基板20は、後述するように貼り合わせられるまでの間、例えばFOUP(Front Opening Unified Pod)と呼ばれる密閉容器に収納されて保管される。
【0013】
ロードポート112は、第1の基板10及び/又は第2の基板20を格納したFOUPを搬送機から受け取り、また、FOUPからイントロチャンバ114内に第1の基板10及び/又は第2の基板20を搬入する。
【0014】
イントロチャンバ114は、ロードポート112から導入される基板10,20のバッファとして使われる。イントロチャンバ114は、前処理装置116の前処理槽122内に第1の基板10及び/又は第2の基板20を図示しない搬送装置によって搬入される。例えば、後述のような真空プラズマ処理を行うなど、真空状態で基板10,20を前処理する場合、前処理装置116の前処理槽122内は真空状態とするため、一旦真空引きしてイントロチャンバ114内の真空度を上げてから、前処理装置116の前処理槽122とイントロチャンバ114の間のゲートバルブを開けて、イントロチャンバ114から前処理装置116に基板10,20を導入する。 このとき、例えば、複数の第2の基板20がリング付きダイシングテープに接合面が上向きに固定される形で、FOUPからイントロチャンバ114に搬入される。基板20とダイシングテープとの剥離は、後述する前処理装置116の前処理槽122に入れる前に実施してもよく、前処理装置116での前処理後に実施してもよい。
【0015】
前処理装置116は、接合装置118の上流側に設けられ、複数の基板10,20の接合面11,21にそれぞれ水酸基を付与するといった前処理を行う。前処理装置116は、前処理槽(基板10,20同士の接合前に基板10,20に前処理として表面処理を行う処理槽)122と、電源124と、コンデンサ126と、第1の電極128と、第2の電極130と、真空ポンプ132と、ガス供給部(弁体)134と、ガス排出部(弁体)136と、水蒸気供給部138とを有する。前処理装置116は、本実施形態では、基板10,20の接合面11,21に対して真空下でプラズマ処理可能である。
【0016】
前処理槽122は、基板10,20同士の接合前に、基板10,20に対する前処理として表面処理を行う。前処理槽122は、例えば複数の基板10,20を重ねずに水平方向に並べることが可能な大きさに形成される。本実施形態では、前処理槽122は、真空プラズマ処理を行う場合を例にして説明する。この場合の前処理槽122の前処理では、高真空、あるいは極高真空が要求される。前処理槽122は、メンテナンス時以外、大気開放をせず、真空状態をキープする。
【0017】
電源124及びコンデンサ126は、前処理槽122の例えば外側に配置される。電源124は、接地されている。第1の電極128は、コンデンサ126を介して電源124に接続されている。第1の電極128及び第2の電極130は前処理槽122内に配置される。第1の電極128と第2の電極130とは、対向する。第1の電極128と第2の電極130とは平行に離間する。本実施形態では、第1の電極128は、前処理槽122内において、上下方向の下方に配置されている。第2の電極130は、前処理槽122内において、上下方向の上方に配置されている。第2の電極130は、第1の電極128の例えば直上に設けられる。第1の電極128は、その上に、第1の基板10、及び/又は、第2の基板20が載置されるように配置される。
【0018】
真空ポンプ132は、前処理槽122に接続される。真空ポンプ132を動作させると、前処理槽122内を適宜の時間で大気圧よりも低い所定の圧力以下(真空と称する)にすることができる。真空プラズマ処理を行う場合、前処理槽122に接続される真空ポンプ132は常時稼働し、前処理槽122内が常時真空となる。また、イントロチャンバ114には別の真空ポンプ133が接続される。この別の真空ポンプ133を動作させるとイントロチャンバ114内を適宜の時間で真空にすることができる。なお、別の真空ポンプ133を用いる代わりに、真空ポンプ132を分岐してイントロチャンバ114内を真空にしてもよい。この場合、真空ポンプ132とイントロチャンバ114との間は、開閉弁(図示しない)を介して接続される。なお、別の真空ポンプ133を用いる代わりに、真空ポンプ132を分岐してイントロチャンバ114内を真空にしてもよい。この場合、真空ポンプ132とイントロチャンバ114との間は、開閉弁(図示しない)を介して接続される。別のガス供給部135は、イントロチャンバ114内を大気に開放可能である。
【0019】
すなわち、本実施形態では、ロードポート112を常時大気圧とし、前処理槽122を常時高真空とし、イントロチャンバ114を大気開放(大気圧)~高真空(前処理槽圧力)に調整可能とする。このとき、ロードポート112とイントロチャンバ114との間、及び、イントロチャンバ114と前処理槽122との間は、それぞれゲートバルブで接続される。つまり、イントロチャンバ114をロードロックチャンバとして用いる。
【0020】
ガス供給部(弁体)134は、例えばアルゴン(Ar)ガス、酸素(O)ガス等の処理ガスの前処理槽122内への供給/供給停止を切替可能である。ガス排出部(弁体)136は、前処理槽122内の処理ガスの排出/排出停止を切替可能である。水蒸気供給部138は、前処理槽122内の基板10,20上に水蒸気(純水)を導入可能である。水蒸気供給部138での水蒸気の供給方式としては、加熱式、超音波式などがあり得る。水蒸気供給部138は、通常は前処理槽122内を閉塞し、水蒸気を供給するときに開く。
【0021】
図3には、接合装置118の概略図を示す。なお、図1に示す後述する第1のロボットアーム156と図3に示す第1のロボットアーム156とは、異なる図として示した。第1のロボットアーム156の構成は、第1の基板10及び第2の基板20を適切に所定の位置又は所望の位置に運ぶことができれば、どのようなものもよい。同様に、図1に示す後述する第2のロボットアーム158と図3に示す第2のロボットアーム158とは、異なる図として示した。第2のロボットアーム158の構成は、第2の基板20を適切に所定の位置又は所望の位置に運び、第2の基板20の所定の位置に圧子160の先端(押圧部)161b(図4及び図6参照)を適宜の圧力範囲内で所定の方向に押圧することができれば、どのようなものもよい。
【0022】
図4には、圧子160及び圧子温度調整部162の概略的な断面図を示す。図5は、図4中のV-V線に沿う概略的な断面図である。
【0023】
図1から図5に示すように、接合装置118は、接合槽(ボンディング槽)152と、テーブル154と、移送用の第1のロボットアーム156と、接合用の第2のロボットアーム158と、圧子160と、圧子温度調整部162と、エアー導入口(接合槽152用のエアー供給部)165と、温湿度制御ユニット164と、エアー流出口(弁体)166とを有する。
【0024】
本実施形態では、図1及び図3に示す接合槽152は、前処理槽122に隣接し、前処理槽122の下流側に設けられる。すなわち、前処理槽122は接合槽152の上流側に設けられる。接合槽152の内側は、大気圧下で使用される。接合槽152には、テーブル154、第1のロボットアーム156、第2のロボットアーム158、圧子160、圧子温度調整部162が配設されている。
【0025】
テーブル154上には、第1の基板10及び第2の基板20のうち、例えば第1の基板10を載置可能である。テーブル154は、接合槽152に対して固定されていても、相対的に移動可能であってもよい。テーブル154が接合槽152に対して移動する場合、テーブル154は、第1のロボットアーム156、第2のロボットアーム158に対してテーブル154上に適切に第1の基板10が載置されるように、例えばXYZステージのように動き得る。
【0026】
図1及び図3に示す第1のロボットアーム156は、前処理槽122で前処理された第1の基板10を前処理槽122より取り出して、第1の基板10を接合槽152内のテーブル154の所望の位置である実装位置に直接載置する。また、第1のロボットアーム156は、前処理槽122で前処理された第2の基板20を前処理槽122より取り出して、第2の基板20を接合槽152内のテーブル154上に直接載置する。第2のロボットアーム158は、第2の基板20を吸着して、第2の基板20を第1の基板10の所望の位置に載置する。
【0027】
図2に示すように、第1のロボットアーム156は、1又は複数のアクチュエータ156aと、第1のロボットアーム156の先端のチャック156b(図1参照)とを有する。アクチュエータ156a及びチャック156bは、制御部120により制御される。第1のロボットアーム156のアクチュエータ156aは、図1に簡易的に示す第1のロボットアーム156の先端のチャック156bを適宜の範囲で適宜の位置に動かす。第1のロボットアーム156の先端のチャック156bは、第1の基板10及び/又は第2の基板20を狭持(把持)可能である。
【0028】
図1及び図3に示す第2のロボットアーム158は、例えば第2の基板20を保持し、テーブル154の上面の第1の基板10上の所望の位置に載置する。図2に示すように、第2のロボットアーム158は、1又は複数のアクチュエータ158aと、エジェクタ又は真空ポンプなどの真空発生装置158bとを有する。アクチュエータ158a及び真空発生装置158bは、制御部120により制御される。第2のロボットアーム158のアクチュエータ158aは、第2のロボットアーム158の先端のチャック(図示しない)を適宜の範囲で適宜の位置に動かす。第2のロボットアーム158の真空発生装置158bは、例えば第2のロボットアーム158の先端のチャックに取り付けられる後述する圧子160で、後述する吸引路160aを通して第2の基板20を吸着可能である。
【0029】
図1及び図3に示すように、第2のロボットアーム158の先端のチャックには、圧子160が取り付けられる。第2のロボットアーム158は、圧子160を第2の基板20の載置位置に向けて押圧する。つまり、第2のロボットアーム158は、圧子160の先端の押圧部161bで、所定の圧力範囲内で、圧子160に吸着保持した第2の基板20を第1の基板10に向けて押圧する。すなわち、圧子160は、テーブル154に対向し、テーブル154との間に複数の被接合部材である基板10,20を挟むように押圧する。圧子160は、例えば地面又は床面に直交する方向に負荷をかけるように第2のロボットアーム158により動かされることが好適である。
【0030】
接合槽152には、エアー導入口165が形成されている。エアー導入口165は、接合槽152の内側と外側とを連通させる。エアー導入口165は、例えば接合槽152の外側の空気をエアー導入口165を通して接合槽152内に流入させる。
なお、エアー導入口165は、図1中では、接合槽152の上側に形成される例を示すが、種々の位置に形成されることが許容される。
【0031】
温湿度制御ユニット164は、例えばエアー導入口165の周囲に設けられる。温湿度制御ユニット164は、エアー導入口165を通過し接合槽152内に入れられる空気の温度及び湿度(相対湿度RH)を適宜の範囲に調整する。すなわち、温湿度制御ユニット164は、接合槽152内の温度及び湿度が所望の状態となるように調整する。このため、温湿度制御ユニット164は、接合槽152内の単位体積あたりの水分量を所定の水分量の範囲に調整することができる。
【0032】
温湿度制御ユニット164は、例えば、エアー導入口165を通る空気を例えばペルチェ素子等を用いて加温及び冷却可能であり、又は、エアー導入口165を通る空気に水蒸気(純水)を供給することで湿度を調整可能である。なお、湿度の調整には、前処理槽122の水蒸気供給部138を利用することも可能である。このため、図示しないが、水蒸気供給部138は、前処理槽122だけでなく、接合槽152に接続されることも好適である。
【0033】
一般に、飽和水蒸気量は、温度が上がると上昇し、温度が下がると低下する。このため、温度が低い方が、水蒸気は凝結しやすく、湿度が上昇しやすい。なお、接合槽152内の温度は、接合槽152内の水蒸気が凍らないように、0℃よりも高い常温とすることが好適である。
【0034】
エアー流出口166は、接合槽152と外部との連通/遮断の切り替えを行う。エアー流出口166は、必要に応じて排気ポンプのように作動し、エアー導入口165及び温湿度制御ユニット164と協働して、接合槽152内の温度及び湿度、すなわち、温湿度を調整する。したがって、本実施形態に係る接合槽152は、内側の温湿度を制御可能である。なお、このとき、必要に応じて、水蒸気供給部138も用いて、接合槽152内の温湿度を調整することも可能である。
【0035】
図4に示す圧子160は、圧子温度調整部162とともに圧子アセンブリを形成する。
【0036】
圧子160は、本体161aと、本体161aの先端(下端)に設けられる押圧部(先端部)161bとを有する。本体161aは例えばアルミニウム材、ステンレス鋼材等の金属材で形成される。押圧部161bは、第2の基板20に対して過剰な負荷をかけない素材で形成されている。圧子160の先端の素材は、第2の基板20の面22の素材に応じて設定可能である。押圧部161bとしては、例えばゴム材やスポンジ材等の適宜の緩衝性を有する素材が用いられる(図4図7参照)。
【0037】
本実施形態では、図4及び図5に示すように、圧子160は、例えば中心軸上が真空発生装置158b(図2参照)と連通する吸引路160aを有し、本体161aが四角柱状(四角筒状)に形成されているものとする。吸引路160aは、吸引により圧子160の先端の押圧部161bに第2の基板20を吸着させる。
【0038】
圧子160の大きさは、概略、高さ(H):30mm、幅(W):20mmよりも大きく、奥行き(D):20mmよりも大きいことが好適である。圧子160の大きさは、第2の基板20の基板サイズと同程度または、それよりも大きくてもよい。圧子160の大きさは、第2の基板20の基板サイズよりも僅かに小さくてもよい。圧子160の先端の押圧部161bの押圧面は、例えば円形、楕円形、正方形、長方形等に形成される。圧子160の先端の押圧部161bが円形である場合、幅及び奥行きは直径となる。圧子160の先端の押圧部161bによる第2の基板20との初期接触面積(図8参照)は、第2の基板20の面22のサイズより小さい。圧子160の先端による第2の基板20との最終接触面積(図10参照)は、第2の基板20の面22のサイズより僅かに小さくてもよいし、同じであってもよく、大きくてもよい。
【0039】
押圧部161bは、例えば図4中の紙面に平行な縦断面が三角形で略円錐状などの錐状、断面が台形で略円錐台状などの錐台状など、先端側に向かって先細となる形状に形成されている。このため、押圧部161bは、後述するように、押圧部161bと第2の基板20とが離間しているとき、第2の基板20に向かうにつれてすぼまる、錐状又は錐台状に形成されている。押圧部161bは、断面が先端側に向かって先細となる形状であれば、三角形の辺となる外周縁が円弧状の一部など、曲線として形成されていることも好適である。
【0040】
押圧部161bは、第1の基板10の所定箇所に第2の基板20が接触した後で第2の基板20を第1の基板10に向けて加圧するとき、第2の基板20の図心又はその近傍から先に、第2の基板20のエッジ部まで段階的に変形して圧着する。このため、押圧部161bは、後述する第2の基板20との接触領域を、第2の基板20の図心又はその近傍から環状に広げるように形成される。
【0041】
圧子温度調整部162は、加熱部162aと、冷却部162bとを有する。加熱部162a及び冷却部162bは、制御部120により制御される。
【0042】
加熱部162aは、圧子160の本体161aを加熱して第1の基板10と第2の基板20との間に接触した界面を所定の温度以上に加熱する。
【0043】
冷却部162bは、圧子160の本体161aのうち、加熱部162aにより加熱した部位を冷却する。このとき、冷却部162bは、一例として常温など、適宜の温度まで冷却する。本実施形態では、加熱部162aの外周にパイプが巻かれ、そのパイプ内に液体又は気体の冷媒(例えば液体窒素)が通される。このため、冷却部162bのパイプと、圧子160の本体161a及び加熱部162aとの間で熱伝達し、圧子160の本体161aの温度が適宜の温度まで下げられる。
【0044】
したがって、現在、吸着している第2の基板20と異なる新たな第2の基板20を例えば吸着により把持するとき、例えば常温などの温度で把持可能である。
【0045】
接合システム100の図2に示す制御部120は、例えばコンピュータである。制御部120は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含むプロセッサ(集積回路であってもよい)と、メモリ、ストレージ等の記憶媒体とを備える。制御部120に設けられるプロセッサは、1つであってもよく、複数であってもよい。制御部120は、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、各種の機能を発揮させる処理を実行する。
なお、制御部120の制御プログラムは、コンピュータのメモリ及び/又はストレージに記憶されておらず、適宜のサーバー上やクラウド上に置かれていることも好適である。この場合、制御プログラムは、通信インタフェースを介して例えば前処理装置116及び接合装置118がそれぞれ有するプロセッサと通信しながら実行される。すなわち、本実施形態に係る制御部120は、前処理装置116及び接合装置118がそれぞれ有していてもよく、前処理装置116及び接合装置118から離れた、接合システム100のサーバーやクラウド上にあってもよい。
【0046】
接合システム100の一連の動作(被接合部材同士の接合方法)について、図1図7から図10を用いて説明する。なお、図7中、冷却部162bの図示を省略する。図8は、本実施形態に係る接合装置118を用いる第1の基板10及び第2の基板20の接合処理に関するフローチャートである。
【0047】
図1に示すロードポート112は、第1の基板10及び/又は第2の基板20を格納したFOUPを図示しない搬送機から受け取って、FOUPからイントロチャンバ114内に第1の基板10及び/又は第2の基板20を搬入する。
【0048】
イントロチャンバ114は、ロードポート112から導入される基板10,20のバッファとして使われる。制御部120は、真空ポンプ132,133を作動させて、イントロチャンバ114及び前処理槽122内を減圧し、イントロチャンバ114と前処理装置116の前処理槽122との間のゲートバルブを開ける。そして、イントロチャンバ114から前処理装置116の前処理槽122内に第1の基板10及び/又は第2の基板20を搬入した後、イントロチャンバ114と前処理装置116の前処理槽122との間のゲートバルブを閉める。
【0049】
前処理装置116において、1又は複数の第1の基板10、及び/又は、1又は複数の第2の基板20が前処理槽122内に搬入され、所定の向きに向けられて第1の電極128上で保持される。本実施形態では、第1の基板10の接合面11及び第2の基板20の接合面21となる側が、上側である。
【0050】
そして、制御部120は、ガス供給部134から例えばアルゴンなどの希ガス、酸素ガス等の処理ガスを前処理槽122内に供給しながら、電源124により電極128,130間に交番電圧を印加する。2つの電極128,130間の電界により前処理槽122内に供給された処理ガスがプラズマ化される。すなわち、第1の電極128と第2の電極130との間において、1又は複数の第1の基板10の接合面(表面)11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面(表面)21の周囲に、粒子を含むプラズマを発生させる。プラズマ中の粒子を電圧により粒子に所定の運動エネルギーを付与し、1又は複数の第1の基板10の接合面11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面21に向けて加速させる。
【0051】
処理ガスのプラズマにより、1又は複数の第1の基板10の接合面(表面)11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面(表面)21が改質される。例えば、アルゴンガスのプラズマは、1又は複数の第1の基板10の接合面(表面)11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面(表面)21を活性化させ、親水化を促進させる。酸素ガスのプラズマは、1又は複数の第1の基板10の接合面(表面)11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面(表面)21を活性化させ、親水化を促進させる。
【0052】
制御部120は、前処理槽122内への処理ガスの供給を停止するとともに、交番電圧の印加を停止する。
【0053】
制御部120は、1又は複数の第1の基板10の接合面11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面21上に水蒸気供給部138から水蒸気(純水)を供給する。水蒸気が供給されると、供給された水蒸気は1又は複数の第1の基板10の接合面11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面21上を拡散する。1又は複数の第1の基板10の接合面11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面21には、水酸基(例えばシラノール基(Si-OH基))が形成して基板10,20の接合面11,21が親水化される。このように、1又は複数の第1の基板10の接合面11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面21には、前処理が行われる。なお、水蒸気は大気中の水蒸気を含む。
【0054】
なお、1又は複数の第1の基板10の接合面11、及び/又は、1又は複数の第2の基板20の接合面21上への水蒸気(純水)の供給は、前処理装置116の前処理槽122の水蒸気供給部138ではなく、接合装置118の接合槽152内であってもよい。すなわち、接合装置118の接合槽152に水蒸気供給部138が設けられることも好適である。 前処理装置116で常時真空プラズマ処理を行う場合、前処理槽122の大気開放ができない。このため、制御部120は、イントロチャンバ114と前処理装置116の前処理槽122との間のゲートバルブ(図示しない)を開け、処理した基板10,20を前処理槽122からイントロチャンバ114に排出した後、ゲートバルブを閉める。制御部120は、真空ポンプ132を作動させたまま真空ポンプ133の作動を停止し、ガス供給部135を開放する。このため、イントロチャンバ114が大気に開放され、イントロチャンバ114内に大気が導入される。制御部120は、イントロチャンバ114内で前処理した基板10,20を、例えば第1のロボットアーム156により、接合装置118にそれぞれ搬送する。
なお、前処理装置116と接合装置118との間に減圧チャンバを設けて、この減圧チャンバを経由して基板10,20を接合装置118に搬入することも好適である。
【0055】
次に、制御部120は、エアー導入口165、温湿度制御ユニット164、及び、エアー流出口166を制御して、接合槽152内の温度及び湿度を調整することが好ましい(ステップS1)。すなわち、例えばエアー導入口165を通して接合槽152内に流入させる空気の流量、及び、エアー流出口166を通して接合槽152外に流出させる空気の流量を調整することが好ましい。このため、前処理した第1の基板10及び第2の基板20が接合装置118に搬入された時点で、接合槽152内の温湿度が既に設定値に到達していることが好ましい。
【0056】
制御部120は、図1及び図3に示す接合装置118の第1のロボットアーム156のアクチュエータ156a及びチャック156bを動かし、例えばイントロチャンバ114内の第1の基板10の接触面(接合面、親水化面)11を触らないように把持し、図1に示すように、テーブル154上の所望の位置に、第1の基板10の接合面11を上側にして載置する。すなわち、第1のロボットアーム156の先端のチャック156bは、前処理装置116で処理した第1の基板10を例えばイントロチャンバ114を介して受け取り、所定の範囲内で所望の位置に移動可能である。このとき、テーブル154には、第1の基板10の接合面11とは反対側の面(テーブル154に対する接触面)12が接触する。
【0057】
第1のロボットアーム156は、例えば、基板10の親水化した面(接合面11)に触れないように、基板10の縁部を把持する。
【0058】
また、制御部120は、第1のロボットアーム156のアクチュエータ156a及びチャック156bを動かし、例えばイントロチャンバ114内の第2の基板20の接触面(接合面、親水化面)21を触らないように把持する。そして、第1のロボットアーム156の動作により第2の基板20の接合面21とは反対側の面22を第2のロボットアーム158に向けさせ、第2のロボットアーム158の先端の圧子160の先端の押圧部161bを第2の基板20の接合面21とは反対側の面22に接触させる。このとき、第2のロボットアーム158の先端の圧子160の先端の押圧部161bで、第2の基板20の面22を吸着する。この状態で、第1のロボットアーム156のチャック156bのクランプを解除することにより、第2のロボットアーム158は、第1のロボットアーム156から第2の基板20を受け取る。
制御部120は、第1のロボットアーム156のチャック156bを例えば180°程度回動させて、チャック156bで把持した第2の基板20の表裏を反転させる。このため、第1のロボットアーム156は、例えば、接合面21を下側に、接合面21とは反対側の面22を上側に向ける。そして、上側に向けられた接合面21とは反対側の面22が、第2のロボットアーム158のチャックとしての圧子160で吸着される。
なお、第2の基板20の表裏を反転させる場合、チャック156bを180°回動させる代わりに、第1のロボットアーム156のチャック156bを例えば90°回動させ、かつ、第2のロボットアーム158の先端を90°回動させてもよい。
【0059】
したがって、制御部120は、吸引路160aを通して第2の基板20の接合面21とは反対側の面22を吸引するとき、第2の基板20の接合面21とは反対側の面22の図心に圧子160の先端の押圧部161bを接触させる(ステップS2)。そして、制御部120は、テーブル154上の第1の基板10の接合面11に、第2の基板20の接合面21が接するように、第1の基板10に第2の基板20を載置する。すなわち、制御部120は、第2のロボットアーム158の先端の圧子160の先端の押圧部161bを移動させて第1の基板10の接合位置に第2の基板20を移動させる(ステップS3)。
【0060】
制御部120は、第2のロボットアーム158のアクチュエータ158a及び真空発生装置158bを動かし、圧子160の先端の押圧部161bで、第2の基板20を、第1の基板10に対して所望の位置に所望の向き(姿勢)で載置する。
【0061】
そして、制御部120は、第2のロボットアーム158のアクチュエータ158aで圧子160の先端の押圧部161bをテーブル154に向けて押圧する。このとき、制御部120は、圧子160の押圧部161bが第2の基板20との接触位置から所定距離移動するまで押圧部161bを含む圧子160をテーブル154に向けて移動させる(ステップS4)。このとき、圧子160は、第1の基板10のテーブル154に対する接触面12とは反対側の接合面11に対して第2の基板20の接合面21を接触させた状態で、適宜の範囲内の圧力で、第2の基板20の接合面21とは反対側の面22を第1の基板10の接合面11に向けて押圧する。これによって、テーブル154と圧子160との間の第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21とが密着する。
【0062】
第1の基板10の接合面11に第2の基板20の接合面21が接するように、第1の基板10に第2の基板20が載置されたとき、すなわち、第1の基板10に対して第2の基板20が接触したとき、押圧部161bが第2の基板20と接触している面積が初期接触面積(図8参照)となる。換言すれば、初期接触面積は、押圧部161bが第2の基板20を吸着保持している時の面積である。この初期接触面積は、第2の基板20の面22のサイズより小さい。制御部120によって、押圧部161bが、第2の基板20との接触位置からテーブル154に向けて移動させられるにつれて、押圧部161bは、第2の基板20の図心からエッジ部に向かって徐々に弾性変形する。これによって、押圧部161bが、図2の第2の基板20のうち接合面21とは反対側の面22を第2の基板20の図心からエッジ部に向かって徐々に押圧することになる。
【0063】
ここで、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間に接触した界面において、1又は複数のボイドVが発生し得る(図8及び図9参照)。圧子160の押圧部161bの押圧力が作用している領域では、押圧部161bの押圧力によりボイドVの存在が抑制される。このため、第2の基板20の面22が圧子160の先端の押圧部161bで押圧される際、押圧部161bが、第2の基板20の図心又はその近傍から環状に広がるように変形する。押圧部161bで第2の基板20のエッジ部に向かって徐々に押圧するにつれて、第2の基板20が弾性変形して、第2の基板20の面22と圧子160の先端の押圧部161bとの接触部の外縁BからボイドVが、圧子160の中心軸に対して径方向外方に向かって押し出される。このため、図7及び図9に示すように、第2の基板20の面22と圧子160の先端の押圧部161bとの接触面積が大きくなるにつれて、ボイドVが圧子160の中心軸に対して径方向外方に向かって押し出される。
【0064】
なお、図8図10中の四角環状の符号Bで示す線は、第2の基板20の面22に対して圧子160の先端の押圧部161bで押圧された領域の外縁の位置を示す。この外縁Bは、実際には第2の基板20の面22上において、連続的な環状(四角環状)となる。本実施形態では、圧子160の先端の押圧部161bによる第2の基板20との最終接触面積(図10参照)は、第2の基板20の面22のサイズより僅かに小さい。
【0065】
図7及び図10に示すように、第2の基板20の面22に対して圧子160の先端の押圧部161bで押圧された領域は、例えば第2の基板20の面22のエッジ部を超えて、又は、エッジ部の周辺まで到達する。すなわち、押圧部161bの全面が第2の基板20を押圧した状態で、押圧部161bからテーブル154の方向を見たとき、押圧部161bの外周は、エッジ部に面一又はエッジ部の外側に配置される。第2の基板20の面22に対して圧子160の先端の押圧部161bで押圧された領域である連続する環状の外縁Bは、連続した状態を維持しながら徐々に大きくなる。したがって、ボイドVは、第2の基板20の面22に対して圧子160の先端の押圧部161bで押圧された領域から圧子160の中心軸に向かって移動することが防止される。
【0066】
一般に、接合装置118は圧子160で、ピックアップされた第2の基板20の接合面21を第1の基板10の接合面11に押し込むことで接合を実施する。しかし、第2の基板20に例えば僅かに反りがある場合、第2の基板20が第1の基板10に押圧されたとき、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面内に空気が囲まれてボイドが発生し、接合の品質が落ちることがある。本実施形態に係る接合装置118を用いることにより、第2の基板20を第1の基板10の所望の位置に位置合わせした後、圧子160の先端で第2の基板20の図心を含む中心部をプレスする。このとき、接合装置118は、圧子160の押圧部161bで、第2の基板20の中心部から第2の基板20のエッジ部まで順に環状の外縁Bを徐々に大きくしながら、押圧する。このため、押圧部161bの押圧による影響により第2の基板20が弾性変形しながら、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面に囲まれたボイドVを第2の基板20のエッジ部の外方に追い出すことができる。
【0067】
ここまでは、本実施形態では、常温で第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面を密着させただけである。このため、第1の基板10及び第2の基板20は、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間のファンデルワールス力による接合、及び/又は、シラノール基間の水素結合による接合を行った状態にある。すなわち、第1の基板10の接合面11及び第2の基板20の接合面21が親水化された状態のとき、押圧部161bは、加圧により、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間をファンデルワールス力、及び/又は、水素結合により結合させる。
【0068】
本実施形態では、制御部120は、加熱部162aを制御し、加熱部162aを適宜の温度に加熱する(ステップS5)。加熱部162aは、例えば第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間に接触した界面を、押圧部161bを通して、例えば300℃程度など適宜の温度範囲(例えば200℃から350℃程度)内の温度で、例えば数秒間加熱する。このように、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面に熱処理を行うことで、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間に強固な接合(密着性)を形成することができる。これは、シラノール基同士の脱水縮合反応により、シロキサン結合(Si-O-Si結合)を生じさせることによる。このような熱処理は、接合槽152内で行ってもよく、接合槽152外で行ってもよい。これにより、本実施形態に係る接合装置118を用いることにより、第1の基板10の接合面11と、第2の基板20の接合面21との間に接触した界面に結合を生じさせることができる。したがって、本実施形態に係る接合装置118は、第1の基板10の接合面11と、第2の基板20の接合面21とを強固に固定することができる。
【0069】
制御部120は、加熱部162aを制御して加熱を停止するとともに、冷却部162bを動作させる(ステップS6)。冷却部162bは、第1の基板10と第2の基板20とに接触した界面、及び、押圧部161bを含む圧子160を冷却する。制御部120が冷却部162bを動作させるタイミングは、加熱部162aの加熱速度と冷却部162bの冷却速度との関係により変化し得る。
【0070】
例えば、本実施形態のように、加熱部162aの周囲のパイプに液体窒素を流すことにより加熱部162aを冷却する場合、冷却部162bが、第1の基板10と第2の基板20との界面を例えば300℃から常温に戻すまでの応答速度が比較的速い。この場合、制御部120が加熱部162aの加熱を停止させた後、冷却部162bで第1の基板10の接合面11と、第2の基板20の接合面21との界面を冷却することが好適である。
【0071】
一方、例えば、加熱部162aが常温から例えば300℃まで第1の基板10と第2の基板20との界面を加熱する応答速度に比べて、冷却部162bが、第1の基板10と第2の基板20との界面を例えば300℃から常温に戻すまでの応答速度が比較的遅い場合がある。この場合、制御部120が加熱部162aの加熱を停止させる前から、制御部120は、冷却部162bを制御し、第1の基板10と第2の基板20との界面を冷却することが好適である。この場合、制御部120が冷却部162bの冷却開始のタイミングを適宜に設定することで、加熱部162aによる加熱に影響を及ぼすことなく、または、影響を及ぼし難い状態で、冷却部162bは第1の基板10の接合面11と、第2の基板20の接合面21との界面を冷却することができる。
【0072】
なお、加熱部162aとして、ニクロム線(抵抗電熱線)を用いるほか、例えばシート状のヒータ等を用いることができる。冷却部162bの一例として、パイプに液体窒素を通すほか、例えばペルチェ素子を用いることができる。
【0073】
そして、第1のロボットアーム156は、例えば第1の基板10と第2の基板20とを接合したアセンブリ基板をチャックで保持し、所望の位置に移動可能である。すなわち、制御部120は、アセンブリ基板を所望の位置に搬送するか否かを出力する(ステップS7)。
【0074】
制御部120がアセンブリ基板の搬送が必要であると出力した場合(S7-Yes)、制御部120は、圧子160の吸引路160aを用いた第2の基板20の吸引を開放して、第2の基板20が第1の基板10に接合されたアセンブリ基板から、第2ロボットアーム158を退避させる。その後、第1ロボットアーム156によりアセンブリ基板を所望の位置に搬送する。すなわち、制御部120は、第1のロボットアーム156により、所望の位置に、アセンブリ基板を搬送する(ステップS8)。
【0075】
制御部120がアセンブリ基板の搬送がまだ必要でないと出力した場合(S7-No)、制御部120は、吸引路160aを用いた吸引を開放して第2の基板20を開放する(ステップS9)。そして、制御部120は、上述したように、第1のロボットアーム156及び第2のロボットアーム158を制御して、新たな第2の基板20を第1の基板10の残りの所望の位置に接合する処理を繰り返し行う。
【0076】
このように、制御部120は、第2のロボットアーム158のアクチュエータ158a及び真空発生装置158bを制御し、圧子160の先端の押圧部161bと第2の基板20の面22との接触を解除する。制御部120は、第2のロボットアーム158のアクチュエータ158a及び真空発生装置158bを制御し、新たな第2の基板20の面22を把持し、例えば上述した第1の基板10の接合面11の所望の位置に対して、第2の基板20を載置する。このとき、制御部120は、第1の基板10の接合面11の所望の位置に対して、第2の基板20の接合面21を接触させる。この後、上述したように、圧子160の先端の押圧部161bで、ボイドVを第2の基板20の図心から径方向外方に押し出し、その後、圧子160の加熱部162aで第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との界面を加熱して両者を接合し、冷却部162bで圧子160及び第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との界面を冷却する。このようにして、第1の基板10に対して、例えば第2の基板20を接合する。なお、冷却部162bを用いず、接合界面の加圧解除後に、基板アセンブリを自然冷却させてもよい。
【0077】
第1の基板10と第2の基板20とが同じサイズである場合は、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との界面を接合した基板アセンブリを形成した後、その基板アセンブリを接合槽152の外側に搬出し、新たな第1の基板10及び第2の基板20の接合を接合槽152内で行う。
【0078】
本実施形態では、例えば、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との界面に適宜の接着剤を配置してもよい。接着剤として、例えば、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂が挙げられる。この場合も、本実施形態に係る接合装置118を用いると、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21との間の界面(接着面)に囲まれたボイドを第2の基板20のエッジ部の外方に追い出すことができる。この場合、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21に何らかの前処理をしてもよいし、しなくてもよい。
したがって、圧子160は、第1の基板(第1の被接合部材)10のテーブル154に対する接触面12とは反対側の接合面(平面)11に対して第2の基板(第2の被接合部材)20の接合面(平面)21を直接的又は間接的に接触させた状態で、第2の基板20の接合面21とは反対側の面22を第1の基板10の接合面11に向けて押圧し、第1の基板10の接合面11に対して第2の基板20の接合面21を押圧することが可能である。
【0079】
そして、圧子160の押圧部161bは、第1の基板10の接合面11に対して第2の基板20の接合面21を押圧させた位置の周囲の第2の基板20の接合面21とは反対側の面22に向けて押圧力を供給し、第1の基板10の接合面11と第2の基板の接合面21との間の1又は複数のボイドを圧子160による押圧位置(押圧させた位置)から第2の基板20のエッジ部の外側に向かって押し出すことが可能である。
【0080】
図1図3及び図9中、第1の基板10の接合面11に対して、第2の基板(実装部材)20の接合面21の面積が小さい場合を例にして説明した。しかし、第1の基板10の接合面11と第2の基板20の接合面21の面積が同じであってもよい。また、例えば、第1の基板10と第2の基板20とが例えば円盤状など、同じ形状であってもよいし、第1の基板10が円盤状で、第2の基板20が矩形であってもよい。その逆であってもよい。
【0081】
第1の基板10、第2の基板20は、プリント基板などであってもよい。この場合、例えば接着剤を用いて第1の基板10と第2の基板20とを接合してもよい。接着剤を用いる場合、ロードポート112、イントロチャンバ114、前処理装置116は不要となり得る。また、接合装置118の温湿度制御ユニット164も不要となり得る。第1の基板10、第2の基板20の少なくとも一方として、適宜の可撓性を有するフィルム状部材を含み得る。
【0082】
上述した例では、1つの第1の基板10に対して1つの第2の基板20を1つの圧子160を用いて貼り合わせる例について説明した。例えば、1つの第1の基板10に対して複数の第2の基板20を1つの圧子160を用いて順に、又は、同時に複数の圧子160を用いて貼り合わせてもよい。
【0083】
本実施形態では、4つの加熱部162aが圧子160の本体161aに設けられる例について説明した。1つの加熱部162aが圧子160の本体161aに設けられることも好適である。この場合、図11に示すように、加熱部162aは、円環状に形成される。また、冷却部162bは、加熱部162aを冷却することができれば、適宜の形状に形成される。
【0084】
本実施形態では、押圧部161bのうち圧子160の中心軸に沿う高さが、圧子160の中心軸に対して直交するなど、交差する方向の長さ(辺長、対角線長、又は直径等)に比べて小さい例を図示した。反対に、押圧部161bのうち圧子160の中心軸に沿う高さが、圧子160の中心軸に対して直交するなど、交差する方向の長さ(辺長、対角線長、又は直径等)に比べて大きくてもよい。
【0085】
本実施形態では、前処理装置116として、プラズマ処理を用いて基板10,20の面11,21を活性化させる例について説明した。基板10,20の面11,21を活性化させるプラズマ処理方法としては、例えば、大気圧プラズマ処理、低気圧プラズマ処理、高気圧プラズマ処理、又は液中プラズマ処理などが挙げられる。また、前処理装置116として、例えば、上述した真空プラズマ装置を用いることも好適である。
【0086】
したがって、本実施形態によれば、第1の基板10と第2の基板20との密着性を向上させることが可能な接合装置118、及び、接合装置118を有する接合システム100を提供することができる。
【0087】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の接合装置118、及び、接合装置118を有する接合システム100によれば、第1の基板10と第2の基板20との間のボイドVを減少又はなくすことができるので、第1の基板10と第2の基板20との間の密着性を向上させることができる。
以上述べた少なくともひとつの実施形態の接合装置118、及び、接合装置118を有する接合システム100によれば、第1の基板10と第2の基板20との間の界面を加熱することができるので、第1の基板10と第2の基板20との間の密着性(接合性)を向上させることができる。
したがって、ボイドVがない又は少ない状態で第1の基板10と第2の基板20との間の界面を加熱するので、例えば仮圧着状態のチップが反ってボイドVが再度発生してしまった状態で第1の基板10と第2の基板20との間が接合されることを防止することができる。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10…第1の基板、11…接合面、20…第2の基板、21…接合面、22…面、100…接合システム、116…前処理装置、118…接合装置、120…制御部、152…接合槽、154…テーブル、156…第1のロボットアーム、156a…アクチュエータ、156b…チャック、158…第2のロボットアーム、158a…アクチュエータ、158b…真空発生装置、160…圧子、160a…吸引路、161a…本体、161b…押圧部、162…圧子温度調整部、162a…加熱部、162b…冷却部、164…温湿度制御ユニット、165…エアー導入口、166…エアー流出口。
図1
図2
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図11