(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103265
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】カテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A61M25/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007506
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 太郎
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267BB02
4C267CC07
4C267FF01
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
4C267GG10
4C267GG22
4C267GG24
(57)【要約】
【課題】貫通孔を有さない湾曲した先端部材をカテーテルの先端に接続する際の接続強度を向上し、接続部分の外径の増加を抑えられるカテーテルの製造方法を提供する。
【解決手段】長手軸方向Xに遠位端(20d)と近位端(20p)とを有し、長手軸方向Xに延在する内腔(20L)を有している外筒部材(20)を準備するステップと、長手軸方向Xに対して湾曲して延在し、延在方向Eに先端(30t)と基端(30b)とを有し、中実部(31)を有している樹脂製先端部材(30)を準備するステップと、外筒部材(20)の遠位端(20d)側から外筒部材(20)の内腔(20L)に樹脂製先端部材(30)の基端(30b)側を挿入するステップと、中実部(31)と外筒部材(20)とを固定するステップと、を有しており、外筒部材(20)の遠位端(20d)は、長手軸方向Xに垂直な面に対して斜めに形成されているカテーテルの製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に遠位端と近位端とを有し、前記長手軸方向に延在する内腔を有している外筒部材を準備するステップと、
前記長手軸方向に対して湾曲して延在し、延在方向に先端と基端とを有し、中実部を有している樹脂製先端部材を準備するステップと、
前記外筒部材の前記遠位端側から前記外筒部材の前記内腔に前記樹脂製先端部材の前記基端側を挿入するステップと、
前記中実部と前記外筒部材とを固定するステップと、を有しており、
前記外筒部材の前記遠位端は、前記長手軸方向に垂直な面に対して斜めに形成されているカテーテルの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂製先端部材は金型成形によるゲート跡を有しており、前記ゲート跡が前記外筒部材の前記内腔に配置されるように前記中実部と前記外筒部材とを固定する請求項1に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項3】
前記外筒部材の前記内腔に前記樹脂製先端部材の前記基端側を挿入するステップの後に、前記外筒部材の前記遠位端を含む部分を加熱するステップをさらに有している請求項1又は2に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項4】
長手軸方向に遠位端と近位端とを有する弾性部材を準備するステップと、
長手軸方向に遠位端と近位端とを有し前記長手軸方向に延在する内腔を有している接続部材を準備するステップと、
前記接続部材の前記内腔に前記弾性部材の前記遠位端を挿入するステップと、
前記接続部材の前記遠位端側を前記樹脂製先端部材の前記基端側に接続するステップと、をさらに有している請求項1又は2に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂製先端部材は前記基端を含む部分に非中実部を有しており、前記非中実部が前記接続部材の前記遠位端を受け入れることにより前記接続部材が前記樹脂製先端部材に接続される請求項4に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項6】
前記接続部材を加熱するステップをさらに有している請求項5に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項7】
前記接続部材の前記内腔に前記弾性部材の前記遠位端を挿入するステップにおいて、前記弾性部材の前記遠位端が前記接続部材の前記遠位端に到達している請求項5に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項8】
長手軸方向に遠位端と近位端とを有し前記長手軸方向に延在する内腔を有している固定部材を準備するステップと、前記固定部材の前記内腔に前記樹脂製先端部材の前記基端側と前記接続部材とを配置して前記固定部材を加熱するステップと、をさらに有している請求項5に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項9】
長手軸方向に遠位端と近位端とを有するワイヤを準備するステップと、前記接続部材の前記内腔に前記ワイヤの前記遠位端を挿入するステップと、をさらに有している請求項5に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項10】
前記接続部材の前記内腔は、前記弾性部材が配置される第1ルーメンと前記ワイヤが配置される第2ルーメンとを含む請求項9に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項11】
長手軸方向に遠位端と近位端とを有し、前記長手軸方向に延在する内腔を有している内筒部材を準備するステップと、
前記内筒部材の遠位部に前記弾性部材の近位部を固定するステップと、
前記内筒部材の前記内腔に前記ワイヤを配置するステップと、
前記外筒部材の前記内腔に前記内筒部材と前記弾性部材と前記ワイヤとを配置するステップと、をさらに有している請求項9に記載のカテーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルの製造方法に関し、詳細には、先端部材が設けられたカテーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管や臓器の病変に対し開腹手術を伴わずに行う低侵襲な治療法として、カテーテルを四肢や鼠径部等の血管から挿入して病変部まで送達し処置や検査を行うカテーテル治療が広く行われている。このような治療に用いられるカテーテルには、血管内腔における挿通性を向上するなどの目的のために、カテーテルの先端に先端部材が設けられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1及び2では、シャフトの先端側に配置されシャフトのガイドワイヤルーメンと連通する貫通孔を備える先端部材を有しているバルーンカテーテルであって、ガイドワイヤに対する先端部材の追従性や生体管腔に対する先端部材の通過性を向上させたバルーンカテーテルが開示されている。特許文献1では、先端部材とシャフトが接続される接続部をバルーンが有しており、接続部はシャフトの先端面と先端部材の基端面とを突き合わせて熱をかけて融着させることにより形成されている。また、特許文献2では、シャフトの先端側及び先端部材の基端側の少なくとも一方の外表面に空隙部を形成し、バルーンの先端側が上記空隙部を少なくとも部分的に覆うようにバルーンを配置してシャフトと先端部材が融着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-151382号公報
【特許文献2】特開2022-137612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような先端部材はシャフトの内腔と連通する構成であるなど貫通孔を有する筒状部材であり、従来、筒形状を有する先端部材をシャフトやバルーンに接続する方法が検討されてきた。他方、治療の目的によっては、貫通孔を有さない湾曲した先端部材をカテーテルの先端に設けることで、治療の効率や安全性が向上することがある。しかし、このような形状の先端部材をカテーテルの先端から脱落しないように接続することは容易ではなかった。
【0006】
上記の事情に鑑み本発明は、貫通孔を有さない湾曲した先端部材をカテーテルの先端に接続する際の接続強度を向上し、接続部分の外径の増加を抑えられるカテーテルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し得た本発明の実施形態に係るカテーテルの製造方法は、以下の通りである。
[1]長手軸方向に遠位端と近位端とを有し、前記長手軸方向に延在する内腔を有している外筒部材を準備するステップと、前記長手軸方向に対して湾曲して延在し、延在方向に先端と基端とを有し、中実部を有している樹脂製先端部材を準備するステップと、前記外筒部材の前記遠位端側から前記外筒部材の前記内腔に前記樹脂製先端部材の前記基端側を挿入するステップと、前記中実部と前記外筒部材とを固定するステップと、を有しており、前記外筒部材の前記遠位端は、前記長手軸方向に垂直な面に対して斜めに形成されているカテーテルの製造方法。
【0008】
本発明の実施形態に係るカテーテルの製造方法は、以下の[2]~[11]のいずれかであることが好ましい。
[2]前記樹脂製先端部材は金型成形によるゲート跡を有しており、前記ゲート跡が前記外筒部材の前記内腔に配置されるように前記中実部と前記外筒部材とを固定する[1]に記載のカテーテルの製造方法。
[3]前記外筒部材の前記内腔に前記樹脂製先端部材の前記基端側を挿入するステップの後に、前記外筒部材の前記遠位端を含む部分を加熱するステップをさらに有している[1]又は[2]に記載のカテーテルの製造方法。
[4]長手軸方向に遠位端と近位端とを有する弾性部材を準備するステップと、
長手軸方向に遠位端と近位端とを有し前記長手軸方向に延在する内腔を有している接続部材を準備するステップと、前記接続部材の前記内腔に前記弾性部材の前記遠位端を挿入するステップと、前記接続部材の前記遠位端側を前記樹脂製先端部材の前記基端側に接続するステップと、をさらに有している請求項[1]~[3]のいずれかに記載のカテーテルの製造方法。
[5]前記樹脂製先端部材は前記基端を含む部分に非中実部を有しており、前記非中実部が前記接続部材の前記遠位端を受け入れることにより前記接続部材が前記樹脂製先端部材に接続される[4]に記載のカテーテルの製造方法。
[6]前記接続部材を加熱するステップをさらに有している[4]又は[5]に記載のカテーテルの製造方法。
[7]前記接続部材の前記内腔に前記弾性部材の前記遠位端を挿入するステップにおいて、前記弾性部材の前記遠位端が前記接続部材の前記遠位端に到達している[4]~[6]のいずれかに記載のカテーテルの製造方法。
[8]長手軸方向に遠位端と近位端とを有し前記長手軸方向に延在する内腔を有している固定部材を準備するステップと、前記固定部材の前記内腔に前記樹脂製先端部材の前記基端側と前記接続部材とを配置して前記固定部材を加熱するステップと、をさらに有している[4]~[7]のいずれかに記載のカテーテルの製造方法。
[9]長手軸方向に遠位端と近位端とを有するワイヤを準備するステップと、前記接続部材の前記内腔に前記ワイヤの前記遠位端を挿入するステップと、をさらに有している[4]~[8]のいずれかに記載のカテーテルの製造方法。
[10]前記接続部材の前記内腔は、前記弾性部材が配置される第1ルーメンと前記ワイヤが配置される第2ルーメンとを含む[9]に記載のカテーテルの製造方法。
[11]長手軸方向に遠位端と近位端とを有し、前記長手軸方向に延在する内腔を有している内筒部材を準備するステップと、前記内筒部材の遠位部に前記弾性部材の近位部を固定するステップと、前記内筒部材の前記内腔に前記ワイヤを配置するステップと、前記外筒部材の前記内腔に前記内筒部材と前記弾性部材と前記ワイヤとを配置するステップと、をさらに有している[9]又は[10]に記載のカテーテルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
上記カテーテルの製造方法によれば、貫通孔を有さない湾曲した先端部材をカテーテルの先端に接続する際の強度を向上できる。これにより、先端部材がカテーテルから脱落する事故を防止することができる。また、接続部分の外径が大きくなることを防止でき、カテーテルの挿通性を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカテーテルの側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る樹脂製先端部材と外筒部材の側面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る樹脂製先端部材の側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態において、外筒部材の内腔に樹脂製先端部材を挿入したときの側面図である。
【
図6】
図2に示したカテーテルの長手軸方向の断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係るカテーテルの側面図である。
【
図8】
図7に示したカテーテルの長手軸方向の断面図である(一部側面図)。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る樹脂製先端部材と外筒部材の側面図である。
【
図12】本発明のさらに他の実施形態において、固定部材の内腔に樹脂製先端部材の基端側と接続部材とを配置したときの断面図である。
【
図14】実施例1で得られた接続部分の写真である。
【
図15】比較例1で得られた接続部分の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
本発明の実施形態に係るカテーテルの製造方法は、長手軸方向に遠位端と近位端とを有し、上記長手軸方向に延在する内腔を有している外筒部材を準備するステップと、上記長手軸方向に対して湾曲して延在し、延在方向に先端と基端とを有し、中実部を有している樹脂製先端部材を準備するステップと、外筒部材の遠位端側から外筒部材の内腔に樹脂製先端部材の基端側を挿入するステップと、中実部と外筒部材とを固定するステップと、を有しており、外筒部材の遠位端は、長手軸方向に垂直な面に対して斜めに形成されていることに特徴を有する。
【0013】
通常の筒状部材同士の接続では、筒状部材の端部同士を突き合わせたり重ね合わせたりして融着することで容易に接続することが可能なところ、樹脂製先端部材が中実部を有している、即ち樹脂製先端端部材が貫通孔を有しておらず、また、長手軸方向に対して湾曲している構成を有していると、樹脂製先端部材の基端側に外筒部材の遠位端側を接続するための内腔を湾曲に沿って適切に設けることは困難であるため、通常の筒状部材同士の接続方法を採用することは容易ではない。しかし、本発明の実施形態に係る製造方法によれば、外筒部材の遠位端側から外筒部材の内腔に樹脂製先端部材の基端側を挿入して中実部と外筒部材とを固定し、外筒部材の遠位端を長手軸方向に垂直な面に対して斜めに形成することにより、中実部と外筒部材との固定部分を十分に確保して接続強度を向上しつつ、接続部分の外径が大きくなることを防止しながら、樹脂製先端部材と外筒部材とを容易に固定することができる。これにより、樹脂製先端部材がカテーテルから脱落しにくく、挿通性の向上した中実の湾曲樹脂製先端部材を備えたカテーテルを製造することが可能になる。このようなカテーテルであれば、例えば心臓を対象とした治療において、小さい心臓や心臓の壁が薄いような場合であってもカテーテルの先端に湾曲した樹脂製先端部材が備わっているため、カテーテルの先端による心穿孔の危険性を減少させることができる。
【0014】
以下、
図1~
図6を参照しつつ、本発明の実施形態に係るカテーテルの製造方法について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るカテーテルの側面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る樹脂製先端部材と外筒部材の側面図である。
図3は、本発明の他の実施形態に係る樹脂製先端部材の側面図である。
図4は
図2のIV-IV断面図であり、中実部の断面図を表す。
図5は、本発明の一実施形態において、外筒部材の内腔に樹脂製先端部材を挿入したときの側面図である。
図6は、
図2に示したカテーテルの長手軸方向の断面図である。
【0015】
本明細書において、外筒部材20の長手軸方向Xを単に長手軸方向Xと称することがある。外筒部材20以外の部材、カテーテル11や、例えば後段にて詳述する弾性部材40、接続部材50、固定部材60、ワイヤ70、内筒部材80、及びハンドル90はそれぞれ長手軸方向を有しており、それらの長手軸方向を長手軸方向Xとして説明することがあるが、各部材の長手軸方向は外筒部材20の長手軸方向Xと同じであっても異なっていてもよい。
【0016】
各部材の遠位側とは長手軸方向Xにおいて処置対象者側を指し、各部材の近位側とは遠位側と反対側、即ちカテーテル11の使用者の手元側を指す。なお、
図1~
図3、
図5、及び
図6において、図の左側が遠位側であり図の右側が近位側である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、カテーテル11は、長手軸方向Xに遠位端20dと近位端20pを有し、長手軸方向Xに延在する内腔20Lを有している外筒部材20と、外筒部材20の遠位端20d側に接続されている樹脂製先端部材30を有している。カテーテル11は、外筒部材20の遠位部の表面に電極21を有していてもよい。また、図示していないが、カテーテル11は、外筒部材20の遠位部にセンサなど電極21以外の検査や治療のための部材を備えていてもよい。このような構成により、カテーテル11は、心電位を測定する電極カテーテルや組織を焼灼するアブレーションカテーテルとして用いられることができる。さらに、カテーテル11は、外筒部材20の近位側にハンドル90を備える構造を有していてもよい。
図1ではハンドル90の遠位端に外筒部材20の近位端20pが位置する態様を示しているが、外筒部材20の近位端20pはハンドル90の遠位端よりも近位側に位置していてもよい。
【0018】
図1には外筒部材20が直線状に延在している態様を示しているが、カテーテル11は、外筒部材20の遠位部等の少なくとも一部がくせ付けられて湾曲している構成を有していてもよい。
【0019】
図2に示すように、本発明の実施形態に係る製造方法は、長手軸方向Xに遠位端20dと近位端20pとを有し、長手軸方向Xに延在する内腔20Lを有している外筒部材20を準備するステップと、長手軸方向Xに対して湾曲して延在し、延在方向Eに先端30tと基端30bとを有し中実部31を有している樹脂製先端部材30を準備するステップとを有している。さらに、
図5に示すように、外筒部材20の遠位端20d側から外筒部材20の内腔20Lに樹脂製先端部材30の基端30b側を挿入するステップと、中実部31と外筒部材20とを固定するステップとを有しており、外筒部材20の遠位端20dは、長手軸方向Xに垂直な面に対して斜めに形成されている。
【0020】
外筒部材20は、内腔20Lを1つ有しているシングルルーメン構造であってもよいし、複数の内腔を有していてもよい。複数の内腔を有する構造としては、多重管構造であるコアキシャル構造であってもよいし、異なる中心軸を有する複数の内腔を備えるマルチルーメン構造であってもよいが、コアキシャル構造であることが好ましい。外筒部材20がシングルルーメン構造であれば、外筒部材20に内腔同士を区分けする隔壁が存在しないため外筒部材20の柔軟性を高められ、カテーテル11の挿通性を向上させることができる。外筒部材20は、長手軸方向Xの位置によって構造が異なっていてもよく、構造の異なる筒状部材が長手軸方向Xに接続されることにより構成されていてもよい。例えば、外筒部材20は、長手軸方向Xのある位置ではシングルルーメン構造を有しており、長手軸方向Xの他の位置ではコアキシャル構造又はマルチルーメン構造を有していてもよい。
【0021】
外筒部材20を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン等のポリアミド系樹脂;PET等のポリエステル系樹脂;PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂;ポリエーテルポリアミド系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリイミド系樹脂;PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。中でも、外筒部材20を構成する材料は、ポリアミド系樹脂であることが好ましく、ポリアミドエラストマーであることがより好ましい。これにより、外筒部材20の外表面の滑り性がよく、また、外筒部材20が適度な剛性を有することができるため、血管内腔での挿通性が向上したカテーテル11とすることができる。外筒部材20は、単層構造であってもよく複層構造であってもよい。外筒部材20が複層構造である場合、例えば、外筒部材20が樹脂チューブを含み、樹脂チューブが中間層としてステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属編組からなる層を備えた構成であってもよい。
【0022】
外筒部材20の長手軸方向Xの長さは、目的とする治療に応じて適切な長さとすることができる。例えば、外筒部材20の長手軸方向Xの長さは、500mm以上1500mm以下とすることができる。
【0023】
長手軸方向Xに垂直な断面において、外筒部材20の外縁の形状及び内腔20Lの形状は円形又は楕円形であることが好ましい。ここで、円形とは、真円のみではなく真円から逸脱したものも含む。外筒部材20の外縁の形状が円形であるときの外径又は楕円形であるときの長径は、0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、1mm以上がさらに好ましい。外筒部材20の外径の下限が上記範囲であることにより、外筒部材20に適度な剛性を与えることができ、血管内腔での挿通性が向上したカテーテル11とすることができる。また、外筒部材20の外縁の形状が円形であるときの外径又は楕円形であるときの長径は、3mm以下が好ましく、2.8mm以下がより好ましく、2.5mm以下がさらに好ましい。外筒部材20の外径の上限が上記範囲であることにより、カテーテル11の外径が大きくなりすぎることを防ぎ、血管内腔での挿通性を向上するとともに低侵襲性を高めることができる。
【0024】
外筒部材20の壁厚は、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましく、また、350μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましい。外筒部材20の壁厚が上記範囲であることにより、外筒部材20の剛性を確保しつつ外筒部材20の内腔20Lの内腔を所定以上の大きさとすることができる。
【0025】
カテーテル11が電極21を有している場合、電極21は、リング状電極であってもよく平板電極であってもよい。中でも、電極21はリング状電極であることが好ましい。これにより、外筒部材20の周上における電極21の面積を大きくすることができ、電極21を標的組織に接触させやすくなる。
【0026】
電極21を構成する材料としては、例えば、銅、金、白金、アルミニウム、鉄、又はこれらの合金等の金属材料が挙げられる。中でも、電極21を構成する材料は、白金又はその合金であることが好ましい。これにより、電極21のX線に対する造影性を向上でき、カテーテル1の使用時にX線を用いることにより電極21の位置を確認しながら治療を行うことができる。
【0027】
カテーテル11が電極21を有している場合、電極21に接続された導線が外筒部材20の内腔20Lに配置され、カテーテル11の近位側まで延在して電源装置等の外部機器(図示せず)に電気的に接続されていることが好ましい。導線としては、例えば、銅線、鉄線、ステンレス鋼線、ピアノ線、タングステン線、ニッケルチタン線等を用いることができる。
【0028】
図2に示すように、外筒部材20の遠位端20dは、樹脂製先端部材30が外筒部材20の内腔20Lに挿入される前の段階で長手軸方向Xに垂直な面に対して斜めに形成されていることが好ましい。或いは、外筒部材20の遠位端20dは、樹脂製先端部材30が外筒部材20の内腔20Lに挿入された後で長手軸方向Xに垂直な面に対して斜めに形成されてもよい。
図2に示すように、外筒部材20の遠位端20dが長手軸方向Xに垂直な面に対して斜めに形成されているため、外筒部材20の遠位端20dは最も遠位側にある遠位端20d1と最も近位側にある遠位端20d2とを有している。遠位端20d1と遠位端20d2とを結ぶ直線と長手軸方向Xとがなす角度のうち小さい方、即ち
図2に示す角度θは、10°以上が好ましく、15°以上がより好ましく、また、70°以下が好ましく、60°以下がより好ましく、45°以下がさらに好ましく、30°以下であってもよい。
【0029】
図2及び
図3に示すように、樹脂製先端部材30は、長手軸方向Xに対して湾曲して延在し、延在方向Eに先端30tと基端30bとを有している。湾曲の形状は特に限定されず、樹脂製先端部材30の形状としては、円弧形状、各種円弧形状の組み合わせ、円弧形状が重なったコイル形状、波形状、及びこれらの形状と直線形状との組み合わせ等が挙げられる。樹脂製先端部材30は、自然状態において湾曲していることが好ましい。長手軸方向Xにおいて、樹脂製先端部材30の先端30tは、樹脂製先端部材30の遠位端よりも近位側に位置していてもよい。また、樹脂製先端部材30の先端30tは、樹脂製先端部材30が近位側に大きく湾曲することにより樹脂製先端部材30の基端30bよりも近位側に位置していてもよい。樹脂製先端部材30の基端30bは、外筒部材20の遠位端20d側に接続される側の端部と定義することができる。
【0030】
樹脂製先端部材30を構成する材料としては、例えば、ナイロン、ポリエーテルポリアミド共重合体、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂;ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン系樹脂;ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂;ポリオレフィンエラストマー等のポリオレフィン系樹脂;PTFE、PFA、ETFE、フッ素樹脂エラストマー等のフッ素系樹脂;シリコーン系樹脂等が挙げられる。樹脂製先端部材30は、これらの材料を金型成形することにより製造されていることが好ましい。
【0031】
樹脂製先端部材30は、外筒部材20よりも剛性が低くなるような材料から構成されていることが好ましい。カテーテル11の先端に備わる樹脂製先端部材30の剛性が低いことにより、治療対象部位の損傷を防止することが容易になる。
【0032】
樹脂製先端部材30の延在方向Eに垂直な断面において、樹脂製先端部材30の外縁の形状は円形又は楕円形であることが好ましい。ここで、円形とは、真円のみではなく真円から逸脱したものも含む。樹脂製先端部材30の外縁の形状が円形であるときの外径又は楕円形であるときの長径は、外筒部材20のそれらと同等であることが好ましい。これにより、樹脂製先端部材30と外筒部材20の接続部分に段差が生じにくく、カテーテル11の血管内腔での挿通性を向上するとともに低侵襲性を高めることができる。具体的には、例えば、0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、1mm以上がさらに好ましく、また、3mm以下が好ましく、2.8mm以下がより好ましく、2.5mm以下がさらに好ましい。
【0033】
樹脂製先端部材30の長手軸方向Xの長さL30xは、2mm以上が好ましく、2.5mm以上がより好ましく、3mm以上がさらに好ましく、また、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。長手軸方向Xの長さが上記範囲の中実で湾曲した柔軟な樹脂製先端部材30をカテーテル11が備えていることにより、治療対象部位の損傷を防止することができる。
【0034】
長手軸方向Xに垂直な外筒部材20の径方向における樹脂製先端部材30の幅L30yは、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、2.5mm以上がさらに好ましい。樹脂製先端部材30が上記範囲の幅L30yを有するように湾曲していることにより、治療対象部位へ当接した際の衝撃が緩和され治療対象部位の損傷防止効果が向上できる。長手軸方向Xに垂直な外筒部材20の径方向における樹脂製先端部材30の幅L30yは、10mm以下が好ましく、9mm以下がより好ましく、8mm以下がさらに好ましい。樹脂製先端部材30が上記範囲の幅L30yを有するように湾曲していることにより、湾曲した樹脂製先端部材30を備えていてもカテーテル11の血管内腔での挿通性を確保できる。
【0035】
図2~
図6に示すように、樹脂製先端部材30は中実部31を有している。
図4に示すように、中実とは延在方向Eに垂直な断面において中身が詰まっていることを意味し、中身が詰まっている部分が延在方向Eに延在している区間を中実部31と称する。中実部31は、樹脂製先端部材30の延在方向Eの60%以上に連続して配されていることが好ましく、70%以上、80%以上、90%以上であってもよく、全てが中実部31、即ち樹脂製先端部材30の延在方向Eの100%に中実部31が連続して配されていてもよい。樹脂製先端部材30が中実部31を有していることにより、樹脂製先端部材30を延在方向Eに貫通孔を有さない構成とすることができる。
【0036】
図5に示すように、外筒部材20の遠位端20d側から外筒部材20の内腔20Lに樹脂製先端部材30の基端30b側が挿入され、中実部31と外筒部材20とが固定される。
図5には、樹脂製先端部材30の湾曲方向が外筒部材20の遠位端20dのうち最も近位側にある遠位端20d2に位置するように挿入した態様を示しているが、樹脂製先端部材30の湾曲方向の外筒部材20の遠位端20dに対する位置は特に限定されない。
【0037】
中実部31と外筒部材20は、中実部31の外壁と外筒部材20の内腔20Lの壁が接着剤により固定されることが好ましい。接着剤としては、ポリウレタン系、エポキシ系、シアノ系、フッ素系、シリコーン系等の接着剤が挙げられる。このとき、外筒部材20の内腔20Lの壁が中実部31の外壁の上に重なるように固定されるが、外筒部材20の遠位端20dが長手軸方向Xに垂直な面に対して斜めに形成されているため、遠位端20dのうち最も遠位側にある遠位端20d1側では接着面積を大きくすることができ、中実部31と外筒部材20の接続強度を向上できる。他方、遠位端20dのうち最も近位側にある遠位端20d2側では中実部31と外筒部材20とが重なる面積を小さくできるため、接続部分の外径が大きくなることを防止できる。これにより、接続強度を向上しつつ接続部分の外径の増加を抑えながら樹脂製先端部材30と外筒部材20を接続することができる。
【0038】
図6に示すように、カテーテル11はコアワイヤ22を有していてもよい。カテーテル11がコアワイヤ22を有していることにより、カテーテル11の剛性を高めることができ血管内腔での挿通性を向上できる。また、コアワイヤ22を通してカテーテル11の近位側からの力を遠位側へ伝えることができ、カテーテル11の操作性を向上できる。
【0039】
コアワイヤ22は中空構造を有していてもよく、コアワイヤ22は筒状構造を有するチューブ、パイプ、一又は複数の線材がらせん状に巻回されて形成されたコイル、或いはこれらの組み合わせであることが好ましい。コアワイヤ22がこのような構成であれば、カテーテル11の剛性を高めつつ適度な柔軟性も確保できるため、血管内に容易に挿通され屈曲した血管内であってもカテーテル11を治療対象部位へ送達することが容易になる。或いは、コアワイヤ22は中実構造を有する線材等であってもよい。
【0040】
図2及び
図3に示すように、樹脂製先端部材30は金型成形によるゲート跡33を有しており、
図5に示すように、ゲート跡33が外筒部材20の内腔20Lに配置されるように中実部31と外筒部材20とを固定することが好ましい。樹脂製先端部材30を金型成形する際に用いる金型には、樹脂の注入口やエア抜き用の孔が設けられており、これら開口によるゲート跡33が樹脂製先端部材30に残ることがある。ゲート跡33は表面の平滑性に劣ることから、ゲート跡33が露出して体腔や臓器の内壁に触れると損傷を与える虞があるところ、ゲート跡33が外筒部材20の内腔20Lに配置されることによりゲート跡33が体腔や臓器の内壁に触れないようにすることが可能である。本発明の実施形態に係る製造方法では、外筒部材20の遠位端20dが長手軸方向Xに垂直な面に対して斜めに形成されているため、ゲート跡33を外筒部材20の内腔20Lに容易に配置することができる。これにより、樹脂製先端部材30と外筒部材20との接続強度を向上しつつ接続部分の外径が大きくなるのを抑えた上で、ゲート跡が露出しない構成として低侵襲性の向上したカテーテル11を得ることができる。
【0041】
本発明の実施形態に係る製造方法は、外筒部材20の内腔20Lに樹脂製先端部材30の基端30b側を挿入するステップの後に、外筒部材20の遠位端20dを含む部分を加熱するステップをさらに有していることが好ましい。外筒部材20の遠位端20dを含む部分を加熱することにより、外筒部材20と樹脂製先端部材30の接続部分の段差を平滑化することができ、カテーテル11の挿通性や低侵襲性の向上がより容易になる。外筒部材20の遠位端20dを含む部分を加熱するステップは、中実部31と外筒部材20とを固定するステップの前に行ってもよいし後に行ってもよいが、後に行うことが好ましい。中実部31と外筒部材20とを固定するステップの後に外筒部材20の遠位端20dを含む部分を加熱するステップを行うことにより、中実部31と外筒部材20とが既に固定された状態で外筒部材20の遠位端20dを加熱できるため、外筒部材20と樹脂製先端部材30の接続部分の段差を平滑化することがより容易になる。加熱手段は特に限定されず、ヒーターや半田ごて等の公知の方法で加熱できる。
【0042】
次に、
図7~
図13を参照しつつ、先端部が湾曲できるカテーテルの製造方法について説明する。
図7は、本発明の他の実施形態に係るカテーテルの側面図である。
図8は、
図7に示したカテーテルの長手軸方向の断面図である。
図8において、内筒部材については側面図を示している。
図9は、本発明の他の実施形態に係る樹脂製先端部材と外筒部材の側面図である。
図10は
図9のX-X断面図であり、非中実部の断面図である。
図11は
図10の変形例を表す断面図であり、非中実部の他の例を表す。
図12は、本発明のさらに他の実施形態において、固定部材の内腔に樹脂製先端部材の基端側と接続部材とを配置したときの断面図である。
図13は
図8のXIII-XIII断面図であり、外筒部材の内腔に配置された接続部材の断面図を表す。
【0043】
本発明の実施形態に係る製造方法は、先端部が湾曲できるカテーテル12も製造できる。以下、カテーテル12の製造方法について説明するが、カテーテル11の製造方法と重複する部分については説明を省略し、カテーテル11と共通する部材については同じ符号を用いる。
【0044】
図7に示すように、カテーテル12は遠位部が湾曲方向Dに湾曲できる構成を有している。カテーテル12を湾曲可能な構成とするために、カテーテル12は、カテーテル11のコアワイヤ22に替えて弾性部材40とワイヤ70を有していることが好ましい。手元側からワイヤ70を牽引して弾性部材40を湾曲させることにより、カテーテル12の遠位部を湾曲させることができる。カテーテル12は、ワイヤ70を牽引するための回転部材91をハンドル90に有していてもよい。ワイヤ70の近位側を回転部材91に固定して回転部材91を回転させることにより、ワイヤ70を牽引することが容易になる。
【0045】
図8に示すように、カテーテル12を製造する方法は、長手軸方向Xに遠位端40dと近位端40pとを有する弾性部材40を準備するステップと、長手軸方向Xに遠位端50dと近位端50pとを有し長手軸方向Xに延在する内腔50Lを有している接続部材50を準備するステップと、接続部材50の内腔50Lに弾性部材40の遠位端40dを挿入するステップと、接続部材50の遠位端50d側を樹脂製先端部材30の基端30b側に接続するステップと、をさらに有していることが好ましい。接続部材50の内腔50Lに弾性部材40の遠位端40dを挿入し、接続部材50の遠位端50d側を樹脂製先端部材30の基端30b側に接続することにより、中実部31を有する樹脂製先端部材30と弾性部材40を容易に接続して遠位部が湾曲可能なカテーテル12を製造することができる。
【0046】
接続部材50を構成する材料は、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、又はこれらの混合物であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂樹脂等が挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、天然ゴム、ポリエーテルブロックアミド共重合体等のポリアミドエラストマーが好適に用いられる。
【0047】
接続部材50の長手軸方向Xの長さは、2mm以上が好ましく、2.5mm以上がより好ましく、3mm以上がさらに好ましい。接続部材50の長手軸方向Xの長さの下限が上記範囲であれば、中実部31を有する樹脂製先端部材30と弾性部材40との接続強度を確保できる。また、接続部材50の長手軸方向Xの長さは、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。接続部材50の長手軸方向Xの長さの上限が上記範囲であれば、接続部材50により剛性が高くなる範囲を所定以下とできるためカテーテル12の遠位部の剛性段差を軽減できる。また、接続部材50に挿入された弾性部材40は、接続部材50から露出している部分が湾曲できるため、弾性部材40の湾曲長さを十分に確保することができる。
【0048】
長手軸方向Xに垂直な断面において、接続部材50の外縁の形状は円形又は楕円形であることが好ましい。ここで、円形とは、真円のみではなく真円から逸脱したものも含む。接続部材50の外縁の断面形状が円形であるときの外径又は楕円形であるときの長径は、樹脂製先端部材30の基端30b側に接続可能、且つ、外筒部材20の内腔20Lに挿入可能であれば特に制限されないが、例えば、0.8mm以上、1mm以上、1.2mm以上、また、8mm以下、5mm以下、3mm以下等とすることができる。
【0049】
弾性部材40は、板状の形状を有する部材であることが好ましい。これにより、カテーテル12を板状部材の一方面又は他方面に湾曲させる構成とすることができる。弾性部材40は板バネであってもよく、弾性部材40を構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、チタン、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等の金属;芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリカーボネート樹脂、繊維強化樹脂等の合成樹脂;ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム等の合成ゴム;天然ゴム等が挙げられる。中でも、弾性部材40はステンレス鋼で構成されていることが好ましい。
【0050】
接続部材50の内腔50Lに挿入された弾性部材40の遠位端40dを含む部分は、接続部材50に固定されていることが好ましい。弾性部材40と接続部材50は、接着剤による接着で固定されてもよいし、後述するように接続部材50を加熱する方法や接続部材50を覆うように配置した固定部材60を加熱する方法により固定されてもよい。接続部材50の遠位側50d側と樹脂製先端部材30の基端30b側は、接着剤による接着で接続されてもよいし、後述するように接続部材50を加熱する方法や接続部材50を覆うように配置した固定部材60を加熱する方法により接続されてもよい。
【0051】
図8~
図11に示すように、樹脂製先端部材30は基端30bを含む部分に非中実部32を有しており、非中実部32が接続部材50の遠位端50dを受け入れることにより接続部材50が樹脂製先端部材30に接続されることが好ましい。これにより、接続部材50の遠位端50d側を樹脂製先端部材30の基端30b側に接続する際に、樹脂製先端部材30の基端30b側の外径が増加することを抑えることが可能になる。
【0052】
図9に示すように、非中実部31は、樹脂製先端部材30の中実部31の外縁側が基端30b側に延在することにより設けられることが好ましい。例えば、延在方向Eに垂直な断面において、
図10に示すように中実部31の外縁が周方向全体にわたって基端30b側に延在することにより非中実部32が設けられていてもよい。或いは、
図11に示すように、中実部31の外縁の周方向の一部が基端30b側に延在することにより非中実部32が設けられていてもよい。いずれの場合であっても非中実部32が接続部材50の遠位端50dを受け入れることにより接続部材50の遠位端50d側を樹脂製先端部材30の基端30b側に接続することが可能であり、樹脂製先端部材30の基端30b側の外径の増加を抑えることができる。
【0053】
カテーテル12を製造する方法は、上記の状態において接続部材50を加熱するステップをさらに有していることが好ましい。接続部材50は熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーにより構成されていることから、接続部材50を加熱することにより、接続部材50が弾性部材40の遠位端40d側に溶着し、また、接続部材50の遠位端50d側が樹脂製先端部材30の基端30b側に溶着するため、弾性部材40と樹脂製先端部材30を強固に接続することがより容易になる。接続部材50の加熱は、接続部材50を構成する樹脂に応じて、溶着が可能な温度まで加熱すればよい。
【0054】
接続部材50の内腔50Lに弾性部材40の遠位端40dを挿入するステップにおいて、弾性部材40の遠位端40dが接続部材50の遠位端50dに到達していることが好ましい。弾性部材40の遠位端40dが接続部材50の遠位端50dに到達していれば、接続部材50の遠位端50d側を樹脂製先端部材30の基端30b側に接続した際に、弾性部材40の遠位端40dも樹脂製先端部材30に接続されやすくなることから、樹脂製先端部材30と弾性部材40との接続強度の向上がより容易になる。
【0055】
図12に示すように、カテーテル12を製造する方法は、長手軸方向Xに遠位端60dと近位端60pとを有し長手軸方向Xに延在する内腔60Lを有している固定部材60を準備するステップと、固定部材60の内腔60Lに樹脂製先端部材30の基端30b側と接続部材50とを配置して固定部材60を加熱するステップと、をさらに有していることが好ましい。
【0056】
固定部材60を構成する材料は、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、又はこれらの混合物であることが好ましい。このような材料で構成された固定部材60の内腔60Lに樹脂製先端部材30の基端30b側と接続部材50とを配置して固定部材60を加熱することにより、固定部材60が熱収縮して樹脂製先端部材30の基端30b側及び接続部材50の外側を覆うように固定するため、樹脂製先端部材30と弾性部材40との接続強度の向上がさらに容易になる。固定部材60を構成する具体的な材料は、上記接続部材50を構成する材料についての記載を参照できる。
【0057】
固定部材60の長手軸方向Xの長さは、3mm以上が好ましく、4mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。固定部材60の長手軸方向Xの長さの下限が上記範囲であれば、固定部材60の内腔60Lに樹脂製先端部材30の基端30b側と接続部材50とを容易に配置できる。また、固定部材60の長手軸方向Xの長さは、30mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、15mm以下がさらに好ましい。固定部材60の長手軸方向Xの長さの上限が上記範囲であれば、固定部材60により剛性が高くなる範囲を所定以下とできるためカテーテル12の遠位部の剛性段差を軽減できる。また、固定部材60の内腔60Lに配置されている接続部材50に挿入された弾性部材40は固定部材60から露出している部分が湾曲できるため、弾性部材40の湾曲長さを十分に確保することができる。
【0058】
長手軸方向Xに垂直な断面において、固定部材60の外縁及び内腔60Lの形状は円形又は楕円形であることが好ましい。ここで、円形とは、真円のみではなく真円から逸脱したものも含む。固定部材60の外縁の断面形状が円形であるときの径又は楕円形であるときの長径の下限は、固定部材60の内腔60Lに樹脂製先端部材30の基端30b側と接続部材50とを配置できれば特に制限されないが、例えば、1mm以上、1.2mm以上、1.5mm以上とすることができる。また、固定部材60の外縁の断面形状が円形であるときの径又は楕円形であるときの長径の上限は、15mm以下、12mm以下、10mm以下等とすることができる。このような上限値であっても、固定部材60を加熱することにより固定部材60が収縮するため、固定部材60が樹脂製先端部材30の基端30b側及び接続部材50の外側に沿うことができ、外筒部材20の遠位端20d側から外筒部材20の内腔20Lに樹脂製先端部材30の基端30b側を挿入することができる。
【0059】
固定部材60の内腔60Lの径又は長径は、接続部材50の外径よりも大きいことが好ましい。これにより、固定部材60の内腔60Lに接続部材50を容易に配置できる。固定部材60の内腔60Lの径又は長径は、樹脂製先端部材30の基端30bの外径又は長径よりも大きくてもよいし小さくてもよい。固定部材60の内腔60Lの径又は長径が樹脂製先端部材30の基端30bの外径又は長径よりも小さくても、固定部材60の内腔60Lに接続部材50を配置可能であれば、固定部材60の樹脂製先端部材30側にスリットを入れることにより、固定部材60を樹脂製先端部材30の基端30b上に配置することができる。
【0060】
固定部材60の壁厚は、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましく、また、350μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましい。固定部材60の壁厚が上記範囲であることで、固定部材60を加熱した際に固定部材60の収縮により樹脂製先端部材30と弾性部材40との接続強度の向上が容易になる。
【0061】
上述のように、カテーテル12は、手元側から牽引することにより弾性部材40を湾曲させることのできるワイヤ70を備えていることが好ましく、カテーテル12の製造方法は、
図8に示すように、長手軸方向Xに遠位端70dと近位端と有するワイヤ70を準備するステップと、接続部材50の内腔50Lにワイヤ70の遠位端70dを挿入するステップと、をさらに有していることが好ましい。接続部材50の内腔50Lにワイヤ70の遠位端70dを挿入することで、ワイヤ70の遠位部を樹脂製先端部材30に容易に接続することができ、ワイヤ70を近位側に牽引することにより弾性部材40を湾曲させてカテーテル12の遠位部を偏向させることができる。
【0062】
ワイヤ70としては、ステンレス鋼等の金属線材や、フッ素樹脂等の合成樹脂から形成された線材を用いることができる。ワイヤ70は、1本の線材であってもよく複数の線材からなる構成を有していてもよい。カテーテル12は、複数のワイヤ70を有していてもよく、例えば、カテーテル12の遠位部を弾性部材40の一方面側に湾曲させるための第1ワイヤと他方面側に湾曲させるための第2ワイヤとを有していてもよい。
【0063】
接続部材50の内腔50Lに挿入されたワイヤ70の遠位端70dを含む部分は、接続部材50に固定されていることが好ましい。ワイヤ70と接続部材50は、接着剤による接着で固定されてもよいし、上述したような接続部材50を加熱する方法や接続部材50を覆うように配置した固定部材60を加熱する方法により固定されてもよい。
【0064】
図示していないが、ワイヤ70はハンドル90まで延在していることが好ましく、ワイヤ70の近位端は回転部材91に固定されていることがより好ましい。これにより、回転部材91を回転することによりワイヤ70を近位側に牽引しやすくなる。
【0065】
図13に示すように、接続部材50の内腔50Lは、弾性部材40が配置される第1ルーメン50L1とワイヤ70が配置される第2ルーメン50L2とを含むことが好ましい。これにより、弾性部材40とワイヤ70とを別々にそれぞれ第1ルーメン50L1と第2ルーメン50L2に配置できるため、弾性部材40とワイヤ70とが接続部材50の内腔50L内で移動しにくくなって弾性部材40の遠位端40dとワイヤ70の遠位端70dを所望の位置関係に配置しやすくなる。
【0066】
図8に示すように、カテーテル12の製造方法は、長手軸方向Xに遠位端80dと近位端とを有し、長手軸方向Xに延在する内腔80Lを有している内筒部材80を準備するステップと、内筒部材80の遠位部に弾性部材40の近位部を固定するステップと、内筒部材80の内腔80Lにワイヤ70を配置するステップと、外筒部材20の内腔20Lに内筒部材80と弾性部材40とワイヤ70とを配置するステップとをさらに有していることが好ましい。
【0067】
カテーテル12が内筒部材80を有していることにより、カテーテル12の湾曲の起点側の剛性を確保し、長手軸方向Xにおいて内筒部材80の遠位端80dから遠位側のカテーテル12の遠位部を湾曲させることができる。内筒部材80の近位端は外筒部材20の内腔20Lにおいて長手軸方向Xの途中に位置していてもよいし、或いは、内筒部材80は外筒部材20の近位端20pまで延在していてもよいし、また或いは、内筒部材80は外筒部材20の近位端20pを越えて近位側まで延在していてもよい。
【0068】
内筒部材80を構成する材料としては、外筒部材20と同様の合成樹脂や金属等を用いることができる。内筒部材80は、単層構造であってもよく複層構造であってもよい。内筒部材80は、一又は複数の線材がらせん状に巻回され形成されている中空コイル、チューブ、パイプ等であることが好ましい。中でも、内筒部材80はコイルであることが好ましい。これにより、内筒部材80によりカテーテル10の湾曲の起点側の剛性を確保しつつ、適度な柔軟性も付与できるため、屈曲した血管内であっても容易に挿通して病変部へ送達できるカテーテル10とすることができる。コイルは可撓性があることが好ましく、コイルの材料としては、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金等からなる金属ワイヤや、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂からなるワイヤが挙げられる。
【0069】
内筒部材80の遠位部に弾性部材40の近位部を固定する際、弾性部材40の近位端40pが内筒部材80の内腔80Lに配置されていてもよいし、或いは、弾性部材40の近位端40pが内筒部材80の外側に配置されていてもよい。また或いは、弾性部材40の近位端40pが内筒部材80の遠位端80dに当接又は固定されていてもよい。中でも、弾性部材40の近位端40pが内筒部材80の内腔80Lに配置され、内筒部材80が弾性部材40の近位端40pを受け入れた状態となっていることが好ましい。これにより、弾性部材40と内筒部材80を安定して接続することができる。
【実施例0070】
以下、実施例に従って本発明を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により制限を受けるものではなく、前記・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0071】
<外筒部材の製造>
ナイロン系エラストマー樹脂(Pebax(登録商標)、Arkema社)を用いて、押出成形により、長手軸方向に垂直な断面の形状が円形であり、外径が1.61mm、壁厚が155μmの外筒部材を製造した。
【0072】
<樹脂製先端部材の製造>
ナイロン系エラストマー樹脂(Pebax(登録商標)、Arkema社)を用いて、金型成形により樹脂製先端部材を製造した。得られた樹脂製先端部材は、円弧状に湾曲した中実の部材であり、延在方向に垂直な断面の形状は直径が1.61mmの円形であった。樹脂製先端部材の長さは12mm、幅は10mmであった。
【0073】
実施例1
上記で得られた外筒部材を長手軸方向の長さが11cmとなるように切り出し、一方の端を長手軸方向に垂直な面に対して斜めになるように切断した。斜めに切断された端面と長手軸方向とがなす角度θは30°であった。ここで、斜めに切断した外筒部材の一方端を遠位端、他方端を近位端とする。外筒部材の遠位端側から外筒部材の内腔に、熱硬化型一液性エポキシ接着剤を表面に塗布した樹脂製先端部材の基端側を挿入した。このとき、外筒部材の最も遠位側にある遠位端側の樹脂製先端部材との重なりが4mm、外筒部材の最も近位側にある遠位端側の樹脂製先端部材との重なりが1mmとなるように挿入して固定した。その後、ホットプレートを用いて外筒部材の遠位端を加熱し、樹脂製先端部材が遠位側に接続された外筒部材を得た。接続部分の写真を
図14に示す。
【0074】
比較例1
上記で得られた外筒部材を長手軸方向の長さが11cmとなるように切り出した。このとき、両端とも長手軸方向に垂直な面に対して垂直となるように、即ち、端面と長手軸方向とがなす角度θが90°となるように切断した。外筒部材の一方端側から外筒部材の内腔に、熱硬化型一液性エポキシ接着剤を表面に塗布した樹脂製先端部材の基端側を挿入した。このとき、外筒部材と樹脂製先端部材との重なりが1mmとなるように挿入して固定した。その後、ホットプレートを用いて外筒部材の遠位端を加熱し、樹脂製先端部材が遠位側に接続された外筒部材を得た。接続部分の写真を
図15に示す。
【0075】
樹脂製先端部材を接続した側の外筒部材の端部を斜めに切断した実施例1では、接続部分の外径の増加が抑えられ、外筒部材と樹脂製先端部材が滑らかに接続できた。これに対し、樹脂製先端部材を接続した側の外筒部材の端部が垂直な比較例1では、接続部分の外径が大きく膨らむ結果となった。