(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103268
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】武道用刀
(51)【国際特許分類】
A63B 69/02 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A63B69/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007510
(22)【出願日】2023-01-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・2022年12月23日にhttps://tozando.com/jotatsugata/及びhttps://www.youtube.com/watch?v=ii2GagYxeBI&t=1s(末永真理選手の剣道上達7日間プログラム〔新商品上達型竹刀・木刀〕)にて公開。
(71)【出願人】
【識別番号】508127214
【氏名又は名称】株式会社東山堂
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆彦
(57)【要約】
【課題】競技者が握り易く、かつ、柄部を握り直しても竹刀を持つ向きが変わり難い武道用刀を得る。
【解決手段】 刃部と断面が円形状又は楕円形状の柄部とを備えた武道用刀であって、前記柄部を軸方向に二分して柄頭側を一端部としその反対側を他端部とした場合に、前記刃部の峯を真上に向けた状態で、前記一端部の左方を向く周面又は前記他端部の右方を向く周面のいずれか一方又は双方に、その周面を切り欠いてなる切欠き面を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃部と断面が円形状又は楕円形状の柄部とを備えた武道用刀であって、
前記柄部を軸方向に二分して柄頭側を一端部としその反対側を他端部とした場合に、
前記刃部の峯を真上に向けた状態で、前記一端部の左方を向く周面又は前記他端部の右方を向く周面のいずれか一方又は双方に、その周面を切り欠いてなる切欠き面が形成されていることを特徴とする武道用刀。
【請求項2】
前記刃部の峯を真上に向けた状態で、前記柄部を柄頭側から軸方向に見た場合に、前記一端部に形成された切欠き面が、左斜め上を向いている請求項1記載の武道用刀。
【請求項3】
前記刃部の峯を真上に向けた状態で、前記柄部を柄頭側から軸方向に見た場合に、前記他端部に形成された切欠き面が、右斜め上を向いている請求項1記載の武道用刀。
【請求項4】
前記切欠き面が、前記周面を軸方向に沿って凹状に切り欠いて形成されたものであり、その底面が平坦状になっている請求項1記載の武道用刀。
【請求項5】
前記刃部の峯が、前記刃部の峯以外の部分と異なる色になっている請求項1記載の武道用刀。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、武道用刀に関するものである。
【背景技術】
【0002】
剣道の竹刀として、特許文献1には、断面が円形状である柄部とその柄部から延びる刃部を備えた竹刀において、刃部の峯を真上に向けた状態で、柄部を柄頭側から軸方向に見た場合に、柄部の柄頭側に、その右面を薄くなるように略扁平状に形成した第1指掛け部が形成されているとともに、柄部の柄頭側より適宜寸法離れた前方に、その左面を薄くなるように略扁平状に形成した第2指掛け部が形成されているものが開示されている。このような竹刀であれば、柄部の握る部分が薄くなり、握り易くなる。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1記載の竹刀では、競技者の握り方によっては次のような問題が生じる。
【0004】
つまり、剣道の竹刀は、競技者の利き腕にかかわらず、柄部の柄頭側を左手で握るとともに、柄部の鍔側を右手で握って使用されることから、前記特許文献1記載の竹刀の柄部を握ると、第1指掛け部に左手の指が引っ掛かり、第2指掛け部に右手の指が引っ掛かる。このため、競技者の握り方によっては、柄部を握り直そうと手を緩めた際に、手の指が指掛け部に引っ掛かって竹刀が周方向へ回転し、竹刀を持つ向きが正しくない向きに変わってしまうことがある。そして、竹刀の向きが正しくないまま素振りなどの練習を続けると、握り方に変な癖が付いたり、そのまま打突すると、弦が防具との間に挟まって切れるなど破損の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、競技者が握り易く、かつ、柄部を握り直しても持つ向きが変わり難い武道用刀を得ることを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る武道用刀は、刃部と断面が円形状又は楕円形状の柄部とを備えた武道用刀であって、前記柄部を軸方向に二分して柄頭側を一端部としその反対側を他端部とした場合に、前記刃部の峯を真上に向けた状態で、前記一端部の左方を向く周面又は前記他端部の右方を向く周面のいずれか一方又は双方に、その周面を軸方向に切り欠いてなる切欠き面が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成によれば、柄部の一端部又は他端部が切り欠かれているので、柄部の握る部分の厚みが薄くなり、握り易くなる。また、柄部を握ると、手のひらが切欠き面に接触するが、この手のひらは、柄部を握り直す際に手を緩めると柄部から離れる。つまり、柄部を握る手を緩めた場合、柄部を指先で引っ掛けて支持し、手のひらを開いて緩めることから、手のひらは切欠き面から離れる。このため、特許文献1記載の竹刀のように、柄部を握り直した際、手が切欠き面に引っ掛かって刀の向きが変わることがなくなり、競技者の握り方にかかわらず、刀を正しい向きに保ち易くなる。その結果、握り方に変な癖が付きに難くなり、竹刀の破損も抑制できる。
【0009】
また、前記刃部の峯を真上に向けた状態で、前記柄部を柄頭側から軸方向に見た場合に、前記一端部に形成された切欠き面が、左斜め上を向いているものであってもよい。
【0010】
このような構成であれば、柄部を握るだけで、左手の正しい握り感覚を身に着けることができる。詳述すると、左手で柄部を正しく握れていると、左脇が閉まるが、このような構成によれば、柄部を左手で握り易いように持つと、左手の母指球が切欠き面で形成される凹みに嵌まり込み、自然と左手が内側に絞り込まれて左脇が閉まる。したがって、柄部を握るだけで、左手の正しい握り感覚を身に着けられる。
【0011】
また、前記刃部の峯を真上に向けた状態で、前記柄部を柄頭側から軸方向に見た場合に、前記他端部に形成された切欠き面が、右斜め上を向いているものであってもよい。
【0012】
このような構成によれば、柄部を握るだけで、右手の正しい握り感覚を身に着けることができる。詳述すると、右手で柄部を正しく握れていると、右脇が閉まるが、このような構成であれば、柄部を右手で握り易いように持つと、右手の母指球が切欠き面で形成される凹みに嵌まり込み、自然と右手が内側に絞り込まれて右脇が閉まる。したがって、柄部を握るだけで、右手の正しい握り感覚を身に着けられる。
【0013】
また、前記切欠き面が、前記周面を軸方向に沿って凹状に切り欠いて形成されたものであり、その底面が平坦状になっているものであってもよい。
【0014】
このような構成であれば、柄部の握る位置を軸方向へ僅かにずらす場合に、手をスムーズに移動させることができる。
【0015】
また、前記刃部の峯が、前記刃部の峯以外の部分と異なる色になっているものであってもよい。
【0016】
このような構成によれば、竹刀が正しい向きになっているか判断し易くなる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明に係る武道用刀であれば、競技者が握り易く、かつ、柄部を握り直しても竹刀の向きが変わり難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態の武道用刀を模式的に示す平面図及び側面図である。
【
図2】実施形態の武道用刀の柄部を模式的に示す平面図である。
【
図3】実施形態の武道用刀を模式的に示す断面図である。
【
図4】実施形態の武道用刀の柄部を握った状態を模式的に示す斜視図である。
【
図5】実施形態の武道用刀の柄部を握った手を緩めた状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る武道用刀を
図1~
図4を参照しながら説明する。
【0020】
本発明の武道用刀には、例えば剣道の練習に使用される棒状のものである。具体的には、木刀、竹刀、真剣、模造刀などが含まれる。
【0021】
<実施形態> 本実施形態の武道用刀100は、
図1に示すように、刃部10とその刃部10から延びる柄部20とを備えている。本実施形態の武道用刀100は、断面円形状の長尺棒を削って形成した木刀である。なお、
図1(a)は、武道用刀100の平面図であり、
図1(b)は、武道用刀100の側面図である。また、
図3(a)は、
図1(b)に示す刃部10のA-A端面図であり、
図3(b)及び
図3(c)は、
図2に示す柄部20のB-B端面図及びC-C端面図である。
【0022】
前記刃部10は、長尺棒状をなし、断面が略楕円形状のものである。そして、刃部10には、
図3(a)に示すように、所定方向を向く面を平坦に削って峯11が形成されており、その反対方向を向く面を断面略V状に削って刃12が形成されている。なお、本実施形態の刃部10は、峯11が峯11以外の部分と異なる色に着色されている。刃部10の軸方向先端が、切先13となる。
【0023】
前記柄部20は、長尺棒状をなし、断面円形状のものである。つまり、円柱状のものである。そして、柄部20は、軸方向中央で二分して柄頭21側を一端部22としその反対側(切先13側)を他端部23とした場合に、刃部10の峯11を真上に向けた状態で、一端部22の左方を向く左周面22aに左切欠き面22bが形成されており、他端部23の右方向を向く右周面23aに右切欠き面23bが形成されている。ここで、左周面22aは、
図3(b)に示すように、峯11を真上に向けた状態で、柄部20を軸方向から見て左右に二分する仮想線αよりも左側の面であり、右周面23aは、
図3(c)に示すように、前記仮想線αよりも右側の面である。両切欠き面22b、23bは、対応する周面22a,23aを軸方向に沿って凹状に削って形成されている。したがって、柄部20の両切欠き面22b、23bが形成された部分は、それ以外の周面に比べて僅かに凹んでいる。
【0024】
前記左切欠き面22bは、左周面22aを軸方向に凹状に切り欠いて形成されており、その底面が平坦状に形成されている。そして、左切欠き面22bは、刃部10の峯11を真上に向けた状態で、柄部10を柄頭21側から軸方向に見た場合に、左斜め上を向くように形成されている(
図3(b)参照)。つまり、左切欠き面22bは、峯21を真上に向けた状態で、左周面22aの上方を向く領域に形成されており、左周面22aの上部から左下方へ傾斜している。具体的には、峯11を真上に向けた状態で、左切欠き面22bが向く方向と峯11が向く方向(つまり、上方向)との間の角度(
図3(b)中、Xで示す角度)が5度以上85度以下になるように形成されている。なお、左切欠き面22bは、一端部22のみに形成されており、他端部23まで達しないように形成されている。
【0025】
前記右切欠き面23bは、前記右周面23aを軸方向に凹状に切り欠いて形成されており、その底面が平坦状に形成されている。そして、右切欠き面23bは、刃部10の峯21を真上に向けた状態で、柄部10を柄頭21側から軸方向に見た場合に、右斜め上を向くように形成されている(
図3(c)参照)。つまり、右切欠き面23bは、峯21を真上に向けた状態で、右周面23aの上方を向く領域に形成されており、右周面23aの上部から右下方へ傾斜している。具体的には、峯11を真上に向けた状態で、右切欠き面23bが向く方向と峯11が向く方向(つまり、上方向)との間の角度(
図3(c)中、Yで示す角度)が5度以上85度以下になるように形成されている。なお、右切欠き面23bは、他端部23のみに形成されており、一端部23まで達していないように形成されている。
【0026】
したがって、前記一端部22は、左切欠き面22bを通るように軸方向と直交方向に切断した場合、左切欠き面22b以外の周面は円形状になっている。つまり、一端部22は、左切欠き面22b以外の周面は断面円形状の曲面になっている。また、前記他端部23は、右切欠き面23bを通るように軸方向と直交方向に切断した場合、右切欠き面以外の周面は円形状になっている。つまり、他端部23は、右切欠き面23b以外の周面は断面円形状の曲面になっている。
【0027】
次に、本実施形態の武道用刀100の使用方法を説明する。
【0028】
剣道の練習に使用される武道用刀は、基本の構えである中段の構えをとった場合、峯が上に向くように握られる。また、この時、競技者は、利き腕にかかわらず、左手で柄部の柄頭側を握り、右手で柄部の切先側(鍔側)を握る。
【0029】
このため、競技者が、本実施形態の武道用刀100を握る場合、先ず着色された峯11を目印にその峯11を上に向ける。そして、競技者は、
図4に示すように、左手Lで一端部22を握るとともに、右手Rで他端部23を握る。この時、左手Lの指は、一端部22の左切欠き面22b以外の周面に接触し、左手Lの手のひらの母指球La当たりが、左切欠き面22bに接触し、その左切欠き面22bによって形成される凹みに入り込む。また、右手Rの指は、他端部23の右切欠き面23b以外の周面に接触し、右手Rの手のひらの母指球Ra当たりが、右切欠き面23bに接触し、その右切欠き面23bによって形成される凹みに入り込む。
【0030】
本実施形態の武道用刀100によれば、次のような作用効果が得られる。すなわち、本実施形態の武道用刀100を競技者が握ると、左手Lの手のひらの母指球La当たりが左切欠き面22bによって形成される凹みに入り込む。これにより、自然と左手Lが内側に絞られて左脇が閉まる。同様に、右手Rの手のひらの母指球Ra当たりが左切欠き面23bによって形成される閉込みに入り込む。これにより、自然と右手Rが内側に絞られて右脇が閉まる。つまり、競技者は、本実施形態の武道用刀100を握るだけで、自然と両脇が閉まった正しい握りを身に着けることができる。
【0031】
また、本実施形態の武道用刀100を握った競技者が、柄部20を握り直す場合には、
図5に示すように、両手L,Rの指を曲げて柄部20を引っ掛けるように支持しながら、両手L,Rの手のひらを開くことから、両切欠き面22b、23bから手が離れる。このため、競技者が、武道用刀100を握り直しても、両切欠き面22b、23bに手が引っ掛かって武道用刀100が周方向に回転することがなくなる。その結果、武道用刀100を正しい向きに維持し易くなる。
【0032】
また、刃部10の峯11が他の部分と異なる色に着色されているので、武道用刀100の向きを一目で確認できる。
【0033】
また、左切欠き面22bが、軸方向に沿って凹状に形成されているので、武道用刀100が握った手に対して軸方向に移動した場合に、その手に引っ掛かる。これにより、武道用刀100が、手からすっぽ抜けることを防止できる。
【0034】
<その他の実施形態>
本発明は前記実施形態に限定されるものではない。
【0035】
前記実施形態では、柄部が断面円形状のものであるが、柄部が楕円形状のものであってもよい。この場合、刃部の峯を真上に向けた状態で、柄部の長径が上下方向に延びるように構成すればよい。また、一端部及び他端部は、切欠き面を通るように軸方向と直交方向に切断した場合、その切欠き面以外の周面は楕円形状になる。つまり、一端部及び他端部は、切欠き面以外の周面が断面楕円形状の曲面になる。
【0036】
前記実施形態では、柄部の一端部及び他端部の両方に切欠き面を形成したが、いずれか一方にのみ切欠き面を形成したものであってもよい。
【0037】
また、前記実施形態では、一端部に形成された切欠き面が、刃部の峯を真上に向けた状態で、柄部を柄頭側から軸方向に見た場合に、左斜め上を向くように形成しているが、例えば、左方を向くように形成してもよく、また、左斜め下方を向くように形成してもよい。
【0038】
また、前記実施形態では、他端部に形成された切欠き面が、刃部の峯を真上に向けた状態で、柄部を柄頭側から軸方向に見た場合に、右斜め上を向くように形成しているが、例えば、右方を向くように形成してもよく、また、右斜め下方を向くように形成してもよい。
【0039】
また、前記実施形態では、切欠き面の底面が平坦状になっているが、例えば底面が凹曲面状に凹んでいるものであってもよい。
【0040】
また、前記実施形態の左切欠き面は、周面を柄頭側の端面まで達しないように切り欠いて形成されているが、その端面まで達するように切り欠いてもよい。
【0041】
また、前記実施形態では、武道用刀として木刀を例示したが、例えば武道用刀は竹刀であってもよく、真剣や模造刃であってもよい。また、武道用刀の刃部は、峯側と刃側とが定められているものであれば、刃状に形成されたものでなくてもよい。
【0042】
前記一端部の左方を向く周面又は前記他端部の右方を向く周面のいずれか一方又は双方に、その周面を切り欠いてなる切欠き面が形成されていることを特徴とする武道用刀。
【0043】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の一部同士の組み合わせや、変形等を行っても構わない。
【符号の説明】
【0044】
P:競技者
100:木刀
10:刃部
11:峯
12:刃
20:柄部
21:柄頭
22:一端部
22a:左周面
22b:左切欠き面
23:他端部
23a:右周面
23b:右切欠き面