(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103294
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】溶着性ビーズ玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 33/00 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A63H33/00 304C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007557
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000128234
【氏名又は名称】株式会社エポック社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】境 亮
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA12
2C150FB18
2C150FB22
2C150FB43
2C150FD04
(57)【要約】
【課題】収容ケース等から取り出しやすい溶着性ビーズ玩具を提供すること。
【解決手段】溶着性ビーズ玩具10は、水溶性樹脂に着色剤である顔料を配合して形成された溶着性ビーズ玩具10であって、表面が、シボ加工が施されたシボ領域12と平滑な平滑領域14とに区画され、シボ領域12は、シボ加工の凹凸が水に溶けることにより平滑領域14に変化するシボ深さとされる。溶着性ビーズ玩具10を、平滑領域14が表面の全面に形成された従来の溶着性ビーズ玩具と比べて収容ケース等から取り出しやすくすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性樹脂に着色剤である顔料を配合して形成された溶着性ビーズ玩具であって、
表面が、シボ加工が施されたシボ領域と平滑な平滑領域とに区画され、
前記シボ領域は、前記シボ加工の凹凸が水に溶けることにより前記平滑領域に変化するシボ深さとされる、
溶着性ビーズ玩具。
【請求項2】
前記シボ領域におけるシボ深さが35~45μmの範囲内とされる、請求項1に記載の溶着性ビーズ玩具。
【請求項3】
前記シボ領域は、前記溶着性ビーズ玩具の表面の少なくとも1/4以上の領域に形成されている、請求項1に記載の溶着性ビーズ玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶着性ビーズ玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ビーズ玩具と呼ばれ、樹脂製の小球体又は筒状体などのビーズを相互に溶着させ、種々の装飾体等を作製する遊びを行う玩具がある。例えば特許文献1には、水等の液体を噴霧するだけでビーズ同士が溶着し、様々な形態のビーズの結合体を作成することができる溶着性ビーズ玩具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示される溶着性ビーズ玩具は、複数のビーズが収容された収容ケース等からビーズを取り出して並べることにより、装飾体を作製することができる。しかしながら、ビーズの表面は平滑面となっているためビーズを摘み難く、収容ケース等からビーズを取り出し難いことがあった。一方で、ビーズを摘みやすいようにビーズの表面の一部を削る等すると、遊びやすさが損なわれてしまう虞があった。
【0005】
本発明は、収容ケース等から取り出しやすい溶着性ビーズ玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の溶着性ビーズ玩具は、水溶性樹脂に着色剤である顔料を配合して形成された溶着性ビーズ玩具であって、表面が、シボ加工が施されたシボ領域と平滑な平滑領域とに区画され、前記シボ領域は、前記シボ加工の凹凸が水に溶けることにより前記平滑領域に変化するシボ深さとされる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、収容ケース等から取り出しやすい溶着性ビーズ玩具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る溶着性ビーズ玩具の正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る溶着性ビーズ玩具の上面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る溶着性ビーズ玩具が複数載置されたトレイの斜視図である。
【
図4】本発明の実施例において溶着性ビーズ玩具の落下比較試験に用いた試験装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、実施形態に係る溶着性ビーズ玩具10は、球状であり、粒径が5mm程度となっている。溶着性ビーズ玩具10は、ポリビニルアルコールを配合した水溶性樹脂に、着色剤である複数の顔料を配合して有色とした透明な合成樹脂を原材料とし、金型を用いた射出成形により形成されている。溶着性ビーズ玩具10を着色剤により着色する際には、透明感と色彩とを調和させる色として、緑、青、赤、黄、紫等の色を呈する有色透明とすることができる。
【0010】
溶着性ビーズ玩具10の表面の一部には、シボ加工が施されている。即ち、溶着性ビーズ玩具10の表面は、シボ加工が施されたシボ領域12とシボ加工が施されていない平滑な平滑領域14とに区画されている。具体的には、シボ領域12は、溶着性ビーズ玩具10の表面のうち上部の領域であって、溶着性ビーズ玩具10の表面の略1/4の領域に形成されている。
【0011】
このように溶着性ビーズ玩具10の表面にシボ領域12が設けられていることにより、溶着性ビーズ玩具10を収容ケース等から摘んで取り出す際、摘む指の少なくとも一部がシボ領域12に触れることとなる。また、シボ領域12に触れた部分は、シボ加工が施された面と指の表面との間に働く摩擦力により、平滑領域14に触れた部分に比べて指から離れ難い。このため、溶着性ビーズ玩具10は、平滑領域14が表面の全面に形成された従来の溶着性ビーズ玩具と比べて収容ケース等から取り出しやすくなっている。
【0012】
また、溶着性ビーズ玩具10の表面にシボ領域12が設けられていることにより、
図3に示すように、例えばトレイ20上に設けられた各孔22に複数の溶着性ビーズ玩具10を隣接させて並べた場合、隣り合う溶着性ビーズ玩具10同士のシボ領域12とシボ領域12との間に摩擦力が働くため、トレイ20上で各溶着性ビーズ玩具10が位置ずれし難い。
【0013】
また、溶着性ビーズ玩具10では、シボ領域12におけるシボ深さが35~45μmの範囲内とされている。このように微細なシボ加工が施されていることにより、溶着性ビーズ玩具10は、水を噴霧すると、シボ領域14ではシボ加工による表面の凹凸が水に溶け、シボ領域12が平滑領域14とほぼ同等の平滑性となる。即ち、シボ領域12が平滑領域14に変化する。このため、溶着性ビーズ玩具10では、複数の溶着性ビーズ玩具10同士を溶着させた後に溶着性ビーズ玩具10の結合体で遊ぶ際に、遊びやすさが損なわれることがない。
【0014】
上記のような溶着性ビーズ玩具10は、一部にシボ加工を施すための凹凸が設けられた金型を用いて射出成形を行うことにより形成することができる。形成された溶着性ビーズ玩具10では、
図1に示すように、成形過程において金型が分割されるライン上にパーティングラインPLが形成される。シボ領域12は、このようなパーティングラインPLと重ならない箇所に形成される。なお、成形過程においてシボ領域12が形成された箇所は、金型を離型させる際、離型性に優れている。このため、成形過程における成形時間を短縮することができる。
【0015】
以上のような本発明の実施形態によれば、下記の態様の溶着性ビーズ玩具を提供することができる。
【0016】
第1の態様に係る溶着性ビーズ玩具は、水溶性樹脂に着色剤である顔料を配合して形成された溶着性ビーズ玩具であって、表面が、シボ加工が施されたシボ領域と平滑な平滑領域とに区画され、前記シボ領域は、前記シボ加工の凹凸が水に溶けることにより前記平滑領域に変化するシボ深さとされる。
【0017】
この構成によれば、溶着性ビーズ玩具を収容ケース等から摘んで取り出す際、摘む指の少なくとも一部がシボ領域に触れ、シボ領域に触れた部分は平滑領域に触れた部分に比べて指から離れ難くなる。このため、溶着性ビーズ玩具を、平滑領域が表面の全面に形成された従来の溶着性ビーズ玩具と比べて収容ケース等から取り出しやすくすることができる。さらに、溶着性ビーズ玩具に水を噴霧した場合に、シボ領域が水に溶けて平滑領域に変化するため、複数の溶着性ビーズ玩具同士を溶着させた後に溶着性ビーズ玩具の結合体で遊ぶ際に、遊びやすさが損なわれることがない。
【0018】
第2の態様の溶着性ビーズ玩具は、前記シボ領域におけるシボ深さが35~45μmの範囲内とされる。
【0019】
この構成によれば、溶着性ビーズ玩具に水を噴霧した場合に、シボ領域におけるシボ加工の凹凸が水に溶けて平滑領域に変化するような微細なシボ深さとするための具体的な値を提供することができる。
【0020】
第3の態様の溶着性ビーズ玩具は、前記シボ領域は、前記溶着性ビーズ玩具の表面の少なくとも1/4以上の領域に形成されている。
【0021】
この構成によれば、溶着性ビーズ玩具を収容ケース等から摘んで取り出す際、摘む指の少なくとも一部がシボ領域に一層触れやすいものとすることができる。このため、溶着性ビーズ玩具を、収容ケース等から一層取り出しやすくすることができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば上記の実施形態では、シボ領域が溶着性ビーズ玩具の表面の略1/4の領域に形成された構成を例示したが、シボ領域が溶着性ビーズ玩具の表面の略半分の領域に形成された構成であってもよく、表面の略半分以上の領域に形成された構成であってもよい。
【実施例0023】
実施例では、表面にシボ領域が形成された10個の溶着性ビーズ玩具10のサンプル(実施例)と、表面にシボ領域が形成されていない(表面の全面が平滑領域とされた)10個の従来の溶着性ビーズ玩具のサンプル(比較例)とをそれぞれ準備し、離型性を検証するための落下比較試験を行った。
【0024】
実施例の各サンプルは、シボ領域を溶着性ビーズ玩具10の表面の1/4の領域に形成した。また、実施例の各サンプルでは、シボ領域におけるシボ深さを、Yick Sang Metal And Plastic Mould Texturing社製のテクスチャーデータシート上の型番「YS1287B」に準拠したシボ深さ40μmとした。
【0025】
落下比較試験は、
図4に示す簡易的な試験装置30を用いて行った。
図4に示すように、試験装置30は、緩衝シート32を下に敷き、緩衝シート32上に鉄製の重り34を載せ、重りの一側面に平板36を貼り付け、さらに、平板36のうち重り34に貼り付けられた側とは反対側の面に付箋38(市販されている一般的なもの)を貼り付けた構成とした。付箋38は粘着面を外側に向けた状態とした。
【0026】
落下比較試験では、まず、緩衝シート32上に10個の溶着性ビーズ玩具10のサンプルを一列に並べ、付箋38の粘着面を下側に向けた姿勢で重り34を持ち上げ、各溶着性ビーズ玩具10に対して上方から付箋38の粘着面を均一な荷重で押し付けて各溶着性ビーズ玩具10を粘着面に粘着させた。
【0027】
次に、
図4に示すように、粘着面が横向きとなるように重り34を横にして緩衝シート32上に置き、重り34を置いた時間を0秒として、各溶着性ビーズ玩具10が粘着面から剥離して緩衝シート32上に落下するまでの秒数を計測した。計測は1分経過後まで行った。まず、実施例の各サンプルについて計測し、次に比較例の各サンプルについて計測した。また、実施例の各サンプル及び比較例の各サンプルについてそれぞれ計10回の計測(n1~n10)を繰り返し行った。下記表1に実施例の各サンプルについての計測結果を示し、下記表2に比較例の各サンプルについての計測結果を示す。
【0028】
【0029】
【0030】
表1に示すように、実施例の各サンプルでは、計10回の各計測結果について、測定開始から1分経過後までに7個~10個(全数)の溶着性ビーズ玩具10が落下した結果となった。一方、表2に示すように、比較例の各サンプルでは、計10回の各計測結果について、測定開始から1分経過後までに3個~6個の溶着性ビーズ玩具10が落下した結果となった。
【0031】
以上の試験結果から、実施例の各サンプルでは、比較例の各サンプルの各サンプルと比べて、測定開始から1分経過後までの溶着性ビーズ玩具の落下数が大きく上回っていることが確認できた。このことから、表面にシボ領域が形成された実施例の各サンプルは、表面にシボ領域が形成されていない比較例の各サンプルの各サンプルと比べて、離型性に優れていることを確認することができた。