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特開2024-103296電力ケーブルの判別方法、電力ケーブルの判別装置、および電力ケーブルの判別システム
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  • 特開-電力ケーブルの判別方法、電力ケーブルの判別装置、および電力ケーブルの判別システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103296
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】電力ケーブルの判別方法、電力ケーブルの判別装置、および電力ケーブルの判別システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/58 20200101AFI20240725BHJP
【FI】
G01R31/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007561
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】横山 大
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲生
(72)【発明者】
【氏名】下口 剛史
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA08
2G014AB33
2G014AC18
(57)【要約】
【課題】装置を小型化できる電力ケーブルの判別方法を提供する。
【解決手段】複数の電力ケーブルが並行して布設された電力ケーブル線路の第一地点において、前記複数の電力ケーブルのうち第一の電力ケーブルに備わる遮蔽層に接続された接地線に第一信号を入力する過程と、前記電力ケーブル線路の第二地点において、前記複数の電力ケーブルの各々から前記第一信号に基づく第二信号を抽出する過程と、前記第二信号の強度に基づいて、前記第二地点にて前記第一の電力ケーブルを判別する過程と、を備える、電力ケーブルの判別方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力ケーブルが並行して布設された電力ケーブル線路の第一地点において、前記複数の電力ケーブルのうち第一の電力ケーブルに備わる遮蔽層に接続された接地線に第一信号を入力する過程と、
前記電力ケーブル線路の第二地点において、前記複数の電力ケーブルの各々から前記第一信号に基づく第二信号を抽出する過程と、
前記第二信号の強度に基づいて、前記第二地点にて前記第一の電力ケーブルを判別する過程と、を備える、
電力ケーブルの判別方法。
【請求項2】
前記第一地点は、前記電力ケーブル線路の端末部または中間接続部である、請求項1に記載の電力ケーブルの判別方法。
【請求項3】
前記第一信号を入力する過程では、複数の周波数の高周波信号を同時に入力する、請求項1または請求項2に記載の電力ケーブルの判別方法。
【請求項4】
前記第一信号の入力および前記第二信号の抽出は、電磁誘導を利用して行う、請求項1または請求項2に記載の電力ケーブルの判別方法。
【請求項5】
複数の電力ケーブルが並行して布設された電力ケーブル線路の第一地点において、前記複数の電力ケーブルのうち第一の電力ケーブルに備わる遮蔽層に接続された接地線に第一信号を入力する送信装置と、
前記電力ケーブル線路の第二地点において、前記複数の電力ケーブルの各々から前記第一信号に基づく第二信号を抽出する受信装置と、
前記第二信号の強度に基づいて、前記第二地点にて前記第一の電力ケーブルを判別する判定装置と、を備える、
電力ケーブルの判別装置。
【請求項6】
前記第一地点は、前記電力ケーブル線路の端末部または中間接続部である、請求項5に記載の電力ケーブルの判別装置。
【請求項7】
前記送信装置は、複数の周波数の高周波信号を同時に入力可能に構成されており、
前記受信装置は、複数の周波数の高周波信号を同時に抽出可能に構成されている、請求項5または請求項6に記載の電力ケーブルの判別装置。
【請求項8】
前記送信装置は、カレントトランスを備える、請求項5または請求項6に記載の電力ケーブルの判別装置。
【請求項9】
前記受信装置は、カレントトランスまたはアンテナを備える、請求項5または請求項6に記載の電力ケーブルの判別装置。
【請求項10】
複数の電力ケーブルが並行して布設された電力ケーブル線路と、
前記電力ケーブル線路の第一地点において、前記複数の電力ケーブルのうち第一の電力ケーブルに備わる遮蔽層に接続された接地線に第一信号を入力する送信装置と、
前記電力ケーブル線路の第二地点において、前記複数の電力ケーブルの各々から前記第一信号に基づく第二信号を抽出する受信装置と、
前記第二信号の強度に基づいて、前記第二地点にて前記第一の電力ケーブルを判別する判定装置と、を備える、
電力ケーブルの判別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルの判別方法、電力ケーブルの判別装置、および電力ケーブルの判別システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数条に布設されたケーブルから特定のケーブルを判別する判別装置および判別方法が開示されている。特許文献1に開示された判別装置は、任意の一の箇所に配置される通電手段と任意の他の箇所に配置される磁界検出手段とを備える。通電手段は、ケーブルの導電体を貫通するソレノイドからなり、ソレノイドの磁界により生じる交流電流を出力して当該導電体に通電する。磁界検出手段は、交流電流により発生する磁界を検出する。特許文献1の技術では、任意の一の箇所において、出力する交流電流の周波数をスイープさせながら導電体に通電し、任意の他の箇所において、周波数がスイープされた交流電流により発生する最大磁界を検出している。複数のケーブルの各々について上記最大磁界を検出し、そのうち最も大きな最大磁界が検出されたケーブルを特定のケーブルとして判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-28989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力ケーブル線路では、任意の時期に特定の区間の電力ケーブルを交換することがある。上記特定の区間の電力ケーブルは切断され、その切断した電力ケーブルに換えて新たな電力ケーブルが布設される。上記特定の区間では、複数の電力ケーブルが近接して管路内に配置されていたり、地中に埋設されていたりする。上記特定の区間において、切断されるべき電力ケーブルを判別する必要があるものの、管路内または地中に埋設されている切断されるべき電力ケーブルを目視にて判別できない。特許文献1の技術を利用すると、切断されるべき電力ケーブルを目視以外の方法で判別できるが、作業者の負担が大きくなり得る。特許文献1の技術では、ケーブルの導電体が貫通するようにソレノイドが配置されるため、装置が大型化し易いからである。
【0005】
本開示は、装置を小型化できる電力ケーブルの判別方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電力ケーブルの判別方法は、複数の電力ケーブルが並行して布設された電力ケーブル線路の第一地点において、前記複数の電力ケーブルのうち第一の電力ケーブルに備わる遮蔽層に接続された接地線に第一信号を入力する過程と、前記電力ケーブル線路の第二地点において、前記複数の電力ケーブルの各々から前記第一信号に基づく第二信号を抽出する過程と、前記第二信号の強度に基づいて、前記第二地点にて前記第一の電力ケーブルを判別する過程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電力ケーブルの判別方法は、装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1の電力ケーブルの判別システムを示す説明図である。
図2図2は、実施形態1の電力ケーブルの判別方法における第二信号を抽出する過程の一例を示す説明図である。
図3図3は、実施形態1の電力ケーブルの判別方法における第一の電力ケーブルを判別する過程を説明するグラフである。
図4図4は、実施形態2の電力ケーブルの判別システムを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の一態様の電力ケーブルの判別方法は、複数の電力ケーブルが並行して布設された電力ケーブル線路の第一地点において、前記複数の電力ケーブルのうち第一の電力ケーブルに備わる遮蔽層に接続された接地線に第一信号を入力する過程と、前記電力ケーブル線路の第二地点において、前記複数の電力ケーブルの各々から前記第一信号に基づく第二信号を抽出する過程と、前記第二信号の強度に基づいて、前記第二地点にて前記第一の電力ケーブルを判別する過程と、を備える。
【0011】
上記(1)の電力ケーブルの判別方法では、第一地点において、第一の電力ケーブルに備わる遮蔽層に接続された接地線に第一信号を入力し、第二地点において、複数の電力ケーブルの各々から第一信号に基づく第二信号を抽出している。第一地点は、複数の電力ケーブルの各々を目視で識別可能な地点である。第二地点は、第一地点から離れた地点であり、複数の電力ケーブルの各々を目視で識別困難な地点である。第一地点において第一の電力ケーブルに第一信号を入力しているため、第二地点において第一の電力ケーブルから抽出される第二信号の強度が最も高くなる。第二信号の強度の絶対値は、信号の周波数によって異なる。特定の周波数帯域において、複数の電力ケーブルの各々の第二信号の強度を比較することで、強度が最も高い電力ケーブルを第一の電力ケーブルとして判別できる。上記(1)の電力ケーブルの判別方法であれば、第一地点から離れた第二地点において電力ケーブルが目視で識別できないような布設状態であっても、第一の電力ケーブルを判別できる。
【0012】
上記(1)の電力ケーブルの判別方法では、接地線に第一信号を入力しているため、小型の送信装置を使って電力ケーブルに第一信号を入力できる。接地線は電力ケーブルに比較して十分に細い。上述した技術では、導体を含む太径の電力ケーブルを囲むことができる大型のソレノイドが必要であったが、上記(1)の電力ケーブルの判別方法では、細径の接地線を囲むことできる小型の送信装置を使用することができる。電力ケーブルの遮蔽層には高電圧が印加されていない。電力ケーブルにおいて、導電性を有する導体部および遮蔽層のうち、遮蔽層を信号の伝送に利用することで、電力ケーブル線路が活線の状態であっても、第一信号の入力および第二信号の抽出を良好に行うことができる。
【0013】
(2)上記(1)の電力ケーブルの判別方法において、前記第一地点は、前記電力ケーブル線路の端末部または中間接続部であってもよい。
【0014】
電力ケーブル線路の端末部および中間接続部の各々は、例えば管路から露出されているため、複数の電力ケーブルのうち第一の電力ケーブルを目視で識別可能である。電力ケーブル線路の端末部および中間接続部の各々では、複数の電力ケーブルの各々に備わる遮蔽層に接地線が接続されている。中間接続部における接地線はボンド線を含む。第一地点が電力ケーブル線路の端末部または中間接続部であれば、第一の電力ケーブルに第一信号を入力し易い。
【0015】
(3)上記(1)または上記(2)の電力ケーブルの判別方法において、前記第一信号を入力する過程では、複数の周波数の高周波信号を同時に入力してもよい。
【0016】
高周波信号は、伝搬する過程でのインピーダンスの変化によって反射する。この反射した信号は、電力ケーブル内でフェージング現象を発生させる。フェージング現象が発生すると、第二地点で抽出される第二信号の強度が本来抽出される値から変化し得る。第一地点において複数の周波数の高周波信号を同時に入力すれば、複数の周波数の第二信号を抽出できる。そのため、フェージング現象によって第二地点で抽出される第二信号の強度が変化して、ある周波数F1で各電力ケーブルから抽出された第二信号の強度の差が小さくても、他の周波数F2で上記強度の差が大きい場合がある。複数の周波数の第二信号を抽出できれば、各周波数と第二信号の強度との関係を得ることができる。上記関係から、上記強度の差が大きい周波数F2において上記強度を比較することで、第二地点において第一の電力ケーブルをより確実に判別できる。第一地点において複数の周波数の高周波信号を同時に入力すれば、周波数をスイープしながら高周波信号を入力する場合に比較して、高周波信号を入力してから第二地点で第一の電力ケーブルを判別するまでの時間を短縮できる。
【0017】
(4)上記(1)から上記(3)のいずれかの電力ケーブルの判別方法において、前記第一信号の入力および前記第二信号の抽出は、電磁誘導を利用して行ってもよい。
【0018】
電磁誘導を利用して第一信号の入力を行えば、接地線に第一信号を入力するためのリード線を接地線に連結する場合に比較して、第一信号の入力を簡易に行える。電磁誘導を利用して第二信号の抽出を行えば、電力ケーブルから遮蔽層を露出させることなく、第二信号の抽出を簡易に行える。
【0019】
(5)本開示の一態様の電力ケーブルの判別装置は、複数の電力ケーブルが並行して布設された電力ケーブル線路の第一地点において、前記複数の電力ケーブルのうち第一の電力ケーブルに備わる遮蔽層に接続された接地線に第一信号を入力する送信装置と、前記電力ケーブル線路の第二地点において、前記複数の電力ケーブルの各々から前記第一信号に基づく第二信号を抽出する受信装置と、前記第二信号の強度に基づいて、前記第二地点にて前記第一の電力ケーブルを判別する判定装置と、を備える。
【0020】
上記(5)の電力ケーブルの判別装置を用いて、上記(1)の電力ケーブルの判別方法を実施することによって、第二地点において第一の電力ケーブルを判別できる。上記(5)の電力ケーブルの判別装置では、導体を含む太径の電力ケーブルではなく、細径の接地線に第一信号を入力しているため、送信装置を小型化できる。電力ケーブルにおいて、導電性を有する導体部および遮蔽層のうち、遮蔽層を信号の伝送に利用することで、電力ケーブル線路が活線の状態であっても、送信装置を第一の電力ケーブルに配置できる。
【0021】
(6)上記(5)の電力ケーブルの判別装置において、前記第一地点は、前記電力ケーブル線路の端末部または中間接続部であってもよい。
【0022】
電力ケーブル線路の端末部および中間接続部の各々は、例えば管路から露出されているため、複数の電力ケーブルのうち第一の電力ケーブルを目視で識別可能である。電力ケーブル線路の端末部および中間接続部の各々では、複数の電力ケーブルの各々に備わる遮蔽層に接地線が接続されている。第一地点が電力ケーブル線路の端末部または中間接続部であれば、送信装置を第一の電力ケーブルに配置し易い。
【0023】
(7)上記(5)または上記(6)の電力ケーブルの判別装置において、前記送信装置は、複数の周波数の高周波信号を同時に入力可能に構成されており、前記受信装置は、複数の周波数の高周波信号を同時に抽出可能に構成されていてもよい。
【0024】
上記(7)の電力ケーブルの判別装置であれば、複数の周波数の第二信号を抽出できる。そのため、ある周波数F1で各電力ケーブルから抽出された第二信号の強度の差が小さくても、他の周波数F2で上記強度の差が大きい場合がある。複数の周波数の第二信号を抽出できれば、各周波数と第二信号の強度との関係を得ることができる。上記関係から、上記強度の差が大きい周波数F2において上記強度を比較することで、第二地点において第一の電力ケーブルをより確実に判別できる。上記(7)の電力ケーブルの判別装置であれば、周波数をスイープしながら高周波信号を入力しつつ抽出する場合に比較して、高周波信号を入力してから第二地点で第一の電力ケーブルを判別するまでの時間を短縮できる。
【0025】
(8)上記(5)から上記(7)のいずれかの電力ケーブルの判別装置において、前記送信装置は、カレントトランスを備えてもよい。
【0026】
カレントトランスを接地線の外周に配置させることで、接地線に第一信号を入力することができる。カレントトランスによって第一信号を入力できれば、第一信号を入力するために接地線を切断したり、接地線の絶縁被覆を除去したりする必要が無く、第一信号の入力作業を短時間で行える。
【0027】
(9)上記(5)から上記(8)のいずれかの電力ケーブルの判別装置において、前記受信装置は、カレントトランスまたはアンテナを備えてもよい。
【0028】
カレントトランスまたはアンテナを各電力ケーブルの外周に配置させることで、各電力ケーブルから第二信号を抽出することができる。カレントトランスまたはアンテナによって第二信号を抽出できれば、第二信号の抽出作業を短時間で行える。
【0029】
(10)本開示の一態様の電力ケーブルの判別システムは、複数の電力ケーブルが並行して布設された電力ケーブル線路と、前記電力ケーブル線路の第一地点において、前記複数の電力ケーブルのうち第一の電力ケーブルに備わる遮蔽層に接続された接地線に第一信号を入力する送信装置と、前記電力ケーブル線路の第二地点において、前記複数の電力ケーブルの各々から前記第一信号に基づく第二信号を抽出する受信装置と、前記第二信号の強度に基づいて、前記第二地点にて前記第一の電力ケーブルを判別する判定装置と、を備える。
【0030】
上記(10)の電力ケーブルの判別システムにおいて、上記(1)の電力ケーブルの判別方法を実施することによって、第二地点において第一の電力ケーブルを判別できる。上記(10)の電力ケーブルの判別システムでは、導体を含む太径の電力ケーブルではなく、細径の接地線に第一信号を入力しているため、送信装置を小型化できる。電力ケーブルにおいて、導電性を有する導体部および遮蔽層のうち、遮蔽層を信号の伝送に利用することで、電力ケーブル線路が活線の状態であっても、送信装置を第一の電力ケーブルに配置できる。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の電力ケーブルの判別方法、電力ケーブルの判別装置、および電力ケーブルの判別システムの具体例を図面に基づいて説明する。以下では、電力ケーブルの判別方法、電力ケーブルの判別装置、および電力ケーブルの判別システムの各々を、単に判別方法、判別装置、および判別システムと呼ぶ。以下、図中の同一符号は同一または相当部分を示す。各図面が示す部材の大きさは、説明を明確にする目的で表現されており、必ずしも実際の寸法を表すものではない。
【0032】
≪実施形態1≫
<概要>
図1は、実施形態1の判別システム10の構成を概略的に示している。判別システム10は、電力ケーブル線路6と判別装置1とを備える。本例の電力ケーブル線路6では、一つの回線50が構成されている。一つの回線50には、複数の電力ケーブル60が並行して布設されている。電力ケーブル線路6は、第一地点71と第二地点72を備える。第一地点71は、複数の電力ケーブル60の各々を目視で識別可能な地点である。第二地点72は、第一地点71から離れた地点であり、複数の電力ケーブル60の各々を目視で識別困難な地点である。複数の電力ケーブル60は、第一の電力ケーブル61を備える。第一の電力ケーブル61は、第二地点72において判別対象となるケーブルである。
【0033】
実施形態1の判別システム10の特徴は、判別装置1にある。判別装置1は、送信装置2と受信装置3と判定装置4とを備える。実施形態1の判別装置1の特徴の一つは、送信装置2が、第一地点71において、複数の電力ケーブル60のうち第一の電力ケーブル61に備わる遮蔽層67(図2)に接続された接地線81に第一信号を入力するように構成されている点にある。受信装置3は、第二地点72において、複数の電力ケーブル60の各々から第一信号に基づく第二信号を抽出する。判定装置4は、第二信号の強度に基づいて、第二地点72にて第一の電力ケーブル61を判別する。
【0034】
実施形態1の判別方法の特徴の一つは、第一地点71において、第一の電力ケーブル61に備わる遮蔽層67に接続された接地線81に第一信号を入力し、第二地点72において、複数の電力ケーブル60の各々から第一信号に基づく第二信号を抽出する点にある。この判別方法では、抽出した第二信号の強度に基づいて、第二地点72にて第一の電力ケーブル61を判別する。
【0035】
<電力ケーブル線路>
電力ケーブル線路6は、複数の電力ケーブル60と端末部91A,91B,91Cと中間接続部92A,92B,92Cとを備える。
【0036】
電力ケーブル線路6では、複数の電力ケーブル60が並行して布設されている。各電力ケーブル60は、図2に示すように、中心から順に、導体63、内部半導電層64、絶縁体65、外部半導電層66、遮蔽層67、およびシース68を備える。通電時、つまり活線状態では、導体63には、高電圧が印加されている。遮蔽層67は、図1に示す端末部91A,91B,91Cまたは中間接続部92A,92B,92Cで接地されている。端末部91A,91B,91Cでは、電力ケーブル60ごとに遮蔽層67が接地線81に接続されることで接地されている。中間接続部92A,92B,92Cでは、電力ケーブル60同士が接地線82に接続されることで接地されている。中間接続部92A,92B,92Cにおける接地線82はボンド線を含んでいない。図1では、ソリッドボンド接地方式を例としているが、クロスボンド接地方式であってもよい。遮蔽層67の電圧は、導体63と比べて低い。
【0037】
端末部91A,91B,91Cは、例えば変電所内において、各電力ケーブル60が地上に現れる部分に設置されている。中間接続部92A,92B,92Cは、例えばマンホール内に配置されている。中間接続部92A,92B,92Cが二つの電力ケーブル60を長手に接続することで、連続する一つの電線路が構成されている。端末部91A,91B,91Cと中間接続部92A,92B,92Cとの間、および隣り合う中間接続部92A,92B,92C間における電力ケーブル60の一部は、例えば図示しない管路内または洞道内に配置されている。上記電力ケーブル60の一部は、地中に直接埋設されていてもよい。
【0038】
端末部91A,91B,91Cおよび中間接続部92A,92B,92Cの各々では、複数の電力ケーブル60の各々を目視で認識可能である。よって、端末部91A,91B,91Cまたは中間接続部92A,92B,92Cが第一地点71となり得る。図示しない管路内または洞道内に配置されている、または地中に直接埋設されている電力ケーブル60は目視で認識困難である。よって、端末部91A,91B,91Cと中間接続部92A,92B,92Cとの間、および隣り合う中間接続部92A,92B,92C間では、複数の電力ケーブル60の各々を目視で識別困難である。洞道内に配置された複数の電力ケーブル60は、目視できるものの、端末部91A,91B,91Cから離れているため、識別困難である。よって、管路内または洞道内に配置された箇所が第二地点72となり得る。
【0039】
<判別装置>
判別装置1は、図1に示すように、送信装置2と受信装置3と判定装置4とを備える。
【0040】
〔送信装置〕
送信装置2は、電力ケーブル線路6の第一地点71において、第一の電力ケーブル61に備わる遮蔽層67(図2)に接続された接地線81に第一信号を入力する。本例の第一地点71は、電力ケーブル線路6の端末部91Aである。端末部91Aでは、第一の電力ケーブル61と図示しない外部機器との接続部分において、遮蔽層67に接地線81が接続されている。送信装置2は、接地線81を第一信号の入力箇所としている。送信装置2から入力された第一信号は、接地線81を通って遮蔽層67を流れる。端末部91B,91Cでも、各電力ケーブル60と図示しない外部機器との接続部分において、遮蔽層67に接地線81が接続されている。第一の電力ケーブル61以外の電力ケーブル60では、接地線81に第一信号は入力されない。
【0041】
送信装置2は、カレントトランス21とハイパスフィルタ22と信号発生器23とを備える。
【0042】
カレントトランス21は、リングコアと巻線とを備える。リングコアは、例えば樋状の分割片を組み合わせて筒状体とした構成を有する。リングコアに巻線が巻かれている。巻線は信号発生器23に接続されている。巻線には、信号発生器23から送信された信号に応じた電流が流れる。カレントトランス21は、例えば接地線81がリングコアを貫通するように配置される。巻線に電流が流れると、電磁誘導により、接地線81に誘導電流が流れる。この誘導電流によって、第一信号が接地線81に入力される。
【0043】
ハイパスフィルタ22は、カレントトランス21と信号発生器23との間に接続されている。ハイパスフィルタ22は、設定した周波数より低い周波数帯域の信号を減衰させ、設定した周波数より高い周波数帯域の信号だけ通過させる。ハイパスフィルタ22を備える送信装置2であれば、低周波信号がカットされた高周波信号を接地線81に入力することができる。
【0044】
信号発生器23は、所定の周波数の信号を入力可能に構成されている。信号発生器23は、例えば複数の周波数の高周波信号を同時に入力可能に構成されている。高周波信号は、伝搬する過程でのインピーダンスの変化によって反射する。この反射した信号は、電力ケーブル60内でフェージング現象を発生させる。フェージング現象が発生すると、後述する受信装置3で抽出される第二信号の強度が本来抽出される値から変化し得る。送信装置2で複数の周波数の高周波信号を同時に入力できれば、受信装置3で複数の周波数の第二信号を抽出できる。複数の周波数の第二信号を抽出できれば、各周波数と第二信号の強度との関係を得ることができる。この関係については、後述する受信装置3で説明する。送信装置2で複数の周波数の高周波信号を同時に入力できれば、周波数をスイープしながら高周波信号を入力する場合に比較して、送信装置2で高周波信号を入力してから受信装置3で信号を抽出するまでの時間を短縮できる。信号発生器23は、周波数をスイープしながら高周波信号を入力するように構成されていてもよい。信号発生器23は、特定の周波数の高周波信号のみを入力するように構成されていてもよい。
【0045】
信号の周波数が高いと、フェージング現象による信号の強弱が発生する間隔が短くなるものの、信号の減衰が大きくなる。信号を長距離伝送するには、kHzのオーダーの帯域がよい。信号の周波数帯域は、例えば150kHz以上450kHz以下である。この周波数帯域であれば、周辺の無線からの干渉を受け難い。信号の周波数帯域は、MHzのオーダーであってもよい。
【0046】
信号発生器23は、PLC装置と呼ばれる電力線搬送通信装置であってもよい。PLC装置は、生成した信号を変調する。変調は、例えば直交周波数分割多重(OFDM)方式に準じて行われる。OFDM方式では、信号対雑音比が0dBに近い状態においても信号を良好に伝送することができる。PLC装置であれば、変調後の信号を遮蔽層67(図2)に入力できる。送信装置2には、固有のIDが付与されている。PLC装置であれば、送信装置2のIDを示す情報を含む信号も遮蔽層67に入力できる。
【0047】
第一地点71は、電力ケーブル線路6の中間接続部92Aであってもよい。中間接続部92Aでは、二つの電力ケーブル60の導体63(図2)同士の接続部分において、遮蔽層67に接地線82が接続されている。送信装置2は、接地線82を第一信号の入力箇所としてもよい。図1では、中間接続部92Aにおける送信装置2の配置箇所の一例を二点鎖線の四角で示している。中間接続部92A,92B,92Cでは、電力ケーブル60同士が接地線82で接続されている。中間接続部92Aにおいて第一の電力ケーブル61の遮蔽層67に接続された接地線82に第一信号を入力すると、接地線82でつながっている他の電力ケーブル60の遮蔽層67にも信号が流れる。他の電力ケーブル60の遮蔽層67に流れる信号は、第一の電力ケーブル61の遮蔽層67に流れる信号よりも小さい強度であり、かつ流れる方向が逆になる。本例では、三つの電力ケーブル60の一つが第一の電力ケーブル61であり、他の二つの電力ケーブル60には、第一の電力ケーブル61に流れる信号の約1/2の強度の信号が逆向きに流れる。その結果、接地線82に第一信号を入力したとしても、第一の電力ケーブル61に流れる信号の強度が最も大きくなり、後述する受信装置3において第一の電力ケーブル61を判定することができる。
【0048】
〔受信装置〕
受信装置3は、電力ケーブル線路6の第二地点72において、複数の電力ケーブル60の各々から第一信号に基づく第二信号を抽出する。複数の電力ケーブル60は、第一の電力ケーブル61、および第一の電力ケーブル61に並行して布設された電力ケーブル60を含む。複数の電力ケーブル60は、例えば第一の電力ケーブル61を含む全ての電力ケーブル60である。第二信号は、第一の電力ケーブル61においては、受信する予定であった信号、いわば正規の信号である。第二信号は、第一の電力ケーブル61以外の電力ケーブル60においては、第一の電力ケーブル61から漏洩した信号である。受信装置3は、複数の電力ケーブル60の第二信号を順に抽出する。
【0049】
受信装置3は、アンテナ31とアンプ32とアナライザ33とを備える。
【0050】
アンテナ31は、所定の周波数帯域の第二信号を抽出できるいかなるアンテナでもよい。アンテナ31は、例えばループアンテナである。アンテナ31は、各電力ケーブル60の遮蔽層67(図2)に流れる第一信号によって発生する漏洩した電磁界を検出している。電力ケーブル60の外部に漏洩した電磁界は、図2の破線で示すように、電力ケーブル60を周回するように発生する。アンテナ31は、図2に示すように電力ケーブル60に対して水平に配置するとよい。漏洩した電磁界の強度は、電力ケーブル60の近くで最も大きく、電力ケーブル60から離れるにつれて小さくなる。アンテナ31は、電力ケーブル60に接触させて配置する、または電力ケーブル60の近くに配置するとよい。アンテナ31は、例えば、電力ケーブル60から30cm以内の位置、20cm以内の位置、または10cm以内の位置に配置させてもよい。
【0051】
アンプ32は、アンテナ31で検出した信号を増幅している。アンプ32はなくてもよい。
【0052】
アナライザ33は、アンテナ31で検出した信号を計測する。アナライザ33は、例えば複数の周波数の高周波信号を同時に抽出可能に構成されている。受信装置3で複数の周波数の高周波信号を同時に抽出できれば、送信装置2で高周波信号を入力してから受信装置3で信号を抽出するまでの時間を短縮できる。抽出する第二信号の周波数帯域は、第一信号の周波数帯域に対応させる。送信装置2で複数の周波数の高周波信号を同時に入力している場合、抽出する第二信号の周波数帯域は、周辺の無線からの干渉を受け難い領域を選択するとよい。
【0053】
アナライザ33は、例えばスペクトラムアナライザである。スペクトラムアナライザであれば、図3に示すグラフを得ることができる。図3に示すグラフは、横軸が周波数であり、縦軸が第二信号の強度である。図3では、分かり易いように、第一の電力ケーブル61から抽出した第二信号のグラフと、第一の電力ケーブル61とは別の電力ケーブル60の一つから抽出した第二信号のグラフとを一つのグラフで示している。第一の電力ケーブル61から抽出した第二信号のグラフを太実線で示しており、第一の電力ケーブル61とは別の電力ケーブル60の一つから抽出した第二信号のグラフを細実線で示している。各電力ケーブル60からバックグランドノイズも検出されるが、図3では省略している。
【0054】
図3に示すように、第一の電力ケーブル61から抽出した第二信号の強度は、第一の電力ケーブル61とは別の電力ケーブル60から抽出した第二信号の強度よりも大きい。第一の電力ケーブル61から抽出した第二信号の強度が大きい理由は、第一地点71で第一の電力ケーブル61の遮蔽層67(図2)に接続された接地線81に第一信号を入力したからである。受信装置3では、例えば全ての電力ケーブル60から第二信号を抽出する。
【0055】
上述したように、フェージング現象が発生すると、受信装置3で抽出される第二信号の強度が本来抽出される値から変化し得る。図3では、第一の電力ケーブル61において、ある周波数F1近傍での第二信号の強度を細かい破線で囲み、他の周波数F2近傍での第二信号の強度を粗い破線で囲んでいる。細かい破線の囲みが図3の左に位置し、粗い破線の囲みが図3の右に位置している。周波数F1では、第一の電力ケーブル61の第二信号の強度が小さく、他の電力ケーブル60の第二信号の強度との差が小さい。周波数F2では、第一の電力ケーブル61の強度が大きく、他の電力ケーブル60の第二信号の強度との差が大きい。送信装置2で複数の周波数の高周波信号を同時に入力でき、かつ受信装置3で複数の周波数の第二信号を同時に抽出できれば、第二信号の強度の差が大きい複数の周波数が存在し得るため、第一の電力ケーブルをより確実に判別できる。
【0056】
上述したように、第二地点72において電力ケーブル60の外部に漏洩した電磁界の強度は、当該電力ケーブル60の近くで最も大きく、当該電力ケーブル60から離れるにつれて小さくなる。各電力ケーブル60とアンテナ31との距離が離れていたとしても、各電力ケーブル60からアンテナ31までの距離が同じであれば、各電力ケーブル60の外部に生じる電磁界の強度が異なる。そのため、各電力ケーブル60から抽出した第二信号の強度を比較することはできる。
【0057】
受信装置3は、アンテナ31の代わりにカレントトランスを備えていてもよい。カレントトランスは、送信装置2のカレントトランス21と同様の構成を有する。受信装置3のカレントトランスは、例えば接地線82または電力ケーブル60がリングコアを貫通するように配置される。接地線82にカレントトランスを配置させると、電力ケーブル60にカレントトランスを配置させる場合に比較して、カレントトランスを小型化できる。
【0058】
受信装置3は、PLC装置と呼ばれる電力線搬送通信装置であってもよい。PLC装置は、抽出した信号を復調する。送信装置2が第一信号に加えて送信装置2のIDを示す情報を含む信号を入力した場合、受信装置3は、抽出した信号を復調し、復調された結果に含まれるID情報を計測結果として表示すればよい。
【0059】
〔判定装置〕
判定装置4は、受信装置3で計測された第二信号の強度に基づいて、第二地点72にて第一の電力ケーブル61を判別する。判定装置4では、全ての電力ケーブル60から抽出した第二信号の強度を比較し、第二信号の強度が最も高い電力ケーブル60を第一の電力ケーブル61であると判別する。判定結果は、例えば複数の電力ケーブル60の測定した順序と共にディスプレイに表示される。作業者は、ディスプレイを確認すれば第二地点72にて第一の電力ケーブル61を把握することができる。
【0060】
<判別方法>
判別方法は、第一信号を入力する過程、第二信号を入力する過程、および判別する過程を備える。判別方法は、上述した判別装置1を用いて実施することができる。
【0061】
〔第一信号を入力する過程〕
第一信号を入力する過程では、図1に示す電力ケーブル線路6の第一地点71において、複数の電力ケーブル60のうち第一の電力ケーブル61に備わる遮蔽層67(図2)に接続された接地線81に第一信号を入力する。第一地点71は、電力ケーブル線路6の端末部91Aまたは中間接続部92Aである。第一信号を入力する過程では、複数の周波数の高周波信号を同時に入力するとよい。第一信号の入力は、上述した送信装置2によって行うことができる。
【0062】
〔第二信号を抽出する過程〕
第二信号を抽出する過程では、図1に示す電力ケーブル線路6の第二地点72において、複数の電力ケーブル60の各々から第一信号に基づく第二信号を抽出する。第二信号を抽出する過程では、複数の周波数の高周波信号を同時に抽出するとよい。第二信号の抽出は、上述した受信装置3によって行うことができる。複数の電力ケーブル60から選択した一つの電力ケーブル60に受信装置3を配置して第二信号を抽出することを複数の電力ケーブル60の数だけ繰り返し行えばよい。複数の電力ケーブル60の数だけ繰り返し第二信号を抽出すると、各電力ケーブル60に対応した第二信号の強度が得られる。例えば、図3に示すような周波数と第二信号の強度とのグラフが得られる。本例では、三つの電力ケーブル60に対して順に受信装置3を配置して第二信号を抽出することで、三つのグラフが得られる。
【0063】
〔判別する過程〕
判別する過程では、第二信号を抽出する過程で得られた第二信号の強度に基づいて、第二地点72にて第一の電力ケーブル61を判別する。判別する過程では、全ての電力ケーブル60から抽出した第二信号の強度を比較し、第二信号の強度が最も高い電力ケーブル60を第一の電力ケーブル61であると判別する。判別は、上述した判定装置4によって行うことができる。
【0064】
≪実施形態2≫
図4は、実施形態2の判別システム10の構成を概略的に示している。本例の電力ケーブル線路6では、二つの回線51,52が構成されている。各回線51,52には、複数の電力ケーブル60が並行して布設されている。実施形態1と実施形態2とでは、回線の数が異なる。回線の数が複数になったとしても、実施形態1で説明した判別システム10、判別装置1、および判別方法によって、第二地点72にて第一の電力ケーブル61を判別することができる。以下では、実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0065】
二つの回線51,52である場合でも、第一地点71において、判別対象である第一の電力ケーブル61の遮蔽層67(図2)に接続された接地線81に第一信号を入力する。二つの回線51,52では、中間接続部92A,92B,92Cにおいて各電力ケーブル60が接地線82で接続されるため、ある回線51で入力した第一信号が別の回線52にも流れる。第一信号が別の回線52に流れるものの、ある回線51から別の回線52に分流する割合は小さい。そのため、二つの回線51,52である場合でも、第一の電力ケーブル61に流れる信号の強度が最も大きくなる。
【0066】
本例では、六つの電力ケーブル60に対して順に受信装置3を配置して第二信号を抽出する。本例では、図3に示すような周波数と第二信号の強度とのグラフが六つ得られる。二つの回線51,52である場合でも、全ての電力ケーブル60から抽出した第二信号の強度を比較することで、第二信号の強度が最も高い電力ケーブル60を第一の電力ケーブル61であると判別することができる。
【0067】
二つの回線51,52である場合、送信装置2は、第一信号に加えて送信装置2のIDを示す情報を含む信号を入力するとよい。送信装置2のIDとしてどの回線であるかの情報を入力すれば、第二地点72において回線をも判別できるため、第一の電力ケーブル61の判別の精度を高めることができる。
【0068】
実施形態1および実施形態2のいずれの形態であっても、任意の時期に特定の区間の第一の電力ケーブル61を交換するために、第一地点71から離れた第二地点72において当該第一の電力ケーブル61を適切に判別することができる。本形態であれば、電力ケーブル線路6が活線の状態であっても、第二地点72において第一の電力ケーブル61を判別することができる。
【0069】
本形態の判別装置1では、小型の送信装置2を利用するため、送信装置2の搬送時および判別作業時における作業者の負担を軽減できる。本形態の判別装置1では、任意の時期に送信装置2を第一地点71に配置し、受信装置3を第二地点72に配置すれば、第一の電力ケーブル61を判別でき、送信装置2および受信装置3を常時配置しておく必要がない。送信装置2および受信装置3を常時配置しておき、第一の電力ケーブル61を特定したいときに、送信装置2で第一信号を入力し、受信装置3で第二信号を抽出してもよい。
【0070】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 判別装置
10 判別システム
2 送信装置
21 カレントトランス
22 ハイパスフィルタ
23 信号発生器
3 受信装置
31 アンテナ
32 アンプ
33 アナライザ
4 判定装置
50,51,52 回線
6 電力ケーブル線路
60 電力ケーブル
61 第一の電力ケーブル
63 導体
64 内部半導電層
65 絶縁体
66 外部半導電層
67 遮蔽層
68 シース
71 第一地点
72 第二地点
81,82 接地線
91A,91B,91C 端末部
92A,92B,92C 中間接続部
図1
図2
図3
図4