(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103299
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】熱交換器および車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20240725BHJP
F28F 9/22 20060101ALI20240725BHJP
F28F 27/02 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B60H1/22 651B
B60H1/22 651C
F28F9/22
F28F27/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007564
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100166833
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 直子
(72)【発明者】
【氏名】金子 智
【テーマコード(参考)】
3L065
3L211
【Fターム(参考)】
3L065DA17
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA02
3L211BA03
3L211BA52
3L211CA16
3L211CA19
3L211DA28
(57)【要約】
【課題】 部品点数を削減し、それに伴うコストの削減、また省スペース化が可能であるとともに、水回路装置に用いた場合の即暖即冷性をより良好にできる熱交換器、およびそれを備えた車両用空調装置を提供する。
【解決手段】 熱交換器10は、内部に第1熱媒体m1が流れる複数の熱交換コア11と、複数の収容室30を有し、内部に第2熱媒体m2が流れるケース3と、を備え、複数の収容室30のそれぞれに複数の熱交換コア11を収容したものであり、ケース3には第2熱媒体m2の経路の切替部150が設けられ、切替部150は、複数の収容室30のうち少なくとも一つの収容室30への複数の流入経路および/または該収容室30からの複数の流出経路のうち一の経路を選択的に切り替え可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に第1熱媒体が流れる複数の熱交換コアと、
複数の収容室を有し、内部に第2熱媒体が流れるケースと、を備え、
前記複数の収容室のそれぞれに前記複数の熱交換コアをそれぞれ収容し、
前記ケースに前記第2熱媒体の経路の切替部を設け、
前記切替部は、前記複数の収容室のうち少なくとも一つの収容室への複数の流入経路および/または該収容室からの複数の流出経路のうち一の経路を選択的に切り替え可能に構成した、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記切替部は、前記ケースと一体的に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記切替部は、前記ケースに内蔵される、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱交換器を備えた車両用空調装置であって、
圧縮機と、前記熱交換器と、膨張機構とを含み前記第1熱媒体が循環する冷媒回路と、
車室内へ供給される空気と熱交換する空調用熱交換部を含み前記熱交換器で前記第1熱媒体と熱交換する前記第2熱媒体が循環する熱媒体回路と、を備え、
前記切替部は前記熱媒体回路における運転起動時の前記第2熱媒体の循環経路(以下、「起動時循環経路」という。)と定常運転時の該第2熱媒体の循環経路(以下、「定常時循環経路」という。)とを切り替え可能に構成した、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
前記起動時循環経路は、前記定常時循環経路よりも経路長が短い、
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器および車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内側を冷媒が流れるように構成された内部部材と、内部部材を収容する容器であって、内部部材の周囲の空間を冷却水が流れるように構成されたケースと、を備える熱交換器(冷媒-水熱交換器)が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の熱交換器は、車両に搭載されるものであり、当該車両を循環する冷媒と冷却水との間で熱交換を行うための熱交換器として構成され、一つの直方体のケースに一つの内部部材が収容されている。
【0003】
また従来より、冷媒回路と、冷媒-水熱交換器を含む水回路を有し、車室内の冷暖房に利用される車両用液体循環システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の技術では、暖房起動時および冷房起動時に車室内が快適になるまでの時間を短縮することを目的として、暖房運転起動時に、バイパス弁を開として温水の循環のみを行い、水回路の熱交換器の一部に水を流入させないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-85340号公報
【特許文献2】特許2012-11928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば車両用空調装置などにおいては空調回路上、第1熱媒体(例えば、冷媒)と第2熱媒体(例えば、冷却水など)を熱交換する箇所は複数存在する。このため、特許文献1に記載のような熱交換器をそれぞれ必要な複数箇所に配置すると、部品点数(特に、ケース)の増加に伴うコストアップ、およびスペースの増加などの問題が生じる。
【0006】
また、例えば特許文献2のように、車両用空調装置の運転起動時においては、冷却水が熱交換器の一部に流れないよう、ショートサイクル化する構成では、運転起動時と定常運転時の冷却水の循環経路を切替可能とするため、配管の引き回し、すなわち回路構成が複雑化し、これによっても車両用空調装置としての小型化、省スペース化が進まない問題がある。更に、このような場合、冷媒水熱交換器と水回路モジュール(水回路装置の循環経路の一部を構成する複数の配管と、当該複数の配管の切替部が一体化されたモジュール)とは離れた場所に設置される場合が多い。両者が離れた場所に設置されると、冷媒水熱交換器水回路モジュール間における冷却水の経路(配管)が長くなり、冷却水の封入量が多くなる。冷却水の封入量が多いと即暖即冷性としては悪化傾向となるため、総合的には即暖即冷性の更なる向上には限界があった。
【0007】
そこで本発明は、部品点数を削減し、それに伴うコストの削減、また省スペース化が可能であるとともに、水回路装置に用いた場合の即暖即冷性をより良好にできる熱交換器、およびそれを備えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内部に第1熱媒体が流れる複数の熱交換コアと、複数の収容室を有し、内部に第2熱媒体が流れるケースと、を備え、前記複数の収容室のそれぞれに前記複数の熱交換コアを収容した熱交換器であって、前記ケースには前記第2熱媒体の経路の切替部が設けられ、前記切替部は、前記複数の収容室のうち少なくとも一つの収容室への複数の流入経路および/または該収容室からの複数の流出経路のうち一の経路を選択的に切り替え可能である、ことを特徴とする熱交換器に係るものである。
【0009】
また、本発明は、上記の熱交換器を備えた車両用空調装置であって、圧縮機と、前記熱交換器と、膨張機構とを備えて前記第1熱媒体が循環する冷媒回路と、車室内へ供給される空気と熱交換する空調用熱交換部を含み、前記熱交換器で前記第1熱媒体と熱交換する前記第2熱媒体が循環する熱媒体回路と、を備え、 前記切替部は前記熱媒体回路における運転起動時の前記第2熱媒体の循環経路(以下、「起動時循環経路」という。)と定常運転時の該第2熱媒体の循環経路(以下、「定常時循環経路」という。)とを切り替え可能である、ことを特徴とする車両用空調装置に係るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、部品点数を削減し、それに伴うコストの削減、また省スペース化が可能であるとともに、水回路装置に用いた場合の即暖即冷性をより良好にできる熱交換器、およびそれを備えた車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の概要を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る熱交換器を模式的に示す平面図である。
【
図5】本実施形態に係る熱交換器の分解斜視図である。
【
図6】本実施形態に係る熱交換器の一部を示す平面図である。
【
図7】本実施形態に係る熱交換器の他の例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。また、各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、各図において、部材の大きさ、形状、厚み等を適宜誇張して表現する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る熱交換器10を備える車両用空調装置100の主要な構成の一例を示す概略模式図である。ここで、
図1に示す車両用空調装置100は、本実施形態を説明するための一例に過ぎず、本発明の熱交換器10を含む車両用空調装置100は
図1の構成に限定されるものではない。
【0014】
本発明の熱交換器10は、第1熱媒体m1と第2熱媒体m2を熱交換する様々な装置に適用可能であるが、その一例として、車両用空調装置100に用いることができる。第1熱媒体m1は例えば冷媒(例えば、R134aやR1234yf等のフロン系冷媒、CO2やR290等の自然系冷媒など)であり、第2熱媒体m2は、第1熱媒体m1とは異なる熱媒体(例えば、冷却水(LCCや水)、不凍液や冷却油など)である。なお、本実施形態では、冷媒とは、ヒートポンプ(圧縮・凝縮・膨張・蒸発)における状態変化を伴う冷媒回路Rの循環媒体をいう。一方、第2熱媒体m2は、例えば内燃機関やラジエータなどを含む熱媒体回路における循環媒体であって、冷媒のような状態変化を伴わずに熱の吸収と放熱を行う媒体をいうものとする。以下の説明において「冷媒」と称する構成は第1熱媒体m1に対応し、単に「熱媒体」と称する構成は第2熱媒体m2に対応する。
【0015】
本実施形態の車両用空調装置100は、内燃機関のみを動力とする車両に搭載されてもよいが、内燃機関のみを動力とする車両に比べて内燃機関の廃熱のみでは十分な熱量確保が難しいHEV(Hybrid Electric Vehicle)や、内燃機関の廃熱による暖房ができないEV(Electric Vehicle)等の車両に好適に用いられる。HEVやEVのような車両は、バッテリ(例えば、リチウム電池)が搭載され、外部電源からバッテリに充電された電力を、走行用のモータを含むモータユニットに供給することで駆動し、走行する。車両用空調装置100も、バッテリから供給される電力によって駆動する。
【0016】
<全体構成>
図1に示すように第1本実施形態に係る車両用空調装置100は例えば、冷媒(第1熱媒体)m1が循環する冷媒回路Rと、熱媒体(第2熱媒体)m2が循環する第1熱媒体回路5と、熱媒体(第2熱媒体)m2が循環する第2熱媒体回路6を含み、冷媒回路Rを用いたヒートポンプ運転を行うことにより車室内の空調を行う。
【0017】
第1熱媒体回路5は例えば、冷媒回路Rを流れる高温の冷媒m1と熱交換を行う熱媒体m2が循環する高温側の熱媒体回路である。第2熱媒体回路6は例えば、冷媒回路Rを流れる低温の冷媒m1と熱交換を行う熱媒体m2が循環する低温側の熱媒体回路である。本実施形態では説明の便宜上、第1熱媒体回路5を高温側熱媒体回路5と称し、第2熱媒体回路6を低温側熱媒体回路6と称する。
図1の例では高温側熱媒体回路5と低温側熱媒体回路6は配管(熱媒体配管)71でつながれているため、流れる熱媒体m2は同種となる。しかしながらこれに限らず、高温側熱媒体回路5と低温側熱媒体回路6は配管71でつながれていない独立回路であってもよく、その場合、それぞれの熱媒体回路に流れる熱媒体m2は異種であってもよい。
【0018】
<冷媒回路>
冷媒回路Rは、圧縮機1と、熱交換器10と、膨張機構(減圧装置)4などが配管(冷媒配管)70により接続されて構成されている。圧縮機1は、冷媒回路Rにおける上流側から冷媒m1を吸入して圧縮し、冷媒m1を高温高圧のガスとして下流側に向けて吐出する。圧縮機1の形式は特に限定されるものではないが、例えばピストン式やスクロール式の電動コンプレッサが採用される。図示は省略するが、冷媒回路Rにおいて圧縮機1の上流側には、冷媒m1からの液分離を行うアキュムレータが設けられている。冷媒回路Rは、圧縮機1によって高温高圧のガスとなった冷媒m1を第1熱交換器10Aに通過させて冷媒m1から放熱させ、冷媒m1を冷却する。第1熱交換器10Aを通過した冷媒m1を、膨張機構4で減圧させ、第2熱交換器10Bを通過させて吸熱させる。そして低圧となっている冷媒m1を再び圧縮機1で圧縮する。この循環を繰り返す。
【0019】
<熱交換器>
本実施形態の熱交換器10は、第1熱交換器10Aと第2熱交換器10Bを含む。第1熱交換器10Aは例えば高温側熱媒体回路5を流れる熱媒体m2と、冷媒回路Rを流れる冷媒m1の間で熱交換を行う。第2熱交換器10Bは例えば低温側熱媒体回路6を流れる熱媒体m2と、冷媒回路Rを流れる冷媒m1との間で熱交換を行う。
【0020】
<第1熱交換器>
第1熱交換器10Aは、冷媒流路CAと熱媒体流路WAを有する冷媒-熱媒体熱交換器であり、冷媒流路CAが冷媒回路Rに接続し、熱媒体流路WAが高温側熱媒体回路5に接続する。この例では第1熱交換器10Aの冷媒流路CAは、冷媒回路Rの一部を構成し、冷媒回路Rにおいて冷媒m1の放熱器(凝縮器)として機能する。また第1熱交換器10Aの熱媒体流路WAは高温側熱媒体回路5の一部を構成し、高温側熱媒体回路5において熱媒体m2の吸熱器として機能する。
【0021】
<第2熱交換器>
第2熱交換器10Bは、冷媒流路CBと熱媒体流路WBを有する冷媒-熱媒体熱交換器であり、冷媒流路CBが冷媒回路Rに接続し、熱媒体流路WBが低温側熱媒体回路6に接続する。第2熱交換器10Bの冷媒流路CBは、冷媒回路Rの一部を構成し、冷媒回路Rにおいて冷媒m1の吸熱器(蒸発器)として機能する。また第2熱交換器10Bの熱媒体流路WBは低温側熱媒体回路6の一部を構成し、低温側熱媒体回路6において熱媒体m2の放熱器として機能する。
【0022】
<膨張機構>
膨張機構4は、膨張弁やキャピラリチューブ等によって構成され、第1熱交換器10Aを通過した高圧の冷媒m1を減圧、膨張させて低圧の冷媒m1とする。
【0023】
<第1熱媒体回路>
第1熱媒体回路(高温側熱媒体回路)5は、例えば冷媒回路Rの冷媒m1と熱交換が可能な熱媒体m2が、室内熱交換器(HVAC(Heating Ventilation and Air-Conditioning)ユニットの放熱器(ヒータコア)8など)を経由して循環する回路であり、例えば、循環ポンプ51,第1熱交換器10A、ヒータコア8などが配管(熱媒体配管)71により接続される。ヒータコア8は、車両に設けられたHVAC(Heating Ventilation and Air-Conditioning)ユニット80と呼ばれる装置内に配置される。
【0024】
<HVACユニット>
HVACユニット80は、一端側から外気や内気を導入し、他端側から車室内へ空気を供給する空気流通路89によって形成されている。HVACユニット80の内部には、室内送風機87と、車室内へ供給される空気と熱交換する空調用熱交換部8,9と、エアミックスダンパ88が設けられている。空調用熱交換部8は例えば、ヒータコア8であり、空調用熱交換部9は例えば、吸熱器9である。吸熱器9の空気上流側における空気流通路89には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されている(
図1では吸込口85として代表して示す)。吸込口85には吸込切換ダンパ86が設けられている。吸込切換ダンパ86により、車室内の空気である内気(内気循環)と、車室外の空気である外気(外気導入)とを適宜切り換えて吸込口85から空気流通路89内に導入する。吸込切換ダンパ86の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路89に送給するための室内送風機87が設けられている。
【0025】
室内送風機87は、HVACユニット80の一端側に設けられており、駆動されるときに、外気又は内気を吸引し、他端側へと吐出する。吸熱器9は、室内送風機87よりも下流側に設けられている。室内送風機87から吹き出された空気は、全て吸熱器9を通過する。吸熱器9の下流では、空気流通路89は二つの流路89A、89Bに分流可能となっている。二つの流路89Aと流路89Bとは下流側が合流しており、一方の流路89Aの途中にヒータコア8が配置される。
【0026】
エアミックスダンパ88は、吸熱器9下流の流路89Aを開放して流路89Bを閉鎖する位置と、流路89Aを閉鎖して流路89Bを開放する位置と、の間で回動可能である。エアミックスダンパ88が流路89Aを開放して流路89Bを閉鎖する位置にあるときには、吸熱器9を通過した空気は全て流路89Aを通過する。エアミックスダンパ88が流路89Aを閉鎖して流路89Bを開放する位置にあるときには、吸熱器9を通過した空気は全て流路89Aを迂回する。エアミックスダンパ88が流路89Aと流路89Bの双方を開放する位置にあるときには、吸熱器9を通過した空気のうち、一部が流路89Aを通過し、残りが流路89Aを迂回し、HVACユニット80の下流側にて、流路89Aを通過した空気と、流路89Aを迂回した空気とが混合される。
【0027】
<第2熱媒体回路>
第2熱媒体回路(低温側熱媒体回路)6は、冷媒回路Rの冷媒m1と熱交換可能な熱媒体m2が例えば、不図示の温調機器(例えば、バッテリーやモーターなど)に設けた熱交換部を経由して循環する回路であり、例えば、循環ポンプ61,第2熱交換器10B、室内熱交換器(HVACユニットの吸熱器(クーラコア))9などが配管(熱媒体配管)71により接続される。吸熱器9は、HVACユニット80内に配置される。
【0028】
<外部(室外)熱交換部>
車両用空調装置100は、外部(室外)熱交換部7となるラジエータ、および室外送風機90を有する。外部(室外)熱交換部7は、配管71により第1熱媒体回路5、および第2熱媒回路6と接続する。外部(室外)熱交換部7は、例えば、冷房時などにおいては第1熱媒体回路5の一部として機能し、暖房時などにおいては第2熱媒体回路6の一部として機能する。
【0029】
<第2熱媒体の循環経路>
本実施形態では、複数の配管71と複数の分岐部b(例えば、分岐部b1~b10)により、第2熱媒体m2の循環経路が複数構成される。以下、これら複数の循環経路については、複数の分岐部b(b1~b10)と、分岐部b間の通路(流路)r(r1~r19)として説明するが、通路rは分岐部bを介して接続される複数の配管71に対応しており、配管r1~r19と読み替えることもできる。また後に詳述するが、複数の分岐部bの少なくとも一部は、切替部150により構成される。切替部150は、機械式または電磁式流路切替弁(二方弁、三方弁、四方弁など)または機械式または電磁式流量制御弁を含んで構成される。
【0030】
まず、第1熱媒体回路5側では、第1熱交換器10Aの出口に通路r1の一端が接続すし、通路r1の他端が分岐部b1に接続する。通路r2は一端が分岐部b1に接続し、他端がヒータコア8の入口に接続する。通路r3は一端がヒータコア8の出口に接続し、他端が分岐部b5に接続する。通路r9は一端が分岐部b1に接続し、他端が分岐部b5に接続する。通路r4は一端が分岐部b5に接続し、他端が分岐部b6に接続する。通路r10は一端が分岐部b2に接続し、他端が分岐部b6に接続する。通路r8は一端が分岐部b2に接続し、他端が第1熱交換器10Aの入口に接続する。またこの例では通路r8の途中に、循環ポンプ51が接続する。
【0031】
第2熱媒体回路6側では、第2熱交換器10Bの出口に通路r11の一端が接続し、他端が分岐部b4に接続する。通路r12は一端が分岐部b4に接続し、他端が吸熱器9の入口に接続する。通路r13は一端が吸熱器9の出口に接続し、他端が分岐部b10に接続する。通路r18は一端が分岐部b10に接続し、他端が分岐部b4に接続する。通路r14は一端が分岐部b10に接続し、他端が分岐部b9に接続する。通路r19は、一端が分岐部b9に接続し、他端が分岐部b3に接続する。通路r17は、一端が分岐部b3に接続し、他端が第2熱交換器10Bの入口に接続する。またこの例では通路r17の途中に、循環ポンプ61が接続する。
【0032】
外部熱交換部7の周辺では、通路r5は一端が分岐部b6に接続し、他端が分岐部b7に接続する。通路r6は途中に外部熱交換部7が接続する経路であり、一端が分岐部b7に接続し、他端が分岐部b8に接続する。通路r7は、一端が分岐部b8に接続し、他端が分岐部b2に接続する。通路r15は一端が分岐部b9に接続し、他端が分岐部b8に接続する。通路r16は一端が分岐部b7に接続し、他端が分岐部b3に接続する。
【0033】
図1を参照して、第2熱媒体m2の循環経路の一例について説明する。夏季の冷房時、あるいは冬季の暖房時などにおいて第2熱媒体m2の温度(以下、「熱媒体温度」という。)が空調要求を満たしていない場合、車室内が目標温度に到達するまでに時間がかかる。そこで本実施形態の車両用空調装置100は、熱媒体温度が空調要求を満たさない場合は、室内熱交換器(HVACユニット80のヒータコア(放熱器)8あるいはクーラコア(吸熱器)9)を循環させない(バイパスする)経路で第2熱媒体m2を循環させる。熱媒体温度が空調要求を満たさない場合の空調運転(冷房運転または暖房運転)のモードを起動時モードといい、熱媒体温度が空調要求を満たしている場合の空調運転(冷房運転または暖房運転)のモードを定常時モードという。空調運転の各モードにおける第2熱媒体m2の経路は以下の通りである。
【0034】
(1)第1循環経路F1
実線矢印で示す第1循環経路F1は、冷房運転時(冷房起動時モードおよび冷房定常時モード)における、第1熱媒体回路5側の第2熱媒体m2の循環経路である。第1循環経路F1は、第1熱交換器10Aから,通路r1、分岐部b1、通路r9,分岐部b5、通路r4、分岐部b6,通路r5,分岐部b7、通路r6(外部熱交換器7)、分岐部b8、通路r7、分岐部b2、通路r8(循環ポンプ51)を経由して第1熱交換器10Aに戻る経路である。冷房運転時の第1熱媒体回路(高温側熱媒体回路)5ではラジエータ(外部熱交換器7)を循環させて放熱を行う。
【0035】
(2)第2循環経路F2
小破線矢印で示す第2循環経路F2は、冷房起動時モードの第2熱媒体回路6における第2熱媒体m2の循環経路である。熱媒体温度が空調要求(この場合は冷房要求)を満たす温度となっていない場合、車両用空調装置100は冷房起動時モードで運転する。
【0036】
第2循環経路F2は例えば、第2熱交換器10Bから、通路r11、分岐部b4、通路r18、分岐部b10、通路r14、分岐部b9、通路r19、分岐部b3、通路r17(循環ポンプ61)を経由して第2熱交換器10Bに戻る経路である。以下、第2循環経路F2を、起動時循環経路という場合もある。冷房起動時モードではクーラコア(吸熱器)9に熱媒体m2を流さず(バイパスして)、循環させることで即冷性を向上させることができる。
【0037】
(3)第3循環経路F3
一点鎖線矢印で示す第3循環経路F3は、暖房起動時モードの第1熱媒体回路5における第2熱媒体m2の循環経路である。熱媒体温度が空調要求(この場合は暖房要求)を満たす温度となっていない場合、車両用空調装置100は暖房起動時モードで運転する。
【0038】
第3循環経路F3は、例えば、第1熱交換器10Aから,通路r1、分岐部b1、通路r9,分岐部b5、通路r4、分岐部b6、通路r10、分岐部b2、通路r8(循環ポンプ51)を経由して第1熱交換器10Aに戻る経路である。以下、第3循環経路F3を、起動時循環経路という場合もある。暖房起動時モードではヒータコア8に熱媒体m2を流さず(バイパスして)、循環させることで即暖性を向上させることができる。
【0039】
(4)第4循環経路F4
大破線矢印で示す第4循環経路F4は、暖房運転時(暖房起動時モードおよび暖房定常時モード)における、第2熱媒体回路6側の第2熱媒体m2の循環経路である。第4循環経路F4は、第2熱交換器10Bから,通路r11、分岐部b4、通路r18,分岐部b10、通路r14、分岐部b9,通路r15,分岐部b8、通路r6(外部熱交換器7)、分岐部b7、通路r16、分岐部b3、通路r17(循環ポンプ61)を経由して第2熱交換器10Bに戻る経路である。暖房運転時の第2熱媒体回路(低温側熱媒体回路)6ではラジエータ(外部熱交換器7)を循環させて吸熱を行う。
【0040】
(5)第5循環経路F5
中破線矢印で示す第5循環経路F5は、暖房定常時モードの第1熱媒体回路5における第2熱媒体m2の循環経路である。熱媒体温度が空調要求(この場合は暖房要求)を満たす温度になると、車両用空調装置100は暖房定常時モードで運転する。
【0041】
第5循環経路F5は、例えば第1熱交換器10Aから,通路r1、分岐部b1、通路r2、ヒータコア8,通路r3、分岐部b5、通路r4、分岐部b6,通路r10,分岐部b2、通路r8(循環ポンプ51)を経由して第1熱交換器10Aに戻る経路である。以下、第5循環経路F5を定常時循環経路という場合もある。暖房定常時モードではヒータコア8に熱媒体m2を循環させ、暖房を行う。
【0042】
(6)第6循環経路F6
二点鎖線矢印で示す第6循環経路F6は、冷房定常時モードの第2熱媒体回路6における第2熱媒体m2の循環経路である。熱媒体温度が空調要求(この場合は冷房要求)を満たす温度となると、車両用空調装置100は冷房定常時モードで運転する。
【0043】
第6循環経路F6は、例えば、第2熱交換器10Bから、通路r11、分岐部b4、通路r12、クーラコア(吸熱器)9、通路r13、分岐部b10、通路r14、分岐部b9、通路r19、分岐部b3、通路r17(循環ポンプ61)を経由して第2熱交換器10Bに戻る経路である。以下、第6循環経路F6を定常時循環経路という場合もある。冷房定常時モードではクーラコア9に熱媒体m2を循環させ、冷房を行う。
【0044】
このように本実施形態では、運転モードにより第2熱媒体m2は複数の循環経路で流通する。ここで、例えば、第1循環経路F1と第3循環経路F3は一部の経路が同じであるが、本実施形態では、経路全体のうち一部が同じであっても、全体として完全に一致しない経路は「異なる(複数の)経路」とする。そして、第3循環経路F3(起動時循環経路)の経路長を第5循環経路F5(定常時循環経路)の経路長よりも短くしている。具体的には暖房起動時モードでは第2熱媒体m2を空調用熱交換部(この例ではヒータコア8)に循環させず、分岐部b1から通路r9を介して分岐部b5に至るショートサーキットで構成している。これにより、第2熱媒体m2の循環装置(冷却水循環装置)としての即暖性を高めることができる。
【0045】
同様に、第2循環経路F2(起動時循環経路)の経路長を第6循環経路F6(定常時循環経路)の経路長よりも短くしている。具体的には冷房起動時モードでは第2熱媒体m2を空調用熱交換部(この例ではクーラコア9)に循環させず、分岐部b4から通路r18を介して分岐部b10に至るショートサーキットで構成している。これにより、第2熱媒体m2の循環装置(冷却水循環装置)としての即冷性を高めることができる。
【0046】
更に、本実施形態の熱交換器10は、
図1示す回路上では分離して示される第1熱交換器10Aと第2熱交換器10Bとが一体となった一つの装置として構成される。これに加えて、熱交換器10は、上記の第2熱媒体m2の複数の循環経路を切り替え可能に構成されている。
【0047】
図2を参照して本実施形態の熱交換器10について説明する。
図2は、本実施形態の熱交換器10の概略構成を示す平面模式図である。本実施形態の説明においては、上下等の記載を用いるが、上下等の記載は図面における各構成の相対的な関係を示すために便宜的に用いたものである。つまり熱交換器10が図示した状態と上下逆に設置されれば、本実施形態で記載する上方が設置時の下方になる。また、熱交換器10を横倒しに設置して使用すれば、上下方向が横方向になり、斜めに設置して使用すれば、上下方向が斜め上下方向となる。
【0048】
熱交換器10には、第1熱媒体(冷媒)m1と第2熱媒体(冷却水などの熱媒体)m2が流れるが、本実施形態では説明の便宜上、冷媒m1が流通する図示x方向を流通方向x、流通方向xに直角な図示y方向を幅方向y、流通方向xと幅方向yに直角なz方向を積層方向zと称して説明する。冷媒m1は、熱交換器10の内部において折り返すなど流通する方向が変化する場合もあるが、全体として流入側から流出側に向かう方向を流通方向xとする。なお、本願では、xyz方向は+方向と-方向を区別しない。
【0049】
本実施形態の熱交換器10は、
図1に示す回路上では分離して示される第1熱交換器10Aと第2熱交換器10Bとが一体となった一つの装置として構成される。熱交換器10は、
図2に示すように、複数の熱交換コア11(ここでは、第1熱交換コア11Aおよび第2熱交換コア11B)と、1つのケース3を有する。詳細は後述するが、第1熱交換コア11Aは、冷媒m1の流入口34Aと流出口35Aと、その内部に形成される冷媒流路(
図1における冷媒流路CA)を有する。第2熱交換コア11Bの構成、およびサイズは例えば第1熱交換コア11Aと同様であり、第2熱交換コア11Bは、冷媒m1の流入口34Bと流出口35Bとその内部に形成される冷媒流路(
図1における冷媒流路CB)を有する。これにより、第1熱交換コア11Aおよび第2熱交換コア11Bにはそれぞれの内部に冷媒m1が流れる。なお、本実施形態では一例として第2熱交換コア11Bの構成、およびサイズは第1熱交換コア11Aと同様としているが、これに限らず、第1熱交換コア11Aと第2熱交換コア11Bは構成および/またはサイズの異なる熱交換コアであっても良い。
【0050】
冷媒m1は、冷媒回路Rの循環中にその状態や温度が変化するが、第1熱交換コア11Aの内部においては相対的に高温の冷媒m1が流れる。以下、第1熱交換コア11Aを流通する高温の冷媒m1を高温冷媒mh1と称する。また、第1熱交換コア11Aの流入口34Aと流出口35Aを以下、高温冷媒流入口34Aおよび高温冷媒流出口35Aという。
【0051】
一方第2熱交換コア11Bの内部においては相対的に低温の冷媒m1が流れる。以下、第2熱交換コア11Bを流通する低温の冷媒m1を低温冷媒mc1と称する。また、第2熱交換コア11Bの流入口34Bと流出口35Bを以下、低温冷媒流入口34Bおよび低温冷媒流出口35Bという。
【0052】
ケース3は、全体形状が略直方体(略六面体)であり、中空の内部空間を有する。詳細には、ケース3は積層方向zの両端が開放された略角筒状の本体部33と、本体部33の開放部分を覆う上側カバー部材と下側カバー部材(いずれも
図2において不図示)を有する。ケース3は、例えば樹脂材料などにより構成される。
【0053】
ケース3の内部空間は、熱交換コア11が収容可能な収容室30とされる。具体的に、ケース3は複数の収容室30(ここでは、第1収容室30Aと第2収容室30B)を有する。ケース3はその内部空間も外形状に沿う略立方体形状であるが、内部空間を二分する仕切り部30Pが設けられている。この仕切り部30Pにより、内部空間が第1収容室30Aと第2収容室30Bに区画されている。第1収容室30Aと第2収容室30Bはいずれも熱交換コア11が収容可能な形状・サイズを有している。第1収容室30Aに第1熱交換コア11Aが収容されて第1熱交換器10Aが構成される。また第2収容室30Bに第2熱交換コア11Bが収容されて第2熱交換器10Bが構成される。第1収容室30Aの内壁と第1熱交換コア11Aの外表面(この例では第1収容室30Aの内壁と対向する4面)は所定の隙間G1が確保され、第2収容室30Bの内壁と第2熱交換コア11Bの外表面(この例では第2収容室30Bの内壁と対向する4面)の間も所定の隙間G2が確保される。また第1収容室30Aの内壁と第1熱交換コア11Aの外表面は密着し、すなわち隙間G1の大きさは実質0(ゼロ)であってもよい。同様に、第2収容室30Bの内壁と第2熱交換コア11Bの外表面は密着し、すなわち隙間G2の大きさは実質0(ゼロ)であってもよい。
【0054】
複数の収容室30はそれぞれ熱媒体m2の流入口36A,36Bと流出口37A,37Bを備え、ケース3(第1収容室30A、第2収容室30B)の内部にはそれぞれ熱媒体m2が流れる。具体的に、ケース3の本体部33は、積層方向zから見た平面視において略矩形状であり、対向する第1側面33Aおよび第2側面33Bと、対向する第3側面33Cおよび第4側面33Dを有する。そして、第1側面33Aには、第1収容室30Aに連通する流入口36Aが設けられ、同じく第1側面33Aに第2収容室30Bに連通する流入口36Bが設けられる。また、第2側面33Bと第4側面33Dにはそれぞれ第1収容室30Aに連通する流出口37A(37Aa、37Ab)が設けられ、第2側面33Bと第3側面33Cにはそれぞれ、第2収容室30Bに連通する流出口37B(37Ba,37Bb)が設けられる。
【0055】
この例では、第1収容室30Aには第1熱交換コア11Aが収容され、その内部に高温の第1熱媒体m1(高温冷媒mh1)が流れる。そして第1収容室30Aには、高温側熱媒体回路5を循環し、この高温冷媒mh1と熱交換する第2熱媒体m2が流れる。第2熱媒体m2は高温側熱媒体回路5の循環中に温度が変化するが、第1収容室30Aを流れる際には車両用空調装置100における相対的に高温側の第2熱媒体m2となっている。本実施形態では特に熱交換器10の説明においては、説明の便宜上、第1収容室30Aを流れる第2熱媒体m2を高温側熱媒体mh2と称する。また第1収容室30Aは、高温側熱媒体mh2が流れる高温側収容室であり、以下、第1収容室30Aの流入口36Aを高温側熱媒体流入口36Aといい、第1収容室30Aの流出口37Aを高温側熱媒体流出口37Aという。
【0056】
第2収容室30Bには第2熱交換コア11Bが収容される。第2熱交換コア11Bはその内部に低温の第1熱媒体m1(低温冷媒mc1)が流れる。そして第2収容室30Bには、低温側熱媒体回路6を循環し、この低温冷媒mc1と熱交換する第2熱媒体m2が流れる。この場合、第2収容室30Bを流れる第2熱媒体m2は、車両用空調装置100における相対的に低温側の第2熱媒体m2となっており、本実施形態では特に熱交換器10の説明において、低温側熱媒体mc2と称する。また第2収容室30Bは、低温側熱媒体mc2が流れる低温側収容室であり、以下、第2収容室30Bの流入口36Bを低温側熱媒体流入口36Bといい、第2収容室30Bの流出口37Bを低温側熱媒体流出口37Bという。
【0057】
高温側熱媒体流入口36Aから第1収容室30Aに流入した第2熱媒体m2(高温側熱媒体mh2)は、第1収容室30Aの内壁と第1熱交換コア11Aの間の隙間G1および第1熱交換コア11によって形成された隙間(後述する)を流路として高温側熱媒体流出口37Aに向かって流れ、第1熱交換コア11Aの内部を流れる第1熱媒体m1(高温冷媒mh1)との間で熱交換を行う。
【0058】
同様に、低温側熱媒体流入口36Bから第2収容室30Bに流入した第2熱媒体m2(低温側熱媒体mc2)は、第2収容室30Bの内壁と第2熱交換コア11Bの間の隙間G2,および第2熱交換コア11Bによって形成された隙間(後述する)を流路として低温側熱媒体流出口37Bに向かって流れ、第2熱交換コア11Bの内部を流れる第1熱媒体m1(低温冷媒mc1)との間で熱交換を行う。
【0059】
ここで、第1収容室30Aと第2収容室30Bは、仕切り部30Pにより確実に仕切られており、第1収容室30Aを流通する高温側熱媒体mh2と第2収容室30Bを流通する低温側熱媒体mc2が混在することはない。
【0060】
さらに本実施形態では、ケース3に第2熱媒体m2の経路の切替部150(この例では切替部150A,150B)が設けられる。切替部150は、複数の収容室30(ここでは第1収容室30A、第2収容室30B)のうち少なくとも一つの収容室30への複数の流入経路および/または該収容室30からの複数の流出経路のうち一の経路を選択的に切り替え可能である。
【0061】
より具体的に、
図2に示す例では、高温側熱媒体流出口37Aは、第1切替流出口37Aaと第2切替流出口37Abを含み、これらの2方向(図示右方向と図示下方)に流出可能に構成されている。第1切替流出口37Aaと第2切替流出口37Abはそれぞれ、第1収容室30Aからの第2熱媒体m2の流出経路の一部であり、第1収容室30A内を流れる第2熱媒体m2は、当該第1収容室30Aから高温側熱媒体流出口37A(第1切替流出口37Aa、第2切替流出口37Ab)を介して2方向のいずれかに流出可能である。そして、第1熱交換器10A側のケース3の内部に、高温側熱媒体流出口37Aの流出経路を、2方向のいずれかに切り替え可能な切替部150(150A)が設けられる。ここで、第1切替流出口37Aaを介して流出した場合の第2熱媒体m2の流出経路(第1流出経路FO1)と、第2切替流出口37Abを介して流出した場合の第2熱媒体m2の流出経路(第2流出経路FO2)は少なくとも一部が異なる経路となっている。このように、第1収容室30Aの内部を流れる第2熱媒体m2は、複数の流出経路(第1流出経路FO1と第2流出経路FO2)で流出可能となっており、切替部150Aは、複数の流出経路(第1流出経路FO1と第2流出経路FO2)のうち一の経路を選択的に切り替え可能となっている。
【0062】
また低温側熱媒体流出口37Bは、第3切替流出口37Baと第4切替流出口37Bbを含み、これらの2方向(図示左方向と図示下方)に流出可能に構成されている。第3切替流出口37Baと第4切替流出口37Bbはそれぞれ、第2収容室30Bからの第2熱媒体m2の流出経路の一部であり、第2収容室30B内を流れる第2熱媒体m2は、当該第2収容室30Bから低温側熱媒体流出口37B(第3切替流出口37Ba、第4切替流出口37Bb)を介して2方向のいずれかに流出可能である。そして、第2熱交換器10B側のケース3の内部に、低温側熱媒体流出口37Bの流出経路を、2方向のいずれかに切り替え可能な切替部150(150B)が設けられる。ここで、第3切替流出口37Baを介して流出した場合の第2熱媒体m2の流出経路(第3流出経路FO3)と、第4切替流出口37Bbを介して流出した場合の第2熱媒体m2の流出経路(第4流出経路FO4)は少なくとも一部が異なる経路となっている。つまりこの例では、第2収容室30Bの内部を流れる第2熱媒体m2は、異なる複数の流出経路(第3流出経路FO3と第4流出経路FO4)で流出可能となっており、切替部150Bは、複数の流出経路(第3流出経路FO3と第4流出経路FO4)のうち一の経路を選択的に切り替え可能となっている。
【0063】
切替部150(150A,150B)は例えばアクチュエータと機械式流路切替弁、または電磁式流量制御弁である。
【0064】
図1を参照して切替部150について更に説明する。本実施形態の切替部150は、例えばケース3に内蔵され、ケース3と一体的に構成される。一例を挙げると、
図1の例では、回路上分離して記載されているが、分岐部b1が第1収容室30A側に設けられる切替部150Aであり、分岐部b4が第2収容室30B側に設けられる切替部150Bである。すなわち本実施形態では、第1熱交換器10A、第2熱交換器10Bと、例えば分岐部b1となる切替部150Aと、分岐部b4となる切替部150Bとが、一つのケース3で(ケース3を共通として)一体的に構成されている。
【0065】
そして分岐部b1(切替部150A)は、第1収容室30Aの内部を流れる第2熱媒体m2の流出経路を、通路r9と通路r2のうちいずれかの経路に切り替える。通路r9は第1流出経路FO1であり、第1流出経路FO1は第3循環経路F3の一部である。また通路r2は第2流出経路FO2であり、第2流出経路FO2は第5循環経路F5の一部である。つまり切替部150Aは、第2熱媒体m2の循環経路を第3循環経路F3と第5循環経路F5のいずれかに切り替える。既に述べたように、第3循環経路F3は例えば、車両用空調装置100の暖房運転における起動時循環経路であり、第5循環経路F5は、定常時循環経路である。本実施形態では、切替部150Aにより、車両用空調装置100の暖房運転の起動時循環経路を定常時循環経路よりも短い経路長にできるため、即暖性を高めることができる。
【0066】
また、分岐部b4(切替部150B)は、第2収容室30Bの内部を流れる第2熱媒体m2の流出経路を、通路r18と通路r12のうちいずれかの経路に切り替える。通路r18は、第3流出経路FO3であり、第3流出経路FO3は第2循環経路F2の一部である。また通路r12は第4流出経路FO4であり、第4流出経路FO4は第6循環経路F6の一部である。つまり切替部150Bは、第2熱媒体m2の循環経路を第2循環経路F2と第6循環経路F6のいずれかに切り替える。既に述べたように、第2循環経路F2は例えば、車両用空調装置100の冷房運転の起動時循環経路であり、第6循環経路F6は、定常時循環経路である。本実施形態では、切替部150Bにより、車両用空調装置100の冷房運転の起動時循環経路を定常時循環経路よりも短い経路長にできるため、即冷性を高めることができる。
【0067】
このような構成により本実施形態の熱交換器10は、2つの熱交換コア11(11A,11B)を1つのケース3に収容する(ケース3を共通化できる)ため、それぞれの熱交換コア11を個別に(単独で)それぞれケースに収容する構成と比較して、部品点数の削減が可能となり、それに伴う低コスト化、および省スペース化が図れる。
【0068】
また、第1収容室30Aおよび第2収容室30Bは仕切り部30Pにより確実に区画され、それぞれに第1熱交換コア11Aおよび第2熱交換コア11Bを収容するため、第1熱交換コア11Aおよび第2熱交換コア11Bを異なる温調対象とすることができる。すなわち、所望の温度帯に温調された第2熱媒体m2をそれぞれ異なる温調対象(第1熱交換コア11A,第2熱交換コア11B)に供給することができる。
【0069】
具体的には、例えば第1熱交換コア11Aを、車両用空調装置100(冷媒回路R)において高温冷媒mh1が流れる高温側熱交換コア11Aとし、第2熱交換コア11Bを、車両用空調装置100(冷媒回路R)において低温冷媒mc1が流れる低温側熱交換コア11Bとしている。
【0070】
上記の例では第1熱交換コア11A(第1収容室30A)側を高温側とし、第2熱交換コア11B(第2収容室30B)側を低温側としているが、これらを入れ替えても同様である(以下の説明においても同様)。
【0071】
さらに、本実施形態では、切替部150(150A,150B)により、車両用空調装置100の冷房運転、および暖房運転のそれぞれにおいて、起動循環経路と、定常時循環経路を切り替え可能とし、起動時循環経路の経路長を、定常時循環経路よりも短く(ショートサイクル化)している。これにより、車両用空調装置100の即暖即冷性を高めることができる。ここで、起動時循環経路を定常時循環経路よりも短くする場合、従来では配管71の引き回し、すなわち回路が複雑化する問題があった。しかしながら、本実施形態では、これらの循環経路を切り替える切替部150も熱交換器10(のケース3)と一体化しているため、配管71の一部の短縮化が可能となり、その短縮した配管71の容積分、冷却水の封入量を減らすことができる。つまり冷却水の封入量の観点においても水回路装置としての即暖即冷性を向上させることができる。また配管71の引き回しの簡素化により回路構成をシンプルにすることができる。これにより、冷却水循環装置としての即暖即冷性を向上させる構成でありながら、車両用空調装置100としての小型化、省スペース化が実現する。
【0072】
従来、熱交換器10と圧縮機1を一体的に設ける構成も知られているが、この場合は両者を配管(アルミ配管等)により接続すると、圧縮機1の振動が熱交換器10に伝搬する問題がある。この対策として、配管の途中をホースにしたり、ブッシュを介して熱交換器10を固定することなども提案されるが、部品点数の増加を招く問題がある。本実施形態では、圧縮機1とは別体で、複数の熱交換器10A、10Bと切替部150を一体的に設けているため、圧縮機1の振動が熱交換器10に伝搬する問題を回避して車両用空調装置100の省スペース化が実現する。
【0073】
以下、
図3~
図6を参照して、本実施形態の熱交換器10の一例について具体例を挙げてより詳細に説明する。
図3~
図6に示す熱交換器10の各構成は一例であり、熱交換器10は
図3~
図6に示す構成に限るものではない。
【0074】
<熱交換器>
図3および
図4は熱交換器10を示す図であり、
図3が外観斜視図であり、
図4が切替部150の一部を透過して示す外観斜視図である。
図5は、一方の熱交換器10(例えば、第1熱交換器10A)の分解斜視図である。
図5において切替部150は図示を省略している。第1熱交換コア11(第1収容室30A)と第2熱交換コア11B(第2収容室30B)は、内部を流れる熱媒体が異なるのみであり、構成は同様であるので、
図5および
図6においては、第1熱交換コア11Aおよび第2熱交換コア11B、すなわち、高温側および低温側を区別することなく説明する。
【0075】
図3から
図5を参照して、熱交換器10は略六面体の外形状を有するケース3とその内部に収容される熱交換コア11を有している。ケース3は、積層方向zの両端が開口する角筒状の本体部33と、開口を覆う上側カバー部材31と下側カバー部材32を有する。そして第1収容室30A側において、上側カバー部材31の対角位置に、高温冷媒mh1が流入する高温冷媒流入口34Aと、流出する高温冷媒流出口35Aが設けられている。また、第1収容部30Aの側方において、高温側熱媒体mh2が流入する高温側熱媒体流入口36Aがケース3の第1側面33Aに設けられ、高温側熱媒体mh2が流出する第1切替流出口37Aaが第4側面33Dに設けられ、高温側熱媒体mh2が流出する第2切替流出口37Abが第2側面33Bに設けられている。
【0076】
また第2収容室30B側において、上側カバー部材31の対角位置に、低温冷媒mc1が流入する低温冷媒流入口34Bと、流出する低温冷媒流出口35Bが設けられている。また、第2収容部30Bの側方において、低温側熱媒体mc2が流入する低温側熱媒体流入口36Bがケース3の第1側面33Aに設けられ、低温側熱媒体mc2が流出する第3切替流出口37Baが第3側面33Cに設けられ、低温側熱媒体mc2が流出する第4切替流出口37Bbが第2側面33Bに設けられている。
【0077】
この例では、
図5に示すようにケース3の内部に、流通方向xに隣接して第1収容室30Aと切替部収容室40Aが設けられる。また
図5では省略しているが流通方向xに隣接して第2収容室30Bと切替部収容室40Bが設けられる。切替部収容室40A,40Bは、確実に分離されている。第1収容室30Aと切替部収容室40Aは仕切り部39により区画され、第2収容室30Bと切替部収容室40Bも仕切り部39により区画される。第1収容室30A側の仕切り部39には、第1収容室30Aと切替部収容室40Aに連通する流通孔39Aが設けられる。図示は省略するが、第2収容室30B側の仕切り部39にも、第2収容室30Bと切替部収容室40Bに連通する流通孔が設けられる。
【0078】
図4に示すように切替部収容室40A,40Bはそれぞれに、切替部150A、150Bの一部が収容される空間である。切替部150Aは、例えば、三方弁151Aとこれを例えば回転駆動するアクチュエータ152Aにより構成され、切替部150Bは、三方弁151Bとこれを例えば回転駆動するアクチュエータ152Bにより構成される。そして三方弁151A,151Bが切替部収容室40A,40Bにそれぞれ収容される。アクチュエータ152A,152Bは、この例ではケース3外に配置されるが、ケース3と当接して一体的に構成される。
【0079】
第1収容室30A側では、切替部150Aの三方弁151Aがアクチュエータ152Aにより回転駆動され、これにより、第1収容室30Aを流れる第2熱媒体m2は、第1切替流出口37Aa(第1流出経路FO1)を経由する第3循環経路F3あるいは、第2切替流出口37Ab(第2流出経路FO2)を経由する第5循環経路F5のいずれかの経路で循環する(
図1参照)。
【0080】
また第2収容室30B側では、切替部150Bの三方弁151Bがアクチュエータ152Bにより回転駆動され、これにより、第2収容室30Bを流れる第2熱媒体m2は、第3切替流出口37Ba(第3流出経路FO3)を経由する第2循環経路F2あるいは、第4切替流出口37Bb(第4流出経路FO4)を経由する第6循環経路F6のいずれかの経路で循環する(
図1参照)。
【0081】
<熱交換コア>
図5を参照して、熱交換コア11(例えば、第1熱交換コア11A)は、積層方向zから見た平面視において対角位置に、2つのパッド15が設けられる。それぞれのパッド15は貫通孔を有し、熱交換コア11の冷媒流入口34(例えば、高温冷媒流入口34A)は、一方のパッド15の貫通孔により構成され、冷媒流出口35(例えば、高温冷媒流出口35A)は、他方のパッド15の貫通孔により構成される。熱交換コア11は、2つのパッド15を除いて、ケース3に収納される。熱交換コア11の主要部はケース3の中に納められ、上側カバー部材31と下側カバー部材32により覆われる。
【0082】
熱交換コア11は、熱交換プレート2を、積層方向zに複数重ねたコア部12と、コア部12の積層方向zにおける上方に設けられる上側エンドプレート13と、コア部12の積層方向zにおける下方に設けられる下側エンドプレート14とを有している。熱交換プレート2、上側エンドプレート13、下側エンドプレート14およびパッド15はアルミニウム製であり、熱交換コア11は、これらのアルミニウム製の部品をアルミニウム用のろう付け等により一体化して形成されている。熱交換コア11は、第2熱媒体m2によりアルミニウム製の熱交換コア11が劣化しないように、外面が樹脂によりコーティングされていてもよい。1つの熱交換プレート2の内部には、冷媒流入口34から冷媒流出口35に向かって流れる冷媒m1の流路(
図1に示す冷媒流路CA、CB)が形成されている。また、積層される(上下の)熱交換プレート2の間に隙間が確保され、この隙間が第2熱媒体m2の流路(
図1に示す熱媒体流路WA,WB)となる。
【0083】
図6は、収容室30(例えば第1収容室30A)に熱交換コア11(例えば第1熱交換コア11A)を収容した場合の積層方向z上方から見た平面模式図である。
図6に示す大矢印は、熱交換プレート2の外における熱媒体m2の流れ(熱媒体流路WA(WBも同様である))を示す。収容室30に熱交換コア11を収容した場合、同図に示すように、コア部12とケース3の間には積層方向zに熱媒体m2が移動可能な流室38が確保される。
【0084】
熱媒体流入口36(例えば高温側熱媒体流入口36A)から収容室30に流入した熱媒体m2は、流室38において積層方向zおよび幅方向yに分流して複数の熱交換プレート2の間、およびコア部12の側面とケース3の隙間G1を通過する。熱媒体m2は、熱交換プレート2の表面(熱交換プレート2の外)を流れ、出口側の流室38で合流する。それぞれの熱交換コア11において第1熱媒体m1と第2熱媒体m2は対向する方向に流通する。このようにして、熱交換プレート2の内側の第1熱媒体m1(小矢印で示す)と、熱交換プレート2の外側の第2熱媒体m2との間で熱交換が行われる。
【0085】
流室38において合流した第2熱媒体m2は、仕切り部39に設けた流通孔39(例えば、流通孔39A)を介して切替部収容室40(例えば、切替部収容室40A)に流入する。そして、切替部150(例えば、切替部150A)の三方弁151Aの状態により、熱媒体流出口37の流出口(例えば、高温側熱媒体流出口37Aの第1切替流出口37Aa、または第2切替流出口37Abのいずれか)から流出する。
【0086】
なお本実施形態において冷媒流路CA,CBおよび熱媒体流路WA,WBの形状は一例であり、上記の例に限らない。冷媒流路CA,CBは熱交換プレート2内部で例えば流通方向xあるいは幅方向yに沿う直線状に形成され、蛇行したり、幅方向yまたは流通方向xあるいは積層方向zに折り返すなどして、全体として冷媒流入口34から冷媒流出口35に向かって流通し、熱媒体流路WA,WBは、その熱交換プレート2の外側を、熱媒体流入口36から熱媒体流出口37に向かって流通する構成であればよい。
【0087】
<変形例>
本実施形態は、熱交換コア11を収容するケース3に切替部150が設けられるものである。切替部150は、ケース3の内部に限らず、ケース3の外側に一体的に取り付けられる構成であってもよい。この場合、切替部収容室40A、40Bはケース3の例えば第2側面33Bに当接し、第2側面33Bと、切替部収容室40A、40Bの第2側面33Bとの対向面に流通孔(
図5に示す流通孔39B参照)が設けられる。またこの場合、切替部収容室40Aに高温側熱媒体流出口37A(第1切替流出口37Aa、第2切替流出口37Ab)が設けられ、切替部収容室40Bに低温側熱媒体流出口37B(第3切替流出口37Ba、第4切替流出口37Bb)が設けられる。
【0088】
ここで、「ケース3に切替部150が設けられる」とは、ケース3と切替部150が、配管71などを介して意図的に離間することなく、一体的に構成されることをいう。例えば、
図3および
図4に示す例では、ケース3の内部に切替部150の一部が収容されてケース3と切替部150が一体的に構成されている。ケース3は、この例では主に、熱交換コア11の収容室30を構成する箱体(熱交換コア11の収容ケース)であるが、熱交換コア11を含む複数の部品を収容する(複数の部品に共用される)ケースであってもよい。また形式的に、切替部150を収容する箱体(切替部150の収容ケース)に熱交換コア11が収容される構成であってもよい。
【0089】
あるいは、ケース3の外側(外面)に切替部収容室40A、40Bが設けられる構成であってもよく、この場合切替部収容室40A、40Bは、切替部150と他の部品を収容する(両者に共用の)ケースであってもよい。またケース3の外側(外面)に切替部収容室40A、40Bが設けられる構成の場合、ケース3とは別体として構成される切替部収容室40A、40Bが、後発的に固定手段や接着手段などによりケース3と直接的に当接・固定されるものであってもよいし、射出成型などにより、ケース3の形成と同時にその外側に切替部収容室40A、40Bが一体的に設けられる構成であってもよい。
【0090】
図7は、切替部150の他の例を示す図であり、
図2に対応する平面概要図である。上記の実施形態では切替部150Aが高温側熱媒体流出口37A、詳細には第1切替流出口37Aaと第2切替流出口37Abの分岐に設けられ、切替部150Bが低温側熱媒体流出口37B、詳細には第3切替流出口37Baと第4切替流出口37Bbの分岐に設けられる場合を例示した。しかしこれに限らず、切替部150は、第2熱媒体m2の流入口36側と流出口37側の少なくとも何れかに設けられれば良い。
【0091】
具体的に、
図7に示す例では、上述の実施形態の構成に加えて、高温側熱媒体流入口36Aが、第1収容室30Aへの流入経路が異なる第1切替流入口36Aa(第1流入経路FI1)と第2切替流入口36Ab(第2流入経路FI2)を含み、低温側熱媒体流入口36Bが、第2収容室30Bへの流入経路が異なる第3切替流入口36Ba(第3流入経路FI3)、第4切替流入口36Bb(第4流入経路FI4)を含んでいる。
【0092】
そして高温側熱媒体流入口36Aに設けた切替部150Cにより、第2熱媒体m2の第1収容室30Aへの複数の流入経路(第1流入経路FI1と第2流入経路FI2)のうち一の流入経路が選択的に切り替え可能となる。また低温側熱媒体流入口36Bに設けた切替部150Dにより、第2熱媒体m2の第2収容室30Bへの複数の流入経路(第3流入経路FI3と第4流入経路FI4)のうち一の流入経路が選択的に切り替え可能となる。
【0093】
詳細には、切替部150Cが第1切替流入口36Aaと第2切替流入口36Abの分岐に設けられ、第1収容室30Aへの第2熱媒体m2の流入経路を第1流入経路FI1と第2流入経路FI2のいずれかに切り替え可能となっている。また、切替部150Cが第3切替流入口36Baと、第4切替流入口36Bbの分岐に設けられ、第2収容室30Bへの第2熱媒体m2の流入経路を第3流入経路FI3と第4流入経路FI4のいずれかに切り替え可能となっている。
【0094】
図1を用いて説明すると、分岐部b2が第1収容室30A側に設けられる切替部150Cであり、分岐部b3が第2収容室30B側に設けられる切替部150Dである。すなわち
図7の場合、第1熱交換器10A、第2熱交換器10Bと、例えば分岐部b1となる切替部150Aと、分岐部b4となる切替部150Bと、分岐部b2となる切替部150Cと、分岐部b3となる切替部150Dとが一つのケース3で(ケース3を共通として)一体的に構成されている。
【0095】
そして
図1に示したように、分岐部b2(切替部150C)は、第1熱媒体回路5側の動作として、第1収容室30Aに流入する第2熱媒体m2の経路を、ラジエータ7を経由しない経路(通路r10,第1流入経路FI1)と、ラジエータ7を経由する経路(通路r7,第2流入経路FI2)とで切り替える。第2流入経路FI2は、第1循環経路F1の一部であり、第1流入経路FI1は、第3循環経路F3または第5循環経路F5の一部である。
【0096】
また、分岐部b3(切替部150D)は、第2熱媒体回路6側の動作として、第2収容室30Bに流入する第2熱媒体m2の経路を、ラジエータ7を経由しない経路(通路r19,第3流入経路FI3)と、ラジエータ7を経由する経路(通路r16、第4流入経路FI4)とで切り替える。第3流入経路FI3は、第2循環経路F2または第6循環経路F6の一部であり、第4流入経路FI4は、第4循環経路F4の一部である。
【0097】
また図示は省略するが、高温側熱媒体流入口36Aおよび低温側熱媒体流入口36Bのみに切替部150C、150Dが設けられる構成であってもよい。また、一方の熱交換器(例えば、第1熱交換器10A)側のみに切替部150が設けられる構成であってもよい。
【0098】
上記の実施形態における構成は一例である。本実施形態では、第2熱媒体m2を循環させる水回路装置において即暖即冷性を向上させるために、第2熱媒体m2(冷却水)の封入量を少なくすることが可能な構成を採用する。具体的に、第2熱媒体m2の経路として、車室内へ供給される空気と熱交換するHVACユニット80の空調用熱交換部8,9を経由する循環経路と、空調用熱交換部8,9を経由しない循環経路を設け、これらを選択的に切り替え可能とする。本実施形態では、これらの循環経路の分岐部bを切替部150で構成し、当該切替部150を熱交換器10のケース3と一体的に設ける構成であれば上記の例に限らない。すなわち、切替部150の数は任意であり、流入口36側、流出口37のいずれに設けてもよいし両方に設けてもよい。また、切替弁も回路構成に応じて三方弁に限らず、二方弁であってもよいし、四方弁であってもよい。
【0099】
このような構成により、第1には、複数の熱交換器10を一体化できるため、部品点数の削減による低コスト化及び省スペース化が可能となる。
【0100】
また、第2には、第2熱媒体m2の経路として、車室内へ供給される空気と熱交換するHVACユニット80の空調用熱交換部8,9を経由する循環経路と、空調用熱交換部8,9を経由しない循環経路を設け、これらを選択的に切り替え可能とする。これにより、即断即冷性を向上させることができる。更に、第2熱媒体m2の循環経路を切り替える構成において、水回路装置の一部を構成する切替部150を熱交換器10と一体的に設けるため、従来必要であった切替部150から熱交換器10までの配管(熱媒体配管)71を省略・あるいは最短にすることができ、第2熱媒体m2の封入量を低減できる。したがって、従来の第2熱媒体m2の循環経路を切り替える構成と比較して、より、即暖即冷性を向上させることができる。加えて、配管71の省略または最短化によって回路構成を簡素化することができ、これによっても省スペース化が図れる。
【0101】
更に図示は省略するが、上記の実施形態において、熱交換器10の第1収容室30Aを例えば高温側収容室30Aとし、第2収容室30Bを低温側収容室30Bとした場合にはそれぞれの収容室30A,30Bに流入する第2熱媒体m2を対向する方向に流通させるとよい。具体的に、例えば第1収容室30Aは上記の実施形態と同様に構成して、流通方向xに沿って図示上方から下方に向かって高温側熱媒体mh2を流すように構成する。一方、第2収容室30Bにおいては、低温側熱媒体流入口36Bを例えば第2側面33Bに配置し、低温側熱媒体流出口37Bを第1側面33Aに配置し、流通方向xに沿って図示下方から上方に向かって低温側熱媒体mc2を流すように構成する。これにより、低温側収容室30B内部の低温側熱媒体mc2と高温側収容室30A内部の高温側熱媒体mh2は対向する方向に流通する。またそれぞれの熱交換コア11において第1熱媒体m1と第2熱媒体m2は対向する方向に流通させる。すなわち、第2熱交換コア11Bでは、低温側熱媒体流入口36B側に低温冷媒流出口35Bを配置し、低温側熱媒体流出口37B側に低温冷媒流入口34Bを配置して流通方向xに沿って図示上方から下方に向かって低温冷媒mc1を流すように構成する。
【0102】
高温側熱媒体mh2は、高温側熱媒体流入口36Aに流入する際に高温側熱媒体回路5としてはやや低温となっており、第1熱交換コア11A内の高温冷媒mh1と熱交換した結果、高温側熱媒体流出口37Aではより高温となる。一方、低温側熱媒体mc2は、低温側熱媒体流入口36Bに流入する際に、低温側熱媒体回路6としてはやや高温となっており、第2熱交換コア11B内の低温冷媒mc1と熱交換した結果、低温側熱媒体流出口37Bではより低温となる。したがって、隣り合う収容室30A,30B内の第2熱媒体m2を対向する方向に流通させることで、収容室30A,30B内を流れる第2熱媒体m2間(高温側熱媒体mh2と低温側熱媒体mc2の間)の温度差を小さくすることができ、熱ロスを抑えることができる。
【0103】
また、第2熱媒体m2間の温度差が小さくなるため、ケース3への熱影響(温度差が大きいことによる熱歪みなど)を抑えることができる。
【0104】
また、高温側収容室30Aと低温側収容室30Bの間に断熱部を設けてもよい。断熱部は例えば、仕切り部30Pの内部に設けた中空部である。また、当該中空部に断熱部材を配置して断熱部としてもよい。
【0105】
断熱部を設けることにより温度帯の異なる熱交換コア11A、11Bを収容した場合であっても、熱ロスを抑えることができる。この例では、高温側熱媒体mh2と低温側熱媒体mc2を対向するように流通させているが、同じ方向に流通させてもよい。
【0106】
以上、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0107】
1 圧縮機
2 熱交換プレート
3 ケース
4 膨張機構(減圧装置)
5 高温側熱媒体回路
6 低温側熱媒体回路
7 外部(室外)熱交換部
8 ヒータコア
9 吸熱器
10、10A、10B 熱交換器
11、11A,11B 熱交換コア
12 コア部
13 上側エンドプレート
14 下側エンドプレート
15 パッド
21 上側プレート
22 下側プレート
30、30A,30B 収容室
30P 仕切り部
31 上側カバー部材
32 下側カバー部材
33 本体部
34A 高温冷媒流入口
34B 低温冷媒流入口
35A 高温冷媒流出口
35B 低温冷媒流出口
36A 高温側熱媒体流入口
36B 低温側熱媒体流入口
37A 高温側熱媒体流出口
37B 低温側熱媒体流出口
38 流室
39 仕切り部
39 流通孔
40、40A、40B 切替部収容室
71 配管(熱媒体配管)
80 HVACユニット
100 車両用空調装置
150、150A、150B、150C、150D 切替部
151A,151B 三方弁
152A,152B アクチュエータ
FO1 第1流出経路
FO2 第2流出経路
FO3 第3流出経路
FO4 流出経路(第4流出経路
b 分岐部
m1 冷媒(第1熱媒体)
m2 熱媒体(第2熱媒体)
mc1 低温冷媒
mc2 低温側熱媒体
mh1 高温冷媒
mh2 高温側熱媒体
r 経路