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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103301
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】熱交換器および車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/22 20060101AFI20240725BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
F28F9/22
B60H1/22 651B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007566
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100166833
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 直子
(72)【発明者】
【氏名】金子 智
【テーマコード(参考)】
3L065
3L211
【Fターム(参考)】
3L065DA17
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA52
3L211DA28
(57)【要約】
【課題】 高効率の熱交換が可能でありながらも部品点数を削減し、それに伴うコストの削減、また省スペース化が可能な熱交換器およびそれを備えた車両用空調装置を提供する。
【解決手段】 熱交換器10は、内部に第1熱媒体m1が流れる第1熱交換コア11Aと、内部に第1熱媒体m1が流れる第2熱交換コア11Bと、複数の収容室30を有し内部に第2熱媒体m2が流れるケース3と、第1熱媒体m1を貯留する貯留部26と、を備え、複数の収容室30のうち第1収容室30Aに第1熱交換コア11Aを収容し、複数の収容室30のうち第2収容室30Bに第2熱交換コア11Bを収容し、ケース3に、貯留部26内の第1熱媒体m1と、第2熱媒体m2との間で熱交換を行う熱交換部27を設けた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に第1熱媒体が流れる第1熱交換コアと、
内部に前記第1熱媒体が流れる第2熱交換コアと、
複数の収容室を有し内部に第2熱媒体が流れるケースと、
前記第1熱媒体を貯留する貯留部と、を備え、
前記複数の収容室のうち第1収容室に前記第1熱交換コアを収容し、
前記複数の収容室のうち第2収容室に前記第2熱交換コアを収容し、
前記ケースに、前記貯留部内の前記第1熱媒体と、前記第2熱媒体との間で熱交換を行う熱交換部を設けた、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記複数の収容室のうち第3収容室に前記貯留部を収容し、該貯留部の外面と該第3収容室の内面により前記第2熱媒体の流路を形成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第1熱交換コアは凝縮器として機能し、前記第2熱交換コアは蒸発器として機能するものであり、
前記貯留部はアキュムレータであり、
前記熱交換部を流れる前記第2熱媒体を前記第1収容室に流入させるように構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第1熱交換コアは凝縮器として機能し、前記第2熱交換コアは蒸発器として機能するものであり、
前記貯留部はレシーバであり、
前記熱交換部を流れる前記第2熱媒体を前記第2収容室に流入させるように構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記ケース内において、前記第1熱交換コアと前記第2熱交換コアの間に前記貯留部および前記熱交換部を配置した、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の熱交換器を有する車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器および車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内側を冷媒が流れるように構成された内部部材と、内部部材を収容する容器であって、内部部材の周囲の空間を冷却水が流れるように構成されたケースと、を備える熱交換器が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の熱交換器は、車両に搭載されるものであり、当該車両を循環する冷媒と冷却水との間で熱交換を行うための熱交換器として構成され、一つの直方体のケースに一つの内部部材が収容されている。
【0003】
また、従来、冷媒回路を流通する冷媒と熱媒体回路を流通する熱媒体とを熱交換する熱交換部を備えたアキュムレータが知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の技術では、熱媒体回路から引き回した熱媒体流通路を経由してアキュムレータに熱媒体が流入するように構成されている。これにより冷却が必要なバッテリを冷却し、また暖房運転時の冷媒回路における必要な吸熱量を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-85340号公報
【特許文献2】特開2020-104567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば車両用空調装置などにおいては第1熱媒体(例えば、冷媒)と第2熱媒体(例えば、冷却水など)を熱交換する箇所は複数存在する。このため、特許文献1に記載のような熱交換器をそれぞれ必要な複数箇所に配置すると、部品点数(特に、ケース)の増加に伴うコストアップ、およびスペースの増加などの問題が生じる。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術では、冷媒回路のコンパクト化(例えば、冷媒配管長の短縮化)についての検討はなされていない。昨今、冷媒回路、ひいては車両用空調装置の小型化の要望が高まっており、装置の性能(例えば、システム効率)の向上と小型化、省スペース化の両立が重要な課題となっている。
【0007】
そこで本発明は、高効率の熱交換が可能でありながらも部品点数を削減し、それに伴うコストの削減、また省スペース化が可能な熱交換器およびそれを備えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内部に第1熱媒体が流れる第1熱交換コアと、内部に前記第1熱媒体が流れる第2熱交換コアと、複数の収容室を有し内部に第2熱媒体が流れるケースと、前記第1熱媒体を貯留する貯留部と、を備え、前記複数の収容室のうち第1収容室に前記第1熱交換コアを収容し、前記複数の収容室のうち第2収容室に前記第2熱交換コアを収容し、前記ケースに、前記貯留部内の前記第1熱媒体と、前記第2熱媒体との間で熱交換を行う熱交換部を設けた、ことを特徴とする熱交換器に係るものである。
【0009】
また、本発明は、上記の熱交換器を備えた車両用空調装置に係るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高効率の熱交換が可能でありながらも部品点数を削減し、それに伴うコストの削減、また省スペース化が可能な熱交換器およびそれを備えた車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置の一部を示す模式図である。
図2】第1実施形態に係る熱交換器を模式的に示す平面図である。
図3】第1実施形態に係る熱交換器の斜視図である。
図4】第1実施形態に係る熱交換器の分解斜視図である。
図5】第1実施形態に係る貯留部を模式的に示す断面図である。
図6】第2実施形態に係る車両用空調装置の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。また、各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、各図において、部材の大きさ、形状、厚み等を適宜誇張して表現する。
【0013】
<第1実施形態>
図1図5を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る熱交換器10を備える車両用空調装置100の主要な構成の一例を示す概略模式図である。本発明の熱交換器10は、第1熱媒体m1(小矢印で示す)と第2熱媒体m2(大矢印で示す)を熱交換する様々な装置に適用可能であるが、その一例として、車両用空調装置100に用いることができる。第1熱媒体m1は例えば冷媒(例えば、R134aやR1234yf等のフロン系冷媒、COやR290等の自然系冷媒など)であり、第2熱媒体m2は、第1熱媒体m1とは異なる熱媒体(例えば、冷却水(LCCや水)、不凍液や冷却油など)である。なお、本実施形態では、冷媒とは、ヒートポンプ(圧縮・凝縮・膨張・蒸発)における状態変化を伴う冷媒回路Rの循環媒体をいう。一方、第2熱媒体m2は、例えば内燃機関やラジエータなどを含む熱媒体回路における循環媒体であって、冷媒のような状態変化を伴わずに熱の吸収と放熱を行う媒体をいうものとする。以下の説明において「冷媒」と称する構成は第1熱媒体m1に対応し、単に「熱媒体」と称する構成は第2熱媒体m2に対応する。
【0014】
本実施形態の車両用空調装置100は、内燃機関のみを動力とする車両に搭載されてもよいが、内燃機関のみを動力とする車両に比べて内燃機関の廃熱のみでは十分な熱量確保が難しいHEV(Hybrid Electric Vehicle)や、内燃機関の廃熱による暖房ができないEV(Electric Vehicle)等の車両に好適に用いられる。HEVやEVのような車両は、バッテリ(例えば、リチウム電池)が搭載され、外部電源からバッテリに充電された電力を、走行用のモータを含むモータユニットに供給することで駆動し、走行する。車両用空調装置100も、バッテリから供給される電力によって駆動する。
【0015】
<全体構成>
図1に示すように本実施形態に係る車両用空調装置100は例えば、冷媒(第1熱媒体)m1が循環する冷媒回路Rと、熱媒体(第2熱媒体)m2が循環する第1熱媒体回路5と、熱媒体(第2熱媒体)m2が循環する第2熱媒体回路6を含み、冷媒回路Rを用いたヒートポンプ運転を行うことにより車室内の空調を行う。
【0016】
第1熱媒体回路5は例えば、冷媒回路Rを流れる高温の冷媒m1と熱交換を行う熱媒体m2が循環する高温側の熱媒体回路である。第2熱媒体回路6は例えば、冷媒回路Rを流れる低温の冷媒m1と熱交換を行う熱媒体m2が循環する低温側の熱媒体回路である。本実施形態では説明の便宜上、第1熱媒体回路5を高温側熱媒体回路5と称し、第2熱媒体回路6を低温側熱媒体回路6と称する。
【0017】
一例として、高温側熱媒体回路5および低温側熱媒体回路6は配管でつながれており、流れる熱媒体m2は同種となる。しかしながらこれに限らず、高温側熱媒体回路5および低温側熱媒体回路6は、配管でつながれていない独立回路であってもよく、その場合、独立回路となる熱媒体回路に流れる熱媒体m2は他の熱媒体回路を流れる熱媒体m2と異種であってもよい。
【0018】
<冷媒回路>
冷媒回路Rは、圧縮機1と、熱交換器10と、膨張機構4と、貯留部26などが配管(冷媒配管)70により接続されて構成されている。圧縮機1は、冷媒回路Rにおける上流側から冷媒m1を吸入して圧縮し、冷媒m1を高温高圧のガスとして下流側に向けて吐出する。圧縮機1の形式は特に限定されるものではないが、例えばピストン式やスクロール式の電動コンプレッサが採用される。冷媒回路Rは、圧縮機1によって高温高圧のガスとなった冷媒m1を第1熱交換器10Aに通過させて冷媒m1から放熱させ、冷媒m1を冷却する。また、第1熱交換器10Aを通過した冷媒m1を、膨張機構4で減圧させ、第2熱交換器10Bを通過させて吸熱させる。そして低圧となっている冷媒m1を再び圧縮機1で圧縮する。この循環を繰り返す。
【0019】
<熱交換器>
本実施形態の熱交換器10は、第1熱交換器10Aと第2熱交換器10Bを含む。第1熱交換器10Aは例えば高温側熱媒体回路5を流れる熱媒体m2と、冷媒回路Rを流れる冷媒m1の間で熱交換を行う。第2熱交換器10Bは例えば低温側熱媒体回路6を流れる熱媒体m2と、冷媒回路Rを流れる冷媒m1との間で熱交換を行う。
【0020】
<第1熱交換器>
第1熱交換器10Aは、冷媒流路CA(後述する第1熱交換コア11Aにより構成される)と熱媒体流路WAを有する冷媒-熱媒体熱交換器であり、冷媒流路CAが冷媒回路Rに接続し、熱媒体流路WAが高温側熱媒体回路5に接続する。この例では第1熱交換器10Aの冷媒流路CAは、冷媒回路Rの一部を構成し、冷媒回路Rにおいて冷媒m1の凝縮器(放熱器)として機能する。また第1熱交換器10Aの熱媒体流路WAは高温側熱媒体回路5の一部を構成し、高温側熱媒体回路5において熱媒体m2の吸熱器として機能する。
【0021】
<第2熱交換器>
第2熱交換器10Bは、冷媒流路CB(後述する第2熱交換コア11Bにより構成される)と熱媒体流路WBを有する冷媒-熱媒体熱交換器であり、冷媒流路CBが冷媒回路Rに接続し、熱媒体流路WBが低温側熱媒体回路6に接続する。第2熱交換器10Bの冷媒流路CBは、冷媒回路Rの一部を構成し、冷媒回路Rにおいて冷媒m1の蒸発器(吸熱器)として機能する。また第2熱交換器10Bの熱媒体流路WBは低温側熱媒体回路6の一部を構成し、低温側熱媒体回路6において熱媒体m2の放熱器として機能する。
【0022】
<貯留部>
貯留部(液溜部)26は、液体の冷媒m1を貯留する。ここでは一例として、貯留部26は、冷媒回路Rにおいて圧縮機1の上流(第2熱交換器10Bと圧縮機1の間)に設けられ、冷媒回路Rを循環する冷媒m1の気液分離を行うアキュムレータである。アキュムレータでは、蒸発器(第2熱交換コア11B)において蒸発されなかった僅かな液体の冷媒m1(液冷媒)が気体の冷媒m1と分離(気液分離)される。この結果、圧縮機1に液冷媒が吸入されることを抑制している。
【0023】
<熱交換部>
熱交換部27は、本実施形態では貯留部26と一体的に設けられ、貯留部26内の冷媒(第1熱媒体)m1と、第1熱媒体回路5を流れる熱媒体(第2熱媒体)m2との間で熱交換を行う。熱交換部27については後に詳述する。
【0024】
<第1熱媒体回路>
第1熱媒体回路(高温側熱媒体回路)5は、例えば冷媒回路Rの冷媒m1と熱交換が可能な熱媒体m2が循環する回路であり、例えば、循環ポンプ51,第1熱交換器10Aなどが配管により接続される。第1熱媒体回路5は例えば、不図示の室内熱交換器(HVAC(Heating Ventilation and Air-Conditioning)ユニットの放熱器など)を経由して熱媒体m2が循環する。
【0025】
<第2熱媒体回路>
第2熱媒体回路(低温側熱媒体回路)6は、冷媒回路Rの冷媒m1と熱交換可能な熱媒体m2が循環する回路であり、例えば、循環ポンプ61,第2熱交換器10Bなどが配管により接続される。第2熱媒体回路6は例えば、不図示の温調機器(例えば、バッテリーやモーターなど)に設けた熱交換部を経由して熱媒体m2が循環する。
【0026】
図2を参照して本実施形態の熱交換器10について説明する。図2は、本実施形態の熱交換器10の概略構成を示す平面模式図である。本実施形態の説明においては、上下等の記載を用いるが、上下等の記載は図面における各構成の相対的な関係を示すために便宜的に用いたものである。つまり熱交換器10が図示した状態と上下逆に設置されれば、本実施形態で記載する上方が設置時の下方になる。また、熱交換器10を横倒しに設置して使用すれば、上下方向が横方向になり、斜めに設置して使用すれば、上下方向が斜め上下方向となる。
【0027】
熱交換器10には、第1熱媒体(冷媒)m1と第2熱媒体(冷却水などの熱媒体)m2が流れるが、本実施形態では説明の便宜上、冷媒m1が流通する図示x方向を流通方向x、流通方向xに直角な図示y方向を幅方向y、流通方向xと幅方向yに直角なz方向を積層方向zと称して説明する。冷媒m1は、熱交換器10の内部において折り返すなど流通する方向が変化する場合もあるが、全体として流入側から流出側に向かう方向を流通方向xとする。なお、本願では、xyz方向は+方向と-方向を区別しない。
【0028】
本実施形態の熱交換器10は、図1に示す回路上分離して示される第1熱交換器10Aと第2熱交換器10Bが一体となった一つの装置として構成される。熱交換器10は、図2に示すように、複数の熱交換コア11(ここでは、第1熱交換コア11Aと第2熱交換コア11B)と、1つのケース3を有する。詳細は後述するが、第1熱交換コア11Aは、冷媒m1の流入口34Aと流出口35Aと、その内部に形成される冷媒流路(図1における冷媒流路CA)を有する。第2熱交換コア11Bの構成は例えば、第1熱交換コア11Aと同様であり、第2熱交換コア11Bは、冷媒m1の流入口34Bと流出口35Bとその内部に形成される冷媒流路(図1における冷媒流路CB)を有する。
【0029】
これにより、第1熱交換コア11A、第2熱交換コア11Bの内部に冷媒m1が流れる。なお、本実施形態では一例として第2熱交換コア11Bの構成、およびサイズはそれぞれ第1熱交換コア11Aと同様としているが、これに限らず、第1熱交換コア11Aと第2熱交換コア11Bは構成および/またはサイズの異なる熱交換コアであっても良い。また、第1熱交換コア11Aと第2熱交換コア11B以外に、他の熱交換コア11を有してもよい。
【0030】
冷媒m1は、冷媒回路Rの循環中にその状態や温度が変化するが、第1熱交換コア11Aの内部においては相対的に高温の冷媒m1が流れる。以下、第1熱交換コア11Aを流通する高温の冷媒m1を高温冷媒mh1と称する。また、第1熱交換コア11Aの流入口34Aと流出口35Aを以下、第1冷媒流入口34Aおよび第1冷媒流出口35Aという。
【0031】
一方第2熱交換コア11Bの内部においては相対的に低温の冷媒m1が流れる。以下、第2熱交換コア11Bを流通する低温の冷媒m1を低温冷媒mc1と称する。また、第2熱交換コア11Bの流入口34Bと流出口35Bを以下、第2冷媒流入口34Bおよび第2冷媒流出口35Bという。
【0032】
ケース3は、全体形状が略直方体(略六面体)であり、中空の内部空間を有する。詳細には、ケース3は積層方向zの両端が開放された略角筒状の本体部33と、本体部33の開放部分を覆う上側カバー部材と下側カバー部材(いずれも図2において不図示)を有する。ケース3は、例えば樹脂材料などにより構成される。またケース3内部空間には、熱媒体m2が流通可能である。
【0033】
また、ケース3には熱交換部27が設けられる。ここで「ケース3に熱交換部27が設けられる」とは、熱交換部27がケース3に組み込まれ、あるいはケース3の内部に収容され、あるいはケース3に取り付けられるなどしてケース3と熱交換部27が一体的に構成されることをいう。図2では、ケース3の内部に熱交換部27が組み込まれ(あるいは収容されて)ケース3と一体的に設けられる例を示している。
【0034】
より具体的に、ケース3の内部空間は、複数の収容室30(ここでは第1収容室30A,第2収容室30B,第3収容室30C)に区画され、それぞれの収容室30に熱交換コア11と貯留部26がそれぞれ収容される。3つの収容室30は例えば横並びで、第1収容室30Aと第2収容室30Bの間に第3収容室30Cが配置される。第1収容室30Aおよび第2収容室30Bはいずれも熱交換コア11が収容可能な形状・サイズを有し、例えば、熱交換コア11の外形状に沿う略直方体状の空間である。第3収容室30Cは、貯留部26が収容可能な形状・サイズを有し、例えば貯留部26の外形状に沿う略円柱状の空間である。そして第1収容室30Aには第1熱交換コア11Aが収容されて第1熱交換器10Aが構成され、第2収容室30Bには第2熱交換コア11Bが収容されて第2熱交換器10Bが構成される。そして、第3収容室30Cには貯留部26が収容されて貯留部26と熱交換部27が一体的に構成される。このように本実施形態の熱交換器10は、第1熱交換器10Aと、第2熱交換器10Bと、貯留部26と熱交換部27とが共通のケース3に一体的に設けられている。
【0035】
貯留部(アキュムレータ)26は図1に示す回路上、圧縮機1より上流に設けられ、冷媒m1の流入口34Cと流出口35Cとその内部に形成される冷媒流路(後述する)を有する。これにより貯留部26の内部には気体および液体の冷媒m1が流入する。この冷媒m1は、第1熱交換コア11Aの内部を流れる高温冷媒mh1と比較して低温であり、第2熱交換コア11Bの内部を流れる低温冷媒mc1より高温である。以下、貯留部26を流れる冷媒m1を説明の便宜上「中温冷媒mm1」という。また、貯留部26の流入口34Cと流出口35Cを以下、第3冷媒流入口34Cおよび第3冷媒流出口35Cという。
【0036】
図1に示す回路構成の場合、図2における冷媒m1の流れは以下の通りである。まず、圧縮機1から送出される冷媒m1(高温冷媒mh1)は、第1熱交換コア11Aの第1冷媒流入口34Aから第1熱交換コア11Aの内部に流入し、第1冷媒流出口35Aから流出する。そして膨張機構4を経て第2熱交換コア11Bの第2冷媒流入口34Bから第2熱交換コア11Bの内部に流入し、第2冷媒流出口35Bから流出する。そして貯留部26の第3冷媒流入口34Cから貯留部26の内部に流入し、第3冷媒流出口35Cから流出して圧縮機1に至る。
【0037】
第1収容室30Aの内壁と第1熱交換コア11Aの外表面(この例では第1収容室30Aの内壁と対向する4面)との間は所定の隙間G1が確保され、第2収容室30Bの内壁と第2熱交換コア11Bの外表面(この例では第2収容室30Bの内壁と対向する4面)の間も所定の隙間G2が確保される。また第3収容室30Cの内壁と貯留部26の外表面(この例では第3収容室30Cの内壁と対向する円柱状の周面)の間も所定の隙間G3が確保される。
【0038】
また第1収容室30Aの内壁と第1熱交換コア11Aの外表面は密着し、すなわち隙間G1の大きさは実質0(ゼロ)であってもよい。同様に、第2収容室30Bの内壁と第2熱交換コア11Bの外表面は密着し、すなわち隙間G2の大きさは実質0(ゼロ)であってもよい。
【0039】
複数の収容室30はそれぞれ熱媒体m2の流入口36A,36B、36Cと流出口37A,37B、流出口37Cを備え、ケース3(第1収容室30A、第2収容室30B、第3収容室30C)の内部にはそれぞれ熱媒体m2が流れる。具体的に、ケース3の本体部33は、積層方向zから見た平面視において略矩形状であり、対向する第1側面33Aおよび第2側面33Bと、対向する第3側面33Cおよび第4側面33Dを有する。そして、第1側面33Aには、第1収容室30Aに連通する第1熱媒体流入口36Aが設けられ、同じく第1側面33Aに第2収容室30Bに連通する第2熱媒体流入口36Bと、第3収容室30Cに連通する第3熱媒体流出口37Cが設けられる。また、第2側面33Bには第1収容室30Aに連通する第1熱媒体流出口37Aと、第2収容室30Bに連通する第2熱媒体流出口37B、第3収容室30Cに連通する第3熱媒体流入口36Cが設けられる。図2では詳細な図示を省略しているが、第3収容室30Cの第3熱媒体流出口37Cと、第1収容室30Aの第1熱媒体流入口36Aは、直接的に接続している。
【0040】
第1収容室30Aには第1熱交換コア11Aが収容され、その内部には圧縮機1により圧縮された高温の第1熱媒体m1(高温冷媒mh1)が流れる。そして第1収容室30Aには、高温側熱媒体回路5を循環し、この高温冷媒mh1と熱交換する第2熱媒体m2が流れる。
【0041】
第2収容室30Bには第2熱交換コア11Bが収容される。第2熱交換コア11Bはその内部に低温の第1熱媒体m1(低温冷媒mc1)が流れる。そして第2収容室30Bには、低温側熱媒体回路6を循環し、この低温冷媒mc1と熱交換する第2熱媒体m2が流れる。
【0042】
第3収容室30Cには貯留部26が収容される。貯留部26の内部には中温冷媒mm1が流れる。そして第3収容室30Cには、高温側熱媒体回路5を循環し、貯留部26の内部の中温冷媒mm1と熱交換する第2熱媒体m2が流れる。
【0043】
第2熱媒体m2は高温側熱媒体回路5の循環中に温度が変化するが、低温側熱媒体回路6を流れる第2熱媒体m2(こちらも循環中に温度が変化する)と比較して、相対的に高温となっている。本実施形態では説明の便宜上、高温側熱媒体回路5を流れる第2熱媒体m2を高温側熱媒体mh2と称し、低温側熱媒体回路6を流れる第2熱媒体m2を低温側熱媒体mc2と称する。
【0044】
高温側熱媒体回路5では、高温側熱媒体mh2が第1熱交換器10Aに流れ込む以前に、図1に示すように、熱交換部27を通過する。図2を参照して説明すると、第1熱媒体流出口37Aから流出した高温側熱媒体mh2は、高温側熱媒体回路5において最も高温となっており、高温側熱媒体回路5を循環し、第3熱媒体流入口36Cから第3収容室30Cに流入する。そして、貯留部26の外面と第3収容室30Cの内面に生じる隙間G3を流路として流れ、第3収容室30Cの第3熱媒体流出口37Cから流出する。このとき、貯留部26の内部には、中温冷媒mm1が流れているため、第3収容室30Cの隙間G3を流れる高温側熱媒体mh2は中温冷媒mm1と熱交換し、結果、第3熱媒体流出口37Cでは、第3熱媒体流入口36Cよりも低温の高温側熱媒体mh2となる。第3熱媒体流出口37Cは、第1収容室30Aの第1熱媒体流入口36Aに接続しており、熱交換部27により温度が下げられた高温側熱媒体mh2は、第1熱媒体流入口36Aから第1収容室30Aに流入する。そして高温側熱媒体mh2は、第1収容室30Aの内壁と第1熱交換コア11Aの間の隙間G1および第1熱交換コア11Aによって形成された隙間(後述する)を流路として第1熱媒体流出口37Bに向かって流れ、第1熱交換コア11Aの内部を流れる第1熱媒体m1(高温冷媒mh1)との間で熱交換を行う。
【0045】
このように本実施形態では、ケース3内に区画された収容室(第3収容室30C)に貯留部26を収容し、貯留部26の外面と第3収容室30Cの内面を第2熱媒体m2の流路とする熱交換部27を構成し、当該熱交換部27を流れる第2熱媒体m2を第1収容室30Aに流入させるように構成した。
【0046】
このような構成により、第1熱交換器10A(第1収容室30A)には、熱交換部27により温度が下げられた高温側熱媒体mh2が流入する。つまり本実施形態では、第1熱交換器10Aに、熱交換部27を通さない(高温の)高温側熱媒体mh2が流入する構成と比較して、第1熱交換器10Aにおけるエンタルピー差を広げることができる。つまり凝縮器として機能する第1熱交換コア11Aの熱交換能力を向上させることができるので、車両用空調装置100全体としてのシステム効率を向上することができる。
【0047】
一方、低温側熱媒体回路6において循環する低温側熱媒体mc2は、第2熱媒体流入口36Bから第2収容室30Bに流入し、第2収容室30Bの内壁と第2熱交換コア11Bの間の隙間G2,および第2熱交換コア11Bによって形成された隙間(後述する)を流路として第2熱媒体流出口37Bに向かって流れ、第2熱交換コア11Bの内部を流れる第1熱媒体m1(低温冷媒mc1)との間で熱交換を行う。なお、それぞれの熱交換コア11において第1熱媒体m1と第2熱媒体m2は対向する方向に流通する。
【0048】
ここで、第1収容室30A、第2収容室30Bは、仕切り部30Pにより確実に仕切られており、第1収容室30Aを流通する高温側熱媒体mh2と第2収容室30Bを流通する低温側熱媒体mc2が混在することはない。
【0049】
本実施形態の熱交換器10は、2つの熱交換コア11(11A,11B)と、貯留部26および熱交換部27とを1つのケース3に収容する(ケース3を共通化できる)。したがって複数の熱交換コア11を個別に(単独で)それぞれケースに収容する構成と比較して、部品点数の削減が可能となり、それに伴う低コスト化、および省スペース化が図れる。
【0050】
また、第1収容室30Aおよび第2収容室30Bは仕切り部30Pにより確実に区画され、それぞれに第1熱交換コア11Aおよび第2熱交換コア11Bを収容するため、2つの熱交換コア11A、11Bを異なる温調対象とすることができる。すなわち、所望の温度帯に温調された第2熱媒体m2をそれぞれ異なる温調対象(第1熱交換コア11A,第2熱交換コア11B)に供給することができる。
【0051】
また、貯留部26の内部を流れる中温冷媒mm1と、第2熱媒体m2とを熱交換させる熱交換部27を設け、高温側熱媒体回路5を循環する相対的に高温の高温側熱媒体mh2を当該熱交換部27で中温冷媒mm1と熱交換させ、温度が下がった高温側熱媒体mh2を第1熱交換コア11Aに流入させるようにしている。これにより第1熱交換コア11A内の高温冷媒mh1の圧力の低下により第1熱交換器10Aの熱交換能力を向上させることができるので、車両用空調装置100全体としてのシステム効率を向上することができる。
【0052】
また、このようにシステム効率を向上させた構成でありながら、貯留部26および熱交換部27を熱交換器10とケース3を共通に一体的に設けているため、冷媒回路Rにおける冷媒配管70の長さを、従来構造(例えば、特許文献2等)と比較して短縮化でき、回路構成の簡素化、冷媒回路Rのコンパクト化が可能となる。これにより、車両用空調装置100としての小型化、省スペース化とシステム効率の向上を両立させることができる。
【0053】
また、高温側熱媒体mh2は、第1熱交換コア11Aと熱交換する第1収容室30A内から第1熱媒体流出口37A付近が高温側熱媒体回路5の循環経路中において、最も高温となっている。本実施形態では、第1熱交換器10Aと第2熱交換器10Bの間に貯留部26を配置する構成としたので、ケース3の内部を流れる第2熱媒体m2の温度としては、第1収容室30A内が高温、第2収容室30B内が低温、第3収容室30C内がそれらの間の温度(中温)となり、第1収容室30A、第3収容室30C,第2収容室30Bの順で低くなる。また、第1熱媒体m1の温度も第1熱交換コア11A(高温冷媒mh1)、貯留部26(中温冷媒mm1)、第2熱交換コア11B(低温冷媒mc1)の順で低くなる。
【0054】
従って、隣り合う収容室30間において、内部を流れる冷媒m1および熱媒体m2の温度差をそれぞれに小さくすることができるため、温度差による樹脂製のケース3の熱歪みを抑えることができる。
【0055】
更に、上記の例では貯留部26は、凝縮器として機能する第1熱交換コア11Aと、蒸発器として機能する第2熱交換コア11Bの間に接続されるアキュムレータであり、そのの内部を流れる中温冷媒mm1は熱交換部27において高温側熱媒体mh2と熱交換を行うことができる。従来のアキュムレータにおいては、冷媒m1を完全に気液分離できない場合もあり、そうなると液冷媒が圧縮機1に流れ込み、液圧縮を引き起こす問題がある。これを回避する(液圧縮を抑制する)ために、アキュムレータとは別体の内部熱交換器を設けることも考えられるが、その場合熱交換器の数が増え、車両用空調装置100の小型化、省スペース化が進まない。本実施形態では、高温側熱媒体回路5の熱源(第1熱交換器10A)の上流にアキュムレータ(貯留部26)を配置し、アキュムレータ26内の冷媒m1(液冷媒)と高温側熱媒体mh2との間で熱交換できるため、アキュムレータ26内に残留する液冷媒を低減でき、液圧縮を抑制できる。
【0056】
また、高温側熱媒体回路5の熱源(第1熱交換器10)の上流にアキュムレータ26を配置し、アキュムレータ26の収容室(第3収容室30C、熱交換部27)を流れる高温側熱媒体mh2を第1熱交換コア11Aの収容室(第1収容室30A)に流入させるようにしたため、加熱要求の温調機器への影響(暖房能力等に与える影響)を抑えつつ、アキュムレータ26内の液冷媒を低減できる。
【0057】
更にまた、アキュムレータ26とこれを収容するケース3によって、中温冷媒mm1と高温側熱媒体mh2を熱交換する熱交換部27を構成できるので、配管70,71の短縮化が可能となり、アキュムレータ26を含む熱交換器10のコンパクト化が実現する。その結果、車両用空調装置100の小型化、省スペース化が図れる。
【0058】
更に本実施形態では第1熱媒体流入口36A、第2熱媒体流入口36Bおよび第3熱媒体流出口37Cは、本体部33の第1側面33Aに揃って設けられ、第1熱媒体流出口37A、第2熱媒体流出口37Bおよび第3熱媒体流入口36Cは、本体部33の第2側面33Bに揃って設けられる。このため、所望の温度帯に温調された第2熱媒体m2をそれぞれ異なる温調対象(第1熱交換コア11A,第2熱交換コア11B、熱交換部27)が収容される収容室30(30A,30B、30C)に供給する際、第2熱媒体m2の配管の取り回しが複雑にならず、これによっても省スペース化が図れる。
【0059】
以下、図3図7を参照して、本実施形態の熱交換器10について具体例を挙げてより詳細に説明する。図3図7に示す熱交換器10の各構成は一例であり、熱交換器10は図3図7に示す構成に限るものではない。
【0060】
<熱交換器>
図3は熱交換器10の外観斜視図であり、図4は熱交換器10の特に第1熱交換器10A部分の分解斜視図である。図3および図4を参照して、熱交換器10は略六面体の外形状を有するケース3とその内部に収容される熱交換コア11を有している。ケース3は、積層方向zの両端が開口する角筒状の本体部33と、開口を覆う上側カバー部材31と下側カバー部材32を有する。そして第1収容室30Aにおいて、上側カバー部材31の対角位置に、高温冷媒mh1が流入する第1冷媒流入口34Aと、流出する第1冷媒流出口35Aが設けられている。また、第1収容部30Aの側方において、高温側熱媒体mh2が流入する第1熱媒体流入口36Aがケース3の第1側面33Aに設けられ、高温側熱媒体mh2が流出する第1熱媒体流出口37Aが第2側面33Bに設けられている。
【0061】
また第2収容室30Bにおいて、上側カバー部材31の対角位置に、低温冷媒mc1が流入する第2冷媒流入口34Bと、流出する第2冷媒流出口35Bが設けられている。また、第2収容部30Bの側方において、低温側熱媒体mc2が流入する第2熱媒体流入口36Bがケース3の第1側面33Aに設けられ、低温側熱媒体mc2が流出する第2熱媒体流出口37Bが第2側面33Bに設けられている。
【0062】
また第3収容室30Cにおいて、上側カバー部材31に、中温冷媒mm1が流入する第3冷媒流入口34Cと、流出する第3冷媒流出口35Cが設けられている。また、第3収容部30Cの側方において、高温熱媒体mh2が流入する第3熱媒体流入口36Cがケース3の第2側面33Bに設けられ、高温熱媒体mh2が流出する第3熱媒体流出口37Cが第1側面33Aに設けられている。
【0063】
なお、図3の例では上側カバー部材31と下側カバー部材32を3つの収容室30A、30B,30Cにおいて共通(共有)の構成としているが、それぞれの収容室30A、30B,30Cごとに独立して上側カバー部材31と下側カバー部材32が設けられる構成であってもよい。
【0064】
図4は、一の熱交換コア11(例えば、第1熱交換コア11A)とその収容室(例えば第1収容室30A)の分解斜視図である。第1熱交換コア11(第1収容室30A)と第2熱交換コア11B(第2収容室30B)の構成は同様であるので、図4図7においては、第1熱交換コア11Aと第2熱交換コア11B、すなわち、高温側、低温側を区別することなく説明する。
【0065】
<熱交換コア>
熱交換コア11(例えば、第1熱交換コア11A)は、積層方向zから見た平面視において対角位置に、2つのパッド15が設けられる。それぞれのパッド15は貫通孔を有し、熱交換コア11の冷媒流入口34(例えば、第1冷媒流入口34A)は、一方のパッド15の貫通孔により構成され、冷媒流出口35(例えば、第1冷媒流出口35A)は、他方のパッド15の貫通孔により構成される。熱交換コア11は、2つのパッド15を除いて、ケース3に収納される。熱交換コア11の主要部はケース3の中に納められ、上側カバー部材31と下側カバー部材32により覆われる(図3参照)。
【0066】
熱交換コア11は、熱交換プレート2を、積層方向zに複数重ねたコア部12と、コア部12の積層方向zにおける上方に設けられる上側エンドプレート13と、コア部12の積層方向zにおける下方に設けられる下側エンドプレート14とを有している。熱交換プレート2、上側エンドプレート13、下側エンドプレート14およびパッド15はアルミニウム製であり、熱交換コア11は、これらのアルミニウム製の部品をアルミニウム用のろう付け等により一体化して形成されている。熱交換コア11は、第2熱媒体m2によりアルミニウム製の熱交換コア11が劣化しないように、外面が樹脂によりコーティングされていてもよい。1つの熱交換プレート2の内部には、冷媒流入口34から冷媒流出口35に向かって流れる冷媒m1の流路(図1に示す冷媒流路CA、CB)が形成されている。また、積層される(上下の)熱交換プレート2の間に隙間が確保され、この隙間が第2熱媒体m2の流路(図1に示す熱媒体流路WA,WB)となる。
【0067】
熱媒体流入口36(例えば第1熱媒体流入口36A)から収容室30に流入した熱媒体m2は、積層方向zおよび幅方向yに分流して複数の熱交換プレート2の間、およびコア部12の側面とケース3の隙間G1を通過し、熱媒体流出口37(例えば、第1熱媒体流出口37A)から流出する。それぞれの熱交換コア11において第1熱媒体m1と第2熱媒体m2は対向する方向に流通する。このようにして、熱交換プレート2の内側の第1熱媒体m1と、熱交換プレート2の外側の第2熱媒体m2との間で熱交換が行われる。
【0068】
<貯留部および熱交換部>
図5を参照して、本実施形態の貯留部26および熱交換部27について、貯留部26がアキュムレータである場合を例に説明する。同図は第3収容室30Cを流通方向xに沿う断面線で切断した断面概要図である。貯留部(アキュムレータ)26は、中空の圧力容器26aと、冷媒m1を圧力容器26a内に流入させる冷媒流入管26bと、圧力容器26a内から冷媒m1を流出させるための冷媒流出管26cと、圧力容器26a内における冷媒流入管26bの端部と冷媒流出管26cの端部との間に設けられた仕切板26dと、圧力容器26a内の水分を吸着するための乾燥材26eを有している。
【0069】
アキュムレータ26は、ケース3の第3収容部30Cに収容される。冷媒流入管26bは、一端がケース3の上側カバー部材31に設けられた第3冷媒流入口34Cと連通し、圧力容器26aの上部から下方に直線状に延びており、他端の開口が下方を臨んでいる。冷媒流出管26cは、一端が圧力容器26aの内部に位置し、上部から下方に延びるとともに、圧力容器26aの下部側において屈曲して上方に延びており、他端が上側カバー部材31に設けられた第3冷媒流出口35Cと連通している。冷媒流出管26cの下部側に位置する屈曲部分には、圧力容器26a内に溜まった冷凍機油を冷媒流出管26c内に流入させるための吸入孔26fが形成されている。第3冷媒流入口34Cを介して冷媒流入管26bから圧力容器26a内に流入した冷媒m1(中温冷媒mm1)は、仕切板26dに接触した後、内壁に沿って下方に流通し、気体の冷媒m1が冷媒流出管26c、第3冷媒流出口35Cを流通して圧力容器26aから流出する。すなわち、冷媒流入管26bおよび冷媒流出管26cが貯留部26における冷媒流路である。
【0070】
ケース3の第2側面33Bには第3熱媒体流入口36Cが設けられ、第1側面33Aには第3熱媒体流出口37Cが設けられている。第3収容室30Cの内面と、アキュムレータ26(圧力容器26a)の外表面の間は隙間G3が確保され、ここが第2熱媒体m2(高温側熱媒体mh2)の流路となる。第3熱媒体流入口36Cおよび第3熱媒体流出口37Cは、第1熱媒体回路5の配管(熱媒体配管71)と接続している。第1熱媒体回路5を流通する高温側熱媒体mh2は、第3熱媒体流入口36Cを介して、隙間G3(熱媒体流路)に流入し、圧力容器26aの外周面に沿って流れ、第3熱媒体流出口37Cを介して熱媒体配管71に流出する。熱媒体流路(隙間G3)を流れる高温熱媒体mh2は、圧力容器26aを介して冷媒流入管26bおよび冷媒流出管26cを流通する中温冷媒mm1と熱交換する。このように、本実施形態では、アキュムレータ26と、アキュムレータ26を流れる中温冷媒mm1と、第3収容室30Cを流れる高温側熱媒体mh2との間で熱交換を行う熱交換部27とがケース3に一体的に組み込まれている(収容されている)。
【0071】
<第2実施形態>
図6を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。以下、主に第1実施形態との異なる部分について説明をし、第1実施形態と同一構成要素は同一符号で示し、その説明を省略する。図6は、本発明の第2実施形態に係る熱交換器10を備える車両用空調装置100の主要な構成の一例を示す概略模式図である。
【0072】
<冷媒回路>
冷媒回路Rは、圧縮機1と、熱交換器10と、膨張機構4と、貯留部28などが配管(冷媒配管)70により接続されて構成されている。
【0073】
<貯留部>
貯留部(液溜部)28は、液体の冷媒m1を貯留する。ここでは一例として、貯留部28は、冷媒回路Rにおいて第1熱交換器10Aの下流(第1熱交換器10Aと膨張機構4の間)に設けられ、第1熱交換コア11A(凝縮器)によって凝縮されなかった(液化されなかった)僅かな気体の冷媒m1が貯留されるレシーバ(レシーバタンク、リキッドレシーバともいう)である。レシーバでは気体の冷媒m1は液冷媒と分離(気液分離)され、乾燥剤やストレーナによって水分や不純物が取り除かれる。貯留部28の内部を流れる冷媒m1は、第1熱交換コア11Aの内部を流れる高温冷媒mh1と比較して低い中温冷媒mm1である。
【0074】
<熱交換部>
熱交換部29は、貯留部28と一体的に設けられ、貯留部28内の中温冷媒mm1と、第2熱媒体回路6を流れる低温側熱媒体mc2との間で熱交換を行う。
【0075】
第2本実施形態の熱交換器10の概略構成は、図2を参照して説明する。第2実施形態の熱交換器10は、図2における貯留部(アキュムレータ)26を、貯留部(レシーバ)27に置き換え、さらに、第3収容室30Cの第3熱媒体流出口37Cと、第2収容室30Bの第2熱媒体流入口36Bとを、直接的に接続した構成である。これにより、第3収容室30C内には、低温側熱媒体mc2が流通する。また、図2における熱交換部27は第2実施形態における熱交換部29となる。
【0076】
以下、図2の貯留部26を貯留部28と,熱交換部27を熱交換部29と、第3収容室30C内を流通する熱媒体m2を低温側熱媒体mc2と読み替えて説明する。
【0077】
ケース3の内部空間は、複数の収容室30(ここでは第1収容室30A,第2収容室30B,第3収容室30C)に区画され、それぞれの収容室30に第1熱交換コア11A,第2熱交換コア11Bと貯留部28がそれぞれ収容される。具体的に、3つの収容室30は例えば横並びで、第1収容室30Aと第2収容室30Bの間に第3収容室30Cが配置される。第1収容室30Aには第1熱交換コア11Aが収容されて第1熱交換器10Aが構成され、第2収容室30Bには第2熱交換コア11Bが収容されて第2熱交換器10Bが構成される。そして、第3収容室30Cには貯留部28が収容されて貯留部28と熱交換部29が一体的に構成される。つまり、第2本実施形態の熱交換器10も、第1熱交換器10Aと、第2熱交換器10Bと、貯留部28と熱交換部29とが共通のケース3に一体的に設けられている。
【0078】
貯留部28は、冷媒m1(中温冷媒mm1)の第3冷媒流入口34Cと第3冷媒流出口35Cとその内部に形成される冷媒流路を有する。貯留部28は、図6に示す回路上、第1熱交換コア11Aの下流に設けられ、貯留部28の内部には気体および液体の中温冷媒mm1が流入する。
【0079】
図6に示す回路構成の場合、図2の構成における冷媒m1の流れは以下の通りである。まず、圧縮機1から送出される冷媒m1は、第1熱交換コア11Aの第1冷媒流入口34Aから第1熱交換コア11Aの内部に流入し、第1冷媒流出口35Aから流出する。そして貯留部(レシーバ)28の第3冷媒流入口34Cから貯留部28の内部に流入し、第3冷媒流出口35Cから流出する。そして、膨張機構4を経て第2熱交換コア11Bの第2冷媒流入口34Bから第2熱交換コア11Bの内部に流入し、第2冷媒流出口35Bから流出して圧縮機1に至る。
【0080】
第3収容室30Cの内壁と貯留部28の外表面(この例では第3収容室30Cの内壁と対向する円柱状の周面)の間は、所定の隙間G3が確保される。第3収容室30Cには貯留部28が収容され、隙間G3を流路として、低温側熱媒体回路6を循環する第2熱媒体m2(低温側熱媒体mc2)が流れる。第3収容室30Cの内部の熱交換部29において低温側熱媒体mc2は、貯留部28の内部の中温冷媒mm1と熱交換する。
【0081】
低温側熱媒体回路6では、低温側熱媒体mc2が第2熱交換器10Bに流れ込む以前に、図6に示すように、熱交換部29を通過する。図2を参照して説明すると、第2熱媒体流出口37Bから流出した低温側熱媒体mc2は、第2熱媒体回路6において最も低温となっており、第2熱媒体回路6を循環し、第3熱媒体流入口36Cから第3収容室30Cに流入する。そして貯留部28の外面と第3収容室30Cの内面に生じる隙間G3を流路として流れ、第3収容室30Cの第3熱媒体流出口37Cから流出する。このとき、貯留部28の内部には、中温冷媒mm1が流れているため、第3収容室30Cの隙間G3を流れる低温温側熱媒体mc2は中温冷媒mm1と熱交換し、結果。第3熱媒体流出口37Cでは、第3熱媒体流入口36Cよりも高温の低温側熱媒体mc2となる。第3熱媒体流出口37Cは、第2収容室30Bの第2熱媒体流入口36Bに接続しており、熱交換部29により温度が上げられた低温側熱媒体mc2は、第2熱媒体流入口36Bから第2収容室30Bに流入する。そして低温側熱媒体mc2は、第2収容室30Bの内壁と第2熱交換コア11Bの間の隙間G2および第2熱交換コア11Bによって形成された隙間を流路として第2熱媒体流出口37Bに向かって流れ、第2熱交換コア11Bの内部を流れる第1熱媒体m1(低温冷媒mc1)との間で熱交換を行う。
【0082】
このように本実施形態では、ケース3内に区画された収容室(第3収容室30C)に貯留部28を収容し、貯留部28の外面と第3収容室30Cの内面を第2熱媒体m2の流路として熱交換部29を構成し、当該熱交換部29を流れ第2収容室30Bから流出する第2熱媒体m2を第2収容室30Bに流入させるように構成した。
【0083】
このような構成により、貯留部(レシーバ)28内部を流れる冷媒m1(気液分離した液冷媒、中温冷媒mm1)を冷却でき、サブクール(過冷却度)を大きくできる。この結果、エンタルピー差が大きくなるので、第2熱交換器10Bの熱交換能力を向上させることができる。また、第2熱交換器10B(第2収容室30B)には、熱交換部29により温度が上げられた低温側熱媒体mc2が流入する。つまり本実施形態では、第2熱交換器10Bに、熱交換部29を通さない(低温の)低温側熱媒体mc2が流入する構成と比較して、第2熱交換コア11Bの熱交換能力を向上させることができる。この結果、車両用空調装置100全体としてのシステム効率を向上することができる。
【0084】
一方、高温側熱媒体回路5において循環する高温側熱媒体mh2は、第1熱媒体流入口36Aから第1収容室30Aに流入し、第1収容室30Aの内壁と第1熱交換コア11Aの間の隙間G1,および第1熱交換コア11Aによって形成された隙間を流路として第1熱媒体流出口37Aに向かって流れ、第1熱交換コア11Aの内部を流れる第1熱媒体m1(高温冷媒mh1)との間で熱交換を行う。
【0085】
第2実施形態の熱交換器10は、2つの熱交換コア11(11A,11B)と、貯留部(レシーバ)28および熱交換部29とを1つのケース3に収容する(ケース3を共通化できる)。したがって複数の熱交換コア11を個別に(単独で)それぞれケースに収容する構成と比較して、部品点数の削減が可能となり、それに伴う低コスト化、および省スペース化が図れる。
【0086】
また、第1収容室30Aおよび第2収容室30Bは仕切り部30Pにより確実に区画され、それぞれに第1熱交換コア11Aおよび第2熱交換コア11Bを収容するため、2つの熱交換コア11A、11Bを異なる温調対象とすることができる。すなわち、所望の温度帯に温調された第2熱媒体m2をそれぞれ異なる温調対象(第1熱交換コア11A,第2熱交換コア11B)に供給することができる。
【0087】
また、貯留部28の内部を流れる中温冷媒mm1と、第2熱媒体m2とを熱交換させる熱交換部29を設け、低温側熱媒体回路6を循環する低温側熱媒体mc2を当該熱交換部29で中温冷媒mm1と熱交換させる。これにより第2熱交換器10Bの熱交換能力を向上させることができ、結果として、車両用空調装置100全体としてのシステム効率を向上することができる。
【0088】
また、このようにシステム効率を向上させた構成でありながら、貯留部28および熱交換部29を熱交換器10とケース3を共通に一体的に設けているため、冷媒回路Rにおける冷媒配管70の長さを、従来構造(例えば、特許文献2等)と比較して短縮化でき、回路構成の簡素化、冷媒回路Rのコンパクト化が可能となる。これにより、車両用空調装置100としての小型化、省スペース化とシステム効率の向上を両立させることができる。
【0089】
また、第1熱交換器10Aと第2熱交換器10Bの間に貯留部28を配置する構成としたので、これらの内部を流れる冷媒m1の温度は、第1熱交換器10A内の冷媒m1(高温冷媒mh1)、貯留部28内の冷媒m1(中温冷媒mm1)、第2熱交換器10B内の冷媒(低温冷媒mc1)の順で低くなる。同様に、第1収容室30A,第3収容室30B、第2収容室20Bを流れる熱媒体m2の温度もこの順で低くなる。従って、隣り合う収容室30間において、内部を流れる冷媒m1、および熱媒体m2の温度差をそれぞれに小さくすることができるため、温度差による樹脂製のケース3の熱歪みを抑えることができる。
【0090】
更に本実施形態では第1熱媒体流入口36A、第2熱媒体流入口36Bおよび第3熱媒体流入口36Cは、本体部33の第1側面33Aに揃って設けられ、第1熱媒体流出口37A、第2熱媒体流出口37Bおよび第3熱媒体流出口37Cは、本体部33の第2側面33Bに揃って設けられる。このため、所望の温度帯に温調された第2熱媒体m2をそれぞれ異なる温調対象(第1熱交換コア11A,第2熱交換コア11B、熱交換部29)が収容される収容室30(30A,30B、30C)に供給する際、第2熱媒体m2の配管の取り回しが複雑にならず、これによっても省スペース化が図れる。
【0091】
なお、上記の実施形態(第1実施形態、第2実施形態)では、例えば樹脂の射出成型などにより仕切り部30Pにより区画される3つの収容部30A、30B、30Cを有するケース3を例示した。しかしこれに限らず、3つの収容部30A、30B、30Cのうち少なくとも何れかが別体の収容室(箱体)として構成され、後発的に接着手段あるいは固定手段などによって、1つのケース3として(一体的に)固定される構成であってもよい。
【0092】
また、第1熱交換コア11Aと貯留部26(または貯留部28)と第2熱交換コア11Bの並びは、上記の実施形態と入れ替えてもよい。例えば、図2において右から第1熱交換コア11A、第2熱交換コア11B、貯留部26(または貯留部28)の配置にするなどとしてもよい。
【0093】
また、複数の熱交換コア11に設けられる冷媒流路(熱媒体流路も同様)は、すべての熱交換コア11で同様の形状であってもよいし、一または一部の熱交換コア11の冷媒流路の形状が他の熱交換コア11と異なる形状であってもよい。
【0094】
以上、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0095】
1 圧縮機
2 熱交換プレート
3 ケース
4 膨張機構
5 高温側熱媒体回路
6 低温側熱媒体回路
7 外部(室外)熱交換部
8 ヒータコア
9 吸熱器
10 熱交換器
11、11A,11B 熱交換コア
12 コア部
13 上側エンドプレート
14 下側エンドプレート
15 パッド
21 上側プレート
22 下側プレート
23 流路形成部
24 ヘッダ部
26 貯留部(アキュムレータ)
26a 圧力容器
26a アキュムレータ26(圧力容器
26b 冷媒流入管
26c 冷媒流出管
26d 仕切板
26e 乾燥材
26f 吸入孔
27 熱交換部
28 貯留部(レシーバ)
29 熱交換部
30、30A,30B 収容室
31 上側カバー部材
32 下側カバー部材
33 本体部
38 流室
51 循環ポンプ
61 循環ポンプ
70 配管(冷媒配管)
71 配管(熱媒体配管)
80 HVACユニット
100 車両用空調装置
R 冷媒回路
m1 冷媒(第1熱媒体)
m2 熱媒体(第2熱媒体)
mc1 低温冷媒
mc2 低温側熱媒体
mh1 高温冷媒
mh2 高温側熱媒体
mh2 高温熱媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6