IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-弾性波フィルタ 図1
  • 特開-弾性波フィルタ 図2
  • 特開-弾性波フィルタ 図3
  • 特開-弾性波フィルタ 図4
  • 特開-弾性波フィルタ 図5
  • 特開-弾性波フィルタ 図6
  • 特開-弾性波フィルタ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103305
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】弾性波フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/64 20060101AFI20240725BHJP
   H03H 9/145 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H03H9/64 Z
H03H9/145 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007571
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】玉置 範一
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA16
5J097BB11
5J097BB14
5J097CC05
5J097DD21
5J097KK01
5J097KK04
(57)【要約】
【課題】LC共振回路により形成される減衰極以外の帯域の減衰量を確保することができる弾性波フィルタを提供する。
【解決手段】
弾性波フィルタ1は、複数の入出力端子T1、T2と、複数の入出力端子を結ぶ第1経路r1に設けられたフィルタ回路10と、第1経路r1の少なくとも一部と並列接続される第2経路r2に設けられた付加回路20と、を備える。フィルタ回路10は、第1経路r1に設けられた直列腕共振子、および、第1経路とグランドとを結ぶ経路に設けられた並列腕共振子を有する複数の弾性波共振子11と、複数の弾性波共振子11の少なくとも1つとともに共振回路LC1を形成するインダクタと、を有する。付加回路20は、複数のIDT31、32が隣接配置されたIDT群25を有する。付加回路20の通過特性において挿入損失が極小となる損失極小点pm1の周波数は、共振回路LC1の共振周波数と一致している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入出力端子と、
前記複数の入出力端子を結ぶ第1経路に設けられたフィルタ回路と、
前記第1経路の少なくとも一部と並列接続される第2経路に設けられた付加回路と、
を備え、
前記フィルタ回路は、
前記第1経路に設けられた直列腕共振子、および、前記第1経路とグランドとを結ぶ経路に設けられた並列腕共振子を有する複数の弾性波共振子と、
前記複数の弾性波共振子の少なくとも1つとともにLC共振回路を形成するインダクタと、
を有し、
前記付加回路は、複数のIDT(InterDigital Transducer)が隣接配置されたIDT群を有し、
前記付加回路の通過特性において挿入損失が極小となる損失極小点の周波数は、前記LC共振回路の共振周波数と一致している
弾性波フィルタ。
【請求項2】
前記LC共振回路は、前記直列腕共振子と、当該直列腕共振子に並列接続された前記インダクタと、によって構成されている
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項3】
前記LC共振回路は、前記並列腕共振子と、当該並列腕共振子と前記グランドとを結ぶ経路に配置された前記インダクタと、によって構成されている
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項4】
前記LC共振回路の共振周波数は、前記フィルタ回路の前記弾性波共振子によって形成される通過帯域外の減衰極から見て前記フィルタ回路の通過帯域とは反対側に形成されている
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項5】
前記損失極小点は、前記付加回路の通過特性において複数表れ、
複数の前記損失極小点は、第1の損失極小点と、前記第1の損失極小点よりも高い周波数に位置する第2の損失極小点と、を有し、
前記第1の損失極小点の周波数および前記第2の損失極小点の周波数のいずれか一方は、前記共振周波数と一致している
請求項4に記載の弾性波フィルタ。
【請求項6】
前記フィルタ回路は、2つの前記LC共振回路を有し、2つの前記LC共振回路に対応する2つの前記共振周波数を有し、
前記第1の損失極小点と前記第2の損失極小点とによって挟まれる帯域は、2つの前記共振周波数の間の帯域内にある
請求項5に記載の弾性波フィルタ。
【請求項7】
前記フィルタ回路の通過帯域は、2496MHz以上2690MHz以下の周波数帯域を含む
請求項1~6のいずれか1項に記載の弾性波フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルタ回路と、フィルタ回路に並列接続される付加回路とを備える弾性波フィルタが知られている。特許文献1には、共通端子と第1端子とを結ぶ第1経路上に設けられたフィルタ回路と、第1経路上にあって共通端子側に位置する第1ノードおよび第1端子側に位置する第2ノードに接続され、第1経路上を流れる所定の周波数帯域の成分を相殺するキャンセル回路と、を備える弾性波フィルタが開示されている。フィルタ回路は、複数の直列腕共振子および複数の並列腕共振子によって構成され、並列腕共振子とグランドとを結ぶ経路上にはインダクタが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-74539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、並列腕共振子とグランドとを結ぶ経路上にインダクタを設けることでLC共振回路が形成され、フィルタ回路の通過帯域外の所定の周波数に減衰極を形成することができる。しかしながら、LC共振回路により形成される減衰極だけでは、減衰極以外の帯域の減衰量を確保できないことがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、LC共振回路により形成される減衰極以外の帯域の減衰量を確保することができる弾性波フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る弾性波フィルタは、複数の入出力端子と、前記複数の入出力端子を結ぶ第1経路に設けられたフィルタ回路と、前記第1経路の少なくとも一部と並列接続される第2経路に設けられた付加回路と、を備え、前記フィルタ回路は、前記第1経路に設けられた直列腕共振子、および、前記第1経路とグランドとを結ぶ経路に設けられた並列腕共振子を有する複数の弾性波共振子と、前記複数の弾性波共振子の少なくとも1つとともにLC共振回路を形成するインダクタと、を有し、前記付加回路は、複数のIDT(InterDigital Transducer)が隣接配置されたIDT群を有し、前記付加回路の通過特性において挿入損失が極小となる損失極小点の周波数は、前記LC共振回路の共振周波数と一致している。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る弾性波フィルタによれば、LC共振回路により形成される減衰極以外の帯域の減衰量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る弾性波フィルタ、ならびに、弾性波フィルタに含まれるフィルタ回路および付加回路の回路構成を示す図である。
図2】付加回路に含まれるIDT群を模式的に示す図である。
図3】IDT群に含まれるIDTの電極指の平均の配列ピッチ、ならびに、反射器の反射電極指の平均の配列ピッチを示す図である。
図4】IDT群に含まれるIDTの第1励振部および第2励振部の電極指の平均の配列ピッチ、ならびに、反射器の反射電極指の平均の配列ピッチの一例を示す図である。
図5】比較例1、実施例1の弾性波フィルタの通過特性および付加回路の通過特性を示す図である。
図6図5に示す通過特性において、通過帯域よりも低い周波数側の帯域の横軸を拡大した図である。
図7】実施例2の弾性波フィルタの通過特性および他の付加回路の通過特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、実施の形態および図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさ、または大きさの比は、必ずしも厳密ではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する場合がある。また、以下の実施の形態において、「接続される」とは、直接接続される場合だけでなく、他の素子等を介して電気的に接続される場合も含まれる。
【0010】
(実施の形態)
[弾性波フィルタの構成]
実施の形態に係る弾性波フィルタの構成について、図1を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る弾性波フィルタ1、ならびに、弾性波フィルタ1に含まれるフィルタ回路10および付加回路20の回路構成を示す図である。
【0012】
弾性波フィルタ1は、例えば、高周波信号が入出力される送受信フィルタである。弾性波フィルタ1には、自帯域の周波数を通過させ、通過帯域外の周波数を減衰させる特性が求められる。
【0013】
弾性波フィルタ1は、フィルタ回路10と、付加回路20と、入出力端子T1と、入出力端子T2と、を備えている。
【0014】
入出力端子T1は、高周波信号が入力および出力される端子である。例えば、入出力端子T1は、増幅回路等(図示せず)を介して信号処理回路(図示せず)に接続される。
【0015】
入出力端子T2は、高周波信号が入力および出力される端子である。例えば、入出力端子T2は、アンテナ素子に接続される。
【0016】
フィルタ回路10は、通信規格により定められた、第1の周波数帯域を通過帯域とするフィルタ回路である。例えば、第1の周波数帯域は、Band41(2496MHz以上2690MHz以下)である。フィルタ回路10は、入出力端子T1および入出力端子T2を結ぶ第1経路r1に設けられている。
【0017】
図1に示すように、フィルタ回路10は、弾性波共振子11である直列腕共振子S1、S2、S3、S4、S5、S6およびS7、ならびに、並列腕共振子P1、P2、P3、P4、P5およびP6を含むラダーフィルタ構造を有している。また、フィルタ回路10は、直列腕共振子S1~S7および並列腕共振子P1~P6の少なくとも1つとともにLC共振回路を形成するインダクタL1、L2およびL3を有している。
【0018】
直列腕共振子S1~S7および並列腕共振子P1~P6のそれぞれは、IDT(InterDigital Transducer)電極を含み、IDT電極の構造に応じたキャパシタンスを有している。
【0019】
直列腕共振子S1~S7は、入出力端子T1と入出力端子T2とを結ぶ第1経路r1上に配置されている。直列腕共振子S1~S7は、入出力端子T1から入出力端子T2に向かって、この順で直列に接続されている。
【0020】
並列腕共振子P1~P6は、直列腕共振子S1~S7の間の各ノードとグランド(基準端子)とを結ぶ経路において互いに並列に接続されている。
【0021】
具体的には、並列腕共振子P1~P6のうち、入出力端子T1に最も近い並列腕共振子P1は、一端が直列腕共振子S1とS2との間のノードn2に接続され、他端がグランドに接続されている。並列腕共振子P2は、一端が直列腕共振子S2とS3との間のノードn3に接続され、他端がインダクタL3を介してグランドに接続されている。並列腕共振子P3は、一端が直列腕共振子S3とS4との間のノードn4に接続され、他端がインダクタL3を介してグランドに接続されている。並列腕共振子P4は、一端が直列腕共振子S4とS5との間のノードn5に接続され、他端がインダクタL3を介してグランドに接続されている。並列腕共振子P2、P3、P4の他端側は共通化されてインダクタL3に接続されている。並列腕共振子P5は、一端が直列腕共振子S5とS6との間のノードn6に接続され、他端がグランドに接続されている。並列腕共振子P6は、一端が直列腕共振子S6とS7との間のノードn7に接続され、他端がグランドに接続されている。
【0022】
図1に示すようにインダクタL1は、直列腕共振子S3に並列接続されている。インダクタL2は、直列腕共振子S1に並列接続されている。インダクタL3は、並列腕共振子P2、P3、P4のそれぞれに直列接続されている。
【0023】
つまり、フィルタ回路10は、直列腕共振子S3と、直列腕共振子S3に並列接続されたインダクタL1と、によって構成されるLC共振回路である共振回路LC1を有している。また、フィルタ回路10は、直列腕共振子S1と、直列腕共振子S1に並列接続されたインダクタL2と、によって構成されるLC共振回路である共振回路LC2を有している。また、フィルタ回路10は、並列腕共振子P2と、並列腕共振子P2に直列接続されたインダクタL3と、によって構成されるLC共振回路である共振回路LC3を有している。また、フィルタ回路10は、並列腕共振子P3と、並列腕共振子P3に直列接続されたインダクタL3と、によって構成されるLC共振回路である共振回路LC4を有している。フィルタ回路10は、並列腕共振子P4と、並列腕共振子P4に直列接続されたインダクタL3と、によって構成されるLC共振回路である共振回路LC5を有している。
【0024】
このようにフィルタ回路10は、第1経路r1に配置された7つの直列腕共振子S1~S7と、第1経路r1とグランドとを結ぶ経路に配置された6つの並列腕共振子P1~P6と、直列腕共振子S1に並列接続されたインダクタL1と、直列腕共振子S3に並列接続されたインダクタL2と、並列腕共振子P2、P3およびP4とグランドとを結ぶ経路に配置されたインダクタL3と、で構成されている。
【0025】
なお、フィルタ回路10を構成する直列腕共振子および並列腕共振子の数は、7つまたは6つに限定されず、直列腕共振子が1つ以上かつ並列腕共振子が1つ以上であればよい。直列腕共振子とインダクタとによって構成されるLC並列共振回路の数は2つに限られず、1つまたは3つ以上であってもよい。並列腕共振子とインダクタとによって構成されるLC直列共振回路の数は3つに限られず、1つ、2つまたは4つ以上であってもよい。複数の並列腕共振子の他端側は共通化されず、複数の並列腕共振子が一対一の対応で複数のインダクタに接続され、当該複数のインダクタを介してグランドに接続されてもよい。
【0026】
図1に示す付加回路20は、フィルタ回路10の通過帯域外の減衰特性を改善するため、フィルタ回路10と逆位相・同振幅の相殺成分を有するキャンセル回路である。
【0027】
付加回路20は、第1経路r1の少なくとも一部に並列接続される第2経路r2に設けられている。例えば、付加回路20は、第1経路r1上の複数のノードに接続される。付加回路20は、複数のIDT31およびIDT32が隣接配置されたIDT群25と、容量素子28と、を有している。
【0028】
複数のIDT31、32のうち、IDT31は、IDT群25から見て入出力端子T1側の第1経路r1、具体的には入出力端子T1と直列腕共振子S1との間のノードn1に接続されている。IDT32は、容量素子28を介して、IDT群25から見て入出力端子T2側の第1経路r1に接続されている。具体的には、IDT32は、容量素子28を介して直列腕共振子S7と入出力端子T2との間のノードn8に接続されている。言い換えると、IDT31は、IDT群25に並列接続されている直列腕共振子S1~S7から見て入出力端子T1側の第1経路r1に接続され、IDT32は、容量素子28を介して、直列腕共振子S1~S7から見て入出力端子T2側の第1経路r1に接続されている。
【0029】
[付加回路の構成]
付加回路20の構成について、図2を参照しながら説明する。
【0030】
図2は、付加回路20に含まれるIDT群25を模式的に示す図である。
【0031】
図2に示すように、IDT群25は、複数のIDT31および32と、複数の反射器41および42と、を有している。IDT群25は、例えば音響結合型共振器であり、音響結合型共振器は縦結合型の弾性波共振器を構成している。
【0032】
IDT群25は、例えば、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振子によって構成される。IDT群25は、圧電性基板と、圧電性基板上に設けられたIDT電極および反射器電極を構成する電極層と、電極層を覆うように圧電性基板上に設けられた誘電体層と、によって形成される。
【0033】
圧電性基板は、シリコン基板上にSiN、SiO、LiTaOがこの順で積層された構造を有している。例えばSiNの厚みは50nm、SiOの膜厚は400nm、LiTaOの膜厚は300nmである。電極層は、圧電性基板側から順にTi、AlCuおよびTiが積層された構造を有し、それぞれの厚みは、18nm、100nm、4nmである。誘電体層は、SiOであり、厚みは30nmである。
【0034】
複数のIDT31、32は、圧電性基板の主面に平行な第1方向d1に沿って配置される。IDT31は、一対となる第1の櫛形電極31aおよび第2の櫛形電極31bを有している。IDT32は、一対となる第1の櫛形電極32aおよび第2の櫛形電極32bを有している。
【0035】
第1の櫛形電極31a、32aのそれぞれは、第1方向d1に延びるバスバー電極36aと、バスバー電極36aに接続されて第1方向d1に直交する第2方向d2に延びる複数の電極指35aと、を有している。バスバー電極36aは、複数の電極指35aの一端同士を接続している。
【0036】
第2の櫛形電極31b、32bのそれぞれは、第1方向d1に延びるバスバー電極36bと、バスバー電極36bに接続されて第2方向d2に延びる複数の電極指35bとを有している。バスバー電極36bは、複数の電極指35bの一端同士を接続している。複数の電極指35aおよび35bは、第2方向d2に互いに間挿し合い、互いに平行に配置されている。
【0037】
第1の櫛形電極31a、32aは、第2経路r2上の信号配線に接続され、第2の櫛形電極31b、32bは、グランドに接続される。つまり、バスバー電極36aおよび電極指35aは、信号電位に設定され、バスバー電極36bおよび電極指35bは、グランド電位に設定される。以下、電極指35aおよび35bの両方を指して電極指35と呼ぶ場合がある。
【0038】
反射器41は、第1方向d1において複数のIDT31、32のうちの最も外側に位置する最外のIDT31の隣に配置されている。反射器42は、第1方向d1において複数のIDT31、32のうちの最も外側に位置する最外のIDT32の隣に配置されている。つまり、複数の反射器41、42は、第1方向d1において、複数のIDT31、32を挟み込むように、IDT31、32の両外側に配置されている。
【0039】
各反射器41、42は、複数の反射電極指45および複数の反射バスバー46を有している。複数の反射電極指45は、第2方向d2に延び、かつ、第1方向d1に沿って配列されている。各反射バスバー46は、複数の反射電極指45の一端同士または他端同士を接続し、第1方向d1に延びるように配置されている。
【0040】
図2に示すように、IDT31は、第1励振部51xおよび第2励振部51yを有し、IDT32は、第1励振部52xおよび第2励振部52yを有している。第1励振部51x、52xは、付加回路20の本来の目的である、フィルタ回路10と逆位相・同振幅の相殺成分を生成するための部分である。第2励振部51y、52yは、第1励振部51x、52x同士が強く励振しすぎることを抑制するための狭ピッチ部分である。
【0041】
IDT31の第1励振部51xは、第1方向d1において反射器41の隣に配置されている。第1励振部51xは、最外のIDT31に含まれる複数の電極指35のうちの半数本以上の電極指を有している。第1励振部51xは、最外のIDT31が有する対数(ついすう)のうちの60%以上の対数を有していてもよい。
【0042】
IDT31の第2励振部51yは、第1方向d1において第1励振部51xから見て反射器41とは反対側に配置されている。第2励振部51yは、最外のIDT31に含まれる複数の電極指35のうちの第1励振部51xの電極指を除く、2本以上の電極指を有している。第2励振部51yは、第1励振部51xよりも、電極指35の本数および対数が少ない。
【0043】
IDT32の第1励振部52xは、第1方向d1において反射器42の隣に配置されている。第1励振部52xは、最外のIDT32に含まれる複数の電極指35のうちの半数本以上の電極指を有している。第1励振部52xは、最外のIDT32が有する対数のうちの60%以上の対数を有していてもよい。
【0044】
IDT32の第2励振部52yは、第1方向d1において第1励振部52xから見て反射器42とは反対側に配置されている。第2励振部52yは、最外のIDT32に含まれる複数の電極指35のうちの第1励振部52xの電極指を除く、2本以上の電極指を有している。第2励振部52yは、第1励振部52xよりも、電極指35の本数および対数が少ない。
【0045】
本実施の形態の弾性波フィルタ1では、付加回路20の通過特性において挿入損失が極小となる損失極小点の周波数が、フィルタ回路10のLC共振回路の共振周波数と一致している。これにより、LC共振回路により形成される減衰極以外の帯域の減衰量を確保することができる。以下、上記の損失極小点の周波数とLC共振回路の共振周波数との関係について説明する。
【0046】
[弾性波フィルタの通過特性]
比較例1および実施例1の弾性波フィルタの通過特性等について説明する。まず、実施例1のIDT群25の電極パラメータについて説明する。
【0047】
図3は、IDT群25に含まれるIDT31、32の電極指35の平均の配列ピッチpx、py、ならびに、反射器41、42の反射電極指45の平均の配列ピッチprを示す図である。
【0048】
電極指35の平均の配列ピッチpx、pyおよび反射電極指45の平均の配列ピッチprは、図3に示す式に基づいて求めることができる。図3の詳細については、その他の実施の形態の欄で説明する。
【0049】
図4は、第1励振部51x、52xおよび第2励振部51y、52yの電極指35の平均の配列ピッチ、ならびに、反射器41、42の反射電極指45の平均の配列ピッチの一例を示す図である。
【0050】
図4の左の縦軸には、電極指の配列ピッチを2倍した値である波長が示されている。また、図4の右の縦軸には、電極指35および反射電極指45の対数が示されている。なお、反射器41、42の対数は、2本の反射電極指45を一対とした場合の値である。
【0051】
図4に示すように、第2励振部51yは、第1励振部51xよりも、電極指35の平均の配列ピッチが小さく、第2励振部52yは、第1励振部52xよりも、電極指35の平均の配列ピッチが小さくなっている。なお、第1励振部および第2励振部のデューティは同じであり、交差幅も同じである。
【0052】
また、第2励振部51yは、第1励振部51xよりも対数が少なく、第2励振部52yは、第1励振部52xよりも対数が少なくなっている。言い換えると、第1励振部51x(または52x)の電極指35の本数は、第2励振部51y(または52y)の電極指35の本数よりも多い。なお、第1励振部51xおよび52xの対数は同じであり、第2励振部51yおよび52yの対数は同じである。
【0053】
また、反射器41は、第1励振部51xよりも対数が少なく、反射器42は、第1励振部52xよりも対数が少なくなっている。この例では、反射器41(または42)の反射電極指45の本数は、第1励振部51x(または52x)の電極指35の本数よりも少ない。なお、反射器41および42の対数は同じである。
【0054】
上記の電極パラメータを有する実施例1の弾性波フィルタの通過特性について説明する。
【0055】
図5は、比較例1、実施例1の弾性波フィルタの通過特性および付加回路20の通過特性を示す図である。図6は、図5に示す通過特性において、通過帯域よりも低い周波数側の帯域の横軸を拡大した図である。
【0056】
比較例1は、付加回路が設けられていないフィルタ回路のみの通過特性である。実施例1は、フィルタ回路10および付加回路20を有する弾性波フィルタ1の通過特性である。
【0057】
図5および図6に示すように、フィルタ回路10は、2つの共振回路LC1、LC2に対応する2つの共振周波数を有している。共振回路LC1、LC2のそれぞれの共振周波数は、通過帯域外の減衰極Ap0から見てフィルタ回路10の通過帯域とは反対側に形成されている。なお、減衰極Ap0は、フィルタ回路10の弾性波共振子11によって形成される極、具体的には、並列腕共振子P1~P6のいずれかによって形成される極である。
【0058】
共振回路LC1の共振周波数は、共振回路LC1の反共振により形成される減衰極Ap1の周波数である。共振回路LC2の共振周波数は、共振回路LC2の反共振により形成される減衰極Ap2の周波数である。インダクタL2のインダクタンスと直列腕共振子S1のキャパシタンスとを乗算した値は、インダクタL1のインダクタンスと直列腕共振子S3のキャパシタンスとを乗算した値よりも小さく、共振回路LC2の共振周波数は、共振回路LC1の共振周波数よりも高い周波数側に形成される。図5および図6に示す減衰極Ap1の周波数は1868MHzであり、減衰極Ap2の周波数は2142MHzである。
【0059】
この例で通過特性を評価するにおいて、弾性波フィルタ1と同時に使用される可能性のあるフィルタのバンドであるB3Rx、B39RxおよびB25Rxにおける挿入損失を評価した。B3Rxの通過帯域は1805MHz以上1880MHz以下であり、B39Rxの通過帯域は1880MHz以上1920MHz以下であり、B25Rxの通過帯域は1930MHz以上1995MHz以下である。挿入損失の評価基準としては、B3Rx、B39Rx、B25Rxのそれぞれにて異なる評価基準値(dB)が予め設定されている。
【0060】
比較例1では、B25Rxにおける減衰が不十分であり、挿入損失が評価基準を超えている。それに対し実施例1の弾性波フィルタ1では、以下に示す構成を有することで減衰特性の改善を図っている。
【0061】
図5および図6に示す一点鎖線は、実施例1における付加回路20の通過特性である。これらの図に示すように、付加回路20の通過特性には、挿入損失が極小となる損失極小点が複数表れる。上記の通過特性には、第1の損失極小点pm1と、第1の損失極小点pm1よりも高い周波数に位置する第2の損失極小点pm2と、が表れている。第1の損失極小点pm1は、IDT31および32の音響結合により発生する共振モードに対応する極である。第2の損失極小点pm2は、IDT31および32の間のギャップで発生する共振モードに対応する極である。図6に示す第1の損失極小点pm1の周波数は1880MHzであり、第2の損失極小点pm2の周波数は2010MHzである。
【0062】
第1の損失極小点pm1および第2の損失極小点pm2の周波数は、電極指35の平均の配列ピッチを変えることで調整することができる。例えば、第1励振部51x、52xの電極指35の平均の配列ピッチpxを小さくすることで、第1の損失極小点pm1の周波数を高くすることができる。例えば、第2励振部51y、52yの電極指35の平均の配列ピッチpyを小さくすることで、第2の損失極小点pm2の周波数を高くすることができる。
【0063】
この実施例1では、第1の損失極小点pm1の周波数が、減衰極Ap1の周波数、すなわち共振回路LC1の共振周波数と一致している。これにより、B3Rx、B39RxおよびB25Rxにおける減衰量を大きくすることができ、各バンドにおける挿入損失が評価基準を満たしている。
【0064】
なお、損失極小点の周波数がLC共振回路の共振周波数と一致しているとは、完全に一致している場合はもちろん、許容範囲内で一致している場合も含む。本実施の形態では、LC共振回路の共振周波数を分母とし、損失極小点の周波数とLC共振回路の共振周波数との差を分子としたときの差分比Rが、0以上0.028以下である場合、損失極小点の周波数がLC共振回路の共振周波数と一致しているとする。実施例1における差分比Rは、R=(1880-1868)/1868=0.006である。
【0065】
図7は、実施例2の弾性波フィルタの通過特性および他の付加回路20の通過特性を示す図である。
【0066】
実施例2は、フィルタ回路10および付加回路20を有する弾性波フィルタ1の通過特性である。実施例2では、第1励振部51x、52xの電極指35の平均の配列ピッチpxを実施例1よりも小さくすることで、第1の損失極小点pm1の周波数を1920MHzとした。実施例2における差分比Rは、R=(1920-1868)/1868=0.028であり、実施例2の弾性波フィルタ1においても、B3Rx、B39RxおよびB25Rxにおける減衰量を確保できている。
【0067】
なお、例えば第1の損失極小点pm1の周波数をさらに高くして1960MHzとした場合の差分比Rは、R=(1960-1868)/1868=0.049となる。差分比R=が0.049である場合、B3Rx、B39RxおよびB25Rxにおける挿入損失の一部が評価基準を満たしていない(図示省略)。
【0068】
このように、弾性波フィルタ1では、損失極小点pm1の周波数を共振回路LC1の共振周波数に一致させることで、より具体的には、上記の差分比Rを0以上0.028以下とすることで、B3Rx、B39RxおよびB25Rxにおける減衰量を確保することができる。これにより、LC共振回路により形成される減衰極Ap1以外の帯域の減衰量を確保することができる。
【0069】
さらに実施例1および2では、第1の損失極小点pm1と第2の損失極小点pm2とによって挟まれる帯域が、2つの共振回路LC1およびLC2に対応する2つの共振周波数の間の帯域内に存在している。第1の損失極小点pm1と第2の損失極小点pm2とによって挟まれる帯域は、付加回路20の位相が反転する位相反転帯域を含んでいるため、この位相反転帯域を2つの共振周波数の間に配置することで、2つの共振周波数の間の帯域の不要波をキャンセルすることができる。
【0070】
なお、上記では、第1の損失極小点pm1の周波数を共振回路LC1の共振周波数に一致させる例を示したが、それに限られない。例えば、弾性波フィルタ1は、第2の損失極小点pm2の周波数が共振回路LC2の共振周波数に一致する構成を有していてもよい。すなわち弾性波フィルタ1では、第1の損失極小点pm1の周波数および第2の損失極小点pm2の周波数のいずれか一方が、共振回路LC1または共振回路LC2の共振周波数と一致していればよい。
【0071】
なお、上記では、共振回路LC1の共振周波数に損失極小点の周波数を一致させる例を示したが、それに限られない。例えば、並列腕共振子P2とインダクタL3とによって構成された共振回路LC3の共振周波数に損失極小点の周波数を一致させてもよい。また、並列腕共振子P3とインダクタL3とによって構成された共振回路LC4の共振周波数に損失極小点の周波数を一致させてもよい。また、並列腕共振子P4とインダクタL3とによって構成された共振回路LC5の共振周波数に損失極小点の周波数を一致させてもよい。例えば、実施例1におけるLC共振回路LC3、LC4およびLC5の共振周波数は4800MHzであるので、この共振周波数4800MHzに損失極小点の周波数を一致させてもよい。これにより、LC共振回路L3、L4およびL5により形成される減衰極以外の帯域の減衰量を確保することができる。
【0072】
(まとめ)
本実施の形態に係る弾性波フィルタ1は、以下に示す態様をとり得る。
【0073】
[態様1]
態様1に係る弾性波フィルタ1は、複数の入出力端子T1、T2と、複数の入出力端子を結ぶ第1経路r1に設けられたフィルタ回路10と、第1経路r1の少なくとも一部と並列接続される第2経路r2に設けられた付加回路20と、を備える。フィルタ回路10は、第1経路r1に設けられた直列腕共振子、および、第1経路とグランドとを結ぶ経路に設けられた並列腕共振子を有する複数の弾性波共振子11と、複数の弾性波共振子11の少なくとも1つとともにLC共振回路(例えば共振回路LC1)を形成するインダクタと、を有する。付加回路20は、複数のIDT31、32が隣接配置されたIDT群25を有する。付加回路20の通過特性において挿入損失が極小となる損失極小点pm1の周波数は、共振回路LC1の共振周波数と一致している。
【0074】
このように、損失極小点pm1の周波数を共振回路LC1の共振周波数に一致させることで、共振回路LC1により形成される減衰極Ap1以外の帯域の減衰量を確保することができる。
【0075】
[態様2]
態様1に記載の弾性波フィルタ1において、LC共振回路(例えば共振回路LC1)は、直列腕共振子S3と、直列腕共振子S3に並列接続されたインダクタL1と、によって構成されていてもよい。
【0076】
これによれば、直列腕共振子S3とインダクタL1とによって構成された共振回路LC1の共振周波数に損失極小点pm1の周波数を一致させることができる。これにより、共振回路LC1により形成される減衰極Ap1以外の帯域の減衰量を確保することができる。
【0077】
[態様3]
態様1または2に記載の弾性波フィルタ1において、LC共振回路(例えば共振回路LC4)は、並列腕共振子P3と、並列腕共振子P3とグランドとを結ぶ経路に配置されたインダクタL3と、によって構成されていてもよい。
【0078】
これによれば、並列腕共振子P3とインダクタL3とによって構成された共振回路LC4の共振周波数に損失極小点の周波数を一致させることができる。これにより、共振回路LC4により形成される減衰極以外の帯域の減衰量を確保することができる。
【0079】
[態様4]
態様1~3のいずれか1つに記載の弾性波フィルタ1において、LC共振回路(例えば共振回路LC1)の共振周波数は、フィルタ回路10の弾性波共振子11によって形成される通過帯域外の減衰極Ap0から見てフィルタ回路10の通過帯域とは反対側に形成されていてもよい。
【0080】
これによれば、減衰極Ap0から見てフィルタ回路10の通過帯域とは反対側の帯域の減衰量を確保することができる。
【0081】
[態様5]
態様4に記載の弾性波フィルタ1において、損失極小点は、付加回路20の通過特性において複数表れ、複数の損失極小点は、第1の損失極小点pm1と、第1の損失極小点pm1よりも高い周波数に位置する第2の損失極小点pm2とを有する。第1の損失極小点pm1の周波数および第2の損失極小点pm2の周波数のいずれか一方は、上記の共振周波数と一致していてもよい。
【0082】
このように、第1の損失極小点pm1および第2の損失極小点pm2のいずれか一方を共振周波数に一致させることで、共振回路LC1および共振回路LC2のいずれか一方により形成される減衰極(Ap1およびAp2のいずれか一方)以外の帯域の減衰量を確保することができる。
【0083】
[態様6]
態様5に記載の弾性波フィルタ1において、フィルタ回路10は、2つのLC共振回路(例えば共振回路LC1、LC2)を有し、2つのLC共振回路に対応する2つの共振周波数を有し、第1の損失極小点pm1と第2の損失極小点pm2とによって挟まれる帯域は、2つの共振周波数の間の帯域内にあってもよい。
【0084】
第1の損失極小点pm1と第2の損失極小点pm2とによって挟まれる帯域を、2つの共振周波数の間に配置することで、2つの共振周波数の間の帯域の不要波をキャンセルすることができる。共振回路LC1、LC2により形成される減衰極Ap1、Ap2の間の帯域の減衰量を確保することができる。
【0085】
[態様7]
態様1~6のいずれか1つに記載の弾性波フィルタ1において、フィルタ回路10の通過帯域は、2496MHz以上2690MHz以下の周波数帯域を含んでいてもよい。
【0086】
これによれば、上記周波数帯域の範囲外の帯域において、LC共振回路により形成される減衰極以外の帯域の減衰量を確保することができる。
【0087】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態に係る弾性波フィルタについて、実施の形態を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、上記実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る弾性波フィルタを含むマルチプレクサ、高周波フロントエンド回路および通信装置も本発明に含まれる。
【0088】
例えばマルチプレクサが、本実施の形態に係る弾性波フィルタ1と、B3Rxを通過帯域とする受信フィルタと、によって構成されてもよい。例えばマルチプレクサが、本実施の形態に係る弾性波フィルタ1と、B39Rxを通過帯域とする受信フィルタと、によって構成されてもよい。例えばマルチプレクサが、本実施の形態に係る弾性波フィルタ1と、B25Rxを通過帯域とする受信フィルタと、によって構成されてもよい。
【0089】
上記では、弾性波フィルタの通過帯域から見て低い周波数帯域の減衰量を確保する説明をしたが、それに限られない。例えば、弾性波フィルタの通過帯域から見て高い周波数帯域に減衰極が存在する場合、その減衰極の周波数に損失極小点の周波数を一致させることで、高周波数側の減衰量を確保してもよい。
【0090】
上記では、IDT群25が2つのIDT31、32を有する例を示したが、それに限られず、IDT群25は、3以上のIDTを有していてもよい。
【0091】
上記では、IDT32が第1経路r1のノードn8に容量素子28を介して接続されている例を示したが、それに限られず、IDT31は、他の容量素子を介してノードn1に接続されてもよい。
【0092】
上記では、弾性波フィルタ1が送受信フィルタである例を示したが、それに限られず、弾性波フィルタは、送信フィルタ、または、受信フィルタであってもよい。
【0093】
また、入出力端子T1およびT2は、入力端子および出力端子のいずれかであってもよい。例えば、入出力端子T1が入力端子である場合は、入出力端子T2が出力端子となり、入出力端子T2が入力端子である場合は、入出力端子T1が出力端子となる。
【0094】
また、IDT電極は、積層構造でなくてもよい。IDT電極は、例えば、Ti、Al、Cu、Pt、Au、Ag、Pdなどの金属または合金から構成されてもよく、また、上記の金属または合金から構成される複数の積層体から構成されてもよい。
【0095】
また、実施の形態では、基板として圧電性を有する基板を示したが、当該基板は、圧電体層の単層からなる圧電基板であってもよい。この場合の圧電基板は、例えば、LiTaOの圧電単結晶、または、LiNbOなどの他の圧電単結晶で構成される。また、IDT電極が形成される基板は、圧電性を有する限り、全体が圧電体層からなるものの他、支持基板上に圧電体層が積層されている構造を用いてもよい。また、上記実施の形態に係る基板のカット角は限定されない。つまり、弾性波フィルタの要求通過特性などに応じて、適宜、積層構造、材料、および厚みを変更してもよく、上記実施の形態に示すカット角以外のカット角を有するLiTaO圧電基板またはLiNbO圧電基板などを用いた弾性表面波フィルタであっても、同様の効果を奏することが可能となる。
【0096】
また、図3における平均の配列ピッチpx、py、および、上記の平均の配列ピッチprの求め方は、以下に示す通りである。
【0097】
図3は、前述したように、IDT群25に含まれるIDT31、32の第1励振部51x、52xおよび第2励振部51y、52yの電極指35の配列ピッチ、ならびに、反射器41、42の反射電極指45の配列ピッチを示す図である。
【0098】
第1励振部51x(または52x)の電極指35の配列ピッチは、IDT31(または32)に含まれる複数の電極指35において、第1方向d1に隣り合う電極指同士の中心間距離である。第1励振部51x(または52x)内における複数の電極指35の全ての配列ピッチは同じであってもよく、一部もしくは全ての配列ピッチが異なっていてもよい。以下、2つの電極指間の第1方向d1における中心同士の距離を、単に「中心間距離」と称することがある。
【0099】
第1励振部51xの電極指35の平均の配列ピッチpxは、次のように導出される。例えば、第1励振部51xに含まれる電極指の総本数をNx本とする。そして、第1励振部51xの、第1方向d1における一方端に位置する電極指と、他方端に位置する電極指との中心間距離をDxとする。すると、平均の配列ピッチpxは、px=Dx/(Nx-1)という式で表せる。なお、(Nx-1)は、第1励振部51xにおける、隣接する電極指が作るギャップの総個数ともいえる。IDT32の第1励振部52xの電極指35の平均の配列ピッチpxも同様に導出される。
【0100】
第2励振部51y(または52y)の電極指の配列ピッチは、IDT31(または32)に含まれる複数の電極指35において、第1方向d1に隣り合う電極指同士の中心間距離である。第2励振部51y(または52y)内における複数の電極指35の全ての配列ピッチは同じであってもよく、一部もしくは全ての配列ピッチが異なっていてもよい。
【0101】
第2励振部51yの電極指35の平均の配列ピッチpyは、次のように導出される。例えば、第2励振部51yに含まれる電極指の総本数をNy本とする。そして、第2励振部51yの、第1方向d1における一方端に位置する電極指と、他方端に位置する電極指との中心間距離をDyとする。すると、平均の配列ピッチpyは、py=Dy/(Ny-1)という式で表せる。なお、(Ny-1)は、第2励振部51yにおける、隣接する電極指が作るギャップの総個数ともいえる。IDT32の第2励振部52yの電極指35の平均の配列ピッチpyも同様に導出される。
【0102】
反射器41、42の反射電極指45の配列ピッチは、反射器42、42のそれぞれに含まれる複数の反射電極指45において、第1方向d1に隣り合う反射電極指同士の中心間距離である。反射器41、42内における複数の反射電極指45の全ての配列ピッチは同じであってもよく、一部もしくは全ての配列ピッチが異なっていてもよい。
【0103】
反射器41の反射電極指45の平均の配列ピッチprは、次のように導出される。例えば、反射器41に含まれる反射電極指45の総本数をNr本とする。そして、反射器41の、第1方向d1における一方端に位置する反射電極指と、他方端に位置する反射電極指との中心間距離をDrとする。すると、平均の配列ピッチprは、pr=Dr/(Nr-1)という式で表せる。なお、(Nr-1)は、反射器41における、隣接する反射電極指が作るギャップの総個数ともいえる。反射器42の反射電極指45の平均の配列ピッチprも同様に導出される。
【0104】
なお、配列ピッチの測定箇所は、所定の隣り合う電極指の交差幅の、第1方向d1における中間点を通る、第2方向d2に平行な仮想線上における距離で代用できる。配列ピッチの測定方法は、上面(第1方向d1および第2方向d2の両方に垂直な方向)からの光学顕微鏡またはSEM観察、もしくは、研磨等により上記仮想線を通る断面を出し、光学顕微鏡またはSEM観察、による測長で測定できる。
【0105】
なお、付加回路20は、図1に示すような縦結合型の弾性波共振器に限られず、横結合型の弾性波共振器またはトランスバーサル型の弾性波共振器を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、弾性波フィルタを含むマルチプレクサ、フロントエンド回路および通信装置として、携帯電話などの通信機器に広く利用できる。
【符号の説明】
【0107】
1 弾性波フィルタ
10 フィルタ回路
11 弾性波共振子
20 付加回路
25 IDT群
28 容量素子
31、32 IDT
31a、32a 第1の櫛形電極
31b、32b 第2の櫛形電極
35、35a、35b 電極指
36a、36b バスバー電極
41、42 反射器
45 反射電極指
46 反射バスバー
51x、52x 第1励振部
51y、52y 第2励振部
Ap0、Ap1、Ap2 減衰極
d1 第1方向
d2 第2方向
L1、L2、L3 インダクタ
LC1、LC2、LC3、LC4、LC5 共振回路(LC共振回路)
n1、n2、n3、n4、n5、n6、n7、n8 ノード
P1、P2、P3、P4、P5、P6 並列腕共振子
pm1、pm2 損失極小点
r1 第1経路
r2 第2経路
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7 直列腕共振子
T1、T2 入出力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7