(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010331
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】電流センサ、電流センサを備える電力変換装置、及び、電流センサの回路基板の締結方法
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
G01R15/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111615
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片桐 一重
(72)【発明者】
【氏名】菅野 清隆
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AA01
2G025AA15
2G025AB01
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】コスト増を抑制しながら電流センサの耐振性を確保することを目的とする。
【解決手段】電流センサ1は、エアギャップ11を有しバスバー130の外周を囲む磁気コア10と、エアギャップ11に配置されエアギャップ11を通過する磁束に応じてバスバー130に流れる電流を検出する電流検出素子20と、電流検出素子20が実装される回路基板40と、磁気コア10を保持する樹脂ケース50と、回路基板40を樹脂ケース50に締結する締結部材70と、を備える。樹脂ケース50は、回路基板40との対向面53に設けられ回路基板40に沿った方向において電流検出素子20を挟んで間隔を空けて配置され回路基板40を支持する複数の台座61,62を有する。複数の台座61,62は、締結部材70の締結箇所に配置される第1台座61と、第1台座61よりも対向面53からの高さが高い第2台座62と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体に流れる電流を検出する電流センサであって、
エアギャップを有し、前記導体の外周を囲む磁気コアと、
前記エアギャップに配置され、前記エアギャップを通過する磁束に応じて前記導体に流れる前記電流を検出する電流検出素子と、
前記電流検出素子が実装される回路基板と、
前記磁気コアを保持する樹脂ケースと、
前記回路基板を前記樹脂ケースに締結する締結部材と、を備え、
前記樹脂ケースは、前記回路基板との対向面に設けられ、前記回路基板に沿った方向において前記電流検出素子を挟んで間隔を空けて配置され、前記回路基板を支持する複数の台座を有し、
前記複数の台座は、前記締結部材が前記回路基板を前記樹脂ケースに締結する箇所に配置される第1台座と、前記第1台座よりも前記対向面からの高さが高い第2台座と、を有する
ことを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記複数の台座の少なくとも1つは、前記締結部材が前記回路基板を前記樹脂ケースに締結する方向に沿って視た場合、前記磁気コアと重複する箇所に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記回路基板は、長方形状に形成され、
前記磁気コア及び前記電流検出素子のそれぞれは、前記回路基板の長手方向に沿って互いに間隔を空けて複数配置されており、
前記第1台座は、前記回路基板の前記長手方向の一端部に対応する箇所と、前記回路基板の前記長手方向の他端部に対応する箇所と、に少なくとも配置され、
前記第2台座は、複数の前記第1台座の間に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記回路基板は、長方形状に形成され、
前記磁気コア及び前記電流検出素子のそれぞれは、前記回路基板の長手方向に沿って互いに間隔を空けて複数配置されており、
前記第1台座は、前記回路基板の短手方向の一端部に対応する箇所に配置され、
前記第2台座は、前記第1台座よりも前記回路基板の前記短手方向の他端部に近い箇所であって、前記第1台座よりも前記回路基板の前記長手方向の一端部及び他端部にそれぞれ近い箇所に少なくとも配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記締結部材は、前記第1台座から前記回路基板に向かう方向に突出して設けられた熱カシメ用の樹脂製のボスであり、
前記回路基板は、前記ボスが挿入される貫通孔を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記樹脂ケースは、前記第1台座を貫通し前記対向面を通過するねじ穴を有し、
前記締結部材は、前記ねじ穴に螺合するねじであり、
前記回路基板は、前記ねじが挿入される貫通孔を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか一項に記載の電流センサと、
前記導体であるバスバーに接続されるパワーモジュールと、
前記パワーモジュールを制御する制御回路が実装された制御基板を有するコントローラと、を備え、
前記制御基板は、前記回路基板に実装されたコネクタによって前記回路基板と接続されており、
前記第2台座は、前記締結部材が前記回路基板を前記樹脂ケースに締結する方向に沿って視た場合、前記コネクタと重複する箇所に配置される
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1~請求項6の何れか一項に記載の電流センサと、
前記導体であるバスバーに接続されるパワーモジュールと、
前記パワーモジュールを制御する制御回路を有するコントローラと、を備え、
前記制御回路は、前記回路基板に実装され、
前記回路基板は、前記電流センサと前記コントローラとに共用されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1~請求項6の何れか一項に記載の電流センサにおいて前記回路基板を前記樹脂ケースに締結する締結方法であって、
前記回路基板を前記第2台座に着座させる工程と、
前記第2台座に着座させた前記回路基板を、前記締結部材によって前記樹脂ケースに締結する工程と、を有する
ことを特徴とする電流センサの回路基板の締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサ、電流センサを備える電力変換装置、及び、電流センサの回路基板の締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される電力変換装置のバスバー等の導体に流れる電流を検出する電流センサが知られている。この種の電流センサでは、導体の外周を囲む磁気コアに形成されたエアギャップにホールIC等の電流検出素子を配置し、エアギャップを通過する磁束を検出することによって導体に流れる電流を検出する。電流センサは、ねじ等の締結部材を用いて、電流検出素子が実装された回路基板を、磁気コアを保持するケースに締結することによって、耐振性を確保している。
【0003】
特許文献1には、ホールICを保持部材に収納して基板に係合させることによって耐振性を確保する電流検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された電流検出装置は、ホールICを収納する保持部材を別途用意する必要があるので部品点数及び工数が増加し、コスト増を招く。加えて、特許文献1に開示された電流検出装置は、電流検出装置の振動によって基板が振動すると、基板に係合された保持部材及びホールICも振動するので、ホールICの耐振性を確保することが難しい。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、コスト増を抑制しながら電流センサの耐振性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電流センサは、導体に流れる電流を検出する電流センサであって、エアギャップを有し、前記導体の外周を囲む磁気コアと、前記エアギャップに配置され、前記エアギャップを通過する磁束に応じて前記導体に流れる前記電流を検出する電流検出素子と、前記電流検出素子が実装される回路基板と、前記磁気コアを保持する樹脂ケースと、前記回路基板を前記樹脂ケースに締結する締結部材と、を備え、前記樹脂ケースは、前記回路基板との対向面に設けられ、前記回路基板に沿った方向において前記電流検出素子を挟んで間隔を空けて配置され、前記回路基板を支持する複数の台座を有し、前記複数の台座は、前記締結部材が前記回路基板を前記樹脂ケースに締結する箇所に配置される第1台座と、前記第1台座よりも前記対向面からの高さが高い第2台座と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コスト増を抑制しながら電流センサの耐振性を確保することができる。
上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の電流センサが搭載される電力変換装置を説明する図。
【
図3】回路基板を樹脂ケースに締結後の電流センサの側面図。
【
図4】
図3に示す電流センサから樹脂ケース及び締結部材の図示を省略した図。
【
図6】回路基板を樹脂ケースに締結前の電流センサの状態を模式的に示す図。
【
図7】回路基板を樹脂ケースに締結後の電流センサの状態を模式的に示す図。
【
図8】
図8(a)は締結部材が熱カシメ用のボスである場合において回路基板を樹脂ケースに締結前の回路基板及び樹脂ケースの状態を模式的に示す図、
図8(b)は回路基板を樹脂ケースに締結後の
図8(a)に対応する図。
【
図9】
図9(a)は締結部材がねじである場合において回路基板を樹脂ケースに締結前の回路基板及び樹脂ケースの状態を模式的に示す図、
図9(b)は回路基板を樹脂ケースに締結後の
図9(a)に対応する図。
【
図11】
図11(a)は複数の台座の他の配置例を模式的に示す平面図、
図11(b)は複数の台座の他の配置例を模式的に示す平面図。
【
図12】カバーを備える電流センサを模式的に示す図。
【
図13】
図13(a)は電流センサの電力変換装置への搭載例を模式的に示す平面図、
図13(b)は
図13(a)に対応する側面図。
【
図14】
図14(a)は電流センサの電力変換装置への他の搭載例を模式的に示す平面図、
図14(b)は
図14(a)に対応する側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0011】
[電流センサの構成]
図1~
図12を用いて、電流センサ1の構成について説明する。
図1は、本実施形態の電流センサ1が搭載される電力変換装置100を説明する図である。
【0012】
電力変換装置100は、電気自動車等の車両に搭載される電力変換装置である。電力変換装置100は、バッテリB、車両システムS及びモータMに接続される。電力変換装置100は、車両システムSからの制御指令に基づいて、バッテリBの直流電力を交流電力に変換して、車両を駆動するモータMに供給する。電力変換装置100は、モータMからの回生電力をバッテリBに回送する。
【0013】
電力変換装置100は、バッテリBから供給された直流電力を蓄えるコンデンサ110と、直流電力を三相交流電力に変換する三相インバータ回路等を有するパワーモジュール120と、を備える。更に、電力変換装置100は、パワーモジュール120と負荷であるモータMとを接続する導体であるバスバー130と、パワーモジュール120を制御するコントローラ140と、バスバー130に流れる電流を検出する電流センサ1と、を備える。バスバー130は、パワーモジュール120からモータMに供給されるU相、V相、W相の各出力電流が流れる3つのバスバー130によって構成されてもよい。コントローラ140は、車両システムSからの制御指令に基づいてモータMのトルク及び回転数を制御するべく、パワーモジュール120の動作を制御する。この際、コントローラ140は、パワーモジュール120の出力電流、モータMの角度、及び、バッテリBからの入力電圧等を監視して、制御指令の範囲の中で最適な効率でモータMが駆動するよう、パワーモジュール120の動作を制御する。このため、電流センサ1は、モータMの駆動制御に必須であり、自動車に搭載されるので高い信頼性を確保する必要がある。
【0014】
図2は、本実施形態の電流センサ1の分解斜視図である。
図3は、回路基板40を樹脂ケース50に締結後の電流センサ1の側面図である。
図4は、
図3に示す電流センサ1から樹脂ケース50及び締結部材70の図示を省略した図である。
図5は、
図3に対応する平面図である。
【0015】
電流センサ1は、磁気コア10と、電流検出素子20と、コネクタ30と、回路基板40と、樹脂ケース50と、締結部材70と、カバー80と、を備える。なお、
図2~
図5では、カバー80の図示が省略されている。
【0016】
磁気コア10、電流検出素子20及びバスバー130は、U相、V相及びW相の相毎に纏めて配置されることが多い。そのため、電流センサ1では、U相、V相及びW相の相毎に、磁気コア10、電流検出素子20及びバスバー130が水平方向に並列して配置される。電流センサ1は、バスバー130等が並列して配置される方向に長尺の形状を有する。
【0017】
本実施形態では、バスバー130等の並列方向に沿ってX軸を定義し、バスバー130の延びる方向に沿ってY軸を定義し、回路基板40から樹脂ケース50に向かう方向に沿ってZ軸を定義する。X軸方向は、回路基板40の長手方向に対応する。Y軸方向は、回路基板40の短手方向に対応する。Z軸方向は、締結部材70が回路基板40を樹脂ケース50に締結する方向(以下「締結部材70の締結方向」とも称する)に対応する。
【0018】
磁気コア10は、導体であるバスバー130の外周を囲む磁性体である。磁気コア10は、エアギャップ11を有し、C字状又はU字状に形成される。磁気コア10には、バスバー130への通電時に発生する電界によって磁束が流れる。磁気コア10は、X軸方向(回路基板40の長手方向)に沿って互いに間隔を空けて複数配置される。
【0019】
電流検出素子20は、例えば、ホールICによって構成される。電流検出素子20は、
図4に示すようにエアギャップ11に配置され、エアギャップ11を通過する磁束に応じてバスバー130に流れる電流を検出する。電流検出素子20は、X軸方向(回路基板40の長手方向)に沿って互いに間隔を空けて複数配置される。電流検出素子20は、
図4に示すような倒立状態で配置される。すなわち、電流検出素子20は、磁束を検出する検出部21がエアギャップ11に配置され、検出部21から突出する端子22が回路基板40に接合される。端子22は、はんだ付けによって回路基板40に接合されてもよい。電流検出素子20は、検出された電流を、回路基板40及びコネクタ30を介してコントローラ140に送信する。コネクタ30は、後述するコントローラ140の制御基板142と、電流センサ1の回路基板40とを接続するコネクタである。
【0020】
回路基板40は、電流検出素子20が実装される回路基板である。回路基板40は、X軸方向を長手方向としY軸方向を短手方向とする長方形状に形成される。回路基板40は、樹脂ケース50に対向し電流検出素子20が実装される第1主面41と、第1主面41の反対面でありコネクタ30が実装される第2主面42と、を有する。回路基板40は、締結部材70が挿入される貫通孔43を有する。貫通孔43は、締結部材70が回路基板40を樹脂ケース50に締結する箇所(以下「締結部材70の締結箇所」とも称する)に対応する箇所に複数配置される。
【0021】
樹脂ケース50は、磁気コア10を保持し、回路基板40を固定するケースである。樹脂ケース50は、X軸方向(回路基板40の長手方向)を長手方向とし、Y軸方向(回路基板40の短手方向)を短手方向とする直方体状に形成される。樹脂ケース50は、磁気コア10を保持する保持部51と、電流センサ1を電力変換装置100に取り付けるための取り付け孔52と、回路基板40に対向する対向面53と、対向面53に形成され内部にエアギャップ11が配置された開口部54と、を有する。保持部51は、対向面53とは反対側に配置される。取り付け孔52は、樹脂ケース50の長手方向の両端部にそれぞれ配置される。取り付け孔52には、ブッシュが嵌合され、電力変換装置100への取り付け及び位置決めのためのピンが挿入されてもよい。開口部54は、Z軸方向(締結部材70の締結方向)に沿って視た場合、磁気コア10のエアギャップ11及び電流検出素子20に対応する箇所に複数配置される。
【0022】
締結部材70は、回路基板40を樹脂ケース50に締結する締結部材である。締結部材70は、
図2に示すような熱カシメ用の樹脂製のボス、又は、ねじによって構成される。締結部材70は、Z軸方向の締結力を回路基板40に加えることによって、回路基板40を樹脂ケース50に締結する。締結部材70は、複数の締結箇所で回路基板40を樹脂ケース50に締結する。締結部材70の締結箇所は、回路基板40に沿った方向において、電流検出素子20を挟んで間隔を空けて複数配置される。例えば、締結部材70の締結箇所は、回路基板40の長手方向の一端部44a及び他端部44bと、回路基板40の長手方向において一端部44aと他端部44bとの間と、に配置されてもよい。
【0023】
上記のように、電流検出素子20は、倒立状態で配置される。すなわち、電流検出素子20は、磁束を検出する検出部21がエアギャップ11に配置され、検出部21から突出する端子22が回路基板40に接合される。この倒立状態の配置構造により、電流センサ1の振動によって回路基板40が振動すると、電流検出素子20の端子22と回路基板40との接合部に加わる応力が大きくなり、疲労破壊を起こす可能性がある。したがって、電流センサ1は、耐振性を確保することが重要である。倒立状態の電流検出素子20を磁気コア10及びバスバー130と共に相毎に纏めて配置し、且つ、耐振性を確保するためには、締結部材70の締結箇所を電流検出素子20付近に数多く配置して、回路基板40の剛性を高めることが考えられる。しかし、この手法では、回路基板40及び樹脂ケース50の各サイズを大きくして締結部材70を数多く用意する必要があるので、部品単価、部品点数及び工数が増加し、コスト増を招く。
【0024】
そこで、本実施形態では、回路基板40及び樹脂ケース50の各サイズの拡大及び締結部材70の増加を抑制することによってコスト増を抑制しながら、回路基板40の振動を抑制することによって耐振性を確保することが可能な電流センサ1を提供する。このような電流センサ1を提供するために、本実施形態の電流センサ1では、樹脂ケース50が複数の台座61,62を有する。
【0025】
複数の台座61,62は、樹脂ケース50の回路基板40との対向面53に設けられる。複数の台座61,62は、回路基板40に沿った方向において、電流検出素子20を挟んで間隔を空けて配置される。複数の台座61,62は、回路基板40を支持する。複数の台座61,62は、樹脂製であり、樹脂ケース50の他の部分と一体的に成形される。複数の台座61,62は、第1台座61と、第2台座62と、を有する。
【0026】
第1台座61は、対向面53から回路基板40に向かって張り出すように形成される。第1台座61は、締結部材70の締結箇所に配置される。すなわち、第1台座61は、回路基板40に沿った方向において、電流検出素子20を挟んで間隔を空けて複数配置される。例えば、第1台座61は、回路基板40の長手方向の一端部44a及び他端部44bにそれぞれ対応する箇所と、回路基板40の長手方向において一端部44aと他端部44bとの間に対応する箇所と、に配置されてもよい。
【0027】
第2台座62は、対向面53から回路基板40に向かって張り出すように形成される。但し、第2台座62の対向面53からの高さH2は、第1台座61の対向面53からの高さH1よりも高い。第2台座62は、回路基板40に沿った方向において、第1台座61又は他の第2台座62との間に電流検出素子20を挟むように、第1台座61又は他の第2台座62と間隔を空けて配置される。例えば、第1台座61が回路基板40の長手方向の一端部44a及び他端部44bにそれぞれ対応する箇所に配置される場合、第2台座62は、回路基板40の長手方向において複数の第1台座61の間に配置されてもよい。
【0028】
上記のような電流センサ1の回路基板40を樹脂ケース50に締結する方法について、
図6~
図9(b)を用いて説明する。
図6は、回路基板40を樹脂ケース50に締結前の電流センサ1の状態を模式的に示す図である。
図7は、回路基板40を樹脂ケース50に締結後の電流センサ1の状態を模式的に示す図である。
図8(a)は、締結部材70が熱カシメ用のボス71である場合において回路基板40を樹脂ケース50に締結前の回路基板40及び樹脂ケース50の状態を模式的に示す図である。
図8(b)は、回路基板40を樹脂ケース50に締結後の
図8(a)に対応する図である。
【0029】
回路基板40の締結方法として、締結部材70が熱カシメ用のボス71である場合を例に挙げて説明する。締結部材70であるボス71は、樹脂製であり、第1台座61から回路基板40に向かう方向(-Z軸方向)に突出して設けられる。ボス71は、第1台座61及び樹脂ケース50と一体的に成形される。ボス71は、回路基板40の貫通孔43に挿入される。ボス71の第1台座61からの突出長さは、回路基板40の厚さよりも十分に長い。
【0030】
回路基板40の締結方法として、まず、
図6に示すように、回路基板40を第2台座62に着座させる工程を行う。具体的には、回路基板40の貫通孔43にボス71を挿入して回路基板40を樹脂ケース50の対向面53に近付けていく。回路基板40は、第1台座61よりも対向面53からの高さが高い第2台座62に着座する。
【0031】
続いて、回路基板40の締結方法として、第2台座62に着座させた回路基板40を、締結部材70によって樹脂ケース50に締結する工程を行う。具体的には、
図8(a)に示すように、熱カシメ用の治具Kを用いて、ボス71を加熱しながらボス71の頭部72をZ軸方向に押圧する。すると、
図8(b)に示すように、溶融したボス71はZ軸方向に圧縮されて、ボス71の頭部72が回路基板40の第2主面42に圧着する。更に、溶融したボス71は、回路基板40の第1主面41と第1台座61との隙間、及び、回路基板40の貫通孔43とボス71との隙間に充填される。回路基板40は、ボス71の頭部72と第1台座61との間に挟持される。回路基板40は、樹脂ケース50に締結される。
【0032】
回路基板40が樹脂ケース50に締結されると、
図7に示すように、回路基板40は、締結部材70の締結力によって、第2台座62への着座箇所を頂部とする凸状に曲げられた状態で樹脂ケース50に固定される。このような状態で固定された回路基板40の支点間距離D2は、第1台座61と第2台座62との間の距離になる。回路基板40の支点間距離D2は、第2台座62が無い場合の回路基板40の支点間距離D1よりも短くなる。
【0033】
これにより、本実施形態の電流センサ1は、電流センサ1が振動しても、回路基板40の振幅及び加速度を大幅に低減することができるので、回路基板40の振動を抑制することができる。したがって、本実施形態の電流センサ1は、電流検出素子20の端子22と回路基板40との接合部に加わる応力を大幅に低減することができ、耐振性を確保することができる。
【0034】
加えて、本実施形態の電流センサ1は、短い支点間距離D2で回路基板40が樹脂ケース50に固定される状態を、締結部材70の締結力を利用して実現すると共に、複数の台座61,62及び締結部材70という比較的簡単な手法によって実現することができる。すなわち、本実施形態の電流センサ1は、回路基板40及び樹脂ケース50の各サイズを増加させて、締結部材70の締結箇所を電流検出素子20付近に数多く配置する必要が無い。したがって、本実施形態の電流センサ1は、部品単価、部品点数及び工数の増加を抑制することができるので、コスト増を抑制することができる。
【0035】
このようなことから、本実施形態の電流センサ1は、コスト増を抑制しながら耐振性を確保することができる。
【0036】
なお、締結部材70が回路基板40を締結する工程の締結力によって回路基板40は第1台座61に着座するが、締結部材70が回路基板40に接触していれば、回路基板40の支点間距離が短くなる。したがって、本実施形態の電流センサ1では、回路基板40が第1台座61に必ずしも接触していなくても、回路基板40の振動を抑制することができ、耐振性を確保することができる。また、回路基板40が曲げた状態で固定されても回路基板40及び電流検出素子20の接合部に発生する応力が許容値以下に納まるよう、締結部材70の締結力、複数の台座61,62の高さ、回路基板40の強度、並びに、電流検出素子20の接合部強度及びレイアウト等が予め設計されている。
【0037】
また、本実施形態の電流センサ1において、締結部材70は、第1台座61から回路基板40に向かう方向に突出して設けられた熱カシメ用の樹脂製のボス71であってもよい。回路基板40は、ボス71が挿入される貫通孔43を有する。
【0038】
これにより、本実施形態の電流センサ1は、締結部材70が非磁性体であるので、磁気コア10を流れる磁束が締結部材70に影響されて変化することがない。したがって、本実施形態の電流センサ1は、締結部材70の締結箇所を比較的自由に設定することができ、電流検出素子20付近に設定することができる。ゆえに、本実施形態の電流センサ1は、締結部材70の締結箇所から電流検出素子20までの距離を短くすることができるので、電流検出素子20付近の回路基板40の振動を更に抑制することができる。よって、本実施形態の電流センサ1は、コスト増を抑制しながら耐振性を確実に確保することができる。
【0039】
また、本実施形態の回路基板40の締結方法は、回路基板40を第2台座62に着座させる工程と、第2台座62に着座させた回路基板40を、締結部材70によって樹脂ケース50に締結する工程と、有する。
【0040】
これにより、本実施形態の回路基板40の締結方法は、複数の台座61,62によって回路基板40の支点間距離を短くしながら、既存の締結部材70の締結力を利用した比較的簡単な手法によって、回路基板40を短い支点間距離D2で樹脂ケース50に固定することができる。よって、本実施形態の回路基板40の締結方法は、コスト増を抑制しながら電流センサ1の耐振性を確保することができる。
【0041】
上記の説明では、締結部材70が熱カシメ用のボス71であった。しかしながら、締結部材70は、ねじ75であってもよい。
【0042】
図9(a)は、締結部材70がねじ75である場合において回路基板40を樹脂ケース50に締結前の回路基板40及び樹脂ケース50の状態を模式的に示す図である。
図9(b)は、回路基板40を樹脂ケース50に締結後の
図9(a)に対応する図である。
【0043】
締結部材70がねじ75である場合、樹脂ケース50は、
図9(a)に示すように、第1台座61を貫通し対向面53を通過するねじ穴55を有する。締結部材70であるねじ75は、ねじ穴55に螺合するねじである。ねじ75は、回路基板40の貫通孔43に挿入される。ねじ75の胴部の長さは、回路基板40の厚さ及び第1台座61の高さH1の合計よりも十分に長い。
【0044】
回路基板40の締結方法として、回路基板40を第2台座62に着座させる工程では、回路基板40の貫通孔43を樹脂ケース50のねじ穴55に位置合わせしながら、回路基板40を樹脂ケース50の対向面53に近付けていく。回路基板40を締結部材70によって樹脂ケース50に締結する工程では、ねじ75を貫通孔43及びねじ穴55に挿入し、既存のドライバーを用いてねじ75を締め付ける。回路基板40は、ねじ75の頭部76と第1台座61との間に挟持される。回路基板40は、樹脂ケース50に締結される。
【0045】
これにより、本実施形態の電流センサ1は、締結部材70が熱カシメ用のボス71である場合と同様に、回路基板40の支点間距離を短くすることができ、耐振性を確保することができる。更に、本実施形態の電流センサ1は、締結部材70が熱カシメ用のボス71である場合よりも、ねじ75の軸力によって締結部材70の締結力を大きくすることができると共に、ボス71の加熱が不要なので回路基板40の締結工程を簡単にすることができる。よって、本実施形態の電流センサ1は、コスト増を更に抑制しながら耐振性を確実に確保することができる。
【0046】
図10(a)~
図11(b)を用いて、本実施形態の電流センサ1における複数の台座61,62の配置例について説明する。
図10(a)は、複数の台座61,62の配置例を模式的に示す平面図である。
図10(b)は、
図10(a)に対応する側面図である。
【0047】
複数の台座61,62の少なくとも1つは、締結部材70の締結方向に沿って視た場合、磁気コア10と重複する箇所に配置されてもよい。
【0048】
これにより、本実施形態の電流センサ1は、複数の台座61,62の少なくとも1つによって構成される回路基板40の支点から電流検出素子20までの距離を短くすることができるので、電流検出素子20付近の回路基板40の振動を更に抑制することができる。よって、本実施形態の電流センサ1は、コスト増を抑制しながら耐振性を確実に確保することができる。
【0049】
また、第1台座61は、回路基板40の長手方向の一端部44aに対応する箇所と、回路基板40の長手方向の他端部44bに対応する箇所と、に少なくとも配置されてもよい。第2台座62は、複数の第1台座61の間に配置されてもよい。
【0050】
これにより、本実施形態の電流センサ1は、回路基板40が曲げた状態で固定されても、回路基板40及び電流検出素子20の接合部に発生する応力を許容値以下に納め易くすることができる。したがって、本実施形態の電流センサ1は、回路基板40及び電流検出素子20の接合部に発生する歪みを許容値以下に納め易くすることができる。よって、本実施形態の電流センサ1は、コスト増を抑制しながら耐振性を確保すると共に、長期信頼性を確保し易くすることができる。
【0051】
図11(a)は、複数の台座61,62の他の配置例を模式的に示す平面図である。
図11(b)は、複数の台座61,62の他の配置例を模式的に示す平面図である。
【0052】
また、第1台座61は、回路基板40の短手方向の一端部45aに対応する箇所に配置されてもよい。第2台座62は、第1台座61よりも回路基板40の短手方向の他端部45bに近い箇所であって、第1台座61よりも回路基板40の長手方向の一端部44a及び他端部44bにそれぞれ近い箇所に少なくとも配置される。
【0053】
これにより、本実施形態の電流センサ1は、締結部材70の締結箇所が回路基板40の短手方向の一端部45aにしか配置されない場合であっても、回路基板40の支点を、回路基板40に沿った方向において電流検出素子20を挟んだ箇所に配置することができる。これにより、回路基板40は、第1台座61と第2台座62との高低差によって、許容応力内で凹状に曲げられた状態で樹脂ケース50に固定され、締結部材70の締結箇所及び第2台座62での両持ち支持にて支持される。よって、本実施形態の電流センサ1は、コスト増を抑制しながら耐振性を確保することができる。
【0054】
なお、締結部材70の締結箇所の数は1つであってもよい。すなわち、締結部材70及び第1台座61のそれぞれの数は1つであってもよい。この場合、例えば、締結部材70の締結箇所を、回路基板40の中央部に対応する箇所としてもよい。そして、回路基板40の中央部に貫通孔43を配置すると共に、回路基板40の対応する樹脂ケース50の対向面53の中央部に第1台座61を配置してもよい。第2台座62は、回路基板40に沿った方向において第1台座61と共に電流検出素子20を挟んだ箇所に1又は複数配置してもよい。これにより、回路基板40は、締結部材70の締結箇所を底部とする凹状に曲げられた状態で樹脂ケース50に固定され、両持ち支持にて支持される。よって、本実施形態の電流センサ1は、コスト増を抑制しながら耐振性を確保することができる。
【0055】
図12を用いて、本実施形態の電流センサ1が備えるカバー80について説明する。
図12は、カバー80を備える電流センサ1を模式的に示す図である。
【0056】
カバー80は、樹脂ケース50に取り付けられ、樹脂ケース50に締結された回路基板40を覆う。カバー80は、ねじ止め又はスナップフィットによって、樹脂ケース50に取り付けられてもよい。カバー80は、カバー80の裏面81から回路基板40に向かって延びる突起部82を有する。突起部82は、締結部材70を構成する。突起部82は、第1台座61に対応する箇所に複数配置される。突起部82は、カバー80が樹脂ケース50に取り付けられると、回路基板40を押圧する。
【0057】
これにより、本実施形態の電流センサ1は、カバー80の締結力を回路基板40の締結に利用することができるので、ボス71又はねじ75が不要となり、回路基板40の小型化及び形状の簡素化を図ることができる。したがって、本実施形態の電流センサ1は、部品単価、部品点数及び工数を減少させることができ、コスト減を図ることができる。よって、本実施形態の電流センサ1は、コスト増を更に抑制しながら耐振性を確保することができる。
【0058】
なお、突起部82を備えたカバー80は、ボス71又はねじ75が設けられた電流センサ1に適用することも可能である。この場合、例えば、突起部82がボス71の頭部72を押圧することができるので、ボス71の締結力を大きくしなくて済む。これにより、本実施形態の電流センサ1は、回路基板40が曲げた状態で固定されても、回路基板40及び電流検出素子20の接合部に発生する応力を許容値以下に納め易くすることができる。よって、本実施形態の電流センサ1は、コスト増を抑制しながら耐振性を確保すると共に、長期信頼性を確保し易くすることができる。
【0059】
[電流センサの電力変換装置への搭載例]
図13(a)~
図14(b)を用いて、電流センサ1の電力変換装置100への搭載例について説明する。
図13(a)は、電流センサ1の電力変換装置100への搭載例を模式的に示す平面図である。
図13(b)は、
図13(a)に対応する側面図である。
【0060】
電流センサ1は、樹脂ケース50の取り付け孔52と、電力変換装置100の筐体150に設けられた取り付け孔とに、取り付けピンを挿入すること等によって、電力変換装置100に取り付けることができる。
【0061】
電力変換装置100のコントローラ140は、パワーモジュール120を制御する制御回路141が実装された制御基板142を有する。制御基板142は、回路基板40に実装されたコネクタ30によって回路基板40と接続されている。電流センサ1の樹脂ケース50の第2台座62は、締結部材70の締結方向に沿って視た場合、コネクタ30と重複する箇所に配置される(
図3)。
【0062】
これにより、本実施形態の電力変換装置100は、電流センサ1の回路基板40を制御基板142に接続する際に、コネクタ30を介して回路基板40に加わる荷重を第2台座62によって受け止めることができる。したがって、本実施形態の電力変換装置100は、電流センサ1の取り付け時に回路基板40に発生する応力を低減することができる。ゆえに、本実施形態の電力変換装置100は、回路基板40及び電流検出素子20の接合部に発生する歪みを許容値以下に納め易くすることができる。よって、本実施形態の電力変換装置100は、コスト増を抑制しながら電流センサ1の耐振性を確保すると共に、電流センサ1の長期信頼性を確保し易くすることができる。
【0063】
図14(a)は、電流センサ1の電力変換装置100への他の搭載例を模式的に示す平面図である。
図14(b)は、
図14(a)に対応する側面図である。
【0064】
電力変換装置100のコントローラ140は、パワーモジュール120を制御する制御回路141を有する。制御回路141は、回路基板40に実装されていてもよい。すなわち、回路基板40は、電流センサ1とコントローラ140とに共用されていてもよい。
【0065】
制御回路141は、制御基板142に実装される電子部品及び制御基板142の配線パターンによって実現される。制御回路141を実現する電子部品及び配線パターンを回路基板40に集約することによって、回路基板40を、電流センサ1とコントローラ140とで共用することができる。
【0066】
これにより、本実施形態の電力変換装置100は、制御基板142及びコネクタ30が不要となるので、部品点数及び工数を減少させることができ、コスト減を図ることができる。よって、本実施形態の電力変換装置100は、コスト増を更に抑制しながら電流センサ1の耐振性を確保することができる。
【0067】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、或る実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、或る実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…電流センサ、10…磁気コア、11…エアギャップ、20…電流検出素子、30…コネクタ、40…回路基板、43…貫通孔、44a…回路基板の長手方向の一端部、44b…回路基板の長手方向の他端部、45a…回路基板の短手方向の一端部、45b…回路基板の短手方向の他端部、50…樹脂ケース、53…対向面、55…ねじ穴、61…第1台座、62…第2台座、70…締結部材、71…ボス、75…ねじ、100…電力変換装置、120…パワーモジュール、130…バスバー、140…コントローラ、141…制御回路、142…制御基板