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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103315
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】葉避け装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 46/30 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A01D46/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007583
(22)【出願日】2023-01-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構「農作物に適したロボットアーム等を活用した農作業自動化技術の開発」に係る試験研究、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの)
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】妻木 勇一
(72)【発明者】
【氏名】角田 琢朗
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075AC01
2B075AC03
2B075AC08
2B075JA02
2B075JA08
2B075JD03
2B075JD19
2B075JD20
2B075JF01
2B075JF05
2B075JF08
2B075JF10
2B075JJ01
(57)【要約】
【課題】収穫ロボットによる果実の収穫の際に、事前に葉を避けることができる葉避け装置を提供する。
【解決手段】
本発明にかかる葉避け装置は、ロボットアームの先端に設けられた平行2指ハンドを有する収穫ロボット用の葉避け装置であって、平行2指ハンドの前方にある葉を避ける葉避け部19と、平行2指ハンドを構成する2本の指部110の開閉動作を利用して、当該平行2指ハンドの前方にある葉を避けるための動作を能動的に行う能動葉避け機構部25と、を備える。そして、能動葉避け機構部25は、葉避けを行う場合は葉避け部19を展開し、葉避けを行わないときは葉避け部19を格納する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの先端に設けられた収穫装置を有する収穫ロボット用の葉避け装置であって、
前記収穫装置の前方にある葉を避ける葉避け部と、
前記収穫装置の動作を利用して、当該収穫装置の前方にある葉を避けるための動作を能動的に行う能動葉避け機構部と、
を備え、
前記能動葉避け機構部は、葉避けを行うときは前記葉避け部を展開し、葉避けを行わないときは前記葉避け部を格納する、
ことを特徴とする葉避け装置。
【請求項2】
前記収穫装置を平行2指ハンドとし、
前記能動葉避け機構部は、前記平行2指ハンドを構成する2本の指部の開閉動作を利用して、当該平行2指ハンドの前方にある葉を避けるための動作を能動的に行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の葉避け装置。
【請求項3】
前記能動葉避け機構部は、前記指部の開閉動作に連動して直進動作と回転動作とを行う直進対偶、および当該直進対偶の動きに応じて揺動する動節、を含むスライダ揺動機構を備え、当該スライダ揺動機構の動きに基づいて前記葉避け部を動作させ、
前記直進対偶は、前記指部の開閉動作に連動する直進動作において、前記葉避け部の動作に影響を与えないスライド範囲を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の葉避け装置。
【請求項4】
前記能動葉避け機構部は、前記平行2指ハンドに設けられた土台に形成された固定リンクとして機能する静止節と、前記スライダ揺動機構を構成する前記動節として機能する駆動節と、を有する平行4リンク機構をさらに備え、
前記葉避け部を、前記静止節に対向する前記平行4リンク機構の中間節と一体に形成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の葉避け装置。
【請求項5】
前記能動葉避け機構部は、
噛み合った状態の2つの歯車である第1の歯車および第2の歯車と、
前記スライダ揺動機構を構成する前記動節の動きに連動して軸回転するとともに前記第1の歯車の回転軸として機能する第1の回転対偶と、
前記第2の歯車の回転軸として機能する第2の回転対偶と、
を有し、
前記第1の歯車を用いて前記スライダ揺動機構を構成する前記動節の動きを前記第2の歯車に伝達する構造とし、
前記葉避け部は、前記第1の歯車に接続された第1の葉避け部と、前記第2の歯車に接続された第2の葉避け部と、を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の葉避け装置。
【請求項6】
前記能動葉避け機構部は、前記スライダ揺動機構を構成する前記動節の動きに連動して軸回転する回転対偶を有し、当該回転対偶の軸回転により前記葉避け部を動作させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の葉避け装置。
【請求項7】
ロボットアームの先端に設けられたハンド部を有する収穫ロボット用の葉避け装置であって、
前記ハンド部の前方にある葉を避けるための葉避け部と、
前記ハンド部に設けられた取付用の土台部と、
一端部を前記土台部に取り付け、他端部を前記ハンド部の先端を超えるまで延伸し、当該他端部で前記葉避け部を支持する葉避け支え部と、
を備える、
ことを特徴とする葉避け装置。
【請求項8】
前記葉避け部および前記葉避け支え部を弾性体で形成する、
ことを特徴とする請求項7に記載の葉避け装置。
【請求項9】
ロボットアームの先端に設けられたハンド部を有する収穫ロボット用の葉避け装置であって、
前記ハンド部の前方にある葉を避けるための葉避け部と、
前記ハンド部に設けられた取付用の土台部と、
一端部を前記土台部に取り付け、他端部を前記ハンド部の先端を超えるまで延伸し、当該他端部で前記葉避け部を支持する葉避け支え部と、
前記土台部に取り付けられた前記葉避け支え部を進退可能に案内するガイド部と、
を備える、
ことを特徴とする葉避け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実を収穫するための収穫ロボット(収穫機)用の葉避け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高齢化によって農家の人手が不足している。そこで、果物や野菜等を自動収穫する様々な農業用ロボットが研究、開発されている。そして、これらのロボットには、労働力不足の解消だけでなく、作業者の負担の軽減も求められている。
【0003】
たとえば、下記特許文献1には、画像処理により果実の位置を検出し、ハンドを移動させて摘採する収穫ロボットにおいて、イチゴ、ミカン、トマト、キュウリやナス等の果実を収穫するための収穫用ハンドが開示されている。
【0004】
具体的には、下記特許文献1に記載の収穫用ハンドは、収穫する果実の茎を茎保持チャックにより茎保持部に挟み込み、茎を保持した状態で第1刃により茎保持チャックの上方位置において茎を切断し、その後、第2刃を茎に沿って果実の近くまで下降させ、茎を果実の近くで正確に切断して収穫する。
【0005】
また、下記特許文献2には、ロボットアーム機構を備えた収穫ロボットにおいて、カメラの撮影画像によって収穫対象のミニトマトの位置を特定し、ロボットアーム機構を移動させてミニトマトを収穫する果実収穫装置が開示されている。
【0006】
具体的には、下記特許文献2に記載の果実収穫装置は、ロボットアーム機構によりミニトマトの位置まで移動し、吸引機による吸引動作によりミニトマトを吸引し、この状態で、ミニトマトの果柄に引っ掛けたワイヤループを引き寄せることによりカッターに押し付けて果柄を切断し、果柄が切断された後、吸引機による吸引動作を停止し、ミニトマトを収穫籠にリリースする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-67417号公報
【特許文献2】特開2021-171020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1,2に記載の収穫ロボットは、いずれも果実を収穫する際に、カメラによる撮影画像によって果実の有無を把握し、アームを果実の近くに移動させて収穫するものである。
【0009】
しかしながら、上記のような収穫ロボットは、葉に隠れた果実を見つけることが困難である。特に、さくらんぼは、葉が多く、撮影画像では果実の有無を把握できないため、収穫ロボットによる収穫では収穫率が大幅に低減する。すなわち、上記特許文献1,2に記載の収穫ロボットは、葉を避ける手段がないため、葉に隠れた果実の自動収穫には適していない。
【0010】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、収穫ロボットが果実を収穫する際に、事前に葉を避けることができる葉避け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる葉避け装置は、ロボットアームの先端に設けられた収穫装置を有する収穫ロボット用の葉避け装置であって、収穫装置の前方にある葉を避ける葉避け部と、収穫装置の動作を利用して、当該収穫装置の前方にある葉を避けるための動作を能動的に行う能動葉避け機構部と、を備え、能動葉避け機構部は、葉避けを行うときは葉避け部を展開し、葉避けを行わないときは葉避け部を格納することを特徴とする。その際、収穫装置を平行2指ハンドとし、能動葉避け機構部は、平行2指ハンドを構成する2本の指部の開閉動作を利用して、当該平行2指ハンドの前方にある葉を避けるための動作を能動的に行うことが望ましい。
【0012】
また、本発明にかかる葉避け装置において、能動葉避け機構部は、指部の開閉動作に連動して直進動作と回転動作とを行う直進対偶、および当該直進対偶の動きに応じて揺動する動節、を含むスライダ揺動機構を備え、当該スライダ揺動機構の動きに基づいて前記葉避け部を動作させ、直進対偶は、指部の開閉動作に連動する直進動作において、葉避け部の動作に影響を与えないスライド範囲を有することが望ましい。
【0013】
また、本発明にかかる葉避け装置において、能動葉避け機構部は、平行2指ハンドに設けられた土台に形成された固定リンクとして機能する静止節と、スライダ揺動機構を構成する動節として機能する駆動節と、を有する平行4リンク機構をさらに備え、葉避け部を、静止節に対向する平行4リンク機構の中間節と一体に形成することが望ましい。
【0014】
また、本発明にかかる葉避け装置において、能動葉避け機構部は、噛み合った状態の2つの歯車である第1の歯車および第2の歯車と、スライダ揺動機構を構成する動節の動きに連動して軸回転するとともに第1の歯車の回転軸として機能する第1の回転対偶と、第2の歯車の回転軸として機能する第2の回転対偶と、を有し、第1の歯車を用いてスライダ揺動機構を構成する動節の動きを第2の歯車に伝達する構造とし、葉避け部は、第1の歯車に接続された第1の葉避け部と、第2の歯車に接続された第2の葉避け部と、を有することが望ましい。
【0015】
また、本発明にかかる葉避け装置において、能動葉避け機構部は、スライダ揺動機構を構成する動節の動きに連動して軸回転する回転対偶を有し、当該回転対偶の軸回転により葉避け部を動作させることが望ましい。
【0016】
本発明にかかる葉避け装置は、平行二指ハンドを使用して果実を収穫する収穫ロボットに適用可能であり、果実を収穫する際に事前に葉避け部を展開して葉を避けることとした。そのため、葉で隠れているような果実であっても、収穫ロボットに搭載されたカメラによる撮影画像により、果実の有無を正確に把握することができる。すなわち、本発明にかかる葉避け装置が取り付けられた収穫ロボットは、葉避け装置の動作によって的確に実や果梗の位置を特定することができるため、収穫量を大幅に増大させることができる。また、本実施形態の葉避け装置は、収穫の際には葉避け部を格納することとしたので、葉避け部が収穫の邪魔になることがない。
【0017】
また、本発明にかかる葉避け装置は、ロボットアームの先端に設けられたハンド部を有する収穫ロボット用の葉避け装置であって、ハンド部の前方にある葉を避けるための葉避け部と、ハンド部に設けられた取付用の土台部と、一端部を土台部に取り付け、他端部をハンド部の先端を超えるまで延伸し、当該他端部で葉避け部を支持する葉避け支え部と、を備えることを特徴する。そして、葉避け部および葉避け支え部は弾性体で形成することが望ましい。
【0018】
また、本発明にかかる葉避け装置は、ロボットアームの先端に設けられたハンド部を有する収穫ロボット用の葉避け装置であって、ハンド部の前方にある葉を避けるための葉避け部と、ハンド部に設けられた取付用の土台部と、一端部を土台部に取り付け、他端部をハンド部の先端を超えるまで延伸し、当該他端部で葉避け部を支持する葉避け支え部と、土台部に取り付けられた葉避け支え部を進退可能に案内するガイド部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる葉避け装置によれば、収穫ロボットによる果実の収穫の際に、事前に葉を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明にかかる葉避け装置が取り付けられる収穫ロボットのイメージを示す図である。
図2図2は、第1の実施形態の葉避け装置の構造の一例を示す図である。
図3図3は、平行2指ハンドとして動作するハンド部の構成の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態の葉避け装置の動作を示す図である。
図5図5は、第2の実施形態の葉避け装置の構造の一例を示す図である。
図6図6は、第2の実施形態の葉避け装置の動作を示す図である。
図7図7は、第3の実施形態の葉避け装置の構造の一例を示す図である。
図8図8は、第3の実施形態の葉避け装置の動作を示す図である。
図9図9は、第4の実施形態の葉避け装置の構造の一例を示す図である。
図10図10は、第4の実施形態の葉避け装置の動作を示す図である。
図11図11は、第5の実施形態の葉避け装置の構造の一例を示す図である。
図12図12は、第5の実施形態の葉避け装置の動作を示す図である。
図13図13は、葉を避けるための動作を受動的に行う葉避け装置の構造の一例を示す図である。
図14図14は、重力を利用して可動する葉避け装置の構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる葉避け装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本願の明細書および図面において、同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する場合がある。
【0022】
<第1の実施形態>
前述したように、従来の収穫ロボットは、果実を収穫する際に、カメラによる撮影画像によって果実の有無を把握し、アームを果実の近くに移動させて収穫を行うが、カメラによる撮影画像のみでは、たとえば、葉に隠れた果実を見つけることは困難である。特に、さくらんぼは、葉が多く、撮影画像では果実の有無を的確に把握することができないため、従来の収穫ロボットによる自動収穫では収穫率が大幅に低減することになる。本実施形態においては、収穫ロボットに葉を避ける手段(本発明の葉避け装置)を設け、果実を収穫する際に、事前に葉を避けて、収穫ロボットに葉に隠れた果実の有無を把握させることによって、果実の自動収穫における収穫率の向上を図る。
【0023】
<収穫ロボット>
まず、本実施形態の葉避け装置を説明する前に、葉避け装置が取り付けられる収穫ロボットの概要について説明する。図1は、本実施形態の葉避け装置が取り付けられる収穫ロボットのイメージを示す図である。
【0024】
たとえば、図1において、収穫ロボット100は、コンピュータ制御によって人と同じような自由度を持ちかつ適切な角度からさくらんぼに近づくことができるロボットアームとして機能する軽量のアーム部101と、アーム部101の先端に設けられ、2本の指でさくらんぼを収穫するロボットハンド(後述する平行二指ハンドに相当)として機能するハンド部102と、を備える。そして、収穫ロボット100は、ハンド部102に搭載されたカメラによる撮影画像に基づいてさくらんぼの有無を把握し、アーム部101の動作によりハンド部102をさくらんぼの近くまで移動させた状態で、ハンド部102の2本の指を使用して果梗ごとさくらんぼの実を収穫する。さらに、収穫ロボット100は、収穫したさくらんぼを搬送する搬送システムや、自由に動き回ることができる電動台車等を備えることとしてもよい。
【0025】
本実施形態においては、上記収穫ロボット100のハンド部102に土台を設け、この土台に、葉を避けるための手段である葉避け装置を取り付ける。そして、さくらんぼの収穫の際に、事前に葉が避けられた状態で、収穫ロボット100が的確にさくらんぼの有無を把握する。これにより、葉に隠れた果実の自動収穫に適した収穫ロボットを得ることができる。
【0026】
なお、図1に示す収穫ロボット100は、さくらんぼを収穫するロボットとして説明したが、これは一例であり、さくらんぼ以外の果実(果物、野菜等の実)を収穫する収穫ロボットであってもよい。
【0027】
<葉避け装置の構造>
つづいて、本実施形態の葉避け装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図2は、第1の実施形態の葉避け装置の構造の一例を示す図である。図2において、本実施形態の葉避け装置1は、回転対偶11~14、ハンド部102に設けられた取付用の土台(後述する土台111の不動部分に相当)に形成された固定リンクとして機能する静止節15、および動節16~18、により平行4リンク機構を形成する。具体的には、平行4リンク機構は、回転対偶11と回転対偶12が静止節15に固定された状態において、この静止節15と、回転対偶12および回転対偶13によりつながれた動節16と、回転対偶13および回転対偶14によりつながれた動節17と、回転対偶14および回転対偶11によりつながれた動節18、によって形成されている。そして、本実施形態においては、静止節15に対向する動節17が、平行4リンク機構の中間リンク(中間節)として葉避け部19の一部を構成し、葉避け部19は、ハンド部102の前方に向かって動節17の延長線上に形成される(図2(a)参照)。
【0029】
また、動節18には、回転対偶11の近傍に回転対偶20が設けられ、軸21によりつながれた軸付き動節22の動きに連動して、回転対偶20が回転対偶11の周囲を回転移動する。これにより、動節18が駆動リンク(駆動節)として揺動し、さらに、動節16が従動リンク(従動節)として揺動する。
【0030】
また、軸21は、長穴付き直進対偶23の長穴24に収容され、さらに、長穴付き直進対偶23は、軸付き動節22、および回転対偶11と回転対偶20との間のリンク(動節18の一部)とともに、図2(b)に示すスライダ揺動機構を形成する。そして、この長穴付き直進対偶23は、長穴24と軸21(軸付き動節22)との組合せで直進動作と回転動作を行う一つの対偶として機能する。具体的には、この長穴付き直進対偶23は、軸付き動節22に接続された回転対偶20を、回転対偶11を中心に0°(葉避け部19全閉(格納状態))~90°(葉避け部19全開(展開状態))の範囲内で回転させるために、後述するねじ軸113の長手方向へスライド可能にハンド部102の土台の可動部(後述する直進対偶取付部114に相当)に取り付けられている。
【0031】
また、長穴付き直進対偶23に長穴24を設けることにより、葉避け部19の動作に影響を与えないスライド範囲を形成することができる。すなわち、このスライド範囲内で長穴付き直進対偶23をスライド(直進)させると、軸21(軸付き動節22)を動かすことなく、後述する指部110(図2(a)参照)を開閉できる。
【0032】
本実施形態においては、上記平行4リンク機構および上記スライダ揺動機構により、ハンド部102の前方にある葉を避けるための動作を能動的に行う能動葉避け機構部25を形成する。
【0033】
そして、本実施形態の葉避け装置1は、上記能動葉避け機構部25として機能する第1の能動葉避け機構部25aと、土台の中心線(図2に示す2本の指部110の中心線)を対称軸として第1の能動葉避け機構部25aに対し左右対称(線対称)に設けられた第2の能動葉避け機構部25bと、平行4リンク機構の動節17と一体に形成された葉避け部19とを備え、平行4リンク機構による駆動リンク(動節18)と従動リンク(動節16)の揺動によって、葉避けを行う場合は葉避け部19を展開し、葉避けを行わないときは葉避け部19を格納する。
【0034】
なお、以下では、説明の便宜上、一方の第1の能動葉避け機構部25aを右側葉避け機構部25a、この右側葉避け機構部25aに形成された葉避け部19を右葉避け部19a、と呼び、他方の第2の能動葉避け機構部25bを左側葉避け機構部25b、この左側葉避け機構部25bに形成された葉避け部19を左葉避け部19b、と呼ぶ。
【0035】
<ハンド部>
つづいて、上述した収穫ロボット100におけるハンド部102の一例について説明する。図3は、平行2指ハンドとして動作するハンド部102の構成の一例を示す図である。
【0036】
図3において、ハンド部102は、平行2指ハンドの把持部として機能する指部110(右指部110a、左指部110b)と、各指部110を平行状態に保ったまま指部110を開閉させるための左右の長穴付き直進対偶23(上記スライダ揺動機構の構成要素)と、土台111と、モータ112とを有する。また、この土台111は、その内部に、右側と左側で逆向きのねじ溝が形成されたねじ軸113と、ねじ軸113の左右のねじ溝にそれぞれ螺接する直進対偶取付部114(それぞれ右直進対偶取付部114a、左直進対偶取付部114bと呼ぶ)とを備え、モータ112の駆動によるねじ軸113の回転動作を直進対偶取付部114の直進動作に変換するボールねじとして機能する。すなわち、土台111には左右の直進対偶取付部114をスライド可能に案内するガイドとして機能する内壁が形成され、モータ駆動によるねじ軸113の回転方向によって、左右の直進対偶取付部114が土台111の内壁に沿って近づいたり離れたりする。
【0037】
また、図3において、指部110(右指部110a、左指部110b)は、上述したハンド部102の2本の指に相当する。平行2指ハンドとして動作するハンド部102は、上述したモータ112の駆動による左右の直進対偶取付部114のスライド動作に連動して、右指部110aと左指部110bを、平行状態に保ったまま開閉する。
【0038】
また、図2(b)に示すスライダ揺動機構の構成要素である左右の長穴付き直進対偶23は、それぞれ右直進対偶取付部114aおよび左直進対偶取付部114bに個別に取り付けられる。そして、本実施形態において、右指部110aおよび左指部110bは、左右の長穴付き直進対偶23のそれぞれの内側面(対向する面)に沿って突出するように取り付けられている。
【0039】
なお、長穴付き直進対偶23への指部110の取付方法については、上記に限定されるものではなく、右指部110aと左指部110bにより収穫対象を把持可能な構造であればどのような手段で実現することとしてもよい。
【0040】
また、本実施形態においては、一例として、平行2指ハンドとして動作するハンド部102について説明したが、ハンド部102は平行2指ハンドに限定されるものではなく、指部の動きを葉避けの動作に利用できる収穫用のハンド(収穫装置)であれば、どのようなハンドでも適用可能である。たとえば、3指以上の多指ハンド(2指利用)や、平行ではない2指ハンドであってもよい。さらには、葉避けの動作に利用できるのであれば、2本の指部をハサミで構成したハンドであってもよい。
【0041】
<葉避け装置の動作>
つづいて、本実施形態の葉避け装置1の動作を説明する。図4は、第1の実施形態の葉避け装置の動作を示す図である。本実施形態においては、平行2指ハンドの動きを利用して左右の長穴付き直進対偶23を互いに逆方向にスライドさせることにより、葉避け部19を動作(格納、展開)させる。
【0042】
図4(a)は、指部110が閉じられ、葉避け部19が格納された状態(初期状態)、すなわち、左右の長穴付き直進対偶23が互いに最も近接した位置(初期位置)に配置され、軸21が左右の長穴24の外側端部に当接した状態、を示す。この際、平行4リンク機構を構成する回転対偶11~14は、一直線上に配置されている。
【0043】
図4(a)の状態において、モータ駆動によりねじ軸113を回転させることによって、左右の指部110を広げながら、軸21が長穴24の内側端部(逆側の端部)に当接するまで、長穴付き直進対偶23を外側(矢印方向)にスライドさせる。これにより、図4(b)の状態となる。
【0044】
図4(b)は、葉避け部19が格納された状態を維持しつつ、右指部110aおよび左指部110bをそれぞれ長穴24の長さだけ広げた状態、すなわち、軸21の位置を動かすことなく左右の長穴付き直進対偶23が長穴24の長さ分だけ外側にスライドし、軸21が左右の長穴24の内側端部に当接した状態、を示す。
【0045】
図4(b)の状態から、モータ駆動によりさらに指部110を広げる動作を行うと、左右の長穴付き直進対偶23の外側へのスライドに伴って、左右の長穴24の内側端部に当接した状態の軸21が外側に向かって移動し、軸21の移動による軸付き動節22の動きに連動して回転対偶20が回転対偶11の周囲を回転移動する。これにより、平行4リンク機構を構成する動節16~18が作動し、葉避け部19(右葉避け部19a、左葉避け部19b)が展開状態となる。
【0046】
図4(c)は、図4(b)の状態よりも指部110がさらに広がり、葉避け部19が展開された状態を示す。
【0047】
なお、展開された葉避け部19を格納する場合は、モータ駆動により指部110を全閉する動作を行う。指部110を全閉する動きに伴って、両側に開いた状態の長穴付き直進対偶23が内側(土台111の中心線)に向かってにスライドするとともに、長穴24内の軸21が内側に向かって移動し、軸21の移動による軸付き動節22の動きに連動して回転対偶20が回転対偶11の周囲を回転移動することによって、葉避け部19が格納される。このとき、平行4リンク機構を形成する回転対偶11~14は、一直線上に配置される(図4(a)参照)。すなわち、葉避け部19を展開した場合は、上述したように、モータ駆動により指部110を全閉する動作(図4(c)→図4(a)の動作)を行い、さらに、図4(a)の状態から図4(b)の状態とした後に、葉避け部19を格納した状態で収穫を行う。
【0048】
また、本実施形態においては、たとえば、平行4リンク機構にバネ等を導入することにより、展開された葉避け部19を自動的に格納することとしてもよい。この方法で葉避け部19を自動的に格納した場合は、葉避け部19の格納と同時に図4(b)の状態を形成できるため、一度モータ駆動により指部110を全閉する動作を行うことなく、収穫を行うことができる。
【0049】
<効果>
上記のように構成された本実施形態の葉避け装置1は、平行二指ハンドを使用して果実を収穫する収穫ロボットに適用可能であり、果実を収穫する際に事前に葉避け部19を展開して葉を避けることとした。そのため、葉で隠れているような果実であっても、収穫ロボットに搭載されたカメラによる撮影画像により、果実の有無を正確に把握することができる。すなわち、収穫ロボットは、葉避け装置1の動作によって的確に実や果梗の位置を特定することができるため、収穫量を大幅に増大させることができる。
【0050】
また、本実施形態の葉避け装置1は、収穫の際には葉避け部19を格納することとしたので、葉避け部19が収穫の邪魔になることがない。
【0051】
なお、本実施形態の葉避け装置の構造は、一例であり、同様の動きを実現する様々な機構が考えられる。
【0052】
また、本実施形態においては、さくらんぼを収穫する収穫ロボット100のハンド部102に葉避け装置1を取り付ける場合について説明したが、これに限るものではなく、葉避け装置1は、指部の動きを葉避けの動作に利用できるハンド(二指ハンド等)を備えていれば、どのような果実を収穫する収穫ロボットであっても適用可能である。
【0053】
また、本実施形態においては、葉避け部19を棒状としたが、これに限るものではなく、ハンド部102に搭載されたカメラにより果実の有無を把握できる程度に葉避けを行うことができればよく、形状は任意である。
【0054】
<第2の実施形態>
つづいて、本発明にかかる葉避け装置の第2の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した第1の実施形態と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。また、収穫ロボットの概要については、前述した第1の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。
【0055】
<葉避け装置の構造>
まず、第2の実施形態の葉避け装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0056】
図5は、第2の実施形態の葉避け装置の構造の一例を示す図である。図5において、本実施形態の葉避け装置30は、ハンド部102の前方にある葉を避けるための動作を能動的に行う能動葉避け機構部31と、2つのL字形状の葉避け部32(右葉避け部32a、左葉避け部32b)と、を備える。
【0057】
本実施形態の葉避け装置30において、能動葉避け機構部31は、噛み合った状態の2つの歯車である右歯車33aおよび左歯車33bと、土台111(静止節)に設けられ右歯車33aの回転軸として機能する回転対偶34と、土台111(静止節)に設けられ左歯車33bの回転軸として機能する回転対偶35と、歯車33aに固定された回転対偶36と、回転対偶36の動きに連動して揺動する駆動リンクとして機能する動節37(右歯車33a自体)と、回転対偶36および軸38によりつながれた軸付き動節39と、長穴24とこの長穴24に収容された軸38との組合せで直進動作と回転動作を行う上述した長穴付き直進対偶23(スライダ揺動機構の構成要素)として機能する長穴付き直動右指土台41と、を備える。なお、本実施形態の葉避け装置30は、さらに、長穴付き直動右指土台41のスライド方向とは逆方向にスライドする、すなわち、軸113の回転方向によって長穴付き直動右指土台41と近づいたり離れたりする、直動左指土台42を備える。
【0058】
また、右歯車33aにはL字形状の右葉避け部32aの一端が接続され、左歯車33bにはL字形状の左葉避け部32bの一端が接続される。そして、右葉避け部32aは格納時にL字形状の他端が土台111の右側面側に位置するように右歯車33aに接続され、左葉避け部32bは格納時にL字形状の他端が土台111の左側面側に位置するように左歯車33bに接続される。
【0059】
また、回転対偶36は、軸38によりつながれた軸付き動節39の動きに連動して、回転対偶34の周囲を回転移動する。この動きにより、動節37が駆動リンクとして揺動して回転対偶34(歯車33a)が軸回転し、この軸回転に連動して右歯車33aに接続された右葉避け部32aが展開および格納される。
【0060】
また、長穴付き直動右指土台41は、軸付き動節39に接続された回転対偶36を、回転対偶34を中心に0°(葉避け部25格納状態)~90°(葉避け部25展開状態)の範囲内で回転移動させるために、土台111の右直進対偶取付部114aに取り付けられている。なお、直動左指土台42は、土台111の左直進対偶取付部114bに取り付けられている。
【0061】
また、回転対偶36の回転移動に伴って右歯車33aが軸回転すると同時に、左歯車33bが逆回転し、この左歯車33bの逆回転に連動して、左歯車33bに接続された左葉避け部32bが右葉避け部32aに同期して展開および格納される。
【0062】
上記のように構成された葉避け装置30は、モータ駆動による長穴付き直動右指土台41のスライド動作によって、葉避けを行う場合は葉避け部32を展開し、葉避けを行わないときは葉避け部32を格納する。これにより、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、収穫ロボットによる収穫量を大幅に増大させることができる。また、葉避け部32が収穫の邪魔になることがない。
【0063】
なお、本実施形態において、右指部110aは長穴付き直動右指土台41に、左指部110bは直動左指土台42に、それぞれ取り付けられ、各指部110はハンド部102の前方に向かって突出するように形成されている。そして、右指部110aおよび左指部110bは、モータ駆動によって長穴付き直動右指土台41および直動左指土台42が互いに逆方向に直進動作(スライド)を行うことにより、平行状態に保ったまま開閉する。
【0064】
また、長穴付き直動右指土台41および直動左指土台42への指部110の取付方法については、上記に限定されるものではなく、右指部110aと左指部110bにより収穫対象を把持可能な構造であればどのような手段で実現することとしてもよい。これ以外の平行2指ハンド(ハンド部102)の構成は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0065】
また、本実施形態においては、葉避け部32を展開および格納するための機構を葉避け装置30の右側に配置し、右歯車33aを用いて右指部110aの動きを左歯車33bに伝達する構造としたが、これに限るものではなく、右側と左側の構造を逆にすることとしてもよい。
【0066】
また、本実施形態の葉避け装置30においては、たとえば、土台111の両サイドに葉避け防護カバー43を設け、葉避け部32の格納時に、葉避け部32を葉避け防護カバー43に収容することとしてもよい。これにより、葉避け部32を収穫時の邪魔にならないようにすることができるとともに、障害物の衝突による葉避け部32の破損を防止することもできる。
【0067】
また、本実施形態においては、葉避け部32をL字形状としたが、これに限るものではなく、ハンド部102に搭載されたカメラにより果実の有無を把握できる程度に葉避けを行うことができればよく、形状は任意である。
【0068】
<葉避け装置の動作>
つづいて、本実施形態の葉避け装置30の動作を説明する。図6は、第2の実施形態の葉避け装置の動作を示す図である。本実施形態においては、平行2指ハンドの動きを利用して長穴付き直動右指土台41をスライドさせることにより、葉避け部32を動作(格納、展開)させる。
【0069】
図6(a)は、指部110が閉じられ、葉避け部32が格納された状態(初期状態)、すなわち、軸38が長穴24の右端部に当接した状態、を示す。なお、この状態における軸付き動節39に接続された回転対偶36の位置を初期位置とする。
【0070】
図6(a)の状態において、モータ駆動によりねじ軸113を回転させることによって、左右の指部110を広げながら、軸38が長穴24の左端部(逆側の端部)に当接するまで、長穴付き直動右指土台41を右側にスライドさせる。これにより、図6(b)の状態となる。
【0071】
図6(b)は、葉避け部32が格納された状態を維持しつつ、右指部110aおよび左指部110bをそれぞれ長穴24の長さだけ広げた状態、すなわち、軸38の位置を動かすことなく長穴付き直動右指土台41が長穴24の長さ分だけ右側にスライドし、軸38が長穴24の左端部に当接した状態、を示す。この状態における回転対偶36の位置は、初期位置のままである。
【0072】
図6(b)の状態から、モータ駆動によりさらに指部110を広げる動作を行うと、長穴付き直動右指土台41の右側へのスライドに伴って、長穴24の左端部に当接した状態の軸38が右側に向かって移動し、軸38の移動による軸付き動節39の動きに連動して回転対偶36が回転対偶34の周囲を回転移動する。これにより、動節37に接続された回転対偶34、すなわち、右歯車33aが軸回転し、右葉避け部32aが展開される。同時に、右歯車33aの軸回転に連動して左歯車33b(回転対偶35)が軸回転(逆回転)し、左葉避け部32bが展開される。
【0073】
図6(c)は、図6(b)の状態よりも指部110がさらに広がり、葉避け部32が展開された状態を示す。
【0074】
なお、展開された葉避け部32を格納する場合は、モータ駆動により指部110を全閉する動作を行う。指部110を全閉する動きに伴って、両側に開いた状態の長穴付き直動右指土台41と直動左指土台42が内側(土台111の中心線)に向かってにスライドするとともに、長穴24内の軸38が左側に向かって移動し、軸38の移動による軸付き動節39の動きに連動して回転対偶36が回転対偶34の周囲を回転移動することによって、葉避け部32が格納される。この際、回転対偶36の位置は、初期位置に戻る。すなわち、葉避け部32を展開した場合は、モータ駆動により指部110を全閉する動作(図6(c)→図6(a)の動作)を行い、さらに、図6(a)の状態から図6(b)の状態とした後に、葉避け部19を格納した状態で収穫を行う。
【0075】
また、本実施形態においては、たとえば、歯車33や回転対偶34にバネ等を導入することにより、展開された葉避け部32を自動的に格納することとしてもよい。この方法で葉避け部32を自動的に格納した場合は、葉避け部32の格納と同時に図6(b)の状態を形成できるため、一度モータ駆動により指部110を全閉する動作を行うことなく、収穫を行うことができる。
【0076】
<第3の実施形態>
つづいて、本発明にかかる葉避け装置の第3の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した第1または第2の実施形態と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。また、収穫ロボットおよびハンド部102の概要については、前述した第1の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。
【0077】
<葉避け装置の構造>
まず、第3の実施形態の葉避け装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0078】
図7は、第3の実施形態の葉避け装置の構造の一例を示す図である。図7において、本実施形態の葉避け装置50は、ハンド部102の前方にある葉を避けるための動作を能動的に行う能動葉避け機構部51(右側葉避け機構部51aと左側葉避け機構部51bの組み合わせ)と、2つのL字形状の葉避け部32(右葉避け部32a、左葉避け部32b)と、を備える。
【0079】
本実施形態の葉避け装置50において、右側葉避け機構部51aは、土台111(静止節)に設けられた回転対偶52と、回転対偶52および回転対偶36によりつながれた動節53と、回転対偶36および軸38によりつながれた軸付き動節39と、長穴24とこの長穴24に収容された軸38との組合せで直進動作と回転動作を行う長穴付き直進対偶23と、を備える。すなわち、本実施形態においては、図2(b)に示すスライダ揺動機構により右側葉避け機構部51aを形成する。
【0080】
一方、本実施形態の葉避け装置50において、左側葉避け機構部51bは、土台111の中心線を対称軸として、右側葉避け機構部51aに対し左右対称(線対称)に各構成要素が配置されている。すなわち、本実施形態においては、上記右側葉避け機構部51a同様、図2(b)に示すスライダ揺動機構により左側葉避け機構部51bが形成されている。
【0081】
また、能動葉避け機構部51において、左右の回転対偶52にはそれぞれL字形状の葉避け部32の一端が接続され、右葉避け部32aは格納時にL字形状の他端が土台111の右側面側に位置するように、左葉避け部32bは格納時にL字形状の他端が土台111の左側面側に位置するように、それぞれ回転対偶52に接続される。
【0082】
また、葉避け部32および動節53は、回転対偶52との接続部分によって形成される2直線のなす角が常時90°となるように設けられている。そして、軸付き動節39の動きに連動して、回転対偶36が回転対偶52の周囲を回転移動する。この動きにより、動節53が揺動し、この揺動により回転対偶52に接続された葉避け部32が展開および格納される。
【0083】
また、長穴付き直進対偶23は、軸付き動節39に接続された回転対偶36を、回転対偶52を中心に0°(葉避け部25格納状態)~90°(葉避け部25展開状態)の範囲内で回転させるために、土台111の直進対偶取付部114(図3参照)に取り付けられている。具体的には、右側の長穴付き直進対偶23が右直進対偶取付部114aに取り付けられ、左側の長穴付き直進対偶23が左直進対偶取付部114bに取り付けられる。
【0084】
上記のように構成された葉避け装置50は、モータ駆動によって左右の長穴付き直進対偶23が互いに逆方向に直進動作(スライド)を行うことにより、葉避けを行う場合は葉避け部32を展開し、葉避けを行わないときは葉避け部32を格納する。これにより、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、収穫ロボットによる収穫量を大幅に増大させることができる。また、葉避け部32が収穫の邪魔になることがない。
【0085】
<葉避け装置の動作>
つづいて、本実施形態の葉避け装置50の動作を説明する。図8は、第3の実施形態の葉避け装置の動作を示す図である。本実施形態においては、平行2指ハンドの動きを利用して左右の長穴付き直進対偶23を互いに逆方向にスライドさせることにより、葉避け部32を動作(格納、展開)させる。
【0086】
図8(a)は、指部110が閉じられ、葉避け部32が格納された状態(初期状態)、すなわち、左右の長穴付き直進対偶23が互いに最も近接した位置に配置され、軸38が左右の長穴24の外側端部に当接した状態、を示す。なお、この状態における軸付き動節39に接続された回転対偶36の位置を初期位置とする。
【0087】
図8(a)の状態において、モータ駆動によりねじ軸113(図示せず)を回転させることによって、左右の指部110を広げながら、軸38が左右の長穴24の内側端部(逆側の端部)に当接するまで、左右の長穴付き直進対偶23を外側方向(矢印参照)にスライドさせる。これにより、図8(b)の状態となる。
【0088】
図8(b)は、葉避け部32が格納された状態を維持しつつ、右指部110aおよび左指部110bをそれぞれ長穴24の長さだけ広げた状態、すなわち、軸38の位置を動かすことなく左右の長穴付き直進対偶23が長穴24の長さ分だけ外側にスライドし、軸38が左右の長穴24の内側端部に当接した状態、を示す。この状態における回転対偶36の位置は、初期位置のままである。また、このときの指部110の開き幅をyとする。
【0089】
図8(b)の状態から、モータ駆動によりさらに指部110を広げる動作を行うと、左右の長穴付き直進対偶23の外側へのスライドに伴って、長穴24の内側端部に当接した状態の軸38が外側に向かって移動し、軸38の移動による軸付き動節39の動きに連動して回転対偶36が回転対偶52の周囲を回転移動する。これにより、動節53に接続された回転対偶52が軸回転し、葉避け部32(右葉避け部32a、左葉避け部32b)が展開される。
【0090】
図8(c)は、指部110を全開させ、葉避け部32が展開された状態を示す。図8(c)において、展開時の指部110の最大開き幅をWとする。
【0091】
図8に示す動作からわかるとおり、平行2指ハンドでは、左右の指部110がそれぞれ0.5Wずつ開閉する。したがって、葉避け部32は、片方の指部110の移動距離の0.5Wの範囲内で展開する必要があるが、実際には、収穫のための把持動作を実現するため、片指で0.5yの不感帯(長穴24による葉避けに影響しない範囲)が必要となり、葉避け部32の展開に使える動作範囲は、片側x=0.5(W-y)しかない。すなわち、並進xで葉避け部32が90°の回転動作を実現する必要がある。これを実現するには、回転対偶52と回転対偶36の距離(動節53の長さ)を可能な限り小さくとることが望ましい。
【0092】
なお、本実施形態において、展開された葉避け部32を格納する場合は、モータ駆動により指部110を全閉する動作を行う。指部110を全閉する動きに伴って、両側に開いた状態の左右の長穴付き直進対偶23が内側(土台111の中心線)に向かってにスライドするとともに、長穴24内の軸38が内側に向かって移動し、軸38の移動による軸付き動節39の動きに連動して回転対偶36が回転対偶52の周囲を回転移動することによって、葉避け部32が格納される。この際、回転対偶36の位置は、初期位置に戻る。すなわち、葉避け部32を展開した場合は、モータ駆動により指部110を全閉する動作(図8(c)→図8(a)の動作)を行い、さらに、図8(a)の状態から図8(b)の状態とした後に、不感帯の範囲内で(葉避け部19を格納した状態で)収穫を行う。
【0093】
また、本実施形態においては、たとえば、回転対偶52にバネ等を導入することにより、展開された葉避け部32を自動的に格納することとしてもよい。この方法で葉避け部32を自動的に格納した場合は、葉避け部32の格納と同時に図8(b)の状態を形成できるため、一度モータ駆動により指部110を全閉する動作を行うことなく、収穫を行うことができる。
【0094】
<第4の実施形態>
つづいて、本発明にかかる葉避け装置の第4の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した第1~第3の実施形態と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。また、収穫ロボットおよびハンド部102の概要については、前述した第1の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。以下、前述した第3の実施形態と異なる部分について説明する。
【0095】
<葉避け装置の構造>
まず、第4の実施形態の葉避け装置を図面に基づいて詳細に説明する。前述した第3の実施形態では、葉避け部32の展開に使える指部110の動作範囲xをx=0.5(W-y)としたが、本実施形態では、x=W-yの動作範囲を使用して葉避け部32の展開を実現する。
【0096】
図9は、第4の実施形態の葉避け装置の構造の一例を示す図である。図9(a)において、本実施形態の葉避け装置60は、ハンド部102の前方にある葉を避けるための動作を能動的に行う能動葉避け機構部61と、2つのL字形状の葉避け部32(右葉避け部32a、左葉避け部32b)と、を備える。そして、能動葉避け機構部61は、右指部110aおよび左指部110bの双方の動きを利用して葉避け部32を動作(展開、格納)させる。
【0097】
具体的にいうと、能動葉避け機構部61は、たとえば、図9(b)に示すように、土台111の中心線より右側に配置された長穴付き直進対偶23である右長穴付き直進対偶23aと左葉避け部32bの一端に接続された回転対偶52である左葉避け用回転対偶52bとを一体化した構造を有する第1の葉避け機構部61aと、土台111の中心線より左側に配置された長穴付き直進対偶23である左長穴付き直進対偶23bと右葉避け部32aの一端に接続された回転対偶52である右葉避け用回転対偶52aとを一体化した構造を有する第2の葉避け機構部61bと、を備える。第1の葉避け機構部61aおよび第2の葉避け機構部61bは、土台111の中心線を対称軸として左右対称に形成されている(図9(b)参照)。なお、その他の能動葉避け機構部61の構成要素は、前述した第3の実施形態の葉避け装置50と同様であるが、接続が異なる。
【0098】
たとえば、右長穴付き直進対偶23aと一体化された左葉避け用回転対偶52bは、左長穴付き直進対偶23bによって形成されたスライダ揺動機構(図2(b)参照)の動きに連動して軸回転するように、左長穴付き直進対偶23b側の動節53に接続される。一方、左長穴付き直進対偶23bと一体化された右葉避け用回転対偶52aは、右長穴付き直進対偶23aによって形成されたスライダ揺動機構の動きに連動して軸回転するように、右長穴付き直進対偶23a側の動節53に接続される。
【0099】
すなわち、格納状態の左葉避け部32bは、指部110を(右指部110a、左指部110b)を広げる動作に伴う、左葉避け用回転対偶52bの右側への動きと、左長穴付き直進対偶23bの左側への動き、に連動して展開される。一方、格納状態の右葉避け部32aは、指部110を(右指部110a、左指部110b)を広げる動作に伴う、右葉避け用回転対偶52aの左側への動きと、右長穴付き直進対偶23aの右側への動き、に連動して展開される。
【0100】
上記のように構成された葉避け装置60は、モータ駆動によって左右の長穴付き直進対偶23が互いに逆方向に直進動作(スライド)を行うことにより、葉避けを行う場合は葉避け部32を展開し、葉避けを行わないときは葉避け部32を格納する。これにより、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、収穫ロボットによる収穫量を大幅に増大させることができる。また、葉避け部32が収穫の邪魔になることがない。
【0101】
<葉避け装置の動作>
つづいて、本実施形態の葉避け装置60の動作を説明する。図10は、第4の実施形態の葉避け装置の動作を示す図である。本実施形態においては、平行2指ハンドの動きを利用して左右の長穴付き直進対偶23を互いに逆方向にスライドさせることにより、葉避け部32を動作(格納、展開)させる。
【0102】
図10(a)は、指部110が閉じられ、葉避け部32が格納された状態(初期状態)、すなわち、軸38が左右の長穴24の外側端部に当接した状態、を示す。なお、この状態における軸付き動節39に接続された回転対偶36の位置を初期位置とする。
【0103】
図10(a)の状態において、モータ駆動によりねじ軸113(図示せず)を回転させることによって、左右の指部110を広げながら、軸38が左右の長穴24の内側端部(逆側の端部)に当接するまで、左右の長穴付き直進対偶23を外側方向(矢印参照)にスライドさせる。これにより、図10(b)の状態となる。
【0104】
図10(b)は、葉避け部32が格納された状態を維持しつつ、右指部110aおよび左指部110bをそれぞれ広げた状態、すなわち、軸38の位置を動かすことなく左右の長穴付き直進対偶23が外側にスライドし、軸38が左右の長穴24の内側端部に当接した状態、を示す。この状態における回転対偶36の位置は、指部110の広がりに伴って移動する回転対偶52に追随して初期位置から変化しているが、回転対偶52との相対的な位置関係に変化はない。また、このときの指部110の開き幅をyとする。
【0105】
図10(b)の状態から、モータ駆動によりさらに指部110を広げる動作を行うと、左右の長穴付き直進対偶23の外側へのスライドに伴って、左右の長穴24の内側端部に当接した状態の軸38が外側に向かって移動し、軸38の移動による軸付き動節39の動きに連動して回転対偶36が回転対偶52の周囲を回転移動する。これにより、動節53に接続された回転対偶52が軸回転し、葉避け部32(右葉避け部32a、左葉避け部32b)が展開される。
【0106】
図10(c)は、指部110を全開させ、葉避け部32が展開された状態を示す。また、図10(c)において、展開時の指部110の最大開き幅をWとする。
【0107】
図10に示す動作からわかるとおり、本実施形態においては、右指部110aおよび左指部110bの双方の動きを利用して葉避け部32を展開させることによって、葉避け部32の展開に使える指部110の動作範囲xを、前述した第3の実施形態(x=0.5(W-y))よりも大きくとることとした。具体的には、x=W-yの動作範囲で葉避け部32の展開を実現した。
【0108】
なお、本実施形態において、展開された葉避け部32を格納する場合は、モータ駆動により指部110を全閉する動作を行う。指部110を全閉する動きに伴って、両側に開いた状態の左右の長穴付き直進対偶23が内側(土台111の中心線)に向かってにスライドするとともに、長穴24内の軸38が内側に向かって移動し、軸38の移動による軸付き動節39の動きに連動して回転対偶36が回転対偶52の周囲を回転移動することによって、葉避け部32が格納される。この際、回転対偶36の位置は、初期位置に戻る。すなわち、葉避け部32を展開した場合は、モータ駆動により指部110を全閉する動作(図10(c)→図10(a)の動作)を行い、さらに、図10(a)の状態から図10(b)の状態とした後に、不感帯の範囲内で(葉避け部32を格納した状態で)収穫を行う。
【0109】
また、本実施形態においては、たとえば、回転対偶52にバネ等を導入することにより、第3の実施形態と同様に、展開された葉避け部32を自動的に格納することとしてもよい。
【0110】
<第5の実施形態>
つづいて、本発明にかかる葉避け装置の第5の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した第1~第4の実施形態と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。また、収穫ロボットおよびハンド部102の概要については、前述した第1の実施形態と同様であるため重複説明を省略する。以下、前述した第4の実施形態と異なる部分について説明する。
【0111】
<葉避け装置の構造>
まず、第5の実施形態の葉避け装置を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、葉避け部32の前方への長さ(展開量)を増加させつつ、葉避け部32収納時の横幅の縮小化を図る。
【0112】
図11は、第5の実施形態の葉避け装置の構造の一例を示す図である。図11(a)において、本実施形態の葉避け装置70は、ハンド部102の前方にある葉を避けるための動作を能動的に行う能動葉避け機構部71と、2つのL字形状の葉避け部32(右葉避け部32a、左葉避け部32b)と、を備える。そして、能動葉避け機構部71は、右指部110aおよび左指部110bの双方の動きを利用して葉避け部32を動作(展開、格納)させるとともに、さらに、前述した右長穴付き直進対偶23aと前述した左長穴付き直進対偶23bが立体交差するように配置した。すなわち、本実施形態においては、右長穴付き直進対偶23aに固定された指部110が左指部110bとして機能し、また、左長穴付き直進対偶23bに固定された指部110が右指部110aとして機能する(図11(b)参照)。
【0113】
また、回転対偶52には、前述同様、L字形状の葉避け部32の一端が接続されるが、右葉避け部32aは格納時にL字形状の他端が土台111の左側面側に位置するように、左葉避け部32bは格納時にL字形状の他端が土台111の右側面側に位置するように、それぞれ回転対偶52に接続される。
【0114】
具体的にいうと、能動葉避け機構部71は、たとえば、図11(b)に示すように、左指部110bの開閉機構として機能する長穴付き直進対偶23である右長穴付き直進対偶23aと左葉避け部32bの一端に接続された回転対偶52である左葉避け用回転対偶52bとを一体化した構造を有する第1の葉避け機構部71aと、右指部110aの開閉機構として機能する長穴付き直進対偶23である左長穴付き直進対偶23bと右葉避け部32aの一端に接続された回転対偶52(右葉避け用回転対偶52a)とを一体化した構造を有する第2の葉避け機構部71bと、を備える。第1の葉避け機構部71aおよび第2の葉避け機構部71bは、それぞれ土台111の中心線を跨ってスライドし、土台111の中心線を対称軸として左右対称に形成されている(図11(b)参照)。
【0115】
なお、その他の能動葉避け機構部71の構成要素は、前述した前述した第4の実施形態の葉避け装置60と同様である。
【0116】
本実施形態の能動葉避け機構部71において、右長穴付き直進対偶23aと一体化された左葉避け用回転対偶52bは、左長穴付き直進対偶23bによって形成されたスライダ揺動機構の動きに連動して軸回転するように、左長穴付き直進対偶23b側の動節53に接続される。一方、左長穴付き直進対偶23bと一体化された右葉避け用回転対偶52aは、右長穴付き直進対偶23aによって形成されたスライダ揺動機構の動きに連動して軸回転するように、右長穴付き直進対偶23a側の動節53に接続される。
【0117】
すなわち、格納状態の左葉避け部32bは、指部110を広げる動作に伴う、左葉避け用回転対偶52bの左側への動きと、左長穴付き直進対偶23bの右側への動き、に連動して展開される。一方、格納状態の右葉避け部32aは、指部110を広げる動作に伴う、右葉避け用回転対偶52aの右側への動きと、右長穴付き直進対偶23aの左側への動き、に連動して展開される。
【0118】
上記のように構成された葉避け装置70は、モータ駆動によって左右の長穴付き直進対偶23が互いに逆方向に直進動作(スライド)を行うことにより、葉避けを行う場合は葉避け部32を展開し、葉避けを行わないときは葉避け部32を格納する。これにより、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、収穫ロボットによる収穫量を大幅に増大させることができる。また、葉避け部32が収穫の邪魔になることがない。
【0119】
<葉避け装置の動作>
つづいて、本実施形態の葉避け装置70の動作を説明する。図12は、第5の実施形態の葉避け装置の動作を示す図である。本実施形態においては、平行2指ハンドの動きを利用して左右の長穴付き直進対偶23を互いに逆方向にスライドさせることにより、葉避け部32を動作(格納、展開)させる。
【0120】
図12(a)は、指部110が閉じられ、葉避け部32が格納された状態(初期状態)、すなわち、軸38が左右の長穴24の内側端部に当接した状態、を示す。なお、この状態における軸付き動節39に接続された回転対偶36の位置を初期位置とする。
【0121】
図12(a)の状態において、モータ駆動によりねじ軸113(図示せず)を回転させることによって、左右の指部110を広げながら、軸38が左右の長穴24の外側端部(逆側の端部)に当接するまで、左右の長穴付き直進対偶23を交差する方向(交差方向と呼ぶ:矢印参照)にスライドさせる。これにより、図12(b)の状態となる。
【0122】
図12(b)は、葉避け部32が格納された状態を維持しつつ、右指部110aおよび左指部110bをそれぞれ広げた状態、すなわち、軸38の位置を動かすことなく左右の長穴付き直進対偶23が交差方向にスライドし、軸38が左右の長穴24の外側端部に当接した状態、を示す。この状態における回転対偶36の位置は、指部110の広がりに伴って移動する回転対偶52に追随して初期位置から変化しているが、回転対偶52との相対的な位置関係に変化はない。
【0123】
図12(b)の状態から、モータ駆動によりさらに指部110を広げる動作を行うと、左右の長穴付き直進対偶23の交差方向へのスライドに伴って、左右の長穴24の外側端部に当接した状態の軸38が交差方向に移動し、軸38の移動による軸付き動節39の動きに連動して回転対偶36が回転対偶52の周囲を回転移動する。これにより、動節53に接続された回転対偶52が軸回転し、葉避け部32(右葉避け部32a、左葉避け部32b)が展開される。
【0124】
図12(c)は、指部110を全開させ、葉避け部32が展開された状態を示す。
【0125】
なお、本実施形態において、展開された葉避け部32を格納する場合は、モータ駆動により指部110を全閉する動作を行う。指部110を全閉する動きに伴って、両側に開いた状態の左右の長穴付き直進対偶23が外側(交差方向の逆)に向かってにスライドするとともに、長穴24内の軸38が外側に向かって移動し、軸38の移動による軸付き動節39の動きに連動して回転対偶36が回転対偶52の周囲を回転移動することによって、葉避け部32が格納される。この際、回転対偶36の位置は、初期位置に戻る。すなわち、葉避け部32を展開した場合は、モータ駆動により指部110を全閉する動作(図12(c)→図12(a)の動作)を行い、さらに、図12(a)の状態から図12(b)の状態とした後に、不感帯の範囲内で(葉避け部32を格納した状態で)収穫を行う。
【0126】
また、本実施形態においては、たとえば、回転対偶52にバネ等を導入することにより、第3および第4の実施形態と同様に、展開された葉避け部32を自動的に格納することとしてもよい。
【0127】
<その他の実施形態>
前述した第1~第5の実施形態においては、平行2指ハンドの動きを利用して長穴付き直進対偶(スライダ揺動機構の構成要素)をスライドさせることにより葉避け部を動作(格納、展開)させる葉避け装置について説明したが、これに限るものではない。
【0128】
たとえば、平行2指ハンド(ハンド部102)を動作させるモータとは別のモータを葉避け装置に持たせることによって、平行2指ハンドの動きとは別の制御で、葉を避けるための動作を能動的に行うことが可能である。
【0129】
具体的には、第1~第5の実施形態の葉避け装置にスライダ揺動機構を設けず、葉避け部を駆動するための可動部にモータを導入する。たとえば、第1の実施形態の葉避け装置1からスライダ揺動機構を削除し、平行4リンク機構をモータ駆動して平行2指ハンドの動きとは別個に葉避け部を展開、格納することが考えられる。また、第2~第5の実施形態の葉避け装置(30、50、60、70)からスライダ揺動機構を削除し、歯車や、葉避け部の一端に接続する回転対偶をモータ駆動して平行2指ハンドの動きとは別個に葉避け部を展開、格納することが考えられる。なお、上記のように、スライダ揺動機構を設けず、葉避け部を駆動するための可動部にモータを導入する場合、ハンド部102は、平行2指ハンドに限定されるものではなく、どのようなハンドでも適用可能である。
【0130】
一方で、上記のように、ハンド部102の動きやモータを利用して葉を避けるための動作を能動的に行う葉避け装置以外に、葉を避けるための動作を受動的に行う葉避け装置も考えられる。
【0131】
たとえば、図13は、葉を避けるための動作を受動的に行う葉避け装置の構造の一例を示す図である。図13(a)において、葉避け装置80は、たとえば、ハンド部102の前方にある葉を避けるための棒状の葉避け部81と、ハンド部102に設けられた取付用の土台82と、一端部を土台82に取り付け、他端部をハンド部102の先端を超えるまで延伸し、当該他端部で葉避け部81の中央部を支持する棒状の葉避け支え部83と、を備える。また、葉避け部81および葉避け支え部83は、たとえば、密着コイルばね、ピアノ線、ゴムや、弾性が十分であれば樹脂等、弾性体で形成する。これにより、ぶつかっても果実を傷つけることなく、さらに、障害物に対する衝突による破損を防止することが可能な葉避け装置が得られる(図13(b)参照)。
【0132】
また、図14は、重力を利用して可動する葉避け装置の構造の一例を示す図である。図14(a),(b)において、葉避け装置90は、ハンド部102の前方にある葉を避けるための棒状の葉避け部91と、ハンド部102に設けられた取付用の土台92と、一端部を土台92に取り付け、他端部をハンド部102の先端を超えるまで延伸し、当該他端部で葉避け部91の中央部を支持する棒状の葉避け支え部93と、を備える。さらに、葉避け装置90は、土台92に取り付けられた葉避け支え部93を進退可能に案内するガイド部94を備え、重力を利用して葉避け支え部93を格納および展開する構造を有することとした。たとえば、葉避けを行う場合はハンド部102の先端を下に向けて葉避け部91を前進させた状態でロックし(図14(c)の展開状態)、葉避けを行わないときはハンド部102の先端を上に向けてロックを解除し葉避け部91を後退させて格納することとした(図14(c)の格納状態)。
【0133】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態は、例示であり、特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0134】
1、30、50、60、70、80、90 葉避け装置
11、12、13、14、20、34、35、36、52 回転対偶
15 静止節
16、17、18、37、53 動節
19、32、81、91 葉避け部
19a、32a 右葉避け部
19b、32b 左葉避け部
21、38 軸
22、39 軸付き動節
23 長穴付き直進対偶
23a 右長穴付き直進対偶
23b 左長穴付き直進対偶
24 長穴
25、31、51、61、71 能動葉避け機構部
25a 第1の能動葉避け機構部(右側葉避け機構部)
25b 第2の能動葉避け機構部(左側葉避け機構部)
33a 右歯車
33b 左歯車
41 長穴付き直動右指土台
42 直動左指土台
43 葉避け防護カバー
51a 右側葉避け機構部
51b 左側葉避け機構部
52a 右葉避け用回転対偶
52b 左葉避け用回転対偶
61a、71a 第1の葉避け機構部
61b、71b 第2の葉避け機構部
83、93 葉避け支え部
94 ガイド部
100 収穫ロボット
101 アーム部
102 ハンド部
110 指部
110a 右指部
110b 左指部
111、82、92 土台
112 モータ
113 ねじ軸
114 直進対偶取付部
114a 右直進対偶取付部
114b 左直進対偶取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14