(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010333
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】床材
(51)【国際特許分類】
E04F 15/18 20060101AFI20240117BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20240117BHJP
H05F 1/00 20060101ALI20240117BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240117BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
E04F15/18 V
E04F15/16 A
H05F1/00 B
H05F1/00 E
B32B27/30 101
B32B27/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111617
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町矢 良樹
(72)【発明者】
【氏名】明石 和也
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
5G067
【Fターム(参考)】
2E220AA15
2E220AA16
2E220AA33
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2E220GB31X
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4F100AK01B
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5G067AA13
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5G067CA03
(57)【要約】
【課題】 帯電防止性及び防汚性に優れ、加工性の良い床材を提供する。
【解決手段】
塩化ビニル系樹脂を含む樹脂層を有する本体層2と、前記本体層2の表面に設けられ且つ活性エネルギー線硬化型樹脂を含む表面保護層3と、を有する床材1であって、前記本体層2の樹脂層が、帯電防止剤として界面活性剤を含み、前記表面保護層3が、帯電防止剤としてイオン性液体を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂を含む樹脂層を有する本体層と、前記本体層の表面に設けられ且つ活性エネルギー線硬化型樹脂を含む表面保護層と、を有し、
前記本体層の樹脂層が、帯電防止剤として界面活性剤を含み、
前記表面保護層が、帯電防止剤としてイオン性液体を含む、床材。
【請求項2】
前記本体層が、表側樹脂層と、裏側樹脂層と、を有し、
前記表側樹脂層及び裏側樹脂層が、それぞれ帯電防止剤として界面活性剤を含み、
前記表側樹脂層に含まれる界面活性剤と前記裏側樹脂層に含まれる界面活性剤とが異なっている、請求項1に記載の床材。
【請求項3】
前記表側樹脂層の界面活性剤が、前記裏側樹脂層の界面活性剤よりもブリード速度が遅い、請求項2に記載の床材。
【請求項4】
前記表面保護層に含まれるイオン性液体が、リチウム塩を含む、請求項1に記載の床材。
【請求項5】
前記リチウム塩を含むイオン性液体が、前記表面保護層の全体100重量%に対して、0.5重量%以上20重量%以下含まれており、
前記界面活性剤が、前記本体層の樹脂層の全体100重量%に対して、0.5重量%以上20重量%以下含まれている、請求項4に記載の床材。
【請求項6】
前記本体層が、さらに、帯電防止剤を含まない層を有し、
温度23℃、湿度25%RHの環境下における床材の体積抵抗値が、100×108Ω以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性及び防汚性に優れた床材に関する。
【背景技術】
【0002】
床タイル、床シート等の床材においては、摩擦などによって表面に静電気が生じる、帯電現象が問題とされている。特に、樹脂製の床材に多く用いられる塩化ビニル系樹脂は、比較的多量の増量剤又は充填剤を含むため、静電気が発生しやすい。
特許文献1には、床材本体(本体層)と、前記床材本体の上に設けられ且つ帯電防止剤としてイオン性液体を含む表層(表面保護層)と、を有する床材が開示されている。
特許文献1の床材は、帯電防止剤が表層の表面にブリードし難く、防汚性に優れている。また、表面に発生した静電気を裏面側(床材の施工面側)に逃がすため、体積抵抗値の低い床材が帯電防止性に優れているところ、特許文献1の床材は、体積抵抗値が低く、帯電防止性にも優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
床材に対する要求は、年々高まるところ、優れた帯電防止性及び防汚性を有することに加えて、製造過程における加工性の良さも求められる。
また、床材は、様々な場所に施工されるので、耐薬品性に優れていることが望ましい。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、帯電防止性及び防汚性に優れ、加工性の良い床材を提供することである。
本発明の第2の目的は、帯電防止性及び防汚性に優れ、さらに、表面の耐薬品性にも優れた加工性の良い床材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の手段に係る床材は、塩化ビニル系樹脂を含む樹脂層を有する本体層と、前記本体層の表面に設けられ且つ活性エネルギー線硬化型樹脂を含む表面保護層と、を有し、前記本体層の樹脂層が、帯電防止剤として界面活性剤を含み、前記表面保護層が、帯電防止剤としてイオン性液体を含む。
【0007】
本発明の第2の手段に係る床材は、前記第1の手段において、前記本体層が、表側樹脂層と、裏側樹脂層と、を有し、前記表側樹脂層及び裏側樹脂層が、それぞれ帯電防止剤として界面活性剤を含み、前記表側樹脂層に含まれる界面活性剤と前記裏側樹脂層に含まれる界面活性剤とが異なっている。
本発明の第3の手段に係る床材は、前記第1又は第2の手段において、前記表側樹脂層の界面活性剤が、前記裏側樹脂層の界面活性剤よりもブリード速度が遅い。
本発明の第4の手段に係る床材は、前記第1乃至第3のいずれかの手段において、前記表面保護層に含まれるイオン性液体が、リチウム塩を含む。
本発明の第5の手段に係る床材は、前記第4の手段において、前記リチウム塩を含むイオン性液体が、前記表面保護層の全体100重量%に対して、0.5重量%以上20重量%以下含まれている。
本発明の第6の手段に係る床材は、前記第1乃至第5のいずれかの手段において、前記界面活性剤が、前記本体層の樹脂層の全体100重量%に対して、0.5重量%以上20重量%以下含まれている。
本発明の第7の手段に係る床材は、前記第1乃至第6のいずれかの手段において、前記本体層が、さらに、帯電防止剤を含まない層を有し、温度23℃、湿度25%RHの環境下における床材の体積抵抗値が、100×108Ω以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の床材は、帯電し難く、また、汚れが付着し難い。さらに、本発明の床材は、その製造過程において加工し易く、生産性にも優れている。
本発明の好ましい床材は、表面の耐薬品性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、「表面」は、施工面に床材を敷設したときを基準にして、施工面から遠い側の面を指し、「裏面」は、その反対側の面(施工面に近い側の面)を指す。平面視は、表面又は裏面に対して鉛直な方向から見ることをいう。
本明細書において「略」は、本発明の属する技術分野において許容される範囲を意味する。
本明細書において、「下限値以上上限値以下」で表される数値範囲は、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値以上任意の上限値以下」を設定できるものとする。
また、各図における、厚み及び大きさなどの寸法は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0011】
[床材の基本的構成]
図1は、本発明の床材1の1つの実施形態を示す平面図であり、
図2は、もう1つの実施形態を示す平面図である。
【0012】
図1を参照して、床材1は、平面視で長尺帯状に形成されている。長尺帯状に形成されている床材1は、シート床材とも称される。前記長尺帯状は、長手方向の長さが短手方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいい、例えば、長手方向長さが短手方向の長さの3倍以上、好ましくは5倍以上である。長尺帯状の具体的な寸法としては、例えば、短手方向の長さが500mm以上3000mm以下で、長手方向の長さが2m以上500m以下などの場合が挙げられる。長尺帯状に形成された床材1は、通常、ロールに巻かれて保管及び運搬に供され、施工現場において、所望の形状に裁断して使用される。
【0013】
図2を参照して、床材1は、平面視で略正方形状の枚葉状に形成されている。もっとも、枚葉状の床材1は、平面視略長方形状、平面視略六角形状などに形成されていてもよい(図示せず)。枚葉状に形成されている床材1は、タイル床材とも称される。前記平面視略正方形状又は略長方形状の床材1の具体的な寸法としては、例えば、縦×横=200mm以上1000mm以下×200mm以上1000mm以下などの場合が挙げられる。図示例のような枚葉状の床材1は、その複数を重ね合わせた状態で、又は、個々にロール状に巻いた状態で保管・運搬に供される。
【0014】
本発明の床材1は、柔軟性を有していてもよく、柔軟性を有さずに比較的硬質であってもよい。床材1の柔軟性の程度としては、例えば、床材1の裏面側を巻き芯に向けて、直径10cmの巻き芯の周囲にロール状に巻き付け可能である。
床材1の全体の厚みは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上10mm以下であり、好ましくは、1mm以上8mm以下であり、より好ましくは、1.5mm以上5mm以下である。
【0015】
[床材の層構成]
図3乃至
図5は、床材1の層構成の第1例乃至第3例を示す。
図3乃至
図5は、
図1及び
図2のIII-III線の位置で切断したときの断面図である。
本発明の床材1は、塩化ビニル系樹脂を含む樹脂層を有する本体層2と、前記本体層2の表面側に設けられた表面保護層3と、を有する。
必要に応じて、表面保護層3を本体層2に強固に接着するために、本体層2と表面保護層3の間に、プライマー層(図示せず)を設けてもよい。
前記表面保護層3は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、帯電防止剤と、を含み、前記帯電防止剤としてイオン性液体が少なくとも用いられている。
【0016】
(本体層)
本体層2は、床材1の強度、厚み及び重量を構成する主たる部分である。
本発明では、本体層2は、塩化ビニル系樹脂を含む樹脂層を少なくとも1層有し、必要に応じて、さらに、繊維補強層を有する。
本体層2は、前記塩化ビニル系樹脂を含む樹脂層を2層以上有していることが好ましく、特に、前記塩化ビニル系樹脂を主成分として含む樹脂層を2層以上有していることがより好ましい。
図3乃至
図5に示す層構成では、本体層2は、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂として含む表側樹脂層21と塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂として含む裏側樹脂層22とを有する樹脂層を有する。
前記表側樹脂層21と裏側樹脂層22の間には、繊維補強層23(以下、「中間繊維補強層23」という)が介在されている。また、前記裏側樹脂層22の裏面には、さらに、繊維補強層24(以下、「裏繊維補強層24」という)が積層されている。
本体層2を構成する、表側樹脂層21などの各樹脂層や中間繊維補強層23などの繊維補強層は、層間剥離困難なほどに互いに強く接着されて積層されている。
【0017】
図3及び
図4に示す層構成では、表側樹脂層21は、2層以上の樹脂層からなり、例えば、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂として含む第1表樹脂層211と、その裏面側に積層され且つ塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂として含む第2表樹脂層212と、を有する。
さらに、
図4に示す層構成では、表側樹脂層21は、第1表樹脂層211と、第2表樹脂層212と、第1表樹脂層211と第2表樹脂層212の間に介在された化粧層213と、を有する。
表側樹脂層21が第1表樹脂層211及び第2表樹脂層212を有する場合、第1表樹脂層211は、本体層2の最表面を成す層である。
図5に示す層構成では、表側樹脂層21は、1層の樹脂層からなる。表側樹脂層21が1層の樹脂層からなる場合、表側樹脂層21は、本体層2の最表面を成す層である。
なお、
図3乃至
図5に示す層構成では、裏側樹脂層22は、1層の樹脂層からなるが、2層以上の樹脂層から構成されていてもよい(図示せず)。
【0018】
本体層2の樹脂層には、帯電防止剤として界面活性剤が含有されている。前記本体層2の樹脂層に含まれる界面活性剤の量が、本体層2の樹脂層の全体100重量%に対して、0.5重量%以上20重量%以下であり、好ましくは1重量%以上8重量%以下である。
【0019】
なお、本体層2が、複数の樹脂層を有する場合、本体層2は、界面活性剤を含む樹脂層を少なくとも1層有していればよく、好ましくは、界面活性剤を含む樹脂層を2層以上有する。
例えば、本体層2の樹脂層が、表側樹脂層21及び裏側樹脂層22を有する場合、表側樹脂層21及び裏側樹脂層22のそれぞれに前記界面活性剤が含まれていることが好ましい。また、表側樹脂層21が、第1表樹脂層211及び第2表樹脂層212を有する場合、第1表樹脂層211及び第2表樹脂層212のそれぞれに前記界面活性剤が含まれていることが好ましい。また、裏側樹脂層22が2層以上の樹脂層からなる場合、それぞれの樹脂層に界面活性剤が含まれていることが好ましい。
なお、樹脂層を有する本体層2は、界面活性剤を含まない樹脂層や繊維補強層などの、界面活性剤を含まない層を有していてもよい。
【0020】
<表側樹脂層>
表側樹脂層は、表面保護層と裏側樹脂層の間に介在し、床材のデザインを表出させる。
表側樹脂層は、1色又は2色以上に着色されている部分を有する。1色又は2色以上に着色とは、1色又は2色以上の色彩を有する有色透明又は有色不透明のいずれかをいう。
図3に示す表側樹脂層21の場合、第1表樹脂層211が1色又は2色以上に着色され且つ第2表樹脂層212が無色透明又は1色又は2色以上に着色されている、或いは、第1表樹脂層211が無色透明で且つ第2表樹脂層212が1色又は2色以上に着色されている。
図4に示す層構成では、1色又は2色以上に着色されてデザインを表出する化粧層213が設けられているので、第1表樹脂層211は、その化粧層のデザインを視認できるようにするため無色透明とされ、第2表樹脂層212は、無色透明又は1色又は2色以上に着色されている。
表側樹脂層は、非発泡でもよいし、或いは、発泡されていてもよい。表側樹脂層が第1表樹脂層及び第2表樹脂層を有する場合、第1表樹脂層及び第2表樹脂層は、それぞれ独立して、非発泡でもよいし、或いは、発泡されていてもよい。前記のように発泡されている場合、その発泡倍率は特に限定されないが、1.2倍以上5倍以下である。前記発泡倍率の下限値以上であれば、床材にクッション性を付与でき、さらに、床材を軽量化でき、前記上限値以下であれば、帯電防止性の悪化を抑制できる。
電気の流れを良好にして帯電防止性を向上させ、また、床材の表面を平滑にし意匠性を向上できることから、第1表樹脂層及び第2表樹脂層を含む表側樹脂層は、発泡されていないことが好ましい。
【0021】
第1表樹脂層及び第2表樹脂層を含む表側樹脂層は、主成分樹脂として塩化ビニル系樹脂を含み、さらに、帯電防止剤として界面活性剤を含む。
表側樹脂層は、主成分樹脂として塩化ビニル系樹脂を含んでいることを条件として、他の樹脂を含んでいてもよく、或いは、他の樹脂を含んでいなくてもよい。
ここで、本明細書において、ある層の主成分樹脂は、層中に含まれる樹脂成分全体に対して(樹脂成分全体を100重量%とした場合)、20重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以上を占める樹脂を意味する。
【0022】
塩化ビニル系樹脂は、少なくとも塩化ビニルの単量体(クロロエチレン)を重合させることで形成された重合体(ポリマー)である。塩化ビニル系樹脂には、クロロエチレンを単独重合させてなる重合体(ホモポリマー)だけでなく、クロロエチレン及びクロロエチレンと共重合し得る他の単量体の共重合体(コポリマー)、ホモポリマー及びコポリマーの混合物、並びに2種以上のコポリマーの混合物が含まれる。なお、混合物とは、ホモポリマーとコポリマー、又は、コポリマー同士が実質的に重合せずに混練された重合体を意味する。塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル重合体(ホモポリマー);塩素化塩化ビニル;部分架橋塩化ビニル;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体などの塩化ビニルを含む共重合体(コポリマー);ホモポリマーと1種以上のコポリマーの混合物、2種以上のコポリマーの混合物;などが挙げられる。好ましくは、塩化ビニル重合体(ホモポリマー)が用いられる。これらの塩化ビニル系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
前記塩化ビニル重合体(ホモポリマー)は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造されたものを用いることができ、ペースト塩化ビニル系樹脂又は/及びサスペンション塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
ペースト塩化ビニル系樹脂は、例えば、乳化重合法で得られるペースト状の塩化ビニル系樹脂であり、可塑剤により、適宜粘度を調整できる。ペースト塩化ビニル系樹脂は、多数の微粒子集合体からなる粒子径が0.1μm以上10μm以下(好ましくは1μm以上3μm以下)の微細粉末であり、好ましくは、前記微細粉末の表面に界面活性剤がコーティングされている。ペースト塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1000以上2000以下程度が好ましい。
サスペンション塩化ビニル系樹脂は、例えば、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂である。サスペンション塩化ビニル系樹脂は、粒子径が好ましくは20μm以上100μm以下の微細粉末である。サスペンション塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、700以上1500以下程度が好ましく、700以上1100以下程度がより好ましく、700以上1000以下程度がさらに好ましい。
【0024】
第1表樹脂層及び第2表樹脂層を含む表側樹脂層は、必要に応じて、可塑剤、充填剤、各種の添加剤を含んでいてもよい。
可塑剤としては、例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤などが挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、マイカなどが挙げられる。添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、可塑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、抗菌剤、防かび剤、抗ウイルス剤などが挙げられる。
【0025】
{界面活性剤}
表側樹脂層に含有される界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、若しくは両性イオン系のイオン性界面活性剤、又は、ノニオン系界面活性剤(非イオン性界面活性剤)が挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、エーテルカルボン酸塩などのカルボン酸型;アルカンスルホン酸塩などのスルホン酸型;アルキル硫酸塩などの硫酸エステル型;アルキルリン酸塩などのリン酸エステル型;などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、モノアルキルアミン塩などのアルキルアミン塩型;塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどの第4級アンモニウム塩型;などが挙げられる。両性イオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン型;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウニウムベタインなどのアルキルイミダゾリウムベタイン型;などが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物などのポリエチレングリコール型;ポリエチレンオキシド又はグリセリンの脂肪酸エステル、ソルビット又はソルビタンの脂肪酸エステル、アルカノールアミンの脂肪族アミドなどの多価アルコール型;などが挙げられる。
これらの界面活性剤は、1種単独で或いは2種以上併用してもよい。
【0026】
ブリードし難いという観点から、表側樹脂層には、カチオン系界面活性剤を用いることが好ましい。特に、優れた帯電防止性を有しつつ、より防汚性に優れた床材を得ることができることから、表側樹脂層の界面活性剤は、裏側樹脂層の界面活性剤よりもブリード速度が遅い界面活性剤を用いることが好ましい。
ブリード速度が遅い界面活性剤は、次のようにして決定できる。塩化ビニル系樹脂を含む同一組成の樹脂に、比較する2つの界面活性剤を同量配合した材料を、それぞれ同形同厚の板状に成形し、それらを60℃、1気圧、90%RHで24時間静置した後、両成形品の表面に滲み出る界面活性剤の量を比較する。前記比較は、例えば、指で触れて表面のべたつき度合いを確かめ、べたつきの多いほうが表面に滲み出る界面活性剤の量が多いと判断することができる。前記滲み出る量が少ない界面活性剤が、ブリード速度の遅い界面活性剤である。
【0027】
また、表側樹脂層が第1表樹脂層及び第2表樹脂層を有する場合、第1表樹脂層及び第2表樹脂層に含まれる界面活性剤は、同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。製造容易であることから、第1表樹脂層及び第2表樹脂層には、同じ界面活性剤を用いることが好ましい。
【0028】
表側樹脂層を構成する各成分の量は、表側樹脂層の全体を100重量%として、例えば、塩化ビニル系樹脂を含む樹脂成分が20重量%以上85重量%以下であり、可塑剤が10重量%以上40重量%以下であり、充填剤が0重量%以上40重量%以下であり、添加剤が0重量%以上20重量%以下であり、帯電防止剤である界面活性剤が0.1重量%以上5重量%以下である。なお、ある成分が0重量%である場合、その成分を含まないことを意味する。
特に、表側樹脂層中の界面活性剤の量については、0.1重量%以上3重量%以下であることが好ましい。本体層は、界面活性剤を含まない層を有する場合があるが、界面活性剤を含まない層が介在すると、床材の体積抵抗値が高くなる傾向にある。この点、表側樹脂層の界面活性剤の量を前記好ましい範囲にすることにより、体積抵抗値の低い床材を構成できる。以下、界面活性剤を含まない層を「非含有層」という場合がある。
表側樹脂層が第1表樹脂層及び第2表樹脂層を有する場合、第1表樹脂層及び第2表樹脂層を構成する各成分の量も、上述の表側樹脂層を構成する各成分の量の範囲から適宜設定される。
表側樹脂層の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1mm以上1.5mm以下である。また、第1表樹脂層及び第2表樹脂層の厚みは、特に限定されず、それぞれ独立して、例えば、0.01mm以上0.7mm以下である。
【0029】
<化粧層>
化粧層は、必要に応じて本体層に組み入れられる。
化粧層としては、代表的には、意匠印刷フィルムなどが用いられる。前記意匠印刷フィルムは、樹脂フィルム上に印刷インキを印刷して固化させたもの、或いは、転写シートのデザイン箔(転写箔)を樹脂フィルムに転写したものなどを用いることができる。前記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニルなどの汎用的な樹脂から形成された無色透明なフィルムを用いることができる。
化粧層は、界面活性剤を含んでいてもよく、或いは、界面活性剤を含んでいなくてもよい。界面活性剤を含まない化粧層を有する本体層は、非含有層を有する本体層である。
化粧層の厚みは、特に限定されず、例えば、0.03mm以上0.3mm以下である。
【0030】
<裏側樹脂層>
裏側樹脂層は、表側樹脂層の裏面側に位置し、床材の厚み及び重量を成す層である。
裏側樹脂層は、着色されていてもよく、或いは、無色透明でもよい。また、裏側樹脂層は、非発泡でもよいし、或いは、発泡されていてもよい。裏側樹脂層が非発泡の場合、電気の流れを良好にして帯電防止性を向上させることができる。裏側樹脂層が発泡されている場合、床材にクッション性を付与し、さらに、床材を軽量化できる。発泡されている場合、その発泡倍率は特に限定されないが、1.05倍以上5倍以下である。前記発泡倍率の下限値以上であれば、床材にクッション性を付与でき、さらに、床材を軽量化でき、前記上限値以下であれば、帯電防止性の悪化を抑制できる。
裏側樹脂層は、主成分樹脂として塩化ビニル系樹脂を含み、さらに、帯電防止剤として界面活性剤を含む。
裏側樹脂層は、主成分樹脂として塩化ビニル系樹脂を含んでいることを条件として、他の樹脂を含んでいてもよく、或いは、他の樹脂を含んでいなくてもよい。また、裏側樹脂層は、必要に応じて、可塑剤、充填剤、各種の添加剤を含んでいてもよい。
裏側樹脂層の塩化ビニル系樹脂、可塑剤、充填剤、及び添加剤としては、上記<表側樹脂層>の欄で説明したようなものを適宜用いることができる。
【0031】
裏側樹脂層に含有される界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、若しくは両性イオン系のイオン性界面活性剤、又は、ノニオン系界面活性剤(非イオン性界面活性剤)が挙げられる。これらの界面活性剤の具体例としては、上記<表側樹脂層>の{界面活性剤}の欄で説明したようなものを適宜用いることができる。
導電性能に優れる点から、裏側樹脂層には、カチオン系界面活性剤を用いることが好ましく、カチオン系の中でも第4級アンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩型のカチオン系界面活性剤を用いることがより好ましい。
表側樹脂層との関係では、裏側樹脂層の界面活性剤は、表側樹脂層の界面活性剤と同じ界面活性剤を用いてもよく、或いは、異なる界面活性剤を用いてもよい。上述の理由から、裏側樹脂層の界面活性剤は、表側樹脂層の界面活性剤よりもブリード速度が速い界面活性剤を用いることが好ましい。
【0032】
裏側樹脂層を構成する各成分の量は、裏側樹脂層の全体を100重量%として、例えば、塩化ビニル系樹脂を含む樹脂成分が20重量%以上70重量%以下であり、可塑剤が10重量%以上50重量%以下であり、充填剤が10重量%以上60重量%以下であり、添加剤が0.1重量%以上30重量%以下であり、帯電防止剤である界面活性剤が0.1重量%以上20重量%以下である。特に、裏側樹脂層中の界面活性剤の量については、1重量%以上7重量%以下であることが好ましい。裏側樹脂層中の界面活性剤の量が前記範囲内であれば、帯電防止性、防汚性及び加工性が良好である。
裏側樹脂層の厚みは、特に限定されず、例えば、0.2mm以上5mm以下である。
【0033】
<中間繊維補強層及び裏繊維補強層>
中間繊維補強層は、経時的な収縮や膨張による床材の寸法変化を抑制すると共に、機械的強度を高めるための層である。中間繊維補強層は、必要に応じて設けられる。
中間繊維補強層は、1層でもよく、或いは、2層以上でもよい。
中間繊維補強層としては、不織布又は織布などを用いることができる。不織布及び織布を構成する繊維の材質は特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。床材の寸法安定性を高めることができ、有機繊維に比べて極めて寸法変動が少なく、且つ塩化ビニル系樹脂との馴染みも良いことから、中間繊維補強層として、ガラス繊維不織布又はガラス繊維織布を用いることが好ましい。
中間繊維補強層は、界面活性剤を含んでおらず、従って、中間繊維補強層を有する本体層は、非含有層を有する本体層である。
中間繊維補強層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.001mm以上0.5mm以下であり、好ましくは0.02mm以上0.06mm以下である。中間繊維補強層の目付けは、特に限定されないが、好ましくは30g/m2以上90g/m2以下である。
【0034】
裏繊維補強層は、本体層(床材)の最も裏面に位置する層であって、床材の反りを防止するための層である。裏繊維補強層は、必要に応じて設けられる。
裏繊維補強層は、1層でもよく、或いは、2層以上でもよい。
裏繊維補強層としては、不織布(フェルトを含む)、織布及び紙などを用いることができる。接着剤などを用いて床材を施工面に敷設する際に、床材と施工面との接着性及び密着性が向上することから、裏繊維補強層として不織布を用いることが好ましい。施工面に対する床材の接着性及び密着性が向上することによって、施工後に経時的な床材の浮きが防止され、床材から床下地へと電気を逃がし続けることができ、長期間にわたって帯電防止性を発揮することができる。前記不織布としては、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布などが挙げられ、中でも、スパンボンド不織布を用いることが好ましい。
不織布を構成する繊維の材質は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;天然繊維;などが挙げられる。
裏繊維補強層は、界面活性剤を含んでおらず、従って、裏繊維補強層を有する本体層は、非含有層を有する本体層である。
裏繊維補強層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.001mm以上1.5mm以下であり、好ましくは0.02mm以上0.06mm以下である。前記裏繊維補強層の目付けは、特に限定されないが、好ましくは30g/m2以上90g/m2以下である。
【0035】
(表面保護層)
表面保護層は、床材の最も表面側に位置する層であって、本体層の表面を保護する層である。
表面保護層は、本体層に表出されたデザインを視認するために、無色透明又は有色透明であり、好ましくは無色透明である。
前記表面保護層は、本体層の表面に設けられる。例えば、本体層が表側樹脂層及び裏側樹脂層を有する場合、表面保護層は前記表側樹脂層の表面に設けられる。また、前記表側樹脂層が第1表樹脂層及び第2表樹脂層を有する場合、表面保護層は第1表樹脂層の表面に設けられる。
表面保護層は、活性エネルギー線硬化型樹脂と、帯電防止剤としてイオン性液体と、を含み、必要に応じて、各種の添加剤を含んでいてもよい。表面保護層の添加剤としては、溶剤、レベリング剤、微粒子、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤、難燃剤、安定剤、抗菌剤、防かび剤、抗ウイルス剤などが挙げられる。
【0036】
前記表面保護層は、イオン性液体を配合した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、本体層の表面に塗布することによって塗膜を形成し、次いで、活性エネルギー線を照射することによって前記塗膜を硬化させることによって形成される。
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、主成分となる、活性エネルギー線硬化性モノマー及び/又はオリゴマーを含み、必要に応じてラジカル重合開始剤、活性エネルギー線吸収剤、活性エネルギー線安定剤などのその他の成分を含む。
【0037】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、荷電粒子線又は電磁波の中でモノマーなどを架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、電子線又は紫外線などを照射することにより、架橋、硬化した樹脂を指す。活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、硬化性モノマー又はオリゴマーが活性エネルギー線により硬化した樹脂である。
前記硬化性モノマー又はオリゴマーとしては、活性エネルギー線によって硬化可能であれば特に限定されない。前記硬化性モノマーとしては、表面保護層に要求される硬度や光沢、耐汚染性などの特性を有し、塗工に適当な従来公知の単官能モノマーや2官能モノマー、3官能以上の多官能モノマーを1種単独で又は2種以上併用できる。前記硬化性オリゴマーとしては、表面保護層に要求される硬度や光沢、耐汚染性などの特性を有し、塗工に適当なビスフェノールA型、ノボラック型、ポリブタジエン型のエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル型のウレタン(メタ)アクリレートなどのオリゴマーを1種単独で又は2種以上併用できる。
比較的強固な表面保護層を形成でき且つ汎用的であることから、紫外線によって硬化する硬化性モノマー又はオリゴマーを用いることが好ましい。
硬化性モノマー又はオリゴマーとしては、分子中に(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロイルオキシ基等の重合性不飽和結合基又はエポキシ基等を有するモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0038】
前記硬化性モノマーの具体例としては、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、分子中に2個以上のチオール基を有するポリオール化合物などが挙げられる。前記硬化性オリゴマーの具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、コロイダルシリ力と(メタ)アクリロイルアルコキシシランを縮合して得られる有機無機ハイブリッド(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和結合を有する単官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、エポキシなどが挙げられる。
これらの中では、適度な柔軟性を有し、耐熱性、耐薬品性、耐久性に優れた床材を形成でき、さらに、本体層との密着性に優れていることから、ウレタン(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
前記硬化性モノマー又はオリゴマーの分子量は、特に限定されないが、例えば、200以上10000以下の範囲内などが挙げられる。
【0039】
前記硬化性モノマー又はオリゴマーには、通常、ラジカル重合開始剤が添加される。前記ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によりラジカルを生成する化合物であり、従来公知の水素引き抜き型又は光開裂型などを、1種単独で又は2種以上併用できる。このようなラジカル重合開始剤には、さらに、光増感剤を併用することも可能である。
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、その他のチオキサント系化合物などが挙げられる。
【0040】
{イオン性液体}
イオン性液体は、イオンから構成され、液状を成している。
本発明において、イオン性液体は、常温(例えば、30℃)で液状である常温溶融塩、及び、常温(例えば、30℃)で固体であるが適切な溶媒に溶解されて常温で液状となるアルカリ金属塩、などを含む。
前記常温溶融塩は、それを構成するカチオン及びアニオンのうち少なくとも一つが有機物イオンであるものを用いることができる。前記カチオンとしては、アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、グアニジニウム、イソウロニウムが一置換、二置換、三置換されたものなどのイオンが挙げられる。前記アニオンとしては、ハロゲン化物、硫酸、スルホン酸、アミド、イミド、メタン、ホウ酸、リン酸、アンチモン酸、コバルトテトラカルボニル、トリフルオロ酢酸、デカン酸などのイオンが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上併用してもよい。
常温溶融塩としては、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピラゾリウム塩、チアゾリウム塩、オキサゾリウム塩、ピロリジニウム塩、ピリジニウム塩、ピリミジニウム塩、ピラジニウム塩、ホスホニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルホスホニウム塩などの有機化合物塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、比較的安価で且つ帯電防止効果に優れていることから、前記アンモニウム塩がより好ましい。
常温溶融塩の具体例は、特許文献1(特許第6175686号公報)の[0032]乃至[0038]に記載されているものが挙げられる。紙面の都合上、ここでは、それらの記載を省略するが、本明細書の常温溶融塩の説明において、前記[0032]乃至[0038]に記載された内容をそのまま本明細書に取り込めるものとする。
【0041】
前記アルカリ金属塩としては、有機酸又は無機酸の塩が挙げられる。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウムなどが挙げられる。有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸などの炭素原子数1以上18以下の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸などの炭素原子数1以上12以下の脂肪族ジカルボン酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸;メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの炭素原子数1以上20以下のスルホン酸;などが挙げられる。無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、スルホン酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、硝酸、過塩素酸などが挙げられる。
【0042】
具体的には、前記アルカリ金属塩は、例えば、酢酸リチウム、塩化リチウム、リン酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムなどのスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウムなどのリチウム塩;酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウムなどのナトリウム塩;酢酸カリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、過塩素酸カリウム、トルエンスルホン酸カリウムなどのカリウム塩;などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上併用してもよい。
中でも、耐薬品性に優れた床材を構成できることから、リチウム塩を含むイオン性液体(リチウム塩が溶媒に溶解されたもの)を用いることが好ましい。
【0043】
また、前記アルカリ金属塩を溶解させる溶媒は、アルカリ金属塩を溶解させ且つ表面保護層を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂に対する分散性に優れるものが用いられる。
前記アルカリ金属塩を溶解させる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2-メトキシエタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタノンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;などが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用できる。
上述のように溶媒に溶解させたアルカリ金属塩は、常温で液状となるが、そのアルカリ金属塩の濃度は、適宜設定されるが、例えば、全体を100重量%とした場合、10重量%以上30重量%以下である。
【0044】
前記イオン性液体の配合量は、表面保護層の全体100重量%に対して、0.5重量%以上20重量%以下が好ましく、1重量%以上15重量%以下がより好ましく、2重量%以上13重量%以下がさらに好ましく、3重量%以上10重量%以下が特に好ましい。イオン性液体の配合量が小さすぎると、帯電防止性及び耐薬品性を十分に発揮できないおそれがあり、イオン性液体の配合量が大きすぎると、耐薬品性が低下するおそれがあり且つ表面保護層の機械的強度が低下するおそれがある。なお、イオン性液体が溶媒に溶解させたアルカリ金属塩である場合、前記表面保護層中のイオン性液体の量の範囲は、前記溶媒とアルカリ金属塩の合計重量に基づく数値である。
前記表面保護層の厚みは、特に限定されないが、例えば、1μm以上100μm以下であり、好ましくは5μm以上70μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。表面保護層の厚みが前記上限値以下であれば、帯電防止性の悪化を抑制でき、下限値以上であれば、本体層の樹脂層に含まれる界面活性剤が床材表面にブリードすることを効果的に防止できる。
【0045】
[本発明の床材の利点]
本発明の床材は、本体層の樹脂層が帯電防止剤として界面活性剤を含み、表面保護層が帯電防止剤としてイオン性液体を含んでいる。界面活性剤は、塩化ビニル系樹脂に対して良好な分散性を有し、イオン性液体は、活性エネルギー線硬化型樹脂に対して良好な分散性を有する。このため、本発明の床材は、その製造時における加工性に優れている。
さらに、本発明の床材は、本体層の樹脂層及び表面保護層のいずれにも帯電防止剤が含まれているので、体積抵抗値が比較的小さくなり、帯電防止性に優れている。
特に、非含有層を有する床材は、その層において電気抵抗が高くなるので、一般に、体積抵抗値が高くなる傾向にある。この点、本発明の床材は、非含有層を有していても、上記構成により、優れた帯電防止性を有する。
【0046】
例えば、本発明の床材の体積抵抗値は、温度23℃、湿度25%RHの環境下で、100×108Ω以下であり、好ましくは、60×108Ω以下であり、より好ましくは、4.0×108Ω以下である。
ただし、前記体積抵抗値は、JISA1454(「高分子系張り床材試験方法」)の23.電気的特性試験に準じて測定される値であって、床材の表面の任意の複数箇所で測定した平均値である。
【0047】
また、本発明の床材の表面保護層には、帯電防止剤としてイオン性液体を含んでいるので、表面保護層の表面にイオン性液体がブリードし難い。このため、本発明によれば、表面に汚れが付着し難い、防汚性に優れた床材を提供できる。
【0048】
さらに、表面保護層に、リチウム塩のイオン性液体が含まれている場合には、耐薬品性に優れた床材を提供できる。
本発明の床材は、シート床材、タイル床材のいずれでもよいが、特に、シート床材の形態が好ましい。タイル床材は、施工面に敷設した際、隣接するタイル床材の間に多数の目地が形成される。一方、シート床材は、長尺なので、施工面に敷設した際、隣接するシート間の継ぎ目が生じる箇所が極端に少なくなる。この継ぎ目は、一般的に溶接棒などで接合され隣接するシートが一体化される。前記継ぎ目が少なくなることから、施工後のシート床材の表面に薬品が付着しても、継ぎ目に薬品が侵入するおそれが低減し、表面保護層が具有する耐薬品性によって、表面の変色を抑制できる。
【0049】
[本発明の床材の製造方法]
本発明の床材は、例えば、次のようにして製造することができる。
通常、本体層を形成し、その本体層の表面に表面保護層を形成することによって、本発明の床材が得られる。
例えば、
図3に示す層構成の本体層2の場合、裏側から順に、スパンボンド不織布などの裏繊維補強層24、塩化ビニル系樹脂及び界面活性剤を含む裏側樹脂層22、ガラス織布などの中間繊維補強層23、塩化ビニル系樹脂及び界面活性剤を含む第2表樹脂層212、塩化ビニル系樹脂及び界面活性剤を含む第1表樹脂層211を積層する。
また、
図4に示す層構成の本体層2の場合、裏側から順に、スパンボンド不織布などの裏繊維補強層24、塩化ビニル系樹脂及び界面活性剤を含む裏側樹脂層22、ガラス織布などの中間繊維補強層23、塩化ビニル系樹脂及び界面活性剤を含む第2表樹脂層212、意匠印刷フィルムなどの化粧層213、塩化ビニル系樹脂及び界面活性剤を含む第1表樹脂層211を積層する。
前記裏側樹脂層、第2表樹脂層、第1表樹脂層は、それぞれの形成材料を、ペーストゾルのゲル化、又は、カレンダー成形若しくは押出成形などによって形成することができる。前記形成材料は、上記(本体層)の欄で述べたような、塩化ビニル系樹脂及び界面活性剤を含むものが用いられる。なお、前記ペーストゾルのゲル化によって樹脂層を形成する場合には、展開用フィルムなどの展開面に形成材料を塗布して塗膜を形成する。
【0050】
前記裏繊維補強層24/裏側樹脂層22/中間繊維補強層23/第2表樹脂層212/第1表樹脂層211の順に積層された未固化の積層物の全体を加熱して、塩化ビニル系樹脂を固化させることよって、
図3に示す層構成の本体層2が得られる。同様に、前記裏繊維補強層24/裏側樹脂層22/中間繊維補強層23/第2表樹脂層212/化粧層213/第1表樹脂層211の順に積層された未固化の積層物の全体を加熱して、塩化ビニル系樹脂を固化させることよって、
図4に示す層構成の本体層2が得られる。なお、前記では、全ての層を積層して積層物を作製し、この積層物の全体を加熱しているが、積層と加熱を繰り返して順に行なってもよい。例えば、幾つかの層を積層した第1積層物を加熱し、さらに、その第1積層物の上に他の層を積層した第2積層物を加熱するなどのように、各層の積層とその積層物の加熱を順に繰り返して、
図3及び
図4などに示す本体層を作製してもよい。
加熱手段は、特に限定されないが、例えば、電熱ヒーターなどが挙げられる。加熱温度は、例えば、130℃以上200℃以下であり、好ましくは135℃以上210℃以下であり、加熱時間は、例えば、10秒以上300秒以下である。
【0051】
前記本体層の表面に、表面保護層の形成材料を塗布することによって塗膜を形成する。必要に応じて、本体層の表面にプライマー層を形成した後に、そのプライマー層の表面上に表面保護層の形成材料を塗布して塗膜を形成してもよい。また、本体層の表面に、エンボス加工を行って凹凸を形成した後に、その凹凸形成済みの表面上に表面保護層の形成材料を塗布して塗膜を形成してもよい。
表面保護層の形成材料は、上記(表面保護層)の欄で述べたような、イオン性液体を配合した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いることができる。
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として、市販の塗料を用いてもよい。前記市販の塗料としては、代表的には、紫外線硬化性の樹脂組成物が挙げられ、具体的には、例えば、オーレックス(中国塗料(株)製)、アデカオプトマー(旭電化工業(株)製)、コーエイハード(広栄化学工業(株)製)、セイカビーム(大日精化工業(株)製)、EBECRYL(ダイセル・サイテック(株)製)、ユニディック(DIC(株)製)、サンラッド(三洋化成工業(株)製)などが挙げられる。
【0052】
前記表面保護層の形成材料の未硬化の塗膜に対して、活性エネルギー線を照射することにより、硬化性モノマー又はオリゴマーが重合して高分子化する。かかる重合により、未硬化の塗膜が硬化して、表面保護層が形成される。活性エネルギー線を照射する装置としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、窒素レーザー、電子線加速装置、放射性元素の線源などが挙げられる。活性エネルギー線の照射量は、硬化性モノマーなどに応じて適宜設定されるが、例えば、紫外線波長365nmでの積算光量で、50~5,000mJ/cm2程度が挙げられる。
以上のようにして、本体層の表面に表層が強固に接着した、本発明の床材を得ることができる。
【実施例0053】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0054】
[使用材料]
・表面保護層の形成材料
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型塗料(中国塗料株式会社製、製品名「オーレックスUV146B」)を使用した。この塗料は、ウレタンアクリレートモノマー又はオリゴマーに、微量の重合開始剤及び添加剤が配合されており(ただし、帯電防止剤は配合されていない)、それ自体、塗工可能な液状のものである。
【0055】
・イオン性液体(Li):
イオン性液体(Li)として、過塩素酸リチウムとトリフルオロメタンスルホン酸リチウムの混合物(日本カーリット株式会社製の製品名「PEL25」)を使用した。
この混合物自体は、30℃で固体であるが、製品名「PEL25」の製品は、前記混合物を溶媒(ポリアルキレングリコール)に溶解させた液状物であって、30℃で液状であった。その液状物は、重量比で、過塩素酸リチウム:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム:ポリアルキレングリコール=10:5:85であった。
・イオン性液体(M):
イオン性液体(M)として、テトラアルキルアンモニウム塩(広栄化学株式会社製の製品名「IL-A2」)を使用した。この製品名「ILA-2」の製品は、30℃で液状であった。
【0056】
・界面活性剤(A)
界面活性剤(A)として、カチオン型界面活性剤(新日本理化株式会社製の製品名「C500」)を使用した。この製品名「ILA-2」の製品は、30℃で液状であった。
・界面活性剤(B)
界面活性剤(B)として、カチオン型界面活性剤である第4級アンモニウムクロライド(勝田化工株式会社製の製品名「ST55」)を使用した。この製品名「ST55」の製品は、30℃で液状であった。
【0057】
・第1表樹脂層の形成材料
第1表樹脂層の形成材料として、塩化ビニル系樹脂組成物を使用した。この塩化ビニル系樹脂組成物は、60重量部のペースト塩化ビニル、20重量部の可塑剤(DOP)、1重量部の顔料(着色剤)、5重量部の安定剤を含む。
・第2表樹脂層の形成材料
第2表樹脂層の形成材料として、塩化ビニル系樹脂組成物を使用した。この塩化ビニル系樹脂組成物は、50重量部のペースト塩化ビニル、20重量部の可塑剤(DOP)、20重量部の充填剤(炭酸カルシウム)、5量部の安定剤を含む。
【0058】
・中間繊維補強層
中間繊維補強層として、ガラス織布を使用した。なお、前記ガラス織布は、帯電防止剤を含まない。
・裏側樹脂層の形成材料
裏側樹脂層の形成材料として、塩化ビニル系樹脂組成物を使用した。この塩化ビニル系樹脂組成物は、50重量部のサスペンジョン塩化ビニル、20重量部の可塑剤(DOP)、20重量部の充填剤(炭酸カルシウム)、5重量部の安定剤を含む。
・裏繊維補強層
裏繊維補強層として、ポリエチレンテレフタレート製のスパンボンド不織布を使用した。なお、前記スパンボンド不織布は、帯電防止剤を含まない。
【0059】
[実施例1]
<本体層の作製>
裏側樹脂層の形成材料に、界面活性剤(B)を配合して十分に混合して、ペースト状とした。裏側樹脂層の形成材料と界面活性剤(B)の配合比は、重量比で、裏側樹脂層の形成材料:界面活性剤(B)=55:2とした。従って、界面活性剤(B)は、裏側樹脂層の全体を100重量%とした場合、約3.5重量%含まれている。
第1表樹脂層の形成材料に、界面活性剤(A)を配合して十分に混合して、ペースト状とした。第1表樹脂層の形成材料と界面活性剤(A)の配合比は、重量比で、第1表樹脂層の形成材料:界面活性剤(A)=49:1とした。従って、界面活性剤(A)は、第1表樹脂層の全体を100重量%とした場合、約2重量%含まれている。
第2表樹脂層の形成材料に、界面活性剤(A)を配合して十分に混合して、ペースト状とした。第2表樹脂層の形成材料と界面活性剤(A)の配合比は、重量比で、第2表樹脂層の形成材料:界面活性剤(A)=97:3とした。従って、界面活性剤(A)は、第2表樹脂層の全体を100重量%とした場合、約3重量%含まれている。
【0060】
中間繊維補強層の上に、前記界面活性剤(B)を混合した裏側樹脂層の形成材料ペーストを塗布し、その上に裏繊維補強層を載置し、160℃のオーブンで2分間加熱し、裏繊維補強層/裏側樹脂層/中間繊維補強層の積層物を得た。この積層物の中間繊維補強層の上に、前記界面活性剤(A)を混合した第2表樹脂層の形成材料ペーストを塗布し、160℃のオーブンで2分間加熱し、裏繊維補強層/裏側樹脂層/中間繊維補強層/第2表樹脂層の積層物を得た。この積層物の第2表樹脂層の上に、前記界面活性剤(A)を混合した第1表樹脂層の形成材料ペーストを塗布し、200℃のオーブンで2分間加熱し、厚み約0.05mmの裏繊維補強層/厚み約1mmの裏側樹脂層/厚み約0.05mmの中間繊維補強層/厚み約0.5mmの第2表樹脂層/厚み約0.5mmの第1表樹脂層からなる本体層を作製した。
なお、前記本体層は、同じものを2枚作製した。2枚のうち、1枚の本体層は、防汚性試験を行なうため、もう1枚の本体層は、その上に表面保護層を形成して床材を作製するためである。
【0061】
<表面保護層の形成>
表面保護層の形成材料に、イオン性液体(Li)を配合して十分に混合した。表面保護層の形成材料とイオン性液体(Li)の配合比は、重量比で、表面保護層の形成材料:イオン性液体(Li)=19:1とした。従って、イオン性液体(Li)は、表面保護層の全体を100重量%とした場合、約5重量%含まれている。
このイオン性液体(Li)を含む形成材料を、2枚作製したうちの1枚の本体層の表面上に、ロールコーターを用いて均一な厚みで塗布した。その直後に標準状態下において有電極紫外線ランプで紫外線を照射することにより、硬化性モノマー又はオリゴマーを重合させて、厚み約20μmの表面保護層を形成した。このようにして実施例1の床材を作製した。
【0062】
[実施例2]
裏側樹脂層の形成材料に加える帯電防止剤を界面活性剤(A)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、2枚の本体層を作製し、そのうちの1枚の本体層の上に表面保護層を形成して床材を作製した。
【0063】
[実施例3]
第1表樹脂層及び第2表樹脂層の形成材料にそれぞれ加える帯電防止剤を界面活性剤(B)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、2枚の本体層を作製し、そのうちの1枚の本体層の上に表面保護層を形成して床材を作製した。
【0064】
[実施例4]
裏側樹脂層の形成材料に加える帯電防止剤を界面活性剤(A)に変更したこと、並びに、第1表樹脂層及び第2表樹脂層の形成材料にそれぞれ加える帯電防止剤を界面活性剤(B)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、2枚の本体層を作製し、そのうちの1枚の本体層の上に表面保護層を形成して床材を作製した。
【0065】
[実施例5]
表面保護層の形成材料に加える帯電防止剤をイオン性液体(M)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、2枚の本体層を作製し、そのうちの1枚の本体層の上に表面保護層を形成して床材を作製した。
【0066】
[実施例6]
第1表樹脂層の形成材料に加える界面活性剤(A)の量を、2倍(4重量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、2枚の本体層を作製し、そのうちの1枚の本体層の上に表面保護層を形成して床材を作製した。
【0067】
[実施例7]
第2表樹脂層の形成材料に帯電防止剤を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、2枚の本体層を作製し、そのうちの1枚の本体層の上に表面保護層を形成して床材を作製した。
【0068】
[実施例8]
第2表樹脂層の形成材料に加える界面活性剤(A)の量を、2倍(6重量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、2枚の本体層を作製し、そのうちの1枚の本体層の上に表面保護層を形成して床材を作製した。
【0069】
[実施例9]
裏側樹脂層の形成材料に加える界面活性剤(B)の量を、2倍(7重量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、2枚の本体層を作製し、そのうちの1枚の本体層の上に表面保護層を形成して床材を作製した。
【0070】
[比較例1]
第1表樹脂層、第2表樹脂層及び裏側樹脂層の形成材料にそれぞれ加える帯電防止剤をいずれもイオン性液体(Li)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、2枚の本体層を作製し、そのうちの1枚の本体層の上に表面保護層を形成して床材を作製した。
【0071】
[比較例2]
表面保護層、第1表樹脂層、第2表樹脂層及び裏側樹脂層の形成材料にそれぞれ加える帯電防止剤をいずれもイオン性液体(M)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、2枚の本体層を作製し、そのうちの1枚の本体層の上に表面保護層を形成して床材を作製した。
【0072】
[比較例3]
表面保護層の形成材料に加える帯電防止剤を界面活性剤(B)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、2枚の本体層を作製し、そのうちの1枚の本体層の上に表面保護層を形成して床材を作製した。
【0073】
[体積抵抗値の測定]
実施例1乃至9及び比較例1乃至3の床材について、それぞれ体積抵抗値を測定した。
体積抵抗値は、JISA1454(「高分子系張り床材試験方法」)の23.電気的特性試験に準じて、電導床・帯電防止床の電気的な性能の評価方法によって、金属板の上に載置したサンプル(床材)の上に電極を設け、絶縁抵抗値計(Chauvin Arnoux社製、製品名「メグオームメーター CA6541」)から500Vの電圧を30秒間印加して抵抗値を測定した。体積抵抗値は、23℃、25%RH環境下で、床材の表面の150mm間隔をあけた複数箇所においてそれぞれ測定し、その平均値を採用した。
それらの結果を表1乃至表3に示す。電気抵抗値評価の欄の「○」は、体積抵抗値が13.0×108Ω未満を表し、「△」は、13.0×108Ω以上150.0×108Ω未満を表し、「×」は、150.0×108Ω以上を表す。
なお、表1乃至表3中において、表面保護層などの各層の帯電防止剤の含有量を表す数値に付した「%」は、「重量%」を意味する。
【0074】
[防汚性]
実施例1乃至9及び比較例1乃至3において、2枚作製した本体層のうち、表面保護層を形成しなかった1枚の本体層を用いて、防汚性を評価した。
防汚性の評価は、前記表面保護層を形成していない本体層を、60℃、90%RH下で24時間静置した後、その本体層の表面(第1表樹脂層の表面)に滲み出している液の有無を指による触覚にて確認した。
それらの結果を表1乃至表3に示す。各表中、防汚性の欄の「○」は、ブリードしていなかったことを表し、「△」は、少しブリードしていたことを表し、「×」は、明らかにブリードしていたことを表す。
なお、床材は、本体層の表面に表面保護層を形成したものであるので、本体層の表面の液滲み出しを確認しても、厳密には、床材の防汚性を評価したことにはならないが、液滲みが多い本体層を有する床材は、表面保護層を通過して表面保護層の表面に液が滲み出やすく、汚れが付着し易いと評価できる。
【0075】
[加工性]
実施例1乃至9及び比較例1乃至3について、床材を製造する過程の加工性をそれぞれ評価した。加工性は、次の評価基準によって評価した。
それらの結果を表1乃至表3に示す。
(評価基準)
表面保護層、第1表樹脂層、第2表樹脂層、裏側樹脂層の各層を形成する形成材料に帯電防止剤を混合した際に、帯電防止剤が容易に分散するか否かを評価基準とした。
○:全ての層において、それぞれ混合した帯電防止剤が容易に分散し、加工性が極めて良かった。
△:全ての層において、それぞれ混合した帯電防止剤が分散し、加工性が比較的良かった。
×:帯電防止剤の粘度が高いなど分散性が悪く、混合し終わった後に経時的に分離した。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
[実施例10乃至16]
表面保護層の形成材料に加えるイオン性液体(Li)の量を、表4に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして床材を作製した。つまり、実施例10乃至16の床材は、表面保護層中のイオン性液体(Li)が異なっている点を除いて、実施例1の床材と同じ層構成であった。
【0080】
[比較例4]
表面保護層に帯電防止剤であるイオン性液体(Li)を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして床材を作製した。つまり、比較例4の床材は、表面保護層にイオン性液体(Li)が含まれていない点を除いて、実施例1の床材と同じ層構成であった。
【0081】
[実施例17乃至23]
表面保護層の形成材料に加えるイオン性液体(M)の量を、表5に示すように変更したこと以外は、実施例5と同様にして床材を作製した。つまり、実施例17乃至23の床材は、表面保護層中のイオン性液体(M)が異なっている点を除いて、実施例5の床材と同じ層構成であった。
【0082】
[比較例5]
表面保護層に帯電防止剤であるイオン性液体(M)を加えなかったこと以外は、実施例5と同様にして床材を作製した。比較例5の床材は、表面保護層にイオン性液体(M)が含まれていない点を除いて、実施例5の床材と同じ層構成であった。
ただし、この比較例5の床材は、比較例4の床材と全く同じ構成であるため、実際には比較例5の床材を作製せず、比較例4の床材の各測定結果を援用した。
【0083】
【0084】
【0085】
[体積抵抗値の測定]
実施例10乃至23及び比較例4の床材について、上記[体積抵抗値の測定]の欄と同様な方法で、それぞれ体積抵抗値を測定した。
その結果を表4及び表5に示す。なお、表4及び5には、実施例1及び5の床材の体積抵抗値及びその評価結果を併記している。また、比較例5の測定結果については、上述のように、比較例4の測定結果を用いている。
【0086】
[耐薬品性]
実施例1、5、10乃至23及び比較例4の床材について、それぞれ耐薬品性を試験した。
試験は、各床材上に厚み2cmの脱脂綿を載せ、その脱脂綿に1mLのポピドンヨードを滴下し、その脱脂綿を覆うように時計皿を被せた後、23℃、50%RH環境下で24時間静置した。その後、床材を水洗し、その表面の変色度合い(ΔE)を測定した。変色度合い(ΔE)は、色差計(日本電色工業株式会社製の商品名「Color Meter ZE2000」)を用いて測定した、JIS Z8729に従ったL*a*b*表色系(L*:明度、a*b*:色度)による色差である。なお、ΔE={(L-L0)2+(a-a0)2+(b-b0)2}1/2で求められる。ΔEは、その値が小さいほど、変色していないことを示す指標である。
それらの結果を表4及び表5に示す。なお、比較例5の測定結果については、上述のように、比較例4の測定結果を用いている。
各表中、耐薬品性の欄の「○」は、ΔEが8未満で、外見上変色がほとんど認められなかったことを表し、「△」は、ΔEが8以上20未満で、外見上僅かに変色が認められたことを表し、「×」は、ΔEが20以上で、外見上、変色が認められたことを表す。
【0087】
なお、実施例10乃至23及び比較例4、5について、床材を製造する過程の加工性を上記[加工性]の欄に記載の評価基準で同様に評価したところ、いずれも、全ての層において、それぞれ混合した帯電防止剤が容易に分散し、加工性が極めて良かった。
【0088】
[実施例24乃至27]
第1表樹脂層、第2表樹脂層及び裏側樹脂層の各形成材料に加える界面活性剤の量を、表6に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして床材を作製した。
【0089】
実施例24乃至27についても、実施例1と同様に、体積抵抗値の測定、防汚性の評価、加工性の評価を行なった。
その結果を表6に示す。なお、表6中において、表面保護層などの各層の帯電防止剤の含有量を表す数値に付した「%」は、「重量%」を意味する。
【0090】
【0091】
[実施例28]
第2表樹脂層と第1表樹脂層の間に化粧層を積層したこと以外は、実施例1と同様にして、2枚の本体層を作製し、そのうちの1枚の本体層の上に表面保護層を形成して床材を作製した。
具体的には、化粧層として、印刷が施された厚み約0.15mmの塩化ビニル製フィルムを準備した。このフィルムには、帯電防止剤は含まれていない。
実施例1と同様して、裏繊維補強層/裏側樹脂層/中間繊維補強層/第2表樹脂層の積層物を作製した。この積層物の第2表樹脂層の上に、前記化粧層を積層し、その化粧層の上に、界面活性剤(A)を混合した第1表樹脂層の形成材料ペーストを塗布し、200℃のオーブンで2分間加熱し、厚み約0.05mmの裏繊維補強層/厚み約1mmの裏側樹脂層/厚み約0.05mmの中間繊維補強層/厚み約0.35mmの第2表樹脂層/厚み約0.15mmの化粧層/厚み約0.5mmの第1表樹脂層からなる本体層を作製した。
2枚の本体層のうち、1枚の本体層の表面に、実施例1と同様にして、5重量%のイオン性液体(Li)を含む表面保護層の形成材料を塗布してこれを硬化させることによって、厚み約20μmの表面保護層を形成し、実施例28の床材を作製した。
【0092】
[実施例29]
裏側樹脂層の形成材料に加える帯電防止剤を界面活性剤(A)に変更したこと以外は、実施例28と同様にして、実施例29の床材を作製した。
【0093】
実施例28及び29についても、実施例1と同様に、体積抵抗値の測定、防汚性の評価、加工性の評価を行なった。
その結果を表7に示す。なお、表7中において、表面保護層などの各層の帯電防止剤の含有量を表す数値に付した「%」は、「重量%」を意味する。
【0094】