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特開2024-103341メタネーション反応装置及びメタネーション反応方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103341
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】メタネーション反応装置及びメタネーション反応方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/12 20060101AFI20240725BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20240725BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007619
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 希
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA04
4H006AC29
4H006BA21
4H006BA25
4H006BC11
4H006BE20
4H006BE40
4H006BE41
4H039CB20
4H039CL35
(57)【要約】
【課題】メタネーション反応器内の、反応熱による急激な触媒層の温度上昇を緩和できるメタネーション反応装置及びメタネーション反応方法を提供する。
【解決手段】メタネーション反応装置は、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)とを含む原料ガスG1を導入する反応器11内に、二酸化炭素をメタンに変換するメタネーション触媒20と、メタネーション反応の発熱の一部を吸熱して反応する逆シフト反応用の逆シフト触媒21とを所定の割合で混合した混合触媒22を充填している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素と水素とを含む原料ガスを導入する反応器内に、前記二酸化炭素をメタンに変換するメタネーション触媒と、メタネーション反応の発熱の一部を吸熱して反応する逆シフト反応用触媒とを所定の割合で混合した混合触媒を充填してなることを特徴とするメタネーション反応装置。
【請求項2】
前記反応器内をガス導入側からガス排出側にかけて第1反応領域と第2反応領域とに分割し、
前記第1反応領域に、前記メタネーション触媒と前記逆シフト触媒とを所定の割合で混合した混合触媒を充填させると共に、
前記第2反応領域に、前記メタネーション触媒のみを充填してなることを特徴とする請求項1に記載のメタネーション反応装置。
【請求項3】
前記混合触媒は、メタネーション触媒と逆シフト触媒の触媒活性成分を所定の割合で共通担体に担持してなることを特徴とする請求項2に記載のメタネーション反応装置。
【請求項4】
前記第1反応領域の逆シフト触媒とメタネーション触媒との配合比率が90:10~40:60であることを特徴とする請求項2又は3に記載のメタネーション反応装置。
【請求項5】
前記第1反応領域と第2反応領域との容積割合が95:5~30:70であることを特徴とする請求項2又は3に記載のメタネーション反応装置。
【請求項6】
前記反応器内の反応圧力が0MPaGから1MPaG未満の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のメタネーション反応装置。
【請求項7】
反応器のガス導入側からガス排出側にかけて、メタネーション触媒と逆シフト触媒とを所定の割合で混合した混合触媒を充填し、導入した二酸化炭素をメタネーション触媒によりメタンに変換させると共に、メタネーション反応の発熱の一部を吸熱して反応する逆シフト反応により、導入した二酸化炭素を一酸化炭素に変換させる反応工程を有することを特徴とするメタネーション反応方法。
【請求項8】
前記反応器内をガス導入側からガス排出側にかけて第1反応領域と第2反応領域とに分割し、
前記第1反応領域にメタネーション触媒と逆シフト触媒とを所定の割合で混合した混合触媒を充填し第1反応工程とし、前記第2反応領域に前記メタネーション触媒のみを充填して、前記第1反応領域で未反応の二酸化炭素をメタンに変換させると共に、前記第1反応領域での前記逆シフト反応で生成した一酸化炭素をメタンに変換させる第2反応工程とすることを特徴とする請求項7に記載のメタネーション反応方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタネーション反応装置及びメタネーション反応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界的にカーボンニュートラルという観点から二酸化炭素(CO2)の回収技術の製品化及び開発が盛んである。また、自然エネルギー由来の電気分解による水素製造技術の製品化及び開発も盛んである。これらの二酸化炭素(CO2)、水素(H2)を利用し、メタン(CH4)を生成するメタネーションシステムの需要は今後増えると考えられる。
【0003】
触媒を用いた二酸化炭素のメタネーション技術の開発に関しても各所で進められている。本メタネーション技術の共通する課題は、メタネーション反応の急激な発熱の制御である。この発熱により触媒層は制御不能なほど急激に温度が上昇することもあり、触媒の劣化が懸念されたり、触媒反応器(以下「反応器」ともいう)を設計したりするうえで耐高温材料の要求につながることとなる。
【0004】
特に、反応器においては、入口部付近において、発熱反応による触媒層の急激な温度上昇が顕著であるという問題がある。
【0005】
これを解決するために、急激な触媒層の温度上昇が想定される反応ゾーンに、メタネーション触媒とアルミナボール(メタネーション反応に不活性)を交互に充填するか、または触媒とアルミナボールを混合して充填することにより、発熱反応の速度を抑制し、急激な触媒層温度の上昇を緩和する、という提案がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-321400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、触媒活性に寄与しないアルミナボールでメタネーション触媒を希釈しているだけであるので、発生した熱の放熱先が確保しづらく、またアルミナボール分の無駄な容積を必要とするため反応器の小型化には不向きである、という問題がある。
【0008】
通常、このようなメタネーション反応器内での急激な触媒層の温度上昇を緩和するためには、反応熱の除去のために別途冷却機能を備える場合も多いが、メタネーションシステム全体が大型化するという問題がある。
【0009】
本発明は従来技術の有するこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、メタネーション反応器内の、反応熱による急激な触媒層の温度上昇を緩和できるメタネーション反応装置及びメタネーション反応方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る一つの態様のメタネーション反応装置は、二酸化炭素と水素とを含む原料ガスを導入する反応器内に、前記二酸化炭素をメタン化させるメタネーション触媒と、メタネーション反応の発熱の一部を吸熱して反応する逆シフト反応用触媒(以下「逆シフト触媒」ともいう)とを所定の割合で混合した混合触媒を充填してなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る一つの態様のメタネーション反応方法は、反応器のガス導入側からガス排出側にかけて、メタネーション触媒と逆シフト触媒とを所定の割合で混合した混合触媒を充填し、導入した二酸化炭素をメタネーション触媒によりメタンに変換させると共に、メタネーション反応の発熱の一部を吸熱して反応する逆シフト反応により、導入した二酸化炭素を一酸化炭素に変換させる反応工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一つの反応場において、メタネーション触媒と逆シフト触媒とを混合させることによって、メタネーション反応の発熱の一部を、逆シフト反応による吸熱で利用し、一種の熱相殺作用を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る第1の実施形態のメタネーション反応器の概略図である。
図2】本発明に係る第1の実施形態のメタネーション反応装置の概略図である。
図3】本発明に係る第2の実施形態のメタネーション反応器の概略図である。
図4】本発明に係る第2の実施形態のメタネーション反応装置の概略図である。
図5】本発明に係る第2の実施形態の試験結果を示すグラフである。
図6】従来技術に係る試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。
【0015】
[第1実施形態]
図1(A)~(C)は、本発明に係る第1実施形態のメタネーション反応器の概略図である。
図1(A)に示すように、本実施形態にかかるメタネーション反応器は、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)とを含む原料ガスG1を導入する反応器11内に、二酸化炭素をメタンに変換するメタネーション触媒20と、メタネーション反応の発熱の一部を吸熱して反応する逆シフト反応用の逆シフト触媒21とを所定の割合で混合した混合触媒22を充填している。
ここで、逆シフト触媒21とメタネーション触媒20との配合比率(容量%)は例えば90:10~40:60とするのが好ましい。
【0016】
反応器11の上部側と底部側には、原料ガスG1を導入するガス導入配管12Aと排出ガスG2を排出するガス排出配管12Bが設けられている。
【0017】
原料ガスG1は、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)とを1:4の比率で導入するのが好ましい。
反応器11の反応開始温度は200~400℃、好適には270℃~300℃としている。
ガス導入配管12Aから導入された二酸化炭素(CO2)と水素(H2)は、メタネーション触媒20により、下記式(1)のように、メタン(CH4)と水(H2O)とに変換される。
【0018】
[化1]
CO2+4H2→CH4+2H2O…(1)
【0019】
この際、メタネーション触媒20に隣接する逆シフト触媒21により、下記式(2)のように、導入された二酸化炭素(CO2)と水素(H2)が、一酸化炭素(CO)と水(H2O)とに変換される。
【0020】
[化2]
CO2+H2→CO+H2O…(2)
【0021】
すなわち、導入された二酸化炭素は、メタネーション触媒20上で上記式(1)のメタネーション反応により、発熱(+165.0kJ/mol)する。
また、隣接する逆シフト触媒21上では、メタネーション触媒20での発熱の一部を吸熱(-41.2kJ/mol)して上記式(2)のように逆シフト反応が進行する。
【0022】
このように、式(1)のメタネーション反応による発熱が、式(2)の逆シフト反応の吸熱と熱相殺またはそれに近い状態となれば、反応器11の入口付近の触媒層の、例えば600℃またはそれ以上となる急激な温度上昇が緩和されることとなる。
【0023】
以上より、本実施形態によれば、式(1)のメタネーション反応の発熱の一部を、式(2)の逆シフト反応による吸熱反応で利用し、一種の熱相殺作用を発揮させて、急激な触媒層の温度上昇を緩和することができる。
【0024】
また一つの反応場の反応器11内において、メタネーション触媒20と吸熱反応による逆シフト触媒21とを混合させることによって、メタネーション反応で発生した発熱の一部を、逆シフト反応による吸熱反応で利用し、一種の熱相殺作用を発揮させることができる。
【0025】
メタネーション反応装置の概略図の一例を、図2に示すが本発明はこれに限定されるものではない。図2に示すように、本実施形態のメタネーション反応装置10Aは、二酸化炭素(CO2)、水素(H2)、パージ用窒素(N2)からなる原料ガスG1を導入するガス導入配管12Aと、メタネーション触媒20と逆シフト触媒21とを所定割合で充填した反応器11と、反応器11の導入前に原料ガスG1を予熱する予熱器31と、反応器11内を加熱するヒータ32と、ガスメーター33とから構成されている。また、各所に圧力計Pを設置している(すべては図示せず)。なお、反応器11内には、内部の温度を計測する反応管内温度計(図示せず)が設けられている。
【0026】
ここで、本発明でメタネーション触媒とは、上記式(1)のような、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)とを、触媒反応によりメタン(CH4)と水(H2O)とに変換する触媒をいう。メタネーション触媒は、例えばPt、Ru、Ni、Pdなど少なくとも一種の触媒活性成分を、例えばアルミナなどの担体に担持させたものを例示することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
また、本発明で逆シフト触媒とは、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)とを、触媒反応により一酸化炭素(CO)と水(H2O)とに変換する触媒をいう。逆シフト触媒は、例えばMn、Pdなど少なくとも一種の触媒活性成分を例えばアルミナなどの担体に担持させたものや、例えばFe、Crの酸化物からなるものを例示することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
また、図1(B)に示すように、メタネーション触媒20と逆シフト触媒21とを混合する場合において、入口側から所定間隔設けたガス進行方向と直交する方向の領域において、逆シフト触媒21のみの充填層とした吸熱領域を設け、さらに発熱を抑制するようにしてもよい。なお、逆シフト触媒21のみの充填層の高さ方向の割合(厚さ)は、熱相殺度合いに応じて適宜変更しても良い。このように、逆シフト触媒21のみの充填層とすることで、熱相殺効果がさらに向上することも期待できる。
【0029】
また、図1(C)に示すように、メタネーション触媒20の触媒活性成分20aと逆シフト触媒21の触媒活性成分21aとを所定の割合で共通担体23に担持した混合触媒を充填させるようにしてもよい。
このように、メタネーション触媒と逆シフト触媒の触媒活性成分20a、21aを共通担体23に担持させることで、触媒の充填効率が向上する。共通担体23に担持する逆シフト触媒21の触媒活性成分21aとメタネーション触媒20の触媒活性成分20aとの配合比率は各々の触媒を個別に混合する場合と同じ90:10~40:60から計算した配合比とするのが好ましい。
【0030】
以上述べたように、本発明によれば、メタネーション反応器における温度制御において、メタネーション触媒20と逆シフト触媒21とを所定割合に充填してなる反応器11を設けることで、原料ガスG1のメタネーション反応における急激な発熱を緩和することができる。
【0031】
これにより、メタネーション装置において、従来のような冷却機能を削減または簡略化することができ、装置構成が簡便となり、コストダウンを図ることができる。
【0032】
[第2実施形態]
図3図3(A)~(D))は、本発明に係る第2実施形態のメタネーション反応器の概略図である。
【0033】
図3(A)に示すように、第2の実施形態のメタネーション反応器は、反応器11をガス導入側からガス排出側にかけて第1反応領域11Aと第2反応領域11Bとに分割し、第1反応領域11Aに、メタネーション触媒20と逆シフト触媒21とを所定の割合で混合した混合触媒22を充填させると共に、第2反応領域11Bにメタネーション触媒20のみを充填してなる。
【0034】
本実施形態によれば、反応器11の第1反応領域11Aに導入された二酸化炭素は、メタネーション触媒20上で上記式(1)のメタネーション反応により、発熱(+165.0kJ/mol)する。
また、隣接する逆シフト触媒21上では、メタネーション触媒20での発熱の一部を吸熱(-41.2kJ/mol)し、上記式(2)の二酸化炭素から一酸化炭素への逆シフト反応が進行する。
【0035】
このように、式(1)のメタネーション反応による発熱が、式(2)の逆シフト反応の吸熱と熱相殺またはそれに近い状態となれば、反応器11の入口付近の触媒層の、例えば600℃またはそれ以上となる急激な温度上昇が緩和されることとなる。
【0036】
第1反応領域11Aにおいて、充分にメタネーション反応が進行しない場合、第1反応領域出口ガス中の未反応二酸化炭素は、第2反応領域11Bを設けることで、メタネーション触媒20により、上記式(1)のように、メタン(CH4)と水(H2O)とに変換される。
また、逆シフト反応により生成された一酸化炭素(CO)は、第2反応領域11Bのメタネーション触媒20により、下記式(3)のようにメタン(CH4)と水(H2O)とに変換されるため、導入された原料ガスG1中の二酸化炭素はほぼメタンに変換される。
【0037】
[化3]
CO+3H2→CH4+H2O…(3)+206.2kJ/mol
【0038】
この反応式(2)~(3)と合算すると、生成した一酸化炭素(CO)は相殺され、トータルの反応は結果として式(1)と変わりがないこととなる。
【0039】
このように、反応式(1)と、反応式(2)~(3)の合算を比べると、トータルの反応における発熱量に変わりはないものの、第1反応領域11Aにおける式(1)~(2)の反応が熱相殺またはそれに近い状態となれば、反応器11の入口付近の触媒層の、例えば600℃またはそれ以上となる急激な温度上昇が緩和されることとなる。
【0040】
以上より、本実施形態によれば、式(1)のメタネーション反応の発熱の一部を、式(2)の逆シフト反応による吸熱反応で利用し、一種の熱相殺作用を発揮させて、急激な触媒層温度の上昇を緩和するようにしている。
【0041】
ここで第1反応領域11Aと第2反応領域11Bとの容積割合としては、95:5~30:70、好適には80:20~30:70とするのが好ましい。
【0042】
また、図3(B)に示すメタネーション反応装置は、前述の図1(B)の第1反応領域11Aの後流側に、図3(A)と同様に第2反応領域11Bを設けている。これにより、第1反応領域では上記式(1)メタネーション反応と上記式(2)逆シフト反応が起こり、第2反応領域では逆シフト反応により生成された一酸化炭素(CO)および未反応二酸化炭素(CO2)が、第2反応領域11Bのメタネーション触媒20により、上記式(1)、(3)のようにメタン(CH4)と水(H2O)とに変換され、原料ガスG1中の二酸化炭素はほぼメタンに変換される。
【0043】
また、図3(C)に示すメタネーション反応装置は、前述の図1(C)の第1反応領域11Aの後流側に、図3(A)と同様に第2反応領域11Bを設けている。これにより、第1反応領域では上記式(1)メタネーション反応と上記式(2)逆シフト反応が起こり、第2反応領域では逆シフト反応により生成された一酸化炭素(CO)および未反応二酸化炭素(CO2)が、第2反応領域11Bのメタネーション触媒20により、上記式(1)(3)のようにメタン(CH4)と水(H2O)とに変換され、原料ガスG1中の二酸化炭素はほぼメタンに変換される。
【0044】
本実施形態のメタネーション反応装置の一例を図4に示す。図4に示すように、本実施形態のメタネーション反応装置10Bの構成は、図2に示すメタネーション反応装置10Aの構成と同様であるので詳細は省略する。本実施形態のメタネーション反応装置10Bは、反応器11内に第1反応領域11Aと第2反応領域11Bを設けている。なお、反応器11としては、上述した図3(A)~図3(C)を設置している。
【0045】
メタネーション反応方法は、反応器11のガス導入側からガス排出側にかけて第1反応領域11Aと第2反応領域11Bとに分割し、第1反応領域11Aに、メタネーション触媒20と逆シフト触媒21とを所定の割合で混合した混合触媒22を充填し、導入した二酸化炭素をメタネーション触媒20によりメタンに変換させると共に、メタネーション反応の発熱の一部を吸熱して反応する逆シフト反応により、導入した二酸化炭素を一酸化炭素に変換させる第1反応工程と、第2反応領域に、メタネーション触媒20のみを充填して、未反応の二酸化炭素をメタンに変換させると共に、逆シフト反応で生成した一酸化炭素をメタンに変換させる第2の反応工程を有する。
【0046】
このメタネーション反応方法により、第1反応領域11Aではメタネーション触媒20により、原料ガスG1中の二酸化炭素をメタンに変換すると共に、逆シフト触媒21により二酸化炭素を一酸化炭素に変換し、第2反応領域11Bではメタネーション触媒20により、一酸化炭素および未反応の二酸化炭素がメタン(CH4)に変換され、原料ガスG1中の二酸化炭素はほぼメタンに変換することができる。
以上本発明によれば、メタネーション触媒20を用いた反応器11に導入する二酸化炭素と水素とのメタネーション反応の際に、簡易な方法によって触媒層温度の急激な上昇を緩和できる。
【0047】
(試験例)
以下、本発明の効果を示す試験例について説明する。
本試験例では、図3(D)に示すように、直径20mmの反応器11内を2分割して、第1反応領域11Aと第2反応領域11Bとに2分割し、第1反応領域11Aに混合触媒15mlを充填し、第2反応領域11Bにメタネーション触媒15mlを充填した。
混合触媒層の混合割合は、逆シフト触媒70容量%、メタネーション触媒30容量%とした(なお、図では混合割合の図示を簡略化している)。
【0048】
これに対して、反応容器内を第1反応領域11Aと第2反応領域11Bとに分割せず、触媒層30mlのメタネーション触媒20のみを充填したものを対照とした。どちらの場合も触媒は所定温度で還元して使用している。
【0049】
予熱器31での予熱温度を200℃、反応器11内の反応温度を300℃とし、反応圧力を0.1MPaGと0MPaGの条件で、水素2NL/min、次いで二酸化炭素0.5NL/minを供給して二酸化炭素のメタネーション試験を行った。このときの触媒層温度分布を図5図6に示す(なお、図5図2(D)における触媒層温度分布を、図6はメタネーション触媒20のみにおける温度分布である)。
また、反応圧力0.1MPaG時が図中プロットA、0MPaG時が図中プロットBである。なお、図中プロットCは二酸化炭素の導入がない状態である。図5図6における横軸の触媒高さは、試験装置のガス入口からガス進行方向(本例では下方)の距離である。
なお、反応器11内の反応圧力としては、0MPaG(大気圧)から1MPaG未満の範囲とするのが好ましい。
【0050】
試験に用いたメタネーション触媒は、伊藤忠セラテック社製の「エアロナイト(登録商標) agAl-NiPd」(商品名)である。
また、逆シフト触媒は、伊藤忠セラテック社製の「エアロナイト(登録商標) agAl-MnPd」(商品名)である。
【0051】
図5図6とを比較すると、反応容器11内を第1反応領域11Aと第2反応領域11Bとに分割しない場合には、入口付近において、急激な温度上昇がみられた。
これに対して、反応容器11内を第1反応領域11Aと第2反応領域11Bとに分割した場合は、入口付近での急激な温度上昇が緩和された。
また、図5のプロットAでは、入口付近の熱上昇は本発明では500℃未満(485℃)であったが、図6に示す従来のプロットAでは500℃を超えていた(515℃)。
【0052】
以上説明したように、本発明によれば、一つの反応場において、メタネーション触媒と逆シフト触媒とを混合させることによって、メタネーション反応の発熱の一部を、逆シフト反応による吸熱反応で利用し、一種の熱相殺作用を発揮させることができる。
【0053】
よって、複雑な工程を介さずに、また複雑な反応器構造を有さずに、本反応の急激な温度上昇を緩和することができるため、メタネーション装置のコストダウンを図ることができる。また高温になりにくいということから、触媒の長寿命化や反応器のコストダウン(耐熱鋼等の特殊材ではなく、一般的なステンレス鋼を選定)を図ることができる。
【0054】
さらに、従来のような冷却機能を削除または簡略化できたり、触媒反応に寄与しない例えばアルミナボールなどを充填したりする必要がなくなり、簡便な構成であっても、メタネーション反応器の急激な触媒層温度上昇を緩和することができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜設計変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、本実施形態に示す形態以外のメタネーション反応装置にも利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10A、10B メタネーション反応装置
11 反応器
11A 第1反応領域
11B 第2反応領域
12A ガス導入配管
12B ガス排出配管
20 メタネーション触媒
20a メタネーション触媒活性成分
21 逆シフト触媒
21a 逆シフト触媒活性成分
22 混合触媒
23 共通担体
G1 原料ガス
G2 排出ガス

図1
図2
図3
図4
図5
図6