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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103344
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】微粒子センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/06 20240101AFI20240725BHJP
   G01N 15/00 20240101ALI20240725BHJP
   G01N 15/075 20240101ALI20240725BHJP
【FI】
G01N15/06 D
G01N15/00 C
G01N15/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007623
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洸稀
(72)【発明者】
【氏名】山岸 一郎
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構成で、粒径が2種類以上の粒子の濃度を一度に計測可能な装置を提供する。
【解決手段】粒子が含まれた空気を取り込む取込口と、取込口に入口が接続された取込流路と、取込流路の出口に設けられた、第1粒径以下の粒子を含む第1の空気と、第1粒径より大きい粒子を含む第2の空気とに分流する分粒空間を備える。分粒空間には、第1分流路および第2分流路の入口が配置される。発光部は、第1分流路および第2分流路をそれぞれ流れてきた第1の空気と第2の空気に光を照射する。第1受光部および第2受光部は、第1の空気と第2の空気にそれぞれ含まれる粒子により散乱した光をそれぞれ受光する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が含まれた空気を取り込む取込口と、
前記取込口に入口が接続され、前記取込口から取り込まれた空気を取り込んで流す取込流路と、
前記取込流路の出口に設けられ、当該取込流路を流れてきた空気を、所定の第1粒径以下の粒子を含む第1の空気と、前記第1粒径より大きい粒子を含む第2の空気とに分流する分粒構造部と、
前記分粒構造部にそれぞれ入口が配置され、前記第1の空気を流す第1分流路および前記第2の空気を流す第2分流路と、
前記第1分流路および第2分流路をそれぞれ流れてきた前記第1の空気と前記第2の空気に光を照射する1つの発光部と、
前記第1の空気と第2の空気にそれぞれ含まれる粒子により散乱した光をそれぞれ受光する第1受光部および第2受光部とを有し、
前記第1分流路および第2分流路の出口は隣接しており、前記発光部から照射された光の光路が横切る照射空間に、それぞれ前記第1の空気および前記第2の空気が流れ込むように配置され、
前記発光部は、照射した光は、前記照射空間内の前記第1分流路の出口の前と、前記第2分流路の出口の前をこの順に通過するように配置され、
前記第1受光部は、前記第1分流路の出口に受光面を向けて配置され、前記第2受光部は、前記第2分流路の出口に受光面を向けて配置されていることを特徴とする微粒子センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の微粒子センサであって、前記分粒構造部は、前記取込流路の出口に配置された分粒空間を有し、
前記第2分流路の入り口は、前記取込流路の出口から流れ出た空気が直進して流れ込むように、前記分粒空間を挟んで、前記取込流路の出口と向い合わせに配置され、
前記第1分流路の入り口は、前記取込流路の出口から流れ出た空気が屈曲して流れ込むように、中心軸が、前記取込流路の出口の中心軸と交差する向きで、前記分粒空間に接続されていることを特徴とする微粒子センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の微粒子センサであって、前記取込流路の出口において、流れる空気の流速を高めるために、流路径が狭められていることを特徴とする微粒子センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の微粒子センサであって、前記第2分流路の途中には、当該第2分流路を流れてきた第2の空気から、前記第1粒径より大きい所定の第2の粒径より大きい粒子を含む第3の空気を分流して、第3分流路に流入させる第2分粒構造部が設けられていることを特徴とする微粒子センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の微粒子センサであって、前記第2分流路は、所定の曲率で湾曲しており、
前記第2分粒構造部は、湾曲した前記第2分流路の外周側の側面に設けられた開口であり、
前記第3分流路の入り口は、前記開口に接続されていることを特徴とする微粒子センサ。
【請求項6】
請求項1に記載の微粒子センサであって、前記第2分流路は、前記第2分粒構造部の手前で、当該前記第2分流路を流れる前記第2の空気の流速を減速させるために、流路径が広げられていることを特徴とする微粒子センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の微粒子の濃度を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の粒子状物質(particulate matter)の量を測定する装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、空気にレーザー光を照射して散乱光により粒径2.5μm以下の超微粒子(PM2.5)を検出する装置が開示されている。特許文献1の検出装置は、空気中の粒径2.5μm以下の水玉を、PM2.5であると誤検出するのを防ぐため、予め空気を電気加熱手段により加熱する。
【0004】
一方、特許文献2には、重力沈降により、粒径10μm程度以下の微小粒子と、30μm程度の花粉粒子と、50μm程度以上の粗大粒子とを分別して、30μm程度の花粉粒子を計数する計測方法が提案されている。具体的には、ファンにより大気を第1流路管に通して計測装置内に流入させる際に、大気の流入速度を、粒径50μm程度以上の粒子の沈降速度より小さくすることにより、粒径50μm程度以上の粗大粒子を第1流路管の底部に蓄積させる。さらに、第1流路管で分別した粒子群を計測装置の第2流路管の排気口から大気に排出する排出速度を、粒径30μm未満の花粉粒子の沈降速度より大きくすることにより、粒径30μm程度未満の微小粒子を外気に排出する。これにより、計測装置は、装置内に残った30μm程度の花粉粒子を計数することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2019-523890号公報
【特許文献2】特表2001-183284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置は、PM2.5のみを計測する装置であり、特許文献2の装置は、PM30のみを検出する装置である。そのため、同時に、複数種類の粒径の粒子状物質の濃度をそれぞれ検出することはできない。
【0007】
従来の装置を2台以上配置することにより、複数種類の粒径の粒子状物質の濃度をそれぞれ検出することは可能になるが、2台分以上の設置スペースが必要になるため。
【0008】
本発明の目的は、粒径が2種類以上の粒子の濃度を1つのセンサ装置で計測可能な微粒子センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の微粒子センサは、粒子が含まれた空気を取り込む取込口と、取込口に入口が接続され、取込口から取り込まれた空気を取り込んで流す取込流路と、取込流路の出口に設けられ、当該取込流路を流れてきた空気を、所定の第1粒径以下の粒子を含む第1の空気と、第1粒径より大きい粒子を含む第2の空気とに分流する分粒構造部と、分粒構造部にそれぞれ入口が配置され、第1の空気を流す第1分流路および第2の空気を流す第2分流路と、第1分流路および第2分流路をそれぞれ流れてきた第1の空気と第2の空気に光を照射する1つの発光部と、第1の空気と第2の空気にそれぞれ含まれる粒子により散乱した光をそれぞれ受光する第1受光部および第2受光部とを有する。第1分流路および第2分流路の出口は隣接しており、発光部から照射された光の光路が横切る照射空間に、それぞれ第1の空気および第2の空気が流れ込むように配置されている。発光部は、照射した光は、照射空間内の第1分流路の出口の前と、第2分流路の出口の前をこの順に通過するように配置されている。第1受光部は、第1分流路の出口に受光面を向けて配置され、第2受光部は、第2分流路の出口に受光面を向けて配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の微粒子センサは、粒径が2種類以上の粒子の濃度を1つの微粒子センサで計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)本発明の一実施形態の微粒子センサ1の正面図、(b)その上面図。
図2】(a)実施形態の微粒子センサ1の回路構成を示すブロック図、(b)車両10のダッシュボードに取り付けられた微粒子センサ1を示す図、(c)微粒子センサ1の測定結果が表示されるエアコンパネル4を示す図。
図3】実施形態の微粒子センサ1の各部品の斜視図。
図4】実施形態の微粒子センサ1のA-A断面図。
図5図4の拡大図。
図6】実施形態の微粒子センサ1のB-B断面図。
図7】(a)実施形態の微粒子センサ1のC-C断面図、(b)実施形態の微粒子センサ1のA-A断面図。
図8】(a)実施形態の微粒子センサ1の光路を示す図、(b)粒子による光の散乱方向を示す図。
図9】(a)実施形態の微粒子センサ1の基板23の位置の断面図、(b)実施形態の微粒子センサ1のD-D断面図。
図10】(a)実施形態の微粒子センサ1の発光部の構成を示すブロック図、(b)実施形態の微粒子センサ1の受光部の構成を示すブロック図、(c)実施形態の微粒子センサ1のA-A断面図。
図11】(a)および(b)実施形態の微粒子センサ1の受光素子111aと受光素子112aの出力電流の時間変化を示すグラフ、(c)および(d)は、受光素子111aと受光素子112aの出力電流の時間積分を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について図面を用いて以下に説明する。
【0013】
<<<実施形態1>>>
実施形態1の微粒子センサ1の構造について説明する。
【0014】
図1(a)および(b)は、微粒子センサ1の正面図および上面図である。図2(a)は、微粒子センサ1の回路構成を示すブロック図であり、図2(b)は、車両10のダッシュボードに取り付けられた微粒子センサ1を示し、図2(c)は、微粒子センサ1の測定結果が表示されるエアコンパネル4を示す。
【0015】
図1(a)のように、微粒子センサ1は、上面に空気を取り込む取込口101を、下面に排出口107を備えている。微粒子センサ1は、図2(b)に示すように、車両10のダッシュボードの運転手席の運転手の膝付近に上面の取込口101が露出するように取り付けられる。排出口107は、車両の空調システム(HVAC:Heating, Ventilation, and Air Conditioning)に接続され、吸引される。これにより、車室内の空気は、微粒子センサ1を通ってHVACへと運ばれる。
【0016】
この時に、微粒子センサ1は、微粒子センサ1内を通る空気に含まれる粒子状物質を粒径により3種類に分粒し、そのうち2種類の粒径範囲の粒子の濃度を測定する。
【0017】
また、ここでは、微粒子センサは、温湿度を測定する機能も備えている。微粒子濃度も温湿度も車室内の空気の状態であるためHVACによる空気の流れを活用して同一センサ内で測定する。
【0018】
図2(a)に示すように、測定結果は、微粒子センサ1内でデジタル信号にデータ変換され、車両10のLIN(Local Interconnect Network)2とエアコンECU3を経由して、エアコンパネル4へ送られ、エアコンパネル4内に表示される。
【0019】
<微粒子センサ1の構成>
図3に、微粒子センサ1の部品図を示す。図4および図5は、微粒子センサ1のA-A断面図およびその拡大図である。図6および図7は、微粒子センサ1のB-B断面図およびC-C断面図である。なお、図4から図7において、ハッチングを付した部分と、グレーで着色した部分は、断面を表す。
【0020】
図3等に示すように、微粒子センサ1は、内部に流路102等が形成されたケース21と、取込口101が形成整されたフロントカバー25と、レンズ110b、111b、112bと、発光素子110a、受光素子111a,112a、増幅回路113およびマイコン(CPU)114等が搭載された回路基板23と、カバー24とを組み立てた構造である。
【0021】
微粒子センサ1のフロントカバー25には、図3図4等に示すように、粒子状物質が含まれた空気を取り込む取込口101が形成されている。
【0022】
ケース21内には、取込流路102と、分粒空間103と、第1分流路104と、第2分流路105と、第3分流路106と、発光部110と、受光部111,112と、排出口107が形成されている。
【0023】
取込流路102の入口102aは、取込口101に接続されている。取込流路102の出口は、分粒空間103に接続されている。取込流路102は、取込口101から取り込まれた空気を取り込んで分粒空間103まで流す流路である。
【0024】
図4および図5に示すように、第2分流路105の入口105aは、分粒空間103を挟んで、取込流路102の出口102bと向い合わせに配置されている。一方、第1分流路104の入口104aは、その中心軸が、取込流路102の出口102bの中心軸と交差する向きで、分粒空間103に接続されている。これにより、取込流路102の出口102bから分粒空間103内へ流れ出た空気の流れのうち、直進する流れは、対向配置された第2分流路105の入口105aに流れ込む。一方、取込流路102の出口102bから分粒空間103内へ流れ出た空気の流れの一部は、第1分流路104が入口104aから吸引する風力F1により引っ張られて屈曲し、入口104aから第1分流路104内に流れ込む。
【0025】
このとき、予め定めた第1粒径(ここでは2.5μm)より大きい粒子は、慣性力により直進して第2分流路105の入口105aに流れ込み、第1粒径以下の粒子は、第1分流路104に吸引されて屈曲する空気の流れと共に第1分流路104の入口104aに流れ込む。これにより、第1粒径以下の粒子(PM2.5)を含む第1の空気と、第1粒径より大きい粒子を含む第2の空気とに分流することができる。すなわち、分粒空間103と、取込流路102の出口102bと、第1分流路104の入口104aと、第2分流路105の入口105aの配置は、分粒構造を構成している。
【0026】
第1分流路104および第2分流路105は隣接し、それぞれ所定の曲率で円弧を描くように湾曲している。
【0027】
第2分流路105の途中には、湾曲した第2分流路の外周側の側面に開口105cが設けられ、第3分流路106の入口106aが接続されている。この構造は、第2分流路105を流れてきた第2の空気から、所定の第2の粒径(30μm)より大きい粒子を含む第3の空気を分流して、第3分流路106に流入させる第2分粒構造部を形成している。また、第2分流路105は、図7に示すように、開口105cの手前で、第2分流路105を流れる第2の空気の流速を減速させるために、流路径fが、第2分流路105の入口105a近くの流路径eよりも広げられている。
【0028】
これにより、第2分流路105を流れてきた第2の空気に含まれる所定の第2の粒径(30μm)以下の粒子は、第2の空気とともに減速され、湾曲した第2分流路105に沿って湾曲するが、第2の粒径(30μm)より大きい粒子は、慣性力によって第2分流路105を曲がり切れず、直進し、開口105cから第3分流路106の入口106aに入る。これにより、第2分流路105を流れる第2の空気に含まれる粒子は、第2の粒径(30μm)以下であって、第1の粒径(2.5μm)より大きい粒子(PM30)になる。
【0029】
第1分流路104の出口104bおよび第2分流路105の出口105bは隣接しており、いずれも照射空間108に接続されている。照射空間108は、発光部110から照射された光の光路が横切る空間である。ここで発光部110は、一つであり、照射した光が照射空間108内の第1分流路104の出口104bの前と、第2分流路105の出口105bの前をこの順に通過するように配置されている。よって、第1分流路104および第2分流路105を流れてきた第1の空気および第2の空気は、照射空間に流れ込むが、互いが混合しあう前に、発光部110からの光が照射される。
【0030】
第1の空気には、第1粒径以下の粒子(PM2.5)が含まれ、第2の空気には第1粒径より大きく第2粒径以下の粒子(PM30)が含まれているため、発光部110から照射された光は、粒子によりそれぞれ散乱される。
【0031】
第1受光部11は、第1分流路の出口に受光面を向けて配置され、第2受光部は、第2分流路の出口に受光面を向けて配置されている。これにより、第1の空気の第1粒径以下の粒子(PM2.5)により散乱された光は、第1受光部111の受光面に到達し、第2の空気の第1粒径より大きく第2粒径以下の粒子(PM30)により散乱された光は、第2受光部112の受光面に到達する。
【0032】
よって、第1受光部111は、粒子(PM2.5)により散乱された光を受光し、第2受光部112は、粒子(PM30)により散乱された光を受光する。第1受光部111と第2受光部112の出力を、基板23上の増幅回路113で増幅したのち、マイコン(CPU)114で処理することにより、粒子(PM2.5)の濃度と、粒子(PM30)の濃度を検出し、エアコンパネル4に表示させることができる。
【0033】
このように、本実施形態の微粒子センサ1は、1つの発光部110と、2つの受光部111,112を用いた簡素な構成でありながら、2種類の粒径範囲に粒子を分流し、それぞれの濃度を同時に測定することができる。
【0034】
<詳細な構造と機能>
本実施形態の微粒子センサ1の構成と、各部の機能について、さらに詳しく説明する。
【0035】
図6に断面図を示したように、取込流路102は、その出口102bにおいて、流れる空気の流速を高めるために、出口付近の粒子加速部102cの流路径が狭められている。
【0036】
排出口107は、HVACから一定の流速で吸引されている。そのため、取込口101から車室内の空気が吸入されて流入する取込流路102において粒子加速部102cの流路径が狭められていることにより、空気の流れは加速され、それと同時に微粒子も加速されて、一つ目の分粒構造部である分粒空間103に流れ込む。分粒空間103において、PM2.5以下の粒子は、主流の空気とともに曲がって第1分流路分粒空間に流入する。PM2.5より大きい粒子は、慣性力によって曲がり切れずに直進し、第2分流路105に流入する。
【0037】
第2分流路105に流入した粒子は、2つ目の分粒構造部の流路径が流路径fに広がった部分で減速され、PM30以下の粒子は、主流の空気の流れとともに湾曲した第2分流路105を曲がるが、PM30より大きい粒子は、慣性力によって第2分流路105を曲がり切れずに直進し、開口105cから第3分流路106に入る。
【0038】
図8(a)に示したように、第1分流路104の出口104bから流出したPM2.5の粒子は、検出空間108aにおいて、発光部110からの光を散乱し、その散乱光が受光部111へと入る。第2分流路105の出口105bから流出したPM30の粒子は、検出空間108bにおいて、発光部110からの光を散乱し、その散乱光が受光部112へと入る。
【0039】
図9図10に示したように、発光部110は、基板23上に搭載された発光素子110aと、レンズ110bとを含む。発光素子110aから発せられた光は、レンズ110bで集光されて検出空間108a,108bに照射される。
【0040】
受光部111,112は、基板23上に搭載された受光素子111a,112aと、レンズ111b,112bとを含む。検出空間108aでPM2.5により散乱された光は、レンズ111bで集光されて受光素子111aにより散乱光強度に応じた電気信号に変換される。同様に、検出空間108bでPM30により散乱された光は、レンズ112bで集光されて受光素子112aにより散乱光強度に応じた電気信号に変換される。
【0041】
これらの電気信号(電流)を、増幅回路113により増幅し、マイコン(CPU)114により、測定時間に対してプロットする(図11(a)、(b))。マイコン(CPU)114は、プロットした電流値を積算して平均化し、得られた平均の電流値(図11(c)、(d))を、予め求めておいた粒子の濃度ごと平均の電流値と比較することにより、粒子の濃度を算出する。
【0042】
算出されたPM2.5の濃度およびPM30の濃度は、エアコンパネル4に表示される。
【0043】
なお、本実施形態では、PM30の検出空間108bを、PM2.5の検出空間108aよりも発光素子110aから遠くに配置している。これは、図11(a)~(d)に示した通り、PM30の方が、散乱光強度が大きいため、この位置関係でも両方の微粒子の散乱光を検出可能だからである。
【0044】
<発光素子110aと受光素子111a、112aの位置関係>
実施形態の微粒子センサ1は、粒子からの散乱光を集めてその濃度を検出するセンサである。よって、ノイズの影響を少なくするために、より強い散乱光を集めて受光素子111a、112aに受光させることが望ましい。散乱光強度は、光の波長と粒子の大きさ(粒径)、散乱角度、微粒子の屈折率に依存するが、PM2.5、PM30の場合、図8(b)に示したように、いずれも散乱角度0度の方向が最も散乱光強度が大きくなり、散乱角度が大きくなるほど散乱光は減少していく傾向がある。一方で、発光素子110aの光が、微粒子センサ1内で反射して、反射光(迷光)が受光素子111a,112aに入り、ノイズの原因となることも考えられる。そのため、本実施形態では、発光素子110aと受光素子111a、112aの光軸がなす角度θを60度に設定している(図8(a))。
【0045】
<分粒原理>
ここで、分粒空間103において、分粒を実現できる原理について詳ししく説明する。
【0046】
取込流路102の狭められた粒子加速部102cにおいて加速された各粒径の粒子はいずれも、出口10bから分粒空間103に初速度vで飛び出す。
【0047】
粒子の分粒空間103の通過時間をtとすると、粒子が分粒空間103を通過する間、各粒子には、第1分流路104が空気を吸引するため、風力Fがかかる。したがって分粒空間103を通過するまでに風力Fによって、粒子は第1分流路104の入口104aに距離(F/2m) だけ近づく(ただし、tは時間、mは、粒子の質量である)。
【0048】
tが同じ値のとき(ある一定時間内において)、この距離は、(F/2m)=(定数)×(1/r)と変形できる(m=d×(4/3)πr、F(風圧)×(面積)=(1/2)ρv×πr、ただし、dは粒子密度、rは粒子の半径、vは風速、ρは空気の密度である)。
【0049】
したがってこの距離(F/2m)は、小さい粒子(r、mが小さい)の方が、大きい粒子(r、mが大きい)よりも長い。
【0050】
粒子の第1分流路104の入口104aへの移動距離(F/2m)が、第2分流路105の入口105aの流路の高さdと、取込流路102の出口102bの流路の高さdとの差d-dよりも大きい場合、粒子は、第2分流路105の入口105aには到達せず、第1分流路104の入口104aに到達する。
【0051】
逆に、粒子の第1分流路104の入口104aへの移動距離(F/2m)1が、流路幅の差d-dよりも小さい場合、第2分流路105の入口105aに到達する。
【0052】
また、粒子が分粒空間103を通過する時間tが、緩和時間tよりも短い、もしくは同じとき、粒子が分粒空間103を通過する時間tは、t=L/vで表される。粒子が、十分に加速されて取込流路102の出口102bから初速度v(各粒子で等しい)で飛び出すとき、通過時間tは、各粒子で等しい。したがって小粒子ほど、流路1側に進む。
【0053】
一方、分粒空間103の通過時間tが、緩和時間tよりも長い時、緩和時間t1は、t=mc/(3πμr)=(定数)×Crである。ただし、Cはカニンガムの補正係数であり1程度であるため、t=(定数)×Cr≒(定数)×rである。
【0054】
したがって緩和時間は、大きな粒子ほど長く、大きな粒子ほど時間経過による減速具合は小さい。
【0055】
逆に言うと、小さい粒子ほど短い時間で減速され、分粒空間103の通過に時間がかかる。
【0056】
上記のことから、小さい粒子ほど、第1分流路104の入口104a側に進み、第1分流路104の入口104aに到達し、大きな粒子は、直進して第2分流路105の入口105aに到達することがわかる。
【0057】
よって、取込流路102の出口102bから分粒空間103に飛び出す流れの初速度v、分粒空間103の距離L、取込流路102の出口102bの高さdと、第2分流路105の入口105aの高さdを設計することにより、粒径2.5μm以下の粒子を第1分流路104に到達させ、それよりも大きな粒子を第2分流路105に到達させることができる。
【0058】
<粒子加速部102cの流路幅b>
取込流路102の出口102bから分粒空間103に飛び出す流れの初速度vは、粒子加速部102cの流路幅bにより調整できる。
【0059】
図6のように、取込流路102の粒子加速部102c(地点P)の流路幅bは、取込流路102の入口102a(地点Q)の流路幅aに対して、a>bである。地点Qと地点Pの流路の断面積をそれぞれS、SとするとS>Sとなる。また地点Qと地点Pの流速をそれぞれv、vとすると、地点Qと地点Pで一定時間の流量は等しいので、
×v=S×v
の関係にある。S>Sから、v>vとなる。
【0060】
したがって地点Pは地点Qよりも流速が速く、微粒子が加速される。
【0061】
ここでは、微粒子の分粒のために必要な初速度vまで流速を加速するように、流路幅bを設計している。
【0062】
<第2分粒構造部の流路径f>
一方、図7に示すように、第2分流路105の第2分粒構造部において、開口105cの手前(地点R)で、第2分流路105を流れる第2の空気の流速を減速させるために、流路径fが、第2分流路105の入口105a近く(地点U)の流路径eよりも広げられていることについてさらに説明する。
【0063】
地点Uと地点Rの断面積をそれぞれS、SとするとS>Sとなる。また地点Uと地点Rの流速をそれぞれv、vとすると、地点Uと地点Rで一定時間の流量は等しいので、
×v=S×v
の関係にある。S>Sから、v>vとなる。
【0064】
したがって、地点Rは、地点Uよりも流速が遅く、微粒子が減速される。
【0065】
ここでは、PM30よりも大きい粒子を直進させて、開口105cから第3分流路106に到達させて分粒するために必要な速度まで、地点Rにおいて流速を減速させることができる流路径fを広げている。
【0066】
<温湿度センサ>
図9に示すように、本実施形態では、温湿度センサ231は、基板23の下端に搭載されている。これにより、温湿度センサ231は、第1分流路104の出口104b、第2分流路105の出口105bおよび第3分流路106の出口106bから流れ出た空気がすべて合流する排出口107の手前の空間に配置され、微粒子センサ1内に吸入した空気の温度と湿度を測定する。
【0067】
<微粒子センサ1の組み立て手順>
組み立て方法は、まず、図3の示したケース21に、レンズ110b、111b、112bを嵌合する。
【0068】
つぎに、カバー24に、基板23を嵌合する。
【0069】
ケース21に、カバー24を嵌合した後、ケース21の上部に、フロントカバー25を嵌合する。
【0070】
以上により、微粒子センサ1を完成させることができる。
【0071】
<効果>
本実施形態の微粒子センサ1は、PM2.5とPM30とを同時に測定することが可能である。PM2.5とPM30は、人への影響や、除去するために使用する集塵フィルタの種類が異なる。そのため、微粒子センサ1により、PM2.5とPM30の濃度を同時に知ることで、最適な空調制御を行うことができる。例えば、PM2.5用の高性能集塵フィルタを使用する、もしくは現在のフィルタのままで空調を制御するなど、対応方法を適切に選択することができる。また、人々も、使用するマスクの種類を選択する等、最適な予防方法を選択し、実践することができる。
【0072】
具体的には、PM2.5はすべての人に有害であるが、特に肺機能の弱い人に特に有害である。これに対してPM30もすべての人に有害であるが、特に花粉症の人にとって有害である。PM2.5とPM30の濃度にはっきりとした相関関係はないため、一方のみを測定しても、他方を推測することはできない。したがって、本実施形態の微粒子センサ1のように、同時に両方の濃度を測定することができることにより、多くの人にとって有用な情報を提供できる。
【0073】
また、PM2.5用の集塵フィルタは性能が高く、本来であれば常時使用したいが、圧力損失が大きく、機械や環境への負荷が大きい。そのため、空気中のPM2.5とPM30を両方測定し、各微粒子の濃度に応じて、PM2.5の濃度が高い場合は、その濃度に応じて集塵フィルタ(HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルタ)中性能フィルタを使い分け、PM2.5の濃度は高くないが、PM30の濃度が高い場合には通常の集塵フィルタ(粗塵用フィルタ)を使う等の、適切なフィルタの選択が可能になる。よって、その時々に応じた最適な空調制御を実現できる。
【0074】
また、本実施形態の微粒子センサ1は、発光素子1個、受光素子2個により測定が可能なコンパクトな装置であるため、設置スペースが節約できる。
【0075】
また、本実施形態の微粒子センサ1は、2つの分粒構造部で、粒径2.5μ以下の粒子(PM2.5)、粒径2.5μmより大きく、30μm以下の粒子(PM30)、粒径30μmより大きい粒子の3種類に分類することができる。
【0076】
しかも、分粒構造部は、いずれも大きな粒子が慣性力により直進する作用を利用した簡単な構成であるため、複雑な構造体を用いる必要がなく、簡素な微粒子センサ1でありながら、複数種類の分粒を一つのセンサ1内で一度に実現することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、PM2.5とPM30を測定したが、分粒構造部の寸法(a、b、e、f)等を変更することで、異なる粒径範囲の微粒子のセンシングが可能である。例えば、PM2.5と同様に、危険視されているPM10等の濃度を測定することができる。
【0078】
受光素子の波長や数を増やすことにより、センシングできる空気中の微粒子の種類を増やすことができる。
【0079】
<微粒子センサ1が適用される製品>
上記実施形態では、車両内に微粒子センサ1を搭載した例を示したが、車内だけではなく、微粒子の存在が脅威になる場所で稼働する製品に搭載することができる。例えば、エアコン、空気清浄機、通気口等である。
【符号の説明】
【0080】
1 微粒子センサ
4 エアコンパネル
10 車両
10b 出口
21 ケース
23 基板
24 カバー
25 フロントカバー
30 粒径
50 粒径
F1 風力
d2 差
t1 緩和時間
初速度
101 取込口
102 取込流路
102a 入口
102b 出口
102c 粒子加速部
103 分粒空間
104 第1分流路
104a 入口
104b 出口
105a 入口
105b 出口
105c 開口
106a 入口
106b 出口
107 排出口
108 照射空間
108a 検出空間
108b 検出空間
110 発光部
110a 発光素子
110b レンズ
111 受光部
111a 受光素子
111b レンズ
112 受光部
112a 受光素子
112b レンズ
113 増幅回路
231 温湿度センサ
L 距離
P 地点
Q 地点
R 地点
U 地点
a 流路幅
b 流路幅
e 流路径
f 流路径
t 通過時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11