(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103356
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
F16K31/06 305A
F16K31/06 305G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007640
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海沼 広司
(72)【発明者】
【氏名】宮本 和弘
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA12
3H106DA35
3H106DB12
3H106DC06
3H106DD02
3H106EE20
3H106FA04
(57)【要約】
【課題】電磁弁における騒音や振動の発生を抑制する。
【解決手段】電磁弁100は、コイル70aが巻回されたソレノイド70と、ソレノイド70の内側に配置される吸引子80と、ソレノイド70への通電により吸引子に吸引され、弁軸60(弁体)に連結されるプランジャ50と、ソレノイド70の内側に設けられ、プランジャ50を収容するパイプ51と、ソレノイド70の軸方向の一端に重ねて配置される第1支持部91、及びソレノイド70の軸方向の他端に重ねて配置される第2支持部92を有し、第1支持部91及び第2支持部92にパイプ51がそれぞれ嵌入される第1取付孔91a及び第2取付孔92aが形成され、第1取付孔91aはパイプ51の外周における径方向の一方側に当接するハウジング70cと、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻回されたソレノイドと、
前記ソレノイドの内側に配置される吸引子と、
弁体に連結され、前記ソレノイドへの通電により前記吸引子に吸引されるプランジャと、
前記ソレノイドの内側に設けられ、前記プランジャを収容するパイプと、
前記ソレノイドの軸方向の一端に重ねて配置される第1支持部、及び前記ソレノイドの軸方向の他端に重ねて配置される第2支持部を有し、前記第1支持部及び前記第2支持部に前記パイプがそれぞれ嵌入される第1取付孔及び第2取付孔が形成され、前記第1取付孔は前記パイプの外周における径方向の一方側に当接するハウジングと、
を有する電磁弁。
【請求項2】
前記第1取付孔の中心と前記第2取付孔の中心とが、前記パイプの径方向にずれている請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記第1取付孔及び前記第2取付孔は互いに同径である請求項1又は2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記第1支持部と前記第2支持部とを連結する板状の連結部を備え、
前記第1取付孔は、前記連結部に平行な方向の一方側で、前記パイプの外周に当接する請求項1に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記第2取付孔は、前記パイプの外周における径方向の他方側に当接する請求項1に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプサイクルに使用される差圧弁付電磁弁が開示されている(特許文献1参照)。この電磁弁では、ソレノイドへの非通電時には主弁座が開弁されており、ソレノイドに通電されると(ONの時)可動鉄心が固定鉄心に吸引されてプランジャが下降し、主弁体により主弁座を閉弁する構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁弁の制御には、省電力化等の観点からPWM(Pulse width Modulation)制御が採用される場合がある。PWM制御は、方形波の周波数を固定し電圧がHighの時間の割合(Duty比)を変えることで負荷にかかる電力を制御するもので、Duty制御とも呼ばれる。
【0005】
しかしながら、PWM制御の場合、ON時でも実際は高速でONとOFFを繰り返しながら閉弁状態を維持している。可動鉄心が固定鉄心に付くときに音が発生するため、可動鉄心が固定鉄心に付いたり離れたりすることを高速で繰り返すことが、騒音や振動の発生要因となる。
【0006】
本発明は、電磁弁における騒音や振動の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係るは、コイルが巻回されたソレノイドと、前記ソレノイドの内側に配置される吸引子と、弁体に連結され、前記ソレノイドへの通電により前記吸引子に吸引されるプランジャと、前記ソレノイドの内側に設けられ、前記プランジャを収容するパイプと、前記ソレノイドの軸方向の一端に重ねて配置される第1支持部、及び前記ソレノイドの軸方向の他端に重ねて配置される第2支持部を有し、前記第1支持部及び前記第2支持部に前記パイプがそれぞれ嵌入される第1取付孔及び第2取付孔が形成され、前記第1取付孔は前記パイプの外周における径方向の一方側に当接するハウジングと、を有する。
【0008】
この電磁弁では、ハウジングに、プランジャを収容するパイプがそれぞれ嵌入される第1取付孔及び第2取付孔が形成されている。第1取付孔はパイプの外周における径方向の一方側に当接している。つまり、パイプが径方向においてハウジングに拘束されている。これにより、ソレノイドをPWM制御した際にプランジャが吸引子に高速で付いたり離れたりしても、パイプの振動が抑制される。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る電磁弁において、前記第1取付孔及び前記第2取付孔は互いに同径とされ、かつ前記第1取付孔の中心と前記第2取付孔の中心とが、前記パイプの径方向にずれている。
【0010】
この電磁弁では、互いに同径の第1取付孔及び第2取付孔の中心同士がパイプの径方向にずれているので、パイプを第1取付孔及び第2取付孔に嵌入した際に、パイプの外周における径方向の一方側が第1取付孔に当接する。このような簡易な構成により、パイプの振動を抑制できる。
【0011】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る電磁弁において、前記第1取付孔及び前記第2取付孔が互いに同径である。
【0012】
第4の態様は、第1の態様に係る電磁弁において、前記ハウジングが、前記第1支持部と前記第2支持部とを連結する板状の連結部を備え、前記第1取付孔は、前記連結部に平行な方向の一方側で、前記パイプの外周に当接する。
【0013】
第5の態様は、第1の態様に係る電磁弁において、前記第2取付孔が、前記パイプの外周における径方向の他方側に当接する。
【0014】
これにより、パイプが径方向においてハウジングにより一層拘束されるので、パイプの振動がより一層抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電磁弁における騒音や振動の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る電磁弁を備えた膨張弁を示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係る電磁弁を示す拡大断面図である。
【
図3】本実施形態に係る電磁弁の一部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0018】
(電磁弁)
図1、
図2において、本実施形態に係る電磁弁100は、例えば自動車用空調機の冷凍サイクルの膨張弁200に取り付けて用いられる。
【0019】
電磁弁100は、ソレノイド70と、吸引子80と、プランジャ50と、パイプ51と、ハウジング70cとを有している。ソレノイド70は、コイル70aが巻回され、通電により磁力を発生させる部材である。コイル70aには、例えば接続端子72(
図3)が設けられている。吸引子80は、ソレノイド70の内側に配置される磁性体であり、例えば可動鉄心である。プランジャ50は、弁体の一例としての弁軸60に連結され、ソレノイド70への通電により吸引子80に吸引される部材である。パイプ51は、ソレノイド70の内側に設けられ、プランジャ50を収容する有底状の部材である。
【0020】
図2において、電磁弁100は、主弁部10の開閉により、膨張弁200における流体の流入口(図示せず)と流出口32間の流体の流れを開閉制御する。流入口と流出口32はバルブボディとしての弁本体30に形成されており、流入口と流出口32との間には、主弁室33が設けられている。主弁室33は、流入口と通じている。主弁室33内には、後述のように主弁体40が軸方向(
図2の上下方向。以下、単に「上下」ということがある。)に摺動可能に収容されている。弁本体30は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金若しくは真鍮等の金属部材により作製されている。
【0021】
主弁体40は、主弁部材43と主弁パッキン41とを有する。主弁部材43は、例えばアルミニウム、ステンレス若しくは真鍮等の金属材料によって作製される。主弁体40は、弁本体30の主弁室33の内側に、軸方向に沿って摺動可能に支持される。
図2における主弁体40の下側、すなわち、摺動方向の一方側には、主弁部10が配置される。主弁部10は、主弁体40と、弁本体30の流入口と流出口32との間に形成された主弁座35により構成されている。本実施形態では、主弁体40の主弁パッキン41の下面に、主弁座35を開閉するパッキン部が設けられている。
【0022】
当該主弁体40の摺動方向の他方側(図示の実施例では上方)には、パイロット弁部20が構成されている。本実施形態では、主弁パッキン41の上面にパイロット弁座42が設けられている。先端部(頭部62とは逆側の先端部)に形成されたパイロット弁部20によってパイロット弁座42は開閉される。
【0023】
なお、本実施形態では、パイロット弁座42を閉鎖できる限り、
図2中で上面側のパイロット弁座42が設けられる部分であるパイロット弁パッキンは必須ではなく、パイロット弁座部を主弁部材43に直接形成し、かつ、下面側のパッキン部を主弁部材43に取り付ける構成としてもよい。もちろん、下面側の主弁座35を開閉するパッキン部と上面側のパイロット弁座42が設けられる部分(パイロット弁パッキン)とを別部材としてそれぞれ主弁部材43に取り付けてもよい。
【0024】
主弁体40の上下方向における中央部には、軸方向に沿って延びるパイロット通路45が形成される。
図2におけるパイロット通路45の上端には、パイロット弁座42が設けられる。
【0025】
主弁パッキン41の外側面上には、筒状の主弁部材43が嵌合する。パイロット通路45は主弁パッキン41に形成される。また、主弁体40には、軸方向に沿って延びる貫通孔である均圧孔(図示せず)が形成される。均圧孔は、主弁室33とパイロット弁室34とを連通させる。均圧孔によって、主弁室33とパイロット弁室34とが均圧化され、結果、主弁体40を容易に開閉できる。
【0026】
電磁弁100の上部中央には、下方に開放したパイプ51が配置されている。パイプ51は、天井部と側壁とを有する筒状部材である。パイプ51の側壁の天井部と反対側の端部は、吸引子80に取り付けられる。具体的には、
図2におけるパイプ51の下端は開放され、かしめ又は溶接等の適宜手段によって、後述する吸引子80に固定できる。パイプ51の内側には、プランジャ50が収容されている。
【0027】
プランジャ50は、底部50aと側壁50bとを有する筒状部材である。プランジャ50の底部50aは、パイロット弁座42の側に位置する。底部50aには、貫通孔50cが形成される。本実施形態のプランジャ50は、例えば磁性を有するステンレス製である。なお、プランジャの素材は、ステンレスに限定されないが磁性材料である。プランジャ50は、ソレノイド70の作動によって、パイプ51の内側で軸方向に沿って摺動自在に設けられる。
【0028】
パイロット弁座42は、弁軸60によって開閉される。弁軸60は、頭部62と軸部63とを有する。軸部63の先端部(頭部62とは逆側の先端部)にパイロット弁部20が設けられている。弁軸60の頭部62は、プランジャ50の内側に配置される。頭部62は、弁軸60の径方向において、軸部63よりも拡径されている。また、軸部63の径は、プランジャ50の貫通孔50cの径より僅かに小さい。このため、軸部63は、プランジャ50の貫通孔50cに差し込まれた状態で、プランジャ50の外側で底部50aから弁座に向かって突出する。
【0029】
パイプ51の天井部と弁軸60の頭部62との間には、スプリング44が設けられている。弁軸60は、例えばパイプ51内に設けられるスプリング44の弾発力によりプランジャ50に押し当てられている。これにより、プランジャ50は、ソレノイド70の作動により弁軸60と共にパイプ51内を上下に摺動する。
【0030】
ソレノイド70の作動によりプランジャ50を駆動する手段として、吸引子80が設けられている。吸引子80は、例えば磁性材であり、適宜な制御手段(図示せず)によりソレノイド70に通電されると磁界が発生し、スプリング52の弾発力に打ち勝って磁性材のプランジャ50を下方に吸引する。
【0031】
吸引子80は、全体的には上下に貫通孔が形成された多段の筒形状をしており、パイプ51が取り付けられる。この状態で、吸引子80は弁本体30に形成された上部大径穴部30aに挿入あるいは螺着される。その後、パイプ51の外周に挿入されたソレノイド70の張出部70dに形成された貫通孔に雄ねじ71を挿入し、これを弁本体30に形成された雌ねじに螺合することにより、吸引子80は弁本体30に押え付けられ、固定される。吸引子80の筒形状は、概略では上部の小径部81と下部の大径部82とからなる。小径部81にパイプ51の下側開放端が固定されており、大径部82は前述のように弁本体30に固定されている。小径部81に固定されたパイプ51には、プランジャ50が上下に摺動可能に収納される。
【0032】
吸引子80の大径部82の内側には、円筒状の主弁体収容部(空間部)82aが形成されている。この主弁体収容部82a内には、主弁体40が上下に摺動可能に収容されている。主弁体40は、主弁体スプリング46の弾発力により主弁室33内で上方に持ち上げられている。当該空間が主弁体40により上下に分割されることにより、当該空間の下部が主弁室33となり上部がパイロット弁室34とされている。吸引子80の大径部82と弁本体30との間は、適宜Oリング83によりシールされている。
【0033】
図示の例においては、吸引子80の小径部81と大径部82とを一つの部材として段差を介して一体構造の円筒形状部材を構成している。勿論、実施形態によっては、小径部81と大径部82とを別部材により構成して、適宜手段により両者を固定するものでもよい(図示せず)。要は、ソレノイド70への通電により、吸引子80がプランジャ50を吸引して駆動できればよい。本実施形態においては、プランジャ50を吸引駆動し、主弁体40を上下摺動可能に収容する部材を吸引子として称している。吸引子80が一つの部材により構成されているか、又は、複数の部材により構成されているかが問題ではない。
【0034】
ソレノイド70は、パイプ51の外周面に嵌合される。このソレノイド70は、コイル70aとボビン70bとハウジング70cを有する。コイル70aは、ボビン70bに巻き回される。ハウジング70cは、磁性材によって作製される。ハウジング70cは、ボビン70bの周りを囲む。また、図における下側、すなわち、ハウジング70cの弁本体30の側には、パイプ51と反対側でコイル70aより外側に張り出す張出部70dが形成されている。
【0035】
図2から
図5において、ハウジング70cは、ソレノイド70の軸方向の一端に重ねて配置される第1支持部91、及びソレノイド70の軸方向の他端に重ねて配置される第2支持部92を有し、コイル70aを囲繞している。ハウジング70cは、第1支持部91と、第2支持部92と、第1支持部91と第2支持部92とを結合する連結部93とにより、例えばU字状に形成されている。
【0036】
第1支持部91及び第2支持部92には、パイプ51がそれぞれ嵌入される第1取付孔91a及び第2取付孔92aが形成されている。第1支持部91には、更に接続端子72との干渉を抑制するための切欠き91bが形成されている。第2支持部92には、更に張出部70dが2箇所設けられている。張出部70dには、それぞれ貫通孔70eが形成されている。この貫通孔70eに雄ねじ71(
図2)が挿入されるようになっている。また、第2支持部92には、コイル70aの位置決め用の凸部70fが2箇所設けられている。
【0037】
第1取付孔91aは、パイプ51の外周における径方向の一方側に当接する。第2取付孔92aはパイプ51の外周における径方向の他方側に当接する。一例として、第1取付孔91a及び第2取付孔92aは、例えば互いに同径の円形とされ、かつ第1取付孔91aの中心C1と第2取付孔92aの中心C2とが、パイプ51の径方向にずれている。
図2においては、第1取付孔91aの中心C1が、第2取付孔92aの中心C2の左側にずれている。これにより、パイプ51の上部右側の外周が第1取付孔91aに当接し、パイプ51の下部左側の外周が第2取付孔92aに当接している。パイプ51の周方向におけるどの位置が第1取付孔91aに当接し、どの位置が第2取付孔92aに当接するかは、第1取付孔91aと第2取付孔92aとの相対的な位置関係(ずれ方)によって定まる。
【0038】
上記の説明で、第2取付孔92aがパイプ51の外周における径方向の他方側に当接する状態とは、
図2のように、第2取付孔92aが吸引子80に当接した状態を含むものとする。もちろん、パイプ51を下方側に延長して吸引子80の外周部分を囲むようにしてもよい。この場合は、第2取付孔92aはパイプ51に当接する。
【0039】
なお、第2取付孔92aが形成された第2支持部92を雄ねじ71などで弁本体30に固定するので、第1取付孔91aは、パイプ51の外周における径方向の一方側に当接し、第2取付孔92aはパイプ51の外周における径方向の他方側に当接しないようにしてもよい。
【0040】
このずれ量は、第1取付孔91aと第2取付孔92aが互いに同径であるとすると、孔径の3~9%である。ずれ量がこの範囲を下回ると、パイプ51がハウジング70cに十分に拘束されず、振動の抑制が難しくなる。ずれ量がこの範囲を上回ると、第1取付孔91a及び第2取付孔92aに対するパイプ51の嵌入が難しくなる。
【0041】
(膨張弁)
図1において、膨張弁200には電磁弁100が取り付けられる構造となっている。膨張弁200の構造は一般的なものであるので、簡単に説明する。膨張弁200は、弁本体30と、冷凍サイクルのコンデンサ、レシーバからエバポレータに向かう冷媒の通る第一の通路11、及びエバポレータからコンプレッサに向かう冷媒の通る第二の通路12が弁本体30に上下に離間して形成されている。電磁弁100は、第一の通路11における流入口と流出口32との間を開閉できるように取り付けられている。
【0042】
更に、第一の通路11に設けられたオリフィス32a及び弁室28と、このオリフィス32aを通過する冷媒量を制御する流出口32の上流側に配置された球状の弁体32bと、弁体32bをオリフィス32a方向に弁部材32cを介して押圧するばね32dの調節ねじ39とが設けられている。Oリング39aが調節ねじ39に装着されており、弁本体30と気密状態が確保されている。この調節ねじ39と押圧ばね32dとにより、弁体32bのオリフィス32aに対する開口度が調節される。
【0043】
なお、第一の通路11の流入口は、主弁部10と通じており、電磁弁100の開弁時には通路26を通じて弁室28に通じる。弁本体30には、膨張弁200を設置場所に取り付けるためのボルト孔30bが形成されている。
【0044】
弁本体30には、エバポレータの出口温度に応じて、弁体32bに対して駆動力を与えてオリフィス32aの開閉を行うために小径の孔37と、この孔37より径が大径の孔38が、第二の通路12を貫通してオリフィス32aと同軸に形成されている。弁本体30の上端には、感熱部となるパワーエレメント部36が固定されている。
【0045】
パワーエレメント部36は、ダイアフラム36aの変位に応じて、大径の孔38及び小径の孔37内を摺動して駆動力を与える感温棒36fを有している。感温棒36fの頂部はダイアフラム36aの下面に当接し、感温棒36fの下端は弁体32bと当接している。感温棒36fは、弁体駆動棒である。なお、弁体駆動棒は、複数の感温棒を直列に配置して構成されていてもよい。
【0046】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。ここでは、電磁弁100が冷凍サイクルの膨張弁200に適用されている場合を例にとる。
図2は、ソレノイド70(コイル70a)へ通電されていない状態を示している。この場合、吸引子80には吸引力は発生しないから、スプリング52の弾発力により、プランジャ50はパイプ51内を上方に持ち上げられ、パイロット弁部20は開状態とされている。また主弁体40は、主弁体スプリング46の弾発力により主弁室33内で上方に持ち上げられ、主弁部10は開状態とされている。
【0047】
この状態で、圧縮機(図示せず)を運転すれば、流入口(図示せず)から、主弁室33内で開いている主弁部10を介し、流出口32(
図1)を通じて冷媒が流れる。また、主弁室33から均圧孔(図示せず)経由してパイロット弁室34に流れる冷媒の量よりも、パイロット弁室34からパイロット通路45を経由して主弁室33に流れる冷媒の量の方が大きいので、パイロット弁室34の圧力が主弁室33の圧力よりも小さくなって主弁体40には上方へ作用する力が発生し、主弁体スプリング46の弾発力と共に主弁部10は十分な開状態を保持し、流入口から流出口32への流れが維持される。
【0048】
次に、ソレノイド70に通電すると磁界が発生し、吸引子80及びプランジャ50の間に電磁吸引力が発生して、プランジャ50がスプリング52の弾発力に抗して引き下げられる。弁軸60はプランジャ50の移動と同じくして、パイプ51内を上下に摺動する。したがって、吸引子80による吸引力により、プランジャ50が引き下げられ、それと共にスプリング44の弾発力により弁軸60も下方に摺動される。これにより、弁軸60の下端のパイロット弁部61が主弁体40の上方側に形成されたパイロット弁座42に当接し、パイロット弁部20を閉状態とする。つまり、すなわちパイロット通路45が閉塞される。
【0049】
パイロット通路45が閉塞されると、パイロット弁室34と主弁室33とを連通する通路が均圧孔(図示せず)だけとなり、両弁室の圧力差がなくなる。そしてさらに、スプリング44が主弁体40を下方に押し下げてその最下点まで摺動すると、主弁体40が主弁座35に当接して主弁部10を閉状態とする。これにより、主弁部10も閉状態とされ、流路が閉じられて流入口から流出口32への冷媒等の流れが阻止される。
【0050】
ソレノイド70への通電が停止されると、ソレノイド70による吸引子80の電磁吸引力が無くなり、プランジャ50はスプリング52の弾発力により上方へ押し上げられ、プランジャ50と共に弁軸60がスプリング44の弾発力に抗して上方に移動して、弁軸のパイロット弁部61が主弁体40の上面側に設けたパイロット弁座42から離れてパイロット弁部20が開状態となる。
【0051】
これにより、主弁体40の中心部に設けられたパイロット通路45を介して、パイロット弁室34が流出口32と連通され、パイロット弁室34内の圧力が高圧から低圧へ移行する。
【0052】
これにより、主弁体40は上方に移動して、主弁体40が主弁座35から離れて、開弁状態となる。また、電磁弁100の動作に加えて、膨張弁200による冷媒等の流れの制御が行われる。
【0053】
ここで、本実施形態に係る電磁弁100では、ハウジング70cに、プランジャ50を収容するパイプ51がそれぞれ嵌入される第1取付孔91a及び第2取付孔92aが形成されている。第1取付孔91aはパイプ51の外周における径方向の一方側に当接し、第2取付孔92aはパイプ51の外周における径方向の他方側に当接している。つまり、パイプ51が径方向においてハウジング70cに拘束されている。これにより、ソレノイド70をPWM制御した際にプランジャ50が吸引子80に高速で付いたり離れたりしても、パイプ51の振動が抑制される。
【0054】
また、互いに同径の第1取付孔91a及び第2取付孔92aの中心C1,C2同士がパイプ51の径方向にずれているので、パイプ51を第1取付孔91a及び第2取付孔92aに嵌入した際に、パイプ51の外周における径方向の一方側が第1取付孔91aに当接し、パイプ51の外周における径方向の他方側が第2取付孔92aに当接する。このような簡易な構成により、パイプ51の振動を抑制できる。
【0055】
これによって、電磁弁100における騒音や振動の発生を抑制することができる。またこの電磁弁100により、膨張弁200の開閉を制御できる。
【0056】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0057】
第1取付孔91a及び第2取付孔92aが互いに同径の円形であるものとしたが、形状は円形に限られない。パイプ51が第1取付孔91a及び第2取付孔92aの内周部に互い違いに当接することで、ハウジング70cに拘束される構成であればよい。また、パイプ51の天井部は別部材で構成されていてもよい。つまり、パイプ51は、筒状部と天井部を組み合わせて構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
50 プランジャ
51 パイプ
60 弁軸(弁体)
70 ソレノイド
70a コイル
70c ハウジング
80 吸引子
91 第1支持部
91a 第1取付孔
91b 切欠き
92 第2支持部
92a 第2取付孔
93 連結部
100 電磁弁