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特開2024-103366繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103366
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20240725BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20240725BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240725BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20240725BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K3/40
C08K3/04
C08L101/12
C08L23/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007652
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】望月 翔太
(72)【発明者】
【氏名】佐野 弘毅
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA01X
4J002BB05X
4J002BB14Y
4J002BB15W
4J002DA017
4J002DL006
4J002FA046
4J002FA047
4J002FD016
4J002FD017
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【解決課題】
ウェルド特性が非常に良好で、物性バランスや成形外観に優れる繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体を提供すること。
【解決手段】
条件(A-1)及び条件(A-2)を満足するプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)と、条件(B-1)を満足する繊維(B)と、条件(C-1)を満足する熱可塑性エラストマー(C)及び変性ポリオレフィン(D)とを含有し、条件(X-1)、及び条件(X-2)を満足することを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の条件(A-1)及び条件(A-2)を満足するプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)と、下記の条件(B-1)を満足する繊維(B)と、下記の条件(C-1)を満足する熱可塑性エラストマー(C)及び変性ポリオレフィン(D)とを含有し、下記の条件(X-1)、及び条件(X-2)を満足することを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)。
条件(A-1)
プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)のエチレン含量が、0.1~5重量%である。
条件(A-2)
プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)のDSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が、110~150℃である。
条件(B-1)
繊維(B)は、ガラス繊維及び炭素繊維から成る群から選ばれる少なくとも1種である。
条件(C-1)
熱可塑性エラストマー(C)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、0.5~10g/10分である。
条件(X-1)
繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)は、プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)100重量部に対し、繊維(B)を25~180重量部、熱可塑性エラストマー(C)を5~200重量部及び変性ポリオレフィン(D)を0.01~5重量部含有する。
条件(X-2)
繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、6~200g/10分である。
【請求項2】
繊維(B)がガラス繊維であり、かつその繊維長が2~20mmである請求項1に記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)を成形して得られる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関し、さらに詳しくは、成形性を維持しつつ、特にウェルド特性に優れ、成形外観や物性バランス良好な繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂組成物は、物性、成形性、リサイクル性及び経済性などに優れた樹脂材料としてその使用分野が拡がり、中でもインストルメントパネル、ピラーなどの自動車部品、テレビ、掃除機などの電気機器部品の分野などでは、ポリプロピレン系樹脂や、ポリプロピレン系樹脂にガラス繊維やタルクなどフィラーやエラストマー(ゴム)を複合強化した複合ポリプロピレン系樹脂などのポリプロピレン系樹脂組成物が成形性、物性バランス、リサイクル性や経済性などに優れるため、その成形体を含め様々な分野で広く用いられている。
これらの分野においては、益々進むポリプロピレン系樹脂組成物の成形体の高機能化、大型化、用途の多様・複雑化など、とりわけ自動車内装部品分野などにおける高品質化に対応するなどのため、ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の高度な物性バランスのほか、前記組成物や成形体の製品価値を一層高めるべく、ウェルド特性(成型時の樹脂の流れ突き合わせ部分の線状模様)や成形外観について、一段と改善させ、目立ち難くすることが要求されている。
【0003】
上記の要求に伴い、ポリプロピレン系樹脂組成物において、ウェルド特性を向上させるための手段が種々提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
例えば、特許文献1には、下記の特性(ア-i)及び(ア-ii)を満足するプロピレン-エチレンランダム共重 合体(ア)100重量部に対して、下記の特性(ウ-i)を満足する繊維(ウ)10~180重量部を含有させることを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
(ア-i):DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110~150℃である。
(ア-ii):メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5~200g/10分である。
(ウ-i):ガラス繊維及び炭素繊維から選ばれる少なくとも1種である。
また、同文献には、前記プロピレン-エチレンランダム共重合体(ア)は、エチレン含量が0.1~5重量%であり、プロピレン-エチレンランダム共重合体(ア)100重量部に対して、さらに下記特性(エ-i)及び(エ-ii)を満足する熱可塑性エラストマー(エ)5~200重量部を含有する、前記繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
(エ-i):密度が0.865~0.92g/cmである。
(エーii):メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5~100g/10分である。
特許文献1には、該組成物の成形品は、高い曲げ弾性率・表面硬度や耐熱性、ウェルドラインを有していることが記載されているが、該成形品のウェルド特性については、ウェルド外観の目視評価で定性的な表現のみの記載で、定量性に欠ける。
特許文献2には、プロピレン単独重合体部およびエチレン・プロピレンランダム共重合体部からなり、且つ下記要件(1)~(3)を満足する結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体(A-1)60~97重量%と、プロピレン単独重合体部およびエチレン・プロピレンランダム共重合体部からなり、且つ下記要件(4)~(6)を満足する結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体(A-2)3~40重量%とからなるポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、エラストマー(B)1~100重量部を含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
要件(1):プロピレン単独重合体部のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が30~400g/10分である。
要件(2):結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体(A-1)中のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合が5~34重量%である。
要件(3):エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]が1~4dl/gである。
要件(4):プロピレン単独重合体部のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1~50g/10分である。
要件(5):結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体(A-2)中のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合が35~65重量%である。
要件(6):エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]が4~7dl/gである。
特許文献2には、該組成物の成形品は、高い物性バランスやフローマークを有していることが記載されているが、該成形品のウェルド特性については、ウェルド外観の目視評価という定性的な表現のみの記載で、定量性に欠ける。
特許文献3には、下記のプロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)40重量%~99重量%と、繊維(イ)1重量%~60重量%(但し、(ア)と(イ)との合計量は100重量%である)とを含有することを特徴とするリブ付き成形体用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
プロピレン-エチレンブロック共重合体(ア):次の(ア-i)~(ア-iv)に規定する要件を有する。
(ア-i):メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独またはエチレン含量7重量%以下のプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(ア-A)を30重量%~95重量%、第2工程で成分(ア-A)よりも3重量%~20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(ア-B)を70重量%~5重量%逐次重合することで得られたものである(但し、(ア-A)と(ア-B)との合計量は100重量%である)。
(ア-ii):DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110℃~150℃である。
(ア-iii):固体粘弾性測定により得られる温度-損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
(ア-iv):プロピレン-エチレンブロック共重合体(ア)全体のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が0.5g/10分~200g/10分である。
繊維(イ):次の(イ-i)に規定する要件を有する。
(イ-i):ガラス繊維、炭素繊維及びウィスカーからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
特許文献3には、該組成物の成形品は、ウェルド外観およびリブヒケ外観が良好であり、さらに高剛性・高衝撃強度であることが記載されている。しかし、該成形品のウェルド特性については、ウェルド外観の目視評価という定性的な表現のみの記載で、定量性に欠ける。
【0004】
ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の用途分野において、例えば自動車内装部品のように、至近で人の眼に触れる成形体の表面外観は、きわめて重要である。また、ポリプロピレン系樹脂組成物による自動車部品は、生産性の観点から射出成形によって成形されることが多い。しかし、射出成形においては、ウェルドラインといった外観不良が発生することがある。これら外観不良は塗装工程で品質不良を起こしやすく、その結果、自動車部品の製造工程が煩雑になり、コストアップになり易い。
【0005】
しかしながら、上記に記載した従来技術のポリプロピレン系樹脂組成物は、物性バランスの向上や、ウェルド外観などの成形外観の向上がある程度達成されているものの、成形体の大型化やデザインの複雑化、薄肉化が益々進むに連れ、これらの性能の総合的バランスを高い水準で発現するには、未だ不充分であり、より一層の物性バランス、ウェルド外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6330302号公報
【特許文献2】特開2013-203839号公報
【特許文献3】特開2014-172985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点等に鑑み、ウェルド特性が非常に良好で、物性バランスや成形外観に優れる繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、特定のプロピレン-エチレンランダム共重合体に、特定の繊維材料、および、熱可塑性エラストマーおよび変性ポリオレフィンを特定の割合で含有してなる繊維強化プロピレン系樹脂組成物、あるいはそれを用いてなる成形体が上記の課題を解決できることを見出し、これらの知見に基き本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の条件(A-1)及び条件(A-2)を満足するプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)と、下記の条件(B-1)を満足する繊維(B)と、下記の条件(C-1)を満足する熱可塑性エラストマー(C)及び変性ポリオレフィン(D)とを含有し、下記の条件(X-1)、及び条件(X-2)を満足することを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)である。
条件(A-1)
プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)のエチレン含量が、0.1~5重量%である。
条件(A-2)
プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)のDSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が、110~150℃である。
条件(B-1)
繊維(B)は、ガラス繊維及び炭素繊維から成る群から選ばれる少なくとも1種である。
条件(C-1)
熱可塑性エラストマー(C)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、0.5~10g/10分である。
条件(X-1)
繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)は、プロピレン-エチレンランダム共重 合体(A)100重量部に対し、繊維(B)を25~180重量部、熱可塑性エラストマー(C)を5~200重量部及び変性ポリオレフィン(D)を0.01型~5重量部含有する。
条件(X-2)
繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、6~200g/10分である。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、繊維(B)がガラス繊維であり、かつその繊維長が2~20mmである第1の発明に記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)である。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明又は第2の発明に記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)を成形して得られる成形体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体は、成形性を維持しつつ、特にウェルド特性に優れ、成形外観や物性バランス良好な繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関する。
そのため、インストルメントパネル、グローブボックス、コンソールボックス、ドアトリム、肘掛け、グリップノブ、各種トリム類、天井部品、ハウジング類、ピラー類、マッドガード、バンパー、フェンダー、バックドアー、ファンシュラウドなどの自動車用内外装及びエンジンルーム内部品などの自動車部品をはじめ、テレビ・掃除機などの電気電子機器部品、各種工業部品、便座などの住宅設備機器部品、建材部品などの用途に、好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関し、さらに詳しくは、成形性を維持しつつ、特にウェルド特性に優れ、成形外観や物性バランス良好な繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関する。
以下、本願発明において用いられる各成分、得られる繊維強化プロピレン系樹脂組成物及び形成体について、詳細に説明する。
【0014】
1.プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)
本発明に用いられるプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)は、次の条件(A-1)及び条件(A-2)を満たす。
条件(A-1)
プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)のエチレン含量が、0.1~5重量%である。
条件(A-2)
プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)のDSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が、110~150℃である。
【0015】
本発明に用いられるプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)は、低結晶性成分を含んでいるため、本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)及びその成形体において、シボ転写性が良好で、成形外観に優れるなどの機能を付与する特徴を有する。
【0016】
(1)各要件
条件(A-1)プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)のエチレン含量
エチレン含量が0.1~5重量%であり、好ましくは0.5~4.5重量%、より好ましくは0.8~4重量%、更に好ましくは1~3.5重量%、特に好ましくは1.5~3.3重量%、最も好ましくは2~3重量%である。プロピレン-エチレンランダム共重合体(ア)のエチレン含量が0.1重量%以上であると、樹脂組成物とした時のシボ転写性、成形外観が低下しにくく、エチレン含量が5重量%以下であると、樹脂組成物とした時の剛性が低下しにくい。なお、プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)のエチレン含量は、13C-NMRを用いて測定される。また、プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)は、2種以上を併用することもできる。
(A-2)融解ピーク温度(Tm)
本発明に用いられるプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)のDSC(示差走査熱量計)法により測定された融解ピーク温度(Tm)は、110℃~150℃であり、好ましくは115℃~148℃、より好ましくは120℃~145℃、さらに好ましくは125~145℃である。Tmが110℃以上であると、樹脂組成物及びその成形体の剛性が低下しにくい。一方、150℃以下であると、シボ転写性が良好であり成形外観が低下しにくい。融解ピーク温度(Tm)は、プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)を製造する際に使用する触媒やプロピレンと共重合するエチレンの含有量を調節すること等により制御することができる。
【0017】
融解ピーク温度(Tm)の測定は、示差走査熱量計(例えば、本願実施例ではセイコー・インスツルメンツ社製DSC6200型)を用い、サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときのピーク温度で評価する。
【0018】
(2)製造方法
本発明に用いられるプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)の製造方法は、特に限定されず、メタロセン触媒、チーグラー触媒等を用いて製造することができる。
【0019】
(i)メタロセン触媒
メタロセン系触媒としては、本発明に用いられるプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)を製造できる限りは、特に限定はされるものではないが、本発明の要件を満たすために、例えば、下記に示す様な成分(a)、(b)、および必要に応じて使用する成分(c)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(a):下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物。
成分(b):下記(b-1)~(b-4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分。
(b-1):有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体。
(b-2):成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体。
(b-3):固体酸微粒子。
(b-4):イオン交換性層状珪酸塩。
成分(c):有機アルミニウム化合物。
【0020】
成分(a)としては、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C4-a )(C4-b )MeXY (1)
【0021】
ここで、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、例えば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基あるいはオリゴシリレン基、または炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基などが例示される。この中でも好ましいものは2価の炭化水素基と炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
XおよびYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基などを例示することができる。XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。
とRは、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基などが例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基などを典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したRとRは、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
なお、aおよびbは、置換基の数である。
【0022】
以上において記載した成分(a)の中で、本発明に用いられるプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)の製造に好ましいものは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基あるいはアルキレン基で架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物であり、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基、あるいはゲルミレン基で架橋された2,4-位置換インデニル基、2,4-位置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物である。
非限定的な具体例としては、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2-メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2-イソプロピル-4-(3、5 -ジイソプロピルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビ ス(2-プロピル-4-フェナントリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2-エチル-4-フェニルアズレニル)ジルコニウム ジクロリド、ジメチルシリレンビス(2-イソプロピル-4-フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2-エチル-4-(2-フルオロビフェニ ル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2-エチル-4-(4-t-ブチル-3-クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリドなどがあげられる。これらの具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も好適な化合物として例示される。なお、触媒成分は本発明の重要要素ではないので、煩雑な列記を避け、代表的な例示に限定しているが、これにより本発明の有効範囲が制限されることが無いのは自明のことである。
【0023】
成分(b)としては、前記した成分(b-1)~成分(b-4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は、公知のものであり、公知技術の中から 適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002-284808号公報、特開2002-53609号公報、特開2002-69116号公報、特開2003-105015号公報などに詳細な例示がある。
前記成分(b)の中で、特に好ましいものは、成分(b-4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましいものは、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
【0024】
必要に応じて成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、下記一般式(2)
AlR3-a (2)
(式中、Rは、炭素数1~20の炭化水素基、Pは、水素、ハロゲンまたはアルコキシ基、aは、0<a≦3の数を表わす。)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0025】
触媒の形成方法としては、前記の成分(a)と成分(b)及び必要に応じて成分(c)を接触させて触媒とする。なお、その接触方法は触媒を形成することができる方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0026】
また、成分(a)と(b)及び(c)の使用量は、任意である。例えば、成分(b)に対する成分(a)の使用量は、成分(b)1gに対して、好ましくは0.1~1,000μmol、特に好ましくは0.5~500μmolの範囲である。成分(b)に対する成分(c)の使用量は、成分(b)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0.001~100μmol、特に好ましくは0.005~50μmolの範囲である。
さらに、本発明にて使用される触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。
【0027】
メタロセン触媒を用いて得られるプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)は 、市販品を使用することもでき、例えば、日本ポリプロ社製ウィンテックシリーズが好適に使用できる。
【0028】
(ii)チーグラー触媒
プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)の製造は、チーグラー触媒等を用いて行うこともできる。チーグラー触媒としては、四塩化チタンを有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物を電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの(例えば特開昭47-34478号、特開昭58-23806号、特開昭63-146906号の各公報参照)、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルとからなる触媒(特開昭56―100806号、特開昭 56-120712号、特開昭58-104907号の各公報参照)、及び、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体からなる担持型触媒(特開昭57-63 310号、特開昭58-157808号、特開昭58-83006号、特開昭58-5310号、特開昭61-218606号、特開昭63-43915号、特開昭63-83116号の各公報参照)等を例示することができる。
【0029】
チーグラー触媒を用いて得られるプロピレン-エチレンランダム共重合体(ア)は、市販品を使用することもでき、例えば、日本ポリプロ社製ノバテックシリーズが好適に使用できる。
【0030】
(iii)重合プロセス
重合プロセスの経時的な運転手法としては、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。重合形式としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン若しくはトルエンなどの不活性炭化水素を重合溶媒として用いるスラリー重合、プロピレン自体を重合溶媒とするバルク重合、また、原料のプロピレンを気相状態下で重合する気相重合が可能である。また、これらの重合形式を組み合わせて行うことも可能である。
【0031】
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃~200℃、より好ましくは40℃~100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって最適な圧力には差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、大気圧に対する相対圧力で0MPaより大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa~50MPaの範囲を用いることができる。この際窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
また、分子量調整剤として水素を用いる場合は、プロピレンに対するモル比で1.0×10-6以上、1.0×10-2以下の範囲で用いることができる。好ましくは、1.0×10-5以上、0.9×10-2以下である。
【0032】
(3)含有割合
プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)の含有量は、樹脂組成物100重量部において、20~95重量部であることが好ましく、さらに好ましくは30~90重量部である。プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)の含有量が20重量部以上であると、本発明の繊維強化組成物及びその成形体の成形外観などが低下しにくい。一方、95重量部以下であると、剛性などが低下しにくい。
【0033】
2.繊維(B)
本発明に用いられる繊維(B)は、次の特性(B-1)を満たす。
(B-1):繊維(B)は、ガラス繊維及び炭素繊維から選ばれる少なくとも1種である。
本発明に用いられる繊維(B)は、引張弾性率および引張強度が高いため、樹脂組成物及びその成形体の剛性・耐熱性などの物性、寸法安定性(線膨張係数の低減など)、環境適応性の各向上などに寄与する特徴を有する。
また、本発明の効果が十分に得られると共に、本発明の繊維強化組成物の製造のし易さ及び経済性などの観点から、特にガラス繊維を用いることが好ましい。
また、繊維(B)は、2種以上を併用することもでき、予めプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)及び/又はプロピレン-エチレンブロック共重合体に比較的高濃度に含有させた所謂マスターバッチとした形で使用することもできる。
また、(B-1)の規定に該当しないタルク、マイカ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ウィスカー及び有機繊維などの各種無機又は有機のフィラーを本発明の効果を著しく損なわない範囲内で併用することもできる。
以下、本発明における(B-1)に規定する各種繊維について、詳細に説明する。
【0034】
(1)ガラス繊維
ガラス繊維としては、特に限定されず用いることができ、繊維に用いられるガラスの種類としては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラスなどが挙げることができ、中でもEガラスが好ましい。ガラス繊維の製造方法は、特に限定されたものではなく、公知の各種製造方法にて製造される。
なお、ガラス繊維を2種以上を併用することもできる。
【0035】
ガラス繊維長は、好ましくは、2~20mmであり、より好ましくは、3~10mmである。繊維の長さが2mm以上であると、樹脂組成物及びその成形体の剛性などの物性を低下させにくく、一方、20mm以下であると、シボ転写性、外観や成形性(流動性)を低下させにくい。
本明細書で繊維長とは、通常のロービング状、ストランド状の繊維である場合、溶融混練する前のガラス繊維をそのまま原料として用いる場合における長さを表す。ただし、後述する溶融押出加工し、連続した多数本のガラス繊維を集合一体化したガラス繊維含有ペレットの場合は、ペレットの一辺(押出方向)の長さが、実質的にペレット中の繊維の長さと同じであるため、ペレットの一辺(押出方向)の長さを、繊維の長さとする。
ここで「実質的に」とは、具体的には、繊維含有ペレット中の繊維の個数全体を基準として、50%以上、好ましくは90%以上において、その長さが炭素繊維含有ペレットの長さ(押出方向)と同じであって、該ペレット調製の際に繊維の折損を殆ど受けないことを意味する。
なお、本明細書において、繊維長は、顕微鏡により計測し、100本以上の繊維の長さの平均値を算出することにより求める。
その具体的な測定は、例えば繊維(B)がガラス繊維の場合、ガラス繊維を界面活性剤含有水に混合し、該混合水液を薄ガラス板上に滴下拡散した後、デジタル顕微鏡(例えば(20)キーエンス社製VHX-900型)を用いて100本以上のガラス繊維長さを測定しその平均値を算出する方法による。
【0036】
また、ガラス繊維の繊維径は通常は3~25μm、6~20μmのものが好ましい。繊維径が3μm以上であると、樹脂組成物及びその成形体の製造、成形時などにおいて該ガラス繊維が折損しにくく、一方、25μm以下であると、繊維のアスペクト比が低下することがなく、樹脂組成物及びその成形体の剛性などの各向上効果などが低下するおそれがない。
繊維径は、繊維を繊維長さ方向に垂直に裁断し、その断面を顕微鏡観察して直径を計測し、100本以上の繊維の直径の平均値を算出することにより求める。
【0037】
ガラス繊維は、集束剤で集束(表面)処理されたものを用いてもよく、集束剤の種類としては、エポキシ系集束剤、芳香族ウレタン系集束剤、脂肪族ウレタン系集束剤、アクリル系集束剤及び無水マレイン酸変性ポリオレフィン系集束剤などが挙げられる。これらの集束剤は、ポリプロピレン系樹脂との溶融混練において融解する必要があるため、200℃以下で溶融するものであることが好ましい。
【0038】
ガラス繊維は、表面処理されたものも無処理のものもいずれも用いることができるが、ポリプロピレン系樹脂への分散性を向上させるなどのため、有機シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤、シリコーン化合物、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルなどによって表面処理されているものを用いることが好ましい。
【0039】
表面処理に使用する有機シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。また、チタネートカップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル)チタネートなどが挙げられる。また、アルミネートカップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどを挙げることができる。また、ジルコネートカップリング剤としては、例えば、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル)ブチル、ジ(トリデシル)ホスフィトジルコネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリネオデカノイルジルコネートが挙げられる。また、前記シリコーン化合物としては、シリコーンオイル、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0040】
さらに、表面処理に使用する高級脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、カプリン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、カレイン酸、リノール酸、ロジン酸、リノレン酸、ウンデカン酸、ウンデセン酸などが挙げられる。また、高級脂肪酸金属塩としては、炭素数9以上の脂肪酸、例えば、ステアリン酸、モンタン酸などのナトリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩などが挙げられる。中でも、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウムが好適である。また、脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステル、アルファスルホン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが例示される。
前記表面処理剤の使用量は、特に制限されるわけではないが、ガラス繊維100重量部に対して0.01重量部~5重量部が好ましく、0.1重量部~3重量部がより好ましい 。
【0041】
ガラス繊維は、繊維原糸を所望の長さに裁断した、所謂チョップドストランド状ガラス繊維として用いることもできる。この中でも、樹脂組成物及びその成形体の低収縮性、剛性・衝撃強度などの観点から、ガラス繊維を収束したストランドを引き揃えて、2mm~20mmに切断して得られるチョップドストランド状ガラス繊維を用いることが好ましい 。
【0042】
ガラス繊維としては市販のガラス繊維を用いることができ、その具体例としては、日本電気硝子社製(T480H)などを挙げることができる。
【0043】
また、これらのガラス繊維は、予め任意の量の例えばプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)及び/又はプロピレン-エチレンブロック共重合体などと、溶融押出加工して連続した多数本のガラス繊維を集合一体化し「ガラス繊維含有ペレット」として用いることができ、樹脂組成物及びその成形体のシボ転写性、剛性などの各向上効果などをより高める観点から好ましい。
このようなガラス繊維含有ペレットの場合、前述したように繊維長は、ガラス繊維含有ペレットの長さ(押出方向)とし、2~20mmが好ましい。
このようなガラス繊維含有ペレットの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
【0044】
また、ガラス繊維含有ペレットにおいて、ガラス繊維の含有量は、該ペレット全体100重量%を基準として、20重量%~70重量%であることが好ましい。
ガラス繊維の含有量が20重量%以上であるガラス繊維含有ペレットを本発明において用いた場合、樹脂組成物及びその成形体の剛性などの物性が低下しにくく、一方、70重量%以下であるものを用いた場合には、シボ転写性、外観や成形性(流動性)などを低下させにくい。
【0045】
(2)炭素繊維
炭素繊維としては、特に限定されず用いることができる。ここで、炭素繊維とは、微細炭素繊維とも称される例えば繊維径が500nm以下の極細のものも含まれる。なお、炭素繊維は2種以上併用することもできる。
【0046】
炭素繊維の繊維長は、通常は1~20mmであり、好ましくは、3~10mmである。炭素繊維の繊維の長さが1mm以上の場合、樹脂組成物及びその成形体における最終繊維長がより短くなることがなく、樹脂組成物及びその成形体の低収縮性や剛性・衝撃強度などの物性を低下させにくく、一方、20mm以下であると、シボ転写性、外観や成形性(流動性)を低下させにくい。
なお、炭素繊維の長さは、前述のガラス繊維と同様の方法で測定される。
【0047】
炭素繊維の繊維径は、通常は2~20μmであり、好ましくは、3~15μmである。繊維径が2μm以上であると、樹脂組成物及びその成形体の製造、成形時などにおいて炭素繊維が折損しにくくなり、樹脂組成物及びその成形体の剛性などの物性の各向上効果などが低下しにくい。また、繊維径が20μm以下であると、繊維のアスペクト比が低下することがなく、樹脂組成物及びその成形体の、剛性などの各向上効果などが低下するおそれがない。
繊維径は、公知の方法で測定され、例えば、JIS R7607(旧JIS R760 1)や顕微鏡観察法により測定される。
【0048】
炭素繊維の種類としては、前記した様に特に限定されないが、例えばアクリロニトリルを主原料とするPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、タールピッチを主原料とするピッチ系炭素繊維、さらにはレーヨン系炭素繊維などが挙げられ、いずれも好適に用いられる。これらの本発明に対する適性はいずれも高いがどちらかといえばその組成純度や均一性などの観点からPAN系炭素繊維が好ましい。なお、これらは各々を単独使用してもよく、併用してもよい。なお、これらの炭素繊維の製造方法は特に限定されない。
【0049】
炭素繊維の具体例としては、PAN系炭素繊維では、三菱ケミカル社製商品名「パイロフィル」、東レ社製商品名「トレカ」、東邦テナックス社製商品名「ベスファイト」などを挙げることができ、ピッチ系炭素繊維では、三菱ケミカル社製商品名「ダイアリード」、大阪ガスケミカル社製商品名「ドナカーボ」、クレハ製商品名「クレカ」などを挙げることができる。
【0050】
また、これらの炭素繊維は、前述のガラス繊維と同様に、予め任意の量の例えばプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)及び/又はプロピレン-エチレンブロック共重合体と、溶融押出加工して連続した多数本の炭素繊維を集合一体化した「炭素繊維含有ペレット」として用いることもでき、樹脂組成物及びその成形体のシボ転写性、剛性などの各向上効果などをより高める観点から好ましい。
このような炭素繊維含有ペレットの場合、前述したように炭素繊維の長さは、該炭素繊維含有ペレットの長さ(押出方向)とし、2~20mmとすることが好ましい
【0051】
炭素繊維は、通常200~1000GPa程度の引張弾性率を有するが、本発明の樹脂組成物及びその成形体の強度や経済性などから本発明においては、200~900GPaのものを用いるのが好ましく、200~300GPaのものを用いるのがより好ましい。
また、炭素繊維は、通常1.7~5g/cm程度の密度を有するが、軽量性や経済性などから1.7~2.5g/cmの密度を有するものを用いるのが好ましい。
ここで、引張弾性率及び密度の測定方法は夫々公知の方法であり、例えば引張弾性率は、JIS R7606(旧JIS R7601)が挙げられ、同様に密度は、例えばJIS R7603(旧JIS R7601)が挙げられる。
【0052】
これらの炭素繊維は、繊維原糸を所望の長さに裁断した、所謂チョップド(ストランド状)カーボンファイバー(以下、単にCCFともいう。)として用いる事もでき、また必要に応じて、各種集束剤を用いて集束処理されたものであってもよい。本発明においては、樹脂組成物及びその成形体における、剛性などの物性の各向上効果などをより高めるため、このCCFを用いることが好ましい。
この様なCCFの具体例としては、PAN系炭素繊維では、三菱ケミカル社製商品名「パイロフィルチョップ」、東レ社製商品名「トレカチョップ」、東邦テナックス社製商品名「ベスファイトチョップ」などを挙げることができ、ピッチ系炭素繊維では、三菱ケミカル社製商品名「ダイアリードチョップドファイバー」、大阪ガスケミカル社製商品名「ドナカーボチョップ」、クレハ社製商品名「クレカチョップ」などを挙げることができる。
【0053】
また、炭素繊維含有ペレットにおいて、炭素繊維の含有量は、ペレット全体100重量%を基準として、20~70重量%であることが好ましい。
炭素繊維の含有量が20重量%以上である炭素繊維含有ペレットを本発明において用いた場合、繊維強化組成物及びその成形体の低収縮性、剛性・衝撃強度などの物性が低下しにくく、一方、70重量%以下のものを用いた場合には、シボ転写性、外観や成形性(流動性)などを低下させにくい。
【0054】
(3)含有割合
本発明に用いられる繊維(B)の含有割合は、プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)100重量部に対して、25~180重量部、好ましくは35~170重量部、より好ましくは37~160重量部、さらに好ましくは40~150重量部である。繊維(B)の含有割合が25重量部以上であると、低収縮性、剛性、衝撃強度などの物性が低下しにくく、180重量部以下であると、樹脂組成物及びその成形体の、シボ転写性、外観や成形性(流動性)などが低下しにくい。
ここで、繊維(B)の含有割合は実量であり、例えば、前記ガラス繊維含有ペレットを用いる場合は、該ペレットに含有する繊維(B)の実含有量に基づき算出する。
【0055】
3.熱可塑性エラストマー(C)
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(C)は、以下の条件(C―1)を満足する。
条件(C-1):熱可塑性エラストマー(C)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、0.5~10g/10分である。
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(C)は、樹脂組成物及び成形体において、衝撃性や外観向上などの機能を付与する特徴を有する。
【0056】
また、本明細書における熱可塑性エラストマー(C)とは、オレフィン系エラストマー及びスチレン系エラストマーなどから選ばれる熱可塑性エラストマーを表し、前記プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)に該当しないことは言うまでもない。
【0057】
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(EPR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)などのエチレン・α-オレフィン共重合体エラストマー;エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体などのエチレン・α-オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマーなどを挙げることができる。
また、スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SIS)、スチレン-エチレン・ブチレン共重合体エラストマー(SEB)、スチレン-エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(SEP)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体エラストマー(SEBS)、スチレン- エチレン・ブチレン-エチレン共重合体エラストマー(SEBC)、水添スチレン・ブタジエンエラストマー(HSBR)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体エラストマー(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重 合体エラストマー(SEEPS)、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体エラストマー(SBBS)などを挙げることができる。
さらに、エチレン-エチレン・ブチレン-エチレン共重合体エラストマー(CEBC)などの水添ポリマー系エラストマーなども挙げることができる。
中でも、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)及びエチレン・プロピレン共重合体エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種を使用すると、樹脂組成物及びその成形体において、低収縮性、外観及び衝撃強度などの性能がより優れ、経済性にも優れる傾向にあることなどの点から好ましい。
なお、熱可塑性エラストマー(C)は、2種以上を併用することもできる。
【0058】
(1)各要件
(C-1)メルトフローレート(MFR)
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(C)のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)は、0.5~10g/10分の範囲であり、好ましくは0.6~5g/10分、さらに好ましくは0.8~1.5g/10分の範囲内である。MFRが0.5g/10分以上であると、樹脂組成物及びその成形体の成形性(流動性)、などが著しく低下するおそれがなく、10g/10分以下であると、成形外観が低下するおそれがない。
【0059】
(2)製造方法
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(C)は、例えばオレフィン系エラストマーにおいては、エチレン・α-オレフィン共重合体エラストマーや、エチレン・α-オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマーなどは、各モノマーを触媒の存在下、重合することにより製造される。
触媒としては、例えばハロゲン化チタンの様なチタン化合物、アルキルアルミニウム-マグネシウム錯体の様な有機アルミニウム-マグネシウム錯体、アルキルアルミニウム、またはアルキルアルミニウムクロリドなどのいわゆるチーグラー型触媒、WO91/04257号パンフレットなどに記載のメタロセン化合物触媒などを使用することができる。
重合法としては、気相流動床法、溶液法、スラリー法などの製造プロセスを適用して重合することができる。また、熱可塑性エラストマー(C)のうち、スチレン系エラストマーは、通常のアニオン重合法及びそのポリマー水添技術などにより製造することができる。
また、これらの熱可塑性エラストマーは種々の製品が多くの会社から市販されているので、所望の物性を有する製品を入手し、使用することもできる。
【0060】
(3)含有割合
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(C)の含有割合は、プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)100重量部に対して5~200重量部、好ましくは20~170重量部、より好ましくは30~150重量部である。熱可塑性エラストマー(C)の含有割合が5重量部以上であると、シボ転写性、外観が良好であり、200重量部以下であると、本発明の樹脂組成物及びその成形体の剛性などが著しく低下するおそれがない。
【0061】
4.変性ポリオレフィン(D)
変性ポリオレフィンは、酸変性ポリオレフィン及び/またはヒドロキシ変性ポリオレフィンであり、プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)と繊維(B)との界面強度が向上することにより、樹脂組成物及びその成形体において、剛性・衝撃強度などの物性などの向上などに有効である。
酸変性ポリオレフィンとしては、特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。酸変性ポリオレフィンは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-α-オレフィン-非共役ジエン化合物共重合体(EPDMなど)、エチレン-芳香族モノビニル化合物-共役ジエン化合物共重合ゴムなどのポリオレフィンを、例えば、マレイン酸または無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸を用いてグラフト共重合し、変性したものである。このグラフト共重合は、例えば上記ポリオレフィンを適当な溶媒中において、ベンゾイルパーオキシドなどのラジカル発生剤を用いて、不飽和カルボン酸と反応させることにより行われる。また、不飽和カルボン酸またはその誘導体の成分は、ポリオレフィン用モノマーとのランダムもしくはブロック共重合によりポリマー鎖中に導入することもできる。
また、ヒドロキシ変性ポリオレフィンは、ヒドロキシル基を含有する変性ポリオレフィンである。該変性ポリオレフィンは、ヒドロキシル基を適当な部位、例えば、主鎖の末端や側鎖に有していてもよい。ヒドロキシ変性ポリオレフィンを構成するオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、4-メチルペンテン-1、ヘキセン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセンなどのα-オレフィンの単独または共重合体、前記α-オレフィンと共重合性単量体との共重合体などが例示できる。ヒドロキシ変性ポリオレフィンとして、ヒドロキシ変性ポリエチレン(例えば、低密度、中密度または高密度 ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体など)、ヒドロキシ変性 ポリプロピレン(例えば、アイソタクチックポリプロピレンなどのポリプロピレンホモポリマー、プロピレンとα-オレフィン(例えば、エチレン、ブテン、ヘキサンなど)とのランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体など)、ヒドロキシ変性ポリ(4-メチルペンテン-1)などを挙げることができる。
また、これらの変性ポリオレフィン(D)は種々の製品が多くの会社から市販されているので、所望の物性を有する製品を入手し、使用することができる。
本発明に用いられる変性ポリオレフィン(D)の含有割合は、プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)100重量部に対して0.01~5重量部、好ましくは1~5重量部、より好ましくは2~4重量部である。変性ポリオレフィン(D)の含有割合が0.01重量部以上であると、ガラス繊維や炭素繊維との界面接着が向上し、機械物性が良好であり、5重量部以下であると、変性ポリオレフィン過剰添加による結晶性低下の影響を受けにくく、機械物性が優れる。
【0062】
5.繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)
本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)は、下記の条件(X-1)、及び条件(X-2)を満足することを特徴とする。
条件(X-1):
繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)は、プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)100重量部に対し、繊維(B)を25~180重量部、熱可塑性エラストマー(C)を5~200重量部及び変性ポリオレフィン(D)を0.01型~5重量部含有する。
条件(X-2):
繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、6~200g/10分である。
【0063】
(1)各要件
本繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)に用いられる繊維(B)の含有割合は、繊維(B)の説明において記載の通りである。熱可塑性エラストマー(C)の含有割合は、熱可塑性エラストマー(C)の説明において記載の通りである。変性ポリオレフィン(D)の含有割合は、変性ポリオレフィン(D)の説明において記載の通りである。
本繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、通常は6~200g/10分の範囲であり、好ましくは8~150g/10分、さらに好ましくは10~100g/10分の範囲内である。MFRが6g/10分以上であると、樹脂組成物及びその成形体の成形性(流動性)などが著しく低下するおそれがなく、200g/10分以下であると、衝撃や剛性などの物性が著しく低下するおそれがない。
本繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(X)全体のMFRの調整は、過酸化物の添加、造粒温度の変更、混錬機のスクリュー構造の変更等により行うことができる。
【0064】
6.任意添加成分
本発明の樹脂組成物は、任意添加成分として、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、分子量降下剤、潤剤、酸化防止剤などの各種任意添加成分を含有することができる。
任意添加成分は、2種以上を併用してもよく、樹脂組成物に添加してもよいし、プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)や前記(B)~(D)の各成分に予め添加されていてもよく、それぞれの成分においても2種以上併用することもできる。本発明において、任意添加成分の含有割合は特に限定されないが、通常、樹脂組成物100重量部において、0.01~0.5重量部程度であり、その目的に応じて適宜選択される。
【0065】
(1)分子量降下剤
分子量降下剤は、成形性(流動性)などの付与、向上に有効である。
分子量降下剤は、例えば、各種の有機過酸化物や、分解(酸化)促進剤と称されるものなどが使用でき、有機過酸化物が好適である。
有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、t-ブチルパーアセテート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン-3、t-ブチル-ジ-パーアジペート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、メチル-エチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルキュミルパーオキサイド、1,1-ビス-(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス-t-ブチルパーオキシブタン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジ-イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-サイメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラ-メチルブチルハイドロパーオキサイド及び2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ハイドロパーオキシ)ヘキサンのグループから選ばれる1種または2種以上からなるものを挙げることができる。
【0066】
(2)潤剤
潤剤は、樹脂組成物及びその成形体の成形時の離型性などの付与、向上に有効である。
潤剤としては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸ブチル、シリコーンオイルなどを挙げることができる。
【0067】
(3)酸化防止剤
酸化防止剤は、樹脂組成物及びその成形体の品質劣化の防止に有効である。
酸化防止剤として、例えば、フェノール系、リン系やイオウ系の酸化防止剤などを挙げることができる。
【0068】
(4)その他
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)以外の、プロピレン-エチレンブロック共重合体及びプロピレン系重合体樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂やポリステル樹脂などの熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(C)以外のエラストマー(ゴム成分)などを含有することができる。
これらの任意成分は、種々の製品が多くの会社から市販されており、その目的に応じて、所望の製品を入手し、使用することができる。
【0069】
7.繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物は、プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)(以下、成分(A)とも記す。)及び繊維(B)、さらに、熱可塑性エラストマー(C)及び変性ポリオレフィン(D)を、必要に応じ任意添加成分を任意の順に加え、前記含有割合で、従来公知の方法で配合し、溶融混練する混練工程を経ることにより製造することができる。
混合は、通常、タンブラー、Vブレンダー、リボンブレンダーなどの混合機器を用いて行い、溶融混練は、通常、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー、撹拌造粒器などの混練機器を用いて(半)溶融混練し、造粒する。(半)溶融混練・造粒して製造する際には、前記各成分の配合物を同時に混練してもよく、また性能向上をはかるべく各成分を分割して混練する、すなわち、例えば、先ず成分(A)の一部または全部と、繊維(B)の一部を混練し、その後に残りの成分を混練・造粒するといった方法を採用することもできる。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、溶融混練する混練工程を経て得られた樹脂組成物ペレット中、あるいは成形体中に存在する繊維(B)の平均長さが0.3mm以上好ましくは0.4mm以上2.5mm以下となる様な複合化方法にて製造するのが好ましい。
なお、本明細書において、樹脂組成物ペレット中、あるいは成形体中に存在する繊維(B)の平均長さとは、デジタル顕微鏡によって測定された値を用いて平均を算出した値を意味する。その具体的な測定は、例えば繊維(B)がガラス繊維の場合、本発明の樹脂組成物ペレットあるいは成形体を燃焼し、灰化したガラス繊維を界面活性剤含有水に混合し、該混合水液を薄ガラス板上に滴下拡散した後、デジタル顕微鏡(キーエンス社製VHX-900型)を用いて100本以上のガラス繊維長さを測定しその平均値を算出する方法による。
また、樹脂組成物の好ましい製造方法としては、例えば2軸押出機による溶融混練において、例えば成分(A)、成分(C)及び(D)、その他任意成分を十分に溶融混練した後、繊維(B)をサイドフィード法などによりフィードし、繊維の折損を最小限に留めながら、集束繊維を分散させるなどの方法が挙げられる。
また、例えば成分(A)~(D)、その他任意成分を、ヘンシェルミキサー内で高速撹拌してこれらを半溶融状態とさせながら混合物中の繊維(B)を混練するいわゆる撹拌造粒方法も繊維の折損を最小限に留めながら繊維を分散させ易いので好ましい製造方法の一つである。
さらに、予め繊維(B)を除く成分(A)~(D)、その他任意成分を押出機などで溶融混練してペレットと成し、該ペレットと前記のガラス繊維含有ペレットや炭素繊維含有ペレットなどの所謂「繊維(B)含有ペレット」とを混合することにより繊維強化組成物とする製造方法も 前記同様の理由などで好ましい製造方法の一つである。
以上の通り、本発明の繊維強化組成物の好ましい製造方法としては、混練工程において 、繊維(B)以外の成分を混練した後に、繊維(B)を加える方法を挙げることができ、容易な製造方法により本発明の樹脂組成物を製造することができる。
【0071】
8.成形体の製造方法及び特性
本発明の成形体は、前記方法で製造された繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を、例えば、射出成形(ガス射出成形、二色射出成形、コアバック射出成形、サンドイッチ射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、シート成形及び中空成形などの周知の成形方法にて成形することによって得ることができる。この内、射出成形または射出圧縮成形にて得ることが好ましい。
【0072】
本発明の成形体は、シボ外観が良好であり、ウェルドラインが抑制されるという特性が発揮される。さらに、本願発明の大きな特徴は、ウェルド強度も良好であり、かつ剛性・衝撃バランスに優れることである。ウェルド強度が良好であることは、定量的な数値を示して評価することが出来るので、客観的な評価が可能となる。
さらに、本発明の成形体は、経済的に有利な成分を使用し、容易な製造方法にて製造し、低コストで得られる。
そのため、インストルメントパネル、グローブボックス、コンソールボックス、ドアトリム、肘掛け、グリップノブ、各種トリム類、天井部品、ハウジング類、ピラー類、マッドガード、バンパー、フェンダー、バックドアー、ファンシュラウドなどの自動車用内外装及びエンジンルーム内部品をはじめ、テレビ・掃除機などの電気電子機器部品、各種工業部品、便座などの住宅設備機器部品、建材部品などの用途に、好適に用いることができる。特に、外観に優れ、高い物性バランスの特性を兼ね備えることにより、自動車部品、特に内装用部品に好適である。
以下、本発明の成形体の特性について、各項目毎に説明する。
【0073】
(1)シボ光沢
シボ光沢は、成形体の外観の見栄えに大きな影響を与える。シボ光沢の指標としては、シボ面金型における光沢(シボ面光沢)の絶対値である。光沢値が小さいほど外観性能が良好であるといえる。
本発明の成形体は、シボ転写性が良好なので、シボ面を有するのが好ましく、光沢値は、好ましくは、1.0~1.4であり、より好ましくは1.0~1.3である。
シボ光沢は、後記する実施例項に記述の条件により評価される。
【0074】
(2)曲げ弾性率(FM)/低温衝撃強度(低温Charpy)
通常、ポリプロピレン系樹脂組成物においては剛性が高くなるに連れ、衝撃強度が低下する。
両者の関係はトレードオフであり、両者のバランスが求められる。
なお、自動車材用途として低温下での性能を求められるため、通常、-30℃のCharpy衝撃強度を測定する。
曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠し、試験温度=23℃にて測定される。
低温衝撃強度に関しては、JIS K7111に準拠し、試験温度=―30℃にて測定される。
曲げ弾性率/低温衝撃強度は、後記する実施例項に記述の条件により評価される。
【0075】
(3)成形外観性(ウェルド外観)
本発明の成形体は、成形外観性(ウェルド外観)が良好である。すなわち、本発明の形成体は、シボ面・鏡面の両方を加味して、ウェルドがまったく認められない、若しくは、ウェルドがわずかに認められるが実用性に問題ないことが好ましい。
ウェルド外観は、後記する実施例項に記述の条件により評価される。
【0076】
(4)ウェルド強度
本発明の成形体は、ウェルド強度が良好である。成形体のウェルド強度が低い場合、ウェルド部に応力集中しやすくなり、成形体に対して直角方向の力が加わった際、材料破壊が起こる可能性がある。
そのため、値は高ければ高いほど良いとされている。一方で、ウェルド強度が向上すると、背反として機械物性の低下やフローマーク等の外観が悪化する傾向である。
そのため、好ましくは、12以上25以下であり、より好ましくは14以上21以下である。
ウェルド強度は、後記する実施例項に記述の条件により評価される。
【0077】
(5)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に準拠に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定する値である。MFRが低すぎると成形性が劣り、シボ面の再現性も悪化することとなる。一方でMFRが高すぎても成型時の取り扱いが困難となる。
【実施例0078】
本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で用いた評価法、分析の各法および材料は、以下の通りである。
【0079】
1.評価方法
(1)シボ光沢値(%)(シボ面光沢) :グロス
・試験片=平板状(350×100×3t(mm))。
・シボ面=自動車内装皮シボ(シボ面の裏側:鏡面)。
・成形機=住友重機械社製、射出成型機SE220HD。
・成形条件=3点ゲート、成形温度230℃、金型温度40℃
・測定面(上記試験片の平面…自動車内装革シボ)
・光沢計=日本電色工業社製VG-2000型(i)鏡面光沢値(%)(鏡面光沢)
上記試験片のシボ面の光沢を上記光沢計を用いて入射角60°の条件で測定した(n数=2)。
シボ光沢は、成形体の外観の見栄えに大きな影響を与える。シボ光沢の指標としては、シボ面金型における光沢(シボ面光沢)の絶対値である。光沢値が小さいほど外観性能が良好であるといえる。
本発明の成形体は、シボ転写性が良好なので、シボ面を有するのが好ましく、光沢値は、好ましくは、1.0~1.4であり、より好ましくは1.0~1.3である。
(2)剛性(曲げ弾性率:FM)/低温衝撃強度(低温Charpy)
・成形機=東芝機械社製、射出成型機IS80G。
・成形条件=成形温度200℃、金型温度40℃、射出圧力60MPa
曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠し、試験温度=23℃にて測定した。
衝撃強度に関しては、JIS K7111に準拠し、試験温度=―30℃にて測定した。
曲げ弾性率の値として、好ましくは、3000~4500MPaであり、より好ましくは3200~14300 MPaである。
低温衝撃強度(低温Charpy)の値は、好ましくは、10~30KJ/mであり、より好ましくは14~25KJ/mである。
(3)ウェルドライン評価 :ウェルド外観
・試験片=平板状(350×100×3t(mm))。
・シボ面=自動車内装皮シボ(シボ面の裏側:鏡面)。
・成形機=住友重機械社製、射出成型機SE220HD。
・成形条件=3点ゲート、成形温度230℃、金型温度40℃
上記条件にて作成した試験片の鏡面・シボ面を目視判定し、下記基準にてウェルドの目立ち具合を判定した。
・鏡面・シボ面
〇:ウェルドがまったく認められない。
△:ウェルドがわずかに認められるが実用性に問題ない。
×:ウェルドが認められる。
【0080】
(4)ウェルド強度
・成形機=日精樹脂工業社製、射出成型機NEX80III。
・成形条件=成形温度200℃、金型温度40℃、射出圧力60MPa
・入れ子=2重T-ランナー金型
・試験片=JIS K7139に準拠したタイプA1
上記の入れ子や成形機を用い、ダンベル形状の両端から左右対称に溶融樹脂を充填させた試験片を用いて測定した。
値は高ければ高いほど良いとされている。一方で、ウェルド強度が向上すると、背反として機械物性の低下やフローマーク等の外観が悪化する傾向である。ウェルド強度は以下の基準で評価した。
○:14以上21以下
△:12以上14未満、または21を超えて25以下
×:12未満、または25を超える
【0081】
(5)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に準拠に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定した。MFRの評価は以下の通り。
○:10g/10分以上200g/10分以下
△:6g/10分以上10g/10分未満
×:6g/10分未満、又は200g/10分を超える
【0082】
2.材料
(1)プロピレン-エチレンランダム共重合体(A)
A-1:ノバテックMG03E(日本ポリプロ社製)
チーグラー系触媒、MFR(230℃、2.16kg荷重)30g/10分、エチレン含有量4.2重量%、融解ピーク温度(Tm)=147℃
A-2:ノバテックMG05E(日本ポリプロ社製)
チーグラー系触媒、MFR(230℃、2.16kg荷重)45g/10分、エチレン含有量3.8重量%、融解ピーク温度(Tm)=148℃
【0083】
(2)プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)
F-1:ノバテックBC10HRF(日本ポリプロ社製)
チーグラー系触媒、MFR(230℃、2.16kg荷重)100g/10分、エチレン含有量8重量%、融解ピーク温度(Tm)=164℃
F-2:ノバテックBC03B(日本ポリプロ社製)
チーグラー系触媒、MFR(230℃、2.16kg荷重)30g/10分、エチレン含有量9重量%、融解ピーク温度(Tm)=164℃
【0084】
(3)プロピレン単独重合体(G)
G-1:ノバテックMA04C(日本ポリプロ社製)
チーグラー系触媒、MFR(230℃、2.16kg荷重)40g/10分、融解ピーク温度(Tm)=165℃
G-2:ノバテックMA3U(日本ポリプロ社製)
チーグラー系触媒、MFR(230℃、2.16kg荷重)30g/10分、融解ピーク温度(Tm)=165℃
【0085】
(4)繊維(B)
B-1:T480H(日本電気硝子社製)
ガラス繊維、チョップドストランド(繊維径10μm、長さ4mm)。
【0086】
(5)熱可塑性エラストマー(C)
C-1:エンゲージEG8150(ダウ・ケミカル社製)
エチレン-オクテン共重合エラストマー、MFR(230℃、2.16kg荷重)1.0g/10分、密度0.870g/cm、形状=ペレット。
C-2:エンゲージEG8200(ダウ・ケミカル社製)
エチレン-オクテン共重合エラストマー、MFR(230℃、2.16kg荷重)10.6g/10分、密度0.870g/cm、形状=ペレット。
【0087】
(6)変性ポリオレフィン(D)
D-1:モディック(三菱ケミカル社製)
【0088】
(7)添加剤(E)
E-1:パーヘキサン25B―40(日油社製)
【0089】
3.実施例及び比較例
[実施例1~4及び比較例1~7]
(1) 樹脂組成物の製造
前記成分(A)~(E)を、下記の添加剤とともに表1に示す割合で配合し、下記の条件で混練造粒し、樹脂ペレットを製造した。
この際、前記成分(A)~(E)以外に、添加剤Eの他に、酸化防止剤、耐候剤、滑剤などを任意の比率で合計0.7重量部になるよう配合した。
混練装置:神戸製鋼所社製「KTX44」型2軸押出機。
混練条件:温度=230℃、スクリュー回転数=300rpm、吐出量=30kg/Hr(メイン)、10kg/Hr(サイド) 。
なお、ガラス繊維(B-1)は押出機中途からサイドフィードした。ここで、これらの樹脂ペレット中のガラス繊維(B-1)の平均長さは0.45mm~0.7mmの範囲内であった。
また、プロピレン系重合体樹脂(F)及び(G)は、比較例5、6においてランダム共重合体(A)に代えて、ベースとなる樹脂として用いた。
【0090】
【表1】
【0091】
(2) 樹脂組成物の評価
得られた樹脂ペレットを用いて、前記条件で性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
4. 評価
表1に示す結果から、本発明の樹脂組成物及びその成形体の発明要件を満たしている実施例1~4は、成形性を担保しつつ、ウェルド特性が良好であり、外観性能も優れており、さらに高剛性・衝撃のバランスが良好である。
今回は、成形性(メルトフローレート)とウェルド強度、ウェルド外観を〇、△、×で評価した。本発明の樹脂組成物は○が3つ以上で且つ×が無く、良好な物性を示していることが分かる。
また、グロス(シボ光沢値)や剛性、衝撃強度も良好な数値として、比較例と比較し、見劣りしないことが伺える。
【0093】
一方、上記本発明の特定事項を満たさない比較例において、比較例1~7に示す組成を持った樹脂組成物及びその成形体は、これらの性能バランスが不良で、実施例1~4のものに対して見劣りしている。
例えば、比較例1では、ウェルド外観の低下が著しく認められ、これはエラストマー(C)のMFRが高くなることにより、エラストマ―(C)が配向しやすく光沢が上がり、ウェルド部が見えやすくなったためと考えられる。
比較例2及び3では、MFRの低下やウェルド外観の低下が著しく認められ、これらは過酸化物によるハネアゲや高流動成分の不足によるものと考えられる。比較例4では、低温衝撃強度の大幅低下やウェルド外観が劣っており、これは変性PPの成分(D)を用いていないため、繊維(B)とPP部の接着性が低下し、物性が低下したと考えられる。比較例5及び6では、ベースの樹脂にプロピレン-エチレンランダム共重合体(A)を用いていないため、冷却固化が早くなり、ウェルド外観が見えやすくなったと考えられる。比較例7では、繊維を減らしたため、剛性や衝撃低下およびウェルド外観が著しく悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、成形性を維持しつつ、特にウェルド特性に優れ、成形外観や物性バランス良好な繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関するため、ウェルドなどの外観不良による塗装工程で品質不良を低減し、その結果、自動車部品の製造工程のコスト低減につながり易い。
さらに、本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物は、経済的に有利な成分を使用し、容易な製造方法にて製造でき、低コストである。
よって、本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物は、インストルメントパネル、グローブボックス、コンソールボックス、ドアトリム、肘掛け、グリップノブ、各種トリム類、天井部品、ハウジング類、ピラー類、マッド ガード、バンパー、フェンダー、バックドアー、ファンシュラウドなどの自動車用内外装及びエンジンルーム内部品をはじめ、テレビ・掃除機などの電気電子機器部品、各種工業部品、便座などの住宅設備機器部品、建材部品などの用途に、好適に用いることができ、 特にウェルドなどの外観良好で、高い物性バランスの特性を兼ね備えるため、自動車部品として好適に用いることができ、産業上大いに有用である。