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特開2024-103368光コヒーレンストモグラフィ装置及び分光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103368
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】光コヒーレンストモグラフィ装置及び分光装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240725BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20240725BHJP
   G02B 15/10 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G02B13/00
G02B15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007655
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】石鍋 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏太
(72)【発明者】
【氏名】清水 仁
(72)【発明者】
【氏名】三輪 珠美
【テーマコード(参考)】
2H087
4C316
【Fターム(参考)】
2H087KA11
2H087KA12
2H087LA30
2H087PA02
2H087PA03
2H087PA05
2H087PA06
2H087PA17
2H087PA18
2H087PA19
2H087PA20
2H087PB02
2H087PB04
2H087PB05
2H087PB07
2H087PB09
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA17
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA32
2H087QA34
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA31
2H087RA45
2H087RA46
2H087SA89
4C316AA09
4C316AB03
4C316AB11
4C316AB16
4C316FY04
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】光検出器を移動することなく深さレンジを変更する。
【解決手段】実施形態の光コヒーレンストモグラフィ装置は、サンプルに投射された測定光の戻り光と参照光とを重ね合わせて生成された干渉光を分光器で検出するように構成されている。分光器は、分散素子と光検出器と結像レンズとを含む。分散素子は、干渉光を複数の波長成分に分離する。光検出器は、分散素子により生成された複数の波長成分を別々に検出する。結像レンズは、分散素子と光検出器との間に配置されている。光コヒーレンストモグラフィ装置は、更に、レンズユニットと機構とを含む。レンズユニットは、分光器の焦点位置を変化させずに分光器の焦点距離を変化させるために使用される。機構は、分散素子と光検出器との間にレンズユニットを挿脱する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルに投射された測定光の戻り光と参照光とを重ね合わせて生成された干渉光を分光器で検出するように構成された光コヒーレンストモグラフィ装置であって、
前記分光器は、
前記干渉光を複数の波長成分に分離する分散素子と、
前記複数の波長成分を別々に検出する光検出器と、
前記分散素子と前記光検出器との間に配置された結像レンズと
を含み、
前記分光器の焦点位置を変化させずに前記分光器の焦点距離を変化させるためのレンズユニットと、
前記分散素子と前記光検出器との間に前記レンズユニットを挿脱する機構と
を含む、
光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項2】
前記レンズユニットは、少なくとも2つのレンズを含む、
請求項1の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つのレンズは、前記機構により、前記結像レンズと前記光検出器との間に挿入される、
請求項2の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つのレンズは、
第1の凸レンズと、
前記第1の凸レンズと前記光検出器との間に配置される凹レンズと
を含む、
請求項3の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項5】
前記レンズユニットは、前記凹レンズと前記光検出器との間に配置され、前記光検出器に対する前記複数の波長成分の入射角を減少させる第2の凸レンズを更に含む、
請求項4の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項6】
前記結像レンズの焦点距離f1と、前記レンズユニットの焦点距離f2と、前記結像レンズの後側主点と前記レンズユニットの前側主点との間の距離d1と、前記レンズユニットの後側主点と前記光検出器との間の距離d2と、前記結像レンズと前記レンズユニットとの合成焦点距離fとが、次の2つの式を満足する、請求項3の光コヒーレンストモグラフィ装置:d1=f1+f2-f1×f2/f、及び、f=d2+f×d1/f1。
【請求項7】
前記少なくとも2つのレンズは、前記機構により、前記分散素子と前記結像レンズとの間に挿入される、
請求項2の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項8】
前記少なくとも2つのレンズは、
凸レンズと、
前記凸レンズと前記結像レンズとの間に配置される凹レンズと
を含む、
請求項7の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項9】
前記少なくとも2つのレンズは、アフォーカル系である、
請求項7の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項10】
前記結像レンズの焦点距離f1と、前記レンズユニットの前記分散素子側の焦点距離fa及び前記結像レンズ側の焦点距離fbと、前記結像レンズと前記レンズユニットとの合成焦点距離fとが、次の式を満足する、請求項9の光コヒーレンストモグラフィ装置:f=(fa/|fb|)×f1。
【請求項11】
前記結像レンズと前記レンズユニットとの合成焦点距離を前記結像レンズの焦点距離で除算した商βの値は、1よりも大きく且つ5以下である、
請求項1の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項12】
前記商βの値は、1.5以上且つ3以下である、
請求項11の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項13】
入射光を複数の波長成分に分離する分散素子と、
前記複数の波長成分を別々に検出する光検出器と、
前記分散素子と前記光検出器との間に配置された結像レンズと
を含む分光器を備えた分光装置であって、
前記分光器の焦点位置を変化させずに前記分光器の焦点距離を変化させるためのレンズユニットと、
前記分散素子と前記光検出器との間に前記レンズユニットを挿脱する機構と
を含む、分光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光コヒーレンストモグラフィ装置及び分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)は、光の干渉性を利用してサンプル内部をマイクロメートルレベルの解像度で画像化する技術であり、医用イメージングや非破壊検査を含む様々な分野において実用化されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-101927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたOCT技術は、高速測定と奥行方向の測定範囲(深さレンジ)の拡大との両立を図るものである。この技術は、分光器内の変倍レンズを光軸方向に移動して焦点距離を変更するとともに円柱レンズ及び受光素子(光検出器)も光軸方向に移動することによって深さレンジを変化させるように構成されている。そのため、この技術を実用化するには、複雑且つ大規模な駆動機構や、複雑且つ精緻な同期的駆動制御が要求される。
【0005】
本開示の1つの目的は、光検出器を移動することなく深さレンジを変更することが可能な光コヒーレンストモグラフィ装置及び分光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置は、サンプルに投射された測定光の戻り光と参照光とを重ね合わせて生成された干渉光を分光器で検出するように構成されている。分光器は、分散素子と光検出器と結像レンズとを含む。分散素子は、干渉光を複数の波長成分に分離する。光検出器は、分散素子により生成された複数の波長成分を別々に検出する。結像レンズは、分散素子と光検出器との間に配置されている。光コヒーレンストモグラフィ装置は、更に、レンズユニットと機構とを含む。レンズユニットは、分光器の焦点位置を変化させずに分光器の焦点距離を変化させるために使用される。機構は、分散素子と光検出器との間にレンズユニットを挿脱する。
【0007】
いくつかの実施形態に係る分光装置は、分光器を含む。分光器は、分散素子と結像レンズと光検出器とを含む。分散素子は、入射光を複数の波長成分に分離する。光検出器は、分散素子により生成された複数の波長成分を別々に検出する。結像レンズは、分散素子と光検出器との間に配置されている。分光装置は、更に、レンズユニットと機構とを含む。レンズユニットは、分光器の焦点位置を変化させずに分光器の焦点距離を変化させるために使用される。機構は、分散素子と光検出器との間にレンズユニットを挿脱する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態によれば、光検出器を移動することなく深さレンジを変化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図2】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図3】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図4】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図5】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図6】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図7】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図8】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図9】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図10】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図11】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図12】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図13】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図14】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の構成の一例を表す概略図である。
図15】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置)の動作の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係る実施形態のいくつかの非限定的な態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
本開示に係るいずれかの態様に任意の公知技術を組み合わせることができる。例えば、本明細書で引用する文献に開示されている任意の事項を、本開示に係るいずれかの態様に組み合わせることができる。また、本開示に関連する技術分野における任意の公知技術を、本開示に係るいずれかの態様に組み合わせることができる。例えば、本開示に関連する技術又は当該技術に応用可能な技術について本願の出願人により開示された任意の技術事項(特許出願、論文などにおいて開示された事項)を、本開示に係るいずれかの態様に援用することができる。
【0012】
本開示に記載された様々な態様のうちのいずれか2つ以上の態様を、少なくとも部分的に組み合わせることが可能である。
【0013】
本開示において説明される要素の機能の少なくとも一部は、回路構成(circuitry)又は処理回路構成(processing circuitry)を用いて実装される。回路構成又は処理回路構成は、開示された機能の少なくとも一部を実行するように構成及び/又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路構成、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。プロセッサは、トランジスタ及び/又は他の回路構成を含む、処理回路構成又は回路構成とみなされる。本開示において、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、開示された機能の少なくとも一部を実行するハードウェア、又は、開示された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されたハードウェアであってよく、或いは、記載された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラム及び/又は構成された既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが或るタイプの回路構成とみなされ得るプロセッサである場合、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、このソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために使用される。
【0014】
本開示に係る実施形態のいくつかの態様を以下に挙げる。これらは単なる例示であり、本開示に係る実施形態を限定することを意図したものではない。また、本開示に係る任意の事項や任意の公知技術を、以下に例示するいずれかの態様に組み合わせることが可能である。
【0015】
実施形態の第1の非限定的な態様は、サンプルに投射された測定光の戻り光と参照光とを重ね合わせて生成された干渉光を分光器で検出するように構成された光コヒーレンストモグラフィ装置である。分光器は、分散素子と、光検出器と、結像レンズとを含んでいる。分散素子は、測定光の戻り光と参照光とを重ね合わせて生成された干渉光を複数の波長成分に分離する。光検出器は、分散素子により分離された干渉光の複数の波長成分を別々に検出する。結像レンズは、分散素子と光検出器との間に配置されている。
【0016】
光コヒーレンストモグラフィ装置は、更に、レンズユニットと、機構とを含む。レンズユニットは、分光器(分光器光学系)の焦点位置を変化させずに分光器(分光器光学系)の焦点距離を変化させるように設計され構成されている。機構は、分散素子と光検出器との間にレンズユニットを挿脱するように構成されている。
【0017】
換言すると、レンズユニットは、次の2つの条件(1)及び(2)を満足するように設計され構成されている。
【0018】
条件(1):レンズユニットと結像レンズとを合成した光学系(合成光学系)の焦点距離(合成焦点距離)は、結像レンズ単体の焦点距離と異なる。
【0019】
条件(2):レンズユニットと結像レンズとの合成光学系の焦点位置(合成焦点位置)は、結像レンズ単体の焦点位置に一致する。換言すると、分散素子と光検出器との間にレンズユニットが配置されている状態における分光器光学系の焦点位置と、分散素子と光検出器との間にレンズユニットが配置されていない状態における分光器光学系の焦点位置とが一致する。更に換言すると、分散素子と光検出器との間の光路にレンズユニットを挿入する動作を行っても分光器光学系の焦点位置が変化せず、且つ、分散素子と光検出器との間の光路からレンズユニットを移動する動作を行っても分光器光学系の焦点位置が変化しない。
【0020】
このような第1の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置によれば、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させるように設計され構成されたレンズユニットを分光器の分散素子と光検出器との間に挿脱できるように構成されているので、光検出器を移動することなく深さレンジを変化させることが可能である。したがって、複雑且つ大規模な駆動機構や、複雑且つ精緻な同期的駆動制御を用いることなく光コヒーレンストモグラフィの深さレンジを変化させることができるという、従来の技術では為し得ない有利な効果を達成することが可能である。
【0021】
実施形態の第2の非限定的な態様は、第1の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、レンズユニットは、少なくとも2つのレンズを含んでいる。ここで、レンズユニットは、2つ以上のレンズが一体化に形成されたレンズ(例えば、接合レンズ)を含んでいてもよい。
【0022】
レンズユニットに含まれるレンズの個数を少なくすることにより、レンズユニットの寸法を小さくすることや、レンズユニットと光検出器との間隔を大きくすることや、機構によるレンズユニットの移動距離を短くすることができるため、レンズユニットの移動による塵埃(ダスト)の飛散や舞い上がりを低減することが可能となり、それに起因する不都合を低減することが可能になる。その具体例として、光検出器の検出面に塵埃が付着するリスクを低減することが可能になる。
【0023】
実施形態の第3の非限定的な態様は、第2の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズが、機構により、結像レンズと光検出器との間に挿入されるように構成されている。
【0024】
第3の非限定的な態様によれば、分光器へのレンズユニットの挿入位置の1つの例を提供できる。第3の非限定的な態様に基づいて達成可能ないくつかの効果については後述する。
【0025】
実施形態の第4の非限定的な態様は、第3の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズが、第1の凸レンズと、この第1の凸レンズと光検出器との間に配置される凹レンズとを含んでいる。
【0026】
第4の非限定的な態様によれば、結像レンズを通過した光が凸レンズ及び凹レンズをこの順に通過して光検出器に導かれるため、これとは逆に凹レンズ及び凸レンズの順に光を通過させる場合と比較してレンズユニットの寸法を小さくすることができる。実際、第4の非限定的な態様とは逆に、結像レンズを通過した光が凹レンズ及び凸レンズをこの順に通過して光検出器に導かれる構成においては、凹レンズを通過した光を光検出器に入射させるために大きな径の凸レンズを設ける必要があり、その結果、レンズユニットの寸法が大きくなってしまう。また、結像レンズを通過した光が2つの凸レンズを通過して光検出器に導かれるように構成された光学系も考えられるが、2つの凸レンズの間隔が第4の非限定的な態様における凸レンズと凹レンズとの間隔よりも大きくなるため、やはりレンズユニットの寸法が大きくなってしまう。
【0027】
実施形態の第5の非限定的な態様は、第4の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、レンズユニットは、第2の凸レンズを更に含んでいる。第2の凸レンズは、凹レンズと光検出器との間に配置されており、光検出器に対する複数の波長成分の入射角を減少させるように設計され構成されている。
【0028】
第5の非限定的な態様によれば、光検出器に対する入射角を小さくすること(つまり、光検出器の検出面に対して垂直に近い方向から光を投射すること)ができるので、分光器の受光効率を向上させることが可能になる。例えば、光検出器に対してテレセントリックになるようにレンズユニットを設計し構成することで、分光器の受光効率を最適化することができる。
【0029】
実施形態の第6の非限定的な態様は、第3~第5の非限定的な態様のいずれかの光コヒーレンストモグラフィ装置であって、結像レンズの焦点距離f1と、レンズユニットの焦点距離f2と、結像レンズの後側主点とレンズユニットの前側主点との間の距離d1と、レンズユニットの後側主点と光検出器との間の距離d2と、結像レンズとレンズユニットとの合成焦点距離fとが、次の2つの式を満足するように設計され構成されている:d1=f1+f2-f1×f2/f、及び、f=d2+f×d1/f1。
【0030】
第6の非限定的な態様によれば、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズが結像レンズと光検出器との間に挿入される場合においてレンズユニットが前述の条件(1)及び(2)を満足するための1つの具体的な条件式を提供することができる。なお、第6の非限定的な態様に係る具体的な条件式は1つの例であり、これに限定されるものではない。
【0031】
実施形態の第7の非限定的な態様は、第2の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズが、機構により、分散素子と結像レンズとの間に挿入されるように構成されている。
【0032】
第7の非限定的な態様によれば、分光器へのレンズユニットの挿入位置の1つの例を提供できる。また、第7の非限定的な態様によれば、レンズユニットや機構を光検出器から離れた位置に配置することができるため、レンズユニットの移動による塵埃の飛散や舞い上がりを低減することが可能となり、それに起因する不都合を低減することが可能になる。その具体例として、光検出器の検出面に塵埃が付着するリスクを低減することが可能になる。
【0033】
実施形態の第8の非限定的な態様は、第7の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズが、凸レンズと、この凸レンズと結像レンズとの間に配置される凹レンズとを含んでいる。
【0034】
第8の非限定的な態様によれば、分散素子を通過(例えば、透過又は反射)した光が凸レンズ及び凹レンズをこの順に通過して結像レンズに導かれるため、これとは逆に凹レンズ及び凸レンズの順に光を通過させる場合と比較してレンズユニットの寸法を小さくすることができる。実際、第8の非限定的な態様とは逆に、分散素子を通過した光が凹レンズ及び凸レンズをこの順に通過して結像レンズに導かれる構成においては、凹レンズを通過した光を結像レンズに入射させるために大きな径の凸レンズを設ける必要があり、その結果、レンズユニットの寸法が大きくなってしまう。なお、第8の非限定的な態様とは逆の構成において、大きな径の凸レンズを設ける代わりに大きな径の結像レンズを設けることも考えられるが、分光器の寸法が大きくなるという別の問題が生じる。このように、第8の非限定的な態様によれば、分光器及びレンズユニットの双方のコンパクト化を図ることが可能である。また、分散素子を通過した光が2つの凸レンズを通過して結像レンズに導かれるように構成された光学系も考えられるが、2つの凸レンズの間隔が第8の非限定的な態様における凸レンズと凹レンズとの間隔よりも大きくなるため、やはりレンズユニットの寸法が大きくなってしまう。
【0035】
実施形態の第9の非限定的な態様は、第7又は第8の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、少なくとも2つのレンズはアフォーカル系として設計され構成されている。
【0036】
なお、第9の非限定的な態様では、分散素子を経由した直後の光は平行光であり、分光器光学系の光路にレンズユニットが配置されていない状態において結像レンズは平行光を収束光に変換する。
【0037】
第9の非限定的な態様によれば、分散素子を経由した平行光がレンズユニットに入射し、且つ、レンズユニットから平行光が出射されるため、分光器光学系の光路にレンズユニットを挿脱するだけで深さレンジを切り替えることが可能である。つまり、光検出器の移動や結像レンズの制御(例えば、結像レンズの移動、結像レンズに含まれている少なくとも1つのレンズの挿脱など)といった、レンズユニットの挿脱とは別の動作を行うことなく、深さレンジの切り替えを行うことが可能である。また、レンズユニットの偏心や倒れ(傾斜)に起因する分光器の光学性能の劣化を小さくすることができる。
【0038】
実施形態の第10の非限定的な態様は、第9の非限定的な態様の光コヒーレンストモグラフィ装置であって、結像レンズの焦点距離f1と、レンズユニットの分散素子側の焦点距離fa及び結像レンズ側の焦点距離fbと、結像レンズとレンズユニットとの合成焦点距離fとが、次の式を満足するように設計され構成されている:f=(fa/|fb|)×f1。
【0039】
ここで、レンズユニットの結像レンズ側の焦点距離fbの絶対値は、凸レンズ及び凹レンズのいずれかを任意的に採用できることを意味する。凸レンズの場合、上記式は次のようになる:f=(fa/fb)×f1。一方、凹レンズの場合、上記式は次のようになる:f=[fa/(-fb)]×f1。
【0040】
第10の非限定的な態様によれば、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズが分散素子と結像レンズとの間に挿入される場合においてレンズユニットが前述の条件(1)及び(2)を満足するための1つの具体的な条件式を提供することができる。なお、第10の非限定的な態様に係る具体的な条件式は1つの例であり、これに限定されるものではない。
【0041】
本開示に係るいくつかの実施形態において、第3~第6の非限定的な態様のいずれかと、第7~第10の非限定的な態様のいずれかとを、少なくとも部分的に組み合わせた構成を採用することができる。
【0042】
例えば、第3の非限定的な態様と第7の非限定的な態様とを組み合わせた1つの実施形態は、レンズユニットは、1つ以上のレンズを含む第1のレンズ群と、別の1つ以上のレンズを含む第2のレンズ群とを含み、第1のレンズ群が、機構により、結像レンズと光検出器との間に挿入されるように構成されており、且つ、第2のレンズ群が、機構により、分散素子と結像レンズとの間に挿入されるように構成されている。このような実施形態によれば、第3の非限定的な態様と第7の非限定的な態様とを選択的に適用することができ、これらの有利な効果を選択的に提供することができる。また、この実施形態に対して、第4~第6の非限定的な態様のいずれか、第8~第10の非限定的な態様のいずれか、本開示に係る任意の事項、任意の公知技術などを組み合わせることができる。
【0043】
第3の非限定的な態様と第7の非限定的な態様とを組み合わせた別の実施形態は、レンズユニットに含まれている少なくとも2つのレンズを、機構により、結像レンズと光検出器との間及び分散素子と結像レンズとの間に選択的に挿入するように構成されている。このような実施形態によっても、第3の非限定的な態様と第7の非限定的な態様とを選択的に適用することができ、これらの有利な効果を選択的に提供することができる。また、この実施形態に対して、第4~第6の非限定的な態様のいずれか、第8~第10の非限定的な態様のいずれか、本開示に係る任意の事項、任意の公知技術などを組み合わせることができる。
【0044】
実施形態の第11の非限定的な態様は、第1~第10の非限定的な態様のいずれかの光コヒーレンストモグラフィ装置であって、結像レンズとレンズユニットとの合成焦点距離を結像レンズの焦点距離で除算した商βが1<β≦5を満足するように設計され構成されている。
【0045】
第11の非限定的な態様によれば、実施形態に係る有利な効果を達成するための1つの定量的条件を提供することができる。なお、深さレンジと解像度とは互いにトレードオフの関係にあるから、これら双方の観点から実施形態の有効性を評価することができる。
【0046】
実施形態の第12の非限定的な態様は、第11の非限定的な態様のいずれかの光コヒーレンストモグラフィ装置であって、結像レンズとレンズユニットとの合成焦点距離を結像レンズの焦点距離で除算した商βが1.5≦β≦3を満足するように設計され構成されている。
【0047】
第12の非限定的な態様によれば、実施形態に係る有利な効果を達成するためにより好ましい1つの定量的条件を提供することができる。
【0048】
実施形態の第13の非限定的な態様は、分散素子と、光検出器と、結像レンズと、レンズユニットと、機構とを含む分光装置である。分散素子は、入射光を複数の波長成分に分離する。光検出器は、分散素子により分離された入射光の複数の波長成分を別々に検出する。結像レンズは、分散素子と光検出器との間に配置されている。レンズユニットは、分光器光学系の焦点位置を変化させずに分光器光学系の焦点距離を変化させるように設計され構成されている。機構は、分散素子と光検出器との間にレンズユニットを挿脱するように構成されている。
【0049】
第13の非限定的な態様によれば、第1の非限定的な態様と同様の有利な効果を達成することが可能である。また、第13の非限定的な態様に対して、第2~第12の非限定的な態様のいずれか、本開示に係る任意の事項、任意の公知技術などを組み合わせることができる。
【0050】
以下の実施形態では、スペクトラルドメインOCTについて説明する。スペクトラルドメインOCTは、低コヒーレンス光源(広帯域光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、サンプルからの測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル分布を分光器で検出し、検出されたスペクトル分布に信号処理(フーリエ変換など)を施して画像を構築するイメージング技術である。
【0051】
1つの実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置として機能する眼科装置の構成例を図1に示す。眼科装置1は、生体眼のイメージングを行うものであり、光コヒーレンストモグラフィ装置と眼底カメラとが組み合わされたマルチモダリティ装置である。
【0052】
光コヒーレンストモグラフィ装置としての眼科装置1は、被検眼Eに対してOCTスキャンを適用することによって被検眼Eのデータを光学的に収集する。眼科装置1は、被検眼Eの対象部位(例えば、眼底、前眼部など)をスキャンすることによってOCTデータ(干渉信号)を収集する。眼科装置1は、収集されたOCTデータに基づいて対象部位の画像(OCT画像)を生成することができる。
【0053】
OCT画像の種類として、断層画像(断面画像)、3次元画像、正面画像、機能画像などがある。断層画像には、Bスキャン画像などがある。3次元画像には、スタックデータ、ボリュームデータ(ボクセルデータ)などがある。正面画像には、Cスキャン画像、en-face画像、シャドウグラム、プロジェクション画像などがある。機能画像には、モーションコントラスト画像(OCTアンジオグラフィ画像)、血流動態画像、位相画像などがある。
【0054】
眼底カメラとしての眼科装置1は、被検眼Eを撮影してデジタル写真を生成する。眼底Efを撮影して生成されるデジタル写真を眼底像と呼び、前眼部を撮影して生成されるデジタル写真を前眼部像と呼ぶ。眼底像には、静止画像である眼底写真、動画像である眼底観察画像などがある。前眼部像には、静止画像である前眼部写真、動画像である前眼部観察画像などがある。
【0055】
別の実施形態では、眼底カメラの代わりに、走査型レーザー検眼鏡(SLO)、スリットランプ顕微鏡、手術用顕微鏡などの眼科モダリティが設けられてよい。更に別の実施形態は、マルチモダリティ装置ではなく、シングルモダリティ装置(光コヒーレンストモグラフィ装置)であってよい。更に別の実施形態は、光コヒーレンストモグラフィ装置と、生体眼の光学特性を測定する装置(眼科測定装置)とが組み合わされた眼科装置であってよい。眼科測定装置には、レフラクトメーター、ケラトメーター、眼圧計、ウェーブフロントアナライザー、スペキュラーマイクロスコープ、視野計などがある。更に別の実施形態は、光コヒーレンストモグラフィ装置と、生体眼の治療に用いられる装置(眼科治療装置)とが組み合わされた眼科装置であってよい。眼科治療装置には、レーザー治療装置、白内障手術装置、硝子体手術装置などがある。
【0056】
図1に示すように、眼科装置1は、眼底カメラユニット2と、OCTユニット100と、演算制御ユニット200とを含んでいる。眼底カメラユニット2は、生体眼のデジタル写真を生成するための要素を含んでいる。OCTユニット100には、OCTスキャンを実行するための要素を含んでいる。演算制御ユニット200は、各種の処理を実行するための要素を含んでいる。演算制御ユニット200により実行される処理には、演算、制御、画像処理、解析処理などがある。
【0057】
図1に示す眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底像)を取得するための光学系が設けられている。眼底観察画像は、例えば、近赤外光を照明光に用いた動画撮影で生成されるモノクロの動画像である。眼底写真は、例えば、フラッシュ発光される可視光を照明光に用いた静止画撮影で生成されるカラー画像、又は、フラッシュ発光される近赤外光若しくは可視光を照明光に用いた静止画撮影で生成されるモノクロ静止画像である。眼底カメラユニット2は、ここに例示した画像とは別の種類の画像を生成可能であってもよい。そのような画像には、フルオレセイン蛍光造影画像(FA画像)、インドシアニングリーン蛍光造影画像(ICGA画像)、自発蛍光造影画像などがある。
【0058】
眼底カメラユニット2には、被検者の顔を支持するための顎受けや額当てが設けられている。更に、眼底カメラユニット2には、照明光学系10と撮影光学系30とが設けられている。照明光学系10は、被検眼Eに照明光を投射する。撮影光学系30は、被検眼Eに投射された照明光の戻り光をイメージセンサ35又はイメージセンサ38に導く。イメージセンサ35及び38は、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサであってよい。また、撮影光学系30は、OCTユニット100から眼底カメラユニット2に入射した測定光を被検眼Eに導くとともに、被検眼Eからの測定光の戻り光をOCTユニット100に導く。
【0059】
照明光学系10の観察光源11は、例えば、ハロゲンランプ又は発光ダイオード(LED)であってよい。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14によって近赤外成分が抽出される。近赤外成分からなる観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、リレーレンズ18、絞り19、及びリレーレンズ20を経由し、ホールミラー21(孔部の周囲のミラー)により反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに投射される。観察照明光の戻り光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、ホールミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射され、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、結像レンズ34によってイメージセンサ35の受光面に結像される。イメージセンサ35は、例えば所定のフレームレートで戻り光を検出する。表示装置3には、イメージセンサ35からの出力に基づく画像(例えば、前眼部観察画像又は眼底観察画像)が表示される。
【0060】
撮影光源15は、例えば、キセノンランプ又はLEDであってよい。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同じ経路を通って被検眼Eに投射される。撮影照明光の戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され結像レンズ37によってイメージセンサ38の受光面に結像される。表示装置3には、イメージセンサ38からの出力に基づく画像(例えば、前眼部写真又は眼底写真)が表示される。
【0061】
液晶ディスプレイ(LCD)39は、被検眼Eに提示される情報を表示する。この情報には、固視標、視力測定用指標などがある。LCD39から出力された光(その一部)は、ハーフミラー33Aにて反射され、ミラー32により反射され、合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、ホールミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。固視標の表示位置を変更することによって固視の方向(固視位置)を変更できる。
【0062】
眼底カメラユニット2には、アライメント光学系50とフォーカス光学系60とが設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための指標(アライメント指標)を生成する。フォーカス光学系60は、被検眼Eに対してフォーカス(ピント)を合わせるための指標(スプリット指標)を生成する。
【0063】
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、絞り53、及びリレーレンズ54を経由し、ダイクロイックミラー55により反射され、ホールミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22によって被検眼Eに投射される。アライメント光の戻り光(例えば、角膜反射光又は眼底反射光)は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46、及びホールミラー21の孔部を経由し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、結像レンズ34によってイメージセンサ35の受光面に結像される。イメージセンサ35による受光像(アライメント指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。アライメント指標に基づいてマニュアルアライメント又はオートアライメントが実行される。
【0064】
フォーカス調整を行う際には、照明光学系10の光路上に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射され、リレーレンズ20を経由し、ホールミラー21により反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに投射される。フォーカス光の戻り光(例えば、角膜反射光又は眼底反射光)は、アライメント光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれて検出される。イメージセンサ35による受光像(スプリット指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。スプリット指標に基づいてマニュアルフォーカシング又はオートフォーカシングが実行される。
【0065】
ダイクロイックミラー46は、デジタル写真撮影用光路とOCT用光路(サンプルアーム)とを合成している。ダイクロイックミラー46は、OCTスキャンに用いられる波長帯の光を反射し、且つ、デジタル写真撮影に用いられる波長帯の光を透過させる。サンプルアームには、OCTユニット100側から順に、コリメートレンズユニット40と、光路長変更部41と、光スキャナ42と、合焦レンズ43と、ミラー44と、リレーレンズ45とが設けられている。合焦レンズ43は、サンプルアームの光軸に沿う方向に移動可能である。
【0066】
光路長変更部41は、図1に示す矢印の方向に移動可能に構成されており、それによりサンプルアームの長さ(光路長)が変化する。サンプルアームの光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、例えば、コーナーキューブと、これを移動する機構とを含む。
【0067】
光スキャナ42は、アライメントにより、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。光スキャナ42は、サンプルアームを通過する測定光を偏向する。測定光を偏向する方向を変化させることによって、測定光を用いた被検眼Eのスキャンが実現される。光スキャナ42は、例えば、測定光をx方向に偏向するガルバノミラーと、測定光をy方向に偏向するガルバノミラーとを含む。このような光スキャナ42により、xy平面上の任意の方向に測定光を偏向することが可能になる。
【0068】
OCTユニット100の1つの態様を図2に示す。OCTユニット100には、被検眼EにOCTスキャンを適用するための要素(光学系、機構など)が設けられている。本実施形態のOCTユニット100は、公知のスペクトラルドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィ装置と同様の要素群101~115に加えて、本実施形態に特有の要素群120及び130を含んでいる。なお、本例のOCTユニット100に含まれる干渉計はマイケルソン型であるが、別のタイプの干渉計(例えば、マッハツェンダー型干渉計)を用いてもよい。
【0069】
スペクトラルドメインOCTを実行するために、OCTユニット100は、広帯域光源(低コヒーレンス光源)により発せられた光(低コヒーレンス光)を参照光LRと測定光LSとに分割し、測定光LSを眼底カメラユニット2に提供し、被検眼Eに投射された測定光LSの戻り光を眼底カメラユニット2から受け、測定光LSの戻り光と参照光路(参照アーム)を経由した参照光LSとを重ね合わせて干渉光LCを生成し、干渉光LCのスペクトル分布を検出するように構成されている。干渉光LCのスペクトル分布を検出した結果(検出信号、干渉信号)は演算制御ユニット200に送られる。
【0070】
光源ユニット101は広帯域の低コヒーレンス光L0を出力する。低コヒーレンス光L0は、例えば、近赤外領域の波長帯(約800nm~900nm程度)を含み、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する。なお、人眼では視認できない波長帯、例えば1040~1060nm程度の中心波長を有する近赤外光を低コヒーレンス光L0として用いてもよい。光源ユニット101は、任意の光出力デバイスを含んでおり、例えば、スーパールミネセントダイオード(SLD)、LED、及び半導体光増幅器(SOA)のいずれかを含む。
【0071】
光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0は、光ファイバ102によりファイバカプラ103に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0072】
ファイバカプラ103により生成された参照光LRは、光ファイバ104を通じてアッテネータ105に導かれて光量が調整され、光ファイバ104を通じて偏波コントローラ106に導かれて偏波状態が調整されてファイバカプラ109に導かれる。
【0073】
ファイバカプラ103により生成された測定光LSは、光ファイバ107を通じてコリメートレンズユニット40に導かれて平行光として出射され、光路長変更部41、光スキャナ42、合焦レンズ43、ミラー44、及びリレーレンズ45を経由してダイクロイックミラー46に導かれて反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに投射される。測定光LSは、被検眼E(特に眼底Ef)の様々な深さ位置において散乱及び反射されて後方散乱光を生じる。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれ、光ファイバ108を通じてファイバカプラ109に導かれる。
【0074】
ファイバカプラ109は、測定光LSの戻り光と、参照アームを経由した参照光LRとを重ね合わせて干渉光LCを生成する。干渉光LCは、光ファイバ110の出射端111から出射され、コリメートレンズ112により平行光に変換される。平行光に変換された干渉光LCは分光器に入射する。すなわち、平行光に変換された干渉光LCは、分散素子113により分光(スペクトル分解)され、結像レンズ114により平行光から収束光に変換される。スペクトル分解され且つ収束光に変換された干渉光LCは、分光器の光路にレンズユニット120が配置されている場合にはレンズユニット120を介してイメージセンサ115に導かれ、分光器の光路にレンズユニット120が配置されていない場合にはレンズユニット120を介さずにイメージセンサ115に導かれる。なお、本実施形態における分光器は、分散素子113、結像レンズ114、及びイメージセンサ115を含んでいる。
【0075】
分散素子113は、例えば、透過型の回折格子又は反射型の回折格子であってよい。結像レンズ114は、1枚以上のレンズからなり、結像レンズ系、ズームレンズ系、フーリエ変換レンズ系などとも呼ばれる。イメージセンサ115は、例えばラインセンサ又はエリアセンサなどの光検出器であり、干渉光LCの複数のスペクトル成分(波長成分)を受光素子アレイにより別々に検出して検出信号を生成する。生成された検出信号は演算制御ユニット200に送られる。
【0076】
レンズユニット120は、レンズを含んでおり、例えば2枚以上のレンズを含んでいる。レンズユニット120は、前述した条件(1)及び(2)を満足するように設計され構成されている。すなわち、レンズユニット120は、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させるように設計され構成されている。
【0077】
換言すると、レンズユニット120は、結像レンズ114とレンズユニット120との合成光学系の焦点距離(合成焦点距離)が結像レンズ114の焦点距離と異なるように、且つ、この合成光学系の焦点位置(合成焦点位置)が結像レンズ114の焦点位置に一致するように設計され構成されている。
【0078】
更に換言すると、レンズユニット120は、結像レンズ114とレンズユニット120との合成焦点距離が結像レンズ114の焦点距離と異なるように、且つ、結像レンズ114とイメージセンサ115との間にレンズユニット120が配置されているか否かにかかわらず分光器光学系の焦点位置が同じになるように設計され構成されている。
【0079】
更に換言すると、レンズユニット120は、結像レンズ114とレンズユニット120との合成焦点距離が結像レンズ114の焦点距離と異なるように、且つ、結像レンズ114とイメージセンサ115の間の光路にレンズユニット120の挿入する動作を行っても分光器光学系の焦点が移動しないように、更には、結像レンズ114とイメージセンサ115の間の光路からレンズユニット120を退避させる動作を行っても分光器光学系の焦点が移動しないように設計され構成されている。
【0080】
レンズユニット120の移動は機構130によって実行される。機構130は、例えば、後述する制御部210の制御の下に動作するアクチュエータと、アクチュエータにより発生された駆動力をレンズユニット120に伝達する伝達機構とを含んでいてよい。或いは、機構130は、ユーザーが印可した駆動力をレンズユニット120に伝達する伝達機構を含んでいてもよい。
【0081】
レンズユニット120の1つの例であるレンズユニット120Aについて、図3を参照しつつ説明する。図3は、分光器の光路にレンズユニット120Aが配置されている状態を示している。レンズユニット120Aは、2つのレンズ121及び122を含み、機構130によって結像レンズ114とイメージセンサ115との間に退避可能に挿入される。
【0082】
分光器光学系の光路外に配置されているレンズユニット120Aを結像レンズ114とイメージセンサ115との間の位置に移動することによって、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させることができる。逆に、結像レンズ114とイメージセンサ115との間に配置されているレンズユニット120Aを分光器光学系の光路外に移動することによって、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させることができる。
【0083】
レンズユニット120Aに含まれる2つのレンズ121及び122は、凸レンズ121及び凹レンズ122である。すなわち、レンズユニット120Aは、凸レンズ121と、凸レンズ121とイメージセンサ115との間に配置される凹レンズ122と、を含んでいる。換言すると、結像レンズ114とイメージセンサ115との間に配置されるレンズユニット120Aに含まれる2つのレンズ121及び122のうち、結像レンズ114側に配置されるレンズ121は凸レンズであり、イメージセンサ115側に配置されるレンズ122は凹レンズである。このような構成を採用することで、レンズユニット120Aのコンパクト化を図ることができる。
【0084】
レンズユニット120Aが用いられる分光器光学系の設計及び構成の1つの例について、図4を更に参照して説明する。図4は3つの図(上段図、中段図、下段図)を含んでいる。図4の上段図は、分光器光学系の光路にレンズユニット120Aが配置されていない状態を表している。図4の中段図は、分光器光学系の光路にレンズユニット120Aが配置されている状態を表している。図4の下段図は、分光器光学系の光路にレンズユニット120Aが配置されている状態であって、結像レンズ114とレンズユニット120Aとを合成光学系として表現したときの状態を表している。
【0085】
図4の上段図及び中段図に示すように、結像レンズ114の前側主点の位置をH1で示し、結像レンズ114の後側主点の位置をH1´で示す。また、図4の中段図に示すように、レンズユニット120A(レンズユニット120Aを構成するレンズ群)の前側主点の位置をH2で示し、レンズユニット120Aの後側主点の位置をH2´で示す。また、図4の上段図、中段図、及び下段図に示すように、イメージセンサ115(その受光面)の位置をKで示す。
【0086】
図4Aの上段図に示すように、結像レンズ114の焦点距離(例えば、結像レンズ114を構成するレンズ群の合成焦点距離)をf1とする。分散素子113から出射された平行光をイメージセンサ115に集光する(結像する)ために、結像レンズ114の後側主点位置H1´とイメージセンサ115の受光面位置Kとの間の距離H1´Kが結像レンズ114の焦点距離f1に等しくなるように設計され構成されている。結像レンズ114の設計は、例えば、撮影範囲(例えば、深さレンジ)、コリメートレンズ112に関するパラメータ、分散素子113に関するパラメータなどに基づいてなされる。
【0087】
レンズユニット120Aの焦点距離(例えば、レンズユニット120Aを構成するレンズ群の合成焦点距離、より具体的には、凸レンズ121と凹レンズ122との合成焦点距離)をf2とする。図4の中段図に示すように、結像レンズ114の後側主点位置H1´とレンズユニット120Aの前側主点位置H2との間の距離H1´H2をd1とする。また、図4の中段図に示すように、レンズユニット120Aの後側主点H2´とイメージセンサ115の受光面位置Kとの間の距離H2´Kをd2とする。これらの距離d1及びd2は、レンズユニット120Aの光学的構成、分光器光学系の光路への挿入位置などに基づき決定される。
【0088】
図4の下段図に示すように、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成光学系の焦点距離(合成焦点距離)をfとする。レンズユニット120Aによるズーム倍率をβとすると、ズーム倍率βは、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成焦点距離fを結像レンズ114の焦点距離f1で除算した商で表される:β=f/f1。
【0089】
図4の中段図及び下段図から分かるように、結像レンズ114の焦点距離f1とレンズユニット120Aの焦点距離f2との合成焦点距離f、つまり、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成光学系の焦点距離fは、次式のように表される:f=(f1×f2)/(f1+f2-d1)。また、レンズユニット120Aの後側主点位置H2´と、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成光学系の後側主点位置H´との間の距離δ2は、次式のように表される:δ2=f×d1/f1。
【0090】
以上より、分光器光学系の光路にレンズユニット120Aが配置されていない状態における結像レンズ114の焦点位置と、分光器光学系の光路にレンズユニット120Aが配置されている状態における結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成光学系の焦点位置とが一致するための条件、換言すると、これら2つの焦点位置がともにイメージセンサ115の受光面位置Kに配置されるための条件、更に換言すると、分光器光学系の光路に対するレンズユニット120Aの挿脱によって分光器光学系の焦点位置が変化しないための条件は、次のように表される:f=H2´K+δ2=d2+f×d1/f1。
【0091】
また、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成光学系の焦点距離についての上記の式f=(f1×f2)/(f1+f2-d1)を変形すると、d1=f1+f2-f1×f2/fとなる。
【0092】
したがって、本例に係る分光器の光学系は、分光器の光路に対するレンズユニット120Aの挿脱によって分光器の焦点位置を変化させることなく分光器の焦点距離を変化させるために、結像レンズ114の焦点距離f1と、レンズユニット120Aの焦点距離f2と、結像レンズ114の後側主点とレンズユニット120Aの前側主点との間の距離d1と、レンズユニット120Aの後側主点とイメージセンサ115との間の距離d2と、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成焦点距離fとが、次の2つの式を満足するように設計され構成されている:d1=f1+f2-f1×f2/f、及び、f=d2+f×d1/f1。
【0093】
1つの具体例を図5に示す。本具体例におけるパラメータは次のように設定されている:結像レンズ114の焦点距離f1=107.7ミリメートル;レンズユニット120Aの焦点距離f2=-58.4ミリメートル;結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成焦点距離f=214ミリメートル;結像レンズ114の後側主点とレンズユニット120Aの前側主点との間の距離d1=78.6ミリメートル;レンズユニット120Aの後側主点とイメージセンサ115との間の距離d2=57.8ミリメートル;レンズユニット120Aの後側主点位置H2´と、結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成光学系の後側主点位置H´との間の距離δ2=156.2ミリメートル。このとき、d2+δ2=214=fとなり、上記の条件式f=d2+f×d1/f1が満足されている。
【0094】
結像レンズ114とレンズユニット120Aとの合成焦点距離fを結像レンズ114の焦点距離f1で除算した商βの値、つまり、レンズユニット120Aのズーム倍率βは、1よりも大きく且つ5以下であってよい(1<β≦5)。前述したように深さレンジと解像度とはトレードオフの関係にあるが、双方のパラメータを勘案すると、ズーム倍率βがこの範囲(1<β≦5)を外れている場合には、例えば眼科診断用OCT計測において、一方のパラメータの条件が実用上不十分なものになるおそれがある。
【0095】
深さレンジ及び解像度の双方を実用上十分なものとするために、ズーム倍率βは、1.5以上且つ3以下であってよい(1.5≦β≦3)。このとき、レンズユニット120Aの焦点距離f2の範囲は、f2=-1.1×f1~-0.3×f1となる。また、凸レンズ121の焦点距離をf3とし、凹レンズ122の焦点距離をf4とすると、これら焦点距離f3及びf4の比率(f3/f4)の範囲は-1.5~5.0程度となる。ここで、結像レンズ114の焦点距離f1とズーム倍率βとを用いると、f1×f3/(f4×β)=-200~-150程度となる。なお、深さレンジの範囲や解像度の範囲は、サンプルの種類や、OCT計測で得られたデータの用途などに応じて任意に決定されてよい。
【0096】
OCT計測に使用される光の波長範囲(例えば、840±50ナノメートル)に基づいて、レンズユニット120Aを構成するレンズ121及び122のアッベ数を決定することができる。
【0097】
レンズユニット120の別の例であるレンズユニット120Bについて、図6を参照しつつ説明する。図6は、分光器の光路にレンズユニット120Bが配置されている状態を示している。レンズユニット120Bは、3つのレンズ123、124及び125を含み、機構130によって結像レンズ114とイメージセンサ115との間に退避可能に挿入される。
【0098】
分光器光学系の光路外に配置されているレンズユニット120Bを結像レンズ114とイメージセンサ115との間の位置に移動することによって、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させることができる。逆に、結像レンズ114とイメージセンサ115との間に配置されているレンズユニット120Bを分光器光学系の光路外に移動することによって、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させることができる。
【0099】
レンズユニット120Bに含まれる3つのレンズ123~125は、凸レンズ123、凹レンズ124、及び凸レンズ125である。すなわち、レンズユニット120Bは、凸レンズ123と、凸レンズ123とイメージセンサ115との間に配置される凹レンズ124と、凹レンズ124とイメージセンサ115との間に配置される凸レンズ125と、を含んでいる。換言すると、結像レンズ114とイメージセンサ115との間に配置されるレンズユニット120Bに含まれる3つのレンズ123~125のうち、結像レンズ114側に配置されるレンズ123は凸レンズであり、イメージセンサ115側に配置されるレンズ125も凸レンズであり、これらの間に配置されるレンズ124は凹レンズである。このような構成を採用することで、図3の例と同様に、レンズユニット120Bのコンパクト化を図ることができる。
【0100】
凸レンズ121と凹レンズ122とからなる図3のレンズユニット120Aと異なり、図6のレンズユニット120Bは、凸レンズ123及び凹レンズ124に加えて、更なる凸レンズ125を含んでいる。凸レンズ125は、凹レンズ124とイメージセンサ115との間に配置され、イメージセンサ115に対する光の入射角を減少させるように作用する。イメージセンサ115に対する光の入射角を小さくすることにより、換言すると、イメージセンサ115の受光面に対して垂直に近い方向から光を投射することにより、分光器の受光効率が向上する。特に、イメージセンサ115に対してテレセントリックになるようにレンズユニット120Bを設計し構成することで、分光器の受光効率を最適化することができる。
【0101】
図6のレンズユニット120Bは、上記の条件式(d1=f1+f2-f1×f2/f、f=d2+f×d1/f1)を満足するように設計され構成されてよい。1つの具体例を図7に示す。本具体例におけるパラメータは次のように設定されている:結像レンズ114の焦点距離f1=107.7ミリメートル;レンズユニット120Bの焦点距離f2=-388.7ミリメートル;結像レンズ114とレンズユニット120Bとの合成焦点距離f=214ミリメートル;結像レンズ114の後側主点とレンズユニット120Bの前側主点との間の距離d1=-85.4ミリメートル;レンズユニット120Bの後側主点とイメージセンサ115との間の距離d2=383.7ミリメートル;レンズユニット120Bの後側主点位置H2´と、結像レンズ114とレンズユニット120Bとの合成光学系の後側主点位置H´との間の距離δ2=169.7ミリメートル。このとき、d2+δ2=214=fとなり、上記の条件式f=d2+f×d1/f1が満足されている。
【0102】
結像レンズ114とレンズユニット120Bとの合成焦点距離fを結像レンズ114の焦点距離f1で除算した商βの値、つまり、レンズユニット120Bのズーム倍率βは、1よりも大きく且つ5以下であってよい(1<β≦5)。更に、ズーム倍率βは、1.5以上且つ3以下であってよい(1.5≦β≦3)。これにより、例えば眼科診断のための光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置1)において、深さレンジ及び解像度の双方が実用上十分なものとなる。
【0103】
OCTユニット100の別の態様を図8に示す。図2のOCTユニット100は、結像レンズ114とイメージセンサ115との間にレンズユニット120が退避可能に挿入されるように構成されているが、本態様のOCTユニット100Aは、分散素子113と結像レンズ114との間にレンズユニット120が退避可能に挿入されるように構成されている。分散素子113と結像レンズ114との間にレンズユニット120を挿入するように構成された本態様によれば、結像レンズ114とイメージセンサ115との間にレンズユニット120を挿入する場合と比較して、イメージセンサ115とレンズユニット120との間の距離が大きくなるため、イメージセンサ115に塵埃が付着するリスクが低減される。
【0104】
レンズユニット120の挿入位置や、レンズユニット120の光学的構成(例えば、レンズのパラメータ、レンズの配置など)を除いて、本態様のOCTユニット100Aの構成は図2のOCTユニット100の構成と同様であってよい。
【0105】
図8のOCTユニット100Aに搭載されるレンズユニット120の1つの例であるレンズユニット120Cについて、図9を参照しつつ説明する。図9は、分光器の光路にレンズユニット120Cが配置されている状態を示している。レンズユニット120Cは、2つのレンズ126及び127を含み、機構130によって分散素子113と結像レンズ114との間に退避可能に挿入される。
【0106】
分光器光学系の光路外に配置されているレンズユニット120Cを分散素子113と結像レンズ114との間の位置に移動することによって、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させることができる。逆に、分散素子113と結像レンズ114との間に配置されているレンズユニット120Cを分光器光学系の光路外に移動することによって、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させることができる。
【0107】
レンズユニット120Cに含まれる2つのレンズ126及び127は、凸レンズ126及び凹レンズ127である。すなわち、レンズユニット120Cは、凸レンズ126と、凸レンズ126と結像レンズ114との間に配置される凹レンズ127と、を含んでいる。換言すると、分散素子113と結像レンズ114との間に配置されるレンズユニット120Cに含まれる2つのレンズ126及び127のうち、分散素子113側に配置されるレンズ126は凸レンズであり、結像レンズ114側に配置されるレンズ127は凹レンズである。このような構成を採用することで、レンズユニット120Cのコンパクト化を図ることができる。
【0108】
レンズユニット120Cに含まれる凸レンズ126及び凹レンズ127は、アフォーカル系として設計され構成されている。換言すると、レンズユニット120Cに入射する光は平行光であり、レンズユニット120Cから出射する光も平行光である。このように、本態様では、分散素子113から出射する光は平行光であり、この平行光がレンズユニット120Cに入射し、レンズユニット120Cから出射する光は平行光であり、レンズユニット120Cから出射した平行光が結像レンズ114に入射し、結像レンズ114から出射する光は収束光であり、結像レンズ114から出射した収束光はイメージセンサ115の受光面に結像する(集束する)。
【0109】
更に、レンズユニット120Cは、縮小倍のビームエキスパンダーとして作用するように設計され構成されてよい。この場合、レンズユニット120Cはアフォーカルレンズ系であり、出射平行光のビーム径は入射平行光のビーム径よりも小さい。
【0110】
分散素子113と結像レンズ114との間に退避可能に挿入されるレンズユニットに含まれるレンズ系の構成はアフォーカル系に限定されない。例えば、図10に示すレンズユニット120Dに含まれる2つのレンズ128及び129(凸レンズ128及び凹レンズ129)は、アフォーカル系ではない。
【0111】
なお、図9に示すように、分光器光学系の光路において平行光が案内される箇所(平行光部)にアフォーカル系のレンズユニット120Cを挿入する構成を採用することによって、縮小倍のビームエキスパンダーとして作用するレンズユニット120Cの偏心や倒れ(傾斜)による光学性能の劣化を小さくすることができる。よって、いくつかの態様において図10のレンズユニット120Dのようなアフォーカル系ではないレンズユニットを採用することは可能であるが、図9のレンズユニット120Cのようなアフォーカル系のレンズユニットを採用する利点は大きいと考えられる。
【0112】
レンズユニット120Cが付帯された分光器光学系の設計及び構成について、いくつかの例を説明する。
【0113】
図11は2つの図(上段図、下段図)を含んでいる。図11の上段図は、分散素子113側に配置される焦点距離faの凸レンズと、結像レンズ114側に配置される焦点距離fbの凸レンズとを含む、分散素子113と結像レンズ114との間に退避可能に挿入されるアフォーカル系のレンズユニットを表している。本例のレンズユニットでは、2つの凸レンズの間の距離が2つの焦点距離の和fa+fbとなるため、レンズユニットの寸法が比較的大きくなってしまう。
【0114】
一方、図11の下段図は、分散素子113側に配置される焦点距離fa(>0)の凸レンズと、結像レンズ114側に配置される焦点距離fb(<0)の凹レンズとを含む、分散素子113と結像レンズ114との間に退避可能に挿入されるアフォーカル系のレンズユニットを表している。ここで、凸レンズの焦点距離faは、凹レンズの焦点距離fbの絶対値よりも大きいとする(fa>|fb|)。本例のレンズユニットでは、2つのレンズの間の距離が凸レンズの焦点距離faと凹レンズの焦点距離fbの絶対値|fb|との差fa-|fb|となるため、図11の上段図のように2つの凸レンズを含む場合よりもレンズユニットの寸法を小さくすることが可能になる。なお、図9のレンズユニット120C及び図10のレンズユニット120Dは、本例のレンズユニットの例である。
【0115】
図12は2つの図(上段図、下段図)を含んでいる。図12の上段図は、レンズユニットが分光器光学系の光路に配置されていない状態を表している。図12の下段図は、分光器光学系の光路にレンズユニットが配置されている状態を表している。
【0116】
本例のレンズユニットは、分散素子113側に配置される焦点距離fa(>0)の凸レンズと、結像レンズ114側に配置される焦点距離fb(<0)の凹レンズとを含む、分散素子113と結像レンズ114との間に退避可能に挿入されるアフォーカル系のレンズユニットである。
【0117】
以下、本例のレンズユニットは、図9のレンズユニット120Cであるとする。レンズユニット120Cは、分散素子113側に配置される焦点距離fa(>0)の凸レンズ126と、結像レンズ114側に配置される焦点距離fb(<0)の凹レンズ127とを含む、分散素子113と結像レンズ114との間に退避可能に挿入されるアフォーカル系のレンズユニットである。
【0118】
結像レンズ114の焦点距離(例えば、結像レンズ114を構成するレンズ群の合成焦点距離)をf1とする。また、焦点距離f1の結像レンズ114と、焦点距離faの凸レンズ126及び焦点距離fbの凹レンズ127を含むレンズユニット120Cとの合成光学系の焦点距離(合成焦点距離)をfとする。
【0119】
レンズユニット120Cによるズーム倍率をβとすると、ズーム倍率βは、結像レンズ114とレンズユニット120Cとの合成焦点距離fを結像レンズ114の焦点距離f1で除算した商で表される:β=f/f1。また、縮小倍のエキスパンダーとしてのレンズユニット120Cの角倍率をγとすると、角倍率γはズーム倍率βに等しい:γ=β=f/f1。ここで、角倍率γは1よりも大きいとする:γ>1。つまり、本例では、分光器光学系の光路にレンズユニット120Cを挿入することによってOCT計測の深さレンジが拡大する。
【0120】
以上より、本例に係る分光器の光学系は、分光器の光路に対するレンズユニット120Cの挿脱によって分光器の焦点位置を変化させることなく分光器の焦点距離を変化させるために、結像レンズ114の焦点距離f1と、レンズユニット120Cの分散素子113側の焦点距離fa及び結像レンズ114側の焦点距離fbと、結像レンズ114とレンズユニット120Cとの合成焦点距離fとが、次の式を満足するように設計され構成されている:f=(fa/|fb|)×f1。前述したように、レンズユニット120Cの結像レンズ114側の焦点距離fbの絶対値は、凸レンズ及び凹レンズのいずれかを選択できることを意味している。
【0121】
1つの具体例を図13に示す。本具体例におけるパラメータは次のように設定されている:結像レンズ114の焦点距離f1=107.7ミリメートル;レンズユニット120Cの分散素子113側の焦点距離fa=94.202;レンズユニット120Cの結像レンズ114側の焦点距離fb=-47.101;レンズユニット120Cの角倍率γ=fa/|fb|=2.0;結像レンズ114とレンズユニット120Cとの合成焦点距離f=γ×f1=215.4。本具体例によれば、分光器の光路に対するレンズユニット120Cの挿脱によって分光器の焦点位置を変化させることなく分光器の焦点距離を変化させることができる。
【0122】
結像レンズ114とレンズユニット120Cとの合成焦点距離fを結像レンズ114の焦点距離f1で除算した商βの値、つまり、レンズユニット120Bのズーム倍率βは、1よりも大きく且つ5以下であってよい(1<β≦5)。更に、ズーム倍率βは、1.5以上且つ3以下であってよい(1.5≦β≦3)。これにより、例えば眼科診断のための光コヒーレンストモグラフィ装置(眼科装置1)において、深さレンジ及び解像度の双方が実用上十分なものとなる。また、OCT計測に使用される光の波長範囲(例えば、840±50ナノメートル)に基づいて、レンズユニット120Cを構成するレンズ126及び127のアッベ数を決定することができる。
【0123】
眼科装置1の制御系及び処理系の構成例を図14に示す。演算制御ユニット200には、制御部210、画像構築部220、及びデータ処理部230が設けられている。図示は省略するが、眼科装置1は、通信デバイス、ドライブ装置(リーダー/ライター)などを含んでいてもよい。
【0124】
制御部210は、各種の制御を実行する。制御部210は、主制御部211と記憶部212とを含む。主制御部211は、プロセッサを含み、眼科装置1の要素(図1に示された要素及び図2に示された要素)を制御する。主制御部211は、プロセッサを含むハードウェアと、制御ソフトウェアとの協働によって実現される。記憶部212は、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブなどの記憶装置を含み、データを記憶する。
【0125】
主制御部211は、眼底カメラユニット2に設けられた要素の制御を実行し、例えば、イメージセンサ35及び38、LCD39、光路長変更部41、光スキャナ42、合焦駆動部31A及び43Aなどを制御する。
【0126】
光路長変更部41は、主制御部211の制御の下に、サンプルアームの光路に設けられた反射器(リトロリフレクタ)を移動することにより、サンプルアームの光路長を変更する。
【0127】
合焦駆動部31Aは、主制御部211の制御の下に、撮影光路に設けられた合焦レンズ31と照明光路に設けられたフォーカス光学系60とを一体的に又は同期的に移動することにより、照明光学系10及び撮影光学系30を用いた撮影の合焦位置(焦点位置)を変更する。
【0128】
光スキャナ42は、予め設定されたスキャンパターンに応じたOCTスキャンを被検眼Eに適用するために、主制御部211の制御の下に、このスキャンパターンにしたがって測定光LSを逐次に偏向する。
【0129】
合焦駆動部43Aは、主制御部211の制御の下に、サンプルアームに設けられた合焦レンズ43を移動することにより、測定光LSの合焦位置(焦点位置)、つまり、測定光LSのビームウェストの深さ位置(z位置)を変更する。
【0130】
移動機構150は、眼科装置1の光学系を3次元的に移動するように構成されている。主制御部211は、例えばアライメントやトラッキングのために移動機構150の制御を実行する。トラッキングは、被検眼Eの動きに対応して装置光学系をリアルタイムで移動する動作であり、被検眼Eに対する好適なアライメント状態及び好適な合焦状態を維持するために実行される。
【0131】
主制御部211は、OCTユニット100に設けられた要素の制御を実行し、例えば、光源ユニット101、アッテネータ105、偏波コントローラ106、イメージセンサ115、機構130などを制御する。
【0132】
光源ユニット101は、主制御部211の制御の下に、点灯と非点灯との切り替え、出力される光L0の強度(光量)の変更、出力される光L0の波長の変更などを行う。
【0133】
アッテネータ105は、主制御部211の制御の下に、参照光LRの光量の調整を行う。
【0134】
偏波コントローラ106は、主制御部211の制御の下に、参照光LRの偏波状態の調整を行う。
【0135】
機構130は、主制御部211の制御の下にレンズユニット120を移動することにより、分光器光学系の光路にレンズユニット120を挿入し、及び、分光器光学系の光路からレンズユニット120を退避する。
【0136】
画像構築部220は、イメージセンサ115から提供される信号(スペクトル分布を表すOCTデータ)に基づいて、被検眼EのOCT画像データを構築する。構築されるOCT画像データは、1つ以上のAスキャン画像データであり、例えば、複数のAスキャン画像データからなるBスキャン画像データ(2次元断面像データ)である。画像構築部220は、プロセッサを含むハードウェアと、画像構築ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0137】
イメージセンサ115から提供されるOCTデータからOCT画像データを構築するために、画像構築部220は、例えば、従来のスペクトラルドメインOCTと同様に、AラインごとのOCTデータに基づくスペクトル分布に信号処理を施してAラインごとの反射強度プロファイル(Aラインプロファイル)を生成し、各Aラインプロファイルを画像化して複数のAスキャン画像データを生成し、これらAスキャン画像データをスキャンパターン(複数のスキャン点の配置)にしたがって配列する。Aラインプロファイルを生成するための信号処理には、ノイズリダクション(デノイジング)、フィルタリング、高速フーリエ変換(FFT)などが含まれる。別の信号処理法を用いる場合には、その手法に応じた公知のOCT画像データ構築処理を採用することができる。
【0138】
画像構築部220は、被検眼Eの3次元領域(ボリューム)を表現した3次元画像データを構築するように構成されてもよい。3次元画像データは、3次元座標系により画素(ピクセル)の位置が定義された画像データであり、その例としてスタックデータやボリュームデータがある。スタックデータは、複数のスキャンラインに沿って得られた複数の断面像を、これらスキャンラインの位置関係にしたがって配列することによって構築される画像データである。ボリュームデータは、例えばスタックデータに補間処理やボクセル化処理などを適用することによって構築される、3次元的に配列されたボクセルを画素とする画像データであり、ボクセルデータとも呼ばれる。
【0139】
画像構築部220は、このようにして構築されたOCT画像データから新たなOCT画像データを作成することができる。いくつかの例示的な態様において、画像構築部220は、3次元画像データにレンダリングを適用することができる。レンダリングの例として、ボリュームレンダリング、サーフェスレンダリング、最大値投影(MIP)、最小値投影(MinIP)、多断面再構成(MPR)などがある。
【0140】
いくつかの例示的な態様において、画像構築部220は、3次元画像データからOCT正面画像を構築するように構成されてよい。例えば、画像構築部220は、3次元画像データをz方向(Aライン方向、深さ方向)に投影してプロジェクションデータを構築することができる。また、画像構築部220は、3次元画像データの部分データ(例えば、スラブ)からプロジェクションデータを構築することができる。この部分データは、例えば、画像セグメンテーション(単に、セグメンテーションとも呼ばれる)を用いて自動で指定され、又は、ユーザーによって手動で指定される。このセグメンテーションの手法は任意であってよく、例えば、エッジ検出等の画像処理、及び/又は、機械学習を利用したセグメンテーションを含んでいてよい。このセグメンテーションは、例えば、画像構築部220又はデータ処理部230により実行される。
【0141】
眼科装置1は、OCTモーションコントラスト撮影(motion contrast imaging)を実行可能であってよい。OCTモーションコントラスト撮影は、眼内に存在する液体や粒子の動きを抽出するための機能的イメージング技術である。OCTモーションコントラスト撮影は、例えば、血管の描出を描出するためのOCTアンジオグラフィ(OCT Angiography、OCTA)に用いられる。
【0142】
データ処理部230は、被検眼Eの画像に対して特定のデータ処理を適用するように構成されている。データ処理部230は、例えば、プロセッサを含むハードウェアと、データ処理ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0143】
ユーザーインターフェイス240は、表示部241と操作部242とを含む。表示部241は、表示装置3を含む。操作部242は、各種の操作デバイスや入力デバイスを含む。ユーザーインターフェイス240は、例えばタッチパネルのような表示機能と操作機能とが一体となったデバイスを含んでいてもよい。ユーザーインターフェイス240の少なくとも一部を含まない実施形態を構築することも可能である。例えば、表示デバイスは、眼科装置1に接続された外部装置であってよい。
【0144】
本実施形態に係る眼科装置1が実行する動作について説明する。図15は、眼科装置1の動作の1つの例を表す。
【0145】
まず、眼科装置1は、被検眼E(眼底Ef)に対するアライメント及びフォーカス調整を実行する(S1)。
【0146】
次に、OCT計測の深さレンジの設定が行われる(S2)。
【0147】
或る態様では、ユーザーインターフェイス240を用いて深さレンジの設定が行われる。主制御部211は、操作画面を表示部241に表示する。操作画面には、深さレンジを設定するためのグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)が設けられている。ユーザーは、このGUI及び操作部242を用いて深さレンジを設定することができる。
【0148】
別の態様では、深さレンジを変更するためのハードウェア(例えば、レバー、ボタンなど)が眼科装置1に設けられている。ユーザーは、このハードウェアを操作することによって深さレンジを設定することができる。
【0149】
更に別の態様では、眼科装置1は、深さレンジを自動で設定するためのソフトウェアを備えており、例えば、被検者の属性、被検者の検査データ、被検者の診断データ、被検眼の属性、被検眼の検査データ、被検眼の診断データなどに基づいて深さレンジの設定を実行するように構成される。これらの参照データは、例えば、電子カルテデータ、読影レポート、画像データなどから取得される。
【0150】
本動作例では、レンズユニット120が分光器光学系の光路に配置されている状態が広い深さレンジ(広レンジ)に対応し、レンズユニット120が分光器光学系の光路に配置されていない状態が狭い深さレンジ(狭レンジ)に対応するものとする。
【0151】
ステップS2の深さレンジ設定において広レンジが選択された場合(S3:広レンジ)、主制御部211は、機構130を制御することによってレンズユニット120を分光器光学系の光路に挿入する(S4)。レンズユニット120が光路に挿入されたら、処理はステップS5に進む。
【0152】
ステップS2の深さレンジ設定において狭レンジが選択された場合(S3:狭レンジ)、レンズユニット120が光路から退避されている状態で、処理はステップS5に進む。
【0153】
次に、眼科装置1は、被検眼E(眼底Ef)にOCTスキャンを適用する(S5)。このOCTスキャンは、ステップS2で設定された深さレンジで実行される。
【0154】
次に、眼科装置1は、ステップS5のOCTスキャンで収集されたデータに基づいてOCT画像データを生成する(S6)。
【0155】
次に、眼科装置1は、ステップS6で生成されたOCT画像データに基づいて、表示部241にOCT画像を表示する(S7)。以上で、本動作例は終了となる(エンド)。
【0156】
本実施形態に係る眼科装置1のいくつかの作用及びいくつかの効果について説明する。
【0157】
眼科装置1は、被検眼E(サンプル)に投射された測定光LSの戻り光と参照光LRとを重ね合わせて生成された干渉光LCを分光器で検出するように構成された光コヒーレンストモグラフィ装置として機能する。分光器は、分散素子113、結像レンズ114、及びイメージセンサ115(光検出器)を含んでいる。分散素子113は、干渉光LCを複数の波長成分に分離する。結像レンズ114は、分散素子133とイメージセンサ115との間に配置されており、分散素子113により生成された複数の波長成分をイメージセンサ115の受光面に結像する。イメージセンサ115は、分散素子113により生成された複数の波長成分を別々に検出する。眼科装置1は、更に、レンズユニット120及び機構130を含んでいる。レンズユニット120は、分光器の焦点位置を変化させずに分光器の焦点距離を変化させるために使用される。機構130は、分散素子130とイメージセンサ115との間の光路にレンズユニット120を挿入し、且つ、分散素子130とイメージセンサ115との間の光路に配置されているレンズユニット120を光路から退避する。
【0158】
換言すると、眼科装置1は、被検眼E(サンプル)に投射された測定光LSの戻り光と参照光LRとを重ね合わせて生成された干渉光LCを分光器で検出するように構成された光コヒーレンストモグラフィ装置として機能するものであって、分光器は、分散素子113、ズームレンズ系、及びイメージセンサ115(光検出器)を含んでいる。分散素子113は、干渉光LCを複数の波長成分に分離する。ズームレンズ系は、結像レンズ114及びレンズユニット120を含んでいる。結像レンズ114は、分散素子113とイメージセンサ115との間に固定的に配置されている。つまり、分光器の光路外に結像レンズ114を移動することはできない。一方、レンズユニット120は、分散素子113とイメージセンサ115との間に挿脱可能である。分光器の光路に対してレンズユニット120を挿脱することにより、ズームレンズ系の焦点位置を変化させることなくズームレンズ系の焦点距離を変化させることができる。
【0159】
このように、眼科装置1は、レンズユニット120を分散素子113とイメージセンサ115との間に挿脱することによって、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させるように構成されているので、イメージセンサ115を移動することなく深さレンジを変化させることができる。したがって、レンズ及び光検出器の双方を光軸方向に移動するように構成された従来の技術と比較して、簡単で小規模な機構130によって深さレンジを変更することができ、また、複雑で精緻な同期的駆動制御を行う必要もない。
【0160】
本実施形態において、レンズユニット120は、少なくとも2つのレンズを含んでいてよい。少ない個数のレンズによってレンズユニット120を構成することにより、レンズユニットの寸法を小さくすることができ、レンズユニット120とイメージセンサ115との間隔を大きくすることができ、機構130によるレンズユニット120の移動距離を短くすることができる。これにより、レンズユニット120の移動に起因してイメージセンサ115に塵埃が付着するリスクが低減される。
【0161】
本実施形態において、レンズユニット120に含まれている少なくとも2つのレンズは、機構130によって、結像レンズ114とイメージセンサ115との間に挿入されてよい。
【0162】
本実施形態において、結像レンズ114とイメージセンサ115との間に挿入されるレンズユニット120に含まれている少なくとも2つのレンズは、凸レンズ121(凸レンズ123;第1の凸レンズ)と、凸レンズ121(凸レンズ123)とイメージセンサ115との間に配置される凹レンズ122(凹レンズ124;凹レンズ)とを含んでいてよい。このような構成によれば、結像レンズ114を通過した光が凸レンズ121(123)及び凹レンズ122(124)をこの順に通過してイメージセンサ115に導かれるため、レンズユニット120のコンパクト化を図ることができる。
【0163】
本実施形態において、結像レンズ114とイメージセンサ115との間に挿入されるレンズユニット120は、凸レンズ123及び凹レンズ124に加えて、凸レンズ125(第2の凸レンズ)を更に含んでいてよい。凸レンズ125は、凹レンズ124とイメージセンサ115との間に配置され、分散素子113により生成された複数の波長成分がイメージセンサ115に入射する角度(入射角)を減少させる。このような構成によれば、分光器の受光効率の向上を図ることができる。例えば、イメージセンサ115に対してテレセントリックなレンズユニット120を採用することで、分光器の受光効率を最適化することができる。
【0164】
本実施形態において、結像レンズ114とイメージセンサ115との間に挿入されるレンズユニット120及び分光器は、結像レンズ114の焦点距離f1と、レンズユニット120の焦点距離f2と、結像レンズ114の後側主点とレンズユニット120の前側主点との間の距離d1と、レンズユニット120の後側主点とイメージセンサ115との間の距離d2と、結像レンズ114とレンズユニット120との合成焦点距離fとが、次の2つの式を満足するように構成されていてよい:d1=f1+f2-f1×f2/f、及び、f=d2+f×d1/f1。
【0165】
本実施形態において、レンズユニット120に含まれている少なくとも2つのレンズは、機構130によって、分散素子113と結像レンズ114との間に挿入されてよい。この構成によれば、レンズユニット120の移動に起因してイメージセンサ115に塵埃が付着するリスクを低減することができる。
【0166】
本実施形態において、分散素子113と結像レンズ114との間に挿入されるレンズユニット120に含まれている少なくとも2つのレンズは、凸レンズ126(128)と、凸レンズ126(128)と結像レンズ114との間に配置される凹レンズ127(129)とを含んでいてよい。このような構成によれば、分散素子113を通過した光が凸レンズ126(128)及び凹レンズ127(129)をこの順に通過して結像レンズ114に導かれるため、レンズユニット120のコンパクト化を図ることができる。
【0167】
本実施形態において、分散素子113と結像レンズ114との間に挿入されるレンズユニット120に含まれている少なくとも2つのレンズは、アフォーカル系であってよい。この構成によれば、分散素子113を経由した平行光がレンズユニット120に入射し、且つ、レンズユニット120から平行光が出射されるため、分光器光学系の光路にレンズユニット120を挿脱するだけで深さレンジを切り替えることが可能である。また、レンズユニットの偏心や倒れ(傾斜)に起因する分光器の光学性能の劣化を小さくすることができる。
【0168】
本実施形態において、分散素子113と結像レンズ114との間に挿入されるレンズユニット120及び分光器は、結像レンズ114の焦点距離f1と、レンズユニット120の分散素子113側の焦点距離fa及び結像レンズ114側の焦点距離fbと、結像レンズ114とレンズユニット120との合成焦点距離fとが、次の式を満足するように構成されていてよい:f=(fa/|fb|)×f1。
【0169】
本実施形態において、結像レンズ114とレンズユニット120との合成焦点距離を結像レンズ114の焦点距離で除算した商(レンズユニット120のズーム倍率)βの値は、1よりも大きく且つ5以下であってよい。更に、レンズユニット120のズーム倍率βの値は、1.5以上且つ3以下であってよい。
【0170】
本実施形態は、次のような分光装置を提供する。分光装置は分光器を含む。この分光器は、分散素子、結像レンズ、及び光検出器を含む。分散素子は、分光器に入射した光(入射光)を複数の波長成分に分離する。結像レンズは、分散素子と光検出器との間に配置されており、分散素子により生成された複数の波長成分を光検出器の検出面に結像する。光検出器は、複数の波長成分を別々に検出する。分光装置は、更に、レンズユニット及び機構を含む。機構は、分散素子と光検出器との間にレンズユニットを挿脱する。レンズユニットは、分光器の焦点位置を変化させずに分光器の焦点距離を変化させるように構成されている。
【0171】
換言すると、分光装置は、分散素子、結像レンズ、光検出器、レンズユニット、及び機構を含む。分散素子は、分光装置に入射した光(入射光)を複数の波長成分に分離する。結像レンズは、分散素子と光検出器との間に配置されており、分散素子により生成された複数の波長成分を光検出器の検出面に結像する。光検出器は、複数の波長成分を別々に検出する。機構は、分散素子と光検出器との間にレンズユニットを挿脱する。レンズユニットは、分光器の焦点位置を変化させずに分光器の焦点距離を変化させるように構成されている。
【0172】
このような分光装置によれば、レンズユニットを分散素子と光検出器との間に挿脱することによって、分光器光学系の焦点位置を変化させることなく分光器光学系の焦点距離を変化させることができるので、光検出器を移動することなく深さレンジを変化させることが可能である。したがって、レンズ及び光検出器の双方を光軸方向に移動するように構成された従来の技術と比較して、簡単で小規模な機構によって深さレンジを変更することができ、また、複雑で精緻な同期的駆動制御を行う必要もない。
【0173】
本実施形態の眼科装置1に関する任意の事項を分光装置に組み合わせることができる。それにより得られる分光装置は、組み合わされた事項に応じた作用及び効果を奏する。
【0174】
本開示において説明した実施形態及び態様は例示に過ぎない。本開示に係る発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形(省略、置換、付加等)を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0175】
1 眼科装置(光コヒーレンストモグラフィ装置)
113 分光素子
114 結像レンズ
115 イメージセンサ
120 レンズユニット
130 機構

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