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特開2024-103371光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103371
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20240725BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240725BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240725BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240725BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20240725BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240725BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240725BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240725BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J7/38
C09J11/06
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
G09F9/00 313
G02F1/1335 510
C09J175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007659
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 はる奈
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】福田 樹
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
3K107
4J004
4J040
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB16
2H149BA02
2H149BA13
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA12
2H149EA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA05Y
2H149FA08X
2H149FA12X
2H149FA66
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2H149FD21
2H149FD25
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA95X
2H291FA95Z
2H291FB02
2H291FD34
2H291FD35
2H291GA01
2H291GA23
2H291LA13
2H291LA21
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC25
3K107CC32
3K107CC45
3K107EE26
3K107FF14
4J004AA10
4J004AA17
4J004AB01
4J004AB05
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC03
4J004EA06
4J004FA08
4J040DF012
4J040DF031
4J040DF062
4J040GA13
4J040GA20
4J040HD32
4J040JA09
4J040KA16
4J040LA01
4J040MA10
4J040NA17
5G435AA14
5G435BB12
5G435FF05
5G435KK07
(57)【要約】
【課題】光学フィルムに対する密着性に優れ、経時で安定した耐久性を示す粘着剤層を形成でき、かつ、初期硬化性に優れる粘着膜を形成できる光学フィルム用粘着剤組成物等の提供。
【解決手段】カルボキシ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体であって、(メタ)アクリル系重合体100g当たりの、カルボキシ基の含有量が1.30~27.80mmol/100gであり、水酸基の含有量が0.80~17.30mmol/100gである(メタ)アクリル系重合体と、ポリイソシアネート系化合物と、ポリアジリジン系化合物と、を含み、ポリイソシアネート系化合物の含有量が(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01~1.0質量部であり、ポリアジリジン系化合物の含有量が(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01~0.05質量部である、光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体であって、前記(メタ)アクリル系重合体100g当たりの前記カルボキシ基の含有量が1.30mmol/100g~27.80mmol/100gであり、前記(メタ)アクリル系重合体100g当たりの前記水酸基の含有量が0.80mmol/100g~17.30mmol/100gである(メタ)アクリル系重合体と、
ポリイソシアネート系化合物と、
ポリアジリジン系化合物と、
を含み、
前記ポリイソシアネート系化合物の含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部~1.0質量部であり、
前記ポリアジリジン系化合物の含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部~0.05質量部である光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系重合体100g当たりの前記水酸基の含有量に対する、前記(メタ)アクリル系重合体100g当たりの前記カルボキシ基の含有量の比が、1.6以上である請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系重合体100g中の前記カルボキシ基の含有量をA1(mmol)とし、前記(メタ)アクリル系重合体100g中の前記水酸基の含有量をA2(mmol)としたときに、A1とA2との積が10~200である請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系重合体100gに対する前記ポリアジリジン系化合物の含有量をY(g)とし、前記(メタ)アクリル系重合体100g中の前記カルボキシ基の含有量をA1(mmol)とし、前記ポリアジリジン系化合物Y(g)中のアジリジン基の含有量をB2(mmol)としたときに、A1とB2との積が0.5~8.0である請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系重合体100gに対する前記ポリイソシアネート系化合物の含有量をX(g)とし、前記(メタ)アクリル系重合体100gに対する前記ポリアジリジン系化合物の含有量をY(g)とし、前記ポリイソシアネート系化合物X(g)中のイソシアネート基の含有量をB1(mmol)とし、前記ポリアジリジン系化合物Y(g)中のアジリジン基の含有量をB2(mmol)としたときに、B1とB2との積が0.05~0.80である請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート系化合物が、芳香族ポリイソシアネート系化合物である請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項7】
前記芳香族ポリイソシアネート系化合物が、トリレンジイソシアネート系化合物である請求項6に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項8】
さらに、シランカップリング剤を含む請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート。
【請求項10】
光学フィルムと、
前記光学フィルムの少なくとも片面に設けられ、かつ、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
を備える粘着シート。
【請求項11】
前記光学フィルムが、偏光板である請求項10に記載の粘着シート。
【請求項12】
ガラス基板と、
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
光学フィルムと、
をこの順に備える光学部材。
【請求項13】
請求項12に記載の光学部材を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、一般に、2枚の支持基板の間に液晶層が挟持された液晶セルと、偏光板、位相差フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムとを備えている。液晶セルと光学フィルム、及び、光学フィルム同士を積層して液晶表示装置を製造する際には、これらの部材が粘着剤組成物により形成される粘着剤層を介して貼合される。液晶表示装置では、視認性を確保する観点から、(メタ)アクリル系の粘着剤組成物が多用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、下記(A)~(C)を必須成分として含有してなることを特徴とする偏光フィルム用感圧接着剤組成物が開示されている。(A)反応性官能基を含有し、重量平均分子量が90万~250万であり、ガラス転移温度が-45℃以下であり、かつ、溶解性パラメータが8.7~9.3である高分子量アクリル系共重合体100質量部;(B)重量平均分子量が5万~20万であり、ガラス転移温度が-40℃~0℃であり、かつ、溶解性パラメータが8.7~9.3であって、(b-1)HC=CHCOOR(R:炭素数4~10の直鎖又は分枝鎖アルキル基)で示され、その単独重合体のガラス転移温度が-50℃以下であるアクリル酸エステルと、(b-2)上記単量体(b-1)との共重合性が比較的小さい単量体と、(b-3)上記単量体(b-1)との共重合性が比較的大きい単量体と、を共重合してなる低分子量アクリル系共重合体5質量部~100質量部;(C)上記(A)成分の反応性官能基と反応して架橋構造を形成しうる官能基を2つ以上含有する多官能性化合物0.001質量部~10質量部。
また、特許文献2には、(メタ)アクリレート共重合体(A)と、イソシアネート化合物(B)と、を含む光学フィルム用粘着剤組成物であって、上記(メタ)アクリレート共重合体(A)は、(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位及び(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位を含み、上記(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位の含有量は、上記(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、0.5質量%を超え10質量%以下であり、上記イソシアネート化合物(B)は、数平均分子量が900以上10,000以下であり、かつ、イソシアネートモノマー及びイソシアネート基と反応可能な官能基を2個有する化合物を反応させてなるものを含有するものであり、上記イソシアネート化合物(B)の含有量は、上記(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下である、光学フィルム用粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-2782号公報
【特許文献2】特開2018-95843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偏光板等の光学フィルムは、通常、収縮率の異なる複数の部材を積層して構成されているため、温度及び/又は湿度の変化によって寸法変化が生じ易い。このため、粘着剤層を介して貼合された光学フィルムが、高温環境下、低温と高温とが繰り返される環境下等、苛酷な環境下に置かれると、光学フィルムが収縮し、粘着剤層及び/又は光学フィルムにシワが生じる、粘着剤層が被着体から剥がれる等の不具合が発生することがある。そのため、光学フィルムに用いられる粘着剤組成物には、苛酷な環境下に置かれた場合でも上記のような不具合が発生し難い粘着剤層を形成できること、すなわち、耐久性に優れる粘着剤層を形成できることが求められる。また、粘着剤層を備える光学フィルム(「粘着剤層付き光学フィルム」ともいう。)は、養生終了直後に使用される場合と、長期間保管した後に使用される場合とがあるため、光学フィルムに用いられる粘着剤組成物には、養生終了直後から長期保管後まで、経時で安定した耐久性を示す粘着剤層を形成できることが求められる。近年、ディスプレイ等の表示装置の軽量化及び小型化の要望が高まるにつれ、光学フィルムに対してもさらなる薄膜化が求められており、従来、数百μmであった光学フィルムの厚さは、100μm以下、さらには50μm以下と、大幅な薄膜化が進んでいる。薄膜化した光学フィルムは、収縮率が大きく、耐久性が悪化しやすい傾向にあるため、これまで以上に耐久性の基準が高くなっていると言える。
【0006】
ところで、粘着剤層付き光学フィルムの製造工程では、光学フィルムと粘着膜(所謂、粘着剤組成物の塗布膜の乾燥により形成される膜;以下、同じ。)との積層体をロール状に巻き取るが、巻き取りの際に積層体に強い圧力がかかることで、粘着膜にシワが入ることがある。粘着膜に入ったシワが粘着剤層に残ると、光学フィルムを貼り合わせたディスプレイの外観を損なわせることになる。圧力に起因するシワが残らない粘着剤層を形成するためには、例えば、粘着膜の初期硬化性を高めることが考えられる。
【0007】
一方で、光学フィルムに用いられる粘着剤組成物には、光学フィルムに対して優れた密着性を示す粘着剤層を形成できることも求められる。光学フィルムと粘着剤層との密着性を高めるためには、粘着膜が光学フィルムに対してしっかりと濡れ広がる程度に柔らかいことが必要となる。しかし、薄膜化した光学フィルムの場合、粘着膜が柔らかいと、光学フィルムと粘着膜との積層体をロール状に巻き取る際の圧力によるシワの発生を十分に抑制できず、粘着膜の初期硬化性を高めると、光学フィルムに対して十分に濡れ広がるために必要な柔らかさを粘着膜に付与できない。粘着膜の初期硬化性を高めること、及び、粘着剤層の光学フィルムに対する密着性を向上させることを両立させることは困難であった。
【0008】
本開示は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、光学フィルムに対する密着性に優れ、経時で安定した耐久性を示す粘着剤層を形成でき、かつ、初期硬化性に優れる粘着膜を形成できる光学フィルム用粘着剤組成物を提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記光学フィルム用粘着剤組成物を用いた粘着シート、光学部材、及び表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> カルボキシ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体であって、上記(メタ)アクリル系重合体100g当たりの上記カルボキシ基の含有量が1.30mmol/100g~27.80mmol/100gであり、上記(メタ)アクリル系重合体100g当たりの上記水酸基の含有量が0.80mmol/100g~17.30mmol/100gである(メタ)アクリル系重合体と、
ポリイソシアネート系化合物と、
ポリアジリジン系化合物と、
を含み、
上記ポリイソシアネート系化合物の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部~1.0質量部であり、
上記ポリアジリジン系化合物の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部~0.05質量部である光学フィルム用粘着剤組成物。
<2> 上記(メタ)アクリル系重合体100g当たりの上記水酸基の含有量に対する、上記(メタ)アクリル系重合体100g当たりの上記カルボキシ基の含有量の比が、1.6以上である<1>に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<3> 上記(メタ)アクリル系重合体100g中の上記カルボキシ基の含有量をA1(mmol)とし、上記(メタ)アクリル系重合体100g中の上記水酸基の含有量をA2(mmol)としたときに、A1とA2との積が10~200である<1>又は<2>に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<4> 上記(メタ)アクリル系重合体100gに対する上記ポリアジリジン系化合物の含有量をY(g)とし、上記(メタ)アクリル系重合体100g中の上記カルボキシ基の含有量をA1(mmol)とし、上記ポリアジリジン系化合物Y(g)中のアジリジン基の含有量をB2(mmol)としたときに、A1とB2との積が0.5~8.0である<1>~<3>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<5> 上記(メタ)アクリル系重合体100gに対する上記ポリイソシアネート系化合物の含有量をX(g)とし、上記(メタ)アクリル系重合体100gに対する上記ポリアジリジン系化合物の含有量をY(g)とし、上記ポリイソシアネート系化合物X(g)中のイソシアネート基の含有量をB1(mmol)とし、上記ポリアジリジン系化合物Y(g)中のアジリジン基の含有量をB2(mmol)としたときに、B1とB2との積が0.05~0.80である<1>~<4>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<6> 上前記ポリイソシアネート系化合物が、芳香族ポリイソシアネート系化合物である<1>~<5>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<7> 上記芳香族ポリイソシアネート系化合物が、トリレンジイソシアネート系化合物である<6>に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<8> さらに、シランカップリング剤を含む<1>~<7>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート。
<10> 光学フィルムと、
上記光学フィルムの少なくとも片面に設けられ、かつ、<1>~<8>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
を備える粘着シート。
<11> 上記光学フィルムが、偏光板である<10>に記載の粘着シート。
<12> ガラス基板と、
<1>~<8>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
光学フィルムと、
をこの順に備える光学部材。
<13> <12>に記載の光学部材を備える表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、光学フィルムに対する密着性に優れ、経時で安定した耐久性を示す粘着剤層を形成でき、かつ、初期硬化性に優れる粘着膜を形成できる光学フィルム用粘着剤組成物が提供される。
本開示の他の実施形態によれば、上記光学フィルム用粘着剤組成物を用いた粘着シート、光学部材、及び表示装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置について、詳細に説明する。以下に記載する要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0014】
本開示において、光学フィルム用粘着剤組成物中の各成分の量は、光学フィルム用粘着剤組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、光学フィルム用粘着剤組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
【0015】
本開示において、「(メタ)アクリル系単量体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位を含み、かつ、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位の占める割合が50質量%以上である重合体を意味する。
【0016】
本開示において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド」及び「メタクリルアミド」の両方を包含する用語である。
【0017】
本開示において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0018】
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
【0019】
本開示において、「ポリマー」と「重合体」とは、同義である。
【0020】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0021】
[光学フィルム用粘着剤組成物]
本開示の光学フィルム用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう。)は、カルボキシ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体であって、上記(メタ)アクリル系重合体100g当たりの上記カルボキシ基の含有量が1.30mmol/100g~27.80mmol/100gであり、上記(メタ)アクリル系重合体100g当たりの上記水酸基の含有量が0.80mmol/100g~17.30mmol/100gである(メタ)アクリル系重合体と、ポリイソシアネート系化合物と、ポリアジリジン系化合物と、を含み、上記ポリイソシアネート系化合物の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部~1.0質量部であり、上記ポリアジリジン系化合物の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部~0.05質量部である。
本開示の粘着剤組成物によれば、光学フィルムに対する密着性に優れ、かつ、経時で安定した耐久性を示す粘着剤層を形成できる。また、本開示の粘着剤組成物は、初期硬化性に優れる粘着膜を形成できる。
本開示の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本開示の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0022】
本開示の粘着剤組成物では、ポリアジリジン系化合物が(メタ)アクリル系重合体のカルボキシ基と素早く反応することで、粘着膜の初期硬化性が向上すると考えられる。
一般に、ポリイソシアネート系化合物が水酸基と反応することは知られている。しかし、ポリイソシアネート系化合物と水酸基との反応は、さほど速くはなく、緩やかに進行すると考えられる。反応が緩やかに進行すると、経時で粘着剤層の物性が変化するため、安定した耐久性を保証することができない。本開示において、「経時で安定した耐久性を示す」とは、経時で耐久性が変化せず、良好な耐久性が保持されることを意味する。
一方、ポリアジリジン系化合物がカルボキシ基と反応すると、2級アミン基が生成される。2級アミン基は、ポリイソシアネート系化合物と水酸基との反応の触媒として働くため、ポリイソシアネート系化合物と水酸基との反応速度が劇的に速くなると考えられる。このため、ポリイソシアネート系化合物と水酸基との反応であっても、粘着剤層に対し安定した耐久性を付与できると推察される。
しかし、ポリアジリジン系化合物とカルボキシ基との反応だけでは、粘着剤層の光学フィルムに対する密着性が不十分となる。これに対し、本開示の粘着剤組成物は、ポリアジリジン系化合物に加えて、ポリイソシアネート系化合物を含み、このポリイソシアネート系化合物が光学フィルムの表面と相互作用することで、密着性が大幅に向上すると推察される。
また、ポリアジリジン系化合物、カルボキシ基、及びポリイソシアネート系化合物だけでは、ポリアジリジン系化合物と反応せずに残存したカルボキシ基とポリイソシアネート系化合物が緩やかな反応を示し、経時で粘着剤組成物の物性が変化するため、安定した耐久性を保証することが困難となる。これに対し、本開示の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系重合体が水酸基を有するため、水酸基の存在により、ポリイソシアネート系化合物をカルボキシ基と反応させずに、速い速度で水酸基と反応させることができる。
本開示の粘着剤組成物は、カルボキシ基及び水酸基、ポリイソシアネート系化合物、及びポリアジリジン系化合物による反応を制御することで、光学フィルムに対する密着性に優れた粘着剤層の形成、経時で安定した耐久性を示す粘着剤層の形成、及び初期硬化性に優れた粘着膜の形成を実現できたと推察される。
【0023】
本開示では、「カルボキシ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体であって、(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量が1.30mmol/100g~27.80mmol/100gであり、(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量が0.80mmol/100g~17.30mmol/100gである(メタ)アクリル系重合体」を「特定(メタ)アクリル系重合体」ともいう。
【0024】
〔特定(メタ)アクリル系重合体〕
本開示の粘着剤組成物は、カルボキシ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体であって、(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量が1.30mmol/100g~27.80mmol/100gであり、(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量が0.80mmol/100g~17.30mmol/100gである(メタ)アクリル系重合体〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体〕を含む。
本開示の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系重合体を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0025】
特定(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシ基を有する。
特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量は、1.30mmol/100g~27.80mmol/100gである。
特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量が、1.30mmol/100g以上であると、粘着膜が初期硬化性に優れる傾向にある。この理由としては、カルボキシ基がポリアジリジン系化合物と十分に反応するためと考えられる。また、特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量が、1.30mmol/100g以上であると、形成される粘着剤層が長期保管後の耐久性に優れる傾向にある。この理由としては、カルボキシ基がポリアジリジン系化合物と十分に反応し、水酸基とポリイソシアネート系化合物との反応の触媒として働く2級アミン基が生成されることで、水酸基とポリイソシアネート系化合物との反応が速やかに進行するためと考えられる。このような観点から、特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量は、2.78mmol/100g以上であることが好ましく、4.16mmol/100g以上であることがより好ましく、6.94mmol/100g以上であることが更に好ましく、13.88mmol/100g以上であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量が、27.80mmol/100g以下であると、形成される粘着剤層が経時で安定な耐久性を示す傾向にある。この理由としては、架橋密度が高くなりすぎず、形成される粘着剤層の凝集力が過度に高くならず、シワ及び剥がれの要因となる応力緩和性の低下が起き難いためと考えられる。このような観点から、特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量は、25.00mmol/100g以下であることが好ましく、22.22mmol/100g以下であることがより好ましく、20.82mmol/100g以下であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量は、ある態様では、2.78mmol/100g~25.00mmol/100gであることが好ましく、4.16mmol/100g~22.22mmol/100gであることがより好ましく、13.88mmol/100g~20.82mmol/100gであることが更に好ましい。
【0026】
特定(メタ)アクリル系重合体は、水酸基を有する。
特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量は、0.80mmol/100g~17.30mmol/100gである。
特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量が、0.80mmol/100g以上であると、形成される粘着剤層が長期保管後の耐久性に優れる傾向にある。この理由としては、水酸基がポリイソシアネート系化合物と十分に反応することで、反応に寄与せずに余ったポリイソシアネート系化合物がカルボキシ基と緩やかに反応することが抑制されるためと考えられる。このような観点から、特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量は、0.85mmol/100g以上であることが好ましく、0.90mmol/100g以上であることがより好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量が、17.30mmol/100g以下であると、形成される粘着剤層が経時で安定な耐久性を示す傾向にある。この理由としては、以下のことが考えられる。イソシアネート基と水酸基とにより形成されるウレタン結合、及び、イソシアネート基同士の縮合による結合は、一般的に硬い結合である。これらの結合が過度に多くならないことで、形成される粘着剤層の凝集力が過度に高くならず、シワ及び剥がれの要因となる応力緩和性の低下が起き難いためと考えられる。このような観点から、特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量は、12.92mmol/100g以下であることが好ましく、11.21mmol/100g以下であることがより好ましく、8.61mmol/100g以下であることが更に好ましく、4.31mmol/100g以下であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量は、ある態様では、0.80mmol/100g~12.92mmol/100gであることが好ましく、0.80mmol/100g~11.21mmol/100gであることがより好ましく、0.85mmol/100g~8.61mmol/100gであることが更に好ましく、0.90mmol/100g~4.31mmol/100gであることが特に好ましい。
【0027】
特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量に対する、特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量のモル比(カルボキシ基の含有量/水酸基の含有量)は、特に限定されないが、例えば、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1.0以上であることが更に好ましく、1.6以上であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量に対する、特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量のモル比が0.1以上であると、形成される粘着剤層の長期保管後の耐久性がより優れる傾向にある。この理由としては、カルボキシ基がポリアジリジン系化合物と十分に反応し、水酸基とポリイソシアネート系化合物との反応の触媒として働く2級アミン基が十分に生成されることで、水酸基とポリイソシアネート系化合物との反応がより速やかに進行するためと考えられる。
特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量に対する、特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量のモル比の上限は、例えば、形成される粘着剤層の耐久性の観点から、30.0以下であることが好ましく、4.8以下であることがより好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量に対する、特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量のモル比は、ある態様では、0.1~30.0であることが好ましく、0.5~30.0であることがより好ましく、1.0~30.0であることが更に好ましく、1.6~30.0であることが更により好ましく、1.6~4.8であることが特に好ましい。
【0028】
特定(メタ)アクリル系重合体100g中のカルボキシ基の含有量をA1(mmol)とし、特定(メタ)アクリル系重合体100g中の水酸基の含有量をA2(mmol)としたときに、A1とA2との積は、5~240であることが好ましく、10~200であることがより好ましく、15~150であることが更に好ましく、20~120であることが特に好ましい。
上記のA1とA2との積が5以上であると、粘着膜の初期硬化性がより優れる傾向にある。この理由としては、ポリイソシアネート系化合物及びポリアジリジン系化合物との反応速度がより高まるためと考えられる。
上記のA1とA2との積が240以下であると、形成される粘着剤層が経時でより安定な耐久性を示す傾向にある。この理由としては、架橋密度が高くなりすぎず、形成される粘着剤層の凝集力が過度に高くならず、シワ及び剥がれの要因となる応力緩和性の低下がより起き難いためと考えられる。
【0029】
特定(メタ)アクリル系重合体100g中のカルボキシ基の含有量A1(単位:mmol)は、以下の計算式(a1)により求められる。なお、特定(メタ)アクリル系重合体を形成するカルボキシ基を有する単量体が複数種ある場合には、それぞれの単量体について計算した後、得られた数値を合計する。
【0030】
特定(メタ)アクリル系重合体100g中のカルボキシ基の含有量A1(単位:mmol)
=[特定(メタ)アクリル系重合体100g中のカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有量(単位:g)/〔カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のモル質量(単位:g/mol)〕]×カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位中のカルボキシ基の個数(価数)×1000・・・(a1)
【0031】
特定(メタ)アクリル系重合体100g中の水酸基の含有量A2(単位:mmol)は、以下の計算式(a2)により求められる。なお、特定(メタ)アクリル系重合体を形成する水酸基を有する単量体が複数種ある場合には、それぞれの単量体について計算した後、得られた数値を合計する。
【0032】
特定(メタ)アクリル系重合体100g中の水酸基の含有量A2(単位:mmol)
=[特定(メタ)アクリル系重合体100g中の水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有量(単位:g)/〔水酸基を有する単量体に由来する構成単位のモル質量(単位:g/mol)〕]×水酸基を有する単量体に由来する構成単位中の水酸基の個数(価数)×1000・・・(a2)
【0033】
特定(メタ)アクリル系重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。特定(メタ)アクリル系重合体は、共重合体である場合、2種以上の(メタ)アクリル系単量体を共重合したものであってもよく、(メタ)アクリル系単量体と(メタ)アクリル系単量体以外の単量体とを共重合したものであってもよい。
【0034】
特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、カルボキシ基及び水酸基のいずれも有しない(メタ)アクリル系重合体に、カルボキシ基及び水酸基を置換により導入したものであってもよく、水酸基を有し、かつ、カルボキシ基を有しない(メタ)アクリル系重合体に、カルボキシ基を置換により導入したものであってもよく、カルボキシ基を有し、かつ、水酸基を有しない(メタ)アクリル系重合体に、水酸基を置換により導入したものであってもよい。また、特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、カルボキシ基を有する単量体と水酸基を有する単量体との共重合体であってもよい。
【0035】
特定(メタ)アクリル系重合体の好ましい態様は、特定(メタ)アクリル系重合体が、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むことにより、カルボキシ基及び水酸基を有する態様である。
【0036】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。本開示において「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0037】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0038】
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、及びコハク酸誘導体(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体が好ましい。カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸及びω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸及びω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレートから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、アクリル酸が更に好ましい。
【0039】
特定(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0040】
特定(メタ)アクリル系重合体がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量が1.30mmol/100g~27.80mmol/100gであれば、特に限定されない。
【0041】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。本開示において、「水酸基を有する単量体に由来する構成単位」とは、水酸基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0042】
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つの水酸基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0043】
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、例えば、他の単量体との共重合性が良好である点において、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート及び4-ヒドロキシブチルアクリレートから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレートが更に好ましい。
【0044】
特定(メタ)アクリル系重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0045】
特定(メタ)アクリル系重合体が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量が0.80mmol/100g~17.30mmol/100gであれば、特に限定されない。
【0046】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。本開示において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。なお、本開示における「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、水酸基を有する単量体に該当する単量体、及び、カルボキシ基を有する単量体に該当する単量体は包含されないものとする。
【0047】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、アクリル酸アルキルエステル単量体であってもよく、メタクリル酸アルキルエステル単量体であってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基は、無置換であってもよく、置換基(但し、水酸基及びカルボキシ基を除く。)を有していてもよいが、無置換であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、n-ブチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0049】
特定(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0050】
特定(メタ)アクリル系重合体が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%~99.5質量%であることがより好ましく、60質量%~99.0質量%であることが更に好ましく、70質量%~98.5質量%であることが特に好ましい。
ここで、特定(メタ)アクリル系重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系重合体を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0051】
<その他の単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体は、水酸基を有する単量体、カルボキシ基を有する単量体、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のいずれにも該当しない単量体(所謂、その他の単量体)に由来する構成単位を含んでいてもよい。本開示において、「その他の単量体に由来する構成単位」とは、その他の単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0052】
その他の単量体に由来する構成単位としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位;メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位;スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニルに由来する構成単位;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニルに由来する構成単位;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルに由来する構成単位;等が挙げられる。
【0053】
特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、白抜け抑制の観点から、その他の単量体に由来する構成単位として、芳香族環を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことがより好ましく、フェノキシエチルアクリレートに由来する構成単位を含むことが更に好ましい。ここで、「白抜け」とは、例えば、液晶表示装置において光漏れが生じて白くなる現象を指す。
【0054】
特定(メタ)アクリル系重合体は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0055】
特定(メタ)アクリル系重合体がその他の構成単位を含む場合、その他の構成単位の含有率は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、適宜設定できる。
【0056】
<<特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(「Mw」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、40万以上~250万であることが好ましく、60万~250万であることがより好ましく、80万~250万であることが更に好ましく、100万~250万であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が40万以上であると、粘着膜の凝集力が向上し、ロール状に巻き取った際のシワの抑制が良好となる傾向にある。また、特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が40万以上であると、粘着剤層の凝集力が向上し、形成される粘着剤層の耐久性が良化する傾向にある。
特定(メタ)アクリル系重合体は、重量平均分子量が250万以下であると、製造しやすい傾向にある。
【0057】
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定(メタ)アクリル系重合体の質量割合を意味する。
(3)下記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を求める。
【0058】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8420 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8420に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を2本使用
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0059】
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、単量体を重合させる際に、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0060】
<<特定(メタ)アクリル系重合体の含有率>>
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体の含有率は、特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、80.0質量%~99.9質量%であることが好ましく、85.0質量%~99.7質量%であることがより好ましく、90.0質量%~99.6質量%であることが更に好ましい。
【0061】
本開示において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
本開示において、「溶媒」とは、水及び有機溶剤を意味する。
【0062】
〔特定(メタ)アクリル系重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系重合体の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合することにより製造できる。
重合方法としては、製造後に本開示の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0063】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、例えば、有機溶剤の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。また、窒素気流中で反応させてもよい。
【0064】
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系炭化水素化合物、脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、及びアルコール化合物が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
【0065】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶剤の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0066】
重合反応時には、有機溶剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0067】
重合開始剤としては、例えば、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABNV〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
【0068】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0069】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0070】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0071】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0072】
重合温度は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0073】
〔ポリイソシアネート系化合物〕
本開示の粘着剤組成物は、ポリイソシアネート系化合物を特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部~1.0質量部の割合で含む。
本開示の粘着剤組成物において、ポリイソシアネート系化合物は、架橋剤として機能する。
本開示において、「ポリイソシアネート系化合物」とは、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物(所謂、2官能以上のイソシアネート系化合物)であって、一般にイソシアネート系架橋剤として使用されているものを指す。
【0074】
ポリイソシアネート系化合物の種類は、特に限定されない。
ポリイソシアネート系化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート系化合物、脂環式ポリイソシアネート系化合物、及び芳香族ポリイソシアネート系化合物が挙げられる。
【0075】
「脂肪族ポリイソシアネート系化合物」には、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物の多量体、脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリオール系化合物〔例えば、トリメチロールプロパン(TMP);以下、同じ。〕とのアダクト体、及び脂肪族ポリイソシアネート化合物のビウレット体が包含される。
脂肪族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネートが挙げられる。
【0076】
「脂環式ポリイソシアネート系化合物」には、例えば、脂環式ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物の多量体、脂環式ポリイソシアネート化合物とポリオール系化合物とのアダクト体、及び脂環式ポリイソシアネート化合物のビウレット体が包含される。
脂環式ポリイソシアネート化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、水素化4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0077】
「芳香族ポリイソシアネート系化合物」には、例えば、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物の多量体、芳香族ポリイソシアネート化合物とポリオール系化合物とのアダクト体、及び芳香族ポリイソシアネート化合物のビウレット体が包含される。
芳香族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0078】
ポリイソシアネート系化合物は、経時での安定した耐久性の観点から、芳香族ポリイソシアネート系化合物であることが好ましい。芳香族を介したイソシアネート基は、結合するベンゼン環に起因して求電子性が高く、脂肪族ポリイソシアネート系化合物及び脂環式ポリイソシアネート系化合物と比較して、水酸基との反応性が高いと推察され、短い養生期間で反応が完了する。このため、形成される粘着剤層は、養生終了直後及び長期保管後で耐久性に差が生じ難く、経時でより安定した耐久性を示すと考えられる。
【0079】
芳香族ポリイソシアネート系化合物は、経時での安定した耐久性の観点から、トリレンジイソシアネート系化合物であることが好ましい。トリレンジイソシアネート系化合物におけるイソシアネート基は、直結するベンゼン環に起因して求電子性が高く、他の芳香族ポリイソシアネート系化合物と比較して、水酸基との反応性が高いと推察され、短い養生期間で反応が完了する。このため、形成される粘着剤層は、養生終了直後及び長期保管後で耐久性に差が生じ難く、経時でより安定した耐久性を示すと考えられる。
【0080】
「トリレンジイソシアネート系化合物」には、例えば、TDI、TDIの多量体、TDIとポリオール系化合物とのアダクト体、及びTDIのビウレット体が包含される。
トリレンジイソシアネート系化合物としては、TDIとTMPとのアダクト体が好ましい。
【0081】
ポリイソシアネート系化合物としては、市販品を使用できる。
ポリイソシアネート系化合物の市販品の例としては、「コロネート(登録商標) HX」、「コロネート(登録商標) HL-S」、「コロネート(登録商標) L」、「コロネート(登録商標) L-45E」、「コロネート(登録商標) 2031」、「コロネート(登録商標) 2037」、「コロネート(登録商標) 2234」、「コロネート(登録商標) 2785」、「アクアネート(登録商標) 200」、及び「アクアネート(登録商標) 210」〔以上、東ソー(株)製〕、「スミジュール(登録商標) N3300」、「デスモジュール(登録商標) N3400」、及び「スミジュール(登録商標) N75」〔以上、住化コベストロウレタン(株)製〕、「デュラネート(登録商標) D201」、「デュラネート(登録商標) E405-70B」、「デュラネート(登録商標) E405-80T」、「デュラネート(登録商標) AE700-100」、「デュラネート(登録商標) 24A-100」、及び「デュラネート(登録商標) TSE-100」〔以上、旭化成(株)製〕、並びに、「タケネート(登録商標) D-110N」、「タケネート(登録商標) D-120N」、「タケネート(登録商標) D-140N」、「タケネート(登録商標) M-631N」、「MT-オレスター(登録商標) NP1200」、及び「スタビオ(登録商標) XD-340N」〔以上、三井化学(株)製〕が挙げられる。
【0082】
本開示の粘着剤組成物は、ポリイソシアネート系化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0083】
本開示の粘着剤組成物におけるポリイソシアネート系化合物の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部~1.0質量部である。
本開示の粘着剤組成物におけるポリイソシアネート系化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部以上であると、形成される粘着剤層の光学フィルムに対する密着性が優れる傾向にある。この理由としては、光学フィルム(例えば、偏光板)との相互作用が向上するためと考えられる。このような観点から、本開示の粘着剤組成物におけるポリイソシアネート系化合物の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.03質量部以上であることが好ましく、0.07質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることが更に好ましい。
本開示の粘着剤組成物におけるポリイソシアネート系化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して1.0質量部以下であると、形成される粘着剤層が経時で安定な耐久性を示す傾向にある。この理由としては、以下のことが考えられる。イソシアネート基と水酸基とにより形成されるウレタン結合、及び、イソシアネート基同士の縮合による結合は、一般的に硬い結合である。これらの結合が過度に多くならないことで、形成される粘着剤層の凝集力が過度に高くならず、シワ及び剥がれの要因となる応力緩和性の低下が起き難いためと考えられる。このような観点から、本開示の粘着剤組成物におけるポリイソシアネート系化合物の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.8質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以下であることが更に好ましい。
本開示の粘着剤組成物におけるポリイソシアネート系化合物の含有量は、ある態様では、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.07質量部~0.5質量部であることが好ましく、0.1質量部~0.5質量部であることがより好ましく、0.1質量部~0.3質量部であることが更に好ましい。
【0084】
〔ポリアジリジン系化合物〕
本開示の粘着剤組成物は、ポリアジリジン系化合物を特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部~0.05質量部の割合で含む。
本開示の粘着剤組成物において、ポリアジリジン系化合物は、架橋剤として機能する。
本開示において、「ポリアジリジン系化合物」とは、1分子中に2以上のアジリジン基を有する化合物(所謂、2官能以上のアジリジン化合物)であって、一般にアジリジン系架橋剤として使用されているものを指す。
アジリジン基としては、例えば、1-アジリジニル基及び2-アジリジニル基が挙げられる。また、メチル基等の置換基を有する置換アジリジニル基が挙げられる。
【0085】
ポリアジリジン系化合物の具体例としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリ-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、テトラメチロールメタントリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、トリメチロールプロパントリス(2-メチル-1-アジリジニルプロピオネート)、及び、トリス(1-アジリジンプロピオン酸)1,1,1-プロパントリイルトリスメチレンが挙げられる。
【0086】
ポリアジリジン系化合物としては、市販品を使用できる。
ポリアジリジン系化合物の市販品の例としては、(株)日本触媒製の「ケミタイト(登録商標) PZ-33」、MENADIONA社製の「CL-427」及び「CL-467」、並びに、Ningxia Joie Material社製の「HD-110」、「HD-100」及び「HD-105」が挙げられる。
【0087】
本開示の粘着剤組成物は、ポリアジリジン系化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0088】
本開示の粘着剤組成物におけるポリアジリジン系化合物の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部~0.05質量部である。
本開示の粘着剤組成物におけるポリアジリジン系化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部以上であると、粘着膜の初期硬化性が優れる傾向にある。この理由としては、ポリアジリジン系化合物がカルボキシ基と十分に反応するためと考えられる。また、本開示の粘着剤組成物におけるポリアジリジン系化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部以上であると、形成される粘着剤層が長期保管後の耐久性に優れる傾向にある。この理由としては、ポリアジリジン系化合物がカルボキシ基と十分に反応し、水酸基とポリイソシアネート系化合物との反応の触媒として働く2級アミン基が生成されることで、水酸基とポリイソシアネート系化合物との反応が速やかに進行するためと考えられる。このような観点から、本開示の粘着剤組成物におけるポリアジリジン系化合物の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.015質量部以上であることが好ましく、0.02質量部以上であることがより好ましい。
本開示の粘着剤組成物におけるポリアジリジン系化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.05質量部以下であると、形成される粘着剤層の光学フィルムに対する密着性が優れる傾向にある。この理由としては、光学フィルム(例えば、偏光板)との相互作用が向上するためと考えられる。また、本開示の粘着剤組成物におけるポリアジリジン系化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.05質量部以下であると、形成される粘着剤層が経時で安定な耐久性を示す傾向にある。この理由としては、架橋密度が高くなりすぎず、形成される粘着剤層の凝集力が過度に高くならず、シワ及び剥がれの要因となる応力緩和性の低下がより起き難いためと考えられる。このような観点から、本開示の粘着剤組成物におけるポリアジリジン系化合物の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.045質量部以下であることが好ましく、0.04質量部以下であることがより好ましく、0.035質量部以下であることが更に好ましい。
本開示の粘着剤組成物におけるポリアジリジン系化合物の含有量は、ある態様では、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.015質量部~0.045質量部であることが好ましく、0.02質量部~0.04質量部であることがより好ましい。
【0089】
特定(メタ)アクリル系重合体100gに対するポリアジリジン系化合物の含有量をY(g)とし、特定(メタ)アクリル系重合体100g中のカルボキシ基の含有量をA1(mmol)とし、ポリアジリジン系化合物Y(g)中のアジリジン基の含有量をB2(mmol)としたときに、A1とB2との積は、0.2~9.0であることが好ましく、0.5~8.0であることがより好ましく、1.0~6.0であることが更に好ましく、1.5~4.0であることが特に好ましい。
上記のA1とB2との積が0.2以上であると、粘着膜の初期硬化性がより優れる傾向にある。この理由としては、アジリジン基及びカルボキシ基が十分量存在することで、反応速度がより高まるためと考えられる。
上記のA1とB2との積が9.0以下であると、形成される粘着剤層が経時でより安定な耐久性を示す傾向にある。この理由としては、アジリジン基及びカルボキシ基が多すぎないので、架橋密度が高くなりすぎず、形成される粘着剤層の凝集力が過度に高くならず、シワ及び剥がれの要因となる応力緩和性の低下がより起き難いためと考えられる。
【0090】
特定(メタ)アクリル系重合体100gに対するポリイソシアネート系化合物の含有量をX(g)とし、特定(メタ)アクリル系重合体100gに対するポリアジリジン系化合物の含有量をY(g)とし、ポリイソシアネート系化合物X(g)中のイソシアネート基の含有量をB1(mmol)とし、ポリアジリジン系化合物Y(g)中のアジリジン基の含有量をB2(mmol)としたときに、B1とB2との積は、0.01~0.95であることが好ましく、0.05~0.80であることがより好ましく、0.07~0.60であることが更に好ましく、0.09~0.40であることが特に好ましい。
上記のB1とB2との積が0.01以上であると、形成される粘着剤層の光学フィルムに対する密着性がより優れる傾向にある。この理由としては、光学フィルム(例えば、偏光板)との相互作用がより向上するためと考えられる。
上記のB1とB2との積が0.95以下であると、形成される粘着剤層が経時でより安定な耐久性を示す傾向にある。この理由としては、架橋密度が高くなりすぎず、形成される粘着剤層の凝集力が過度に高くならず、シワ及び剥がれの要因となる応力緩和性の低下がより起き難いためと考えられる。
【0091】
ポリイソシアネート系化合物X(g)中のイソシアネート基の含有量B1(mmol)は、以下の計算式(b1)により求められる。
【0092】
ポリイソシアネート系化合物X(g)中のイソシアネート基の含有量B1(単位:mmol)
=[ポリイソシアネート系化合物中のイソシアネート基の含有率(単位:質量%)/ポリイソシアネート系化合物の固形分濃度(単位:質量%)×ポリイソシアネート系化合物の配合量X〔固形分としての量〕(単位:g)]/イソシアネート基のモル質量(単位:g/mol)×1000・・・(b1)
【0093】
ポリアジリジン系化合物Y(g)中のアジリジン基の含有量B2(mmol)は、以下の計算式(b2)により求められる。
【0094】
ポリアジリジン系化合物Y(g)中のアジリジン基の含有量B2(単位:mmol)
=[ポリアジリジン系化合物の配合量Y〔固形分としての量〕(単位:g)×ポリアジリジン系化合物中のアジリジン基の個数]/ポリアジリジン系化合物のモル質量(単位:g/mol)×1000・・・(b2)
【0095】
〔シランカップリング剤〕
本開示の粘着剤組成物は、耐久性の観点から、シランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤のアルコキシ基は、加水分解によりシラノール基となり、ガラス表面の水酸基と反応する。このため、本開示の粘着剤組成物がシランカップリング剤を含むと、形成される粘着剤層は、ガラスに対する密着性が高まるため、より良好な耐久性を示すと考えられる。
【0096】
シランカップリング剤の種類は、特に限定されない。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代表される重合性不飽和基含有シラン化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシランに代表されるチオール基含有シラン系化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランに代表されるエポキシ基含有シラン化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランに代表されるアミノ基含有シラン化合物、並びに、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。また、シランカップリング剤としては、例えば、重合性不飽和基、チオール基、エポキシ基、アミノ基等の反応性官能基を複数有するシラン化合物(所謂、多官能基型シラン化合物)が挙げられる。
【0097】
シランカップリング剤としては、市販品を使用できる。
シランカップリング剤の市販品の例としては、信越化学工業(株)製の「KBM-803」、「KBM-802」、「X-41-1810」、「X-41-1811」、「X-41-1805」、「X-41-1818」、「KBM-403」、「KBM-303」、「KBM-402」、「KBE-402」、「KBE-403」、「X-41-1053」、「X-41-1056」、「KBM-903」、「KBM-9659」、「KBE-9007N」、及び「KBM-573」(いずれも商品名)が挙げられる。
【0098】
本開示の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0099】
本開示の粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.1質量部~1質量部であることが好ましく、0.1質量部~0.8質量部であることがより好ましく、0.1質量部~0.5質量部であることが更に好ましい。
【0100】
〔有機溶剤〕
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含むと、塗布性及びポットライフが向上し得る。
有機溶剤としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系重合体の重合反応時に用いられる有機溶剤と同様のものが挙げられる。
【0101】
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含む場合、有機溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0102】
本開示の粘着剤組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0103】
〔その他の成分〕
本開示の粘着剤組成物は、その効果を損なわない範囲で、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、特定(メタ)アクリル系重合体以外の重合体、架橋触媒、酸化防止剤、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0104】
本開示の粘着剤組成物がその他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲で、適宜設定できる。
【0105】
<<粘着剤組成物の用途>>
本開示の粘着剤組成物は、光学フィルムに用いられる粘着剤組成物(即ち、光学フィルム用粘着剤組成物)である。本開示の粘着剤組成物は、光学フィルムに対する密着性に優れ、経時で安定した耐久性を示す粘着剤層を形成でき、かつ、初期硬化性に優れる粘着膜を形成できる。
本開示の粘着剤組成物は、初期硬化性に優れる粘着膜を形成できるため、薄膜の光学フィルムに用いられる粘着剤組成物として好適である。初期硬化性に優れる粘着膜を形成できる粘着剤組成物によれば、薄膜の光学フィルムを使用した粘着剤層付き光学フィルムの製造工程において、粘着膜と光学フィルムとの積層体をロール状に巻き取った場合でも、巻き取りの際の圧力に起因するシワの跡が粘着剤層に付き難い傾向にある。
本開示の粘着剤組成物の具体的な用途としては、偏光板と液晶セルのガラス基板とを貼り合わせる用途、光学フィルム同士を貼り合わせる用途等が挙げられる。
【0106】
[粘着シート]
本開示の粘着シートは、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える。
本開示の粘着シートが備える粘着剤層は、本開示の粘着剤組成物の硬化物を含む。硬化物には、例えば、ポリイソシアネート系化合物及びポリアジリジン系化合物によって架橋硬化してなる特定(メタ)アクリル系重合体の架橋物が含まれる。
本開示の粘着シートの被着体としては、例えば、液晶セルのガラス基板が挙げられる。
【0107】
本開示の粘着シートが備える粘着剤層の厚さは、特に限定されない。
粘着剤層の厚さは、一般には、1μm~100μmであり、3μm~50μmであることが好ましく、5μm~30μmであることがより好ましい。
【0108】
本開示における「粘着剤層の厚さ」は、粘着剤層の平均厚さを意味する。
粘着剤層の平均厚さは、以下の方法により求められる値である。
粘着剤層の厚み方向において無作為に選択した10箇所の厚さを、膜厚計を用いて測定する。測定値の算術平均値を求め、得られた値を粘着剤層の平均厚さとする。
【0109】
本開示の粘着シートは、基材を有しない無基材タイプの粘着シートでもよく、基材の片面又は両面に粘着剤層を備える有基材タイプの粘着シートでもよい。
本開示の粘着シートが、基材を有しない無基材タイプの粘着シートである場合、又は、基材の片面に粘着剤層を備える有基材タイプの粘着シートである場合、本開示の粘着シートにおいて、露出した粘着剤層の面は、剥離シートによって保護されていてもよい。
一般に、剥離シートは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0110】
剥離シートは、粘着剤層から容易に剥離できるものであれば、特に限定されない。
剥離シートとしては、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された樹脂フィルム、紙、合成紙、及びこれらの2種以上を積層した複合シートが挙げられる。
本開示では、樹脂フィルムの片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された態様の剥離シートを「剥離フィルム」ともいう。
剥離処理剤としては、例えば、シリコーン系剥離処理剤(例:シリコーン)、ワックス系剥離処理剤(例:パラフィンワックス)、及びフッ素系剥離処理剤(例:フッ素系樹脂)が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。
紙としては、例えば、上質紙及びコート紙が挙げられる。
剥離シートの膜厚は、特に限定されず、一般には、20μm~180μmである。
【0111】
本開示の粘着シートが基材を備える場合、基材は、その上に粘着剤層を形成できるものであれば、特に限定されない。
基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂〔例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)〕、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)〕、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース)、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂を含むフィルムが挙げられる。
【0112】
基材の粘着剤層が設けられる側の面には、基材と粘着剤層との密着性を向上させる観点から、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の表面処理(所謂、易接着処理)が施されていてもよい。
【0113】
基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0114】
本開示の粘着シートが基材を備える場合、基材は、光学フィルムであることが好ましい。この場合、本開示の粘着シートの態様としては、光学フィルムと、光学フィルムの少なくとも片面に設けられ、かつ、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える態様が好ましい。
【0115】
光学フィルムの種類は、特に限定されない。
光学フィルムの具体例としては、偏光板、AG(Anti-Glare)偏光板、波長板(例えば、1/2波長板及び1/4波長板)、上記波長板を含む位相差フィルム、視角補償フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、プリズムシート、レンズシート、拡散板、及び透明導電性フィルムが挙げられる。
【0116】
光学フィルムとしては、偏光板が好ましい。
偏光板は、少なくとも偏光子を含んで構成されるものであり、偏光子単体であってもよく、偏光子と保護フィルムとを積層したものであってもよい。すなわち、偏光板は、偏光子単独の1層構造であってもよく、偏光子の片面に保護フィルムを有する2層構造であってもよく、偏光子の両面に保護フィルムを有する3層構造であってもよい。
【0117】
本開示の粘着シートが基材を備え、かつ、基材が偏光板である場合の層構成としては、例えば、粘着剤層/偏光板[保護フィルム/偏光子/保護フィルム]、粘着剤層/偏光板[位相差フィルム/偏光子/保護フィルム]、粘着剤層/偏光板[位相差フィルム/保護フィルム/偏光子/保護フィルム]等の態様が挙げられる。
【0118】
保護フィルムには、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリシクロオレフィン(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の樹脂を含むフィルムが用いられる。
偏光子には、例えば、ヨウ素を含浸させたポリビニルアルコール(PVA)の延伸フィルムが用いられる。
位相差フィルムには、例えば、ポリシクロオレフィン(COP)等の樹脂を含むフィルムが用いられる。
【0119】
基材(好ましくは、光学フィルム)の厚さは、特に限定されないが、例えば、100μm以下であることが好ましく、10μm~100μmであることがより好ましく、30μm~70μmであることが更に好ましい。
【0120】
本開示における「基材の厚さ」は、基材の平均厚さを意味する。基材の平均厚さは、既述の粘着剤層の平均厚さと同様の方法により求められる値である。
【0121】
[粘着シートの作製方法]
本開示の粘着シートの作製方法は、特に限定されない。
本開示の粘着シートは、公知の方法により作製できる。
本開示の粘着シートを作製する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0122】
本開示の粘着シートが無基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を剥離シートの易剥離処理面に塗布することにより、剥離シート上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離シート上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、別途、準備した剥離シートの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、剥離シート/粘着剤層/剥離シートの積層構造を有する本開示の粘着シートを作製できる。
【0123】
本開示の粘着シートが有基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を基材の易接着処理面に塗布することにより、基材上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、基材上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、剥離シートの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、基材/粘着剤層/剥離シートの積層構造を有する本開示の粘着シートを作製できる。
【0124】
本開示の粘着シートが有基材タイプの粘着シートの場合、別の方法としては、例えば、以下の方法も挙げられる。本開示の粘着剤組成物を剥離シートの易剥離処理面に塗布することにより、剥離シート上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離シート上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、基材の易接着処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、基材/粘着剤層/剥離シートの積層構造を有する本開示の粘着シートを作製できる。
【0125】
粘着剤組成物の塗布方法は、特に限定されない。
粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
粘着剤組成物の塗布量は、特に限定されず、例えば、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0126】
塗布膜の乾燥方法は、特に限定されない。
塗布膜の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶剤の量等に応じて、適宜設定される。
乾燥条件の一例としては、熱風循環式乾燥機を用いて、70℃~120℃の空気を風速0m/秒~5m/秒で30秒間~180秒間吹き付けて乾燥させる条件が挙げられる。
【0127】
養生の方法としては、例えば、雰囲気温度20℃~35℃及び相対湿度45%~55%の環境下に2日間~7日間静置する方法が挙げられる。
【0128】
[光学部材]
本開示の光学部材は、ガラス基板と、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、光学フィルムと、をこの順に備える。
本開示の光学部材は、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、粘着剤層と、光学フィルム及び/又はガラス基板との界面で剥がれが生じ難く、粘着剤層及び/又は光学フィルムにシワが生じ難い傾向にある。
【0129】
ガラス基板の厚さは、特に限定されず、一般には、0.3mm~0.7mmであり、0.3mm~0.5mmであることが好ましい。
【0130】
ガラス基板としては、例えば、ソーダガラス、無アルカリガラス、及びITO(Indium Tin Oxide)膜付ガラスが挙げられる。
【0131】
本開示の光学部材における粘着剤層及び光学フィルムは、本開示の粘着シートにおける粘着剤層及び光学フィルムと同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0132】
本開示の光学部材は、例えば、表示装置の部材として、好適に使用できる。
表示装置としては、例えば、液晶ディスプレイ及び有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイが挙げられる。
【0133】
本開示の光学部材の製造方法は、特に限定されない。
本開示の光学部材は、例えば、基材として光学フィルムを用い、既述の方法により、本開示の粘着シートを作製した後、粘着シートの粘着剤層と、ガラス基板と、を貼り合わせることにより製造できる。
【0134】
[表示装置]
本開示の表示装置は、既述の本開示の光学部材を備える。
本開示の表示装置は、本開示の光学部材を備えるため、粘着剤層と、光学フィルム及び/又はガラス基板との界面で剥がれが生じ難く、粘着剤層及び/又は光学フィルムにシワが生じ難い傾向にある。
【0135】
表示装置の具体例は、既述のとおりである。
【実施例0136】
以下、本開示の粘着剤組成物を実施例により更に具体的に説明する。本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0137】
[(メタ)アクリル系重合体の製造]
〔製造例A-1〕
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却器を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート〔n-BA;アクリル酸アルキルエステル単量体〕241.5質量部、フェノキシエチルアクリレート〔PHEA;その他の単量体〕54.0質量部、アクリル酸〔AA;カルボキシ基を有する単量体〕3.0質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート〔2HEA;水酸基を有する単量体〕1.5質量部、及び酢酸エチル〔有機溶剤〕200.0質量部を入れて混合し、混合物を得た後、反応器内を窒素置換した。次いで、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後、反応器内の混合物に、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN;重合開始剤〕0.003質量部と、酢酸エチル15.0質量部と、を逐次添加し、1時間保持した。次いで、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.08質量部と、酢酸エチル340.0質量部と、を逐次添加し、5時間保持して重合反応を完結させた。次いで、重合反応の完結により得られた溶液を、酢酸エチルを用いて、固形分濃度15.0質量%に希釈した後、冷却し、(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液を得た。
【0138】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液に占める(メタ)アクリル系重合体A-1の質量割合を意味する。以下において製造した(メタ)アクリル系重合体A-2~A-26の各溶液についても同様である。
【0139】
〔製造例A-2~A-19及びA-22~A-25〕
製造例A-2~A-19及びA-22~A-25では、(メタ)アクリル系重合体の単量体組成を表1に示す単量体組成に変更したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が15.0質量%である(メタ)アクリル系重合体A-2~A-19及びA-22~A-25の各溶液を得た。
【0140】
〔製造例A-20及びA-21〕
製造例A-20及びA-21では、有機溶剤の使用量及び重合開始剤の使用量を調整することにより(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を表1に示す重量平均分子量に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が15.0質量%である(メタ)アクリル系重合体A-20及びA-21の各溶液を得た。
【0141】
〔製造例A-26〕
製造例A-26では、(メタ)アクリル系重合体の単量体組成をメチルメタクリレート(MMA)/イソブチルメタクリレート(i-BMA)=49/51〔質量比〕に変更したこと、並びに、有機溶剤の使用量及び重合開始剤の使用量を調整することにより(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を3万に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が15.0質量%である(メタ)アクリル系重合体A-26の溶液を得た。
【0142】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-25の単量体組成〔単位:質量%〕、(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量(「COOH基量」と表記)〔単位:mmol/100g〕、(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量(「OH基量」と表記)〔単位:mmol/100g〕、OH基量に対するCOOH基量の比〔「モル比(COOH基量/OH基量)」と表記〕、及び、重量平均分子量(「Mw」と表記)を表1に示す。
【0143】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-25の(メタ)アクリル系重合体100g当たりのカルボキシ基の含有量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体100g中のカルボキシ基の含有量A1の求め方と同様の方法により求めた。
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-25の(メタ)アクリル系重合体100g当たりの水酸基の含有量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体100g中の水酸基の含有量A2の求め方と同様の方法により求めた。
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-26の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0144】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-25のうち、(メタ)アクリル系重合体A-1~A-21は、本開示における特定(メタ)アクリル系重合体に該当する。
【0145】
【表1】
【0146】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「n-BA」:n-ブチルアクリレート
「MA」:メチルアクリレート
「2EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート
「MMA」:メチルメタクリレート
<その他の単量体>
「PHEA」:フェノキシエチルアクリレート
<カルボキシ基を有する単量体>
「AA」:アクリル酸〔モル質量:72.06g/mol〕
「M-5300」:ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート
〔モル質量:300g/mol〕
<水酸基を有する単量体>
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート
〔モル質量:116.12g/mol〕
「4HBA」:4-ヒドロキシブチルアクリレート
〔モル質量:144.20g/mol〕
【0147】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液666.7質量部(固形分として100質量部)と、ポリイソシアネート系化合物としてコロネート(登録商標) L-45E〔商品名、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:45質量%、イソシアネート基の含有率(カタログ値):7.9質量%、東ソー(株)製〕0.34質量部(固形分として0.15質量部)と、ポリアジリジン系化合物としてケミタイト(登録商標) PZ-33[商品名、トリス(1-アジリジンプロピオン酸)1,1,1-プロパントリイルトリスメチレン、(株)日本触媒製]0.02質量部と、シランカップリング剤としてX-41-1810〔商品名、チオール基含有シラン系化合物、信越化学工業(株)製〕0.30質量部と、適量の酢酸エチル〔有機溶剤〕と、を十分に混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0148】
〔実施例2~21〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~21の各粘着剤組成物を得た。
【0149】
〔実施例22~42〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例22~42の各粘着剤組成物を得た。
【0150】
〔比較例1~17〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表4に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~17の各粘着剤組成物を得た。
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
【表4】
【0154】
表2~4に記載の成分の詳細は、以下に示すとおりである。
<ポリイソシアネート系化合物>
「コロネート L-45E」〔商品名、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:45質量%、イソシアネート基の含有率(カタログ値):7.9質量%、東ソー(株)製〕
「コロネート HL」〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:74質量%、イソシアネート基の含有率(カタログ値):12.5質量%、東ソー(株)製〕
「タケネート D-110N」〔商品名、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:75質量%、イソシアネート基の含有率(カタログ値):11.5質量%、三井化学(株)製〕
「タケネート D-140N」〔商品名、イソホロンジイソシアネート(IPDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:75質量%、イソシアネート基の含有率(カタログ値):10.5質量%、三井化学(株)製〕
上記「コロネート」及び「タケネート」は、いずれも登録商標である。
【0155】
<ポリアジリジン系化合物>
「ケミタイト PZ-33」〔商品名、トリス(1-アジリジンプロピオン酸)1,1,1-プロパントリイルトリスメチレン、モル質量:425.52g/mol、官能基数:3、固形分濃度:100質量%、(株)日本触媒製〕
「CL-427」〔商品名、テトラメチロールメタントリ-β-アジリジニルプロピオネート、モル質量:427.49g/mol、官能基数:3、MENADIONA社製〕
「CL-467」〔商品名、トリメチロールプロパントリス(2-メチル-1-アジリジニルプロピオネート)、モル質量:467.6g/mol、官能基数:3、MENADIONA社製〕
上記「ケミタイト」は、登録商標である。
【0156】
<シランカップリング剤>
「X-41-1810」〔商品名、チオール基含有シラン系化合物、信越化学工業(株)製〕
「KBM-903」〔商品名、アミノ基含有シラン系化合物、信越化学工業(株)製〕
「KBM-403」〔商品名、エポキシ基含有シラン化合物、信越化学工業(株)製〕
【0157】
<その他の成分>
「アルミキレート A」〔商品名、アルミキレート系化合物、川研ファインケミカル(株)製〕
【0158】
表2~4中、「配合量」の欄に記載の数値は、いずれも固形分換算値である。
表2~4中、「-」は、その欄に該当する成分を配合していないことを意味する。
表2~4中、(メタ)アクリル系重合体の「COOH基量」及び「OH基量」の欄に記載の数値は、いずれも(メタ)アクリル系重合体100g中に含まれる「COOH基量」及び「OH基量」を示す。
表2~4中、ポリイソシアネート系化合物の「NCO基量」の欄に記載の数値は、表2~4に記載の配合量のポリイソシアネート系化合物中に含まれる「NCO基量」を示す。「NCO基量」は、既述の方法により算出した。
表2~4中、ポリアジリジン系化合物の「アジリジン基量」の欄に記載の数値は、表2~4に記載の配合量のポリアジリジン系化合物中に含まれる「アジリジン基量」を示す。「アジリジン基量」は、既述の方法により算出した。
【0159】
[粘着剤層付き偏光板X1の作製]
シリコーン系剥離処理剤で表面処理(所謂、易剥離処理)された剥離フィルム〔タイプ:MRF、厚さ:38μm、三菱ケミカル(株)製〕の易剥離処理面に、上記にて調製した粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。なお、粘着剤組成物の塗布量は、後述の粘着膜の厚さが10μmとなる量とした。次いで、形成した塗布膜に対し、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃の空気を風速3m/秒で60秒間吹き付けることにより、塗布膜を乾燥させ、剥離フィルム上に厚さ10μmの粘着膜を形成した。次いで、形成した粘着膜の露出した面と、トリアセチルセルロース(TAC)層/偏光子を含むポリビニルアルコール(PVA)層/TAC層の構成を有する偏光板(厚さ:50μm)の一方のTAC層の面と、を重ねて貼り合わせた。次いで、貼り合わせにより得られた積層体を雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に2日間(所謂、養生期間)静置し、粘着膜を養生させた。以上のようにして、剥離フィルム/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する粘着剤層付き偏光板X1を作製した。
【0160】
[粘着剤層付き偏光板X2の作製]
貼り合わせにより得られた積層体を雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に2日間(所謂、養生期間)静置し、粘着膜を養生させた後、さらに12日間(所謂、保管期間)静置して保管したこと以外は、上記「粘着剤層付き偏光板X1の作製」と同様の操作を行い、剥離フィルム/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する粘着剤層付き偏光板X2を作製した。
【0161】
[粘着膜付き偏光板Yの作製]
貼り合わせにより得られた積層体を雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に1時間静置したこと以外は、上記「粘着剤層付き偏光板X1の作製」と同様の操作を行い、剥離フィルム/1時間静置した粘着膜/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する粘着膜付き偏光板Yを作製した。
【0162】
[評価]
1.耐久性
1-1.耐久性評価用サンプルの作製
(1)養生終了直後
養生終了直後(養生期間の終了後8時間以内)の粘着剤層付き偏光板X1を、偏光板の吸収軸に対して長辺が0°になるように切断し、60mm×136mm(長辺)の大きさの試験片を準備した。次いで、試験片の剥離フィルムを剥離した。剥離により露出した粘着剤層の面と、ガラス板〔種類:ソーダガラス、松浪硝子工業(株)製〕の一方の面と、が接するように重ねた後、ラミネーターを用いて圧着し、試験片とガラス板とを貼り合わせた。以上のようにして、ガラス板/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する耐久性評価用サンプルを作製した。
【0163】
(2)長期保管後
保管終了直後(保管期間の終了後8時間以内)の粘着剤層付き偏光板X2を用いて耐久性評価用サンプルを作製したこと以外は、「(1)養生終了直後」における操作と同様の操作を行い、ガラス板/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する耐久性評価用サンプルを作製した。
【0164】
1-2.耐久性評価試験
上記にて作製した耐久性評価用サンプルを、処理温度50℃及び処理圧力5kg/cmの条件で20分間オートクレーブ処理した後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に24時間静置した。次いで、24時間静置した後の耐久性評価用サンプルに対し、冷熱衝撃装置〔型式:TSA-301L-W、エスペック(株)製〕を用いて、雰囲気温度-40℃の環境下に0.5時間静置した後、雰囲気温度85℃の環境下に0.5時間静置する操作を1サイクルとして、この操作を300サイクル繰り返す試験を行った。試験後の耐久性評価用サンプルの状態を目視により観察し、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表5及び6に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」及び「C」は、実用可能なレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0165】
-評価基準-
A:試験後の耐久性評価用サンプルにシワ及び剥がれが全く確認されなかった。
B:試験後の耐久性評価用サンプルにシワ及び/又は剥がれが僅かに確認されたが、実用上問題ないレベルであった。
C:試験後の耐久性評価用サンプルにシワ及び/又は剥がれが確認されたが、実用上許容されるレベルであった。
D:試験後の耐久性評価用サンプルにシワ及び/又は剥がれが顕著に確認され、実用上許容できないレベルであった。
【0166】
2.密着性
養生終了直後(養生期間の終了後8時間以内)の粘着剤層付き偏光板X1を、偏光板の吸収軸に対して長辺が0°になるように切断し、25mm×40mm(長辺)の大きさの試験片を準備した。次いで、試験片の剥離フィルムを剥離した。剥離により露出した粘着剤層の面の2.5cm×2.5cmの範囲にガムテープを貼り合わせた。次いで、貼り合わせたガムテープを試験片〔構成:粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)〕から長辺(40mm)方向に剥離角度135°及び剥離速度2cm/秒にて剥離させた。ガムテープを剥離した後の偏光板を目視にて観察した。偏光板からの粘着剤層の剥離が確認された場合には、剥離前の粘着剤層の面積(6.25cm)に対する剥離した粘着剤層の面積割合(単位:%)を求めた。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表5及び6に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」及び「C」は、実用可能なレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0167】
-評価基準-
A:剥離した粘着剤層の面積割合が10%未満であった。
B:剥離した粘着剤層の面積割合が10%以上30%未満の範囲であった。
C:剥離した粘着剤層の面積割合が30%以上50%未満の範囲であった。
D:剥離した粘着剤層の面積割合が50%以上であった。
【0168】
3.初期硬化性
1時間の静置時間経過直後(静置終了後1時間以内)の粘着膜付き偏光板Yを、偏光板の吸収軸に対して長辺が0°になるように切断し、60mm×136mm(長辺)の大きさの試験片を2枚準備した。次いで、2枚の試験片を重ね、剥離フィルム/粘着膜/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)/剥離フィルム/粘着膜/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する初期硬化性評価用サンプルを作製した。
TAC層が最上面になるように初期硬化性評価用サンプルを平面に置き、錘を付けたボールペン(ボール径:0.5mm)の芯をTAC層の面に当て、速度1cm/秒で3回往復させて長さ1cmの跡を付けた。この跡を付けた上から1枚目の試験片を取り除き、上から2枚目の試験片の偏光板の表面を観察し、跡の有無を確認した。
錘の重さを0.5kgから3kgまで0.5kgずつ変化させ、上から2枚目の試験片の偏光板において跡が確認された錘の重さに基づき、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表5及び6に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」及び「C」は、実用可能なレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0169】
-評価基準-
A:3kgの重さの錘を用いたときに初めて跡が確認された、又は、3kgの重さの錘を用いた場合でも跡が確認されなかった。
B:初めて跡が確認されたときの錘の重さが2kg又は2.5kgであった。
C:初めて跡が確認されたときの錘の重さが1kg又は1.5kgであった。
D:初めて跡が確認されたときの錘の重さが0.5kgであった。
【0170】
粘着剤組成物の初期硬化が早いと、1時間静置させた時点でも粘着膜が十分に硬いため、錘が重くても上から2枚目の試験片の偏光板には跡が残らない。一方、粘着剤組成物の初期硬化が遅いと、1時間静置させた時点では粘着膜が柔らかいため、錘が軽くても上から2枚目の試験片の偏光板には跡が残る。
【0171】
【表5】
【0172】
【表6】
【0173】
表5に示す結果から、実施例1~42の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、経時で安定した耐久性を示すことが明らかとなった。また、実施例1~42の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、偏光板に対する密着性に優れることが明らかとなった。また、実施例1~42の粘着剤組成物により形成された粘着膜は、初期硬化性に優れることが明らかとなった。
【0174】
一方、表6に示すように、比較例1~17の粘着剤組成物は、耐久性、密着性、及び初期硬化性の少なくとも1つ以上の評価項目において、実施例の粘着剤組成物と比較して劣ることが明らかとなった。