(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103377
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】工具ホルダ
(51)【国際特許分類】
B25H 3/00 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
B25H3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007665
(22)【出願日】2023-01-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.刊行物による公開 (1)発行者名 株式会社TJMデザイン (2)刊行物名 株式会社TJMデザイン カタログ『タジマ2023ホットニュース1-3月号』、第4頁 (3)発行年月日 令和4年10月3日 2.刊行物による公開 (1)発行者名 株式会社TJMデザイン (2)刊行物名 株式会社TJMデザイン カタログ『TAJIMA総合カタログ2023』、第553頁 (3)発行年月日 令和5年1月10日 3.電気通信回線を通じて発表 (1)掲載年月日 令和5年1月5日 (2)掲載アドレス https://amzn.asia/d/2gqQkUa (3)公開者名 株式会社TJMデザイン 4.電気通信回線を通じて発表 (1)掲載年月日 令和5年1月19日 (2)掲載アドレス https://www.facebook.com/tajima.tamariba/posts/pfbid0BGB4ejhKojfPP6dHTeGSNMFD6SwH1zCx7giwMNbCiGgzfxfWAfQk8HsVgg7BVqokl (3)公開者名 株式会社TJMデザイン
(71)【出願人】
【識別番号】000156307
【氏名又は名称】株式会社TJMデザイン
(71)【出願人】
【識別番号】500026485
【氏名又は名称】株式会社ミロク
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆太
(72)【発明者】
【氏名】務台 豊
【テーマコード(参考)】
3C012
【Fターム(参考)】
3C012BG01
(57)【要約】
【課題】腰に装着した状態でも、容積調節用の紐が出っ張りなどに引っ掛かりにくい工具ホルダを得る。
【解決手段】人体HBに面する側を背面、人体HBと反対側を正面、一方の側面を第1の側面(左側面)、一方の側面と反対側の側面を第2の側面(右側面)としたとき、工具ホルダ11は、墨つぼ101の背面を支持するベース21と、墨つぼ101の第1の側面及び正面を取り囲むように支持するカバー31と、墨つぼ101の第2の側面を支持するサイドカバー41とを備え、収納容積を調節するための編み上げ部51及びアジャスタ61と、墨つぼ101の底部を支持するボトムサポートとを有している。編み上げ部51及びアジャスタ61は、第2の側面に配置され、カバー31の正面から人体HBと反対側に突出しないようにされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に面する側を背面、人体と反対側を正面、一方の側面を第1の側面、一方の側面と反対側の側面を第2の側面としたとき、収納対象物の背面を支持するベースと、
前記ベースの一方の側部から延びて前記収納対象物の第1の側面及び正面を取り囲むように支持し、前記ベースの前記一方と反対側の側部に間隔をあけて対面するカバーと、
前記収納対象物の底面を支持するボトムサポートと、
前記ベースと前記カバーとの対面部分に編み上げ状に紐を掛け渡し、前記収納対象物の第2の側面を取り囲む編み上げ部と、
前記カバーの正面から人体と反対側に突出しない位置に配置され、前記編み上げ部の前記紐の長さを調整するアジャスタと、
を備える工具ホルダ。
【請求項2】
前記ベースには、人体に装着されるベルトに設けた受け具に着脱自在に取り付けられる連結具が取り付けられている、
請求項1に記載の工具ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工具ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば墨つぼのような工具を収納する工具ホルダとして、作業者が腰に巻くベルトに装着できるようにしたものが知られている。この種の工具ホルダは、上面が開口する上下方向に長い収納部を有しており、ベルトに装着できるようにした連結具を設けている。全体の形態としては、スマホ用や携帯電話用のホルダと似ている。
【0003】
墨つぼを収納する工具ホルダに似た携帯電話用ホルダとしては、例えば特許文献1、2に記載されているようなものがある。
【0004】
特許文献1に記載された携帯電話用ホルダは、中央縦割部(2)を介して、フロント面(文献1では裏面)を左右両片(1a、1b)に分割した縦長形状のホルダであり、開閉蓋(8)によって開閉される上面の開口部から、携帯電話を抜き差しできるようにしている(文献1の段落[0005][0009]-[0011]、
図1参照)。
【0005】
左右両片(1a、1b)には締め紐(5)が編み上げ状に掛け渡され、締め紐(5)の締め込み具合によって内部容積を調節することが可能である。締め紐(5)の両端は、蝶結びのようにして結ばれている(文献1の
図1参照)。
【0006】
特許文献1は、携帯電話用ホルダを人体に装着することについては教示していない。
【0007】
特許文献2に記載された携帯電話用ホルダは、底面部(1b)から前面部(1a)、後面部(1c)、左側面部(1d)、及び右側面部(1e)を上方に向けて折り返し、各部を弾性紐(8)で編み上げ状に連結することで、携帯電話を収納可能なポケット状の収納部を形成するようにしている(文献2の段落[0005]-[0006]、
図1参照)。
【0008】
弾性紐(8)は前面部(1a)から前方に引き出され、止め具(9)によって引き出し長さを調整することができるようにされている。弾性紐(8)の長さを調整することで、収納部の容積を変更することができる(文献2の
図4参照)。
【0009】
このような携帯電話用ホルダは、バックパック(20)の肩バンド(20a)に着脱自在に取り付けられる(文献2の
図5(A)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】登録実用新案第3034323号公報
【特許文献2】登録実用新案第3068211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したように、墨つぼのような工具を収納する工具ホルダは、例えば作業者が腰に巻くベルトに装着して使用される。このとき工具ホルダに対して、特許文献1、2に記載されたような紐(特許文献1の締め紐(5)、特許文献2の弾性紐(8))を用いた収納容積の調節手段を適用すれば、各種の大きさの工具を択一的に収納し、作業者に携帯させることができる。
【0012】
ところが特許文献1に記載された締め紐(5)は、ホルダの正面側に編み上げ状に掛け渡されているので、工事現場などでは各所に見られる出っ張りなどに引っ掛かりやすい。この点は、特許文献2の弾性紐(8)も同様で、前面部(1a)から前方に引き出された弾性紐(8)の部分が出っ張りなどに引っ掛かる可能性がある。
【0013】
本開示の課題は、腰に装着した状態でも、容積調節用の紐が出っ張りなどに引っ掛かりにくい工具ホルダを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
工具ホルダは、一態様として、人体に面する側を背面、人体と反対側を正面、一方の側面を第1の側面、一方の側面と反対側の側面を第2の側面としたとき、収納対象物の背面を支持するベースと、前記ベースの一方の側部から延びて前記収納対象物の第1の側面及び正面を取り囲むように支持し、前記ベースの前記一方と反対側の側部に間隔をあけて対面するカバーと、前記収納対象物の底面を支持するボトムサポートと、前記ベースと前記カバーとの対面部分に編み上げ状に紐を掛け渡し、前記収納対象物の第2の側面を取り囲む編み上げ部と、前記カバーの正面から人体と反対側に突出しない位置に配置され、前記編み上げ部の前記紐の長さを調整するアジャスタと、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、腰に装着した状態でも、容積調節用の紐を出っ張りなどに引っ掛かりにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態の工具ホルダの使用態様の一例として、ベルトに装着され、墨つぼを収納した状態を示す斜視図。
【
図2】工具ホルダに収納される墨つぼの一例を示す斜視図。
【
図12】受け具を設けたベルトに対して、連結具を取り付けた工具ホルダを装着するときの様子を例示する斜視図。
【
図13】(A)は工具ホルダを下方位置に装着したときの使用態様の一例、(B)は工具ホルダを上方位置に装着したときの使用態様の一例をそれぞれ示す模式図。
【
図14】工具ホルダに取り付けられて、ベルトに設けた受け具に着脱自在に装着される連結具の一例であり、工具ホルダを下方位置に装着するときの(A)は正面側から見た斜視図、(B)は背面側から見た斜視図。
【
図15】工具ホルダに取り付けられて、ベルトに設けた受け具に着脱自在に装着される連結具の一例であり、工具ホルダを上方位置に装着するときの(A)は正面側から見た斜視図、(B)は背面側から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態を図面に基づいて説明する。説明する項目はつぎの通りである。
1.構成
(1)概要
(2)墨つぼ
(3)工具ホルダ
(3-1)ベース
(3-2)カバー
(3-3)サイドカバー
(3-4)編み上げ部
(3-5)アジャスタ
(3-6)ボトムサポート
(3-7)受け具と連結具
(4)まとめ
2.作用効果
(1)基本的な作用効果
(2)引っ掛かりの抑制
(3)サイドカバー
(4)ボトムサポート
(5)ベルトへの装着態様
3.変形例
【0018】
1.構成
(1)概要
図1に示すように、本実施の形態は、収納対象物である工具として、墨つぼ101を出し入れ自在に収納することができるようにした工具ホルダ11の一例である。工具ホルダ11は、作業者201が腰202に巻いたベルト203に着脱自在に取り付けられる。
【0019】
本実施の形態では、作業者201の人体HBに面する側を背面、人体HBと反対側を正面、一方の側面を第1の側面、一方の側面と反対側の側面を第2の側面と呼ぶ。第1の側面は、工具ホルダ11を正面側から見て左側の側面(左側面)、第2の側面は、工具ホルダ11を正面側から見て右側の側面(右側面)である。これらの各面の呼び方は、工具ホルダ11に対しても、墨つぼ101に対しても用いられる。
【0020】
工具ホルダ11は、墨つぼ101を収納する収納体12を備えている。収納体12は、墨つぼ101の背面を支持するベース21(
図3等参照)、第1の側面及び正面を取り囲むように支持するカバー31、及び第2の側面を支持するサイドカバー41を主体として備え、編み上げ部51、アジャスタ61、及び
図9~
図11に示すボトムサポート71を有している。
【0021】
編み上げ部51は、ベース21とカバー31との対面部分に編み上げ状に紐52を掛け渡し、墨つぼ101の第2の側面を取り囲む構造物である。
【0022】
アジャスタ61は、サイドカバー41の紐52の長さを調整する構造物である。
【0023】
ボトムサポート71は、墨つぼ101の底面を支持する構造物である(
図9~
図11参照)。
【0024】
(2)墨つぼ
図2に示すように、墨つぼ101は、糸巻部111と墨室部121とを備え、墨室部121の先端にカルコ131を着脱自在に取り付けている。糸巻部111には、糸巻操作部112が設けられている。
【0025】
図2中、糸巻操作部112が設けられている面は、墨つぼ101の正面であり、正面の裏側は背面、正面の左側の面は第1の側面、正面の右側の面は第2の側面である。墨つぼ101は、全体的に曲面を多用したデザインになっているため、これらの正面、背面、第1の側面、及び第2の側面は、それぞれ曲面状の面になっている。
【0026】
糸巻部111は、正面及び背面から見ると円形形状をしており、糸を巻回したリールを内蔵している(いずれも図示せず)。リールに巻かれた糸は、墨室部121の内部を通ってカルコ131に結び付けられており、カルコ131を引っ張ることによって引き出し自在である。糸の引き出しに伴い、リールは一方向に回転する。糸巻操作部112をつまんで反対方向にリールを回転させると、リールに糸を巻き取ることができる。
【0027】
墨室部121は、内部に墨室を備え、インクを含侵させたスポンジを墨室内に収納している(すべて図示せず)。糸巻部111内でリールに巻かれた糸は、スポンジの内部を通って墨室部121の先端部から引き出されているので、インクを染み込ませた墨うち糸となって外部に引き出される。
【0028】
カルコ131は、墨室部121に差し込まれる先端部に針132を備えている。墨入れをする対象物に針132を刺すことでカルコ131を固定し、この状態で、墨つぼ101から引き出した糸をはじくことで、対象物に墨出しをすることができる。
【0029】
(3)工具ホルダ
工具ホルダ11の各部について説明する。
【0030】
(3-1)ベース
図3~
図8に示すように、ベース21は、墨つぼ101の長手方向、つまり糸巻部111と墨室部121とが並ぶ方向に長い平板状のもので、上部が背面側に折り返され、スナップ22で留められている。折り返し部分には、後述する連結具81が着脱自在に取り付けられている(
図12~
図15参照)。ベース21の下端から上部の折り返し部分までの長さは、墨つぼ101の全長よりもやや長い。
【0031】
図5~
図8に示すように、スナップ22は、折り返された先端部分に設けられた雄スナップ22aと、ベース21の裏面に固定されたスナップ片23に設けられた雌スナップ22bとの組み合わせ構造を有している。
図5~
図8では雄スナップ22aの裏面側に隠れるように配置されているスナップ片23を表側に引っ張り出し、雄スナップ22aに雌スナップ22bを押し込むようにすることで、両スナップ22a、22bは結合される。
【0032】
ベース21の材質は、例えば合成皮革、天然皮革、ビニール、合成樹脂、布地などである。
【0033】
スナップ片23の材質は、例えば布地である。他にも合成皮革、天然皮革、ビニール、合成樹脂などをスナップ片23の材料として用いてもよい。スナップ片23は、例えば縫製による縫い合わせ、接着剤による接着、熱溶着などの手法によってベース21に固定されている。
【0034】
以後の説明の便宜上、ベース21の両側部のうち、第1の側面の側(
図4中の左側)を一方の側部、第2の側面の側(
図4中の右側)を反対側の側部とも呼ぶ。
【0035】
(3-2)カバー
カバー31は、ベース21の一方の側部から延び、水平断面がL字形状になった部材である。L字形状に屈曲することで、墨つぼ101の第1の側面を支持する部分を第1の側面に、墨つぼ101の正面を支持する部分を正面にそれぞれ有している。このような水平断面がL字形状のカバー31は、墨つぼ101の第1の側面及び正面を取り囲むように支持する。
【0036】
カバー31の高さ寸法は、墨つぼ101のうち、墨室部121とこの墨室部121に取り付けられたカルコ131との長さに相当する。このためカルコ131の側から収納体12に墨つぼ101が投入されたとき、糸巻部111は、カバー31には覆われずに外部に露出する(
図1参照)。
【0037】
カバー31の自由端側の側部は、ベース21の反対側の側部に間隔をあけて対面し、片開き状態になっている。説明の便宜上、カバー31の自由端側の側部とベース21の反対側の側部との間の間隙を、間隙Gと呼ぶ。
【0038】
カバー31の材質は、ベース21と同様に、例えば合成皮革、天然皮革、ビニール、合成樹脂、布地などである。ベース21とカバー31とは、例えば縫製による縫い合わせ、接着剤による接着、熱溶着、一体成形などの手法によって一体化されている。
【0039】
本実施の形態で紹介するカバー31は、水平断面がL字形状に屈曲するようにして、墨つぼ101の第1の側面を支持する部分(第1の側面部分)と、墨つぼ101の正面を支持する部分(正面部分)とを一体に形成している。別の実施の形態としては、第1の側面部分と正面部分とを別体として、例えば縫製による縫い合わせ、接着剤による接着、熱溶着、一体成形などの手法によって一体化するようにしてもよい。このとき第1の側面部分と正面部分とには、それぞれ別の材質の材料を用いてもよい。
【0040】
(3-3)サイドカバー
サイドカバー41は、ベース21の反対側の側部に設けられ、墨つぼ101の第2の側面を支持する。このときサイドカバー41は、後述する編み上げ部51よりも内側の位置に配置され、墨つぼ101に直接接触するようにされている。このようなサイドカバー41は、その自由端をカバー31の自由端と重なり合わせ、間隙Gを完全に閉じている。カバー31の自由端とサイドカバー41の自由端との重なり合いは、サイドカバー41の自由端側の側部に設けられた屈曲部Bによって実現されている。
【0041】
サイドカバー41の高さ寸法は、カバー31の高さ寸法と一致している。
【0042】
サイドカバー41の材質は、ベース21及びカバー31と同様に、例えば合成皮革、天然皮革、ビニール、合成樹脂、布地などである。サイドカバー41は、例えば縫製による縫い合わせ、接着剤による接着、熱溶着、一体成形などの手法によってベース21と一体化されている。
【0043】
(3-4)編み上げ部
編み上げ部51は、ベース21とカバー31との間の間隙Gに配置され、サイドカバー41とともに、墨つぼ101の第2の側面を支持する。ベース21の反対側の側部とカバー31の自由端側の側部とには、高さ位置を揃えて、上下方向に三つずつの紐ホルダ53が設けられている。紐ホルダ53は、編み上げ部51の紐52を通せるように、帯状部材の両端部を固定して輪状にした構造を有している。紐52は、後述するアジャスタ61の摘み62に両端を固定され、エンドレス形状を与えられている。
【0044】
編み上げ部51の主体をなす紐52は、例えばゴムを繊維で包み込んだゴム紐であり、伸縮性を有している。
【0045】
紐52を掛け渡すための紐ホルダ53の材質は、例えば布地である。他にも合成皮革、天然皮革、ビニール、合成樹脂などを紐ホルダ53の材料として用いてもよい。紐ホルダ53は、例えば縫製による縫い合わせ、接着剤による接着、熱溶着などの手法によってベース21及びカバー31に固定されている。
【0046】
(3-5)アジャスタ
アジャスタ61は、紐52の下方に位置するループ部分、つまり摘み62から二股に延びる二本の紐52を固定及び固定解除自在に保持している。
【0047】
より詳しくは、アジャスタ61は二本の紐52を内蔵し、内蔵する紐52に接触する接触子をコイルスプリングやリーフスプリングなどの付勢部材によって押し付ける構造を有している(内部構造は図示せず)。アジャスタ61には解除ボタン63が設けられ、この解除ボタン63を押下することによって、内蔵する接触子を紐52から離れる方向に移動させるようにしている。このようなアジャスタ61の構造上、解除ボタン63を押下すれば、紐52をスライド移動させることができ、解除ボタン63の押下を解除すれば、その位置で紐52を固定することができる。こうしてアジャスタ61は、サイドカバー41の紐52の長さの調整を可能にしている。
【0048】
編み上げ部51は、ベース21とカバー31との間の間隙G、つまり第2の側面の側に配置されているので、カバー31の正面から人体HBと反対側に突出しない。アジャスタ61は、このような位置に配置される編み上げ部51の紐52の下方に位置するループ部分に取り付けられているので、編み上げ部51と同様に、カバー31の正面から人体HBと反対側に突出しない。
【0049】
(3-6)ボトムサポート
図9は、工具ホルダ11の底面図、
図10は、工具ホルダ11の平面図、そして
図11は、
図10中のA-A線断面図である。これらの
図9~
図11に示すように、ボトムサポート71は、支持帯72と収納箱73とを有している。
【0050】
支持帯72は、カバー31のうち、墨つぼ101の第1の側面を支持する部分と、サイドカバー41との間に掛け渡された帯状体である。支持帯72は、墨つぼ101の底部を直接支持する収納箱73を介して、墨つぼ101の底部を支持する。
【0051】
支持帯72の材質は、例えば布地である。他にも合成皮革、天然皮革、ビニール、合成樹脂などを支持帯72の材料として用いてもよい。支持帯72は、例えば縫製による縫い合わせ、接着剤による接着、熱溶着などの手法によってカバー31とサイドカバー41とに固定されている。
【0052】
収納箱73は、ベース21、カバー31、及びサイドカバー41等によって形成された収納体12の内部に落とし込まれ、支持帯72、あるいは収納体12の内壁に支持されている。収納箱73は、例えば樹脂などによって成形された上面を開口する箱状体であり、カルコ131側から投入された墨つぼ101を受け入れて支持する。墨つぼ101が投げ入れられたときの衝撃を緩和するために、収納箱73の底部には緩衝体74が設けられている。
【0053】
緩衝体74には、衝撃の緩和のみならず、墨つぼ101から漏れ出したインクを吸水して保持し得るように、吸水性を有する材料、例えばスポンジなどが用いられている。
【0054】
(3-7)受け具と連結具
図12に示すように、作業者201が腰202に巻いたベルト203に工具ホルダ11を装着するには、ベルト203に取り付けた受け具204に、ベース21の上部折り返し部分に取り付けられた連結具81を嵌め込む。
【0055】
受け具204は、連結具81に設けたコネクタ82を上方から受け入れて嵌め込ませるキャッチャ205を備えている。キャッチャ205は、差し込まれたコネクタ82をスライド移動させる案内構造206と、コネクタ82の底部を堰き止める底部ストッパ207とを備えている。
【0056】
案内構造206は、固定レール206aと可動レール206bとを備え、コネクタ82をスライドさせて案内する過程で、可動レール206bを固定レール206aから遠ざかる方向に変位させ得るように構成されている。
【0057】
より詳しくは、可動レール206bは、受け具204に内蔵された図示しない付勢部、例えばコイルスプリングやリーフスプリングなどによって付勢され、通常は固定レール206aに近づく方向に位置づけられている。キャッチャ205にコネクタ82が差し込まれると、可動レール206bは、コネクタ82に押されて固定レール206aから離れる方向に一旦退避した後、コネクタ82が底部ストッパ207の位置にまで達すると元の位置に復帰し、コネクタ82を抜け止めする。
【0058】
コネクタ82は、上下の両肩部分に、凹形状に屈曲した凹部83を設けている(
図14(B)、
図15(B)参照)。可動レール206bは、三角形の頂点をなす形状の凸部208を設けている。キャッチャ205にコネクタ82が挿入される際、コネクタ82の下側の凹部83が凸部208を押して可動レール206bを退避させ、コネクタ82が底部ストッパ207の位置にまで達したとき、コネクタ82の上側の凹部83に凸部208が嵌り込むように、各部は構成されている(
図1参照)。このような構造上、凹部83と凸部208とは傾斜面同士で接触することになるので、キャッチャ205に対するコネクタ82の抜き差しが容易になる。
【0059】
図13(A)(B)に示すように、工具ホルダ11は、ベルト203に対して比較的下方に位置づけられる下方位置(
図13(A)参照)と、比較的上方に位置づけられる上方位置(
図13(B)参照)とに択一的に取り付け可能である。工具ホルダ11を下方位置に位置づけるか、それとも上方位置に位置づけるかは、工具ホルダ11のベース21に対して、連結具81を表裏入れ替えて取り付けることによって選択することができる。
【0060】
図14(A)(B)は、工具ホルダ11を下方位置に位置づけるときの連結具81の姿勢を示す斜視図である。
図14(A)は、工具ホルダ11の正面側、
図14(B)は、工具ホルダ11の背面側をそれぞれ示している。
【0061】
連結具81にはベルト通し84が設けられている。工具ホルダ11を下方位置に位置づけるときには、
図14(A)に示す姿勢の連結具81のベルト通し84に対して、正面側からベース21の上端部分を通し、スナップ22で留める。これによって連結具81は、
図1及び
図12に示すような姿勢になり、背面側のコネクタ82を受け具204のキャッチャ205に差し込むことで、工具ホルダ11は、下方位置に位置づけられる(
図13(A)参照)。
【0062】
図15(A)(B)は、工具ホルダ11を上方位置に位置づけるときの連結具81の姿勢を示す斜視図である。
図15(A)は、工具ホルダ11の正面側、
図15(B)は、工具ホルダ11の背面側をそれぞれ示している。
【0063】
工具ホルダ11を上方位置に位置づけるときには、
図15(A)に示す姿勢の連結具81のベルト通し84に対して、連結具81の上端を越した背面側からベース21の上端部分を通し、スナップ22で留める。これによって連結具81は、ベース21の上端に位置づけられる折り返し部分よりも下方に配置される。この状態で背面側のコネクタ82を受け具204のキャッチャ205に差し込めば、工具ホルダ11は、上方位置に位置づけられる(
図13(B)参照)。
【0064】
工具ホルダ11を上方位置に位置づけるときのコネクタ82は、ベース21の折り返し部分と重なり合う。このためベルト203に工具ホルダ11を装着した際、工具ホルダ11がベルト203から浮き上がった状態になりやすい。そこで本実施の形態では、連結具81の正面部分を凹状にえぐったような形状の窪み85を設け、ベース21の折り返し部分を窪み85に収納できるようにしている。これによってベルト203に工具ホルダ11を装着した際、ベルト203からの工具ホルダ11の浮き上がりが抑制される。
【0065】
(4)まとめ
以上説明したように、本実施の形態の工具ホルダ11は、ベース21、カバー31、ボトムサポート71、編み上げ部51、及びアジャスタ61を備えている。
【0066】
実施の一態様として、ベース21の反対側の側部には、編み上げ部51よりも内側の位置に、墨つぼ101の第2の側面を支持するサイドカバー41が設けられている。
【0067】
実施の一態様として、カバー31の自由端とサイドカバー41の自由端とは、重なり合っている。
【0068】
実施の一態様として、ボトムサポート71は、カバー31のうち、墨つぼ101の第1の側面を支持する部分とサイドカバー41との間に、掛け渡された支持帯72を有している。
【0069】
実施の一態様として、ボトムサポート71は、支持帯72に底部を支持され、墨つぼ101の底部を収納可能な収納箱73を有している。
【0070】
実施の一態様として、収納箱73の底面には、緩衝体74が設けられている。
【0071】
実施の一形態として、編み上げ部51の紐52は、エンドレス形状を有しており、アジャスタ61は、紐52の下方に位置するループ部分から延びる二本の紐52を固定及び固定解除自在に保持する。
【0072】
実施の一形態として、ループ部分には、指先で把持可能な摘み62が取り付けられている。
【0073】
実施の一形態として、ベース21には、人体HBに装着されるベルト203に設けた受け具204に着脱自在に取り付けられる連結具81が取り付けられている。
【0074】
実施の一形態として、連結具81は、表裏反転自在にベース21に着脱自在に取り付けられており、一方の面を正面側に向けたときには、自由端を上方に向けて受け具204に結合され、一方と反対側の面を正面側に向けたときには、自由端を下方に向けて受け具204に結合される。
【0075】
2.作用効果
(1)基本的な作用効果
本実施の形態の工具ホルダ11は、作業者201の腰202に巻いたベルト203に装着して、墨つぼ101を収納体12に収納することができる。これによって墨つぼ101の持ち運びを可能にする。
【0076】
墨つぼ101を収納体12に収納するに際しては、サイドカバー41の紐52の長さをアジャスタ61によって調整し、収納体12の収納容積を可変することができる。紐52の長さを短くし、収納体12の収納容積を少なくするには、解除ボタン63を押し、摘み62をつまんで引っ張ればよい。反対に紐52の長さを長くし、収納体12の収納容積を大きくするには、解除ボタン63を押し、摘み62の方向に近づければよい。こうして紐52の長さを調節することで、各種サイズの墨つぼ101がジャストフィットするように、収納体12の収納容積を適宜調節することができる。
【0077】
(2)引っ掛かりの抑制
本実施の形態の工具ホルダ11によれば、編み上げ部51は、第2の側面に位置する間隙Gに配置される(
図3、
図5参照)。このため編み上げ部51の紐52は、カバー31の正面から人体HBと反対側に突出しない。アジャスタ61は、このような位置に配置される編み上げ部51の紐52の下方に位置するループ部分に取り付けられているので、編み上げ部51及び紐52と同様に、カバー31の正面から人体HBと反対側に突出しない。
【0078】
したがって工具ホルダ11を腰202に装着した状態でも、工事現場などでは各所によく見られる出っ張りなどに、容積調節用の紐52を引っ掛かりにくくすることができる。
【0079】
(3)サイドカバー
サイドカバー41は、第2の側面における収納体12の内壁を円滑にする。このため収納体12に墨つぼ101を出し入れするに際して、編み上げ部51の紐52に墨つぼ101が引っ掛かってしまうような事態を防止することができる。
【0080】
(4)ボトムサポート
ボトムサポート71は、カバー31とサイドカバー41との間に支持帯72を掛け渡すだけという簡単な構造によって、墨つぼ101を確実に支持することができる。このとき収納箱73を設け、墨つぼ101を収納した状態で支持帯72に支持させるため、墨つぼ101からインク漏れが発生しても、漏れたインクを収納箱73で受け、作業者201の衣服をインクで汚してしまうような事態の発生を防止することができる。
【0081】
(5)ベルトへの装着態様
図13(A)(B)に示すように、工具ホルダ11に取り付ける際の連結具81の表裏を入れ替えるだけで、ベルト203に対して、工具ホルダ11を低い位置と高い位置とに択一的に装着することができる。
【0082】
3.変形例
実施に際しては、各種の変形や変更が許容される。
【0083】
例えば正面側から見て、第1の側面を右側の側面、第2の側面を左側の側面としてもよい。この場合、例えば
図5に示すように、工具ホルダ11を正面から見て、左側に間隙Gが設けられることになり、サイドカバー41、編み上げ部51、及びアジャスタ61も左側に配置される。
【0084】
本実施の形態では、伸縮性を有する紐52を編み上げ部51に設ける一例を示したが、実施に際しては、紐52は、伸縮性を有しない紐であってもよい。
【0085】
本実施の形態では、ベース21とカバー31とサイドカバー41とを別体とし、それらの各部を固定するようにして収納体12を構成した。実施に際しては、、ベース21とカバー31、又はベース21とサイドカバー41とを一体に形成するようにしてもよい。
【0086】
本実施の形態では、ベース21とカバー31とサイドカバー41という収納体12を構成する各要素について、個々の要素それ自体を一体の単一物とした一例を示した。実施に際しては、ベース21、カバー31、及びサイドカバー41の各要素は、複数の部材が組み合わされて構成されるようにしてもよい。
【0087】
例えばベース21は、本実施の形態では、上端部分を折り返して連結具81を取り付けることができるようにしているが、実施に際しては、収納体12を構成する部分と連結具81を取り付ける部分とを別体として、両者を直接的に、あるいは介在物を介して連結するようにしてもよい。
【0088】
カバー31は、前述したように、例えばL字形状に屈曲する屈曲部分を境に別部材としたり、上下方向に複数個の別部材をつないで構成したりすることが可能である。
【0089】
サイドカバー41についても、屈曲部Bを境に別部材としたり、上下方向に複数個の別部材をつないで構成したりすることが可能である。
【0090】
本実施の形態では、収納対象物として墨つぼ101を収納する工具ホルダ11の一例を示したが、実施に際しては、収納対象物は墨つぼ101に限らない。収納体12への収納に適した形状を有するものであれば、あらゆる工具を収納対象物として収納することができる。
【0091】
その他あらゆる変形や変更が許容される。
【符号の説明】
【0092】
11 工具ホルダ
12 収納体
21 ベース
22 スナップ
22a 雄スナップ
22b 雌スナップ
23 スナップ片
31 カバー
41 サイドカバー
51 編み上げ部
52 紐
53 紐ホルダ
61 アジャスタ
62 摘み
63 解除ボタン
71 ボトムサポート
72 支持帯
73 収納箱
74 緩衝体
81 連結具
82 コネクタ
83 凹部
84 ベルト通し
85 窪み
101 墨つぼ(収納対象物)
111 糸巻部
112 糸巻操作部
121 墨室部
131 カルコ
132 針
201 作業者
202 腰
203 ベルト
204 受け具
205 キャッチャ
206 案内構造
206a 固定レール
206b 可動レール
207 底部ストッパ
208 凸部
B 屈曲部
G 間隙
HB 人体