(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103379
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】釦操作判定装置、釦操作判定プログラム、釦操作判定方法、及び操作装置
(51)【国際特許分類】
E05B 19/00 20060101AFI20240725BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
E05B19/00 E
E05B49/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007668
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】519055788
【氏名又は名称】株式会社ビットキー
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(72)【発明者】
【氏名】古沢 洋一
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA15
2E250BB08
2E250DD06
2E250FF25
2E250FF27
2E250FF36
2E250GG06
(57)【要約】
【課題】
コストの増加を抑制し且つ簡易な構成によって各種釦に対する押釦動作を検出すること。
【解決手段】
少なくとも一つのプロセッサを具備する釦操作判定装置であって、前記少なくとも一つのプロセッサは、押下釦に対して押釦動作をするように構成されたアクチュエータに供給される電流値の変動に係る測定情報を受信し、前記測定情報に含まれる測定値が所定の閾値以上になった場合に前記押釦動作が完了したと判定する、ための処理を実行するように構成されたこと。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプロセッサを具備する釦操作判定装置であって、
前記少なくとも一つのプロセッサは、
押下釦に対して押釦動作をするように構成されたアクチュエータに供給される電流値の変動に係る測定情報を受信し、
前記測定情報に含まれる測定値が所定の閾値以上になった場合に前記押釦動作が完了したと判定する、
ための処理を実行するように構成された釦操作判定装置。
【請求項2】
前記閾値は、前記アクチュエータによって前記押下釦が最深位置まで押された状態における前記測定値よりも低く設定されている、
請求項1に記載の釦操作判定装置。
【請求項3】
前記閾値は、前記押下釦の使用環境温度に応じて変更可能に設定されている、
請求項1に記載の釦操作判定装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記測定値が前記閾値以上となる期間が所定時間以上となった場合に、前記押釦動作が完了したと判定する、
ための処理を実行するように構成された、請求項2に記載の釦操作判定装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記測定情報の受信開始から一定時間経過後においても、前記測定値が前記閾値に到達しない場合に前記押釦動作に異常があったと判定する、請求項2に記載の釦操作判定装置。
【請求項6】
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記測定値が前記閾値よりも高い値で設定された異常値に到達した場合に前記押釦動作に異常があったと判定する、請求項2に記載の釦操作判定装置。
【請求項7】
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記測定情報の受信開始から一定時間経過後においても、前記測定値が前記閾値以上となる継続時間が前記所定時間未満の場合に前記押釦動作に異常があったと判定する、請求項4に記載の釦操作判定装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記押釦動作が完了した後において、前記測定値が初期状態設定値に到達しない場合に前記押下釦に対する前記アクチュエータの離間操作に異常があったと判定する、請求項1に記載の釦操作判定装置。
【請求項9】
前記測定値は、前記電流値又は前記電流値を変換した電圧値である、
請求項2に記載の釦操作判定装置。
【請求項10】
少なくとも一つのプロセッサを具備するコンピュータにおいて前記少なくとも一つのプロセッサを、
押下釦に対して押釦動作をするように構成されたアクチュエータに供給される電流値の変動に係る測定情報を受信し、
前記測定情報に含まれる測定値が所定の閾値以上になった場合に前記押釦動作が完了したと判定する、
ように機能させる釦操作判定プログラム。
【請求項11】
少なくとも一つのプロセッサを具備するコンピュータにおいて前記少なくとも一つのプロセッサにより実行される釦操作判定方法であって、
押下釦に対して押釦動作をするように構成されたアクチュエータに供給される電流値の変動に係る測定情報を受信する段階と、
前記測定情報に含まれる測定値が所定の閾値以上になった場合に前記押釦動作が完了したと判定する段階と、
を含む釦操作判定方法。
【請求項12】
押下釦に対して押釦動作をするように構成されたアクチュエータと、
前記アクチュエータに供給される電流値の変動に係る測定を行う測定回路と、
前記測定回路から測定情報を受信し、前記測定情報に含まれる測定値が所定の閾値以上になった場合に前記押釦動作が完了したと判定するプロセッサと、
を備える、操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子機器に搭載された釦に対する押釦動作の有無を判定する釦操作判定装置、釦操作判定プログラム、釦操作判定方法、及び当該釦操作判定を備え且つ押釦動作を可能とする操作装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、不特定多数のユーザに対して、自動車を貸し出すレンタカーサービスが知られている。近年においては、短時間における自動車の利用ニーズが高まり、登録を行った会員ユーザの間において、特定の自動車を共同して使用するカーシェアリングが普及してきている。当該カーシェアリングにおいては、登録ユーザ間における車両の電子キーの受け渡しが困難であるため、ユーザが電子キーを事前に所持しなくとも車両ドアの解錠ができるような仕組みが取り入れられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「車両に設置される制御装置であって、前記車両のドア解錠信号を発信する回路部を有する車両電子キー又は前記回路部が取り付けられることで、前記ドア解錠信号を前記回路部から発信させる発動制御が可能な発動制御部と、所与の情報を取得する第1の取得制御部と、前記第1の取得制御部による前記所与の情報の取得がなされた場合に、前記発動制御部に前記発動制御を行わせる実行制御部と、を備えた制御装置」が記載されている。特に、特許文献1に記載された制御装置においては、車両電子キーのドア解錠釦又はドア施錠釦等に対する操作の有無を把握するために、パッド部を電気的に短絡することで検知状態とさせ、各釦が押し下げられた状態を擬似的に再現している。
【0004】
しかしながら、特許文献1における釦操作の検出方法では、電気的な短絡状態を生成するための部品及び回路が必要となり、制御装置の構造が複雑となるだけでなくコストも増加することになり、カーシェアリングを行う事業者の負担が増加する虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上述した背景からなされたものであり、コストの増加を抑制し且つ簡易な構成によって各種釦に対する押釦動作の有無を判定することができる釦操作判定装置、釦操作判定プログラム、釦操作判定方法、及び操作装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、「少なくとも一つのプロセッサを具備する釦操作判定装置であって、前記少なくとも一つのプロセッサは、押下釦に対して押釦動作をするように構成されたアクチュエータに供給される電流値の変動に係る測定情報を受信し、前記測定情報に含まれる測定値が所定の閾値以上になった場合に前記押釦動作が完了したと判定する、ための処理を実行するように構成された釦操作判定装置。」が提供される。
【0008】
本開示の一態様によれば、「少なくとも一つのプロセッサを具備するコンピュータにおいて前記少なくとも一つのプロセッサを、押下釦に対して押釦動作をするように構成されたアクチュエータに供給される電流値の変動に係る測定情報を受信し、前記測定情報に含まれる測定値が所定の閾値以上になった場合に前記押釦動作が完了したと判定する、ように機能させる釦操作判定プログラム。」が提供される。
【0009】
本開示の一態様によれば、「少なくとも一つのプロセッサを具備するコンピュータにおいて前記少なくとも一つのプロセッサにより実行される釦操作判定方法であって、押下釦に対して押釦動作をするように構成されたアクチュエータに供給される電流値の変動に係る測定情報を受信する段階と、前記測定情報に含まれる測定値が所定の閾値以上になった場合に前記押釦動作が完了したと判定する段階と、を含む釦操作判定方法。」が提供される。
【0010】
本開示の一態様によれば、「押下釦に対して押釦動作をするように構成されたアクチュエータと、前記アクチュエータに供給される電流値の変動に係る測定を行う測定回路と、前記測定回路から測定情報を受信し、前記測定情報に含まれる測定値が所定の閾値以上になった場合に前記押釦動作が完了したと判定するプロセッサと、を備える、操作装置。」が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、コストの増加を抑制し且つ簡易な構成によって各種釦に対する押釦動作を検出することができる。
【0012】
なお、上記効果は説明の便宜のための例示的なものであるにすぎず、限定的なものではない。上記効果に加えて、又は上記効果に代えて、本開示中に記載されたいかなる効果や当業者であれば明らかな効果を奏することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る車両利用管理システム1の概略的な構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る車載器300の機械的構造を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る車載器300を構成する固設ユニット311の機械的構造を概略的に示す概念図である。
【
図4A】
図4Aは、本開示の実施形態に係る車載器300の部分断面図である。
【
図4B】
図4Bは、本開示の実施形態に係る車載器300の部分断面図である。
【
図4C】
図4Cは、本開示の実施形態に係る車載器300の部分断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係る利用者端末100の構成の例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係る管理装置200の構成の例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係る車載器300の構成の例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係る車載器300の回路構成の例を示す回路図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係る利用者端末100と管理装置200との間で実行される処理シーケンスを示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係る利用者端末100と車載器300との間で実行される処理シーケンスを示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に係る管理装置200において実行される処理フローを示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に係る車載器300において実行される処理フローを示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に係る車載器300において実行される押釦動作に係る処理フローを示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態に係る車載器300におけるモータ364のトルクと回転数との関係を示すグラフである。
【
図15】
図15は、本開示の実施形態に係る車載器300において押釦動作が実行された際の電圧値の変化を示すグラフである。
【
図16】
図16は、本開示の実施形態に係る車載器300において実行される異常判定に係る処理フローを示す図である。
【
図17】
図17は、本開示の実施形態に係る車載器300において押釦動作が実行された際の異常状態における電圧値の変化を示すグラフである。
【
図18】
図18は、本開示の実施形態に係る車載器300において実行される異常判定に係る処理フローを示す図である。
【
図19】
図19は、本開示の実施形態に係る車載器300において押釦動作が実行された際の異常状態における電圧値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の例示として、本発明を車両利用管理システムに適用した場合を例にとり、添付図面を参照して各実施形態を説明する。なお、図面における共通する構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0015】
1.本開示に係る車両利用管理システム1の概要
図1は、本開示の実施形態に係る車両利用管理システム1の概略的な構成を示す図である。具体的に、
図1には、カーシェアリングのサービスを提供する事業者(管理装置)、当該サービスを受ける利用者(利用者端末)、及びシェアリング対象となる車両2の間におけるデータ通信のための接続関係が示されている。また、
図1に示すように、車両利用管理システム1は、カーシェアリングのユーザである利用者が操作する利用者端末100、カーシェアリングのサービスを提供する事業者が利用する管理装置200、及びシェアリング対象となる車両2に設置される車載器300を備えている。
【0016】
利用者端末100は、利用者毎に設けられ、無線LAN(Local Area Network)等の無線ネットワーク400及び中継装置410を介してWAN(Wide Area Network)420に接続されている。また、利用者端末100は、管理装置200に予約要求を送信して、管理装置200から利用許可証を受信する。そして、管理装置200から受信した利用許可証を、近距離無線通信500により車両2に設置されている車載器300に送信する。
【0017】
管理装置200は、車載器300が設置された車両2に対応付けて、車載器300を管理する。また、管理装置200は、車両2の予約状況を管理しており、WAN420を介して利用者端末100から予約要求を受け付ける。更に、管理装置200は、この予約要求に含まれている車種の車両2を、この予約要求に含まれている利用日時に利用するための利用許可証を利用者端末100に送信する。
【0018】
車載器300は、車両2の電子キーである車両キーの格納及び押釦動作をするための操作装置として機能する。また、車載器300は、シェアリング対象である車両2毎に設けられ、例えば車両2のインパネの裏側に設置されており、車両2以外とは、例えば、IrDA(Infrared Data Association)、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信500で通信可能である。ここで、車載器300が車両2のインパネ裏側に設置されると、カーシェアリングのユーザが車載器300にアクセスすることが困難になるが、例えば、車載器300をグローブボックスの内側に設置して、当該ユーザがアクセスできるようにしてもよい。車載器300は、車両2の電子キーである車両キーを格納するためのキーボックス310を有している。さらに、車載器300は、車両2の車載ネットワーク(不図示)に接続されており、利用許可証に基づいて車両2のドアロックの解除を制御する。また、車載器300は、利用許可証に基づいて車両2のエンジン起動ロックの解除も制御してもよい。
【0019】
なお、
図1の例では、利用者端末100及び車載器300は、それぞれ1台しか記載されていないが、当然2台以上の各装置を含むことが可能である。また、管理装置200は単一のものとして記載されているが、管理装置200の各構成要素及び処理を複数のサーバ装置やクラウドサーバ装置に分配することも可能である。
【0020】
2.本開示に係る車載器300の機械的構造
図2は、本開示の実施形態に係る車載器300の機械的構造を概略的に示す断面図である。また、
図3は、本開示の実施形態に係る車載器300を構成する固設ユニット311の機械的構造を概略的に示す概念図である。更に、
図4A~4Cは、本開示の実施形態に係る車載器300の部分断面図である。特に、
図4A~
図4Cは、形状の異なる車両キー3a~c(以下、いずれを選択しない場合には、単に車両キー3と称する)を格納及び押釦操作する状態を示している。
【0021】
図2に示すように、車載器300は、利用者端末100からの利用制限解除要求に応じて、格納する車両キー3に対して押釦動作(解錠動作及び施錠動作)をする電子キーの操作装置である。車載器300は、車両キー3を格納するキーボックス310を有している。キーボックス310は、車両キー3を押釦動作可能な位置に格納する格納部である固設ユニット311、車両キー3に対する押釦動作に必要な部品を収容するアクチュエータユニット312から構成されている。固設ユニット311は、アクチュエータユニット312の設置片312aに対して脱着自体に取り付けられている。
【0022】
図2及び
図3に示すように、固設ユニット311は、形状の異なる車両キー3の押下釦6の位置のいずれもが所定領域内となるように各車両キー3を統一して収容するための収容部材として機能する固設部材320及び固設部材320に車両キー3が固設された状態で閉塞する蓋330を有する。固設部材320及び蓋330は、プラスチック等の加工性に優れ且つ一定の強度を備える部材から構成されている。
【0023】
固設部材320の底面には、車両キー3の解錠釦4及び施錠釦5(以下、二つの釦を合わせて押下釦6とも称する)を露出する開口321が形成されている。また、固設部材320は、形状の異なる車両キー3a~3cに対応し、各車両キー3を保持するための3つの第1凹部322a、第2凹部322b、及び第3凹部322cを有する。これらの3つの凹部は、開口321と連通して平行に形成されており、開口321よりも大なる寸法を有する。そして、これらの3つの凹部は、押下釦の押下方向(-X方向)に対して平行な方向において階段状に形成されている。3つの第1凹部322a、第2凹部322b、及び第3凹部322cは、開口321側から第1凹部322a、第2凹部322b、第3凹部322cの順番で設けられている。ここで、第1凹部322a、第2凹部322b、及び第3凹部322cのYZ平面の寸法は、第1凹部322a、第2凹部322b、第3凹部322cの順番で大きくなっている。
【0024】
このような3つの第1凹部322a、第2凹部322b、及び第3凹部322cにより、固設部材320は、押下釦6の押下方向(-X方向)に対して平行な方向において、形状の異なる車両キー3a~3cを押釦動作可能な位置に配置して収容することができる。換言すると、固設部材320は、各凹部によって定まる固設パターン(収容パターン)にて形状の異なる車両キー3a~3cを固設し、押下釦6を所定領域である開口321において統一して露出するようにしている。すなわち、車両キー3a~3cの押下釦6の位置は、後述するアクチュエータの可動に対して共通化され、アクチュエータが接触できる範囲で同等となる。そして、開口321が押下釦6のぞれぞれのための共用の窓として機能する。
【0025】
より具体的な固設パターンについて、
図4A~
図4Cを参照しつつ説明する。
図4Aは、3種類の車両キー3のうち、最も小さい車両キー3aを固設した状態を示す。車両キー3aは固設部材320の第1凹部322aに嵌装され、押下釦6は開口321から露出して押下可能な状態となっている。すなわち、固設部材320の第1凹部322aは、車両キー3aの外形に合致するような専用形状を有している。このような押下釦6の位置が開口321の形成領域に位置し、開口321にもっと近い位置の第1凹部322aによって固設された状態が、車両キー3aの固設パターンとなる。
【0026】
次に、
図4Bは、3種類の車両キー3のうち、2番目に小さい車両キー3bを固設した状態を示す。車両キー3bは固設部材320の第2凹部322bに嵌装され、押下釦6は開口321から露出して押下可能な状態となっている。すなわち、固設部材320の第2凹部322bは、車両キー3bの外形に合致するような専用形状を有している。このような押下釦6の位置が開口321の形成領域に位置し、開口321に2番目に近い位置の第2凹部322bによって固設された状態が、車両キー3bの固設パターンとなる。
【0027】
次に、
図4Cは、3種類の車両キー3のうち、最も大きい車両キー3cを固設した状態を示す。車両キー3cは固設部材320の第3凹部322cに嵌装され、押下釦6は開口321から露出して押下可能な状態となっている。すなわち、固設部材320の第3凹部322cは、車両キー3cの外形に合致するような専用形状を有している。このような押下釦6の位置が開口321の形成領域に位置し、開口321から最も離れた位置の第3凹部322cによって固設された状態が、車両キー3cの固設パターンとなる。
【0028】
以上のように、固設部材320は、形状の異なる3種類の車両キー3a~3cに対応した凹部322a~322cを有しているため、3つの固設パターンにて車両キー3を固設することができる。特に、当該3つの固設パターンは、押下釦6の押下方向(-X方向)に対して平行に存在することになる。そして形状の異なる車両キー3a~3cのいずれかを選択して固設する場合、いずれの車両キー3a~3cについても、押下釦6が開口321から露出されて押釦動作可能とすることができる。すなわち、3種類の車両キー3a~3cに対して、固設部材320の共通化を図りつつも、各車両キー3に対応した適切な固設状態にて押釦動作が可能となる。
【0029】
なお、形状の異なるとは、単なる外形が異なるだけでなく、車両キー3の寸法、外形、又は押下釦の位置及び形状等が異なることを含んでもよい。
【0030】
更に、固設部材320は、Y方向の一端において、接合部323が形成されている。接合部323は、固設ユニット311をアクチュエータユニット312に取り付ける際に、アクチュエータユニット312の接合部(溝部)と固設ユニット311の接合部(突起部)とが嵌合し、固設ユニット311がX方向にスライドすることにより、固設ユニット311がアクチュエータユニット312に対して固定される。これにより、アクチュエータユニット312と、固設ユニット311とが変位することがなくなり、押釦動作を正確に行うことが可能になる。
【0031】
蓋330は、固設部材320の開口321の形成面(底面)とは反対側(上面)に設置される。また、蓋330には、4つの貫通孔331が形成されている。蓋330を固設部材320上に配置した際、蓋330の貫通孔331は、固設部材320に設けられた4つのねじ穴324に対向する。この状態において、貫通孔331及びねじ穴324にねじ(図示せず)が挿通され、固設部材320に蓋330が固定される。
【0032】
なお、蓋330に車両キー3を開口321側(+X方向)に向けて押圧する凸部を設けてもよい。これにより、蓋330を固設部材320に固定すると、車両キー3が開口321側に向けて押され、車両キー3が凹部から外れることがなくなり、押釦動作を正確に行うことが可能になる。このような方法によらず、例えば、他の保持部材等を設けることにより、車両キー3が凹部から外れることを防止してもよい。すなわち、本実施形態においては、固設部材320によって車両キー3の固設が行われていたが、車両キー3を単に収容する収容部材と蓋又は他の保持部材とによって固設を行ってもよい。この場合には、収容部材によって車両キー3のそれぞれが収容部材の凹部によって定まる収容パターンにて収容され、蓋又は他の保持部材によって車両キー3が固設されることによって所定の固設パターンに車両キー3が配置されることになる。ただし、この場合には、収容パターンと固設パターンは基本的に同一となる。このため、本実施形態における固設には収容の意味も含まれ、固設パターンには収容パターンの意味も含まれることになる。
【0033】
一方、
図2に示すように、車載器300は、アクチュエータユニット312内の前方側(+X側)において、制御基板340、第1アクチュエータ341、第2アクチュエータ342、及びバッテリー343を内蔵する。バッテリー343は、車載器300の電力供給元として機能するが、車載器300内に設けられていなくてもよい。例えば、バッテリー343は、車載器300の併設又は近傍に設定されてもよく、又は車両2のバッテリーを車載器300の電力供給元として利用してもよい。
【0034】
制御基板20には、メモリ351、プロセッサ352、通信インターフェイス353、電力制御回路354、及び測定回路355などの電子部品又は電気回路が実装されている。プロセッサ352は、メモリ351に記憶されているプログラムを実行することにより、車載器300の動作を統合的に制御する。
【0035】
第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342は、プロセッサ352により制御され、固設ユニット311の内部に貫入して押釦動作(押下釦6を押す動作)を実現する装置である。第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342は、例えば電動アクチュエータで実現される。第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342は、固設部材320に固設された車両キー3の押下釦6を押し下げる方向(-X側)へ向けて作動するように設定されている。なお、当該電動アクチュエータの動作が直動でない場合には、当該電動アクチュエータの動作を直動に変換するためのレバー機構、倍力機構、又はカム機構等の変換機構を更に設置してもよい。
【0036】
第1アクチュエータ341は解錠釦4に接触して押釦動作を行う可動部341aを有する。また、第2アクチュエータ342は施錠釦5に接触して可動部342aを有する。このため、第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342に電流が供給されると、可動部341a及び可動部342aが伸び縮みするため、解錠釦4及び施錠釦5に対する押下が可能になる。例えば、第1の方向で第1アクチュエータ341又は第2アクチュエータ342に電流が供給されると、可動部341a又は可動部342aが伸びるように可動し、当該第1の方向とは逆方向で第1アクチュエータ341又は第2アクチュエータ342に電流が供給されると、可動部341a又は可動部342aが縮むように可動する。このため、プロセッサ352は所望の押釦動作に対応させて電力制御回路354を制御し、第1アクチュエータ341又は第2アクチュエータ342への電流及び方向を調整することになる。
【0037】
図4a~4cに示すように、第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342から各凹部に固設された車両キー3a~3cまでの距離は異なっている。このため、各車両キー3の押下釦6に対する正確な押釦動作を実現するために、第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342の可動部341a及び可動部342aの延伸量が固設パターンごとに調整される。具体的には、可動部341aによる解錠釦4の押下、又は可動部342aによる施錠釦5の押下がプロセッサ352によって検出され、当該押下の検出をトリガーとして可動部341aの可動部342aの延伸を停止し、延伸量が固設パターンごとに調整される。
【0038】
プロセッサ352による押下釦6の押下の検出方法としては、
図8以降の説明において詳細に行うが、例えば、第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342に流れる電流値を検出し、当該電流値又はこれに対応する電圧値が所定の閾値(第1閾値)を超えた場合に押釦動作がなされたと判定する。これは、第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342を構成するモータの回転数、トルク、及び当該モータに流れる電流の関係を利用するものである。当該関係及びこれを利用した判定原理については後述する。
【0039】
以上のように、実施形態においては、第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342の可動部341a及び可動部342aが、押下釦6に直接的に当接して押下し、当該押下に基づく押釦動作の有無がプロセッサ352によって判定されるため、種々の形状の押下釦6に対する押釦動作及び当該判定が可能になる。すなわち、押下釦6が車両キー3の本体部分(筐体)から突出せずに同一平面上に形成されている場合、又は本体部分よりも凹んで形成されている場合であっても、当該押釦動作及び当該判定が可能になる。
【0040】
3.利用者端末100の構成
図5は、本開示の実施形態に係る利用者端末100の構成の例を示すブロック図である。利用者端末100は、
図5に示す構成要素の全てを備える必要はなく、一部を省略した構成をとることも可能であるし、他の構成要素を加えることも可能である。
【0041】
利用者端末100は、典型的には、スマートフォンに代表される無線通信可能な端末装置が挙げられるが、当然当該装置のみには限られない。例えば、端末装置としては、フィーチャーフォン、携帯情報端末、PDA、ラップトップパソコン、デスクトップパソコン、携帯型ゲーム機、据え置き型ゲーム機など、本開示に係るプログラムを実行可能な装置であれば、いずれでも好適に適用することが可能である。また、上記のとおり、管理装置200と通信する利用者端末100は複数であるものの、各端末が常に同種又は同じ端末装置である必要はなく、互いに異なる種類の端末装置であってもよい。
【0042】
図5によると、利用者端末100は、出力インターフェイス111、プロセッサ112、RAM、ROM、又は不揮発性メモリ(場合によっては、HDD)等を含むメモリ113、通信処理回路及びアンテナを含む通信インターフェイス114、タッチセンサ及びハードキーを含む入力インターフェイス115を含む。そして、これらの各構成要素が制御ライン及びデータラインを介して互いに電気的に接続される。
【0043】
出力インターフェイス111は、プロセッサ112の指示に応じて、図示しないカメラで撮影される画像や、本開示に係るプログラムを実行することによって出力される各種表示を、ディスプレイやプリンタ等の機器に出力する出力部として機能する。なお、このようなディスプレイは、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ又は電子ペーパー等から構成される。
【0044】
プロセッサ112は、CPU(マイクロコンピュータ:マイコン)から構成され、メモリ113に記憶された各種プログラムに基づいて、接続された他の構成要素を制御する制御部として機能する。具体的には、プロセッサ112は、本開示に係るアプリケーションを実行するためのプログラムやOSを実行するためのプログラムをメモリ113から読み出して実行する。本開示においては、プロセッサ112は、特に、
図9及び
図10の処理シーケンスで記載された各処理等を実行する(処理の詳細は、
図9及び
図10において説明する。)。なお、プロセッサ112は、単一のCPUで構成されても良いが、複数のCPUやGPUを組み合わせて構成しても良い。
【0045】
メモリ113は、ROM、RAM、不揮発性メモリ、HDD等から構成され、記憶部として機能する。ROMは、本開示に係るアプリケーションやOSを実行するための指示命令をプログラムとして記憶する。RAMは、ROMに記憶されたプログラムがプロセッサ112により処理されている間、データの書き込み及び読み込みをするために用いられる。不揮発性メモリは、当該プログラムの実行によってデータの書き込み及び読み込みが実行されるメモリであって、ここに書き込まれたデータは、当該プログラムの実行が終了した後でも保存される。本開示においては、メモリ113は、特に、
図9及び
図10の処理シーケンスで記載された各処理等を実行するプログラムを記憶する(処理の詳細は、
図9及び
図10において説明する。)。
【0046】
通信インターフェイス114は、通信処理回路及びアンテナを介して、遠隔に設置された管理装置200や車載器300との間で情報の送受信をする通信部として機能する。通信処理回路は、車両利用管理システム1において用いられるプログラムや各種情報等を処理の進行に応じて、管理装置200又は車載器300から情報を送受信するための処理をする。本開示においては、特に、アカウント登録要求、ログイン要求、閲覧要求、及び予約要求等が、利用者端末100から管理装置200に送信される。また、アカウント登録完了通知、ログイン許可通知、利用可能車種一覧、及び利用許可証等が、管理装置200から利用者端末100に送信される。更に、利用制限解除要求が、利用者端末100から車載器300に送信される。
【0047】
通信処理回路は、LTE方式に代表されるような広帯域の無線通信方式に基づいて処理されるが、IEEE802.11に代表されるような無線LANやBluetooth(登録商標)のような狭帯域の無線通信に関する方式や非接触無線通信に関する方式に基づいて処理することも可能である。また、無線通信に加えて、有線通信を用いることも可能である。
【0048】
入力インターフェイス115は、タッチパネルやハードキー等から構成され、本開示に係るプログラムの実行に係る指示入力や、様々な情報を登録するための操作入力等を受け付ける入力部として機能する。タッチパネルは、出力インターフェイス111を被覆するように配置され、出力インターフェイス111からディスプレイに出力される画像データに対応する位置座標の情報を、プロセッサ112に送信する。タッチパネル方式としては、抵抗膜方式、静電容量結合方式、超音波表面弾性波方式など、公知の方式を利用することができる。本開示においては、タッチパネルは、指示体により出力インターフェイス111に表示された各アイコン等に対するスワイプ操作やタップ操作を検出する。なお、本開示では利用者端末100に備えられる入力インターフェイス115を用いたが、例えばマウスのような、プロセッサ112等を備える本体に無線又は有線で接続された入力インターフェイス115を用いることも可能である。
【0049】
4.管理装置200の構成
図6は、本開示の実施形態に係る管理装置200の構成の例を示すブロック図である。管理装置200は、
図6に示す構成要素の全てを備える必要はなく、一部を省略した構成をとることも可能であるし、他の構成要素を加えることも可能である。また、管理装置200は単一の筐体に
図6に図示するものを備える必要はなく、管理装置200の各構成要素及び処理を複数のサーバ装置やクラウドサーバ装置に分配することも可能である。
【0050】
図6によると、管理装置200は、RAM、ROM、及び不揮発性メモリ、HDD等を含むメモリ211、CPU等から構成されるプロセッサ212及び通信インターフェイス213を含む。そして、これらの各構成要素が制御ライン及びデータラインを介して互いに電気的に接続される。
【0051】
メモリ211は、RAM、ROM、不揮発性メモリ、HDDを含み、記憶部として機能する。ROMは、本開示に係るアプリケーションやOSを実行するための指示命令をプログラムとして記憶する。このようなプログラムは、プロセッサ212によってロードされ実行される。RAMは、ROMに記憶されたプログラムがプロセッサ212によって処理されている間、データの書き込み及び読み込みを実行するために用いられる。不揮発性メモリは、当該プログラムの実行によってデータの書き込み及び読み込みが実行されるメモリであって、ここに書き込まれたデータは、当該プログラムの実行が終了した後でも保存される。本開示においては、メモリ211は、特に、
図9の処理シーケンス及び
図11の処理フローで記載された各処理等を実行するプログラムを記憶する(処理の詳細は、
図9及び
図11において説明する。)。
【0052】
プロセッサ212は、CPU(マイクロコンピュータ:マイコン)から構成され、メモリ211に記憶された各種プログラムに基づいて、接続された他の構成要素を制御するための制御部として機能する。具体的には、プロセッサ212は、本開示に係るアプリケーションを実行するためのプログラムやOSを実行するためのプログラムをメモリ211から読み出して実行する。本開示においては、プロセッサ212は、特に、
図9の処理シーケンス及び
図11の処理フローで記載された各処理等を実行する(処理の詳細は、
図9及び
図11において説明する。)。なお、プロセッサ212は、単一のCPUで構成されても良いが、複数のCPUで構成しても良い。
【0053】
通信インターフェイス213は、通信処理回路及びアンテナを介して、遠隔に設置された他のサーバ装置や利用者端末100との間で情報の送受信をする通信部として機能する。通信処理回路は、車両利用管理システム1において用いられるプログラムや各種情報等を処理の進行に応じて、他のサーバ装置や利用者端末100から情報を送受信するための処理をする。本開示においては、特に、アカウント登録完了通知、ログイン許可通知、利用可能車種一覧、及び利用許可証等が、管理装置200から利用者端末100に送信される。また、アカウント登録要求、ログイン要求、閲覧要求、及び予約要求等が、利用者端末100から管理装置200に送信される。
【0054】
通信処理回路は、LTE方式に代表されるような広帯域の無線通信方式に基づいて処理されるが、IEEE802.11に代表されるような無線LANやBluetooth(登録商標)のような狭帯域の無線通信に関する方式や非接触無線通信に関する方式に基づいて処理することも可能である。また、無線通信に代えて、又は加えて、有線通信を用いることも可能である。
【0055】
5.車載器300の構成
図7は、本開示の実施形態に係る車載器300の構成の例を示すブロック図である。車載器300は、
図7に示す構成要素の全てを備える必要はなく、一部を省略した構成をとることも可能であるし、他の構成要素を加えることも可能である。
【0056】
図7によると、車載器300は、RAM、ROM、及び不揮発性メモリ、HDD等を含むメモリ351、CPU等から構成されるプロセッサ352、及び通信インターフェイス353を含む。また、車載器300は、上述した第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342も含む。更に、車載器300は、押釦動作の判定の基準となる測定値(電流値又は電圧値)を測定するための測定回路355も含む。そして、これらの各構成要素が制御ライン及びデータラインを介して互いに電気的に接続される。
【0057】
メモリ351は、RAM、ROM、不揮発性メモリ、HDDを含み、記憶部として機能する。ROMは、本開示に係るアプリケーションやOSを実行するための指示命令をプログラムとして記憶する。このようなプログラムは、プロセッサ352によってロードされ実行される。RAMは、ROMに記憶されたプログラムがプロセッサ352によって処理されている間、データの書き込み及び読み込みを実行するために用いられる。不揮発性メモリは、当該プログラムの実行によってデータの書き込み及び読み込みが実行されるメモリであって、ここに書き込まれたデータは、当該プログラムの実行が終了した後でも保存される。
【0058】
例えば、第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342を駆動するためのプログラムが、メモリ351に記憶される。また、押下釦6の押下の検出に用いられる上述した電流値又は電圧値の閾値が、メモリ351に記憶されている。なお、当該閾値は、一定の値とすることなく、条件によって変えてもよい。例えば、車両2の室温に応じて閾値が設定されてもよく、更には車両キー3の種類に応じて変更されてもよい。更に、メモリ351には、押下釦6の押下の検出に用いられる測定値である電流値又は電圧値が、その受信時刻とともに記憶される。そして、本開示においては、メモリ351は、
図10の処理シーケンス、及び
図12、
図13、
図16、並びに
図18の処理フローで記載された各処理等を実行するプログラムを記憶する(処理の詳細は、
図10、
図12、
図13、
図16、及び
図18において説明する)。特に、メモリ351は、「押下釦に対して押釦動作をするように構成されたアクチュエータに供給される電流値の変動に係る測定情報を受信する処理」、及び「当該測定情報に含まれる測定値が所定の閾値以上になった場合に当該押釦動作が完了したと判定する処理」等のためのプログラムを記憶する。
【0059】
プロセッサ352は、CPU(マイクロコンピュータ:マイコン)から構成され、メモリ351に記憶された各種プログラムに基づいて、接続された他の構成要素を制御するための制御部として機能する。具体的には、プロセッサ352は、本開示に係るアプリケーションを実行するためのプログラムやOSを実行するためのプログラムをメモリ351から読み出して実行する。また、プロセッサ352は、メモリ351に記憶されたプログラムを実行して、第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342を制御する。本開示においては、プロセッサ352は、
図10の処理シーケンス、及び
図12、
図13、
図16、並びに
図18の処理フローで記載された各処理等を実行する(処理の詳細は、
図10の処理シーケンス、及び
図12、
図13、
図16、並びに
図18において説明する。)。特に、プロセッサ352は、メモリ351に記憶された当該閾値を使用して、押下釦6に対する押釦動作の有無を判定する。具体的には、プロセッサ352は、「押下釦に対して押釦動作をするように構成されたアクチュエータに供給される電流値の変動に係る測定情報を受信する処理」、及び「当該測定情報に含まれる測定値が所定の閾値以上になった場合に当該押釦動作が完了したと判定する処理」等を実行する。なお、プロセッサ352は、単一のCPUで構成されても良いが、複数のCPUで構成しても良い。
【0060】
通信インターフェイス353は、通信処理回路及びアンテナを介して、遠隔に設置された利用者端末100との間で情報の送受信をする通信部として機能する。通信処理回路は、車両利用管理システム1において用いられるプログラムや各種情報等を処理の進行に応じて、利用者端末100から情報を送受信するための処理をする。本開示においては、特に利用制限解除要求が、利用者端末100から車載器300に送信される。
【0061】
通信処理回路は、IEEE802.11に代表されるような無線LANやBluetooth(登録商標)のような狭帯域の無線通信に関する方式に基づいて処理されるが、LTE方式に代表されるような広帯域の無線通信方式や非接触無線通信に関する方式に基づいて処理することも可能である。
【0062】
測定回路355は、
図8に示すように、シャント抵抗361及びアンプ362を備える。より具体的に、シャント抵抗361の一端(高電圧側)はアンプ362のプラス入力端子に接続され、シャント抵抗361の他端(低電圧側)はアンプ362のマイナス入力端子に接続されている。また、シャント抵抗361の他端は、第1アクチュエータ341に接続されている。更に、アンプ362の出力端子はプロセッサ352に接続されている。このような構成により、測定回路355は、第1アクチュエータ341に供給される電流を測定値である電圧値として測定し、プロセッサ352に供給することができる。すなわち、測定回路355は、当該測定を継続することにより、第1アクチュエータ341に供給される電流値の変動を検出することができ、測定値である電圧値の変動を供給される電流値の変動に係る測定情報として、プロセッサ352に供給することになる。
【0063】
また、本実施形態においては、
図8に示すように、第1アクチュエータ341は、モータドライバ363及びモータ364を含んでいる。モータドライバ363は、例えば、P型とN型の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)からなるCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)を2つ備えるスイッチング回路である。このような場合に、各CMOSのドレイン端子(P型MOSとN型MOSの接続点)はモータの端部のいずれかに接続されている。このため、測定回路355を経由した電流は、モータドライバ363を構成する当該CMOSのプラス側(プラスのソース電極側)に供給される。一方、モータドライバ363を構成する当該CMOSの各MOSFETのゲート電極には、プロセッサ352からゲート信号が供給される。そして、プロセッサ352から供給されるゲート信号の供給先を適宜切り替えることにより、モータ364に対して供給される電流の向きを変更することが可能となり、モータ364の回転方向を調整することができる。すなわち、当該電流の向きが変更されることにより、押下釦6に対して可動部341aを接触するように近づけ又は離間させることが可能になる。
【0064】
更に、本実施形態においては、
図8に示すように、プロセッサ352は、メモリ351に記憶された第1閾値を読出し、測定回路355から供給される測定値である電圧値と当該第1閾値との比較を行う。これにより、可動部341aによる押下釦6の押下状態、すなわちモータ364の駆動状態が把握可能になる。すなわち、本実施形態においては、押釦動作を検出するための特殊なセンサは不要であり、一般的なシャント抵抗361及びアンプ362からなる測定回路355を設けて、当該測定回路355における測定値を利用するだけで押釦動作の判定が可能となっている。当該判定に係る原理については、
図13乃至
図15を参照しつつ追って詳細に説明する。
【0065】
そして、本実施形態においては、
図8に示すように、測定回路355及びプロセッサ352から釦操作判定装置356が構成されている。このため、釦操作判定装置356は、押釦動作を検出するための特殊なセンサも不要であり、特殊な回路構成も不要であることから、コストの増加を抑制し且つ簡易な構成によって各種釦に対する押釦動作を検出することが可能である。
【0066】
なお、本実施形態においては、供給される電流値を電圧値に変換し、電圧変動を含む測定情報がプロセッサ352に供給されていたが、電流値を電圧値に変換することなく測定し、当該電流値の変動を測定情報としてそのままプロセッサ352に供給してもよい。すなわち、公知の電流計を用い、第1アクチュエータ341に供給される電流及びその変動が検出され、当該検出結果に応じて押釦動作の判定が実行されてもよい。
【0067】
また、
図8においては、第1アクチュエータ341に対する電流及びゲート信号の供給を示していたが、プロセッサ352及び測定回路355は、第2アクチュエータ342にも接続されている。このため、第1アクチュエータ341に対する電流並びにゲート信号の供給、及び電流変動の測定と同様に、第2アクチュエータに対しても電流並びにゲート信号の供給、及び電流変動の測定が可能となっている。この場合において、第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342に対して1つの測定回路355が接続されてもよく、又は各アクチュエータに対して別々の測定回路355が接続されてもよい。
【0068】
6.車両利用管理システム1により実行される処理シーケンス
(A)アカウント登録から車両予約に係る処理
図9は、本開示の実施形態に係る利用者端末100と管理装置200との間で実行される処理シーケンスを示す図である。具体的には、
図9は、カーシェアリングサービスを利用する利用者がアカウント登録してから実際に車両を予約するまでに、利用者端末100と管理装置200との間で実行される処理シーケンスを示す図である。
【0069】
利用者端末100のプロセッサ112は、カーシェアリングサービスを希望する利用者から、利用者の個人情報を伴うアカウント登録操作を受け付けると(U11)、通信インターフェイス114、無線ネットワーク400、中継装置410及びWAN420を介して管理装置200に、利用者の個人情報を含むアカウント登録要求を送信する(T11)。ここで、アカウント登録操作とは、入力インターフェイス115を用いて利用者が自身の個人情報を入力する行為である。
【0070】
当該アカウント登録要求が管理装置200において通信インターフェイス213を介して受信されると、管理装置200のプロセッサ212は、アカウント情報(ユーザID、パスワード(PW))を生成する(S11)。また、管理装置200のプロセッサ212は、このアカウント情報を、アカウント登録要求に含まれている利用者の個人情報に紐付けてメモリ211に登録する(S12)。その後、管理装置200のプロセッサ212は、通信インターフェイス213、WAN420、中継装置410及び無線ネットワーク400を介して、アカウント登録要求の送信元である利用者端末100に、アカウント情報を含むアカウント登録完了通知を送信する(T12)。これにより、利用者は、利用者端末100を操作することにより、カーシェアリングサービスを利用するために必要なアカウント登録が完了したことを把握することができ、実際の車両の予約処理等を行うことが可能になる。
【0071】
次に、利用者端末100のプロセッサ112は、アカウント情報(ユーザID、パスワード)を伴うログイン操作を利用者から受け付けると(U12)、通信インターフェイス114、無線ネットワーク400、中継装置410及びWAN420を介して管理装置200に、このアカウント情報を含むログイン要求を送信する(T13)。ここで、ログイン操作とは、入力インターフェイス115を用いて利用者が自身のアカウント情報(ユーザID、パスワード(PW))を入力する行為である。
【0072】
当該ログイン要求が管理装置200において通信インターフェイス213を介して受信されると、管理装置200のプロセッサ212は、ログイン要求に含まれているアカウント情報、及び管理装置200に登録されているアカウント情報、を用いて認証処理を実施する(S13)。管理装置200のプロセッサ212は、認証が成立した場合、ログイン要求の送信元である利用者端末100のログインを許可する。そして、管理装置200のプロセッサ212は、通信インターフェイス213、WAN420、中継装置410及び無線ネットワーク400を介して、ログイン許可通知をログイン要求元の利用者端末100に送信する(T14)。
【0073】
次に、利用者端末100のプロセッサ112は、利用日時を伴う閲覧操作を利用者から受け付けると(U13)、通信インターフェイス114、無線ネットワーク400、中継装置410及びWAN420を介して管理装置200に、この利用日時を含む閲覧要求を送信する(T15)。ここで、閲覧操作とは、入力インターフェイス115を用いて利用者が希望する車種の情報の入力又は選択する行為である。
【0074】
当該閲覧要求が管理装置200において通信インターフェイス213を介して受信されると、管理装置200のプロセッサ212は、閲覧要求に含まれている利用日時に利用可能な車両2の車種を、メモリ211に記憶された予約状況から検索する(S14)。そして、管理装置200のプロセッサ212は、通信インターフェイス213、WAN420、中継装置410及び無線ネットワーク400を介して、この利用日時に利用可能な車種の一覧データを利用者端末100に送信する(T16)。
【0075】
次に、当該一覧データが利用者端末100において通信インターフェイス114を介して受信されると、利用者端末100のプロセッサ112は、管理装置200から受信した利用可能車種の一覧データを出力インターフェイス111を介して表示する。その後、利用者端末100のプロセッサ112は、利用者による予約する車種の選択を伴う予約操作を受け付ける(U14)。ここで、予約操作とは、入力インターフェイス115を用いて利用者が希望する車種を選択する行為である。そして、利用者端末100のプロセッサ112は、通信インターフェイス114、無線ネットワーク400、中継装置410及びWAN420を介して管理装置200に、予約操作により選択された車種及び閲覧操作で指定された利用日時を含む予約要求を送信する(T17)。
【0076】
当該予約要求が管理装置200において通信インターフェイス213を介して受信されると、管理装置200のプロセッサ212は、当該予約要求に含まれている車種の車両2を、当該予約要求に含まれている利用日時に予約する予約処理を実施する(S15)。そして、管理装置200のプロセッサ212は、予約された利用日時を利用条件として含む利用許可証を発行する(S16)。具体的に、管理装置200のプロセッサ212は、予約された車両2に対応付けて管理されている車載器300に設定されている共通鍵を用いて、予約情報(車両2及び利用日時等に係る情報)を暗号化するとともに、当該車載器300に設定されている公開鍵と対の秘密鍵を用いて署名を行って当該利用許可証を生成する。すなわち、当該利用許可証は、暗号情報及び署名に係る情報を含んでいる。その後、管理装置200のプロセッサ212は、通信インターフェイス213、WAN420、中継装置410及び無線ネットワーク400を介して、当該利用許可証を利用者端末100に送信する(T18)。
【0077】
(B)車両2の利用動作に係る処理
図10は、本開示の実施形態に係る利用者端末100と車載器300との間で実行される処理シーケンスを示す図である。具体的には、
図10は、カーシェアリングサービスを利用する利用者が予約した車両2を利用可能にするために、利用者端末100と車載器300との間で実行される処理シーケンスを示す図である。
【0078】
先ず、利用者が、利用者端末100を携帯して、予約した車両2の近くまで移動したものとする。ここで、利用者端末100のプロセッサ112は、利用者から利用操作を受け付けると(U21)、予約した車両2について近距離無線通信500により管理装置200から受信した利用許可証を含む利用制限解除要求を車載器300に送信する(T21)。
【0079】
当該利用制限解除要求が車載器300において通信インターフェイス353を介して受信されると、車載器300のプロセッサ352は、車載器300に設定されている公開鍵を用いて、利用者端末100から受信した利用制限解除要求に含まれる利用許可証の署名検証を実行する(S21)。より具体的に、車載器300のプロセッサ352は、利用許可証を生成する際になされた署名が管理装置200によって正式になされたものであるか否かを、当該公開鍵を用いて検証する。続いて、署名検証が成立したならば、車載器300のプロセッサ352は、車載器300に設定されている共通鍵を用いて、利用許可証に含まれている暗号情報を予約情報に復号する(S22)。
【0080】
次に、車載器300のプロセッサ352は、予約情報に含まれている利用条件を満足するか否かを確認する(S23)。具体的には、車載器300のプロセッサ352は、現在日時が利用条件として予約情報に含まれている利用日時の時間帯(利用開始日時から利用終了日時までの時間帯)に属していることを確認する。そして、利用条件を満足していることを確認した場合、車載器300のプロセッサ352は、電力制御回路354を制御して第1アクチュエータ341を駆動させ、車両2のドアのロックを解除する(S24)。これにより、利用者は、車両2のドアを開けて車内に乗り込み、利用者は、車両2の利用が可能になる。
【0081】
7.管理装置200において実行される処理フロー
以下、
図9に記載された車種検索から利用許可証の発行及び送信に係る処理において、管理装置200において実行される処理フローを具体的に説明する。
【0082】
図11は、本開示の実施形態に係る管理装置200において実行される処理フローを示す図である。特に、
図11は、利用者端末100から送信された予約要求に対する管理装置200の予約要求処理動作を説明するためのフロー図である。当該処理フローは、主に管理装置200のプロセッサ212がメモリ211に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0083】
本フローは、管理装置200のプロセッサ212が、通信インターフェイス213を介して、ログイン中の利用者が所持する利用者端末100から閲覧要求を受信することにより開始される。
【0084】
先ず、管理装置200のプロセッサ212は、メモリ211を参照し、閲覧要求に含まれている利用日時の時間帯(利用開始日時から利用終了日時までの時間帯)における利用可能車種を検索する(S111)。具体的には、管理装置200のプロセッサ212は、利用日時の時間帯に予約されていない車両2の予約管理情報のテーブルをメモリ211から検索する。そして、検索したテーブルに紐付けられている車両情報に含まれている車種を利用可能車種として特定する。
【0085】
次に、管理装置200のプロセッサ212は、通信インターフェイス213を介して閲覧要求の送信元の利用者端末100に、利用可能車種の一覧データを送信する(S112)。
【0086】
次に、管理装置200のプロセッサ212は、通信インターフェイス213を介して閲覧要求の送信元の利用者端末100から予約要求を受信すると(S113:YES)、メモリ211に記憶されている予約管理情報を更新する(S114)。具体的に、管理装置200のプロセッサ212は、S111で検索した予約管理情報のテーブルの中から、利用者が希望する車種と一致する車種を含む車両情報に紐付けられている予約管理情報のテーブルを特定する。そして、管理装置200のプロセッサ212は、特定した予約管理情報のテーブルに、利用者が希望する利用日時の時間帯(利用開始日時から利用終了日時までの時間帯)の予約を追加して、予約管理情報を更新する。なお、利用者が希望する利用日時の時間帯の予約がS111以降にすでに登録されていた場合には、S111で検索した予約管理情報のテーブルの中から、利用者が希望する車種と一致する車種を含む車両情報に紐付けられている他の予約管理情報のテーブルを一つ特定して予約管理情報を更新する。
【0087】
次に、管理装置200のプロセッサ212は、予約された利用日時を利用条件として含む予約情報を生成する(S115)。その後、管理装置200のプロセッサ212は、S114において予約管理情報が更新された予約管理情報のテーブルに紐付けられている車両情報に含まれる車両ナンバを利用して、当該車両ナンバが付与された車両2に設置されている車載器300の利用制御装置情報を検索する。そして、管理装置200のプロセッサ212は、通知された車両ナンバがフィールドに登録されている利用制御装置情報のレコードをメモリ211から検索する。続いて、管理装置200のプロセッサ212は、生成した予約情報に対して、当該利用制御装置情報のレコードのフィールドに登録されている共通鍵で暗号化処理を行い、暗号情報を生成する。また、管理装置200のプロセッサ212は、当該利用制御装置情報のレコードのフィールドに登録されている秘密鍵を用いて、この暗号情報に対する署名を行い、利用許可証を生成する(S116)。
【0088】
次に、管理装置200のプロセッサ212は、通信インターフェイス213を介して、予約要求の送信元の利用者端末100に利用許可証を送信する(S117)。なお、この際に、管理装置200のプロセッサ212は、S114において予約管理情報が更新された予約管理情報のテーブルに紐付けられている車両情報を含む案内情報も送信する。
【0089】
8.車載器300において実行される処理フロー
(A)利用制限解除に係る処理
以下、
図11に記載された車両2の利用制限解除に係る処理において、車載器300において実行される処理フローを具体的に説明する。
【0090】
図12は、本開示の実施形態に係る車載器300において実行される処理フローを示す図である。特に、
図12は、利用者端末100から送信された利用制限解除要求に対する車載器300の解除処理動作を説明するためのフロー図である。当該処理フローは、主に車載器300のプロセッサ352がメモリ351に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0091】
本フローは、車載器300が通信インターフェイス353及び近距離無線通信500を介して利用者端末100から利用制限解除要求を受信することにより開始される。
【0092】
先ず、車載器300のプロセッサ352は、利用者端末100から受信した利用制限解除要求に含まれている利用許可証(暗号情報および署名)に対して、メモリ351に記憶されているホールデータに含まれている公開鍵を用いて、暗号情報に対する署名を検証する(S211)。具体的には、車載器300のプロセッサ352は、公開鍵を用いて署名を復号し、その復号情報が暗号情報あるいはそのメッセージダイジェスト(ハッシュ値)と一致するか否かを判断することにより、署名の正当性を検証する。
【0093】
車載器300のプロセッサ352は、署名検証が失敗したならば(S212:NO)、通信インターフェイス353及び近距離無線通信500を介して利用者端末100にその旨を通知する等の所定のエラー処理を実施して(S213)、このフローを終了する。一方、車載器300のプロセッサ352は、署名検証が成立したならば(S212:YES)、メモリ351に記憶されているホールデータに含まれている共通鍵を用いて、暗号情報を予約情報に復号する(S214)。
【0094】
次に、車載器300のプロセッサ352は、復号した予約情報に含まれている利用条件を満足しているか否かを確認する(S215)。例えば、車載器300のプロセッサ352は、現在日時が利用条件として利用許可証に含まれている利用日時の時間帯(利用開始日時から利用終了日時までの時間帯)に属しているか否かを確認する。そして、利用条件を満足していないならば(S216:NO)、車載器300のプロセッサ352は、通信インターフェイス353及び近距離無線通信500を介して利用者端末100にその旨を通知する等の所定のエラー処理を実施して(S213)、このフローを終了する。
【0095】
一方、利用条件を満足している場合(S216:YES)、車載器300のプロセッサ352は、電力制御回路354を制御して第1アクチュエータ341を駆動させ、車両2の車両キー3の押釦動作(解錠動作)を実行する(S217)。これにより、利用者端末100の利用者は、車両2のドアを開けて車内に乗り込み、車両キー3に直接触れることなく車両2の駆動を開始することができる。
【0096】
(B)ドアのロック解除に係る処理
以下、
図12に記載された車両2のドアロック解除に係る処理において、車載器300において実行される押釦動作に係る処理フローを具体的に説明する。
【0097】
図13は、本開示の実施形態に係る車載器300において実行される押釦動作に係る処理フローを示す図である。特に、
図13は、車載器300においてドアロックを解除するために、車両キー3の押釦動作の開始から完了までの動作を説明するためのフロー図である。当該処理フローは、主に車載器300のプロセッサ352がメモリ351に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0098】
本フローは、車載器300が
図12のS216において利用条件を満足していると判断したことにより開始される。
【0099】
先ず、車載器300のプロセッサ352は、第1アクチュエータ341のモータドライバ363に対してゲート信号の供給を行う(S311)。具体的には、車載器300のプロセッサ352は、モータドライバ363を構成する所定のCMOSのゲート電極に対してゲート信号を供給し、CMOSを駆動(モータドライバ363を駆動)し、モータドライバ363を介してモータ364に対して所定方向に電流を供給する。ここで、所定方向とは、第1アクチュエータ341の可動部341aを突出させる方向である。これにより、車載器300においては、車両2の車両キー3の解錠釦4を押下するための押釦動作が開始される。
【0100】
次に、車載器300のプロセッサ352は、測定回路355から電圧値を受信する(S312)。ここで、車載器300のプロセッサ352は、電圧値及びその受信時刻をメモリ351に記憶する。その後、車載器300のプロセッサ352は、受信した電圧値が第1閾値を超えたか否かを判定する(S313)。ここで、第1閾値とは、
図15を参照して詳細に説明するが、第1アクチュエータ341によって解錠釦4が最深位置まで押された状態における測定値(電圧値)よりも低く設定されており、押釦動作の有無を判定可能に設定されている。S313において、電圧値が第1閾値以上でない場合(S313:No)、S312に戻り再度の電圧値の受信が行われる。このようなS312及びS313の処理が繰り返されることは、第1アクチュエータ341に供給される電流値が測定回路355によって電圧値として継続的に測定され、車載器300のプロセッサ352において当該測定結果である電圧値(測定値)がアンプ362から継続的に受信されてメモリ351に記憶されることに該当する。すなわち、車載器300のプロセッサ352は、第1アクチュエータ341に対して継続的に供給される電流に対応する電圧値の変動を受信することになる。換言すると、車載器300のプロセッサ352は、電流値の変動に係る測定情報(電圧値の変動に係る情報)を測定回路355から受信することになる。
【0101】
一方、S313において、電圧値が第1閾値以上である場合(S313:Yes)、車載器300のプロセッサ352は、第1閾値以上の電圧値が所定時間を継続しているか否かを判定する(S314)。具体的に、車載器300のプロセッサ352は、メモリ351に記憶された第1閾値以上となった時刻から新たに受信した第1閾値以上の電圧値の受信時刻までの経過時間を計算する。ここで、所定時間とは、
図15を参照して詳細に説明するが、電圧値の測定誤差及び押釦動作の判断に含めるべきでない変動等を考慮して設定されている。S314において、第1閾値以上の電圧値が所定時間継続していない場合(S314:No)、S312に戻り再度の電圧値の受信が行われる。このようなS312からS314の処理が繰り返されることは、継続して受信する電圧値が第1閾値以上である状態を維持していることの判断に該当し、更にはその継続時間が監視されることにも該当する。
【0102】
そして、S314において、第1閾値以上の電圧値が所定時間継続している場合(S314:Yes)、車載器300のプロセッサ352は、第1アクチュエータ341による解錠釦4に対する押釦動作が完了したと判定する(S315)。ここで、押釦動作が完了したときは、第1アクチュエータ341によって解錠釦4が最深位置まで押された状態となり、車両2のドアロック解除が実行されたことである。
【0103】
その後、車載器300のプロセッサ352は、車載器300のプロセッサ352は、第1アクチュエータ341のモータドライバ363に対してゲート信号の供給を行う(S315)。具体的には、車載器300のプロセッサ352は、モータドライバ363を構成する所定のCMOSのゲート電極に対してゲート信号を供給し、CMOSを駆動(モータドライバ363を駆動)モータドライバ363を介してモータ364に対して上記所定方向とは逆方向に電流を供給する。ここで、逆方向とは、第1アクチュエータ341の可動部341aを縮ませる方向である。これにより、車載器300においては、車両2の車両キー3の解錠釦4から可動部341aが離間され、一連の押釦動作に係る処理が完了する。
【0104】
以下において、
図14及び
図15を参照しつつ、電圧値の変動によって押釦動作の有無を判定できる理由を説明する。ここで、
図14は、本開示の実施形態に係る車載器300におけるモータ364のトルクと回転数との関係を示すグラフである。特に、
図14においては、トルクと回転数に対し、対応する電流値の変化も示されている。
図15は、本開示の実施形態に係る車載器300において押釦動作が実行された際の電圧値の変化を示すグラフである。特に、
図15においては、押釦動作が開始されてから釦の押下が完了し、更に押下を停止するための動作の完了に至るまでの電圧値の時間変動が示されている。
【0105】
先ず、
図14に示すように、モータ364の回転数とトルクは反比例の関係になっており、モータ364の回転数が増加するにしたがってトルクは小さくなり、モータ364の回転数が減るにしたがってトルクは大きくなる。すなわち、モータ364の回転数が任意値で一定であるときにはトルクも対応した任意値で一定になり、モータ364に流れる電流値も一定となる。一方、トルクが小さい時は電流値が小さく、トルクが大きい時は電流値も大きくなる。換言すると、回転数が低いときは電流値が大きくなり、回転数が高いときは電流値が小さくなる。これは、大きな電流が流れている状態では、モータ364がゆっくり回転して大きなトルクが発生するが、小さな電流が流れている状態では、モータ364が速く回転して小さくトルクが発生していることになる。
【0106】
このような関係から、押釦動作の際に測定回路355で測定される測定値(電圧値又は電流値)は、
図15に示すように変化することになる。具体的には、先ず、モータ364が回転して第1アクチュエータ341の可動部341aが延伸している状況下では、モータ364の回転数もトルクも一定となる。このため、モータ364に流れる電流値(すなわち、測定回路355によって測定される電圧値)も一定となる(
図15:押下準備区間)。次に、第1アクチュエータ341の可動部341aが解錠釦4に当接するとモータ364の回転数が下がり、モータ364のトルクは徐々に増加する。このため、モータ364に流れる電流値(すなわち、検出される電圧値)が徐々に増加する(
図15:押下開始区間)。次に、押下釦6が押し下がらない状況になるとモータ364の回転数が一度は上昇するものの、早期に減少して一定となり、増加したトルクも一定値となる。このため、モータ364に流れる電流値(すなわち、測定回路355によって測定される電圧値)は、オーバーシュートする形で一度は増加するものの、早期に減少して一定となる(
図15:押下完了判定区間)。
【0107】
その後、可動部341aによる解錠釦4への当接を解消する(すなわち、離間させる)ように、モータ364が逆回転すると、第1アクチュエータ341の可動部341aが解錠釦4に当接した状態でモータ364の回転数が上がり、モータ364のトルクは徐々に減少する。このため、モータ364に流れる電流値(すなわち、検出される電圧値)が徐々に減少する(
図15:離間開始区間)。そして、可動部341aが解錠釦4から完全に離間すると、モータ364の回転数もトルクも一定となる。このため、モータ364に流れる電流値(すなわち、測定回路355によって測定される電圧値)も一定となり、押下準備区間における値に到達する(
図15:離間状態区間)。
【0108】
そして、本実施形態において、
図15に示すように、第1閾値が押下完了判定区間における電圧値、すなわち第1アクチュエータ341によって解錠釦4が最深位置まで押された状態における電圧値よりも低く設定されている。このため、プロセッサ352は、S313において第1アクチュエータ341の可動部341aが解錠釦4に当接し、更には解錠釦4が奥まで押し込まれた状態であることを判定することができる。更に、プロセッサ352は、S314において、電圧値が第1閾値以上となる期間が所定時間以上となる場合に、押釦動作が完了したと判断するため、押下完了判定区間の初期段階の瞬間的な電圧上昇や他の予期しない電圧値の一時的な上昇によるような、誤った押釦動作の完了判定を行うことがない。すなわち、プロセッサ352は、より正確な押釦動作の完了判定を行うことができる。なお、このような判定基準のため、
図15に示すように、押下完了判定区間とは電圧値が第1閾値以上となる所定時間と同じとなる。
【0109】
そして、第1閾値は、第1アクチュエータ341の可動部341aによる解錠釦4の押下を実際に試験的に行い、当該試験の結果に基づいて設定されてもよく、シミュレーションの結果に基づいて設定されてもよい。また、車載器300及び車両キー3の寸法及び形状等に応じて、解錠釦4が奥まで押し込まれた状態における電圧値は異なるため、車載器300及び車両キー3に応じて第1閾値を適宜設定することができる。更に、解錠釦4の使用環境温度が変わることにより、解錠釦4が奥まで押し込まれた状態における電圧値も変化するため、当該使用環境温度に応じて、第1閾値を設定してもよい。例えば、メモリ351には-20℃~+70℃の範囲において、10℃おきに第1閾値が記憶されており、プロセッサ352は、車載器300等に設置された温度センサから温度情報に基づいて、第1閾値を常に最適値に設定してもよい。なお、当該温度範囲については、車載器300の使用が想定される環境において適宜設定され、第1閾値が設定される温度についても適宜変更及び増減してもよい。
【0110】
上記説明においては、解錠釦4の押釦動作に対して説明していたが、ドアロックの施錠のような場合には、施錠釦5の押釦動作についても同様に処理されることになる。
【0111】
(C)釦の押下開始時における異常判定に係る処理
以下、
図12に記載された車両2のドアロック解除に係る処理において、車載器300において実行される押釦動作の異常判定に係る処理フローを、
図16及び
図17を参照しつつ具体的に説明する。
【0112】
図16は、本開示の実施形態に係る車載器300において実行される異常判定に係る処理フローを示す図である。特に、
図16は、車載器300においてドアロックを解除するために、車両キー3の釦押下を開始した後における異常判定を説明するためのフロー図である。当該処理フローは、主に車載器300のプロセッサ352がメモリ351に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより行われる。また、
図17は、本開示の実施形態に係る車載器300において押釦動作が実行された際の異常状態における電圧値の変化を示すグラフである。
【0113】
本フローは、車載器300が
図12のS216において利用条件を満足していると判断したことにより開始される。
【0114】
先ず、車載器300のプロセッサ352は、第1アクチュエータ341のモータドライバ363に対してゲート信号の供給を行う(S411)。その後に、車載器300のプロセッサ352は、測定回路355から電圧値を受信する(S412)。ここで、S411はS311と同一の処理であり、S412はS312の同一の処理であるため、その詳細な説明は省略する。
【0115】
次に、車載器300のプロセッサ352は、受信した電圧値が一定時間経過後も第1閾値に到達していないかを判定する(S413)。具体的に、車載器300のプロセッサ352は、S411においてゲート信号を供給してからの経過時間を測定しつつ、第1閾値に到達しない電圧値を受信した場合に、当該経過時間が一定時間を超えているか否かを判定する。ここで、一定時間とは、第1アクチュエータ341が駆動開始して可動部341aが解錠釦4に到達する通常の時間であり、
図15における押下準備区間である。なお、一定時間には、当該押下準備区間よりも少し長い時間を設定し、若干のマージンを持たせてもよい。
【0116】
S413において、受信した電圧値が一定時間経過後も第1閾値に到達していない場合(S413:Yes)、車載器300のプロセッサ352は、解錠釦4の押下動作に異常があったものと判定する(S416)。当該異常の一例としては、
図17の異常Aとして示すように、ゲート信号を供給しても可動部341aが解錠釦4に到達せずに、電圧値に変化がない場合等が想定される。より具体的には、ゲート信号の供給に係る回路の故障、モータ364の故障、モータ364の駆動が伝達されない故障等が考えられる。
【0117】
一方、受信した電圧値が一定時間経過するまでに第1閾値に到達している場合(S413:No)、車載器300のプロセッサ352は、受信した電圧値が第2閾値に到達しているか否かを判定する(S414)。ここで、第2閾値とは、
図17に示すように、第1閾値より高い値であって、通常は測定されることがない異常値のことである。
【0118】
S414において、受信した電圧値が第2閾値に到達している場合(S414:Yes)、車載器300のプロセッサ352は、解錠釦4の押下動作に異常があったものと判定する(S416)。当該異常の一例としては、
図17の異常Bとして示すように、電圧値が第1閾値を超えて増加し続けている場合が想定される。より具体的には、解錠釦4が本来の設計を超えてさらに押し込まれている状態(例えば解錠釦4が破壊されているような状況)が異常状態として判定される。
【0119】
一方、受信した電圧値が第2閾値に到達していない場合(S414:No)、車載器300のプロセッサ352は、一定時間経過後も第1閾値以上の電圧値の継続時間が所定時間未満であるか否かを判定する(S415)。換言すると、車載器300のプロセッサ352は、電圧値の受信開始から一定時間経過後においても、電圧値が第1閾値以上となる継続時間が所定時間未満の場合(
図15における押下完了判定区間よりも短い場合)に該当するかを判定する。例えば、車載器300のプロセッサ352は、S411においてゲート信号を供給してからの経過時間を測定しつつ、第1閾値以上となる電圧値の継続時間を算出し、当該経過時間が一定時間以上であるか、及び当該経過時間が所定時間未満であるかを判定する。ここで、一定時間とは、第1アクチュエータ341が駆動開始して可動部341aが解錠釦4に到達して所持時間が経過するまでの時間であり、
図15における押下準備区間から押下完了判定区間である。なお、一定時間には、当該押下準備区間から押下完了判定区間よりも少し長い時間を設定し、若干のマージンを持たせてもよい。また、所定時間とは、
図15における押下完了判定区間である。
【0120】
S415において、一定時間経過後も第1閾値以上の電圧値の継続時間が所定時間未満である場合(S415:Yes)、車載器300のプロセッサ352は、解錠釦4の押下動作に異常があったものと判定する(S416)。当該異常の一例としては、
図17の異常Cとして示すように、電圧値が第1閾値に到達したものの、所定時間の到達前に減少する場合が想定される。より具体的には、解錠釦4に対する押釦動作が不十分なまま、可動部341aが解錠釦4から離間してしまった場合が想定される。例えば、車両キー3が固設ユニット311から外れてしまった場合等が考えられる。
【0121】
なお、上述した異常判定のフローは、
図13のフローとは別にプロセッサ352が実行してもよく、又は
図13のフローに追加して実行してもよく、プロセッサ352における処理プログラムを適宜変更することで種々の対応を行うことができる。また、上述した異常A、異常B、異常Cは例示であり、他の異常を検出するように閾値の設定や時間の設定が適宜行われてもよい。更には、固有の故障モードに対する電圧変動をメモリ351に登録し、実際の電圧変動と登録された電圧変動を比較することにより、各種の故障等の異常状態を検出可能にしてもよい。
【0122】
(D)釦の押下停止時における異常判定に係る処理
以下、
図12に記載された車両2のドアロック解除に係る処理において、車載器300において実行される押釦動作の異常判定に係る処理フローを、
図18及び
図19を参照しつつ具体的に説明する。
【0123】
図18は、本開示の実施形態に係る車載器300において実行される異常判定に係る処理フローを示す図である。特に、
図18は、車載器300においてドアロックを解除するために、車両キー3の釦押下を停止した後における異常判定を説明するためのフロー図である。当該処理フローは、主に車載器300のプロセッサ352がメモリ351に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより行われる。また、
図19は、本開示の実施形態に係る車載器300において押釦動作が実行された際の異常状態における電圧値の変化を示すグラフである。
【0124】
本フローは、車載器300が
図12のS216において利用条件を満足していると判断したことにより開始される。
【0125】
先ず、車載器300のプロセッサ352は、第1アクチュエータ341のモータドライバ363に対してゲート信号の供給を行う(S511)。その後に、車載器300のプロセッサ352は、測定回路355から電圧値を受信する(S512)。ここで、S511はS316と同一の処理であり、S512はS312の同一の処理であるため、その詳細な説明は省略する。
【0126】
次に、車載器300のプロセッサ352は、一定時間経過においても受信した電圧値が第3閾値以上であるか否かを判定する(S513)。ここで、第3閾値とは、
図19に示すように、第1閾値より低い値であって、測定開始時である押下準備区間の電圧値と同等の値である。すなわち、第3閾値とは、測定開始時点における電圧値又はその近傍の値であって初期状態設定値とも称する。また、一定時間とは、S511によるゲート信号の供給によって第1アクチュエータ341が駆動開始(離間開始)してから可動部341aが解錠釦4から完全に離間するまでの通常の時間であり、
図15における離間開始区間である。なお、当該一定時間には、当該離間開始区間よりも少し長い時間を設定し、若干のマージンを持たせてもよい。
【0127】
S513において、受信した電圧値が一定時間経過後においても第3閾値以上である場合(S513:Yes)、車載器300のプロセッサ352は、解錠釦4の押下動作に異常があったものと判定する(S514)。当該異常の一例としては、
図19の異常Dとして示すように、解錠釦4の押下を停止しても電圧値が初期状態まで下がらない場合が想定される。より具体的にはモータ364の故障、モータ364の駆動が伝達されない故障等が考えられる。
【0128】
なお、上述した異常判定のフローは、
図13のフローとは別にプロセッサ352が実行してもよく、又は
図13のフローに追加して実行してもよく、プロセッサ352における処理プログラムを適宜変更することで種々の対応を行うことができる。また、上述した異常Dは例示であり、他の異常を検出するように閾値の設定や時間の設定が適宜行われてもよい。更には、固有の故障モードに対する電圧変動をメモリ351に登録し、実際の電圧変動と登録された電圧変動を比較することにより、各種の故障等の異常状態を検出可能にしてもよい。
【0129】
9.本開示の実施形態のまとめ
本開示の実施形態に係る釦操作判定装置356は、少なくとも一つのプロセッサ352を具備し、当該少なくとも一つのプロセッサは、押下釦6に対して押釦動作をするように構成された第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342に供給される電流値の変動に係る測定情報を受信し、当該測定情報に含まれる測定値(電圧値又は電流値)が所定の第1閾値以上になった場合に当該押釦動作が完了したと判定する、ための処理を実行するように構成されている。このような構成により、各アクチュエータに供給される電流量の変動を監視することによって押釦動作の完了が判定されるため、各種釦が実際に押されたか否かを検出するようなセンサ等が不要となる。このため、釦操作判定装置356としてもコストの増加を抑制し且つ簡易な構成を実現できる。
【0130】
上記構成において、当該第1閾値は、第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342によって押下釦6が最深位置まで押された状態における当該測定値よりも低く設定されていてもよい。これにより、押下釦6が各アクチュエータによって押下されて釦が押し込まれたことを正確に把握することができる。
【0131】
上記構成において、当該第1閾値は、押下釦6の使用環境温度に応じて変更可能に設定されていてもよい。これにより、押下釦6の使用環境温度に起因する測定値変動が生じる場合であっても、押下釦6が各アクチュエータによって押下されて釦が押し込まれたことを正確に把握することができる。
【0132】
上記構成において、当該プロセッサ352は、当該測定値が第1閾値以上となる期間が所定時間以上となった場合に、押釦動作が完了したと判定してもよい。これにより、瞬間的に測定値が超えるような押釦動作完了とは異なる測定値変動が生じても、押釦動作が完了したと誤判定することがなくなり、押釦動作の完了をより正確に把握することができる。
【0133】
上記構成において、当該プロセッサ352は、当該測定情報の受信開始から一定時間経過後においても、当該測定値が当該第1閾値に到達しない場合に当該押釦動作に異常があったと判定してもよい。また、当該プロセッサ352は、当該測定値が当該第1閾値よりも高い値で設定された異常値(第2閾値)に到達した場合に当該押釦動作に異常があったと判定してもよい。更に、当該プロセッサ352は、当該測定情報の受信開始から一定時間経過後においても、当該測定値が閾値以上となる継続時間が当該所定時間未満の場合に当該押釦動作に異常があったと判定してもよい。これにより、押釦動作が正常に完了していないことを判定することが可能となり、各装置の故障等を検知することが可能になり、釦操作判定装置356のメンテナスを容易に行える。
【0134】
上記構成において、当該プロセッサ352は、当該押釦動作が完了した後において、当該測定値が初期状態設定値に到達しない場合に押下釦6に対する第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342の離間操作に異常があったと判定してもよい。これにより、押釦動作の完了後における第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342の検知することが可能となり、釦操作判定装置356のメンテナンスを容易に行える。
【0135】
本開示の実施形態に係る釦操作判定プログラムは、少なくとも一つのプロセッサ352を具備するコンピュータにおいて少なくとも一つのプロセッサ352を、押下釦6に対して押釦動作をするように構成された第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342に供給される電流値の変動に係る測定情報を受信し、当該測定情報に含まれる測定値が所定の第1閾値以上になった場合に当該押釦動作が完了したと判定する。このような構成により、各アクチュエータに供給される電流量の変動を監視することによって押釦動作の完了が判定されるため、各種釦が実際に押されたか否かを検出するようなセンサ等が不要となる。このため、釦操作判定装置356としてもコストの増加を抑制し且つ簡易な構成を実現できる。
【0136】
本開示の実施形態に係る釦操作判定方法は、少なくとも一つのプロセッサ352を具備するコンピュータにおいて当該少なくとも一つのプロセッサ352により実行される釦操作判定方法であって、押下釦6に対して押釦動作をするように構成された第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342に供給される電流値の変動に係る測定情報を受信する段階と、当該測定情報に含まれる測定値が所定の第1閾値以上になった場合に当該押釦動作が完了したと判定する段階と、を含む。このような構成により、各アクチュエータに供給される電流量の変動を監視することによって押釦動作の完了が判定されるため、各種釦が実際に押されたか否かを検出するようなセンサ等が不要となる。すなわち、低コスト及び簡単な検出によって押釦動作の完了が判定可能になる。
【0137】
本開示の実施形態に係る操作装置(車載器300)は、押下釦6に対して押釦動作をするように構成された第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342と、第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342に供給される電流値の変動に係る測定を行う測定回路355と、当該測定回路355から測定情報を受信し、当該測定情報に含まれる測定値が所定の第1閾値以上になった場合に当該押釦動作が完了したと判定するプロセッサ352と、を備えること。このような構成により、各アクチュエータに供給される電流量の変動を監視することによって押釦動作の完了が判定されるため、各種釦が実際に押されたか否かを検出するようなセンサ等が不要となる。このため、車載器300としてもコストの増加を抑制し且つ簡易な構成を実現できる。
【0138】
10.変形例
上述した実施形態においては、3種類の車両キー3a~3cに対応するために、第1凹部322a~第3凹部322cを固設部材320に設けていたが、凹部の数はこれに限定されない。4種類以上の車両キー3に対応するために、凹部の数を増やしてもよく、2種類の車両キー3に対応するために凹部を2つとしてもよい。すなわち、固設する予定の車両キー3の種類の数に応じて、凹部の数を適宜変更することができる。特に、凹部の数を増やすことによってより多くの種類の車両キー3に対応することができることになる。一方で、加工面を考慮して、固設部材320に設ける凹部の数を適宜調整してもよい。
【0139】
一方で、互いに異なる形状の車両キー3a~3cに対応させることなく、特定の形状の車両キーのみを固設するように、凹部を形成してもよい。このような場合には、車両キーに対応させて固設ユニット311を適宜取り換えることになる。
【0140】
また、上述した実施形態においては、2つの第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342をアクチュエータユニット312の内部に設置していたが、車両キー3の押下釦6の数に応じて当該アクチュエータの数も適宜変更することができる。車両キー3に解錠釦4及び施錠釦5とは異なる釦(例えば、左右のスライドドアの開閉釦)が設けられており、当該異なる釦についても押釦動作する場合には、アクチュエータを増やして対応することができる。アクチュエータが増える場合であっても、各アクチュエータに供給される電流値又は電圧値を測定することにより、各アクチュエータによる押釦動作の状態を把握することができる。
【0141】
更に、上述した実施形態においては、カーシェアリングのユーザが車両キー3に直接触れる必要性がなく、当該ユーザが車両2の駆動を実行していたがこれに限定されることはない。例えば、車載器300をグローブボックス等に設置して当該ユーザがアクセス可能とし、ユーザによる車両キー3の入手後に車両2の駆動を許容するようにしてもよい。この場合には、車載器300又は固設ユニット311にロック機構を設け、ドアロックの解除とともに当該ロック機構を解除し、当該ユーザが車両キー3にアクセス可能とするようにしてもよい。
【0142】
そして、上述した実施形態においては、車載器300に格納した車両キー3を別な車両キーに交換すること(車両キー3の取り換え)は通常行われないが、車載器300に格納された車両キー3へのアクセスは可能であるため、このような車両キー3の取り換えを行うようにしてもよい。例えば、車載器300が設置される車両2の変更、又は車両キー3の形状変更等に対応して、別の車両キーの再取り付けを行うようにしてもよい。
【0143】
上記の実施形態においては、解錠釦4又は施錠釦5のいずれかを押下する場合を想定していたが、例えば、2つの釦を同時に押下するような特殊な押釦動作に対応させてもよい。この場合には、第1アクチュエータ341及び第2アクチュエータ342のそれぞれに接続された測定回路によって測定される電圧値について、プロセッサ352が設定された閾値を超えたか否か、及び所定時間継続している否かを判定することになる。当然のことながら、押下すべき釦が3つ以上ある場合であっても、同様の処理が行えることになる。
【0144】
上記の実施形態においては、車両キー3の押下釦6を比較的に短い期間で押下することが想定されていたが、一般的な釦の長押しに対応するようにしてもよい。当該長押しに対応させるためには、測定される電圧値が第1閾値以上となる期間である所定時間をより長く設定することによって実現できる。このような釦の長押しに対応できる設定を行うと、例えば、施錠釦4又は解錠釦5の一方に対して通常の押下を行い、他方に対して長押しするような特殊な押釦動作に対応することが可能になる。
【0145】
上記の実施形態においては、車両キー3の押下釦6を1回押下することが想定されていたが、複数回押下されたことを判定できるようにしてもよい。この場合には、プロセッサ352が1回の押下動作を検出するとともに、当該押下動作の連続回数も検出してもよい。これにより、釦を連続して2回以上押下するような特殊な押釦動作に対応することが可能になる。
【0146】
上記の実施形態においては、車両キー3に対する押釦動作の完了又は異常を判定するために、車載器300における適用例を詳細に説明したが、押下される釦については車両キー3に限定されることなく、家屋の玄関の電子キー、ロッカーの電子キー等であってもよく、当該電子キーの押釦動作を判定するために釦操作判定装置356が適用されてもよい。すなわち、家屋の玄関の電子キー、ロッカーの電子キーに付随する形態で、釦操作判定装置356が設けられてもよい。また、電子キーと一体的な構成とすることなく、例えば、スイッチボットのような、種々のスイッチに対して押釦動作を行うような装置に対して、釦操作判定装置356が付加的に用いられてもよい。すなわち、スイッチボットの押釦動作を判定するために、釦操作判定装置356が使用されてもよい。
【0147】
上記の実施形態においては、解錠釦4又は施錠釦5に対する押下を停止すると、解錠釦4又は施錠釦5がもとの位置に戻ることを想定していたが、これに限定されることはない。例えば、アクチュエータの可動量、第1閾値、及び第1閾値以上となる期間である所定時間を、スイッチをオンさせる場合とオフさせる場合で適宜設定することにより、ノック式釦に対応させることが可能である。すなわち、釦を押し込む場合(スイッチをオンする場合)と比較して、釦を戻す場合(スイッチをオフにする場合)は、アクチュエータの可動量及び第1閾値がより大きく設定され、当該所定時間が短く設定されてもよい。
【0148】
上記の実施形態においては、釦を押下する場合のみが想定されていたが、つまみ釦に適応させてもよい。このような場合には当該つまみ釦を挟持しつつ、上下左右又は前後に移動させるため、このような動きに対応させて閾値設定が行われることにより、釦動作が完了した否かを判定することができる。すなわち、本開示の内容については、押釦への適応のみならず、各種の釦に対応させることも可能である。
【0149】
本明細書で説明される処理及び手順は、本開示において明示的に説明されたものによってのみならず、ソフトウェア、ハードウェア又はこれらの組み合わせによっても実現可能である。具体的には、本明細書で説明された処理及び手順は、集積回路、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、磁気ディスク、光ストレージ等の媒体に、当該処理に相当するロジックを実装することによって実現される。また、本明細書で説明される処理及び手順は、それらの処理・手順をコンピュータプログラムとして実装し、端末装置やサーバ装置を含む各種のコンピュータに実行させることが可能である。
【0150】
本明細書中で説明される処理及び手順が単一の装置、ソフトウェア、コンポーネント、モジュールによって実行される旨が説明されたとしても、そのような処理又は手順は、複数の装置、複数のソフトウェア、複数のコンポーネント、及び/又は、複数のモジュールによって実行されるものとすることができる。また、本明細書中で説明される各種情報が単一のメモリや記憶部に格納される旨が説明されたとしても、そのような情報は、単一の装置に備えられた複数のメモリ又は複数の装置に分散して配置された複数のメモリに分散して格納されるものとすることができる。さらに、本明細書において説明されるソフトウェア及びハードウェアの要素は、それらをより少ない構成要素に統合して、又は、より多い構成要素に分解することによって実現されるものとすることができる。
【符号の説明】
【0151】
300 車載器(操作装置)
341 第1アクチュエータ
342 第2アクチュエータ
352 プロセッサ
355 判定回路
356 釦操作判定装置