(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103389
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】電気車両
(51)【国際特許分類】
B60L 9/30 20060101AFI20240725BHJP
B60L 13/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B60L9/30
B60L13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007681
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲也
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA06
5H125AC02
5H125AC12
5H125AC22
5H125BB00
5H125BC21
5H125BC25
5H125CA08
5H125EE12
5H125EE51
5H125EE70
(57)【要約】
【課題】電気鉄道車両において、大規模な蓄電システムを搭載することなく、非常時にモード切替を実施する。
【解決手段】電気車両1は、集電装置2と、集電装置2に接続された補助電源装置4により充電される1個以上の充電装置3と、主電動機9を駆動させる走行用変換器5と、集電装置2が電源と切り離されたときに、充電装置3と走行用変換器5の接続をオフからオンに切り替えるスイッチ61と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電装置と、
前記集電装置に接続された補助電源装置により充電される1個以上の充電装置と、
主電動機を駆動させる走行用変換器と、
前記集電装置が電源と切り離されたときに、前記充電装置と前記走行用変換器の接続をオフからオンに切り替えるスイッチと、
を備える電気車両。
【請求項2】
前記1個以上の充電装置の合計電圧は、前記電源の電圧に対して10%以上20%以下である、請求項1に記載の電気車両。
【請求項3】
前記集電装置と架線との接続状態を機械的に検出し、検出結果を示す信号を出力する集電検知装置を備える、請求項1又は2に記載の電気車両。
【請求項4】
前記スイッチは、前記集電装置が前記架線と切り離されたことを示す信号を前記集電検知装置が出力し、前記補助電源装置及び前記走行用変換器のキャパシタが放電完了し、前記補助電源装置及び前記走行用変換器に電流が流れていない場合に、前記充電装置と前記走行用変換器の接続をオフからオンに切り替える、請求項3に記載の電気車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給が断たれた場合に走行可能な電気車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道車両は、架空電車線や第三軌条等より電力供給を受け、走行することが一般的である。また、電力供給源たる架線や変電所にトラブル等が発生すると走行できなくなることが通常である。特に大規模災害時の橋梁など、危険かつ乗客を降ろすことができないポイントに車両が停止した際、車両を何らかの方法で小移動させて、比較的安全な箇所で乗客を降ろし、避難させる必要がある。
【0003】
そのために、主回路システムに接続する蓄電池及びその充放電システムを車両に搭載することが一般的である。特許文献1では、上記課題に対し、直流部に大型蓄電装置を設置することで解決を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、大型の大容量蓄電池を使用し、非常時に定格電圧をシステムに印加するという一般的な方式は、非常走行という目的に対して過大なシステムとなり、全編成に搭載するだけのコストが課題となる。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、大規模な蓄電システムを搭載することなく、非常時にモード切替を実施することが可能な電気車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る電気車両システムは、集電装置と、前記集電装置に接続された補助電源装置により充電される1個以上の充電装置と、主電動機を駆動させる走行用変換器と、前記集電装置が電源と切り離されたときに、前記充電装置と前記走行用変換器の接続をオフからオンに切り替えるスイッチと、を備える。
【0008】
さらに、一実施形態において、前記1個以上の充電装置の合計電圧は、前記電源の電圧に対して10%以上20%以下であってもよい。
【0009】
さらに、一実施形態において、前記集電装置と架線との接続状態を機械的に検出し、検出結果を示す信号を出力する集電検知装置を備えてもよい。
【0010】
さらに、一実施形態において、前記スイッチは、前記集電装置が前記架線と切り離されたことを示す信号を前記集電検知装置が出力し、前記補助電源装置及び前記走行用変換器のキャパシタが放電完了し、前記補助電源装置及び前記走行用変換器に電流が流れていない場合に、前記充電装置と前記走行用変換器の接続をオフからオンに切り替えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大規模な蓄電システムを搭載することなく、非常時にモード切替を実施することが可能なる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電気車両の一例を示す構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電気車両の簡略化した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る電気車両の一例を示す構成図である。
図1に示す電気車両1は、集電装置2と、1個以上の充電装置(第2電源、Batt)3と、補助電源装置(APU)4と、走行用変換器(PropINV)5と、切り替えスイッチ箱(SW)6と、主電動機9と、集電検知装置10と、空調装置(HVAC)11と、高圧給電線12と、車両内制御電源線13と、を備える。
【0015】
集電装置2は、架線(第1電源)20から集電した電力を、高圧給電線12を経由して、走行用変換器5、補助電源装置4、及び切り替えスイッチ箱6に給電する。
図1に示す本実施形態では、集電装置2としてパンタグラフを用いて架線20から集電する架空電車線方式(架線集電方式)を示しているが、本発明は集電装置2として集電靴を用いて第三軌条(第1電源)から集電する第三軌条方式においても適用することができる。
【0016】
走行用変換器5は、車両駆動用(走行用)の主電動機9に電力を供給し、主電動機9を駆動させる。本実施形態では、便宜的に三相交流電力を主電動機9に供給しているが、主電動機9は直流電動機であってもよい。
【0017】
補助電源装置4は、集電装置2に接続された電力変換装置である。補助電源装置4は、車両内制御電源線13を経由して、充電装置3(第2電源)、走行用変換器5の制御用電源、補助電源装置4の制御用電源、空調装置11、及び切り替えスイッチ箱6に給電する。
【0018】
充電装置3は、小容量の制御用バッテリーであり、補助電源装置4により充電される。
【0019】
集電検知装置10は、集電装置2が電力供給を受けているか否かを検知するために、集電装置2と架線20との接続状態を機械的に検出し、検知結果を示す信号を出力する。例えば、集電装置2がパンタグラフである場合には、通常、車両電源が投入される際は、集電装置2は折りたたまれて架線20に接続されておらず、集電検知装置10は“上昇していない”という接点信号を出力する。
【0020】
切り替えスイッチ箱6は、機械スイッチ、半導体スイッチ等、電流を切り替えるスイッチ61を有する。スイッチ61は、集電装置2が架線20と切り離され、集電装置2の消費電流が閾値以下であるときに、任意の充電装置3と走行用変換器5の接続を、オフからオンに切り替える。
【0021】
充電装置3の電圧は、定格DC100~110V又はDC24V,36V,48Vであることが一般的である。架線20の電圧は、DC600V,750V,1500V,3000Vであることが一般的である。DC24V,36V,48Vの場合は、本来の定格に対して電圧が低く、電気車両1を駆動させるのに必要なトルクが主電動機9から出力されない。電気車両1を駆動させるためには、充電装置3の合計電圧は、架線20の電圧に対して10%以上必要と考えられる。そのため、1個当たりの充電装置3の満充電時の電圧が架線20の電圧の10%未満である場合には、充電装置3を複数個設ける必要がある。ただし、非常時に車両を安全な箇所まで小移動させるという目的を達成するために、架線20の電圧に対して20%を超える電圧は不要と考えられる。したがって、充電装置3の合計電圧は、架線20の電圧に対して10%以上20%以下であることが望ましい。
【0022】
<通常モードと非常走行モード>
次に、
図2を参照して、通常モードと非常走行モードの切り替えについて説明する。
図2は、電気車両1の簡略化した回路図である。
【0023】
通常モードでは、集電装置2から供給された電力で主電動機9を駆動する。また、集電装置2から供給された電力で補助電源装置4が動作し、補助電源装置4は、空調装置11などの補機、及び室内灯、コンプレッサ等に電力を供給する。また、補助電源装置4は、車両内制御電源線13を経由して、充電装置3を充電するとともに、走行用変換器5の制御用電源に電力を供給する。
【0024】
架線20からの供給電力が断たれた場合には、通常モードから、非常走行モードへ遷移する。その際、車両内制御電源線13と高圧給電線12の電位が同一になる前に、確実に集電装置2が架線20から離れていることを担保する必要がある。
【0025】
そこで、まず車両内からモード切替指令を設定する。すると、電気車両1は、次の(1)(2)(3)の動作を同時に行う。
【0026】
(1)集電装置2を降下させ、架線20と切り離す。集電装置2が降下すると、集電検知装置10は、集電装置2が架線20と切り離されたことを示す信号(集電装置2が上昇していないことを示す信号)を出力する。
【0027】
(2)補助電源装置4及び走行用変換器5は、補助電源装置4及び走行用変換器5が内部に有する接触器を開放し、補助電源装置4及び走行用変換器5の内部のキャパシタに蓄えられた電荷を放電する。この動作により、キャパシタに蓄積された電荷による影響を除外することができる。
【0028】
(3)制御回路にて走行用変換器5及び補助電源装置4の電流値が0であることを検出する。
【0029】
電気車両1の制御回路は、上記の3条件、すなわち(1)集電装置2が架線20と切り離されたことを示す信号を集電検知装置10が出力したこと、(2)補助電源装置4及び走行用変換器5のキャパシタが放電完了したこと、(3)補助電源装置4及び走行用変換器5に電流が流れていないこと、を確認してから、切り替えスイッチ箱6内の2組のスイッチ61をいずれもオフからオンに切り替える。これにより、通常モードから非常走行モードに切り替わる。
【0030】
この時、集電装置2は架線20から切り離された状態である。したがって、車両内制御電源線13と高圧給電線12の電位は同一となり、充電装置3から走行用変換器5へ給電が可能となる。
【0031】
非常走行モードでは、走行用変換器5は動作を開始し、主電動機9への給電を開始する。これにより、通常電力消費を行う第1電源からの電力供給が断たれた非常時でも、第2電源たる充電装置3による走行に切り替えることができる。また、そのシステムは既存機器に搭載されている小型・小容量の低圧蓄電池の数を増やすことで構築でき、車両を移動させるだけなら大型・大容量の蓄電池は不要であるため、低コスト且つ小型で実現することが可能となる。
【0032】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを統合したり、1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 電気車両
2 集電装置
3 充電装置
4 補助電源装置
5 走行用変換器
6 切り替えスイッチ箱
9 主電動機
10 集電検知装置
11 空調装置
12 高圧給電線
13 車両内制御電源線
20 架線
61 スイッチ