(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103392
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】熱電発電装置および熱電発電方法
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20240725BHJP
H10N 10/17 20230101ALI20240725BHJP
B22D 11/12 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H02N11/00 A
H10N10/17 Z
B22D11/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007685
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100195785
【弁理士】
【氏名又は名称】市枝 信之
(72)【発明者】
【氏名】黒木 高志
(72)【発明者】
【氏名】堤 康一
(57)【要約】
【課題】製鉄所の製造設備列において熱電発電を行う際の漏電の発生を防止する。
【解決手段】熱電発電装置は、受熱板と、前記受熱板に対向する冷却板と、前記受熱板と前記冷却板の間に配置された熱電発電モジュールとを備え、前記熱電発電モジュールは、対向する一対の絶縁基板と、前記一対の絶縁基板の間に挟持された複数の熱電発電素子と、前記一対の絶縁基板の外周を封止する外周封止枠と、前記熱電発電素子に接続された端子部と、前記端子部に接続され、前記一対の絶縁基板のうちの前記冷却板側の絶縁基板と前記冷却板とを貫通して設けられたリード部材と、前記リード部材、前記冷却板、および前記冷却板側の絶縁基板のうち、少なくとも2つの間に形成される隙間を封止する封止部材とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄所の製造設備列に取り付けて使用される熱電発電装置であって、
受熱板と、前記受熱板に対向する冷却板と、前記受熱板と前記冷却板の間に配置され
た熱電発電モジュールとを備え、
前記熱電発電モジュールは、
対向する一対の絶縁基板と、
前記一対の絶縁基板の間に挟持された複数の熱電発電素子と、
前記一対の絶縁基板の間に挟持され、前記一対の絶縁基板の外周を封止する外周封止枠と、
前記熱電発電素子に接続された端子部と、
前記端子部に接続され、前記一対の絶縁基板のうちの前記冷却板側の絶縁基板と前記冷却板とを貫通して設けられたリード部材と、
前記リード部材、前記冷却板、および前記冷却板側の絶縁基板のうち、少なくとも2つの間に形成される隙間を封止する封止部材とを備える、熱電発電装置。
【請求項2】
前記封止部材は、前記リード部材、前記冷却板、および前記冷却板側の絶縁基板のそれぞれと接触し、前記リード部材、前記冷却板、および前記冷却板側の絶縁基板の間に形成される隙間を封止する、請求項1に記載の熱電発電装置。
【請求項3】
前記封止部材がOリングである、請求項1または2に記載の熱電発電装置。
【請求項4】
前記封止部材がフッ素ゴム製である、請求項1または2に記載の熱電発電装置。
【請求項5】
さらに、前記受熱板と前記冷却板の間に、前記封止部材を支持する支持部材を備える、請求項1または2に記載の熱電発電装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の熱電発電装置を製鉄所の製造設備列に取り付け、
前記熱電発電装置により熱を電力に変換する、熱電発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所の製造設備列に取り付けて使用される熱電発電装置、および前記熱電発電装置を用いた熱電発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異種の導体または半導体に温度差を与えると、高温部と低温部との間に起電力が生じることは、ゼーベック効果として古くから知られており、このような性質を利用した熱電素子を用いて熱を直接電力に変換する熱電発電装置が実用化されている。
【0003】
熱電発電装置を用いることにより、従来活用されていなかった熱エネルギーを電力として有効利用することができる。そのため、様々な分野で熱電発電装置の利用が進められている。
【0004】
例えば、本発明者らは、製鉄所の製造設備列において熱電発電装置を用いることを提案してきた(特許文献1~3)。製鉄所においては、製銑、製鋼、鋳造、熱間圧延、熱処理など、高温で行われる様々なプロセスが実施されているため、それらのプロセスで発生する余剰の熱を電力に変換することができれば、省エネルギーおよびCO2排出量の低減に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-203301号公報
【特許文献2】特開2018-058082号公報
【特許文献3】特開2017-119308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、実際に製鉄所の製造設備列において熱電発電を行おうとすると、漏電が発生しやすいという問題があることが分かった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、製鉄所の製造設備列において熱電発電を行う際の漏電の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を行った結果、漏電の原因が、熱電発電装置、特に熱電発電モジュール内部への水分および鉄粉(酸化鉄粉を含む)の侵入にあることを突き止めた。
【0009】
すなわち、製鉄所においては、様々なプロセスが高温で行われるのみならず、被処理物や製造設備の冷却のために冷却水が使用されることがある。例えば、連続鋳造工程においては、高温の鋼スラブに接するローラーを冷却するために冷却水が使用される。その場合、製造設備列に設置された熱電発電装置は、高温に加え、水蒸気に晒されることになる。そしてその結果、水分が熱電発電装置の内部に侵入し、短絡の原因となることが分かった。
【0010】
加えて、製鉄所の製造設備列の周辺には製造プロセスに起因する粉塵(ダスト)が不可避的に存在する。そして、前記粉塵の主成分は、被処理物である鉄鋼に由来する鉄粉である。前記鉄粉は非常に微細であるため、熱電発電装置の内部に侵入し、短絡の原因となることが分かった。なお、前記鉄粉の多くは酸化されて酸化鉄となっている。酸化鉄は金属鉄に比べると電気を通しにくいものの、完全な絶縁体ではなく、例えば、ウスタイトでは30Ω-1cm-1程度、マグネタイトでは250Ω-1cm-1程度の電気伝導度を有している。そのため、鉄粉が熱電発電装置の内部に侵入すると漏電の原因となり得る。また、微細な鉄粉(酸化鉄粉)が熱電発電装置の内部に侵入すると、該鉄粉の周囲に水分が凝集、保持されやすくなるため、相乗的に漏電のリスクが高まるものと考えられる。
【0011】
このように、製鉄所の製造設備列の周囲は、水分と微細な鉄粉が存在する極めて過酷な環境であり、その結果、漏電が著しく発生しやすいことが分かった。
【0012】
本発明は上記知見を元に完成されたものであり、その要旨は、次の通りである。
【0013】
1.製鉄所の製造設備列に取り付けて使用される熱電発電装置であって、
受熱板と、前記受熱板に対向する冷却板と、前記受熱板と前記冷却板の間に配置された熱電発電モジュールとを備え、
前記熱電発電モジュールは、
対向する一対の絶縁基板と、
前記一対の絶縁基板の間に挟持された複数の熱電発電素子と、
前記一対の絶縁基板の間に挟持され、前記一対の絶縁基板の外周を封止する外周封止枠と、
前記熱電発電素子に接続された端子部と、
前記端子部に接続され、前記一対の絶縁基板のうちの前記冷却板側の絶縁基板と前記冷却板とを貫通して設けられたリード部材と、
前記リード部材、前記冷却板、および前記冷却板側の絶縁基板のうち、少なくとも2つの間に形成される隙間を封止する封止部材とを備える、熱電発電装置。
【0014】
2.前記封止部材は、前記リード部材、前記冷却板、および前記冷却板側の絶縁基板のそれぞれと接触し、前記リード部材、前記冷却板、および前記冷却板側の絶縁基板の間に形成される隙間を封止する、上記1に記載の熱電発電装置。
【0015】
3.前記封止部材がOリングである、上記1または2に記載の熱電発電装置。
【0016】
4.前記封止部材がフッ素ゴム製である、上記1または2に記載の熱電発電装置。
【0017】
5.さらに、前記受熱板と前記冷却板の間に、前記封止部材を支持する支持部材を備える、上記1または2に記載の熱電発電装置。
【0018】
6.上記1または2に記載の熱電発電装置を製鉄所の製造設備列に取り付け、
前記熱電発電装置により熱を電力に変換する、熱電発電方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱電発電装置を製鉄所の製造設備列で使用する際に、水分や微細な鉄粉の浸入に起因する漏電を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第一の実施形態における熱電発電装置の構造を示す断面模式図である。
【
図2】第二の実施形態における熱電発電装置の構造を示す断面模式図である。
【
図3】第二の実施形態の変形例における支持部材の構造を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施する方法について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な実施態様の例を示すものであり、本発明は、以下の説明によって何ら限定されるものではない。
【0022】
[熱電発電装置]
本発明の一実施形態における熱電発電装置は、製鉄所の製造設備列に取り付けて使用される熱電発電装置であって、受熱板と、前記受熱板に対向する冷却板と、前記受熱板と前記冷却板の間に配置された熱電発電モジュールとを備えている。
【0023】
(受熱板)
本発明の熱電発電装置は、熱源からの熱を受けるための受熱板を備えている。本発明の熱電発電装置を使用する際には、前記受熱板が熱源側に位置するように熱電発電装置を設置すればよい。熱源からの熱は、受熱板によって受熱された後、熱電発電モジュールの一方の面(高温側)に伝えられる。
【0024】
前記受熱板の材質は特に限定されないが、耐熱性の観点からは、金属、セラミックス、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1つとすることが好ましい。前記金属としては、とくに限定されないが、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、および鋼からなる群より選択される少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0025】
(冷却板)
本発明の熱電発電装置は、前記受熱板に対向する冷却板を備えている。本発明の熱電発電装置を使用する際には、熱源と反対の側に前記冷却板が位置するように熱電発電装置を設置すればよい。前記冷却板により、熱電発電モジュールの他方の面(低温側)が冷却される。
【0026】
前記冷却板としては、熱電発電モジュールを冷却することができるものであれば任意のものを用いることができる。前記冷却板は、例えば、ヒートシンクおよび熱交換器であってもよいが、冷却効率の観点からは熱交換器であることが好ましい。前記熱交換器としては、例えば、内部に冷却水流路を有する水冷板を用いることができる。前記冷却板がヒートシンクである場合には、冷却効率を高めるために、放熱フィンを備えることが好ましい。
【0027】
前記冷却板の材質は特に限定されないが、熱伝導性の観点からは、金属製であることが好ましい。前記金属としては、とくに限定されないが、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、およびアルミニウム合金からなる群より選択される少なくとも1つを用いることが好ましく、中でもアルミニウムまたはアルミニウム合金製であることが好ましい。
【0028】
(熱電発電モジュール)
本発明の熱電発電装置は、前記受熱板と前記冷却板の間に配置された熱電発電モジュールを備えている。すなわち、熱電発電モジュールの高温側に受熱板が、低温側に冷却板が設置されている。
【0029】
熱電発電装置1つ当たりの熱電発電モジュールの数は特に限定されず、1つであってもよく、複数であっても良い。言い換えると、一組の受熱板と冷却板との間には、1または複数の熱電発電モジュールを備えることができる。複数の熱電発電モジュールを使用する場合には、それらの熱電発電モジュールを固定用部材により一体に固定してもよい。
【0030】
そして、前記熱電発電モジュールは、下記(1)~(6)を備えている。
(1)対向する一対の絶縁基板
(2)前記一対の絶縁基板の間に挟持された複数の熱電発電素子
(3)前記一対の絶縁基板の間に挟持され、前記一対の絶縁基板の外周を封止する外周封止枠
(4)前記熱電発電素子に接続された端子部
(5)前記端子部に接続され、前記一対の絶縁基板のうちの前記冷却板側の絶縁基板と前記冷却板とを貫通して設けられたリード部材
(6)前記リード部材、前記冷却板、および前記冷却板側の絶縁基板のうち、少なくとも2つの間に形成される隙間を封止する封止部材
【0031】
(1)絶縁基板
熱電発電素子と、上記受熱板および冷却板との間の絶縁を確保するために、熱電発電モジュールには一対の絶縁基板が備えられており、熱電発電素子は前記一対の絶縁基板の間に挟持される。前記絶縁基板は、該絶縁基板に接している各部材(熱電発電素子、受熱板、冷却板、外周封止枠など)の間の、面方向における熱膨張の差を吸収する機能も有している。
【0032】
前記絶縁基板としては、絶縁性を有する基板であれば任意のものを用いることができる。前記絶縁基板は、リジッド(硬質)基板であってもよく、フレキシブル基板であってもよいが、熱伝導性の観点からは厚みが薄い方がよいため、シート状のフレキシブル基板であることが好ましい。
【0033】
前記絶縁基板の材質は、セラミックや樹脂など、絶縁性のものであれば任意の材質であってよいが、樹脂であることが好ましい。前記樹脂としては任意のものを用いることができるが、耐熱性の観点からは、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリイミドであることが好ましく、中でもポリイミドであることがより好ましい。
【0034】
(2)熱電発電素子
熱電発電素子とは、熱電変換素子とも呼ばれる素子であり、熱を電力に変換する機能を有している。具体的には、熱電発電素子の一方の面と他方の面との間に温度差を形成することにより起電力が発生する。
【0035】
前記熱電発電素子としては、特に限定されることなく熱電発電の機能を持った素子であれば任意のものを使用できる。一般的な熱電発電素子は、一組のp型半導体とn型半導体を組み合わせた構造を有している。前記熱電発電素子としては、例えば、BiTe系、PbTe系、Si-Ge系、シリサイド系、スクッテルダイト系、遷移金属酸化物系、亜鉛アンチモン系、ホウ素化合物、クラスレート化合物、クラスタ固体、酸化亜鉛系、カーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも1つの材料を用いることができる。
【0036】
一般的に、熱電発電素子1つあたりの起電力は小さいため、熱電発電モジュールには、複数の熱電発電素子が使用される。使用する熱電発電素子の数は特に限定されず、必要な電力に応じて決定すればよい。熱電発電モジュール1つ当たりの熱電発電素子の数が少なすぎると、必要な発電量を確保するために多数の熱電発電モジュールが必要となる。そのため、熱電発電モジュール1つ当たりの熱電発電素子の数は2000以上とすることが好ましい。一方、熱電発電モジュールに含まれる一部の素子が破損しただけで当該熱電発電モジュールが機能しなくなるリスクがあることから、熱電発電モジュール1つ当たりの熱電発電素子の数は過度に多くないことが望ましく、具体的には6000以下とすることが好ましい。
【0037】
(3)外周封止枠
前記一対の絶縁基板の間には、該一対の絶縁基板の外周を封止する外周封止枠が設けられている。このように絶縁基板の外周を封止することにより、熱電発電モジュールの外周部から内部に水分や鉄粉が侵入することを防止できる。前記外周封止枠は、熱電発電モジュールに備えられている熱電発電素子すべてを取り囲むように、絶縁基板の外縁付近に設ければよい。
【0038】
前記外周封止枠の形状は特に限定されず、枠状であればよい。しかし、絶縁基板の形状が矩形である場合、熱電発電素子を実装する空間を広くするという観点からは、外周封止枠の形状も矩形であることが好ましい。なお、ここで外周封止枠の形状とは、絶縁基板と垂直な方向から熱電発電モジュールを見た際の外周封止枠の形状を指すものとする。
【0039】
前記外周封止枠の断面形状についても特に限定されず、任意の形状であってよい。例えば、断面形状は矩形であってもよく、円形であってもよい。断面形状が円形である外周封止枠としては、例えば、Oリングを使用することもできる。
【0040】
前記外周封止枠の材質は特に限定されず、例えば、樹脂、セラミック、金属など、各種の材料を用いることができる。樹脂を用いる場合には、使用環境に応じた耐熱性を有する樹脂を用いればよい。また、前記金属としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、および鋼からなる群より選択される少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0041】
(4)端子部
上記熱電発電素子には端子部が接続されており、該端子部を介して後述するリード部材が接続される。前記端子部としては、熱電発電素子とリード部材とを電気的に接続できるものであれば任意のものを使用できる。典型的には、熱電発電素子の間を接続するために使用される電極と同じ材質を用いることが好ましい。
【0042】
(5)リード部材
上記熱電発電モジュールは、熱電発電素子によって発電された電力を取り出すためのリード部材を備えている。本発明では、前記リード部材が、前記一対の絶縁基板のうちの前記冷却板側の絶縁基板と前記冷却板とを貫通するように設置される。前記端子部および前記リード部材は、熱電発電モジュールの正極側と負極側にそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0043】
前記リード部材としては、撚り線のケーブルを使用することもできるが、金属棒を使用することが好ましい。前記金属棒の形状は特に限定されず、例えば、四角柱状であってもよいが、封止部材による封止のしやすさの観点からは円柱状であることが好ましい。
【0044】
前記リード部材は、前記端子部に接続される側の先端に、外側につば状に広がったフランジ部を備えることが好ましい。言い換えると、前記リード部材は、リード部材本体部と、前記リード部材本体部の端子部に接続される側の先端に接続され、前記リード部材本体部よりも大きい径を有する円盤状部分を備えることが好ましい。このような形状とすることにより、リード部材が熱電発電モジュールから抜けることを防止できる。
【0045】
前記リード部材は冷却板を貫通するように設けられる。すなわち、前記冷却板にはリード部材を取り付けるための貫通孔が設けられており、前記リード部材は前記貫通孔を通るように設置される。前記リード部材と前記冷却板の貫通孔の間には、絶縁材を充填することが好ましい。絶縁材を充填することにより、前記リード部材と前記冷却板との間を絶縁することに加え、水分や鉄粉の侵入の防止効果をさらに高めることができる。前記絶縁材としては、典型的には樹脂を用いることができ、リード部材と前記冷却板の貫通孔の間に流し込んだ後に硬化する接着剤を使用することも好ましい。
【0046】
(6)封止部材
本発明においては、上記リード部材を取り付けた箇所からの水分や鉄粉の侵入を防止するために封止部材を設ける。前記封止部材は、前記リード部材、前記冷却板、および前記冷却板側の絶縁基板のうち、少なくとも2つの間に形成される隙間を封止するように設置する。
【0047】
このように、外周封止枠により絶縁基板の外周部を封止することに加え、リード部材を取り付けた箇所に封止部材を設けることにより、熱電発電モジュール内への水分や鉄粉の侵入を効果的に抑制することができる。
【0048】
前記封止部材は、前記リード部材、前記冷却板、および前記冷却板側の絶縁基板のそれぞれと接触し、前記リード部材、前記冷却板、および前記冷却板側の絶縁基板の間に形成される隙間を封止することが好ましい。
【0049】
前記封止部材としては、例えば、環状の弾性シール部材を用いることが好ましい。前記環状の弾性シール部材としては、断面が矩形のものや円形のものなど、任意の形状のものを使用できるが、Oリングを用いることが好ましい。
【0050】
前記封止部材の材質としては、特に限定されることなく、隙間を封止して水分や鉄粉の侵入を防止できるものであれば任意のものを用いることができる。前記封止部材の材質は、弾性材料であることが好ましく、絶縁性の弾性材料であることがより好ましい。絶縁性の弾性材料としては、典型的には、ゴムを用いることができる。なお、前記ゴムには、エラストマーも包含するものとする。特に耐熱性の観点からは、フッ素ゴムを用いることが好ましく、中でもパーフロロエラストマーを用いることが好ましい。
【0051】
(熱伝導シート)
上記受熱板と熱電発電モジュールの間には、熱伝導シートを設けることが好ましい。また、上記冷却板と熱電発電モジュールの間には、熱伝導シートを設けることが好ましい。熱伝導シートを設けることにより、部材間の熱接触抵抗を低減し、熱電発電効率を向上させることができる。前記熱伝導シートは、受熱板と熱電発電モジュールの間と、冷却板と熱電発電モジュールの間の、いずれか一方のみに設けてもよいが、両方に設けることが好ましい。前記熱伝導シートは、該熱伝導シートに接している各部材(熱電発電モジュール、受熱板、冷却板など)の間の、厚さ方向における熱膨張の差を吸収する機能も有している。
【0052】
前記熱伝導シートとしては、熱電発電モジュールの使用環境下で用いることができるシートであれば特に制限はないが、熱伝導性の観点からは、グラファイトシートを用いることが好ましい。
【0053】
[支持部材]
さらに、前記受熱板と前記冷却板の間に、前記封止部材を支持する支持部材を備えることが好ましい。前記支持部材の設置位置は特に限定されないが、例えば、リード部材と、受熱板側の絶縁基板の間(第一の位置)に設置することが好ましい。また、受熱板側の絶縁基板と、受熱板との間(第二の位置)に設置することも好ましい。前記第一の位置と第二の位置の両方に、それぞれ支持部材を設置することがより好ましい。
【0054】
前記支持部材の材質は特に限定されず、絶縁性、断熱性、耐熱性、強度などの観点からは、セラミック製とすることが好ましい。
【0055】
[熱電発電方法]
本発明の一実施形態における熱電発電方法では、上述した熱電発電装置を製鉄所の製造設備列に取り付け、前記熱電発電装置により熱を電力に変換する。上述したように、製鉄所の製造設備列の周囲は、水分と微細な鉄粉が存在する極めて過酷な環境であり、その結果、漏電が著しく発生しやすい。しかし、上述した構造を有する熱電発電装置を使用することにより、水分や鉄粉が熱電発電装置、特に熱電発電モジュールの内部に侵入することを防止できる。そしてその結果、漏電の発生を防止して、安定して熱電発電を行うことができる。
【0056】
上記製鉄所の製造設備列としては、特に限定されることなく、熱源が存在するものであれば任意の製造設備列を対象とすることができる。特に好適に適用できる製造設備列としては、例えば、連続鋳造ライン、熱間圧延ラインなどが挙げられる。
【0057】
次に、図面を参照して、本発明の熱電発電装置の構造をより具体的に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、いずれも本発明の好適な実施形態の例であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明で使用する図面においては、熱電発電装置のうち、1つのリード部材の周辺構造を示しているが、図示しない他のリード部材の周辺構造も同様とすることが好ましい。
【0058】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態における熱電発電装置1の構造を示す断面模式図である。熱電発電装置1は、対向配置された受熱板10および冷却板20と、両者の間に挟持された熱電発電モジュール30を備えている。
【0059】
熱電発電モジュール30は、対向する一対の絶縁基板31、絶縁基板31の間に挟持された複数の熱電発電素子32、外周封止枠33、端子部34、リード部材35、および封止部材36とを備えている。複数の熱電発電素子32の間は、電極37によって接続されている。また、リード部材35は、略円柱状の金属部材であり、下端には抜け止めのために径が大きくなった円盤状部分を備えている。そして、リード部材35は、端子部34を介して熱電発電素子32に接続されている。
【0060】
外周封止枠33は樹脂製の部材であり、絶縁基板31によって挟む込むことによって固定されている。このように外周封止枠33を設けることにより、熱電発電モジュール30の外周端部から水分や鉄粉などが侵入することを防止できる。
【0061】
また、受熱板10と熱電発電モジュール30の間には、熱伝導シート40が設けられており、同様に、冷却板20と熱電発電モジュール30の間にも、熱伝導シート40が設けられている。このように熱伝導シート40を用いることにより、熱を伝わりやすくし、それにより発電効率を向上させることができる。
【0062】
図1に示した例では、封止部材36はOリングであり、リード部材35、冷却板20、および冷却板20側の絶縁基板31の3者と接触するように設置されており、これにより、リード部材35、冷却板20、および冷却板20側の絶縁基板31の間の隙間を封止している。このように封止部材36を配置することにより、リード部材35の取り付けのために絶縁基板31に設けられた貫通孔から水分や鉄粉が侵入することを、極めて効果的に防止できる。
【0063】
さらに、
図1に示した例では、リード部材35と、冷却板20に設けられた貫通孔との間の隙間に、絶縁材50が設けられている。絶縁材50は、樹脂(接着剤)を隙間に充填し、硬化させたものである。このように隙間に絶縁材50を充填することによっても水分などの侵入を防止する効果があると期待される。しかし、樹脂を充填するという方法では完全に隙間を埋めることが難しく、どうしても隙間が残ってしまう。そのため、製鉄所の製造設備列のような過酷な環境下における水分や鉄粉の侵入をより確実に防止するという観点からは、
図1に示すように、絶縁材50と、封止部材36とを併用することが極めて効果的である。その場合、封止部材36を設置した状態で絶縁材50を充填すればよい。
【0064】
(第二の実施形態)
図2は、本発明の第二の実施形態における熱電発電装置1の構造を示す断面模式図である。本実施形態における熱電発電装置1は、上述した第一の実施形態における熱電発電装置と同様の構成に加え、さらに受熱板10と冷却板20との間の空間に第1の支持部材61と第2の支持部材62を備えている。
【0065】
より具体的には、第1の支持部材61は、リード部材35と、受熱板10側の絶縁基板31の間(第一の位置)に設置されており、第1の支持部材61の上面がリード部材35の下面に、第1の支持部材61の下面は受熱板10側の絶縁基板31の上面に、それぞれ接している。このようにリード部材35の下部に支持部材を設置して、絶縁基板31との間の隙間をなくすことにより、リード部材35の位置が下方へずれることを防止できる。また、封止部材36による封止効果を高めるためには上下方向(受熱板10と冷却板20を熱電発電モジュール30に向かって押さえつける方向)に圧力を掛けることが望ましいが、第1の支持部材61があることにより無理なく圧力を掛けることができる。
【0066】
なお、
図2に示した例では、第1の支持部材61は、上面にリード部材35を受けるための凹部を備えた凹型形状を有している。このような形状とすることにより、第1の支持部材61の位置がずれることを防止できる。ただし、第1の支持部材61の形状は凹型形状に限定されず、例えば、単なる板状などであってもよい。
【0067】
また、第2の支持部材62は、受熱板10側の絶縁基板31と、受熱板10との間の(第二の位置)に設置されており、第2の支持部材62の上面が受熱板10側の絶縁基板31の下面に、第2の支持部材62の下面は受熱板10の上面に、それぞれ接している。第1の支持部材61と同様、このように第2の支持部材62を設置して、絶縁基板31と受熱板10との間を埋めることにより、無理なく圧力を掛けることができる。
【0068】
第1の支持部材61および第2の支持部材の材質は特に限定されないが、セラミック製とすることが好ましい。第1の支持部材61の材質と第2の支持部材の材質とは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0069】
なお、第2の支持部材62を使用する場合、熱伝導シート40は、第2の支持部材62が存在しない部分に設ければよい。
【0070】
(第二の実施形態の変形例)
次に、
図3を参照して、上記第二の実施形態の変形例について説明する。なお、
図3(a)~(c)では、第2の支持部材62の周辺部のみを示しているが、省略された他の部分の構造については
図2に示した第2の実施形態と同様とすることができる。
【0071】
図2に示した上記第2の実施形態では、第2の支持部材62が1枚の板状の部材であったが、
図3(a)に示した変形例では、間隔をあけて配置された複数の部材によって第2の支持部材62が構成されている。前記各部材は、断面が矩形の棒状部材であり、長手方向が
図3の紙面に垂直な方向となるように配置されている。そして、前記各部材は、一定の間隔をあけて等間隔に配置されているため、各部材間には何も設置されていない空間が存在する。
【0072】
このように空間を設けることにより、受熱板10から絶縁基板31側への熱の伝達を抑制することができる。すなわち、第2の支持部材62の上方には第1の支持部材61やリード部材35が設置されているため、熱電発電素子32は存在せず、したがって、第2の支持部材62を通じて絶縁基板31側へ伝達された熱は有効に活用されない。そこで、
図3に示すような空間を有する構造の第2の支持部材62を用いて第2の支持部材62を通じた熱の伝達を抑制することにより、相対的に、熱電発電素子32が存在する部分に伝わる熱エネルギーを増加させ、発電効率を向上させることができる。
【0073】
第2の支持部材62を構成する部材の形状は、
図3(a)のような断面矩形の棒材に限定されず、例えば、
図3(b)に示すような断面V字型の部材なども使用できる。この例では、断面V字型の複数の棒状部材を、V字の頂点が上になるように間隔をあけて配置している。このような形状とすることにより、第2の支持部材62と受熱板10および絶縁基板31との接触面積を低減し、熱伝導を抑制することができる。また、V字型とすることで内部に空間が形成され、それによってさらに熱伝導を抑制することができる。
【0074】
また、第2の支持部材62は、
図3(a)、(b)に示したような複数の棒状部材と、板状部材との組み合わせであってもよい。例えば、
図3(c)に示す例では、第2の支持部材62が、
図3(b)に示したものと同様の断面V字型の複数の棒状部材62aと、板状部材62bとで構成されている。
【符号の説明】
【0075】
1 熱電発電装置
10 受熱板
20 冷却板
30 熱電発電モジュール
31 絶縁基板
32 熱電発電素子
33 外周封止枠
34 端子部
35 リード部材
36 封止部材
37 電極
40 熱伝導シート
50 絶縁材
61 第1の支持部材
62 第2の支持部材
62a 棒状部材(第2の支持部材)
62b 板状部材(第2の支持部材)