(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103395
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】熱電発電装置および熱電発電方法
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20240725BHJP
H10N 10/17 20230101ALI20240725BHJP
H10N 10/13 20230101ALI20240725BHJP
B22D 11/12 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
H02N11/00 A
H10N10/17 Z
H10N10/13
B22D11/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007688
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100195785
【弁理士】
【氏名又は名称】市枝 信之
(72)【発明者】
【氏名】黒木 高志
(72)【発明者】
【氏名】堤 康一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 純仁
(57)【要約】
【課題】製鉄所の製造設備列において熱電発電を行う際の漏電の発生を長期間にわたって安定的に防止する。
【解決手段】製鉄所の製造設備列に取り付けて使用される熱電発電装置であって、受熱板と、前記受熱板に対向する冷却板と、前記受熱板と前記冷却板の間に配置された熱電発電モジュールと、前記熱電発電モジュールを囲うように前記受熱板と前記冷却板の間に環状に配置された封止部材とを備える熱電発電装置であって、前記受熱板が、前記受熱板の外周部における温度を相対的に低くする低温化手段を備える、熱電発電装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄所の製造設備列に取り付けて使用される熱電発電装置であって、
受熱板と、
前記受熱板に対向する冷却板と、
前記受熱板と前記冷却板の間に配置された熱電発電モジュールと、
前記熱電発電モジュールを囲うように前記受熱板と前記冷却板の間に環状に配置された封止部材とを備える熱電発電装置であって、
前記受熱板が、前記受熱板の外周部における温度を相対的に低くする低温化手段を備える、熱電発電装置。
【請求項2】
前記低温化手段は、前記受熱板の外周部の放射率を相対的に低くするよう構成されている、請求項1に記載の熱電発電装置。
【請求項3】
前記低温化手段は、前記受熱板の外周部以外の部分に黒色Niめっきを設け、前記外周部には黒色Niめっきを設けないことにより前記外周部の放射率を相対的に低くするよう構成されている、請求項2に記載の熱電発電装置。
【請求項4】
前記低温化手段は、前記外周部の表面粗さを相対的に小さくすることにより前記外周部の放射率を相対的に低くするよう構成されている、請求項2に記載の熱電発電装置。
【請求項5】
前記低温化手段は、前記受熱板のうち、前記熱電発電モジュールが設けられていない部分の放射率を、前記熱電発電モジュールが設けられている部分よりも低くするよう構成されている、請求項2~4のいずれか一項に記載の熱電発電装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の熱電発電装置を製鉄所の製造設備列に取り付け、
前記熱電発電装置により熱を電力に変換する、熱電発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所の製造設備列に取り付けて使用される熱電発電装置、および前記熱電発電装置を用いた熱電発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異種の導体または半導体に温度差を与えると、高温部と低温部との間に起電力が生じることは、ゼーベック効果として古くから知られており、このような性質を利用した熱電素子を用いて熱を直接電力に変換する熱電発電装置が実用化されている。
【0003】
熱電発電装置を用いることにより、従来活用されていなかった熱エネルギーを電力として有効利用することができる。そのため、様々な分野で熱電発電装置の利用が進められている。
【0004】
例えば、本発明者らは、製鉄所の製造設備列において熱電発電装置を用いることを提案してきた(特許文献1~3)。製鉄所においては、製銑、製鋼、鋳造、熱間圧延、熱処理など、高温で行われる様々なプロセスが実施されているため、それらのプロセスで発生する余剰の熱を電力に変換することができれば、省エネルギーおよびCO2排出量の低減に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-203301号公報
【特許文献2】特開2018-058082号公報
【特許文献3】特開2017-119308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、実際に製鉄所の製造設備列において熱電発電を行おうとすると、漏電が発生しやすいという問題があることが分かった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、製鉄所の製造設備列において熱電発電を行う際の漏電の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を行った結果、漏電の原因が、熱電発電装置、特に熱電発電モジュール内部への水分および鉄粉(酸化鉄粉を含む)の侵入にあることを突き止めた。
【0009】
すなわち、製鉄所においては、様々なプロセスが高温で行われるのみならず、被処理物や製造設備の冷却のために冷却水が使用されることがある。例えば、連続鋳造工程においては、高温の鋼スラブに接するローラーを冷却するために冷却水が使用される。その場合、製造設備列に設置された熱電発電装置は、高温に加え、水蒸気に晒されることになる。そしてその結果、水分が熱電発電装置の内部に侵入し、短絡の原因となることが分かった。
【0010】
加えて、製鉄所の製造設備列の周辺には製造プロセスに起因する粉塵(ダスト)が不可避的に存在する。そして、前記粉塵の主成分は、被処理物である鉄鋼に由来する鉄粉であ
る。前記鉄粉は非常に微細であるため、熱電発電装置の内部に侵入し、短絡の原因となることが分かった。なお、前記鉄粉の多くは酸化されて酸化鉄となっている。酸化鉄は金属鉄に比べると電気を通しにくいものの、完全な絶縁体ではなく、例えば、ウスタイトでは30Ω-1cm-1程度、マグネタイトでは250Ω-1cm-1程度の電気伝導度を有している。そのため、鉄粉が熱電発電装置の内部に侵入すると漏電の原因となり得る。また、微細な鉄粉(酸化鉄粉)が熱電発電装置の内部に侵入すると、該鉄粉の周囲に水分が凝集、保持されやすくなるため、相乗的に漏電のリスクが高まるものと考えられる。
【0011】
このように、製鉄所の製造設備列の周囲は、水分と微細な鉄粉が存在する極めて過酷な環境であり、その結果、漏電が著しく発生しやすいことが分かった。
【0012】
本発明は上記知見を元に完成されたものであり、その要旨は、次の通りである。
【0013】
1.製鉄所の製造設備列に取り付けて使用される熱電発電装置であって、
受熱板と、
前記受熱板に対向する冷却板と、
前記受熱板と前記冷却板の間に配置された熱電発電モジュールと、
前記熱電発電モジュールを囲うように前記受熱板と前記冷却板の間に環状に配置された封止部材とを備える熱電発電装置であって、
前記受熱板が、前記受熱板の外周部における温度を相対的に低くする低温化手段を備える、熱電発電装置。
【0014】
2.前記低温化手段は、前記受熱板の外周部の放射率を相対的に低くするよう構成されている、上記1に記載の熱電発電装置。
【0015】
3.前記低温化手段は、前記受熱板の外周部以外の部分に黒色Niめっきを設け、前記外周部には黒色Niめっきを設けないことにより前記外周部の放射率を相対的に低くするよう構成されている、上記2に記載の熱電発電装置。
【0016】
4.前記低温化手段は、前記外周部の表面粗さを相対的に小さくすることにより前記外周部の放射率を相対的に低くするよう構成されている、上記2に記載の熱電発電装置。
【0017】
5.前記低温化手段は、前記受熱板のうち、前記熱電発電モジュールが設けられていない部分の放射率を、前記熱電発電モジュールが設けられている部分よりも低くするよう構成されている、上記2~4のいずれか一項に記載の熱電発電装置。
【0018】
6.上記1または2に記載の熱電発電装置を製鉄所の製造設備列に取り付け、
前記熱電発電装置により熱を電力に変換する、熱電発電方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱電発電装置を製鉄所の製造設備列で使用する際に、水分や微細な鉄粉の浸入に起因する漏電を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第一の実施形態における熱電発電装置の構造を示す断面模式図である。
【
図2】第一の実施形態における熱電発電装置の全体構造を示す模式図である。
【
図3】第二の実施形態における熱電発電装置の構造を示す断面模式図である。
【
図4】第三の実施形態における熱電発電装置の構造を示す断面模式図である。
【
図5】第四の実施形態における熱電発電装置の構造を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施する方法について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な実施態様の例を示すものであり、本発明は、以下の説明によって何ら限定されるものではない。
【0022】
[熱電発電装置]
本発明の一実施形態における熱電発電装置は、製鉄所の製造設備列に取り付けて使用される熱電発電装置であって、受熱板と、前記受熱板に対向する冷却板と、前記受熱板と前記冷却板の間に配置された熱電発電モジュールと、封止部材とを備えている。
【0023】
(受熱板)
本発明の熱電発電装置は、熱源からの熱を受けるための受熱板を備えている。本発明の熱電発電装置を使用する際には、前記受熱板が熱源側に位置するように熱電発電装置を設置すればよい。熱源からの熱は、受熱板によって受熱された後、熱電発電モジュールの一方の面(高温側)に伝えられる。
【0024】
前記受熱板の材質は特に限定されないが、耐熱性の観点からは、金属、セラミックス、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1つとすることが好ましい。前記金属としては、とくに限定されないが、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、および鋼からなる群より選択される少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0025】
前記受熱板は、該受熱板の外周部における温度を相対的に低くする低温化手段を備える。前記低温化手段については後述する。
【0026】
(冷却板)
本発明の熱電発電装置は、前記受熱板に対向する冷却板を備えている。本発明の熱電発電装置を使用する際には、熱源と反対の側に前記冷却板が位置するように熱電発電装置を設置すればよい。前記冷却板により、熱電発電モジュールの他方の面(低温側)が冷却される。
【0027】
前記冷却板としては、熱電発電モジュールを冷却することができるものであれば任意のものを用いることができる。前記冷却板は、例えば、ヒートシンクおよび熱交換器であってもよいが、冷却効率の観点からは熱交換器であることが好ましい。前記熱交換器としては、例えば、内部に冷却水流路を有する水冷板を用いることができる。前記冷却板がヒートシンクである場合には、冷却効率を高めるために、放熱フィンを備えることが好ましい。
【0028】
前記冷却板の材質は特に限定されないが、熱伝導性の観点からは、金属製であることが好ましい。前記金属としては、とくに限定されないが、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、およびアルミニウム合金からなる群より選択される少なくとも1つを用いることが好ましく、中でもアルミニウムまたはアルミニウム合金製であることが好ましい。
【0029】
(熱電発電モジュール)
本発明の熱電発電装置は、前記受熱板と前記冷却板の間に配置された熱電発電モジュールを備えている。すなわち、熱電発電モジュールの高温側に受熱板が、低温側に冷却板が設置されている。
【0030】
熱電発電装置1つ当たりの熱電発電モジュールの数は特に限定されず、1つであってもよく、複数であっても良い。言い換えると、一組の受熱板と冷却板との間には、1または複数の熱電発電モジュールを備えることができる。複数の熱電発電モジュールを使用する
場合には、それらの熱電発電モジュールを固定用部材により一体に固定してもよい。
【0031】
前記熱電発電モジュールとしては、とくに限定されることなく任意の熱電発電モジュールを使用することができる。以下、本発明において好適に使用できる熱電発電モジュールの構造の一例を説明する。
【0032】
本発明の一実施形態においては、対向する一対の絶縁基板と、前記一対の絶縁基板の間に挟持された複数の熱電発電素子とを備える熱電発電モジュールを使用することができる。
【0033】
(絶縁基板)
熱電発電素子と、上記受熱板および冷却板との間の絶縁を確保するために、熱電発電モジュールには一対の絶縁基板が備えることが好ましい。熱電発電素子は前記一対の絶縁基板の間に挟持される。前記絶縁基板は、該絶縁基板に接している各部材(熱電発電素子、受熱板、冷却板など)の間の、面方向における熱膨張の差を吸収する機能も有している。
【0034】
前記絶縁基板としては、絶縁性を有する基板であれば任意のものを用いることができる。前記絶縁基板は、リジッド(硬質)基板であってもよく、フレキシブル基板であってもよいが、熱伝導性の観点からは厚みが薄い方がよいため、シート状のフレキシブル基板であることが好ましい。
【0035】
前記絶縁基板の材質は、セラミックや樹脂など、絶縁性のものであれば任意の材質であってよいが、樹脂であることが好ましい。前記樹脂としては任意のものを用いることができるが、耐熱性の観点からは、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリイミドであることが好ましく、中でもポリイミドであることがより好ましい。
【0036】
(熱電発電素子)
熱電発電素子とは、熱電変換素子とも呼ばれる素子であり、熱を電力に変換する機能を有している。具体的には、熱電発電素子の一方の面と他方の面との間に温度差を形成することにより起電力が発生する。
【0037】
前記熱電発電素子としては、特に限定されることなく熱電発電の機能を持った素子であれば任意のものを使用できる。一般的な熱電発電素子は、一組のp型半導体とn型半導体を組み合わせた構造を有している。前記熱電発電素子としては、例えば、BiTe系、PbTe系、Si-Ge系、シリサイド系、スクッテルダイト系、遷移金属酸化物系、亜鉛アンチモン系、ホウ素化合物、クラスレート化合物、クラスタ固体、酸化亜鉛系、カーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも1つの材料を用いることができる。
【0038】
一般的に、熱電発電素子1つあたりの起電力は小さいため、熱電発電モジュールには、複数の熱電発電素子が使用される。使用する熱電発電素子の数は特に限定されず、必要な電力に応じて決定すればよい。熱電発電モジュール1つ当たりの熱電発電素子の数が少なすぎると、必要な発電量を確保するために多数の熱電発電モジュールが必要となる。そのため、熱電発電モジュール1つ当たりの熱電発電素子の数は2000以上とすることが好ましい。一方、熱電発電モジュールに含まれる一部の素子が破損しただけで当該熱電発電モジュールが機能しなくなるリスクがあることから、熱電発電モジュール1つ当たりの熱電発電素子の数は過度に多くないことが望ましく、具体的には6000以下とすることが好ましい。
【0039】
また、熱電発電モジュールの面積に対する、熱電素子の占める面積の割合が少ないと、発電効率が低くなる。加えて、熱電素子を介した高温側から低温側への抜熱が低下するた
め、高温側の温度上昇が顕著となる。その結果、高温側の温度が熱電素子の耐熱温度を超え、熱電素子が破損する場合がある。そのため、熱電発電モジュールの面積に対する、熱電素子の占める面積の割合は、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。
【0040】
(外周封止枠)
前記一対の絶縁基板の間には、該一対の絶縁基板の外周を封止する外周封止枠を設けることが好ましい。このように絶縁基板の外周を封止することにより、熱電発電モジュールの外周部から内部に水分や鉄粉が侵入することをさらに確実に防止できる。前記外周封止枠は、熱電発電モジュールに備えられている熱電発電素子すべてを取り囲むように、絶縁基板の外縁付近に設ければよい。
【0041】
前記外周封止枠の形状は特に限定されず、枠状であればよい。しかし、絶縁基板の形状が矩形である場合、熱電発電素子を実装する空間を広くするという観点からは、外周封止枠の形状も矩形であることが好ましい。なお、ここで外周封止枠の形状とは、絶縁基板と垂直な方向から熱電発電モジュールを見た際の外周封止枠の形状を指すものとする。
【0042】
前記外周封止枠の断面形状についても特に限定されず、任意の形状であってよい。例えば、断面形状は矩形であってもよく、円形であってもよい。断面形状が円形である外周封止枠としては、例えば、Oリングを使用することもできる。
【0043】
前記外周封止枠の材質は特に限定されず、例えば、樹脂、セラミック、金属など、各種の材料を用いることができる。樹脂を用いる場合には、使用環境に応じた耐熱性を有する樹脂を用いればよい。また、前記金属としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、および鋼からなる群より選択される少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0044】
(封止部材)
本発明の熱電発電装置は、封止部材を備えている。前記封止部材は、熱電発電モジュールを囲うように前記受熱板と前記冷却板の間に環状に配置されている。
【0045】
前記封止部材が存在しない場合、受熱板と冷却板の間の隙間から熱電発電装置の内部へ水分や鉄粉が侵入するため、漏電が生じやすくなる。そこで、本発明では、受熱板と冷却板の間に、熱電発電モジュールを囲うように環状の封止部材を設けることにより、受熱板と冷却板の間の隙間からの水分や鉄粉の侵入を防止することができる。
【0046】
シール性の観点からは、上記封止部材は、受熱板と冷却板に直接接触していることが好ましい。
【0047】
前記封止部材としては、例えば、環状の弾性シール部材を用いることが好ましい。前記環状の弾性シール部材としては、断面が矩形のものや円形のものなど、任意の形状のものを使用できるが、Oリングを用いることが好ましい。
【0048】
前記封止部材の材質としては、特に限定されることなく、隙間を封止して水分や鉄粉の侵入を防止できるものであれば任意のものを用いることができる。前記封止部材の材質は、弾性材料であることが好ましく、絶縁性の弾性材料であることがより好ましい。絶縁性の弾性材料としては、典型的には、ゴムを用いることができる。なお、前記ゴムには、エラストマーも包含するものとする。特に耐熱性の観点からは、フッ素ゴムを用いることが好ましく、中でもパーフロロエラストマーを用いることが好ましい。
【0049】
なお、上述したように熱電発電モジュールに外周封止枠を設けた場合、上記封止部材と外周封止枠との相乗効果により、熱電発電モジュール内への水分や鉄粉の侵入をさらに効果的に抑制することができる。
【0050】
(熱伝導シート)
上記受熱板と熱電発電モジュールの間には、熱伝導シートを設けることが好ましい。また、上記冷却板と熱電発電モジュールの間には、熱伝導シートを設けることが好ましい。熱伝導シートを設けることにより、部材間の熱接触抵抗を低減し、熱電発電効率を向上させることができる。前記熱伝導シートは、受熱板と熱電発電モジュールの間と、冷却板と熱電発電モジュールの間の、いずれか一方のみに設けてもよいが、両方に設けることが好ましい。前記熱伝導シートは、該熱伝導シートに接している各部材(熱電発電モジュール、受熱板、冷却板など)の間の、厚さ方向における熱膨張の差を吸収する機能も有している。
【0051】
前記熱伝導シートとしては、熱電発電モジュールの使用環境下で用いることができるシートであれば特に制限はないが、熱伝導性の観点からは、グラファイトシートを用いることが好ましい。
【0052】
(締結手段)
本発明の熱電発電装置は、さらに、前記受熱板および前記冷却板を締結する締結手段を備えることが好ましい。前記締結手段によって受熱板と冷却板とを締付けることにより、部材間の密着性が増し、その結果、上述した封止部材や外周封止枠によるシール性をさらに向上させることができる。なお、ここで、「受熱板および冷却板を締結する」とは、受熱板と冷却板とを、互いに近づける方向に力を加えて固定することを意味する。
【0053】
前記締結手段としては、受熱板と冷却板を締結できるものであれば任意のものを用いることができるが、典型的には、前記締結手段は、受熱板と冷却板に挿通されたボルトを備える。また、前記締結手段は、受熱板と冷却板とを互いに近づける方向に付勢する付勢部材を備えることが好ましい。前記付勢部材としては、コイルスプリングを用いることが好ましい。
【0054】
前記締結手段を設ける位置は特に限定されず、任意の位置に設置することができる。熱電発電モジュールとの干渉を避けるという観点からは、熱電発電モジュールが存在しない位置、すなわち、熱電発電モジュールよりも外側に締結手段を設けることが好ましい。しかし、熱電発電モジュールを貫通するように締結手段を設置することもできる。本発明の一実施形態においては、熱電発電装置が、熱電発電モジュールよりも外側に配置された締結手段(第1の締結手段)と、熱電発電モジュールを貫通するように配置された締結手段(第2の締結手段)の両方を備えることができる。
【0055】
熱電発電装置が締結手段を備える場合、封止部材は、前記締結手段の外側に環状に配置することが好ましい。
【0056】
(支持部材)
さらに、前記受熱板と前記冷却板の間に、前記封止部材を支持する支持部材を備えることが好ましい。前記支持部材の設置位置は特に限定されないが、典型的には、受熱板側の絶縁基板と、受熱板との間に設置することができる。
【0057】
前記支持部材の材質は特に限定されず、絶縁性、断熱性、耐熱性、強度などの観点からは、セラミック製とすることが好ましい。
【0058】
[熱電発電方法]
本発明の一実施形態における熱電発電方法では、上述した熱電発電装置を製鉄所の製造設備列に取り付け、前記熱電発電装置により熱を電力に変換する。上述したように、製鉄所の製造設備列の周囲は、水分と微細な鉄粉が存在する極めて過酷な環境であり、その結果、漏電が著しく発生しやすい。しかし、上述した構造を有する熱電発電装置を使用することにより、水分や鉄粉が熱電発電装置、特に熱電発電モジュールの内部に侵入することを防止できる。そしてその結果、漏電の発生を防止して、安定して熱電発電を行うことができる。
【0059】
上記製鉄所の製造設備列としては、特に限定されることなく、熱源が存在するものであれば任意の製造設備列を対象とすることができる。特に好適に適用できる製造設備列としては、例えば、連続鋳造ライン、熱間圧延ラインなどが挙げられる。
【0060】
(低温化手段)
上述したように、本発明の熱電発電装置は、受熱板と冷却板の間に、熱電発電モジュールを囲うように環状に配置された封止部材を備えている。前記封止部材を設けることにより、受熱板と冷却板の間の隙間からの水分や鉄粉の侵入を防止することができる。
【0061】
しかし、封止部材を備える熱電発電装置を、実際の製鉄所の製造設備列に取り付けて使用したところ、使用開始直後は漏電の発生を防止できるものの、使用期間が長くなるに従って漏電が発生しやすくなるという問題があった。そこで、本発明者らが原因を調査した結果、高温環境下で長期間使用すると熱により封止部材が劣化して封止機能が低下し、熱電発電モジュール内部への水分や鉄粉の侵入を十分に防止できなくなることが分かった。すなわち、製鉄所では、溶鋼や連続鋳造工程における鋼スラブ等、一般的な工場やプラントなどに比べて高温の熱源が多数存在している。そのため、製鉄所において熱電発電を行う場合、封止部材の劣化が激しい。
【0062】
そこで、本発明では、外周部における温度を相対的に低くする低温化手段を備える受熱板を用いることにより、封止部材の熱による劣化を防止することができる。すなわち、上記封止部材は熱電発電モジュールを囲うように設置されるため、受熱板の外周部に接することになる。そのため、前記低温化手段により受熱板の外周部の温度を相対的に低くすれば、封止部材に伝わる熱が減少し、劣化が抑制される。
【0063】
このように、低温化手段を備える受熱板と、封止部材とを併用することにより、製鉄所の製造設備列において熱電発電を行う際の漏電の発生を、長期間にわたって安定して防止することが可能となる。
【0064】
前記低温化手段としては、受熱板の外周部における温度を相対的に低くすることができるものであれば任意の手段を用いることができる。前記低温化手段は、外周部における温度を低くする手段であってもよく、外周部以外の領域(以下、便宜的に中央部という)における温度を高くすることによって相対的に外周部における温度を低くする手段であってもよい。
【0065】
本発明の一実施形態においては、前記低温化手段は、受熱板の外周部の放射率を相対的に低くするよう構成されていてもよい。この場合、前記低温化手段は、外周部における放射率を低くする手段であってもよく、外周部以外の領域(中央部)における放射率を高くすることによって相対的に外周部における放射率を低くする手段であってもよい。
【0066】
受熱板の外周部の放射率を相対的に低くすることにより、熱源からの輻射熱による外周部の温度上昇を抑制することができ、その結果、封止部材の劣化を抑制することができる
。
【0067】
なお、中央部における放射率を高くすることによって相対的に外周部における放射率を低くした場合、外周部における受熱効率は低温化手段が存在しない場合と同じである。しかし、中央部における受熱効率が高いことから、熱源からの距離を大きくしても発電量を維持することができる。したがって、熱源からの距離を大きくすることにより、発電量を落とすことなく外周部の温度を低下させることができる。
【0068】
例えば、前記低温化手段は、前記受熱板の外周部以外の部分に黒色Niめっきを設け、前記外周部には黒色Niめっきを設けないことにより前記外周部の放射率を相対的に低くするよう構成されていることが好ましい。言い換えると、本発明の熱電発電装置は、外周部以外の部分に選択的に黒色Niめっきが形成された受熱板を備えることが好ましい。
【0069】
放射率を高くするための方法としては、例えば、黒色Niめっき以外にも、黒色塗装や黒アルマイト処理などの方法がある。しかし、黒色Niめっきは、他の方法に比べて耐熱性と耐久性に優れることに加え、基材の種類によらず適用することができるため、極めて好適に用いることができる。
【0070】
前記黒色Niめっきは、受熱板の、少なくとも、熱源側(冷却板と反対側)の面に設ければよい。受熱板の、側面および冷却板側の面については、必ずしも黒色Niめっきを設ける必要は無いが、設けてもよい。側面および冷却板側の面に黒色Niめっきを設けない場合には、めっき前にそれらの面にマスキングを施し、めっき後に前記マスキングを除去する作業が必要となる。しかし、これらの面に黒色Niめっきを設ける場合にはマスキング工程が不要となるため、製造が容易となる。
【0071】
前記受熱板の外周部以外の部分に黒色Niめっきを設ける方法はとくに限定されず、任意の方法を用いることができる。例えば、受熱板の外周部をマスキングした状態でめっきを行って、受熱板の中央部に選択的に黒色Niめっき皮膜を形成してもよい。また、受熱板の全面に黒色Niめっきを施した後に、外周部の黒色Niめっき皮膜を研削などの方法により除去し、基材である受熱板の金属表面を露出させてもよい。
【0072】
前記黒色Niめっきは、電解めっき、無電解めっきを問わず、任意のめっき法で形成することができる。電解めっきを使用する場合、典型的には、前記黒色Niめっき皮膜はNi-Zn合金めっきであってよい。また、無電解めっきを使用する場合、前記黒色Niめっき皮膜は、Ni-Pめっき皮膜であってよい。めっき処理によりNiめっき皮膜を形成した後に、黒色化処理を行って黒色Niめっき皮膜とすることもできる。前記黒色化処理の方法は特に限定されないが、酸などを用いた酸化処理を利用することができる。
【0073】
前記黒色Niめっき皮膜の厚さはとくに限定されないが、10~20μmとすることが好ましく、15±1.5μm(すなわち、13.5~16.5μm)とすることがより好ましい。
【0074】
また、他の実施形態においては、前記低温化手段が、前記外周部の表面粗さを相対的に小さくすることにより前記外周部の放射率を相対的に低くするよう構成されていてもよい。表面粗さを制御する方法は特に限定されず、ショットブラスト、研磨、研削など、任意の方法を1つまたは複数組み合わせて用いることができる。例えば、外周部の表面粗さを相対的に小さくするために、外周部を研磨してもよく、反対に、中央部を粗面化してもよく、その両方を行ってもよい。また、受熱板の製造に用いる素材の元の表面粗さが大きい場合には、ブラストなどの処理によって外周部の表面粗さを低減してもよい。例えば、外周部と中央部のそれぞれに異なる条件でショットブラストを施して、前記外周部の表面粗
さを中央部より小さくしてもよい。
【0075】
本実施形態では、受熱板外周部の表面粗さを、外周部以外の部分(中央部)における表面粗さよりも相対的に小さくすることが重要である。そのため、外周部および中央部それぞれの表面粗さはとくに限定されない。例えば、中央部の算術平均粗さRaが5.0μm以上である場合、外周部の算術平均粗さRaは5.0μm未満とすればよい。外周部の算術平均粗さRaの下限はとくに限定されないが、例えば、0.1μm以上であってよい。一方、中央部の算術平均粗さRaの上限についてもとくに限定されないが、例えば、15μm以下であってよい。
【0076】
一例として、銅製の受熱板を2つ用意し、ショットブラストにより一方の受熱板の算術平均粗さRaを10μm、他方の受熱板の算術平均粗さRaを1μmとした。これらの受熱板を、同じ熱源を用いて輻射加熱し、それぞれにおける入熱量を測定した。前記入熱量の測定に際しては、受熱板の熱源側の表面温度は、非接触式温度計により測定し、それ以外の部分における温度は熱電対により測定した。その結果、算術平均粗さRaが1μmである受熱板における入熱量は、算術平均粗さRaが10μmである受熱板における入熱量の約81%であった。この結果からも、表面粗さを調整することにより放射率(すなわち熱吸収率)を効果的に制御できることが分かる。
【0077】
上述したように、低温化手段により受熱板外周部の放射率を低下させることで封止部材の劣化を抑制できる。しかし、熱電発電モジュールが設けられている部分まで放射率を低くしてしまうと発電効率が低下する。そこで、前記低温化手段は、前記受熱板のうち、前記熱電発電モジュールが設けられていない部分の放射率を、前記熱電発電モジュールが設けられている部分よりも低くするよう構成されていることが好ましい。
【0078】
低温化手段によって温度を相対的に低下させる領域(以下、「低温化領域」という)の面積はとくに限定されない。しかし、低温化領域の面積が大きすぎると受熱板で受けることができる熱エネルギーが低下し、その結果、発電効率の低下が顕著となる。そのため、受熱板の面積に対する、低温化領域の面積の割合は、40%以下であることが好ましい。一方、受熱板の面積に対する、低温化領域の面積の割合が小さすぎると、封止部材の劣化を抑制する効果が低くなる。そのため、封止部材の劣化抑制効果をさらに高めるという観点からは、受熱板の面積に対する、低温化領域の面積の割合を26%以上とすることが好ましく、36%以上とすることが好ましい。
【0079】
次に、図面を参照して、本発明の熱電発電装置の構造をより具体的に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、いずれも本発明の好適な実施形態の例であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0080】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態における熱電発電装置1の構造を示す断面模式図である。熱電発電装置1は、対向配置された受熱板10および冷却板20と、両者の間に挟持された熱電発電モジュール30を備えている。
【0081】
熱電発電モジュール30は、対向する一対の絶縁基板31と、絶縁基板31の間に挟持された複数の熱電発電素子32とを備えている。複数の熱電発電素子32の間は、電極33によって接続されている。
【0082】
受熱板10と熱電発電モジュール30の間には、熱伝導シート40が設けられており、同様に、冷却板20と熱電発電モジュール30の間にも、熱伝導シート40が設けられている。このように熱伝導シート40を用いることにより、熱を伝わりやすくし、それによ
り発電効率を向上させることができる。
【0083】
さらに、受熱板10と冷却板20との間には、環状の封止部材50が配置されている。本実施形態では、封止部材50が、受熱板10の上面および冷却板20の下面と直接接触し、かつ、熱電発電モジュール30を囲むように熱電発電装置1の外縁部に設けられている。このように、封止部材50を設けることにより、外部からの水分や鉄粉の侵入を防止することができる。
【0084】
本実施形態における封止部材50は、
図1に示したように断面が略矩形の弾性シール部材(パッキン)であるが、上述したように封止部材50としてOリングを使用することも好ましい。受熱板10の上面および冷却板20の下面の一方または両方には、封止部材50を設置するための溝を備えていてもよい。前記溝の深さは、封止部材50の高さ(Oリングの場合、直径)未満とする。
【0085】
図2は、
図1に示した熱電発電装置1の全体を示す模式図であり、上段が断面構造を、下段が受熱板10の下面(熱源側の面)の構造を、それぞれ示している。
【0086】
受熱板10の下面には、受熱板10の外周部の温度を相対的に低くする低温化手段が設けられている。この例では、受熱板の外周部以外の領域である中央部11には黒色Niめっきが設けられており、反対に、外周部12には黒色Niめっきが設けられておらず、受熱板10を構成する金属基材が露出した状態となっている。封止部材50は受熱板10の外周部12に対応する位置に設置されているため、低温化手段の働きにより劣化が防止される。一方、黒色Niめっきが設けられている中央部11の面積は、熱電発電モジュール30の面積と同じか、それ以上である。そのため、中央部11から熱電発電モジュール30に伝わる熱の量が低下することはなく、したがって発電効率は維持される。
【0087】
なお、この例では受熱板10の中央部11に黒色Niめっきを設けているが、低温化手段としては黒色Niめっきに限らず任意の手段を用いることができる。例えば、先にも述べたように外周部12の表面粗さを中央部11よりも低くすることにより外周部12を相対的に低温化してもよい。
【0088】
また、
図2に示した例では、受熱板10の形状が正方形であるが、受熱板10の形状はとくに限定されず、任意の形状であってよい。ただし、製造しやすさや、設置しやすさ、面積の有効活用の観点からは、受熱板の形状は矩形とすることが好ましい。
【0089】
さらに、
図2に示した例では、受熱板10の中心に対して対象に中央部11および外周部12が配置されている。言い換えると、受熱板10の各辺における外周部12の幅が等しい構造となっている。しかし、外周部12の寸法は、熱電発電モジュール30の配置に応じて任意に選択することができる。例えば、熱電発電モジュール30が受熱板10に対して非対称に配置されている場合、中央部11および外周部12も、それに合わせて非対称な配置とすることができる。
【0090】
なお、外周部の面積は、とくに限定されず、熱電発電装置の構造や発電効率などを考慮して決定すればよい。しかし、封止部材の熱による劣化を防止する効果をさらに高めるという観点からは、外周部の面積を、受熱板の面積の20%以上とすることが好ましく、26%以上とすることがより好ましく、36%以上とすることがさらに好ましい。一方、外周部の面積が大きすぎると、受熱板での受熱効率が低下し、その結果、最終的な発電効率も低下する。そのため、外周部の面積は、40%未満とすることが好ましい。
【0091】
なお、ここで「外周部の面積」とは、低温化手段によって相対的に温度が低くされる部
分の面積を指す。例えば、前記低温化手段として、受熱板の中央部に黒色Niめっきを設けている場合は、黒色Niめっきが設けられていない部分の面積を指す。また、前記低温化手段として、外周部の表面粗さを相対的に低くしている場合は、表面粗さが低くなっている領域の面積を指す。
【0092】
外周部の面積率の影響をみるために、2つの熱電発電装置を用意し、封止部材の耐久性を評価した。前記2つの熱電発電装置は、いずれも、低温化手段として黒色Niめっきを中央部に有する受熱板を備えており、外周部の面積が、一方は74%、他方が64%である点を除きすべて同じ構造、材質である。前記熱電発電装置に対して、次の(1)、(2)を交互に繰り返す熱負荷試験を実施した。
(1)輻射加熱により受熱板の温度を250℃まで加熱
(2)前記輻射加熱を停止し、室温まで冷却上記熱負荷試験の間、冷却板には流量20L/分で冷却水を流し、低温に保持した。また、熱電発電装置の発電出力線を電子負荷装置に接続し、発電量を計測した。
【0093】
上記試験の結果、外周部の面積が74%の熱電発電装置では約10年相当の耐久性が、外周部の面積が64%の熱電発電装置では約20年相当の耐久性が示された。なお、ここでは、実際に製鉄所において熱電発電を行う際の稼働率などを考慮して、2万サイクルを20年相当とし、耐久性を評価した。前記評価においては、出力が、初期出力の80%を下回った時点で限界だと判断した。
【0094】
一方、低温化手段を設けていない熱電発電装置を用いて同様の試験を行ったところ、封止材の受熱面側の温度が約290℃と高温になり、使用後1ヶ月で封止部材が劣化し、水分が熱電発電モジュール内に侵入して地絡が発生した。これに対して、低温化手段を設けた上記熱電発電装置では、同じ発電出力(165W)で使用した際の封止材の受熱面側の温度は約230℃であった。このように、低温化手段を設けることにより封止部材の温度を下げ、劣化を抑制することができる。
【0095】
(第二の実施形態)
図3は、本発明の第二の実施形態における熱電発電装置1の構造を示す断面模式図である。本実施形態における熱電発電装置1は、上述した第一の実施形態における熱電発電装置と同様の構成に加え、さらに熱電発電モジュール30の一対の絶縁基板31の間に、該一対の絶縁基板31の外周を封止する外周封止枠34を備えている。外周封止枠34は樹脂製または金属製の部材であり、絶縁基板31によって挟む込むことによって固定されている。このように、封止部材50に加えて外周封止枠34を設けることにより、外部からの水分や鉄粉の侵入を、さらに確実に防止することができる。
【0096】
(第三の実施形態)
図4は、本発明の第三の実施形態における熱電発電装置1の構造を示す断面模式図である。本実施形態における熱電発電装置1は、上述した第二の実施形態における熱電発電装置と同様の構成に加え、さらに支持部材60を備えている。
【0097】
より具体的には、支持部材60は、受熱板10側の絶縁基板31と、受熱板10との間に設置されており、支持部材60の上面が受熱板10側の絶縁基板31の下面に、支持部材60の下面は受熱板10の上面に、それぞれ接している。このように支持部材60を設置して、絶縁基板31と受熱板10との間を埋めることにより、外周封止枠34に圧力を掛けやすくなるため、それらの部材による封止効果をさらに向上させることができる。
【0098】
なお、支持部材60は、熱電発電モジュール30の外周を支持するように、枠状に設けることが好ましい。特に、外周封止枠34および支持部材60が、いずれも枠状であり、
熱電発電モジュール30の外周部の対応する位置に配置されることが好ましい。
【0099】
また、支持部材60を使用する場合、熱伝導シート40は、支持部材60が存在しない部分に設ければよい。
【0100】
上記の説明で言及していない部分の構造については
図3に示した第二の実施形態と同様とすることができる。
【0101】
(第四の実施形態)
次に、
図5を参照して、上記第三の実施形態の変形例である第四の実施形態について説明する。なお、以下の説明で言及していない部分の構造については
図4に示した第三の実施形態と同様とすることができる。
【0102】
図4に示した上記第三の実施形態では、支持部材60が断面矩形の部材であったが、
図5に示した第四の実施形態では、断面V字型の部材とした。この例では、断面V字型の棒状部材を、V字の頂点が上になるように受熱板10側の絶縁基板31と、受熱板10との間に設置している。このような形状とすることにより、支持部材60と受熱板10および絶縁基板31との接触面積を低減し、熱伝導を抑制することができる。また、V字型とすることで内部に空間が形成され、それによってさらに熱伝導を抑制することができる。すなわち、支持部材60の上方には外周封止枠34が設置されているため、熱電発電素子32は存在せず、したがって、支持部材60を通じて絶縁基板31側へ伝達された熱は有効に活用されない。そこで、
図5に示すような構造の支持部材60を用いて支持部材60を通じた熱の伝達を抑制することにより、相対的に、熱電発電素子32が存在する部分に伝わる熱エネルギーを増加させ、発電効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0103】
1 熱電発電装置
10 受熱板
11 中央部(外周部以外の領域)
12 外周部
20 冷却板
30 熱電発電モジュール
31 絶縁基板
32 熱電発電素子
33 電極
34 外周封止枠
40 熱伝導シート
50 封止部材
60 支持部材