(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001034
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ガソリン排ガス用途における新規3ゾーン2層TWC触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 35/57 20240101AFI20231226BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20231226BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231226BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20231226BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J35/04 301E
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/28 Q
F01N3/035 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023149397
(22)【出願日】2023-09-14
(62)【分割の表示】P 2020530381の分割
【原出願日】2018-12-07
(31)【優先権主張番号】201711293252.8
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520176441
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ (シャンハイ) ケミカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ウェンジェ・ドン
(72)【発明者】
【氏名】ホンギュ・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ドンシェン・チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤピン・ワン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高変換率及び低背圧を同時にもたらす、確かなエンジンプラットフォームのための改善された触媒コンバータを提供する。
【解決手段】排気ガスを処理するための触媒物品であって、入口端部と、軸方向長さLを有する出口端部と、を含む基材と;入口端部で始まり、軸方向長さLの60~90%にわたって延びている入口触媒層であって、入口触媒層は入口パラジウム成分を含む、入口触媒層と;出口端部で始まり、軸方向長さLの60~90%にわたって延びている出口触媒層であって、出口触媒層は出口ロジウム成分を含む、出口触媒層と;を含み、出口触媒層は入口触媒層と重なり合っている、触媒物品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
入口端部と、軸方向長さLを有する出口端部と、を含む基材と;
前記入口端部で始まり、前記軸方向長さL未満まで延びている入口触媒層であって、前記入口触媒層は入口パラジウム成分を含む、入口触媒層と;
前記出口端部で始まり、前記軸方向長さL未満まで延びている出口触媒層であって、前記出口触媒層は出口ロジウム成分を含む、出口触媒層と;を含み、
前記出口触媒層は前記入口触媒層と重なり合っている、触媒物品。
【請求項2】
前記入口触媒層が、前記軸方向長さLの50~99%にわたって延びている、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
前記出口触媒層が、前記軸方向長さLの50~99%にわたって延びている、請求項1又は2に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記出口触媒層が、前記軸方向長さLの5~90%にわたって前記入口触媒層と重なり合っている、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記出口触媒層が、前記軸方向長さLの40~80%にわたって前記入口触媒層と重なり合っている、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記入口触媒層が、前記入口パラジウム成分以外のPGM金属を本質的に含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記入口層が、最大300g/ft3の前記入口パラジウム成分を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記出口触媒層が、前記出口ロジウム成分以外のPGM金属を本質的に含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記出口層が、1~20g/ft3の前記出口ロジウム成分を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記入口触媒層が、入口酸素吸蔵容量(OSC)材料、入口アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は入口無機酸化物を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記入口OSC材料が、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される、請求項10に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記入口OSC材料が、前記セリア-ジルコニア混合酸化物を含む、請求項11に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記入口パラジウム成分が、前記入口無機酸化物上に担持されている、請求項10~12のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記入口無機酸化物が、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項10~13のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項15】
前記入口無機酸化物が、アルミナ、ランタン/アルミナ複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である、請求項14に記載の触媒物品。
【請求項16】
前記入口アルカリ金属又はアルカリ土類金属が、バリウム又はストロンチウムである、請求項10~15のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記バリウム又はストロンチウムが、前記入口触媒層の総重量に基づいて、前記入口触媒層中に0.1~15重量%の量で存在する、請求項16に記載の触媒物品。
【請求項18】
前記出口触媒層が、出口酸素吸蔵容量(OSC)材料、及び/又は出口無機酸化物を更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項19】
前記出口OSC材料が、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される、請求項18に記載の触媒物品。
【請求項20】
前記出口OSC材料が、前記セリア-ジルコニア混合酸化物を含む、請求項19に記載の触媒物品。
【請求項21】
前記出口無機酸化物が、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ、ランタン、イットリウム、ネオジム、プラセオジム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項18~20のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項22】
前記出口無機酸化物が、アルミナ、ランタナ/アルミナ複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である、請求項21に記載の触媒物品。
【請求項23】
前記基材が、フロースルーモノリス又はウォールフローフィルタである、請求項1~22のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項24】
前記基材が、100mm未満の長さである、請求項1~23のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項25】
前記入口触媒層が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項1~24のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項26】
前記出口触媒層が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項1~25のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、燃焼排気ガスの流れを処理するための排出処理システム。
【請求項28】
内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、前記排気ガスを請求項1~26のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するのに有用な触媒物品に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、炭化水素(HCs)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(「NOx」)などの様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成されている。排気ガス触媒を含む排出制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジン用途に通常使用される触媒は、TWCである。TWCにより、次の3つの主な役割、すなわち、(1)COの酸化、(2)未燃HCの酸化、及び(3)NOxのN2への還元を行う。
【0003】
ほとんどの触媒コンバータでは、TWCは、フロースルーハニカムモノリスなどの高温に耐えることができる高表面積基材上にコーティングされる。これらの基材の大きな表面積は、所望の不均一反応を促進するが、排気背圧の増加、すなわち、エンジンから尾筒への排気ガスの流れの制限の一因となることもある。排気システム内の高い背圧により、エンジンの燃費及び出力が低下することがある。TWC技術、例えば米国特許第6,022,825号、同第9,352,279号、同第9,040,003号、及び米国特許出願公開第2016/0228818号に記載の技術の進展にもかかわらず、高変換率及び低背圧を同時にもたらす、確かなエンジンプラットフォームのための改善された触媒コンバータがなお必要とされている。本発明は、とりわけこれらの問題を解決するものである。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、入口端部と、軸方向長さLを有する出口端部と、を含む基材と;入口端部で始まり、軸方向長さL未満まで延びている入口触媒層であって、入口触媒層は入口パラジウム成分を含む、入口触媒層と;出口端部で始まり、軸方向長さL未満まで延びている出口触媒層であって、出口触媒層は出口ロジウム成分を含む、出口触媒層と;を含み、出口触媒層は入口触媒層と重なり合っている、触媒物品を対象とする。
【0005】
本発明はまた、本発明の三元触媒成分を含む内燃機関のための排気システムも包含する。
【0006】
本発明はまた、内燃機関からの排気ガスの処理、特にガソリンエンジンからの排気ガスの処理も包含する。本方法は、排気ガスを本発明の三元触媒成分と接触させること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】入口触媒層及び出口触媒層を有する触媒物品を示す。入口触媒層は、基材上に直接完全に担持/堆積されている。出口触媒層は、基材上に直接部分的に担持/堆積され、入口触媒層の上部に部分的に担持/堆積されている。
【
図2】入口触媒層及び出口触媒層を有する触媒物品を示す。出口触媒層は、基材上に直接完全に担持/堆積されている。入口触媒層は、基材上に直接部分的に担持/堆積され、出口触媒層の上部に部分的に担持/堆積されている。
【
図3】1つのゾーンを有する基材上に2つの層を有する比較の市販の触媒物品を示す。
【発明の詳細な説明】
【0008】
本発明は、ガソリンエンジン及び他のエンジンによって生成されるものなどの燃焼排気ガスの触媒変換、並びに関連する触媒物品及びシステムに関する。より具体的には、本発明は、車両排気システムにおけるNOx、CO、及びHCの同時処理に関する。本発明者らは、低い背圧を同時に発生させながら、NOx、CO、及びHCのいずれにおいても予想外に高い変換率を生み出す、特定の触媒活性金属とそれらの配置方向との間の相乗関係を発見した。本発明のプロセスはまた、プロセス実行時間を短縮し、触媒のコストを低減する。
【0009】
本開示の一態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、入口端部と、軸方向長さLを有する出口端部と、を含む基材と;入口端部で始まり、軸方向長さL未満まで延びている入口触媒層であって、入口触媒層は入口パラジウム成分を含む、入口触媒層と;出口端部で始まり、軸方向長さL未満まで延びている出口触媒層であって、出口触媒層は出口ロジウム成分を含む、出口触媒層と;を含み、出口触媒層は入口触媒層と重なり合っている、触媒物品を対象とする。
【0010】
本発明の触媒物品は、基材の軸に沿って3つの触媒ゾーン:入口触媒層のみでコーティングされた上流ゾーンと、入口及び出口触媒層の両方でコーティングされた中間ゾーンと、出口触媒層のみでコーティングされた下流ゾーンと、を有することができる。
【0011】
本発明者らは、様々な配置方向を有するこれらの触媒により、触媒性能を改善し背圧を低減することの双方において相乗効果がもたらされることを見出しが、これは触媒を別々に又は従来の配置方向で使用しても達成されなかったことである。本発明の予想外の利点には、同様の濃度(ウォッシュコート担持量)の従来のTWC触媒と比較して背圧が低減されたこと、及び従来のTWCがより高い濃度である場合であっても、従来のTWC触媒と比較して触媒性能が改善されたことがある。これらの利点は、エンジン性能の改善、燃費の改善、及びコストの削減につながる。
【0012】
触媒物品の入口触媒層は、軸方向長さLの50~99%にわたって延びることができる。好ましくは、入口触媒層は、軸方向長さL(例えば、
図1及び
図2を参照)の55~95%、60~90%、より好ましくは65~85%にわたって延びることができる。
【0013】
触媒物品の出口触媒層は、軸方向長さLの50~99%にわたって延びることができる。好ましくは、出口触媒層は、軸方向長さL(例えば、
図1及び
図2を参照)の55~95%、60~90%、より好ましくは65~85%にわたって延びることができる。
【0014】
入口触媒層は、入口パラジウム成分以外のPGM金属を本質的に含まなくてもよい。
【0015】
入口触媒層は、白金及び/又はロジウムなどの入口パラジウム成分以外のPGM金属を含むことができる。入口触媒層は、最大300g/ft3の入口パラジウム又は白金パラジウム成分を含むことができる。好ましくは、入口触媒層は、10~200g/ft3、より好ましくは20~150g/ft3の入口パラジウム又は白金パラジウム成分を含むことができ、白金とパラジウムとの重量比は、60:1~1:60、好ましくは30:1~1:30、より好ましくは10:1~1:10であり得る。
【0016】
入口触媒層は、入口無機酸化物材料、酸素吸蔵容量(OSC)材料、入口アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は入口無機酸化物を更に含むことができる。
【0017】
入口触媒層の総ウォッシュコート担持量は、0.1~5g/in3であり得る。好ましくは、入口触媒層の総ウォッシュコート担持量は、0.5~3.5g/in3であり、最も好ましくは、入口触媒層の総ウォッシュコート担持量は1~2.5g/in3である。
【0018】
入口OSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、入口OSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、LA、Nd、Y、Prなどのいくつかのドーパントを更に含むことができる。
【0019】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアとセリアとのモル比が、少なくとも50:50、好ましくは60:40を超え、より好ましくは75:25を超えることができる。加えて、入口OSC材料は、入口パラジウム成分の担体材料として機能し得る。
【0020】
入口OSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、入口触媒層の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは35~65重量%であり得る。
【0021】
入口触媒層中の入口OSC材料担持量は、1.5g/in3未満であってもよい。いくつかの実施形態では、入口触媒層中の入口OSC材料担持量は、1.2g/in3、1.0g/in3、0.9g/in3、0.8g/in3、0.7g/in3、又は0.6g/in3以下である。
【0022】
いくつかの実施形態では、入口アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、入口OSC材料上に堆積されてもよい。あるいは、又は加えて、入口アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、入口無機酸化物上に堆積されてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、入口アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、入口OSC材料と入口無機酸化物との両方の上に堆積されてもよく、すなわち、その上に存在してもよい。
【0023】
好ましくは、入口アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、入口無機酸化物(例えば、アルミナ)上に担持/堆積されている。入口無機酸化物に接触していることに加えて、又はそれに代えて、入口アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、入口OSC材料及び入口パラジウム成分にも接触していてもよい。
【0024】
入口アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくは、バリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、入口触媒層の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%バリウムの量で存在する。
【0025】
好ましくは、バリウムはBaCO3として存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0026】
入口無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。入口無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、ニオビア、ランタン、ジルコニウム、ネオジム、プラセオジム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、入口無機酸化物は、アルミナ、ランタン/アルミナ複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。特に好ましい入口無機酸化物の1つは、ランタン/アルミナ複合酸化物又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。入口無機酸化物は、入口パラジウム成分のための担体材料、及び/又は入口アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のための担体材料であってもよい。
【0027】
好ましい入口無機酸化物は、好ましくは、80m2/gを超える新たな表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積を有する。100m2/g超の表面積を有する高表面積無機酸化物、例えば高表面積アルミナが特に好ましい。他の好ましい入口無機酸化物としては、ランタン/アルミナ複合酸化物が挙げられ、これは、所望によりセリウム含有成分、例えば、セリアを更に含む。このような場合、セリアは、例えばコーティングとして、ランタン/アルミナ複合酸化物の表面上に存在してもよい。
【0028】
入口OSC材料と入口無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下、最も好ましくは2:1以下の重量比を有してもよい。
【0029】
あるいは、入口OSC材料と入口無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有してもよい。
【0030】
出口触媒層は、出口ロジウム成分以外のPGM金属を本質的に含まなくてもよい。
【0031】
出口触媒層は、1~20g/ft3の出口ロジウム又は白金ロジウム成分を含み得る。好ましくは、出口触媒層は、2~15g/ft3、より好ましくは3~10g/ft3の出口ロジウム又は白金ロジウム成分を含むことができ、白金とロジウムとは、20:1~1:20、好ましくは15:1~1:15、より好ましくは10:1~1:10の重量比であり得る。
【0032】
出口触媒層の総ウォッシュコート担持量は、0.1~3.5g/in3であり得る。好ましくは、出口触媒層の総ウォッシュコート担持量は、0.5~3g/in3であり、最も好ましくは、出口触媒層の総ウォッシュコート担持量は、0.6~2g/in3である。
【0033】
出口触媒層は、出口酸素吸蔵容量(OSC)材料、出口アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は出口無機酸化物を更に含むことができる。
【0034】
出口OSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、出口OSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウムなどのいくつかのドーパントを更に含むことができる。
【0035】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、少なくとも50:50、好ましくは60:40を超え、より好ましくは80:20を超えるジルコニアとセリアとのモル比を有し得る。加えて、出口OSC材料は、出口ロジウム成分の担体材料として機能し得る。
【0036】
出口OSC材料(例えば、バルクセリア)は、出口触媒層の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは35~65重量%であり得る。
【0037】
出口触媒層中の出口OSC材料担持量は、1.5g/in3未満であってもよい。いくつかの実施形態では、出口触媒層中の出口OSC材料担持量は、1.2g/in3、1.1g/in3、又は1.0g/in3以下である。
【0038】
出口アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、出口触媒層の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%バリウムの量で存在する。
【0039】
好ましくは、バリウムはBaCO3として存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0040】
出口触媒層は、好ましくは、出口アルカリ金属又はアルカリ土類金属を実質的に含まない。より好ましくは、出口触媒層は、出口アルカリ金属又はアルカリ土類金属を本質的に含まない。
【0041】
出口無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。出口無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、ニオビア、ランタン、ジルコニウム、ネオジム、プラセオジム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、出口無機酸化物は、アルミナ、ランタン/アルミナ複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。特に好ましい出口無機酸化物の1つは、ランタナ/アルミナ複合酸化物又はマグネシア/アルミナ又はジルコニウム/アルミナ複合酸化物である。出口無機酸化物は、出口ロジウム成分のための担体材料であってもよい。
【0042】
出口OSC材料と出口無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1以下、最も好ましくは3:1以下の重量比を有してもよい。
【0043】
あるいは、出口OSC材料と出口無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4、最も好ましくは3:1~1:3の重量比を有してもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、出口ロジウム成分と入口パラジウム成分とは、60:1~1:60の重量比を有する。好ましくは、出口ロジウム成分と入口パラジウム成分とは、30:1~1:30の重量比を有する。より好ましくは、出口ロジウム成分と入口パラジウム成分とは、20:1~1:20の重量比を有する。最も好ましくは、出口ロジウム成分と入口パラジウム成分とは、15:1~1:15の重量比を有する。
【0045】
本発明の触媒物品は、当業者に知られている更なる成分を含んでもよい。例えば、本発明の組成物は、少なくとも1つの結合剤及び/又は少なくとも1つの界面活性剤を更に含んでもよい。結合剤が存在する場合、分散性アルミナ結合剤が好ましい。
【0046】
好ましくは、基材は、フロースルーモノリス又はウォールフローガソリン微粒子フィルタである。より好ましくは、基材は、フロースルーモノリスである。
【0047】
基材は、長さ100mm未満、好ましくは50~90mmであり得る。
【0048】
フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面とを有し、それらの間に長手方向が画定される。フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面との間に伸びる、複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に伸びており、複数の内側表面(例えば、各チャネルを画定するウォールの表面)を提供する。複数のチャネルの各々は、第1の面にある開口部と、第2の面にある開口部と、を有する。誤解を回避するために、フロースルーモノリス基材はウォールフローフィルタではない。
【0049】
第1の面は、典型的には基材の入口端部にあり、第2の面は基材の出口端部にある。
【0050】
チャネルは一定の幅のものであってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。
【0051】
好ましくは、長手方向に直交する平面内で、モノリス基材は、1平方インチ当たり100~900のチャネル、好ましくは300~750のチャネルを有する。例えば、第1の面上では、開いている第1のチャネル及び閉じた第2のチャネルの密度は、1平方インチ当たり300~750チャネルである。チャネルは、矩形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形形状である断面を有してもよい。
【0052】
モノリス基材は、触媒材料を保持するための担体材料として作用する。モノリス基材を形成するのに好適な材料としては、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウムなどのセラミック様材料、又は多孔質の耐火金属が挙げられる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
【0053】
本明細書に記載のフロースルーモノリス基材は、単一構成要素(すなわち、単一のれんが状塊)であることに留意されたい。それにもかかわらず、排出処理システムを形成する場合、使用されるモノリスは、複数のチャネルを一緒に接着することによって形成されてもよく、又は本明細書に記載のように複数のより小さいモノリスを一緒に接着することによって形成されてもよい。このような技術は、排出処理システムの好適なケーシング及び構成と共に、当該技術分野において公知である。
【0054】
本発明の触媒物品がセラミック基材を含む実施形態では、セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コージライト及びスポジュメンなど)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コージライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0055】
本発明の触媒物品が金属基材を含む実施形態では、金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びに鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを他の痕跡量金属に加えて含有するフェライト合金で作製されていてもよい。
【0056】
図1に示すように、入口触媒層は、基材上に直接完全に担持/堆積されている。出口触媒層は、基材上に直接部分的に担持/堆積され、入口触媒層の上部に部分的に担持/堆積されている。したがって、中間ゾーンは、入口触媒層及び出口触媒層の両方を含む。
【0057】
図2に示すように、出口触媒層は、基材上に直接完全に担持/堆積されている。入口触媒層は、基材上に直接部分的に担持/堆積され、出口触媒層の上部に部分的に担持/堆積されている。したがって、中間ゾーンは、出口触媒層及び入口触媒層の両方を含む。
【0058】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、NOx、CO、及びHCを含有する、車両排気ガスを処理するための方法に関する。本発明に従って作製されたTWCを備えた触媒コンバータは、従来のTWCと比較して改善された又は同等の触媒性能を示すだけでなく、背圧の大幅な改善も示す(例えば、実施例1及び2、並びに表1及び2を参照されたい)。
【0059】
本開示の別の態様は、システムを通じて排気ガスを移送するための導管と共に本明細書に記載される触媒物品を含む車両排気ガスを処理するためのシステムに関する。
【0060】
定義
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野において公知であり、通常は触媒の製造中基材に適用される、接着性コーティングを指す。
【0061】
本明細書で使用するとき、頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、概ね、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir及びPtからなる群から選択される金属を指す。概ね、用語「PGM」は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0062】
本明細書で使用するとき、用語「混合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相にての酸化物の混合物を指す。本明細書で使用するとき、用語「複合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0063】
本明細書で使用される「本質的になる」という表現は、特定の材料又は工程、及び例えば微量不純物など、その特徴の基本特性に実質的に影響を及ぼさない任意の他の材料又は工程を含む特徴の範囲を制限する。「から本質的になる」という表現は、「からなる」という表現を包含する。
【0064】
材料に関して本明細書で使用されるとき、「実質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関連において、材料が少量、例えば、≦5重量%、好ましくは≦2重量%、より好ましくは≦1重量%であることを意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0065】
材料に関して本明細書で使用される「本質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関連において、≦1重量%、好ましくは≦0.5重量%、より好ましくは≦0.1%などの微量の材料を意味する。「本質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0066】
本明細書で使用するとき、重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対する任意の言及は、担持材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
【0067】
本明細書で使用するとき、用語「担持量」は、金属重量基準でのg/ft3の単位の測定値を指す。
【0068】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識することになる。
【実施例0069】
材料
全ての材料は市販されており、別途記載のない限り、既知の供給元から入手した。
【0070】
触媒1(比較)
触媒1は、(例えば、
図3に示されるような)二重層構造を有する市販の三元(Pd-Rh)触媒である。底層は、第1のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、及びBaプロモーターのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約2.2g/in
3であり、Pd担持量は75g/ft
3であった。上層は、第2のCeZr混合酸化物、及びLa安定化アルミナの、ウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は、約1.6g/in
3であり、Rh担持量は5g/ft
3であった。触媒1の総ウォッシュコート担持量は約3.8g/in
3であった。
【0071】
触媒2
触媒2を本発明に従って調製した。底層は、入口CeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、及びBaプロモーターのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約2.2g/in3であり、Pd担持量は75g/ft3であった。上層は、出口CeZr混合酸化物、及びLa安定化アルミナの、ウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は、約1.6g/in3であり、Rh担持量は5g/ft3であった。触媒2(中間ゾーン)の総ウォッシュコート担持量は、約3.8g/in3であった。
【0072】
標準的なコーティング手順を用いて、基材の長さの80%を目標コーティング深さとして、比較触媒1と同じ基材の入口面から、Pdを含有する底層の最終的なスラリーをコーティングし、90℃で乾燥させた。次いで、標準的なコーティング手順を用いて、基材の長さの80%を目標コーティング深さとして、乾燥した底層を含有する基材の出口面から、Rhを含む上層スラリーをコーティングし、次いで90℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0073】
触媒3
触媒3を本発明に従って調製した。底層は、入口CeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、及びBaプロモーターのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約1.9g/in3であり、Pd担持量は75g/ft3であった。上層は、出口CeZr混合酸化物、及びLa安定化アルミナの、ウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は、約1.5g/in3であり、Rh担持量は5g/ft3であった。触媒3(中間ゾーン)の総ウォッシュコート担持量は、約3.4g/in3であった。
【0074】
標準的なコーティング手順を用いて、基材の長さの80%を目標コーティング深さとして、比較触媒1と同じ基材の入口面から、Pdを含有する底層の最終的なスラリーをコーティングし、90℃で乾燥させた。次いで、標準的なコーティング手順を用いて、基材の長さの80%を目標コーティング深さとして、乾燥した底層を含有する基材の出口面から、Rhを含有する上層スラリーをコーティングし、次いで90℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0075】
触媒4
触媒4を本発明に従って調製した。底層は、入口CeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、及びBaプロモーターのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約1.7g/in3であり、Pd担持量は75g/ft3であった。上層は、出口CeZr混合酸化物、及びLa安定化アルミナの、ウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は、約1.3g/in3であり、Rh担持量は5g/ft3であった。触媒4(中間ゾーン)の総ウォッシュコート担持量は、約3.0g/in3であった。
【0076】
標準的なコーティング手順を用いて、基材の長さの80%を目標コーティング深さとして、比較触媒1と同じ基材の入口面から、Pdを含有する底層の最終的なスラリーをコーティングし、90℃で乾燥させた。次いで、乾燥した底層を含む基材の出口面から、標準的なコーティング手順を用いて、基材の長さの80%を目標コーティング深さとして、乾燥した底層を含有する基材の出口面から、Rhを含有する上層スラリーをコーティングし、次いで90℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0077】
実験結果
実施例1
ピーク温度が約980℃で、4モードのエージングサイクルで200時間、比較触媒1及び触媒2~4をベンチエージングした。1.4リットルエンジンを有する商用車両で、車両排出を行った。触媒の前後で排出量を測定した。
【0078】
【0079】
表1に示すように、触媒4は、比較触媒1のように総ウォッシュコート担持量が約80%と低くても、匹敵する又は更に改善された触媒性能を示した(例えば、THC/NMHC排出に関連する改善された性能を参照されたい、触媒4を比較触媒1と比較した場合、0.047/0.031g/km~0.042/0.026g/km、それぞれ11%及び16%改善)。
【0080】
実施例2
比較触媒1、触媒2、及び触媒4を、同じ基材タイプ、cpsi及び寸法でコーティングした後、200、300、400、及び600m3/時の空気流量でのコールドフロー背圧について評価した。
【0081】
比較触媒1、触媒2、及び触媒4について、剥き出し基材上の背圧の上昇百分率を表2に示す。このデータは、マルチゾーン化された触媒4が、触媒1の標準的な2層の実施例よりも、背圧に対する寄与が著しく低いことを示す。
【0082】