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  • 特開-改装建具及び改装建具の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103404
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】改装建具及び改装建具の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/56 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
E06B1/56 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007701
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】井東 克孝
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011JA02
2E011KA01
2E011KB03
2E011KB04
2E011KC02
2E011KC03
2E011KC04
2E011KD14
2E011KF01
(57)【要約】
【課題】施工性を向上できる改装建具を提供すること。
【解決手段】改装建具1は、建物躯体100の開口部に取り付けられる既設枠2と、既設枠2の内周側に取り付けられる新設枠3と、を備え、新設枠3は、新設枠本体310と、新設枠本体310の外周側に配置される新設枠分割部340と、を有し、新設枠分割部340は、室外側部分346を有し、既設枠2に固定され、新設枠3は、室外側部分346の室内側の面に突き当てて配置される。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体の開口部に取り付けられる既設枠と、
前記既設枠の内周側に取り付けられる新設枠と、を備え、
前記新設枠は、新設枠本体と、前記新設枠本体の外周側に配置される新設枠分割部と、を有し、
前記新設枠分割部は、室外側部分を有すると共に、前記既設枠に固定され、
前記新設枠本体は、前記室外側部分の室内側の面に突き当てて配置される、改装建具。
【請求項2】
前記新設枠分割部は、前記既設枠側に突出すると共に前記既設枠の室外側において前記既設枠の室外側の面に沿って配置される室外側突出部を有する、請求項1に記載の改装建具。
【請求項3】
前記新設枠分割部は、既設上枠に設けられ下方に向けて突出する既設上枠ガイドレールに固定される、請求項1又は2に記載の改装建具。
【請求項4】
前記新設枠本体は、室内側に向けて延出する取付部を有しており、前記取付部を貫通する固定部材によって、前記既設枠よりも室内側の前記建物躯体に固定されている、請求項1又は2に記載の改装建具。
【請求項5】
建物躯体の開口部に取り付けられる既設枠に新設枠を取り付ける改装建具の施工方法であって、
前記新設枠は、新設枠本体と、前記新設枠本体の外周側に配置される新設枠分割部と、を有し、
前記新設枠分割部を前記既設枠に固定する新設枠分割部固定工程と、
前記既設枠に固定した前記新設枠分割部の室外側部分の室内側の面に、前記新設枠本体を室内側から室外側に向けて移動させて突き当てて取り付ける新設枠本体取付工程と、を含む改装建具の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改装建具及び改装建具の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部をリフォーム等で改装する場合に、開口部に取り付けられている既設枠の内周側に新設枠を取り付けることが行われている。例えば、特許文献1には、既設枠の内周側に新設枠を対面するように配置させた改装建具が開示されている。
【0003】
改装建具において、新設枠に見付方向の外側に延出する延出板などが設けられる。そのため、新設枠を室内側から既設枠に取り付ける場合に、新設枠の延出板が既設枠に当たってしまうため、新設枠を、傾けながら、室内側から既設枠の開口に挿通させて室外側に一旦出した後に、既設枠側に引き寄せて、既設枠に新設枠に取り付けることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-64432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改装建具において、新設枠を、室内側から既設枠の開口に挿通させて室外側に一旦出した後に、既設枠側に引き寄せて、既設枠に新設枠に取り付けることがある。この場合、例えば、室外側に面格子やシャッター等が設けられていると、新設枠を室内側から既設枠の開口に挿通させて室外側に一旦出すときに、新設枠が面格子やシャッター等に当たってしまうことがあり、施工性が損なわれる可能性がある。そのため、施工性を向上できることが求められている。
【0006】
本開示は、施工性を向上できる改装建具及び改装建具の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、建物躯体の開口部に取り付けられる既設枠と、前記既設枠の内周側に取り付けられる新設枠と、を備え、前記新設枠は、新設枠本体と、前記新設枠本体の外周側に配置される新設枠分割部と、を有し、前記新設枠分割部は、室外側部分を有すると共に、前記既設枠に固定され、前記新設枠本体は、前記室外側部分の室内側の面に突き当てて配置される、改装建具に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る改装建具を室外側から見た正面図である。
図2図1に示す改装建具の上枠部分の縦断面図である。
図3図1に示す改装建具の左側の縦枠部分の横断面図である。
図4A】改装建具の施工方法を示す図であって、既設上枠に新設上枠分割部を固定する状態を示す図である。
図4B】改装建具の施工方法を示す図であって、既設上枠に新設上枠分割部を固定した状態において、新設上枠分割部に新設上枠本体を取り付ける状態を示す図である。
図4C】改装建具の施工方法を示す図であって、新設上枠本体を建物躯体に固定する状態を示す図である。
図4D】改装建具の施工方法を示す図であって、室外側化粧カバー及び室内側化粧部材を取り付ける状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。本実施形態に係る改装建具1は、既設枠2が建物躯体100の開口部に取り付けられた状態で、既設枠2に新設枠3を取り付けるリフォーム用の改装建具である。
【0010】
本明細書において、見込み方向とは、改装建具1における室内外方向に沿う方向である。見付け方向とは、改装建具1における面材の面方向に沿う方向であり、見込み方向に対して直交する方向である。図面において、改装建具1の室外側を「室外側X1」とし、改装建具1の室内側を「室内側X2」とする。改装建具1を正面視したときの横方向を「左右」とする。改装建具1を正面視したときの改装建具1の中央部に向かう方向を「内方」とし、改装建具1の中央部から離れる方向を「外方」とする。
【0011】
本実施形態に示す改装建具1は、木質系の建物躯体100の開口部に納められた引き違い窓タイプの改装サッシである。改装建具1は、既設枠2と、新設枠3と、2枚の障子41,42と、1枚の網戸43と、を有する。既設枠2は、建物躯体100の開口部における上下左右の四周に亘って取り付けられる。新設枠3は、既設枠2の内周側における上下左右の四周に亘って取り付けられる。障子41,42及び網戸43は、新設枠3の内側に左右方向にスライド移動可能に納められる。図1に示すように、室内側X2に配置される障子41には、クレセント錠44が取り付けられている。下枠部分における室外側X1の見付け面の左右両端部には、下枠部分に流入した雨水を排水する排水口329が設けられている。図1において、網戸43は図示を省略している。
【0012】
既設枠2は、図2及び図3に示すように、既設上枠21、既設下枠(図示せず)、及び左右一対の既設縦枠23の4つの枠部材を矩形に四方組みすることによって形成され、改装前の建物躯体100の開口部の内側に取り付けられている。既設上枠21、既設下枠、及び左右一対の既設縦枠23は、それぞれアルミニウム等の金属製または塩化ビニル等の樹脂製の押出形材からなる。既設枠2の室内側には額縁部材101が配置される。額縁部材101は、建物躯体100の開口部の内周面における上下左右の四周に亘って取り付けられ、既設枠2の室内側X2の端面2aから室内側に向けて延びている。四方組みされた既設枠2と建物躯体100の室外側X1に設けられる外壁材102との隙間は、バックアップ材103及びシーリング材104によって四周に亘って目止めされている。
【0013】
既設上枠21は、図2に示すように、建物躯体100の開口部の上部に配置され、開口部における室外側X1に片寄った位置に固定されている。既設上枠21は、それぞれ下方に向けて突出する既設障子用の一対のガイドレール211a、211b(既設上枠ガイドレール)と、既設網戸用のガイドレール211cと、を有する。
【0014】
既設縦枠23は、図3に示すように、建物躯体100の開口部の左右の縦部に配置され、開口部における室外側X1に片寄った位置に固定されている。
【0015】
本実施形態の新設枠3は、既設枠2の形状に対応するように、当該既設枠2に専用に形成された専用枠である。新設枠3は、新設上枠31の新設上枠本体310(後述)、新設下枠、及び左右一対の新設縦枠33の4つの枠部材を予め矩形に四方組みした状態で、図2及び図3に示すように、既設枠2から額縁部材101に亘る内周側に取り付けられる。詳しくは、新設枠3は、新設上枠31の新設上枠本体310(後述)、新設下枠、及び左右一対の新設縦枠33の4つの枠部材を予め矩形に四方組みした状態で、建物躯体100の開口部の室内側X2から室外側X1に移動させることで、既設枠2及び額縁部材101の内周側に配置される。既設枠2及び額縁部材101の内周側に配置された新設枠3は、固定部材であるねじSC1,SC3によって、既設枠2よりも室内側X2の建物躯体100に固定される。
【0016】
次に、新設枠3の新設上枠31及び左右一対の新設縦枠33の構成について、個別に説明する。
【0017】
まず、新設上枠31について説明する。
【0018】
新設上枠31は、既設上枠21の長さ方向に沿って左右方向に延びている。新設上枠31は、図2に示すように、既設上枠21のガイドレール211cから額縁部材101の見込み方向の中央部付近に亘る見込み方向の長さを有する。
【0019】
新設上枠31は、図2に示すように、新設上枠本体310と、新設上枠本体310の外周側に配置される新設上枠分割部340と、を有する。新設上枠分割部340は、既設上枠21に固定される。新設上枠本体310は、新設上枠分割部340が固定された既設上枠21の内周側に取り付けられる。新設上枠分割部340は、新設上枠本体310の上部に配置されることで、既設上枠21と新設上枠本体310との間に配置される。新設上枠本体310及び新設上枠分割部340は、別部材により構成され、いずれも、それぞれアルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材により構成される。
【0020】
新設上枠分割部340は、既設上枠21の下部において、既設上枠21の長手方向に延びる。新設上枠分割部340は、既設上枠21の下方において室内外方向に延びる室内外方向延在板341を備える。室内外方向延在板341は、既設上枠21のガイドレール211a,211bの下方において、既設上枠21のガイドレール211a,211bとの間に亘って延びている。
【0021】
室内外方向延在板341は、室内外方向延在板341の上面341aよりも低い位置で室外側X1に向けて延びる室外側延出部3412を一体に有する。室外側延出部3412は、新設上枠分割部340の上面に浸入した雨水を室内側X2に流入させることなく、左右方向に流す排水溝でもある。
【0022】
室外側延出部3412の最も室外側X1の部位には、見付け方向の上方に向けて延びる室外側上方壁部345(室外側突出部)と、見付け方向の下方に向けて延びる室外側下方壁部346(室外側部分)と、が一体に設けられる。
【0023】
室外側上方壁部345は、室内外方向延在板341の上面341aよりもさらに上方に突出し、既設上枠21の最も室外側X1のガイドレール211cの室外側面211dに対して、室外側X1から重なるように配置されている。室外側上方壁部345は、既設上枠21の室外側X1に配置され、既設上枠21の室外側X1の面に沿って配置される。
【0024】
室外側下方壁部346は、室外側延出部3412の最も室外側X1の端部から下方に延出する。室外側下方壁部346の室内側X2の面には、パッキン380が取り付けられており、後述する新設上枠本体310の室外側X1に配置されるガイドレール314cの上部及び新設上枠本体310の室外側延出部3112の室外側立壁部3112aの室外側X1の面310aが対面して配置される。パッキン380が取り付けられた室外側下方壁部346の室内側X2の面には、新設上枠本体310の最も室外側X1の面310aが突き当てられている。パッキン380は、室外側下方壁部346の室内側X2の面と新設上枠本体310の室外側X1の面310aとの間に配置され、室外側Xにおいて、新設上枠本体310と新設上枠分割部340とが突き当てられた部分を止水する。
【0025】
室外側上方壁部345及び室外側下方壁部346には、アルミニウム等の金属材からなる化粧材316が室外側X1から着脱可能に取り付けられている。化粧材316は、室外側上方壁部345及び室外側下方壁部346を覆うとともに、既設上枠21よりも見付け方向の上方に延出し、新設上枠31の室外側X1の見付け面を形成している。化粧材316は、既設上枠21と外壁材102との間に露出するシーリング材104を室外側X1から覆い隠している。
【0026】
室内外方向延在板341の上面341aの室外側X1の部位には、弾性を有するヒレ部材347が設けられる。ヒレ部材347は、既設上枠21のガイドレール211bに近接するように、室内外方向延在板341の上面341aから上方に向けて突出している。
【0027】
新設上枠分割部340において、室外側上方壁部345と既設上枠21のガイドレール211cとの間から雨水が浸入しても、室外側延出部3412を左右方向に流れて新設縦枠33の外周側に排水され、室内側X2への浸入は抑制される。仮に大量の雨水が室外側延出部3412に浸入しても、ヒレ部材347によって室内側X2への浸入が阻止される。ヒレ部材347は弾性を有するため、新設上枠分割部340が既設上枠21の内周側に配置される際に既設上枠21等と接触しても、弾性的に撓むことができ、損傷のおそれがない。
【0028】
新設上枠分割部340には、さらに取付け片350が設けられている。新設上枠分割部340は、L字状の取付け片350を介して、既設上枠21のガイドレール211bにねじ360により固定される。
【0029】
取付け片350は、基板部351と、当接部352と、基板部351及び当接部352の間に設けられるねじ台部353と、を有する。基板部351は、室内外方向延在板341の上面341aに取り付けられる部位であり、ねじ370によって室内外方向延在板341に固定されている。当接部352は、既設上枠21のガイドレール211bに対して室内側X2から当接する。ねじ台部353は、基板部351と当接部352とを斜めに連結するように設けられる。ねじ台部353の表面は、室内側X2の斜め下方を向くように形成される。取付け片350は、例えば、金属材料により形成される。
【0030】
新設上枠分割部340は、斜め下方から取付け片350のねじ台部353を貫通してガイドレール211bに螺入されるねじ360によって既設上枠21の内周側に固定される。新設上枠分割部340の室内外方向延在板341には、図示しないが、ねじ360を新設上枠分割部340の下方側からねじ台部353に向けて挿入可能な貫通孔が形成されている。
【0031】
本実施形態においては、室外側上方壁部345を新設上枠本体310には設けずに、新設上枠分割部340に設けている。例えば、仮に、室外側上方壁部345を新設上枠分割部340に設けずに、室外側上方壁部345を新設枠3に設けた場合には、新設上枠31を室内側X2から既設上枠21に組み付ける場合に、室外側上方壁部345が既設上枠21に当たってしまう。
【0032】
そのため、既設上枠21を一旦避けるため、新設枠を四方組みした状態で、新設上枠を室内側X2から傾けながら既設枠2の内側に挿通させて、室外側X1に一旦出した後に、既設上枠21に引き寄せて、既設上枠21に新設上枠を取り付ける必要性が生じる。しかしながら、例えば、室外側X1に面格子やシャッター等が設けられている場合に、新設上枠を室外側X1に一旦出すことを行うと、室外側X1に設けられた面格子やシャッター等に新設枠が当たってしまうことがある。
【0033】
これに対して、本開示においては、新設上枠31を、新設上枠本体310と新設上枠分割部340とに分割した。そして、新設上枠分割部340に室外側上方壁部345を設けて、新設上枠分割部340を先に既設上枠21に取り付けた後に、新設上枠分割部340を取り付けない状態で四周組んだ新設枠3を、既設枠2の内周側に取り付けるようにした。これにより、新設上枠を傾けながら室内側X2から既設上枠21の内側に挿通させて室外側X1に一旦出すことなく、室内側X2から簡単に取り付けることができる。
【0034】
新設上枠本体310は、図2に示すように、新設枠3の内側に納められる2枚の障子41,42用の一対のガイドレール314a,314bと、新設枠3の最も室外側X1に納められる網戸43用のガイドレール314cと、を有する。ガイドレール314a,314b,314cは、新設上枠本体310に配置され、下方に向けて突出している。ガイドレール314a,314b,314cは、新設上枠31の長さ方向の全長に亘って延びている。
【0035】
新設上枠本体310は、既設上枠21の長さ方向に沿って左右方向に延びている。新設上枠本体310は、既設上枠21のガイドレール211cから額縁部材101の見込み方向の中央部付近に亘る見込み方向の長さを有する。新設上枠本体310は、金属枠部材であり、アルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる。
【0036】
図2に示すように、新設上枠本体310は、室外側X1に配置され室内外方向に延びる室外側枠部材311と、室外側枠部材311の室内側X2に連続して室内側X2に配置され室内外方向に延びる室内側枠部材312と、を有する。室外側枠部材311は、断面略矩形状の中空部3111を有する。室内側枠部材312は、断面略矩形状の中空部3121を有する。室外側枠部材311の上面311a及び室内側枠部材312の上面312aは、いずれも平坦面であり、新設上枠本体310の見込み方向に面一状に並んで配置されている。
【0037】
室外側枠部材311は、室外側枠部材311の上面311aよりも低い位置で室外側X1に向けて延びる室外側延出部3112を一体に有する。室外側延出部3112は、ガイドレール314bとガイドレール314cとの間に配置される。室外側延出部3112の室外側X1の端部には、室外側延出部3112の室外側X1の端部から上方側に立ち上がる室外側立壁部3112aと、室外側立壁部3112aの上端部から室内側X2に突出する突出片3112bと、が設けられている。室外側延出部3112は、新設上枠本体310の上面に浸入した雨水を室内側X2に流入させることなく、左右方向に流す排水溝でもある。
【0038】
室外側枠部材311は、新設上枠分割部340の室内外方向延在板341の下方に配置される。そのため、新設上枠分割部340の室内外方向延在板341の室外側延出部3412の左右方向に流されて左右方向の端部から排出された水は、下方に配置される新設上枠本体310の室外側枠部材311の室外側延出部3112を介して、新設縦枠33の内部に流れ込む。そのため、新設上枠本体310の室外側枠部材311の室外側延出部3112が新設上枠分割部340の室内外方向延在板341の室外側延出部3412の下方に配置されることで、二重の排水構造を備えているため、排水性能を一層向上できる。
【0039】
室外側枠部材311の中空部3111に対応する上面311aの室外側X1の部位には、弾性を有するヒレ部材317が設けられる。ヒレ部材317は、新設上枠分割部340の下面に接触又は近接するように、室外側枠部材311の上面311aから上方に向けて突出している。新設上枠31において、室外側壁部315と既設上枠21のガイドレール211cとの間から雨水が浸入しても、室外側延出部3112を左右方向に流れて新設縦枠33の外周側に排水され、室内側X2への浸入は抑制される。仮に大量の雨水が室外側延出部3112に浸入しても、ヒレ部材317によって室内側X2への浸入が阻止される。ヒレ部材317は弾性を有するため、新設上枠本体310が新設上枠分割部340の内周側に配置される際に新設上枠分割部340等と接触しても、弾性的に撓むことができ、損傷のおそれがない。
【0040】
新設上枠本体310の最も室内側X2の部位には、新設上枠本体310を建物躯体100に固定するための取付部318が一体に設けられる。取付部318は、室外側枠部材311及び室内側枠部材312の上面311a,312aと平行に配置され、室内側枠部材312における室内側X2の端面312bの上部から室内側X2に向けて板状に延出している。
【0041】
取付部318の上面318aには、新設上枠31の長さ方向に延びる少なくとも一対の突条部3181が設けられる。一対の突条部3181は、取付部318の上面318aから僅かに上方に突出し、見込み方向に所定の間隔をあけて平行に配置される。取付部318の上面318aの位置は、室外側枠部材311及び室内側枠部材312の上面311a,312aの位置よりも僅かに下方に配置される。一対の突条部3181は、取付部318の上面318aから、室外側枠部材311及び室内側枠部材312の上面311a,312aの位置に略等しい高さまで突出している。
【0042】
矩形に四方組みされた状態の新設枠3における新設上枠本体310は、新設上枠分割部340を介して、既設上枠21から額縁部材101に亘る部位の内周側に配置される。新設上枠本体310は、室外側Xにおいて既設上枠21の下方に配置され、室内側X2において額縁部材101の下方に配置される。図2に示すように、新設上枠本体310と額縁部材101との間に隙間が形成される場合には、その隙間を埋めるようにスペーサ部材301が配置される。スペーサ部材301は、1枚以上のシートによって構成される。スペーサ部材301を構成するシートの厚み及びシートの積層数は、新設上枠本体310の室内側枠部材312と額縁部材101との間の隙間の大きさ等に応じて適宜設定される。室内側枠部材312の上面312a及び取付部318は、スペーサ部材301に当接して重なっている。新設上枠本体310は、室内側X2から取付部318及びスペーサ部材301を貫通するねじSC1によって、既設上枠21よりも室内側X2の建物躯体100に固定される。ねじSC1は、取付部318の一対の突条部3181の間を貫通する。一対の突条部3181は、スペーサ部材301に当接し、ねじSC1の締結トルクが作用した際の取付部318の変形を抑制する。
【0043】
新設枠3が既設枠2の内周側に取り付けられた状態において、既設上枠21と新設上枠31の新設上枠本体310との間には、新設上枠31の新設上枠本体310を取り付けるための部材が介在していない。新設上枠31の新設上枠本体310は、既設上枠21の内周面に直接的に上下に対面するように配置される。そのため、新設上枠31の新設上枠本体310は、既設上枠21に可及的に近接して配置可能である。新設上枠31の新設上枠本体310は、既設上枠21に固定されないため、既設上枠21に歪み等が生じていても、その歪みの状態に影響されずに取り付け可能である。ねじSC1は、既設上枠21と接触しないため、ねじSC1を介して既設上枠21と新設上枠31の新設上枠本体310との間で熱が伝達されることもない。
【0044】
新設上枠本体310の一対のガイドレール314a,314bの間には、樹脂製または木質由来材料製のレール間カバー3113が取り付けられる。レール間カバー3113は、新設上枠31におけるガイドレール314a,314bの間を実質的に遮蔽するように、室外側枠部材311の下面に配置される。レール間カバー3113は、既設上枠21側から新設上枠31に伝わる外気温度が、新設上枠31の内周側に伝達されることを抑制する。
【0045】
図2に示すように、新設上枠31の室内側枠部材312の室内側X2の端部には、樹脂製または木質由来材料製のアングル部材319が取り付けられている。アングル部材319は、室内側X2に向けて延びるアングル部319aと、アングル部319aの室外側X1の端部から上方に延びる立壁部319bと、を有する。立壁部319bは、室内側枠部材312の室内側X2の端面312bに連続して該端面312bを下方に向けて延長するように配置される。アングル部319aは、立壁部319bの下端部から室内側X2に向けて延び、取付部318を下方から覆っている。アングル部319aは、ガイドレール314a,314bの下端の位置と略等しい位置に配置されている。
【0046】
アングル部材319の室外側X1には、樹脂製または木質由来材料製のカバー材3191が一体に設けられている。カバー材3191は、室内側枠部材312の下面及びガイドレール314aの室内側X2の側面に沿って設けられている。カバー材3191は、ねじ319cによって室内側枠部材312の下面に固定されている。
【0047】
新設枠3が既設枠2の内周側に取り付けられた状態において、新設上枠本体310は、新設上枠分割部340の室外側下方壁部346の室内側X2の面に突き当てて配置されている。具体的には、新設上枠本体310におけるガイドレール314cの上部及び新設上枠本体310の室外側延出部3112の室外側立壁部3112aの室外側X1の面310aには、パッキン380が取り付けられた新設上枠分割部340の室外側下方壁部346の室内側X2の面に突き当てられている。
【0048】
次に、新設縦枠33について説明する。左右の新設縦枠33は、左右対称である以外、実質的に同一の構造を有する。図3においては、図1に示す左右の新設縦枠33のうち、左側の新設縦枠33の横断面を示している。本実施形態においては、左右の新設縦枠33のうち、左側の新設縦枠33の横断面を図示し、右側の新設縦枠33の横断面の図示は省略する。
【0049】
新設縦枠33は、既設縦枠23の長さ方向に沿って上下方向に延びている。新設縦枠33は、図3に示すように、既設縦枠23の室外側X1の端部から額縁部材101の見込み方向の中央部付近に亘る見込み方向の長さを有する。新設縦枠33は、金属枠部材であり、アルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる。
【0050】
図3に示すように、新設縦枠33は、室外側X1に配置され室内外方向に延びる室外側枠部材331と、室外側枠部材331の室内側X2に連続して室内側X2に配置され室内外方向に延びる室内側枠部材332と、を有する。室外側枠部材331は、断面略矩形状の中空部3311を有する。室内側枠部材332は、断面略矩形状の中空部3321を有する。室外側枠部材331の外側面331a及び室内側枠部材332の外側面332aは、いずれも平坦面であり、新設縦枠33の見込み方向に面一状に並んで配置されている。
【0051】
図3に示すように、室外側X1から見て右側の新設縦枠33の室外側枠部材331の内側面331bには、見付け方向の内方に向けて突出する突出片3312が一体に設けられている。突出片3312は、新設縦枠33の長さ方向の全長に亘って延びている。突出片3312は、室外側X1の障子42が閉鎖状態にあるときに、該障子42の戸先側の縦框423と係合する。さらに、図示は省略するが、室外側X1から見て左側の新設縦枠33の室外側枠部材331の内側面も同様の構造を有する。
【0052】
室外側枠部材331の最も室外側X1の部位には、アルミニウム等の金属材からなる化粧材335が室外側X1から着脱可能に取り付けられている。化粧材335は、既設縦枠23の最も室外側X1の端面23aを覆うとともに、既設縦枠23よりも見付け方向の外方に延出し、新設縦枠33の見付け面を形成している。化粧材335は、既設縦枠23と外壁材102との間に露出するシーリング材104を室外側X1から覆い隠している。
【0053】
新設縦枠33の最も室内側X2の部位には、新設縦枠33を建物躯体100に固定するために使用される取付部336が一体に設けられる。取付部336は、室内側枠部材332の室内側X2の端面332cから室内側X2に向けて板状に延出している。取付部336は、室外側枠部材331及び室内側枠部材332の外側面331a,332aと平行に配置される。
【0054】
取付部336の外側面336aには、新設縦枠33の長さ方向に延びる少なくとも一対の突条部3361が設けられる。一対の突条部3361は、取付部336の外側面336aから僅かに外方に突出し、見込み方向に所定の間隔をあけて平行に配置される。取付部336の外側面336aの位置は、室外側枠部材331及び室内側枠部材332の外側面331a,332aの位置よりも僅かに内側に配置される。一対の突条部3361は、取付部336の外側面336aから、室外側枠部材331及び室内側枠部材332の外側面331a,332aの位置に略等しい高さまで突出している。
【0055】
新設縦枠33の室外側枠部材331の外側面331aには、それぞれ少なくとも1つのフィン状の遮水部材337が設けられる。遮水部材337は、新設縦枠33の長さ方向の全長に亘って延びている。遮水部材337は、室外側枠部材331の外側面331aから既設縦枠23の内周面23bに向けて突出している。遮水部材337の先端は、既設縦枠23の内周面23bに弾性的に当接している。室外側枠部材331の見込み方向における遮水部材337の位置は、新設上枠本体310の室外側延出部3112よりもやや室内側X2の位置、あるいは、新設上枠本体310のヒレ部材317の位置と同一の位置に配置される。これによって、新設上枠本体310の室外側延出部3112の長さ方向の両端部から既設縦枠23と新設縦枠33との間に流下した雨水は、遮水部材337の室外側X1の表面を伝って効率良く既設下枠上に排水される。したがって、この遮水部材337が既設縦枠23と新設縦枠33との間に設けられることによって、新設上枠本体310から流下する雨水が室内側X2へ浸入することは阻止される。
【0056】
遮水部材337は、軟質樹脂あるいはゴム等の弾性部材によって形成される。遮水部材337は、硬質樹脂あるいは金属等の硬質な部材によって形成されてもよい。遮水部材337が弾性部材からなる場合、遮水部材337の先端は、既設縦枠23の内周面23bに弾性的に当接し、既設縦枠23と新設縦枠33との間を密封する。そのため、室内側X2への雨水の浸入抑止効果が高い。弾性部材からなる遮水部材337は、新設縦枠33が既設縦枠23の内周側に配置される際に既設縦枠23等と接触しても、弾性的に撓むことができ、損傷のおそれがない。
【0057】
矩形に四方組みされた状態の新設枠3における左右一対の新設縦枠33は、既設縦枠23から額縁部材101に亘る部位の内周側に配置される。新設縦枠33の室外側枠部材331は、既設縦枠23の内方に配置される。新設縦枠33の室内側枠部材332は、額縁部材101の内方に配置される。図3に示すように、新設縦枠33と額縁部材101との間に隙間が形成される場合には、その隙間を埋めるようにスペーサ部材303が配置される。スペーサ部材303は、1枚以上のシートによって構成される。スペーサ部材303を構成するシートの厚み及びシートの積層数は、新設縦枠33の室内側枠部材332と額縁部材101との間の隙間の大きさ等に応じて適宜設定される。室内側枠部材332の外側面332a及び取付部336は、スペーサ部材303に当接して重なっている。新設縦枠33は、室内側X2から取付部336及びスペーサ部材303を貫通するねじSC3によって、既設縦枠23よりも室内側X2の建物躯体100に固定される。ねじSC3は、取付部336の一対の突条部3361の間を貫通する。一対の突条部3361は、スペーサ部材303に当接し、ねじSC3の締結トルクが作用した際の取付部336の変形を抑制する。
【0058】
新設枠3が既設枠2の内周側に取り付けられた状態において、既設縦枠23と新設縦枠33との間には、新設縦枠33を取り付けるための部材が介在していない。新設縦枠33は、既設縦枠23の内周面に直接的に左右に対面するように配置される。そのため、新設縦枠33は、既設縦枠23に可及的に近接して配置可能である。新設縦枠33は、既設縦枠23に固定されないため、既設縦枠23に歪み等が生じていても、その歪みの状態に影響されずに取り付け可能である。ねじSC3は、既設縦枠23と接触しないため、ねじSC3を介して既設縦枠23と新設縦枠33の室内側枠部材332との間で熱が伝達されることもない。
【0059】
図3に示すように、新設縦枠33の室内側枠部材332には、樹脂製または木質由来材料製のアングル部材338が取り付けられている。アングル部材338は、室内側X2に向けて延びるアングル部338aと、アングル部338aの室外側X1の端部から外方に延びる立壁部338bと、立壁部338bの外端部から室外側X1に向けて延びる室外端部338cと、室外側X1に向けて延びる樹脂製または木質由来材料製のカバー材3324と、を有する。
【0060】
立壁部338bは、室内側枠部材332の室内側X2の端面332cに連続して該端面332cを内方に向けて延長するように配置される。アングル部338aは、立壁部338bの内端部から室内側X2に向けて延び、取付部336を内方から覆っている。アングル部338aの見込み方向の位置は、新設上枠31及び新設下枠のアングル部材のアングル部の見込み方向の位置に一致している。アングル部材338は、障子41,42のそれぞれの戸先側の縦框413,423を室内側X2から覆い隠している。アングル部材338の室外端部338cは、室内側枠部材332の内側面332bに沿って配置され、ねじ338dによって該内側面332bに固定されている。
【0061】
カバー材3324は、アングル部材338の室外側X1に連続して配置され、アングル部材338から室外側X1の障子42にかけて新設縦枠33の室内側枠部材332の内側面332bを覆っている。カバー材3324の室外側X1の端部は、新設縦枠33の室外側枠部材331から内方に突出する突出片3313に係止されている。
【0062】
図3に示すように、左右の新設縦枠33には、室外側X1において、左右の新設縦枠33を既設枠2に取り付ける際に左右の新設縦枠33が既設枠2にぶつからないようにするため、建物躯体100側の見付方向に張り出して延出する延出板部が設けられていない。
【0063】
ねじSC1,SC3によって固定された新設枠3の室内側X2の部位には、図2及び図3に示すように、樹脂材あるいはアルミニウム等の金属材からなる気密テープT1,T2が貼着されている。気密テープT1は、額縁部材101に貼着されている。気密テープT1の室外側X1の端部は、額縁部材101から既設枠2の最も室内側X2に突設される壁部の室外側X1の面2bに亘って貼着されている。気密テープT1の室内側X2の端部は、既設上枠21、既設下枠22及び既設縦枠23よりも室内側X2に延出している。気密テープT2の室外側X1の端部は、取付部318,336及びねじSC1,SC3の頭部を被覆している。気密テープT2の室内側X2の端部は、取付部318,336よりも室内側X2に延出し、気密テープT1に重なっている。これによって、既設枠2と新設枠3との間の気密性が高められる。
【0064】
建物躯体100に固定された後の新設枠3の室内側X2には、四周に亘って樹脂製または木質由来材料製の化粧カバー51,53が設けられる。本実施形態においては、新設上枠31及び新設縦枠33の化粧カバー51,53について説明するが、新設下枠も同様の構成を有する。化粧カバー51,53は、ねじ51a,53aによってアングル部材319,338に取り付けられている。新設上枠31の化粧カバー51は、アングル部材319のアングル部319aに連続して室内側X2に向けて延びるとともに、額縁部材101に亘って配置される。新設縦枠33の化粧カバー53は、アングル部材338のアングル部338aに連続して室内側X2に向けて延びるとともに、額縁部材101に亘って配置される。
【0065】
図2及び図3に示すように、化粧カバー51,53は、アングル部319a,338aと面一状にアングル部319a,338aの室内側X2に配置される断面矩形状の中空部510,530と、中空部510,530の室内側X2の側面510a,530aの端部から額縁部材101に向けて延びる室内側カバー壁511,531と、アングル部材319,338に固定する固定部512,532と、を一体に有する。中空部510,530の側面510a,530aと室内側カバー壁511,531とによって、化粧カバー51,53の室内側X2の見付け面が形成される。
【0066】
室内側カバー壁511,531には、複数の切り取り溝511a,531aが形成されている。切り取り溝511a,531aは、化粧カバー51,53の長さ方向に沿って平行に延びる複数の突条の付け根部に沿って形成される。複数の切り取り溝511a,531aは、見付け方向に所定の間隔をおいて平行に設けられる。すなわち、新設上枠31及び新設下枠32の化粧カバー51の切り取り溝511aは、上下方向に間隔をおいて平行に配置される。新設縦枠33の化粧カバー53の切り取り溝531aは、左右方向に間隔をおいて平行に配置される。室内側カバー壁511,531は、いずれかの切り取り溝511a,531aに沿って、カッターの刃を滑らせることによって、あるいは手で折ることによって、簡単に切断することができる。そのため、アングル部材319,338のアングル部319a,338aと額縁部材101との距離に応じて、作業者が現場において、室内側カバー壁511,531をいずれかの切り取り溝511a,531aの部位で切断することによって、室内側カバー壁511,531の額縁部材101からの高さを容易に調整することができる。
【0067】
化粧カバー51,53の固定部512,532は、中空部510,530から室外側X1に向けて延びる固定部本体512a,532aと、固定部本体512a,532aの室外側X1の端部に見付け方向に延びるように設けられる当接板部512b,532bと、固定部本体512a,532aからアングル部319a,338aの裏面に向けて突出する一対のねじ挿入板部512c,532cと、によって構成される。固定部512,532の当接板部512b,532bは、アングル部材319,338の立壁部319b,338bに室内側X2から当接し、化粧カバー51,53の見込み方向の位置を規定している。ねじ51a,53aは、アングル部319a,338aを貫通し、一対のねじ挿入板部512c,532cの間を通って固定部本体512a,532aに螺入される。ねじ51a,53aを締め付けた際、当接板部512b,532b及びねじ挿入板部512c,532cがアングル部319a,338aの裏面に当接し、化粧カバー51,53の見付け方向の位置を規定する。したがって、化粧カバー51,53は、アングル部材319,338に対して適正な位置に位置決めされた状態で、位置ずれすることなく固定される。
【0068】
アングル部材319,338に固定された化粧カバー51,53は、アングル部材319,338と額縁部材101との間の新設上枠31、新設縦枠33及びスペーサ部材301,303を室内側X2から覆っている。ねじSC1,SC3の頭部は、化粧カバー51,53の内側に配置される。化粧カバー51,53と額縁部材101との境目は、ねじ61a,63aによって額縁部材101に固定される断面L字状の見切り材61,63によって四周に亘って遮蔽されている。上下の見切り材61の両端部は、縦の見切り材63の上下両端部に当接もしくは近接して配置される。見切り材61と見切り材63との境界部は、コーナーピース64によって目隠しされる。
【0069】
化粧カバー51,53の内側には、四周に亘って断熱材501,503が設けられる。断熱材501,503は、例えば、押出法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、ウレタン樹脂等の樹脂材、ゴム、あるいは真空断熱材等を含む断熱効果が望める材料で構成されている。断熱材501,503は、新設上枠31及び新設縦枠33の長さ方向の全域に亘ってそれぞれ収容される。断熱材501,503のそれぞれの両端部は、周方向に隣接する他の断熱材501,503の両端部に対して接触もしくは近接して配置されている。これによって、改装建具1の新設枠3の見付け方向がコンパクトに構成されたものでありながらも、新設枠3における室外側X1と室内側X2との間の熱の伝達をさらに抑制することができる。そのため、改装建具1の断熱性能が向上する。
【0070】
次に、改装建具1を施工する手順について説明する。改装建具1を施工する場合には、事前に、新設枠3に新設上枠分割部340を取り付けない状態で、新設上枠本体310、新設下枠(図示せず)及び左右の新設縦枠33により四周組んだ新設枠3を準備しておく。
【0071】
改装建具1を施工する場合には、図4Aに示すように、まず、既設上枠21の下部に、新設上枠分割部340を固定する(新設枠分割部固定工程)。具体的には、図4A及び図4Bに示すように、新設上枠分割部340を、既設上枠21に設けられ下方に向けて突出する既設障子用のガイドレール211bに固定する。
【0072】
次に、図4Bに示すように、新設上枠本体310を、下端側が上端側よりも室外側X1に位置するように傾けた状態で、既設枠2の室内側X2から、既設枠2の開口に嵌め込んでいき、下端側を中心に回転させて、図4Cに示すように、既設上枠21に固定した新設上枠分割部340の室外側下方壁部346の室外側X1の面に、新設上枠本体310を室内側X2から室外側X1に移動させて、新設上枠本体310の室外側X1に配置されたガイドレール314cの上部及び新設上枠本体310の室外側延出部3112の室外側立壁部3112aの室外側X1の面310aを、パッキン380が取り付けられた室外側下方壁部346の室内側X2の面に、突き当てて、既設枠2に取り付ける(新設枠本体取付工程)。
【0073】
ここで、新設上枠本体310及び左右の新設縦枠33には、室外側X1において、建物躯体100側の見付方向に張り出して延出する延出板部が設けられていない。そのため、新設上枠本体310及び左右の新設縦枠33に延出板部が設けれられていないことから、新設上枠本体310及び左右の新設縦枠33が既設枠2にぶつからないため、新設上枠本体310を既設枠2の室外側X1に一旦出して既設枠2に引き寄せて既設枠2に取り付けなくてよい。つまり、新設枠3を、室内側X2から、簡単に、既設枠2に取り付けることができる。これにより、改装建具1の施工性を向上できる。
【0074】
その後、図4Cに示すように、ねじSC1により、新設上枠本体310の取付部318を建物躯体100に固定する。新設上枠本体310の取付部318と建物躯体100との間に隙間が形成される箇所には、スペーサ部材301を配置する。
【0075】
続けて、図4Dに示すように、室外側X1において、化粧材316を新設上枠分割部340の室外側X1に取り付ける。そして、室内側X2において、化粧カバー51を、新設上枠31のアングル部材319に取り付ける。化粧カバー51と額縁部材101の内周面との境目には、L字の見切り材61を取り付ける。
【0076】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。本実施形態の改装建具1は、建物躯体100の開口部に取り付けられる既設枠2と、既設枠2の内周側に取り付けられる新設枠3と、を備え、新設上枠31は、新設上枠本体310と、新設上枠本体310の外周側に配置される新設上枠分割部340と、を有し、新設上枠分割部340は、室外側下方壁部346を有すると共に、既設枠2に固定され、新設上枠本体310は、室外側下方壁部346の室内側X2の面に突き当てて配置される。
【0077】
これにより、新設上枠分割部340を既設上枠21に取り付けた後に、新設上枠本体3310を、室内側X2から室外側X1に移動させるだけで、既設枠2の内周側に容易に取り付けることができる。よって、施工性を向上できる。
【0078】
また、本実施形態においては、新設上枠分割部340は、既設上枠21側に突出すると共に既設上枠21の室外側X1において既設上枠21の室外側X1の面に沿って配置される室外側上方壁部345を有する。これにより、新設上枠分割部340が室外側上方壁部345を有しており、新設上枠分割部340を先に既設上枠21に取り付けることで、既設上枠21の内周側に取り付ける際に、新設上枠本体310には、取り付けの際に邪魔になる室外側上方壁部が存在しない状態となる。よって、新設上枠本体310を、室内側X2から、既設上枠21に固定された新設上枠分割部340に容易に取り付けることができる。よって、施工性を一層向上できる。
【0079】
また、本実施形態においては、新設上枠分割部340は、既設上枠21に設けられ下方に向けて突出する既設障子用のガイドレール211bに固定される。これにより、既設障子用のガイドレール211bに固定するだけで、新設上枠分割部340を、既設上枠21に固定できるため、簡易な構成で、新設上枠分割部340を既設上枠21に固定することができる。
【0080】
また、本実施形態においては、新設上枠本体310は、室内側X2に向けて延出する取付部318を有しており、取付部318を貫通する固定部材SC1によって、既設上枠21よりも室内側X2の建物躯体100に固定されている。これにより、新設上枠本体310は、既設上枠21に可及的に近接して配置可能である。そのため、枠部材の見付け方向の寸法が可及的にコンパクトな改装建具1を構築することができる。新設上枠本体310は、既設上枠21に固定されないため、既設上枠21の歪みの状態に影響されずに取り付け可能である。そのため、新設枠3の施工性が向上する。
【0081】
以上、本開示の改装建具の一実施形態について説明したが、本開示の改装建具は適宜変更可能である。例えば、本開示の改装建具は、上述した2枚の障子41,42を有する者に制限されず、3枚以上の障子を有するものであってもよいし、1枚だけの障子を有する片引き窓を構成するものであってもよい。さらに、本開示の改装建具は、辷り出し窓やFIX窓、上げ下げ窓、外倒し窓、内倒し窓、あるいは開き窓を構成するものであってもよい。
【0082】
上述した改装建具1において、新設枠3を構成する新設上枠31、新設下枠、及び新設縦枠33を、それぞれ室内外方向に分割された金属枠部材を連結部材によって連結した構成としてもよい。この場合、断熱構造を有するが、このような断熱構造は、新設枠を構成する上下左右の枠部材のうちの少なくともいずれか1つの枠部材に設けられていればよい。
【0083】
上述した改装建具1では、新設枠3を構成する新設上枠31、新設下枠、及び新設縦枠33を、それぞれ室内外方向に亘って延びる金属材によって構成したが、これに限定されない。新設枠3を構成する新設上枠31、新設下枠、及び新設縦枠33を、それぞれ室内外方向に分割された複数の金属枠部材を樹脂製の連結部材によって連結した構成としてもよい。この場合、新設上枠31、新設下枠、及び新設縦枠33において、樹脂製の連結部材により、室内外方向への熱の伝達を遮断できる。
【0084】
上述した改装建具1において、2枚の障子41,42の框の材料は限定されない。2枚の障子41,42の框は、金属材料を用いた金属製の部材により構成してもよいし、樹脂材料を用いた樹脂製の部材により構成してもよいし、樹脂製の部材及び金属製の部材を組み合わせて構成してもよい。また、障子の框を、樹脂製の部材に代えて、木材由来の材料で構成してもよい。框を樹脂製の部材により構成した場合に、新設上枠31及び新設下枠32を、金属を含む枠部材本体と、枠部材本体をカバーするとともに障子41,42のスライド移動をガイドする樹脂製のレール部材と、によって構成してもよい。この場合、新設枠3の少なくとも新設上枠31及び新設下枠に樹脂製のレール部材が設けられ、樹脂製の框を有する障子41,42がこれらの樹脂製のレール部材にスライド移動可能に納められるため、改装建具1の断熱性能が向上する。
【符号の説明】
【0085】
1 改装建具、 2 既設枠、 3 新設枠、 21 既設上枠、 211b ガイドレール(既設上枠ガイドレール)、 31 新設上枠、 100 建物躯体、 310 新設上枠本体(新設枠本体)、 340 新設上枠分割部(新設枠分割部)、 345 室外側上方壁部(室外側突出部) 346 室外側下方壁部(室外側部分)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D