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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103410
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】改装建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/56 20060101AFI20240725BHJP
   E06B 7/16 20060101ALI20240725BHJP
   E06B 1/16 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
E06B1/56 A
E06B7/16 Z
E06B1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007708
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】井東 克孝
【テーマコード(参考)】
2E011
2E036
【Fターム(参考)】
2E011JA02
2E011KA06
2E011KB03
2E011KB04
2E011KB05
2E011KC02
2E011KC03
2E011KC04
2E011KC09
2E011KD14
2E011KE03
2E011KE05
2E011KG06
2E036AA02
2E036BA01
2E036CA03
2E036CA05
2E036DA02
2E036EA03
2E036EA08
2E036EB07
2E036EC05
2E036GA03
2E036HA01
2E036HB05
(57)【要約】
【課題】既設枠の内周側に取り付けられる新設枠の見込み方向の適切な位置決めを容易に行うことが可能な改装建具を提供すること。
【解決手段】既設上枠、既設下枠及び一対の既設縦枠を有して建物躯体の開口部に取り付けられる既設枠と、既設枠の内周側に取り付けられる新設枠と、を有し、新設枠は、新設上枠、新設下枠及び一対の新設縦枠を四方組みすることによって構成され、新設上枠、新設下枠及び一対の新設縦枠のうちの少なくとも新設上枠は、室外側の端部に、上方に突出する室外側立壁部を有し、新設枠は、室外側立壁部を既設上枠の室外側の見付け面に室外側から突き当てることによって、見込み方向に位置決めされており、新設上枠、新設下枠及び一対の新設縦枠の室外側の端部には、それぞれ室外側の見付け面を形成する化粧材が取り付けられ、既設枠の室外側の見付け面を覆い隠している、改装建具である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設上枠、既設下枠及び一対の既設縦枠を有して建物躯体の開口部に取り付けられる既設枠と、
前記既設枠の内周側に取り付けられる新設枠と、を有し、
前記新設枠は、新設上枠、新設下枠及び一対の新設縦枠を四方組みすることによって構成され、
前記新設上枠、前記新設下枠及び前記一対の新設縦枠のうちの少なくとも前記新設上枠は、室外側の端部に、上方に突出する室外側立壁部を有し、
前記新設枠は、前記室外側立壁部を前記既設上枠の室外側の見付け面に室外側から突き当てることによって、見込み方向に位置決めされており、
前記新設上枠、前記新設下枠及び前記一対の新設縦枠の室外側の端部には、それぞれ室外側の見付け面を形成する化粧材が取り付けられ、前記既設枠の前記室外側の見付け面を覆い隠している、改装建具。
【請求項2】
前記新設上枠、前記新設下枠及び前記一対の新設縦枠の少なくともいずれかは、室内外方向に延びる中空のホロー構造部を有する、請求項1に記載の改装建具。
【請求項3】
前記既設枠の室内側の端部から前記新設枠の取り付け面にかけて覆うように貼り付けられた第1の気密材と、
前記新設枠の室内側の端部を覆う第2の気密材と、を有し、
前記第2の気密材は、前記新設枠の室内側の端部からさらに室内側に延出し、前記新設枠の前記取り付け面上において前記第1の気密材と重なっている、請求項1又は2に記載の改装建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改装建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部をリフォーム等で改装する場合に、開口部に取り付けられている既設枠の内周側に新設枠を取り付けることが行われている。例えば、特許文献1には、既設枠の内周側に新設枠を対面するように配置させた改装建具が開示されている。新設枠は、新設枠から既設枠を貫通して建物躯体にねじ込まれるねじによって固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-196667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改装建具における新設枠は、既設枠の内周側に取り付ける際に、既設枠に対する見込み方向の位置決めを適切に行う必要がある。
【0005】
本開示は、既設枠の内周側に取り付けられる新設枠の見込み方向の適切な位置決めを容易に行うことが可能な改装建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、既設上枠、既設下枠及び一対の既設縦枠を有して建物躯体の開口部に取り付けられる既設枠と、前記既設枠の内周側に取り付けられる新設枠と、を有し、前記新設枠は、新設上枠、新設下枠及び一対の新設縦枠を四方組みすることによって構成され、前記新設上枠、前記新設下枠及び前記一対の新設縦枠のうちの少なくとも前記新設上枠は、室外側の端部に、上方に突出する室外側立壁部を有し、前記新設枠は、前記室外側立壁部を前記既設上枠の室外側の見付け面に室外側から突き当てることによって、見込み方向に位置決めされており、前記新設上枠、前記新設下枠及び前記一対の新設縦枠の室外側の端部には、それぞれ室外側の見付け面を形成する化粧材が取り付けられ、前記既設枠の前記室外側の見付け面を覆い隠している、改装建具に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る改装建具を室外側から見た正面図である。
図2図1に示す改装建具の縦断面図である。
図3図1に示す改装建具の横断面図である。
図4図2に示す改装建具の上枠部分を拡大して示す縦断面図である。
図5図2に示す改装建具の下枠部分を拡大して示す縦断面図である。
図6図3に示す改装建具の右側の縦枠部分を拡大して示す横断面図である。
図7図3に示す改装建具の左の縦枠部分を拡大して示す横断面図である。
図8】一実施形態に係る改装建具の新設枠の施工方法を説明する図である。
図9】新設上枠の立壁部を既設上枠の室外側の見付け面に当接させる様子を説明する図である。
図10A】化粧材の一例を示す側面図である。
図10B】化粧材の他の一例を示す側面図である。
図10C】化粧材のさらに他の一例を示す側面図である。
図11】他の実施形態に係る改装建具の縦断面図である。
図12】他の実施形態に係る改装建具の横断面図である。
図13】さらに他の実施形態に係る改装建具の縦断面図である。
図14】さらに他の実施形態に係る改装建具の横断面図である。
図15】既設下枠の他の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。本実施形態に係る改装建具1は、既設枠2が建物躯体100の開口部に取り付けられた状態で、既設枠2に新設枠3を取り付けるリフォーム用の改装建具である。
【0009】
本明細書において、見込み方向とは、改装建具1における室内外方向に沿う方向である。見付け方向とは、改装建具1における面材の面方向に沿う方向であり、見込み方向に対して直交する方向である。図面において、改装建具1の室外側を「室外側X1」とし、改装建具1の室内側を「室内側X2」とする。改装建具1を正面視したときの横方向を「左右」とする。改装建具1を正面視したときの改装建具1の中央部に向かう方向を「内方」とし、改装建具1の中央部から離れる方向を「外方」とする。
【0010】
本実施形態に示す改装建具1は、木質系の建物躯体100の開口部に納められた引き違い窓タイプの改装サッシである。改装建具1は、既設枠2と、新設枠3と、2枚の障子41,42と、1枚の網戸43と、を有する。既設枠2は、建物躯体100の開口部における上下左右の四周に亘って取り付けられる。新設枠3は、既設枠2の内周側における上下左右の四周に亘って取り付けられる。障子41,42及び網戸43は、新設枠3の内側に左右方向にスライド移動可能に納められる。図1に示すように、室内側X2に配置される障子41には、クレセント錠44が取り付けられている。図1において、網戸43は図示を省略している。
【0011】
既設枠2は、図2及び図3に示すように、既設上枠21、既設下枠22、及び左右一対の既設縦枠23の4つの枠部材を矩形に四方組みすることによって形成され、改装前の建物躯体100の開口部の内側に取り付けられている。既設上枠21、既設下枠22、及び左右一対の既設縦枠23は、それぞれアルミニウム等の金属製もしくは塩ビ等の樹脂製の押出形材からなる。既設枠2の室内側には額縁部材101が配置される。額縁部材101は、建物躯体100の開口部の内周面における上下左右の四周に亘って取り付けられ、既設枠2の室内側X2の端面2aから室内側に向けて延びている。四方組みされた既設枠2と建物躯体100の室外側X1に設けられる外壁材102との隙間は、バックアップ材103及びシーリング材104によって四周に亘って目止めされている。
【0012】
既設上枠21は、図2及び図4に示すように、建物躯体100の開口部の上部に配置され、開口部における室外側X1に片寄った位置に固定されている。既設上枠21は、それぞれ下方に向けて突出する既設障子用の一対のガイドレール211a、211bと、既設網戸用のガイドレール211cと、最も室内側X2に配置される室内側壁部211dと、を有する。最も室内側X2に配置される室内側壁部211dと、を有する。室内側壁部211dの下端は、上枠側の額縁部材101の内周面101aと略同一の高さに配置される。上枠側の額縁部材101は、室内側壁部211dに当接し、室内側X2に向けて延びている。
【0013】
既設下枠22は、図2及び図5に示すように、建物躯体100の開口部の下部に配置され、開口部における室外側X1に片寄った位置に固定されている。既設下枠22は、それぞれ上方に向けて突出する既設障子用の一対のガイドレール221a、221bと、既設網戸用のガイドレール221cと、最も室内側X2に配置される室内側壁部221dと、を有する。室内側壁部221dの上端は、下枠側の額縁部材101の内周面101aと略同一の高さに配置される。下枠側の額縁部材101は、室内側壁部221dに当接し、室内側X2に向けて延びている。既設下枠22の上端の高さは、室内側X2のガイドレール221aから室外側X1のガイドレール221cにかけて、階段状に低くなるように形成されている。
【0014】
既設縦枠23は、図3図6及び図7に示すように、建物躯体100の開口部の左右の縦部に配置され、開口部における室外側X1に片寄った位置に固定されている。既設縦枠23は、室外側壁部231aと、室内側壁部231bと、を有する。室外側壁部231aは、既設縦枠23の最も室外側X1に配置され、外方に向けて突出している。室内側壁部231bは、既設縦枠23の最も室内側X2の端部に配置され、内方に向けて突出している。室内側壁部231bの内端は、縦枠側の額縁部材101の内周面101aと略同一の高さに配置される。縦枠側の額縁部材101は、室内側壁部231bに当接し、室内側X2に向けて延びている。
【0015】
本実施形態の新設枠3は、既設枠2の形状に対応するように、既設枠2に専用に形成された専用枠である。新設枠3は、図2及び図3に示すように、新設上枠31、新設下枠32、及び左右一対の新設縦枠33の4つの枠部材を予め矩形に四方組みした状態で、既設枠2から額縁部材101に亘る内周側に取り付けられる。詳しくは、新設枠3は、予め四方組みした状態で建物躯体100の開口部の室内側X2から室外側X1に出した後、室内側X2に引き込むようにして、既設枠2及び額縁部材101の内周側に配置される。既設枠2及び額縁部材101の内周側に配置された新設枠3は、固定部材であるねじSC1,SC2,SC3によって、既設枠2よりも室内側X2の建物躯体100に固定される。
【0016】
次に、新設枠3の新設上枠31、新設下枠32、及び左右一対の新設縦枠33の構成について、個別に説明する。
【0017】
まず、改装建具1の新設上枠31について説明する。
【0018】
新設上枠31は、既設上枠21の長さ方向に沿って左右方向に延びている。新設上枠31は、既設上枠21のガイドレール211cから額縁部材101の見込み方向の中央部付近に亘る見込み方向の長さを有する。新設上枠31は、アルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる。新設上枠31は、図4に示すように、見込み方向に延びるように配置される2つの断面略矩形の中空の第1ホロー構造部311及び第2ホロー構造部312を有する。2つのホロー構造部311,312は、仕切り壁313を挟んで見込み方向に隣り合うように配置されている。第1ホロー構造部311の上面311a及び第2ホロー構造部312の上面312aは、いずれも平坦面であり、見込み方向に面一状に配置されている。
【0019】
新設上枠31は、新設枠3の内側に納められる2枚の障子41,42用の一対のガイドレール314a,314bと、新設枠3の最も室外側X1に納められる網戸43用のガイドレール314cと、を有する。ガイドレール314aは、第2ホロー構造部312の見込み方向の中央部付近から下方に突出している。ガイドレール314bは、第1ホロー構造部311の室外側X1の端部から下方に突出している。
【0020】
新設上枠31は、第1ホロー構造部311の室外側X1の端部に室外側延出部3111を一体に有する。室外側延出部3111は、第1ホロー構造部311及び第2ホロー構造部312の上面311a,312aよりも低い位置で、室外側X1に向けて延びている。室外側延出部3111は、ガイドレール314bとガイドレール314cとを接続するように配置される。ガイドレール314cは、室外側延出部3111の室外側X1の端部から下方に突出している。室外側延出部3111は、新設上枠31の上面に浸入した雨水を室内側X2に流入させることなく、左右方向に流す排水溝としても機能する。
【0021】
室外側延出部3111の最も室外側X1の部位には、見付け方向の上方に向けて延びる室外側立壁部315が一体に設けられる。室外側立壁部315は、第1ホロー構造部311及び第2ホロー構造部312の上面311a,312aよりもさらに上方に突出し、既設上枠21の室外側X1の見付け面を形成するガイドレール211cの室外側X1の面211c1に対して、室外側X1から重なるように配置されている。室外側立壁部315の下端部には、室外側X1に向けて突出する上下一対の突片3151が突設されている。一対の突片3151は、新設上枠31の長さ方向の全長に亘って延びている。
【0022】
室外側立壁部315の一対の突片3151には、アルミニウム等の金属材からなる化粧材316が取り付けられている。化粧材316は、新設上枠31の長さ方向の全長に亘って延びている。化粧材316の下端部には、室外側立壁部315の一対の突片3151に係合可能な一対の係合片3161が室内側X2に向けて突設されている。化粧材316は、一対の係合片3161が室外側立壁部315の一対の突片3151の内側に室外側X1から嵌合することによって、室外側立壁部315に対して着脱可能に取り付けられている。化粧材316は、室外側立壁部315を覆うとともに、既設上枠21よりも見付け方向の上方に延出し、新設上枠31の室外側X1の見付け面を形成している。化粧材316は、既設上枠21の室外側X1の見付け面及び既設上枠21と外壁材102との間に露出するシーリング材104を室外側X1から覆い隠している。
【0023】
第1ホロー構造部311の上面311aの室外側X1の部位には、弾性を有するヒレ部材317が設けられる。ヒレ部材317は、第1ホロー構造部311の上面311aから上方に向けて突出している。新設上枠31において、室外側立壁部315と既設上枠21のガイドレール211cとの間から雨水が浸入しても、室外側延出部3111を左右方向に流れて新設縦枠33の外周側に排水され、室内側X2への浸入は抑制される。仮に大量の雨水が室外側延出部3111に浸入しても、ヒレ部材317によって室内側X2への浸入が阻止される。ヒレ部材317は弾性を有するため、新設上枠31が既設上枠21の内周側に配置される際に既設上枠21等と接触しても、弾性的に撓むことができ、損傷のおそれがない。
【0024】
新設上枠31の最も室内側X2の部位には、新設上枠31を建物躯体100に固定するための取付部318が一体に設けられる。取付部318は、第1ホロー構造部311及び第2ホロー構造部312の上面311a,312aと平行に配置され、第2ホロー構造部312における室内側X2の端面312bの上部から室内側X2に向けて板状に延出している。
【0025】
取付部318の上面318aには、新設上枠31の長さ方向に延びる少なくとも一対の突条部3181が設けられる。一対の突条部3181は、取付部318の上面318aから僅かに上方に突出し、見込み方向に所定の間隔をあけて平行に配置される。取付部318の上面318aの位置は、第1ホロー構造部311及び第2ホロー構造部312の上面311a,312aの位置よりも僅かに下方に配置される。一対の突条部3181は、取付部318の上面318aから、第1ホロー構造部311及び第2ホロー構造部312の上面311a,312aの位置に略等しい高さまで突出している。
【0026】
矩形に四方組みされた状態の新設枠3における新設上枠31は、既設上枠21から額縁部材101に亘る部位の内周側に配置される。図4に示すように、新設上枠31と額縁部材101との間に隙間が形成される場合には、その隙間を埋めるようにスペーサ部材301が配置される。スペーサ部材301は、1枚以上のシートによって構成される。スペーサ部材301を構成するシートの厚み及びシートの積層数は、新設上枠31と額縁部材101との間の隙間の大きさ等に応じて適宜設定される。第1ホロー構造部311、第2ホロー構造部312及び取付部318は、スペーサ部材301に当接して重なっている。
【0027】
矩形に四方組みされた新設枠3において、新設上枠31は、室内側X2から取付部318、スペーサ部材301及び額縁部材101を貫通するねじSC1によって、既設上枠21よりも室内側X2の建物躯体100に固定される。ねじSC1は、取付部318の一対の突条部3181の間を貫通する。一対の突条部3181は、スペーサ部材301に当接し、ねじSC1の締結トルクが作用した際の取付部318の変形を抑制する。取付部318は、新設上枠31において室内側X2に向けて突出しているため、室内側X2からのねじ打ち作業が容易である。新設上枠31は、中空の第1ホロー構造部311及び第2ホロー構造部312を有するため強度が高い。
【0028】
新設枠3が既設枠2の内周側に取り付けられた状態において、既設上枠21と新設上枠31との間には、新設上枠31を取り付けるための中間部材等の他の部材が介在していない。新設上枠31は、既設上枠21の内周面に直接的に上下に対面するように配置される。そのため、新設上枠31は、既設上枠21に可及的に近接して配置可能である。新設上枠31は、既設上枠21に固定されないため、既設上枠21に歪み等が生じていても、その歪みの状態に影響されずに取り付け可能である。ねじSC1は、既設上枠21と接触しないため、ねじSC1を介して既設上枠21と新設上枠31との間で熱が伝達されることもない。
【0029】
新設上枠31の一対のガイドレール314a,314bの間には、樹脂製もしくは木質由来材料製のレール間カバー3112が取り付けられる。レール間カバー3112は、新設上枠31におけるガイドレール314a,314bの間の第1ホロー構造部311及び第2ホロー構造部312を下方から実質的に遮蔽するように配置される。レール間カバー3112は、新設上枠31に伝わる外気温度が、ガイドレール314a,314bの間から新設上枠31の内周側に伝達されることを抑制する。
【0030】
図4に示すように、新設上枠31の室内側X2の端部には、樹脂製のアングル部材319が取り付けられている。アングル部材319は、室内側X2に向けて延びるアングル部319aと、アングル部319aの室外側X1の端部から上方に延びる立壁部319bと、を有する。立壁部319bは、第2ホロー構造部312の室内側X2の端面312bが下方に延長するように第2ホロー構造部312に突設される突出部312dの下端に係合している。立壁部319bは、突出部312dに連続して該突出部312dを下方にさらに延長するように配置される。アングル部319aは、立壁部319bの下端部から室内側X2に向けて延びている。アングル部319aは、ガイドレール314a,314bの下端の位置と略等しい位置に配置されている。
【0031】
アングル部材319の室外側X1には、樹脂製もしくは木質由来材料製のカバー材3191が一体に設けられている。カバー材3191は、アングル部材319の立壁部319bの上端から、第2ホロー構造部312に沿って室外側X1に向けて延びるとともに、ガイドレール314aの室内側X2の側面に沿って設けられている。カバー材3191は、ねじ319cによって第2ホロー構造部312の下面に固定されている。カバー材3191は、新設上枠31の温度が、新設上枠31の内周側に伝達されることを抑制する。アングル部材319は、突出部312dに対応する部位で、カバー材3191と分離して設けられていてもよい。
【0032】
次に、改装建具1の新設下枠32について説明する。
【0033】
新設下枠32は、既設下枠22の長さ方向に沿って左右方向に延びている。新設下枠32は、既設下枠22のガイドレール211cから額縁部材101の見込み方向の中央部付近に亘る見込み方向の長さを有する。新設下枠32は、アルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる。新設下枠32は、図5に示すように、見込み方向に延びるように配置される2つの断面略矩形の中空の第1ホロー構造部321及び第2ホロー構造部322を有する。2つのホロー構造部321,322は、仕切り壁323を挟んで見込み方向に隣り合うように配置されている。
【0034】
新設下枠32は、新設上枠31のガイドレール314a,314b,314cに対応してそれぞれ上方に突出するガイドレール324a,324b,324cを有する。ガイドレール324a,324b,324cは、新設下枠32の長さ方向の全長に亘って延びている。最も室内側X2のガイドレール324aは、第2ホロー構造部322の上面322aに配置される。ガイドレール324bは、第1ホロー構造部321の上面321aに配置される。ガイドレール324cは、第1ホロー構造部321の上面321aにおける最も室外側X1に配置される。
【0035】
図5に示すように、第1ホロー構造部321は、既設下枠22の形状に沿うように下方に向けて膨出する形状を有する。新設下枠32のうち、第1ホロー構造部321の室内側X2の端部から第2ホロー構造部322にわたる下面32aは平坦面であり、既設下枠22の室内側X2のガイドレール211aの上端に載置されている。第1ホロー構造部321の室外側X1の端部側の下面32bは、既設下枠22の階段状の形状に沿うように、室外側X1に向かうに従って下方に階段状に張り出すように形成されている。
【0036】
新設下枠32の室外側X1の部位には、高さ調整部材325が取り付けられる。高さ調整部材325は、新設下枠32から下方に延び、既設下枠22のガイドレール221b,221c間の上面22aに載置される。高さ調整部材325が調整されることによって、新設下枠32の室外側X1の高さが調整される。
【0037】
新設下枠32の室外側X1の部位には、高さ調整部材325が取り付けられる。高さ調整部材325は、新設下枠32の第1ホロー構造部321の室外側X1の端部から下方に延び、既設下枠22のガイドレール221b,221c間の上面22aに載置される。高さ調整部材325が調整されることによって、新設下枠32の室外側X1の既設下枠22の上面22aからの高さが調整される。
【0038】
新設下枠32の第1ホロー構造部321には、室外側X1に向けて突出する上下一対の突片3211が突設されている。一対の突片3211は、新設下枠32の長さ方向の全長に亘って延びている。一対の突片3211には、アルミニウム等の金属材からなる化粧材326が取り付けられている。化粧材326は、新設下枠32の長さ方向の全長に亘って延びている。化粧材326の上端部には、第1ホロー構造部321の一対の突片3211に係合可能な一対の係合片3261が室内側X2に向けて突設されている。化粧材326は、一対の係合片3261が第1ホロー構造部321の一対の突片3211の内側に室外側X1から嵌合することによって、新設下枠32に対して着脱可能に取り付けられている。化粧材326は、高さ調整部材325を覆うとともに、既設下枠22よりも見付け方向の下方に延出し、新設下枠32の見付け面を形成している。化粧材326は、既設下枠22の室外側X1の見付け面及び既設下枠22と外壁材102との間に露出するシーリング材104を室外側X1から覆い隠している。
【0039】
新設下枠32の最も室内側X2の部位には、新設下枠32を建物躯体100に固定するための取付部327が一体に設けられる。取付部327は、第2ホロー構造部322における室内側X2の端面322bの下部から室内側X2に向けて板状に延出している。
【0040】
取付部327の下面327aには、新設下枠32の長さ方向に延びる少なくとも一対の突条部3271が設けられる。一対の突条部3271は、取付部327の下面327aから僅かに下方に突出し、見込み方向に所定の間隔をあけて平行に配置される。
【0041】
矩形に四方組みされた状態の新設枠3において、新設下枠32は、既設下枠22から額縁部材101に亘る部位の内周側に配置される。新設下枠32の室内側X2の下面32aは、既設下枠22の室内側X2のガイドレール221aと額縁部材101とに亘って載置される。取付部327は、額縁部材101に当接している。四方組みされた新設枠3における新設下枠32は、室内側X2から取付部327及び額縁部材101を貫通するねじSC2によって、既設下枠22よりも室内側X2の建物躯体100に固定される。ねじSC2は、取付部327の一対の突条部3271の間を貫通する。一対の突条部3271は、額縁部材101に当接し、ねじSC2の締結トルクが作用した際の取付部327の変形を抑制する。取付部327は、新設下枠32において室内側X2に向けて突出しているため、室内側X2からのねじ打ち作業が容易である。新設下枠32は、中空の第1ホロー構造部321及び第2ホロー構造部322を有するため強度が高い。
【0042】
新設枠3が既設枠2の内周側に取り付けられた状態において、既設下枠22と新設下枠32との間には、新設下枠32を取り付けるための中間部材等の他の部材が介在していない。新設下枠32は、既設下枠22の内周面に直接的に上下に対面するように配置される。そのため、新設下枠32は、既設下枠22に可及的に近接して配置可能である。新設下枠32は、既設下枠22に固定されないため、既設下枠22に歪み等が生じていても、その歪みの状態に影響されずに取り付け可能である。ねじSC2は、既設下枠22と接触しないため、ねじSC2を介して既設下枠22と新設下枠32との間で熱が伝達されることもない。
【0043】
新設下枠32の一対のガイドレール324a,324bの間には、樹脂製もしくは木質由来材料製のレール間カバー3212が取り付けられる。レール間カバー3212は、一対のガイドレール324a,324bの間を覆っている。レール間カバー3212は、新設下枠32に伝わる外気温度が、新設下枠32の内周側に伝達されることを抑制する。
【0044】
図5に示すように、新設下枠32の第2ホロー構造部322には、樹脂製もしくは木質由来材料製のアングル部材328が取り付けられている。アングル部材328は、第2ホロー構造部322の室内側X2の端面322bよりも室内側X2に向けて延びるアングル部328aと、アングル部328aの室外側X1の端部から下方に延びる立壁部328bと、を有する。立壁部328bは、第2ホロー構造部322の室内側X2の端面322bが上方に延長するように第2ホロー構造部322に突設される突出部322dに室外側X1から重なるように配置されている。アングル部328aは、突出部322dの上端に係合して配置され、室内側X2に向けて延びている。アングル部328aは、ガイドレール324a,324bの上端の位置と略等しい位置に配置されている。
【0045】
アングル部材328の室外側X1には、樹脂製もしくは木質由来材料のカバー材3281が一体に設けられている。カバー材3281は、アングル部材328の立壁部328bから室内側X2のガイドレール324aに亘って、第2ホロー構造部322を覆うように設けられている。カバー材3281は、新設下枠32の温度が、新設下枠32の内周側に伝達されることを抑制する。アングル部材328は、突出部322dに対応する部位で、カバー材3281と分離して設けられていてもよい。
【0046】
次に、改装建具1の新設縦枠33について説明する。左右の新設縦枠33は、左右対称に配置される以外、実質的に同一の構造を有する。そのため、左右の新設縦枠33の共通する構成の部位については、同一の符号を用いて共通に説明する。
【0047】
新設縦枠33は、既設縦枠23の長さ方向に沿って上下方向に延びている。新設縦枠33は、既設縦枠23の室外側X1の端部から額縁部材101の見込み方向の中央部付近に亘る見込み方向の長さを有する。新設縦枠33は、アルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる。新設縦枠33は、図6及び図7に示すように、見込み方向に延びるように配置される2つの断面略矩形の中空の第1ホロー構造部331及び第2ホロー構造部332を有する。2つのホロー構造部331,332は、仕切り壁333を挟んで見込み方向に隣り合うように配置されている。第1ホロー構造部331の外側面331a及び第2ホロー構造部332の外側面332aは、いずれも平坦面であり、見込み方向に面一状に配置されている。
【0048】
図6に示すように、室外側X1から見て右側の新設縦枠33の第1ホロー構造部311の内側面331bには、見付け方向の内方に向けて突出する突出片3311が一体に設けられている。突出片3311は、新設縦枠33の長さ方向の全長に亘って延びている。突出片3311は、室外側X1の障子42が閉鎖状態にあるときに、該障子42の戸先側の縦框423と係合する。さらに、図7に示すように、室外側X1から見て左側の新設縦枠33の第2ホロー構造部332の内側面332bには、見付け方向の内方に向けて突出する突出片3321が一体に設けられている。突出片3321は、新設縦枠33の長さ方向の全長に亘って延びている。突出片3321は、室内側X2の障子41が閉鎖状態にあるときに、該障子41の戸先側の縦框413と係合する。
【0049】
新設縦枠33の第1ホロー構造部331の最も室外側X1の部位には、見付け方向の外方に向けて延びる室外側立壁部334が一体に設けられる。室外側立壁部334は、第1ホロー構造部331及び第2ホロー構造部332の外側面331a,332aよりもさらに見付け方向の外方に突出し、既設縦枠23の見付け面を形成する室外側X1の端面23aに対して、室外側X1から重なるように配置されている。
【0050】
新設縦枠33の第1ホロー構造部331には、室外側立壁部334の見付け方向の内方に隣接して、室外側X1に向けて突出する左右一対の突片3312が突設されている。一対の突片3312は、新設縦枠33の長さ方向の全長に亘って延びている。一対の突片3312には、アルミニウム等の金属材からなる化粧材335が取り付けられている。化粧材335は、新設縦枠33の長さ方向の全長に亘って延びている。化粧材335の見付け方向の内方の端部には、第1ホロー構造部331の一対の突片3312に係合可能な一対の係合片3351が室内側X2に向けて突設されている。化粧材335は、一対の係合片3351が第1ホロー構造部331の一対の突片3312の内側に室外側X1から嵌合することによって、新設縦枠33に対して着脱可能に取り付けられている。化粧材335は、既設縦枠23よりも見付け方向の外方に延出し、新設縦枠33の見付け面を形成している。化粧材335は、既設縦枠23の室外側X1の見付け面及び既設縦枠23と外壁材102との間に露出するシーリング材104を室外側X1から覆い隠している。
【0051】
新設縦枠33の最も室内側X2の部位には、新設縦枠33を建物躯体100に固定するために使用される取付部336が一体に設けられる。取付部336は、第2ホロー構造部332の室内側X2の端面332cから室内側X2に向けて板状に延出している。取付部336は、第1ホロー構造部331及び第2ホロー構造部332の外側面331a,332aと平行に配置される。
【0052】
取付部336の外側面336aには、新設縦枠33の長さ方向に延びる少なくとも一対の突条部3361が設けられる。一対の突条部3361は、取付部336の外側面336aから僅かに外方に突出し、見込み方向に所定の間隔をあけて平行に配置される。取付部336の外側面336aの位置は、第1ホロー構造部331及び第2ホロー構造部332の外側面331a,332aの位置よりも僅かに見付け方向の内側に配置される。一対の突条部3361は、取付部336の外側面336aから、第1ホロー構造部331及び第2ホロー構造部332の外側面331a,332aの位置に略等しい高さまで突出している。
【0053】
矩形に四方組みされた状態の新設枠3において、左右一対の新設縦枠33は、既設縦枠23から額縁部材101に亘る部位の内周側に配置される。図6及び図7に示すように、新設縦枠33と額縁部材101との間に隙間が形成される場合には、その隙間を埋めるようにスペーサ部材303が配置される。スペーサ部材303は、1枚以上のシートによって構成される。スペーサ部材303を構成するシートの厚み及びシートの積層数は、新設縦枠33と額縁部材101との間の隙間の大きさ等に応じて適宜設定される。取付部336は、スペーサ部材303に当接して重なっている。四方組みされた新設枠3における新設縦枠33は、室内側X2から取付部336、スペーサ部材303及び額縁部材101を貫通するねじSC3によって、既設縦枠23よりも室内側X2の建物躯体100に固定される。ねじSC3は、取付部336の一対の突条部3361の間を貫通する。一対の突条部3361は、スペーサ部材303に当接し、ねじSC3の締結トルクが作用した際の取付部336の変形を抑制する。取付部336は、新設縦枠33において室内側X2に向けて突出しているため、室内側X2からのねじ打ち作業が容易である。新設縦枠33は、中空の第1ホロー構造部331及び第2ホロー構造部332を有するため強度が高い。
【0054】
新設枠3が既設枠2の内周側に取り付けられた状態において、既設縦枠23と新設縦枠33との間には、新設縦枠33を既設縦枠23に取り付けるための中間部材等の他の部材が介在していない。新設縦枠33は、既設縦枠23の内周側に直接的に左右に対面するように配置される。そのため、新設縦枠33は、既設縦枠23に可及的に近接して配置可能である。新設縦枠33は、既設縦枠23に固定されないため、既設縦枠23に歪み等が生じていても、その歪みの状態に影響されずに取り付け可能である。ねじSC3は、既設縦枠23と接触しないため、ねじSC3を介して既設縦枠23と新設縦枠33との間で熱が伝達されることもない。
【0055】
図6及び図7に示すように、新設縦枠33の第2ホロー構造部332には、樹脂製もしくは木質由来材料製のアングル部材337が取り付けられている。アングル部材337は、室内側X2に向けて延びるアングル部337aと、アングル部337aの室外側X1の端部から外方に延びる立壁部337bと、立壁部337bの外端部から室外側X1に向けて延びる室外端部337cと、を有する。立壁部337bは、第2ホロー構造部332の室内側X2の端面332cに連続して該端面332cを内方に向けて延長するように第2ホロー構造部332に突設される突出部332dに室外側X1から重なるように配置されている。アングル部337aは、突出部332dの内端に係合して配置され、室内側X2に向けて延びている。アングル部材337の室外端部337cは、第2ホロー構造部332の内側面332bに沿って配置され、ねじ337dによって該内側面332bに固定されている。
【0056】
図6に示すように、室外側X1から見て右側の新設縦枠33の第2ホロー構造部332の内側面332bには、樹脂製もしくは木質由来材料製のカバー材3322が設けられる。カバー材3322は、アングル部材337の室外端部337cに連続して室外側X1に延びて、新設縦枠33の第2ホロー構造部332の内側面332bを覆っている。カバー材3322は、新設縦枠33に伝わる外気温度が、新設縦枠33の内周側に伝達されることを抑制する。
【0057】
ねじSC1,SC2,SC3によって固定された新設枠3の室内側X2の部位には、図4図7に示すように、樹脂材あるいはアルミニウム等の金属材からなる気密テープT1及び気密テープT2が貼着されている。
【0058】
気密テープT1は、第1の気密材である。気密テープT1は、既設枠2の室内側X2の端部から新設枠3の取り付け面である額縁部材101の内周面101aにかけて覆うように貼り付けられている。詳しくは、気密テープT1は、既設上枠21、既設下枠22及び既設縦枠23の最も室内側X2の室内側壁部211d,221d,231db室外側X1の面から額縁部材101の内周面101aに沿って室内側X2に延びるように貼着されている。気密テープT1の室内側X2の端部は、新設上枠31、新設下枠32及び新設縦枠33の取付部318,327,336よりも室内側X2に延出している。
【0059】
気密テープT2は、第2の気密材である。気密テープT2は、新設枠3の室内側X2の端部を覆うように貼り付けられている。詳しくは、気密テープT2は、新設上枠31、新設下枠32及び新設縦枠33の取付部318,327,336及びねじSC1,SC2,SC3の頭部を覆うとともに、取付部318,327,336よりもさらに室内側X2に延出している。取付部318,327,336よりも室内側X2に延出した気密テープT2は、額縁部材101の内周面101a上において気密テープT1と重なっている。これによって、既設枠2と新設枠3との間の気密性が高められる。
【0060】
建物躯体100に固定された後の新設枠3の室内側X2には、四周に亘って樹脂製の化粧カバー51,52,53が設けられる。化粧カバー51,52,53は、ねじ51a,52a,53aによってアングル部材319,328,337に取り付けられている。新設上枠31の化粧カバー51は、アングル部材319のアングル部319aに連続して室内側X2に向けて延びるとともに、額縁部材101に亘って配置される。新設下枠32の化粧カバー52は、アングル部材328のアングル部328aに連続して室内側X2に向けて延びるとともに、額縁部材101に亘って配置される。新設縦枠33の化粧カバー53は、アングル部材337のアングル部337aに連続して室内側X2に向けて延びるとともに、額縁部材101に亘って配置される。
【0061】
図4図7に示すように、化粧カバー51,52,53は、アングル部319a,328a,337aと面一状にアングル部319a,328a,337aの室内側X2に配置される断面矩形状の中空部510,520,530と、中空部510,520,530の室内側X2の側面510a,520a,530aの端部から額縁部材101に向けて延びる室内側カバー壁511,521,531と、アングル部材319,328,337に固定する固定部512,522,532と、を一体に有する。中空部510,520,530の側面510a,520a,530aと室内側カバー壁511,521,531とによって、化粧カバー51,52,53の室内側X2の見付け面が形成される。
【0062】
室内側カバー壁511,521,531には、複数の切り取り溝511a,521a,531aが形成されている。切り取り溝511a,521a,531aは、化粧カバー51,52,53の長さ方向に沿って平行に延びる複数の突条の付け根部に沿って形成される。複数の切り取り溝511a,521a,531aは、見付け方向に所定の間隔をおいて平行に設けられる。すなわち、新設上枠31及び新設下枠32の化粧カバー51,52の切り取り溝511a,521aは、上下方向に間隔をおいて平行に配置される。新設縦枠33の化粧カバー53の切り取り溝531aは、左右方向に間隔をおいて平行に配置される。室内側カバー壁511,521,531は、いずれかの切り取り溝511a,521a,531aに沿って、カッターの刃を滑らせることによって、あるいは手で折ることによって、簡単に切断することができる。そのため、アングル部材319,328,337のアングル部319a,328a,337aと額縁部材101との距離に応じて、作業者が現場において、室内側カバー壁511,521,531をいずれかの切り取り溝511a,521a,531aの部位で切断することによって、室内側カバー壁511,521,531の額縁部材101からの高さを容易に調整することができる。
【0063】
化粧カバー51,52,53の固定部512,522,532は、中空部510,520,530から室外側X1に向けて延びる固定部本体512a,522a,532aと、固定部本体512a,522a,532aの室外側X1の端部に見付け方向に延びるように設けられる当接板部512b,522b,532bと、固定部本体512a,522a,532aからアングル部319a,328a,337aの裏面に向けて突出する一対のねじ挿入板部512c,522c,532cと、によって構成される。固定部512,522,532の当接板部512b,522b,532bは、アングル部材319,328,337の立壁部319b,328b,337bに室内側X2から当接し、化粧カバー51,52,53の見込み方向の位置を規定している。ねじ51a,52a,53aは、アングル部319a,328a,337aを貫通し、一対のねじ挿入板部512c,522c,532cの間を通って固定部本体512a,522a,532aに螺入される。ねじ51a,52a,53aを締め付けた際、当接板部512b,522b,532b及びねじ挿入板部512c,522c,532cがアングル部319a,328a,337aの裏面に当接し、化粧カバー51,52,53の見付け方向の位置を規定する。したがって、化粧カバー51,52,53は、アングル部材319,328,337に対して適正な位置に位置決めされた状態で、位置ずれすることなく固定される。
【0064】
アングル部材319,328,337に固定された化粧カバー51,52,53は、アングル部材319,328,337と額縁部材101との間の新設上枠31、新設下枠32、新設縦枠33及びスペーサ部材301,303を室内側X2から覆っている。ねじSC1,SC2,SC3の頭部は、化粧カバー51,52,53の内側に配置される。化粧カバー51,52,53と額縁部材101との境目は、ねじ61a,62a,63aによって額縁部材101に固定される断面L字状の見切り材61,62,63によって四周に亘って遮蔽されている。上下の見切り材61,62の両端部は、縦の見切り材63の上下両端部に当接もしくは近接して配置される。見切り材61と見切り材63との境界部及び見切り材62と見切り材63との境界部は、それぞれコーナーピース64によって目隠しされる。
【0065】
図示しないが、化粧カバー51,52,53の内側には、四周に亘って断熱材が設けられてもよい。断熱材は、例えば、押出法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、ウレタン樹脂等の樹脂材、ゴム、あるいは真空断熱材等を含む断熱効果が望める材料で構成される。断熱材は、新設上枠31、新設下枠32及び新設縦枠33の長さ方向の全域に亘ってそれぞれ収容される。断熱材のそれぞれの両端部は、周方向に隣接する他の断熱材の両端部に対して接触もしくは近接して配置される。断熱材を設けることによって、改装建具1の新設枠3の見付け方向がコンパクトに構成されたものでありながらも、新設枠3における室外側X1と室内側X2との間の熱の伝達をさらに抑制することができる。そのため、改装建具1の断熱性能が向上する。
【0066】
次に、障子41,42について説明する。
【0067】
障子41,42は、それぞれ上框411,421と、下框412,422と、左右一対の縦框413,423と、を矩形に四方組みした框体の内側に、1枚以上のガラス等からなる面材414,424を納めることによって構成される。
【0068】
図4に示すように、上框411,421は、アルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる上框本体4111,4211と、上框本体4111,4211の室内側X2の側面をカバーする樹脂製のカバー部材4112,4212と、によって構成される。上框本体4111,4211は、新設上枠31のガイドレール314a,314bを見込み方向に挟むように設けられる。
【0069】
図5に示すように、下框412,422は、アルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる下框本体4121,4221と、下框本体4121,4221の室内側X2の側面をカバーする樹脂製のカバー部材4122,4222と、によって構成される。下框本体4121,4221は、新設下枠32のガイドレール324a,324bを見込み方向に挟むように設けられる。下框本体4121,4221の内部には、戸車4123,4223が設けられ、ガイドレール324a,324b上に転動可能に載置されている。
【0070】
図6及び図7に示すように、縦框413,423は、アルミニウム等の金属材によって長さ方向に押出し成形された押出形材からなる縦框本体4131,4231と、縦框本体4131,4231の室内側X2の側面をカバーする樹脂製のカバー部材4132,4232と、によって構成される。
【0071】
次に、新設枠3を既設枠2の内周側に取り付ける際の施工方法について、図8及び図9を参照して説明する。
【0072】
まず、図8に示すように、新設上枠31、新設下枠32及び一対の新設縦枠33を矩形に四方組みして新設枠3を形成する。その後、四方組みされた新設枠3を、室外側X1から室内側X2に引き込むようにして既設枠2の内周側に挿入する。このとき、図9に示すように、新設枠3の新設上枠31の室外側立壁部315は、既設上枠21の最も室外側X1のガイドレール211cの室外側面211c1に対して、室外側X1から対向するように配置される。室外側立壁部315の室内側X2の面には、ゴム等の弾性材料からなる複数の止水材3152が貼着されている。
【0073】
新設枠3をさらに室内側X2に向けて引き込むと、新設上枠31の室外側立壁部315は、既設上枠21のガイドレール211cの室外側面211c1に対して室外側X1から突き当てられ、新設枠3の見込み方向の位置が定まる。これによって、新設枠3は見込み方向の適切な位置に容易に位置決めされる。止水材3152は、室外側立壁部315とガイドレール211cとの間で押し潰されて、両者の隙間を封止する。詳細には図示しないが、新設枠3の一対の新設縦枠33の室外側立壁部334も、上記同様に、新設枠3を室内側X2に向けて引き込む際、既設縦枠23の室外側壁部231aに対して室外側X1から突き当てられる。そのため、新設枠3の見込み方向の位置決めをさらに適切に行うことができる。
【0074】
このようにして新設枠3を既設枠2の内周側に取り付けた後、図8に示すように、新設枠3の室外側X1の見付け面を形成する化粧材316,326,335を取り付ける。化粧材316,326,335は、既設枠2の見付け方向の寸法に合わせて、例えば、図10A図10Cに例示されるような適宜の見付け方向の寸法を有する化粧材316,326,335の中から選択して用いられる。さらに、新設枠3の室内側X2に、アングル部材319,328,337、化粧カバー51,52,53及び見切り材61,62,63がそれぞれ取り付けられた後、新設枠3の内側に障子41,42が納められる。
【0075】
図11及び図12は、他の実施形態に係る改装建具1Aを示している。上述した改装建具1と同一符号の部位は同一構成の部位を示すため、それらの説明は上記説明を援用し、以下においては省略する。
【0076】
図11及び図12に示す改装建具1Aは、オペレータハンドル仕様の縦辷り出し窓を例示している。障子7は、障子7の上下に突出する図示しない回動軸を中心に、新設枠3の内側に回動可能に納められる。新設下枠32には、障子7よりも室内側X2に、オペレータハンドル70が設けられている。障子7は、オペレータハンドル70の回転操作によって、回動軸を中心に室外側X1に向けて開放するように回動する。一方の新設縦枠33には、障子7を閉鎖状態にロックするためのロック機構711を操作する操作レバー71が設けられる。
【0077】
この改装建具1Aの新設枠3Aは、ガイドレールを有していない。改装建具1Aの新設下枠32は、新設下枠32の全体に亘る大きさの単一の中空部を持つホロー構造部320を有する。
【0078】
改装建具1Aの新設枠3Aには、上述した改装建具1の新設枠3に設けられるアングル部材319,328,337に代えて、これらのアングル部材319,328,337よりも見込み方向の寸法が大きなアングル部材3190,3280,3370が設けられている。アングル部材3190,3280,3370は、樹脂もしくは木質由来材料製である。オペレータハンドル70は、新設下枠32のアングル部材3280を介して、新設下枠32に取り付けられている。操作レバー71は、新設縦枠33のアングル部材3370を介して、一方の新設縦枠33に取り付けられている。
【0079】
改装建具1Aの新設枠3Aには、障子7の室内側X2に網戸72が設けられる。網戸72は、アングル部材3190,3280,3370の内周側に納められている。
【0080】
この改装建具1Aの新設枠3Aも、上記の改装建具1の新設枠3と同様の方法で既設枠2の内周側に取り付けられる。
【0081】
図13及び図14は、さらに他の実施形態に係る改装建具1Bを示している。上述した改装建具1と同一符号の部位は同一構成の部位を示すため、それらの説明は上記説明を援用し、以下においては省略する。
【0082】
図13及び図14に示す改装建具1Bは、カムラッチ仕様の縦辷り出し窓を例示している。障子7は、障子7の上下に突出する図示しない回動軸を中心に、新設枠3の内側に回動可能に納められる。障子7の一方の縦框701の室内側X2には、カムラッチハンドル73が設けられている。カムラッチハンドル73は、アングル部材3370を介して一方の新設縦枠33に設けられるロック溝731に係合することによって、障子7を閉鎖状態にロックする。
【0083】
この改装建具1Bの新設枠3Bは、上記の改装建具1Aの新設枠3Aと実質的に同一構成を有し、新設枠3Aと同様に、上記の改装建具1の新設枠3と同様の方法で既設枠2の内周側に取り付けられる。
【0084】
以上、本開示の改装建具の実施形態について説明したが、本開示の改装建具は適宜変更可能である。例えば、本開示の改装建具は、2枚の障子41,42を有する引き違い窓に限定されず、3枚以上の障子を有する引き違い窓であってもよいし、1枚だけの障子を有する片引き窓を構成するものであってもよい。さらに、本開示の改装建具は、辷り出し窓の他、FIX窓、上げ下げ窓、外倒し窓、内倒し窓、あるいは開き窓を構成するものであってもよい。
【0085】
上述した改装建具1において、新設枠3,3A,3Bを構成する新設上枠31、新設下枠32及び新設縦枠33は、それぞれ少なくとも1つのホロー構造部311,312、321,322、331,332、320を有するが、ホロー構造部は、新設枠3,3A,3Bを構成する新設上枠31、新設下枠32及び新設縦枠33のうちの少なくともいずれかに設けられていればよい。
【0086】
本開示の改装建具は、上述した改装建具1のように、室内側X2から室外側X1にかけて次第に高さが低くなるように形成される既設下枠22を有する既設枠2に適用されるものに限定されない。本開示の改装建具は、図8に示すように、一対のガイドレール221a,221bが同一高さで突設される既設下枠220を有する既設枠を改装する場合にも同様に適用可能である。
【0087】
本実施形態の改装建具1、1A、1Bは、以下の効果を有する。
【0088】
本実施形態の改装建具1、1A、1Bは、既設上枠21、既設下枠22及び一対の既設縦枠23を有して建物躯体100の開口部に取り付けられる既設枠2と、既設枠2の内周側に取り付けられる新設枠3,3A,3Bと、を有し、新設枠3,3A,3Bは、新設上枠31、新設下枠32及び一対の新設縦枠33を四方組みすることによって構成され、新設上枠31、新設下枠32及び一対の新設縦枠33のうちの少なくとも新設上枠31は、室外側X1の端部に、上方に突出する室外側立壁部315を有し、新設枠3,3A,3Bは、室外側立壁部315を既設上枠21の室外側X1の見付け面に室外側X1から突き当てることによって、見込み方向に位置決めされており、新設上枠31、新設下枠32及び一対の新設縦枠33の室外側X1の端部には、それぞれ室外側X1の見付け面を形成する化粧材316,326,335が取り付けられ、既設枠2の室外側X1の見付け面を覆い隠している。
【0089】
これによれば、四方組みされた新設枠3,3A,3Bを室外側X1から室内側X2に向けて引き込むだけで、新設上枠31の室外側立壁部315が既設上枠21のガイドレール211cの室外側面211c1に対して突き当たることによって、既設枠2の内周側において、新設枠3を見込み方向に適切に位置決めすることができる。既設枠2の室外側X1の見付け面は、新設枠3,3A,3Bの室外側X1の端部に取り付けられる化粧材3316,326,335によって目隠しされるため、改装建具1,1A,1Bは、新設枠3,3A,3Bを既設枠2に対して室外側X1から突き当てる突き当て構造を有するものでありながらも、意匠性に優れる。
【0090】
本実施形態において、新設上枠31、新設下枠32及び一対の新設縦枠33の少なくともいずれかは、室内外方向に延びる中空のホロー構造部311,312、321,322、331,332、320を有する。
【0091】
これによれば、新設枠3,3A,3Bの強度が向上するため、四方組みした際の形状保持性に優れるとともに、内側に納められる障子41,42、7の開閉動作時の衝撃及び風圧に対する耐久性も向上する。
【0092】
本実施形態において、既設枠2の室内側X2の端部から新設枠3,3A,3Bの取り付け面である額縁部材101の内周面101aにかけて覆うように貼り付けられた第1の気密材である気密テープT1と、新設枠3,3A,3Bの室内側X2の端部を覆う第2の気密材である気密テープT2と、を有し、気密テープT2は、新設枠3,3A,3Bの室内側X2の端部からさらに室内側X2に延出し、新設枠3,3A,3Bの取り付け面である額縁部材101の内周面101a上において気密テープT1と重なっている。
【0093】
これによれば、既設枠2と新設枠3,3A,3Bとの間の気密性が高められる。
【符号の説明】
【0094】
1,1A,1B 改装建具、 2 既設枠、 21 既設上枠、 22 既設下枠、 23 既設縦枠、 3,3A,3B 新設枠、 31 新設上枠、 32 新設下枠、 33 新設縦枠、 311,321,331 第1ホロー構造部、 312,322,332 第2ホロー構造部、 320 ホロー構造部、 315 室外側立壁部、 316,326,335 化粧材、 100 建物躯体、 T1 気密テープ(第1の気密材)、 T2 気密テープ(第2の気密材)、 X1 室外側、 X2 室内側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15