(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103412
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】顕微撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 21/36 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
G02B21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007711
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】尾形 洋一
(72)【発明者】
【氏名】コリチバ ニキタ
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AA09
2H052AC04
2H052AC17
2H052AC34
2H052AD32
2H052AF13
2H052AF15
2H052AF19
2H052AF22
(57)【要約】
【課題】観察対象を観察すると同時に付加的な情報を視認することが可能な顕微撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像方向の画像を撮像する撮像部(40)と、撮像部(40)から撮像方向に所定距離の位置に設けられた観察領域(30)と、第1画像(A1,R1)を投影する第1画像投影部(10)と、第1画像(A1,R1)を観察領域(30)の空間上に結像させる結像光学部(20)を備え、撮像部(40)は結像された第1画像(A1,R1)および観察領域(30)を撮像画像として撮像する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像方向の画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部から前記撮像方向に所定距離の位置に設けられた観察領域と、
第1画像を投影する第1画像投影部と、
前記第1画像を前記観察領域の空間上に結像させる結像光学部を備え、
前記撮像部は、結像された前記第1画像および前記観察領域を撮像画像として撮像することを特徴とする顕微撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の顕微撮像装置であって、
前記第1画像の結像位置を調整する画像結像位置調整部を有することを特徴とする顕微撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の顕微撮像装置であって、
レーザ光を照射するレーザ光源部を備え、
前記結像光学部は、前記レーザ光を前記観察領域の空間上に結像させ、
前記撮像画像には、結像された前記レーザ光を含むことを特徴とする顕微撮像装置。
【請求項4】
請求項3に記載の顕微撮像装置であって、
前記第1画像および前記レーザ光は、前記観察領域において虚像として結像されることを特徴とする顕微撮像装置。
【請求項5】
請求項3に記載の顕微撮像装置であって、
前記第1画像および前記レーザ光は、前記観察領域において実像として結像されることを特徴とする顕微撮像装置。
【請求項6】
請求項5に記載の顕微撮像装置であって、
結像された前記レーザ光を光ピンセットとして用い、前記観察領域内の観察対象を操作することを特徴とする顕微撮像装置。
【請求項7】
請求項3から6の何れか一つに記載の顕微撮像装置であって、
前記レーザ光の結像位置を調整するレーザ結像位置調整部を有することを特徴とする顕微撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、顕微鏡の接眼レンズ部分に撮像装置を取り付け、観察対象を撮像して外部に設けられた表示装置に映像を表示する顕微撮像装置が提案されている。このような顕微撮像装置では、撮像した映像を表示装置に表示するため、複数人で同時に観察対象を観察することができる。また、撮像装置で映像を撮像するため、映像データを保存して静止画像や動画像を記録することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来の顕微撮像装置では、観察対象を撮像装置で撮像しているだけであるため、観察内容は接眼レンズを用いた肉眼での観察と同じである。記録した映像データを用い、後工程で映像データ内に付加的な情報を合成することで、資料的価値や教育的価値を高めることは可能であるが、撮像と情報合成と視聴が別々の工程となるため、必要な情報量を即座に得ることは困難であった。
【0005】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、観察対象を観察すると同時に付加的な情報を視認することが可能な顕微撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の顕微撮像装置は、撮像方向の画像を撮像する撮像部と、前記撮像部から前記撮像方向に所定距離の位置に設けられた観察領域と、第1画像を投影する第1画像投影部と、前記第1画像を前記観察領域の空間上に結像させる結像光学部を備え、前記撮像部は、結像された前記第1画像および前記観察領域を撮像画像として撮像することを特徴とする。
【0007】
このような本発明の顕微撮像装置では、結像光学部で観察領域の空間上に結像された第1画像と観察領域を撮像部が撮像するため、第1画像として表示されるコンテンツと観察対象を実空間上に重ね合わせて表示し、観察対象を観察すると同時に付加的な情報を視認することが可能となる。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記第1画像の結像位置を調整する画像結像位置調整部を有する。
【0009】
また、本発明の一態様では、レーザ光を照射するレーザ光源部を備え、前記結像光学部は、前記レーザ光を前記観察領域の空間上に結像させ、前記撮像画像には、結像された前記レーザ光を含む。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記第1画像および前記レーザ光は、前記観察領域において虚像として結像される。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記第1画像および前記レーザ光は、前記観察領域において実像として結像される。
【0012】
また、本発明の一態様では、結像された前記レーザ光を光ピンセットとして用い、前記観察領域内の観察対象を操作する。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記レーザ光の結像位置を調整するレーザ結像位置調整部を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、観察対象を観察すると同時に付加的な情報を視認することが可能な顕微撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る顕微撮像装置100の概要を示す模式図である。
【
図2】撮像部40で撮像した映像例を示す写真であり、
図2(a)は画像A1位置に焦点を合わせた場合を示し、
図2(b)は画像R1位置に焦点を合わせた場合を示している。
【
図3】観察対象TTと画像A1,R1の結像の関係を模式的に示す図である。
【
図4】第2実施形態に係る顕微撮像装置110の概要を示す模式図である。
【
図5】撮像部40で撮像した映像例を示す写真であり、
図5(a)は光スポットL-A1位置に焦点を合わせた場合を示し、
図5(b)は光スポットL-R1位置に焦点を合わせた場合を示している。
【
図6】光スポットL-A1,L-R1の集光について測定した結果を示す図であり、上段は光スポットL-A1位置に焦点を当てた撮像の結果を示し、下段は光スポットL-R1位置に焦点を当てた撮像の結果を示している。
【
図7】観察対象TTと画像A1,R1、光スポットL-A1,L-R1の結像の関係を模式的に示す図である。
【
図8】光スポットL-A1,L-R1の利用例を示す模式図であり、上段は光スポットL-A1を用いた光ピンセットの例を示し、下段は光スポットL-R1を用いたマーキングの例を示す。
【
図9】第3実施形態に係る再帰反射部RRと反射部Mの変形例を示す模式図である。
【
図10】第4実施形態に係る顕微撮像装置120の概要を示す模式図である。
【
図11】励起光とドーナツ光による蛍光測定を説明する模式図であり、
図11(a)は励起光とドーナツ光の関係を示し、
図11(b)は測定される蛍光を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る顕微撮像装置100の概要を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態の顕微撮像装置100は、第1画像投影部10と、結像光学部20と、観察領域30と、撮像部40と、制御部50と、画像結像位置調整部51と、表示部60を備えている。
図1中において実線で示した矢印は、第1画像投影部10から照射された光の経路を模式的に示している。
図1に示したように、顕微撮像装置100では、第1画像投影部10から投影された画像A1,R1が撮像部40の撮像方向における空間中に結像される。
【0017】
第1画像投影部10は、画像A1,R1を構成する光を照射する装置であり、結像光学部20を介して撮像部40から所定距離に対して画像A1,R1を投影する。第1画像投影部10の構成は限定されず、バックライトを備えた液晶表示装置、自発光の有機EL表示装置、光源と変調素子を用いたプロジェクター装置等を用いることができる。第1画像投影部10が投影する画像A1,R1は、静止画でも動画であってもよい。
【0018】
結像光学部20は、第1画像投影部10から照射された画像光を空間に結像させる部分であり、複数の光学要素を組み合わせて構成されている。結像光学部20の具体的な構成は限定されないが、
図1に示した例では、第1ビームスプリッタBS1と、第2ビームスプリッタBS2と、再帰反射部RRと、反射部Mと、シャッターSH1,SH2と、ダイクロイックミラーDMとを備えている。
【0019】
第1ビームスプリッタBS1および第2ビームスプリッタBS2は、入射した光の一部を透過するとともに一部を反射する部材であり、表面に反射率を調整する膜が形成された部分反射板を用いることができる。第1ビームスプリッタBS1と第2ビームスプリッタBS2の傾斜方向は互いに反対であり、90度の角度で交差するように対向して配置されている。
【0020】
再帰反射部RRは、入射した光を入射方向に対して集光性を保ったまま反射させる光学部材であり、一例としては反射膜の表面側に微小なガラスビーズを敷き詰めた構造やプリズムを用いた構造を用いることができる。反射部Mは、入射した光を入射方向に対して正反射する光学部材であり、一例としては板状部材の表面に鏡面加工を施した構造のミラー等を用いることができる。
【0021】
シャッターSH1は、第2ビームスプリッタBS2と再帰反射部RRの間に配置されて光の透過と遮断を切り替える部分である。シャッターSH2は、第2ビームスプリッタBS2と反射部Mの間に配置されて光の透過と遮断を切り替える部分である。シャッターSH1,SH2の具体的な構成は限定されず、一例としては液晶シャッターを用いることができる。シャッターSH1,SH2のそれぞれで透過と遮断を切り替えることで、後述する画像A1,R1について結像と非結像を切り替えることができる。
【0022】
ダイクロイックミラーDMは、特定波長の光を反射し、その他の波長の光を透過する光学部材である。
図1に示した例では、ダイクロイックミラーDMは、第1画像投影部10から照射される光の波長を反射し、その他の可視光を透過するものを用いる。後述するように、ダイクロイックミラーDMで反射された光によって、実像である画像A1と虚像である画像R1が空間上で結像される。
【0023】
図1に示したように、第1画像投影部10から照射された光は、第1ビームスプリッタBS1で反射された後に第2ビームスプリッタBS2に到達する。第2ビームスプリッタBS2に到達した光の一部は反射されて再帰反射部RR方向に進行し、再帰反射部RRで再反射されて第2ビームスプリッタBS2に再入射する。ここで、再帰反射部RRに到達するまで光経が拡大して進行した光は、再帰反射部RRの再帰反射特性により、光経が縮小する光として第2ビームスプリッタBS2に入射する。第2ビームスプリッタBS2に再入射した光は、第2ビームスプリッタBS2を透過し、ダイクロイックミラーDMで反射されて、撮像部40に到達する。このとき、光径が縮小した光は、ダイクロイックミラーDMと撮像部40の間における第1距離で焦点を結び画像A1が実像として結像される。
【0024】
第2ビームスプリッタBS2に到達した光の残りの一部は透過して反射部M方向に進行し、反射部Mで再反射されて第2ビームスプリッタBS2に再入射する。第2ビームスプリッタBS2に再入射した光は、第2ビームスプリッタBS2で反射され、さらにダイクロイックミラーDMで反射されて撮像部40に到達する。このとき、反射部M、第1ビームスプリッタBS1およびダイクロイックミラーDMで反射された光は光経が拡大して進行するため、撮像部40からはダイクロイックミラーDMより後方の第2距離で焦点を結んで進行してきた光のように視認される。よって、ダイクロイックミラーDMよりも後方に画像R1が虚像として結像される。
【0025】
観察領域30は、撮像部40から所定距離の位置に設けられた、観察する対象(TT)を配置する領域である。
図1では画像R1よりも下方に観察領域30を配置した例を示しているが、画像R1または画像A1の結像位置と重ねて観察領域30を配置するとしてもよい。観察領域30を所望の位置に設定するために、移動可能な試料台等を用いるとしてもよい。
【0026】
撮像部40は、観察領域30方向を撮像する部分である。撮像部40の具体的な構成は限定されないが、一例としてCCDカメラやCMOSカメラを用いることができる。ここで、撮像部40が撮像する方向には、画像A1および画像R1の結像位置を含めておくことで、画像A1、画像R1と観察領域30を同時に撮像することができる。
【0027】
制御部50は、顕微撮像装置100の各部に接続されて、動作を制御する部分である。制御部50の構成は限定されないが、一例として情報処理を行うためのCPU(Central Processing Unit)や、メモリ装置、記録媒体、情報通信装置等を備え、予め定められたプログラムに従って各部の動作を制御する。また、制御部50は画像を含んだ情報を第1画像投影部10に送出する。
【0028】
画像結像位置調整部51は、画像A1と画像R1の結像位置を変化させる部分である。画像結像位置調整部51の具体的な構成は限定されないが、一例としては、第1画像投影部10の位置を上下方向および左右方向に移動させるモーター駆動装置等を用いることができる。画像結像位置調整部51の他の例としては、第1画像投影部10と第1ビームスプリッタBS1との光学的距離および相対位置を変化させる光学部材を用いることができる。
【0029】
表示部60は、撮像部40で撮像した映像を表示する部分である。表示部60の具体的な構成は限定されず、公知の液晶表示装置や有機EL表示装置、CRT表示装置等を用いることができる。
【0030】
画像A1および画像R1として結像された光は、撮像部40に到達する。したがって、撮像部40には画像A1、画像R1および観察領域30からの光が入射し、これらを一括して一画面内に撮像することができる。また、観察領域30と画像A1または画像R1の結像位置を近づけることで、観察領域30の位置に撮像部40の焦点距離を合わせた際に、結像位置の近い画像A1または画像R1と観察対象TTに同時にピントを合わせた撮像をすることができる。
【0031】
図2は、撮像部40で撮像した映像例を示す写真であり、
図2(a)は画像A1位置に焦点を合わせた場合を示し、
図2(b)は画像R1位置に焦点を合わせた場合を示している。
図2(a)に示したように、ダイクロイックミラーDMよりも撮像部40に近い位置(+L)に撮像部40の焦点を合わせることで、実像である画像A1にピントが合った撮像を行うことができる。また、
図2(b)に示したように、ダイクロイックミラーDMよりも撮像部40から遠い位置(-L)に撮像部40の焦点を合わせることで、虚像である画像R1にピントが合った撮像を行うことができる。
【0032】
図3は、観察対象TTと画像A1,R1の結像の関係を模式的に示す図である。
図3に示した例では、観察領域30を画像A1と画像R1の位置に設定して、それぞれの位置でマツモとミジンコを観察した場合を示している。このとき、マツモの近傍に結像する画像A1の表示内容をマツモに関する情報とし、ミジンコの近傍に結像する画像R1の表示内容をミジンコに関する情報としている。これにより、観察者が観察対象TTであるマツモやミジンコに撮像部40の焦点を合わせると、同時にマツモやミジンコの関連情報を表示部60に表示することができる。
【0033】
また、観察領域30内で観察対象TTが移動した場合には、画像結像位置調整部51を用いて画像A1,R1の結像位置を変化させて、観察対象TTの移動に追従させて近傍に画像A1,R1を結像させることができる。これにより、観察対象TTに最適な位置に画像A1,R1が表示され、観察者は画像A1,R1に表示されるコンテンツと観察対象TTとの関連性を強く意識した観察を行うことができる。
【0034】
図3に示した例では、観察領域30の2つの位置に観察対象TTが存在して、それぞれの近傍に画像A1と画像R1を結像させているが、画像A1と画像R1のどちらか一方のみを結像させるとしてもよい。画像A1のみを結像させる場合には、シャッターSH1を透過状態にして、シャッターSH2を遮断状態にする。画像R1のみを結像させる場合には、シャッターSH1を遮断状態にして、シャッターSH2を透過状態にする。
【0035】
上述したように、本実施形態の顕微撮像装置100では、結像光学部20で観察領域30の空間上に結像された画像A1,R1と観察領域30を撮像部40が撮像するため、画像A1,R1として表示されるコンテンツと観察対象TTを実空間上に重ね合わせて表示し、観察対象TTを観察すると同時に付加的な情報を視認することが可能となる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図4から
図8を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る顕微撮像装置110の概要を示す模式図である。
図4に示すように、本実施形態の顕微撮像装置110は、第1画像投影部10と、結像光学部20と、観察領域30と、撮像部40と、制御部50と、画像結像位置調整部51と、表示部60と、レーザ光源部70と、レーザ投影光学部80と、レーザ投影位置調整部90を備えている。
図1中において実線で示した矢印は、第1画像投影部10から照射された光の経路を模式的に示している。また、
図1中において一点鎖線で示した矢印は、レーザ光源部70から照射されたレーザ光の経路を模式的に示している。
図1に示したように、顕微撮像装置100では、第1画像投影部10から投影された画像A1,R1と、レーザ光源部70から投影された光スポットL-A1,L-R1が撮像部40の撮像方向における空間中に結像される。
【0037】
レーザ光源部70は、レーザ光を照射する光源である。レーザ光源部70の具体的な構成は限定されないが、半導体レーザを用いることができる。
図4に示した例では、波長532nmの緑色光を連続光として照射するレーザ発光装置を用いている。
【0038】
レーザ投影光学部80は、レーザ光源部70から照射されたレーザ光の光径や拡がり角度を調整して結像光学部20に照射する部分であり、複数の光学要素を組み合わせて構成されている。レーザ投影光学部80の具体的な構成は限定されないが、
図4に示した例ではアパーチャAPと、二分の一波長板HWPと、偏光子Pと、レンズと、反射部Mを備えている。
【0039】
レーザ投影位置調整部90は、光スポットL-A1,L-R1の結像位置を変化させる部分である。レーザ投影位置調整部90の具体的な構成は限定されないが、一例としては、レーザ光源部70およびレーザ投影光学部80の位置を上下方向および左右方向に移動させるモーター駆動装置等を用いることができる。
【0040】
図4に示したように、レーザ光源部70から照射された光は、レーザ投影光学部80で光径を拡大されながら第1ビームスプリッタBS1に入射する。第1ビームスプリッタBS1に入射したレーザ光は、第1ビームスプリッタBS1を透過して第2ビームスプリッタBS2に到達する。第2ビームスプリッタBS2に到達したレーザ光の一部は反射されて再帰反射部RRで再反射されて、ダイクロイックミラーDMで反射されて、撮像部40に到達する。このとき、レーザ光は再帰反射部RRでの再帰反射によって光径が縮小され、ダイクロイックミラーDMと撮像部40の間における第1距離で焦点を結び光スポットL-A1が実像として結像される。
【0041】
第2ビームスプリッタBS2に到達した光の残りの一部は透過して反射部M方向に進行し反射部Mで再反射されて、ダイクロイックミラーDMで反射されて撮像部40に到達する。このとき、反射部Mで反射されたレーザ光は光経が拡大して進行するため、撮像部40からはダイクロイックミラーDMより後方の第2距離で焦点を結んで進行してきた光のように視認される。よって、ダイクロイックミラーDMよりも後方に光スポットL-R1が虚像として結像される。
【0042】
本実施形態でも、画像A1および画像R1として結像された光は、撮像部40に到達する。また、光スポットL-A1,L-R1として結像されたレーザ光も、撮像部40に到達する。したがって、撮像部40には画像A1、画像R1、光スポットL-A1,L-R1および観察領域30からの光が入射し、これらを一括して一画面内に撮像することができる。ここで、画像A1と光スポットL-A1は、ダイクロイックミラーDMからの距離が同じ位置に実像として結像され、画像R1と光スポットL-R1は、ダイクロイックミラーDMからの距離が同じ位置に虚像として結像される。
【0043】
図5は、撮像部40で撮像した映像例を示す写真であり、
図5(a)は光スポットL-A1位置に焦点を合わせた場合を示し、
図5(b)は光スポットL-R1位置に焦点を合わせた場合を示している。
図5(a)に示したように、ダイクロイックミラーDMよりも撮像部40に近い位置(+L)に撮像部40の焦点を合わせることで、実像である画像A1および光スポットL-A1にピントが合った撮像を行うことができる。また、
図5(b)に示したように、ダイクロイックミラーDMよりも撮像部40から遠い位置(-L)に撮像部40の焦点を合わせることで、虚像である画像R1および光スポットL-R1にピントが合った撮像を行うことができる。
【0044】
図6は、光スポットL-A1,L-R1の集光について測定した結果を示す図であり、上段は光スポットL-A1位置に焦点を当てた撮像の結果を示し、下段は光スポットL-R1位置に焦点を当てた撮像の結果を示している。
【0045】
図6(a)は、撮像部40で光スポットL-A1位置に焦点を当てて撮像した画像であり、明瞭な光スポットL-A1と不明瞭な光スポットL-R1を確認できる。
図6(b)は、
図6(a)における光スポットL-A1の光強度をプロットしたグラフであり、狭い範囲に急峻な強度分布の集光であることが示されている。
図6(c)は、
図6(a)における光スポットL-R1の光強度をプロットしたグラフであり、広い範囲に拡がった強度分布の光として撮像されている。
【0046】
図6(d)は、撮像部40で光スポットL-R1位置に焦点を当てて撮像した画像であり、不明瞭な光スポットL-A1と明瞭な光スポットL-R1を確認できる。
図6(e)は、
図6(d)における光スポットL-A1の光強度をプロットしたグラフであり、広い範囲に強度分布が分散していることが示されている。
図6(f)は、
図6(a)における光スポットL-R1の光強度をプロットしたグラフであり、急峻な強度分布の集光であることが示されている。
【0047】
図7は、観察対象TTと画像A1,R1、光スポットL-A1,L-R1の結像の関係を模式的に示す図である。
図7に示した例では、画像結像位置調整部51およびレーザ投影位置調整部90を用いて、観察領域30内における観察対象TTの位置に、画像A1と画像R1、光スポットL-A1、L-R1の結像位置を設定する。このとき、観察対象TTであるマツモの近傍に結像する画像A1の表示内容をマツモに関する情報とし、ミジンコの近傍に結像する画像R1の表示内容をミジンコに関する情報としている。また、光スポットL-A1はマツモに照射して、光スポットL-R1はミジンコの位置に重ねている。
【0048】
図8は、光スポットL-A1,L-R1の利用例を示す模式図であり、上段は光スポットL-A1を用いた光ピンセットの例を示し、下段は光スポットL-R1を用いたマーキングの例を示す。図中においては、ダイクロイックミラーDMを傾斜した矩形状として示している。
【0049】
図8(a)は、ダイクロイックミラーDMと撮像部40の間の空間に光スポットL-A1を実像として結像した状態を示す模式図であり、
図8(b)は撮像部40から見た模式図である。光スポットL-A1の結像位置は、レーザ投影位置調整部90を用いて空間上のx軸方向、y軸方向、z軸方向に移動させることができる。
【0050】
光スポットL-A1は、ダイクロイックミラーDMと撮像部40の間において、レーザ光が実像として集光されたものであるため、光強度が十分に高い場合には、電場勾配によって微小な物体をトラップする光ピンセットとして機能させることができる。また、光スポットL-A1の結像位置をレーザ投影位置調整部90で移動させることで、微小な物体をトラップした状態で光スポットL-A1に追従させて操作することもできる。
【0051】
図8(c)は、ダイクロイックミラーDMよりも下方の空間に光スポットL-R1を虚像として結像した仮想的な状態を示す模式図であり、
図8(d)は撮像部40から見た模式図である。光スポットL-R1の結像位置は、レーザ投影位置調整部90を用いて空間上のx軸方向、y軸方向、z軸方向に移動させることができる。
【0052】
光スポットL-R1は、ダイクロイックミラーDMの撮像部40とは反対側において虚像として結像されたものであるため、結像位置には実際の光が集光されているわけでは無い。したがって、光スポットL-R1は光スポットL-A1とは異なり、結像位置に電場勾配によるトラップが生じず光ピンセットとしては機能しない。むしろ光スポットL-R1は、観察対象TTに影響を及ぼさない虚像として結像されているため、観察対象TTを指し示すマーキングとして用いることができる。また、光スポットL-R1の結像位置をレーザ投影位置調整部90で移動させることで、ミジンコ等の生物を観察対象TTとした場合に、観察対象TTが観察領域30内を動き回っても、観察対象TTに光スポットL-R1を追従させて、マーキングし続けることができる。
【0053】
本実施形態でも、光スポットL-A1のみを結像させる場合には、シャッターSH1を透過状態にして、シャッターSH2を遮断状態にする。光スポットL-R1のみを結像させる場合には、シャッターSH1を遮断状態にして、シャッターSH2を透過状態にする。
【0054】
上述したように、本実施形態の顕微撮像装置110では、レーザ投影光学部80と結像光学部20で観察領域30の空間上に結像された光スポットL-A1,L-R1と観察領域30を撮像部40が撮像する。これにより、観察対象TTを観察しながら光スポットL-A1を光ピンセットとして用いて、観察対象TTのトラップや移動を行うことができる。また、観察対象TTに影響を与えず光スポットL-R1をマーキングとして用いることができる。
【0055】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図9を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態および第2実施形態では、再帰反射部RRおよび反射部Mを平坦面で構成していたが、本実施形態では再帰反射部RRまたは反射部Mの反射面形状を変化させることで、画像A1,R1と光スポットL-A1,L-R1の結像位置を変化させる。
【0056】
図9は、本実施形態に係る再帰反射部RRと反射部Mの変形例を示す模式図である。
図9に示すように、再帰反射部RRまたは反射部Mの反射面を扇形に形成し、扇形の中心が頂角となるように円錐形状を組み立てる。
図9(a)~
図9(c)は、扇形の中心角度が違う場合における光の反射について模式的に示している。
図9(a)に示すように扇形の中心角度が小さい場合には、円錐形状の頂角も小さくなり、平行に入射してきた光は、反射された後に近い位置に集光される。それに対して、
図9(c)に示すように扇形の中心角度が大きい場合には、円錐形状の頂角も大きくなり、平行に入射してきた光は、反射された後に遠い位置に集光される。
【0057】
本実施形態では、再帰反射部RRまたは反射部Mとして扇形の中心角度を大きくしておき、円錐形状の頂角と斜面を変更可能に構成することで、反射された後の画像A1,R1と光スポットL-A1,L-R1の結像位置を変化させることができる。
【0058】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図10、
図11を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図10は、本実施形態に係る顕微撮像装置120の概要を示す模式図である。
図10に示すように、本実施形態の顕微撮像装置120は、第1画像投影部10と、結像光学部20と、観察領域30と、撮像部40と、制御部50と、画像結像位置調整部51と、表示部60と、ドーナツ光源部70aと、励起光源部70bと、レーザ投影光学部80とを備えている。
【0059】
ドーナツ光源部70aは、円環状の光分布を有する励起光を照射するレーザ光源である。励起光源部70bは、円形状の光分布を有するドーナツ光(STED光:Stimulated emission depletion)を照射するレーザ光源である。レーザ投影光学部80の具体的な構成は限定されないが、
図10に示した例では反射部Mと第3ビームスプリッタBS3を用いている。
【0060】
ドーナツ光源部70aから照射される円環状のドーナツ光は、第3ビームスプリッタBS3、第2ビームスプリッタBS2、再帰反射部RRおよびダイクロイックミラーDMで反射されてL-A1位置に実像として結像される。励起光源部70bから照射される円形状の励起光は、反射部M、第2ビームスプリッタBS2、再帰反射部RRおよびダイクロイックミラーDMで反射されてL-A1位置に実像として結像される。したがって、光スポットL-A1は、円環状のドーナツ光の中心に円形状の励起光が結像されたものとなる。
【0061】
図11は、励起光とドーナツ光による蛍光測定を説明する模式図であり、
図11(a)は励起光とドーナツ光の関係を示し、
図11(b)は測定される蛍光を示すイメージ図である。
図11(a)(b)に示した例では、左側に示したようにドーナツ光の径が大きい場合に観測される蛍光の解像度が低く、右側に示したようにドーナツ光の径が小さい場合には観測される蛍光の解像度が高い。
【0062】
本実施形態の顕微撮像装置120では、観察対象TTに励起光とドーナツ光を実像として結像されることで、高解像度な蛍光による観測を行うことができる。
【0063】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態および第2実施形態では、シャッターSH1,SH2を用いて画像A1,R1と光スポットL-A1,L-R1の結像を切り替えたが、シャッターSH1,SH2に代えて、透過波長帯域の異なるバンドパスフィルターBPF1,BPF2を用いるとしてもよい。
【0064】
画像A1と光スポットL-A1を投影する波長λ1は、バンドパスフィルターBPF1を透過し、バンドパスフィルターBPF2で遮断されるものを選択する。また、画像R1と光スポットL-R1を投影する波長λ2は、バンドパスフィルターBPF1で遮断され、バンドパスフィルターBPF2を透過するものを選択する。これにより、第1画像投影部10とレーザ光源部70から波長λ1で光を照射した場合には、画像A1と光スポットL-A1が実像として結像され、波長λ2で光を照射した場合には、画像R1と光スポットL-R1が虚像として結像される。
【0065】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態および第2実施形態では、予め定められたコンテンツを観察対象TTの近傍に結像したが、撮像した観察対象TTを画像認識技術を用いて解析し、解析された結果に基づいて観察対象TTの近傍に結像する画像A1,R1のコンテンツを選択または自動生成するとしてもよい。
【0066】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
100,110,120…顕微撮像装置
10…第1画像投影部
20…結像光学部
30…観察領域
40…撮像部
50…制御部
51…画像結像位置調整部
60…表示部
70…レーザ光源部
70a…ドーナツ光源部
70b…励起光源部
80…レーザ投影光学部
90…レーザ投影位置調整部