(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103414
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】トリガー操作式内容物放出機構、およびこのトリガー操作式内容物放出機構を備えたポンプ式製品
(51)【国際特許分類】
B05B 11/00 20230101AFI20240725BHJP
B65D 47/34 20060101ALI20240725BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240725BHJP
B05B 11/10 20230101ALI20240725BHJP
F04B 9/14 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B05B11/00 102G
B65D47/34 100
B65D83/00 K
B05B11/00 102E
B05B11/10 102G
B05B11/10 102E
F04B9/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007713
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100097593
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 治幸
(72)【発明者】
【氏名】菅野 博史
【テーマコード(参考)】
3E014
3E084
3H075
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB01
3E014PC02
3E014PC03
3E014PD12
3E014PE01
3E014PE30
3E014PF10
3E084AB01
3E084AB06
3E084AB09
3E084AB10
3E084BA02
3E084GA01
3E084GB01
3E084GB17
3E084KB06
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD22
3H075AA01
3H075BB03
3H075CC25
3H075CC40
3H075DA02
3H075DA04
3H075DB13
(57)【要約】
【課題】内容物噴射操作による断続的なポンプ作用を平均化して連続的な噴射を可能としたトリガー操作式内容物放出機構において、内容物の噴射効率の向上化と利用者による噴射操作感の向上化を図る。
【解決手段】トリガー10後方への操作にともなって容積が減少する加圧室4j、加圧室4jから押し出された内容物が貯留路Bを通って流入しその圧力増加にともない容積が拡大する放出路Cに連通した貯留室4q、容器本体から加圧室4jとの間の内容物の流入路Aに設けられた上流弁2a、および加圧室4jと貯留室4qとの間の貯留路Bに設けられた下流弁4kを備え、これらを下から上に上流弁2a、加圧室4j、下流弁4k、貯留室4qの順に配置し、またトリガー10後方への操作にともなって容積が減少する加圧室4jの加圧シリンダー4aをその内周面の中心軸線が下側前方から上側後方に配置して内周面の後方上側端部4bから内容物が流出可能とした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容された容器本体の上側開口部に装着される装着部と、
上側前方に設けられ内容物を外部空間域に放出する噴射口と、
前記装着部と前記噴射口との間の前方に配設され後方に操作可能なトリガーと、
前記トリガーの後方に設けられ前記トリガーの後方への操作にともなって容積が減少する加圧室と、
流入する内容物の圧力増加にともない容積が拡大する貯留室と、
前記容器本体の内部と前記加圧室との間に設けられた逆止弁であって前記加圧室の減圧時に通過を許容する上流弁と、
前記加圧室と前記貯留室との間に設けられた逆止弁であって前記加圧室の加圧時に通過を許容する下流弁と、を備え、
前記加圧室は、円筒状の加圧シリンダーとこの加圧シリンダーに摺動可能に格納され前記トリガーの後方への操作により付勢に抗して後方に駆動される加圧ピストンとで区画され、
前記貯留室は、貯留シリンダーとこの貯留シリンダーに摺動可能に格納され容積が減少する方向に付勢された貯留ピストンとで区画され、
内容物が前記トリガーの操作および開放にともなう前記加圧室の流入出によって前記貯留室に流入しつつ前記上流弁および前記下流弁を通じて前記噴射口より前方に放出される、トリガー操作式内容物放出機構において、
下から上に前記上流弁、前記加圧室、前記下流弁、前記貯留室の順に配置され
前記加圧シリンダーは、
その内周面の中心軸線が下側前方から上側後方に配置され、内周面の後方上側端部から内容物が流出可能である
ことを特徴とするトリガー操作式内容物放出機構
【請求項2】
前記加圧シリンダーは、
その外周面の後方下側から内容物が流入可能である、
ことを特徴とする請求項1記載のトリガー操作式内容物放出機構
【請求項3】
前記装着部は、
前記容器本体の内容物を前記上流弁に導く吸上管が前記装着部の中央より前方にずれたかたちで垂下した態様で設けられた、
ことを特徴とする請求項1または2記載の内容物放出機構。
【請求項4】
請求項1または2記載の内容物放出機構を備え、かつ、内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放出対象内容物を収容した容器本体に装着して使用するトリガー操作式内容物放出機構に関する。
【0002】
特に、利用者のトリガー操作による断続的なポンプ作用を平均化して連続的な噴射を可能としたトリガー操作式内容物放出機構に関する。
【0003】
本明細書では単なる説明の便宜上、内容物が外部空間域に放出される方向、すなわち
図1,
図2および
図3の左方向を「前」といい、その逆方向を「後」という。
【背景技術】
【0004】
従来、利用者によるトリガー操作による断続的なポンプ作用を平均化して連続的な噴射を可能としたトリガー式液体噴出器が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
このトリガー式液体噴出器では、操作による加圧用の主シリンダ(符号53)の出力弁と外部空間域への噴射孔との間に圧力に応じて内部空間が拡大し内容物を貯留する貯留シリンダ(符号90)を設けて、トリガーが操作されるときに噴射孔へ送られる内容物の一部を貯留シリンダ内に貯留し、トリガーが復帰するとき貯留シリンダ内の内容物を貯留プランジャ(符号110)の作用で噴射孔から外部空間域に放出する。
【0006】
トリガーの操作時とその操作を解除した復帰時との間を連続して噴射孔に内容物を供給できるようにして連続的な噴射を可能としている。
【0007】
そして、各シリンダや各通路部に内容物が充填されていない初期状態での操作において、圧縮・膨張して内容物の吸い上げの妨げとなる主シリンダ内の空気を窪み部(符号181)および連通路(符号180)を介して容器体(符号A)に積極的に排出することで、内容物の吸い上げを容易としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの内容物放出機構では、加圧用の主シリンダーの軸方向配置が水平方向となっているため、主シリンダー内や通路に残留した空気が上方に排出されにくく、その空気が操作ごとに圧縮・膨張して主シリンダーへの内容物の吸い込み量や送り出し量が低下し操作に対する噴射量が少なくなることや、噴射操作開始と内容物噴射開始との時間差が大きくなって利用者による噴射操作感が悪化するという問題点が十分に解決されていなかった。
【0010】
そこで本発明では、加圧用のシリンダーの内容物流入出側端部が上側となるような斜め配置として、その内周面の端部上側から残留した空気が積極的に排出されるようにして、噴射操作による内容物の噴射効率の向上化と利用者による噴射操作感の向上化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
【0012】
(1)内容物が収容された容器本体(例えば後述の容器本体1)の上側開口部に装着される装着部(例えば後述の装着部2)と、
上側前方に設けられ内容物を外部空間域に放出する噴射口(例えば後述の噴射口9a)と、
前記装着部と前記噴射口との間の前方に配設され後方に操作可能なトリガー(例えば後述のトリガー10)と、
前記トリガーの後方に設けられ前記トリガーの後方への操作にともなって容積が減少する加圧室(例えば後述の加圧室4j)と、
流入する内容物の圧力増加にともない容積が拡大する貯留室(例えば後述の貯留室4q)と、
前記容器本体の内部と前記加圧室との間に設けられた逆止弁であって前記加圧室の減圧時に通過を許容する上流弁(例えば後述の上流弁2a)と、
前記加圧室と前記貯留室との間に設けられた逆止弁であって前記加圧室の加圧時に通過を許容する下流弁(例えば後述の下流弁4k)と、を備え、
前記加圧室は、円筒状の加圧シリンダー(例えば後述の加圧シリンダー4a)とこの加圧シリンダーに摺動可能に格納され前記トリガーの後方への操作により付勢に抗して後方に駆動される加圧ピストン(例えば後述の加圧ピストン5)とで区画され、
前記貯留室は、貯留シリンダー(例えば後述の貯留シリンダー4m)とこの貯留シリンダーに摺動可能に格納され容積が減少する方向に付勢された貯留ピストン(例えば後述の貯留ピストン7)とで区画され、
内容物が前記トリガーの操作および開放にともなう前記加圧室の流入出によって前記貯留室に流入しつつ前記上流弁および前記下流弁を通じて前記噴射口より前方に放出される、トリガー操作式内容物放出機構において、
下から上に前記上流弁、前記加圧室、前記下流弁、前記貯留室の順に配置され
前記加圧シリンダーは、
その内周面の中心軸線が下側前方から上側後方に配置され、内周面の後方上側端部(例えば後述の後方上側端部4b)から内容物が流出可能である、
構成態様のものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記加圧シリンダーは、
その外周面の後方下側(例えば後述の流入孔4c)から内容物が流入可能である、
構成態様のものを用いる。
(3)上記(1),(2)において、
前記装着部は、
前記容器本体の内容物を前記上流弁に導く吸上管(例えば後述の吸上管12)が前記装着部の中央より前方にずれたかたちで垂下した態様で設けられた、
構成態様のものを用いる。
【0013】
このような構成からなるトリガー操作式内容物放出機構およびこれを用いたポンプ式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上の構成をとることにより、
噴射操作による内容物の噴射効率の向上化と利用者による噴射操作感の向上化
を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】トリガー操作式内容物放出機構の非トリガー操作状態を示す説明図である。
【
図3】
図2のトリガー操作状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至
図3を用いて、本発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
なお、以下のアルファベット付き参照符号の構成要素(例えば通気孔2b)は原則として、当該参照符号の数字部分の構成要素(例えば装着部2)の一部であることを示している。
【0018】
ここで、
図1~
図3において、
1は放出対象の内容物を収容する容器本体,
2は容器本体1の上部に設けられた開口部に後述のガスケット16を挟んで密着固定される装着部,
2aは後述の吸上管12の上側に設けられ、装着部2側のすり鉢状の弁座と後述の上流弁体13との間で下方向への流れの逆止作用を呈する上流弁,
2bは装着部2の下面に開口し後述の通気路4rの終端孔となる通気孔,
3は装着部2外周部の上面に当接するかたちで容器本体1開口部の外周部に螺合し装着部2をこの開口部に固定するネジキャップ,
4は装着部2の上部に嵌合するポンプ本体,
4aはポンプ本体4の前方下部に前方下向きの傾斜態様で設けられ、後述の加圧ピストン5を摺動可能に収容する加圧シリンダー,
4bは加圧シリンダー4aの内周面の最上位置である後方上側端部,
4cは加圧シリンダー4aの後方下側端部に設けられ、上流弁2a下流側からの内容物を加圧シリンダー4aに導入する流入孔,
4dは上流弁2aの周囲を通って通気路4rに連通し、外部空間域から外気を導入して容器本体1の内容物減少に伴う負圧化を解消する給気孔,
4eは加圧シリンダー4aの内周面に設けられて、噴射操作によって後退した加圧ピストン5の外周前方シールの気密を解除して外部空間域と給気孔4dとを連通する給気溝,
4fは加圧ピストン5の内周シールを案内する加圧ピストンガイド,
4gは加圧ピストンガイド4fの外周面に設けられて、噴射操作によって後退した加圧ピストン5の内周シールの液密を解除し加圧ピストンガイド4fの内部を介して加圧室4jと通気路4rとを連通する排気溝,
4hは加圧ピストン5に当接して最後退位置を設定するリブ状部,
4jは加圧シリンダー4aと後述の加圧ピストン5とで区画される加圧室,
4kは加圧シリンダー4aの上側に設けられ、ポンプ本体4側の環状段部と後述の下流弁体14との間で後方向への流れの逆止作用を呈する下流弁,
4mはポンプ本体4の上部後方に後方より水平方向に開けられた底孔部態様で設けられ、後述の貯留ピストン7を摺動可能に収容し、内容物が下流弁4kから前方下部より流入して前方の後述の流出孔4sより流出する貯留シリンダー,
4nは通気路4rに連通して後述の貯留室4qに過剰に貯留された内容物を排出する排圧孔,
4pは貯留シリンダー4mの流入部より後方に設けられ、貯留ピストン7が後退したときに貯留室4qに露出して排圧孔4nと貯留室4qとを連通する排圧溝,
4qは貯留シリンダー4mと後述の貯留ピストン7とで区画される貯留室,
4rは放出されずに容器本体1に戻る内容物や負圧化解消のための外気が流入する通気路,
4sは貯留シリンダー4mの前面に設けられた後述の噴射口9aに続く後述の放出路Cの入り口であって、後述の凸部7aとともに蓄圧弁を構成する流出孔,
5は後面に加圧ピストンガイド4fを収容する凹部と外周部に内容物加圧用の外周後方シールと外気導入選択用の外周前方シールと凹部の開口部に排気用の内周シールとを備えた加圧ピストン,
6は加圧ピストンガイド4fに収容され加圧ピストン5を前方下向きに付勢するスプリング,
7は有底円筒状で、前端外周の前側シールと後端外周の後側シールとを備えた貯留ピストン,
7aは貯留ピストン7の底部外側となる前面に設けられて貯留室4qの圧力が低いときに貯留シリンダー4m前面の流出孔4sを塞いで蓄圧弁の作用を呈する凸部,
8は貯留ピストン7を前方に付勢する貯留スプリング,
9は前面に内容物拡散用のノズルチップを備えポンプ本体4の前方上部に嵌合する噴射部材,
9aはノズルチップの前方に開口し、貯留室4qからの内容物を外部空間域に放出する噴射口,
10は噴射部材9の下側に垂下する態様でポンプ本体4に回動可能に係合し、利用者の操作力を当接する加圧ピストン5に伝達するトリガー,
11はポンプ本体4の前面以外を覆うかたちで設けられたポンプカバー,
12は装着部2の下側の垂下円筒部に嵌合して、容器本体1の下部から内容物を吸い上げる吸上管,
13は上流弁2aの筒状部に収容された球状の上流弁体,
14は前方の環状基部と開口側外周にフランジ段部を有する有底円筒状の後方の弁体部とそれらの間に一体成型されたスプリング状部とからなる下流弁体,
15は下流弁体14の前端に当接してこれを保持するかたちでポンプ本体4の前面孔部に液密に嵌合する有底円筒部材あって、底部外側となる後面に内容物の流路となる溝が複数設けられた封止栓,
16は容器本体1と装着部2との間に設けられた内容物漏洩防止用のガスケット,
17は貯留スプリング8の後端を保持するかたちで貯留シリンダー4mの後端に係合し、貯留ピストン7が後退したときに当接して最後退位置が設定する貯留シリンダー蓋,
Aは加圧室4jが負圧化したときに「容器本体1-上流弁2a-流入孔4c-加圧室4j」の経路で内容物が流れる流入路,
Bは加圧室4jの内容物が加圧されたときに「加圧室4j-下流弁4k-封止栓15の溝-貯留室4q」の経路で内容物が流れる貯留路,
Cは貯留ピストン7が後退し凸部7aが流出孔より離間したときに内容部の圧力によって
「貯留室4q-流出孔4s-噴射部材9の内部通路-噴射口9a」の経路で内容物が流れ外部空間域へ放出される放出路
をそれぞれ示している。
【0019】
ここで、装着部2,ネジキャップ3,ポンプ本体4,加圧ピストン5,貯留ピストン7,噴射部材9,トリガー10,ポンプカバー11,吸上管12,下流弁体14,封止栓15および貯留シリンダー蓋17は例えばポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0020】
また、容器本体1は例えばプラスチック製,金属製,ガラスのものであり、スプリング6,貯留スプリング8および上流弁体13は例えばプラスチック製,金属製のものであり、ガスケット16は例えゴム製,エラストマー製のものである。
【0021】
図1および
図2は、トリガー操作式内容物放出機構の非トリガー操作状態を示している。このうち
図2は、
図1の噴射部材9や貯留シリンダー蓋17などを捨象するかたちで拡大したポンプ本体4付近を示している。
【0022】
トリガー10は後方の凸部に当接する加圧ピストン5とともにスプリング6によって前方に付勢されているが、トリガー10の回動範囲は規制されており、
図1の状態より前方に回動することはない。そのため加圧ピストン5が前進して加圧シリンダー4aより脱落することはない。
【0023】
加圧室4jに収容された内容物に残留した空気は、加圧シリンダー4aの内周面にそって後方に移動し、後方上側端部4bから円滑にその上側にある下流弁4kへ浮上する。
【0024】
また、加圧シリンダー4aと上流弁2aとの間の空間域の内容物に残留した空気は、加圧シリンダー4aの外周面にそって円滑に後方の流入孔4cへ移動する。
【0025】
流入孔4c下側の周囲や後方上側端部4bには下向きの段部がないため、それらに空気が引っかかって滞留することがない。
【0026】
上流弁2aは装着部2側のすり鉢状弁座に上流弁体13が自重で密接し、下流弁4kは下流弁体14の弁体部がポンプ本体4側の環状段部に密接し、ともに閉状態である。
【0027】
貯留ピストン7は貯留スプリング8によって前方付勢され、凸部7aが貯留シリンダー4m前面の流出孔4sを塞いで噴射口9aへの流路を遮断し、貯留室4qの容積は最小に設定されている。
【0028】
図3は、トリガー操作式内容物放出機構のトリガー操作状態であって、噴射部材9や貯留シリンダー蓋17などを捨象するかたちで拡大したポンプ本体4付近を示している。
【0029】
トリガー10の後方への操作によって当接する加圧ピストン5もスプリング6に抗してリブ状部4hに当接するまで後退し、加圧室4jの容積は最小となって収容された内容物は加圧される。
【0030】
このとき、上流弁2aは装着部2側のすり鉢状弁座に上流弁体13が自重に加え加圧室4jからの内容物の圧力で密接し閉状態を維持し、下流弁4kは同じく内容物の圧力で下流弁体14の弁体部がポンプ本体4側の環状段部にから離間し開状態である。
【0031】
そして、加圧室4jの内容物は開状態となった下流弁4kと封止栓15の溝を通って貯留室4qに貯留路Bのように流入する。
【0032】
この流入する内容物の圧力による貯留シリンダー4mの後退力が貯留スプリング8の付勢力より優勢になると貯留シリンダー4mは後退し、凸部7aが貯留シリンダー4m前面の流出孔4sから離間した蓄圧弁の開状態となって貯留室4qの内容物は噴射口9aから放出路Cのように外部空間域へ放出される。
【0033】
この蓄圧弁の作用によって内容物は十分な圧力によって放出され、噴射口9aからの液垂れや不十分な噴射拡散を防止することができる。
【0034】
さらに多くの内容物が貯留シリンダー4mに流入し圧力が増加すると、貯留ピストン7はさらに後退して貯留室4qに内容物を貯留する。
【0035】
貯留室4qに内容物が流入し続けると、後退した貯留ピストン7の前側シールが排圧溝4pの前端を超えて排圧溝4pが貯留室4qに露出する。そして貯留室4qの内容物が排圧溝4p,排圧孔4nおよび通気孔2bを通じて容器本体1内に流出し貯留ピストン7の過度な後退を防止する。さらに貯留室4qへの内容物の流入が排圧溝4pからの流出を越えるときには貯留ピストン7の後端部が貯留シリンダー蓋17に当接してそれ以上の後退を阻止する。
【0036】
加圧ピストン5の後退によって、給気溝4eが外部空間域に露出し、外気が給気溝4e,給気孔4d,通気路4rおよび通気孔2bを通じて容器本体1内に供給され内容物の減少にともなう負圧化が防止される。
【0037】
図3の状態から、トリガー10への操作を解除すると、スプリング6の付勢力で加圧ピストン5が前方に復帰し加圧室4jが負圧化する。
【0038】
そして下流弁体14の弁体部がポンプ本体4側の環状段部に密接し下流弁4kが閉状態となり、上流弁2aは装着部2側のすり鉢状弁座から上流弁体13が浮き上がり開状態となって、吸上管12,上流弁2aおよび流入孔4cを通じて容器本体1の内容物が加圧室4jに流入路Aのように流入する。
【0039】
このとき貯留室4qには内容物が流入しなくなるが、貯留ピストン7で付勢された貯留シリンダー4mが前進して貯留室4qに貯留された内容物を継続的に噴射口9aより放出する。
【0040】
トリガー10の操作・開放を繰り返すことで、容器本体1の内容物は噴射口9aから途切れずにほぼ一定の流勢で放出し続けることができる。
【0041】
この過程で各シリンダーや各通路内の内容物に残留する空気は内容物とともに効率的に噴射口9aより排出されるため、噴射操作による内容物の噴射効率が向上し、また利用者による噴射操作感が向上する。
【0042】
特に加圧シリンダー4aは太く、他の流路の細い部分と比較して内容物の流れが遅いため、残留する空気の押し流す効果が少ないが、加圧シリンダー4aを後方上向きに傾斜配置とすることでこの空気を下流側に積極的に追いやって排出を促すことができる。
【0043】
また、吸上管12を装着部2の中央より前方とすることで、前面側に配置される加圧室4jの下に上流弁2aと吸上管12を上下方向にならべて配置が可能となり、空気溜まりの起きにくい直線的な流入路Aを形成している。
【0044】
このように、下から上に上流弁2a,加圧室4j,下流弁4kおよび貯留室4qの順で配置することで、内容物中を残留空気か上昇する作用を積極的に利用して排出を促している。
【0045】
なお、内容物が各シリンダーや各通路部に充填されておらず代わりに空気が満たされている初期状態では、トリガー10を操作しても加圧室4jの容積変化に応じて収容された空気が圧縮・膨張するため十分な圧力差が生じず容器本体1からの内容物の吸い込みや貯留室4qへ空気の送り出しが困難でいつまでも内容物が加圧室4jに流入しないため、加圧ピストン5が最後退位置付近のときに、加圧ピストン5の内周シールと排気溝4gの間から加圧された空気を加圧ピストンガイド4fの内部,通気路4rおよび通気孔2bを通じて容器本体1内に逃がして加圧室4jを大気圧化し、加圧ピストン5が前方に復帰するときに内容物の吸い込みに十分な負圧が加圧室4jに発生するようにしている。これによって迅速に使用を開始することができる。
【0046】
本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論であり、
(11)凸部7aの代わりに、圧力に応じて噴射口9aへの放出路Cが通じる蓄圧弁を別途設けて噴射口9aからの放出開始と貯留ピストン7の後退開始のタイミングを個別に設定し、放出開始時における貯留室4qの内容物貯留量を確保する、
(12)凸部7aを延長する、または移動可能とするなどして貯留ピストン7が後退開始から所定の距離移動後に凸部7aと流出孔4sとが離間し噴射口9aへの放出路Cが通じるようにして、放出開始時における貯留室4qの内容物貯留量を確保する、
(13)トリガー10を回動ではなく平行移動するものにする、
(14)スプリング6の代わりに、トリガー10に操作復帰用の付勢部材をもうけて加圧ピストン5を連結する、
ようにしてもよい。
【0047】
本発明が適用されるポンプ式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0048】
容器本体1に収容される内容物としては、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いる。内容物に配合される成分は例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などである。
【0049】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0050】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0051】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0052】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0053】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0054】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ピレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、パラフェノールスルホン酸亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,過酸化水素水などの酸化剤、リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0055】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
1:容器本体
2:装着部
2a:上流弁
2b:通気孔
3:ネジキャップ
4:ポンプ本体
4a:加圧シリンダー
4b:後方上側端部
4c:流入孔
4d:給気孔
4e:給気溝
4f:加圧ピストンガイド
4g:排気溝
4h:リブ状部
4j:加圧室
4k:下流弁
4m:貯留シリンダー
4n:排圧孔
4p:排圧溝
4q:貯留室
4r:通気路
4s:流出孔
5:加圧ピストン
6:スプリング
7:貯留ピストン
7a:凸部
8:貯留スプリング
9:噴射部材
9a:噴射口
10:トリガー
11:ポンプカバー
12:吸上管
13:上流弁体
14:下流弁体
15:封止栓
16:ガスケット
17:貯留シリンダー蓋
A:流入路
B:貯留路
C:放出路