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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103415
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】表面検査装置及び表面検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007714
(22)【出願日】2023-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】593179808
【氏名又は名称】八光オートメーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】石田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】白谷 優典
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA89
2G051AB01
2G051AB02
2G051AB10
2G051AB12
2G051AC15
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB01
(57)【要約】
【課題】物体表面の面方位の変化による撮像画像の輝度の変化を補正した画像を容易に得ることが可能であって、傷や塗装ブツ、汚れ、歪等を判別しやすい表面検査装置及び表面検査方法を提供する。
【解決手段】物体1の被検査領域を含む被検査表面2を照射する照明光源3と、被検査領域の画像を撮影して画像データを出力するカメラ4と、同じ場所に対して、複数の異なる方向から撮影された複数の画像データを取得する複数画像データ取得手段と、画像処理手段とを備え、同一の場所に対応する複数の画素データから輝度が所定以上の値又は輝度が最大の値を有する画素データをその場所の画素データとして選択して被検査領域の画像を合成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の表面を検査する表面検査装置であって、
前記表面の被検査領域に拡散光を照射する照明光源と、
前記拡散光の前記表面による正反射像を撮影するカメラと、
前記の被検査領域中の同じ場所に対して、複数の異なる方向から撮影された前記正反射像の複数の画像データを取得する複数画像データ取得手段と、
前記複数の画像データを処理する画像処理手段と、
を備え、
前記画像処理手段は、同一の場所に対応する複数の画素データから輝度が所定以上の値又は輝度が最大の値を有する画素データをその場所の画素データとして選択して前記被検査領域の画像を合成することを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記カメラ又は前記物体の移動手段を備え、前記カメラが一度の撮影で画像データを出力する撮影範囲の幅に対して十分に小さな間隔で前記カメラ又は前記物体を移動させながら順次撮影を行うことにより、前記複数画像データ取得手段を構成することを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記照明光源は直線状の拡散光を照射する照明光源であって、前記照明光源及び前記カメラ、又は前記物体を搭載して少なくとも前記拡散光の直線形状と略直交する1軸方向に移動する移動機構を備え、
前記照明光源及び前記カメラ又は前記物体を前記移動機構により前記1軸方向に移動させながら前記撮影を順次行うことを特徴とする請求項2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記拡散光の直線形状に垂直で前記カメラの光軸と前記被検査領域とが交わる被検査点を含む面内における前記拡散光の発光点と前記被検査点とを結ぶ直線と前記カメラの光軸との成す角度が30度以内であることを特徴とする請求項3に記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記移動機構は前記照明光源及び前記カメラを搭載することを特徴とする請求項4に記載の表面検査装置。
【請求項6】
前記移動機構は前記物体を搭載することを特徴とする請求項4に記載の表面検査装置。
【請求項7】
物体の表面を検査する表面検査方法であって、
前記表面の被検査領域に拡散光を照射する照明光源と、
前記拡散光の前記表面による正反射像を撮影するカメラと、
前記の被検査領域中の同じ場所に対して、複数の異なる方向から撮影された前記正反射像の複数の画像データを取得する複数画像データ取得手段と、
前記複数の画像データを処理する画像処理手段と、
を備え、
前記画像処理手段は、同一の場所に対応する複数の画素データから輝度が所定以上の値又は輝度が最大の値を有する画素データをその場所の画素データとして選択して前記被検査領域の画像を合成することを特徴とする表面検査方法。
【請求項8】
前記カメラ又は前記物体の移動手段を備え、前記カメラが一度の撮影で画像データを出力する撮影範囲の幅に対して小さな間隔で前記カメラ又は前記物体を移動させながら順次撮影を行うことにより、前記複数画像データ取得手段を構成し、
前記照明光源は直線状の拡散光を照射する照明光源であって、前記照明光源及び前記カメラ、又は前記物体を搭載して少なくとも前記拡散光の直線形状と略直交する1軸方向に移動する移動機構を備え、
前記照明光源及び前記カメラ、又は前記物体を前記1軸方向に移動させながら前記撮影を順次行い、
前記カメラ及び前記照明光源、又は前記物体の移動間隔、又は前記被検査領域の画像を合成する際に使用する前記複数の画像データの前記1軸方向の撮影間隔は、前記被検査領域の合成された画像に縞模様を生じさせるように選択されていることを特徴とする請求項7に記載の表面検査方法。
【請求項9】
前記の合成された画像において各画素ごとに周辺画素の輝度の大小比較を行い、輝度の値をその中央値に変換するメディアンフィルタ処理を行った背景画像を作成し、前記の背景画像の画像データと前記の合成された画像の画像データとの比較処理を行った画像を作成することにより、前記被検査領域の表面を検査する手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の表面検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の表面の傷や塗装ブツ、汚れ、歪等の検査を行う表面検査装置及び表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業製品等の検査において、物体表面の傷や塗装等の成膜時に生ずる粒状の欠陥、いわゆる塗装ブツ、汚れ、歪等の検査を行う場合、目視検査やカメラ画像による検査、計測器による表面形状等の検査が行われている。例えば、物体表面の面形状の歪を測定する場合、特許文献1に記載された方法等により物体の表面形状を測定し、周囲の面形状からの変位を歪として計測する方法がある。また、微小な面形状の歪の測定方法としては、特許文献2に記載のように複数のストライプを面内に平行に並べた格子状パターンを物体表面に照射してその正反射像をカメラにより撮像し、その格子のライン間のピッチの変化から面形状の歪みを求める方法がある。ライン照明を物体表面に照射してその正反射像をラインカメラで撮像する方法も知られている。
【0003】
目視検査やカメラ画像による欠陥等の検査では、傷や塗装ブツ、汚れ、歪等の検出を容易にするため、カメラや照明光の様々な配置方法の工夫が行われている。例えば、特許文献3では、光源、カメラ、検査対象の相互の位置関係を変化させて、輝度を計測することにより、各測定点において、輝度が最大となる照明光の入射角度を求め、その入射角度の分布を表す画像から表面の欠陥の検出を行っている。また、特許文献4では、周囲から拡散照明光を照射して撮像した欠陥の画像データの輝度プロファイルを求めることにより、欠陥と水滴の分離を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-4425号公報
【特許文献2】特開2011-89981号公報
【特許文献3】特開H10-9838号公報
【特許文献4】特開2012-103217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物体表面の傷や塗装ブツ、汚れ、歪等を検査する場合、カメラで撮影された画像の目視検査や画像処理による自動検査等でその欠陥等の個所が判別できれば、検査コストの低減や検査時間の短縮を図ることができ、効率的な検査が可能となる。しかし、対象となる被検査物体の表面が平面ではなく多くの曲面形状を含む場合、通常、カメラで撮像された物体の表面画像は、照明光に対してその面の正反射方向にカメラがない場合は輝度が低くなるので、傷や塗装ブツ、汚れ、歪等によって輝度が低下しているのかの判別が難しくなる。この影響を除くためには、照明光源やカメラを移動して撮影する手順を繰り返し行う必要があり、検査時間が増大してしまう。
【0006】
また、曲面を有する物体表面の傷や塗装ブツ、汚れ、歪等を検査するため、ライン照明とラインセンサ型カメラを組み合わせ、移動しながら連続的に撮影する場合、正反射光が視野外にずれてしまって輝度を取得できない領域が発生してしまう場合が生ずる。
【0007】
そこで、本発明は、係る問題を解決するためになされたものであり、物体表面の面方位の変化による撮像画像の輝度の変化を補正した画像を容易に得ることが可能であって、傷や塗装ブツ、欠陥、汚れ、歪等を判別しやすい表面検査装置及び表面検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の観点では、本発明の表面検査装置は、物体の表面を検査する表面検査装置であって、前記表面の被検査領域に拡散光を照射する照明光源と、前記拡散光の前記表面による正反射像を撮影するカメラと、前記の被検査領域中の同じ場所に対して、複数の異なる方向から撮影された前記正反射像の複数の画像データを取得する複数画像データ取得手段と、前記複数の画像データを処理する画像処理手段と、を備え、前記画像処理手段は、同一の場所に対応する複数の画素データから輝度が所定以上の値又は輝度が最大の値を有する画素データをその場所の画素データとして選択して前記被検査領域の画像を合成することを特徴とする。
【0009】
本発明においては、被検査領域内の同じ場所に対して、複数の異なる方向から撮影した複数の画像中のその場所に対応する複数の画素データの中から、例えば、輝度が最大となる画素データを選択し、その選択された最大輝度の画素データをその場所の画素データとして用いる。このように各場所に対応する最大輝度の画素データを用いて被検査領域全体の画像を合成する。このように合成された画像を最大輝度合成画像とすると、最大輝度合成画像は、被検査物体の表面が平面ではなく多くの曲面形状を含んでいても、面方位による輝度の低下を補正でき、目的とする傷や塗装ブツ、汚れ、歪等の判別が容易となる。この判別は、最大輝度合成画像をモニター等に表示して目視で行うことや最大輝度合成画像の画像処理による自動判定が可能であり、さらには、最大輝度合成画像の画像データを用いて様々なフィルタリング処理等を行って判別してもよい。なお、測定対象物体の表面状態によっては、複数の画素データの中からその場所の画素データとして最大輝度の画素データでなく、輝度が所定の値以上の画素データを選択しても、面方位による輝度の低下を補正でき、本発明の目的を達成可能である。
【0010】
本発明において、複数画像データ取得手段としては、例えば、カメラの位置や角度を移動させて、被検査領域中の同じ場所を複数の異なる方向から撮影する等の方法がある。また、カメラの代わりに被検査物体の位置や角度を変化させて撮影してもよい。あるいは、特性が同じ複数のカメラを被測定領域から同一距離で、異なる角度で設置して複数の画像データを得てもよい。
【0011】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点の表面検査装置において、前記カメラ又は前記物体の移動手段を備え、前記カメラが一度の撮影で画像データを出力する撮影範囲の幅に対して十分に小さな間隔で前記カメラ又は前記物体を移動させながら順次撮影を行うことにより、前記複数画像データ取得手段を構成することを特徴とする。本観点の発明では、カメラにより一度に撮影される範囲の幅をWとすると、それより十分に小さい間隔Pでカメラ又は物体を前記の幅Wの方向に移動させながら順次撮影を行うことにより、1つの場所に対し、W/P程度の数だけ異なる方向から撮影された画像データが得られることになる。
【0012】
第3の観点では、本発明は、前記第2の観点の表面検査装置において、前記照明光源は直線状の拡散光を照射する照明光源であって、前記照明光源及び前記カメラ、又は前記物体を搭載して少なくとも前記拡散光の直線形状と略直交する1軸方向に移動する移動機構を備え、前記照明光源及び前記カメラ又は前記物体を前記移動機構により前記1軸方向に移動させながら前記撮影を順次行うことを特徴とする。
【0013】
正反射光による撮影画像中の大きな輝度の変化を防ぐためには、本観点の発明のように、照明光源として拡散光源を使用する方が望ましい。また、照明光源とカメラ又は物体を移動させながら撮影を順次行うのであれば、照明光源としては移動方向の照射範囲が狭い直線状の拡散光の使用が効率的である。この場合、拡散光の移動方向の照射幅は、一度の撮影でカメラから出力され画像処理手段で使用する画像データが取り込まれる幅よりも十分に大きいことが望ましい。本観点の発明は、移動方向に垂直な方向のカメラの撮影範囲の幅が被検査領域より大きければ上記の1軸方向の移動が可能であればよいが、上記の幅が被検査領域より小さければ、上記の1軸方向に直交する方向への移動機構を備えてもよい。また、それらの2つの移動機構を備える場合は、それらの移動機構は照明光源及びカメラか、又は物体の一方ずつ搭載してもよい。ここで、上記の1軸方向は被検査領域の平均的な平面に平行な方向であることが望ましい。
【0014】
本発明の表面検査装置は、撮影画像中の輝度のばらつきをできるだけ少なくするため、照明光の入射角度とカメラの光軸をある程度一定に保つことが望ましく、この目的で、本観点の発明では、照明光源とカメラを同じ1軸方向に移動する移動機構に搭載するか、又は、照明光源とカメラは固定し、物体を1軸方向に移動する移動機構に搭載するものである。なお、移動及び撮影の制御のため、移動機構の移動量に応じた電気出力を出力するエンコーダを備えてもよく、又は、移動機構により等速移動させてカメラを一定時間間隔で撮影する制御を行うことにより等間隔の撮影を実現してもよい。
【0015】
第4の観点では、本発明は、前記第3の観点の表面検査装置において、前記拡散光の直線形状に垂直で前記カメラの光軸と前記被検査領域とが交わる被検査点を含む面内における前記拡散光の発光点と前記被検査点とを結ぶ直線と前記カメラの光軸との成す角度が30度以内であることを特徴とする。輝度が大きい画像を得るためには、できるだけ被検査領域の面で垂直に近い角度で反射する光の画像をカメラで撮影することが望ましいため、本観点の発明では、拡散光の発光点と被検査点とを結ぶ直線とカメラの光軸との成す角度を30度以内としている。その角度は小さい方が望ましく、例えば、実際の装置で14度以内となるよう設計することも可能である。
【0016】
第5の観点では、本発明は、前記第4の観点の表面検査装置において、前記移動機構は前記照明光源及び前記カメラを搭載することを特徴とする。本発明においては、照明光源及びカメラ、又は物体のどちらを移動させてもよいが、検査する物体が大きい場合は照明光源及びカメラを移動させる方が容易である。
【0017】
第6の観点では、本発明は、前記第4の観点の表面検査装置において、前記移動機構は前記物体を搭載することを特徴とする。検査する物体が照明光源及びカメラよりも小さい場合や、物体がロール状に巻かれている場合などのように検査する物体の方が移動しやすい場合はその物体を移動させた方が望ましい。
【0018】
第7の観点では、本発明は、物体の表面を検査する表面検査方法であって、前記表面の被検査領域に拡散光を照射する照明光源と、前記拡散光の前記表面による正反射像を撮影するカメラと、前記の被検査領域中の同じ場所に対して、複数の異なる方向から撮影された前記正反射像の複数の画像データを取得する複数画像データ取得手段と、前記複数の画像データを処理する画像処理手段と、を備え、前記画像処理手段は、同一の場所に対応する複数の画素データから輝度が所定以上の値又は輝度が最大の値を有する画素データをその場所の画素データとして選択して前記被検査領域の画像を合成することを特徴とする表面検査方法を提供する。
【0019】
第8の観点では、本発明は、前記第7の観点の表面検査方法において、前記カメラ又は前記物体の移動手段を備え、前記カメラが一度の撮影で画像データを出力する撮影範囲の幅に対して小さな間隔で前記カメラ又は前記物体を移動させながら順次撮影を行うことにより、前記複数画像データ取得手段を構成し、前記照明光源は直線状の拡散光を照射する照明光源であって、前記照明光源及び前記カメラ、又は前記物体を搭載して少なくとも前記拡散光の直線形状と略直交する1軸方向に移動する移動機構を備え、前記照明光源及び前記カメラ、又は前記物体を前記1軸方向に移動させながら前記撮影を順次行い、前記カメラ及び前記照明光源、又は前記物体の移動間隔、又は前記被検査領域の画像を合成する際に使用する前記複数の画像データの前記1軸方向の撮影間隔は、前記被検査領域の合成された画像に縞模様を生じさせるように選択されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の表面検査装置では、被検査領域に直線状の拡散光を照射し、照明光源及びカメラ、又は物体を拡散光の直線形状と略直交する1軸方向に移動させながら撮影を順次行い、その直線状の拡散光の移動方向の照射幅と順次行う撮影間の移動距離、又は被検査領域の画像を合成する際に、どのような間隔で撮影された複数の画像データを使用するかを選択することにより、被検査領域の合成された画像に縞模様を生じさせることができる。
【0021】
製品などの物体表面の目視検査においては、複数の平行な直線状の照明光を物体表面に写しこんで物体表面に縞模様を生じさせ、検査者の視点の位置をずらしてその縞模様を動かすことにより、縞模様の明暗の境目付近で欠陥が判別しやすくなることが知られており、実際の検査作業で使用されている。本観点の発明では、被検査物体の表面の画像に縞模様を生じさせ、その縞模様の位置を変えた複数の画像を作成することにより上記と同様な作用効果が得られ、欠陥を判別しやすくすることができる。この場合、本発明の表面検査方法では、被検査領域内の同じ場所に対して、複数の異なる方向から撮影した複数の画像中の複数の画素データの中から、例えば、輝度が最大となる画素データを選択し、その選択された最大輝度の画素データをその場所の画素データとして用いて合成された最大輝度合成画像では、面方位による輝度の低下を補正できるという利点がある。
【0022】
第9の観点では、本発明は、前記第7の観点の表面検査方法において、前記の合成された画像において、各画素ごとに周辺画素の輝度の大小比較を行い、輝度の値をその中央値に変換するメディアンフィルタ処理を行った背景画像を作成し、前記の背景画像の画像データと前記の合成された画像の画像データとの比較処理を行った画像を作成することにより、前記被検査領域の表面を検査する手段を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の表面検査方法において、目的とする傷や塗装ブツ、汚れ、歪等の判別は、例えば、最大輝度合成画像等をモニター等に表示して目視で行うことが可能である。この場合でも、従来の検査方法での画像に比べて、物体表面の面方位の変化による撮像画像の輝度の変化が補正されているので、傷や塗装ブツ、汚れ、歪等を判別しやすい。さらに、本観点の発明では、最大輝度合成画像等において、各画素ごとに周辺画素の輝度の大小比較を行い、輝度の値をその中央値に変換するメディアンフィルタ処理を行った背景画像を作成し、その背景画像の画像データと前記の最大輝度合成画像等の画像データとの比較処理を行った画像を作成することができる。これにより、本来の物体の表面形状による画像と異なる傷や塗装ブツ、汚れ、歪等を強調して表示することや、その比較画像を用いた画像処理による自動判定が可能となり、欠陥などの判別がさらに容易となる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、物体表面の面方位の変化による撮像画像の輝度の変化を補正した画像を容易に得ることが可能であって、傷や塗装ブツ、汚れ、歪等を判別しやすい表面検査装置及び表面検査方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1に係る表面検査装置及び表面検査方法の模式的な構成図。
図2】画像データの取得方法及び処理方法を説明するための模式図であり、図2(a)は被検査領域の画像の撮影手順、図2(b)は画素データ、図2(c)は最大輝度画素データ選択手順、を示す図。
図3】実施例1の表面検査装置の検査手順を示すフローチャート。
図4】実施例1の表面検査装置による検査結果の一例のディスプレイ上に表示された被検査物体の最大輝度合成画像であり、図4(a)は全体図、図4(b)、図4(c)は欠陥付近の拡大図。
図5】同じ被検査領域に対して従来の検査方法で求めた画像。
図6】実施例2の表面検査装置による検査結果の一例のディスプレイ上に表示された被検査領域の欠陥強調画像であり、図6(a)は全体図、図6(b)は欠陥付近の拡大図。
図7】実施例3の表面検査装置の外観を示す写真。
図8】実施例4の表面検査装置の外観を示す写真。
図9】実施例4により得られた被検査表面34の最大輝度合成画像の一例。
図10】実施例5の表面検査装置による検査結果の一例のディスプレイ上に表示された被検査領域の縞模様を生じさせた最大輝度合成画像。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の表面検査装置および表面検査方法を実施例により詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複した説明を省略する。
【実施例0027】
図1は、実施例1に係る表面検査装置及び表面検査方法の模式的な構成図である。図1において、本実施例の表面検査装置10では、照明光源3により被検査物体1の被検査領域を含む被検査表面2にy軸方向に伸びた直線状の拡散光を照射し、照明光源3に対する相対位置を固定して設置されたカメラ4により照明光源の被検査表面による正反射像を撮影する。カメラ4により撮影され、出力された被検査領域内の各場所の画素データを含む画像データは画像処理手段を内蔵したパーソナルコンピュータ5に入力される。
【0028】
本実施例においては、カメラ4及び照明光源3を搭載して拡散光の直線形状と直交するx軸方向に平行な軸上を移動する移動機構6を備え、カメラ4が一度の撮影で画像データを出力する撮影範囲の幅に対して十分に小さな間隔でカメラ4を移動させながら順次撮影を行うことにより、被検査領域中の同じ場所に対して、複数の異なる方向から撮影された複数の画像データを取得する複数画像データ取得手段を備えている。移動機構6はコントローラ7により駆動制御され、コントローラ7は移動機構6の移動量に応じた電気信号を出力するエンコーダを備え、そのエンコーダの出力は撮影トリガーをかけるためカメラ4に入力される。また、照明光源3を制御するための照明コントローラ8を備えている。また、カメラ4の光軸と被検査領域とが交わる被検査点を含むxz面内における拡散光の発光点と被検査点とを結ぶ直線とカメラ4の光軸との成す角度θは30度以内である。
【0029】
図2は本実施例における画像データの取得方法及び処理方法を説明するための模式図であり、図2(a)は被検査領域の画像の撮影手順、図2(b)は画素データ、図2(c)は最大輝度画素データ選択手順、をそれぞれ示す図である。
【0030】
先ず、カメラ4により撮影された画像の分解能をR(mm/pix)とすると、1mm中の画素数は1/Rとなる。なお、1画素を1pix(ピクセル)とする。図2(a)に示すように、カメラ4の撮影画像の幅をw(mm)、すなわち、W=w/R(pix)、撮影画像の高さをh(mm)、すなわち、H=h/R(pix)、とし、カメラ4の撮影ごとの移動距離、すなわち、撮影ピッチをp(mm)、P=p/R(pix)とすると、N回の撮影によって得られる画像の幅はw=w+(N-1)p(mm)、W=W+(N-1)P(pix)となる。j回目の撮影によって得られる画像をIとし、例えば、図2(a)のようにwがpで6分割できるとすると、最後の6番目の領域11の各画素のデータは、N=1~6の撮影で得られるI(j=1~6)の6個の画像データに含まれる。ここで、領域11に対応する6個の画像I(j=1~6)は領域11とカメラ4との相対位置が異なるので、それぞれ異なる方向から撮影されていることになる。
【0031】
図2(b)は、1回目の撮影によって得られる画像の画素を模式的に示している。画像を構成する各画素の輝度は、その場所の表面の傾きの変化や表面の状態によっては、撮影された画像ごとに異なっている。本実施例では、同じ場所に対して撮影された複数画像の画素データから各画素の輝度が最大となる画素データを選択し、その画素データを用いて被検査領域全体の画像を合成するものである。
【0032】
具体的には、先ず、画素データの3次元の輝度配列アレイ(x、y、z)を作成し、その最大値x=W、y=H、z=Nをメモリ上に確保する。次に、i番目の撮影画像Iをx方向に移動量i×P/Rシフトさせ、アレイのz方向に撮影順で格納する。ここで、本実施例においては、すべての画像データを用いるのではなく、合成ピッチとして任意の正の整数kを設定し、開始点j(j≦k-1)から合成ピッチkごとに撮影画像をスキップして、I、Ij+k、Ij+2k、Ij+3K、・・・ の順番で格納する。被検査領域全体の撮影を終了後、同じ場所に対して撮影され格納された複数画像の画素データから各画素の輝度が最大となる画素データを選択し、その画素データを用いて被検査領域全体の画像を合成することにより最大輝度合成画像を得る。
【0033】
図2(c)では、ある高さのx軸方向に配列された1列の画素列を構成する各画素の輝度が模式的に示されている。ここでは、白色に近いほど輝度が大きいものとしている。例えば、図2(b)の画素列12の場合、j=1、k=2として、I、I、I、の画像の画素データの輝度が比較され、それらの中の最大輝度の画素データが選択されて、画素列12の最大輝度合成画像の画素データは画素列13となる。
【0034】
図3は本実施例の表面検査装置の検査手順を示すフローチャートである。以下に、図1及び図2を参照して本実施例の検査手順について説明する。基本的には以下の各ステップはパーソナルコンピュータ5からの指令により行う。先ず、最初のステップS1としてコントローラ7により移動機構6の移動を開始し最初の位置に設定する。次にステップS2として撮影トリガーをカメラ4に入力し、撮影ピッチpごとの撮影画像I(i=0、1、・・・、N-1)を取得する。次にステップS3として、カメラ4のレンズの歪みを多項式近似で補正する。
【0035】
次にステップS4として、移動機構6の移動距離が測定範囲の端まで達したか否かを判定し、達していない場合は上記のステップS1からS3を繰り返し、達した場合にステップS5として移動を終了する。
【0036】
次に、ステップS6として、撮影画像から前述の手順により最大輝度合成画像を生成し、ステップS7としてパーソナルコンピュータ5のディスプレイ画面上に表示する。最後にステップS8として最大輝度合成画像を目視することにより傷や塗装ブツ、汚れ、歪等の表面の欠陥を判別する。又は、ステップS9として最大輝度合成画像を用いた画像処理により、傷や塗装ブツ、汚れ、歪等の表面の欠陥を自動判別する。その判別結果をディスプレイ画面上に表示してもよい。
【0037】
本実施例における具体的な数値の例としては、カメラ4による撮影された画像の分解能をR=0.10~0.20(mm/pix)、カメラ4の撮影画像の幅をw=20~60(mm)、撮影画像の高さをh=200~600(mm)、撮影ピッチをp=0.1~5(mm)、照明光源3による拡散光源のx軸方向の幅を3~20mm程度の値とすることができる。
【0038】
図4は本実施例の表面検査装置による検査結果の一例のディスプレイ上に表示された被検査物体の最大輝度合成画像であり、図4(a)は全体図、図4(b)、図4(c)は欠陥付近の拡大図である。図5は、比較のため、同じ被検査物体に対して従来の検査方法で求めた画像である。従来の検査方法の一例として、ライン照明とラインセンサ型カメラを組み合わせ、移動しながら連続的に撮影した画像を示している。正反射光が視野外にずれてしまって輝度のある画像が取得できない領域が発生している。図5の画像に比べて、図4の最大輝度合成画像は輝度の均一性が高いため、傷21や塗装の不良部分であるいわゆる塗装ブツ22、筋状の拭き跡の汚れ23が周囲表面より明確に区別されて判別可能となっている。
【実施例0039】
次に本発明の表面検査装置の実施例2について説明する。実施例2の基本的な構成は図1に示す実施例1と同じであるが、本実施例においては、実施例1の機能にさらに加えて、欠陥を強調した欠陥強調画像を作成する機能を備えている。具体的には、最大輝度合成画像において各画素ごとに周辺画素の輝度の大小比較を行い、輝度の値をその中央値に変換するメディアンフィルタ処理を行った背景画像を作成し、その背景画像の画像データと元の最大輝度合成画像の画像データとの比較処理を行った画像を作成する。すなわち、最大輝度合成画像と背景画像との差分を表示する画像を作成することにより欠陥強調画像を得ることができる。
【0040】
図6は本実施例の表面検査装置による検査結果の一例のディスプレイ上に表示された被検査物体の欠陥強調画像であり、図6(a)は全体図、図6(b)は欠陥付近の拡大図である。図4の最大輝度合成画像と比べると、被検査物体の構造物による輪郭線と欠陥部分のみが明るく示され、より容易に傷21や塗装ブツ22が判別できる。本来の構造物の輪郭線を除く欠陥のみをさらに強調して表示することも可能である。
【実施例0041】
次に本発明の表面検査装置の実施例3について説明する。図7は実施例3の表面検査装置の外観を示す写真である。実施例3の基本的な構成は図1に示す実施例1と同じであるが、本実施例においては、実施例1の移動機構6の代わりに多関節ロボット33を備え、多関節ロボット33にカメラ4及び照明光源3を搭載して拡散光の直線形状と直交する方向に移動させている。自動車模型の被検査物体31の被検査領域を含む被検査表面32に照明光源3により直線状の拡散光を照射し、カメラ4により被検査表面32の正反射像を撮影する。その他の検査手順はすべて実施例1と同様である。本実施例においては、多関節ロボット33により、カメラ4及び照明光源3の配置や移動方向を任意に設定できるので、被検査領域の設定の自由度が大きい。
【実施例0042】
図8は実施例4の表面検査装置の外観を示す写真である。実施例4の基本的な構成は図1に示す実施例1と同じであるが、本実施例においては、カメラ4及び照明光源3を固定し、自動車模型の被検査物体31を照明光源3の拡散光の直線形状と直交する方向に移動させている。カメラ4及び照明光源3を上方に配置し、その下を被検査物体31を搭載したベルトコンベア35が移動し、被検査物体31の上面の被検査表面34の正反射像を撮影する。その他の検査手順はすべて実施例1と同様である。図9は、本実施例により得られた被検査表面34の最大輝度合成画像の一例を示す。
【実施例0043】
次に本発明の表面検査装置の実施例5について説明する。実施例5の基本的な構成は図1に示す実施例1と同じであるが、本実施例においては、カメラ4の移動間隔、又は被検査領域の画像を合成する際に、どのような間隔で撮影された複数の画像データを使用するかを選択することにより、被検査領域の合成された最大輝度合成画像に縞模様を生じさせるようにしていることが実施例1とは異なっている。すなわち、被検査物体の表面の画像に縞模様を生じさせることにより、傷や塗装ブツ、汚れ、歪等を判別しやすくしている。
【0044】
具体的には、例えば合成ピッチkの値を設定して、大きな間隔で撮影された画像の画像データを使用して最大輝度合成画像を作成することにより縞模様を生じさせることができる。また、本実施例においては、パーソナルコンピュータ5での制御により、上記の最大輝度合成画像を作成する際の条件を変更することにより縞模様の間隔や位置を調整できる。
【0045】
本実施例における具体的な数値の例としては、カメラ4の撮影画像の幅をw=20~60(mm)、撮影ピッチをp=0.1~5(mm)、照明光源3による拡散光源のx軸方向の幅を3~20mm程度の値とし、k=5~50程度とすることができる。
【0046】
図10は本実施例の表面検査装置による検査結果の一例を示し、ディスプレイ上に表示された被検査物体の縞模様を生じさせた最大輝度合成画像である。合成ピッチk=10として、開始点をj=1からj=9まで変化させ、縞模様を連続的に移動させて最大輝度合成画像を作成した。図10では、j=1,j=2、j=9の場合の最大輝度合成画像を示している。図10の縞模様を移動させた画像は、目視検査において、複数の平行な直線状の照明光を物体表面に写しこんで物体表面に縞模様を生じさせ、検査者の視点の位置をずらしてその縞模様を動かすことと同様の効果がある。
【0047】
以上のように、本発明により物体表面の面方位の変化による撮像画像の輝度の変化を補正した画像を容易に得ることが可能であって、傷や塗装ブツ、汚れ、歪等を判別しやすい表面検査装置および表面検査方法が得られることが確認できた。
【0048】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではないことは言うまでもなく、目的や用途に応じて設計変更可能である。例えば、パーソナルコンピュータには上記の実施例に示した以外の機能を付加してもよい。または、上記の実施例に示した機能の一部またはすべてをパーソナルコンピュータ以外の電子機器で実現してもよい。照明光源やカメラの種類、形状、機能も目的に合わせて選択可能である。また、移動機構は2軸以上の移動が可能であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1、31 被検査物体
2、32、34 被検査表面
3 照明光源
4 カメラ
5 パーソナルコンピュータ
6 移動機構
7 コントローラ
8 照明コントローラ
10 表面検査装置
11 領域
12、13 画素列
21 傷
22 塗装ブツ
23 汚れ
33 多関節ロボット
35 ベルトコンベア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10