(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103417
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ツイン式ウォーキングビーム
(51)【国際特許分類】
B65G 25/02 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
B65G25/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007717
(22)【出願日】2023-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】592017002
【氏名又は名称】三建産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】塚本 輝
(72)【発明者】
【氏名】中川 寛孝
(72)【発明者】
【氏名】龍頭 昭廣
【テーマコード(参考)】
3F036
【Fターム(参考)】
3F036BA01
3F036CA01
3F036CA04
3F036CB07
3F036CB19
(57)【要約】
【課題】丸形鋼材などの鋼材を、停止させることなく連続的に搬送するツイン式のウォーキングビームを提供する。
【解決手段】複数のレール2に沿って配置され、前進、下降、後退および上昇移動を矩形状に連続的に繰り返し、前進移動の際に、一定間隔をおいて複数設けられた第一上端当接部12で鋼材Wの後端を押して前進させる第一移動ビーム11を持つ第一ウォーキングビーム10と、同じ構造の第二移動ビーム21を持つ第二ウォーキングビーム20とを備え、第一移動ビーム11の矩形状の移動時間を第二移動ビーム21のそれと等しく設定し、各第一移動ビーム11の前進移動が終了すると同時に各第二移動ビーム21の前進移動を開始させ、それに続く各第二ウォーキングビーム20の前進移動が終了すると同時に、各第一ウォーキングビーム10の前進移動を開始させて、鋼材Wを停止させることなく連続的に搬送する
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理炉内で鋼材を、前後方向の左右に配置されて前後方向に延びる複数のレールの上で後側から前側に搬送するツイン式のウォーキングビームであって、
前記レールに沿って配置され、前進移動、下降移動、後退移動および上昇移動を矩形状に連続的に繰り返し、前記前進移動の際に、その上部に一定間隔をおいて複数設けられた第一上端当接部のそれぞれが前記鋼材の後端を押して、前記鋼材を前進させる第一移動ビームを有する第一ウォーキングビームと、
前記各第一移動ビームと交互に前記鋼材を前進させるべく前記各第一移動ビームに隣接して配置され、下降移動、後退移動、上昇移動および前進移動を矩形状に連続的に繰り返し、前記前進移動の際に、その上部に前記一定間隔で複数設けられた第二上端当接部のそれぞれが前記鋼材の後端を押して、前記鋼材を前進させる第二移動ビームを有する第二ウォーキングビームとを備え、
前記各第一移動ビームの前記矩形状の移動時間を、前記各第二移動ビームの前記矩形状の移動時間と等しく設定することによって、
前記各第一移動ビームの前進移動が終了すると同時に前記各第二移動ビームの前進移動を開始させ、それに続く前記各第二ウォーキングビームの前進移動が終了すると同時に、前記各第一ウォーキングビームの前進移動を開始させる行程を繰り返して、前記鋼材を停止させることなく連続的に搬送することを特徴とするツイン式ウォーキングビーム。
【請求項2】
前記各第一移動ビームの前進移動時間を、前記各第二移動ビームの下降移動時間、後退移動時間および上昇移動時間の合計と等しく設定するとともに、
前記各第二移動ビームの前進移動時間を、前記各第一移動ビームの下降移動時間、後退移動時間および上昇移動時間の合計と等しく設定したことを特徴とする請求項1に記載のツイン式ウォーキングビーム。
【請求項3】
前記各第一移動ビームの前進移動および後退移動を、前記各第一移動ビームに連結された第一進退用シリンダーのロッドを伸縮移動させることによって行い、
その上昇移動および下降移動を、略くの字状で、第一中間支持部が回動自在に軸支され、第一上端回転部が前記各第一移動ビームに転動し、第一下端連結部が第一昇降用シリンダーのロッドに回動自在に連結された第一回動リンクを、前記第一昇降用シリンダーのロッドを伸縮させることによって前記第一中間支持部を軸として回動させて前記第一上端回転部の高さ位置を変位させることによって行い、
前記各第二移動ビームの前進移動および後退移動を、前記各第二移動ビームに連結された第二進退用シリンダーのロッドを伸縮移動させることによって行い、
その上昇移動および下降移動を、略くの字状で、第二中間支持部が回動自在に軸支され、第二上端回転部が前記各第二移動ビームに転動し、第二下端連結部が第二昇降用シリンダーのロッドに回動自在に連結された第二回動リンクを、前記第二昇降用シリンダーのロッドを伸縮させることによって前記第二中間支持部を軸として回動させて前記第二上端回転部の高さ位置を変位させることによって行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のツイン式ウォーキングビーム。
【請求項4】
前記鋼材が断面円形状の丸形鋼材であることを特徴とする請求項1又は2に記載のツイン式ウォーキングビーム。
【請求項5】
前記鋼材が断面円形状の丸形鋼材であることを特徴とする請求項3に記載のツイン式ウォーキングビーム。
【請求項6】
前記レールが後側から前側に向かって斜め上方に傾斜していることを特徴とする請求項4に記載のツイン式ウォーキングビーム。
【請求項7】
前記各第一上端当接部および各第二上端当接部の前面が斜め後方に傾斜していることを特徴とする請求項4に記載のツイン式ウォーキングビーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面円形状の丸形鋼材を含むあらゆる形状の鋼材を、熱処理炉内で熱処理するために連続的に搬送するツイン式のウォーキングビームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼材を熱処理炉内で熱処理するために炉内で搬送する手段として、
図10に示すような、チェーン式のコンベアが存在する。このチェーン式コンベアは、炉内に長手方向に沿って左右に平行に設けられて周回する2本のチェーンCとそれらに取付けられた複数の治具Jを備えており、この2本のチェーンCを周回させることにより、各治具Jで炉床Rに載置された鋼材Wを押して搬送しながら熱処理を施す。
【0003】
このチェーン式コンベアは、鋼材Wを連続的に搬送しながらその全体を均等に加熱処理することができるといった利点がある。
しかし、このチェーン式コンベアは、高熱の影響や経年変化により2本のチェーンCの伸びに差違が生じて左右の治具Jの位置がずれ、鋼材Wを斜め方向に蛇行状態で押し続けてしまうといった搬送上の問題が発生する。特に、熱処理炉の長さが例えば30メートルを超える大型炉の場合には、この問題が顕著となる。
【0004】
一方、チェーンを使用しない搬送手段も知られている(例えば、特許文献1参照)。
この搬送手段は、
図11に示すように、第一移動ビームFを前進、下降、移動および上昇させ、第二移動ビームSを後退、上昇、前進および後退させることにより、鋼材Wを第一移動ビームFと第二移動ビームSの上に交互に移し換えることで搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の搬送手段では鋼材Wを停止させることなく連続的に搬送することができない。すなわち、鋼材Wを第一移動ビームFと第二移動ビームSとの間で移し換えを行う際、鋼材Wはいずれかのビームの上で静止状態にあるので、この搬送手段では、鋼材Wを断続的に搬送できるものの停止させることなく連続的に搬送することはできない。従って、鋼材Wの全体に均一な加熱処理を施すことが困難である。
【0007】
また、この搬送手段は、断面矩形状の角形鋼材を搬送することはできるものの、断面円形状の丸形鋼材を搬送することはできない。鋼材Wを第一移動ビームFおよび第二移動ビームSの上に移し換えながら搬送するため、丸形鋼材の場合は、ビームの上を転がって移動してしまうからである。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、断面円形状の丸形鋼材を含むあらゆる形状の鋼材を、停止させることなく連続的に搬送することができるツイン式のウォーキングビームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のツイン式ウォーキングビーム(1)は、熱処理炉内で鋼材(W)を、前後方向の左右に配置されて前後方向に延びる複数のレール(2)の上で後側から前側に搬送するウォーキングビームであって、
前記レール(2)に沿って配置され、前進移動、下降移動、後退移動および上昇移動を矩形状に連続的に繰り返し、前記前進移動の際に、その上部に一定間隔をおいて複数設けられた第一上端当接部(12)のそれぞれが前記鋼材(W)の後端を押して、前記鋼材(W)を前進させる第一移動ビーム(11)を有する第一ウォーキングビーム(10)と、
前記各第一移動ビーム(11)と交互に前記鋼材(W)を前進させるべく前記各第一移動ビーム(11)に隣接して配置され、下降移動、後退移動、上昇移動および前進移動を矩形状に連続的に繰り返し、前記前進移動の際に、その上部に前記一定間隔で複数設けられた第二上端当接部(22)のそれぞれが前記鋼材(W)の後端を押して、前記鋼材(W)を前進させる第二移動ビーム(21)を有する第二ウォーキングビーム(20)とを備え、
前記各第一移動ビーム(11)の前記矩形状の移動時間を、前記各第二移動ビーム(21)の前記矩形状の移動時間と等しく設定することによって、
前記各第一移動ビーム(11)の前進移動が終了すると同時に前記各第二移動ビーム(21)の前進移動を開始させ、それに続く前記各第二ウォーキングビーム(20)の前進移動が終了すると同時に、前記各第一ウォーキングビーム(10)の前進移動を開始させる行程を繰り返して、前記鋼材(W)を停止させることなく連続的に搬送することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記各第一移動ビーム(11)の前進移動時間を、前記各第二移動ビーム(21)の下降移動時間、後退移動時間および上昇移動時間の合計と等しく設定するとともに、
前記各第二移動ビーム(21)の前進移動時間を、前記各第一移動ビーム(11)の下降移動時間、後退移動時間および上昇移動時間の合計と等しく設定したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記各第一移動ビーム(11)の前進移動および後退移動を、前記各第一移動ビーム(11)に連結された第一進退用シリンダー(14)のロッド(14a)を伸縮移動させることによって行い、
その上昇移動および下降移動を、略くの字状で、第一中間支持部(16a)が回動自在に軸支され、第一上端回転部(16b)が前記各第一移動ビーム(11)に転動し、第一下端連結部(16c)が第一昇降用シリンダー(15)のロッド(15a)に回動自在に連結された第一回動リンク(16)を、前記第一昇降用シリンダー(15)のロッド(15a)を伸縮させることによって前記第一中間支持部(16a)を軸として回動させて前記第一上端回転部(16b)の高さ位置を変位させることによって行い、
前記各第二移動ビーム(21)の前進移動および後退移動を、前記各第二移動ビーム(21)に連結された第二進退用シリンダー(24)のロッド(24a)を伸縮移動させることによって行い、
その上昇移動および下降移動を、略くの字状で、第二中間支持部(26a)が回動自在に軸支され、第二上端回転部(26b)が前記各第二移動ビーム(21)に転動し、第二下端連結部(26c)が第二昇降用シリンダー(25)のロッド(25a)に回動自在に連結された第二回動リンク(26)を、前記第二昇降用シリンダー(25)のロッド(25a)を伸縮させることによって前記第二中間支持部(26a)を軸として回動させて前記第二上端回転部(26b)の高さ位置を変位させることによって行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記鋼材(W)が断面円形状の丸形鋼材であることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明は、前記複数のレール(2)が後側から前側に向かって斜め上方に傾斜していることを特徴とする。
【0014】
またさらに本発明は、前記各第一上端当接部(12)および各第二上端当接部(22)の前面が斜め後方に傾斜していることを特徴とする。
【0015】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明のツイン式ウォーキングビームによれば、各第一移動ビームの矩形状の移動時間を、各第二移動ビームの前記矩形状の移動時間と等しく設定したので、各第一移動ビームの前進移動が終了すると同時に各第二移動ビームの前進移動を開始させ、それに続く各第二ウォーキングビームの前進移動が終了すると同時に、各第一ウォーキングビームの前進移動を開始させる行程を繰り返すことによって、鋼材を停止させることなく連続的に搬送することができる。
従って、鋼材の全体に均一な加熱処理を施すことができる。
【0017】
また、本発明によれば、上記した各第一移動ビームの矩形状の移動時間を、各第二移動ビームの前記矩形状の移動時間と等しく設定する一手段として、各第一移動ビームの前進移動時間を、各第二移動ビームの下降移動時間、後退移動時間および上昇移動時間の合計と等しく設定するとともに、各第二移動ビームの前進移動時間を、各第一移動ビームの下降移動時間、後退移動時間および上昇移動時間の合計と等しく設定した。
この設定に基づき、各第一移動ビームの前進移動が終了すると同時に各第二移動ビームの前進移動を開始させ、それに続く各第二ウォーキングビームの前進移動が終了すると同時に、各第一ウォーキングビームの前進移動を開始させる行程を繰り返し、これによって、鋼材を停止させることなく連続的に搬送することができる。
【0018】
また、本発明によれば、各第一移動ビームの前進移動および後退移動を、第一進退用シリンダーのロッドを伸縮移動させることによって行い、その上昇移動および下降移動を、第一回動リンクを、第一昇降用シリンダーのロッドを伸縮させて回動させることによって行い、同様に、各第二移動ビームの前進移動および後退移動を、第二進退用シリンダーのロッドを伸縮移動させることによって行い、その上昇移動および下降移動を、第二回動リンクを、第二昇降用シリンダーのロッドを伸縮させて回動させることによって行うので、第一移動ビームおよび第二移動ビームの矩形状の移動を円滑に行わせることができる。
【0019】
さらに、本発明によれば、鋼材が断面円形状の丸形鋼材を円滑に搬送することができる。すなわち、第一移動ビーム(または第二移動ビーム)が前進移動する際(鋼材を前方に搬送する際)に、その上部に一定間隔をおいて複数設けられた第一上端当接部(または第二上端当接部)のそれぞれが鋼材の後端を押すが、この際、各第一上端当接部(または第二上端当接部)の直前には他の第一上端当接部(または第二当接部)が存在する。従って、鋼材は前後二つの第一上端当接部(または前後二つの第二上端当接部)の間に挟まれた状態で置かれるので、前後方向への転がり未然に防止され、円滑な搬送が可能となる。
【0020】
またさらに、本発明によれば、複数のレールが後側から前側に向かって斜め上方に傾斜しているので、レール上で搬送される鋼材には後側に戻る力が作用して、その後端が第一上端当接部(または第二上端部)に常に当接した状態で押される。従って、鋼材を一定の速度と安定した姿勢で搬送することができる。
【0021】
なお、このような断面円形状の丸形鋼材を含むあらゆる形状の鋼材を、停止させることなく連続的に搬送することができるツイン式のウォーキングビームは、上述した特許文献にも一切記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るツイン式ウォーキングビームの要部を示す側面図である。
【
図2】
図1に示すツイン式ウォーキングビームの一部拡大図である。
【
図3】
図1に示すツイン式ウォーキングビームの背面図で、第一ウォーキングビームと第二ウォーキングビームを示したものである。
【
図4】
図1に示すツイン式ウォーキングビームの背面図で、第一ウォーキングビームのみを示したものである。
【
図5】
図1に示すツイン式ウォーキングビームの背面図で、第二ウォーキングビームのみを示したものである。
【
図6】
図1に示すツイン式ウォーキングビームにおける第一回動リンク(第二回動リンク)の動作を示す拡大側面図であり、(a)は第一上端回転部(第二上端回転部)が上昇変位した状態を示し、(b)は下降変位した状態を示す。
【
図7】本発明の実施形態に係るツイン式ウォーキングビームの動作原理を示すもので、(a)は鋼材を第一移動ビームによって搬送している状態を示す概略側面図であり、(b)はその背面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るツイン式ウォーキングビームの動作原理を示すもので、(a)は鋼材の搬送を第一移動ビームから第二移動ビームに移行する状態を示す概略側面図であり、(b)はその背面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るツイン式ウォーキングビームの動作原理を示すもので、(a)は鋼材を第二移動ビームによって搬送している状態を示す概略側面図であり、(b)はその背面図である。
【
図10】従来のチェーン式コンベアを示す概略側面図である。
【
図11】従来のビーム式の搬送手段を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1乃至
図6を参照して、本発明の実施形態に係るツイン式ウォーキングビーム1について説明する。
【0024】
図1、
図3、
図4及び
図5に示すように、本実施形態に係るツイン式ウォーキングビーム1は、熱処理炉内で鋼材(断面円形状の丸形鋼材)Wを、前後方向の左右に配置されて前後方向に延びる複数のレール2の上で後側から前側に搬送するものであり、一対の第一ウォーキングビーム10と一対の第二ウォーキングビーム20を備える。一対のウォーキングビーム10と一対のウォーキングビーム20は、前後方向に沿った同じ箇所に並列して配置される。
【0025】
一対の第一ウォーキングビーム10はそれぞれ第一移動ビーム11を備える。この二つの第一移動ビーム11は、レール2に沿って、その内側で前後方向に延びるように配置され、同期して作動する。また、一対の第二ウォーキングビーム20はそれぞれ第二移動ビーム21を備える。この二つの第二移動ビーム21は、一対の第一ウォーキングビーム10に沿って(従って、レール2にも沿って)、その内側で前後方向に延びるように配置され、同期して作動する。
【0026】
第一移動ビーム11は、前進移動、下降移動、後退移動および上昇移動を矩形状に連続的に繰り返し、前進移動の際に、その上部に一定間隔をおいて複数設けられた第一上端当接部12のそれぞれが、対応する鋼材Wの後端を押してレール2上で前進(転動)させる。
なお、
図2に示すように、前後する二つの第一上端当接部12によってレール2の上に第一搬送凹部13が形成され、鋼材Wはこの第一搬送凹部13に置かれる。
【0027】
第二移動ビーム21は、第一移動ビーム11と交互に鋼材Wを前進させるべく、下降移動、後退移動、上昇移動および前進移動を矩形状に連続的に繰り返す。これにより、前進移動の際に、その上部に、第一移動ビーム11と同一の一定間隔で複数設けられた第二上端当接部22のそれぞれが鋼材Wの後端を押してレール2上で前進(転動)させる。
なお、同様に、前後する二つの第二上端当接部22によってレール2の上に第二搬送凹部23が形成され、鋼材Wはこの第二搬送凹部23に置かれる。
【0028】
このツイン式ウォーキングビーム1は、第一移動ビーム11の前進移動が終了すると同時に第二移動ビーム21の前進移動を開始させ、それに続く第二ウォーキングビーム20の前進移動が終了すると同時に、第一ウォーキングビーム10の前進移動を開始させる行程を繰り返して、鋼材Wを停止させることなく連続的に搬送する。これは、第一移動ビーム11の矩形状の移動時間を、第二移動ビーム21の矩形状の移動時間と等しく設定することによって行うことができる。
【0029】
すなわち、本実施形態では、第一移動ビーム11の前進移動時間を、第二移動ビーム21の下降移動時間、後退移動時間および上昇移動時間の合計と等しく設定し、また、第二移動ビーム21の前進移動時間を、第一移動ビーム11の下降移動時間、後退移動時間および上昇移動時間の合計と等しく設定している。これにより、鋼材Wを、第一移動ビーム11による搬送から第二ビームによる搬送に移行する際にも停止させることなく連続的に搬送することができる。
【0030】
なお、第一移動ビーム11の前進移動および後退移動は、第一移動ビーム11に連結された第一進退用シリンダー14のロッド14aを伸縮移動させることによって行うことができる。第一進退用シリンダー14は、第一移動ビーム11の下位に第一中間ロッド体17を介して連結して設けられた第一下端ビーム18の後方に設けられ、第一進退用シリンダー14のロッド14aを伸張して第一下端ビーム18を前進させることによって、それに連結した第一移動ビーム11を前進させる。その逆に、第一進退用シリンダー14のロッド14aを収縮させることによって第一移動ビーム11を後退させる。
【0031】
また、
図6に示すように、第一移動ビーム11の上昇移動および下降移動は、第一回動リンク16と第一昇降用シリンダー15によって行うことができる。第一回動リンク16は側面形状が略くの字状で、その第一中間支持部16aが回動自在に軸支され、その第一上端回転部16bが第一下端ビーム18の下面に転動し、その第一下端連結部16cが第一昇降用シリンダー15のロッド15aに回動自在に連結される。第一昇降用シリンダー15のロッド15aを収縮(または伸張)させることによって、第一回動リンク16を回動して第一上端回転部16bの高さ位置を上昇変位させることによって、第一移動ビーム11を、第一下端ビーム18を介して上昇移動させる。なお、第一回動リンク16は一対の第一移動ビーム11に対応して一対設けられるが、それらは第一連結ロッド19によって連結され、同期して作動する。
【0032】
同様に、第二移動ビーム21の前進移動および後退移動は、第二移動ビーム21に連結された第二進退用シリンダー24のロッド24aを伸縮移動させることによって行うことができる。すなわち、第二進退用シリンダー24は、第二移動ビーム21の下位に第二中間ロッド体27を介して連結して設けられた第二下端ビーム28の後方に設けられ、第二進退用シリンダー24のロッド24aを伸張させて第二下端ビーム28を前進させることによって第二移動ビーム21を前進させる。その逆に、第二進退用シリンダー24のロッド24aを収縮させることによって第二移動ビーム21を後退させる。
【0033】
また、第二移動ビーム21の上昇移動および下降移動は、第二回動リンク26と第二昇降用シリンダー25によって、第一移動ビーム11と同じように行うことができる(
図6参照)。第二回動リンク26は略くの字状で、第二中間支持部26aが回動自在に軸支され、第二上端回転部26bが第二下端ビームの下28面に転動し、第二下端連結部26cが第一昇降用シリンダー15のロッド15aに回動自在に連結される。第二昇降用シリンダー25のロッド25aを収縮(または伸張)させて第二回動リンク26を回動し、第二上端回転部26bの高さ位置を上昇変位させ、第二移動ビーム21を、第二下端ビーム28を介して上昇移動させる。この第二回動リンク26も一対の第二移動ビーム21に対応して一対設けられるが、それらは第二連結ロッド29によって連結され、同期して作動する。
【0034】
なお、本実施形態における複数のレール2は、後側から前側に向かって斜め上方に傾斜させている。
また、第一上端当接部12の前面を斜め後方に傾斜させた第一前傾斜面12aとし、その後面を斜め前方に傾斜させた第一後傾斜面12bとしている。同様に、第二上端当接部22の前面を斜め後方に傾斜させた第二前傾斜面22aとし、その後面を斜め前方に傾斜させた第二後傾斜面22bとしている。
【0035】
次に、本実施形態に係るツイン式ウォーキングビーム1の動作について、その原理を
図7乃至
図9に記載した概略図を参照して説明する。
【0036】
図7は、鋼材Wを第一移動ビーム11によって搬送している状態を示す。この状態では、第一回動リンク16の第一上端回転部16bが上昇変位し、第一上端当接部12が鋼材Wの後端(本実施形態では後端の円弧状下部W1)を押してレール2上で前方に搬送している。その逆に、第二移動ビーム21は、第二回動リンク26の第二上端回転部26bが下降変位した下降状態にある。この状態で、鋼材Wは一定距離、前側に搬送される。
【0037】
この状態から第一移動ビーム11の前進移動が終了する際には、
図8に示すように、第二移動ビーム21が上昇移動してその第二上端当接部22が鋼材Wの後端に当接して前進移動を開始する。すなわち、第一移動ビーム11の前進移動が終了する際に第二移動ビーム21の移動が始まる。従って、鋼材Wは第一移動ビーム11による搬送から第二移動ビーム21による搬送へ移行するときにも停止することなく連続的に搬送される。
【0038】
こうした連続的な搬送は、前述したように、第一移動ビーム11の前進移動時間を、第二移動ビーム21の下降移動時間、後退移動時間および上昇移動時間の合計と等しく設定し、また、第二移動ビーム21の前進移動時間を、第一移動ビーム11の下降移動時間、後退移動時間および上昇移動時間の合計と等しく設定したことによって可能となる。
【0039】
なお、この設定は、例えば、第一移動ビーム11および第二移動ビーム21の前進移動時間をそれぞれ18秒とし、下降移動時間を3秒とし、後退移動時間を12秒とし、上昇移動時間を3秒として行うことができる。これにより、前進移動時間(18秒)を、下降移動時間、後退移動時間および上昇移動時間の合計(18秒)と等しく設定することができる。
【0040】
また、本実施形態では、第一上端当接部12および第二上端当接部22の前面を斜め後方に傾斜させた第一前傾斜面12aおよび第二前傾斜面22aとしているので、それらが上昇移動した際に鋼材Wの後端(後端の円弧状下部W1)に、鋼材Wに強く干渉することなく円滑に滑り込ませることができる。また、このとき、第一前傾斜面12aおよび第二前傾斜面22aによって鋼材Wを前側に推し進めることもできるので、鋼材Wを、第一移動ビーム11による搬送から第二ビームによる搬送に移行する際、鋼材Wの停止のない連続的な搬送をさらに円滑に行わせることができる。
【0041】
また、本実施形態では、第一上端当接部12および第二上端当接部22の後面を斜め前方に傾斜させた第一後傾斜面12bおよび第二後傾斜面22bとしているので、これらが後続の鋼材Wに干渉するのを未然に防止して、鋼材Wの連続的な搬送を促進することができる。
【0042】
続いて、
図9に示すように、第一移動ビーム11が下降移動し、第二移動ビーム21が前進移動を続けて鋼材Wを搬送する。こうした第一移動ビーム11と第二移動ビーム21の前進移動を交互に繰り返すことによって鋼材Wを連続的に搬送する。
【0043】
なお、本実施形態における複数のレール2は、後側から前側に向かって斜め上方に傾斜させているので、レール2上の鋼材(丸形鋼材)Wには後側に転がる力が作用して第一移動ビーム11の第一上端当接部12と第二移動ビーム21の第二上端当接部22に軽く当接する。これにより、第一移動ビーム11と第二移動ビーム21は常に鋼材Wに当接した状態で押すことができるので、鋼材Wを安定した姿勢で前側に転動させながら搬送することができる。
【0044】
また、鋼材Wは、前後する二つの第一上端当接部12で形成される第一搬送凹部13および前後する二つの第二上端当接部22で形成される第二搬送凹部23に置かれた状態で搬送される。従って、鋼材Wの前方への転動も未然に防止することができる。
【0045】
なお、本実施形態では丸形鋼材Wを搬送しているが、本発明はこれに限定されず、断面矩形状の角形鋼材などあらゆる形状のものを搬送することができる。
また、本発明のツイン式ウォーキングビーム1は、熱処理炉や鋼材Wの大きさなどに対応して、1台のみでの使用や複数台を前後方向に連結しての使用が可能である。
【0046】
また、本実施形態ではウォーキングビームの駆動方式について、いわゆるベルクランク方式のものについて説明したが、その他の駆動方式、例えば、いわゆる偏芯輪方式や、いわゆる傾斜レール方式のものであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ツイン式ウォーキングビーム
2 レール
10 第一ウォーキングビーム
11 第一移動ビーム
12 第一上端当接部
12a 第一前傾斜面
12b 第一後傾斜面
13 第一搬送凹部
14 第一進退用シリンダー
14a 第一進退用シリンダーのロッド
15 第一昇降用シリンダー
15a 第一昇降用シリンダーのロッド
16 第一回動リンク
16a 第一中間支持部
16b 第一上端回転部
16c 第一下端連結部
17 第一中間ロッド体
18 第一下端ビーム
19 第一連結ロッド
20 第二ウォーキングビーム
21 第二移動ビーム
22 第二上端当接部
22a 第二前傾斜面
22b 第二後傾斜面
23 第二搬送凹部
24 第二進退用シリンダー
24a 第二進退用シリンダーのロッド
25 第二昇降用シリンダー
25a 第二昇降用シリンダーのロッド
26 第二回動リンク
26a 第二中間支持部
26b 第二上端回転部
26c 第二下端連結部
27 第二中間ロッド体
28 第二下端ビーム
29 第二連結ロッド
C チェーン
F 第一移動ビーム
J 治具
R 炉床
S 第二移動ビーム
W 鋼材
W1 鋼材の円弧状下部