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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103421
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】曳航ロボット
(51)【国際特許分類】
   B63B 59/10 20060101AFI20240725BHJP
   B63C 11/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B63B59/10 A
B63C11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007723
(22)【出願日】2023-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】710006367
【氏名又は名称】ウラカミ合同会社
(72)【発明者】
【氏名】浦上 不可止
(57)【要約】
【課題】船体に付着した海生生物を船舶が運航中に海中で簡便に除去する等の作業を行う曳航ロボットを提供する。
【解決手段】曳航ロボットは、複数の車輪と;車輪を駆動する油圧モータと;船舶の運航による水流により回転されるプロペラと;プロペラに連結された油圧ポンプと;揚力を発生させて曳航ロボットを船体へ押付けて密着させる一対の昇降舵と;揚力を発生させて曳航ロボットの船体に沿っての移動を補助する方向舵:から構成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体表面に沿って且つ流体の流れる方向と交差する方向への駆動力を備える複数の車輪と;
前記の車輪を回転駆動するモータと;
流体の流れる方向と平行な回転軸を備えるプロペラと;
前記のプロペラの回転軸に連結された、作動油などの作動流体に圧力を与えて吐出する油圧ポンプなどの流体圧吐出ポンプ、もしくは、前記のプロペラにより回転されることにより発電する発電機と;
物体表面に平行な面上において、且つ、流体の流れる方向に向かって左右に配置された一対の昇降舵と;
物体表面に直交し、且つ、流体の流れる方向と平行な面上に配置された方向舵と;
物体表面に直交し、且つ、流体の流れる方向と平行な面上に配置された垂直翼;
から少なくとも構成されている;
ことを特徴とする曳航ロボット。
【請求項2】
流体の流れる領域内に配置され、ロープにより牽引された曳航ロボットにおいて、曳航ロボットが、物体表面へ密着する場合においては、一対の昇降舵の下流側の端部が物体表面から離反する方向へスイングされ、よって、昇降舵に物体表面へ向かう揚力が作用するので曳航ロボットは物体表面へ密着する;ことを特徴とする請求項1に記載の曳航ロボット。
【請求項3】
流体の流れる領域内に配置され、ロープにより牽引された曳航ロボットにおいて、曳航ロボットが、物体表面に沿って、且つ、流体の流れる方向と交差する方向へ、且つ、流体の流れる方向に向かって左方向へ移動する場合においては、方向舵が反時計方向へスイングされ、よって、方向舵に流体の流れる方向に向かって左方向への揚力が作用し、一方、曳航ロボットが、物体表面に沿って、且つ、流体の流れる方向と交差する方向へ、且つ、流体の流れる方向に向かって右方向へ移動する場合においては、方向舵が時計方向へスイングされ、よって、方向舵に流体の流れる方向に向かって右方向への揚力が作用する;ことを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の曳航ロボット。
【請求項4】
曳航ロボット牽引用ウインチと、キャレッジ下降用ウインチと、キャレッジ上昇用ウインチとが、船体の喫水線の上方に配置されており;
前記キャレッジ下降用ウインチから繰り出されるキャレッジ下降用ロープは、下方へ伸びて、次に、船体の下方に配置されたシーブブロックを通った後に上方へ伸びてキャレッジ下降用ロープ固定部に連結されており;
前記キャレッジ上昇用ウインチから繰り出されるキャレッジ上昇用ロープは、下方へ伸びてキャレッジ上昇用ロープ固定部に連結されており;
キャレッジは、前記キャレッジ下降用ウインチと前記キャレッジ上昇用ウインチの駆動操作により、任意の時に、船体の下方もしくは上方へ、船体に沿って移動させることが可能であり;
前記曳航ロボット牽引用ウインチから繰り出される曳航ロボット牽引ロープは、下方へ伸びて、次に、キャレッジ下流側シーブを通った後に下流側へさらに伸びて曳航ロボットに連結されている;
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の曳航ロボット。
【請求項5】
走行する船体に沿って前記船体と同じ方向へ並走する作業船によって曳航される;ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の曳航ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体の水線部や船底部に付着した貝類などの海生生物を、船舶の運航中に除去する等の作業を行う装置に関する。
【0002】
本発明は、さらに、発電所、製鉄所、石油コンビナ-ト、液化ガス基地等において、復水機など各種装置の冷却等のため海水の導入用として設けられている大口径取水管、あるいは送水用として設けられている大口径送水管など、水路の側壁に付着した貝類などの海生生物を、プラントの運用中に除去する等の作業を行う装置に関する。
【背景技術】
【0003】
外航船の船体に付着した貝類などの海生生物は、外国の寄港地の在来生態系に悪影響を与えて寄港地の水産業などに損害を発生させるため、諸外国の一部の国々においては、外航船が寄港する以前に船体に付着した貝類などの海生生物を除去することを法律で義務化している。さらには一部の国々においては、自国領海内において船体に付着した貝類などの海生生物を除去することも法律で禁止している。
従来、船舶が係船されて静止しているときに、船体に付着した貝類などの海生生物を除去する装置は種々提案されているが、一部の国々においては、そもそも自国領海内において船体に付着した海生生物を除去することが法律で禁止されているのであるから、当該の自国領海内において船体に付着した海生生物を除去する装置を使用することも不可能である。
よって、領海外の国際海域において、船体に付着した海生生物を除去する必要があるが、国際海域において船舶を係船して静止させるのは技術的な面などから困難であり、海生生物を除去する期間は船舶を運行できないことに起因する経済的な損害も大きい。
よって、国際海域において船舶を運航中に、船体に付着した海生生物を除去する等の作業を行う装置が必要となるものである。
【0004】
発電所、石油コンビナ-ト、液化ガス基地等においては、各種装置の冷却等のための海水の導入用として、あるいは送水用として大規模な水路が設けられている。この水路には、海水と共に多量の貝および貝卵等が流入するため、流入した貝および貝卵等が水路の側壁に付着し、付着した貝をそのまま放置しておくと、短期間のうちに貝が成長して水路の流路面積が縮小されて流路の圧力損失が増大し、結果として所定の冷却性能等が著しく悪化するという不都合な事態が発生する。
そこで、水路の側壁に付着した貝は、所定の性能に悪化が生じないサイクルで定期的に除去する必要がある。
従来、このような水路の側壁に付着した貝類の除去のために、関係諸装置の作動を一時的に停止して水路内への海水の流入を阻止した後に、水路内に作業員が入り込んで人手により貝類を除去する方法が採用されていた。
【0005】
日本国特許公開平5-285463号は、水中清掃用吸盤に関する発明であるが、水が入ったタンクなどの水中の壁面に吸着して走行する吸着自走台車において、台車の走行方向に向かって左右対称の位置に、回転ブラシなどの複数の回転板が配置され、当該回転板の回転軸を傾けてこの回転板の外周の1点を壁に接触させ、この接触点より受ける反力によって台車を前進させる技術、が開示されている。
【特許文献1】日本国特許公開平5-285463
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明においては、国際海域において船舶を運航中に、船体に付着した海生生物を除去する等の作業を行う装置を提案するものである。
【0007】
本発明が解決しようとするさらなる課題について述べると、発電所、石油コンビナ-ト、液化ガス基地等における各種装置の冷却等のための海水の導入用、あるいは送水用の大規模な水路に付着する貝類の除去作業においては、多数の作業員を水路内に投入するために人件費が非常に高くつき、また作業環境も非常に悪い。例えば、水路内の温度、湿度は非常に高く、暗くて滑りやすく、また貝の腐食臭が充満している。
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたもので、水路の側壁に付着した貝類の除去のために関係諸装置の作動を一時的に停止する必要がなく、また、作業環境の悪い水路内に作業員が入り込んで貝類を除去するといった非能率、非衛生的かつ危険な上に作業コストも高い人手による作業を必要とせず、下記の特徴を備えた簡便に貝類を除去することが可能な装置を提供することを目的としている。
(1)貝類の除去のために関係諸装置の作動を一時的に停止する必要が無いので関係諸装置の運転効率を増大できる。
(2)人手による貝類の除去に比べて省力化が図れるので作業コストを低減できる。
(3)リモートコントロールにより貝類を除去するので安全かつ衛生的である。
(4)装置は水路の側壁における任意の場所にクイックリーに移動する機能に優れているので作業能率が向上する。
(5)装置の機構がシンプルで軽量であるため、メンテナンスが容易で、故障や作動不良が発生しにくく、持ち運びが容易である。
(6)設備投資に莫大な費用を要しない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記の技術的解決課題を達成するために;
物体表面に沿って且つ流体の流れる方向と交差する方向への駆動力を備える複数の車輪と;
前記の車輪を回転駆動するモータと;
流体の流れる方向と平行な回転軸を備えるプロペラと;
前記のプロペラの回転軸に連結された、作動油などの作動流体に圧力を与えて吐出する油圧ポンプなどの流体圧吐出ポンプ、もしくは、前記のプロペラにより回転されることにより発電する発電機と;
物体表面に平行な面上において、且つ、流体の流れる方向に向かって左右に配置された一対の昇降舵と;
物体表面に直交し、且つ、流体の流れる方向と平行な面上に配置された方向舵と;
物体表面に直交し、且つ、流体の流れる方向と平行な面上に配置された垂直翼;
から少なくとも構成されている;ことを特徴とする曳航ロボットを提案する。
【0009】
本発明においては上記の技術的解決課題を達成するために更に;
流体の流れる領域内に配置され、ロープにより牽引された曳航ロボットにおいて、曳航ロボットが、物体表面へ密着する場合においては、一対の昇降舵の下流側の端部が物体表面から離反する方向へスイングされ、よって、昇降舵に物体表面へ向かう揚力が作用するので曳航ロボットは物体表面へ密着する;
ことを特徴とする請求項1に記載の曳航ロボットを提案する。
【0010】
本発明においては上記の技術的解決課題を達成するために更に;
流体の流れる領域内に配置され、ロープにより牽引された曳航ロボットにおいて、曳航ロボットが、物体表面に沿って、且つ、流体の流れる方向と交差する方向へ、且つ、流体の流れる方向に向かって左方向へ移動する場合においては、方向舵が反時計方向へスイングされ、よって、方向舵に流体の流れる方向に向かって左方向への揚力が作用し、一方、曳航ロボットが、物体表面に沿って、且つ、流体の流れる方向と交差する方向へ、且つ、流体の流れる方向に向かって右方向へ移動する場合においては、方向舵が時計方向へスイングされ、よって、方向舵に流体の流れる方向に向かって右方向への揚力が作用する;
ことを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の曳航ロボットを提案する。
【0011】
本発明においては上記の技術的解決課題を達成するために更に;
曳航ロボット牽引用ウインチと、キャレッジ下降用ウインチと、キャレッジ上昇用ウインチとが、船体の喫水線の上方に配置されており;
前記キャレッジ下降用ウインチから繰り出されるキャレッジ下降用ロープは、下方へ伸びて、次に、船体の下方に配置されたシーブブロックを通った後に上方へ伸びてキャレッジ下降用ロープ固定部に連結されており;
前記キャレッジ上昇用ウインチから繰り出されるキャレッジ上昇用ロープは、下方へ伸びてキャレッジ上昇用ロープ固定部に連結されており;
キャレッジは、前記キャレッジ下降用ウインチと前記キャレッジ上昇用ウインチの駆動操作により、任意の時に、船体の下方もしくは上方へ、船体に沿って移動させることが可能であり;
前記曳航ロボット牽引用ウインチから繰り出される曳航ロボット牽引ロープは、下方へ伸びて、次に、キャレッジ下流側シーブを通った後に下流側へさらに伸びて曳航ロボットに連結されている;
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の曳航ロボットを提案する。
【0012】
本発明においては上記の技術的解決課題を達成するために更に;
走行する船体に沿って前記船体と同じ方向へ並走する作業船によって曳航される;ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の曳航ロボットを提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は下記の効果をもたらすものである。
(1)貝類の除去のために、船舶の運航や、プラントの関係諸装置の作動を一時的に停止する必要が無いので、船舶やプラントの運転効率を増大できる。
(2)人手による貝類の除去に比べて省力化が図れるので作業コストを低減できる。
(3)リモートコントロールにより貝類を除去するので安全かつ衛生的である。
(4)装置は作業領域の任意の場所にクイックリーに移動する機能に優れているので作業能率が向上する。
(5)装置の機構がシンプルで軽量であるため、メンテナンスが容易で、故障や作動不良が発生しにくく、持ち運びが容易である。
(6)設備投資に莫大な費用を要しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明においては、下記のように構成された曳航ロボットを提案する。
物体表面に沿って且つ流体の流れる方向と交差する方向への駆動力を備える複数の車輪と;
前記の車輪を回転駆動するモータと;
流体の流れる方向と平行な回転軸を備えるプロペラと;
前記のプロペラの回転軸に連結された、作動油などの作動流体に圧力を与えて吐出する油圧ポンプなどの流体圧吐出ポンプ、もしくは、前記のプロペラにより回転されることにより発電する発電機と;
物体表面に平行な面上において、且つ、流体の流れる方向に向かって左右に配置された一対の昇降舵と;
物体表面に直交し、且つ、流体の流れる方向と平行な面上に配置された方向舵と;
物体表面に直交し、且つ、流体の流れる方向と平行な面上に配置された垂直翼;
から少なくとも構成されている、ことを特徴とする曳航ロボットを提案する。
なお、本発明の曳航ロボットにおいては、回転ブラシなどの物体表面に対して清掃作用を及ぼす器具や、TVカメラなどの作業を監視する器具や、作業を自動化するためのセンサー類などを、自由に装着することができる。
【実施例0015】
以下、本発明に従って構成された装置の実施例を、図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
本発明の実施例の装置は、2個の四角柱状の台車フレーム3と、各台車フレーム3の両端部に配置された4個のオムニ車輪9を備えている。
【0016】
4個のオムニ車輪9の各々には車輪駆動油圧モータ10が装着されている。
図4図7を参照して4個のオムニ車輪9の動作を説明すると、
車輪駆動油圧モータ10(ML1)と車輪駆動油圧モータ10(MR1)とは、1個の電磁弁により同時に作動され、図4において、上流方向から見て、時計方向もしくは反時計方向へ、同方向に回転される。
車輪駆動油圧モータ10(ML2)と車輪駆動油圧モータ10(MR2)とは、1個の電磁弁により同時に作動され、図4において、上流方向から見て、時計方向もしくは反時計方向へ、同方向に回転される。
車輪駆動油圧モータ10(ML1)と車輪駆動油圧モータ10(MR1)とが、上流方向から見て、時計方向へ回転され、車輪駆動油圧モータ10(ML2)と車輪駆動油圧モータ10(MR2)とが時計方向へ回転されると、曳航ロボットは、図4において上方向へ走行する。
車輪駆動油圧モータ10(ML1)と車輪駆動油圧モータ10(MR1)とが、上流方向から見て、反時計方向へ回転され、車輪駆動油圧モータ10(ML2)と車輪駆動油圧モータ10(MR2)とが反時計方向へ回転されると、曳航ロボットは、図4において下方向へ走行する。
【0017】
本発明の実施例の装置は、2式の台車フレーム3の中間位置に、2個の連結フレーム4を介して配置された円筒フレーム5、を備えている。
円筒フレーム5の内側には、流体の流れる方向と平行な回転軸を備えるプロペラ6が配置されており、プロペラ6の回転軸には、油圧ポンプ7と、発電機8が連結されている。
流体の流れの作用によりプロペラ6が回転されると、油圧ポンプ7が回転され、図7に図示のように、4個の車輪駆動油圧モータ10、方向舵駆動シリンダ112、左昇降舵駆動シリンダ122、右昇降舵駆動シリンダ132へ、電磁弁を介して作動用の圧油が供給される。
流体の流れの作用によりプロペラ6が回転されると、発電機8も回転され、電磁弁などへ、制御用の電源が供給される。
【0018】
本発明の実施例の装置は、物体表面1に平行な面上において、且つ、流体の流れる方向に向かって左側と右側に、一対の昇降舵、すなわち、左昇降舵12と右昇降舵13を備えている。
左昇降舵12は、板状の四角形を成し、流体の流れの上流側の端部が、2個の左昇降舵ヒンジ123により、揺動可能に装着されており、左昇降舵12と流体が流れる方向FDとが成す角度は、左昇降舵駆動シリンダ122により、任意の角度を成すように構成されている。
右昇降舵13は、板状の四角形を成し、流体の流れの上流側の端部が、2個の右昇降舵ヒンジ133により、揺動可能に装着されており、右昇降舵13と流体が流れる方向FDとが成す角度は、右昇降舵駆動シリンダ132により、任意の角度を成すように構成されている。
図5において、左昇降舵駆動シリンダ122の動作により、左昇降舵12が反時計方向に揺動されると、左昇降舵12には揚力L2が作用し、一方、図示していないが、右昇降舵駆動シリンダ132の動作により、右昇降舵13が左昇降舵12と同方向へ揺動されると、右昇降舵13にも揚力L2が作用し、よって、曳航ロボットは物体表面1へ押し付けられて密着する。
【0019】
本発明の実施例の装置は、物体表面1に直交し、且つ、流体の流れる方向と平行な面上に配置された方向舵11を備えている。
方向舵11は、板状の四角形を成し、流体の流れの上流側の端部が、2個の方向舵ヒンジ113により、揺動可能に装着されており、方向舵11と流体が流れる方向FDとが成す角度は、方向舵駆動シリンダ112により、任意の角度を成すように構成されている。
図6において、方向舵駆動シリンダ112の動作により、方向舵11が時計方向に揺動されると、方向舵11には下向きの揚力L1が作用し、よって、曳航ロボットには、方向舵11を介して下向きの力が作用する。
一方、図示していないが、方向舵駆動シリンダ112の動作により、方向舵11が反時計方向に揺動されると、方向舵11には上向きの揚力L1が作用し、よって、曳航ロボットには、方向舵11を介して上向きの力が作用する。
【0020】
本発明の実施例の装置においては、図8に図示のように、曳航ロボットが流体の流れる領域内に配置され、流体が流れる方向FDの上流側に配置されたウインチ200から繰り出された牽引ロープ2により牽引された曳航ロボットにおいて、牽引ロープ2が流体が流れる方向FDに平行である位置に曳航ロボットが在る場合においては、方向舵駆動シリンダ112の動作により、方向舵11が反時計方向に揺動されて方向舵11には上向きの揚力L1が作用し、よって、曳航ロボットには、方向舵11を介して上向きの力が作用する。
この時、車輪駆動油圧モータ10(ML1)と車輪駆動油圧モータ10(MR1)とが、上流方向から見て、時計方向へ回転され、車輪駆動油圧モータ10(ML2)と車輪駆動油圧モータ10(MR2)とが時計方向へ回転されると、曳航ロボットは、ウインチ200を中心とする円を描きながら上方向へ走行する。
【0021】
本発明の実施例の装置においては、図9に図示のように、曳航ロボットが流体の流れる領域内に配置され、流体が流れる方向FDの上流側に配置されたウインチ200から繰り出された牽引ロープ2により牽引された曳航ロボットにおいて、牽引ロープ2が流体が流れる方向FDに平行である位置に曳航ロボットが在る場合においては、方向舵駆動シリンダ112の動作により、方向舵11が時計方向に揺動されて方向舵11には下向きの揚力L1が作用し、よって、曳航ロボットには、方向舵11を介して下向きの力が作用する。
この時、車輪駆動油圧モータ10(ML1)と車輪駆動油圧モータ10(MR1)とが、上流方向から見て、反時計方向へ回転され、車輪駆動油圧モータ10(ML2)と車輪駆動油圧モータ10(MR2)とが反時計方向へ回転されると、曳航ロボットは、ウインチ200を中心とする円を描きながら下方向へ走行する。
【0022】
油圧ポンプ7については、油圧ポンプ7の代わりに発電機が搭載されてもよく、この場合、車輪駆動油圧モータ10の代わりに電気モータが搭載される。またこの場合、方向舵駆動シリンダ112、左昇降舵駆動シリンダ122、右昇降舵駆動シリンダ132の代わりに、電気モータにより駆動されるリニアアクチュエータが搭載される。
【0023】
上述した本発明の実施例の装置を、船舶が運航中の海中における作業に適用した運用例、すなわち、本発明の曳航ロボットの運用例について、以下に説明する。
ウィンチ200を操作して牽引ロープ2を下流側に繰出すことにより、曳航ロボットを貝類を除去したい任意の場所に到達させた時、左昇降舵12と右昇降舵13を操作して曳航ロボットを船体へ押し付けて密着させる。
次に、方向舵11とオムニ車輪9を操作して、曳航ロボットを、船体に沿ってウィンチ200を中心とする円を描くように走行させると、曳航ロボットが走行した領域において海生生物の除去などの作業を実施することができる。
曳航ロボットによる1列目の清掃、除去作業を終えると、次に、ウィンチ200を操作して牽引ロープ2を下流側に繰出すことにより、曳航ロボットによる2列目の作業が開始される。
以下、上記の動作を繰り返すことにより、作業を簡便に実施することができる。
【0024】
図10において、曳航ロボット牽引用ウインチ200と、キャレッジ下降用ウインチ300と、キャレッジ上昇用ウインチ400とが、船体1100の上部に配置されており;
前記キャレッジ下降用ウインチ300から繰り出されるキャレッジ下降用ロープ301は、下方へ伸びて、次に、船体1100の下方に固定されたシーブブロック304を通った後に上方へ伸びてキャレッジ下降用ロープ固定部305に連結されており;
前記キャレッジ上昇用ウインチ400から繰り出されるキャレッジ上昇用ロープ401は、下方へ伸びてキャレッジ上昇用ロープ固定部405に連結されており;
キャレッジ500は、前記キャレッジ下降用ウインチ300と前記キャレッジ上昇用ウインチ400の駆動操作により、任意の時に、船体1100の下方もしくは上方へ、船体1100に沿って移動させることが可能であり;
前記曳航ロボット牽引用ウインチ200から繰り出される曳航ロボット牽引ロープ2は、下方へ伸びて、次に、キャレッジ下流側シーブ203を通った後に下流側へさらに伸びて曳航ロボット1000に連結されている。
上述の装置構成において、走行する船体1100に対する曳航ロボット1000による作業を開始する場合、先ず、キャレッジ500を船体1100の最上部の位置に配置し、次に、牽引ロープ2を船体1100の最上部の位置に置かれている曳航ロボット1000に連結し、次に、キャレッジ500と曳航ロボット1000を下降させて海面1200の下に没水させ、次に、曳航ロボット1000の各部の操作と牽引ロープ2のウインチからの繰り出しにより曳航ロボット1000を船体1100に密着させ、以下、曳航ロボット1000による作業を開始する。
曳航ロボット1000による作業が終了して曳航ロボット1000を船体1100の最上部に回収する場合、先ず、曳航ロボット1000の各部の操作と牽引ロープ2のウインチへの巻き取りにより、曳航ロボット1000を船体1100から離反させてキャレッジ500の近傍へ引き寄せ、次に、次に、キャレッジ500と曳航ロボット1000を上昇させて曳航ロボット1000を船体1100の最上部に回収する。
【0025】
図11において、作業船1300の船尾に曳航ロボット牽引用ウインチ200を配置し、船体1100に沿って走行する作業船1300により曳航ロボット1000を牽引することにより、曳航ロボット1000を船体1100の没水部に密着させ且つ船体に沿って走行させて作業を行う。
【0026】
以上、添付図面を参照して本発明に従って構成された装置の好適実施例について詳細に説明したが、本発明はかかる実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく更に種々の変形或いは修正を加えることが可能であることは多言を要しない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、船体の水線部や船底部に付着した貝類などの海生生物を、船舶の運航中に除去する等の作業に適用することができる。
本発明はまた、発電所、製鉄所、石油コンビナ-ト、液化ガス基地等において、復水機など各種装置の冷却等のため海水の導入用として設けられている大口径取水管、あるいは送水用として設けられている大口径送水管など、水路の側壁に付着した貝類などの海生生物を除去する等の作業に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に従って構成された装置の好適実施例の平面図。
図2図1に示す装置の右側面図。
図3図1に示す装置の上面図。
図4図2に示す装置のA-Aの一部断面図。
図5図3に示す装置において、傾いた左昇降舵12へ、流体の流れFDが作用して揚力L2が発生する状態を示した図。
図6図1に示す装置において、傾いた方向舵11へ、流体の流れFDが作用して揚力L1が発生する状態を示した図。
図7】油圧回路図
図8】流体の流れる領域内に配置された曳航ロボットに、流体の流れFDが作用して揚力を発生させる状態を示した図。
図9】流体の流れる領域内に配置された曳航ロボットに、流体の流れFDが作用して揚力を発生させる状態を示した図。
図10】走行する船体の船首部において、曳航ロボット牽引用ウインチと、キャレッジ下降用ウインチと、キャレッジ上昇用ウインチとが、船体の船首部上部に配置されており、キャレッジの昇降動作により、曳航ロボットを没水させ、あるいは没水している曳航ロボットを海面上に引き揚げる装置の構成を示す図。
図11】走行する船体に沿って前記船体と同じ方向へ並走する作業船によって曳航ロボットが曳航されており、曳航ロボットは船体の没水部に密着して且つ船体に沿って走行しながら作業を行っている状態を示す図。
【符号の説明】
【0029】
1 物体表面
2 曳航ロボット牽引ロープ
3 台車フレーム
4 連結フレーム
5 円筒フレーム
6 プロペラ
7 油圧ポンプ
8 発電機
9 オムニ車輪
10 オムニ車輪駆動油圧モータ
11 方向舵
112 方向舵駆動シリンダ
113 方向舵ヒンジ
12 左昇降舵(流れの上流側に向かって左側)
122 左昇降舵駆動シリンダ
123 左昇降舵ヒンジ
13 右昇降舵(流れの上流側に向かって右側)
132 右昇降舵駆動シリンダ
133 右昇降舵ヒンジ
18 垂直翼
63 軸受
100 ロープ牽引部
200 曳航ロボット牽引用ウインチ
202 シーブ
203 キャレッジ下流側シーブ
300 キャレッジ下降用ウインチ
301 キャレッジ下降用ロープ
302 シーブ
303 キャレッジ上流側シーブ
304 シーブブロック
305 キャレッジ下降用ロープ固定部
400 キャレッジ上昇用ウインチ
401 キャレッジ上昇用ロープシーブ402
405 キャレッジ上昇用ロープ固定部
500 キャレッジ
1000 曳航ロボット
1100 船首部の船体
1200 海面
1300 作業船
FD 流体が流れる方向
D1 方向舵に作用する抗力
L1 方向舵に作用する揚力
D2 昇降舵に作用する抗力
L2 昇降舵に作用する揚力
D3 曳航ロボットに作用する抗力
L3 曳航ロボットに作用する揚力
TD 曳航ロボットの走行方向
PL プロペラ
FP 油圧ポンプ
ML1 オムニ車輪駆動油圧モータ(流れの上流側に向かって左側)
ML2 オムニ車輪駆動油圧モータ(流れの上流側に向かって左側)
MR1 オムニ車輪駆動油圧モータ(流れの上流側に向かって右側)
MR2 オムニ車輪駆動油圧モータ(流れの上流側に向かって右側)
CLT 方向舵駆動シリンダ
CLL 左昇降舵駆動シリンダ
CLR 右昇降舵駆動シリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11