(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010343
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】調光シート、および、調光装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20240117BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1337 525
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111631
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森永 かおり
【テーマコード(参考)】
2H088
2H290
【Fターム(参考)】
2H088EA32
2H088GA10
2H088HA03
2H088KA27
2H088MA20
2H290BD01
2H290DA01
2H290DA03
(57)【要約】
【課題】透過状態での透明性と散乱状態での遮光性との双方を良好に得ることのできる調光シートおよび調光装置を提供する。
【解決手段】調光シート10が備える配向層51,52は、下記一般式(1-1)で示す構造および下記一般式(1-2)で示す構造の少なくとも一方を側鎖に含む高分子化合物を含む。
―A
1-(CH
2)
m-A
2-(A
3)
o-A
4 ・・・(1-1)
―A
1-(R-O)
n-A
2-(A
3)
o-A
4 ・・・(1-2)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶組成物を含む調光層と、
前記調光層を挟む一対の配向層と、
前記調光層および前記一対の配向層を挟む一対の透明電極層と、を備え、
前記配向層は、下記一般式(1-1)で示す構造および下記一般式(1-2)で示す構造の少なくとも一方を側鎖に含む高分子化合物を含む
調光シート。
―A1-(CH2)m-A2-(A3)o-A4 ・・・(1-1)
―A1-(R-O)n-A2-(A3)o-A4 ・・・(1-2)
A1は、単結合および-O-のいずれかであり、A2は、ベンゼン環、シクロヘキサン環、複素環、および、これらの環状基における任意の位置の水素原子が1価の置換基により置換された環状基からなる群から選択される2価の環状基、または、ステロイド骨格を有する2価の有機基であり、A3は、ベンゼン環、シクロヘキサン環、複素環、および、これらの環状基における任意の位置の水素原子が1価の置換基により置換された環状基からなる群から選択される2価の環状基であり、A4は、炭素数1から18のアルキル基、および、炭素数1から18のアルコキシ基のいずれかであり、Rは、-(CH2)p-(pは2以上4以下の整数)であり、mは5以上50以下の整数であり、nは2以上25以下の整数であり、oは0以上2以下の整数である。
【請求項2】
前記高分子化合物の主鎖は、ポリイミドまたはポリイミド前駆体からなる骨格を有する
請求項1に記載の調光シート。
【請求項3】
前記液晶組成物は、誘電率異方性が負である液晶分子を含み、
調光シートに駆動電圧が印加されていない状態において、前記配向層は、前記液晶分子を垂直配向させる
請求項1に記載の調光シート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の調光シートと、
前記調光シートへの駆動電圧の印加を制御する制御部と、を備え、
前記駆動電圧の印加によって、前記調光シートが透明状態から当該透明状態よりもヘイズの大きい散乱状態に切り替わる
調光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光シート、および、調光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、液晶組成物を含む調光層と、調光層を挟む一対の透明電極層とを備えており、一対の透明電極層間に駆動電圧が印加される。駆動電圧の印加の有無に応じて液晶分子の配向状態が変わることから、調光層を光が透過する透過状態と、調光層で光が散乱する散乱状態とを切り替えることが可能である。
【0003】
駆動電圧が印加されていないときに透過状態となる調光シートは、透明電極層と調光層との間に配向層を備えている。配向層は垂直配向膜であり、駆動電圧が印加されていないときに、透明電極層および配向層に対して液晶分子を垂直に配向させる(例えば、特許文献1参照)。これにより、調光層を光が透過する。液晶分子としては、誘電率異方性が負である化合物が用いられ、駆動電圧が印加されると、透明電極層および配向層に対して液晶分子が水平に配向される。これにより、調光層で光が散乱し、調光シートは散乱状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、配向層を構成する高分子化合物について、液晶分子の垂直配向性を高めることを目的とした側鎖構造が提案されている。下記構造式(5)で示されるジアミン化合物は、特許文献1において、高分子化合物の生成に用いられる化合物の一例である。特許文献1のジアミン化合物は、高分子化合物の主鎖であるポリイミド骨格に組み込まれるフェニレンジアミン構造から、縮合環または複数の単環からなる環状構造が延び、環状構造からさらに、アルキル基等からなる疎水構造が延びる構造を有する。
【0006】
【0007】
上記ジアミン化合物を含む材料から生成された高分子化合物は、側鎖に上記環状構造と上記疎水構造とを含む。疎水構造は、液晶分子を垂直に配向させる機能を有し、環状構造は、液晶分子の動きを抑えて配向を安定させる機能を有する。それゆえ、透過状態における調光シートの透明性が良好に得られる。一方で、上記高分子化合物は、主鎖の直近に剛直な構造である環状構造を有するため、駆動電圧が印加されたときに、液晶分子の向きの変更が環状構造によって妨げられやすい。すなわち、配向層の付近での液晶分子の水平配向が阻害されやすいため、散乱状態での遮光性が十分に得られ難い。
このように、配向層が含む高分子化合物の構造にはなお改善の余地が残されており、透過状態での透明性と散乱状態での遮光性との双方を良好に得ることのできる調光シートが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための調光シートおよび調光装置の各態様を記載する。
[態様1]液晶組成物を含む調光層と、前記調光層を挟む一対の配向層と、前記調光層および前記一対の配向層を挟む一対の透明電極層と、を備え、前記配向層は、下記一般式(1-1)で示す構造および下記一般式(1-2)で示す構造の少なくとも一方を側鎖に含む高分子化合物を含む調光シート。
―A1-(CH2)m-A2-(A3)o-A4 ・・・(1-1)
―A1-(R-O)n-A2-(A3)o-A4 ・・・(1-2)
【0009】
A1は、単結合および-O-のいずれかであり、A2は、ベンゼン環、シクロヘキサン環、複素環、および、これらの環状基における任意の位置の水素原子が1価の置換基により置換された環状基からなる群から選択される2価の環状基、または、ステロイド骨格を有する2価の有機基であり、A3は、ベンゼン環、シクロヘキサン環、複素環、および、これらの環状基における任意の位置の水素原子が1価の置換基により置換された環状基からなる群から選択される2価の環状基であり、A4は、炭素数1から18のアルキル基、および、炭素数1から18のアルコキシ基のいずれかであり、Rは、-(CH2)p-(pは2以上4以下の整数)であり、mは5以上50以下の整数であり、nは2以上25以下の整数であり、oは0以上2以下の整数である。
【0010】
[態様2][態様1]に記載の調光シートと、前記調光シートへの駆動電圧の印加を制御する制御部と、を備え、前記駆動電圧の印加によって、前記調光シートが透明状態から当該透明状態よりもヘイズの大きい散乱状態に切り替わる調光装置。
【0011】
上記各構成によれば、配向層を構成する高分子化合物において、主鎖と側鎖の環状構造との間にアルキル鎖またはポリエーテル鎖が含まれているため、側鎖にて主鎖の付近に環状構造が位置する高分子化合物を用いた場合と比較して、液晶分子の向きの変更が妨げられることを抑えることができる。したがって、液晶分子の配向とその向きの変更とが好適に可能であることから、透過状態での透明性と散乱状態での遮光性との双方が良好に得られる。
【0012】
[態様3]前記高分子化合物の主鎖は、ポリイミドまたはポリイミド前駆体からなる骨格を有する[態様1]に記載の調光シート。
上記構成によれば、上記側鎖構造を有する高分子化合物の合成が容易であり、こうした高分子化合物を含む配向層が好適に得られる。
【0013】
[態様4]前記液晶組成物は、誘電率異方性が負である液晶分子を含み、調光シートに駆動電圧が印加されていない状態において、前記配向層は、前記液晶分子を垂直配向させる[態様1]または[態様3]に記載の調光シート。
【0014】
上記構成によれば、駆動電圧の非印加時に透明状態となり、駆動電圧の印加時に散乱状態となる調光シートが好適に実現され、こうした調光シートにおいて、透過状態での透明性と散乱状態での遮光性との双方が良好に得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、調光シートにおいて、透過状態での透明性と散乱状態での遮光性との双方を良好に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態の調光シートおよび調光装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、調光シートおよび調光装置の一実施形態を説明する。
[調光シートおよび調光装置の構成]
図1を参照して、調光シートおよび調光装置の全体構成を説明する。
【0018】
図1に示すように、調光シート10は、調光層20と、一対の透明電極層である第1透明電極層31および第2透明電極層32と、一対の透明支持層である第1透明支持層41および第2透明支持層42と、一対の配向層である第1配向層51および第2配向層とを備えている。
【0019】
調光層20は、第1透明電極層31と第2透明電極層32との間に位置する。第1透明支持層41は、第1透明電極層31に対して調光層20と反対側で第1透明電極層31を支持し、第2透明支持層42は、第2透明電極層32に対して調光層20と反対側で第2透明電極層32を支持している。
【0020】
さらに、調光層20と第1透明電極層31との間には、第1配向層51が位置し、第1配向層51は、調光層20および第1透明電極層31の各々に接している。調光層20と第2透明電極層32との間には、第2配向層52が位置し、第2配向層52は、調光層20および第2透明電極層32の各々に接している。すなわち、一対の配向層が調光層20を挟み、一対の透明電極層が、調光層20および一対の配向層を挟んでいる。
【0021】
調光層20は、透明高分子層と液晶組成物とを含んでいる。透明高分子層は、空隙を有しており、液晶組成物が、この空隙に充填されている。空隙の形状は、球形状、楕円体状、あるいは、不定形状である。
【0022】
調光層20における液晶組成物の保持型式は、ポリマーネットワーク型、高分子分散型、および、カプセル型のいずれかである。ポリマーネットワーク型の調光層20は、3次元の網目状を有したポリマーネットワークを備える。ポリマーネットワークは、透明高分子層の一例であり、ポリマーネットワークにおける相互に連通した網目の空隙のなかに液晶組成物が保持される。高分子分散型の調光層20は、孤立した多数の空隙を区画する透明高分子層を備え、透明高分子層に分散した空隙のなかに液晶組成物が保持される。カプセル型の調光層20は、透明高分子層のなかに分散したカプセル内の空隙に液晶組成物を保持する。
液晶組成物は、誘電率異方性が負である液晶分子を含む。すなわち、液晶分子の短軸方向の誘電率は、長軸方向の誘電率よりも高い。
【0023】
第1透明電極層31および第2透明電極層32の各々は、導電性を有し、可視領域の光に対して透明である。透明電極層31、32の材料は、例えば、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)等である。
【0024】
第1透明支持層41および第2透明支持層42の各々は、可視領域の光に対して透明な基材である。透明支持層41,42の材料は、例えば、合成樹脂や無機化合物である。合成樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン等である。無機化合物は、例えば、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素等である。
【0025】
第1配向層51および第2配向層52は、可視領域の光に対して透明な垂直配向膜である。第1配向層51は、調光層20に接する第1配向層51の表面に対して液晶分子の長軸方向が垂直であるように、液晶分子を配向させる。第2配向層52は、調光層20に接する第2配向層52の表面に対して液晶分子の長軸方向が垂直であるように、液晶分子を配向させる。
【0026】
第1透明電極層31の端部には、調光シート10の駆動のための電圧を生成する制御部60に第1透明電極層31を電気的に接続するための第1接続部61が配置されている。第2透明電極層32の端部には、制御部60に第2透明電極層32を電気的に接続するための第2接続部62が配置されている。
【0027】
第1接続部61および第2接続部62の各々は、例えば、導電性接着層と、配線基板とを備える。導電性接着層は、例えば、異方性導電フィルム(ACF : Anisotropic Conductive Film)、異方性導電ペースト(ACP : Anisotropic Conductive Paste)、等方性導電フィルム(ICF : Isotropic Conductive Film)、等方性導電ペースト(ICP : Isotropic Conductive Paste)等から形成される。配線基板は、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC : Flexible Printed Circuits)である。
あるいは、第1接続部61および第2接続部62の各々は、導電性テープ等の導電性材料と導線とがはんだ付けによって接合された構造を有していてもよい。
【0028】
透明電極層31,32は、接続部61,62から延びる配線を介して、制御部60に接続されている。制御部60は、液晶分子の配向状態を変えるための電圧である駆動電圧を、透明電極層31,32に接続部61,62を通じて印加する。電圧の印加の有無の制御および印加する電圧の大きさの制御を通じて、制御部60は、透明電極層31,32間の電位差を制御する。調光シート10と制御部60と接続部61,62から調光装置が構成される。
【0029】
透明電極層31,32に駆動電圧が印加されていないとき、配向層51,52の配向規制力により、液晶分子は配向層51,52の表面に対して垂直に、すなわち、調光層20の厚さ方向に長軸方向が沿うように、配向される。その結果、調光層20を光が透過しやすくなる。したがって、駆動電圧が印加されていないときに、調光シート10は透過状態となり、透明に見える。
【0030】
透明電極層31,32に駆動電圧が印加されると、液晶分子は、電界の方向に対して垂直に、すなわち、配向層51,52の表面に対して長軸方向が平行になるように、配向される。その結果、調光シート10に入射した光は、調光層20において散乱されやすくなる。したがって、駆動電圧が印加されているときに、調光シート10は散乱状態となり、白く濁って見える。散乱状態では、調光シート10のヘイズは透明状態よりも大きくなる。
以上のように、駆動電圧の印加とその解除とが切り換えられることにより、調光シート10の透過状態と散乱状態とが切り換えられる。
【0031】
なお、調光シート10は、取付対象物である透明基材に貼り付けられる。透明基材は、ガラス基板や樹脂基板である。透明基材の一例は、車両や航空機等の移動体が搭載する窓ガラス、建物に設置された窓ガラス、車内や屋内に配置された間仕切りである。調光シート10が貼り付けられる面は、平面状あるいは曲面状である。また、調光シート10は、2つの透明基材によって挟まれてもよい。さらに、散乱状態の調光シート10は、画像が投影されるスクリーンとして用いられてもよい。
【0032】
[調光層および配向層の材料]
調光層20および配向層51,52の材料を詳細に説明する。
調光層20が含む透明高分子層は、光重合性化合物の硬化体である。光重合性化合物は、液晶組成物と相溶性を有する。光重合性化合物は、紫外線硬化性化合物であってもよいし、電子線硬化性化合物であってもよい。光重合性化合物が紫外線硬化性化合物であると、透明高分子層における空隙の寸法制御性を高めることができる。光重合性化合物は、1種の重合性化合物であってもよいし、2種以上の重合性化合物を含んでいてもよい。
【0033】
紫外線硬化性化合物の一例は、分子構造の末端に重合性不飽和結合を含む。紫外線硬化性化合物の他の例は、分子構造の末端以外に重合性の不飽和結合を含む。紫外線硬化性化合物は、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、チオール化合物、スチレン化合物、および、これらの各化合物のオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種である。アクリレート化合物は、ジアクリレート化合物、トリアクリレート化合物、テトラアクリレート化合物を含む。アクリレート化合物の一例は、ブチルエチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートである。メタクリレート化合物は、ジメタクリレート化合物、トリメタクリレート化合物、テトラメタクリレート化合物を含む。メタクリレート化合物の一例は、N,N‐ジメチルアミノエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートである。チオール化合物の一例は、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオールである。スチレン化合物の一例は、スチレン、メチルスチレンである。
【0034】
調光層20が含む液晶組成物は、誘電率異方性が負である液晶分子を含む。液晶分子は、非重合性の化合物である。液晶組成物が含む液晶分子は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0035】
液晶分子は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、ピリダジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ジシアノベンゼン系、ナフタレン系、ジオキサン系からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0036】
液晶分子は、例えば、下記構造式(2-1)~(2-11)で示す化合物である。液晶組成物は、下記構造式(2-1)~(2-11)で示す化合物のうちの1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。下記構造式(2-1)~(2-11)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1から12のアルキル基、炭素数1から12のアルコキシ基、炭素数2から12のアルケニル基、炭素数2から12のアルケニルオキシ基、または、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル基である。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【化12】
液晶分子が上記構造式(2-1)~(2-11)で示す化合物であれば、後述の高分子化合物を含む配向層51,52による配向の制御が的確に可能である。
【0048】
透明高分子層と液晶組成物とのうちの透明高分子層の割合は、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、40質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。透明高分子層の割合が上記範囲内であれば、透明高分子層内に形成される空隙の大きさが適度に確保される。上記範囲内において、透明高分子層の割合が大きいほど、透明高分子層の機械的な強度を高めることが可能であり、透明高分子層の割合が小さいほど、調光シート10の駆動電圧を低下させることが可能である。
【0049】
なお、液晶組成物は、液晶分子に加えて、二色性色素、粘度低下剤、消泡剤、酸化防止剤、耐候剤等を含有してもよい。液晶組成物が二色性色素を含んでいると、散乱状態の調光シートを白色とは異なる有色とすることができる。耐候剤の一例は、紫外線吸収剤や光安定剤である。また、調光層20は、透明高分子層および液晶組成物に加えて、調光層20の厚さを規定するスペーサを含有していてもよい。スペーサは、例えば、ビーズスペーサやフォトスペーサであり、透明高分子層中に分散される。調光層20の厚さは、例えば、10μm以上30μm以下である。
【0050】
配向層51,52は、下記一般式(1-1)で示す構造および下記一般式(1-2)で示す構造の少なくとも一方を側鎖に含む高分子化合物を含む。
―A1-(CH2)m-A2-(A3)o-A4 ・・・(1-1)
―A1-(R-O)n-A2-(A3)o-A4 ・・・(1-2)
上記一般式(1-1)において、A1は、単結合および-O-のいずれかであり、A2は、ベンゼン環、シクロヘキサン環、複素環、および、これらの環状基における任意の位置の水素原子が1価の置換基により置換された環状基からなる群から選択される2価の環状基、または、ステロイド骨格を有する2価の有機基であり、A3は、ベンゼン環、シクロヘキサン環、複素環、および、これらの環状基における任意の位置の水素原子が1価の置換基により置換された環状基からなる群から選択される2価の環状基であり、A4は、炭素数1から18のアルキル基、および、炭素数1から18のアルコキシ基のいずれかであり、mは5以上50以下の整数であり、oは0以上2以下の整数である。
【0051】
上記一般式(1-2)において、A1は、単結合および-O-のいずれかであり、A2は、ベンゼン環、シクロヘキサン環、複素環、および、これらの環状基における任意の位置の水素原子が1価の置換基により置換された環状基からなる群から選択される2価の環状基、または、ステロイド骨格を有する2価の有機基であり、A3は、ベンゼン環、シクロヘキサン環、複素環、および、これらの環状基における任意の位置の水素原子が1価の置換基により置換された環状基からなる群から選択される2価の環状基であり、A4は、炭素数1から18のアルキル基、および、炭素数1から18のアルコキシ基のいずれかであり、Rは、-(CH2)p-(pは2以上4以下の整数)であり、nは2以上25以下の整数であり、oは0以上2以下の整数である。
【0052】
上記高分子化合物は、例えば、ポリイミド系重合体、ポリアミド系重合体、アクリル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリシロキサン系重合体である。なかでも、上記高分子化合物の主鎖は、ポリイミドまたはポリイミド前駆体からなる骨格を有することが好ましい。ポリイミド前駆体からなる骨格は、下記一般式(3)で示す構造を有する。
【0053】
【化13】
上記一般式(3)において、R
1は4価の有機基を示し、R
2は2価の有機基を示し、A
1およびA
2は、それぞれ独立して、水素原子、または、炭素数1から8のアルキル基を示し、A
3およびA
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から5のアルキル基および、炭素数1から5のアセチル基のいずれかを示し、nは正の整数を示す。
【0054】
上記一般式(1-1)で示す側鎖構造を有する高分子化合物は、側鎖において、主鎖の付近にアルキル鎖を有し、上記一般式(1-2)で示す側鎖構造を有する高分子化合物は、側鎖において、主鎖の付近にポリエーテル鎖を有する。言い換えれば、主鎖と側鎖の環状構造との間にアルキル鎖またはポリエーテル鎖が含まれている。こうした高分子化合物を配向層51,52が含んでいれば、側鎖にて主鎖の付近に環状構造が位置する高分子化合物を用いた場合と比較して、液晶分子の向きの変更が妨げられることを抑えることができる。
【0055】
特に、上記一般式(1-1)にてmが5以上、上記一般式(1-2)にてnが2以上であることから、側鎖のアルキル鎖またはポリエーテル鎖が短くなりすぎることが抑えられる。これにより、液晶分子の向きの変更の自由度が好適に得られる。一方で、上記一般式(1-1)にてmが50以下、上記一般式(1-2)にてnが25以下であることから、側鎖のアルキル鎖またはポリエーテル鎖が長くなりすぎることが抑えられる。これにより、液晶分子を配向層51,52に対して垂直に配向させる配向規制力が好適に得られる。
【0056】
したがって、駆動電圧の非印加時における液晶分子の配向と、駆動電圧の印加に伴う液晶分子の向きの変更とが好適に可能であることから、透過状態での透明性と散乱状態での遮光性との双方が良好に得られる。
【0057】
なお、上記一般式(1-1)および上記一般式(1-2)における環状構造、すなわちA2やA3の構造について、これらがベンゼン環やシクロヘキサン環の6員環である場合、環状構造の立体構造が定まっているため、環状構造の剛直性が安定して得られる。それゆえ、配向層51,52に用いた場合に液晶分子の配向が安定しやすくなる。同様に、A2が、ステロイド骨格、すなわち3つの6員環と1つの5員環を有する場合にも、立体構造が定まっていることから、環状構造の剛直性が安定して得られる。A2やA3が複素環である場合にも、複素環が6員環であると、立体構造が定まり環状構造の剛直性が安定して得られるため、好ましい。
【0058】
上記高分子化合物は、ポリイミド等の高分子化合物の公知の製造方法を用いることによって製造できる。例えば、上記一般式(1-1)または上記一般式(1-2)で示す構造を有する化合物を含むジアミン化合物とテトラカルボン酸との重合によりポリアミック酸を生成し、このポリアミック酸に対する脱水・環化によりイミド化反応を進めることで、ポリイミド骨格を有する高分子化合物が得られる。
【0059】
[調光シートの製造方法]
調光シート10の製造方法を説明する。まず、第1透明支持層41上に第1透明電極層31が形成された第1シートと、第2透明支持層42上に第2透明電極層32が形成された第2シートとを準備する。第1透明電極層31および第2透明電極層32は、スパッタリングや真空蒸着等の公知の薄膜形成方法によって形成される。
【0060】
続いて、第1透明電極層31上に第1配向層51を形成し、第2透明電極層32上に第2配向層52を形成する。配向層51,52は、配向層塗液の塗布により塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより形成される。配向層塗液は、例えば、配向層51,52を構成する上記高分子化合物に対応する構造を有したポリアミック酸を含む。
【0061】
塗液の塗布方法には、例えば、インクジェット法、グラビアコーティング法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、フレキソコーティング法、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法等の公知の塗布方法が利用できる。
【0062】
次に、調光層20の材料を含む調光層塗液を生成し、第1シートと第2シートとの配向層51,52間に、調光層20となる塗膜を上記塗液の塗布によって形成する。調光層塗液は、光重合性化合物、液晶組成物、および、重合開始剤を少なくとも含む。重合開始剤は、例えば、ジケトン化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサンソン化合物等である。重合開始剤は、1種の化合物でもよいし、2種以上の化合物の組み合わせでもよい。重合開始剤の一例は、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、シクロヘキシルフェニルケトンである。
【0063】
塗膜の形成工程では、第1シートおよび第2シートの一方の配向層上に調光層塗液を塗布して塗膜を形成し、第1シートおよび第2シートの他方を塗膜上に重ねることにより、第1シートと第2シートとの配向層間に塗膜が挟まれた積層体が形成される。
【0064】
塗液の塗布方法には、例えば、ドロップキャスト法、インクジェット法、グラビアコーティング法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、フレキソコーティング法、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法等の公知の塗布方法が利用できる。
【0065】
続いて、上記積層体に、重合反応を進行させる特定波長の光線が照射される。上記特定波長の光線は、電子線や紫外線である。光線は、第1シートに向けて照射されてもよいし、第2シートに向けて照射されてもよいし、第1シートおよび第2シートの両方に向けて照射されてもよい。これにより、塗膜中で光重合性化合物の重合反応が進行し、液晶組成物の相分離が生じて、調光層20が形成される。
【0066】
以上により、調光層20、配向層51,52、透明電極層31,32、透明支持層41,42を備える積層体が形成され、この積層体に対して必要に応じて外形の成形等が行われることにより、調光シート10が形成される。
【0067】
[実施例]
上述した調光シートおよび調光装置について、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。
【0068】
(ポリアミック酸溶液の生成)
<材料>
ポリアミック酸溶液の生成に用いた材料を以下に記載する。
・ジアミン化合物D1~D14
ジアミン化合物D1~D14は、配向層を構成する高分子化合物において液晶分子の配向を促す側鎖となる官能基を有する。ジアミン化合物D1~D5は、下記構造式(4-1)で示す構造を有する。ジアミン化合物D1~D5の各々で、下記構造式(4-1)のmの値は異なる。ジアミン化合物D1はm=5であり、ジアミン化合物D2はm=20であり、ジアミン化合物D3はm=50であり、ジアミン化合物D4はm=4であり、ジアミン化合物D5はm=55である。
【化14】
【0069】
ジアミン化合物D6~D11は、下記構造式(4-2)で示す構造を有する。ジアミン化合物D6~D11の各々で、下記構造式(4-2)のnの値は異なる。ジアミン化合物D6はn=2であり、ジアミン化合物D7はn=5であり、ジアミン化合物D8はn=10であり、ジアミン化合物D9はn=25であり、ジアミン化合物D10はn=1であり、ジアミン化合物D11はn=30である。
【化15】
【0070】
ジアミン化合物D12~D14は、下記構造式(4-3)で示す構造を有する。ジアミン化合物D12~D14の各々で、下記構造式(4-3)のoの値は異なる。ジアミン化合物D12はo=1であり、ジアミン化合物D13はo=2であり、ジアミン化合物D14はo=0である。
【化16】
【0071】
・ジアミン化合物B1
ジアミン化合物B1は、3,5-ジアミノ安息香酸である。ジアミン化合物B1の構造を、下記構造式(4-4)で示す。
【化17】
【0072】
・テトラカルボン酸二無水物C1,C2
テトラカルボン酸二無水物C1は、3-(カルボキシメチル)-1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸1,4:2,3-二無水物である。テトラカルボン酸二無水物C1の構造を、下記構造式(4-5)で示す。
【化18】
【0073】
テトラカルボン酸二無水物C2は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物である。テトラカルボン酸二無水物C2の構造を、下記構造式(4-6)で示す。
【化19】
【0074】
<製造方法>
第1工程として、ジアミン化合物D1と、ジアミン化合物B1と、テトラカルボン酸二無水物C1とを、溶媒であるN-エチル-2-ピロリドン(NEP)に下記の割合で混合し、80℃で5時間反応させることにより、第1の反応液を生成した。なお、以下における各材料の重量部での記載は、第1工程および第2工程で用いた各材料の相対的な重量の比を示すものである。
D1 :18重量部
B1 :9重量部
C1 :4重量部
NEP:95重量部
【0075】
第2工程として、第1の反応液に、テトラカルボン酸二無水物C1とNEPとを下記の割合で追加し、40℃で6時間反応させた。これにより、実施例1のポリアミック酸溶液を得た。ポリアミック酸溶液における樹脂固形分の濃度は25質量%である。
C2 :16重量部
NEP:47重量部
【0076】
第1工程において、ジアミン化合物D1をジアミン化合物D2~D14に変更するとともに、その添加割合を変更し、第2工程において、ポリアミック酸溶液における樹脂固形分の濃度が25質量%となるようにNEPの添加割合を変更したこと以外は、上述と同様の材料および工程によって、実施例2~10および比較例1~4のポリアミック酸溶液を得た。
【0077】
各実施例および各比較例で用いたジアミン化合物およびその割合を表1に示す。
【0078】
【0079】
(配向層塗液の生成)
各実施例および各比較例について、上述のポリアミック酸溶液と、溶媒であるNEPおよびブチルセロソルブとを、下記の割合で混合し、50℃で24時間撹拌することにより、配向層の形成のための塗液である配向層塗液を生成した。なお、以下における各材料の重量部での記載は、配向層塗液の生成に用いた各材料の相対的な重量の比を示すものである。
ポリアミック酸溶液:12重量部
NEP :27重量部
ブチルセロソルブ :36重量部
【0080】
(調光層塗液の生成)
液晶化合物、光重合性化合物、重合開始剤、および、スペーサを混合して、調光層の形成のための塗液である調光層塗液を生成した。調光層塗液の組成は、各実施例および各比較例において共通である。材料の詳細と混合割合は下記である。なお、以下における各材料の重量部での記載は、調光層塗液の生成に用いた各材料の相対的な重量の比を示すものである。
・液晶組成物:MLC―6608(メルク社製) 50重量部
・光重合性化合物:
イソボニルアクリレート(A-IB,新中村化学工業社製) 47重量部
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工社製) 1重量部
・重合開始剤:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM Resins B.V.製) 1重量部
・スペーサ:ポリメチルメタクリレート製真球状粒子(積水化成品工業社製,粒径10μm) 1重量部
なお、上記液晶組成物はネマチック液晶であり、誘電率異方性が負である2種類の液晶分子を含む。2種の液晶分子の混合物における屈折率異方性Δnは0.20であった。
【0081】
(調光シートの形成)
第1透明支持層上に第1透明電極層をスパッタリングによって形成することにより、第1透明支持層と第1透明電極層との積層体である第1シートを作製した。同様に、第2透明支持層上に第2透明電極層をスパッタリングによって形成することにより、第2透明支持層と第2透明電極層との積層体である第2シートを作製した。第1透明支持層および第2透明支持層の各々について、材料はポリエチレンテレフタレートであり、厚さは125μmである。第1透明電極層および第2透明電極層の各々について、材料は酸化インジウムスズであり、厚さは30nmである。
【0082】
次に、第1シートおよび第2シートの各透明電極層上に、バーコーターを用いて配向層塗液を塗布して塗膜を形成した。そして、当該塗膜を150℃で4分間加熱して乾燥させることにより、配向層を形成した。各配向層の厚さは100nmである。
【0083】
続いて、調光層塗液を第1シート上の配向層に滴下し、ラミネート加工によって、第1シートと第2シートとの配向層間に調光層塗液からなる塗膜が挟まれるように、第1シートと第2シートとを貼り合わせた積層体を得た。塗膜の厚さは10μmである。上記積層体の第1透明支持層に向けて365nmの紫外光線を照射することによって、調光層を形成し、調光シートを得た。紫外光線の強度は8mW/cm2であり、紫外光線の照射時間は120秒である。
各実施例および各比較例の調光シートにおいて、上述した配向層塗液の組成以外の材料や製造条件は同一である。
【0084】
(評価)
各実施例および各比較例の調光シートについて、透明状態と散乱状態とのヘイズをそれぞれ測定した。駆動電圧を印加していない状態、すなわち印加電圧が0Vである状態が透明状態であり、駆動電圧として100Vの交流電圧を印加した状態が散乱状態である。ヘイズの測定は、JIS K 7136:2000に準拠して実施した。
【0085】
ヘイズの評価においては、透明状態にて、ヘイズが10%以下である場合を「○」、ヘイズが10%を超える場合を「×」とした。また、散乱状態にて、ヘイズが93%以上である場合を「○」、ヘイズが93%未満である場合を「×」とした。
【0086】
表2,3に、各実施例および各比較例について、配向層が含む高分子化合物の側鎖の構造と、ヘイズの評価結果を示す。
表2に示すように、実施例1~3および比較例1,2の配向層は、下記一般式(1-1)で示す構造を側鎖に含む高分子化合物を含む。
―A1-(CH2)m-A2-(A3)o-A4 ・・・(1-1)
【0087】
【0088】
表2に示すように、配向層を構成する高分子化合物が、上記一般式(1-1)で示す構造を側鎖に含む場合、上記一般式(1-1)におけるmが5以上50以下である実施例1~3では、透明状態および散乱状態のいずれにおいてもヘイズの評価が良好である。すなわち、透過状態での透明性と散乱状態での遮光性との双方が良好に得られている。これにより、mが5以上50以下であれば、駆動電圧の非印加時において、液晶分子を配向層に対して垂直に配向させる配向規制力が好適に得られ、かつ、駆動電圧が印加されたときの液晶分子の向きの変更の自由度も好適に得られることが示唆される。
【0089】
これに対し、mが5未満である比較例1では、散乱状態のヘイズが小さく、遮光性が不十分である。これは、配向層を構成する高分子化合物における側鎖のアルキル鎖が短いために、液晶分子の向きの変更が阻害され、散乱状態における液晶分子の水平配向状態が十分に形成されていないためであると考えられる。
【0090】
また、mが50を超える比較例2では、透明状態のヘイズが大きく、透明性が不十分である。これは、側鎖のアルキル鎖が長いために、配向層の配向規制力が弱く、透明状態における液晶分子の垂直配向状態が十分に形成されていないためであると考えられる。
【0091】
表3に示すように、実施例4~10および比較例3,4の配向層は、下記一般式(1-2)で示す構造を側鎖に含む高分子化合物を含む。
―A1-(R-O)n-A2-(A3)o-A4 ・・・(1-2)
【0092】
【0093】
表3に示すように、配向層を構成する高分子化合物が、上記一般式(1-2)で示す構造を側鎖に含む場合、上記一般式(1-2)におけるnが2以上25以下である実施例4~10では、透明状態および散乱状態のいずれにおいてもヘイズの評価が良好である。すなわち、透過状態での透明性と散乱状態での遮光性との双方が良好に得られている。これにより、nが2以上25以下であれば、駆動電圧の非印加時において、液晶分子を配向層に対して垂直に配向させる配向規制力が好適に得られ、かつ、駆動電圧が印加されたときの液晶分子の向きの変更の自由度も好適に得られることが示唆される。
【0094】
これに対し、nが2未満である比較例3では、散乱状態のヘイズが小さく、遮光性が不十分である。これは、配向層を構成する高分子化合物における側鎖のポリエーテル鎖が短いために、液晶分子の向きの変更が阻害され、散乱状態における液晶分子の水平配向状態が十分に形成されていないためであると考えられる。
【0095】
また、nが25を超える比較例4では、透明状態のヘイズが大きく、透明性が不十分である。これは、側鎖のポリエーテル鎖が長いために、配向層の配向規制力が弱く、透明状態における液晶分子の垂直配向状態が十分に形成されていないためであると考えられる。
【0096】
以上、実施形態および実施例で説明したように、調光シートによれば、以下の効果を得ることができる。
(1)配向層51,52が、上記一般式(1-1)で示す構造および上記一般式(1-2)で示す構造の少なくとも一方を側鎖に含む高分子化合物を含む。それゆえ、配向層51,52を構成する高分子化合物において、主鎖と側鎖の環状構造との間にアルキル鎖またはポリエーテル鎖が含まれているため、側鎖にて主鎖の付近に環状構造が位置する高分子化合物を用いた場合と比較して、液晶分子の向きの変更が妨げられることを抑えることができる。したがって、液晶分子の配向とその向きの変更とが好適に可能であることから、透過状態での透明性と散乱状態での遮光性との双方が良好に得られる。
【0097】
(2)上記高分子化合物の主鎖が、ポリイミドまたはポリイミド前駆体からなる骨格を有していれば、上記側鎖構造を有する高分子化合物の合成が容易であり、こうした高分子化合物を含む配向層51,52が好適に得られる。
【符号の説明】
【0098】
10…調光シート
20…調光層
31,32…透明電極層
41,42…透明支持層
51,52…配向層
60…制御部