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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103430
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ヒューズエレメント及び保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/11 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
H01H85/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094988
(22)【出願日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2023007368
(32)【優先日】2023-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100141999
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 敬一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502AA02
5G502AA09
5G502AA20
5G502BB01
5G502BB04
5G502BB07
5G502BB16
5G502BB17
5G502BB19
5G502BC07
5G502BD01
5G502EE06
5G502FF08
5G502FF10
(57)【要約】
【課題】300℃程度の低温で溶断し、溶融体積が少なく、切断し易いヒューズエレメントを提供する。
【解決手段】ヒューズエレメント50は、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなる第1エレメント51と、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなり、第1エレメント51と通電経路上で直列に接続された第2エレメント52と、錫、又は、錫を主成分とする合金からなり、第1エレメント51の端部51aと第2エレメント52の端部とを接続する接続金属86と、を有する。
【選択図】図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなる第1エレメントと、
銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなる第2エレメントと、
錫、又は、錫を主成分とする合金からなり、前記第1エレメントの端部と前記第2エレメントの端部とを接続する接続金属と、を有する、
ヒューズエレメント。
【請求項2】
前記ヒューズエレメントに流れる過電流に伴う発熱により、前記接続金属が溶融し、前記接続金属の溶融物が前記第1エレメントの端部を溶解することで、少なくとも前記第1エレメントを溶断する、
請求項1に記載のヒューズエレメント。
【請求項3】
前記第1エレメントの厚みは、前記第2エレメントの厚みよりも薄い、
請求項1又は2に記載のヒューズエレメント。
【請求項4】
前記第1エレメントの厚みは、前記第2エレメントの厚みの半分以下である、
請求項3に記載のヒューズエレメント。
【請求項5】
第1端子と、
第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子とを結ぶ通電経路に接続されたヒューズエレメントと、を有する保護素子であって、
前記ヒューズエレメントは、
銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなる第1エレメントと、
銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなり、前記第1エレメントと前記通電経路上で直列に接続された第2エレメントと、
錫、又は、錫を主成分とする合金からなり、前記第1エレメントの端部と前記第2エレメントの端部とを接続する接続金属と、を有する、
保護素子。
【請求項6】
前記ヒューズエレメントに流れる過電流に伴う発熱により、前記接続金属が溶融し、前記接続金属の溶融物が前記第1エレメントの端部を溶解することで、少なくとも前記第1エレメントを溶断する、
請求項5に記載の保護素子。
【請求項7】
前記第1エレメントの厚みは、前記第2エレメントの厚みよりも薄い、
請求項5又は6に記載の保護素子。
【請求項8】
前記第1エレメントの厚みは、前記第2エレメントの厚みの半分以下である、
請求項7に記載の保護素子。
【請求項9】
発熱体を有し、
前記発熱体が発熱することで前記接続金属が溶融し、前記接続金属の溶融物が前記第1エレメントの端部を溶解することで、少なくとも前記第1エレメントを溶断する、
請求項5又は6に記載の保護素子。
【請求項10】
前記ヒューズエレメントを複数有し、
複数の前記ヒューズエレメントは、前記第1端子と前記第2端子との間に並列に接続されている、
請求項5又は6に記載の保護素子。
【請求項11】
第1端子と、
第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子とを結ぶ通電経路に接続されたヒューズエレメントと、を有する保護素子であって、
前記ヒューズエレメントは、
銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなる第1エレメントと、
銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなり、前記第1エレメントと前記通電経路上で直列に接続された第2エレメントと、
銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなり、前記第1エレメントと前記通電経路上で直列に接続された第3エレメントと、
錫、又は、錫を主成分とする合金からなり、前記第1エレメントの一方の端部と前記第2エレメントの一方の端部とを接続する接続金属と、
前記第1エレメントの他方の端部と前記第3エレメントの一方の端部とを接続する前記接続金属と、を有する、
保護素子。
【請求項12】
前記ヒューズエレメントに流れる過電流に伴う発熱により、前記接続金属が溶融し、前記接続金属の溶融物が前記第1エレメントの前記一方の端部又は前記他方の端部を溶解することで、少なくとも前記第1エレメントを溶断する、
請求項11に記載の保護素子。
【請求項13】
前記第1エレメントの厚みは、前記第2エレメントの厚み及び前記第3エレメントの厚みの各々よりも薄い、
請求項11又は12に記載の保護素子。
【請求項14】
前記第1エレメントの厚みは、前記第2エレメントの厚み及び前記第3エレメントの厚みの各々の半分以下である、
請求項13に記載の保護素子。
【請求項15】
発熱体を有し、
前記発熱体が発熱することで前記接続金属が溶融し、前記接続金属の溶融物が前記第1エレメントの前記一方の端部又は前記他方の端部を溶解することで、少なくとも前記第1エレメントを溶断する、
請求項11又は12に記載の保護素子。
【請求項16】
前記ヒューズエレメントを複数有し、
複数の前記ヒューズエレメントは、前記第1端子と前記第2端子との間に並列に接続されている、
請求項11又は12に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューズエレメント及び保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流経路に定格を超える電流が流れたときに、発熱して溶断し、電流経路を遮断するヒューズエレメントがある。ヒューズエレメントを備える保護素子(ヒューズ素子)は、家電製品から電気自動車など幅広い分野で使用されている。
【0003】
例えば、リチウムイオン電池は、モバイル機器用途から電気自動車(EV)、蓄電池など幅広い用途に用いられており、大容量化が進んでいる。リチウムイオン電池の大容量化に伴い、電圧は数百ボルトの高電圧仕様となり、電流も数百アンペアから数千アンペアの大電流仕様が要求されている。また、これまでの高電圧大電流(100V/100A以上)の電流ヒューズは過電流遮断のみであり、遮断信号による遮断機能を備えるものはなかった。
【0004】
その他の先行技術としては、箔状のヒューズエレメントに孔や切欠き等を形成したり、厚み変化を利用したりする等してヒートスポットを形成し、過電流時にヒューズエレメントを溶断させる技術がある。例えば、以下のような先行技術がある。
例えば、特許文献1には、絶縁基板上に形成された導電性薄膜パターンにおいて、遮断部の厚みが、連結部の厚みよりも薄く設定されているヒューズが開示されている。
例えば、特許文献2,3には、ヒューズエレメントにおいて並列に配列された複数のエレメントに対し、打ち抜きにより孔を形成することで溶断部を形成することが開示されている。
例えば、特許文献4,5には、絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面に形成された導電性箔膜のパターンにおいて、遮断部の厚みが、連結部の厚みよりも薄く設定されているヒューズリンクが開示されている。
例えば、特許文献6には、絶縁基板上にヒューズエレメントを並列に配置し、溶断部をトリミング溝によって形成した回路保護素子が開示されている。
また、遮断信号による回路遮断の例としては、パイロヒューズ(電流遮断器)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6057413号公報
【特許文献2】特許第6199368号公報
【特許文献3】特許第5952751号公報
【特許文献4】特許第5116119号公報
【特許文献5】特許第4998890号公報
【特許文献6】特許第6754941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高電圧かつ大電流の電流経路に設置される保護素子においては、ヒューズエレメントが溶断されると、アーク放電が発生しやすい。大規模なアーク放電が発生すると、ヒューズエレメントが収納されている絶縁ケースが破壊されてしまう場合がある。このため、ヒューズエレメントの材料として、銅などの低抵抗でかつ高融点の金属を用いてアーク放電の発生を抑えることが行われている。
しかし、銅箔エレメントでは、定格電流の1.5倍といった比較的小さい過電流で遮断しようとすると、遮断時間が長くなる場合がある。また、銅箔の融点は約1085℃と高い。このため、絶縁ケースを融点が約300℃のプラスチックケースとした場合は、ケースが溶融し破壊されてしまう可能性が高い。
また、ヒューズエレメントの材料として、銀めっき付き錫合金を用いると、高電圧大電流遮断時の溶融飛散物量が多くなる場合がある。この場合、アーク放電の規模が大きくなったり、絶縁抵抗が低下したりする可能性が高い。
また、バネ遮断方式では、ヒューズエレメントが硬すぎると、切断には大きなバネ応力が必要となる。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、300℃程度の低温で溶断し、溶融体積が少なく、切断し易いヒューズエレメントを提供することを目的の一つとする。また、過電流遮断とアクティブ遮断とを両立する保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0009】
[1]銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなる第1エレメントと、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなる第2エレメントと、錫、又は、錫を主成分とする合金からなり、前記第1エレメントの端部と前記第2エレメントの端部とを接続する接続金属と、を有する、ヒューズエレメント。
【0010】
[2]前記ヒューズエレメントに流れる過電流に伴う発熱により、前記接続金属が溶融し、前記接続金属の溶融物が前記第1エレメントの端部を溶解することで、少なくとも前記第1エレメントを溶断する、[1]に記載のヒューズエレメント。
【0011】
[3]前記第1エレメントの厚みは、前記第2エレメントの厚みよりも薄い、[1]又は[2]に記載のヒューズエレメント。
【0012】
[4]前記第1エレメントの厚みは、前記第2エレメントの厚みの半分以下である、[3]に記載のヒューズエレメント。
【0013】
[5]第1端子と、第2端子と、前記第1端子と前記第2端子とを結ぶ通電経路に接続されたヒューズエレメントと、を有する保護素子であって、前記ヒューズエレメントは、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなる第1エレメントと、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなり、前記第1エレメントと前記通電経路上で直列に接続された第2エレメントと、錫、又は、錫を主成分とする合金からなり、前記第1エレメントの端部と前記第2エレメントの端部とを接続する接続金属と、を有する、保護素子。
【0014】
[6]前記ヒューズエレメントに流れる過電流に伴う発熱により、前記接続金属が溶融し、前記接続金属の溶融物が前記第1エレメントの端部を溶解することで、少なくとも前記第1エレメントを溶断する、[5]に記載の保護素子。
【0015】
[7]前記第1エレメントの厚みは、前記第2エレメントの厚みよりも薄い、[5]又は[6]に記載の保護素子。
【0016】
[8]前記第1エレメントの厚みは、前記第2エレメントの厚みの半分以下である、[7]に記載の保護素子。
【0017】
[9]発熱体を有し、前記発熱体が発熱することで前記接続金属が溶融し、前記接続金属の溶融物が前記第1エレメントの端部を溶解することで、少なくとも前記第1エレメントを溶断する、[5]から[8]のいずれかに記載の保護素子。
【0018】
[10]前記ヒューズエレメントを複数有し、複数の前記ヒューズエレメントは、前記第1端子と前記第2端子との間に並列に接続されている、[5]から[9]のいずれかに記載の保護素子。
【0019】
[11]第1端子と、第2端子と、前記第1端子と前記第2端子とを結ぶ通電経路に接続されたヒューズエレメントと、を有する保護素子であって、前記ヒューズエレメントは、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなる第1エレメントと、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなり、前記第1エレメントと前記通電経路上で直列に接続された第2エレメントと、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなり、前記第1エレメントと前記通電経路上で直列に接続された第3エレメントと、錫、又は、錫を主成分とする合金からなり、前記第1エレメントの一方の端部と前記第2エレメントの一方の端部とを接続する接続金属と、前記第1エレメントの他方の端部と前記第3エレメントの一方の端部とを接続する前記接続金属と、を有する、保護素子。
【0020】
[12]前記ヒューズエレメントに流れる過電流に伴う発熱により、前記接続金属が溶融し、前記接続金属の溶融物が前記第1エレメントの前記一方の端部又は前記他方の端部を溶解することで、少なくとも前記第1エレメントを溶断する、[11]に記載の保護素子。
【0021】
[13]前記第1エレメントの厚みは、前記第2エレメントの厚み及び前記第3エレメントの厚みの各々よりも薄い、[11]又は[12]に記載の保護素子。
【0022】
[14]前記第1エレメントの厚みは、前記第2エレメントの厚み及び前記第3エレメントの厚みの各々の半分以下である、[13]に記載の保護素子。
【0023】
[15]発熱体を有し、前記発熱体が発熱することで前記接続金属が溶融し、前記接続金属の溶融物が前記第1エレメントの前記一方の端部又は前記他方の端部を溶解することで、少なくとも前記第1エレメントを溶断する、[11]から[14]のいずれかに記載の保護素子。
【0024】
[16]前記ヒューズエレメントを複数有し、複数の前記ヒューズエレメントは、前記第1端子と前記第2端子との間に並列に接続されている、[11]から[15]のいずれかに記載の保護素子。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、300℃程度の低温で溶断し、溶融体積が少なく、切断し易いヒューズエレメントを提供することが可能となる。また、過電流遮断とアクティブ遮断とを両立する保護素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る保護素子の外観及び断面を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る保護素子の分解斜視図である。
図3図2に示した保護素子の一部を示す分解斜視図である。
図4図1のIV部近傍を拡大して示す断面図である。
図5図4のV部を拡大して示す断面図である。
図6A】発熱体を示す斜視図である。
図6B】発熱体の一例を示す上面図である。
図6C】発熱体の他の例を示す上面図である。
図7】遮断信号による発熱体の発熱によってヒューズエレメントの一部が溶断した状態を示す、図5に対応する断面図である。
図8】過電流によってヒューズエレメントの一部が溶断(消失)した状態を示す、図5に対応する断面図である。
図9A】ヒューズエレメントの一例を示す模式図である。
図9B図9Aに示すヒューズエレメントの一部が溶断した状態を示す模式図である。
図10A】ヒューズエレメントの他の例を示す模式図である。
図10B図10Aに示すヒューズエレメントの一部が溶断した状態を示す模式図である。
図11】第2実施形態に係る保護素子を示す断面図(幅方向と垂直な断面図)である。
図12】遮蔽部材がヒューズエレメントを分断して下がりきった状態を示す、図11に対応する断面図である。
図13】第2実施形態に係る保護素子の一部を模式的に示す断面図(幅方向と垂直な断面図)である。
図14】遮蔽部材が下方移動した状態を示す、図13に対応する断面図である。
図15】第2実施形態の変形例に係る保護素子の一部を模式的に示す断面図(幅方向と垂直な断面図)である。
図16】遮蔽部材が下方移動した状態を示す、図15に対応する断面図である。
図17】第2実施形態の他の変形例に係る保護素子の一部を模式的に示す断面図(幅方向と垂直な断面図)である。
図18】発熱体を一方側から見た斜視図である。
図19】発熱体を他方側から見た斜視図である。
図20】発熱体における通電経路が遮断された状態を示す斜視図である。
図21】発熱体における通電経路の一例を説明するための斜視図である。
図22】第2実施形態の他の変形例に保護素子の一部を示す断面図(幅方向と垂直な断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0028】
(保護素子(第1実施形態))
本発明の一実施形態の保護素子100について、図1~10Bを参照して説明する。本実施形態の保護素子100は、例えば、リチウムイオン電池を使用する高電圧大電流(100V/100A以上)の電気回路の一部を構成する電気部品である。保護素子100は、例えば、電気自動車(EV)などに搭載される。
【0029】
図1図3に示すように、保護素子100は、所定方向に互いに離れて配置される第1端子91及び第2端子92と、第1端子91と第2端子92との間に配置されてこれらを電気的に接続する溶断可能なヒューズエレメント50と、ヒューズエレメント50に対向して配置される絶縁部材60と、ヒューズエレメント50と重なって配置される発熱体80と、発熱体80に電流を通電する給電部材90と、第1端子91の一部、第2端子92の一部、ヒューズエレメント50、絶縁部材60、発熱体80、及び給電部材90の一部を収容する絶縁ケース10と、を備える。第1端子91及び第2端子92は、それぞれ、板状をなしている。
【0030】
本実施形態の保護素子100は、電流経路を遮断させる機構として、ヒューズエレメント50に定格電流を超えた過電流(所定以上の電流)が流れた場合にヒューズエレメント50が溶断されて電流経路を遮断させる過電流遮断と、過電流以外の異常が発生した場合に発熱体80に電流を通電し発熱させることで、ヒューズエレメント50を溶断し電流経路を遮断させるアクティブ遮断と、を有する。
【0031】
(方向の定義)
本実施形態では、各図に適宜XYZ直交座標系(3次元直交座標系)を設定し、各構成について説明する。
第1端子91と第2端子92とが並ぶ上記所定方向を、前後方向と呼ぶ。前後方向は、各図においてX軸方向に相当する。X軸方向のうち、第1端子91から第2端子92へ向かう方向(-X側)を前側と呼び、第2端子92から第1端子91へ向かう方向(+X側)を後側と呼ぶ。
なお、前後方向は、第1端子91と第2端子92とを結ぶ方向であり、保護素子100の使用時において電気が流れる方向でもあることから、通電方向と言い換えてもよい。
【0032】
第1端子91及び第2端子92の各板面が向く方向を、上下方向と呼ぶ。上下方向は、前後方向と直交する方向であり、各図においてZ軸方向に相当する。上下方向のうち、上側は+Z側に相当し、下側は-Z側に相当する。
【0033】
前後方向及び上下方向と直交する方向を、左右方向と呼ぶ。左右方向は、各図においてY軸方向に相当する。左右方向のうち、左側は-Y側に相当し、右側は+Y側に相当する。詳しくは、-Y側は、保護素子100を後側(+X側)から見たときの左側であり、+Y側は、保護素子100を後側から見たときの右側である。なお左右方向は、幅方向と言い換えてもよい。この場合、例えば、幅方向一方側は-Y側に相当し、幅方向他方側は+Y側に相当する。
【0034】
なお本実施形態において、前側、後側、上側、下側、左側及び右側とは、各構成の相対的な位置関係をわかりやすく説明するための便宜的な名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係以外の配置関係等であってもよい。
【0035】
(絶縁ケース)
図1に示すように、絶縁ケース10は、その全体の形状が前後方向に延びる柱状をなしている。図1及び図2に示すように、絶縁ケース10は、上下方向に積層して配置される少なくとも2つ(本実施形態では3つ)の保持部材10B,10C,10Dと、これらの保持部材10B,10C,10Dを収容する筒状のカバー10Aと、を有する。少なくとも2つの保持部材10B,10Cは、上下方向においてヒューズエレメント50の両側に配置される。
【0036】
複数の保持部材10B,10C,10Dは、第1保持部材10Bと、第2保持部材10Cと、第3保持部材10Dと、を含む。
【0037】
第1保持部材10Bは、3つの保持部材10B,10C,10Dのうち最も下側に位置する。第1保持部材10Bは、第1端子91、第2端子92及びヒューズエレメント50の下側に配置される。第1保持部材10Bは、上側に開口する略有底筒状をなしている。
【0038】
第1保持部材10Bは、第1収容部11と、端子載置面12と、端子係止部13と、を有する。
第1収容部11は、第1保持部材10Bの上面から下側に窪む凹状である。第1収容部11は、第1保持部材10Bのうち前後方向の両端部間に位置する中間部分に配置される。第1収容部11は、上側に開口する略四角形穴状である。
【0039】
端子載置面12は、第1保持部材10Bの上面から下側に窪む凹状である。端子載置面12の底面は、上側を向く平面状であり、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる。端子載置面12は、第1保持部材10Bに一対設けられる。一対の端子載置面12は、第1保持部材10Bの前後方向の両端部に配置される。
【0040】
端子係止部13は、第1保持部材10Bの左右方向の端部に立設される側壁に配置される。端子係止部13は、上下方向に延びる溝状であり、第1保持部材10Bの上面、及び、前記側壁の左右方向の内側(中央側)を向く壁面に開口する。端子係止部13は、第1保持部材10Bの前側部分と後側部分とに、一対ずつ(つまり計4つ)設けられる。一対の端子係止部13は、左右方向に互いに間隔をあけて対向するように配置される。
【0041】
第2保持部材10Cは、3つの保持部材10B,10C,10Dのうち上下方向の中央部に位置する。第2保持部材10Cは、第1端子91、第2端子92及びヒューズエレメント50の上側に配置される。第2保持部材10Cは、上下方向に延びる筒状をなしている。具体的に、第2保持部材10Cは、上側及び下側に開口する略四角形筒状である。
【0042】
第2保持部材10Cは、第2収容部14と、端子押さえ面15と、を有する。
第2収容部14は、第2保持部材10Cの下面から上側に窪む凹状である。第2収容部14は、第2保持部材10Cのうち前後方向の両端部間に位置する中間部分に配置される。第2収容部14は、下側に開口する略四角形穴状である。
【0043】
端子押さえ面15は、第2保持部材10Cの下面から下側に突出する凸状である。端子押さえ面15の下側を向く端面は、平面状であり、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる。端子押さえ面15は、第2保持部材10Cに一対設けられる。一対の端子押さえ面15は、第2保持部材10Cの前後方向の両端部に配置される。
【0044】
第3保持部材10Dは、3つの保持部材10B,10C,10Dのうち最も上側に位置する。第3保持部材10Dは、上下方向と垂直な面方向に広がる板状である。
【0045】
カバー10Aは、前後方向に延びる筒状である。具体的に、カバー10Aは、前側及び後側に開口する略四角形筒状をなしている。3つの保持部材10B,10C,10Dは、上下方向に並んで組み合わされた状態で、カバー10A内に収納される。カバー10Aは、少なくとも2つ(本実施形態では3つ)の保持部材10B,10C,10Dを、接着等により固定した状態で保持する。
【0046】
第1保持部材10Bと第2保持部材10Cとが組み合わされた状態で、第1収容部11と第2収容部14とは、互いに向かい合い、1つの室(空間)18を形成する。この室18には、第1端子91の一部(前端部)、第2端子92の一部(後端部)、ヒューズエレメント50、絶縁部材60、及び発熱体80が配置される。すなわち、第1端子91の一部(前端部)、第2端子92の一部(後端部)、ヒューズエレメント50、絶縁部材60、及び発熱体80は、2つの保持部材10B,10Cの間に配置される。
【0047】
また、絶縁ケース10は、絶縁ケース10の内部に形成される内圧緩衝空間16を有する。内圧緩衝空間16は、第2保持部材10Cの内部に配置される。内圧緩衝空間16は、略直方体状の空間であり、上記室(空間)18と連通する。本実施形態では、内圧緩衝空間16の上下方向の寸法が、保護素子100全体の上下方向の寸法(外形高さ)を基準として、例えば、1/3以上1/2以下である。内圧緩衝空間16は、ヒューズエレメント50の溶断時に発生するアーク放電によって生成する気体による保護素子100の内圧の急激な上昇を抑える作用を有する。
【0048】
カバー10A及び各保持部材10B~10Dは、耐トラッキング指標CTI(トラッキング(炭化導電路)破壊に対する耐性)が500V以上の材料で形成されていることが好ましい。耐トラッキング指標CTIは、IEC60112に基づく試験により求めることができる。
【0049】
カバー10A及び各保持部材10B~10Dの材料としては、樹脂材料を用いることができる。
樹脂材料は、セラミック材料よりも熱容量が小さく融点も低い。このため、保持部材10B~10Dの材料として樹脂材料を用いると、ガス化冷却(アブレーション)によるアーク放電を弱める特性や、溶融飛散した金属粒子が保持部材10B~10Dに付着する際に、保持部材10B~10Dの表面が変形したり付着物が凝集したりすることで、金属粒子が疎らとなり伝導パスを形成し難い特性があり、好ましい。
【0050】
樹脂材料としては、例えば、ポリアミド系樹脂またはフッ素系樹脂を用いることができる。ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドであってもよいし、半芳香族ポリアミドであってもよい。脂肪族ポリアミドの例としては、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66を挙げることができる。半芳香族ポリアミドの例としては、ナイロン6T、ナイロン9T、ポリフタルアミド(PPA)樹脂を挙げることができる。フッ素系樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレンを挙げることができる。また、ポリアミド系樹脂及びフッ素系樹脂は耐熱性が高く、燃焼しにくい。特に、脂肪族ポリアミドは燃焼してもグラファイトが生成しにくい。このため、脂肪族ポリアミドを用いて、カバー10A及び各保持部材10B~10Dを形成することで、ヒューズエレメント50の溶断時のアーク放電により生成したグラファイトによって、新たな電流経路が形成されることをより確実に防止できる。
【0051】
(第1端子、第2端子)
第1端子91及び第2端子92は、それぞれ、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる板状をなしており、具体的には、略四角形板状である。第1端子91及び第2端子92は、前後方向に互いに離れて配置される。
【0052】
図1に示すように、第1端子91の前端部は、ヒューズエレメント50の後端部と接続される。第1端子91の後側部分は、絶縁ケース10から後側に突出しており、絶縁ケース10の外部に露出している。また、第2端子92の後端部は、ヒューズエレメント50の前端部と接続される。第2端子92の前側部分は、絶縁ケース10から前側に突出しており、絶縁ケース10の外部に露出している。
【0053】
第1端子91と第2端子92とは、互いに略同一の形状であってもよいし、互いに異なる形状であってもよい。第1端子91及び第2端子92の厚さ寸法(上下方向の寸法)は、特に限定されるものではないが、例えば、数百μm~数mmなどである。第1端子91の厚さ寸法と第2端子92の厚さ寸法とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0054】
図1図4に示すように、第1端子91は、端子本体91aと、外部端子孔91bと、導体接続部91cと、係止爪91dと、を有する。
【0055】
端子本体91aは、前後方向に長い四角形板状である。端子本体91aは、第1保持部材10Bの端子載置面12と、第2保持部材10Cの端子押さえ面15との間に挟持される。
外部端子孔91bは、端子本体91aを上下方向に貫通する円孔状である。
【0056】
導体接続部91cは、第1端子91の前端部に配置され、左右方向に延びる。導体接続部91cは、第1収容部11と第2収容部14とにより画成される室(空間)18に配置される。導体接続部91cは、端子本体91aよりも上下方向の寸法が大きい。言い換えると、導体接続部91cの上下方向の寸法は、端子載置面12と端子押さえ面15との間の上下方向の寸法よりも大きい。
【0057】
導体接続部91cには、ヒューズエレメント50の後端部がはんだ付け等により接続される。導体接続部91cは、上下方向に互いに間隔をあけて配置される一対の接続板91eを有する。本実施形態では、ヒューズエレメント50が複数設けられており、各ヒューズエレメント50の後端部が、各接続板91eに接続されている。
【0058】
係止爪91dは、第1端子91の前端部に配置されており、端子本体91aよりも左右方向に突出する。具体的に、係止爪91dは、導体接続部91cの左端部と右端部とにそれぞれ突設される。第1端子91が第1保持部材10Bに組み付けられる際、係止爪91dは端子係止部13に挿入される。係止爪91dと端子係止部13とが係止されることにより、第1端子91は、第1保持部材10Bに対して前後方向に位置決めされて、前後方向への移動が規制される。
【0059】
第2端子92は、端子本体92aと、外部端子孔92bと、導体接続部92cと、係止爪92dと、を有する。
【0060】
端子本体92aは、前後方向に長い四角形板状である。端子本体92aは、第1保持部材10Bの端子載置面12と、第2保持部材10Cの端子押さえ面15との間に挟持される。
外部端子孔92bは、端子本体92aを上下方向に貫通する円孔状である。
【0061】
導体接続部92cは、第2端子92の後端部に配置され、左右方向に延びる。導体接続部92cは、第1収容部11と第2収容部14とにより画成される室(空間)18に配置される。導体接続部92cは、端子本体92aよりも上下方向の寸法が大きい。言い換えると、導体接続部92cの上下方向の寸法は、端子載置面12と端子押さえ面15との間の上下方向の寸法よりも大きい。
【0062】
導体接続部92cには、ヒューズエレメント50の前端部がはんだ付け等により接続される。導体接続部92cは、上下方向に互いに間隔をあけて配置される一対の接続板92eを有する。本実施形態では、ヒューズエレメント50が複数設けられており、各ヒューズエレメント50の前端部が、各接続板92eに接続されている。
【0063】
係止爪92dは、第2端子92の後端部に配置されており、端子本体92aよりも左右方向に突出する。具体的に、係止爪92dは、導体接続部92cの左端部と右端部とにそれぞれ突設される。第2端子92が第1保持部材10Bに組み付けられる際、係止爪92dは端子係止部13に挿入される。係止爪92dと端子係止部13とが係止されることにより、第2端子92は、第1保持部材10Bに対して前後方向に位置決めされて、前後方向への移動が規制される。
【0064】
一対の外部端子孔91b,92bのうち、一方は電源側に接続するために用いられ、他方は負荷側に接続するために用いられる。もしくは、外部端子孔91b,92bは、負荷の内部の通電経路に接続されるために用いられてもよい。
【0065】
第1端子91及び第2端子92は、例えば、銅、黄銅、ニッケルなどからなる金属製である。第1端子91及び第2端子92の材料として、剛性強化の観点からは黄銅を用いることが好ましく、電気抵抗低減の観点からは銅を用いることが好ましい。第1端子91と第2端子92とは、同じ材料からなるものであってもよいし、異なる材料からなるものであってもよい。
【0066】
(ヒューズエレメント)
図3図5に示すように、ヒューズエレメント50は、金属製の板状部材、シート状部材、または金属箔等により構成される。本実施形態では、ヒューズエレメントを複数有し、複数のヒューズエレメントは、第1端子91と第2端子92との間に並列に接続されている。本実施形態ではヒューズエレメント50が、上下方向に並んで2つ設けられる。ただしこれに限らず、ヒューズエレメント50は、1つのみ設けられていてもよいし、上下方向に3つ以上並んで設けられていてもよい。
【0067】
ヒューズエレメント50は、第1エレメント51と、第1エレメント51と通電経路上で直列に接続された第2エレメント52及び第3エレメント53と、第1エレメント51の第1端部51a(一方の端部)と第2エレメント52の一方の端部とを接続する接続金属86と、第1エレメント51の第2端部51b(他方の端部)と第3エレメント53の一方の端部とを接続する前記接続金属86と、を有する。なお、第2エレメント52の他方の端部、又は、第3エレメント53の他方の端部は、第1端子91または第2端子92と接続される。
【0068】
第1エレメント51は、第2エレメント52及び第3エレメント53と同じ材料、若しくは第2エレメント52及び第3エレメント53の各々よりも溶融温度が低い材料により構成される。また本実施形態では、第1エレメント51が、第2エレメント52及び第3エレメント53の各々よりも電気抵抗率が低いが同じでも良い。
本実施形態においては第1エレメント51が、過電流遮断時及びアクティブ遮断時のそれぞれにおいて、ヒューズエレメント50の溶断部として機能する。
【0069】
第1エレメント51は、板状、シート状または箔状であり、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる。図3に示すように、本実施形態では第1エレメント51が、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が大きい四角形板状をなす。第1エレメント51は、例えば、ヒューズエレメント50の前後方向の中央部に配置される。
但し、第1エレメント51は、パンチング穴開き形状や複数並列配置であっても良い。
【0070】
第1エレメント51は、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなる。第1エレメント51は、AgもしくはCuを含んでいればよく、Ag単体であってもよいし、Cu単体であってもよいし、Ag合金であってもよいし、Cu合金であってもよい。Ag合金は合金に含まれる金属の中でAgの含有量が最も多い合金であり、Cu合金は、合金に含まれる金属の中でCuの含有量が最も多い合金である。すなわち、第1エレメント51は、Ag若しくはCu、または、Ag若しくはCuを主成分として構成されていてもよい。
【0071】
また本実施形態では、第1エレメント51の厚みZ1は、第2エレメント52の厚みZ2及び第3エレメント53の厚みZ3の各々よりも薄い(図9A図10A参照)。本実施形態では、第1エレメント51の厚みZ1は、第2エレメント52の厚みZ2及び第3エレメント53の厚みZ3の各々の半分以下である。本実施形態では、第1エレメント51の厚みZ1は、第2エレメント52の厚みZ2及び第3エレメント53の厚みZ3の各々の1/4程度である。例えば、第1エレメント51の厚みZ1は、10μm以上30μm以下の厚みに設定されてもよい。
【0072】
第2エレメント52及び第3エレメント53の各々は、板状、シート状または箔状である。図3に示すように、本実施形態では第2エレメント52及び第3エレメント53の各々が、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が長い略四角形板状をなす。第2エレメント52及び第3エレメント53の各々は、ヒューズエレメント50に複数設けられる。第2エレメント52及び第3エレメント53の各々は、例えば、ヒューズエレメント50の前後方向の両端部に配置される。
【0073】
図3図5に示すように、本実施形態では、第1端子91と第1エレメント51の第1端部(後端部)51aとを接続する第2エレメント52と、第2端子92と第1エレメント51の第2端部(前端部)51bとを接続する第3エレメント53と、を含む。すなわち本実施形態では、各ヒューズエレメント50が、一対の第2エレメント52及び第3エレメント53を有する。
【0074】
本実施形態では、第2エレメント52、第1エレメント51、第3エレメント53の順に直列接続することで、ヒューズエレメント50の通電経路を形成する。第2エレメント52及び第3エレメント53の各々は、ヒューズエレメント50の電流が流れる通電方向(本実施形態では略前後方向に相当)において、第1エレメント51の両端部51a,51bに接続される。
【0075】
例えば、図9Aに示すように、第1エレメント51の第1端部51aが、第2エレメント52の前端面の上下中央部に固定されていてもよい。すなわち、第1エレメント51の第1端部51aの後端面と、第2エレメント52の前端面とが、接続されていてもよい。
また、第1エレメント51の第2端部51bが、第3エレメント53の後端面の上下中央部に固定されていてもよい。すなわち、第1エレメント51の第2端部51bの前端面と、第3エレメント53の後端面とが、接続されていてもよい。
第1エレメント51は、第2エレメント52及び第3エレメント53の各々の端面間に配置されて、これらの間に掛け渡されていてもよい。
【0076】
また例えば、図10Aに示すように、第1エレメント51の第1端部51aが、第2エレメント52の前端部上に固定されていてもよい。すなわち、第1エレメント51の第1端部51aの下面と、第2エレメント52の前端部の上面とが、接続されていてもよい。
また、第1エレメント51の第2端部51bが、第3エレメント53の後端部上に固定されていてもよい。すなわち、第1エレメント51の第2端部51bの下面と、第3エレメント53の後端部の上面とが、接続されていてもよい。
第1エレメント51は、第2エレメント52及び第3エレメント53の各々の上側に配置されて、これらの間に掛け渡されていてもよい。
【0077】
本実施形態では、ヒューズエレメント50に流れる過電流に伴う発熱により、接続金属86が溶融し、接続金属86の溶融物が第1エレメント51の一方の端部51a又は他方の端部51bを溶解することで、少なくとも第1エレメント51を溶断する(図9B図10B参照)。図の例では、接続金属86の溶融物が第1エレメント51の一方の端部51aを溶解することで、第1エレメント51の一部が溶断されている状態を示す。
【0078】
また本実施形態では、発熱体80を有し、発熱体80が発熱することで接続金属86が溶融し、接続金属86の溶融物が第1エレメント51の一方の端部51a又は他方の端部51bを溶解することで、少なくとも第1エレメント51を溶断する(図9B図10B参照)。図の例では、接続金属86の溶融物が第1エレメント51の一方の端部51aを溶解することで、第1エレメント51の一部が溶断されている状態を示す。
【0079】
第2エレメント52及び第3エレメント53は、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなる。第2エレメント52及び第3エレメント53は、AgもしくはCuを含んでいればよく、Ag単体であってもよいし、Cu単体であってもよいし、Ag合金であってもよいし、Cu合金であってもよい。Ag合金は合金に含まれる金属の中でAgの含有量が最も多い合金であり、Cu合金は、合金に含まれる金属の中でCuの含有量が最も多い合金である。すなわち、第2エレメント52及び第3エレメント53は、Ag若しくはCu、または、Ag若しくはCuを主成分として構成されていてもよい。
【0080】
接続金属86は、錫、又は、錫を主成分とする合金からなる。接続金属86は、Snを含んでいればよく、Sn単体であってもよいし、Sn合金であってもよい。Sn合金は、Snを主成分とする合金である。すなわち、接続金属86は、Sn若しくはSnを主成分として構成されてもよい。Sn合金は、合金に含まれる金属の中でSnの含有量が最も多い合金である。Sn合金の例としては、Sn-Bi合金、In-Sn合金、Sn-Ag-Cu合金等を挙げることができる。
【0081】
図3及び図4に示すように、ヒューズエレメント50は、さらに、第1折り曲げ部55と、第2折り曲げ部56と、を有する。
第1折り曲げ部55は、ヒューズエレメント50のうち絶縁部材60に対向する部分と、第1端子91と、の間に配置される。言い換えると、第1折り曲げ部55は、前後方向において、絶縁部材60と第1端子91との間に配置される。具体的に、第1折り曲げ部55は、第2エレメント52に設けられる。
【0082】
詳しくは、第2エレメント52は、第1エレメント51に接続される内側板部52aと、第1端子91に接続される外側板部52bと、内側板部52aと外側板部52bを接続する接続板部52cと、を有する。
【0083】
内側板部52aは、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる板状である。内側板部52aの前端部は、第1エレメント51の第1端部51aに接続金属86を用いはんだ付け等により接続される。
外側板部52bは、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる板状である。外側板部52bは、内側板部52aよりも後側かつ上側に配置される。外側板部52bの後側部分は、導体接続部91cの接続板91eにはんだ付け等により接続される。
【0084】
接続板部52cは、前後方向と垂直な面方向(Y-Z面方向)に広がる板状である。なお接続板部52cは、Y-Z面に対して傾斜する面方向に広がっていてもよい。すなわち、図4に示すように左右方向(Y軸方向)と垂直な断面視で、接続板部52cは、上下方向(Z軸方向)に沿って延びていてもよいし、上下方向に対して傾斜して延びていてもよい。接続板部52cの下端部は、内側板部52aの後端部に接続される。接続板部52cの上端部は、外側板部52bの前端部に接続される。
【0085】
第1折り曲げ部55は、接続板部52cと、接続板部52cと内側板部52aの屈曲した接続部分(屈曲部)と、接続板部52cと外側板部52bの屈曲した接続部分(屈曲部)と、を含む。
また、接続板部52cと接続板91eとの間の前後方向の寸法L1は、接続板91eの上下方向の寸法(つまり板厚寸法)T1よりも大きい。言い換えると、第1端子91と第1折り曲げ部55との間の前後方向の距離は、第1端子91の上下方向の厚さ寸法よりも大きい。
【0086】
第2折り曲げ部56は、ヒューズエレメント50のうち絶縁部材60に対向する部分と、第2端子92と、の間に配置される。言い換えると、第2折り曲げ部56は、前後方向において、絶縁部材60と第2端子92との間に配置される。具体的に、第2折り曲げ部56は、第3エレメント53に設けられる。
【0087】
詳しくは、第3エレメント53は、第1エレメント51に接続される内側板部53aと、第2端子92に接続される外側板部53bと、内側板部53aと外側板部53bを接続する接続板部53cと、を有する。
【0088】
内側板部53aは、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる板状である。内側板部53aの後端部は、第1エレメント51の第2端部51bに接続金属86を用いはんだ付け等により接続される。
外側板部53bは、上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる板状である。外側板部53bは、内側板部53aよりも前側かつ上側に配置される。外側板部53bの前側部分は、導体接続部92cの接続板92eにはんだ付け等により接続される。
【0089】
接続板部53cは、前後方向と垂直な面方向(Y-Z面方向)に広がる板状である。なお接続板部53cは、Y-Z面に対して傾斜する面方向に広がっていてもよい。すなわち、図4に示すように左右方向(Y軸方向)と垂直な断面視で、接続板部53cは、上下方向(Z軸方向)に沿って延びていてもよいし、上下方向に対して傾斜して延びていてもよい。接続板部53cの下端部は、内側板部53aの前端部に接続される。接続板部53cの上端部は、外側板部53bの後端部に接続される。
【0090】
第2折り曲げ部56は、接続板部53cと、接続板部53cと内側板部53aの屈曲した接続部分(屈曲部)と、接続板部53cと外側板部53bの屈曲した接続部分(屈曲部)と、を含む。
また、接続板部53cと接続板92eとの間の前後方向の寸法L2は、接続板92eの上下方向の寸法(つまり板厚寸法)T2よりも大きい。言い換えると、第2端子92と第2折り曲げ部56との間の前後方向の距離は、第2端子92の上下方向の厚さ寸法よりも大きい。
【0091】
第1折り曲げ部55及び第2折り曲げ部56の少なくとも1つは、クランク形状を有する。本実施形態では、第1折り曲げ部55及び第2折り曲げ部56の両方が、屈曲したクランク形状を有する。
【0092】
(絶縁部材)
図3図5に示すように、絶縁部材60は、板状であり、一対の板面が上下方向を向く。本実施形態では絶縁部材60が、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が大きい四角形板状をなす。絶縁部材60は、耐トラッキング指標CTIが500V以上の樹脂製である。絶縁部材60は、ポリアミド系樹脂材料若しくはフッ素系樹脂材料により構成される。絶縁部材60を構成する樹脂材料の例は、前述した絶縁ケース10(カバー10A及び各保持部材10B~10D)と同様である。
【0093】
図4に示すように、絶縁部材60は、上下方向の両側から、ヒューズエレメント50に対向して配置される。絶縁部材60は、ヒューズエレメント50と接近または接触して配置される。絶縁部材60とヒューズエレメント50との間の上下方向の寸法は、例えば、2mm以下である。絶縁部材60とヒューズエレメント50との間の上下方向の寸法は、好ましくは1.5mm以下であり、より望ましくは1mm以下である。
【0094】
絶縁部材60は、ヒューズエレメント50の上側と下側とに少なくとも2つ設けられる。すなわち、絶縁部材60は、ヒューズエレメント50を上下方向から挟持するように、少なくとも一対配置される。本実施形態では、ヒューズエレメント50が上下方向に並んで2つ設けられており、絶縁部材60は、上側のヒューズエレメント50の上側及び下側と、下側のヒューズエレメント50の上側及び下側とに、それぞれ設けられる。
【0095】
より詳しくは、上側のヒューズエレメント50の下側に位置する絶縁部材60と、下側のヒューズエレメント50の上側に位置する絶縁部材60とは、同一部品(共通品)である。このため、ヒューズエレメント50と絶縁部材60とは、上下方向に交互に並んで配置されている。
【0096】
また、下側のヒューズエレメント50の下側に位置する絶縁部材60は、第1保持部材10Bと一体に形成されている。詳しくは、下側のヒューズエレメント50の下側に位置する絶縁部材60は、第1保持部材10Bの底壁10aの一部により構成されている。すなわち、絶縁部材60の少なくとも1つは、絶縁ケース10の一部と一体に形成される。
なお、特に図示しないが、上側のヒューズエレメント50の上側に位置する絶縁部材60が、第2保持部材10Cと一体に形成されていてもよい。すなわち、2つの保持部材10B,10Cのうち、一方若しくは両方は、絶縁部材60と一体に形成される。
【0097】
また底壁10a(絶縁部材60)は、底壁10aのヒューズエレメント50に対向する面(上面)から窪む溝状の凹部19を有していても良い。凹部19は、第1エレメント51よりも前側と後側とに、一対設けられる。凹部19は、左右方向に延びる。すなわち、凹部19は、ヒューズエレメント50の電流が流れる通電方向(本実施形態では概ね前後方向であり、部分的に上下方向を含む)と直交する方向に延びる。
【0098】
図3図5に示すように、絶縁部材60は、発熱体収容部61と、導体対向凹部62と、スリット部63と、通気孔64と、を有する。
発熱体収容部61は、絶縁部材60のヒューズエレメント50に対向する面から窪む凹状である。本実施形態では発熱体収容部61が、絶縁部材60の一対の板面(上面及び下面)のうち、ヒューズエレメント50と対向する下面から上側に窪んで形成されている。
本実施形態では発熱体収容部61が、前後方向において、絶縁部材60の中央部に配置される。発熱体収容部61は、左右方向に長い四角形穴状である。
【0099】
導体対向凹部62は、絶縁部材60のヒューズエレメント50に対向する面から窪む凹状である。本実施形態では導体対向凹部62が、絶縁部材60の一対の板面(上面及び下面)のうち、ヒューズエレメント50と対向する上面から下側に窪んで形成されている。
本実施形態では導体対向凹部62が、前後方向において、絶縁部材60の中央部に配置される。具体的に、導体対向凹部62は、ヒューズエレメント50の第1エレメント51に対向して配置される。導体対向凹部62の前後方向の寸法は、発熱体収容部61の前後方向の寸法よりも小さい。導体対向凹部62の上下方向の寸法(深さ寸法)は、発熱体収容部61の上下方向の寸法よりも小さい。
【0100】
また、絶縁部材60はスリット部63を有していても良い。スリット部63は、絶縁部材60のヒューズエレメント50に対向する面から窪み絶縁部材60を貫通するスリット状である。すなわち、スリット部63がスリット状であり、絶縁部材60を上下方向に貫通し、一対の板面(上面及び下面)のそれぞれに開口する。スリット部63は、第1エレメント51よりも前側と後側とに、一対設けられる。スリット部63は、左右方向に延びる。すなわち、スリット部63は、ヒューズエレメント50の電流が流れる通電方向(本実施形態では概ね前後方向であり、部分的に上下方向を含む)と直交する方向に延びる。
スリット部63が絶縁部材60に配置されていると、ヒューズエレメント50の遮断後に絶縁部材60のヒューズエレメント50対向面に付着するヒューズエレメントの溶融飛散物がスリット部63で不連続となり、ヒューズエレメント50の遮断後の第1端子91と第2端子92との間の絶縁抵抗を好適に大きくすることができる。
【0101】
通気孔64は、絶縁部材60を上下方向に貫通する。通気孔64は、絶縁部材60に複数設けられる。複数の通気孔64は、絶縁部材60の左右方向の両端部にそれぞれ配置される。
【0102】
本実施形態では、スリット部63及び通気孔64を介して、ヒューズエレメント50が収容される室18と、内圧緩衝空間16とが連通する。このため、ヒューズエレメント50の過電流遮断時に、アーク放電の発生にともない室18に圧力上昇が生じた場合に、この圧力をスリット部63及び通気孔64を通して、内圧緩衝空間16に効率よく逃がすことができる。
【0103】
(発熱体)
図4及び図5に示すように、発熱体80は、ヒューズエレメント50と上下方向に重なって配置される。発熱体80は、上下方向においてヒューズエレメント50と接触する。
発熱体80は、給電部材90からの通電により発熱し、ヒューズエレメント50の少なくとも一部を溶融し溶断する。具体的に、発熱体80は、第1エレメント51と上下方向に積層されており、通電による発熱で第1エレメント51の少なくとも一部を溶融し溶断する。なお本実施形態では、「ヒューズエレメント50の少なくとも一部を溶融し溶断する」ことを、「ヒューズエレメント50を溶融し溶断する」などと省略して説明する場合がある。また、「第1エレメント51の少なくとも一部を溶融し溶断する」ことを、「第1エレメント51を溶融し溶断する」などと省略して説明する場合がある。また第2エレメント52及び第3エレメント53の各々の場合についても、上記同様である。
発熱体80は、ヒューズエレメント50と同数設けられる。本実施形態では発熱体80が、上下方向に並んで2つ設けられる。各発熱体80は、各ヒューズエレメント50と接触する。
【0104】
図3図6Bに示すように、発熱体80は、板状であり、一対の板面が上下方向を向く。本実施形態では発熱体80が、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が大きい四角形板状をなす。発熱体80は、発熱体収容部61に配置される。すなわち、発熱体80は、絶縁部材60に収容される。
【0105】
発熱体80は、絶縁基板(基板)81と、絶縁基板81上に積層された抵抗層82と、絶縁基板81上に積層され、上下方向においてヒューズエレメント50側を向く金属層83と、絶縁層84と、発熱体電極85と、を有する。本実施形態では、発熱体80が左右方向に延びており、絶縁基板81、抵抗層82、金属層83及び絶縁層84も、それぞれ左右方向に延びる。
【0106】
詳しくは、図6Bに一例として示すように、発熱体80は、絶縁基板81の上面に前後方向に離間して配置され互いに平行に延びる2つの抵抗層82と、これらの抵抗層82を上側から覆う絶縁層84と、絶縁基板81上に形成され、抵抗層82の左右方向若しくは前後方向の両端部に電気的に接続される一対の発熱体電極85と、絶縁基板81の下面に配置される金属層83と(図6A参照)、を有する。
【0107】
本実施形態では図6Bに示すように、発熱体電極85が、前後方向に延びる第1電極部85aと、第1電極部85aに接続され左右方向に延びる第2電極部85bと、を有する。
第1電極部85aは、絶縁基板81の上面のうち左右方向の端部に配置される。第1電極部85aの少なくとも一部は、絶縁層84に覆われることなく発熱体80の外部に露出する。
【0108】
図6Bに示す例では、各発熱体電極85において、第2電極部85bが、前後方向に互いに間隔をあけて一対設けられている。また、抵抗層82の前後方向の両端部には、一対の発熱体電極85の各第2電極部85bが接続される。
【0109】
図5及び図6Aに示すように、金属層83は、絶縁基板81の一対の板面(上面及び下面)のうち一方(本実施形態では下面)に配置され、抵抗層82は、一対の板面のうち他方(本実施形態では上面)に配置される。なお金属層83は、電極(ダミー電極)等と言い換えてもよい。
【0110】
抵抗層82は、通電すると発熱する導電性を有する材料、例えばニクロム、W、Mo、Ru等、又は、これらを含む材料からなる。抵抗層82は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板81上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成し、焼成する等によって形成する。
【0111】
絶縁基板81は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する基板である。絶縁層84は、抵抗層82の保護を図るために設けられる。絶縁層84の材料としては、例えば、セラミックス、ガラスなどの絶縁材料を用いることができる。絶縁層84は、絶縁材料のペーストを塗布し、焼成する方法等によって形成することができる。
発熱体80の上面の発熱体電極85及び抵抗層82と、下面の金属層83とは、絶縁基板81により電気的に絶縁されている。
【0112】
発熱体80は、保護素子100の通電経路となる外部回路に異常が発生する等によって通電経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって通電され発熱される。
【0113】
図5に示すように、ヒューズエレメント50の第1エレメント51の一部は、第2エレメント52及び第3エレメント53の各々と金属層83との間に形成された上下方向の隙間Gの一部に配置され、上下方向において第2エレメント52及び第3エレメント53の各々と金属層83との間に挟まれる。隙間Gは、第1エレメント51の上下方向の寸法(厚さ寸法)と同じかそれより僅かに大きい寸法であり、具体的には、例えば数十μm~数百μmであって、本実施形態では50μm~100μm程度とされている。隙間Gは、後述するように、毛細管現象を発現することが可能な寸法であればよい。
なお図5において、符号86は実装用の接続金属を表しており、符号87は絶縁性のフラックスを表している。図5に示すように、金属層83、第1エレメント51と、第2エレメント52及び第3エレメント53の各々とは、接続金属86により互いに接続され、固定されている。
【0114】
詳しくは、図5及び図6Aに示すように、金属層83は、発熱体80に複数設けられる。複数の金属層83は、前後方向に互いに間隔をあけて配置される。複数の金属層83は、第2エレメント52と上下方向に第1の隙間G1をあけて配置される第1金属層83Aと、第3エレメント53と上下方向に第2の隙間G2をあけて配置される第2金属層83Bと、を含む。
【0115】
絶縁基板81の上面に設けられる複数(2つ)の抵抗層82は、上下方向から見て、それぞれ、第1金属層83A及び第2金属層83Bと重なる。このため、給電部材90から発熱体電極85に給電が行われ、各抵抗層82が発熱すると、絶縁基板81を介して第1金属層83A及び第2金属層83Bに熱が伝わり、これらの金属層83A,83Bが加熱される。
【0116】
なお、抵抗層82は、図6Cに示す発熱体80の他の例のように、絶縁基板81上に1つのみ設けられていてもよい。この場合、1つの抵抗層82は、上下方向から見て、第1金属層83A及び第2金属層83Bの少なくとも一部と重なって配置される。好ましくは、1つの抵抗層82は、上下方向から見て、第1金属層83A及び第2金属層83Bの両方と重なって配置される。1つの抵抗層82は、絶縁基板81の上面の全域にわたって配置されていてもよい。また図6Cに示す例では、各発熱体電極85が、第2電極部85bを1つ備える。
【0117】
図5に示すように、第1エレメント51の第1端部51aは、第1の隙間G1の一部に配置され、上下方向において第2エレメント52と第1金属層83Aとの間に挟まれる。
また、第1エレメント51の第2端部51bは、第2の隙間G2の一部に配置され、上下方向において第3エレメント53と第2金属層83Bとの間に挟まれる。
【0118】
ここで、図7は、遮断信号による発熱体80の発熱によってヒューズエレメント50の一部が溶断した状態を表している。
発熱体80の発熱により溶融した第1エレメント51の第1端部51a付近の溶融物88(第1エレメント51の第1端部51a及び接続金属86を含む溶融物)は、第1の隙間G1に毛細管現象により浸入しつつ後側へ流動する。また、第1エレメント51の第2端部51b付近の溶融物89(第1エレメント51の第2端部51b及び接続金属86を含む溶融物)は、第2の隙間G2に毛細管現象により浸入しつつ前側へ流動する。これにより、第1エレメント51は前後方向に分割されるように溶断され、ヒューズエレメント50の通電が遮断される。すなわち本実施形態では、発熱体80の発熱により溶融した第1エレメント51の溶融物88,89が、隙間Gに毛細管現象により浸入しつつ流動することで、第1エレメント51が溶断される。
【0119】
図5及び図6Aに示すように、複数の金属層83は、さらに、第1金属層83Aと第2金属層83Bとの間に配置される中間金属層83Cを含む。中間金属層83Cは、前後方向において、第1金属層83Aと第2金属層83Bとの間に配置される。また、中間金属層83Cの前後方向の寸法は、第1金属層83Aの前後方向の寸法よりも小さく、かつ、第2金属層83Bの前後方向の寸法よりも小さい。
【0120】
第1エレメント51のうち第1端部51aと第2端部51bとの間に位置する中間部分は、接続金属86により中間金属層83Cに接続される。図7に示すように、遮断信号によって発熱体80が発熱したときに、第1エレメント51のうち第1端部51aと第2端部51bとの間に位置する中間部分は、中間金属層83Cに接続された状態のまま、保持される。
発熱体80の発熱量が多い場合は、中間金属層83Cに接続された第1エレメント51(の上記中間部分)も溶融し、中間金属層83Cの表面に第1エレメント51の溶融物の一部が保持される。
【0121】
また、図8は、定格電流を超えた過電流(所定以上の電流)によってヒューズエレメント50の一部が溶断(消失)した状態を表している。図8に示すように、ヒューズエレメント50に所定以上の電流が流れたときに、第1エレメント51の少なくとも一部または、第1エレメント51の少なくとも一部及び第2エレメント52及び第3エレメント53の各々の少なくとも一部は溶断され、ヒューズエレメント50の通電が遮断される。図8に示す例では、第1エレメント51の少なくとも一部及び第2エレメント52及び第3エレメント53の各々の少なくとも一部が溶断されており、より詳しくは、第1エレメント51のすべてと、第2エレメント52の前端部と、第3エレメント53の後端部とが、過電流により消失している。
【0122】
(給電部材)
図2に示すように、給電部材90は、発熱体80へ給電する部材である。給電部材90は、絶縁ケース10の外部と内部とにわたって延びており、その一端部が発熱体80の発熱体電極85に接続される。具体的に、給電部材90の一端部は、発熱体電極85の第1電極部85aに接続される。給電部材90の一端部と発熱体電極85の第1電極部85aとは、例えばはんだで接続される。給電部材90の一端部と発熱体電極85の第1電極部85aとの接続部の一部、もしくは全部は、接着剤で覆われるように固定されていてもよく、また、接着剤の一部は絶縁部材60とも接着されていてもよい。これにより、発熱体80に通電する際に、ヒューズエレメント50の溶断より先に給電部材90と発熱体電極85の第1電極部85aを接続しているはんだが溶融して通電が切断されることを防ぐことができる。本実施形態では、給電部材90の少なくとも一部が、電線(配線部材)により構成される。ただしこれに限らず、特に図示しないが、給電部材の少なくとも一部が、導電性を有する板状部材や棒状部材などにより構成されていてもよい。
【0123】
(本実施形態の作用効果)
以上説明した本実施形態のヒューズエレメント50は、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなる第1エレメント51と、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなり、第1エレメント51と通電経路上で直列に接続された第2エレメント52と、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなり、第1エレメント51と通電経路上で直列に接続された第3エレメント53と、錫、又は、錫を主成分とする合金からなり、第1エレメント51の一方の端部51aと第2エレメント52の一方の端部とを接続する接続金属86と、第1エレメント51の他方の端部51bと第3エレメント53の一方の端部とを接続する前記接続金属86と、を有する。
この構成によれば、定格電流の1.5倍といった比較的小さい過電流での遮断において、銀、又は、銀を主成分とする合金からなる第1エレメント51(以下、銀箔エレメント51ともいう。)と、錫、又は、錫を主成分とする合金からなる接続金属86(以下、錫の接続金属86ともいう。)との組み合わせにより、300℃程度でのヒューズエレメントの溶断が可能となる。これにより、絶縁ケース10を融点約300℃のプラスチックケースとした場合でも、ケースの破壊を抑制することができる。また、溶断部として、薄い銀箔エレメント51を採用することで、高電圧大電流遮断時の溶融飛散物量を削減することができる。このため、アーク放電の規模を小さくすることができ、絶縁抵抗を高く改善することができる。加えて、ヒーター溶断方式では、銀箔エレメント51と錫の接続金属86との組み合わせにより、300℃程度でのヒューズエレメント50の溶断が可能となる。したがって、300℃程度の低温で溶断し、溶融体積が少なく、切断し易いヒューズエレメント50を提供することができる。
また、銀箔エレメント51は、銅よりもはんだとの相性がよく、はんだの溶融によって銀箔が溶けることで、ヒューズエレメント50の通電を遮断することができる。さらに、銀箔は薄いので(体積が小さいので)、過電流遮断時の昇華によって絶縁抵抗が悪化することを抑えることができる。
なお、本発明者の鋭意検討の結果、第1エレメント51に関して、第2エレメント52及び第3エレメント53と同様に銅箔を用いた場合にも同様の作用効果が得られる(300℃程度の低温で溶断し、溶融体積が少なく、切断し易いヒューズエレメントを提供することができる)という考えに至った。すなわち、銅、又は、銅を主成分とする合金からなる第1エレメント51(銅箔エレメント51)と、錫の接続金属86との組み合わせにおいても、銀箔エレメント51と同様の作用効果が得られる。
【0124】
また本実施形態の保護素子100では、上記のヒューズエレメント50を備えることで、過電流遮断とアクティブ遮断とを両立する保護素子100を提供することができる。
【0125】
また本実施形態では、ヒューズエレメント50に流れる過電流に伴う発熱により、接続金属86が溶融し、接続金属86の溶融物が第1エレメント51の一方の端部51a又は他方の端部51bを溶解することで、少なくとも第1エレメント51を溶断する。
この構成によれば、ヒューズエレメント50に流れる過電流に伴う発熱により、第1エレメント51の端部を溶解するだけで、少なくとも第1エレメント51を溶断できるため、ヒューズエレメント50を全体的に溶解させる必要がない。したがって、溶融体積が少なく、切断し易いヒューズエレメント50を提供する上で好適である。
【0126】
また本実施形態では、第1エレメント51の厚みZ1は、第2エレメント52の厚みZ2及び第3エレメント53の厚みZ3の各々よりも薄い。
この構成によれば、第1エレメント51の厚みZ1が、第2エレメント52の厚みZ2及び第3エレメント53の厚みZ3の各々よりも厚い場合と比較して、第1エレメント51を溶断させやすい。したがって、溶融体積が少なく、切断し易いヒューズエレメント50を提供する上で好適である。
【0127】
また本実施形態では、第1エレメント51の厚みZ1は、第2エレメント52の厚みZ2及び第3エレメント53の厚みZ3の各々の半分以下である。
この構成によれば、第1エレメント51の厚みZ1が、第2エレメント52の厚みZ2及び第3エレメント53の厚みZ3の各々の半分超過である場合と比較して、第1エレメント51を溶断させやすい。したがって、溶融体積が少なく、切断し易いヒューズエレメント50を提供する上で更に好適である。
【0128】
また本実施形態では、発熱体80を有し、発熱体80が発熱することで接続金属86が溶融し、接続金属86の溶融物が第1エレメント51の一方の端部51a又は他方の端部51bを溶解することで、少なくとも第1エレメント51を溶断する。
この構成によれば、発熱体80の発熱により、第1エレメント51の端部を溶解するだけで、少なくとも第1エレメント51を溶断できるため、ヒューズエレメント50を全体的に溶解させる必要がない。したがって、溶融体積が少なく、切断し易いヒューズエレメント50を提供する上で好適である。
【0129】
また本実施形態では、ヒューズエレメント50を複数有し、複数のヒューズエレメント50は、第1端子91と第2端子92との間に並列に接続されている。
この構成によれば、複数のヒューズエレメント50の各々がその間に配置された絶縁部材60と近接もしくは接触(密着)して絶縁されており、複数のヒューズエレメント50を取り巻く空間が極めて狭くなる。これにより、溶断することによって発生するアーク放電の規模が小さくなりやすくなる。つまり、溶断空間が狭いとその空間内の気体が少なくなり、アーク放電中に電流が流れる経路となる「空間内の気体が電離して発生するプラズマ」の量も少なくなり、アーク放電を早期に消弧し易くなる。よって、本実施形態の保護素子100によれば、絶縁ケース10のサイズを小型軽量化することが可能となる。
【0130】
また本実施形態の保護素子100では、ヒューズエレメント50に定格電流を超えた過電流(すなわち所定以上の電流)が流れた場合、ヒューズエレメント50が発熱し溶断されて、電流経路が遮断される。あるいは、この保護素子100は、発熱体80に電流を通電して発熱させることにより、発熱体80に積層されるヒューズエレメント50を溶融し溶断させて、電流経路を遮断させることが可能である。
【0131】
また本実施形態では、絶縁部材60が、ヒューズエレメント50に上下方向の両側から対向して配置されている。詳しくは、絶縁部材60が、ヒューズエレメント50に対して上側及び下側から接近若しくは接触しており、好ましくは密着する。このため、ヒューズエレメント50と絶縁部材60との間にアーク放電が継続できる空間がなくなり、過電流遮断時においてアーク放電が確実に消滅する。
【0132】
以上より本実施形態によれば、ヒューズエレメント50の溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制でき、過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子100を提供することができる。
【0133】
また本実施形態では、絶縁部材60とヒューズエレメント50との間の上下方向の寸法が、2mm以下である。
この場合、ヒューズエレメント50と絶縁部材60との間に形成される空間が狭くされているため、ヒューズエレメント50が過電流遮断で溶断することによって発生するアーク放電の規模が小さくなりやすい。つまり、溶断空間が狭いとその空間内の気体が少なくなり、アーク放電中に電流が流れる経路となる「空間内の気体が電離して発生するプラズマ」の量も少なくなり、アーク放電を早期に消弧し易くなる。上記寸法は、1.5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがより望ましい。
【0134】
また本実施形態では、絶縁部材60が発熱体収容部61を有し、発熱体80は、発熱体収容部61に配置される。
この場合、発熱体80を発熱体収容部61に収容することで、絶縁部材60のヒューズエレメント50に対向する面のうち、発熱体収容部61以外の部分をヒューズエレメント50により接近若しくは接触させて配置することができる。このため、ヒューズエレメント50と絶縁部材60との間にアーク放電が継続できる空間がなくなり、アーク放電がより確実に抑えられる。
【0135】
また本実施形態では、絶縁部材60が、絶縁部材60のヒューズエレメント50に対向する面から窪み絶縁部材60を貫通するスリット部63、または、底壁10a(複数の絶縁部材60のうち最下部の絶縁部材60に相当)のヒューズエレメント50に対向する上面から窪む溝状の凹部19を有している。そして、スリット部63または凹部19は、ヒューズエレメント50の電流が流れる通電方向と直交する方向に延びている。
この場合、スリット部63または凹部19が設けられることで、過電流遮断によりヒューズエレメント50が溶断したときに周囲に飛散する溶融飛散物が、絶縁部材60のヒューズエレメント50に対向する面上で連続的に形成されるようなことを抑制できる。これにより、電流経路の遮断後の絶縁抵抗を安定して高めることができる。
【0136】
また本実施形態では、絶縁部材60が、ヒューズエレメント50の上側と下側とに少なくとも2つ設けられ、絶縁部材60の少なくとも1つは、絶縁ケース10の一部と一体に形成される。
具体的には、絶縁部材60が保持部材10B(絶縁ケース10の一部)と一体化している。このため、部品点数を削減して保護素子100の製造を容易化したり、製造コストを削減したりすることができる。
【0137】
また本実施形態では、絶縁ケース10が、絶縁ケース10の内部に形成され、ヒューズエレメント50が配置される室(空間)18と連通する内圧緩衝空間16を有する。
この場合、ヒューズエレメント50の溶断時に発生するアーク放電によって生成する気体による保護素子100の内圧の急激な上昇を、内圧緩衝空間16によって抑えることができる。これにより、絶縁ケース10の破損等を防止できる。
【0138】
また本実施形態では、第1エレメント51の一部が、第2エレメント52及び第3エレメント53の各々と金属層83との間に形成された上下方向の隙間Gの一部に配置され、上下方向において第2エレメント52及び第3エレメント53の各々と金属層83との間に挟まれている。
この場合、抵抗層(ヒーター)82が通電により発熱し、この熱が絶縁基板(ヒーター基板)81を介して金属層(ダミー電極)83に伝わるとともに、金属層83と第2エレメント52及び第3エレメント53の各々との間で第1エレメント51の一部が溶融される。遮断信号により第1エレメント51を効率よく溶融し、確実に溶断させることができる。
【0139】
また本実施形態では、発熱体80の発熱により溶融した第1エレメント51の溶融物88,89が、隙間Gに毛細管現象により浸入しつつ流動することで、第1エレメント51が溶断される。
この場合、第1エレメント51の溶融物88,89が、第2エレメント52及び第3エレメント53の各々と金属層83の隙間Gに毛細管現象により吸い込まれることで、溶融物88,89を所望の向きに流動させて、第1エレメント51をより確実に溶断させることができる。
【0140】
また本実施形態では、具体的に、第1エレメント51の第1端部51aは、第1の隙間G1の一部に配置され、上下方向において第2エレメント52と第1金属層83Aとの間に挟まれ、第1エレメント51の第2端部51bは、第2の隙間G2の一部に配置され、上下方向において第3エレメント53と第2金属層83Bとの間に挟まれる。
この場合、発熱体80の発熱により、第1金属層83Aと第2エレメント52との間で第1エレメント51の第1端部51a付近が溶融され、第2金属層83Bと第3エレメント53との間で第1エレメント51の第2端部51b付近が溶融される。第1エレメント51が通電方向の両端部において溶融されるため、遮断信号によりヒューズエレメント50をより確実に溶断させることができる。
【0141】
また本実施形態では、具体的に、発熱体80の発熱により溶融した第1エレメント51の第1端部51a付近の溶融物88が、第1の隙間G1に毛細管現象により浸入しつつ流動し、かつ、第1エレメント51の第2端部51b付近の溶融物89が、第2の隙間G2に毛細管現象により浸入しつつ流動することで、第1エレメント51が溶断される。
この場合、第1エレメント51の溶融物88,89が、通電方向の両端部付近において、それぞれ毛細管現象により吸い込まれつつ流動することで、第1エレメント51がより確実に溶断させられる。
【0142】
また本実施形態では、複数の金属層83が、さらに中間金属層83Cを含み、第1エレメント51のうち第1端部51aと第2端部51bとの間に位置する中間部分が、中間金属層83Cに接続される。
上記構成では、第1エレメント51が、上述のように通電方向の両端部付近においてそれぞれ溶断されても、第1エレメント51の中間部分が、中間金属層83Cにより保持された状態が維持される。これにより、第1エレメント51での溶断がより確実に行える。
【0143】
詳しくは、中間金属層83Cが設けられることで、溶融後の第1エレメント51は、第1の隙間G1に配置される部分88(第1端部51a付近)と、第2の隙間G2に配置される部分89(第2端部51b付近)と、中間金属層83Cに保持される部分(中間部分付近)と、の3箇所に分割されることになる。第1エレメント51が3つの分割体に分割されることにより、各分割体の容積(体積)は減り、溶融量も低減して、溶融物の流動がコントロールしやすくなる。
【0144】
より詳しくは、例えば、第1エレメント51の溶融物が、表面張力の作用等により第1エレメント51の左右方向の中央部付近に集まって意図しない瘤を作ったり、X-Y面内で回転しつつ流動したりすることで、第1エレメント51の通電の遮断が不安定になるような不具合を、本実施形態の中間金属層83Cによって抑制することができる。
【0145】
また本実施形態では、ヒューズエレメント50が、前後方向において第1端子91と絶縁部材60との間に配置される第1折り曲げ部55と、前後方向において第2端子92と絶縁部材60との間に配置される第2折り曲げ部56と、を有し、第1端子91と第1折り曲げ部55との間の前後方向の距離L1が、第1端子91の上下方向の厚さ寸法T1よりも大きく、第2端子92と第2折り曲げ部56との間の前後方向の距離L2が、第2端子92の上下方向の厚さ寸法T2よりも大きい。
本実施形態では、絶縁部材60によりヒューズエレメント50を上側及び下側から挟み込む構成を採用しており、これにより、ヒューズエレメント50の溶断部分の周囲の空間(遮断空間)の空気を極力排除することで、過電流遮断時のアーク放電の経路となる空気のプラズマの発生量を抑制している。しかしながらその一方で、保護素子100が設置される周囲の温度変化にともなう熱膨張や熱収縮等により、第1端子91と第2端子92との間の前後方向の距離が変化した場合に、ヒューズエレメント50がこの変化に十分に追従できずに、断線する可能性が考えられる。特に本実施形態のように、第1端子91及び第2端子92が樹脂製の保持部材10Bに位置決めされていて、保持部材10Bの温度変化にともなう熱膨張や熱収縮に影響を受けやすい場合や、第1端子91及び第2端子92が接続される保護素子100外部のバスバー等の部材の位置変化等により影響を受ける場合がある。
【0146】
この点、本実施形態では、ヒューズエレメント50に第1折り曲げ部55及び第2折り曲げ部56が設けられるため、保護素子100が設置される周囲の温度変化等により、第1端子91と第2端子92との間の前後方向の距離が変化した場合であっても、第1折り曲げ部55及び第2折り曲げ部56によって、ヒューズエレメント50の前後方向の寸法を伸縮させることができる。すなわち、簡素な構造により、端子91,92間距離の変化にヒューズエレメント50を追従させることができる。
【0147】
詳しくは、第1端子91と第1折り曲げ部55との間の前後方向の距離L1が、第1端子91の上下方向の厚さ寸法T1よりも大きくされている。このため、ヒューズエレメント50と第1端子91とを接続するはんだ等が、第1端子91からヒューズエレメント50側にはみ出しても、第1折り曲げ部55に達するようなことは防止される。これにより、第1折り曲げ部55と第1端子91とが固着される不具合が抑えられ、第1折り曲げ部55によるヒューズエレメント50の伸縮機能が安定して奏功される。
【0148】
また、第2端子92と第2折り曲げ部56との間の前後方向の距離L2が、第2端子92の上下方向の厚さ寸法T2よりも大きくされている。このため、ヒューズエレメント50と第2端子92とを接続するはんだ等が、第2端子92からヒューズエレメント50側にはみ出しても、第2折り曲げ部56に達するようなことは防止される。これにより、第2折り曲げ部56と第2端子92とが固着される不具合が抑えられ、第2折り曲げ部56によるヒューズエレメント50の伸縮機能が安定して奏功される。
【0149】
したがって本実施形態によれば、ヒューズエレメント50の溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制しつつ、温度変化等でヒューズエレメント50に引っ張りや圧縮などの過大な負荷が作用しヒューズエレメント50が断線するような不具合を、安定して防止することができる。
【0150】
また本実施形態では、第1折り曲げ部55及び第2折り曲げ部56の少なくとも1つは、クランク形状を有する。
この場合、第1折り曲げ部55または第2折り曲げ部56によるヒューズエレメント50の伸縮機能がより安定して奏功される。
【0151】
また本実施形態では、絶縁ケース10が、上下方向においてヒューズエレメント50の両側に配置される少なくとも2つの保持部材10B,10Cを有し、第1端子91の一部、第2端子92の一部、及びヒューズエレメント50は、2つの保持部材10B,10Cの間に配置され、2つの保持部材10B,10Cのうち、一方若しくは両方が、絶縁部材60と一体に形成されている。
この場合、絶縁部材60が絶縁ケース10の一部と一体化している。このため、部品点数を削減して保護素子100の製造を容易化したり、製造コストを削減したりすることができる。
【0152】
また本実施形態では、絶縁ケース10が、少なくとも2つの保持部材10B~10Dを収容するカバー10Aを有し、カバー10Aは、少なくとも2つの保持部材10B~10Dを固定した状態で保持する。
この場合、複数の保持部材10B~10Dをカバー10Aに収容することで、これらの保持部材10B~10Dが、互いに固定された状態で維持される。複数の保持部材10B,10C間に配置される第1端子91の一部、第2端子92の一部及びヒューズエレメント50の姿勢が安定する。
【0153】
また本実施形態では、絶縁部材60は、耐トラッキング指標CTIが500V以上の樹脂製である。
この場合、アーク放電によって絶縁部材60の表面に導電路となる炭化物が形成されにくくなるので、リーク電流がより発生しにくくなる。
【0154】
また本実施形態では、絶縁部材60が、ポリアミド系樹脂材料若しくはフッ素系樹脂材料により構成される。
樹脂材料は、例えばセラミック材料等に比べて熱容量が小さく、融点も低い。本実施形態のように、絶縁部材60の材料として樹脂材料を用いると、ガス化冷却(アブレーション)によるアーク放電を弱める特性や、溶融飛散した金属粒子が絶縁部材60に付着する際に、絶縁部材60の表面が変形したり付着物が凝集したりすることで、金属粒子が疎らとなり、伝導パスを形成し難い特性があることから、好ましい。
【0155】
本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。なお、変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0156】
(保護素子(第2実施形態))
本発明の第2実施形態に係る保護素子250について、図11図14を参照して説明する。第2実施形態の保護素子250は、主に、係止部材270および発熱体80の配置等を含む各構成が、前述の第1実施形態と異なる。なお本実施形態の各図において、第1実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0157】
図11は、本実施形態の保護素子250を示す断面図であり、具体的には、保護素子250を幅方向(Y方向)と垂直な断面(X-Z断面)として表す断面図である。
保護素子250は、絶縁ケース260と、ヒューズエレメント50と、第1端子91と、第2端子92と、絶縁部材60と、遮蔽部材220と、押圧手段230と、発熱体80と、係止部材270と、給電部材90と、を有する。
【0158】
(絶縁ケース)
絶縁ケース260は、上下方向(Z方向)に積層して配置される少なくとも2つ(本実施形態では3つ)の保持部材260Ba、260Bb、260Bcと、これらの保持部材260Ba、260Bb、260Bcを収容する筒状のカバー260Aと、を有する。カバー260Aは、複数の保持部材260Ba、260Bb、260Bcの外側に嵌め合わされる。
【0159】
少なくとも2つの保持部材260Ba、260Bbは、上下方向において、ヒューズエレメント50の両側に配置される。具体的に、3つの保持部材260Ba、260Bb、260Bcのうち、最も下方に配置される第1保持部材260Baは、ヒューズエレメント50の下方に配置される。また、3つの保持部材260Ba、260Bb、260Bcのうち、第2保持部材260Bbは、ヒューズエレメント50の上方に配置される。3つの保持部材260Ba、260Bb、260Bcのうち、第3保持部材260Bcは、最も上方に配置される。
【0160】
第1保持部材260Baは、その底壁の上面に配置されて上側を向く内底面253を有する。すなわち、絶縁ケース260は、内底面253を有する。内底面253は、絶縁部材60の開口部若しくは分離部に沿って延びる溝254を有する。溝254は、幅方向(Y方向)に沿って延び、上側に開口する。
【0161】
第2保持部材260Bbは、発熱体収容凹部261を有する。発熱体収容凹部261は、第2保持部材260Bbの側壁のうち、通電方向(X方向)の内側(中央側)を向く内面に配置される。具体的に、発熱体収容凹部261は、第2保持部材260Bbの側壁の内面のうち、上端部に位置する。発熱体収容凹部261は、第2保持部材260Bbの側壁の内面のうち、発熱体収容凹部261の下側に隣接する部分よりも、通電方向の外側に凹む。
発熱体収容凹部261の配置は、通電方向(X方向)の内側(中央側)を向く内面に限定されず、例えば、第2保持部材260Bbの側壁のうち、通電方向(X方向)と直交する幅方向(Y方向)の内側(中央側)を向く内面に配置されても良い。
【0162】
発熱体収容凹部261は、第2保持部材260Bbの側壁の内面において、互いに通電方向に向かい合って一対設けられる。すなわち、一対の発熱体収容凹部261は、第2保持部材260Bbの側壁の内面のうち、通電方向の第1端子91側(+X側)の端部と、第2端子92側(-X側)の端部とに配置される。
発熱体収容凹部261は、一対に限定されず、片方に一つ配置されても良い。
【0163】
図13は、図11の保護素子250の一部を模式的に示す断面図であり、具体的には、幅方向と垂直な断面(X-Z断面)を表している。図13に示すように、第2保持部材260Bb(すなわち絶縁ケース260)は、第2段部263を有する。第2段部263は、発熱体収容凹部261の下端部に配置され、上側を向く。第2段部263は、一対の発熱体収容凹部261に、それぞれ(すなわち一対)設けられる。
発熱体収容凹部261が片方に一つ配置されている場合は、発熱体収容凹部261に第2段部263が一つ設けられる。
【0164】
図11に示すように、第3保持部材260Bcは、押圧手段収容凹部262を有する。
押圧手段収容凹部262は、第3保持部材260Bcの頂壁の下面に配置され、上側に凹む。
図11は押圧手段230が円錐バネであり、その上側の径が下側の径より小さい場合であるが、円錐バネの上側の径が下側の径より広い場合や円柱バネの場合は、押圧手段収容凹部262は無くても良い。
【0165】
絶縁ケース260は、ヒューズエレメント50と、第1端子91の一部と、第2端子92の一部と、絶縁部材60と、遮蔽部材220と、押圧手段230と、発熱体80と、係止部材270と、給電部材90の一部とを収容する。
【0166】
(ヒューズエレメント)
ヒューズエレメント50は、上下方向(厚さ方向)に並んで複数設けられる。本実施形態では、4つのヒューズエレメント50が上下方向に並列配置される。上下方向に隣り合うヒューズエレメント50間、および、最上部に位置するヒューズエレメント50(50f)の上側(外側)には、それぞれ、絶縁部材60が配置される。
【0167】
また、最下部に位置するヒューズエレメント50(50a)の下側(外側)には、第1保持部材260Baの内底面253が近接若しくは接触した状態で配置される。すなわち、内底面253は、ヒューズエレメント50の遮蔽部材220とは反対側(つまり下側)に近接若しくは接触させた状態で配置される。より詳しくは、内底面253は、複数のヒューズエレメント50の遮蔽部材220とは反対側の最外層(ヒューズエレメント50a)の外側に近接若しくは接触させた状態で配置される。
【0168】
ヒューズエレメント50は、通電方向に延びる板状である。ヒューズエレメント50の一対の面(おもて面および裏面)は、上下方向を向く。なお上下方向は、ヒューズエレメント50の面に対して垂直な方向であることから、垂直方向と言い換えてもよい。複数のヒューズエレメント50は、垂直方向に並列に積層されている。
【0169】
ヒューズエレメント50は、互いに対向する第1端部251と第2端部252とを有する。すなわち、言い換えると、ヒューズエレメント50は、通電方向の両端部に配置される第1端部251と第2端部252とを有する。
【0170】
(第1端子、第2端子)
第1端子91は、一方の端部が第1端部251と接続し他方の端部が絶縁ケース260から外部に露出する。具体的に、第1端子91の他方の端部は、絶縁ケース260から通電方向の第1端子91側(+X側)に突出する。
また第2端子92は、一方の端部が第2端部252と接続し他方の端部が絶縁ケース260から外部に露出する。具体的に、第2端子92の他方の端部は、絶縁ケース260から通電方向の第2端子92側(-X側)に突出する。
【0171】
(絶縁部材)
絶縁部材60は、上下方向に並んで複数設けられる。本実施形態では、4つの絶縁部材60が上下方向に並列配置される。各絶縁部材60は、各ヒューズエレメント50に近接若しくは接触させた状態で配置される。絶縁部材60には、幅方向(Y方向)に延びる開口部若しくは分離部が形成されている。
【0172】
複数の絶縁部材60は、複数のヒューズエレメント50の間および外側に接触若しくは近接して配置されている。詳しくは、複数の絶縁部材60は、複数のヒューズエレメント50の遮蔽部材220側(つまり上側)の最外層(ヒューズエレメント50f)の外側(上側)に配置される絶縁部材60を含む。
【0173】
ただしこれに限らず、特に図示しないが、最上部に位置する絶縁部材60は、第2保持部材260Bbと一体に形成されて、第2保持部材260Bbの一部を構成していてもよい。この場合、複数の絶縁部材60は、複数のヒューズエレメント50の間に接触若しくは近接して配置される。
複数の絶縁部材60の各々の開口部若しくは分離部は、垂直方向から見て、互いに重なる。
【0174】
(遮蔽部材)
遮蔽部材220は、ヒューズエレメント50の上方に配置される。遮蔽部材220は、後述する係止部材270による下方移動の規制が解除されることで、押圧手段230の押圧力(応力、若しくは付勢力と言い換えてもよい)により、ヒューズエレメント50を分断するように、絶縁部材60の開口部若しくは分離部に挿入されつつ下方に移動可能である。
【0175】
なお、遮蔽部材220が移動する上下方向は、遮蔽部材220が絶縁部材60の開口部若しくは分離部に挿入される方向でもあることから、挿入方向と言い換えてよい。すなわち、遮蔽部材220は、挿入方向に移動可能である。
【0176】
遮蔽部材220は、凸状部220aと、押圧手段支持部220bと、を有する。
凸状部220aは、通電方向(X方向)と垂直な面(Y-Z面)方向に広がる板状である。凸状部220aの上端部は、押圧手段支持部220bと接続される。押圧手段支持部220bは、上下方向(Z方向)と垂直な面(X-Y面)方向に広がる略板状である。
【0177】
凸状部220aは、押圧手段支持部220bから下方に向けて突出する。詳しくは、凸状部220aは、絶縁部材60の開口部若しくは分離部、および、ヒューズエレメント50に向けて挿入方向に突出する。
【0178】
凸状部220aは、凸状部220aの下端部に配置され幅方向(Y方向)に延びる先端220aaを有する。なお、先端220aaは、刃部220aaと言い換えてもよい。幅方向と垂直な断面(X-Z断面)において、先端220aaは、下方に向けて凸となるV字状をなしている。
【0179】
押圧手段支持部220bは、凹部220baと、第1段部225と、を有する。すなわち、遮蔽部材220は、第1段部225を有する。凹部220baは、押圧手段支持部220bの上面から下方に凹む。
【0180】
図13に示すように、第1段部225は、押圧手段支持部220bの外側面から突出する。具体的に、本実施形態では第1段部225が、押圧手段支持部220bの外側面のうち、通電方向(X方向)の両外側を向く部分に、それぞれ(つまり一対)設けられる。
【0181】
第1段部225は、遮蔽部材220の挿入方向を向いており、具体的には下側を向く。
挿入方向(上下方向)において、第1段部225と第2段部263とは、互いに反対側を向く。挿入方向から見て、第1段部225と第2段部263とは、互いに重ならない。
【0182】
(押圧手段)
図11に示すように、押圧手段230は、遮蔽部材220の上方に配置される。具体的に、押圧手段230は、押圧手段支持部220bの上面と、第3保持部材260Bcの下面との間に配置される。押圧手段230は、弾性変形可能な圧縮コイルバネ等のバネ(付勢部材)であり、本実施形態では、下方へ向かに従い拡径する略円錐状をなしている。
【0183】
押圧手段230の下部は、押圧手段支持部220bの上面に設けられた凹部220baに配置(収容)される。押圧手段230の上部は、第3保持部材260Bcの下面に設けられた押圧手段収容凹部262に配置(収容)される。
【0184】
押圧手段230は、遮蔽部材220を遮蔽部材220の挿入方向(下方)に押圧する。
具体的に、押圧手段230は、上下方向に収縮して弾性変形させられた状態で保護素子250内に組み付けられ、復元変形力による押圧力(応力、付勢力)によって、押圧手段支持部220bを下方に向けて押圧する。
【0185】
(発熱体、給電部材)
図11および図13に示すように、発熱体80は、板状であり、その一対の面(おもて面および裏面)が通電方向(X方向)を向く。発熱体80は、発熱体収容凹部261に配置(収容)される。発熱体80は、一対の発熱体収容凹部261に、それぞれ(つまり一対)設けられる。本実施形態において発熱体80は、係止部材270を加熱し、軟化させる。
発熱体収容凹部261が、第2保持部材260Bbの側壁のうち、通電方向(X方向)と直交する幅方向(Y方向)の内側(中央側)を向く内面に配置されている場合、発熱体80は発熱体収容凹部261に合わせた向きで配置される。すなわちこの場合、発熱体80の一対の面は、幅方向(Y方向)を向く。
発熱体収容凹部261が片方に一つ配置されている場合は、発熱体収容凹部261に発熱体80が一つ設けられる。
給電部材90は、発熱体80に電流を通電する。
【0186】
(係止部材)
本実施形態の係止部材270は、例えば、四角形板状のはんだ素材にAgめっきをすること等により形成されている。係止部材270は、発熱体80と隣り合って配置される。
係止部材270と発熱体80とは、互いに対向して配置されており、本実施形態ではこれら部材が対向する方向が、通電方向(X方向)である。係止部材270の一対の面(おもて面および裏面)は、通電方向(X方向)を向く。幅方向(Y方向)から見て、係止部材270の挿入方向(Z方向)の寸法L2は、係止部材270の通電方向の寸法(発熱体80から係止部材270に向かう方向の寸法)L1よりも大きい。なお特に図示しないが、本実施形態では、係止部材270の幅方向(Y方向)の寸法が、寸法L1、L2よりも大きい。すなわち、係止部材270は、幅方向を長手方向とする長方形板状である。
発熱体収容凹部261が、第2保持部材260Bbの側壁のうち、通電方向(X方向)と直交する幅方向(Y方向)の内側(中央側)を向く内面に配置されている場合、係止部材270は発熱体収容凹部261に合わせた向きで配置される。すなわちこの場合、係止部材270の一対の面は、幅方向(Y方向)を向き、係止部材270と発熱体80とが対向する方向は、幅方向(Y方向)である。またこの場合、通電方向(X方向)から見て、係止部材270の挿入方向(Z方向)の寸法L2は、係止部材270の幅方向(Y方向)の寸法(発熱体80から係止部材270に向かう方向の寸法)L1よりも大きい。
【0187】
係止部材270は、一対の発熱体80と隣接するように配置されて、一対設けられる。
各係止部材270の一対の面(おもて面および裏面)のうち一方は、発熱体80に近接又は接触して配置される。係止部材270の一対の面のうち他方は、遮蔽部材220の押圧手段支持部220bの外側面に近接又は接触して配置される。
発熱体収容凹部261が片方に一つ配置されている場合は、係止部材270は一つの発熱体80と隣接するように配置される。
【0188】
また、係止部材270の挿入方向(上下方向)を向く一対の端面は、第1段部225と第2段部263とに挟まれる。すなわち、係止部材270は、挿入方向において、遮蔽部材220の押圧手段支持部220bと、絶縁ケース260の第2保持部材260Bbとの間に挟まれて、支持されている。このようにして係止部材270は、遮蔽部材220の挿入方向において、絶縁ケース260と遮蔽部材220との間に挟み込まれて係止される。
すなわち、係止部材270は、絶縁ケース260と遮蔽部材220との間に係止され、遮蔽部材220の移動を抑える。
【0189】
図12および図14は、保護素子250またはその一部を示す断面図(X-Z断面図)であり、遮蔽部材220が挿入方向に下方移動した状態を表している。
給電部材90から発熱体80に給電すると、発熱体80が発熱する。発熱体80が発熱すると、この熱により係止部材270が軟化する。係止部材270が軟化することによって、押圧手段230の押圧力により遮蔽部材220が係止部材270を分離しながら移動する。具体的には、例えば図14に示すように、軟化した係止部材270は、発熱体80側と遮蔽部材220側とに分離させられる。これにより、遮蔽部材220の下方移動が可能となる。
【0190】
係止部材270による遮蔽部材220の下方移動の規制が解除されると、遮蔽部材220は、押圧手段230の押圧力により下方へ移動する。遮蔽部材220は、絶縁部材60の開口部若しくは分離部を移動してヒューズエレメント50を切断することによって、ヒューズエレメント50の通電を遮断する。また遮蔽部材220は、ヒューズエレメント50を切断し、切断されたヒューズエレメント50の各部分同士をヒューズエレメント50の通電方向において遮蔽する。
【0191】
図12に示すように、本実施形態では、遮蔽部材220が下方移動することで、凸状部220aの先端220aaが、溝254内に配置される。すなわち、遮蔽部材220の挿入方向の先端220aaは、溝254内に挿入可能である。遮蔽部材220は、全ての絶縁部材60の開口部若しくは分離部内を移動可能であり、本実施形態ではさらに、溝254内を移動可能である。
【0192】
ここで、図15および図16に示すものは、本実施形態の変形例の保護素子250の一部を示す断面図(X-Z断面図)である。この変形例では、前述した係止部材270の代わりに、例えば銅板等からなる一対の係止部材271と、例えばはんだ等からなり、一対の係止部材271間に配置されてこれらの係止部材271を固定する固定部材272と、を用いている。この変形例では、発熱体80が、固定部材272を加熱し、軟化させる。
【0193】
固定部材272が軟化することによって、押圧手段230の押圧力により遮蔽部材220が固定部材272を分離しながら移動する。具体的には、例えば図16に示すように、軟化した固定部材272は、固定部材272を挟む一対の係止部材271のうち、一方の係止部材271側と他方の係止部材271側とに分離させられる。これにより、遮蔽部材220の下方移動が可能となる。
【0194】
本実施形態の保護素子250では、ヒューズエレメント50に定格電流を超えた過電流が流れた場合にヒューズエレメント50が熱的に溶断されて電流経路を遮断させる他、発熱体80に電流を通電して遮蔽部材220の移動を抑制している係止部材270若しくは固定部材272を軟化させ、押圧手段230の押圧力によって遮蔽部材220を移動させて、ヒューズエレメント50を物理的に切断して電流経路を遮断させることが可能である。
【0195】
また本実施形態では、ヒューズエレメント50と絶縁部材60とが近接若しくは接触しており、好ましくは密着する。このため、ヒューズエレメント50と絶縁部材60との間にアーク放電が継続できる空間がなくなり、アーク放電が確実に消滅する。本実施形態において係止部材270、271は、ヒューズエレメント50付近には配置されておらず、絶縁ケース260と遮蔽部材220との間に設けられていて、これら部材に係止されることで遮蔽部材220の下方移動を規制している。
【0196】
したがって、係止部材270、271をヒューズエレメント50や絶縁部材60など、保護素子250の通電時(通常の使用時)に温度上昇する可能性のある部材から離して配置することができる。このため、各部材の温度上昇によって係止部材270、271の機能が影響を受けるようなことが抑えられる。
【0197】
また、押圧手段230の押圧力が、係止部材270、271を介してヒューズエレメント50や絶縁部材60に伝わることもないため、ヒューズエレメント50や絶縁部材60の機能についても長期にわたり良好に維持される。
【0198】
また、遮蔽部材220の凸状部220aの先端220aaを、ヒューズエレメント50および絶縁部材60により近づけて配置することが可能になる。これにより、絶縁ケース260の上下方向(挿入方向、厚さ方向)の外形寸法を小さく抑えることができ、保護素子250の小型化が可能となる。
【0199】
(本実施形態の作用効果)
以上説明した本実施形態のヒューズエレメント50は、上記の第1実施形態と同様、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなる第1エレメント51と、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなり、第1エレメント51と通電経路上で直列に接続された第2エレメント52と、銀若しくは銅、又は、銀若しくは銅を主成分とする合金からなり、第1エレメント51と通電経路上で直列に接続された第3エレメント53と、錫、又は、錫を主成分とする合金からなり、第1エレメント51の一方の端部51aと第2エレメント52の一方の端部とを接続する接続金属86と、第1エレメント51の他方の端部51bと第3エレメント53の一方の端部とを接続する前記接続金属86と、を有する。
この構成によれば、定格電流の1.5倍といった比較的小さい過電流での遮断において、銀、又は、銀を主成分とする合金からなる第1エレメント51(以下、銀箔エレメント51ともいう。)と、錫、又は、錫を主成分とする合金からなる接続金属86(以下、錫の接続金属86ともいう。)との組み合わせにより、300℃程度でのヒューズエレメントの溶断が可能となる。これにより、絶縁ケース10を融点約300℃のプラスチックケースとした場合でも、ケースの破壊を抑制することができる。また、溶断部として、薄い銀箔エレメント51を採用することで、高電圧大電流遮断時の溶融飛散物量を削減することができる。このため、アーク放電の規模を小さくすることができ、絶縁抵抗を高く改善することができる。加えて、バネ遮断方式では、ビッカース硬さ25HV程度の柔らかく薄い銀箔エレメント51を遮断部に採用することで、切断時のバネ応力を軽減することができる。加えて、ヒーター溶断方式では、銀箔エレメント51と錫の接続金属86との組み合わせにより、300℃程度でのヒューズエレメント50の溶断が可能となる。したがって、300℃程度の低温で溶断し、溶融体積が少なく、切断し易いヒューズエレメント50を提供することができる。
また、銀箔エレメント51は、銅よりもはんだとの相性がよく、はんだの溶融によって銀箔が溶けることで、ヒューズエレメント50の通電を遮断することができる。さらに、銀箔は薄いので(体積が小さいので)、過電流遮断時の昇華によって絶縁抵抗が悪化することを抑えることができる。
なお、本発明者の鋭意検討の結果、第1エレメント51に関して、第2エレメント52及び第3エレメント53と同様に銅箔を用いた場合にも同様の作用効果が得られる(300℃程度の低温で溶断し、溶融体積が少なく、切断し易いヒューズエレメントを提供することができる)という考えに至った。すなわち、銅、又は、銅を主成分とする合金からなる第1エレメント51(銅箔エレメント51)と、錫の接続金属86との組み合わせにおいても、銀箔エレメント51と同様の作用効果が得られる。
【0200】
また本実施形態の保護素子250では、上記のヒューズエレメント50を備えることで、過電流遮断とアクティブ遮断とを両立する保護素子250を提供することができる。
【0201】
また本実施形態によれば、ヒューズエレメント50の溶断時に大規模なアーク放電が発生しにくく、絶縁ケース260のサイズを小型軽量化することが可能であると共に、高電圧大電流対応の過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子250を提供することが可能となる。
【0202】
また本実施形態では、発熱体80の発熱によって係止部材270若しくは固定部材272が軟化することで、遮蔽部材220が押圧手段230の押圧力によって係止部材270若しくは固定部材272を分離させつつ、下方へ移動する。遮蔽部材220の下方への移動規制が安定して解除されるため、ヒューズエレメント50の通電をより確実に遮断できる。
【0203】
また本実施形態では、遮蔽部材220が下方移動したときに、凸状部220aの先端220aaが絶縁ケース260の内底面253の溝254内に挿入される。これにより、内底面253に近接若しくは接触されるヒューズエレメント50を、遮蔽部材220によって確実に切断することができる。
【0204】
また本実施形態では、幅方向(Y方向)から見て、係止部材270の通電方向の寸法(発熱体80から係止部材270に向かう方向の寸法)L1よりも、係止部材270の挿入方向の寸法L2が大きい。若しくは、通電方向(X方向)から見て、係止部材270の幅方向の寸法(発熱体80から係止部材270に向かう方向の寸法)L1よりも、係止部材270の挿入方向の寸法L2が大きい。
上記構成によれば、係止部材270の挿入方向のせん断力が高められるため、絶縁ケース260と遮蔽部材220との間で、係止部材270を安定して保持(係止)できる。
【0205】
また本実施形態では、係止部材270、271の挿入方向を向く一対の端面が、第1段部225と第2段部263とに挟持されており、挿入方向から見て、第1段部225と第2段部263とが、互いに重ならない。
上記構成によれば、係止部材270若しくは係止部材271を固定する固定部材272が軟化し、押圧手段230の押圧力によって遮蔽部材220が下方移動したときに、係止部材270、271を保持していた第1段部225と第2段部263とが、挿入方向において確実にすれ違う。このため、第1段部225および第2段部263によって、遮蔽部材220の下方移動が妨げられるようなことがなく、ヒューズエレメント50の電流の遮断が確実に行われる。
【0206】
次に、本実施形態の他の変形例の保護素子250について、図17図21を参照して説明する。図17に示すように、この変形例では、押圧手段支持部220bは、前述した凹部220baと、第1段部225と、に加え、さらに、第3段部226を有する。すなわち、遮蔽部材220は、第1段部225及び第3段部226を有する。
【0207】
図17に示すように、第3段部226は、第1段部225の下方に配置される。第3段部226は、押圧手段支持部220bの外側面から突出する。具体的に、本実施形態では第3段部226が、押圧手段支持部220bの外側面のうち、通電方向(X方向)の両外側を向く部分に、それぞれ(つまり一対)設けられる。なお、図17においては、-X方向の外側を向く部分を示す。
【0208】
第3段部226は、遮蔽部材220の挿入方向を向いており、具体的には上側を向く。
挿入方向(上下方向)において、第3段部226と第1段部225とは、互いに反対側を向く。挿入方向(上下方向)において、第3段部226と第2段部263とは、互いに同じ側を向く。挿入方向から見て、第3段部226と第2段部263とは、互いに重ならない。挿入方向から見て、第3段部226と第1段部225とは、互いに重なる。
【0209】
またこの変形例では、前述した一対の係止部材271のうちの一方が分割されている。
この変形例では、一対の係止部材271のうち、分割されていない係止部材271を「第1係止部材271A」といい、分割されている係止部材271を「第2係止部材271B」ということがある。図19及び図20に示すように、この変形例では、第2係止部材271Bは、幅方向(Y方向)に離間して一対設けられる。この変形例では、固定部材272は、例えばはんだ等からなり、一対の係止部材271間(具体的には、第1係止部材271Aと第2係止部材271Bとの間)に配置されてこれらの係止部材271を固定している。この変形例では、発熱体280が、固定部材272を加熱し、軟化させる。
【0210】
固定部材272が軟化することによって、押圧手段230の押圧力により遮蔽部材220が固定部材272を分離しながら移動する。具体的には、例えば図16に示したように、軟化した固定部材272は、固定部材272を挟む一対の係止部材271のうち、一方の係止部材271側(第1係止部材271A側)と他方の係止部材271側(第2係止部材271B側)とに分離させられる。これにより、遮蔽部材220の下方移動が可能となる。
【0211】
発熱体280は、板状であり、その一対の面(おもて面および裏面)が通電方向(X方向)を向く。この変形例では、絶縁基板281(発熱体280)の一対の面(おもて面および裏面)のうち一方の面には、給電部材90を接続するための一対の第3電極部285と一対の発熱体電極286が形成されている。
【0212】
図18及び図19に示すように、発熱体280は、絶縁基板(基板)281と、絶縁基板281上に積層された抵抗層282と、絶縁基板281上に積層され、前後方向において遮蔽部材220側を向く金属層283と、絶縁層284と、一対の第3電極部285と、一対の発熱体電極286と、を有する。この変形例では、発熱体280が左右方向(Y軸方向)に長く、絶縁基板281、抵抗層282及び絶縁層284も、それぞれ左右方向に長い。
【0213】
詳しくは、図18及び図19に一例として示すように、発熱体280は、絶縁基板281の一対の面(おもて面および裏面)のうち一方の面(この変形例では、第2保持部材260Bbの側壁の内面を向く面)に抵抗層282と、この抵抗層282を覆う絶縁層284と、絶縁基板281の一方の面上に形成され、抵抗層282に電気的に接続される一対の発熱体電極286と、一対の第3電極部285と、絶縁基板281の一対の面(おもて面および裏面)のうち他方の面(この変形例では、遮蔽部材220を向く面)に配置される金属層283と、を有する。
【0214】
この変形例では、一対の発熱体電極286が、左右方向に長く抵抗層282の上部に接続される第1発熱体電極286aと、左右方向に長く抵抗層282の下部に接続される第2発熱体電極286bと、を有する。
第3電極部285は、絶縁基板281の一方の面のうち左右方向の端部に配置される。
第3電極部285は、左右方向に離間して一対設けられる。第3電極部285の少なくとも一部は、絶縁層284に覆われることなく発熱体280の外部に露出する。
【0215】
金属層283は、絶縁基板281の一対の面(おもて面および裏面)のうち他方の面(この変形例では、遮蔽部材220を向く面)に配置される。この変形例では、金属層が、左右方向に長い第1金属部283aと、第1金属部283aから離間し左右方向に長い第2金属部283bと、を有する。第1金属部283aは、一対の第3電極部285のうちの一方(285a)にスルーホールを介して電気的に接続される。第2金属部283bは、一対の第3電極部285のうちの他方(285b)にスルーホールを介して電気的に接続される。
【0216】
この変形例では、一対の第2係止部材271Bのうちの一方は、第1金属部283aにはんだ等の固定部材272で固定される。一対の第2係止部材271Bのうちの他方は、第2金属部283bにはんだ等の固定部材272で固定される。
【0217】
抵抗層282は、通電すると発熱する導電性を有する材料、例えばニクロム、W、Mo、Ru等、又は、これらを含む材料からなる。抵抗層282は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板281上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成し、焼成する等によって形成する。
【0218】
絶縁基板281は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する基板である。絶縁層284は、抵抗層282の保護を図るために設けられる。絶縁層284の材料としては、例えば、セラミックス、ガラスなどの絶縁材料を用いることができる。絶縁層284は、絶縁材料のペーストを塗布し、焼成する方法等によって形成することができる。
【0219】
発熱体280は、保護素子250の通電経路となる外部回路に異常が発生する等によって通電経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって通電され発熱される。
【0220】
図21に示すように、この変形例では、第1係止部材271Aが発熱体280における通電経路の一部を構成する。例えば、通電経路に沿って図12に示す矢印方向に電流が流れる。この変形例では、第1係止部材271Aが遮蔽部材220と共に下方移動することで、通電経路が遮断される。このため、通電を自動的に停止させることができる。図20中符号289は、一対の第2係止部材271Bの間に形成される通電停止部289を示す。
【0221】
この変形例では、第1係止部材271Aが第3段部226上に配置される。このため、通電経路が遮断された場合に、第1係止部材271Aが落下することを抑制することができる。
なお、第1係止部材271Aにおいて、第2係止部材271Bとは反対側の面(遮蔽部材を向く面)には、接着層が設けられてもよい。
【0222】
(変形例)
図22は、本実施形態の他の変形例の保護素子250の一部を示す断面図(X-Z断面図)である。この変形例では、絶縁ケース260の2つの保持部材260Ba、260Bbのうち、一方若しくは両方が、絶縁部材60と一体に形成される。図示の例では、2つの保持部材260Ba、260Bbのうち一方(保持部材260Bb)が、絶縁部材60と一体に形成されている。また、ヒューズエレメント50は単層(1つ)のみ設けられる。
【0223】
上記構成では、絶縁部材60が保持部材260Ba、260Bbと一体化している。このため、部品点数を削減して保護素子250の製造を容易化したり、製造コストを削減したりすることができる。
【0224】
本発明の保護素子は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0225】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例および参考例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0226】
50 ヒューズエレメント
51 第1エレメント
51a 第1端部(第1エレメントの一方の端部)
51b 第2端部(第1エレメントの他方の端部)
52 第2エレメント
53 第3エレメント
80 発熱体
86 接続金属
91 第1端子
92 第2端子
100 保護素子
Z1 第1エレメントの厚み
Z2 第2エレメントの厚み
Z3 第3エレメントの厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22