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特開2024-103448物標探知装置および探知画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103448
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】物標探知装置および探知画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/04 20060101AFI20240725BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
G01S7/04
G06T1/00 285
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194370
(22)【出願日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2023006942
(32)【優先日】2023-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 顕朗
(72)【発明者】
【氏名】横山 達也
【テーマコード(参考)】
5B057
5J070
【Fターム(参考)】
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB12
5B057CB17
5B057CE02
5B057DA06
5B057DA16
5B057DB06
5B057DC16
5J070AB01
5J070AC01
5J070AD01
5J070AE02
(57)【要約】
【課題】物標探知装置から外部の電子機器へ探知画像を出力する際の画像処理技術に関し、出力する探知画像のデータ量を削減可能な物標探知装置および探知画像処理方法を提供する。
【解決手段】レーダ装置1の第1の探知画像生成部11は、反射波に基づいて、ラスター形式のイメージデータからなる第1の探知画像を生成し、物標検出部12は、第1の探知画像から物標を検出し、エッジ処理部13は、検出された物標のエッジを検出し、第2の探知画像生成部14は、検出されたエッジに基づいて、ベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像を生成し、出力部15は、第2の探知画像を外部の電子機器4へ出力する、ことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物標からの反射波に基づいて探知画像を生成する物標探知装置であって、
前記反射波に基づいて、ラスター形式のイメージデータからなる第1の探知画像を生成する第1の探知画像生成手段と、
前記第1の探知画像から物標の像を検出する物標検出手段と、
検出された前記物標の像のエッジを検出するエッジ処理手段と、
検出された前記エッジに基づいて、ベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像を生成する第2の探知画像生成手段と、
前記第2の探知画像を外部の電子機器へ出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする物標探知装置。
【請求項2】
前記エッジ処理手段がエッジの色を所定の色に限定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の物標探知装置。
【請求項3】
前記第1の探知画像から検出された前記物標の像のうち、所望の物標の像をラスター形式のイメージデータのまま抽出した第3の探知画像を生成する第3の探知画像生成手段を備え、
前記第2の探知画像生成手段は、前記所望の物標の像を除いた物標の像についてベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像を生成し、
前記出力手段は、前記所望の物標の像に関する前記第3の探知画像と、前記所望の物標の像を除いた物標の像に関する前記第2の探知画像とを、前記外部の電子機器へ出力する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の物標探知装置。
【請求項4】
前記第1の探知画像から前記物標の像を差し引いたノイズ画像を生成するノイズ画像生成手段を備え、
前記出力手段は、前記第2の探知画像と前記ノイズ画像とを別々に前記外部の電子機器へ出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の物標探知装置。
【請求項5】
物標からの反射波に基づいて探知画像を生成する物標探知装置における探知画像処理方法であって、
前記反射波に基づいて、ラスター形式のイメージデータからなる第1の探知画像を生成し、
前記第1の探知画像から物標の像を検出し、
検出された前記物標の像のエッジを検出し、
検出された前記エッジに基づいて、ベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像を生成し、
前記第2の探知画像を外部の電子機器へ出力する、
ことを特徴とする探知画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物標探知装置および探知画像処理方法に関し、特に、物標探知装置から外部の電子機器へ探知画像を出力する際の画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダアンテナにおいて受信したレーダエコーからなる探知画像(アナログ信号)は、レーダアンテナからインタースイッチへ出力され、インタースイッチを切り替えることで同一船舶内の所望の表示装置に表示されるようになっていた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、近年のデジタル化の進展により、デジタルデータに変換した探知画像をEthernet(登録商標)などの有線ネットワークや、無線LANなどの無線ネットワークを用いて外部の電子機器(例えば、パーソナルコンピュータやレーダアンテナ、スマートフォンなど)へ送信するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-38998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来アナログで出力していた探知画像のデータを、同じ分解能のままサンプリングしてデジタル化すると、データ量が膨大になるという問題があった。これを解決するために、デジタル化して得られるラスターデータを、圧縮アルゴリズムなどを用いて圧縮して出力していたが、この方法ではまだデータ量が多く、圧縮されたデータを復元する際の負荷が大きいため、スマートフォンなどの低スペックの表示装置では受信し難かった。
【0005】
そこで本発明は、物標探知装置から外部の電子機器へ探知画像を出力する際の画像処理技術に関し、出力する探知画像のデータ量を削減可能な物標探知装置および探知画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、物標からの反射波に基づいて探知画像を生成する物標探知装置であって、前記反射波に基づいて、ラスター形式のイメージデータからなる第1の探知画像を生成する第1の探知画像生成手段と、前記第1の探知画像から物標の像を検出する物標検出手段と、検出された前記物標の像のエッジを検出するエッジ処理手段と、検出された前記エッジに基づいて、ベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像を生成する第2の探知画像生成手段と、前記第2の探知画像を外部の電子機器へ出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の物標探知装置において、前記エッジ処理手段がエッジの色を所定の色に限定する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の物標探知装置において、前記第1の探知画像から検出された前記物標の像のうち、所望の物標の像をラスター形式のイメージデータのまま抽出した第3の探知画像を生成する第3の探知画像生成手段を備え、前記第2の探知画像生成手段は、前記所望の物標の像を除いた物標の像についてベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像を生成し、前記出力手段は、前記所望の物標の
像に関する前記第3の探知画像と、前記所望の物標の像を除いた物標の像に関する前記第2の探知画像とを、前記外部の電子機器へ出力する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の物標探知装置において、前記第1の探知画像から前記物標の像を差し引いたノイズ画像を生成するノイズ画像生成手段を備え、前記出力手段は、前記第2の探知画像と前記ノイズ画像とを別々に前記外部の電子機器へ出力する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、物標からの反射波に基づいて探知画像を生成する物標探知装置における探知画像処理方法であって、前記反射波に基づいて、ラスター形式のイメージデータからなる第1の探知画像を生成し、前記第1の探知画像から物標の像を検出し、検出された前記物標の像のエッジを検出し、検出された前記エッジに基づいて、ベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像を生成し、前記第2の探知画像を外部の電子機器へ出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1および請求項5に記載の発明によれば、ラスター形式のイメージデータからなる第1の探知画像から物標の像のみを検出し、さらにその物標の像のエッジを検出し、そのエッジに基づいて生成したベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像を外部の電子機器へ出力するので、ラスター形式の第1の探知画像によって全情報を出力する場合に比べて、送信データ量を削減することが可能となる。また、ベクター形式のイメージデータは、拡大縮小しても画質が損なわれないので、スマートフォンなど多種多様な解像度の電子機器に対応することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、エッジの色が所定の色に限定されるので、送信データ量を削減することが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、所望の物標の像のみラスター形式のイメージデータからなる第3の探知画像によって出力し、それ以外の物標の像はベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像によって出力するので、ラスター形式の第1の探知画像によって全情報を出力する場合に比べて、送信データ量を削減することが可能となる。また、エッジの検出が難しく、第2の探知画像からは抜け落ちてしまう小物標の情報についても、第3の探知画像を生成することによって、送信データ量を低減しつつ、出力することが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、物標の像に関する第2の探知画像だけでなく、ノイズに関するノイズ画像をも外部の電子機器へ出力することが可能となる。また、ノイズ画像を第2の探知画像と別々に出力するので、ノイズ画像については出力する際の信号強度を削減でき、送信データ量を低減しつつ、ノイズ画像を出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係るレーダシステムの概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1に係るレーダ装置において行われる探知画像処理の手順を示す工程図である。
図4】本発明の実施の形態2に係るレーダ装置の概略構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施の形態2に係るレーダ装置において行われる探知画像処理の手順を示す工程図である。
図6】本発明の実施の形態3に係るレーダ装置の概略構成を示すブロック図である。
図7】本発明の実施の形態3に係るレーダ装置において行われるノイズ画像の生成および出力の手順を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るレーダ装置(物標探知装置)1を用いたレーダシステムの概略構成を示す模式図である。レーダシステムは、レーダ装置1と、LANケーブル2と、HUB3と、電子機器4とを備える。
【0018】
レーダ装置1は、本発明の物標探知装置の一実施形態であり、レーダ信号を送信するとともにレーダ信号の反射信号であるレーダエコーを受信してレーダエコーに基づいて自機の周囲に存在する物標を検出する機序である。本実施の形態では、レーダ装置1が船舶に搭載される場合を例に挙げて説明する。
【0019】
LANケーブル2は、Ethernet(登録商標)などの構内ネットワークを構成するために、機器同士を接続するためのケーブルである。本実施の形態においては、レーダ装置1とHUB3との間、HUB3と電子機器4との間を接続するために用いられる。
【0020】
HUB3は、複数のLANケーブル2を接続するための端子(ポート)が並んだ機器で、あるLANケーブル2から流れてきた信号を他のLANケーブル2に流すことで相互に通信できるようにする。
【0021】
電子機器4は、レーダ装置1の出力部(出力手段)15から出力される画像を表示する装置である。電子機器4の種類は特に限定されないが、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等が挙げられる。なお、本実施の形態では、レーダ装置1が搭載されている船舶内に電子機器4が設置され、レーダ装置1と電子機器4とが有線通信を利用して接続される場合を例に挙げて説明するが、レーダ装置1と電子機器4とを無線通信を利用して接続してもよい。また、レーダ装置1に衛星通信装置を接続し、レーダ装置1が搭載されている船舶とは別の場所に存在する電子機器4に対して探知画像を送信できるようにしてもよい。
【0022】
図2は、本実施の形態に係るレーダ装置1の概略構成を示すブロック図である。レーダ装置1は、レーダアンテナ17、送受信ユニット18、AD変換部19、第1の探知画像生成部(第1の探知画像生成手段)11、物標検出部(物標検出手段)12、エッジ処理部(エッジ処理手段)13、第2の探知画像生成部(第2の探知画像生成手段)14、出力部15を有する。
【0023】
レーダアンテナ17は、パルス状の電波としてレーダ信号を無線送信する(言い換えると、放射する)とともに、送信/放射した電波の反射波であるレーダエコー(具体的には、レーダ信号の反射信号)を捕捉する機能を備える送受信器である。
【0024】
送受信ユニット18は、レーダ信号を生成するとともに生成したレーダ信号をレーダアンテナ17を介して送信し、また、送信したレーダ信号の反射信号であるレーダエコーをレーダアンテナ17を介して受信する機能を備える通信回路である。送受信ユニット18は、所定の時間間隔(具体的には、レーダアンテナ17の水平回転周期よりも短い時間間
隔)でレーダ信号を送信するとともにレーダエコーを受信して出力する。
【0025】
AD変換部19は、送受信ユニット18から供給されるレーダエコーをアナログ信号からデジタル信号に変換し、エコー信号として出力する。なお、AD変換部19から出力されるエコー信号に対して、必要に応じて、所定の信号処理が施されるようにしてもよい。具体的には、例えば、感度調整処理や、海面反射、陸地反射、雨雪の反射などによって生じるクラッタ等のノイズの除去処理が施されるようにしても良い。
【0026】
本実施の形態に係るレーダ装置1においては、物標からの反射波に基づいて、図3に示すような探知画像処理が行われる。まず、第1の探知画像生成部11において、反射波に基づいてラスター形式のイメージデータからなる第1の探知画像を生成し、物標検出部12において、第1の探知画像から物標の像を検出する(ステップ1)。ここで、ラスター形式のイメージデータとは、平面を格子状(グリッド)に区切り、正方形のマス目(セル、ピクセル、画素)に情報を持たせた画像データをいう。レーダ装置1においては、反射波であるレーダエコーからなる探知画像(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、そこから得られたエコーデータに基づき生成される画像データがラスター形式のイメージデータであり、第1の探知画像に当たる。
【0027】
次に、エッジ処理部13において、検出された前記物標の像のエッジ(外周)を検出する(ステップ2)。物標の像のエッジを検出するのは、以下の理由による。すなわち、ラスター形式のイメージデータは、1ピクセル毎に信号強度が異なるため、物標の像に関する全ての情報(エッジおよびエッジ内の情報)を後述するベクター形式に変更することは難しく、また、無理に変更しようとするとデータ量が減りがたいからである。
【0028】
エッジ処理部13は、エッジの色を所定の色に限定する(ステップ3)。所定の色としては、例えば、エッジ内の色の反射強度の平均値や、エッジ内の色の反射強度の最大値が挙げられる。また、目標検知の際には、中心点(自機のアンテナの位置)から最も距離が短いエッジ上の点Pとの距離方位を測定するため、そのような点Pの色を所定の色としても良い(図3のステップ3の(a)参照)。そして、所定の色は、データ量削減の点から、1色に限定することが好ましい。より詳細な色情報が必要な場合は、例えば、エッジ内を4分割して、分割した各区分の色の反射強度の平均値やその最大値等をとり、4つの色情報としても良い(図3のステップ3の(b)参照)。
【0029】
次に、第2の探知画像生成部14において、検出されたエッジに基づいて、ベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像を生成する(ステップ4)。ベクター形式のイメージデータには、エッジに関する情報(位置、色等)がエッジ毎に記載される。また、ベクター形式のイメージデータは、例えば、図3に示す通り、汎用のフォーマットであるSVG形式を用いて表示することができる。汎用のSVG形式を用いることにより、汎用のGIS(地理情報システム)ソフトウエアやドローイングソフトウエア等で処理することができる。また、ベクター形式のイメージデータには、attribute(属性)を付与できるという特性があるため、例えば、固体化空中線で付与できるドップラー情報や、目標の緯度経度等をattribute(属性)として付与したり、ベクター形式のイメージデータとAIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)から取得した位置情報が一致している場合はAIS情報をattribute(属性)として付与したりすることが可能となる。
【0030】
以上のようにして得られた第2の探知画像は、出力部15から外部の電子機器4へ出力される(ステップ5)。
【0031】
以上説明した通り、本実施の形態に係るレーダ装置1によれば、ラスター形式のイメー
ジデータからなる第1の探知画像から物標の像のみを検出し、さらにその物標の像のエッジを検出し、そのエッジに基づいて生成したベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像を外部の電子機器4へ出力するので、ラスター形式の第1の探知画像によって全情報を出力する場合に比べて、送信データ量を削減することが可能となる。また、ベクター形式のイメージデータは、拡大縮小しても画質が損なわれないので、スマートフォンなど多種多様な解像度の電子機器4に対応することが可能となる。また、第2の探知画像は物標の像のエッジの情報のみに基づいて生成されるので、ワイヤーフレーム表現が可能となり、例えば、海図の陸地とエコーが一致するか否かの確認を容易に行うことが可能となる。
【0032】
さらに、本実施の形態に係るレーダ装置1によれば、エッジの色が所定の色に限定されるので、送信データ量を削減することが可能となる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るレーダ装置1について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成については、同じ符号を用いて詳しい説明は省略する。
【0034】
図4は、本実施の形態に係るレーダ装置1の概略構成を示すブロック図である。図4に示すとおり、レーダ装置1は、第1の探知画像から検出された物標の像のうち、所望の物標の像をラスター形式のイメージデータのまま抽出した第3の探知画像を生成する第3の探知画像生成部(第3の探知画像生成手段)16をさらに備え、第2の探知画像生成手段14において、所望の物標の像を除いた物標の像についてベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像を生成し、出力手段15により、所望の物標の像に関する第3の探知画像と、所望の物標の像を除いた物標の像に関する第2の探知画像とを、外部の電子機器4へ出力する。すなわち、本実施の形態は、所望の物標の像についてはラスター形式のまま出力し、それ以外の物標の像についてはベクター形式に変換して出力する点において、実施の形態1と異なる。
【0035】
このように、ベクター形式の第2の探知画像とラスター形式の第3の探知画像の両方の画像を出力するケースとしては、例えば、船舶などの主要な物標とともに、漁船の網、あば、ボンデンなどの小物標をも探知したい場合が想定される。この場合、小物標の像についてはラスター形式の第3の探知画像を生成し、主要な物標の像についてはベクター形式の第2の探知画像を生成することになる。
【0036】
小物標の像は、不鮮明でエッジの検出が難しいため、第2の探知画像から抜け落ちてしまう傾向がある。そのため、小物標の像については、色の濃淡、即ち、輝度の詳細なデータを含むラスター形式のイメージデータからなる第3の探知画像を生成することが必要となる。
【0037】
図5は、本実施の形態に係るレーダ装置1において行われる探知画像処理の手順を示す工程図である。図5に示す例では、第1の探知画像生成部11において生成された第1の探知画像から、物標検出部12において、物標の像1および2を検出し(ステップ1)、所望の物標の像1については、第3の探知画像生成部16において、ラスター形式のイメージデータからなる第3の探知画像を生成し(ステップ4α)、物標の像2について、エッジ処理部13においてエッジ処理を行い(ステップ2およびステップ3)、第2の探知画像生成部14において、ベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像を生成し(ステップ4)、物標の像1に関する第3の探知画像と物標の像2に関する第2の探知画像とを出力部15によって出力する。
【0038】
以上説明した通り、本実施の形態に係るレーダ装置1によれば、所望の物標の像のみラ
スター形式のイメージデータからなる第3の探知画像によって出力し、それ以外の物標の像はベクター形式のイメージデータからなる第2の探知画像によって出力するので、ラスター形式の第1の探知画像によって全情報を出力する場合に比べて、送信データ量を削減することが可能となる。また、エッジの検出が難しく、第2の探知画像からは抜け落ちてしまう小物標の情報についても、第3の探知画像を生成することによって、送信データ量を低減しつつ、出力することが可能となる。
【0039】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係るレーダ装置1について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成については、同じ符号を用いて詳しい説明は省略する。
【0040】
実施の形態1および2では、送信データ量の削減のため、第1の探知画像から検出される物標の情報のみが外部の電子機器4へ出力され、物標以外の情報、例えばノイズの情報は出力されない。しかしながら、ノイズの情報が必要となる用途も存在する。
【0041】
上記問題を解決するために、本実施の形態に係るレーダ装置1は、図6に示すように、ノイズ画像を生成するノイズ画像生成部(ノイズ画像生成手段)110を備え、ノイズ画像と第2の探知画像とを外部の電子機器4へ出力する。すなわち、本実施の形態は、物標の像に関する第2の探知画像だけでなく、ノイズに関するノイズ画像をも外部の電子機器4へ出力する点において、実施の形態1と異なる。
【0042】
ノイズ画像に含まれるノイズとしては、例えば、海面反射、陸地反射、雨雪の反射などによって生じるクラッタが挙げられる。通常、クラッタなどのノイズは、不要なエコーとして除去される。しかしながら、特殊な用途、例えば、海面の状況を観測することで、海流を計測し、運航の最適化を図る場合や、自動船舶航行の場合などでは、ノイズを積極的に活用する必要がある。このような場合に、ノイズ画像を生成し、出力することが有効となる。
【0043】
図7は、本実施の形態に係るレーダ装置1において行われるノイズ画像の生成および出力の手順を示す工程図である。図7に示す例では、ノイズ画像は、ノイズ画像生成部110において、第1の探知画像から物標の像1~3を差し引くことによって生成される(ステップ6)。ノイズ画像のデータ形式は、ラスター形式である。
【0044】
一方、物標の像1~3については、実施の形態1において説明した手順により、第2の探知画像が生成される(ステップ2~4,図7に不図示)。
【0045】
このように生成された物標の像1~3に関する第2の探知画像とノイズ画像とは、別々に、出力部15から外部の電子機器4へ出力される(ステップ5とステップ7)。これにより、送信データ量の削減が可能となる。その理由を、図7のAスコープ波形を用いて説明する。
【0046】
図7に示す例では、物標の像1~3に関するデータは、Aスコープ波形1において極大値(ピーク)1~3を形成し、最大約8ビットの信号強度を有する。これは、物標の像1~3を含むデータを外部の電子機器4へ出力するためには、約8ビットの信号強度が必要になることを示す。
【0047】
一方、ノイズに関するデータは、Aスコープ波形2、すなわちAスコープ波形1からピーク1~3を取り除いた残りの波形部分を形成し、約4ビット以下の信号強度を有する。これは、ノイズに関するデータを外部の電子機器4へ出力するためには、約4ビットの信号強度で足りることを示す。
【0048】
すなわち、物標の像1~3に関するデータとノイズに関するデータとを一緒に出力する場合、終始約8ビットの信号強度で出力しなければならないところ、物標の像1~3に関するデータとノイズに関するデータとを別々に出力することによって、ノイズ画像のデータを出力する際は約4ビットの信号強度にダイナミックレンジを短縮することができるため、トータルの送信データ量を削減することが可能となる。
【0049】
ノイズ画像と第2の探知画像とを受信する電子機器4は、その処理能力や必要に応じて、受信したノイズ画像と第2の探知画像の両方の画像を表示するか、第2の画像のみを表示するか、ノイズ画像のみを表示するかを選択する。
【0050】
以上説明した通り、本実施の形態に係るレーダ装置1によれば、物標の像に関する第2の探知画像だけでなく、ノイズに関するノイズ画像をも外部の電子機器4へ出力することが可能となる。また、ノイズ画像を第2の探知画像と別々に出力するので、ノイズ画像については出力する際の信号強度を削減でき、送信データ量を低減しつつ、ノイズ画像を出力することが可能となる。
【0051】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、船舶用のレーダ装置を例に説明したが、本発明の物標探知装置は、船舶用のレーダ装置に限られない。例えば、車載用のレーダ装置であっても良いし、物標検出のために音波を使用するソナーであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 レーダ装置(物標探知装置)
11 第1の探知画像生成部(第1の探知画像生成手段)
12 物標検出部(物標検出手段)
13 エッジ処理部(エッジ処理手段)
14 第2の探知画像生成部(第2の探知画像生成手段)
15 出力部(出力手段)
16 第3の探知画像生成部(第3の探知画像生成手段)
17 レーダアンテナ
18 送受信ユニット
19 AD変換部
110 ノイズ画像生成部(ノイズ画像生成手段)
2 LANケーブル
3 HUB
4 電子機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7