(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103449
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023195094
(22)【出願日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】10-2023-0008871
(32)【優先日】2023-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】鄭 惠允
(72)【発明者】
【氏名】鄭 東俊
(72)【発明者】
【氏名】蔡 現植
(72)【発明者】
【氏名】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】姜 心忠
(72)【発明者】
【氏名】沈 大振
(72)【発明者】
【氏名】李 銀貞
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD02
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サイドマージン部の厚さを薄層化しながらも積層型電子部品の耐湿信頼性を確保する。
【解決手段】積層型電子部品において、サイドマージン部141、142は、内部電極121、122に隣接する第1領域141a、142a及びサイドマージン部の外側に隣接する第2領域141b、142bを含み、サイドマージン部の第1、第3方向の断面の第1方向の中央領域のうち、第1領域に位置する少なくとも1つの地点と、第2領域に位置する少なくとも1つの地点をラマン分光法により分析したラマンスペクトルは、450cm
-1~600cm
-1のラマンシフトでピークXが現れ、上記第1領域のラマンスペクトルのうち上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値をλ(cm
-1)とするとき、上記第2領域のラマンスペクトルのうち上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値はλ+0.75cm
-1以上である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層、及び前記誘電体層を挟んで第1方向に交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極を含み、前記第1方向に向かい合う第1面及び第2面、前記第1面及び第2面と接続され、第2方向に向かい合う第3面及び第4面、前記第1面から第4面と接続され、第3方向に向かい合う第5面及び第6面を含む本体と、
前記第3面及び第4面に配置される外部電極と、
前記第5面及び第6面に配置されるサイドマージン部を含み、
前記サイドマージン部は、前記内部電極に隣接する第1領域及び前記サイドマージン部の外側に隣接する第2領域を含み、
前記サイドマージン部の第1方向及び第3方向の断面の第1方向の中央領域のうち、前記第1領域に位置する少なくとも1つの地点と、前記第2領域に位置する少なくとも1つの地点をラマン分光法により分析したラマンスペクトルは450cm-1~600cm-1のラマンシフトでピークXが現れ、
前記第1領域のラマンスペクトルのうち前記ピークXが現れるラマンシフトの最小値をλ(cm-1)とするとき、前記第2領域のラマンスペクトルのうち前記ピークXが現れるラマンシフトの最小値はλ+0.75cm-1以上である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記第2領域のラマンスペクトルのうち、前記ピークXが現れるラマンシフトの最小値はλ+1.2cm-1以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第1領域のラマンスペクトルで前記ピークXが現れるラマンシフトの平均値をλ1とし、前記第2領域のラマンスペクトルで前記ピークXが現れるラマンシフトの平均値をλ2とするとき、λ2>λ1を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記サイドマージン部の第1方向及び第3方向の断面の第1方向の中央領域において第3方向に等間隔の複数の仮想線のうち互いに隣接する2つの仮想線において、
1つの前記仮想線上に位置する互いに等間隔の4つの地点のラマンスペクトルで前記ピークXが現れるラマンシフトの平均値はλmであり、もう一つの前記仮想線上に位置する互いに等間隔の4つの地点のラマンスペクトルで前記ピークXが現れるラマンシフトの平均値がλm+0.5cm-1以上を満たし、
前記第1領域及び第2領域の間の境界は、前記互いに隣接する2つの仮想線の間の中央に位置する、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記サイドマージン部の第1方向及び第3方向の断面は、前記サイドマージン部の第2方向の中央で切断した断面である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記サイドマージン部の第1方向の中央領域で測定した第1領域の第3方向の大きさをT1、前記サイドマージン部の第1方向の中央領域で測定した第2領域の第3方向の大きさをT2とするとき、T2/T1は0.6以上2.2以下を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記サイドマージン部は、BaTiO3系を主成分として含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記サイドマージン部は、Snをさらに含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記サイドマージン部の第3方向の平均大きさは15μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層の少なくとも1つの平均厚さは0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記第1内部電極の少なくとも1つの平均厚さは0.4μm以下であり、
前記第2内部電極の少なくとも1つの平均厚さは0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記本体の第1方向の中央領域に対応する前記サイドマージン部の領域の第3方向の大きさをtm1、前記第1方向を基準として最外側に配置された内部電極の末端と接する前記サイドマージン部の領域の第3方向の大きさをtm2とするとき、tm2/tm1は0.9以上1.0以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記本体の第1方向の中央領域に対応する前記サイドマージン部の領域の第3方向の大きさをtm1、前記本体のエッジと接する前記サイドマージン部の領域の厚さをtm3とするとき、tm3/tm1は0.9以上1.0以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記第1内部電極は、前記第3面、第5面及び第6面と接続され、
前記第2内部電極は、前記第4面、第5面及び第6面と接続される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。最近、コンピュータ、モバイル機器など、各種電子機器が小型化、高出力化され、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化の要求が増大している。
【0004】
積層セラミックキャパシタは、一般的に、誘電体層及び内部電極が交互に配置される本体と、上記本体の側面に配置されて上記本体を保護するサイドマージン部を含むことができる。
【0005】
一方、近年、積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を達成するためにサイドマージン部の薄層化が進められているが、サイドマージン部の厚さが薄くなるほど積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性が低下するという問題点が発生することがある。
【0006】
特に、サイドマージン部の厚さを薄層化するために、別途の誘電体シートを本体の側面に積層する工法を適用する場合、本体とサイドマージン部の界面、特に誘電体層及び内部電極が交互に配置されて容量を形成する容量形成部とサイドマージン部との間の界面が内部応力差によって広がる現象が発生することがあり、上記界面に外部の水分や水素などが浸透して積層セラミックキャパシタの信頼性を劣化させることがある。
【0007】
したがって、サイドマージン部の内部応力を制御することで、本体とサイドマージン部との間の界面での残留応力ミスマッチ(mismatch)を最小化して、積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性を向上させるための研究が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の様々な目的の一つは、サイドマージン部の厚さを薄層化しながらも積層型電子部品の耐湿信頼性を確保することである。
【0009】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、誘電体層、及び上記誘電体層を挟んで第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、上記第1方向に向かい合う第1面及び第2面、上記第1面及び第2面と接続され、第2方向に向かい合う第3面及び第4面、上記第1面から第4面と接続され、第3方向に向かい合う第5面及び第6面を含む本体、上記第3面及び第4面に配置される外部電極及び上記第5面及び第6面に配置されるサイドマージン部を含み、上記サイドマージン部は、上記内部電極に隣接する第1領域及び上記サイドマージン部の外側に隣接する第2領域を含み、上記サイドマージン部の第1及び第3方向の断面の第1方向の中央領域のうち、上記第1領域に位置する少なくとも1つの地点と上記第2領域に位置する少なくとも1つの地点をラマン分光法を介して分析したラマンスペクトルは、450cm-1~600cm-1のラマンシフトでピークXが現れ、上記第1領域のラマンスペクトルのうち上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値をλ(cm-1)とするとき、上記第2領域のラマンスペクトルのうち上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値はλ+0.75cm-1以上である積層型電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の様々な効果の一つとして、サイドマージン部の厚さを薄層化しながらも積層型電子部品の耐湿信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図2】
図1の本体及びサイドマージン部を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【
図3】
図1のI-I’線に沿った切断断面を概略的に示した断面図である。
【
図4】
図1のII-II’線に沿った切断断面を概略的に示した断面図である。
【
図6】BaTiO
3系のラマンスペクトルを概略的に示した図面である。
【
図7】BaTiO
3系のラマンスペクトルで現れるピークと圧縮応力(compressive strain)との関係を示した図面である。
【
図8】第1領域及び第2領域に位置する複数の地点をラマン分光法により分析したラマンスペクトルにおいてピークXが現れるラマンシフトを示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上に同一符号で示される要素は同一要素である。
【0014】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0015】
図面において、第1方向は厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0016】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図であり、
図2は、
図1の本体及びサイドマージン部を分解して概略的に示した分解斜視図であり、
図3は、
図1のI-I’線に沿った切断断面を概略的に示した断面図であり、
図4は、
図1のII-II’線に沿った切断断面を概略的に示した断面図であり、
図5は、
図4のK1領域拡大図であり、
図6は、BaTiO
3系のラマンスペクトルを概略的に示した図面であり、
図7は、BaTiO
3系のラマンスペクトルで現れるピークと圧縮応力(compressive strain)との関係を示した図面であり、
図8は、第1領域及び第2領域に位置する複数の地点をラマン分光法により分析したラマンスペクトルにおいてピークXが現れるラマンシフトを示した図面である。
【0017】
以下、
図1~
図8を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品100について詳細に説明する。また、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor、以下「MLCC」という)について説明するが、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な積層型電子部品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用されることができる。
【0018】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111、及び上記誘電体層を挟んで第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極121、122を含み、上記第1方向に向かい合う第1面及び第2面1、2、上記第1面及び第2面と接続され、第2方向に向かい合う第3面及び第4面3、4、上記第1面から第4面と接続され、第3方向に向かい合う第5面及び第6面5、6を含む本体110、上記第3面及び第4面に配置される外部電極131、132及び上記第5面及び第6面に配置されるサイドマージン部141、142を含み、上記サイドマージン部は、上記内部電極に隣接する第1領域141a、142a及び上記サイドマージン部の外側に隣接する第2領域141b、142bを含み、上記サイドマージン部141、142の第1及び第3方向の断面の第1方向の中央領域のうち上記第1領域141a、142aに位置する少なくとも1つの地点と上記第2領域141b、142bに位置する少なくとも1つの地点をラマン分光法により分析したラマンスペクトルは、450cm-1~600cm-1のラマンシフトでピークXが現れ、上記第1領域141a、142aのラマンスペクトルのうち上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値をλ(cm-1)とするとき、上記第2領域141b、142bのラマンスペクトルのうち上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値はλ+0.75cm-1以上であり得る。
【0019】
上述したように、本体110は、誘電体層111と内部電極121、122が交互に積層された構造により、サイドマージン部141、142に比べて比較的高い引張応力(tensile strain)が発生することがある。これにより、本体110とサイドマージン部141、142との間の応力ミスマッチ(mismatch)により本体110とサイドマージン部141、142との間の界面が広がる現象が発生することがあり、本体110とサイドマージン部141、142との間の界面を介して外部の水分及び/または水素が浸透して積層型電子部品100の信頼性が低下することがある。
【0020】
一方、本発明の一実施形態によるサイドマージン部141、142は、本体110に隣接する第1領域141a、142aが第2領域141b、142bに比べて高い引張応力を有することで、本体110とサイドマージン部141、142との間の応力ミスマッチを最小化し、これにより本体110とサイドマージン部141、142との間の界面が広がる現象を防止することができる。
【0021】
一方、サイドマージン部141、142に残留する引張応力が高いほど、外部衝撃によってクラック(crack)が発生しやすくなるという問題点が発生することがあるが、本発明の一実施形態によるサイドマージン部141、142は、上記サイドマージン部の外側に隣接する第2領域141b、142bが第1領域141a、142aに対する圧縮応力(compressive strain)を有することで、外部衝撃によるクラックの発生を防止し、積層型電子部品100の信頼性を向上させることができる。
【0022】
以下、本発明の一実施形態による積層型電子部品100に含まれる各構成についてより詳細に説明する。
【0023】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、
図2に示されたように本体110は六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮やエッジ部の研磨により、本体110は完全な直線を有する六面体状ではなく、実質的に六面体状を有することができる。
【0024】
本体110は、第1方向に向かい合う第1面及び第2面1、2、上記第1面及び第2面1、2と接続され、第2方向に向かい合う第3面及び第4面3、4、第1面から第4面1、2、3、4と接続され、第3方向に向かい合う第5面及び第6面5、6を有することができる。
【0025】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていることができる。本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0026】
誘電体層111は、セラミック粉末、有機溶剤及びバインダーを含むセラミックスラリーを製造し、上記スラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設けた後、上記セラミックグリーンシートを焼成することで、形成することができる。セラミック粉末は十分な静電容量が得られる限り特に制限されないが、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを用いることができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)またはBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0027】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に配置されることができ、例えば、互いに異なる極性を有する一対の電極である第1内部電極121と第2内部電極122が誘電体層111を挟んで第1方向に交互に配置されることができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、その間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0028】
第1内部電極121は、第3面、第5面及び第6面3、5、6と接続され、第4面4と離隔して配置されることができる。また、第2内部電極122は、第4面、第5面、第6面4、5、6と接続され、第3面3と離隔して配置されることができる。
【0029】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上であることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0030】
内部電極121、122は、セラミックグリーンシート上に所定厚さで導電性金属を含む内部電極用導電性ペーストを塗布して焼成することで形成されることができる。内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0031】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに交互に配置される第1及び第2内部電極121、122を含んで容量が形成される容量形成部Acと容量形成部Acの第1方向に向かい合う両端面上にそれぞれ配置される第1カバー部112及び第2カバー部113を含むことができる。カバー部112、113は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。カバー部112、113は内部電極を含まないことを除いては、誘電体層111と同じ誘電体組成を有することができるが、本発明がこれに限定されるものではなく、カバー部112、113は誘電体層111とは異なる誘電体組成を有することもできる。
【0032】
外部電極131、132は、本体110の第3面及び第4面3、4に配置されることができ、上記第1面、第2面、第5面及び第6面の一部上に延びることができる。また、外部電極131、132は、第1内部電極121と接続される第1外部電極131及び第2内部電極122と接続される第2外部電極132を含むことができる。
【0033】
外部電極131、132は、本体110の第3面及び第4面3、4を導電性金属及びガラスを含む外部電極用導電性ペーストにディッピング(dipping)した後、焼成することで形成されることができる。または、導電性金属及びガラスを含むシートを転写する方式で形成されることもできる。
【0034】
外部電極131、132に含まれる導電性金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)及び/またはこれを含む合金などを含むことができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0035】
また、図示してはいないが、第1外部電極131上には第1めっき層が配置されることができ、第2外部電極上には第2めっき層が配置されることができる。めっき層は実装特性を向上させることができる。上記めっき層の種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)及び/またはこれを含む合金などを含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることもできる。上記めっき層は、例えば、ニッケル(Ni)めっき層またはスズ(Sn)めっき層であることができ、ニッケル(Ni)めっき層及びスズ(Sn)めっき層が順次形成された形態であることもできる。また、めっき層は、複数のニッケル(Ni)めっき層及び/または複数のスズ(Sn)めっき層を含むこともできる。
【0036】
図面では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、これに限定されるものではなく、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0037】
サイドマージン部141、142は、第5面及び第6面5、6に配置されることができる。上記サイドマージン部は、上記第5面に配置される第1サイドマージン部141及び上記第6面に配置される第2サイドマージン部142を含むことができる。サイドマージン部141、142は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0038】
サイドマージン部141、142は、BaTiO3系を主成分として含むことができ、ここでBaTiO3系とは、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)またはBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。サイドマージン部141、142は、誘電体層111と実質的に同じ材料を含むことができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0039】
以下では、サイドマージン部141、142の第1領域141a、142a及び第2領域141b、142bに関してより詳細に説明する。一方、
図5は、第2サイドマージン部142の第1領域142a及び第2領域142bを示しているが、第1サイドマージン部141と第2サイドマージン部142は、第3方向に互いに対称の関係にあるため、
図5による説明は、第1サイドマージン部141に関する説明を含むものと見なす。
【0040】
サイドマージン部141、142は、本体110に隣接する第1領域141a、142a及び上記サイドマージン部の外側に隣接する第2領域141b、142bを含むことができる。本発明の一実施形態によると、サイドマージン部141、142の第1及び第3方向の断面の第1方向の中央領域のうち、第1領域141a、142aに位置する少なくとも1つの地点と第2領域141b、142bに位置する少なくとも1つの地点をラマン分光法により分析したラマンスペクトルは、450cm-1~600cm-1のラマンシフトでピークXが現れることができる。ここで、サイドマージン部141、142の第1及び第3方向の断面とは、例えば、サイドマージン部141、142の第2方向の中央で切断した第1及び第3方向の断面であることができる。
【0041】
例えば、
図4及び
図5を参照すると、第1領域142aに位置する少なくとも1つの地点P11~P16、P21~P26、P31~P36、P41~P46をラマン分光法により分析したラマンスペクトルは、450cm
-1~600cm
-1のラマンシフトでピークXが現れ、第2領域142bに位置する少なくとも1つの地点P17~P112、P27~P212、P37~P312、P47~P412をラマン分光法により分析したラマンスペクトルは、450cm
-1~600cm
-1のラマンシフトでピークXが現れることができる。
【0042】
図7を参照すると、BaTiO
3系のラマンスペクトルでは、250cm
-1、360cm
-1、514cm
-1、716cm
-1付近のラマンシフトでピークが現れることができ、250cm
-1、360cm
-1、514cm
-1、716cm
-1付近での4つのピークは、それぞれA
1(TO)、B
1+E(TO)、A
1(TO)+E(TO)、A
1(LO)+E(LO)振動に由来することができる。ここで、上記ピークXとは、450cm
-1~600cm
-1のラマンシフトで現れ、A
1(TO)+E(TO)振動に由来するピークを意味する。
【0043】
本発明の一実施形態によると、第1領域141a、142aのラマンスペクトルのうち、上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値をλ(cm-1)とするとき、第2領域141b、142bのラマンスペクトルのうち、上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値はλ+0.75cm-1以上であり得る。以下、上記ピークXが現れるラマンシフトとは、450cm-1~600cm-1のラマンシフトで最大強度のピークXが現れるラマンシフト値を意味する。
【0044】
ここで、第1領域141a、142aのラマンスペクトルのうち、上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値λとは、サイドマージン部141、142の第1及び第3方向の断面の第1方向の中央領域のうち、第1領域141a、142aに位置する第1方向に等間隔であり、第3方向に等間隔である複数の地点P11~P16、P21~P26、P31~P36、P41~P46をラマン分光法により分析したとき、上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値を意味することができる。
【0045】
また、第2領域141b、142bのラマンスペクトルのうち上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値とは、サイドマージン部141、142の第1及び第3方向の断面の第1方向の中央領域のうち第2領域141b、142bに位置する第1方向に等間隔であり、第3方向に等間隔である複数の地点P17~P112、P27~P212、P37~P312、P47~P412をラマン分光法により分析したとき、上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値を意味することができる。上記第1領域及び第2領域に位置する複数の地点の個数は特に限定する必要はなく、上記サイドマージン部の第1方向の大きさ及び第3方向の大きさに応じて適宜選択されることができる。
【0046】
図7を参照すると、上記ピークXが現れるラマンシフトは、BaTiO
3系物質に残留する応力に応じて変わることができる。例えば、比較的引張応力(tensile strain)が作用する場合、上記ピークXが現れるラマンシフト値は減少することができ、比較的圧縮応力(compressive strain)が作用する場合、上記ピークXが現れるラマンシフト値は増加することができる。特に、上記ピークXは、A
1(TO)、B
1+E(TO)及びA
1(LO)+E(LO)振動に由来するピークに比べて、BaTiO
3系物質に残留する応力に敏感に反応する。したがって、本発明では、上記ピークXが現れるラマンシフト値で第1領域141a、142a及び第2領域141b、142bに残留する応力を評価したものである。また、サイドマージン部141、142の第1及び第3方向の断面の第1方向の中央領域に位置する地点をラマン分光法により分析したのは、サイドマージン部141、142の第1及び第3方向の断面の第1方向の外側領域に比べて内部応力の影響を多く受ける第1方向の中央領域に残留する応力を評価するためである。
【0047】
第2領域141b、142bのラマンスペクトルのうち、上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値がλ+0.75cm-1以上を満たすことは、第1領域141a、142aは第2領域141b、142bに比べて比較的引張応力を有し、第2領域141b、142bは、第1領域141a、142aに比べて比較的圧縮応力が有することを意味することができる。
【0048】
これにより、第1領域141a、142aは、誘電体層111と内部電極121、122が積層されて、サイドマージン部141、142に比べて比較的高い引張応力を有する本体110との応力ミスマッチ(mismatch)を最小化する役割を果たすことができ、これにより本体110とサイドマージン部141、142との間の界面が広がる現象を防止して、外部の水分及び/又は水素の浸透を防ぎ、積層型電子部品100の信頼性を向上させることができる。
【0049】
また、サイドマージン部141、142に残留する引張応力が高くなるほど外部衝撃によって容易にクラックが生じるという問題点が発生することがあるが、本発明の一実施形態による積層型電子部品100はサイドマージン部141、142の外側に隣接する第2領域141b、142bが第1領域141a、142aに対する圧縮応力(compressive strain)を有することで外部衝撃によるクラックの発生を防止して、積層型電子部品100の信頼性をより効果的に向上させることができる。
【0050】
第2領域141b、142bのラマンスペクトルのうち、上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値の上限は特に限定する必要はないが、例えばλ+1.2cm-1以下であることができる。第2領域141b、142bのラマンスペクトルのうち、上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値がλ+1.2cm-1超過である場合、本体110とサイドマージン部141、142との間の界面が広がる現象が発生する可能性がある。
【0051】
一実施形態において、第1領域141a、142aのラマンスペクトルにおいて上記ピークXが現れるラマンシフトの平均値をλ1とし、第2領域141b、142bのラマンスペクトルにおいて上記ピークXが現れるラマンシフトの平均値をλ2とするとき、λ2>λ1を満たすことができる。例えば、λ1は、上記第1領域に位置する複数の地点P11~P16、P21~P26、P31~P36、P41~P46をラマン分光法により分析したとき、上記ピークXが現れるラマンシフトの平均値を意味することができ、λ2は、上記第2領域に位置する複数の地点P17~P112、P27~P212、P37~P312、P47~P412をラマン分光法により分析したとき、上記ピークXが現れるラマンシフトの平均値を意味することができる。λ2>λ1を満たすことで、応力ミスマッチ(mismatch)の最小化効果及び外部衝撃によるクラック防止効果がさらに顕著になることができる。
【0052】
第1領域141a、142a及び第2領域141b、142bの間の境界は次のように定義されることができる。例えば、サイドマージン部141、142の第1及び第3方向の断面の第1方向の中央領域において第3方向に等間隔の複数の仮想線のうち、互いに隣接する2つの仮想線において、1つの上記仮想線上に位置する互いに等間隔の4つの地点のラマンスペクトルにおいて上記ピークXが現れるラマンシフトの平均値はλmであり、もう一つの上記仮想線上に位置する互いに等間隔の4つの地点のラマンスペクトルにおいて上記ピークXが現れるラマンシフトの平均値がλm+0.5cm-1以上を満たすとき、第1領域141a、142a及び第2領域141b、142bとの間の境界は、上記互いに隣接する2つの仮想線間の中央に位置することができる。
【0053】
例えば、
図5に示されたように、第3方向に等間隔の複数の仮想線のうち、互いに隣接する第6仮想線及び第7仮想線L6、L7において、第6仮想線L6上に位置する互いに等間隔の4つの地点P16、P26、P36、P46のラマンスペクトルにおいて上記ピークXが現れるラマンシフトの平均値がλmであり、第7仮想線L7上に位置する互いに等間隔の4つの地点P17、P27、P37、P47のラマンスペクトルにおいて上記ピークXが現れるラマンシフトの平均値がλm+0.5cm
-1以上を満たすとき、上記第1領域及び第2領域の間の境界は第6仮想線L6と第7仮想線L7との間の中央に位置することができる。一方、
図5及び
図8を参照すると、仮想線は合計12個であるが、上記仮想線の個数はサイドマージン部141、142の第3方向の大きさに応じて変わることができる。
【0054】
図5を参照すると、一実施形態において、サイドマージン部142の第1方向の中央領域で測定した第1領域142aの第3方向の大きさをT1、サイドマージン部142の第1方向の中央領域で測定した第2領域142bの第3方向の大きさをT2とするとき、T2/T1は0.6以上2.2以下を満たすことができる。T2/T1が0.6未満の場合、第2領域142bの第3方向の大きさが小さすぎて外部衝撃によるクラック防止及び信頼性の向上効果が僅かであることがある。T2/T1が2.2超過である場合、サイドマージン部141、142の第3方向の大きさが過度に増加して、本体110とサイドマージン部141、142との間の境界が広がる現象が発生して、積層型電子部品の信頼性が低下する可能性がある。
【0055】
上記T2/T1比率を調節する方法は特に限定する必要はない。例えば、サイドマージン部141、142の第3方向の大きさを増加させるほど、T2/T1比率が増加することができる。また、上記T1及びT2は、例えば、上記サイドマージン部の第2方向の中央で切断した第1及び第3方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、ラマン分光法を介して第1領域141a、142a及び第2領域141b、142bの間の境界を定義することで測定することができる。
【0056】
サイドマージン部141、142は、例えば、第5面及び第6面5、6にBaTiO3系粉末を主成分として含む誘電体物質を含む誘電体シートを積層した後、焼成することで形成されることができる。第1領域141a、142a及び第2領域141b、142bのラマンスペクトルにおいて上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値を調節する方法は特に限定する必要はないが、例えばSnがドーピングされたBaTiO3系粉末を含む誘電体物質を含む上記誘電体シートを焼成して焼成時のサイドマージン部141、142の収縮量を調節することで、第1領域141a、142a及び第2領域141b、142bのラマンスペクトルにおいて、上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値を調節することができる。これによって、サイドマージン部141、142はSnを含むことができる。
【0057】
一実施形態において、第1領域141a、142aに含まれた誘電体結晶粒の平均大きさは、第2領域141b、142bに含まれた誘電体結晶粒の平均大きさよりも大きいことができるが、本発明はこれに限定されるものではない。上記第1領域に含まれた誘電体結晶粒の平均大きさ及び第2領域に含まれた誘電体結晶粒の平均大きさは、積層型電子部品の第2方向の中央で切断した第1及び第3方向の断面において、サイドマージン部141、142の第1方向の中央領域(例えば、
図4のK1領域)を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて50,000倍拡大したイメージを得た後、上記イメージをイメージ分析プログラム、例えば、Zootos社のZootos Programを用いて分析することで得られることができる。
【0058】
サイドマージン部141、142の第3方向の平均大きさは特に限定する必要はない。但し、一般的にサイドマージン部141、142の第3方向の平均大きさが小さくなるほど、積層型電子部品の信頼性が低下するという問題点がある。一方、本発明の一実施形態による積層型電子部品の場合、上記第2領域141b、142bのラマンスペクトルのうち、上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値がλ+0.75cm-1以上を満たすことで、サイドマージン部141、142の第3方向の平均大きさが25μm以下である場合にも、積層型電子部品の信頼性を確保することができる。サイドマージン部141、142の第3方向の平均大きさの下限は特に限定する必要はないが、例えば2μm以上であることができる。
【0059】
サイドマージン部141、142の第3方向の平均大きさは、第1サイドマージン部141及び第2サイドマージン部142のそれぞれの平均厚さを意味する。また、サイドマージン部141、142の平均厚さは、サイドマージン部141、142の第1及び第3方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM)を用いてスキャンしたイメージで等間隔の5つの地点で測定した第3方向の大きさを平均した値であることができる。
【0060】
一実施形態において、本体110の第1方向の中央領域に対応するサイドマージン部141、142の領域の第3方向の大きさをtm1、上記第1方向を基準として最外側に配置された内部電極121、122の末端と接するサイドマージン部141、142の領域の第3方向の大きさをtm2とするとき、tm2/tm1は0.9以上1.0以下であることができる。
【0061】
従来には、セラミックスラリーを塗布または印刷する方式でサイドマージン部を形成したため、サイドマージン部の位置別厚さのばらつきが激しかった。具体的には、従来の場合には、本体の第1方向の中央部領域に対応する第1または第2サイドマージン部の領域の厚さが他の領域の厚さに比べて厚く形成された。このようにサイドマージン部の位置別厚さのばらつきが大きい従来の場合、同一大きさの積層型電子部品においてサイドマージン部が占める部分が大きいため、容量形成部の大きさを大きく確保できず、高容量確保に困難がある。
【0062】
一方、本発明の一実施形態によると、tm2/tm1が0.9以上1.0以下を満たすことで、第1及び第2サイドマージン部M1、M2の第3方向の大きさを小さく形成して容量形成部Acの大きさを大きく確保することができる。
【0063】
また、本体110のエッジと接するサイドマージン部141、142の領域の厚さをtm3とするとき、tm3/tm1は0.9以上1.0以下であることができる。上記特徴により、サイドマージン部の領域別厚さのばらつきを低減して容量形成部Acの大きさを大きく確保することができ、これにより高容量の積層型電子部品の実現が可能である。
【0064】
誘電体層111の平均厚さtdは特に限定する必要はない。但し、誘電体層111の厚さが薄くなるほど電圧印加時に発生する応力により本体110にクラックが発生しやすくなり、これにより積層型電子部品の信頼性が低下するという問題点がある。一方、本発明の一実施形態による積層型電子部品の場合、上記第2領域141b、142bのラマンスペクトルのうち、上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値がλ+0.75cm-1以上を満たすことで、誘電体層111の少なくとも1つの平均厚さtdが0.4μm以下である場合にも、積層型電子部品の信頼性を確保することができる。
【0065】
ここで、誘電体層111の平均厚さtdは、内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の第1方向の大きさを意味する。誘電体層111の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてスキャンして測定することができる。より具体的には、1つの誘電体層111の多数の地点、例えば第2方向に等間隔の30の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30の地点は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10つの誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0066】
内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はない。但し、本発明の一実施形態による積層型電子部品の場合、上記第2領域141b、142bのラマンスペクトルのうち、上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値がλ+0.75cm-1以上を満たすことで、第1内部電極121の少なくとも1つの平均厚さが0.4μm以下であり、第2内部電極122の少なくとも1つの平均厚さが0.4μm以下である場合にも積層型電子部品の信頼性を確保することができる。
【0067】
内部電極121、122の平均厚さteは、内部電極121、122の第1方向の大きさを意味する。ここで、内部電極121、122の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてスキャンして測定することができる。より具体的には、1つの内部電極121、122の多数の地点、例えば第2方向に等間隔の30の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30の地点は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10つの内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0068】
カバー部112、113の平均厚さtcは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、カバー部112、113の平均厚さtcは20μm以下であることができる。上述したように、カバー部112、113の平均厚さtcが20μm以下である場合にも、上記第2領域141b、142bのラマンスペクトルのうち上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値がλ+0.75cm-1以上を満たすことで、積層型電子部品の信頼性を確保することができる。ここで、カバー部112、113の平均厚さは、第1カバー部112及び第2カバー部113のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0069】
カバー部112、113の平均厚さは、カバー部112、113の第1方向における平均大きさを意味することができ、本体110の第1方向及び第2方向の断面で等間隔の5つの地点で測定した第1方向の大きさを平均した値であることができる。
【0070】
(実験例)
<第1領域及び第2領域のラマンシフト測定>
まず、誘電体層及び内部電極を含む本体を設けた後、SnがコーティングされたBaTiO3系粉末を含む誘電体物質、添加剤、溶剤、分散剤などを含む誘電体シートを本体の第5面及び第6面に積層した後、焼成してサイドマージン部を形成した。焼成後、本体の第3面及び第4面をCuを含む外部電極用導電性ペーストにディッピングした後、焼成して外部電極を形成することでサンプルチップを設けた。
【0071】
次に、サイドマージン部の第2方向の中央で切断した第1及び第3方向の断面の第1方向の中央領域をラマン分光法により分析した。ラマン分光法は、Raman Spectroscopy(LabRam HR Evolution)装備によって測定し、レーザ波長:532nm、ND filter:3.2%、acquisition time:15sの条件で行った。
【0072】
図5を参照すると、まず、サイドマージン部の第1及び第3方向の断面の第1方向の中央領域において第3方向に互いに約1μmずつ離れた第1~第12仮想線を引き、各仮想線上に位置する互いに約5μmずつ離れた4つの地点をラマン分光法により分析した。ここで、上記第1仮想線は本体に最も隣接する仮想線であり、上記第12仮想線はサイドマージン部の外側に最も隣接する仮想線である。
【0073】
この後、各仮想線上に位置する4つの地点をラマン分光法により分析したラマンスペクトルにおいて450cm
-1~600cm
-1のラマンシフトで最大強度のピークXが現れるラマンシフト値を求めた後、上記4つの地点のラマンスペクトルにおいて、上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値、最大値及び平均値を測定した。例えば、第1仮想線L1上に位置した4つの地点P11~P41のラマンスペクトルにおける上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値、最大値及び平均値を測定し、第2仮想線L2上に位置した4つの地点P12~P42のラマンスペクトルにおける上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値、最大値及び平均値を測定し、この後、第3~第12仮想線L3~L12も同様の方法でラマンシフト測定を行い、
図8に示した。
【0074】
図5及び8を参照すると、第6仮想線L6上に位置する4つの地点P16~P46のラマンスペクトルにおいて、上記ピークXが現れるラマンシフトの平均値をλmとするとき、第7仮想線L7上に位置する4つの地点P17~P47のラマンスペクトルにおいて、上記ピークXが現れるラマンシフトの平均値がλm+0.5cm
-1以上を満たすことを確認し、これにより、第1領域及び第2領域の間の境界を互いに隣接する第6及び第7仮想線L6、L7の間の中央として定義した。
【0075】
また、第1領域のラマンスペクトルのうち上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値をλとするとき、第2領域のラマンスペクトルのうち上記ピークXが現れるラマンシフトの最小値がλ+0.75cm-1以上であることを確認した。
【0076】
<T2/T1比率による耐湿信頼性の評価>
この後、設定された第1領域及び第2領域の間の境界を基準として、第1領域の第3方向の大きさT1に対する第2領域の第3方向の大きさT2の比率による耐湿信頼性を評価した。耐湿信頼性の評価は各サンプルチップ当たり1200個のチップを実装し、温度85℃、相対湿度85%で10Vの電圧を24時間の間印加した後、絶縁抵抗が初期数値より1order以上落ちたサンプルの個数を下記表1に記載した。このとき、1200個のサンプルチップのうち、絶縁抵抗が初期数値より1order以上落ちたサンプルの個数が10個未満の場合は良好(○)、10個以上の場合は不良(X)と判定した。
【0077】
【0078】
上記表1を参照すると、T2/T1比率が0.6~2.2を満たす試験番号3~6は、耐湿信頼性のテスト時に不良であるサンプルの個数が10個未満であり、耐湿信頼性が改善されることが分かる。一方、試験番号1及び2は、T2/T1比率が0.6未満であり、耐湿信頼性のテスト時に不良であるサンプルの個数が10個以上であることを確認することができる。これは、第2領域の第3方向の大きさが小さすぎて外部衝撃によるクラックを防止することができず、信頼性が低下したためと予想される。一方、T2/T1比率が0である試験番号1は、本発明で定義した第2領域が形成されていないことを意味する。
【0079】
また、試験番号7の場合、T2/T1比率が2.2超過であり、本体とサイドマージン部との間の界面が広がって耐湿信頼性のテストを行うことができなかった。
【0080】
本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0081】
また、「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかしながら、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【0082】
また、第1、第2などの表現は、ある構成要素と他の構成要素を区分するために用いられるものであって、該当構成要素の順序及び/又は重要度などを限定しない。場合によっては、権利範囲から逸脱せずに、第1構成要素は第2構成要素と命名されることもでき、同様に第2構成要素は第1構成要素と命名されることもできる。
【符号の説明】
【0083】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
141、142 サイドマージン部
141a、142a 第1領域
141b、142b 第2領域