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  • 特開-果樹の仕立て法 図1
  • 特開-果樹の仕立て法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103456
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】果樹の仕立て法
(51)【国際特許分類】
   A01G 17/00 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A01G17/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003297
(22)【出願日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2023006902
(32)【優先日】2023-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】523023199
【氏名又は名称】川渕 良範
(74)【代理人】
【識別番号】100140110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵子
(72)【発明者】
【氏名】川渕 良範
(57)【要約】      (修正有)
【課題】早期多収穫できる新たな果樹の仕立て法を提供する。
【解決手段】果樹の苗木の主幹を、70cmから80cmの高さの芽の上で切り返し、前記主幹にある芽を欠かずに、各々の芽を枝に生長させ、前記主幹の先端部から生長した2枝を、各々の長さの1/3から2/3を残して切り返し、前記主幹の先端部から生長した2枝以外の前記主幹から生じた枝を互いに重ならないように、前記主幹の先端部から生長した2枝およびそのY字部分から誘引した果枝で前記主幹の周りに形成される空間を埋めるように配置または誘引する果樹の仕立て法である。あるいは、果樹の苗木の主幹を50cm以下の高さに切り返し、前記主幹から生長した2枝を主枝とし、当該主枝をY字型またはV字型に誘引し、前記主枝よりも低い位置で主幹から生長した果枝にする枝と前記主枝の下部から順に生じた果枝にする枝とを互いに重ならないように配置または誘引する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果樹の苗木の主幹を、70cmから80cmの高さの芽の上で切り返し、前記主幹にある芽を欠かずに、各々の芽を枝に生長させ、
前記主幹の先端部から生長した2枝を、各々の長さの1/3から2/3を残して切り返し、
前記主幹の先端部から生長した2枝以外の前記主幹から生じた枝を互いに重ならないように、前記主幹の先端部から生長した2枝と前記主幹の周りに形成される空間を埋めるように配置または誘引する、
果樹の仕立て法。
【請求項2】
前記果樹の苗木の植え付けの2年目において、前記主幹の先端部から生長した2枝を棚にY字型に誘引して主枝とし、前記2枝以外の前記主幹から生じた枝を生長させ、
前記主枝のY字部分から新たに生じた枝を、前記空間を埋めるように配置または誘引して、
前記2枝の主枝には果実を実らせず、前記2枝以外の前記主幹から生じた枝には果枝として果実を実らせることができる、
請求項1に記載の果樹の仕立て法。
【請求項3】
前記果樹の苗木の植え付けの3年目において、前記主幹の先端部から生長した2枝の主枝を、その年に生長した長さの1/3から2/3を残すように切り返し、前記主枝以外の前記主幹から生じた枝をその基部からの長さの1/2から3/4を残すように切り返し、
前記切り返した主幹から生じた枝と前記主枝から分枝した枝を、前記主枝と前記主幹の周りに形成される空間を埋めるように扇形に配置または誘引し、
前記主枝から分枝した枝および前記主幹から生じた果枝に果実を実らせる、
請求項2に記載の果樹の仕立て法。
【請求項4】
前記果樹の苗木の植え付けの4年目以降において、引き続き前記果枝を扇形に広がるように生長させ、前記主枝から分枝した枝および前記主幹から生じた果枝が日陰を形成する場合にその果枝を間引きまたは整枝して誘引する、請求項3に記載の果樹の仕立て法。
【請求項5】
前記果樹の苗木の植え付けの10年目までを目処に、前記2枝の主枝を維持し、前記主幹から生じた果枝を2本または3本になるように順次間引き剪定する、請求項4に記載の果樹の仕立て法。
【請求項6】
前記果樹の苗木の植え付けの15年目までを目処に、前記2枝の主枝を維持し、前記主枝から分枝した果枝を生長させて亜主枝に育て、前記主幹から生じた枝および前記主枝のY字部分から生長させた枝を全て間引き剪定し、2本主枝仕立ての樹形にする、請求項5に記載の果樹の仕立て法。
【請求項7】
果樹の苗木の主幹を50cm以下の高さに切り返し、前記主幹から生長した2枝を主枝とし、前記主枝をY字型またはV字型に誘引し、
前記主枝よりも低い位置で主幹から生長した果枝にする枝と前記主枝の下部から順に生じた果枝にする枝とを互いに重ならないように配置または誘引する、
果樹の仕立て法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果樹の仕立て法に関し、特に、早期から多収穫可能な果樹の仕立て法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の主な果樹の仕立て法には、例えば、主幹から主枝を2本または3本、4本に分枝させ、農作業者の作業効率などを考慮した高さの棚面に主枝などの枝を誘引した2本主枝仕立てまたは3本主枝仕立て、4本主枝仕立てがある。日本の果樹園では特に2本主枝仕立てが多く採用されている(図1)。また、近年は、果樹を一列に植え、全ての果樹を1本主枝にし、その1本主枝を同一方向に水平に誘引し、主枝先端部を隣接する果樹の1本主枝の基部に接ぎ木する、ジョイント仕立て(特許文献1)が広まっている。ジョイント仕立ては、リンゴ、ナシ、カキ、スモモ、モモ、ウメ、カンキツ類、イチジク、おうとう、ブドウ、キウイフルーツなどの様々な果樹で応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-304495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の果樹の2本主枝仕立て法では、特にT字型に棚に誘引する樹形にこだわるために、後述するように苗木を約150cmの高さで剪定するために初期発育が遅れて、1年目は小さな枝しか出ず、短く切り詰めなければならない。2年目は生長するが、T字型にこだわるために、生じた2本主枝をできるだけ長く誘引するのでその年も充分に生長できず、その結果、初期成育が遅れる。果樹の種類にもよるが、例えば日本ナシでは、苗木の植え付けから3年から4年は果実の収穫がなく、5年から6年程経過しても、果樹1本あたり数個から10個程度の果実しか収穫できない。従って、苗木を植え付けて6年までは農家の収入につながらない。7年目でも20個から30個の収穫に留まり、収益が期待できる本格的な果実の収穫までの年数がかかりすぎる。また、幼木に果実を実らせると、主幹の生長を阻害し、収益が得られる収穫が期待できる成木になるまで、年数がかかりすぎる問題がある。
【0005】
このように、従来の果樹の仕立て法による果樹園の成園化には、10年以上もかかること、多額の費用、果樹の適切な剪定・整枝の技術などが必要であり、果樹農業の参入者の障壁になっている。果樹園を開園したとしても、苗木植え付け後の早期から収入を得る見込みはほぼ無いため、開園初期に農作業者を雇用できずに自家労働に頼らざるを得ない。加えて、果樹園の維持にも、管理の手間や労働力、費用がかかり、天候不順にも左右され、収益の安定化が難しく、農業者の離職や農業の衰退の原因にもなっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、従来の樹形にこだわった仕立て法や剪定方法から脱却し、かつ苗木の植え付けから何年も果樹を育成しないと、収益が期待できる数の果実が収穫できない、などの固定観念から離れて、新たな果樹の仕立て法を完成した。
【0007】
本発明者の技術による果樹の仕立て法は、具体的には、
果樹の苗木の主幹を、約70cmから80cmの高さ(作業者の腰の位置)の芽の上で切り返し、前記主幹にある芽を欠かずに、各々の芽を枝に生長させ、
前記主幹の先端部から生長した2枝を、各々の長さの1/3から2/3を残して切り返し、
前記2枝以外の前記主幹から生じた枝を、互いに重ならないように、前記2枝と前記主幹の周りに形成される空間を埋めるように配置または誘引する。このとき、誘引する枝を適宜間引き剪定や整枝を行ってもよい。
この後は、農作業者の経験と技量で整枝、剪定を適切に行って果樹の樹勢を充実させ、順次前記主幹の先端部から生長した2枝よりも主幹下部から生じた枝に果実を実らせて収穫していけばよいが、2年目以降は、下記の方法で果樹を仕立てていくことが好ましい。
【0008】
苗木の植え付けの2年目では、前記主幹の先端部から生長した2枝を棚にY字型に誘引して主枝とし、前記2枝以外の前記主幹から生じた枝も更に生長させる。2年目に前記主枝から新たに生じた枝は、適宜間引きや整枝して、前記空間を埋めるように配置または誘引する。そして、前記2枝の主枝には果実を実らせない。一方、前記2枝以外の前記主幹から生じた枝は果枝として、数個から約10個の果実を実らせることができる。この前記2枝以外の前記主幹から生じた枝があることにより果実を実らせたとしても、前記主枝の生長を阻害することなく、前記主幹を充実させ且つ樹勢を強くすることができる。
【0009】
前記果樹の苗木の植え付けの3年目には、前記主幹の先端部から生長した2枝の主枝を、その年に生長した長さの1/3から2/3を残すように強く切り返す。その後、各々の前記主枝から分枝した枝は、好ましくは前記2枝の主枝と前記主幹の周りに形成される枝の空間を埋めるように誘引する。より好ましくは立体的に、配置または誘引する。前記2枝以外の前記主幹から新たに生じた枝は、その基部からの長さの1/2から3/4程度を残すように少し弱めに切り返し、枝の空間を埋めるように誘引することができる。3年目には前記主枝から分枝した枝を果枝として果実を実らせることができる。また、前記2枝以外の前記主幹から生じた枝を扇形に空間を埋めるように誘引する。そして、これらの枝にも果実を実らせることができる。
【0010】
前記果樹の苗木の植え付けの4年目以降では、引き続き前記果枝を扇形に広がるように空間を埋めるように生長させる。そのため、生長につれて日陰が形成されるので、光合成を阻害しないように間引きまたは整枝して誘引し、果樹の光合成を盛んにして樹勢を強くする。
【0011】
前記果樹の苗木を植え付けてからの数年間は、前記主幹から生じた枝や前記2枝の主枝からのY字部分に分枝した果枝を、扇状に広げつつ、互いに重ならないように間引き剪定や整枝しながら、例えば8枝程度を残して、太く大きく育成しつつ、果実も収穫する。本技術の果樹の仕立て法で仕立てられた木は、主枝は2本であるが、前記主幹から生じた枝や前記主枝から分枝した枝(果枝)も同様に充実して、主幹周りから6本から10本も主枝が生長しているタコ足のように見える樹形になる。そこで、本技術の果樹の仕立て法を「タコ足栽培法」と命名した(図2)。
なお、本明細書において「果枝」は、果枝が生長して将来亜主枝となる枝、果枝が分枝する側枝など、果枝が分枝し得る枝を含むこととする。
【0012】
更に、前記果樹の苗木を植え付けて5、6年目以降には、樹勢の強弱や日陰を形成するかなどを見極めて、順次、前記主幹から生じて生長した枝を間引き剪定する。次に、10年目頃までを目処に、前記主枝2本を維持して、前記主幹から生じて生長した枝を2本から3本程度になるように間引き剪定し、15年目頃までを目処に、前記主枝から分枝した果枝を生長させて亜主枝に育て、前記主幹から生じて生長した枝および前記主枝のY字部分から生長させた枝を全て間引き剪定して、最終的に前記主枝2本のみにする。例えば日本ナシであれば、管理がよければ50年で1000個以上の果実の収穫が可能であり、100年も維持できる。
【0013】
あるいは、果樹の苗木の主幹を50cm以下の高さに切り返し、前記主幹から生長した2枝を主枝とし、当該主枝をY字型またはV字型に誘引し、前記主枝よりも低い位置で主幹から生長した果枝にする枝と前記主枝の下部から順に生じた果枝にする枝とを互いに重ならないように配置または誘引して、果樹を仕立てることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明者の技術によれば、果樹の苗木の植え付けから早期に果実を収穫できる。例えば3年目には10個前後、4年目には30個から50個程度、5年目には樹勢の強い果樹で100個程度、6年目で200個以上収穫することが可能である。この技術によれは、従来の果樹の仕立て法と比べて早期に10倍以上の多収穫を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は従来の主枝2本棚仕立てによる果樹(日本ナシ)の図面代用写真である。
図2図2は本技術の果樹の仕立て法(日本ナシ、樹齢6年)の図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術の樹木の仕立て法の主な特徴を、従来の仕立て法との違いを示しながら説明する。
【0017】
本技術の果樹の仕立て法では、苗木の高さが約70cmから約80cmにある芽の上で強く切り返す。または50cm以下でもよい。前記主幹にある他の芽は欠かずに、各々の芽を枝に生長させる。
【0018】
一方、例えば従来法の2本主枝棚仕立てでは、苗木を植え付け、約150cmの高さで芽の上で弱めに切り返し、主幹の先端の2芽から3芽を残してその下の芽を取り除く。従来法で芽を取り除く目的は、主幹の先端の芽に集中して生長を促すことができると考えられているからである。
【0019】
しかし、実際には、主幹の先端の2芽から3芽を残すだけでは、果樹を維持するためには不十分で力不足となってしまい、苗木の植え付けから1年目で期待どおりに生長しない。そのため、2年目には、新枝を短く切り詰める剪定を行わざるを得ない。3年目に期待どおりに生長をしたとしても、T字型に棚に誘引するために枝をできるだけ長く誘引して育てるので、4年目もまた十分に生長せず、枝を短く切り詰めることになる。そして、5年目にようやく生長する。
【0020】
この間、主幹は細く、かつ主枝は細長くなり、生長が著しく阻害されている。そのため、果実を実らせる果枝が殆ど生育しておらず、苗木の植え付けから5年間は収穫が見込めない。
【0021】
本技術の果樹の仕立て法では、前述のように、最初に苗木を強く(短くなるように)切り返す点、苗木の植え付け時に主幹から芽を取り除かない点、強剪定して枝の生長や果枝の分枝を促して樹勢をつける(弱剪定すると枝の下方の芽の休眠や枝の弱生長を発生し得る)点、主幹や主枝の周囲の空間に枝を扇状に立体的に誘引するなどして日光を出来るだけ利用し、影になるような枝は間引き剪定や整枝する点、果樹の苗の植え付けから数年間は前記主枝2本と前記主枝のY字部分から生長させた枝と前記主幹から生長させた枝の合計約6~10本を主枝と思われる程に生長させる点などに特徴がある。苗木を強く切り返すと、主幹の先端部の芽が大きな枝に生長する。また、主幹に他の芽があるので枝に生長させて苗の先端部の2枝と主幹周りの空間を立体的に埋めるように誘引することができる。枝は重ならないように基部から間引き剪定や整枝してもよい。果樹の苗の植え付け初期から十分に葉を茂らせ、日光に当て、光合成を盛んに行わせることにより、早く果樹に力がつき、主幹も主枝も太く生長させることができる。その結果、早期多収の果樹になる。
【0022】
本技術の果樹の仕立て法は、果樹の苗木の主幹を50cm以下の高さに切り返し、前記主幹から生長した2枝を主枝とし、これらの主枝をY字型またはV字型に仕立てることもできる。この場合、前記主幹からとる果枝が少なくなるので、Y字型またはV字型の主枝から生じた枝のうち下から順番に果枝になり得る枝も互いに重ならないように配置または誘引する。このように仕立てることにより、タコ足状の樹姿が形成される。
【0023】
一方、従来法の2本主枝仕立て、3本主枝仕立て、4本主枝仕立てなどでは、主幹に果枝を残すと主枝の生長が阻害されると信じられている。そのため、主幹に果枝がない前記2本から4本の主枝を棚に誘引し、各主枝から分枝する果枝や亜主枝などを直線的にまたは平面的に棚に誘引する。すなわち、従来法では栽培空間を直線的または平面的に使用するだけであるので、葉の茂り方も制限されてしまう。そのため、従来法では、日光による光合成の効率が、本技術の扇状に立体的に枝を誘引する仕立て法と比べて低い。その結果、樹勢や主幹の充実速度、果実の早期多収穫化、果実の数、重量や糖度などの品質にも大きな差が出る。
【実施例0024】
以下、本技術による果樹の仕立て法の実施例を説明する。ただし、実施例に記載される具体的な数値などは単なる事例にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0025】
2016年の11月から12月上旬に、日本ナシ品種「王秋」の1年生苗木を農園に植え付けた。約150cm以上の苗木をおおよそ高さ70cmから80cm程度になるように芽の上で強剪定した。強剪定後の苗木の芽は、強い枝に生長した。苗木の先端部から下方の芽は欠くことなく全て残したが、休眠せずに枝に生長した。
【0026】
苗木の先端部から伸長した2枝は、伸長した枝の半分程度の長さになるように強めに切り詰めた。その他の伸長した枝は、前記主幹の周囲の空間および前記先端部から伸長した2枝の間が立体的に埋まるように、適宜弱めに剪定し、整枝して枝同士が重ならないように誘引した。この状態で日光を十分に利用し、1年目は葉が茂って果樹が大きく生長し、主幹も大きくなった。
【0027】
2年目は、前記先端部から伸長した2枝を、棚に対して約60°以下の角度になるように、Y字型に棚に誘引した。Y字型に誘引した2枝を各々主枝とした。2年目では前記主枝および主幹から分枝した他の枝も生長させ、前記主枝には果実は結実させないようにし、他の枝には果実を数個結実させた。その結果、枝はそれぞれが独立しており、他の枝や側枝に果実を付けても、前記主枝は何ら影響なく生長できることを確認した。
【0028】
3年目は、伸長した前記主枝を中程で強剪定した。一方、他の枝は約1/2から約3/4の長さが残るようにやや弱めに剪定した。前記主枝から分枝した果枝や側枝および主幹から生じた枝を、扇状に且つ立体的に配置または誘引して、主幹をより大きく太く、果樹全体に樹勢をつけた。前記主枝および他の枝から分枝した果枝に果実を結実させ、約10個の果実を収穫した。
【0029】
4年目および5年目は、前記主枝以外の主幹から生じた枝や前記主枝から分枝した果枝で日陰にならないように、順次間引き剪定または整枝した。間引き剪定または整枝により、日陰を形成する枝を整理することができ、早期に主枝が生長して樹勢が向上し、果実の多収穫栽培を継続できることが実証できた。本出願時において苗木を植え付けてから6年経過したが、5年目には既に100個以上の果実、6年目で200個以上の果実を収穫することができた。そして、まだ幼木でありながら前記5年目の果実重は平均約600g、前記6年目は平均約650gであり、収益率が高い結果が得られた。7年目では、約270個(8コンテナ分)、総重量で120kg以上の果実を収穫することができた。
【0030】
また、日本ナシ品種「陽水」についても同様の仕立て法で生長させたところ、果樹の苗木を植え付けてから6年目には約210個の果実が実った。
【0031】
〔参考例〕
果樹の生長の初期から果実が生る枝を見極め、将来残すべき2本の主枝および苗木の植え付けから10年間は果枝が生長して亜主枝となる枝を決めて確保しておく。6年目以降は果樹の生長に合わせて前記枝を間引いていき、数年間は主枝以外の前記枝を6本から4本程度に減らし、約10年頃には前記主幹から生じた枝を2、3本程度に減らし、約15年頃までに前記主幹から生じた枝と前記主枝のY字部分から生じた果枝を全て取り除いて、主枝2本のみにする。このように長い栽培年数のなかで主枝以外の、主幹から生じた枝などの数を減らすことにより、日光を十分に利用し、その後数十年間にわたって果実の収穫が向上する収益性の高い果樹園の形成を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本技術による果樹の仕立て法は、様々な果実、例えばリンゴ、西洋ナシ、カキ、スモモ、モモ、ウメ、アンズ、カンキツ類、イチジク、ビワ、おうとう、くり、ブドウ、キウイフルーツ、ざくろ、アボカド、マンゴーなどにも適用できる。
図1
図2