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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103460
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】無人搬送システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/249 20240101AFI20240725BHJP
   G05D 1/225 20240101ALI20240725BHJP
【FI】
G05D1/249
G05D1/225
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005432
(22)【出願日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2023007710
(32)【優先日】2023-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000103301
【氏名又は名称】エンゼルグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(72)【発明者】
【氏名】重田 泰
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA10
5H301BB07
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301KK03
5H301KK10
5H301LL01
5H301LL02
5H301LL03
5H301LL08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】指定された動線上を走行することを前提として、目的地に向けて重量物を搬送するための新規の無人搬送システムを提供する。
【解決手段】指定目的地に向けて、指定された仮想の動線の上を走行する無人搬送システム100であって、制御信号に従って無人で走行する無人搬送車300と、フィールドを、上方から撮影して静止画像又は動画像を生成する1又は複数のカメラ10と、静止画像又は動画像に基づいて、無人搬送車300が仮想の動線上を走行するように制御するための制御信号を生成する運転制御手段20とを備えている。運転制御手段20は、静止画像又は動画像から無人搬送車300を検出する検出部21と、検出部21による検出の結果を用いて無人搬送車300のフィールドにおける位置を把握する位置把握部22と、位置把握部22が把握した無人搬送車300の位置に基づいて、制御信号を生成する制御部24とを備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された目的地に向けて、指定された仮想の動線の上を走行して、重量物を搬送する無人搬送システムであって、
制御信号に従って無人で走行する無人搬送車と、
前記無人搬送車が走行するフィールドを、前記フィールドの上方から撮影して静止画像又は動画像を生成する1又は複数のカメラと、
前記静止画像又は動画像に基づいて、前記無人搬送車が前記仮想の動線上を走行するように制御するための前記制御信号を生成する運転制御手段と、
を備え、
前記運転制御手段は、
前記静止画像又は動画像から前記無人搬送車を検出する検出部と、
前記検出部による検出の結果を用いて、前記無人搬送車に搭載されたセンサによらずに、前記無人搬送車の前記フィールドにおける位置を把握する位置把握部と、
前記位置把握部が把握した前記無人搬送車の位置に基づいて、前記制御信号を生成する制御部と、
を備えた、無人搬送システム。
【請求項2】
前記無人搬送車は、パレットに置かれた前記重量物をパレットごと持ち上げて搬送するフォークリフト車である、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項3】
前記フィールドは屋内にあり、
前記1又は複数のカメラは、天井又は壁に取り付けられて、前記フィールドを上方から撮影する、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項4】
前記フィールドは屋外にあり、
前記1又は複数のカメラは、屋外に設置された構造物に取り付けられて、前記フィールドを上方から撮影する、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項5】
前記運転制御手段は、さらに、前記静止画像又は動画像に基づいて前記無人搬送車の向きを把握する向き把握部を備え、
前記制御部は、前記向き把握部が把握した向きにも基づいて、前記制御信号を生成する、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項6】
前記無人搬送車は、前記目的地において前記重量物の荷積み又は荷下ろしのための自律運転を行う、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項7】
前記運転制御手段の前記検出部は、さらに、前記静止画像又は動画像から障害物を検出し、
前記運転制御手段の前記制御部は、さらに、前記検出部による前記検出の結果にも基づいて、前記制御信号を生成する、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項8】
前記無人搬送車は、前記動線上の走行を開始するためにユーザが操作をするための操作部を備え、
前記運転制御手段の前記制御部は、前記操作部に対する前記操作に応じて前記制御信号の生成を開始する、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項9】
前記目的地及び前記仮想の動線がそれぞれ指定された複数の前記無人搬送車を備え、
前記運転制御手段の前記検出部は、前記静止画像又は動画像から複数の前記無人搬送車を検出し、
前記運転制御手段の前記位置把握部は、複数の前記無人搬送車の前記フィールドにおけるそれぞれの位置を把握し、
前記運転制御手段の前記制御部は、前記位置把握部が把握した複数の位置に基づいて、複数の前記無人搬送車の各々の前記制御信号を生成する、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項10】
視野が異なる複数の前記カメラを備え、
前記位置把握部は、前記複数のカメラで生成された複数の静止画像又は動画像を統合することで、前記無人搬送車の前記フィールドにおける位置を把握する、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項11】
前記検出部は、ニューラルネットワークを用いて前記無人搬送車を検出する、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項12】
前記無人搬送車は、上面に所定のマークを有し、
前記検出部は、前記所定のマークを検出することで前記無人搬送車を検出する、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項13】
前記運転制御手段は、前記動線が定義された、前記フィールドのマップを記憶しており、
前記位置把握部は、前記マップ上に前記検出部にて検出された前記無人搬送車をマッピングすることで、前記無人搬送車の位置を把握する、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項14】
前記フィールドの所定位置に所定のマークを有し、
前記検出部は、前記所定のマークを検出し、
前記位置把握部は、前記検出部が検出した前記所定のマークに基づいて、前記無人搬送車の位置を把握する、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項15】
前記運転制御手段の前記検出部は、さらに、前記無人搬送車で搬送されている前記重量物を検出する、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項16】
前記無人搬送車は、
周囲の障害物を検出するための車載検出部と、
前記車載検出部による前記障害物の検出に基づいて前記無人搬送車の緊急停止処理を行う緊急停止処理部と、
を備えた、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項17】
前記無人搬送車が前記動線から外れているか否かを判定する脱線判定手段をさらに備え、
前記運転制御手段は、前記脱線判定手段において、前記無人搬送車が前記動線から外れていると判定された場合に、前記無人搬送車を停止させ、又は前記無人搬送車を前記動線に戻すように、前記制御信号を生成する、請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項18】
前記脱線判定手段は、
前記無人搬送車に搭載され、前記無人搬送車の周辺を撮影して静止画像又は動画像を生成する車載カメラと、
前記車載カメラが生成した前記静止画像又は動画像に基づいて、前記無人搬送車が前記動線から外れているか否かを判定する判定部と、
を備えた、請求項17に記載の無人搬送システム。
【請求項19】
前記脱線判定手段は、
測位用信号を受信する受信機と、
前記受信機で受信した測位用信号に基づいて、前記無人搬送車が前記動線から外れているか否かを判定する判定部と、
を備えた、請求項17に記載の無人搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指定された目的地に向けて、指定された動線の上を走行して、重量物を搬送する無人搬送システム(即ち、自動誘導システム)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場や倉庫などの所定のフィールドにおいて、重量物を搬送するのに無人搬送車(即ち、自動誘導車、AGV)が使用されている。従来の無人搬送システムでは、フィールドに無人搬送車が走行すべき動線(又は、経路ないしルート)がテープ等で指定されている。無人搬送車は、このテープを検出しながら、テープに沿って走行することで、指定された動線上を走行して重量物をフィールド内の目的地に搬送する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フィールドにおいて、目的地を変更する必要がある場合がある。この場合には、動線も変更することになる。しかしながら、動線を変更する場合には、フィールド上に設置したテープを設置しなおす必要があり、その負担は大きい。
【0004】
特に、無人搬送車がパレットに乗せられた重量物をパレットごと搬送するフォークリフトである場合には、パレットの大きさが変更されることで、保管しておく重量物の間隔が変更されるため、目的地にずれが生じ、そのような目的地の変更は頻繁に行われる。したがって、パレットの大きさを変更するたびに動線となるテープ等を設置しなおす負担は極めて大きくなる。
【0005】
なお、無人搬送車には、指定された動線上を走行するのではなく、周辺環境(障害物等)をセンシングによって把握することで、自律運転を行いつつ目的地を目指すよう走行する自律走行の搬送車もある。しかしながら、工場や倉庫のように人も行きかうフィールド内において、重量物を搬送している無人搬送車が自由に経路を走行できるとすると危険である。
【0006】
そこで、本発明は、指定された動線上を走行することを前提として、目的地に向けて重量物を搬送するための新規の無人搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の無人搬送システムは、指定された目的地に向けて、指定された仮想の動線の上を走行して、重量物を搬送する無人搬送システムであって、制御信号に従って無人で走行する無人搬送車と、前記無人搬送車が走行するフィールドを、前記フィールドの上方から撮影して静止画像又は動画像を生成する1又は複数のカメラと、前記静止画像又は動画像に基づいて、前記無人搬送車が前記仮想の動線上を走行するように制御するための前記制御信号を生成する運転制御手段とを備え、前記運転制御手段は、前記静止画像又は動画像から前記無人搬送車を検出する検出部と、前記検出部による検出の結果を用いて、前記無人搬送車に搭載されたセンサによらずに、前記無人搬送車の前記フィールドにおける位置を把握する位置把握部と、前記位置把握部が把握した前記無人搬送車の位置に基づいて、前記制御信号を生成する制御部とを備えた構成を有している。
【0008】
上記の無人搬送システムにおいて、前記無人搬送車は、パレットに置かれた前記重量物をパレットごと持ち上げて搬送するフォークリフト車であってよい。
【0009】
上記の無人搬送システムにおいて、前記フィールドは屋内にあってよく、前記1又は複数のカメラは、天井又は壁に取り付けられて、前記フィールドを上方から撮影してよい。
【0010】
上記の無人搬送システムにおいて、前記フィールドは屋外にあってよく、前記1又は複数のカメラは、屋外に設置された構造物に取り付けられて、前記フィールドを上方から撮影してよい。
【0011】
上記の無人搬送システムにおいて、前記運転制御手段は、さらに、前記静止画像又は動画像に基づいて前記無人搬送車の向きを把握する向き把握部を備えていてよく、前記制御部は、前記向き把握部が把握した向きにも基づいて、前記制御信号を生成してよい。
【0012】
上記の無人搬送システムにおいて、前記無人搬送車は、前記目的地において前記重量物の荷積み又は荷下ろしのための自律運転を行ってよい。
【0013】
上記の無人搬送システムにおいて、前記運転制御手段の前記検出部は、さらに、前記静止画像又は動画像から障害物を検出してよく、前記運転制御手段の前記制御部は、さらに、前記検出部による前記検出の結果にも基づいて、前記制御信号を生成してよい。
【0014】
上記の無人搬送システムにおいて、前記無人搬送車は、前記動線上の走行を開始するためにユーザが操作をするための操作部を備えていてよく、前記運転制御手段の前記制御部は、前記操作部に対する前記操作に応じて前記制御信号の生成を開始してよい。
【0015】
上記の無人搬送システムにおいて、前記目的地及び前記仮想の動線がそれぞれ指定された複数の前記無人搬送車を備えていてよく、前記運転制御手段の前記検出部は、前記静止画像又は動画像から複数の前記無人搬送車を検出してよく、前記運転制御手段の前記位置把握部は、複数の前記無人搬送車の前記フィールドにおけるそれぞれの位置を把握してよく、前記運転制御手段の前記制御部は、前記位置把握部が把握した複数の位置に基づいて、複数の前記無人搬送車の各々の前記制御信号を生成してよい。
【0016】
上記の無人搬送システムは、視野が異なる複数の前記カメラを備えていてよく、前記位置把握部は、前記複数のカメラで生成された複数の静止画像又は動画像を統合することで、前記無人搬送車の前記フィールドにおける位置を把握してよい。
【0017】
上記の無人搬送システムにおいて、前記検出部は、ニューラルネットワークを用いて前記無人搬送車を検出してよい。
【0018】
上記の無人搬送システムにおいて、前記無人搬送車は、上面に所定のマークを有していてよく、前記検出部は、前記所定のマークを検出することで前記無人搬送車を検出してよい。
【0019】
上記の無人搬送システムにおいて、前記運転制御手段は、前記動線が定義された、前記フィールドのマップを記憶していてよく、前記位置把握部は、前記マップ上に前記検出部にて検出された前記無人搬送車をマッピングすることで、前記無人搬送車の位置を把握してよい。
【0020】
上記の無人搬送システムは、前記フィールドの所定位置に所定のマークを有していてよく、前記検出部は、前記所定のマークを検出してよく、前記位置把握部は、前記検出部が検出した前記所定のマークに基づいて、前記無人搬送車の位置を把握してよい。
【0021】
上記の無人搬送システムにおいて、前記運転制御手段の前記検出部は、さらに、前記無人搬送車で搬送されている前記重量物を検出してよい。
【0022】
上記の無人搬送システムにおいて、前記無人搬送車は、周囲の障害物を検出するための車載検出部と、前記車載検出部による前記障害物の検出に基づいて前記無人搬送車の緊急停止処理を行う緊急停止処理部とを備えていてよい。
【0023】
上記の無人搬送システムは、前記無人搬送車が前記動線から外れているか否かを判定する脱線判定手段をさらに備えていてよく、前記運転制御手段は、前記脱線判定手段において、前記無人搬送車が前記動線から外れていると判定された場合に、前記無人搬送車を停止させ、又は前記無人搬送車を前記動線に戻すように、前記制御信号を生成してよい。
【0024】
上記の無人搬送システムにおいて、前記脱線判定手段は、前記無人搬送車に搭載され、前記無人搬送車の周辺を撮影して静止画像又は動画像を生成する車載カメラと、前記車載カメラが生成した前記静止画像又は動画像に基づいて、前記無人搬送車が前記動線から外れているか否かを判定する判定部とを備えていてよい。
【0025】
上記の無人搬送システムにおいて、前記脱線判定手段は、測位用信号を受信する受信機と、前記受信機で受信した測位用信号に基づいて、前記無人搬送車が前記動線から外れているか否かを判定する判定部とを備えていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の実施の形態の無人搬送システムが適用されるフィールドを示す平面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の無人搬送システムが適用されるフィールドの側面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の無人搬送システムにおける無人搬送車を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の実施の形態の無人搬送システムの構成を示すブロック図である。
図5A図5Aは、本発明の実施の形態の動線の変更の例を示す図である。
図5B図5Bは、本発明の実施の形態の動線の変更の例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施の形態の無人搬送システムが適用されるフィールドの他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態の無人搬送システムが適用されるフィールドを示す平面図であり、図2は、本発明の実施の形態の無人搬送システムが適用されるフィールドの側面図である。本実施の形態の無人搬送システム(即ち、自動誘導システム)が適用されるフィールド50としては、工場、倉庫等が想定される。本実施の形態において、無人搬送車(即ち、自動誘導車、AGV)300は、パレット54に置かれた重量物53をパレット54ごと持ち上げて搬送するフォークリフト車である。
【0029】
無人搬送車300は、フィールド50内で、指定された目的地に向けて、指定された仮想の動線の上を走行して、重量物を搬送する。フィールド50には、例えば、製造設備52が設置されており、また、作業員400が歩行していることもある。これらの製造設備52及び作業員400は、無人搬送車300がフィールド50内を走行する際の障害物となりえる。また、フィールド50内に置かれた重量物53及びパレット54も障害物となり、フィールド50内を複数の無人搬送車300が走行する場合には、他の無人搬送車300も障害物となりえる。
【0030】
フィールド50は、建屋の内部(屋内)にあり、天井55には、複数の俯瞰カメラ10が取り付けられている。複数の俯瞰カメラ10は、それぞれフィールド50を上方から撮影する。なお、俯瞰カメラ10は建屋の壁、柱、ポール等の高所に設置されてもよい。また、フィールド50には、俯瞰カメラ10から見える位置に複数のマーク51が設けられる。
【0031】
複数の俯瞰カメラ10の各々は、撮影可能なフィールド50の領域が一部で重なっており(図2参照)、これにより、複数の俯瞰カメラ10の撮影領域がフィールド50全体をカバーしている。なお、フィールド50全体を必ず撮影しなければならないことはなく、フィールド50に、いずれの俯瞰カメラ10でも撮影されない一部領域が含まれていてもよい。すなわち、フィールド50内において、無人搬送車300が走行することが予定されていない領域については、いずれの俯瞰カメラ10の撮影範囲にも含まれなくてもよい。
【0032】
無人搬送車300は、荷積み位置で荷積みをして、目的地で荷下ろしをすることで、荷積み位置を出発地として目的地まで重量物53を搬送する。搬送を終えた無人搬送車300は、次の搬送のために、重量物53を持たない状態で荷積み位置まで戻る。このときは、無人搬送車300は、荷下ろし位置を出発地とし、荷積み位置を目的地として、移動(回送)する。本実施の形態の無人搬送システムでは、このような重量物53の搬送及び無人搬送車300の回送のための走行を無人で行う。
【0033】
フィールド50には、仮想の動線210が設定される。この動線210は、仮想のものであって、フィールド50に物理的な実体として設けられるものではないことに注意されたい。物理的な実体としての動線(以下、物理動線という)がフィールド50に設けられている従来の無人搬送システムの場合には、無人搬送車300は、物理動線を検知しながら、物理動線から外れないように走行をすることで、物理動線を辿って目的地まで走行することができた。
【0034】
しかしながら、このような従来の無人搬送システムでは、無人搬送車300の走行経路を変更しようとする場合には、物理動線を変更する必要があり、その作業負担が大きかった。そこで、本実施の形態の無人搬送システム100では、物理動線を用いることなく、仮想の動線210を設定して、この仮想の動線210の上を無人搬送車300が走行できるように、無人搬送車300を制御する。
【0035】
図3は、本発明の実施の形態の無人搬送システムにおける無人搬送車を示す斜視図である。図3に示すように、無人搬送車300は、先端に上下動可能なフォーク330を備えている。また、無人搬送車300には、無人搬送車300の周囲を撮影するために、前方を撮影可能な車載カメラ310が取り付けられている。また、無人搬送車300の上面には、マーク350が設けられている。
【0036】
また、無人搬送車300には、個別の識別情報が付与されており、その識別情報は、上方の俯瞰カメラ10から撮影可能なように、識別情報表記370として無人搬送車300の上面に表記されている。図1の例では、2台の無人搬送車300に、それぞれ「1」、「2」という識別情報が与えられており、これらの識別情報を表す識別情報表記370が無人搬送車300の上面に表記されている。なお、識別情報表記370は、識別情報を符号化して生成されたコード(例えば、バーコード、二次元コード等)であってもよい。
【0037】
図4は、本発明の実施の形態の無人搬送システムの構成を示すブロック図である。図4に示すように、本実施の形態の無人搬送システム100は、複数の俯瞰カメラ10と、運転制御装置20と、無人搬送車300とを備えている。複数の俯瞰カメラ10は、それぞれ運転制御装置20に有線ケーブルで接続されている。俯瞰カメラ10は、フィールド50の上方から無人搬送車300が走行するフィールド50を撮影して動画像を生成する。俯瞰カメラ10は、生成した動画像ストリームをリアルタイムで運転制御装置20に送信し、運転制御装置20は、複数の俯瞰カメラ10から動画像ストリームを受信する。
【0038】
なお、俯瞰カメラ10は、運転制御装置20と無線で接続されて、動画像ストリームを無線で送受信してもよい。また、俯瞰カメラ10は、連続的にスチル撮影をして連続する静止画像を生成し、生成した静止画像をリアルタイムで運転制御装置20に送信してもよい。複数の俯瞰カメラ10にはそれぞれ固有の識別情報が割り当てられている。運転制御装置20は、いずれの俯瞰カメラ10の静止画像又は動画像であるかを、俯瞰カメラ10の識別情報を用いて特定する。
【0039】
運転制御装置20は、俯瞰カメラ10から送られてくる静止画像又は動画像に基づいて、無人搬送車300が仮想の動線210上を走行するように制御するための制御信号を生成して、無人搬送車300に送信する。運転制御装置20は、フィールド50内又はフィールド50の外側に設けられていてよく、あるいは、クラウド上に設けられてインターネットを介して俯瞰カメラ10及び無人搬送車300と通信を行ってもよい。さらに、運転制御装置20は、俯瞰カメラ10又は無人搬送車300に設けられてもよい。このように、運転制御装置20は、俯瞰カメラ10と無人搬送車300との間でデータ(動画像ストリーム、静止画像、制御信号等)の伝送をできるのであれば、どこに配置されていてもよいものである。
【0040】
運転制御装置20は、検出部21と、位置把握部22と、向き把握部23と、制御部24と、記憶部25とを備えている。検出部21は、静止画像又は動画像から無人搬送車300を検出する。運転制御装置20は、複数の俯瞰カメラ10から静止画像又は動画像を取得するので、検出部21は、それらの複数の俯瞰カメラ10から得られた静止画像又は動画像のそれぞれから無人搬送車300を検出する。
【0041】
検出部21は、静止画像又は動画像を学習されたニューラルネットワークに入力することで、静止画像又は動画像から無人搬送車300を検出する。なお、検出部21は、運転制御装置20が俯瞰カメラ10から動画像を取得する場合には、その動画像から所定の間隔でフレーム画像を取り出して、それらのフレーム画像(静止画像)から無人搬送車300を検出してよい。
【0042】
無人搬送車300の上面には、所定のマーク350が設けられているので、検出部21は、このマーク350を手掛かりに静止画像又は動画像から無人搬送車300を検出してよい。すなわち、検出部21は、無人搬送車300に設けられたマーク350を無人搬送車300として検出してもよい。
【0043】
検出部21は、さらに、無人搬送車300の識別情報表記370も検出する。検出部21は、図1の例に示すように、識別情報が文字(数字を含む)で表されている場合には、検出した識別情報表記370に対して文字認識を行うことで、検出した無人搬送車300の識別情報を特定する。また、検出部21は、識別情報がコード情報として表記されている場合には、検出した識別情報表記370をデコードすることで、検出した無人搬送車300の識別情報を特定する。また、マーク350が識別情報表記370を兼ねていてもよい。
【0044】
位置把握部22は、検出部21による検出の結果を用いて、無人搬送車300のフィールド50における位置を把握する。なお、無人搬送車300には、車載カメラ310が搭載されているが、位置把握部22は、無人搬送車300に搭載された車載カメラ310ないしは他の車載センサによらずに、俯瞰カメラ10が撮影して得た静止画像又は動画像からの検出結果に基づいて、無人搬送車300のフィールド50内の位置を把握する。
【0045】
記憶部25は、フィールド50のマップを記憶している。このマップでは、無人搬送車300が走行すべき動線が定義されている。位置把握部22は、このマップ上に検出部21にて検出された無人搬送車300をマッピングすることで、無人搬送車300の位置を把握する。このマッピングのために、フィールド50の所定位置には所定のマーク51が設けられ、俯瞰カメラ10によって撮影される。検出部21は、マーク51を検出し、位置把握部22は、検出部21が検出したマーク51に基づいて、無人搬送車300の位置を把握する。
【0046】
また、位置把握部22は、複数の俯瞰カメラ10から取得した互いに異なる複数の領域の静止画像又は動画像を俯瞰カメラ10の識別情報に従って統合することで、フィールド50全体の静止画像又は動画像を生成し、そのような統合画像を用いて無人搬送車300のフィールド50における位置を把握してもよい。
【0047】
向き把握部23は、静止画像又は動画像に基づいて無人搬送車300の向きを把握する。向き把握部23は、静止画像又は動画像を学習されたニューラルネットワークに入力することで、静止画像又は動画像から無人搬送車300の向きを検出してよい。また、向き把握部23は、検出部21で検出された無人搬送車300のマーク350の向きを把握することで、無人搬送車300の向きを把握してもよい。
【0048】
制御部24は、位置把握部22が把握した無人搬送車300の位置及び向き把握部23が把握した無人搬送車300の向きに基づいて、無人搬送車300の走行を制御するための制御信号を生成する。具体的には、制御部24は、無人搬送車300の位置と向きに基づいて、無人搬送車300がマップで定義された動線210上を目的地に向かって走行するように、前進、停止、操舵の指示を含む制御信号を生成する。生成された制御信号はリアルタイムで該当する無人搬送車300に送信される。
【0049】
無人搬送車300は、運転制御装置20から制御信号を受信して、この制御信号に従って走行する。無人搬送車300は、走行制御部301と、リフト制御部302と、車載検出部303と、緊急停止処理部304と、判定部305と、自律運転処理部306と、操作部307と、走行駆動部308と、リフト駆動部309と、車載カメラ310と、受信機311とを備えている。
【0050】
走行駆動部308は、無人搬送車300を走行させるための動力源、動力伝達機構、操舵機構、変速機構、制動機構、車輪等を備えている。リフト駆動部309は、フォーク330を上下動させるための駆動源、動力伝達機構、フォーク330を所定の位置で固定するための子ロック機構等を備えている。走行駆動部308は、走行制御部301による制御に従って駆動する。リフト駆動部309は、リフト制御部302による制御に従って駆動する。
【0051】
走行制御部301は、運転制御装置20から受信した制御信号に従って、走行駆動部308を駆動し、それによって無人搬送車300が設定された仮想の動線210上を走行するための制御を行う。本実施の形態の無人搬送システム100では、仮想の動線210に沿った走行をするために無人搬送車300に必要なのは、この走行制御部301と走行駆動部308であって、他の構成(例えば、車載検出部303や車載カメラ310)は付加的な構成である。
【0052】
車載検出部303は、無人搬送車300の緊急停止のために用いられる。車載検出部303は、例えば、赤外線センサ、LiDARであってよい。車載検出部303は、無人搬送車300の進行方向前方に障害物があるとこれを検知する。あるいは、車載検出部303は、進行方向前方に限らず、無人搬送車300の全方位の周囲に障害物があるときにこれを検知してもよい。
【0053】
緊急停止処理部304は、車載検出部303が障害物を検出した場合に無人搬送車300の緊急停止処理を実行する。緊急停止処理部304は、緊急停止処理として、具体的には、走行駆動部308を制御して、動力源からの動力の発生を停止させるとともに、制動させる。このとき、急激な制動を行うと、フォーク330からパレット54が抜けて重量物53が無人搬送車300から離脱する可能性があるため、そのような事故が生じない強さで制動をする。
【0054】
なお、障害物は、運転制御装置20において検出して、この障害物の存在も加味して、制御部24にて制御信号が生成されてもよい。この場合には、検出部21は、俯瞰カメラ10から得た静止画像又は動画像から障害物を検出する。そして、制御部24は、検出部21による障害物の検出の結果にも基づいて、制御信号を生成する。
【0055】
このとき、本実施の形態では、無人搬送車300が設定された動線210を外れて障害物を回避して走行するような制御は行わず、障害物のために動線210上を走行できない場合には、その場で無人搬送車300を停止させる。本実施の形態の無人搬送車300は重量物53を搬送するものであるため、無人搬送車300があらかじめ設定された動線210を外れて任意のスペースを走行することは、安全性の観点から望ましくないためである。このとき、無人搬送車300が障害物のために動線210上を前進できないことを、無人搬送車300の周囲に報知するために、無人搬送車300が図示しないアラームを起動させて、アラーム音を鳴らしてよい。
【0056】
以上のように、本実施の形態の無人搬送システム100では、俯瞰カメラ10で得られた静止画像又は動画像に基づいて無人搬送車300の走行を制御することで、無人搬送車300は設定された仮想の動線210上を走行することができ、仮に無人搬送車300の走行路に障害物がある場合には、無人搬送車300自体がこれを検出して、緊急停止を行う。
【0057】
また、無人搬送車300が緊急停止状態であっても、制御部24が、無人搬送車300が緊急停止状態に至った事象が解消されたことを認識すると、無人搬送車300を再び走行させてもよい。従来のように、人が、無人搬送車300が緊急停止状態に至った事象が解消されたことを判断し、緊急停止状態から走行を再開させる処理を手動操作に依存させる場合には、その信頼性は非常に低くなる。なお、制御部24は、無人搬送車300の車載検出部303や車載カメラ310で障害物を検知しなくなったことをもって緊急停止状態に至った事象が解消されたことを認識してもよいし、あるいは、俯瞰カメラ10の静止画像又は動画像に基づいて、緊急停止状態に至った事象が解消されたことを認識してもよい。
【0058】
上記のように、通常は、無人搬送車300は常に動線210上にいて、走行又は停止していることが想定される。しかしながら、無人搬送車300が何らかの理由で動線210上を逸脱(脱線)することも想定される。そこで、本実施の形態の無人搬送システム100では、無人搬送車300の脱線を判定するための機能を有している。
【0059】
制御部24は、位置把握部22にて把握された位置が記憶部25に記憶されたマップに定義された動線210から外れているか否かを判定する。制御部24は、動線210から外れていると判定した場合には、無人搬送車300を停止させ、かつ、無人搬送車300を動線210に戻すように、制御信号を生成する。
【0060】
このように、運転制御装置20は、俯瞰カメラ10の静止画像又は動画像に基づいて無人搬送車300の位置を把握して、脱線を判定してもよいが、これに加えて、又はこれに代えて、俯瞰カメラ10の静止画像又は動画像用いない脱線判定システムを備えていてもよい。この場合にも、制御部24は、脱線判定システムにて無人搬送車300が動線210から外れていると判定したことに応じて、無人搬送車300を停止させ、かつ、無人搬送車300を動線210に戻すように、制御信号を生成する。
【0061】
第1の脱線判定システムは、車載カメラ310と、判定部305とで構成される。車載カメラ310は、無人搬送車300に搭載されて、無人搬送車300の周辺を撮影して静止画像又は動画像を生成する。判定部305は、車載カメラ310が生成した静止画像又は動画像に基づいて、無人搬送車300が動線210から外れているか否かを判定する。具体的には、判定部305は、車載カメラ310の画像が、無人搬送車300が動線210にあるときに撮影されるべき画像であるか否かを判断することで、無人搬送車300が脱線しているか否かを判断する。
【0062】
第2の脱線判定システムは、受信機311と、判定部305とで構成される。受信機311は、フィールド50内に伝搬している測位用信号を受信する。測位用信号は、フィールド50内で発生されている。屋内測位の技術としては、種々の従来技術が提案、採用されており、第2の脱線判定システムとして、いずれの従来の屋内測位技術を採用してもよい。
【0063】
例えば、受信機311は、測位用信号としてのWiFi電波を受信するものであってよい。この場合には、フィールド50には、WiFi電波を発信する複数の基地局が設置される。受信機311は、これらの複数の基地局からWiFi電波を受信して、判定部305は、受信機311で受信した複数の基地局からのWiFi電波の強度の違いから、無人搬送車300の位置を把握して、動線210が定義されたマップにマッピングすることで、無人搬送車300がマップで定義された動線210から外れていないかを判断する。
【0064】
また、例えば、受信機311は、フィールド50内に設置されたビーコンから測位用信号を受信するものであってもよい。この場合には、フィールド50には、複数のビーコンが設置される。判定部305は、複数のビーコンからそれぞれ受信した測位用信号の強度に基づいて、フィールド50内における無人搬送車300の位置を把握して、動線210が定義されたマップにマッピングすることで、無人搬送車300がマップで定義された動線210から外れていないかを判断する。
【0065】
脱線判定システムは、その他、磁気センサを用いた測位、GPSと同様の原理によるIMES(IndoorMEssaging System)を用いた測位、PDR(Pedestrian Dead Reckoning)を用いた測位、可視光を用いた測位、超音波を用いた測位等のいずれの従来の測位技術を用いて測位して、脱線を判定してもよい。
【0066】
以上のように、本実施の形態の無人搬送システム100では、無人搬送車300に、仮想の動線210上を走行させることを原則としつつ、何らかの理由によって脱線した場合にも脱線を検知して、動線210に戻るように無人搬送車300の走行を制御することができる。
【0067】
無人搬送車300が重量物53を搬送する場合は、出発地において無人搬送車300に重量物53を荷積みし、目的地において無人搬送車300から重量物53を荷下ろしする。また、無人搬送車300が、荷下ろし地から荷積み地に回送する場合には、出発地において無人搬送車300から重量物53を荷下ろしし、目的地において無人搬送車300に重量物53を荷積みする。
【0068】
この出発地及び目的地における荷積み及び荷下ろしを無人搬送車300が自律的に行ってもよい。無人搬送車300の自律運転処理部306は、出発地又は目的地において、重量物53の荷積み及び荷下ろしのための自律運転を行う。このために、自律運転処理部306は、回送運転をして出発地に到着したときに、車載カメラ310の画像を分析することで、当該画像から荷積みすべき重量物53を検出する。自律運転処理部306は、検出された重量物53に応じて走行駆動部308及びリフト駆動部309を制御して、荷積みを行う。
【0069】
また、自律運転処理部306は、搬送運転をして目的地に到達したときに、車載カメラ310の画像を分析することで、当該画像から荷下ろしすべき位置を検出する。自律運転処理部306は、検出された荷下ろしすべき位置に応じて走行駆動部308及びリフト駆動部309を制御して、荷下ろしを行う。
【0070】
無人搬送車300は、動線210上の走行を開始するためにユーザが操作をするための操作部307を備えている。操作部307に対して、ユーザから走行開始の操作がなされると、操作信号が無人搬送車300から運転制御装置20に送信される。この操作信号を受けた制御部24は、制御信号の生成を開始する。上記のように自律運転による荷積みや荷下ろしが行われる場合にも、自律運転による荷積みや荷下ろしは行われず、手動操作による荷積みや荷下ろしが行われる場合にも、制御部24は、この操作信号に応じて走行制御を開始してよい。操作部307は無人搬送車300から独立した端末でもよく、例えば、タブレット端末でもよい。また、自律運転による荷積みや荷下ろしが行われる場合には、操作部307の操作信号によらずに、荷済みや荷下ろしが完了したら自動的に走行を開始するようにしてもよい。
【0071】
上記のように、フィールド50には、異なる目的地及び異なる動線がそれぞれ指定された複数の無人搬送車300が配置され、運転制御装置20は、複数の無人搬送車300を同時に制御する。このために、検出部21は、俯瞰カメラ10の静止画像又は動画像から複数の無人搬送車300を検出する。また、位置把握部22は、複数の無人搬送車300のフィールド50におけるそれぞれの位置を把握する。また、制御部24は、位置把握部22が把握した複数の位置に基づいて、複数の無人搬送車300の各々の制御信号を生成する。
【0072】
これにより、1つのフィールド50において複数の無人搬送車300を同時に制御できる。また、他の無人搬送車300を障害物と捉えることで、ある無人搬送車300の進行方向前方に他の無人搬送車300があるときには、当該他の無人搬送車300を障害物として検知して、当該ある無人搬送車300を緊急停止させてもよい。これにより、複数の無人搬送車300に設定する仮想の動線210を、互いに交差するように設定することが可能になる。
【0073】
また、上記の実施の形態では、複数の無人搬送車300を同時に制御する場合に、無人搬送車300の上面に識別情報表記370を設けることで、運転制御装置20は、俯瞰カメラ10の静止画像又は動画像から識別情報表記370を検出して、各無人搬送車300の位置を把握し、各無人搬送車300のそれぞれに対して制御信号を生成した。すなわち、各無人搬送車300を個別に制御するために、識別情報表記370が用いられた。これに代えて、無人搬送車300が識別情報表記370を有しない構成としてもよい。
【0074】
この場合には、無人搬送車300は、車載カメラ310の車載カメラ画像を運転制御装置20に送信する。運転制御装置20の制御部24は、この車載カメラ画像を分析することで、当該画像がいずれの位置にある無人搬送車300からの画像であるかを認識する。このようにすることで、運転制御装置20は、俯瞰カメラ10の画像から検出された無人搬送車300と、車載カメラ画像を送ってきた無人搬送車300とを同一の無人搬送車300であると認識することができる。そうすると、運転制御装置20は、俯瞰カメラ10の画像から検出された無人搬送車300の各々に対する制御信号を該当する無人搬送車300に送信することが可能になる。
【0075】
なお、上記の検出部21は、静止画像又は動画像から無人搬送車300を検出するだけでなく、その無人搬送車300が搬送している重量物も検知してよい。これによれば、無人搬送車300が重量物53を搬送しているか否か、即ち、搬送中であるか回送中であるか、及び搬送中の重量物53が無人搬送車300から落下していないかを確認することができる。
【0076】
以上説明したように、本実施の形態の無人搬送システム100によれば、俯瞰カメラ10を用いて無人搬送車300の位置を把握して、マップに照らして無人搬送車300の走行を制御するので、物理動線を用いることなく、仮想の動線210に沿って無人搬送車300を出発地から目的地に向けて走行させることができる。このことは、特に、動線を変更する必要があるときに有益である。動線を変更する場合には、フィールド50において物理的に動線を変更する必要はなく、マップ上で動線を変更すればよいからである。ここで、動線を変更する状況について説明する。
【0077】
図5A及び図5Bは、本発明の実施の形態の動線の変更の例を示す図である。図5Aの例では、比較的小さいパレット54(重量物53)が搬送対象となっており、図5Bの例では、比較的大きいパレット54(重量物53)が搬送対象となっているので、目的地において、重量物53を並べて保管する場合には、隣り合う重量物53の間の距離、即ち、隣り合う重量物の保管場所(目的地)に向かう動線210の間の距離は互いに異なる。図5Aの例では、目的地である保管場所に向かう動線210aの間の距離は比較的短く、図5Bの例では、目的地である保管場所に向かう動線210bの間の距離は比較的長い。
【0078】
このようなフィールド50ないし重量物53を対象として重量物53の搬送を行っている状態で、パレット54(重量物53)の大きさが変更された場合には、動線210間の距離も変更する必要がある。例えば、パレット54(重量物53)の大きさが大きくされた場合には、動線210間の距離も大きくする必要があり、図5Aに示す動線210aから図5Bに示す動線210bのように動線を変更する必要がある。このような場合にも、本実施の形態によれば、動線210aも動線210bも実際のフィールド50に物理的に設けられているわけではなく、記憶部25に記憶されたマップ上で定義されているものであるので、容易に変更が可能である。
【0079】
図6は、本発明の実施の形態の無人搬送システムが適用されるフィールドの他の例を示す側面図である。上記の実施の形態では、建屋内をフィールド50とし、俯瞰カメラ10を天井55に取り付ける例を説明したが、本実施の形態の無人搬送システム100は、屋外で用いることもできる。ただし、この場合には、天井がないので、ポール56や建物の外壁等の背の高い構造物の高所に俯瞰カメラ10を設置して、フィールド50を撮影するようにする。
【0080】
(変形例)
制御部24は、俯瞰カメラ10の静止画像又は動画像に基づいて、無人搬送車300の速度を制御してもよい。検出部21は、俯瞰カメラ10の静止画像又は動画像から、制御対象の無人搬送車300とともに、障害物(作業員400、製造設備52、保管された重量物53、他の無人搬送車300等を含む)を検知する。制御部24は、制御対象の無人搬送車300の周囲の所定の範囲内に障害物がない場合には、走行速度を上げて走行するように、制御信号を生成する。あるいは、無人搬送車300は、動線210上を走行するので、制御部24は、無人搬送車300から動線210に沿った所定の範囲で障害物の有無を判定してもよい。
【0081】
このように、無人搬送車300の周囲が安全であることを確認して無人搬送車300の速度を上げることで、搬送作業のサイクルタイムを短くすることができる。このことは、工場においては生産効率の向上に有効である。なお、速度の制御としては、例えば、無人搬送車300がフォーク330を前にして前進する場合は比較的低速で、フォーク330と反対側に後進する場合は比較的高速で、走行するように制御してもよい。
【0082】
このように、周囲の障害物の有無に応じて速度を変更するように制御する場合にも、俯瞰カメラ10の静止画像又は動画像にもとづく制御が有効である。すなわち、仮に無人搬送車300に搭載されたセンサ(車載カメラ、LiDAR等)で周囲の障害物を検知することで安全性を確認しようとする場合には、センサの死角によって、障害物を検知できない場合もあり、また、比較的遠くの障害物が検知できない場合もあり、安全性が確保できない。そこで、俯瞰カメラ10を用いることで、無人搬送車300の周囲の必要な範囲を設定してその範囲内で障害物がないかを確認することができる。
【0083】
また、無人搬送車300の周囲に障害物があるか否かに関わらず、マップ上で定義される動線に、区間ごとに速度が設定され、無人搬送車300の位置に基づいて、マップに設定された速度に応じた制御信号が生成されてもよい。例えば、他の無人搬送車300の動線210と交差しない区間では、比較的速い速度が設定されてよく、他の無人搬送車300の動線210と交差する区間や作業員400が行き交う領域を横切る区間では、比較的遅い速度が設定されてよい。
【0084】
なお、上記の運転制御装置20はコンピュータで実現されてよく、検出部21、位置把握部22、向き把握部23、及び制御部24は、プロセッサが本実施の形態の一又は複数の運転制御プログラムを実行することで実現される機能であってよい。また、無人搬送車300の走行制御部301、リフト制御部302、緊急停止処理部304、判定部305、及び自律運転処理部306は、プロセッサが本実施の形態の一又は複数の無人搬送プログラムを実行することで実現される機能であってよい。また、走行制御部301、リフト制御部302、緊急停止処理部304、判定部305、及び自律運転処理部306は、必ずしも無人搬送車300に備えられていなくてもよく、例えばクラウド上のサービスプロバイダに設けられて、無人搬送車300が当該サービスプロバイダと通信をするようにしてもよい。
【0085】
上記の実施の形態では、無人搬送車300がフォークリフトであったが、無人搬送車300はこれに限られず、例えば、ワゴンタイプないしは台車タイプの搬送車であってもよい。この場合に、荷積み、荷下ろしは作業員400がやるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 俯瞰カメラ
20 運転制御装置
21 検出部
22 位置把握部
23 向き把握部
24 制御部
25 記憶部
50 フィールド
51 マーク
52 製造設備
53 重量物
210 動線
300 無人搬送車
301 走行制御部
302 リフト制御部
304 緊急停止処理部
305 判定部
306 自律運転処理部
307 操作部
308 走行駆動部
309 リフト駆動部
310 車載カメラ
311 受信機
330 フォーク
350 マーク
370 識別情報表記
400 作業員
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6